KAWAGUCHI DAIJI (JP)
MURAKAMI ATSUSHI (JP)
SUWA SATORU (JP)
KAWAGUCHI DAIJI (JP)
MURAKAMI ATSUSHI (JP)
JP2007231302A | 2007-09-13 | |||
JP2004162161A | 2004-06-10 | |||
JP2007231302A | 2007-09-13 |
Masayuki Kushibuchi (JP)
質量%で C :0.35~0.55% Si:0.05~0.5% Mn:0.6~1.2% Cu:0.01~0.5% Ni:0.01~0.5% Cr:0.05~0.6% V :0.01~0.40% S :0.04~0.1% s-Al:0.001~0.01% Ca:0.0005~0.02% N :0.001~0.04% 残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有するとともに、焼準加熱時のオーステナイト中に固溶できるV量を[V]、炭素当量C[eq.]としたとき、 C[eq.]=C+0.07×Si+0.16×Mn+0.19×Cu+0.17×Ni+0.2×Cr+[V] が0.58~0.89%を満たすように各成分が調整され、熱間鍛造及び焼準処理後の組織がフェライト+パーライトである軟窒化クランクシャフト用素材からなり、 上記組成を有する鋼を溶製した後に熱間鍛造を行い、その後に当該熱間鍛造材に対して処理温度780℃~850℃の温度範囲で焼準処理が施され、軟窒化処理による曲がりを矯正する歪矯正加工が後に施されること、 を特徴とする軟窒化クランクシャフト用素材。 |
処理温度780℃~850℃の温度範囲で焼準処理が施された後、処理温度500~650℃,処理時間1~5時間の条件で軟窒化処理が施され、その後に上記歪矯正加工が施されること、 を特徴とする請求項1記載の軟窒化クランクシャフト用素材。 |
質量%で C :0.35~0.55% Si:0.05~0.5% Mn:0.6~1.2% Cu:0.01~0.5% Ni:0.01~0.5% Cr:0.05~0.6% V :0.01~0.40% S :0.04~0.1% s-Al:0.001~0.01% Ca:0.0005~0.02% N :0.001~0.04% 残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有するとともに、焼準加熱時のオーステナイト中に固溶できるV量を[V]、炭素当量C[eq.]としたとき、 C[eq.]=C+0.07×Si+0.16×Mn+0.19×Cu+0.17×Ni+0.2×Cr+[V] が0.58~0.89%を満たすように各成分が調整されて成る材料を溶製し、 溶製した上記材料の熱間鍛造を行い、その後に当該熱間鍛造材を処理温度780℃~850℃の温度範囲で焼準処理することによりフェライト+パーライトの組織として、 処理温度500~650℃,処理時間1~5時間の条件で軟窒化処理を行い、 この軟窒化処理による曲がりを矯正する歪矯正加工を施すこと、 を特徴とする軟窒化クランクシャフト用素材の製造方法。 |
本発明は、表面処理としての軟窒化処理 施される軟窒化クランクシャフト用素材及 その製造方法に関する。
従来、機械構造部品の素材として、非調質
が広く適用されるようになっている。例え
、V(バナジウム)が添加された非調質鋼では
微量に添加されているVが微細な炭化物を形
成し、部品の高強度化に寄与する。
例えば、機械構造部品としてのクランクシ
フトには、耐摩耗性や疲労強度を高める目
で、上記の機械加工後に塩浴窒化処理,ガス
軟窒化処理,イオン窒化処理等の軟窒化処理
施されることがある。一般に、軟窒化処理
熱処理後の歪み発生量が小さいことが知ら
ているが、クランクシャフトの製造時には
より精度を高めるため、軟窒化処理により
可避的に生じた曲がりを矯正するための歪
正加工が施される。ところが、軟窒化処理
れた非調質鋼は、軟窒化処理された調質鋼
比べて歪矯正能が低く、また、歪矯正加工
に表面に生じる応力歪みの影響で疲労強度
低下し易いという問題があった。そこで、
調質鋼における歪矯正能及び疲労強度の向
を図るべく、種々の提案がなされている(例
ば、特許文献1参照)。
クランクシャフトのように高い精度と強度
求められる部材においては、歪矯正能が少
からず生産性に影響するため、歪矯正能の
らなる向上が期待されており、疲労強度に
いても同様の期待がある。
そこで本発明は、軟窒化処理される非調質
の強度および歪矯正加工の際の歪矯正能の
らなる向上を図ることにより、より一層の
産性の向上を図ることが可能な軟窒化クラ
クシャフト用素材及びその製造方法を提供
ることを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の軟窒化
ランクシャフト用素材は、質量%で、C:0.35~0.
55%,Si:0.05~0.5%,Mn:0.6~1.2%,Cu:0.01~0.5%,Ni:0.01~0.5%,Cr:0.
05~0.6%,V:0.01~0.40%,S:0.04~0.1%,s-Al:0.001~0.01%,Ca:0.0005~
0.02%,N:0.001~0.04%,残部Fe及び不可避的不純物か
なる組成を有するとともに、焼準加熱時の
ーステナイト中に固溶できるV量を[V]、炭素
量C[eq.]としたとき、C[eq.]=C+0.07×Si+0.16×Mn+0.19
×Cu+0.17×Ni+0.2×Cr+[V]が0.58~0.89%を満たすように
成分が調整され、熱間鍛造及び焼準処理後
組織がフェライト+パーライトである軟窒化
クランクシャフト用素材からなり、上記組成
を有する鋼を溶製した後に熱間鍛造を行い、
その後に当該熱間鍛造材に対して処理温度780
℃~850℃の温度範囲で焼準処理が施され、軟
化処理による曲がりを矯正する歪矯正加工
後に施されること、を特徴とする。
この場合、軟窒化処理が施されるクランク
ャフト用の素材を、熱間鍛造の後に、780℃~
850℃の温度範囲に含まれる温度で焼準処理が
施されるものとすることで、軟窒化処理によ
る曲がりを矯正する歪矯正加工における歪矯
正能を高く保つことができる。すなわち、焼
準処理における温度を850℃以下とすることで
、焼準処理時に硬度が過度に高められること
で歪矯正能を低下させることがなく、また、
焼準処理の温度を780℃以上とすることで、前
工程としての熱間鍛造の影響を確実に排除す
るとともに、好ましい硬度を確保して疲労強
度を高めることができる。これにより、高い
疲労強度と高い歪矯正能とを合わせ持ち、歪
矯正加工における歩留まりをさらに向上させ
、より一層の生産性の向上を図ることが可能
な軟窒化クランクシャフト用素材を提供でき
る。
上記構成において、処理温度780℃~850℃の温
度範囲で焼準処理が施された後、処理温度500
~650℃,処理時間1~5時間の条件で軟窒化処理が
され、その後に上記歪矯正加工が施される
のとしてもよい。
この場合、軟窒化処理を行うことで十分に
度が高められ、かつ、歪矯正能が高い状態
歪矯正加工が施されるので、軟窒化処理後
歪矯正加工により歪みを容易に矯正し、よ
高精度のクランクシャフトを高い歩留まり
製造できる。
また、本発明の軟窒化クランクシャフト用
材の製造方法は、質量%で、C:0.35~0.55%,Si:0.05~
0.5%,Mn:0.6~1.2%,Cu:0.01~0.5%,Ni:0.01~0.5%,Cr:0.05~0.6%,V:0.
01~0.40%,S:0.04~0.1%,s-Al:0.001~0.01%,Ca:0.0005~0.02%,N:0.00
1~0.04%,残部Fe及び不可避的不純物からなる組
を有するとともに、焼準加熱時のオーステ
イト中に固溶できるV量を[V]、炭素当量C[eq.]
したとき、C[eq.]=C+0.07×Si+0.16×Mn+0.19×Cu+0.17×N
i+0.2×Cr+[V]が0.58~0.89%を満たすように各成分が
整されて成る材料を溶製し、溶製した上記
料の熱間鍛造を行い、その後に当該熱間鍛
材を処理温度780℃~850℃の温度範囲で焼準処
理することによりフェライト+パーライトの
織として、処理温度500~650℃,処理時間1~5時間
の条件で軟窒化処理を行い、この軟窒化処理
による曲がりを矯正する歪矯正加工を施すこ
と、を特徴とする。
この場合、軟窒化処理が施されるクランク
ャフト用の素材を、熱間鍛造の後に、780℃~
850℃の温度範囲に含まれる温度で焼準処理が
施されるものとすることで、軟窒化処理によ
る曲がりを矯正する歪矯正加工における歪矯
正能を高く保つことができる。すなわち、焼
準処理における温度を850℃以下とすることで
、焼準処理時に硬度が過度に高められること
で歪矯正能を低下させることがなく、また、
焼準処理の温度を780℃以上とすることで、前
工程としての熱間鍛造の影響を確実に排除す
るとともに、好ましい硬度を確保して疲労強
度を高めることができる。これにより、高い
疲労強度と高い歪矯正能とを合わせ持ち、歪
矯正加工における歩留まりをさらに向上させ
、より一層の生産性の向上を図ることが可能
な軟窒化クランクシャフト用素材を製造でき
る。
本発明によれば、高い疲労強度と高い歪 正能とを合わせ持ち、歪矯正加工における 留まりをさらに向上させ、より一層の生産 の向上を図ることが可能な軟窒化クランク ャフト用素材を提供できる。また、軟窒化 理後の歪矯正加工により歪みを容易に矯正 、より高精度のクランクシャフトを高い歩 まりで製造できる。
次に本発明の実施形態を以下に説明する。
本発明を適用した軟窒化クランクシャフト
素材は、質量%で、C:0.35~0.55%,Si:0.05~0.5%,Mn:0.6~
1.2%,Cu:0.01~0.5%,Ni:0.01~0.5%,Cr:0.05~0.6%,V:0.01~0.40%,S:0
.04~0.1%,s-Al:0.001~0.01%,Ca:0.0005~0.02%,N:0.001~0.04%,残
Fe及び不可避的不純物からなる組成を有す
とともに、焼準加熱時のオーステナイト中
固溶できるV量を[V]、炭素当量C[eq.]としたと
、C[eq.]=C+0.07×Si+0.16×Mn+0.19×Cu+0.17×Ni+0.2×Cr+[V
]が0.58~0.89%を満たすように各成分が調整され
ものである。
Vを含む非調質鋼から成る軟窒化クランク シャフト用素材に対して軟窒化処理後に歪矯 正時に亀裂が発生し易い原因は、軟窒化処理 の際にVが表層に硬い窒化物を形成して鋼の 層を硬くすることにある。Vが硬い炭化物を 細に析出することで鋼が硬く高強度となり クランクシャフトの耐久疲労特性(疲労強度 )が高まるが、その一方で、軟窒化処理後の 矯正加工では、鋼が硬いほど歪矯正に必要 荷重が高くなり、発生する応力が高くなる で、亀裂が発生し易くなる。
そこで、焼準加熱時のオーステナイト(γ)中
に固溶できるV量を[V]、炭素当量C[eq.]とした
き、
C[eq.]=C+0.07×Si+0.16×Mn+0.19×Cu+0.17×Ni+0.2×Cr+[V]
で表される炭素当量C[eq.]を0.58~0.89%とするこ
によって、即ち炭素当量C[eq.]がそのような
となるように各成分を調整することによっ
、必要な硬さが得られるとともに歪矯正加
後においてもクランクシャフトが良好な疲
強度を実現できる。すなわち、C[eq.]が0.58%以
上であれば軟窒化処理後の硬度が高く、所望
の疲労強度が得られるので好ましく、C[eq.]が
0.89%以下であれば、軟窒化処理後の硬度が硬
なり過ぎず、歪矯正能が損なわれず、さら
必要な被削性が保持されるので、好ましい
ここで、炭素当量C[eq.]を左右するVを単なる
鋼への添加量ではなく、γ(オーステナイト)
への固溶量[V]で規定しているのは、γ中に固
溶したVだけが、その後の冷却によって微細
炭化物や窒化物を析出し、鋼の硬さを高め
よう作用し、即ちクランクシャフトとして
疲労強度を直接左右するためである。
また、軟窒化クランクシャフト用素材の組
については、以下のように考察される。
・歪矯正加工時の歪みの小さい初期において
表面の化合物層に亀裂が発生し、歪みが増加
すると化合物層に接した1単位のパーライト
(以下パーライトブロックと言う)に亀裂が発
生し、更に歪みが増加するとその1単位のパ
ライトブロックに生じた亀裂を初期亀裂と
て、より内部のフェライト又はパーライト
亀裂が進行し、これがクランクシャフトの
久疲労寿命を損なう。
・従って化合物層に接した1単位のパーライ
ブロックの大きさが小さいほど初期亀裂の
さが短くなり、そしてその初期亀裂の長さ
短いほど亀裂の進行が起り難い。
・そのため、歪矯正能を向上させるためには
、パーライトブロックの大きさを小さくする
必要がある。
・軟窒化クランクシャフト用素材を含む非調
質鋼は通常1200℃以上に加熱後950℃以上で鍛
を終了し、そのまま放冷却されるため、そ
組織は旧オーステナイト粒界に沿って析出
る初析フェライトと残りの部分からなるパ
ライトの混合組織から構成され、一方調質
は800℃付近の温度領域に加熱し冷却される
め、旧オーステナイト粒は粗大化せずに微
となり、微細なフェライトとパーライトの
合組織から構成されたものとなる。
・軟窒化クランクシャフト用素材を含む非調
質鋼は調質鋼と比較して旧オーステナイト粒
が大きく、焼入性が大きいためにフェライト
変態が抑制されてフェライトが析出し難く、
オーステナイトの大部分がパーライトとなり
易い。
・そのためパーライトブロックの大きさが調
質鋼より大きくなり易く、これが歪矯正能を
低下させる原因となる。
そこで、本実施形態においては、上記素材
歪矯正能を高めるべく、軟窒化クランクシ
フト用素材を製造するに際して焼準(焼なら
し)処理を施し、結晶粒を微細化して、生成
るパーライトブロックの大きさを微細化し
且つ均一分散させる。
特に、この焼準処理を、処理温度780℃~850℃
の温度範囲で行うことにより、歪矯正能が高
められる上、疲労強度をより一層高めること
が可能となる。
焼準処理の処理温度を780℃以上とすると、
ーステナイト変態により前加工である熱間
造の影響を除去し、結晶粒の微細化を図る
ともに、Vを固溶させることで硬度を高め、
疲労強度をより一層高めることができる。そ
の一方で、焼準処理の温度を850℃以下とする
ことにより、軟窒化処理後の歪矯正能(曲げ
正性ともいう)の低下を招かない範囲で硬度
高めることができ、歪矯正加工時に亀裂を
じる可能性が極めて低くなる。これにより
歩留まりの向上等による生産効率のさらな
向上を図ることができる。
焼準温度の下限を780℃とした点について詳
する。
焼準処理は、材料の変態点であるAc3を約50
上回る温度に加熱して均一なオーステナイ
組織にした後、大気中で放冷する処理であ
ことが一般的に知られている。このような
理を行うことによって、(1)鍛造品の金属組
の微細化、機械的性質の改善、(2)切削性の
上等、を実現することが期待できる。
ところで、Ac3変態点の温度は、式
Ac3(℃):854-180×(%C)-14×(%Mn)+44×(%Si)-17.8×(%Ni)-1.7×
(%Cr) …(1)
により求められることが知られており、本実
施形態における材料では、730℃~804℃の範囲
にAc3点が存在することになる。従って、本
施形態における焼準温度の下限は、本実施
態の材料におけるAc3点の下限(730℃)に50℃を
えた780℃とすることが、好ましい。
また、上記素材の組成に関する限定理由は
以下に詳述する通りである。
C:0.35~0.55%
Cは強度の向上を目的として添加され、必要
な強度の向上を得るために含有量が0.35%以上
あることが好ましく、被削性及び靭性の低
を招かないために0.55%を超えないことが好
しい。
Si:0.05~0.5%
Siは脱酸及び初析フェライトの強化を目的
して含有させる元素であり、これらの効果
得ることができ、熱間加工性及び靭性の低
を招かない含有量として、0.05~0.5%が好適で
る。
Mn:0.6~1.2%
Mnは、上記素材を用いた機械部品の内部の
さを効果的に高めるための有効な元素とし
、また、靭性を向上させる目的で含有させ
元素であり、必要な硬さ及び靭性を得るた
に0.6%以上であることが好ましく、熱間加工
や焼準時にベイナイトが生成して靭性が低
しないように、その含有量を1.2%以下とする
ことが好ましい。
また、Mnは次に述べるSとともに硫化物を生
するために重要な元素であり、被削性を向
させるために有効な元素である。
S:0.04~0.1%
Sは被削性を向上させるために有効な元素で
、必要な被削性を得るために含有量が0.04%以
であることが好ましく、その一方で、熱間
工性や疲れ強度を低下させたり、Caと高融
のCaSを形成して鋳造時にノズルを閉塞させ
りしないように、その含有量が0.1%以下であ
ことが好ましい。
Cu:0.01~0.5%
Ni:0.01~0.5%
Cu,Niともに、上記素材を用いた機械部品の
部の硬さを効果的に高めるための有効な元
として、また靭性を向上させることを目的
して含有させる元素である。これらの効果
得るために含有量が0.01%以上であることが好
ましい。一方、Cuを0.5%,Niを0.5%より多くして
その効果が飽和するばかりでなく、経済的
観点からも機械部品のコスト高となるため
その含有量が0.5%以下であることが好ましい
Cr:0.05~0.6%
Crは上記素材を用いた機械部品の内部の硬
を効果的に高めるための有効なものであり
また靭性を向上させるために含有させる元
で、必要な靭性を得るために含有量は0.05%以
上であることが好ましい。一方、含有量が0.6
%以下であれば、熱間加工後の空冷でベイナ
トが生成して靭性が低下したり、更にCrの影
響により軟窒化処理時に窒化層に微細な窒化
物が析出して硬さを増加させて歪矯正能を低
下させたりすることがないので、0.6%以下で
ることが好ましい。
Ca:0.0005~0.02%
Caは硫化物中にCaSとして存在させることに
り旋削加工時に工具に保護膜を形成させ、
具寿命を大幅に向上させるために含有させ
元素で、0.0005%以上であればその効果が得ら
、その含有量が0.02%以下であれば、高融点
CaSを形成して鋳造時にノズルを閉塞させる
とがないので好適である。
s-Al:0.001~0.01%
s-AlはSiと同様に鋼を溶製する際に脱酸元素
して用いる。
その含有量は少なくても0.001%以上必要であ
。また、その含有量が0.01%より多いと軟窒
処理時に窒化層に微細な窒化物を析出させ
さを増加させるので、過度の添加による歪
正能の低下を回避するために、0.01%以下であ
ることが好ましい。
N:0.001~0.04%
Nは結晶粒の粗大化を防止するために含まれ
る元素であり、その含有量が0.001%以上であれ
ば、結晶粒の粗大化を防止する効果が得られ
、その一方で含有量が0.04%より多くてもその
果が飽和するので、0.04%以下であることが
ましい。
V:0.01~0.40%
Vは熱間加工後の冷却中に炭窒化物を微細に
析出させて強度を高くするために含有させる
元素で、0.01%以上であればその効果が得られ
0.40%より多くしてもその効果が飽和して経
的に不利になるばかりでなく歪矯正能を低
させてしまうため、その含有量は0.40%以下で
あることが好ましい。
上記の素材として、本実施形態では、次 表1に示す14種類の材料を例として用いた。 れらの材料は、いずれも、本発明に規定さ た組成からなる。なお、表1において、[V],C[ eq.]は、焼準処理で800℃に加熱した場合の値 記載している。
本実施形態では、表1に示す化学組成の鋼を
溶製した後、1200℃の温度で熱間鍛造を行い
寸法,形状がφ50×1000mmのクランクシャフトを
た。
このクランクシャフトに、セ氏750℃~1000℃
範囲における様々な温度において焼準処理
行った。この焼準処理では、上記温度でそ
ぞれ60分間加熱保持した後室温まで放冷する
条件とした。
続いて、上記クランクシャフトに、塩浴 (シアン酸ソーダ(NaCNO)、シアン酸カリ(KCNO) を含む混合塩)を用いて塩浴軟窒化処理を施 た。この塩浴軟窒化処理の温度は580℃、時 は100分とした。
そして、歪矯正能、切削性、及び疲労強度
各特性を評価した。これらの具体的な評価
法は下記の通りである。
<歪矯正能>
上記各組成の鋼を溶製した後、1200℃の温度
でクランクシャフトの形状に熱間鍛造し、そ
の後上記の温度で焼準処理を施し、この焼準
処理の後でガンドリル穴あけを含む機械加工
を行い、機械加工後に、塩浴軟窒化処理(580
×100分)を施して、実用クランクシャフトと
た。
得られたクランクシャフトを、両端ジャー
ル部を支点間距離400mmにて支えながら、中
ジャーナル部に集中荷重を加えることによ
3点曲げ試験を行った。
この試験において、中央ジャーナル部に亀
が発生するまで荷重を加え、除荷後の最大
み量(振れ変化量)をそのクランクシャフト
歪矯正能として求めた。
<切削性>
上記各組成の鋼を溶製した後、1200℃の温度
でクランクシャフトの形状に熱間鍛造した後
、上記の温度で焼準処理を施すことで試験片
を作成した。この試験片に対し、ガンドリル
穴あけ加工を施し、この穴明け加工に伴う刃
具の摩耗の程度を切削性の指標として評価し
た。
尚、切削には、直径5.4mmの超硬合金製ガン
リルを用い、切削条件は以下の通りとした
回転速度:4300r.p.m.(回転/分)
送り:0.06mm/回転
穴深さ:67mm
<疲労強度>
歪矯正能の評価と同様に作成した実用クラ
クシャフトを用意して、回転曲げ疲労試験
実施した。この試験は最大負荷荷重を種々
変えて行い、回転1000万回にて破壊を生じな
い最大負荷荷重を疲労強度として求めた。
図1は、軟窒化クランクシャフト用素材の歪
矯正能を示す図表である。
この図1において、縦軸は、歪矯正能の指標
としての亀裂発生後の歪み量(μm)であり、横
は、焼準処理の温度条件である。
図1に示すように、焼準温度が低いほど歪矯
正能が高い傾向が現れた。詳細には、焼準処
理の温度が850℃以下であれば、好ましい歪矯
正能として設定された基準値(25μm)よりも良
な歪矯正能が得られることが明らかになっ
。これは、焼準処理時の温度が高いほどVの
溶が進んで硬度が高められることによると
えられる。また、焼準処理の温度が800℃未
であっても、歪矯正能が基準値を下回るこ
はなかった。
図2は、軟窒化クランクシャフト用素材の刃
具摩耗性を示す図表である。
図2において縦軸は刃具の摩耗の程度を示し
、横軸は焼準処理の温度条件である。
この図2に示すように、焼準温度が低いほど
刃具の摩耗が小さい、すなわち切削性が良い
ことが明らかになった。焼準温度が880℃を超
える程度で、刃具の摩耗が、好ましいとされ
る基準値を超えてしまうので、本発明のよう
に、焼準処理の温度を850℃以下とすれば、好
ましい切削性の基準値を満たすことが明らか
になり、焼準処理の温度が800℃未満となって
も、切削性が基準値を超えることはなかった
。ここで、基準値は、例えば0.3mmである。
図3は、軟窒化クランクシャフト用素材の疲
労強度を示す図表である。
図3において縦軸は疲労強度を示す指標とし
ての上述した最大負荷荷重(MPa)であり、横軸
焼準処理の温度条件である。
この図3に示すように、焼準温度が高いほど
疲労強度が高いことが明らかになった。これ
は、焼準処理時の温度が高いほどVの固溶が
んで硬度が高められることによると思われ
。焼準温度が780℃以上となり、1000℃以下と
る範囲の全体において、疲労強度が好まし
基準値を下回ることはなかった。
このように、質量%で、C:0.35~0.55%,Si:0.05~0.5 %,Mn:0.6~1.2%,Cu:0.01~0.5%,Ni:0.01~0.5%,Cr:0.05~0.6%,V:0.01~ 0.40%,S:0.04~0.1%,s-Al:0.001~0.01%,Ca:0.0005~0.02%,N:0.001~0 .04%,残部Fe及び不可避的不純物からなる組成 有するとともに、焼準加熱時のオーステナ ト中に固溶できるV量を[V]、炭素当量C[eq.]と たとき、C[eq.]=C+0.07×Si+0.16×Mn+0.19×Cu+0.17×Ni+0 .2×Cr+[V]が0.58~0.89%を満たすように各成分が調 されて成る軟窒化クランクシャフト用素材 用い、この素材を溶製し、溶製した上記材 の熱間鍛造を行い、その後に当該熱間鍛造 を処理温度780℃~850℃の温度範囲で焼準処理 することによりフェライト+パーライトの組 として、処理温度500~650℃,処理時間1~5時間の 条件で軟窒化処理を行い、この軟窒化処理に よる曲がりを矯正する歪矯正加工を施す場合 には、焼準処理時の温度を780℃~850℃の範囲 収まる温度とすることで、良好な疲労強度 確保しながら、軟窒化処理後に歪みを除去 る歪矯正加工における歪矯正能を高めるこ ができ、この歪矯正加工の歩留まりを高め 生産効率の向上を図ることができる。また 焼準処理を上記の温度で施すことによって 好適な切削性を持たせることが可能となる
つまり、上記素材を用いてクランクシャフ
を製造する場合、
・上記の組成を満たす鋼を溶製し、
・溶製した鋼を熱間鍛造してクランクシャ
トの形状とし、
・熱間鍛造の後に、780℃~850℃の温度で焼準
処理を施し、
・焼準処理の後で機械加工を行い、
・機械加工後に、処理温度500~650℃,処理時
1~5時間の条件で軟窒化処理を施して、実用
ランクシャフトとする、
工程を含むことが好ましい。
これにより、高い疲労強度と高い歪矯正 とを合わせ持ち、歪矯正加工における歩留 りをさらに向上させ、より一層の生産性の 上を図ることが可能な軟窒化クランクシャ ト用素材を提供できる。また、軟窒化処理 行うことで十分に強度が高められ、かつ、 矯正能が高い状態で歪矯正加工が施される で、軟窒化処理後の歪矯正加工により歪み 容易に矯正し、より高精度のクランクシャ トを高い歩留まりで製造できる。
以上本発明の実施形態を詳述したが、本発
はこれに限定されるものではなく、例えば
上記素材を評価する際に、軟窒化処理の一
として塩浴軟窒化処理を施した場合を挙げ
説明したが、ガス軟窒化処理やイオン窒化
理等を施すことも勿論可能であるし、軟窒
処理の条件についても任意である。同様に
上記素材の溶製、熱間鍛造、機械加工時の
件についても、適宜変更可能である。
また、本発明の軟窒化処理クランクシャフ
用素材は、四輪自動車、自動二輪車、或い
他の用途に用いられる各種内燃機関のクラ
クシャフトに適用可能であり、その用途に
いては何ら限定されず、その他本発明はそ
趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を
えた態様で実施可能である。
Next Patent: BUTTOCK WIPING DEVICE, AND WARM-WATER CLEANING TOILET SEAT AND WARM-WATER CLEANING TOILET THAT USE T...