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Patent Searching and Data


Title:
MACHINE COMPONENT AND ROLLING BEARING
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/069547
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a deep groove ball bearing (1) comprising, as its machine components, an outer wheel (11), an inner wheel (12) and a ball (13). Each of the outer wheel (11), the inner wheel (12) and the ball (13) comprises a steel which comprises 0.77 to 0.85% of carbon, 0.01 to 0.25% of silicon, 0.01 to 0.35% of manganese, 0.01 to 0.15% of nickel, 3.75 to 4.25% of chromium, 4 to 4.5% of molybdenum and 0.9 to 1.1% of vanadium, with the remainder being iron and unavoidable impurities. In an area having a rolling surface (11A, 12A, 13A) therein, a nitrogen-rich layer (11B, 12B, 13B) having a nitrogen content of 0.05 mass% or more is formed. The sum total of the carbon content and the nitrogen content in the nitrogen-rich layer (11B, 12B, 13B) is 0.82 to 1.9 mass% inclusive.

Inventors:
OHKI CHIKARA (JP)
YAGITA KAZUHIRO (JP)
ITO TAKASHI (JP)
MORISHITA HIROSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/071218
Publication Date:
June 04, 2009
Filing Date:
November 21, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NTN TOYO BEARING CO LTD (JP)
OHKI CHIKARA (JP)
YAGITA KAZUHIRO (JP)
ITO TAKASHI (JP)
MORISHITA HIROSHI (JP)
International Classes:
C22C38/00; C21D1/06; C21D9/40; C22C38/46; C23C8/38; F16C33/32; F16C33/34; F16C33/62; F16D3/224; F16D3/20
Domestic Patent References:
WO2006071502A22006-07-06
Foreign References:
US20060029318A12006-02-09
JP2003148485A2003-05-21
JP2003148488A2003-05-21
JP2005504879A2005-02-17
JPH0257675A1990-02-27
JPH07118826A1995-05-09
JPH093646A1997-01-07
JPH09133130A1997-05-20
Other References:
See also references of EP 2226405A4
Attorney, Agent or Firm:
FUKAMI, Hisao et al. (Nakanoshima Central Tower 22nd Floor, 2-7, Nakanoshima 2-chome, Kita-ku, Osaka-sh, Osaka 05, JP)
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Claims:
 0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純物からなる鋼から構成され、
 表面(11A,12A,13A,21A,23A,31A,32A,33A,41A,42A,43A,51A,52A,53A)を含む領域には、窒素濃度が0.05質量%以上である窒素富化層(11B,12B,13B,21B,23B,31B,32B,33B,41B,42B,43B,51B,52B,53B)が形成されており、
 前記窒素富化層(11B,12B,13B,21B,23B,31B,32B,33B,41B,42B,43B,51B,52B,53B)における炭素濃度と窒素濃度との合計値は0.82質量%以上1.9質量%以下である、機械部品(11,12,13,21,23,31,32,33,41,42,43,51,52,53)。
 前記窒素富化層(11B,12B,13B,21B,23B,31B,32B,33B,41B,42B,43B,51B,52B,53B)の厚みは0.11mm以上である、請求の範囲第1項に記載の機械部品(11,12,13,21,23,31,32,33,41,42,43,51,52,53)。
 前記窒素富化層(11B,12B,13B,21B,23B,31B,32B,33B,41B,42B,43B,51B,52B,53B)は、830HV以上の硬度を有している、請求の範囲第1項に記載の機械部品(11,12,13,21,23,31,32,33,41,42,43,51,52,53)。
 前記窒素富化層(11B,12B,13B,21B,23B,31B,32B,33B,41B,42B,43B,51B,52B,53B)を顕微鏡にて観察した場合、アスペクト比2以上、長さ7.5μm以上の鉄の窒化物(90)の数が、一辺150μmの正方形領域5視野内に1個以下である、請求の範囲第1項に記載の機械部品(11,12,13,21,23,31,32,33,41,42,43,51,52,53)。
 軸受(1,2,4,5)を構成する部品として用いられる、請求の範囲第1項に記載の機械部品(11,12,13,21,23,41,42,43,51,52,53)。
 軌道部材(41,42,51,52)と、
 前記軌道部材(41,42,51,52)に接触し、円環状の軌道上に配置された複数の転動体(43,53)とを備え、
 前記軌道部材(41,42,51,52)は、請求の範囲第1項に記載の機械部品(41,42,51,52)であり、
 前記転動体(43,53)は、セラミックスからなっている、転がり軸受(4,5)。
 ガスタービンエンジン(70)の内部において、主軸または前記主軸の回転を受けて回転する部材である回転部材(74,77)を、前記回転部材(74,77)に隣接する部材に対して回転自在に支持する、請求の範囲第6項に記載の転がり軸受(4,5,89)。
Description:
機械部品および転がり軸受

 本発明は、機械部品および転がり軸受に し、より特定的には、3.75質量%以上のクロ を含有する鋼からなり、表層部に窒素富化 が形成された機械部品およびセラミックス らなる転動体を備えた転がり軸受に関する のである。

 鋼からなる機械部品の表層部の強度を向 させる目的で、表層部に他の領域に比べて 素濃度が高い層である窒素富化層を形成す 処理、たとえば窒化処理が行なわれる場合 ある。従来の鋼の窒化処理方法としては、 をアンモニアなどの窒素源となる気体を含 雰囲気中で加熱することにより、鋼の表層 に窒素を侵入させるガス軟窒化処理が代表 である。しかし、クロム含有量の高い鋼、 とえば3.75質量%以上のクロムを含有する鋼 らなる機械部品においては、表層部に化学 に安定な酸化膜が形成される。そのため、 ロム含有量の高い鋼からなる機械部品に対 て上記軟窒化処理を実施しても、表層部に 素が侵入せず、窒素富化層が形成されない いう問題があった。

 これに対し、鋼からなる被処理物を減圧 た炉内に配置し、当該炉内に窒素源となる 体を含む気体を導入した上で、被処理物と 処理物に対向するように配置された部材、 とえば炉壁との間に電位差を生じさせてグ ー放電を発生させ、被処理物を構成する鋼 表層部に窒素を侵入させる処理(プラズマ窒 化処理)が提案されている(たとえば、特開平2 -57675号公報(特許文献1)参照)。そして、プラ マ窒化処理の制御については、たとえばグ ー放電の分光分析に基づいて行なう方法や 被処理物を流れる電流の電流密度に基づい 行なう方法が提案されている(たとえば特開 7-118826号公報(特許文献2)および特開平9-3646 公報(特許文献3)参照)。これにより、3.75質量 %以上のクロムを含有する鋼からなる機械部 の表層部に窒素富化層を形成することが可 となる。

 また、近年、転がり軸受が使用される機 装置の高性能化、高効率化などの進行に伴 、転がり軸受に対しては、過酷な使用環境 における高い耐久性が求められる傾向にあ 。具体的には、内部に硬質の異物が侵入す 異物混入環境において用いられる転がり軸 では、当該異物の噛み込みに起因して転が 軸受が早期に(軸受の計算寿命よりも短い運 転時間で)損傷する場合がある。また、負荷 れる荷重が比較的小さい場合でも、高速で 転する転がり軸受においては、スミアリン が発生する場合がある。さらに、潤滑が不 分な環境下において使用される転がり軸受 おいては、焼付きが発生する場合がある。 た、転がり軸受が高温、たとえば200℃を超 る高温環境下で使用される場合、転がり軸 を構成する部品(軸受部品)の硬度が低下し、 耐久性が低下する場合もある。

 これに対し、軸受部品が鋼からなる場合 当該鋼に3.75質量%以上のクロムを添加して の焼戻軟化抵抗を向上させることにより、 温での強度を向上させ、転がり軸受の高温 境下における耐久性を向上させることがで る。また、異物混入環境における耐久性を 上させるためには、軸受部品に対し、表層 に他の領域に比べて窒素濃度が高い層であ 窒素富化層を形成する処理、たとえば窒化 理を行なう対策を採用することができる。

 ここで、クロム含有量の高い鋼、たとえ 3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からな 軸受部品においては、表層部に化学的に安 な酸化膜が形成される。そのため、通常の 化処理を実施しても、表層部に窒素が侵入 ず、窒素富化層が形成されないという問題 生じる。これに対し、上述のように、プラ マ窒化処理を実施することにより、窒素富 層を形成する対策が提案されている。

 また、耐焼付き性を向上させるために、軸 部品である玉を有機リン化合物中に浸漬し 表面に反応膜を形成する対策が提案されて る(たとえば、特開平9-133130号公報(特許文献 4)参照)。

特開平2-57675号公報

特開平7-118826号公報

特開平9-3646号公報

特開平9-133130号公報

 しかしながら、上述のように3.75質量%以 のクロムを含有する鋼からなる機械部品(軸 部品を含む)の表層部に窒素富化層を形成し た場合でも、当該機械部品の特性が十分に向 上しない場合がある。すなわち、上述のよう な機械部品に応力が繰返し負荷された場合、 早期に剥離や破断が発生することがある(疲 強度の低下)。また、上述のような機械部品 衝撃的な応力が負荷された場合、容易に破 が発生することもある(靭性の低下)。つま 、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からな る機械部品においては、単に窒素富化層を形 成するのみでは、表層部の硬度は上昇するも のの、特に疲労強度や靭性の点で、必ずしも 十分な特性が得られない場合があるという問 題があった。

 また、転がり軸受が使用される環境はま ます過酷化している。たとえば、航空機な のジェットエンジンに使用される転がり軸 においては、高温環境下における軸受部品 硬度低下の抑制、異物混入環境における耐 性の向上および耐スミアリング性の向上の ならず、潤滑が一時的に遮断された場合に ける耐焼付性の向上(いわゆるドライラン性 能の向上)が求められる。そのため、上記特 文献1~4に開示された対策を含め、従来の対 では必ずしも十分であるとはいえない。

 そこで、本発明の目的は、3.75質量%以上 クロムを含有する鋼からなるとともに、表 部に窒素富化層が形成されており、かつ疲 強度および靭性が十分に確保された機械部 を提供することである。また、本発明の他 目的は、高温環境下における軸受部品の硬 低下の抑制、異物混入環境における耐久性 向上および耐スミアリング性の向上のみな ず、ドライラン性能の向上をも達成可能な がり軸受を提供することである。

 本発明の一の局面における機械部品は、0 .77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質量% 上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0.35 量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15質量% 以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量%以 のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリ デンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナジウ ムとを含有し、残部鉄および不純物からなる 鋼から構成されている。表面を含む領域には 、窒素濃度が0.05質量%以上である窒素富化層 形成されている。そして、窒素富化層にお る炭素濃度と窒素濃度との合計値は0.82質量 %以上1.9質量%以下である。

 本発明者は、3.75質量%以上のクロムを含 する鋼からなる機械部品に窒素富化層を形 した場合に、疲労強度や靭性が低下する原 について詳細な検討を行なった。その結果 以下のような現象が起こることに起因して 機械部品の疲労強度や靭性が低下すること 分かった。

 すなわち、上述のようにプラズマ窒化によ 3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からな 機械部品に窒素富化層を形成した場合、表 部における窒素量が、機械部品を構成する の固溶限(析出物に含まれる窒素も含めた固 限)を超える。そのため、機械部品を構成す る鋼には、結晶粒界に沿って析出する鉄の窒 化物(Fe 3 N、Fe 4 Nなど)が形成される。そして、アスペクト比2 以上で、かつ7.5μm以上の長さで形成された鉄 の窒化物(以下、アスペクト比2以上、かつ7.5 m以上の長さを有し、結晶粒界に沿って形成 れる鉄の窒化物を粒界析出物という)は、剥 離や破断の起点となるおそれがある。

 より具体的には、粒界析出物が形成され 機械部品に応力が繰返し負荷された場合、 該粒界析出物が応力の集中源となり、亀裂 発生することがある。そして、この亀裂が 展し、剥離や破断に至るため、機械部品の 労強度が低下する。また、粒界析出物が形 された機械部品に衝撃的な応力が負荷され と、当該粒界析出物が亀裂の発生や進展を 長するため、靭性が低下する場合がある。 まり、機械部品の表層部において過剰な量 窒素が侵入する結果、粒界析出物が形成さ 、これが原因となって機械部品の疲労強度 靭性が低下し得る。

 これに対し、本発明の一の局面における 械部品においては、適切な成分組成を有す 鋼からなる機械部品の表面を含む領域に0.05 質量%以上の窒素富化層を形成した上で、当 窒素富化層における炭素濃度と窒素濃度と 合計値を適切な範囲とすることにより、粒 析出物の形成を抑制することが可能となっ いる。その結果、本発明の機械部品によれ 、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼からな るとともに、表層部に窒素富化層が形成され ており、かつ疲労強度および靭性が十分に確 保された機械部品を提供することができる。 以下、本発明の機械部品を構成する鋼の成分 範囲および窒素富化層における窒素および炭 素の濃度を上記の範囲に限定した理由につい て説明する。

 炭素:0.77質量%以上0.85質量%以下
 機械部品を構成する鋼において、炭素が0.77 質量%未満では、十分な母材硬度が得られな という問題が発生し得る。一方、炭素が0.85 量%を超えると、粗大な炭化物(セメンタイ ;Fe 3 C)が形成されるという問題が発生し得る。し がって、炭素は0.77質量%以上0.85質量%以下と する必要がある。

 珪素:0.01質量%以上0.25質量%以下
 機械部品を構成する鋼において、珪素が0.01 質量%未満では、鋼の製造コスト上昇という 題が発生し得る。一方、珪素が0.25質量%を超 えると、素材の硬度が上昇し冷間加工性が低 下するという問題が発生し得る。したがって 、珪素は0.01質量%以上0.25質量%以下とする必 がある。

 マンガン:0.01質量%以上0.35質量%以下
 機械部品を構成する鋼において、マンガン 0.01質量%未満では、鋼の製造コスト上昇と う問題が発生し得る。一方、マンガンが0.35 量%を超えると、素材の硬度が上昇し冷間加 工性が低下するという問題が発生し得る。し たがって、マンガンは0.01質量%以上0.35質量% 下とする必要がある。

 ニッケル:0.01質量%以上0.15質量%以下
 機械部品を構成する鋼において、ニッケル 0.01質量%未満では、鋼の製造コスト上昇と う問題が発生し得る。一方、ニッケルが0.15 量%を超えると、残留オーステナイト量の増 加という問題が発生し得る。したがって、ニ ッケルは0.01質量%以上0.15質量%以下とする必 がある。

 クロム:3.75質量%以上4.25質量%以下
 機械部品を構成する鋼において、クロムが3 .75質量%未満では、焼戻し軟化抵抗の低下と う問題が発生し得る。一方、クロムが4.25質 %を超えると、炭化物の固溶を阻害するとい う問題が発生し得る。したがって、クロムは 3.75質量%以上4.25質量%以下とする必要がある

 モリブデン:4質量%以上4.5質量%以下
 機械部品を構成する鋼において、モリブデ が4質量%未満では、焼戻軟化抵抗の低下と う問題が発生し得る。一方、モリブデンが4. 5質量%を超えると、鋼の製造コスト上昇とい 問題が発生し得る。したがって、モリブデ は4質量%以上4.5質量%以下とする必要がある

 バナジウム:0.9質量%以上1.1質量%以下
 機械部品を構成する鋼において、バナジウ が0.9質量%未満では、焼戻軟化抵抗の低下や バナジウム添加による組織の微細化の効果が 少なくなるという問題が発生し得る。一方、 バナジウムが1.1質量%を超えると、鋼の製造 スト上昇という問題が発生し得る。したが て、バナジウムは0.9質量%以上1.1質量%以下と する必要がある。

 窒素富化層の窒素濃度:0.05質量%以上
 上記鋼からなる機械部品において、表層部 十分な硬度を付与して耐摩耗性等を確保す ためには、表面を含む領域に窒素濃度が0.05 質量%以上である窒素富化層が形成されてい 必要がある。また、耐摩耗性等を一層向上 せるためには、機械部品の表面における窒 濃度は、0.15質量%以上であることが好ましい 。

 窒素富化層における窒素濃度と炭素濃度と 合計値:0.82質量%以上1.9質量%以下
 上記鋼からなる機械部品において、表層部 十分な硬度を付与して耐摩耗性等を確保す ためには、窒素濃度だけでなく炭素濃度を 管理することが重要である。そして、窒素 化層における窒素濃度と炭素濃度との合計 が0.82質量未満では、表層部に十分な硬度を 付与して耐摩耗性等を確保することが難しく なることを、本発明者は見出した。したがっ て、窒素富化層における窒素濃度と炭素濃度 との合計値は、0.82質量%以上とする必要があ 。また、表層部に十分な硬度を付与して耐 耗性等を確保することを容易にするために 、窒素富化層における窒素濃度と炭素濃度 の合計値は、0.97質量%以上とすることが好 しい。

 一方、上記鋼からなる機械部品において 表層部の窒素濃度が高くなると粒界析出物 形成されやすくなり、炭素濃度が高くなる その傾向がより強くなる。そして、窒素富 層における窒素濃度と炭素濃度との合計値 1.9質量%を超えると、粒界析出物の形成を抑 制することが難しくなることを、本発明者は 見出した。したがって、窒素富化層における 窒素濃度と炭素濃度との合計値は、1.9質量% 下とする必要がある。また、粒界析出物の 成を一層抑制するためには、窒素富化層に ける窒素濃度と炭素濃度との合計値は、1.7 量%以下とすることが好ましい。なお、上記 素濃度および窒素濃度とは、鉄、クロムな の炭化物以外の領域である素地(母相)にお る濃度をいう。

 上記機械部品において好ましくは、上記 素富化層の厚みは0.11mm以上である。軸受、 ブ、等速自在継手、歯車などの機械部品に いては、表面および表面直下、具体的には 面からの距離が0.11mm以内の領域の強度が重 となる場合が多い。そのため、上記窒素富 層の厚みを0.11mm以上とすることにより、機 部品に十分な強度を付与することが可能と る。なお、機械部品の強度を一層十分なも とするためには、上記窒素富化層の厚みは0 .15mm以上であることが好ましい。

 上記機械部品において好ましくは、上記 素富化層は、830HV以上の硬度を有している 表層部に形成される窒素富化層の硬度を830HV 以上とすることにより、機械部品の強度を一 層確実に確保することが可能となる。

 上記機械部品において好ましくは、上記 素富化層を顕微鏡にて観察した場合、アス クト比2以上、長さ7.5μm以上の鉄の窒化物の 数が、一辺150μmの正方形領域5視野内に1個以 である。

 上述のように、アスペクト比2以上、長さ 7.5μm以上の鉄の窒化物である粒界析出物は、 機械部品の疲労強度、靭性などの特性を低下 させるおそれがある。そして、本発明者が上 記成分組成を有する鋼からなる機械部品につ いて、機械部品の疲労強度と粒界析出物の数 密度との関係について調査したところ、上記 窒素富化層を顕微鏡にて観察した場合、粒界 析出物が一辺150μmの正方形領域5視野内に1個 超える数密度で存在すると、機械部品の疲 強度が低下することが分かった。したがっ 、窒素富化層を顕微鏡にて観察した場合、 界析出物の数が一辺150μmの正方形領域5視野 内に1個以下であることにより、機械部品の 労強度を向上させることができる。なお、 械部品の疲労強度を一層向上させるために 、上記粒界析出物の数は、一辺150μmの正方 領域60視野内に1個以下であることが好まし 。

 上記本発明の機械部品は、軸受を構成す 部品として用いられてもよい。表層部が窒 されることにより表層部が強化され、かつ 界析出物の発生が抑制された本発明の機械 品は、疲労強度、耐摩耗性等が要求される 械部品である軸受を構成する部品として好 である。

 なお、上述の機械部品を用いて、軌道輪 、軌道輪に接触し、円環状の軌道上に配置 れる転動体とを備えた転がり軸受を構成し もよい。すなわち、軌道輪および転動体の なくともいずれか一方、好ましくは両方が 上述の機械部品である。表層部が窒化され ことにより表層部が強化され、かつ粒界析 物の発生が抑制された本発明の機械部品を えていることにより、当該転がり軸受によ ば、長寿命な転がり軸受を提供することが きる。

 なお、窒素富化層における窒素および炭 の濃度は、たとえばEPMA(Electron Probe Micro An alysis)により調査することができる。また、 記鉄の窒化物(粒界析出物)の数密度は、たと えば以下のように調査することができる。す なわち、まず機械部品を表面に垂直な断面で 切断し、当該断面を研磨する。その後、適切 な腐食液にて当該断面腐食した上で、窒素富 化層をSEM(Scanning Electron Microscope;走査型電子 微鏡)あるいは光学顕微鏡にて観察して写真 を撮影する。そして、表面が視野の一辺とし て規定された一辺150μmの正方形の視野を画像 解析装置により解析し、粒界析出物の数を調 査する。これをランダムに5視野以上におい 実施し、5視野あたりの粒界析出物の数を算 する。

 本発明の一の局面における転がり軸受は 軌道部材と、軌道部材に接触し、円環状の 道上に配置された複数の転動体とを備えて る。そして、軌道部材は、上記一の局面に ける機械部品であり、転動体はセラミック からなっている。

 本発明の一の局面における転がり軸受に いては、転動体がセラミックスからなって る。これにより、スミアリングの発生が抑 されるとともに、互いに接触する軌道部材 転動体とが異種材料となるため、耐焼付き が向上する。また、鋼に比べて硬度の高い ラミックスを転動体の素材に採用すること より、異物混入環境における転動体の耐久 が向上する。その結果、耐スミアリング性 向上および異物混入環境における耐久性の 上と同時に、潤滑が不十分な環境下におけ 耐久性、たとえばドライラン性能の向上が 成される。また、転動体がセラミックスか なることにより、高温環境下における転動 の硬度低下が抑制される。ここで、転動体 構成するセラミックスとしては、たとえば 化珪素、サイアロン、アルミナ、ジルコニ などを採用することができる。

 つまり、本発明の一の局面における転が 軸受においては、軌道部材が3.75質量%以上 クロムを含有する鋼からなるとともに、転 体がセラミックスからなることにより、高 環境下における軸受部品の硬度低下が抑制 れる。また、適切な成分組成を有する鋼か なる軌道部材の表層部に、炭素濃度と窒素 度との合計値を適切な範囲とした窒素富化 を形成するとともに、転動体がセラミック からなることにより、異物混入環境におけ 軸受部品の耐久性が向上する。さらに、鋼 らなる軌道部材にセラミックスからなる転 体を組み合わせることにより、耐スミアリ グ性の向上とともに、ドライラン性能の向 が達成される。その結果、本発明の転がり 受によれば、高温環境下における軸受部品 硬度低下の抑制、異物混入環境における耐 性の向上および耐スミアリング性の向上の ならず、ドライラン性能の向上をも達成可 な転がり軸受を提供することができる。

 上記本発明の一の局面における転がり軸 は、ガスタービンエンジンの内部において 主軸または主軸の回転を受けて回転する部 である回転部材を、当該回転部材に隣接す 部材に対して回転自在に支持する軸受とし 用いてもよい。ガスタービンエンジンの内 において回転部材(主軸または主軸の回転を 受けて回転する部材)を支持する軸受には、 温環境下における軸受部品の硬度低下の抑 、異物混入環境における耐久性の向上、耐 ミアリング性の向上およびドライラン性能 向上が求められる。そのため、高温環境下 おける軸受部品の硬度低下の抑制、異物混 環境における耐久性の向上および耐スミア ング性の向上のみならず、ドライラン性能 向上を達成可能な本発明の転がり軸受は、 スタービンエンジンの内部において回転部 を支持する軸受として好適である。

 本発明の他の局面における機械部品は、0 .11質量%以上0.15質量%以下の炭素と、0.1質量% 上0.25質量%以下の珪素と、0.15質量%以上0.35質 量%以下のマンガンと、3.2質量%以上3.6質量%以 下のニッケルと、4質量%以上4.25質量%以下の ロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデ と、1.13質量%以上1.33質量%以下のバナジウム を含有し、残部鉄および不純物からなる鋼 ら構成されている。表面を含む領域には、 素濃度が0.05質量%以上である窒素富化層が 成されている。そして、窒素富化層におけ 炭素濃度と窒素濃度との合計値は0.55質量%以 上1.9質量%以下である。

 本発明の他の局面における機械部品にお ては、適切な成分組成を有する鋼からなる 械部品の表面を含む領域に0.05質量%以上の 素富化層を形成した上で、当該窒素富化層 おける炭素濃度と窒素濃度との合計値を適 な範囲とすることにより、粒界析出物の形 を抑制することが可能となっている。その 果、本発明の機械部品によれば、4質量%以上 のクロムを含有する鋼からなるとともに、表 層部に窒素富化層が形成されており、かつ疲 労強度および靭性が十分に確保された機械部 品を提供することができる。以下、本発明の 機械部品を構成する鋼の成分範囲および窒素 富化層における窒素および炭素の濃度を上記 の範囲に限定した理由について説明する。

 炭素:0.11質量%以上0.15質量%以下
 機械部品を構成する鋼において、炭素が0.11 質量%未満では、鋼の製造コスト上昇という 題が発生し得る。一方、炭素が0.15質量%を超 えると、心部硬度の上昇、靱性の低下という 問題が発生し得る。したがって、炭素は0.11 量%以上0.15質量%以下とする必要がある。

 珪素:0.1質量%以上0.25質量%以下
 機械部品を構成する鋼において、珪素が0.1 量%未満では、鋼の製造コスト上昇という問 題が発生し得る。一方、珪素が0.25質量%を超 ると、素材の硬度が上昇し冷間加工性が低 するという問題が発生し得る。したがって 珪素は0.1質量%以上0.25質量%以下とする必要 ある。

 マンガン:0.15質量%以上0.35質量%以下
 機械部品を構成する鋼において、マンガン 0.15質量%未満では、鋼の製造コスト上昇と う問題が発生し得る。一方、マンガンが0.35 量%を超えると、素材の硬度が上昇し冷間加 工性が低下するという問題が発生し得る。し たがって、マンガンは0.15質量%以上0.35質量% 下とする必要がある。

 ニッケル:3.2質量%以上3.6質量%以下
 機械部品を構成する鋼において、ニッケル 3.2質量%未満では、耐食性や硬度、靱性の向 上という効果が少なくなるという問題が発生 し得る。一方、ニッケルが3.6質量%を超える 、残留オーステナイト量の増加という問題 発生し得る。したがって、ニッケルは3.2質 %以上3.6質量%以下とする必要がある。

 クロム:4質量%以上4.25質量%以下
 機械部品を構成する鋼において、クロムが4 質量%未満では、焼戻し軟化抵抗の低下とい 問題が発生し得る。一方、クロムが4.25質量% を超えると、炭化物の固溶を阻害するという 問題が発生し得る。したがって、クロムは4 量%以上4.25質量%以下とする必要がある。

 モリブデン:4質量%以上4.5質量%以下
 機械部品を構成する鋼において、モリブデ が4質量%未満では、焼戻軟化抵抗の低下と う問題が発生し得る。一方、モリブデンが4. 5質量%を超えると、鋼の製造コスト上昇とい 問題が発生し得る。したがって、モリブデ は4質量%以上4.5質量%以下とする必要がある

 バナジウム:1.13質量%以上1.33質量%以下
 機械部品を構成する鋼において、バナジウ が1.13質量%未満では、焼戻軟化抵抗の低下 バナジウム添加によるミクロ組織の微細化 効果が少なくなるという問題が発生し得る 一方、バナジウムが1.33質量%を超えると、鋼 の製造コスト上昇という問題が発生し得る。 したがって、バナジウムは1.13質量%以上1.33質 量%以下とする必要がある。

 窒素富化層の窒素濃度:0.05質量%以上
 上記鋼からなる機械部品において、表層部 十分な硬度を付与して耐摩耗性等を確保す ためには、表面を含む領域に窒素濃度が0.05 質量%以上である窒素富化層が形成されてい 必要がある。また、耐摩耗性等を一層向上 せるためには、機械部品の表面における窒 濃度は、0.15質量%以上であることが好ましい 。

 窒素富化層における窒素濃度と炭素濃度と 合計値:0.55質量%以上1.9質量%以下
 上記鋼からなる機械部品において、表層部 十分な硬度を付与して耐摩耗性等を確保す ためには、窒素濃度だけでなく炭素濃度を 管理することが重要である。そして、窒素 化層における窒素濃度と炭素濃度との合計 が0.55質量未満では、表層部に十分な硬度を 付与して耐摩耗性等を確保することが難しく なることを、本発明者は見出した。したがっ て、窒素富化層における窒素濃度と炭素濃度 との合計値は、0.55質量%以上とする必要があ 。また、表層部に十分な硬度を付与して耐 耗性等を確保することを容易にするために 、窒素富化層における窒素濃度と炭素濃度 の合計値は、0.7質量%以上とすることが好ま しい。

 一方、上記鋼からなる機械部品において 表層部の窒素濃度が高くなると粒界析出物 形成されやすくなり、炭素濃度が高くなる その傾向がより強くなる。そして、窒素富 層における窒素濃度と炭素濃度との合計値 1.9質量%を超えると、粒界析出物の形成を抑 制することが難しくなることを、本発明者は 見出した。したがって、窒素富化層における 窒素富化層における窒素濃度と炭素濃度との 合計値は、1.9質量%以下とする必要がある。 た、粒界析出物の形成を一層抑制するため は、窒素富化層における窒素濃度と炭素濃 との合計値は、1.7質量%以下とすることが好 しい。なお、上記炭素濃度および窒素濃度 は、鉄、クロムなどの炭化物や窒化物以外 領域である素地(母相)における濃度をいう

 上記他の局面における機械部品において ましくは、上記窒素富化層の厚みは0.11mm以 である。軸受、ハブ、等速自在継手、歯車 どの機械部品においては、表面および表面 下、具体的には表面からの距離が0.11mm以内 領域の強度が重要となる場合が多い。その め、上記窒素富化層の厚みを0.11mm以上とす ことにより、機械部品に十分な強度を付与 ることが可能となる。なお、機械部品の強 を一層十分なものとするためには、上記窒 富化層の厚みは0.15mm以上であることが好ま い。

 上記他の局面における機械部品において ましくは、上記窒素富化層は、800HV以上の 度を有している。表層部に形成される窒素 化層の硬度を800HV以上とすることにより、機 械部品の強度を一層確実に確保することが可 能となる。

 上記他の局面における機械部品において ましくは、上記窒素富化層を顕微鏡にて観 した場合、アスペクト比2以上、長さ7.5μm以 上の鉄の窒化物の数が、一辺150μmの正方形領 域5視野内に1個以下である。

 上述のように、アスペクト比2以上、長さ 7.5μm以上の鉄の窒化物である粒界析出物は、 機械部品の疲労強度、靭性などの特性を低下 させるおそれがある。そして、本発明者が上 記成分組成を有する鋼からなる機械部品につ いて、機械部品の疲労強度と粒界析出物の数 密度との関係について調査したところ、上記 窒素富化層を顕微鏡にて観察した場合、粒界 析出物が一辺150μmの正方形領域5視野内に1個 超える数密度で存在すると、機械部品の疲 強度が低下することが分かった。したがっ 、窒素富化層を顕微鏡にて観察した場合、 界析出物の数が一辺150μmの正方形領域5視野 内に1個以下であることにより、機械部品の 労強度を向上させることができる。なお、 械部品の疲労強度を一層向上させるために 、上記粒界析出物の数は、一辺150μmの正方 領域60視野内に1個以下であることが好まし 。

 上記本発明の他の局面における機械部品 、軸受を構成する部品として用いられても い。表層部が窒化されることにより強化さ 、かつ粒界析出物の発生が抑制された本発 の機械部品は、疲労強度、耐摩耗性等が要 される機械部品である軸受を構成する部品 して好適である。

 なお、上述の他の局面における機械部品 用いて、軌道輪と、軌道輪に接触し、円環 の軌道上に配置される転動体とを備えた転 り軸受を構成してもよい。すなわち、軌道 および転動体の少なくともいずれか一方、 ましくは両方が、上述の機械部品である。 層部が窒化されることにより強化され、か 粒界析出物の発生が抑制された本発明の機 部品を備えていることにより、当該転がり 受によれば、長寿命な転がり軸受を提供す ことができる。

 本発明の他の局面における転がり軸受は 軌道部材と、軌道部材に接触し、円環状の 道上に配置された複数の転動体とを備えて る。そして、軌道部材は、上記他の局面に ける機械部品であり、転動体はセラミック からなっている。

 本発明の他の局面における転がり軸受に いては、転動体がセラミックスからなって る。これにより、スミアリングの発生が抑 されるとともに、互いに接触する軌道部材 転動体とが異種材料となるため、耐焼付き が向上する。また、鋼に比べて硬度の高い ラミックスを転動体の素材に採用すること より、異物混入環境における転動体の耐久 が向上する。その結果、耐スミアリング性 向上および異物混入環境における耐久性の 上と同時に、潤滑が不十分な環境下におけ 耐久性、たとえばドライラン性能の向上が 成される。また、転動体がセラミックスか なることにより、高温環境下における転動 の硬度低下が抑制される。ここで、転動体 構成するセラミックスとしては、たとえば 化珪素、サイアロン、アルミナ、ジルコニ などを採用することができる。

 つまり、本発明の他の局面における転が 軸受においては、軌道部材が4質量%以上の ロムを含有する鋼からなるとともに、転動 がセラミックスからなることにより、高温 境下における軸受部品の硬度低下が抑制さ る。また、適切な成分組成を有する鋼から る軌道部材の表層部に、炭素濃度と窒素濃 との合計値を適切な範囲とした窒素富化層 形成するとともに、転動体がセラミックス らなることにより、異物混入環境における 受部品の耐久性が向上する。さらに、鋼か なる軌道部材にセラミックスからなる転動 を組み合わせることにより、耐スミアリン 性の向上とともに、ドライラン性能の向上 達成される。その結果、本発明の転がり軸 によれば、高温環境下における軸受部品の 度低下の抑制、異物混入環境における耐久 の向上および耐スミアリング性の向上のみ らず、ドライラン性能の向上をも達成可能 転がり軸受を提供することができる。

 上記本発明の他の局面における転がり軸 は、ガスタービンエンジンの内部において 主軸または主軸の回転を受けて回転する部 である回転部材を、当該回転部材に隣接す 部材に対して回転自在に支持する軸受とし 用いてもよい。ガスタービンエンジンの内 において回転部材(主軸または主軸の回転を 受けて回転する部材)を支持する軸受には、 温環境下における軸受部品の硬度低下の抑 、異物混入環境における耐久性の向上、耐 ミアリング性の向上およびドライラン性能 向上が求められる。そのため、高温環境下 おける軸受部品の硬度低下の抑制、異物混 環境における耐久性の向上および耐スミア ング性の向上のみならず、ドライラン性能 向上を達成可能な本発明の転がり軸受は、 スタービンエンジンの内部において回転部 を支持する軸受として好適である。

 以上の説明から明らかなように、本発明 機械部品によれば、3.75質量%以上のクロム 含有する鋼からなるとともに、表層部に窒 富化層が形成されており、かつ疲労強度お び靭性が十分に確保された機械部品を提供 ることができる。また、本発明の転がり軸 によれば、高温環境下における軸受部品の 度低下の抑制、異物混入環境における耐久 の向上および耐スミアリング性の向上のみ らず、ドライラン性能の向上をも達成可能 転がり軸受を提供することができる。

本発明の実施の形態1における機械部品 を備えた深溝玉軸受の構成を示す概略断面図 である。 図1の要部を拡大して示す概略部分断面 図である。 第1の変形例である機械部品を備えたス ラストニードルころ軸受の構成を示す概略断 面図である。 図3の要部を拡大して示す概略部分断面 図である。 第2の変形例である機械部品を備えた等 速ジョイントの構成を示す概略断面図である 。 図5の線分VI-VIに沿う概略断面図である 図5の等速ジョイントが角度をなした状 態を示す概略断面図である。 図5の要部を拡大して示す概略部分断面 図である。 図6の要部を拡大して示す概略部分断面 図である。 本発明の実施の形態1における機械部 および当該機械部品を備えた機械要素の製 方法の概略を示す図である。 機械部品の製造方法に含まれる熱処理 工程の詳細を説明するための図である。 本発明の転がり軸受を適用可能なター ボファンエンジンの構成を示す概略図である 。 3点接触玉軸受の構成を示す概略断面 である。 図13の要部を拡大して示す概略部分断 図である。 円筒ころ軸受の構成を示す概略断面図 である。 図15の要部を拡大して示す概略部分断 図である。 転がり軸受の製造方法の概略を示すフ ローチャートである。 本発明の実施の形態3における機械部 および当該機械部品を備えた機械要素の製 方法の概略を示す図である。 機械部品の製造方法に含まれる熱処理 工程の詳細を説明するための図である。 転がり軸受の製造方法の概略を示すフ ローチャートである。 実施例Aの表面付近におけるミクロ組 の光学顕微鏡写真である。 実施例Aの表面付近における硬度分布 示す図である。 実施例Aの表面付近における炭素およ 窒素の濃度の分布を示す図である。 比較例Aの表面付近におけるミクロ組 の光学顕微鏡写真である。 比較例Aの表面付近における硬度分布 示す図である。 比較例Aの表面付近における炭素およ 窒素の濃度の分布を示す図である。 拡散工程の各加熱温度における加熱処 理時間と母材の硬度との関係を示す図(アブ ミプロット)である。 試験片の表層部の硬度分布を示す図で ある。 実施例Bの表面付近におけるミクロ組 の光学顕微鏡写真である。 実施例Bの表面付近における硬度分布 示す図である。 実施例Bの表面付近における炭素およ 窒素の濃度の分布を示す図である。 比較例Bの表面付近におけるミクロ組 の光学顕微鏡写真である。 比較例Bの表面付近における硬度分布 示す図である。 比較例Bの表面付近における炭素およ 窒素の濃度の分布を示す図である。 拡散工程の各加熱温度における加熱処 理時間と浸炭層の硬度との関係を示す図(ア ラミプロット)である。 試験片の表層部の硬度分布を示す図で ある。

符号の説明

 1 深溝玉軸受、2 スラストニードルころ 受、3 等速ジョイント、4 3点接触玉軸受、 5 円筒ころ軸受、11 外輪、11A 外輪転走面、 11B 外輪窒素富化層、12 内輪、12A 内輪転走 、12B 内輪窒素富化層、13 玉、13A 玉転走 、13B 玉窒素富化層、14,24 保持器、21 軌道 、21A 軌道輪転走面、21B 軌道輪窒素富化層 、23A ころ転走面、23B ころ窒素富化層、31  ンナーレース、31A インナーレースボール 、31B インナーレース窒素富化層、32 アウ ーレース、32A アウターレースボール溝、32B  アウターレース窒素富化層、33 ボール、33A  ボール転走面、33B ボール窒素富化層、34  ージ、35,36 軸、41,51 外輪、41A,51A 外輪転 面、41B,51B 外輪窒素富化層、42,52 内輪、42A, 52A 内輪転走面、42B,52B 内輪窒素富化層、421 第1内輪、421A 第1内輪転走面、422 第2内輪、 422A 第2内輪転走面、43 玉、43A 玉転走面、44 ,54 保持器、53 ころ、53A ころ転走面、70 タ ーボファンエンジン、71 圧縮部、72 燃焼部 73 タービン部、74 低圧主軸、75 ファン、7 5A ファンブレード、76 ファンナセル、77 高 圧主軸、78 コアカウル、79 バイパス流路、8 1 コンプレッサ、81A 低圧コンプレッサ、81B 高圧コンプレッサ、82 燃焼室、83 タービン 、83A 低圧タービン、83B 高圧タービン、84  ービンノズル、87 タービンブレード、88  ンプレッサブレード、89 転がり軸受、90 粒 界析出物。

 以下、図面に基づいて本発明の実施の形 を説明する。なお、以下の図面において同 または相当する部分には同一の参照番号を し、その説明は繰返さない。

 (実施の形態1)
 まず、本発明の一実施の形態である実施の 態1について説明する。

 図1を参照して、深溝玉軸受1は、環状の 輪11と、外輪11の内側に配置された環状の内 12と、外輪11と内輪12との間に配置され、円 状の保持器14に保持された転動体としての 数の玉13とを備えている。外輪11の内周面に 外輪転走面11Aが形成されており、内輪12の 周面には内輪転走面12Aが形成されている。 して、内輪転走面12Aと外輪転走面11Aとが互 に対向するように、外輪11と内輪12とは配置 れている。さらに、複数の玉13は、玉転走 13Aにおいて内輪転走面12Aおよび外輪転走面11 Aに接触し、かつ保持器14により周方向に所定 のピッチで配置されることにより、円環状の 軌道上に転動自在に保持されている。以上の 構成により、深溝玉軸受1の外輪11および内輪 12は、互いに相対的に回転可能となっている

 ここで、機械部品である外輪11、内輪12お よび玉13は、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素 と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01 量%以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量 %以上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以 4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量 %以下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以 下のバナジウムとを含有し、残部鉄および不 純物からなる鋼から構成されている。そして 、図2を参照して、外輪11、内輪12および玉13 表面である外輪転走面11A、内輪転走面12Aお び玉転走面13Aを含む領域には、窒素濃度が0. 05質量%以上である外輪窒素富化層11B、内輪窒 素富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bが形成され ている。さらに、外輪窒素富化層11B、内輪窒 素富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bにおける炭 素濃度と窒素濃度との合計値は0.82質量%以上1 .9質量%以下である。ここで、上記不純物は、 鋼の原料に由来するもの、あるいは製造工程 において混入するものなどの不可避的不純物 を含む。

 本実施の形態における機械部品である外 11、内輪12および玉13においては、上記適切 成分組成を有する鋼からなるとともに、表 に形成された外輪転走面11A、内輪転走面12A よび玉転走面13Aを含む領域に窒素濃度が0.05 質量%以上である外輪窒素富化層11B、内輪窒 富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bが形成され いる。そして、外輪窒素富化層11B、内輪窒 富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bにおける炭 濃度と窒素濃度との合計値が適切な範囲で る0.82質量%以上1.9質量%以下とされることに り、表層部に十分な硬度が付与されるとと に、粒界析出物の形成が抑制されている。 の結果、本実施の形態における機械部品で る外輪11、内輪12および玉13は、3.75質量%以上 のクロムを含有する鋼からなるとともに、表 層部に窒素富化層が形成されており、かつ疲 労強度および靭性が十分に確保された機械部 品となっている。また、外輪11、内輪12およ 玉13を備えた転がり軸受である深溝玉軸受1 、長寿命な転がり軸受となっている。

 さらに、外輪11、内輪12および玉13に形成 れた外輪窒素富化層11B、内輪窒素富化層12B よび玉窒素富化層13Bの厚みは、0.11mm以上で ることが好ましい。これにより、外輪11、 輪12および玉13に十分な強度が付与される。

 さらに、外輪窒素富化層11B、内輪窒素富 層12Bおよび玉窒素富化層13Bは、830HV以上の 度を有していることが好ましい。これによ 、外輪11、内輪12および玉13の強度を一層確 に確保することが可能となる。

 さらに、外輪窒素富化層11B、内輪窒素富 層12Bおよび玉窒素富化層13Bを顕微鏡にて観 した場合、アスペクト比2以上、長さ7.5μm以 上の鉄の窒化物の数が、一辺150μmの正方形領 域5視野内に1個以下であることが好ましい。 れにより、外輪11、内輪12および玉13の疲労 度を向上させることができる。

 次に、図3および図4を参照して、本実施 形態における第1の変形例であるスラストニ ドルころ軸受について説明する。

 図3を参照して、スラストニードルころ軸 受2は、円盤状の形状を有し、互いに一方の 面が対向するように配置された転動部材と ての一対の軌道輪21と、転動部材としての複 数のニードルころ23と、円環状の保持器24と 備えている。複数のニードルころ23は、一対 の軌道輪21の互いに対向する主面に形成され 軌道輪転走面21Aに、その外周面であるころ 走面23Aにおいて接触し、かつ保持器24によ 周方向に所定のピッチで配置されることに り円環状の軌道上に転動自在に保持されて る。以上の構成により、スラストニードル ろ軸受2の一対の軌道輪21は、互いに相対的 回転可能となっている。

 ここで、図4を参照して、本変形例におけ るスラストニードルころ軸受2の軌道輪21は上 記深溝玉軸受1の外輪11および内輪12に、ニー ルころ23は玉13に該当し、同様の構成を有し ており、同様の効果を奏する。すなわち、機 械部品である軌道輪21およびニードルころ23 、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0.01質 量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量%以上0 .35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0.15 量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25質量% 以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモ リブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下のバナ ウムとを含有し、残部鉄および不純物から る鋼から構成されている。そして、図4を参 照して、軌道輪21およびニードルころ23の表 である軌道輪転走面21Aおよびころ転走面23A 含む領域には、窒素濃度が0.05質量%以上であ る軌道輪窒素富化層21Bおよびころ窒素富化層 23Bが形成されている。さらに、軌道輪窒素富 化層21Bおよびころ窒素富化層23Bにおける炭素 濃度と窒素濃度との合計値は0.82質量%以上1.9 量%以下である。

 本変形例における機械部品である軌道輪2 1およびニードルころ23においては、上記適切 な成分組成を有する鋼からなるとともに、表 面に形成された軌道輪転走面21Aおよびころ転 走面23Aを含む領域に窒素濃度が0.05質量%以上 ある軌道輪窒素富化層21Bおよびころ窒素富 層23Bが形成されている。そして、軌道輪窒 富化層21Bおよびころ窒素富化層23Bにおける 素濃度と窒素濃度との合計値が適切な範囲 ある0.82質量%以上1.9質量%以下とされること より、表層部に十分な硬度が付与されると もに、粒界析出物の形成が抑制されている その結果、本変形例における機械部品であ 軌道輪21およびニードルころ23は、3.75質量% 上のクロムを含有する鋼からなるとともに 表層部に窒素富化層が形成されており、か 疲労強度および靭性が十分に確保された機 部品となっている。また、軌道輪21および ードルころ23を備えた転がり軸受であるスラ ストニードルころ軸受2は、長寿命な転がり 受となっている。

 次に、図5~図9を参照して、本実施の形態 おける第2の変形例である等速ジョイントに ついて説明する。

 図5および図6を参照して、等速ジョイン 3は、軸35に連結されたインナーレース31と、 インナーレース31の外周側を囲むように配置 れ、軸36に連結されたアウターレース32と、 インナーレース31とアウターレース32との間 配置されたトルク伝達用のボール33と、ボー ル33を保持するケージ34とを備えている。ボ ル33は、インナーレース31の外周面に形成さ たインナーレースボール溝31Aと、アウター ース32の内周面に形成されたアウターレー ボール溝32Aとにボール転走面33Aにおいて接 して配置され、脱落しないようにケージ34に よって保持されている。

 インナーレース31の外周面およびアウタ レース32の内周面のそれぞれに形成されたイ ンナーレースボール溝31Aとアウターレースボ ール溝32Aとは、図3に示すように、軸35および 軸36の中央を通る軸が一直線上にある状態に いて、それぞれ当該軸上のジョイント中心O から当該軸上の左右に等距離離れた点Aおよ 点Bを曲率中心とする曲線(円弧)状に形成さ ている。すなわち、インナーレースボール 31Aおよびアウターレースボール溝32Aに接触 て転動するボール33の中心Pの軌跡が、点A(イ ンナーレース中心A)および点B(アウターレー 中心B)に曲率中心を有する曲線(円弧)となる うに、インナーレースボール溝31Aおよびア ターレースボール溝32Aのそれぞれは形成さ ている。これにより、等速ジョイントが角 をなした場合(軸35および軸36の中央を通る が交差するように等速ジョイントが動作し 場合)においても、ボール33は、常に軸35およ び軸36の中央を通る軸のなす角(∠AOB)の2等分 上に位置する。

 次に、等速ジョイント3の動作について説 明する。図5および図6を参照して、等速ジョ ント3においては、軸35、36の一方に軸まわ の回転が伝達されると、インナーレースボ ル溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aに め込まれたボール33を介して、軸35、36の他 の軸に当該回転が伝達される。ここで、図7 示すように軸35、36が角度θをなした場合、 ール33は、前述のインナーレース中心Aおよ アウターレース中心Bに曲率中心を有するイ ンナーレースボール溝31Aおよびアウターレー スボール溝32Aに案内されて、中心Pが∠AOBの 等分線上となる位置に保持される。ここで ジョイント中心Oからインナーレース中心Aま での距離と、アウターレース中心Bまでの距 とが等しくなるように、インナーレースボ ル溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aが 成されているため、ボール33の中心Pからイ ナーレース中心Aおよびアウターレース中心B までの距離はそれぞれ等しく、三角形OAPと三 角形OBPとは合同である。その結果、ボール33 中心Pから軸35、36までの距離Lは互いに等し なり、軸35、36の一方が軸まわりに回転した 場合、他方も等速で回転する。このように、 等速ジョイント3は、軸35、36が角度をなした 合でも、等速性を確保することができる。 お、ケージ34は、軸35、36が回転した場合に インナーレースボール溝31Aおよびアウター ースボール溝32Aからボール33が飛び出すこ をインナーレースボール溝31Aおよびアウタ レースボール溝32Aとともに防止すると同時 、等速ジョイント3のジョイント中心Oを決定 する機能を果たしている。

 ここで、本変形例における等速ジョイン 3のインナーレース31およびアウターレース3 2は上記深溝玉軸受1の外輪11および内輪12に、 ボール33は玉13に該当し、同様の構成を有し おり、同様の効果を奏する。すなわち、機 部品であるインナーレース31、アウターレー ス32およびボール33は、0.77質量%以上0.85質量% 下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪 素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマンガン 、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケルと、3 .75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量% 上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量%以 1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、残部 および不純物からなる鋼から構成されてい 。そして、図8および図9を参照して、イン ーレース31、アウターレース32およびボール3 3の表面に形成されたインナーレースボール 31Aの表面、アウターレースボール溝32Aの表 およびボール転走面33Aを含む領域には、窒 濃度が0.05質量%以上であるインナーレース窒 素富化層31B、アウターレース窒素富化層32Bお よびボール窒素富化層33Bが形成されている。 さらに、インナーレース窒素富化層31B、アウ ターレース窒素富化層32Bおよびボール窒素富 化層33Bにおける炭素濃度と窒素濃度との合計 値は0.82質量%以上1.9質量%以下である。

 本変形例における機械部品であるインナ レース31、アウターレース32およびボール33 おいては、上記適切な成分組成を有する鋼 らなるとともに、表面に形成されたインナ レースボール溝31Aの表面、アウターレース ール溝32Aの表面およびボール転走面33Aを含 領域に窒素濃度が0.05質量%以上であるイン ーレース窒素富化層31B、アウターレース窒 富化層32Bおよびボール窒素富化層33Bが形成 れている。そして、インナーレース窒素富 層31B、アウターレース窒素富化層32Bおよび ール窒素富化層33Bにおける炭素濃度と窒素 度との合計値が適切な範囲である0.82質量%以 上1.9質量%以下とされることにより、表層部 十分な硬度が付与されるとともに、粒界析 物の形成が抑制されている。その結果、本 形例における機械部品であるインナーレー 31、アウターレース32およびボール33は、3.75 量%以上のクロムを含有する鋼からなるとと もに、表層部に窒素富化層が形成されており 、かつ疲労強度および靭性が十分に確保され た機械部品となっている。また、インナーレ ース31、アウターレース32およびボール33を備 えた自在継手である等速ジョイント3は、長 命な等速自在継手となっている。

 次に、上記本発明の実施の形態1における 機械部品、および上記機械部品を備えた転が り軸受、等速ジョイントなどの機械要素の製 造方法について説明する。

 図10を参照して、まず、0.77質量%以上0.85 量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量%以下 の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマン ンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケル 、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4 量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9質量 %以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し、 部鉄および不純物からなる鋼からなり、機 部品の概略形状に成形された鋼部材を準備 る鋼部材準備工程が実施される。具体的に 、たとえば、上記成分を含有する棒鋼、鋼 などを素材とし、当該棒鋼、鋼線などに対 て切断、鍛造、旋削などの加工が実施され ことにより、機械部品としての外輪11、軌 輪21、インナーレース31などの機械部品の概 形状に成形された鋼部材が準備される。

 次に、鋼部材準備工程において準備され 上述の鋼部材に対して、焼入処理および窒 処理を含む熱処理を行なう熱処理工程が実 される。この熱処理工程の詳細については 述する。

 次に、熱処理工程が実施された鋼部材に して、仕上げ加工などが施される仕上げ工 が実施される。具体的には、たとえば、熱 理工程が実施された鋼部材の内輪転走面12A 軌道輪転走面21A、アウターレースボール溝3 2Aなどに対する研磨加工が実施される。これ より、本実施の形態における機械部品は完 し、本実施の形態における機械部品の製造 法は完了する。

 さらに、完成した機械部品が組合わされ 機械要素が組立てられる組立て工程が実施 れる。具体的には、上述の工程により製造 れた本発明の機械部品である、たとえば外 11、内輪12、玉13と保持器14とが組合わされ 、深溝玉軸受1が組立てられる。これにより 本発明の機械部品を備えた機械要素が製造 れる。

 次に、図11を参照して、上述の熱処理工 の詳細について説明する。図11において、横 方向は時間を示しており右に行くほど時間が 経過していることを示している。また、図11 おいて、縦方向は温度を示しており上に行 ほど温度が高いことを示している。

 図11を参照して、本実施の形態における機 部品の製造方法の熱処理工程においては、 ず、被処理物としての鋼部材が焼入処理さ る焼入工程が実施される。具体的には、鋼 材が減圧雰囲気中(真空中)または塩浴中でA 1 変態点以上の温度である温度T 1 に加熱され、時間t 1 の間保持された後、A 1 変態点以上の温度からM S 点以下の温度に冷却されることにより、鋼部 材が焼入処理される。

 ここで、A 1 点とは鋼を加熱した場合に、鋼の組織がフェ ライトからオーステナイトに変態を開始する 温度に相当する点をいう。また、M s 点とはオーステナイト化した鋼が冷却される 際に、マルテンサイト化を開始する温度に相 当する点をいう。

 次に、焼入処理が実施された鋼部材に対し 焼戻処理を行なう第1焼戻工程が実施される 。具体的には、たとえば鋼部材が真空中でA 1 変態点未満の温度である温度T 2 に加熱され、時間t 2 の間保持された後、冷却されることにより鋼 部材が焼戻処理される。これにより、鋼部材 の焼入処理による残留応力を緩和し、熱処理 によるひずみが抑制される等の効果が得られ る。

 次に、第1焼戻工程が実施された鋼部材に対 し、サブゼロ処理を行なうサブゼロ工程が実 施される。具体的には、鋼部材がたとえば液 体窒素を噴霧されて0℃未満の温度である温 T 3 に冷却され、時間t 3 の間保持されることによりサブゼロ処理され る。これにより、鋼部材の焼入処理により生 成した残留オーステナイトがマルテンサイト に変態し、鋼の組織が安定化する等の効果が 得られる。

 次に、サブゼロ工程が実施された鋼部材に し、焼戻処理を行なう第2焼戻工程が実施さ れる。具体的には、たとえば鋼部材が真空中 でA 1 変態点未満の温度である温度T 4 に加熱され、時間t 4 の間保持された後、冷却されることにより焼 戻処理される。これにより、鋼部材のサブゼ ロ処理による残留応力が緩和され、ひずみが 抑制される等の効果が得られる。

 次に、第2焼戻工程が実施された鋼部材に対 し、再度焼戻処理を行なう第3焼戻工程が実 される。具体的には、たとえば上記第2焼戻 程と同様に鋼部材が真空中でA 1 変態点未満の温度である温度T 5 に加熱され、時間t 5 の間保持された後、冷却されることにより、 焼戻処理される。ここで、温度T 5 およびt 5 は第2焼戻工程の温度T 4 およびt 4 と同様の条件とすることができる。これによ り、第2焼戻工程と同様に、鋼部材のサブゼ 処理による残留応力を緩和し、ひずみが抑 される等の効果が得られる。なお、第2焼戻 程および第3焼戻工程は、1つの工程で実施 てもよい。

 次に、第3焼戻工程が実施された鋼部材に対 し、プラズマ窒化処理を行なうプラズマ窒化 工程が実施される。具体的には、たとえば圧 力50Pa以上5000Pa以下となるように窒素(N 2 )と、水素(H 2 )、メタン(CH 4 )およびアルゴン(Ar)からなる群から選択され 少なくともいずれか1つ以上とが導入された プラズマ窒化炉に、鋼部材が挿入され、放電 電圧50V以上1000V以下、放電電流0.001A以上100A以 下の条件下で温度T 6 に加熱されて時間t 6 の間保持された後、冷却されることにより鋼 部材がプラズマ窒化処理される。これにより 、鋼部材の表層部に窒素が侵入して窒素富化 層が形成され、当該表層部の強度が向上する 。ここで、温度T 6 は、たとえば300℃以上550℃以下、時間t 6 は1時間以上80時間以下とすることができる。 この温度T 6 、時間t 6 などの熱処理条件は、仕上げ工程で実施され る仕上げ加工における取りしろを考慮し、プ ラズマ窒化処理において形成される粒界析出 物層の厚みが、仕上げ加工において除去可能 な厚みとなるように決定することができる。

 なお、鋼部材を構成する鋼がAMS規格6490(AISI 格M50)である場合、プラズマ窒化工程におけ る上記圧力は50Pa以上1000Pa以下、放電電圧は50 V以上600V以下、放電電流は0.001A以上300A以下、 温度T 6 は350℃以上450℃以下、時間t 6 は1時間以上50時間以下とすることが好ましい 。

 次に、プラズマ窒化工程が実施された鋼部 に対し、拡散処理を行なう拡散工程が実施 れる。具体的には、たとえば真空中で温度T 7 に加熱され、時間t 7 の間保持されることにより鋼部材が拡散処理 される。ここで、温度T 7 は、300℃以上480℃以下、好ましくは300℃以上 430℃以下、時間t 7 は50時間以上300時間以下とすることができる これにより、窒化層形成による表層部の硬 上昇が相殺されることを抑制しつつ、鋼に 入した窒素を所望の領域にまで到達させる とができる。そして、この拡散工程を実施 ることにより、プラズマ窒化工程において 素が侵入する深さを、仕上げ加工での粒界 出物層の除去が可能な範囲にとどめても、 に侵入した窒素を所望の領域にまで到達さ ることができる。以上の工程により、本実 の形態における熱処理工程は完了する。

 以上のように、本実施の形態における鋼 熱処理方法によれば、3.75質量%以上のクロ を含有する鋼の表層部を窒化処理して高硬 な窒素富化層を形成するとともに、拡散処 により粒界析出物の発生を抑制することが きる。

 また、上記実施の形態における機械部品 製造方法によれば、3.75質量%以上のクロム 含有する鋼からなり、表層部が窒化処理さ て高硬度な窒素富化層が形成されるととも 、粒界析出物の発生が抑制された機械部品( 輪11、軌道輪21、インナーレース31など)を製 造することができる。その結果、上述のよう に、本実施の形態における機械部品(外輪11、 軌道輪21、インナーレース31など)の表面(外輪 転走面11A、軌道輪転走面21A、インナーレース ボール溝31Aの表面など)を含む領域に窒素濃 が0.05質量%以上、炭素濃度と窒素濃度との合 計値が0.82質量%以上1.9質量%以下である厚み0.1 1mm以上、硬度830HV以上の窒素富化層を形成す とともに、当該窒素富化層を表面に垂直な 面で切断し、当該断面を光学顕微鏡またはS EMを用いて、表面を含む一辺150μmの正方形の 野をランダムに5視野観察した場合、粒界析 出物の検出数を1個以下とすることができる ここで、窒素富化層における炭素濃度およ 窒素濃度は、たとえばプラズマ窒化工程に いて実施されるプラズマ窒化の処理時間、 よび拡散工程において実施される拡散処理 処理時間を調整することにより、コントロ ルすることができる。

 (実施の形態2)
 次に、図12を参照して、本発明の一実施の 態である実施の形態2におけるターボファン ンジンの構成について説明する。

 図12を参照して、ターボファンエンジン70 は、圧縮部71と、燃焼部72と、タービン部73と を備えている。そして、ターボファンエンジ ン70は、圧縮部71から、燃焼部72を通り、ター ビン部73に至るように配置された、低圧主軸7 4と、低圧主軸74の外周面を取り囲むように配 置された高圧主軸77とを備えている。

 圧縮部71は、低圧主軸74に接続され、低圧 主軸74から径方向外側に突出するように形成 れた複数のファンブレード75Aを有するファ 75と、ファン75の外周側を取り囲むとともに 燃焼部72に向けて延在するファンナセル76と ファン75から見て燃焼部72側に配置されたコ プレッサ81とを含んでいる。コンプレッサ81 は、低圧コンプレッサ81Aと、低圧コンプレッ サ81Aから見て燃焼部72側に配置される高圧コ プレッサ81Bとを有している。低圧コンプレ サ81Aは、低圧主軸74に接続され、低圧主軸74 側から径方向外側に向けて突出し、かつファ ン75側から燃焼部72に近づく方向に並べて配 される複数のコンプレッサブレード88を有し ている。また、高圧コンプレッサ81Bは、高圧 主軸77に接続され、高圧主軸77側から径方向 側に向けて突出し、かつファン75側から燃焼 部72に近づく方向に並べて配置される複数の ンプレッサブレード88を有している。さら 、低圧コンプレッサ81Aの外周側を取り囲む うに、コアカウル78が配置されている。この コアカウル78とファンナセル76との間の環状 空間は、バイパス流路79を構成する。

 燃焼部72は、圧縮部71の高圧コンプレッサ 81Bに接続され、燃料供給部材および点火部材 (図示しない)を有する燃焼室82を含んでいる タービン部73は、高圧タービン83Bと、高圧タ ービン83Bから見て燃焼部72とは反対側に配置 れる低圧タービン83Aとを有するタービン83 含んでいる。さらに、低圧タービン83Aから て高圧タービン83Bとは反対側には、タービ 83内の燃焼ガスを外部に排出するタービンノ ズル84が配置されている。低圧タービン83Aは 低圧主軸74に接続され、低圧主軸74側から径 方向外側に向けて突出し、かつ燃焼室82側か タービンノズル84に近づく方向に並べて配 される複数のタービンブレード87を有してい る。また、高圧タービン83Bは、高圧主軸77に 続され、高圧主軸77側から径方向外側に向 て突出し、かつ燃焼室82側からタービンノズ ル84に近づく方向に並べて配置される複数の ービンブレード87を有している。

 そして、主軸または当該主軸の回転を受 て回転する部材である回転部材としての低 主軸74および高圧主軸77は、転がり軸受89に り、低圧主軸74および高圧主軸77に隣接して 配置される部材に対して回転自在に支持され ている。すなわち、転がり軸受89は、ガスタ ビンエンジンであるターボファンエンジン7 0の内部において、主軸または当該主軸の回 を受けて回転する部材である回転部材とし の低圧主軸74または高圧主軸77を、低圧主軸7 4または高圧主軸77に隣接する部材に対して回 転自在に支持している。

 次に、本実施の形態におけるターボファ エンジン70の動作について説明する。図12を 参照して、ファン75から見て燃焼部72とは反 側、すなわちターボファンエンジン70の前方 側の空気は、低圧主軸74の軸周りに回転する ァン75により、ファンナセル76に囲まれる空 間に取り込まれる(矢印α)。取り込まれた空 の一部は、矢印βに沿った方向に流れ、バイ パス流路79を通って空気噴流として外部に排 される。この空気噴流は、ターボファンエ ジン70によって発生される推力の一部とな 。

 一方、ファンナセル76に囲まれる空間に り込まれた空気の残部は、矢印γに沿ってコ ンプレッサ81の内部に流入する。コンプレッ 81の内部に流入した空気は、低圧主軸74の軸 周りに回転する複数のコンプレッサブレード 88を有する低圧コンプレッサ81Aの内部を高圧 ンプレッサ81Bに向けて流れることにより圧 され、高圧コンプレッサ81Bに流入する。さ に、高圧コンプレッサ81Bに流入した空気は 高圧主軸77の軸周りに回転する複数のコン レッサブレード88を有する高圧コンプレッサ 81Bの内部を燃焼室82に向けて流れることによ さらに圧縮され、燃焼室82に流入する(矢印 )。

 コンプレッサ81において圧縮され、燃焼 82に流入した空気は、燃料供給部材(図示し い)により燃焼室内に供給された燃料と混合 れた上で、点火部材(図示しない)により点 される。これにより、燃焼ガスが燃焼室82内 に発生する。この燃焼ガスは、燃焼室82から 出し、タービン83内に流入する(矢印ε)。

 タービン83内に流入した燃焼ガスは、高 タービン83B内において、高圧主軸77に接続さ れたタービンブレード87に衝突することによ 、高圧主軸77を軸周りに回転させる。これ より、高圧主軸77に接続されたコンプレッサ ブレード88を有する高圧コンプレッサ81Bが駆 される。さらに、高圧タービン83B内を通過 た燃焼ガスは、低圧タービン83A内において 低圧主軸74に接続されたタービンブレード87 に衝突することにより、低圧主軸74を軸周り 回転させる。これにより、低圧主軸74に接 されたコンプレッサブレード88を有する低圧 コンプレッサ81Aと、低圧主軸74に接続された ァンブレード75Aを有するファン75とが駆動 れる。

 そして、低圧タービン83A内を通過した燃 ガスは、タービンノズル84から外部へと排 される。この排出される燃焼ガスの噴流は ターボファンエンジン70によって発生される 推力の一部となる。

 ここで、ターボファンエンジン70の内部 おいて、低圧主軸74または高圧主軸77を、低 主軸74または高圧主軸77に隣接する部材に対 して回転自在に支持する転がり軸受89は、タ ボファンエンジン70において発生する熱の 響により、高温環境下で使用される。また 転がり軸受89の内部には、金属粉やカーボン 粉などの硬質の異物が侵入するおそれがある 。そのため、転がり軸受89には、高温環境下 おける軸受部品の硬度低下の抑制および異 混入環境における耐久性の向上が求められ 。また、低圧主軸74または高圧主軸77の高速 回転を支持するため、スミアリングの発生を 抑制する必要がある。さらに、ターボファン エンジン70が航空機に装備される場合、何ら の原因で転がり軸受89の潤滑が一時的に遮 された場合でも、当該潤滑が回復するまで 間、焼き付くことなく低圧主軸74または高圧 主軸77を回転自在に支持し続けるドライラン 能が転がり軸受89には求められる。

 これに対し、転がり軸受89が、以下に説 する本発明の実施の形態2における転がり軸 であることにより、上記要求を満たすこと できる。

 図13を参照して、3点接触玉軸受4は、基本 的には実施の形態1における深溝玉軸受1と同 の構成を有し、同様の効果を奏する。すな ち、3点接触玉軸受4は、軌道部材である環 の外輪41と、外輪41の内側に配置された軌道 材である環状の内輪42と、外輪41と内輪42と 間に配置され、円環状の保持器44に保持さ た転動体としての複数の玉43とを備えている 。外輪41の内周面には外輪転走面41Aが形成さ ており、内輪42の外周面には内輪転走面42A 形成されている。そして、内輪転走面42Aと 輪転走面41Aとが互いに対向するように、外 41と内輪42とは配置されている。内輪42は、 1内輪421と第2内輪422とを含んでおり、軸方向 中央部において分割された構造を有している 。第1内輪421および第2内輪422の外周面には、 れぞれ第1内輪転走面421Aおよび第2内輪転走 422Aが形成されている。この第1内輪転走面42 1Aおよび第2内輪転走面422Aは、内輪転走面42A 構成する。さらに、複数の玉43は、外周面で ある玉転走面43Aにおいて、第1内輪転走面421A 第2内輪転走面422Aおよび外輪転走面41Aに接 可能となっており、かつ保持器44により周方 向に所定のピッチで配置されることにより、 円環状の軌道上に転動自在に保持されている 。以上の構成により、3点接触玉軸受4の外輪4 1および内輪42は、互いに相対的に回転可能と なっている。

 ここで、軌道部材である外輪41および内 42は、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0. 01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量% 上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上0 .15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25 量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下 モリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下の ナジウムとを含有し、残部鉄および不純物 らなる鋼から構成されている。そして、図13 を参照して、外輪41および内輪42の表面であ 外輪転走面41Aおよび内輪転走面42Aを含む領 には、窒素濃度が0.05質量%以上である外輪窒 素富化層41Bおよび内輪窒素富化層42Bが形成さ れている。さらに、外輪窒素富化層41Bおよび 内輪窒素富化層42Bにおける炭素濃度と窒素濃 度との合計値は0.82質量%以上1.9質量%以下であ る。ここで、上記不純物は、鋼の原料に由来 するもの、あるいは製造工程において混入す るものなどの不可避的不純物を含む。

 さらに、転動体である玉43はセラミックス らなっている。より具体的には、本実施の 態においては、玉43は、窒化珪素を主成分と し、残部不純物からなる焼結体からなってい る。なお、当該焼結体は、酸化アルミニウム (Al 2 O 3 )、酸化イットリウム(Y 2 O 3 )などの焼結助剤を含んでいてもよい。

 本実施の形態における3点接触玉軸受4の 道部材である外輪41および内輪42においては 上記適切な成分組成を有する鋼からなると もに、表面に形成された外輪転走面41Aおよ 内輪転走面42Aを含む領域に窒素濃度が0.05質 量%以上である外輪窒素富化層41Bおよび内輪 素富化層42Bが形成されている。そして、外 窒素富化層41Bおよび内輪窒素富化層42Bにお る炭素濃度と窒素濃度との合計値が適切な 囲である0.82質量%以上1.9質量%以下とされる とにより、表層部に十分な硬度が付与され とともに、粒界析出物の形成が抑制されて る。その結果、本実施の形態における軌道 材である外輪41および内輪42は、3.75質量%以 のクロムを含有する鋼からなるとともに、 層部に窒素富化層が形成されており、かつ 労強度および靭性が十分に確保された軸受 品となっている。

 さらに、本実施の形態における3点接触玉 軸受4においては、転動体である玉43がセラミ ックスからなっている。これにより、スミア リングの発生が抑制されるとともに、互いに 接触する外輪41および内輪42と玉43とが異種材 料となるため、耐焼付き性が向上する。その 結果、耐スミアリング性の向上と同時に、潤 滑が不十分な環境下における耐久性、たとえ ばドライラン性能の向上が達成される。また 、鋼に比べて硬度の高いセラミックスを玉43 素材に採用することにより、異物混入環境 おける玉43の耐久性が向上する。さらに、 43がセラミックスからなることにより、高温 環境下における玉43の硬度低下が抑制される また、玉43がセラミックスからなることに り、玉43が鋼からなる場合に比べて玉43が軽 化され、玉43に作用する遠心力が低減され ため、3点接触玉軸受4は、特に高速回転する 部材を支持する転がり軸受として好適である 。

 以上のように、本実施の形態における3点 接触玉軸受4においては、軌道部材である外 41および内輪42が3.75質量%以上のクロムを含 する鋼からなるとともに、転動体である玉43 がセラミックスからなることにより高温環境 下における軸受部品の硬度低下が抑制されて いる。また、適切な成分組成を有する鋼から なる外輪41および内輪42の外輪転走面41Aおよ 内輪転走面42Aを含む領域に、炭素濃度と窒 濃度との合計値を適切な範囲とした外輪窒 富化層41Bおよび内輪窒素富化層42Bを形成す とともに、玉43がセラミックスからなること により、異物混入環境における軸受部品の耐 久性が向上している。さらに、鋼からなる外 輪41および内輪42にセラミックスからなる玉43 を組み合わせることにより、耐スミアリング 性の向上とともに、ドライラン性能の向上が 達成されている。その結果、3点接触玉軸受4 、高温環境下における軸受部品の硬度低下 抑制、異物混入環境における耐久性の向上 よび耐スミアリング性の向上のみならず、 ライラン性能の向上をも達成した転がり軸 となっている。

 次に、図15および図16を参照して、本実施 の形態の変形例である円筒ころ軸受について 説明する。

 図15を参照して、円筒ころ軸受5は、環状 外輪51と、外輪51の内側に配置された環状の 内輪52と、外輪51と内輪52との間に配置され、 円環状の保持器54に保持された転動体として 複数のころ53とを備えている。ころ53は、円 筒形状を有している。外輪51の内周面には外 転走面51Aが形成されており、内輪52の外周 には内輪転走面52Aが形成されている。そし 、内輪転走面52Aと外輪転走面51Aとが互いに 向するように、外輪51と内輪52とは配置され いる。さらに、複数のころ53は、外周面で るころ転走面53Aにおいて内輪転走面52Aおよ 外輪転走面51Aに接触し、かつ保持器54により 周方向に所定のピッチで配置されることによ り、円環状の軌道上に転動自在に保持されて いる。以上の構成により、円筒ころ軸受5の 輪51および内輪52は、互いに相対的に回転可 となっている。

 ここで、図16を参照して、本変形例にお る円筒ころ軸受5の外輪51および内輪52は、上 記3点接触玉軸受4の外輪41および内輪42に、こ ろ53は玉43に該当し、同様の構成を有してお 、同様の効果を奏する。すなわち、軌道部 である外輪51および内輪52は、0.77質量%以上0. 85質量%以下の炭素と、0.01質量%以上0.25質量% 下の珪素と、0.01質量%以上0.35質量%以下のマ ガンと、0.01質量%以上0.15質量%以下のニッケ ルと、3.75質量%以上4.25質量%以下のクロムと 4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、0.9 量%以上1.1質量%以下のバナジウムとを含有し 、残部鉄および不純物からなる鋼から構成さ れている。

 そして、図16を参照して、外輪51および内 輪52の表面である外輪転走面51Aおよび内輪転 面52Aを含む領域には、それぞれ窒素濃度が0 .05質量%以上である外輪窒素富化層51Bおよび 輪窒素富化層52Bが形成されている。また、 輪窒素富化層51Bおよび内輪窒素富化層52Bに ける炭素濃度と窒素濃度との合計値は0.82質 %以上1.9質量%以下である。

 さらに、転動体であるころ53は、セラミ クス、たとえば窒化珪素を主成分とする焼 体からなっている。

 本変形例における円筒ころ軸受5において は、上記3点接触玉軸受4と同様に、軌道部材 ある外輪51および内輪52が3.75質量%以上のク ムを含有する鋼からなるとともに、転動体 あるころ53がセラミックスからなることに り、高温環境下における軸受部品の硬度低 が抑制されている。また、適切な成分組成 有する鋼からなる外輪51および内輪52の外輪 走面51Aおよび内輪転走面52Aを含む領域に、 素濃度と窒素濃度との合計値を適切な範囲 した外輪窒素富化層51Bおよび内輪窒素富化 52Bをそれぞれ形成するとともに、ころ53が ラミックスからなることにより、異物混入 境における軸受部品の耐久性が向上してい 。さらに、鋼からなる外輪51および内輪52に ラミックスからなるころ53を組み合わせる とにより、耐スミアリング性の向上ととも 、ドライラン性能の向上が達成されている その結果、円筒ころ軸受5は、高温環境下に ける軸受部品の硬度低下の抑制、異物混入 境における耐久性の向上および耐スミアリ グ性の向上のみならず、ドライラン性能の 上をも達成した転がり軸受となっている。

 次に、上記本発明の実施の形態2における転 がり軸受の製造方法について説明する。
 図17を参照して、本実施の形態における転 り軸受の製造方法は、工程(S10)~(S90)を含む軌 道部材作製工程と、工程(S110)~(S150)を含む転 体作製工程と、工程(S200)として実施される 立て工程とを備えている。

 まず、軌道部材作製工程について説明す 。工程(S10)として実施される鋼部材準備工 では、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と、0 .01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質量% 上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量%以上 0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4.25 量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下 のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下の ナジウムとを含有し、残部鉄および不純物 らなる鋼からなり、軌道部材の概略形状に 形された鋼部材が準備される。具体的には たとえば、上記成分を含有する棒鋼、鋼線 どを素材とし、当該棒鋼、鋼線などに対し 切断、鍛造、旋削などの加工が実施される とにより、軌道部材としての外輪41,51、内 42,52などの概略形状に成形された鋼部材が準 備される。

 次に、工程(S10)において準備された上述 鋼部材に対して、焼入処理および窒化処理 含む熱処理を行なう熱処理工程が実施され 。熱処理工程は、工程(S20)として実施される 焼入工程、工程(S30)として実施される第1焼戻 工程、工程(S40)として実施されるサブゼロ工 、工程(S50)として実施される第2焼戻工程、 程(S60)として実施される第3焼戻工程、工程( S70)として実施されるプラズマ窒化工程およ 工程(S80)として実施される拡散工程を含んで いる。この熱処理工程は、上記実施の形態1 場合と同様に実施することができる。

 次に、熱処理工程が実施された鋼部材に して、仕上げ加工などが施される仕上げ工 が工程(S90)として実施される。具体的には たとえば、熱処理工程が実施された鋼部材 外輪転走面41A,51A、内輪転走面42A,52Aなどに対 する研磨加工が実施される。これにより、本 実施の形態における軌道部材は完成し、本実 施の形態における軌道部材作製工程は完了す る。

 上記実施の形態における軌道部材作製工 によれば、3.75質量%以上のクロムを含有す 鋼からなり、表層部が窒化処理されて高硬 な窒素富化層が形成されるとともに、粒界 出物の発生が抑制された軌道部材(外輪41,51 内輪42,52など)を製造することができる。そ 結果、本実施の形態における軌道部材(外輪4 1,51、内輪42,52など)の表面(外輪転走面41A,51A、 内輪転走面42A,52Aなど)を含む領域に窒素濃度 0.05質量%以上、炭素濃度と窒素濃度との合 値が0.82質量%以上1.9質量%以下である厚み0.1mm 以上、硬度830HV以上の窒素富化層を形成する ともに、当該窒素富化層を表面に垂直な断 で切断し、当該断面を光学顕微鏡またはSEM 用いて、表面を含む一辺150μmの正方形の視 をランダムに5視野観察した場合、粒界析出 物の検出数を1個以下とすることができる。

 一方、図17を参照して、転動体作製工程 おいては、まず、工程(S110)として、セラミ クスの粉末を準備する粉末準備工程が実施 れる。具体的には、転動体を構成する素材 して採用されるセラミックス、たとえば窒 珪素の粉末が準備される。次に、工程(S120) して、工程(S110)において準備されたセラミ クスの粉末に、焼結助剤を添加して混合す 混合工程が実施される。

 次に、図17を参照して、上記セラミック の粉末と焼結助剤との混合物を、転動体の 略形状に成形する成形工程が工程(S130)とし 実施される。具体的には、上記セラミック の粉末と焼結助剤との混合物に、プレス成 、鋳込み成形、押し出し成形、転動造粒な の手法を用いた成形を実施することにより 転動体である玉43、ころ53などの概略形状に 形された成形体が作製される。

 次に、工程(S140)として、上記成形体が焼 される焼結工程が実施される。具体的には 上記成形体が、HIP(Hot Isostatic Press;熱間静 圧焼結法)、GPS(Gas Pressure Sintering;ガス圧焼 法)などの加圧焼結法を用いて焼結されるこ により、外輪41,51、内輪42,52などの概略形状 を有する焼結体が得られる。

 次に、工程(S140)において得られた焼結体 表面が加工され、当該表面を含む領域が除 される仕上げ加工が実施されることにより 転動部材を完成させる仕上げ工程が、工程( S150)として実施される。具体的には、焼結工 において得られた焼結体の表面(転走面)を 磨することにより、転動体としての玉43、こ ろ53などを完成させる。以上の工程により、 実施の形態における転動体作製工程は完了 る。

 そして、図17を参照して、完成した軸受 品が組合わされて転がり軸受が組立てられ 組立て工程が、工程(S200)として実施される 具体的には、たとえば上述の工程により作 された外輪41、内輪42および玉43と別途準備 れた保持器44とが組合わされて、3点接触玉 受4が組立てられる。これにより、上記本実 の形態における転がり軸受が完成する。

 (実施の形態3)
 次に、本発明の他の実施の形態である実施 形態3について説明する。実施の形態3にお る機械部品は基本的には上記実施の形態1と 様の構成を有し、同様に製造することがで る。しかし、以下に示すように、素材とな 鋼の成分組成および熱処理方法において実 の形態3は実施の形態1の場合とは異なって る。

 すなわち、図1および図2を参照して、実 の形態3における機械部品である外輪11、内 12および玉13は、0.11質量%以上0.15質量%以下の 炭素と、0.1質量%以上0.25質量%以下の珪素と、 0.15質量%以上0.35質量%以下のマンガンと、3.2 量%以上3.6質量%以下のニッケルと、4質量%以 4.25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量 %以下のモリブデンと、1.13質量%以上1.33質量% 下のバナジウムとを含有し、残部鉄および 純物からなる鋼から構成されている。そし 、図2を参照して、外輪11、内輪12および玉13 の表面である外輪転走面11A、内輪転走面12Aお よび玉転走面13Aを含む領域には、窒素濃度が 0.05質量%以上である外輪窒素富化層11B、内輪 素富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bが形成さ ている。さらに、外輪窒素富化層11B、内輪 素富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bにおける 素濃度と窒素濃度との合計値は0.55質量%以 1.9質量%以下である。ここで、上記不純物は 鋼の原料に由来するもの、あるいは製造工 において混入するものなどの不可避的不純 を含む。

 本実施の形態における機械部品である外 11、内輪12および玉13においては、上記適切 成分組成を有する鋼からなるとともに、表 に形成された外輪転走面11A、内輪転走面12A よび玉転走面13Aを含む領域に窒素濃度が0.05 質量%以上である外輪窒素富化層11B、内輪窒 富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bが形成され いる。そして、外輪窒素富化層11B、内輪窒 富化層12Bおよび玉窒素富化層13Bにおける炭 濃度と窒素濃度との合計値が適切な範囲で る0.55質量%以上1.9質量%以下とされることに り、表層部に十分な硬度が付与されるとと に、粒界析出物の形成が抑制されている。 の結果、本実施の形態における機械部品で る外輪11、内輪12および玉13は、4質量%以上の クロムを含有する鋼からなるとともに、表層 部に窒素富化層が形成されており、かつ疲労 強度および靭性が十分に確保された機械部品 となっている。また、外輪11、内輪12および 13を備えた転がり軸受である深溝玉軸受1は 長寿命な転がり軸受となっている。

 さらに、外輪11、内輪12および玉13に形成 れた外輪窒素富化層11B、内輪窒素富化層12B よび玉窒素富化層13Bの厚みは、0.11mm以上で ることが好ましい。これにより、外輪11、 輪12および玉13に十分な強度が付与される。

 さらに、外輪窒素富化層11B、内輪窒素富 層12Bおよび玉窒素富化層13Bは、800HV以上の 度を有していることが好ましい。これによ 、外輪11、内輪12および玉13の強度を一層確 に確保することが可能となる。

 さらに、外輪窒素富化層11B、内輪窒素富 層12Bおよび玉窒素富化層13Bを顕微鏡にて観 した場合、アスペクト比2以上、長さ7.5μm以 上の鉄の窒化物の数が、一辺150μmの正方形領 域5視野内に1個以下であることが好ましい。 れにより、外輪11、内輪12および玉13の疲労 度を向上させることができる。

 また、図3および図4を参照して、本実施 形態における第1の変形例であるスラストニ ドルころ軸受2の軌道輪21は上記本実施の形 における深溝玉軸受1の外輪11および内輪12 、ニードルころ23は玉13に該当し、同様の構 を有しており、同様の効果を奏する。すな ち、機械部品である軌道輪21およびニード ころ23は、0.11質量%以上0.15質量%以下の炭素 、0.1質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.15質 %以上0.35質量%以下のマンガンと、3.2質量%以 上3.6質量%以下のニッケルと、4質量%以上4.25 量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下 モリブデンと、1.13質量%以上1.33質量%以下の バナジウムとを含有し、残部鉄および不純物 からなる鋼から構成されている。そして、図 4を参照して、軌道輪21およびニードルころ23 表面である軌道輪転走面21Aおよびころ転走 23Aを含む領域には、窒素濃度が0.05質量%以 である軌道輪窒素富化層21Bおよびころ窒素 化層23Bが形成されている。さらに、軌道輪 素富化層21Bおよびころ窒素富化層23Bにおけ 炭素濃度と窒素濃度との合計値は0.55質量%以 上1.9質量%以下である。

 本変形例における機械部品である軌道輪2 1およびニードルころ23においては、上記適切 な成分組成を有する鋼からなるとともに、表 面に形成された軌道輪転走面21Aおよびころ転 走面23Aを含む領域に窒素濃度が0.05質量%以上 ある軌道輪窒素富化層21Bおよびころ窒素富 層23Bが形成されている。そして、軌道輪窒 富化層21Bおよびころ窒素富化層23Bにおける 素濃度と窒素濃度との合計値が適切な範囲 ある0.55質量%以上1.9質量%以下とされること より、表層部に十分な硬度が付与されると もに、粒界析出物の形成が抑制されている その結果、本変形例における機械部品であ 軌道輪21およびニードルころ23は、4質量%以 のクロムを含有する鋼からなるとともに、 層部に窒素富化層が形成されており、かつ 労強度および靭性が十分に確保された機械 品となっている。また、軌道輪21およびニ ドルころ23を備えた転がり軸受であるスラス トニードルころ軸受2は、長寿命な転がり軸 となっている。

 また、図5~図9を参照して、本実施の形態 おける第2の変形例である等速ジョイント3 インナーレース31およびアウターレース32は 記本実施の形態における深溝玉軸受1の外輪 11および内輪12に、ボール33は玉13に該当し、 様の構成を有しており、同様の効果を奏す 。すなわち、機械部品であるインナーレー 31、アウターレース32およびボール33は、0.11 質量%以上0.15質量%以下の炭素と、0.1質量%以 0.25質量%以下の珪素と、0.15質量%以上0.35質量 %以下のマンガンと、3.2質量%以上3.6質量%以下 のニッケルと、4質量%以上4.25質量%以下のク ムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデン 、1.13質量%以上1.33質量%以下のバナジウムと 含有し、残部鉄および不純物からなる鋼か 構成されている。そして、図8および図9を 照して、インナーレース31、アウターレース 32およびボール33の表面に形成されたインナ レースボール溝31Aの表面、アウターレース ール溝32Aの表面およびボール転走面33Aを含 領域には、窒素濃度が0.05質量%以上であるイ ンナーレース窒素富化層31B、アウターレース 窒素富化層32Bおよびボール窒素富化層33Bが形 成されている。さらに、インナーレース窒素 富化層31B、アウターレース窒素富化層32Bおよ びボール窒素富化層33Bにおける炭素濃度と窒 素濃度との合計値は0.55質量%以上1.9質量%以下 である。

 本変形例における機械部品であるインナ レース31、アウターレース32およびボール33 おいては、上記適切な成分組成を有する鋼 らなるとともに、表面に形成されたインナ レースボール溝31Aの表面、アウターレース ール溝32Aの表面およびボール転走面33Aを含 領域に窒素濃度が0.05質量%以上であるイン ーレース窒素富化層31B、アウターレース窒 富化層32Bおよびボール窒素富化層33Bが形成 れている。そして、インナーレース窒素富 層31B、アウターレース窒素富化層32Bおよび ール窒素富化層33Bにおける炭素濃度と窒素 度との合計値が適切な範囲である0.55質量%以 上1.9質量%以下とされることにより、表層部 十分な硬度が付与されるとともに、粒界析 物の形成が抑制されている。その結果、本 形例における機械部品であるインナーレー 31、アウターレース32およびボール33は、4質 %以上のクロムを含有する鋼からなるととも に、表層部に窒素富化層が形成されており、 かつ疲労強度および靭性が十分に確保された 機械部品となっている。また、インナーレー ス31、アウターレース32およびボール33を備え た自在継手である等速ジョイント3は、長寿 な等速自在継手となっている。

 次に、実施の形態3における機械部品、お よび上記機械部品を備えた転がり軸受、等速 ジョイントなどの機械要素の製造方法につい て説明する。

 図18を参照して、まず、0.11質量%以上0.15 量%以下の炭素と、0.1質量%以上0.25質量%以下 珪素と、0.15質量%以上0.35質量%以下のマンガ ンと、3.2質量%以上3.6質量%以下のニッケルと 4質量%以上4.25質量%以下のクロムと、4質量% 上4.5質量%以下のモリブデンと、1.13質量%以 1.33質量%以下のバナジウムとを含有し、残 鉄および不純物からなる鋼からなり、機械 品の概略形状に成形された鋼部材を準備す 鋼部材準備工程が実施される。具体的には たとえば、上記成分を含有する棒鋼、鋼線 どを素材とし、当該棒鋼、鋼線などに対し 切断、鍛造、旋削などの加工が実施される とにより、機械部品としての外輪11、軌道輪 21、インナーレース31などの機械部品の概略 状に成形された鋼部材が準備される。

 次に、鋼部材準備工程において準備され 上述の鋼部材に対して、焼入処理および窒 処理を含む熱処理を行なう熱処理工程が実 される。この熱処理工程の詳細については 述する。

 次に、熱処理工程が実施された鋼部材に して、仕上げ加工などが施される仕上げ工 が実施される。具体的には、たとえば、熱 理工程が実施された鋼部材の内輪転走面12A 軌道輪転走面21A、アウターレースボール溝3 2Aなどに対する研磨加工が実施される。これ より、本実施の形態における機械部品は完 し、本実施の形態における機械部品の製造 法は完了する。

 さらに、完成した機械部品が組合わされ 機械要素が組立てられる組立て工程が実施 れる。具体的には、上述の工程により製造 れた本発明の機械部品である、たとえば外 11、内輪12、玉13と保持器14とが組合わされ 、深溝玉軸受1が組立てられる。これにより 本発明の機械部品を備えた機械要素が製造 れる。

 次に、図18および図19を参照して、上述の 熱処理工程の詳細について説明する。図19に いて、横方向は時間を示しており右に行く ど時間が経過していることを示している。 た、図19において、縦方向は温度を示して り上に行くほど温度が高いことを示してい 。

 図18を参照して、本実施の形態における機 部品の製造方法の熱処理工程においては、 ず、被処理物としての鋼部材が浸炭処理さ る浸炭工程が実施される。具体的には、図19 を参照して、たとえば鋼部材が一酸化炭素と 水素を含む浸炭ガスの雰囲気中でA 1 変態点以上の温度である温度T 11 に加熱され、時間t 11 の間保持されることにより、鋼部材の表層部 に炭素が侵入する。これにより、鋼部材の表 面を含む領域に、当該表面を含む領域以外の 領域である内部領域に比べて炭素濃度の高い 浸炭層が形成される。

 次に、図18を参照して、浸炭処理が実施さ た鋼部材が焼入処理される焼入工程が実施 れる。具体的には、図19を参照して、当該鋼 部材が、A 1 変態点以上の温度である温度T 11 からM S 点以下の温度に冷却されることにより、焼入 硬化される。

 次に、図18を参照して、焼入処理が実施さ た鋼部材に対し、焼戻処理を行なう第1焼戻 程が実施される。具体的には、図19を参照 て、たとえば鋼部材が減圧雰囲気中(真空中) でA 1 変態点未満の温度である温度T 12 に加熱され、時間t 12 の間保持された後、冷却されることにより焼 戻処理される。これにより、鋼部材の焼入処 理による残留応力を緩和し、熱処理によるひ ずみが抑制される等の効果が得られる。

 次に、図18を参照して、第1焼戻工程が実施 れた鋼部材に対し、サブゼロ処理を行なう 1サブゼロ工程が実施される。具体的には、 図19を参照して、鋼部材が、たとえば液体窒 を噴霧されて0℃未満の温度である温度T 13 に冷却され、時間t 13 の間保持されることによりサブゼロ処理され る。これにより、鋼部材の焼入処理により生 成した残留オーステナイトがマルテンサイト に変態し、鋼の組織が安定化する等の効果が 得られる。

 次に、図18を参照して、第1サブゼロ工程が 施された鋼部材に対し、焼戻処理を行なう 2焼戻工程が実施される。具体的には、図19 参照して、たとえば鋼部材が真空中でA 1 変態点未満の温度である温度T 14 に加熱され、時間t 14 の間保持された後、冷却されることにより焼 戻処理される。これにより、鋼部材のサブゼ ロ処理による残留応力を緩和し、ひずみが抑 制される等の効果が得られる。

 次に、図18を参照して、第2焼戻工程が実施 れた鋼部材に対し、再度サブゼロ処理を行 う第2サブゼロ工程が実施される。具体的に は、図19を参照して、鋼部材が、たとえば液 窒素を噴霧されて0℃未満の温度である温度 T 15 に冷却され、時間t 15 の間保持されることによりサブゼロ処理され る。これにより、鋼部材の焼入処理により生 成した残留オーステナイトがさらにマルテン サイトに変態し、鋼の組織が一層安定化する 等の効果が得られる。

 次に、図18を参照して、第2サブゼロ工程が 施された鋼部材に対し、再度焼戻処理を行 う第3焼戻工程が実施される。具体的には、 図19を参照して、上記第2焼戻工程と同様に、 鋼部材が真空中でA 1 変態点未満の温度である温度T 16 に加熱され、時間t 16 の間保持された後、冷却されることにより焼 戻処理される。ここで、温度T 16 およびt 16 は第2焼戻工程の温度T 14 およびt 14 と同様の条件とすることができる。これによ り、第2サブゼロ工程における鋼部材のサブ ロ処理により発生し得る残留応力を緩和し ひずみが抑制される等の効果が得られる。

 次に、図18を参照して、第3焼戻工程が実施 れた鋼部材に対し、プラズマ窒化処理を行 うプラズマ窒化工程が実施される。具体的 は、図19を参照して、たとえば圧力50Pa以上5 000Pa以下となるように窒素(N 2 )と、水素(H 2 )、メタン(CH 4 )およびアルゴン(Ar)からなる群から選択され 少なくともいずれか1つ以上とが導入された プラズマ窒化炉に、鋼部材が挿入され、放電 電圧50V以上1000V以下、放電電流0.001A以上100A以 下の条件下で温度T 17 に加熱されて時間t 17 の間保持された後、冷却されることにより鋼 部材がプラズマ窒化処理される。これにより 、鋼部材の表層部に窒素が侵入して窒素富化 層が形成され、当該表層部の強度が向上する 。ここで、温度T 17 は、たとえば300℃以上550℃以下、時間t 17 は1時間以上80時間以下とすることができる。 この温度T 17 、時間t 17 などの熱処理条件は、仕上げ工程で実施され る仕上げ加工における取りしろを考慮し、プ ラズマ窒化処理において形成される粒界析出 物層(粒界析出物が形成されている層)の厚み 、仕上げ加工において除去可能な厚み以下 なるように決定することができる。

 なお、鋼部材を構成する鋼がAMS規格6278(AISI 格M50NiL)である場合、プラズマ窒化工程にお ける上記圧力は50Pa以上1000Pa以下、放電電圧 50V以上600V以下、放電電流は0.001A以上300A以下 、温度T 17 は350℃以上450℃以下、時間t 17 は1時間以上50時間以下とすることが好ましい 。

 次に、図18を参照して、プラズマ窒化工程 実施された鋼部材に対し、拡散処理を行な 拡散工程が実施される。具体的には、図19を 参照して、たとえば真空中で温度T 18 に加熱され、時間t 18 の間保持されることにより鋼部材が拡散処理 される。ここで、温度T 18 は、300℃以上480℃以下、好ましくは300℃以上 430℃以下、時間t 18 は50時間以上300時間以下とすることができる これにより、窒化層形成による表層部の硬 上昇が相殺されることを抑制しつつ、鋼に 入した窒素を所望の領域にまで到達させる とができる。そして、この拡散工程を実施 ることにより、プラズマ窒化工程において 素が侵入する深さを、仕上げ加工での粒界 出物層の除去が可能な範囲にとどめても、 に侵入した窒素を所望の領域にまで到達さ ることができる。以上の工程により、本実 の形態における熱処理工程は完了する。

 以上のように、本実施の形態における鋼 熱処理方法によれば、4質量%以上のクロム 含有する鋼の表層部を窒化処理して高硬度 窒素富化層を形成するとともに、粒界析出 の発生を抑制することができる。

 また、上記実施の形態における機械部品 製造方法によれば、4質量%以上のクロムを 有する鋼からなり、表層部が窒化処理され 高硬度な窒素富化層が形成されるとともに 粒界析出物の発生が抑制された機械部品(外 11、軌道輪21、インナーレース31など)を製造 することができる。その結果、上述のように 、本実施の形態における機械部品(外輪11、軌 道輪21、インナーレース31など)の表面(外輪転 走面11A、軌道輪転走面21A、インナーレースボ ール溝31Aの表面など)を含む領域に窒素濃度 0.05質量%以上、炭素濃度と窒素濃度との合計 値が0.55質量%以上1.9質量%以下である厚み0.11mm 以上、硬度800HV以上の窒素富化層を形成する ともに、当該窒素富化層を表面に垂直な断 で切断し、当該断面を光学顕微鏡またはSEM 用いて、表面を含む一辺150μmの正方形の視 をランダムに5視野観察した場合、粒界析出 物の検出数を1個以下とすることができる。 こで、窒素富化層における炭素濃度および 素濃度は、たとえばプラズマ窒化工程にお て実施されるプラズマ窒化の処理時間、お び拡散工程において実施される拡散処理の 理時間を調整することにより、コントロー することができる。

 (実施の形態4)
 次に、本発明の他の実施の形態である実施 形態4について説明する。実施の形態4にお る転がり軸受は基本的には上記実施の形態2 同様の構成を有し、同様に製造することが きる。しかし、以下に示すように、素材と る鋼の成分組成および熱処理方法において 施の形態4は実施の形態2の場合とは異なっ いる。

 すなわち、図12~図14を参照して、ターボ ァンエンジン70の内部において、低圧主軸74 たは高圧主軸77を、低圧主軸74または高圧主 軸77に隣接する部材に対して回転自在に支持 る転がり軸受89は、ターボファンエンジン70 において発生する熱の影響により、高温環境 下で使用される。また、転がり軸受89の内部 は、金属粉やカーボン粉などの硬質の異物 侵入するおそれがある。そのため、転がり 受89には、高温環境下における軸受部品の 度低下の抑制および異物混入環境における 久性の向上が求められる。また、低圧主軸74 または高圧主軸77の高速回転を支持するため スミアリングの発生を抑制する必要がある さらに、ターボファンエンジン70が航空機 装備される場合、何らかの原因で転がり軸 89の潤滑が一時的に遮断された場合でも、当 該潤滑が回復するまでの間、焼き付くことな く低圧主軸74または高圧主軸77を回転自在に 持し続けるドライラン性能が転がり軸受89に は求められる。

 これに対し、転がり軸受89が、以下に説 する実施の形態4における転がり軸受である とにより、上記要求を満たすことができる

 すなわち、図13および図14を参照して、軌 道部材である外輪41および内輪42は、0.11質量% 以上0.15質量%以下の炭素と、0.1質量%以上0.25 量%以下の珪素と、0.15質量%以上0.35質量%以下 のマンガンと、3.2質量%以上3.6質量%以下のニ ケルと、4質量%以上4.25質量%以下のクロムと 、4質量%以上4.5質量%以下のモリブデンと、1.1 3質量%以上1.33質量%以下のバナジウムとを含 し、残部鉄および不純物からなる鋼から構 されている。そして、図2を参照して、外輪4 1および内輪42の表面である外輪転走面41Aおよ び内輪転走面42Aを含む領域には、窒素濃度が 0.05質量%以上である外輪窒素富化層41Bおよび 輪窒素富化層42Bが形成されている。さらに 外輪窒素富化層41Bおよび内輪窒素富化層42B おける炭素濃度と窒素濃度との合計値は0.55 質量%以上1.9質量%以下である。ここで、上記 純物は、鋼の原料に由来するもの、あるい 製造工程において混入するものなどの不可 的不純物を含む。

 さらに、転動体である玉43はセラミックス らなっている。より具体的には、本実施の 態においては、玉43は、窒化珪素を主成分と し、残部不純物からなる焼結体からなってい る。なお、当該焼結体は、酸化アルミニウム (Al 2 O 3 )、酸化イットリウム(Y 2 O 3 )などの焼結助剤を含んでいてもよい。

 本実施の形態における3点接触玉軸受4の 道部材である外輪41および内輪42においては 上記適切な成分組成を有する鋼からなると もに、表面に形成された外輪転走面41Aおよ 内輪転走面42Aを含む領域に窒素濃度が0.05質 量%以上である外輪窒素富化層41Bおよび内輪 素富化層42Bが形成されている。そして、外 窒素富化層41Bおよび内輪窒素富化層42Bにお る炭素濃度と窒素濃度との合計値が適切な 囲である0.55質量%以上1.9質量%以下とされる とにより、表層部に十分な硬度が付与され とともに、粒界析出物の形成が抑制されて る。その結果、本実施の形態における軌道 材である外輪41および内輪42は、4質量%以上 クロムを含有する鋼からなるとともに、表 部に窒素富化層が形成されており、かつ疲 強度および靭性が十分に確保された軸受部 となっている。

 さらに、本実施の形態における3点接触玉 軸受4においては、転動体である玉43がセラミ ックスからなっている。これにより、スミア リングの発生が抑制されるとともに、互いに 接触する外輪41および内輪42と玉43とが異種材 料となるため、耐焼付き性が向上する。その 結果、耐スミアリング性の向上と同時に、潤 滑が不十分な環境下における耐久性、たとえ ばドライラン性能の向上が達成される。また 、鋼に比べて硬度の高いセラミックスを玉43 素材に採用することにより、異物混入環境 おける玉43の耐久性が向上する。さらに、 43がセラミックスからなることにより、高温 環境下における玉43の硬度低下が抑制される また、玉43がセラミックスからなることに り、玉43が鋼からなる場合に比べて玉43が軽 化され、玉43に作用する遠心力が低減され ため、3点接触玉軸受4は、特に高速回転する 部材を支持する転がり軸受として好適である 。

 以上のように、本実施の形態における3点 接触玉軸受4においては、軌道部材である外 41および内輪42が4質量%以上のクロムを含有 る鋼からなるとともに、転動体である玉43が セラミックスからなることにより高温環境下 における軸受部品の硬度低下が抑制されてい る。また、適切な成分組成を有する鋼からな る外輪41および内輪42の外輪転走面41Aおよび 輪転走面42Aを含む領域に、炭素濃度と窒素 度との合計値を適切な範囲とした外輪窒素 化層41Bおよび内輪窒素富化層42Bを形成する ともに、玉43がセラミックスからなることに より、異物混入環境における軸受部品の耐久 性が向上している。さらに、鋼からなる外輪 41および内輪42にセラミックスからなる玉43を 組み合わせることにより、耐スミアリング性 の向上とともに、ドライラン性能の向上が達 成されている。その結果、3点接触玉軸受4は 高温環境下における軸受部品の硬度低下の 制、異物混入環境における耐久性の向上お び耐スミアリング性の向上のみならず、ド イラン性能の向上をも達成した転がり軸受 なっている。

 また、図15および図16を参照して、本実施 の形態の変形例である円筒ころ軸受5の外輪51 および内輪52は、上記3点接触玉軸受4の外輪41 および内輪42に、ころ53は玉43に該当し、同様 の構成を有しており、同様の効果を奏する。 すなわち、軌道部材である外輪51および内輪5 2は、0.11質量%以上0.15質量%以下の炭素と、0.1 量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.15質量%以 0.35質量%以下のマンガンと、3.2質量%以上3.6 量%以下のニッケルと、4質量%以上4.25質量%以 下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下のモリ ブデンと、1.13質量%以上1.33質量%以下のバナ ウムとを含有し、残部鉄および不純物から る鋼から構成されている。

 そして、図16を参照して、外輪51および内 輪52の表面である外輪転走面51Aおよび内輪転 面52Aを含む領域には、それぞれ窒素濃度が0 .05質量%以上である外輪窒素富化層51Bおよび 輪窒素富化層52Bが形成されている。また、 輪窒素富化層51Bおよび内輪窒素富化層52Bに ける炭素濃度と窒素濃度との合計値は0.55質 %以上1.9質量%以下である。

 さらに、転動体であるころ53は、セラミ クス、たとえば窒化珪素を主成分とする焼 体からなっている。

 本変形例における円筒ころ軸受5において は、上記3点接触玉軸受4と同様に、軌道部材 ある外輪51および内輪52が4質量%以上のクロ を含有する鋼からなるとともに、転動体で るころ53がセラミックスからなることによ 、高温環境下における軸受部品の硬度低下 抑制されている。また、適切な成分組成を する鋼からなる外輪51および内輪52の外輪転 面51Aおよび内輪転走面52Aを含む領域に、炭 濃度と窒素濃度との合計値を適切な範囲と た外輪窒素富化層51Bおよび内輪窒素富化層5 2Bをそれぞれ形成するとともに、ころ53がセ ミックスからなることにより、異物混入環 における軸受部品の耐久性が向上している さらに、鋼からなる外輪51および内輪52にセ ミックスからなるころ53を組み合わせるこ により、耐スミアリング性の向上とともに ドライラン性能の向上が達成されている。 の結果、円筒ころ軸受5は、高温環境下にお る軸受部品の硬度低下の抑制、異物混入環 における耐久性の向上および耐スミアリン 性の向上のみならず、ドライラン性能の向 をも達成した転がり軸受となっている。

 次に、上記実施の形態4における転がり軸受 の製造方法について説明する。
 図20を参照して、本実施の形態における転 り軸受の製造方法は、工程(S310)~(S410)を含む 道部材作製工程と、工程(S510)~(S550)を含む転 動体作製工程と、工程(S600)として実施される 組立て工程とを備えている。

 まず、軌道部材作製工程について説明す 。工程(S310)として実施される鋼部材準備工 では、0.11質量%以上0.15質量%以下の炭素と、 0.1質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.15質量% 上0.35質量%以下のマンガンと、3.2質量%以上3 .6質量%以下のニッケルと、4質量%以上4.25質量 %以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下の リブデンと、1.13質量%以上1.33質量%以下のバ ジウムとを含有し、残部鉄および不純物か なる鋼からなり、軌道部材の概略形状に成 された鋼部材が準備される。具体的には、 とえば、上記成分を含有する棒鋼、鋼線な を素材とし、当該棒鋼、鋼線などに対して 断、鍛造、旋削などの加工が実施されるこ により、軌道部材としての外輪41,51、内輪42 ,52などの概略形状に成形された鋼部材が準備 される。

 次に、工程(S310)において準備された上述 鋼部材に対して、焼入処理および窒化処理 含む熱処理を行なう熱処理工程が実施され 。熱処理工程は、工程(S320)として実施され 浸炭工程、工程(S330)として実施される焼入 程、工程(S340)として実施される第1焼戻工程 、工程(S350)として実施される第1サブゼロ工 、工程(S360)として実施される第2焼戻工程、 程(S370)として実施される第2サブゼロ工程、 工程(S380)として実施される第3焼戻工程、工 (S390)として実施されるプラズマ窒化工程お び工程(S400)として実施される拡散工程を含 でいる。この熱処理工程は、上記実施の形 3の場合と同様に実施することができる。

 次に、熱処理工程が実施された鋼部材に して、仕上げ加工などが施される仕上げ工 が工程(S410)として実施される。具体的には たとえば、熱処理工程が実施された鋼部材 外輪転走面41A,51A、内輪転走面42A,52Aなどに する研磨加工が実施される。これにより、 実施の形態における軌道部材は完成し、本 施の形態における軌道部材作製工程は完了 る。

 上記実施の形態における軌道部材作製工 によれば、4質量%以上のクロムを含有する からなり、表層部が窒化処理されて高硬度 窒素富化層が形成されるとともに、粒界析 物の発生が抑制された軌道部材(外輪41,51、 輪42,52など)を製造することができる。その 果、上述のように、本実施の形態における 道部材(外輪41,51、内輪42,52など)の表面(外輪 走面41A,51A、内輪転走面42A,52Aなど)を含む領 に窒素濃度が0.05質量%以上、炭素濃度と窒 濃度との合計値が0.55質量%以上1.9質量%以下 ある厚み0.1mm以上、硬度800HV以上の窒素富化 を形成するとともに、当該窒素富化層を表 に垂直な断面で切断し、当該断面を光学顕 鏡またはSEMを用いて、表面を含む一辺150μm 正方形の視野をランダムに5視野観察した場 合、粒界析出物の検出数を1個以下とするこ ができる。

 一方、図20を参照して、転動体作製工程 おいては、粉末準備工程、混合工程、成形 程、焼結工程および仕上げ工程が工程(S510)~( S550)として順次実施される。この工程(S510)~(S5 50)は、実施の形態2における工程(S110)~(S150)と 様に実施することができる。そして、図20 参照して、完成した軸受部品が組合わされ 転がり軸受が組立てられる組立て工程が、 程(S600)として実施される。具体的には、た えば上述の工程により作製された外輪41、内 輪42および玉43と別途準備された保持器44とが 組合わされて、3点接触玉軸受4が組立てられ 。これにより、上記本実施の形態における がり軸受が完成する。

 なお、上記実施の形態においては、本発 の機械部品の一例として、深溝玉軸受、ス ストニードルころ軸受、等速ジョイントを 成する機械部品について説明したが、本発 の機械部品はこれに限られず、表層部の疲 強度、耐摩耗性等が要求される機械部品、 とえばハブ、ギア、シャフト等を構成する 械部品であってもよい。また、上記実施の 態においては、本発明の転がり軸受の一例 して、3点接触玉軸受および円筒ころ軸受に ついて説明したが、本発明の転がり軸受はこ れに限られず、たとえば深溝玉軸受、アンギ ュラ玉軸受、スラストニードルころ軸受など 、種々の転がり軸受に適用することができる 。

 (実施例1)
 以下、本発明の実施例1について説明する。 本発明の機械部品と同様の構成を有するサン プルを、上記実施の形態1における鋼の熱処 方法を採用した機械部品の製造方法により 際に作製し、表層部における粒界析出物の 生が抑制されていることを確認する実験を なった。実験の手順は以下のとおりである

 まず、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と 、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質 %以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量% 上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4 .25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量% 下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下 のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純 物からなる鋼であるAMS規格6490(AISI規格M50)の 材を準備し、これを加工することにより外 φ40mm、内径φ30mm、厚みt16mmの試験片を作製し た。

 次に、この試験片に対し、上記実施の形態 おいて図11に基づいて説明した鋼の熱処理 法を用いた熱処理工程を実施した。ここで T 1 、t 1 、T 2 、t 2 、T 3 、t 3 、T 4 、t 4 、T 5 およびt 5 は、第3焼戻工程後の試験片の硬度が58HRC以上 65HRC以下となるように決定し、T 6 は430℃、t 6 は10時間、T 7 は430℃、t 7 は160時間とした。また、プラズマ窒化工程に おいては、プラズマ窒化時の処理温度T 6 が430℃となるように、放電電圧を200V以上450V 下、放電電流を1A以上5A以下の範囲で制御し た。さらに、プラズマ窒化工程においては、 プラズマ窒化時の炉内の圧力が267Pa以上400Pa 下となるように、窒素(N 2 ):水素(H 2 )=1:1の割合で炉内にガスを導入した。

 さらに、拡散工程では、窒素雰囲気に調 された雰囲気炉内において試験片が加熱さ 、試験片の表面における炭素濃度と窒素濃 との和が1.9質量%以下となるように、拡散処 理が実施された。以上のように本発明の鋼の 熱処理方法が実施された試験片を、本発明の 実施例のサンプルとした(実施例A)。

 一方、同様に作製されたAMS規格6490からなる 試験片に対し、上記実施の形態において図11 基づいて説明した鋼の熱処理方法から、拡 工程を省略した熱処理工程を実施した。こ で、T 1 、t 1 、T 2 、t 2 、T 3 、t 3 、T 4 、t 4 、T 5 およびt 5 は、第3焼戻工程後の試験片の硬度が58HRC以上 65HRC以下となるように決定し、T 6 は480℃、t 6 は30時間とした。また、プラズマ窒化工程に いては、プラズマ窒化時の処理温度T 6 が480℃となるように、放電電圧を200V以上450V 下、放電電流を1A以上5A以下の範囲で制御し た。さらに、プラズマ窒化工程においては、 プラズマ窒化時の炉内の圧力が267Pa以上400Pa 下となるように、窒素(N 2 ):水素(H 2 ):メタン(CH 4 )=79:80:1の割合で炉内にガスを導入した。以上 の熱処理方法が実施された試験片を、本発明 の比較例のサンプルとした(比較例A)。

 そして、上述のように作製された実施例A および比較例Aのサンプルを表面に垂直な断 にて切断し、当該断面を研磨した。さらに 研磨された断面を腐食液にて腐食した後、 面を含む一辺150μmの正方形の視野をランダ に5視野観察した。

 次に、図21~図26を参照して、実験結果に いて説明する。図21および図24において、写 上部がサンプルの表面側に該当する。また 図22および図25において、横軸は表面からの 深さ(距離)、縦軸は硬度(単位はビッカース硬 さ)を示している。また、図23および図26にお て、横軸は表面からの深さ(距離)、縦軸は 素および窒素の濃度を示しており、図中に 素濃度(C濃度)、窒素濃度(N濃度)および炭素 度と窒素濃度との合計値(C+N濃度)が示されて いる。

 図21を参照して、本発明の実施例Aのサン ルにおける表層部には、粒界析出物(アスペ クト比2以上で、かつ7.5μm以上の長さで形成 れた鉄の窒化物)は観察されず、良好なミク 組織となっている。また、図22および図23を 参照して、実施例Aのサンプルの表面から深 0.5mm以内の領域は、950HV以上という十分な硬 を有しているとともに、十分な量の窒素が 入している。そのため、実施例Aと同様の熱 処理を実施した鋼部材の表面に対して研磨な どの仕上げ加工を施すことにより、窒素濃度 が0.05質量%以上、炭素濃度と窒素濃度との合 値が0.82質量%以上1.9質量%以下、厚み0.11mm以 、硬度830HV以上の窒素富化層が形成される ともに、当該窒素富化層を顕微鏡にて観察 た場合、粒界析出物が一辺150μmの正方形領 5視野内に1個以下である機械部品を製造する ことができる。

 一方、図24を参照して、本発明の範囲外 ある比較例Aのサンプルにおける表層部には 多数の粒界析出物90が観察される。また、 25および図26を参照して、比較例Aのサンプル の表面から深さ0.5mm以内の領域は、実施例Aと 同様に、950HV以上という十分な硬度を有して るとともに、十分な量の窒素が侵入してい 。そのため、比較例Aと同様の熱処理を実施 した鋼部材の表面に対して研磨などの仕上げ 加工を施しても、高硬度な表層部が形成され ているものの、表層部に粒界析出物が残存す る機械部品が得られる。このような機械部品 は、上述のように、十分な疲労強度や靭性を 有しているとはいえない。

 以上より、上記実施の形態における鋼の 処理方法を採用した機械部品の製造方法に れば、3.75質量%以上のクロムを含有する鋼 らなるとともに、表層部に窒素富化層が形 されており、かつ疲労強度および靭性が十 に確保された本発明の機械部品を製造可能 あることが確認された。

 (実施例2)
 以下、本発明の実施例2について説明する。 上記実施の形態1において説明した鋼の熱処 方法の拡散工程における、適切な加熱温度 範囲を調査する実験を行なった。実験の手 は以下のとおりである。

 まず、0.77質量%以上0.85質量%以下の炭素と 、0.01質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.01質 %以上0.35質量%以下のマンガンと、0.01質量% 上0.15質量%以下のニッケルと、3.75質量%以上4 .25質量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量% 下のモリブデンと、0.9質量%以上1.1質量%以下 のバナジウムとを含有し、残部鉄および不純 物からなる鋼であるAMS規格6490(AISI規格M50)の 材を準備し、これを加工することにより外 φ40mm、内径φ30mm、厚みt16mmの試験片を作製し た。

 次に、この試験片に対し、上記実施の形 において図11に基づいて説明した鋼の熱処 方法を用いた熱処理工程のうち、焼入工程 ら第3焼戻工程までを上記実施例1の実施例A 場合と同様に実施した。そして、当該試験 を430℃~570℃の温度に種々の時間保持するこ により、拡散工程と同様の工程を実施し、 験片の硬度を測定した。さらに、当該測定 果を反応速度論に基づき解析し、拡散工程 各加熱温度における加熱処理時間(拡散時間 )と硬度との関係を算出した。

 一方、同様の試験片に焼入工程から第3焼戻 工程までを上記実施例1の実施例Aの場合と同 に実施した後、実際にプラズマ窒化工程お び拡散工程を実施して、試験片の硬度分布 確認する実験も行なった。プラズマ窒化工 においては、プラズマ窒化時の処理温度T 6 が480℃となるように、放電電圧を200V以上450V 下、放電電流を1A以上5A以下の範囲で制御し 、1時間保持することによりプラズマ窒化を なった。さらに、プラズマ窒化工程では、 ラズマ窒化時の炉内の圧力が267Pa以上400Pa以 となるように、窒素(N 2 ):水素(H 2 )=1:1の割合で炉内にガスを導入した。さらに プラズマ窒化工程が完了した試験片に対し 、480℃で50時間保持する拡散工程を行なっ 。そして、拡散工程を実施する前後におけ 試験片の表層部における硬度分布を測定し 。

 次に、図27および図28を参照して、実験の 結果について説明する。図27において、横軸 加熱処理時間(拡散時間)、縦軸は試験片の 度を示している。図28において、横軸は表面 からの深さ(距離)、縦軸は硬度を示している また、図28において、菱形は拡散工程を行 う前の試験片、四角形は480℃で50時間保持す る拡散工程を行なった試験片の硬度を示して いる。

 図27を参照して、試験片の硬度は、拡散 度が高いほど短時間で低下しているが、拡 温度が480℃になると、200時間拡散処理を行 った場合でも硬度の低下幅が40HV以下となり 母材の硬度(プラズマ窒化による窒素の侵入 の影響がない領域における硬度)の低下が表 部の硬度に及ぼす影響が小さくなる。また 拡散温度が460℃になると、200時間拡散処理 行なった場合でも硬度の低下幅が25HV以下と り、母材の硬度の低下が表層部の硬度に及 す影響が一層小さくなる。さらに、拡散温 が430℃になると、200時間拡散処理を行なっ 場合でも硬度の低下幅が10HV以下となり、母 材の硬度の低下は、表層部の硬度にほとんど 影響を及ぼさなくなる。

 一方、図28を参照して、480℃で50時間保持 する拡散工程を行なった場合、実際の母材硬 度の低下幅は、図27の解析結果とほぼ一致し おり、図27の解析結果は、実際の熱処理の 果に一致しているものと考えられる。

 以上の実験結果より、拡散工程における 熱温度(拡散温度)は、母材の硬度の低下が 層部の硬度に及ぼす影響を抑制しつつ、鋼 侵入した窒素を所望の領域にまで到達させ 観点から、480℃以下とする必要があり、460 以下とすることが好ましい。さらに、当該 熱温度を430℃以下とすることにより、母材 硬度の低下を表層部の硬度にほとんど影響 せることなく、拡散工程を実施することが きる。なお、母材の硬度の低下が表層部の 度に及ぼす影響を抑制する観点からは、拡 工程における加熱温度を一層低くすること 好ましいが、鋼に侵入した窒素を所望の領 にまで到達させるために要する時間が実際 生産工程における許容限度を超えて長くな ことを回避するため、当該加熱温度は300℃ 上とすることが好ましい。

 (実施例3)
 以下、本発明の実施例3について説明する。 本発明の機械部品と同様の構成を有するサン プルを、上記実施の形態3における鋼の熱処 方法を採用した機械部品の製造方法により 際に作製し、表層部における粒界析出物の 生が抑制されていることを確認する実験を なった。実験の手順は以下のとおりである

 まず、0.11質量%以上0.15質量%以下の炭素と 、0.1質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.15質 %以上0.35質量%以下のマンガンと、3.2質量%以 3.6質量%以下のニッケルと、4質量%以上4.25質 量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下 モリブデンと、1.13質量%以上1.33質量%以下の ナジウムとを含有し、残部鉄および不純物 らなる鋼であるAMS規格6278(AISI規格M50NiL)の鋼 材を準備し、これを加工することにより外径 φ40mm、内径φ30mm、厚みt16mmの試験片を作製し 。

 次に、この試験片に対し、上記実施の形態3 において図19に基づいて説明した鋼の熱処理 法を用いた熱処理工程を実施した。ここで T 11 、t 11 、T 12 、t 12 、T 13 、t 13 、T 14 、t 14 、T 15 、t 15 、T 16 およびt 16 は、第3焼戻工程後の試験片の硬度が58HRC以上 65HRC以下となるように決定し、T 17 は430℃、t 17 は10時間、T 18 は430℃、t 18 は160時間とした。また、プラズマ窒化工程に おいては、プラズマ窒化時の処理温度T 17 が430℃となるように、放電電圧を200V以上450V 下、放電電流を1A以上5A以下の範囲で制御し た。さらに、プラズマ窒化工程においては、 プラズマ窒化時の炉内の圧力が267Pa以上400Pa 下となるように、窒素(N 2 ):水素(H 2 )=1:1の割合で炉内にガスを導入した。

 さらに、拡散工程では、窒素雰囲気に調 された雰囲気炉内において試験片が加熱さ 、試験片の表面における炭素濃度と窒素濃 との和が1.9質量%以下となるように、拡散処 理が実施された。以上のように本発明の鋼の 熱処理方法が実施された試験片を、本発明の 実施例のサンプルとした(実施例B)。

 一方、同様に作製されたAMS規格6278からなる 試験片に対し、上記実施の形態3において図19 に基づいて説明した鋼の熱処理方法から、拡 散工程を省略した熱処理工程を実施した。こ こで、T 11 、t 11 、T 12 、t 12 、T 13 、t 13 、T 14 、t 14 、T 15 、t 15 、T 16 およびt 16 は、第3焼戻工程後の試験片の硬度が58HRC以上 65HRC以下となるように決定し、T 17 は480℃、t 17 は30時間とした。また、プラズマ窒化工程に いては、プラズマ窒化時の処理温度T 17 が480℃となるように、放電電圧を200V以上450V 下、放電電流を1A以上5A以下の範囲で制御し た。さらに、プラズマ窒化工程においては、 プラズマ窒化時の炉内の圧力が267Pa以上400Pa 下となるように、窒素(N 2 ):水素(H 2 ):メタン(CH 4 )=79:80:1の割合で炉内にガスを導入した。以上 の熱処理方法が実施された試験片を、本発明 の比較例のサンプルとした(比較例B)。

 そして、上述のように作製された実施例B および比較例Bのサンプルを表面に垂直な断 にて切断し、当該断面を研磨した。さらに 研磨された断面を腐食液にて腐食した後、 面を含む一辺150μmの正方形の視野をランダ に5視野観察した。

 次に、図29~図34を参照して、実験結果に いて説明する。図29および図32において、写 上部がサンプルの表面側に該当する。また 図30および図33において、横軸は表面からの 深さ(距離)、縦軸は硬度(単位はビッカース硬 さ)を示している。また、図31および図34にお て、横軸は表面からの深さ(距離)、縦軸は 素および窒素の濃度を示しており、細線が 素濃度、太線が窒素濃度を示している。

 図29を参照して、本発明の実施例Bのサン ルにおける表層部には、粒界析出物(アスペ クト比2以上で、かつ7.5μm以上の長さで形成 れた鉄の窒化物)は観察されず、良好なミク 組織となっている。また、図30および図31を 参照して、実施例Bのサンプルの表面から深 0.5mm以内の領域は、950HV以上という十分な硬 を有しているとともに、十分な量の窒素が 入している。そのため、実施例Bと同様の熱 処理を実施した鋼部材の表面に対して研磨な どの仕上げ加工を施すことにより、窒素濃度 が0.05質量%以上、炭素濃度と窒素濃度との合 値が0.55質量%以上1.9質量%以下、厚み0.11mm以 、硬度800HV以上の窒素富化層が形成される ともに、当該窒素富化層を顕微鏡にて観察 た場合、粒界析出物が一辺150μmの正方形領 5視野内に1個以下である機械部品を製造する ことができる。

 一方、図32を参照して、本発明の範囲外 ある比較例Bのサンプルにおける表層部には 多数の粒界析出物90が観察される。また、 33および図34を参照して、比較例Bのサンプル の表面から深さ0.5mm以内の領域は、実施例Bと 同様に、950HV以上という十分な硬度を有して るとともに、十分な量の窒素が侵入してい 。そのため、比較例Bと同様の熱処理を実施 した鋼部材の表面に対して研磨などの仕上げ 加工を施しても、高硬度な表層部が形成され ているものの、表層部に粒界析出物が残存す る機械部品が得られる。このような機械部品 は、上述のように、十分な疲労強度や靭性を 有しているとはいえない。

 以上より、上記実施の形態3における鋼の 熱処理方法を採用した機械部品の製造方法に よれば、4質量%以上のクロムを含有する鋼か なるとともに、表層部に窒素富化層が形成 れており、かつ疲労強度および靭性が十分 確保された本発明の機械部品を製造可能で ることが確認された。

 (実施例4)
 以下、本発明の実施例4について説明する。 上記実施の形態3において説明した鋼の熱処 方法の拡散工程における、適切な加熱温度 範囲を調査する実験を行なった。実験の手 は以下のとおりである。

 まず、0.11質量%以上0.15質量%以下の炭素と 、0.1質量%以上0.25質量%以下の珪素と、0.15質 %以上0.35質量%以下のマンガンと、3.2質量%以 3.6質量%以下のニッケルと、4質量%以上4.25質 量%以下のクロムと、4質量%以上4.5質量%以下 モリブデンと、1.13質量%以上1.33質量%以下の ナジウムとを含有し、残部鉄および不純物 らなる鋼であるAMS規格6278(AISI規格M50NiL)の鋼 材を準備し、これを加工することにより外径 φ40mm、内径φ30mm、厚みt16mmの試験片を作製し 。

 次に、この試験片に対し、上記実施の形 3において図19に基づいて説明した鋼の熱処 方法を用いた熱処理工程のうち、浸炭工程 ら第3焼戻工程までを上記実施例3の実施例B 場合と同様に実施した。そして、当該試験 を430℃~570℃の温度に種々の時間保持するこ とにより、拡散工程と同様の工程を実施し、 浸炭層の硬度を測定した。より具体的には、 試験片の表面からの距離が0.2mm以上0.4mm以下 領域において硬度を9点測定し、そのうちの 低硬度を算出した。さらに、当該測定結果 反応速度論に基づき解析し、拡散工程の各 熱温度における加熱処理時間(拡散時間)と 炭層の硬度との関係を算出した。

 一方、同様の試験片に浸炭工程から第3焼戻 工程までを上記実施例3の実施例Bの場合と同 に実施した後、実際にプラズマ窒化工程お び拡散工程を実施して、試験片の硬度分布 確認する実験も行なった。プラズマ窒化工 においては、プラズマ窒化時の処理温度T 17 が480℃となるように、放電電圧を200V以上450V 下、放電電流を1A以上5A以下の範囲で制御し 、1時間保持することによりプラズマ窒化を なった。さらに、プラズマ窒化工程では、 ラズマ窒化時の炉内の圧力が267Pa以上400Pa以 となるように、窒素(N 2 ):水素(H 2 )=1:1の割合で炉内にガスを導入した。さらに プラズマ窒化工程が完了した試験片に対し 、480℃で50時間保持する拡散工程を行なっ 。そして、拡散工程を実施する前後におけ 試験片の表層部における硬度分布を測定し 。

 次に、図35および図36を参照して、実験の 結果について説明する。図35において、横軸 加熱処理時間(拡散時間)、縦軸は浸炭層の 度を示している。図36において、横軸は表面 からの深さ(距離)、縦軸は硬度を示している また、図36において、菱形は拡散工程を行 う前の試験片、四角形は480℃で50時間保持す る拡散工程を行なった試験片の硬度を示して いる。

 図35を参照して、試験片の浸炭層の硬度 、拡散温度が高いほど短時間で低下してい が、拡散温度が480℃になると、200時間拡散 理を行なった場合でも硬度の低下幅が50HV以 となり、母材の硬度(浸炭層のうちプラズマ 窒化による窒素の侵入の影響がない領域にお ける硬度)の低下が表層部の硬度に及ぼす影 が小さくなる。また、拡散温度が460℃にな と、200時間拡散処理を行なった場合でも硬 の低下幅が30HV以下となり、母材の硬度の低 が表層部の硬度に及ぼす影響が一層小さく る。さらに、拡散温度が430℃になると、200 間拡散処理を行なった場合でも硬度の低下 が10HV以下となり、母材の硬度の低下は、表 層部の硬度にほとんど影響を及ぼさなくなる 。

 一方、図36を参照して、480℃で50時間保持 する拡散工程を行なった場合、実際の母材硬 度の低下幅は、図35の解析結果とほぼ一致し おり、図35の解析結果は、実際の熱処理の 果に一致しているものと考えられる。

 以上の実験結果より、拡散工程における 熱温度(拡散温度)は、母材の硬度の低下が 層部の硬度に及ぼす影響を抑制しつつ、鋼 侵入した窒素を所望の領域にまで到達させ 観点から、480℃以下とする必要があり、460 以下とすることが好ましい。さらに、当該 熱温度を430℃以下とすることにより、母材 硬度の低下を表層部の硬度にほとんど影響 せることなく、拡散工程を実施することが きる。なお、母材の硬度の低下が表層部の 度に及ぼす影響を抑制する観点からは、拡 工程における加熱温度を一層低くすること 好ましいが、鋼に侵入した窒素を所望の領 にまで到達させるために要する時間が実際 生産工程における許容限度を超えて長くな ことを回避するため、当該加熱温度は300℃ 上とすることが好ましい。

 今回開示された実施の形態および実施例 すべての点で例示であって、制限的なもの はないと考えられるべきである。本発明の 囲は上記した説明ではなくて請求の範囲に って示され、請求の範囲と均等の意味、お び範囲内でのすべての変更が含まれること 意図される。

 本発明の機械部品は、3.75質量%以上のク ムを含有する鋼からなり、表層部に窒素富 層が形成された機械部品に、特に有利に適 され得る。また、本発明の転がり軸受は、 酷な条件下における耐久性の向上が求めら る転がり軸受に、特に有利に適用され得る