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Patent Searching and Data


Title:
LOOP HEAT PIPE TYPE HEAT TRANSFER DEVICE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/153071
Kind Code:
A1
Abstract:
A loop heat pipe type heat transfer device achieves high heat transfer performance and compact, low profile, and light weight characteristics at the same time. The heat transfer device has an evaporator, a vapor pipe for guiding gas phase working fluid from the evaporator, a condenser connected to the vapor pipe, and a liquid pipe for causing liquid phase working fluid to flow back from the condenser to the evaporator. A wick of a fiber structure layer body formed from layers of nonwoven cloth is placed inside the evaporator.

Inventors:
OBARA KAZUYUKI (JP)
MAKINO HIROYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/060699
Publication Date:
December 18, 2008
Filing Date:
June 11, 2008
Export Citation:
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Assignee:
ASAHI KASEI FIBERS CORP (JP)
OBARA KAZUYUKI (JP)
MAKINO HIROYUKI (JP)
International Classes:
F28D15/02
Foreign References:
JP2007107784A2007-04-26
JP2002206882A2002-07-26
JP2000255645A2000-09-19
JPH10268651A1998-10-09
JP2005152769A2005-06-16
JP2004324906A2004-11-18
JP2003042675A2003-02-13
JP2002372387A2002-12-26
JPH10246583A1998-09-14
JP2004324906A2004-11-18
Other References:
"Maku Bunri Gijutsu", 10 August 1990, IPC SHUPPAN
See also references of EP 2157391A4
Attorney, Agent or Firm:
AOKI, Atsushi et al. (Toranomon 37 Mori Bldg.5-1, Toranomon 3-chome,Minato-k, Tokyo 23, JP)
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Claims:
 蒸発器と、該蒸発器から気相の作動流体を導く蒸気管と、該蒸気管と接続された凝縮器と、該凝縮器から液相の作動流体を蒸発器に還流する液管を設けたループヒートパイプ型伝熱装置において、不織布を積層した繊維構造物積層体からなるウィックを該蒸発器の内部に設置したことを特徴とするループヒートパイプ型伝熱装置。
 前記繊維構造物積層体において、平均流量開孔径が0.1~30μmであることを特徴とする請求項1に記載のループヒートパイプ型伝熱装置。
 前記繊維構造物積層体において、空隙率が65~95%、空隙指数(空隙率%/平均流量開孔径μm)が10~1000であることを特徴とする請求項1または2に記載のループヒートパイプ型伝熱装置。
 前記繊維構造物積層体において、10%流量開孔径が、平均流量開孔径より0~20μm大きいことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のループヒートパイプ型伝熱装置。
 前記繊維構造物積層体において、前記不織布が積層された状態で接着しており、該接着面積が、蒸発器の気密性を維持するためのウィック周辺部の接着を除いて、該不織布面積の0.2~20%であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のループヒートパイプ型伝熱装置。
 前記繊維構造物積層体において、空隙指数(空隙率%/平均流量開孔径μm)の異なる少なくとも2種類の不織布を積層したことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のループヒートパイプ型伝熱装置。
 前記蒸発器において、蒸発器の気密性を維持する構造の一部に、前記繊維構造物積層体の接着した部分の一部を用いることを特徴とする請求項5に記載のループヒートパイプ型伝熱装置。
Description:
ループヒートパイプ型伝熱装置

 本発明はループヒートパイプ型伝熱装置 関し、特にパーソナルコンピューター等、 型かつ軽量でありながら、効率的な伝熱装 を必要とする分野に利用されるに適したル プヒートパイプ型伝熱装置に関する。

 従来、宇宙用、工業用または家庭用の伝 装置として、ループヒートパイプ型伝熱装 が知られており、例えば、特許文献1などに 示されている。このループヒートパイプ型伝 熱装置では、蒸発器により発熱源から吸熱し て作動流体を蒸発させて気相にし、得られた 蒸気を蒸気管によって凝縮器に供給し、ここ で吸熱源へ放熱して液相にする。このため、 例えば宇宙船などにおいて、内部の各種機器 の発熱を蒸発器により吸熱し、この熱を凝縮 器において宇宙に放熱して、各種機器の温度 を制御することができる。機械的な駆動部分 がないため、無人の宇宙船などで長期間安定 して使用することができる。

 このようなループヒートパイプ型伝熱装 においては、その蒸発器の内部に多孔質体 らなるウィックを有している。円筒形の蒸 器の場合、このウィックは蒸発器の内部を 液相の作動流体を収容する内側液溜室と、 相の作動流体を収容する外側の蒸気室に仕 っている。液相の作動流体は毛細管力でウ ック内を外側に進み、ウィックの表面部分 おいて蒸発する。ウィックには銅、アルミ ニッケル等の金属やアルミナ、酸化チタン シリカ等のセラミック、延伸多孔質ポリテ ラフロロエチレン、ポリエチレン等の高分 等を材料にした多孔質体が用いられる。

 ここで、この蒸発器内のウィックの開孔 は半径方向に均一、またはウィック内周側 外周側より開孔径が大きいものが採用され いる。特許文献1には、内周側の開孔径を大 きくすることで、ウィック全体から均一に作 動流体を蒸発させることができ、蒸発器の性 能を向上できることが開示されている。しか しながら、作動流体が蒸発する外周側の気孔 径が小さいために、大きな熱が印加されない と蒸発しない。このため、ループヒートパイ プ型伝熱装置を起動させるためには、約50W以 上の熱を蒸発器に印加する必要があった。

 この課題を解決するために、特許文献2に は、蒸発器において、ウィックの外周側の開 孔径を内周側より大きくする発明が開示され ている。このため、内周側において、十分な 毛細管力を得て、液相の作動流体を吸い上げ 、かつ、ウィックの表面において、蒸発を促 進できることが示されている。しかしながら 、外周側の開孔径が大きいため、液相の作動 流体の毛細管力による移動が抑制されること になり、蒸発部への作動流体の供給が滞る可 能性が生じ、ループヒートパイプ型伝熱装置 の熱伝導性が劣る可能性があった。

 さらに、ループヒートパイプ型伝熱装置の 効率な伝熱性能を生かし、パーソナルコン ューター(PC)、とくにノート型PCへの採用が 討されている。ノート型PCは小型かつ軽量 しつつ、高性能化を図るため、中央演算装 MPUのクロック周波数は増加し、MPUも高集積 しており、それに伴い、熱密度が増加して る。特に高発熱素子の熱密度は100W/cm 2 と核反応炉に逼迫するレベルに達している。 そのため、ループヒートパイプ型伝熱装置も 小型化、薄型化かつ軽量化しながら、さらな る高熱伝導性が要求されている。したがって 、熱伝導性を決定するウィックも毛細管力の 向上と通液抵抗の減少により、液相の作動流 体の移動性を向上させつつ、より、小さな熱 の印加で蒸発を促進することが求められてい る。

 上記性能を満たすためには、ウィックに 、毛細管力を向上するための開孔径の減少 通液抵抗を下げて、蒸発を促進するための 隙率の増加が同時に求められる。しかしな ら、多孔質体では開孔径の減少と空隙率の 加は一般に両立せず、開孔径を減少させる 空隙率も減少してしまい、性能向上に限界 あった。

 一方、特許文献3には一般のヒートパイプ ではあるが、布部材をウィックに用いること が開示されている。金網に比較して、布部材 は網目が細かく、金網以上の毛細管力を持た せることができるとともに、厚みを薄くでき るので冷却装置の小型化、薄型化、または軽 量化をはかることができると記載されている 。しかしながら、特許文献3では、ループヒ トパイプ型伝熱装置に用いる事は開示され いない。従って、毛細管力に関する記載は るが、空隙率に関する記載は無い。また、 部材の特性に関する記載は無く、どのよう 布部材がウィックとして適しているか不明 ある。

特開平10-246583号公報

特開2002-181470号公報

特開2004-324906号公報

 本発明は以上の事情に鑑みて発明された のであり、不織布を積層した繊維構造物積 体からなるウィックを蒸発器内部に設置せ め、繊維構造物積層体の平均流量開孔径、 隙率および空隙指数(空隙率/平均流量開孔 )を最適化することで、小型化、薄型化およ 軽量化と高伝熱性能とを両立させたループ ートパイプ型伝熱装置を提供することを目 とする。

 本発明は、以上の目的を達成するために 不織布を積層した繊維構造物積層体からな ウィックを用いる。繊維構造物積層体の平 流量開孔径、空隙率、空隙指数は用いる不 布の特性、積層構成、接着方法および条件 より、容易に制御できるため、ウィック内 流れる液相の作動流体の通液抵抗を最小限 抑制しつつ、毛細管力による作動流体の移 を促進することが可能であり、さらに小さ 熱の印加でも蒸発を促進することができる その結果、蒸発部熱伝導率が向上する効果 生じることを見出し、本発明を達成した。

 すなわち、本発明は以下の通りである。
 (1)蒸発器と、該蒸発器から気相の作動流体 導く蒸気管と、該蒸気管と接続された凝縮 と、該凝縮器から液相の作動流体を蒸発器 還流する液管を設けたループヒートパイプ 伝熱装置において、不織布を積層した繊維 造物積層体からなるウィックを該蒸発器の 部に設置したことを特徴とするループヒー パイプ型伝熱装置。これにより、ウィック 毛細管力が向上し、通液抵抗が下がり、作 流体の移動が促進され、最大熱輸送量が増 する。

 (2)前記繊維構造物積層体において、平均 量開孔径が0.1~30μm、空隙率が65~95%、および 隙指数(空隙率%/平均流量開孔径μm)が10~1000 あることを特徴とする上記(1)に記載のルー ヒートパイプ型伝熱装置。繊維構造物積層 の特性を上記の範囲に設定することで、ウ ックの毛細管力を向上させつつ、通液抵抗 下げて、作動流体の移動が促進され、最大 輸送量を増加させる効果が一層向上する。

 (3)前記繊維構造物積層体において、10%流 開孔径が平均流量開孔径より0~20μm大きいこ とを特徴とする上記(1)または(2)に記載のルー プヒートパイプ型伝熱装置。これにより、作 動流体が均一に移動し、蒸発効率が向上する 。

 (4)前記繊維構造物積層体において、前記 織布が積層された状態で接着されており、 接着面積が該不織布面積の0.2~20%であること を特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の ープヒートパイプ型伝熱装置。これにより 作動流体の通液抵抗を増加させることなく 良好なハンドリング性が得られる。

 (5)前記繊維構造物積層体において、空隙 数(空隙率%/平均流量開孔径μm)の異なる少な くとも2種類の不織布が積層されていること 特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載のル プヒートパイプ型伝熱装置。これにより、 ィック内の作動流体の移動を促進し、かつ 発面近傍の不織布を蒸発に適したものにす ことが可能となり、その結果、小さな熱の 加による蒸発を促進することが可能となる

 (6)前記蒸発器において、蒸発器の気密性 維持する構造の一部に、前記繊維構造物積 体の接着した部分の一部を用いることを特 とする上記(5)に記載のループヒートパイプ 伝熱装置。これにより、蒸発器の構造を簡 化することが可能で、蒸発器を小型化、薄 化かつ軽量化することが可能となる。

 本発明のループヒートパイプ型伝熱装置 用いることにより、小型化、薄型化かつ軽 化と高性能化とがともに要求されるPCおよ サーバー等の電子機器の高効率な伝熱が可 となる。

本発明のループヒートパイプ型伝熱装 の一例を示す図である。 図1における蒸発器の組立図の一例であ る。

符号の説明

 1  蒸発器
 2  蒸気管
 3  凝縮器
 4  液管
 5  ウィック
 6  蒸気室
 7  液溜室
 10  蒸発器上部筐体
 11  蒸発器下部筐体

 本発明に用いられるウィックは不織布を 層した構造であることが肝要である。当該 織布は繊維長/直径で表されるアスペクト比 が5以上の繊維を、平面内にランダム及び/ま は配向させて積層配置し、各種方法で繊維 部分的に接着および/または固定した布状物 である。不織布は繊維の大きな比表面積を利 用して開孔を形成するために、粉末を用いて 開孔を形成する焼結金属等従来の多孔質体に 比較し、繊維が空間に少量しかなくとも、小 さな開孔を形成することが可能である。従っ て、開孔径を小さくしながら、大きな空隙率 を保つことが可能である。さらに、不織布を 構成する繊維の直径はサブミクロンから数十 ミクロンの範囲で選択することが可能であり 、開孔径の制御が容易である。繊維を用いて いる布状物として織物および編物があるが、 織物には織り目、編物には網目という布状物 形成に伴う大きな開孔部が存在するのに対し 、不織布では存在しない。すなわち、ウィッ クに要求される、開孔径を減少させながら、 空隙率を増加させることが不織布でのみ可能 である。

 本発明に用いられる不織布を構成する素材 特に限定されない。合成樹脂系繊維でもセ ロース系繊維、金属系繊維、セラミック系 維、ガラス繊維または炭素繊維でもよい。
 繊維の形態は長繊維でも短繊維でもよく、 者を混合して用いてもよい。

 合成樹脂系繊維としては、ナイロン6、ナイ ロン66および共重合ポリアミド等のポリアミ からなる繊維、ポリエチレン、ポリプロピ ンおよび共重合ポリプロピレン等のポリオ フィンからなる繊維、ポリエチレンテレフ レート、ポリブチレンテレフタレート、ポ テトラメチレンテレフタレートおよび共重 ポリエステル等のポリエステルからなる繊 、アクリル系繊維、アセタール系繊維およ 4フッ化エチレン系繊維等が挙げられる。
 セルロース系繊維としてはビスコースレー ン、キュプラレーヨン、パルプ、綿および 等が挙げられる。
 金属系繊維としては、銅、黄銅、アルミニ ム、アルミニウム合金、SUSおよびチタン等 挙げられる。
 セラミック系繊維としては、アルミナ、酸 チタンおよび炭化ケイ素等が挙げられる。
 これらは単独で用いても2種以上混合して用 いてもよい。

 好ましくは、繊維直径の制御が容易で開 径を自由に変えることが可能で、さらにウ ック内部での作動流体の蒸発を抑制できる 熱伝導率が低い合成樹脂系繊維が好ましく 特に化学的安定性に優れるポリアミド系繊 、ポリオレフィン系繊維およびポリエステ 系繊維が好ましい。

 繊維は作動流体との親和性が高い素材を用 ることが好ましい。親和性が低い素材を用 る場合は、不織布を形成したのちに、公知 方法で親和性を向上させる表面処理を施す とも好ましい。例えば、作動流体に水を80 量%以上含む水系流体を用いた場合、親水性 材であるセルロース系繊維またはポリアミ 系繊維を用いることが好ましい。また、疎 性素材であるポリオレフィン系繊維および リエステル系繊維を用いる場合は、公知の 法で界面活性剤等を付与する表面処理を行 、繊維表面を親水化することも好ましい実 態様である。
 また鞘部分がポリエチレン、ポリプロピレ または共重合ポリエステル等からなり、芯 分がポリアミドまたはポリエステル等から る複合繊維等であってもよい。
 本発明で用いられる不織布の繊維の断面形 は、円形でも、円形以外の異型でもよいが 比表面積が大きくなる異型が好ましい。

 本発明に用いられる不織布の製造方法は特 限定されず、公知の方法が用いられる。例 ば、スパンレース法、ニードルパンチ法、 パンボンド法、メルトブロー法、フラッシ スパン法およびエレクトロスピニング法等 挙げられる。好ましくは、スパンレース法 スパンボンド法、メルトブロー法およびフ ッシュスパン法が開孔径を容易に制御でき ので好ましい。
 本発明に用いられる不織布の特性は、これ 用いて得られる繊維構造物積層体の所定の 性が後述の範囲になるよう適宜選択されれ 、特に限定されない。

 本発明の繊維構造物積層体について、以 に説明する。繊維構造物積層体は不織布を 層して構成されていることが必要である。 らに、該繊維構造物積層体の平均流量開孔 が0.1~30μm、空隙率が65~95%、および空隙指数( 空隙率%/平均流量開孔径μm)が10~1000であるこ が好ましい。また、該繊維構造物積層体の10 %流量開孔径が、平均流量開孔径より0~20μm大 いことが好ましい。該繊維構造物積層体は 記不織布が積層された状態で接着されてお 、該接着面積が該不織布面積の0.2~20%である ことが好ましい。

 本発明に用いられる繊維構造物積層体は 均流量開孔径が0.1~30μmであることが好まし 。さらに好ましくは0.1~10μm、特に好ましく 0.2~10μm、一層好ましくは0.2~5μmである。平 流量開孔径が0.1~30μmであれば、十分な毛細 力を得ることができ、かつ工業的な生産が 能であり、開孔1個当りの通液抵抗が著しく きくなることもない。

 平均流量開孔径は積層によって大幅に変 しないので、所定の平均流量開孔径を有す 繊維構造物積層体を得るためには、その平 流量開孔径と一致する不織布を少なくとも3 0wt%用い、残りの不織布として、平均流量開 径がそれよりも大きな不織布を用いればよ 。例えば、平均流量開孔径が2μmの繊維構造 積層体を得るには、平均繊維径が1μmで、平 均流量開孔径が2μmのメルトブロー法不織布 100wt%用いる構成が例示される。

 本発明における流量開孔径とは、木村尚史 酒井清孝、白田利勝および鵜飼哲雄編著「 分離技術マニュアル」(株式会社アイピーシ ー出版、1990年8月10日)の147頁に記載されてい エアフロー法で求めることができる。すな ち、繊維構造物積層体をあらかじめ表面張 が既知の液体に浸し、該積層体の全ての細 を該液体の膜で覆った状態で該積層体に圧 をかけ、液膜の破壊される圧力と液の表面 力とから計算された細孔孔径を言う。計算 は下記の数式(1)を用いる。
      d=C×r/P        (1)
 (式中、dは孔径、rは液の表面張力、Pはその 孔径の液膜が破壊される圧力、Cは定数であ 。)

 一般に、繊維構造物積層体の流量開孔径 分布を持つ。流量開孔径分布は、連続的に 力を変化させ、各圧力で該積層体を通過す 流量の変化から、その圧力で破壊された液 の量を計算することにより求めることがで る。測定装置には、例えば、ASTM E 1294-89に 基づく装置である、PMI社のパームポロメータ ーが用いられる。

 数式(1)より、液に浸した該積層体にかける 力Pを低圧から高圧に連続的に変化させた場 合、初期の圧力は最も大きな細孔の液膜も破 壊できないので、流量は0である。圧力を上 ていくと、最も大きな細孔の液膜が破壊さ 、流量が発生する(バブルポイント)。さらに 圧力を上げていくと、最も小さな細孔の液膜 が破壊され、液に浸していない場合の流量( ライ流量)と一致する。
 平均流量開孔径とは、該積層体を液に浸し 場合の流量(ウェット流量)が、浸していな 場合の流量(ドライ流量)の50%となる圧力で破 壊される孔径である。

 また、本発明に用いられる繊維構造物積 体は10%流量開孔径が平均流量開孔径より0~20 μm大きいことが好ましい。さらに好ましくは 0~10μm、特に好ましくは0~5μmである。10%流量 孔径と平均流量開孔径の差は細孔の大きさ 分布を表し、この数値が小さい程分布が小 い。差が0μmであれば、均一な細孔であるこ を示す。10%流量開孔径が(平均流量開孔径+20 μm)以下であれば、通液抵抗が低い大きな孔 ら作動流体が不均一に流動することがなく 蒸発部全体に均一に作動流体が移動し、蒸 効率が向上し、好ましい。

 10%流量開孔径とは、該積層体を液に浸し 場合の流量(ウェット流量)が、浸していな 場合の流量(ドライ流量)の10%となる圧力で破 壊される孔径である。10%流量開孔径および平 均流量開孔径は、後に述べる方法により求め られる。

 本発明に用いられる繊維構造物積層体は空 率が65~95%であることが好ましい。好ましく 70~95%、さらに好ましくは80~95%である。空隙 が65~95%であれば、該積層体の通液抵抗が低 、かつハンドリングに十分な強度を有し、 分な耐久性も有する。
 空隙率は接着時の圧力により、若干減少す 傾向にあるため、繊維構造物積層体の所定 空隙率より、5%程度空隙率の大きい不織布 選択すればよい。公知の方法を用い、繊維 士の接着条件を適切に設定することで、所 の空隙率の不織布を得ることができる。
 本発明における空隙率とは、繊維構造物積 体の単位体積当りにしめる空隙の割合であ 。繊維構造物積層体の目付けW(g/cm 2 )と厚みT(cm)および該積層体を構成する繊維の 真比重ρから、空隙率は下記の数式(2)で算出 れる。
   空隙率={1-W/(T×ρ)}×100  (2)
 繊維構造物積層体の目付け、厚みはJISL-1096 求めることができる。

 本発明に用いられる繊維構造物積層体は上 で求められた空隙率(%)と平均流量開孔径(μm )の比(空隙率(%)/平均流量開孔径(μm))である空 隙指数が10~1000であることが好ましい。空隙 数の下限に関しては、さらに好ましくは20以 上、特に好ましくは25以上である。また、上 に関しては、さらに好ましくは800以下、特 好ましくは500以下である。
 空隙指数はループヒートパイプ型伝熱装置 性能の指標である最大熱輸送量を最も支配 るパラメーターであり、一般的には空隙指 が大きければ大きいほど、最大熱輸送量は きくなる。また、別々には制御し難い空隙 と平均流量開孔径の最適の組合せは、空隙 数が最大になるものであり、両特性を最適 するパラメーターとして空隙指数は有効で る。空隙指数が10~1000であれば、毛細管力が 十分大きく、かつ通液抵抗が小さく、工業的 に生産可能であり、ウィックに用いる構造体 として最適なものとなる。空隙指数が10~1000 ある不織布を少なくとも70wt%以上用いること により、繊維構造物積層体の空隙指数を10~100 0とすることが可能である。従来、ウィック して用いられている金属焼結体の空隙指数 7.5程度、セラミック焼結体の空隙指数は2程 であり、本発明の繊維構造物積層体に比較 て小さい。そのため、毛細管力が不足する 、通液抵抗が高くなり、ウィックとして十 な性能を発揮することが困難であった。
 本発明では、従来とは全く異なる不織布を 料として用いることで大きな空隙指数を実 することが可能となり、十分大きな毛細管 と小さな通液抵抗を同時に得ることが可能 なり、最大熱輸送量を増加させることが可 である。

 本発明に用いられる繊維構造物積層体は 前記不織布が積層された状態で接着されて り、該接着面積は、後述する蒸発器の気密 を維持するためのウィック周辺部の接着を いて、該不織布面積の0.2~20%であることが好 ましく、さらに好ましくは0.5~10%、特に好ま くは1~10%である。この範囲であれば、作動流 体の通液抵抗を増加させることなく、ハンド リングしても一体化した状態を保てる接着強 さを得ることができる。接着する方法は特に 限定されない。例えば、部分的に熱融着を行 うエンボス接合、ピン型、線型またはそれら の組合せ等様々な形状による部分的な超音波 融着および粉体や繊維状の熱可塑性樹脂によ るサーマルボンド等が用いられる。好ましく は接着面積の比率を制御し易く、接着強度が 大きい、ピン型、線型またはそれらの組合せ 等様々な形状による部分的な超音波融着が用 いられる。

 本発明に用いられる不織布は単一でもよい 、異なる特性を有する不織布を積層して複 することも好ましい実施態様である。複合 ることで単一では実現できない、相反する 性をともに向上させることが可能である。 に空隙指数が異なる不織布を積層して複合 ることが好ましい。空隙率および平均流量 孔径の測定方法は後述する。
 好ましい実施態様を例示すれば、表裏の1枚 づつを空隙指数が5の不織布、その間に空隙 数が40の不織布を8枚、合計10枚を積層して繊 維構造物積層体を構成する。本構成では、空 隙指数40の不織布は約80wt%となる。作動流体 接触する面に、空隙指数が小さな不織布が 在するため、極めて通液抵抗が低く、循環 て戻ってきた作動流体を均一にすばやく繊 構造物積層体内に拡散することが可能であ 。該積層体の最初の不織布内に拡散した作 流体は、次の空隙指数が大きな不織布の層 大きな毛細管力によって吸引される。さら 、蒸発面に接する層は空隙指数が小さいた 、作動流体が蒸発しやすくなり、小さな熱 印加で蒸発が促進される。

 従来、用いられている金属やセラミック 多孔質体では特性を変化させながら制御す ことは困難であった。また、シート状で得 れる延伸多孔質ポリテトラフロロエチレン 異なる特性のシートを積層して一体化する とで特性を変化させることは可能である。 かし、シート間に明瞭な境界が存在するた 、作動流体がシート間に滞留し、スムーズ 作動流体の移動が妨げられる可能性がある 不織布は表面に存在する繊維が、積層され 他の不織布の繊維と接着時に加えられる圧 により交絡して一体化しやすいため、明瞭 境界が存在しにくい。そのため、不織布間 作動流体が滞留しにくく、スムーズに移動 やすい。不織布を積層、接着して用いるこ はこの点でも有用である。

 本発明のループヒートパイプ型伝熱装置 、蒸発器と、この蒸発器から気相の作動流 を導く蒸気管、この蒸気管と接続された凝 器、およびこの凝縮器から液相の作動流体 蒸発器に還流する液管からなり、蒸発器内 に所定の特性を有する繊維構造物積層体か なるウィックを設置して構成される。蒸発 および凝縮器の構造は公知の構造を用いる とができる。図1に本発明のループヒートパ イプ型伝熱装置の一例を示すが、この構造に 限定されるものではない。図1において、1は 形の平板型蒸発器、2は蒸気管、3は凝縮器 4は液管である。凝縮器は冷却ファンと銅製 ィンを一体化した冷却モジュールを蒸気管 ロウ付けで固定した構造となっている。繊 構造物積層体からなるウィック5は、蒸発器 1の内部を上下に二分するように設置され、 部が蒸気室6を、上部が液溜室7を構成する。

 繊維構造物積層体からなるウィックを蒸 器内部へ設置する態様は公知のものを用い ことができ、特に限定されない。該繊維構 物積層体は柔軟性、可撓性に富み、裁断お び端部接着が容易であるため、加工性に優 、どのような設置態様にも対応可能である 例えば、蒸発器が円筒形であれば、蒸発器 壁に溝を形成し、該溝の突起部に接触する う、中空円筒状に加工した繊維構造物積層 を設置すればよい。液管から戻ってきた作 流体は中空部の内側液溜に流入する。また 蒸発器が平板形であれば、図1に示したよう に、上下に空間を有する中間部分に平板形の 繊維構造物積層体を設置すればよい。

 繊維構造物積層体からなるウィックを蒸 器内部へ設置する態様は特に限定されない 、蒸発器の気密性を維持する構造の一部に 該繊維構造物積層体の接着した部分の一部 用いることが好ましい。蒸発器は作動流体 填前に、容器内部の空気等非凝縮性ガスを 空排気等で除く必要があり、十分な、例え 0.1Torrの真空度を維持する気密性が要求され る。また、使用時に加熱によって発生した作 動流体の蒸気が漏洩しない気密性が要求され る。従来は蒸発器の筐体同士を溶接またはロ ウ付け等により、接着して気密性を維持して いた。本発明においては、従来公知の方法に 加え、繊維構造物積層体からなるウィックの 接着した部分の一部を用いることができる。

 図2は図1における蒸発器1の組立図の一例 ある。図2によって、蒸発器の気密性を維持 する態様を例示するが、本態様に限定される ものではない。図2において、10は蒸発器の上 部筐体であり、液管から戻ってきた作動流体 を貯蔵するリザーバを兼ねている。11は蒸発 の下部筐体であり、冷却が必要なデバイス ら熱を奪い、作動流体を蒸発させる作用を する。作動流体の蒸気は下部筐体の溝を経 して、蒸気管に至る。繊維構造物積層体か なるウィック5は周辺部分が融着により接着 されている。接着面積率は15%である。繊維構 造物積層体からなるウィック5を介在させて 上部筐体10と下部筐体11を組み立て、蒸発器 得る。組立方法は特に限定されないが、本 示では、ネジによる組立を示す。多孔質体 らなるウィックを介在させて、上部筐体10 下部筐体11を組み立てると、気密性は維持で きず、筐体同士の溶接等の気密性を維持する ための手段が必要になる。融着により接着し た繊維構造物積層体からなるウィックを用い ると、融着により開孔がつぶれ、気密性が維 持でき、ネジ止め等簡便な手段で組立が可能 となる。

 上述のように、予め不織布を一体化する めに接着した部分を用いても良いが、蒸発 組立時に同時接着することが好ましい。同 接着における接着方法は、特に限定されな が、加熱圧縮法が好ましい。加熱圧縮法で 、上述の構造および組立方法をそのまま採 できるため、小型化、薄型化かつ軽量化と もに、組立コストの軽減も図れる。

 本発明に用いられる作動流体はループヒ トパイプ型伝熱装置に一般に用いられてい 流体を用いることが出来る。水、アンモニ 、エタノール等のアルコール類、ヘプタン の炭化水素類、フレオン-11等のフルオロカ ボン類、液体酸素および液体窒素等が例示 れるが、特に限定されない。また、流体を 独で用いても、混合して用いても構わない 、混合する場合は均一に互いに溶解する流 種および混合割合とすることが好ましい。

 好ましくは、作動流体は数式(3)で定義され メリット数が大きな水を80重量%以上含む水 流体を用いる。
   メリット数=(密度×表面張力×蒸発潜熱)/ 度      (3)
メリット数が大きいほど、最大熱輸送量が大 きくなるため、好ましい。代表的な流体のメ リット数を示すと、アンモニア(1.1×10 11 )、フレオン-11(1.2×10 10 )、フレオン-113(7.3×10 9 )、ペンタン(1.5×10 10 )、アセトン(3×10 10 )、メタノール(4.8×10 10 )、エタノール(4.1×10 10 )、ヘプタン(1.3×10 10 )、水(5.1×10 11 )およびナフタリン(3.4×10 10 )である。水のメリット数が大きく、最大熱 送量が大きくなり、好ましい。水を単独で いることが好ましいが、アセトン等のケト 類、メタノールおよびエタノール等のアル ール類、および界面活性剤等を水に混合し も良い。その場合、大きなメリット数を保 ため、水を80重量%以上含むことが好ましい

 以下実施例および比較例によって本発明を らに詳細に説明するが、本発明はこれらの 施例のみに限定されるものではない。
 本発明に用いられる測定法は以下のとおり ある。
 (1)平均流量開孔径(μm)
 PMI社製パームポロメーター(型式CFP-1200AEX)を 用いて測定する。浸液には表面張力20.1dynes/cm のPMI社製Silwickを用いる。浸液に浸したサン ルは大気圧よりも80kPa低くし、脱気してサン プル内に泡が残らないように前処理する。測 定径は20mmとする。乾燥空気をサンプルに通 、段階的に気体圧力を増加させて、その時 気体流量を観測する。サンプルを液に浸し 場合の流量(ウェット流量)が、浸していない 場合の流量(ドライ流量)の50%となる圧力P 50 (PSI)を求め、下記数式(4)より平均流量開孔径 求める。
   d 50 =C×r/P 50         (4)
 ここで、d 50 は平均流量開孔径(μm)、rは液の表面張力で20. 1(dynes/cm)、定数Cは0.451(μm・cm・PSI/dynes)である 。3回測定し、その平均値を求める。

 (2)10%流量開孔径(μm)
 サンプルを液に浸した場合の流量(ウェット 流量)が、浸していない場合の流量(ドライ流 )の10%となる圧力P 10 (PSI)を求め、上記(1)と同様に下記数式(5)より める。3回測定しその平均値を求める。
   d 10 =C×r/P 10         (5)

 (3)空隙率(%)
 サンプルの目付けW(g/cm 2 )と厚みT(cm)およびサンプルを構成する素材の 真比重ρから、空隙率は下記の数式(2)で算出 る。
   空隙率={1-W/(T×ρ)}×100  (2)
 サンプルの目付けおよび厚みはJISL-1096に従 て求める。

 (4)接着面積率(%)
 100mm×100mmのサンプルをCCDカメラで撮影した 像を画像解析ソフトに取込み、二値化によ 、接着部分を抽出し、接着面積(mm 2 )を画像解析ソフトにより求める。撮影面積10 000mm 2 に対する割合を求め、接着面積率を算出する 。

 (5)最大熱輸送量(W)
 図1に示した、SUS304製で寸法が外径80mm、厚 20mmの円形平板型蒸発器にサンプルを設置す 。凝縮器、蒸気管および液管は全て外径4mm SUS316製のパイプで構成する。凝縮器は冷却 ァンと銅製フィンを一体化した冷却モジュ ルを用い、強制空冷により冷却した。熱移 距離、即ち蒸気管の長さは約1mとした。作 流体はエタノールを用いた。蒸発器下面に ーターを取り付け、入力電力を連続的に増 させながら、蒸発器および凝縮器にハンダ 取り付けた熱電対で蒸発器温度T1(K)および凝 縮器温度T2(K)を測定し、T1-T2が50Kとなった入 電力を最大熱輸送量とした。

 (実施例1)
 ポリエチレンテレフタレート製メルトブロ 不織布(旭化成せんい社製:目付け40g/m 2 、空隙率90%、平均流量開孔径2μm、表1中ではM Bと標記する)を10枚積層した後、ピン型超音 融着機で熱接着した。得られた繊維構造物 層体の接着面積率は1%であった。また、この 積層体の平均流量開孔径、空隙率、空隙指数 および最大熱輸送量は表1のとおりである。

 (実施例2~4)
 ピンの単位面積当りの本数を変えたピン型 音波融着機で熱接着し、接着面積率を5%(実 例2)、0.1%(実施例3)および30%(実施例4)とした とを除いて、実施例1と同様にして繊維構造 物積層体を得た。実施例3の接着面積率が0.1% 繊維構造物積層体は接着力が小さく、蒸発 に設置する際に剥離し、ハンドリング性が るが、蒸発器の上部筐体で固定し、最大熱 送量を測定した。また、接着面積率が30%と きい実施例4は、有効通液面積が減少し、実 施例1に対し最大熱輸送量が減少する。

 (実施例5)
 ポリエチレンテレフタレート製スパンボン 不織布(旭化成せんい社製エルタス:目付け20 g/m 2 、空隙率85%、平均流量開孔径18μm、表1中では SBと標記する)を1枚、ポリエチレンテレフタ ート製メルトブロー不織布(旭化成せんい社 :目付け40g/m 2 、空隙率90%、平均流量開孔径2μm)を8枚、ポリ エチレンテレフタレート製スパンボンド不織 布(旭化成せんい社製エルタス:目付け20g/m 2 、空隙率85%、平均流量開孔径18μm)を1枚、こ 順に積層したことを除いて、実施例1と同様 繊維構造物積層体を得、平均流量開孔径、 隙率、空隙指数および最大熱輸送量を求め 。その結果を表1に示す。尚、得られた繊維 構造物積層体の接着面積率は1%であった。表 にスパンボンド不織布を積層することによ て、作動流体の移動がより均一になり、か 蒸発しやすくなるために、最大熱輸送量が 層増加した。

 (実施例6)
 繊維径5.5μmのナイロン66繊維を水流交絡さ た不織布(目付80g/m 2 、空隙率85%、平均流量開孔径5μm、表1中ではS Lと標記する)を2枚用いた以外は実施例1と同 にして繊維構造物積層体を得た。結果は表1 示すとおり、最大熱輸送量が良好であった

 (実施例7)
 繊維径5.5μmのナイロン66繊維を水流交絡さ 、ロールで圧縮した不織布(目付150g/m 2 、空隙率60%、平均流量開孔径5μm)を2枚用いた 以外は実施例1と同様にして繊維構造物積層 を得た。空隙率が小さくなることで実施例6 対し、最大熱輸送量が低下する。

 (実施例8)
 繊維径10.1μmのナイロン66繊維を水流交絡さ た不織布(目付75g/m 2 、空隙率80%、平均流量開孔径15μm)を2枚用い 以外は実施例1と同様にして繊維構造物積層 を得た。平均流量開孔径が大きくなること 、実施例6に対し、最大熱輸送量が低下する 。

 (実施例9)
 繊維径5.5μmのナイロン66繊維を水流交絡さ た不織布(目付120g/m 2 、空隙率80%、平均流量開孔径6μm)を2枚用いた 以外は実施例1と同様にして繊維構造物積層 を得た。本積層体の10%流量開孔径と平均流 開孔径の差は12μmであり、開孔径の分布がや や大きくなると実施例6に対し、熱輸送量が や低下する。

 (実施例10)
 繊維径7.9μmのナイロン66繊維を水流交絡さ た不織布(目付150g/m 2 、空隙率75%、平均流量開孔径8μm)を2枚用いた 以外は実施例1と同様にして繊維構造物積層 を得た。空隙指数が10未満になると、実施例 6に対し、熱輸送量が低下する。

 (比較例1)
 ウィックとして、ニッケルの焼結多孔質体 用いた以外は実施例1と同様にして、平均流 量開孔径、空隙率、空隙指数および最大熱輸 送量を求めた。その結果を表1に示す。

 (比較例2)
 ウィックとして、ポリテトラフルオロエチ ン多孔質体(住友電工ファインポリマー製、 ポアフロンメンブレンWP-500-100)を20枚積層し ウィックとして用いた以外は実施例1と同様 して、平均流量開孔径、空隙率、空隙指数 よび最大熱輸送量を求めた。その結果を表1 に示す。

 表1の実施例1と比較例1および2との結果か ら明らかなように、本発明の繊維構造物積層 体をウィックに用いると、従来、ウィックと して用いられている金属焼結体やポリテトラ フルオロエチレン多孔質体より、平均流量開 孔径を小さくしながら、空隙率を大きくする ことが可能であり、そのために、最大熱輸送 量を大きくすることが可能である。その結果 、ループヒートパイプ型伝熱装置の性能を向 上させることができる。

 さらに、実施例6~10の結果から明らかなよ うに、不織布および該不織布を積層した繊維 構造物積層体の特性を特定の範囲に限定する ことで、最大熱輸送量を一層大きくすること が可能であり、ループヒートパイプ型伝熱装 置の性能を一層向上させることができる。

 (実施例11)
 実施例1で得られた繊維構造物積層体を直径 30mmの円形に打ち抜いた後、周辺部を3mm幅に 着した。接着は300℃に加熱した外径30mm、内 24mmの同心円状金型を用い、加熱圧縮法で融 着する方法で実施した。接着部に径1mmのネジ 用の穴を均等な間隔で8個開けて、ウィック した。該ウィックを介在させて、外径30mm、 ばの幅3mm、高さ5mm、肉厚1mmの銅製上部筐体 外径30mm、縁の幅3mm、高さ5mmの銅製下部筐体 を8本のネジで組み立て、蒸発器を得た。上 筐体および下部筐体にあらかじめ開孔され 直径3.2mmの穴に外径3mm、内径2mmの銅製パイプ をロウ付けで取付、夫々液管、蒸気管とした 。液管をU字状に曲げ、蒸気管とロウ付けで 合し、ループを形成した。下部筐体から100mm の位置に冷却ファンと高さ10mm、ピッチ3mmの 製フィンを一体化した冷却モジュールをロ 付けで蒸気管に取付、凝縮器とした。上部 体に別途取り付けた3方コックを含む作動流 注入用の銅パイプから真空ポンプを用いて 気すると、良好な気密性を示し、0.1Torrまで 減圧が可能であった。0.1Torrまで排気後、3方 ックを切替、メタノールを注入した。作動 体注入用の銅パイプを圧縮により閉管した 、溶接してループヒートパイプ型伝熱装置 得た。実施例1と同様にして最大熱輸送量を 測定すると80Wであった。

 (実施例12)
 実施例1で得られた繊維構造物積層体を直径 30mmの円形に打ち抜いた。実施例11と同様の形 状の上部筐体及び下部筐体を300℃に加熱した 後、上記繊維構造物積層体をはさみ圧縮した 。融着した上記繊維構造物積層体で上部筐体 と下部筐体を接着して、蒸発器を得た以外は 実施例11と同様にして、ループヒートパイプ 伝熱装置を得た。実施例11と同様に0.1Torrま 減圧可能であった。実施例1と同様にして最 大熱輸送量を測定すると80Wであった。

 本発明によれば、不織布を積層し、接着 た繊維構造物積層体からなるウィックを蒸 器内部に設置せしめ、繊維構造物積層体の 均流量開孔径、空隙率および空隙指数(空隙 率/平均流量開孔径)を最適化することで、小 かつ軽量化と高伝熱性能とを両立させたル プヒートパイプ型伝熱装置を提供できる。 って、小型化、薄型化かつ軽量化と高性能 とがともに要求されるPCおよびサーバー等 電子機器の高効率な伝熱装置として利用す ことが可能である。