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Title:
IRON COMPLEX AND METHOD FOR PRODUCING POLYMER USING THE IRON COMPLEX AS CATALYST
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/114864
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a divalent iron complex wherein a cyclic amine compound represented by the general formula (2) below is coordinated to an iron compound represented by the general formula (1) below. Also disclosed is a method for producing a polymer using such a divalent iron complex. FeX1 2 (1) (In the formula (1), Fe is divalent and X1 represents an anionic functional group.) (In the formula (2), R1, R2 and R3 represent a hydrogen atom, a hydrocarbon group having 1-20 carbon atoms, or a benzyl group which may have a substituent having 1-40 carbon atoms on an aromatic ring, excluding the casewhere all of R1, R2 and R3 are methyl groups at the same time.)

Inventors:
NAGASHIMA HIDEO (JP)
SUNADA YUSUKE (JP)
WATANABE MASATAKA (JP)
NODA DAISUKE (JP)
KAWAMURA MITSUNOBU (JP)
KAI HIDETOMO (JP)
HAMADA AKANE (JP)
HAYAKAWA HITOSHI (JP)
KOIKE NOBUYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/055257
Publication Date:
September 25, 2008
Filing Date:
March 21, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV KYUSHU NAT UNIV CORP (JP)
DAINIPPON INK & CHEMICALS (JP)
NAGASHIMA HIDEO (JP)
SUNADA YUSUKE (JP)
WATANABE MASATAKA (JP)
NODA DAISUKE (JP)
KAWAMURA MITSUNOBU (JP)
KAI HIDETOMO (JP)
HAMADA AKANE (JP)
HAYAKAWA HITOSHI (JP)
KOIKE NOBUYUKI (JP)
International Classes:
C07D255/02; B01J31/22; C08F4/40; C07F15/02
Domestic Patent References:
WO2007032358A12007-03-22
Foreign References:
JP2002540234A2002-11-26
Other References:
DIEBOLD A. ET AL.: "Crystal Structures and Solution Behavior of Paramagnetic Divalent Transition Metal Complexes (Fe, Co) of the Sterically Encumbered Tridentate Macrocycles 1,4,7-R3-1,4,7-Triazacyclononane: Coordination Numbers 5 (R = i-Pr) and 6 (R = i-Bu)", INORGANIC CHEMISTRY, vol. 39, no. 17, 2000, pages 3915 - 3923, XP000940575
LIN G. ET AL.: "Extradiol Oxidative Cleavage of Catechols by Ferrous and Ferric Complexes of 1,4,7-Tetrazacyclononane: Insight into the Mechanism of the Extradiol Catechol Dioxygenases", JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY, vol. 123, no. 21, 2001, pages 5030 - 5039
NIIBAYASHI S. ET AL.: "Reusable and environmentally friendly ionic trinuclear iron complex catalysts for atom transfer radical polymerization", CHEMICAL COMMUNICATIONS, no. 18, 14 May 2007 (2007-05-14), pages 1855 - 1857
Attorney, Agent or Firm:
SHIGA, Masatake et al. (MarunouchiChiyoda-ku, Tokyo 20, JP)
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Claims:
下記一般式(1)で表される鉄化合物に対して、下記一般式(2)で表される環状アミン化合物が配位した、2価鉄錯体。
     (式(1)中、Feは2価であり、X 1 はアニオン性官能基を示す。)
 
(式(2)中、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。)
下記一般式(3)で表される請求項1に記載の鉄錯体。
(式(3)中、Feは2価であり、X 2 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。A n- はアニオンを示す。nは1~3の整数を示す。)
下記一般式(4)で表される請求項1に記載の鉄錯体。
(式(4)中、Feは2価であり、X 3 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。A n- はアニオンを示す。nは1~3の整数を示す。)
 A n- が、下記一般式(5)
(式(5)中、Feは2価であり、X 4 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。)
又は下記一般式(6)
(式(6)中、X 5 はアニオン性官能基を示し、mは0又は1であり、mが0のときnは1であり、mが1のときnは1又は2を示す。)
で表される請求項2又は3に記載の鉄錯体。
 一般式(1)において、X 1 は、ハロゲンイオン、R 4 COO-(R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を示す。)及びR 4 SO 3 -(R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を示す。)からなる群より選ばれる1を示し、一般式(2)において、R 1 、R 2 及びR 3 は、
1)水素原子、
2)炭素数1~20のアルキル基、並びに
3)芳香環の水素原子が炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基及び炭素数1~40のポリオキシアルキレン基からなる群より選ばれる1以上で置換されていてもよいベンジル基
からなる群より選ばれる1を示す、請求項1に記載の鉄錯体。
 一般式(1)において、X 1 は、ハロゲンイオン、CH 3 COO-、C 6 H 5 COO-、CF 3 COO-、CH 3 SO 3 -、C 6 H 5 SO 3 -及びCF 3 SO 3 -からなる群より選ばれる1を示し、一般式(2)において、R 1 、R 2 及びR 3 は、
1)水素原子、
2)炭素数1~8のアルキル基、並びに
3)芳香環の水素原子が炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基で置換されていてもよいベンジル基
からなる群より選ばれる1を示す、請求項1に記載の鉄錯体。
 一般式(3)において、X 2 が塩素イオン又は臭素イオンであり、R 1 、R 2 及びR 3 が同一であって、エチル基、n-ブチル基、ベンジル基及び4-メトキシベンジル基からなる群より選ばれる1を表し、nが1である請求項2に記載の鉄錯体。
 一般式(4)において、X 3 が塩素イオン又は臭素イオンであり、R 1 、R 2 及びR 3 が同一であって、エチル基、n-ブチル基、ベンジル基及び4-メトキシベンジル基からなる群より選ばれる1を表し、nが1である請求項3に記載の鉄錯体。
 一般式(5)において、X 4 が塩素イオン又は臭素イオンであり、R 1 、R 2 及びR 3 がエチル基であり、nが1である請求項4に記載の鉄錯体。
 一般式(6)において、X 5 が臭素イオンであり、mが1であり、nが1である請求項4に記載の鉄錯体。
下記一般式(7)で表される請求項1に記載の鉄錯体。
(式(7)中、Feは2価であり、R 1 、R 2 及びR 3 は、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示し、X 6 はアニオン性官能基を示す。)
下記一般式(8)で表される請求項1に記載の鉄錯体。
(式(8)中、Feは2価であり、R 1 、及びR 2 は、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示し、X 7 はアニオン性官能基を示す。)
 下記一般式(9)で表される鉄化合物に対して下記一般式(10)で表される環状アミン化合物が配位した2価鉄錯体を重合触媒とし、有機ハロゲン化合物の存在下で、少なくとも一種のラジカル重合性単量体を重合することを特徴とする重合体の製造方法。
(式(9)中、Feは2価であり、X 1 はアニオン性官能基を示す。)
(式(10)中、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基又はエチル基である場合を除く。)
 下記一般式(11)~(17)で表される群から選ばれる少なくとも一種の鉄錯体を重合触媒とし、有機ハロゲン化合物の存在下で、少なくとも一種のラジカル重合性単量体を重合することを特徴とする請求項13に記載の重合体の製造方法。
(式(11)中、Feはいずれも2価であり、X 2 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基又はエチル基である場合を除く。A n- はアニオンを示す。)
(式(12)中、Feはいずれも2価であり、X 3 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示す。A n- はアニオンを示す。)
(式(13)中、Feは2価であり、R 1 、R 2 及びR 3 は、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示し、X 6 はアニオン性官能基を示す。)
(式(14)中、Feはいずれも2価であり、R 1 、及びR 2 は、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示し、X 7 はアニオン性官能基を示す。)
(式(15)中、Feはいずれも2価であり、X 8 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基又はエチル基である場合を除く。L 1 は、鉄原子に配位可能で鉄の価数を変化させない配位子を示し、A - はアニオンを示す。)
(式(16)中、Feは2価であり、X 9 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基又はエチル基である場合を除く。D + は、カチオン性基を示す。)
(式(17)中、Feは2価であり、X 10 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基又はエチル基である場合を除く。L 2 は、鉄原子に配位可能で鉄の価数を変化させない配位子を示す。)
 A n- が、下記一般式(18)
(式(18)中、Feは2価であり、X 4 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。)
又は一般式(19)
(式(19)中、X 5 はアニオン性官能基を示し、mは0又は1であり、mが0のときnは1であり、mが1のときnは1又は2を示す。)
で表される鉄錯体を重合触媒とする、請求項14に記載の重合体の製造方法。
 A - が、下記一般式(20)
(式(20)中、Feは2価であり、X 4 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。)
又は一般式(21)
(式(21)中、X 5 はアニオン性官能基を示し、mは0又は1であり、mが0のときnは1であり、mが1のときnは1又は2を示す。)
で表される鉄錯体を重合触媒とする、請求項14に記載の重合体の製造方法。
 一般式(15)において、X 8 は、ハロゲンイオン、R 4 COO - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を示す。)、又はR 4 SO 3 - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を示す。)を示し、L 1 は、CH 3 CN、CO、Ar 3 P(Arは炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基を示す。)、又は炭素数6~24の3級アミンを示し、一般式(16)において、D + は、有機オニウムイオン、又はアルカリ金属イオンを示し、一般式(17)において、L 2 は、CH 3 CN、CO、Ar 3 P(Arは炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基を示す。)、又は炭素数6~24の3級アミンを示すものである請求項14に記載の重合体の製造方法。
 前記有機ハロゲン化合物が、α-ハロゲノカルボニル化合物、α-ハロゲノカルボン酸エステル、ハロゲン化スルホニル、α-ハロゲノアルキルアレーン及びポリハロゲン化アルカンの活性ハロゲン化合物からなる群から選ばれるいずれかのものである請求項13に記載の重合体の製造方法。
 前記ラジカル重合性単量体が、スチレン系単量体、ビニルピリジン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び(メタ)アクリルアミド系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種のラジカル重合性単量体である請求項13に記載の重合体の製造方法。
 前記ラジカル重合性単量体として、2種類以上のラジカル重合性単量体を用いてランダム共重合する請求項13に記載の重合体の製造方法。
 前記ラジカル重合性単量体として、2種類以上のラジカル重合性単量体を用いてブロック共重合する請求項13に記載の重合体の製造方法。
 無媒体で重合を行う請求項13に記載の重合体の製造方法。
 水媒体中で重合を行う請求項13に記載の重合体の製造方法。
 請求項13の製造方法で重合体を製造した後、該重合体を水及び/又は水溶性有機溶媒で洗浄して前記鉄錯体を回収し、回収した鉄錯体を用いて重合を行う請求項13に記載の重合体の製造方法。
Description:
鉄錯体及び該鉄錯体を触媒とす 重合体の製造方法

 本発明は、トリアザシクロノナン鉄錯体 ラジカル発生剤の存在下、ラジカル重合性 量体を重合する重合体の製造方法に関する より詳しくは、本発明はラジカル重合性単 体の種類、組み合わせに対して幅広い範囲 適用可能な特定の鉄触媒、並びに、かかる 錯体を使用し、分子量、分子構造を制御し つ、生成した重合体の化学変換を可能にす 末端官能基をもつ重合体を製造する方法、 び重合に用いた鉄錯体を回収し、再び重合 応に再利用できる重合体の製造法に関する

 従来のラジカル重合と異なり、ポリマー 長末端が化学変換可能な活性を有するリビ グラジカル重合、例えば、原子移動ラジカ 重合(ATRP)(非特許文献1参照)、ニトロキシド 介するラジカル重合(NMP)(非特許文献2参照) 硫黄類化合物経由可逆付加チェイントラン ファーラジカル重合(RAFT)(非特許文献3参照) どは、ポリマーの分子量、モノマー残基序 、次元構造などを任意に制御できることか 、この10年以来多くの注目を集めて来た。そ の中で、特に、金属錯体とハロゲン化合物と の組み合わせによる原子移動ラジカル重合系 はその広範に渡るモノマー種類の適応性が示 され、それを用いるポリマーの精密制御方法 は、ポリマーの合成だけではなく、基材表面 ・界面の化学修飾、デバイス構築にも広がる ようになった。

 ATRP法で用いられる金属触媒は、通常その中 心金属は銅、又はルテニウムであり、それら は明確な金属錯体構造を有するものではなく 、金属イオンとそれの配位子となる化合物( えばアミン類)を重合反応系に混合してから いることが多い。このような重合系では、 属の触媒活性は系内の配位子と結合し、錯 を形成してから発現される。配位子と金属 オンを重合反応系に混合して用いた場合、 べての金属が錯体を形成することはできな 。これら錯体を形成してない金属は、触媒 性を示すことができなくなる。
 従って、金属の触媒効率は低下し、金属濃 増加の必要性や、高分子量ポリマー製造に 適合となるなどデメリットが生じる。金属 度向上は、重合反応後の金属除去工程に多 の負荷をもたらし、また、金属毒性による 境汚染の可能性も生じる。また、アミン類 位子などを余分に使うことが要求される(例 えば特許文献1および2参照)。余分のアミン類 配位子の使用により、重合反応において、モ ノマーの種類などが変わると反応制御が困難 となること、モノマー以外の化合物の混入に よるポリマー精製が煩雑になることなど、多 くの問題が提起されている。

 金属錯体によるリビングラジカル重合に いて、安全かつ安価な鉄触媒による重合体 造は環境に優しい視点から多くの注目を集 ている(非特許文献4)。

 ATRP法において、鉄イオンと配位子(アミ 類、フォスフィン類化合物、亜リン酸エス ル類)を重合性モノマーと混合して行う重合 の製造法や、又は合成した鉄錯体と重合性 ノマーを混合して行う重合体製造法が開示 れている(非特許文献5)。例えば、2価の鉄イ オンとアミン系配位子をモノマーと混合し、 それにハロゲン開始剤を用いたメチルメタク リレートの重合法(非特許文献6)、又は、2価 鉄イオンとリン化合物を配位子とする鉄錯 及びハロゲン開始剤を用いるメチルメタク レートの重合法が報告されている(例えば非 許文献7、特許文献3)。しかし、これらの鉄 媒系でのATRP法では、分子量が10万台にのぼ 高分子量ポリマーの合成例がほとんどない また、鉄錯体を回収し、それを重合反応に 利用することもできなかった。

 金属触媒を用いるリビングラジカル重合 では、重合後ポリマーからの金属除去が大 な課題となっている。ある意味では、重合 応それ自体より、残存金属をポリマーから 去することがリビングラジカル重合実用化 の現実的な問題でもある。金属を除くため ポリマーの精製工程では、錯化剤を利用す などの方法(特許文献4及び5)が検討されてい る。環境に優しい鉄イオン化合物を触媒とし て用いることは、銅、コバルト、ルテニウム など他の金属イオンに比べ、無毒性であり、 後処理など工程を含めて、重合体製造全プロ セスでのメリットが大きい。しかしながら、 鉄イオンを用いるリビングラジカル重合では 、銅イオン錯体系に比べて、重合効率が低い などの問題以前に、鉄触媒の不安定性、鉄触 媒の再利用困難など製造プロセスにおける問 題点も問われている。

 リビングラジカル重合反応において、高 触媒活性を有する鉄錯体を使用して重合反 を行い、かつその鉄錯体を重合反応系から 去し、廃棄することなく、単純な方法で回 しそれを再び重合反応触媒として利用でき ような重合体の製造法の開発は工業的な視 から見ても、極めて重要な課題であると考 られる。

特開平8-41117号公報

特開2002-80523号公報

特許第2946497号公報

特開2002-356510号公報

特開2005-105265号公報 J.Wangら、Macromolecules,1995年、28巻、7901頁 C.J.Hawkerら、Macromolecules,1996年、29巻、5245 Chiefariら、Macromolecules, 1998年、31巻、5559 Matyjaszewskiら、 Chem. Rev. 2001年, 101巻, 2 921頁 澤本ら、第54回高分子学会年次大会予稿 、2004年、1Pb022,136頁 Matyjaszewskiら、 Macromolecules, 1997年、30巻 8161頁 安藤ら, Macromolecules, 1997年、30巻、4507頁

 本発明が解決しようとする課題は、ラジカ 重合性単量体を比較的短時間で定量的に重 が可能で、高分子量でありながら末端に化 変換可能な官能基を有する重合体およびブ ック共重合体を製造できる方法を提供する とであり、さらに、重合反応後、ポリマー 汎用性溶剤中単純再沈殿することで、用い 鉄錯体を溶剤中に回収し、それを再利用し 重合体製造方法を提供することである。
 また、本発明が解決しようとする課題は、 かる重合体の製造方法に用いる鉄錯体を提 することである。

 本発明では、触媒活性を示す金属錯体と て、特定のトリアザシクロノナン鉄系錯体 注目し、本発明を完成した。

 すなわち、本発明は、
下記一般式(1)で表される鉄化合物に対して、 下記一般式(2)で表される環状アミン化合物が 配位した、2価鉄錯体を提供する。

(式(1)中、Feは2価であり、X 1 はアニオン性官能基を示す。)

(式(2)中、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。)
一般式(2)で表される環状アミン化合物は前記 鉄化合物に対して配位して配位子となる。
 より具体的には、

(式(3)中、Feは2価であり、X 2 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。A n- はアニオンを示す。nは1~3の整数を示す。)
上記式(3)で表される鉄錯体、

(式(4)中、Feは2価であり、X 3 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。A n- はアニオンを示す。nは1~3の整数を示す。)
上記式(4)で表される鉄錯体、

(式(7)中、Feは2価であり、R 1 、R 2 及びR 3 は、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上 炭素数1~40の置換基を有していてもよいベン ル基を示し、X 6 はアニオン性官能基を示す。)
上記式(7)で表される鉄錯体、

(式(8)中、Feは2価であり、R 1 、及びR 2 は、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上 炭素数1~40の置換基を有していてもよいベン ル基を示し、X 7 はアニオン性官能基を示す。)
上記式(8)で表される鉄錯体、などを提供する ものである。

 また、本発明は、下記一般式(1)で表され 鉄化合物に対して下記一般式(2)で表される 状アミン化合物が配位した2価鉄錯体を重合 触媒とし、有機ハロゲン化合物の存在下で、 少なくとも一種のラジカル重合性単量体を重 合することを特徴とする重合体の製造方法で ある。

(式(1)中、Feは2価であり、X 1 はアニオン性官能基を示す。)
 

(式(2)中、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。)
上記環状アミン化合物は前記錯体における配 位子となり、前記有機ハロゲン化合物はラジ カル重合開始剤として働く。

 本発明は、上記鉄錯体とラジカル発生剤を いることで、他の配位子など要らず、重合 応系が極めて単純化となり、かつその鉄錯 の優れた触媒活性により、そのラジカル重 反応が定量的に進行する。また、得られた 合体は通常のラジカル重合では得られない 性末端を形成しているので、定量重合後、 のラジカル重合性単量体を加えることで、 ロック共重合体を簡便に製造することがで る。さらに、これらの鉄錯体は重合反応終 後、ポリマーを再沈殿させる単純な作業過 で、錯体を効率的に溶剤相へ溶かすことに り容易に回収され、これを触媒として再使 することができる。
 即ち、本発明は、上記鉄錯体を従来のラジ ル重合系に用いることで、工業プロセスで 重合反応の制御に多くのメリットをもたら ことができる。

 本発明の効果として、鉄錯体を用いるこ で、銅錯体など有毒な金属イオン系と比較 、環境汚染を抑制することもでき、また、 られたポリマーの後処理過程も単純化する とができることも挙げられる。

実施例11における鉄錯体6(式(39))のORTEP である。 実施例11における鉄錯体6(式(40))のORTEP である。 実施例12における鉄錯体7(式(41))のORTEP である。 実施例14における重合一回目のGPCチャ トである。 実施例14における重合2回目のGPCチャー トである。 実施例17におけるブロック共重合前後 ポリマーGPCチャートである。 実施例18におけるブロック共重合前後 ポリマーGPCチャートである。 実施例26におけるブロック共重合前後 ポリマーGPCチャートである。 実施例27における鉄錯体10(式(45))のORTEP である。 実施例28における鉄錯体11(式(46))のORTEP である。 実施例29における鉄錯体12(式(48))のORTEP 図である。 実施例30における鉄錯体13(式(50))のORTEP 図である。 実施例40におけるブロック共重合前後 ポリマーGPCチャートである。 実施例42における鉄錯体14(式(51))のORTEP 図である。 実施例45におけるブロック共重合前後 ポリマーGPCチャートである。

 まず、本発明の鉄錯体について説明する。
本発明の鉄錯体は、下記一般式(1)で表される 鉄化合物

(式(1)中、Feは2価であり、X 1 はアニオン性官能基を示す。)
が、一般式(2)で表される環状アミン化合物を 配位子として有することを特徴とする。

(式(2)中、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。)
前記鉄錯体は、2価の鉄イオンに、窒素原子 水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳 環上に炭素数1~40の置換基を有していてもよ いベンジル基を有するトリアザシクロノナン 基が配位され、かつアニオンを有する。鉄錯 体を形成するのに要される鉄化合物及び環状 アミン化合物の数などは特に問題のない限り 必要に応じて選択できる。
 X 1 であるアニオン性官能基としては、フッ素イ オン、塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イ オン等のハロゲンイオン、R 4 COO-(R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)、又はR 4 SO 3 -(R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)のいずれかであることが好ましい。 らに、ハロゲンイオン、CH 3 COO-、C 6 H 5 COO-、CF 3 COO-、CH 3 SO 3 -、C 6 H 5 SO 3 -及びCF 3 SO 3 -からなる群より選ばれる1を示すことがより ましく、触媒活性の長期安定化のためには それが塩素イオン、臭素イオンであること 特に好ましい。

 一般式(2)で表される環状アミン化合物は、 換基としてR 1 、R 2 及びR 3 を有するトリアザシクロノナン類である。こ こで、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示すが、本発明では全て メチル基である場合を除く。具体的には、
1)水素原子、
2)炭素数1~20のアルキル基、並びに
3)芳香環の水素原子が炭素数1~20のアルキル基 、炭素数1~20のアルコキシ基及び炭素数1~40の リオキシアルキレン基からなる群より選ば る1以上で置換されていてもよいベンジル基
からなる群より選ばれる1であることが好ま い。より好ましくは、
1)水素原子、
2)炭素数1~8のアルキル基、並びに
3)芳香環の水素原子が炭素数1~4のアルキル基 は炭素数1~4のアルコキシ基で置換されてい もよいベンジル基
からなる群より選ばれる1である。特に好ま くは、炭素数1~3のアルキル基、芳香環の水 原子が炭素数1~2のアルコキシ基で置換され いてもよいベンジル基であり、もっとも好 しくはエチル基、ベンジル基、又は4-メトキ シベンジル基である。R 1 、R 2 及びR 3 は、同一でも異なっていてもよいが、すべて がメチル基である場合を除く。nは1~3の整数 示し、1又は2であることが好ましい。

 上記アルキル基としては、例えば、メチル 、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n- ンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n- シル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基等 の直鎖状アルキル基;i-プロピル基、i-ブチル 、i-ヘキシル基、i-オクタデシル基、sec-ブ ル基、tert-ブチル基等の分岐状アルキル基が 挙げられる。上記ベンジル基としては、例え ば、ベンジル基、4-メチルベンジル基、4-エ ルベンジル基、4-n-プロピルベンジル基、4- ソプロピルベンジル基、4-n-ブチルベンジル 、4-イソブチルベンジル基、4-t-ブチルベン ル基、4-メトキシベンジル基、4-エトキシベ ンジル基、4-n-プロポキシベンジル基、4-イソ プロポキシベンジル基、4-n-ブトキシベンジ 基、4-イソブトキシベンジル基、4-t-ブトキ ベンジル基、4-トリフルオロメチル基等が挙 げられる。
 本発明の鉄錯体は、より具体的例としては 下記一般式(3)で表される構造のものが挙げ れる。

(式(3)中、Feは2価であり、X 2 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。A n- はアニオンを示す。nは1~3の整数を示す。)
 X 2 であるアニオン性官能基は、フッ素イオン、 塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオン等 のハロゲンイオン、R 4 COO-(R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)、又はR 4 SO 3 -(R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)のいずれかであることが好ましい。 れらに由来する基やイオンも好ましい。さ に、ハロゲンイオン、CH 3 COO-、C 6 H 5 COO-、CF 3 COO-、CH 3 SO 3 -、C 6 H 5 SO 3 -及びCF 3 SO 3 -からなる群より選ばれる1を示すことがより ましく、触媒活性の長期安定化のためには それが塩素イオン、臭素イオンであること 特に好ましい。

 また、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示すが、本発明では全て メチル基である場合を除く。具体的には、
1)水素原子、
2)炭素数1~20のアルキル基、並びに
3)芳香環の水素原子が炭素数1~20のアルキル基 、炭素数1~20のアルコキシ基及び炭素数1~40の リオキシアルキレン基からなる群より選ば る1以上で置換されていてもよいベンジル基
からなる群より選ばれる1であることが好ま い。より好ましくは、
1)水素原子、
2)炭素数1~8のアルキル基、並びに
3)芳香環の水素原子が炭素数1~4のアルキル基 は炭素数1~4のアルコキシ基で置換されてい もよいベンジル基からなる群より選ばれる1 である。特に好ましくは、炭素数1~3のアルキ ル基、芳香環の水素原子が炭素数1~2のアルコ キシ基で置換されていてもよいベンジル基で あり、もっとも好ましくはエチル基、ベンジ ル基、又は4-メトキシベンジル基である。こ とき、R 1 、R 2 及びR 3 が同一であることも好ましい。R 1 、R 2 及びR 3 は、同一でも異なっていてもよいが、すべて がメチル基である場合を除く。nは1~3の整数 示し、1又は2であることが好ましい。

 上記アルキル基としては、例えば、メチ 基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、 n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、 n-デシル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基 等の直鎖状アルキル基;i-プロピル基、i-ブチ 基、i-ヘキシル基、i-オクタデシル基、sec- チル基、tert-ブチル基等の分岐状アルキル基 が挙げられる。上記ベンジル基としては、例 えば、ベンジル基、4-メチルベンジル基、4- チルベンジル基、4-n-プロピルベンジル基、4 -イソプロピルベンジル基、4-n-ブチルベンジ 基、4-イソブチルベンジル基、4-t-ブチルベ ジル基、4-メトキシベンジル基、4-エトキシ ベンジル基、4-n-プロポキシベンジル基、4-イ ソプロポキシベンジル基、4-n-ブトキシベン ル基、4-イソブトキシベンジル基、4-t-ブト シベンジル基、4-トリフルオロメチル基等が 挙げられる。

 また、一般式(4)で表される構造のものが げられる。

(式(4)中、Feは2価であり、X 3 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。A n- はアニオンを示す。nは1~3の整数を示す。)
 式(4)中、X 3 は、ハロゲンイオン、シアノ基、フェニルチ オニル基、R 4 COO - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)、又はR 4 SO 3 - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)からなる群より選ばれる1であること 好ましい。それらに由来する基やイオンも ましい。ハロゲンイオンがより好ましく、 素イオン、臭素イオンが特に好ましい。
 R 1 、R 2 及びR 3 は、上記一般式(3)の場合と同様である。nは1~ 3の整数を示し、1又は2であることが好ましい 。
上記一般式(3)及び(4)において、A n- は、アニオンを表す。具体例としては、A n- は、下記一般式(5)又は一般式(6)で表される。

(式(5)中、Feは2価であり、X 4 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。)

(式(6)中、X 5 はアニオン性官能基を示し、mは0又は1であり 、mが0のときnは1であり、mが1のときnは1又は2 を示す。)
 上記式(5)中、X 4 は、ハロゲンイオン、シアノ基、フェニルチ オニル基、R 4 COO - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)、又はR 4 SO 3 - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)からなる群より選ばれる1であること 好ましく、ハロゲンイオンがより好ましく 塩素イオン、または臭素イオンが特に好ま い。X 5 が臭素イオンであるとき、mとnは1である事が 好ましい。
 R 1 、R 2 及びR 3 は、上記一般式(3)の場合と同様である。nは1~ 3の整数を示し、1又は2であることが好ましい 。
 上記式(6)中、X 5 は、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン 、ヨウ素イオンであることが好ましく、塩素 イオン、臭素イオンであることが特に好まし い。

 かかる鉄錯体のうち、以下のものが最も好 しい。
(i)一般式(3)及び一般式(5)において、R 1 、R 2 及びR 3 がエチル基であり、X 2 及びX 4 が塩素イオンであり、nが1である鉄錯体。
(ii)一般式(3)において、R 1 、R 2 及びR 3 がエチル基であり、X 2 が臭素イオンであり、nが1であり、一般式(6) おいて、X 5 が臭素イオンであり、mが1であり、nが1であ 鉄錯体。
(iii)一般式(3)において、R 1 、R 2 及びR 3 がベンジル基であり、X 2 が臭素イオンであり、nが1であり、一般式(6) おいて、X 3 が臭素イオンであり、mが1であり、nが1であ 鉄錯体。
(iv)一般式(1)において、R 1 、R 2 及びR 3 が4-メトキシベンジル基であり、X 2 が塩素イオンであり、nが1であり、一般式(6) おいて、X 5 が塩素イオンであり、mが0であり、nが1であ 鉄錯体。
(v)一般式(3)において、R 1 、R 2 及びR 3 が4-メトキシベンジル基であり、X 2 が塩素イオンであり、nが1であり、一般式(6) おいて、X 5 が塩素イオンであり、mが1であり、nが2であ 鉄錯体。
(vi)一般式(3)において、R 1 、R 2 及びR 3 がn-ブチル基であり、X 2 が塩素イオンであり、nが1であり、一般式(6) おいて、X 5 が塩素イオンであり、mが1であり、nが1であ 鉄錯体。
 本発明によれば、窒素原子上に種々の置換 を有するトリアザシクロノナン化合物と、F eCl 2 又はFeBr 2 を適宜組み合わせて使用することにより、上 記一般式(3)~(6)で表されるようなアニオン部 (A)が異なるカチオン型二核鉄錯体(Y)を良好 収率で得ることができる。かかる合成法に り、上記一般式(3)~(6)中のR 1 、R 2 及びR 3 の炭素数を増大させることで、重合性モノマ ーや有機溶剤に対して高い溶解性を有する鉄 錯体(Y)を提供することができる。
 さらに、一般式(7)で表される構造のものが げられる。

(式(7)中、Feは2価であり、R 1 、R 2 及びR 3 は、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上 炭素数1~40の置換基を有していてもよいベン ル基を示し、X 6 はアニオン性官能基を示す。)
 R 1 、R 2 及びR 3 は、上記一般式(3)の場合と同様であるが、好 ましくは、イソプロピル基、シクロヘプチル 、又はフェニルエチル基等の2級アルキル基 ある置換基が特に好ましい。
 X 6 は、ハロゲンイオン、シアノ基、フェニルチ オニル基、R 4 COO - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)、又はR 4 SO 3 - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)からなる群より選ばれる1であること 好ましく、ハロゲンイオンがより好ましく 塩素イオン、臭素イオンが特に好ましい。
 さらに、一般式(8)で表される構造のものが げられる。

(式(8)中、Feは2価であり、R 1 及びR 2 は、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上 炭素数1~40の置換基を有していてもよいベン ル基を示し、X 7 はアニオン性官能基を示す。)
 上記一般式(1)および(2)で表されるような、2 価の鉄イオンにトリアザシクロノナン環が配 位し、かつ鉄周辺にハロゲン基を有する鉄錯 体としては、Inorganic Chemistry 2000年、39巻、30 29頁に記載されているように、N,N’,N”-トリ チル-1,4,7-トリアザシクロノナンと無水塩化 鉄(II)からカチオン型の二核錯体が合成され いるが、N,N’,N”-トリメチル-1,4,7-トリアザ クロノナン以外のトリアザシクロノナン環 配位した類似のカチオン型二核鉄錯体の合 は報告されていない。

 本発明によれば、窒素原子上に種々の置換 を有するトリアザシクロノナン化合物と、F eCl 2 又はFeBr 2 等を適宜組み合わせて使用することにより、 上記一般式(3)~(8)、及び一般式(11)~(21)で表さ るような2価鉄錯体を良好な収率で得ること できる。かかる合成法により、上記一般式( 3)~(8)、及び(11)~(21)中のR 1 、R 2 及びR 3 の炭素数を増大させることで、重合モノマー や有機溶剤に対して高い溶解性を有する鉄錯 体を提供することができる。より具体的には 、Fe(X 1 ) 2 と溶媒の懸濁液にN-R 1 ,N‘-R 2 ,N“-R 3 -1,4,7-トリアザシクロノナン溶液を室温で加 て撹拌し、エーテル等を加えて静置するこ により調製することができる。

 次に本発明の製造方法について説明する。
 これから説明する化合物の幾つかには、な 説明を容易にするために、上述の化合物と ぼ同じであっても異なる番号を用いて説明 行った。具体的には、上記式(1)、(2)、(3)、( 4)、(5)、(6)、(7)、(8)は、これより説明される (9)、(10)、(11)、(12)、(18)、(19)、(13)及び(14)と ほぼ同じである。
 本発明の重合体の製造方法は、重合触媒と る鉄錯体として、鉄周辺に、窒素原子に特 の置換基を有するトリアザシクロノナン基 配位され、かつ特定のアニオン性官能基を する鉄錯体を使用して、これと重合開始剤 を組み合わせることで、ラジカル重合性モ マーの重合をリビングラジカル重合形式のA TRPで進行させることにより、その重合を定量 的に進行させることができると同時に、末端 に化学変換可能な機能性残基が結合したポリ マーが得られる。

 本発明の重合体の製造方法において使用 る鉄錯体は、以下の一般式(9)で表される鉄 合物

(式(9)中、Feは2価であり、X 1 はアニオン性官能基を示す。)
が、下記一般式(10)で表される環状アミン化 物を配位子として有することを特徴とする2 鉄錯体である。

(式(10)中、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。)
より詳しくは、一般式(11)~(17)構造の鉄錯体に より、ラジカル重合性モノマーを定量的に重 合させて、ATRP型重合体を製造することがで る。
 X 1 であるアニオン性官能基としては、フッ素イ オン、塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イ オン等のハロゲンイオン、R 4 COO-(R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)、又はR 4 SO 3 -(R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)のいずれかであれることが好ましい さらに、ハロゲンイオン、CH 3 COO-、C 6 H 5 COO-、CF 3 COO-、CH 3 SO 3 -、C 6 H 5 SO 3 -及びCF 3 SO 3 -からなる群より選ばれる1を示すことがより ましく、触媒活性の長期安定化のためには それが塩素イオン、臭素イオンであること 特に好ましい。

 一般式(10)で表される環状アミン化合物は、 置換基としてR 1 、R 2 及びR 3 を有するトリアザシクロノナン類である。こ こで、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示すが、本発明では全て メチル基である場合を除く。具体的には、
1)水素原子、
2)炭素数1~20のアルキル基、並びに
3)芳香環の水素原子が炭素数1~20のアルキル基 、炭素数1~20のアルコキシ基及び炭素数1~40の リオキシアルキレン基からなる群より選ば る1以上で置換されていてもよいベンジル基
からなる群より選ばれる1であることが好ま い。より好ましくは、
1)水素原子、
2)炭素数1~8のアルキル基、並びに
3)芳香環の水素原子が炭素数1~4のアルキル基 は炭素数1~4のアルコキシ基で置換されてい もよいベンジル基
からなる群より選ばれる1である。特に好ま くは、炭素数1~3のアルキル基、芳香環の水 原子が炭素数1~2のアルコキシ基で置換され いてもよいベンジル基であり、もっとも好 しくはエチル基、ベンジル基、4-メトキシベ ンジル基である。R 1 、R 2 及びR 3 は、同一でも異なっていてもよいが、すべて がメチル基である場合を除く。nは1~3の整数 示し、1又は2であることが好ましい。

 上記アルキル基としては、例えば、メチル 、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n- ンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n- シル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基等 の直鎖状アルキル基;i-プロピル基、i-ブチル 、i-ヘキシル基、i-オクタデシル基、sec-ブ ル基、tert-ブチル基等の分岐状アルキル基が 挙げられる。上記ベンジル基としては、例え ば、ベンジル基、4-メチルベンジル基、4-エ ルベンジル基、4-n-プロピルベンジル基、4- ソプロピルベンジル基、4-n-ブチルベンジル 、4-イソブチルベンジル基、4-t-ブチルベン ル基、4-メトキシベンジル基、4-エトキシベ ンジル基、4-n-プロポキシベンジル基、4-イソ プロポキシベンジル基、4-n-ブトキシベンジ 基、4-イソブトキシベンジル基、4-t-ブトキ ベンジル基、4-トリフルオロメチル基等が挙 げられる。
 本発明の製造方法で使用される鉄錯体の例 しては、具体的には、下記一般式(11)で表さ れる構造のものが挙げられる。

(式(11)中、Feは2価であり、X 2 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。A n- はアニオンを示す。nは1~3の整数を示す。)
 X 2 であるアニオン性官能基は、フッ素イオン、 塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオン等 のハロゲンイオン、R 4 COO-(R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)、又はR 4 SO 3 -(R4は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子 置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル 、炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル ル基で置換されていてもよいフェニル基を す。)のいずれかであれることが好ましい。 らに、ハロゲンイオン、CH3COO-、C 6 H 5 COO-、CF 3 COO-、CH 3 SO 3 -、C 6 H 5 SO 3 -及びCF 3 SO 3 -からなる群より選ばれる1を示すことがより ましく、触媒活性の長期安定化のためには それが塩素イオン、臭素イオンであること 特に好ましい。
 また、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示すが、本発明では全て メチル基である場合を除く。具体的には、
1)水素原子、
2)炭素数1~20のアルキル基、並びに
3)芳香環の水素原子が炭素数1~20のアルキル基 、炭素数1~20のアルコキシ基及び炭素数1~40の リオキシアルキレン基からなる群より選ば る1以上で置換されていてもよいベンジル基
からなる群より選ばれる1であることが好ま い。より好ましくは、
1)水素原子、
2)炭素数1~8のアルキル基、並びに
3)芳香環の水素原子が炭素数1~4のアルキル基 は炭素数1~4のアルコキシ基で置換されてい もよいベンジル基
からなる群より選ばれる1である。特に好ま くは、炭素数1~3のアルキル基、芳香環の水 原子が炭素数1~2のアルコキシ基で置換され いてもよいベンジル基であり、もっとも好 しくはエチル基、ベンジル基、4-メトキシベ ンジル基である。R 1 、R 2 及びR 3 は、同一でも異なっていてもよいが、すべて がメチル基である場合を除く。nは1~3の整数 示し、1又は2であることが好ましい。

 上記アルキル基としては、例えば、メチル 、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n- ンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n- シル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基等 の直鎖状アルキル基;i-プロピル基、i-ブチル 、i-ヘキシル基、i-オクタデシル基、sec-ブ ル基、tert-ブチル基等の分岐状アルキル基が 挙げられる。上記ベンジル基としては、例え ば、ベンジル基、4-メチルベンジル基、4-エ ルベンジル基、4-n-プロピルベンジル基、4- ソプロピルベンジル基、4-n-ブチルベンジル 、4-イソブチルベンジル基、4-t-ブチルベン ル基、4-メトキシベンジル基、4-エトキシベ ンジル基、4-n-プロポキシベンジル基、4-イソ プロポキシベンジル基、4-n-ブトキシベンジ 基、4-イソブトキシベンジル基、4-t-ブトキ ベンジル基、4-トリフルオロメチル基等が挙 げられる。
 また、下記一般式(12)で表される構造のもの が挙げられる。

(式(12)中、Feはいずれも2価であり、X 3 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。A n- はアニオンを示す。nは1~3の整数を表す。)
 上記一般式(11)及び(12)において、A n- は、アニオンを表す。具体例としては、下記 一般式(18)

(式(18)中、Feは2価であり、X 4 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。)
又は一般式(19)である。

(式(19)中、X 5 はアニオン性官能基を示し、mは0又は1であり 、mが0のときnは1であり、mが1のときnは1又は2 を示す。)
 式(18)中、X 4 は、ハロゲンイオン、シアノ基、フェニルチ オニル基、R 4 COO - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)、又はR 4 SO 3 - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)からなる群より選ばれる1であること 好ましく、ハロゲンイオンがより好ましく 塩素イオン、臭素イオンが特に好ましい。
 R 1 、R 2 及びR 3 は、上記一般式(3)の場合と同様である。nは1~ 3の整数を示し、1又は2であることが好ましい 。
 式(19)中、X 5 は、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン 、ヨウ素イオンであることが好ましく、塩素 イオン、臭素イオンであることが特に好まし い。
(式(19)中、X 5 はアニオン性官能基を示し、mは0又は1であり 、mが0のときnは1であり、mが1のときnは1又は2 を示す。)で表される鉄錯体である。
 さらに、一般式(13)で表される構造のものが 挙げられる。

(式(13)中、Feは2価であり、R 1 、R 2 及びR 3 は、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上 炭素数1~40の置換基を有していてもよいベン ル基を示し、X 6 はアニオン性官能基を示す。)
 R 1 、R 2 及びR 3 は、上記一般式(3)の場合と同様であるが、好 ましくは、イソプロピル基、シクロヘプチル 、フェニルエチル基等の2級アルキル基であ 置換基が特に好ましい。
 X 6 は、ハロゲンイオン、シアノ基、フェニルチ オニル基、R 4 COO - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)、又はR 4 SO 3 - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)からなる群より選ばれる1であること 好ましく、ハロゲンイオンがより好ましく 塩素イオン、臭素イオンが特に好ましい。
 さらに、一般式(14)で表される構造のものが 挙げられる。

(式(14)中、Feはいずれも2価であり、R 1 、及びR 2 は、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上 炭素数1~40の置換基を有していてもよいベン ル基を示し、X 7 はアニオン性官能基を示す。)
 一般式(11)は、具体的には、以下の一般式(11 ’)及び一般式(11”)で表される。

(式(11’)中、Feはいずれも2価であり、X 1 はフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、 ヨウ素イオンのいずれかを表し、X 7 はハロゲンイオン、CN、S-C 6 H 5 、R 4 COO - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)、又はR 4 SO 3 - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)からなる群より選ばれる1を表し、R 1 、R 2 及びR 3 は、式(5)の場合と同じである。)
このうち、X 1 、X 7 は塩素イオン又は臭素イオンであることが好 ましい。

(式(11”)中、Feはいずれも2価であり、X 1 はフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、 ヨウ素イオンのいずれかを表し、X 8 はハロゲンイオンを表し、R 1 、R 2 及びR 3 は、式(5)の場合と同じである。mは0又は1であ り、mが0のときnは1であり、mが1のときnは1又 2を示す。)
このうち、X 1 、X 8 は塩素イオン又は臭素イオンであることが好 ましい。
一般式(15)は、

(式(15)中、Feはいずれも2価であり、X 8 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基又はエチル基である場合 を除く。L 1 は、鉄原子に配位可能で鉄の価数を変化させ ない配位子を示し、A - はアニオンを示す。)
このうち、X 8 は、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン 、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン、R 4 COO - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアル キル基で置換されていてもよいフェニル基を 示す。)、又はR 4 SO 3 - (R 4 は炭素原子上の水素原子がハロゲン原子で置 換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、 炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のアルキル 基で置換されていてもよいフェニル基を示す 。)であることが好ましい。L 1 は、CH 3 CN、CO、Ar 3 P(Arは炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のア キル基で置換されていてもよいフェニル基 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のア キル基で置換されていてもよいナフチル基 示す。)、又は炭素数6~24の3級アミンである とが好ましい。
 上記各式のA - は、下記一般式(20)、一般式(21)で表されるも も好ましい。

(式(20)中、Feは2価であり、X 4 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基である場合を除く。)

(式(21)中、X 5 はアニオン性官能基を示し、mは0又は1であり 、mが0のときnは1であり、mが1のときnは1又は2 を示す。)
 また、PF 6 - 、SbF 6 - ,BF 4 - ,BrO 3 - ,NO 3 - ,Cl - ,Br - ,F - などの無機アニオンを使用してもよい。また 、有機系アニオンとして、CF 3 COO-,CH 3 COO-,C 6 H 5 COO-、長鎖アルキルスルホニル基、長鎖アル ルカルボキシ基などの脂肪族又は芳香族の アニオンを使用してもよい。

 一般式(16)で表されるカチオン型鉄錯体は、 その構造的な特徴として、2価の鉄イオンに 窒素原子にアルキル基等が結合したトリア シクロノナンキレートが配位し、その錯体 には少なくとも一つのハロゲン、シアノ基 、フェニルチオ基、メチルチオ基(S-CH 3 )やエチルチオ基(S-C 2 H 5 )等が結合したものである。
 一般式(16)は、以下の式で表される。

(式(16)中、Feは2価であり、X 9 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基又はエチル基である場合 を除く。D + は、カチオン性基を示す。)
 このうち、X 9 は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、 CN、S-C 6 H 5 又はS-R 5 (R 5 は炭素数1~4のアルキル基を示す。)のいずれ であることが好ましい。D + は一価のカチオンであり、アンモニウム、フ ォスフォニウム、スルフォニウムの如く有機 オニウムイオン、又はアルカリ金属イオンな どの一価のカチオンであればよい。2価の鉄 らなるカチオン性錯体又は有機オニウムカ オン、例えば、テトラエチルアンモニウム テトラブチルアンモニウム、テトラフェエ ルアンモニウム、トリメチルオクチルアン ニウム、トリメチルドデシルアンモニウム テトラエチルフォスフォニウム、テトラブ ルフォスフォニウム、テトラフェニルフォ フォニウム、又はトリフェニルスルフォニ ムであることが好適である。
 一般式(17)は、以下の式で表される。

(式(17)中、Feは2価であり、X 10 はアニオン性官能基を示し、R 1 、R 2 及びR 3 は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、又 芳香環上に炭素数1~40の置換基を有していて よいベンジル基を示す。ただし、R 1 、R 2 及びR 3 のすべてがメチル基又はエチル基である場合 を除く。L 2 は、鉄原子に配位可能で鉄の価数を変化させ ない配位子を示す。)
 このうち、X 10 は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、 CN、S-C 6 H 5 又はS-R 5 (R 5 は炭素数1~4のアルキル基を示す。)のいずれ であり、L 2 は、CH 3 CN、CO、Ar 3 P(Arは炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のア キル基で置換されていてもよいフェニル基 又は炭素原子上の水素原子が炭素数1~4のア キル基で置換されていてもよいナフチル基 示す。)、又は炭素数6~24の3級アミンである とが好ましい。

 上記一般式(17)で示される鉄錯体は、その構 造的な特徴として、2価の鉄イオンに窒素原 にアルキル基等が結合したトリアザシクロ ナンキレートが配位している。また、かか 鉄に結合しているハロゲンイオンとしては フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、 ウ素イオンであればよく、触媒活性の長期 定化のためには、それが塩素イオン、臭素 オンであることが好ましい。またシアノ基 フェニルチオ基、メチルチオ基、エチルチ 基などが結合しても良い。さらにかかる鉄 結合した配位子として、アセトニトリル、 酸化炭素であってもよい。
一般式(14)は、以下の式で表される。

(式(14)中、Feは2価であり、R 1 及びR 2 は、炭素数1~20の炭化水素基、又は芳香環上 炭素数1~40の置換基を有していてもよいベン ル基を示す。)
 上記一般式(11)~(17)で示される触媒を用いて ラジカル重合性モノマーの重合反応を行う 合、その重合反応において使用する有機ハ ゲン化合物(Z)としては、活性ハロゲン化合 、例えば、α-ハロゲノカルボニル化合物類 α-ハロゲノカルボン酸エステル化合物類、 ロゲン化スルホニル類、α-ハロゲノアルキ アレーン類又はポリハロゲン化アルカン化 物類であることが好ましい。より詳しくは 1,1-ジクロロアセトフェノン、1,1-ジクロロ セトン、1,1-ジブロモアセトフェノン、1,1-ジ ブロモアセトン、などのカルボニル類化合物 、又は、2-ブロモ-2-メチルプロパン酸エチル (2-ブロモ-2-メチルプロパン酸ンアントラセ ルメチル、2-クロロ-2,4,4-トリメチルグルタ 酸ジメチル、1,2-ビス(α-ブロモプロピオニ オキシ)エタンの如くエステル類、ベンゼン ルホン酸クロリド、p-トルエンスルホニル ロリド、などのハロゲン化スルホニル類、 ロロメチルベンゼン、ブロモメチルベンゼ 、ヨードメチルベンゼン、ジクロロメチル ンゼン、ジブロモメチルベンゼン、1-フェニ ルエチルクロライド、1-フェニルエチルブロ イド如くα-ハロゲノアルキルアレーン類又 四塩化炭素、四臭化炭素の如くポリハロゲ 類の化合物などがあげられる。

 有機ハロゲン化合物(Z)として、三つ以上 活性点を有する活性ハロゲン化合物を用い ことで、星型ポリマーを簡単に合成するこ できる。例としては、1,3,5-トリスクロロメ ルベンゼン、1,3,5-トリスブロモメチルベン ン、1,2,4,5-テトラキスクロロメチルベンゼ 、1,2,4,5-テトラキスブロモメチルベンゼン、 1,2,3,4,5,6-ヘキサキスクロロメチルベンゼン、 1,2,3,4,5,6-ヘキサキスブロモメチルベンゼン如 くα-ハロゲノアルキルアレーン類化合物など があげられる。

 また、上記活性ハロゲン化合物残基をポ マーの末端又は側鎖に有するポリマーを重 開始剤として用いることもできる。例えば ポリメタアクリレート類、ポリアクリレー 類、ポリアクリルアミド類、ポリスチレン 、ポリビニルピリジン類、ポリエチレング コール類、ポリエーテル類ポリマーの片末 又は両末端に上記活性ハロゲン化合物残基 例えば、α-ハロゲノカルボニル、α-ハロゲ カルボン酸エステル残基が結合したポリマ を好適に用いることができる。また、例え 、エポキシ樹脂類、ポリビニルアルコール 、多糖類などポリマーの如く側鎖に水酸基 持ち、その水酸基に活性ハロゲン化合物残 、例えばα-ハロゲノカルボン酸残基が結合 たポリマーを取り上げることもできる。こ ようなポリマーを重合開始剤として用いた 合、ブロックポリマー又は櫛型ポリマーを 易に得ることができる。

 上記一般式(11)~(17)で示される鉄錯体と、 機ハロゲン化合物とを組み合わせて使用す 場合には、錯体/有機ハロゲン化合物で表さ れるモル比が1~0.5範囲での割合で使用するこ ができるが、鉄触媒活性の高さから考えた 合、有機ハロゲン化合物が錯体より過剰で ることが好ましい。

 本発明の鉄錯体によるATRP重合系は、ラジ カル重合性モノマー全般に適応できる。ラジ カル重合性モノマーの例としては、(メタ)ア リレート類、(メタ)アクリアミド類、スチ ン類、ビニルピリジン類などを取りあげる とができる。より詳しくは、メチルメタク レート、エチルメタクリレート、ブチルメ クリレート、t-ブチルメタクリレート、ヘキ シルメタクリレート、シクロヘキシルメタク リレート、ベンジルメタクリレート、2-ヒド キシエチルメタクリレート、2-ジメチルア ノエチルメタクリレートなどのメタクリレ ト類モノマー、又は、メチルアクリレート エチルアクリレート、ブチルアクリレート t-ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレー ト、シクロヘキシルアクリレート、ベンジル アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレ ト、2-ジメチルアミノエチルアクリレート どのアクリレート類モノマー、又は、N,N-ジ チルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリル アミド、N-イソプロピルアクリルアミドなど クリルアミド類モノマー、又は、スチレン 2-クロロメチルスチレン、3-クロロメチルス チレン、4-クロロメチルスチレン、p-メトキ スチレン、p-ビニル安息香酸エステル、p-ビ ルフェニルスルホン酸エステルなどスチレ 類モノマー、又はp-ビニルピリジン、o-ビニ ルピリジンなどのビニルピリジン類モノマー を用いることができる。

 これらのモノマーは単独又は二種類以上の ノマーを同時に用いることもできる。本発 では、必要に応じて2種類以上のラジカル重 合性単量体を用いてランダム共重合やブロッ ク共重合することが可能である。
 また、二種類以上のモノマーを重合反応の 定時間毎に加えて使用することもできる。 一モノマーが消費されてから次のモノマー 加えることで、得られるポリマーをジブロ ク、又はトリブロック、あるいはそれ以上 ブロック共重合体の構造とすることができ 。

 ブロック共重合体での合成において、重 性モノマーをスチレン系と(メタ)アクリレ ト系から選定することで、その二つのポリ ー骨格からなるブロック共重合体を得るこ ができる。また、親水性モノマーと疎水性 ノマーを用いることで、親水性ポリマー骨 と疎水性ポリマー骨格からなる両親媒性ブ ック共重合体を得ることができる。

 また、ブロック共重合体を得る方法とし 、末端に活性ハロゲン残基を有するポリマ を開始剤として用いることで、重合性モノ ーを重合させることもできる。

 ブロック共重合体を得る際に、重合性モ マーとして塩基性モノマーを用いた場合、 基性ポリマー骨格と他のポリマー骨格から 成されるブロック共重合体を得ることがで る。

 重合性モノマーと有機ハロゲン化合物(Z) 混合し、重合を行う際、重合性モノマー/活 性ハロゲン化合物で表されるモル比は10~10000 あればよく、重合度をよりよく制御するた には、そのモル比50~1000であれば更に好まし い。

 本発明での重合開始剤系を用いて重合反 を行う際、反応温度を室温以上に設定でき が、30~120度の温度範囲で反応を行うことが ましい。

 反応時間は、1~48時間の範囲で十分である が、開始剤の種類、オレフィンモノマーの種 類及び反応温度によりその反応時間を短く又 は長く設定することができる。更に、反応時 間の設定は、得られる共重合体の分子量制御 に合わせて、設定することが望ましい。

 本発明における共重合反応においては、 媒は必要に応じて選択でき、使用してもし くても良い。溶媒なしでのバルク重合、又 溶媒存在下での溶液重合、又はアルコール 溶剤、水性媒体中の重合などの異なる重合 法が適用できる。

 本発明の重合反応に用いることができる 剤としては、ジクロロメタン、1,2-ジクロロ エタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリ ル、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、 ジクロロベンゼン、アニソール、シアノベン ゼン、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチル セトアミド、メチルエチルケトン、メタノ ル、エタノール、プロパノール、ブタノー 、ペンタノール、ヘキサノール等が挙げら る。

 また、水性媒体中での重合では、水と任 の割合で混合できる有機溶剤類であること 好ましい。具体的には、メタノール、エタ ール、アセトン、アセトニトリル、ジメチ アセトアミド、ジメチルホルムアミド、テ ラヒドロフランなどを取り上げることがで る。

 さらに、完全水中にて、水溶性モノマー 重合を行うこともできる。また、水中にて 水性モノマーを分散して重合を行うことも きる。

 本発明での上記一般式(11)~(17)で示された2 価鉄錯体中、特にイオン性鉄錯体は疎水性ポ リマーを溶解させない溶剤類、例えば、メタ ノール、水中に可溶である。このことから、 2核鉄錯体を用いた重合系では、その重合が 了後、得られた混合物をメタノール、アル ール、水などの媒体にて沈殿させることで 混合物中の鉄錯体はこれらの極性溶剤中に 解し、その一方、ポリマーは沈殿する。こ ような単純な方法により、2核鉄錯体を回収 そして濃縮し、再び重合触媒として用いる とができる。

 この回収において、他の錯化剤の使用は 切なしに、ポリマーにとっては貧溶剤とな 溶剤類、例えば、メタノール、エタノール 水などを用いることで好適に回収できる。

 回収した混合物を濃縮し、それをメタノー 、エタノール又は水などの溶剤で洗浄し、 溶性錯体だけを回収、純化することができ 。
 本発明の製造方法では、目的の重合体を製 した後、重合体を水及び/又は水溶性有機溶 媒で洗浄して鉄錯体を容易に回収することが でき、また回収した鉄錯体を用いて再度重合 を行う事ができる。回収及び使用の工程は複 数回繰り返すことも出来て有益である。

 本発明の製造方法においては、一般式(11) ~(17)で表される鉄錯体を用いることにより、 錯体など有毒な金属イオン系と比較し、環 汚染を抑制することもでき、また、得られ ポリマーの後処理過程も単純化することが きる。また、一般式(11)~(17)で表される鉄錯 は重合反応終了後、ポリマーを再沈殿させ 単純な作業過程で、錯体を効率的に溶剤相 溶かすことにより容易に回収され、これを 媒として再使用することができる。

 また本発明の製造方法においては、上記 錯体とラジカル発生剤を用いることで、他 配位子など要らず、重合反応系が極めて単 化となり、かつその鉄錯体の優れた触媒活 により、そのラジカル重合反応が定量的に 行する。また、得られた重合体は通常のラ カル重合では得られない活性末端を形成し いるので、定量重合後、他のラジカル重合 単量体を加えることで、ブロック共重合体 簡便に製造することができる。

 このような本発明の製造方法により得ら た重合体及びブロック共重合体は、種々の 途、例えばインキ、顔料分散、カラーフィ ター、フィルム、塗料、成形材料、接着剤 電気・電子品部材、医療用部材など広範に 用することができる。

 以下に実施例および比較例を以って本発 をより詳しく説明する。

 実施例中における測定は、以下の方法によ 行った。
(GPC測定法)
 高速液体クロマトグラフィー(東ソー株式会 社製HLC-8020)、UV及びRI検出器、TSKgel 2000xl+3000H xl+5000Hxl+guardcolumnHxl-H、溶媒THF、流速:1.0mL/min 温調:40度にて測定した。
(NMR測定)
  1 H-, 13 C-NMRの測定は、日本電子(株)製のLambda600にて った。
(実施例1)
<鉄錯体1の合成>
 20mLのシュレンク管に、無水FeCl 2  127mg(1.0mmol)とアセトニトリル3mLを加えて懸 させた溶液に、Journal of Chemical Society Dalton  Tans.1996年、353頁記載の方法に従い合成した1 ,4,7-トリエチル-1,4,7-トリアザシクロノナン213 mg(1.0mmol)のアセトニトリル溶液1mLを室温でゆ くりと加え、12時間撹拌した後、ジエチル ーテル5mLを加えて更に攪拌した。静置後、 澄み溶液をデカンテーションで除き、残渣 ジエチルエーテルで洗浄し、減圧乾燥後、31 3mgの微細な白色粉末状の鉄錯体1(式(33))を得 。収率92%。錯体の構造は 1 H-NMR、イオンスプレーマススペクトルにより 認した。
(ESI-MS)m/z:643.2(カチオン部分)、m/z:374.1(アニオ 部分)

(実施例2)
<鉄錯体2の合成>
 無水FeCl 2 の代わりに、無水FeBr 2  216mg(1.0mmol)を用いた以外は実施例1に従い、 施し、微細白色粉末の錯体2(式(34))を得た( 量:410mg、収率96%)。
錯体の構造は 1 H-NMR、イオンスプレーマススペクトルにより 認した。
(ESI-MS)m/z:757.1(カチオン部分)、m/z:292.7(アニオ 部分)

(実施例3)
<鉄錯体3の合成>
 20mLシュレンク管に、無水FeCl 2  127mg(1.0mmol)とTHF5mLを加えて懸濁させた溶液 、Organometallics 1996年、15巻、491頁記載の方法 に従い合成した1,4,7-トリベンジル-1,4,7-トリ ザシクロノナン399mg(1.0mmol)のTHF溶液5mLを室温 でゆっくりと加え、10時間撹拌した。静置後 上澄み溶液をデカンテーションで除き、残 をジエチルエーテルで2回洗浄し、減圧乾燥 後、500mgの白色粉末状の鉄錯体3(式(35))を得た 。イオンスプレーマススペクトル測定の結果 、錯体3はカチオン型二核鉄錯体であった。(E SI-MS)m/z:1015.3(カチオン部分)

(実施例4)
<鉄錯体4の合成>
 無水FeCl 2 の代わりに、無水FeBr 2  216mg(1.0mmol)を用いた以外は実施例3に従い実 し、白色粉末状の錯体4(式(36))を得た(収量:4 10mg、収率96%)。
(ESI-MS)m/z:1147.2(カチオン部分)、m/z:292.7(アニオ ン部分)

(実施例5)
<錯体5の合成>
(1-n-オクチル-4,7-ジメチル-1,4,7-トリアザシク ノナンの合成)
 冷却管を取り付けた200mLの三口フラスコに Journal of Chromatography A 2002年、954巻、247頁 載の方法に従い合成した4級アンモニウム塩( A)9.96g(30mmol)、ホルマリン水溶液50mL、98%蟻酸50 mLを加え、攪拌しながら90度までゆっくりと 熱し、さらに90度で18時間攪拌した。放冷後 反応混合物を氷浴にて0度に冷却した後、48% 水酸化ナトリウム水溶液にて反応混合物のpH 14以上とした。反応混合物を室温にまで温 、100mLのヘキサンにより有機物の抽出を三回 行い、ヘキサン溶液を無水硫酸ナトリウムで 乾燥した。濃縮後、得られた粗生成物を蒸留 により精製し、6.46gの1-n-オクチル-4,7-ジメチ -1,4,7-トリアザシクロノナンを得た。(24mmol 収率80%)。

(鉄錯体5の合成)
 20mLのシュレンク管に、無水FeCl 2 50mg(0.39mmol)とアセトニトリル10mLを加えて懸濁 させた溶液に、1-n-オクチル-4,7-ジメチル-1,4,7 -トリアザシクロノナン127mg(0.47mmol)を加え、2 間撹拌した後、減圧下で反応溶液の体積が2 mL程度になるまで濃縮した後、20mLのジエチル エーテルを加えると、白色の固体が沈殿した 。この固体をジエチルエーテル10mLで洗浄し 鉄錯体5(式(38))を得た(144mg)。錯体の構造は 1 H-NMR、およびイオンスプレーマススペクトル より確認した。
(ESI-MS)m/z:755.3(カチオン部分)、m/z:160.8(アニオ 部分)

(実施例6)
<ポリメタクリル酸メチルの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体3(21.1mg、0.02mmol)、2-ブロモイソブタン 酸エチル(7.8mg、0.04mmol)を入れ、メタクリル酸 メチル(2.0g、20mmol)を加えた。容器を密閉して 80度の油浴で20時間攪拌した。転化率は95%以 であり、生成したポリメタクリル酸メチル(p MMA)は、Mn=59,000、Mw/Mn=1.9であった。
(実施例7)
<ポリメタクリル酸メチルの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体4(28.9mg、0.02mmol)、2-ブロモイソブタン 酸エチル(7.8mg、0.04mmol)を入れ、メタクリル酸 メチル(2.0g、20mmol)を加えた。容器を密閉して 80度の油浴で55時間攪拌した。転化率は95%以 であり、生成したポリメタクリル酸メチル(p MMA)は、Mn=99,000、Mw/Mn=1.4であった。
(実施例8)
<ポリスチレンの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体5(16.7mg、0.02mmol)、1-クロロエチルベン ゼン(5.6mg、0.04mmol)を入れ、スチレン(1.02g、10m mol)を加えた。容器を密閉して120度の油浴で20 時間攪拌した。転化率は93%であり、生成した ポリスチレン(pSt)は、Mn=20,000、Mw/Mn=1.2であっ 。
(実施例9)
<水性媒体中でのポリメタクリル酸(N,N-ジメ チルアミノエチル)の合成>
 20mLのシュレンク管に攪拌子、鉄錯体5(4.2mg 0.005mmol)を入れ、アルゴン気流下で脱気した 留水0.4mLとメタノール0.4mLを加え錯体を溶解 させた後、トリクロロ酢酸メチル(1.77mg、0.01m mol)とメタクリル酸(N,N-ジメチルアミノエチル )(DMAEMA)(786mg、5mmol)の混合物を加えて、2回凍 脱気を行い、アルゴンで常圧に戻した。容 を密閉して80度の油浴に浸け15時間攪拌した 転化率は81%であり、生成したポリメタクリ 酸(N,N-ジメチルアミノエチル)(pDMAEMA)は、Mn=2 1,000、Mw/Mn=1.6であった。
(実施例10)
<水性媒体中でのポリメタクリル酸(N,N-ジメ チルアミノエチル)の合成>
 蒸留水0.4mLとメタノール0.4mLの代わりに、水 0.8mLを用いた以外は実施例9に従い、重合反応 を実施した。転化率は69%であり、生成したポ リメタクリル酸(N,N-ジメチルアミノエチル)(pD MAEMA)は、Mn=20,000、Mw/Mn=1.6であった。

(実施例11)
<鉄錯体6の合成>
 20mLのシュレンク管に、無水FeCl 2 26mg(0.2mmol)とアセトニトリル10mLを加えて懸濁 せた反応溶液に、Journal of American Chemical S ociety 1996年、118巻、11575頁記載の方法に従い 成した1,4,7-トリス(4-メトキシベンジル)-1,4,7 -トリアザシクロノナン100mg(0.2mmol)を加え、14 間撹拌した後、減圧下で反応溶液の体積が5 mL程度になるまで濃縮した。15mLのジエチルエ ーテルを加えると、白色の固体が沈殿した。 この固体をアセトニトリル/ジエチルエーテ から再結晶して、2種類の混合物として鉄錯 6(式(39)及び(40))を得た(86mg)。錯体の構造は 結晶X線構造解析により確認した。それらを 1、図2に示す。

(実施例12)
<鉄錯体7の合成>
 20mLのシュレンク管に、無水FeBr 2 108mg(0.50mmol)とアセトニトリル10mLを加えて懸 させた反応溶液に、Journal of American Chemical Society 1996年、118巻、11575頁記載の方法に従 合成した1,4,7-トリス(4-メトキシベンジル)-1,4 ,7-トリアザシクロノナン270mg(0.55mmol)を加え、 2時間撹拌した後、15mLのジエチルエーテルを えると、白色の固体が沈殿した。この固体 アセトニトリル/ジエチルエーテルから再結 晶して、鉄錯体7(式(41))を得た(240mg、0.17mmol、 収率68%)。錯体の構造は単結晶X線構造解析に り確認した。それを図3に示す。

(実施例13)
<ポリスチレンの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体6(12mg、0.01mmol)、1-クロロエチルベン ン(2.8mg、0.02mmol)を入れ、スチレン(0.52g、5mmol )を加えた。容器を密閉して120度の油浴で20時 間攪拌した。転化率は92%であり、生成したポ リスチレン(pSt)は、Mn=21,000、Mw/Mn=1.23であった 。
(実施例14)
<触媒回収、再利用実験>
〔重合1回目〕
 窒素雰囲気下で、シュレンク管に攪拌子、 錯体6(24mg、0.02mmol)、1-クロロエチルベンゼ (5.6mg、0.04mmol)を入れ、スチレン(1.04g,10mmol)、 内部標準としてベンジルメチルエーテル(0.15g 、1.25mmol)を加えた。容器を密閉して120度の油 浴で26時間攪拌した。転化率は95%以上であり 生成したポリスチレン(pSt)は、Mn=23,000、Mw/Mn =1.27であった。
〔ポリマーと触媒の分離及び回収〕
 上記重合1回目で合成したポリマーを4mLのTHF に溶解させて、20mLのメタノールに滴下して 沈殿精製を行った。沈殿したポリマーと、 媒を含む溶液部分をそれぞれ減圧下で乾燥 せると、ほぼ無色の精製ポリマーが1.0g得ら 、鉄錯体を含む溶液部分からは黄色の32mgの 固体が回収された。
〔重合2回目〕
 上記回収された鉄錯体を含む黄色の固体32mg を用いた以外は、重合1回目と同様の条件で 合反応を行った。重合は速やかに進行し、32 時間後の転化率は95%以上であり、生成したポ リスチレン(pSt)は、Mn=15,000、Mw/Mn=1.18であった 。

 図4Aと図4Bに、重合反応で得られた物のGPCチ ャートを示す。重合一回目が図4Aで示され、 合2回目が図4Bで示される。このように、本 明の製造方法によれば、回収した鉄錯体を 度重合に使用でき、再利用したものであっ も好適に重合が可能であった。
(実施例15)
<ポリスチレンの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体6(62mg、0.05mmol)、1-クロロエチルベン ン(13mg、0.1mmol)を入れ、スチレン(0.52g、5mmol) 加えた。容器を密閉して120度の油浴で20時 攪拌した。転化率は95%以上であり、生成し ポリスチレン(pSt)は、Mn=6,000、Mw/Mn=1.36であっ た。
(実施例16)
<ポリスチレンの合成>
 鉄錯体6の使用量を15mg(0.0125mmol)とした以外 実施例15に従い、実施した。転化率は95%以上 であり、生成したポリスチレン(pSt)は、Mn=5,00 0、Mw/Mn=1.26であった。このように、本発明の 造方法によれば、触媒量を低減させても重 制御性を損なうことなく、定量的な重合が 能であった。
(実施例17)
<ポリスチレンとポリメタクリル酸メチル ブロック共重合体の合成>

 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体6(15mg、0.0125mmol)、1-クロロエチルベン ゼン(14mg、0.1mmol)を入れ、スチレン(0.52g、5mmol )を加えた。容器を密閉して120度の油浴で20時 間攪拌した。転化率は95%以上であり、生成し たポリスチレン(pSt)は、Mn=5,000、Mw/Mn=1.26であ た。この反応混合物に、メタクリル酸メチ (3.0g、30mmol)とトルエン(2mL)を添加し、更に10 0度で24時間攪拌した。このときのモノマーの 転化率は95%以上であり、生成したポリマーは Mn=53,000、Mw/Mn=1.38であった。この反応混合物 THF(4mL)/MeOH(60mL)にて再沈殿精製、乾燥を行い ロックポリマー(pSt-b-pMMA)を単離した。
図5はブロック共重合前後のポリマーのGPCチ ートである。ブロック共重合進行の結果、 リマーは高分子量側へ大きくシフトした。 のように本発明の製造方法によれば、ブロ ク共重合体を容易に合成することが可能で った。
(実施例18)
<得られたポリマーをマクロイニシエータ としたブロック共重合体の合成>
 窒素雰囲気下、シュレンク管に鉄錯体6(7mg 0.006mmol)、実施例17により合成したマクロイ シエーター(225mg、0.0042mmol)、及びTHF(0.5mL)を え、溶解させた。そこにスチレン(1.04g、10mmo l)を加えた。容器を密閉して120度の油浴で20 間攪拌した。このときモノマーの転化率は95 %以上であり、生成したトリブロックポリマ (pSt-b-pMMA-b-pSt)は、Mn=91,000、Mw/Mn=1.86であった

 ブロック共重合前後のGPCチャートを図6に示 す。右はブロック共重合前、左はブロック共 重合後のGPCチャートである。このように本発 明の製造方法によれば、ジブロック共重合体 をマクロイニシエーターとしてトリブロック 共重合体を容易に合成することが可能であっ た。(実施例19)
<ポリメタクリル酸メチルの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体7(2.8mg、0.002mmol)、2-ブロモイソブタン 酸エチル(3.9mg、0.02mmol)を入れ、メタクリル酸 メチル(0.5g、5mmol)を加えた。容器を密閉して1 00度の油浴で2時間攪拌した。転化率は83%であ り、生成したポリメタクリル酸メチル(pMMA)は 、Mn=21,000、Mw/Mn=1.3であった。
(実施例20)
<ポリメタクリル酸メチルの合成>
 2-ブロモイソブタン酸エチルの代わりに、 ブロモ酢酸エチル(5.2mg、0.02mmol)を用いた以 は実施例19に従い、重合反応を実施した。転 化率は90%であり、生成したポリメタクリル酸 メチル(pMMA)は、Mn=26,000、Mw/Mn=1.23であった。
(実施例21)
<ポリアクリル酸ブチルの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体7(6.0mg、0.004mmol)、2-ブロモイソブタン 酸エチル(7.8mg、0.04mmol)、を入れ、アクリル酸 ブチル(1.3g、10mmol)、を加えた。容器を密閉し て100度の油浴で50時間攪拌した。転化率は51% あり、生成したポリアクリル酸ブチル(pBA) 、Mn=18,000、Mw/Mn=1.3であった。
(実施例22)
<ポリアクリル酸ブチルの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体7(16.0mg、0.01mmol)、ジブロモ酢酸エチ (4.9mg、0.02mmol)、を入れ、アクリル酸ブチル(0 .64g、5mmol)、を加えた。容器を密閉して100度 油浴で50時間攪拌した。転化率は82%であり、 生成したポリアクリル酸ブチル(pBA)は、Mn=21,0 00、Mw/Mn=1.23であった。
(合成例1)
<鉄錯体8の合成>
 シュレンク管に、FeBr 2 (270mg、1.25mmol)とアセトニトリル9mLを加えて懸 濁させた反応溶液に1,4,7-トリメチル-1,4,7-ト アザシクロノナン(220mg、1.28mmol)のアセトニ リル(1mL)溶液を加え、2時間撹拌した後、濾 で不溶物を除去した。10mLのエーテルを乗せ と、白色の固体が沈殿した。この固体をア トニトリル/エーテルから再結晶して、258mg 鉄錯体8(式(42))を得た(収率53%)。

(比較例1)
<錯体8を用いたポリメタクリル酸メチルの 成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体8(3.0mg、0.004mmol)、ジブロモ酢酸エチ (9.8mg、0.04mmol)、を入れ、メタクリル酸メチ (1.0g,10mmol)を加えた。容器を密閉して100度の 浴で20時間攪拌した。転化率は72%であり、 リメタクリル酸メチル(pMMA)は、Mn=16,000、Mw/Mn =1.40であった。
(比較例2)
<錯体8を用いたポリアクリル酸ブチルの合 >
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体8(15.0mg、0.02mmol)、ジブロモ酢酸エチ (9.8mg、0.04mmol)、を入れ、アクリル酸ブチル(1 .28g、10mmol)を加えた。容器を密閉して100度の 浴で50時間攪拌した。転化率は79%であり、 成したポリアクリル酸ブチル(pBA)は、Mn=21,000 、Mw/Mn=1.62であった。
 このように、本発明の製造方法によれば、4 -メトキシベンジル基のような脂溶性の高い 換基を配位子に導入することにより、鉄錯 が高い触媒活性を有し、反応時間の短縮や 媒量の低減、重合制御性の向上が可能であ た。
 表2に1,4,7-トリス(4-メトキシベンジル)-1,4,7- リアザシクロノナンを配位子にもつ鉄錯体 触媒とした重合反応の結果を示す。

(実施例23)
<鉄錯体9の合成>
 20mLのシュレンク管に、無水FeCl 2  50mg(0.39mmol)とアセトニトリル10mLを加えて懸 させた反応溶液に、Macromolecules 2000年、33巻 、1986頁に記載の方法に従い合成した1,4,7-ト ブチル-1,4,7-トリアザシクロノナン140mg(0.47mmo l)を加え、2時間撹拌した後、減圧下で反応溶 液の体積が2mL程度になるまで濃縮した後、20m Lのジエチルエーテルを加えると、白色の固 が沈殿した。この固体をジエチルエーテル10 mLで洗浄し、2種類の混合物として鉄錯体9(式( 43)、(44))を得た(132mg)。錯体の構造は1H-NMR、お よびイオンスプレーマススペクトルにより確 認した。
(式(43)のESI-MS)m/z:811.4(カチオン部分)、m/z:160.8( アニオン部分)
(式(44)のESI-MS)m/z:1236.5(カチオン部分)、m/z:160.8 (アニオン部分)

(実施例24)
<ポリスチレンの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体9(22.4mg、0.02mmol)、1-クロロエチルベン ゼン(5.6mg、0.04mmol)を入れ、スチレン(1.04g、10m mol)を加えた。容器を密閉して120度の油浴で20 時間攪拌した。転化率は95%以上であり、生成 したポリスチレン(pSt)は、Mn=20,000、Mw/Mn=1.21で あった。
(実施例25)
<ポリメタクリル酸ブチルの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体9(22.4mg、0.02mmol)、トリクロロ酢酸メ ル(8.9mg、0.05mmol)を入れ、メタクリル酸ブチ (1.42g、10mmol)を加えた。容器を密閉して100度 油浴で3時間攪拌した。転化率は95%以上であ り、生成したポリメタクリル酸ブチル(pBMA)は 、Mn=31,000、Mw/Mn=1.28であった。
(実施例26)
<ポリスチレンとポリメタクリル酸メチル ブロック共重合体の合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体9(11.2mg、0.01mmol)、1-クロロエチルベン ゼン(14.0mg、0.1mmol)を入れ、スチレン(0.5g、5mmo l)を加えた。容器を密閉して120度の油浴で16 間攪拌した。転化率は95%以上であり、生成 たポリスチレン(pSt)は、Mn=6,000、Mw/Mn=1.22であ った。この反応混合物に、メタクリル酸メチ ル(4.0g、40mmol)とトルエン(4mL)を添加し、更に1 00度で24時間攪拌した。このときのモノマー 転化率は95%以上であり、生成したポリマー 、Mn=48,000、Mw/Mn=1.42であった。この反応混合 をTHF(4mL)/MeOH(60mL)にて再沈殿精製、乾燥を行 いブロックポリマー(pSt-b-pMMA)を単離した。
 図7はブロック共重合前後のポリマーのGPCチ ャートである。ブロック共重合進行の結果、 ポリマーは高分子量側へ大きくシフトした。 このように本発明の製造方法によれば、ブロ ック共重合体を容易に合成することが可能で あった。
 表3に、1,4,7-トリブチル-1,4,7-トリアザシク ノナンを配位子にもつ鉄錯体を触媒とした 合反応の結果を示す。

(実施例27)
<錯体10の合成>
 20mLのシュレンク管に、無水FeCl 2  70mg(0.55 mmol)とアセトニトリル5mLを加え、Ino rganic Chimica Acta 1994年、216巻、89頁記載の方 により合成した、1,4,7-トリイソプロピル-1,4 ,7-トリアザシクロノナン155mg(0.60 mmol)を加え 42時間撹拌した後、析出した白色結晶を、TH F/塩化メチレンを加えて溶解させ、ジエチル ーテルを加え再結晶することにより、鉄錯 10(式(45))を得た(75mg、0.20mmol、収率36%)。錯体 の構造は単結晶X線構造解析により確認した それを図8に示す。

(実施例28)
<鉄錯体11の合成>
 無水FeCl 2 の代わりに、無水FeBr 2 (120mg、0.47 mmol)を用いた以外は、実施例27に い、合成反応を実施した。錯体の構造は単 晶X線構造解析により確認した。それを図9に 示す。

(実施例29)
<錯体12の合成>
(1,4,7-トリス-(1-フェニルエチル)-1,4,7-トリア シクロノナンの合成)
 冷却管を取り付けた50mLのフラスコに、トリ アザシクロノナン250mg(1.9mmol)、1-クロロエチ ベンゼン1mL (7.6mmol)、炭酸カリウム1.31 g (9. 5mmol)をアセトニトリル(7mL)に懸濁させ、16時 還流を行った。反応溶液にエーテルを加え セライトにて濾過し、得られた濾液を減圧 溶媒留去すると、1,4,7-トリス-(1-フェニルエ ル)-1,4,7-トリアザシクロノナンが淡黄色液 として得られた(699mg、収率82%)。錯体合成に 、これをさらに精製することなく用いた。

(鉄錯体12の合成)
 20mLのシュレンク管に、無水FeCl 2 70 mg(0.55 mmol)とアセトニトリル5 mLを加えて 濁させた溶液に、1,4,7-トリス-(1-フェニルエ チル)-1,4,7-トリアザシクロノナン220 mg(0.5 mmo l)のTHF溶液(1mL)を加え、14時間撹拌した後、10m Lのジエチルエーテルを加えると、黒色の沈 が生じた。この上澄みをとり、減圧下濃縮 行うと、淡黄色の固体がえられた。ここれ ヘキサンで洗浄した後、塩化メチレン/ヘキ ンより再結晶を行い、鉄錯体12(式(48))を得 (195 mg, 収率53%)。錯体の構造はX線結晶構造 析により明らかとした。それを図10に示す

(実施例30)
<錯体13の合成>
(1,4,7-トリシクロヘプチル-1,4,7-トリアザシク ノナンの合成)
 冷却管を取り付けた50mLのフラスコに、トリ アザシクロノナン120mg(0.9mmol)、シクロヘプチ ブロミド0.58mL(4.2mmol)、炭酸カリウム690mg(5mmo l)をアセトニトリル(5mL)に懸濁させ、24時間還 流を行った。反応溶液にジエチルエーテルを 加え、セライトにて濾過し、得られた濾液を 減圧下溶媒留去すると、1,4,7-トリシクロヘプ チル-1,4,7-トリアザシクロノナンが、淡黄色 体として得られた(75mg、収率19%)。錯体合成 は、これをさらに精製することなく用いた

(鉄錯体13の合成)
 20mLのシュレンク管に、無水FeCl 2 21mg(0.16 mmol)とアセトニトリル3mLを加えて懸 させた溶液に、1,4,7-トリシクロヘプチル-1,4, 7-トリアザシクロノナン75mg(0.18 mmol)のTHF溶液 (1mL)を加え、14時間撹拌した後、10 mLのジエ ルエーテルを加えると、黒色の沈殿が生じ 。この上澄みをとり、減圧下濃縮を行うと 淡黄色の固体がえられた。これをヘキサン 洗浄し、鉄錯体13(式(50))を得た(65 mg, 収率67 %)。錯体の構造はX線結晶構造解析により明ら かとした。それを図11に示す。

                                                (50)

(実施例31)
<ポリスチレンの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体10(17mg、0.04mmol)、1-クロロエチルベン ン(5.6mg、0.04 mmol)を入れ、スチレン(1.04g、10  mmol)を加えた。容器を密閉して120度の油浴 重合反応を実施した。5時間後の転化率は95% 上であり、生成したポリスチレン(pSt)は、Mn =25,000、Mw/Mn=1.23であった。
(実施例32)<ポリスチレンの合成>
 鉄錯体10の使用量を3mg(0.0008 mmol)とした以外 は実施例31に従い、実施した。24時間後の転 率は74%であり、生成したポリスチレン(pSt)は 、Mn=16,000、Mw/Mn=1.15であった。
(実施例33)<ポリメタクリル酸メチルの合成& gt;
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体11(3.8mg、0.008mmol)、2-ブロモイソブタ 酸エチル(7.8mg、0.04mmol)を入れ、メタクリル メチル(1.0g、10mmol)を加えた。容器を密閉し 100度の油浴で3時間攪拌した。転化率は90%で り、生成したポリメタクリル酸メチル(pMMA) 、Mn=25,000、Mw/Mn=1.28であった。
(実施例34)<ポリメタクリル酸メチルの合成& gt;
 2-ブロモイソブタン酸エチルの代わりに、 ブロモ酢酸エチル(9.8mg、0.04mmol)を用いた以 は実施例33に従い、重合反応を実施した。転 化率は95%以上であり、生成したポリメタクリ ル酸メチル(pMMA)は、Mn=26,000、Mw/Mn=1.23であっ 。
(実施例35)<ポリアクリル酸ブチルの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体11(19.0mg、0.04mmol)、ジブロモ酸エチル( 9.8mg、0.04mmol)を入れ、アクリル酸ブチル(1.3g 10mmol)を加えた。容器を密閉して100度の油浴 攪拌した。20時間後の転化率は82%であり、 成したポリアクリル酸ブチル(pBA)は、Mn=37,000 、Mw/Mn=1.22であった。
(実施例36)
<ポリアクリル酸ブチルの合成>
 鉄錯体11の使用量を3.5 mg(0.007mmol)とした以 は実施例35に従い、実施した。20時間後の転 率は66%であり、生成したポリアクリル酸ブ ル(pBA)は、Mn=24,000、Mw/Mn=1.22であった。
(実施例37)
<ポリスチレンの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体12(23 mg、0.04mmol)、1-クロロエチルベ ゼン(5.6mg、0.04 mmol)を入れ、スチレン(1.04g、 10 mmol)を加えた。容器を密閉して120度の油浴 で重合反応を実施した。4時間後の転化率は93 %であり、生成したポリスチレン(pSt)は、Mn=25, 000、Mw/Mn=1.19であった。
(実施例38)
<ポリスチレンの合成>
 鉄錯体12の使用量を11 mg(0.02 mmol)とした以 は実施例37に従い、実施した。16時間後の転 率は95%以上であり、生成したポリスチレン( pSt)は、Mn=24,000、Mw/Mn=1.18であった。
(実施例39)
<ポリスチレンの合成>
 鉄錯体12の使用量を11 mg(0.02 mmol)とし、1-ク ロロエチルベンゼンの使用量を17.5mg(0.124mmol) した以外は実施例37に従い、実施した。16時 間後の転化率は95%以上であり、生成したポリ スチレン(pSt)は、Mn=7,000、Mw/Mn=1.18であった。
(実施例40)
<ポリスチレンとポリメタクリル酸メチル ブロック共重合体の合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体12(11 mg、0.02mmol)、1-クロロエチルベ ゼン(11.7mg、0.083mmol)を入れ、スチレン(1.04g、 10mmol)を加えた。容器を密閉して120度の油浴 重合反応を実施した。16時間後の転化率は95% 以上であり、生成したポリスチレンはMn=13,000 、Mw/Mn=1.16であった。この反応混合物に、メ クリル酸メチル(4.5g、45mmol)とトルエン(4.5mL) 添加し、更に100度で24時間攪拌した。この きのモノマーの転化率は95%以上であり、生 したポリマーはMn=64,000、Mw/Mn=1.35であった。 の反応混合物をTHF(4mL)/MeOH(60mL)にて再沈殿精 製、乾燥を行いブロックポリマー(pSt-b-pMMA)を 単離した。

 ブロック共重合前後のGPCチャートを図12に す。右はブロック共重合前、左はブロック 重合後のGPCチャートである。このように本 明の製造方法によれば、ブロック共重合体 容易に合成することが可能であった。
(実施例41)
<ポリスチレンの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体13(22 mg、0.04mmol)、1-クロロエチルベ ゼン(5.6mg、0.04mmol)を入れ、スチレン(1.04g、10 mmol)を加えた。容器を密閉して120度の油浴で 合反応を実施した。9時間後の転化率は95%以 上であり、生成したポリスチレン(pSt)は、Mn=2 8,000、Mw/Mn=1.10であった。

(実施例42)
<鉄錯体14の合成>
 20mLのシュレンク管に、無水FeCl 2 50mg(0.39mmol)とアセトニトリル10mLを加えて懸濁 させた反応溶液に、Zeitschrift fuer anorganische  und allgemeine Chemie 1998年、608巻、60頁記載の 法に従い合成した1,4-ジメチル-1,4,7-トリアザ シクロノナン80mg(0.47mmol)を加え、2時間撹拌し た後、減圧下で反応溶液の体積が2mL程度にな るまで濃縮した。20mLのジエチルエーテルを えると、白色の固体が沈殿した。この固体 アセトニトリル/ジエチルエーテルから再結 して、鉄錯体(式(51))を白色結晶として得た( 80mg、収率72%)。錯体の構造はX線結晶構造解析 により確認した。それを図13に示す。

(実施例43)
<ポリスチレンの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体14(11.3 mg、0.02mmol)、1-クロロエチルベ ンゼン(5.6mg、0.04mmol)を入れ、スチレン(1.04g、 10mmol)を加えた。容器を密閉して120度の油浴 重合反応を実施した。20時間後の転化率は93% であり、生成したポリスチレン(pSt)は、Mn=20,0 00、Mw/Mn=1.55であった。
(実施例44)
<ポリメタクリル酸エチルの合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体14(11.3mg、0.02mmol)、トリクロロ酢酸メ ル(8.9mg、0.05mmol)を入れ、メタクリル酸エチ (1.14g、10mmol)を加えた。容器を密閉して100度 の油浴で3時間攪拌した。転化率は95%以上で り、生成したポリメタクリル酸エチル(pEMA) 、Mn=24,000、Mw/Mn=1.28であった。
(実施例45)<ポリメタクリル酸メチルとポリ チレンのブロック共重合体の合成>
 窒素雰囲気下で、スリ付き試験管に攪拌子 鉄錯体14(22.6mg、0.04mmol)、トリクロロ酢酸メ ル(17.8mg、0.1mmol)を入れ、メタクリル酸メチ (0.5g、5mmol)を加えた。容器を密閉して100度 油浴で3時間攪拌した。転化率は95%以上であ 、生成したポリメタクリル酸メチル(pMMA)は Mn=6,000、Mw/Mn=1.24であった。この反応混合物 、スチレン(4.2g、40mmol)とトルエン(4mL)を添 し、更に100度で24時間攪拌した。このときの モノマーの転化率は90%であり、生成したポリ マーはMn=46,000、Mw/Mn=1.56であった。この反応 合物をTHF(4mL)/MeOH(60mL)にて再沈殿精製、乾燥 行いブロックポリマー(pMMA-b-pSt)を単離した

 ブロック共重合前後のGPCチャートを図14に す。右はブロック共重合前、左はブロック 重合後のGPCチャートである。このように本 明の製造方法によれば、ブロック共重合体 容易に合成することが可能であった。
表5に、1,4-ジメチル-1,4,7-トリアザシクロノナ ンを配位子にもつ鉄錯体を触媒とした重合反 応の結果を示す。

本発明により、ラジカル重合性単量体を重 合する重合体の製造方法に有用な鉄錯体、及 び該鉄錯体を用いた重合体の製造方法が提供 される。具体的には、新規鉄錯体、該鉄錯体 を重合触媒としたラジカル重合開始剤の存在 下での重合体の製造方法、該重合体の重合後 のブロック共重合体の製造方法、及び鉄錯体 を簡便に回収する方法が提供される。これら により、ラジカル重合性単量体から末端に化 学変換可能な官能基を有する重合体およびブ ロック共重合体を製造する方法、及び、重合 反応後、鉄錯体を溶剤中に高い回収率で回収 する方法が可能となる。