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Title:
METHOD FOR COLLECTION OF L-BIPHENYLALANINE COMPOUND SALT, AND METHOD FOR COLLECTION OF BIPHENYLALANINE ESTER COMPOUND USING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/120567
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a method for collecting an L-biphenylalanine compound salt (2'), which comprises the steps of: hydrolyzing a biphenylalanine ester compound (1) with a protease derived from a microorganism belonging to the genus Bacillus in a mixed solvent of an organic solvent and water at a pH value ranging from 6 to 13 to produce the L-biphenylalanine compound salt (2'); separating an aqueous layer containing the L-biphenylalanine compound salt (2') from an organic layer containing unreacted D-biphenylalanine ester compound (3); and adding an inorganic salt and an organic solvent to the aqueous layer to extract the L-biphenylalanine compound salt (2') from the aqueous layer. (1) (2') (3)

Inventors:
TANAKA MASAHIDE (JP)
SUGI KIYOSHI (JP)
KAWADA YOSHIHIRO (JP)
SASAYAMA DAISUKE (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/054906
Publication Date:
October 09, 2008
Filing Date:
March 17, 2008
Export Citation:
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Assignee:
SUMITOMO CHEMICAL CO (JP)
TANAKA MASAHIDE (JP)
SUGI KIYOSHI (JP)
KAWADA YOSHIHIRO (JP)
SASAYAMA DAISUKE (JP)
International Classes:
C07C269/08; C07C271/22; C12P41/00
Domestic Patent References:
WO2007083776A12007-07-26
Foreign References:
JPH06228187A1994-08-16
JPS56500439A1981-04-09
Attorney, Agent or Firm:
HASEGAWA, Yoshiki et al. (GinzaFirst Bldg., 10-6 Ginza 1-chom, Chuo-ku Tokyo 61, JP)
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Claims:
 式(1):
(式中、R 1 は、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、R 2 はアミノ基の保護基を示す。)
で表されるビフェニルアラニンエステル化合物を、有機溶媒と水の混合溶媒中、pH6~13の範囲で、Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼを用いて加水分解し、生成した式(2'):
(式中、Mは、アルカリ金属原子または1/2アルカリ土類金属原子を示す。R 2 は前記と同義である。)
で表されるL-ビフェニルアラニン化合物の塩を含む水層と、式(3):
(式中、各記号は前記と同義である。)
で表される未反応のD-ビフェニルアラニンエステル化合物を含む有機層を分離し;
 当該水層に無機塩および有機溶媒を加えて、当該水層中の式(2')で表されるL-ビフェニルアラニン化合物の塩を抽出する;
ことを包含する、式(2')で表されるL-ビフェニルアラニン化合物の塩の回収方法。
 加水分解用の有機溶媒が、メチルtert-ブチルエーテルおよびトルエンから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の回収方法。
 抽出用の有機溶媒が、メチルtert-ブチルエーテルおよびトルエンから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の回収方法。
 式(1):
(式中、R 1 は、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示し、R 2 はアミノ基の保護基を示す。)
で表されるビフェニルアラニンエステル化合物を、有機溶媒と水の混合溶媒中、pH6~13の範囲で、Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼを用いて加水分解し、生成した式(2'):
(式中、Mは、アルカリ金属原子または1/2アルカリ土類金属原子を示す。R 2 は前記と同義である。)
で表されるL-ビフェニルアラニン化合物の塩を含む水層と、式(3):
(式中、各記号は前記と同義である。)
で表される未反応のD-ビフェニルアラニンエステル化合物を含む有機層を分離し;
 当該水層に無機塩および有機溶媒を加えて、当該水層中の式(2')で表されるL-ビフェニルアラニン化合物の塩を抽出し;
 抽出した式(2')で表されるL-ビフェニルアラニン化合物の塩をエステル化して、式(2):
(式中、各記号は前記と同義である。)
で表されるL-ビフェニルアラニンエステル化合物を得;
 式(2)で表されるL-ビフェニルアラニンエステル化合物を塩基でラセミ化して、式(1)で表されるビフェニルアラニンエステル化合物を得る;
ことを包含する、式(1)で表されるビフェニルアラニンエステル化合物の回収方法。
 加水分解用の有機溶媒が、メチルtert-ブチルエーテルおよびトルエンから選ばれる1種以上である、請求項4に記載の回収方法。
 抽出用の有機溶媒が、メチルtert-ブチルエーテルおよびトルエンから選ばれる1種以上である、請求項4に記載の回収方法。
 エステル化が、塩基の存在下、対応する硫酸エステルまたはハライドと反応させることにより行われる、請求項4に記載の回収方法。
 R 1 がメチルである、請求項4に記載の回収方法。
 エステル化が、塩基の存在下、ジメチル硫酸と反応させることにより行われる、請求項8に記載の回収方法。
 ラセミ化で使用する塩基が、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属アルコラートから選ばれる、請求項4に記載の回収方法。
 ラセミ化で使用する塩基がアルカリ金属アルコラートである、請求項4に記載の回収方法。
 ラセミ化で使用する塩基がナトリウムメチラートである、請求項4に記載の回収方法。
 R 1 がアルキル基であり、かつR 2 が-CO 2 R 3 (式中、R 3 は、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基または9-フルオレニルメチル基を示す。)で表される基である、請求項4に記載の回収方法。
 式(2)で表されるL-ビフェニルアラニンエステル化合物を固体として単離した後、ラセミ化を行う、請求項13に記載の回収方法。
 式(1a):
で表されるDL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステルを、メチルtert-ブチルエーテルと水の混合溶媒中、タウリンと水酸化カリウム水溶液によりpH6~13の範囲で、Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼを用いて加水分解し、生成した式(2'a):
で表されるL-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウム塩を含む水層と、式(3a):
で表される未反応のD-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステルを含む有機層を分離し;
 当該水層に無機塩およびメチルtert-ブチルエーテルを加えて、当該水層中の式(2'a)で表されるL-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウム塩を抽出し;
 抽出した式(2'a)で表されるL-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウム塩を塩基の存在下、ジメチル硫酸でエステル化して、式(2a):
で表されるL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステルを得;
 式(2a)で表されるL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステルを固体として単離した後、ナトリウムメチラートでラセミ化して、式(1a)で表されるDL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステルを得る;
ことを包含する、式(1a)で表されるDL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステルの回収方法。
 請求項4に記載の回収方法により得られた式(1):
(式中、各記号は前記と同義である。)
で表されるビフェニルアラニンエステル化合物を、有機溶媒と水の混合溶媒中、pH6~13の範囲で、Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼを用いて加水分解し、式(3):
(式中、各記号は前記と同義である。)
で表される未反応のD-ビフェニルアラニンエステル化合物を含む有機層を分離し;
D-ビフェニルアラニンエステル化合物を精製する;
ことを包含する、式(3)で表されるD-ビフェニルアラニンエステル化合物の製造方法。
 請求項15に記載の回収方法により得られた 式(1a):
で表されるDL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステルを、有機溶媒と水の混合溶媒中、pH6~13の範囲で、Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼを用いて加水分解し、式(3a):
で表される未反応のD-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステルを含む有機層を分離し;
D-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステルを精製する;
ことを包含する、D-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステルの製造方法。
Description:
L-ビフェニルアラニン化合物の の回収方法、およびそれを用いたビフェニ アラニンエステル化合物の回収方法

 本発明は、医薬等の中間体として有用なD -ビフェニルアラニン化合物の製造により生 するL-ビフェニルアラニン化合物の塩の回収 方法、およびそれを用いたビフェニルアラニ ンエステル化合物の回収方法に関する。

 D-ビフェニルアラニンは、中性エンドペプ ダーゼ阻害剤等の医薬の中間体として有用 ある(特許文献1参照)。

特開平6-228187号公報

 D-ビフェニルアラニンの製造方法として ビフェニルアラニンエステルから酵素によ 加水分解(以下、酵素水解ともいう)する方法 (D-ビフェニルアラニンエステルとL-ビフェニ アラニンの塩が生成する)が考えられる。し かし、L-ビフェニルアラニンの塩は廃棄され か、或いは有効利用のためには、酸性で遊 酸として分離、晶析する等の煩雑な回収操 が必要となる。

 本発明の目的は、ビフェニルアラニンエ テルの酵素水解により生成するL-ビフェニ アラニンの塩を簡便な操作により回収し、 効利用する方法を提供することである。

 本発明者らは、上記の課題を解決するた に、鋭意検討した結果、ビフェニルアラニ エステルの酵素水解後の反応液を、水層と 機層を分離し、分離後の水層に無機塩と有 溶媒を加えて抽出するという簡便な操作に り、L-ビフェニルアラニン化合物の塩を塩 形態のままで回収できることを見出し、発 を完成するに至った。また、本発明者らは この回収されたL-ビフェニルアラニン化合物 の塩をエステル化し、次いでラセミ化するこ とにより、ビフェニルアラニンエステルに変 換でき、従って、酵素水解の原料を簡便な操 作により回収できることも合わせて見出した 。

 即ち、本発明は以下の通りである。
[1]式(1):
(式中、R 1 は、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニ ル基、シクロアルキル基、置換基を有してい てもよいアリール基又は置換基を有していて もよいアラルキル基を示し、R 2 はアミノ基の保護基を示す。)
で表されるビフェニルアラニンエステル化合 物(以下、ビフェニルアラニンエステル化合 (1)ともいう)を、有機溶媒と水の混合溶媒中 pH6~13の範囲で、Bacillus属に属する微生物由 のプロテアーゼを用いて加水分解し、生成 た式(2'):
(式中、Mは、アルカリ金属原子または1/2アル リ土類金属原子を示す。R 2 は前記と同義である。)
で表されるL-ビフェニルアラニン化合物の塩( 以下、L-ビフェニルアラニン化合物の塩(2')と もいう)を含む水層と、式(3):
(式中、各記号は前記と同義である。)
で表される未反応のD-ビフェニルアラニンエ テル化合物(以下、D-ビフェニルアラニンエ テル化合物(3)ともいう)を含む有機層を分離 し;
 当該水層に無機塩および有機溶媒を加えて 当該水層中のL-ビフェニルアラニン化合物 塩(2')を抽出する;
ことを包含する、L-ビフェニルアラニン化合 の塩(2')の回収方法。
[2]加水分解用の有機溶媒が、メチルtert-ブチ エーテルおよびトルエンから選ばれる1種以 上である、上記[1]に記載の回収方法。
[3]抽出用の有機溶媒が、メチルtert-ブチルエ テルおよびトルエンから選ばれる1種以上で ある、上記[1]に記載の回収方法。
[4]ビフェニルアラニンエステル化合物(1)を、 有機溶媒と水の混合溶媒中、pH6~13の範囲で、 Bacillus属に属する微生物由来のプロテアーゼ 用いて加水分解し、生成したL-ビフェニル ラニン化合物の塩(2')を含む水層と、未反応 D-ビフェニルアラニンエステル化合物(3)を む有機層を分離し;
 当該水層に無機塩および有機溶媒を加えて 当該水層中のL-ビフェニルアラニン化合物 塩(2')を抽出し;
 抽出したL-ビフェニルアラニン化合物の塩(2 ')をエステル化して、式(2):
(式中、各記号は前記と同義である。)
で表されるL-ビフェニルアラニンエステル化 物(以下、L-ビフェニルアラニンエステル化 物(2)ともいう)を得;
 L-ビフェニルアラニンエステル化合物(2)を 基でラセミ化して、ビフェニルアラニンエ テル化合物(1)を得る;
ことを包含する、ビフェニルアラニンエステ ル化合物(1)の回収方法。
[5]加水分解用の有機溶媒が、メチルtert-ブチ エーテルおよびトルエンから選ばれる1種以 上である、上記[4]に記載の回収方法。
[6]抽出用の有機溶媒が、メチルtert-ブチルエ テルおよびトルエンから選ばれる1種以上で ある、上記[4]に記載の回収方法。
[7]エステル化が、塩基の存在下、対応する硫 酸エステルまたはハライドと反応させること により行われる、上記[4]に記載の回収方法。
[8]R 1 がメチルである、上記[4]に記載の回収方法。
[9]エステル化が、塩基の存在下、ジメチル硫 酸と反応させることにより行われる、上記[8] に記載の回収方法。
[10]ラセミ化で使用する塩基が、アルカリ金 炭酸塩およびアルカリ金属アルコラートか 選ばれる、上記[4]に記載の回収方法。
[11]ラセミ化で使用する塩基がアルカリ金属 ルコラートである、請求項4に記載の回収方 。
[12]ラセミ化で使用する塩基がナトリウムメ ラートである、上記[4]に記載の回収方法。
[13]R 1 がアルキル基であり、かつR 2 が-CO 2 R 3 (式中、R 3 は、アルキル基、置換基を有していてもよい アリール基、置換基を有していてもよいアラ ルキル基または9-フルオレニルメチル基を示 。)で表される基である、上記[4]に記載の回 収方法。
[14]L-ビフェニルアラニンエステル化合物(2)を 固体として単離した後、ラセミ化を行う、上 記[13]に記載の回収方法。
[15]式(1a):
で表されるDL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチル エステル(以下、DL-N-Boc-ビフェニルアラニン チルエステル(1a)ともいう)を、メチルtert-ブ ルエーテルと水の混合溶媒中、タウリンと 酸化カリウム水溶液によりpH6~13の範囲で、B acillus属に属する微生物由来のプロテアーゼ 用いて加水分解し、生成した式(2'a):
で表されるL-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウ 塩(以下、L-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウ 塩(2'a)ともいう)を含む水層と、式(3a):
で表される未反応のD-N-Boc-ビフェニルアラニ メチルエステル(以下、D-N-Boc-ビフェニルア ニンメチルエステル(3a)ともいう)を含む有 層を分離し;
 当該水層に無機塩およびメチルtert-ブチル ーテルを加えて、当該水層中のL-N-Boc-ビフェ ニルアラニンカリウム塩(2'a)を抽出し;
 抽出したL-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウ 塩(2'a)を塩基の存在下、ジメチル硫酸でエス テル化して、式(2a):
で表されるL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチル ステル(以下、L-N-Boc-ビフェニルアラニンメ ルエステル(2a)ともいう)を得;
 L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル(2 a)を固体として単離した後、ナトリウムメチ ートでラセミ化して、DL-N-Boc-ビフェニルア ニンメチルエステル(1a)を得る;
ことを包含する、DL-N-Boc-ビフェニルアラニン メチルエステル(1a)の回収方法。
[16]上記[4]に記載の回収方法により得られた フェニルアラニンエステル化合物(1)を、有 溶媒と水の混合溶媒中、pH6~13の範囲で、Bacil lus属に属する微生物由来のプロテアーゼを用 いて加水分解し、未反応のD-ビフェニルアラ ンエステル化合物(3)を含む有機層を分離し;
D-ビフェニルアラニンエステル化合物(3)を精 する;
ことを包含する、D-ビフェニルアラニンエス ル化合物(3)の製造方法。
[17]上記[15]に記載の回収方法により得られたD L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル(1a) を、有機溶媒と水の混合溶媒中、pH6~13の範囲 で、Bacillus属に属する微生物由来のプロテア ゼを用いて加水分解し、未反応のD-N-Boc-ビ ェニルアラニンメチルエステル(3a)を含む有 層を分離し;
D-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル(3a) を精製する;
ことを包含する、D-N-Boc-ビフェニルアラニン チルエステル(3a)の製造方法。

 本発明の方法によれば、ビフェニルアラ ンエステル化合物の酵素水解後の反応液か 、簡便な操作によりL-ビフェニルアラニン 合物の塩を塩の形態のままで回収できる。 た、この回収されたL-ビフェニルアラニン化 合物の塩をエステル化、次いでラセミ化する ことにより、ビフェニルアラニンエステル化 合物に変換できるので、酵素水解の原料を簡 便な操作により回収できる。このように、酵 素水解の目的物ではないL-ビフェニルアラニ 化合物を有効利用することができ、効率的 D-ビフェニルアラニンエステル化合物を製 できるので、本発明の方法は経済的に有利 方法である。

 本明細書において使用する置換基の定義を 下に説明する。
 「アルキル基」としては、炭素数1~6の直鎖 は分枝のアルキル基、例えば、メチル、エ ル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イ ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等 挙げられ、好ましくはメチル又はエチルで り、より好ましくはメチルである。

 「アルケニル基」としては、炭素数2~6の 鎖又は分枝のアルケニル基、例えば、アリ 、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニ ル、2-ブテニル、3-ブテニル等が挙げられ、 ましくは、アリルである。

 「シクロアルキル基」としては、炭素数3 ~8のシクロアルキル基、例えば、シクロプロ ル、シクロブチル、シクロペンチル、シク ヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチ 等が挙げられ、好ましくはシクロペンチル はシクロヘキシルである。

 「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、 素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ 好ましくはフッ素原子、塩素原子又は臭素 子である。
 「ハロアルキル基」とは、ハロゲン原子で 換された上記定義の「アルキル基」である 当該ハロゲン原子の置換数は特に限定され いが、1~3個が好ましい。「ハロアルキル基 としては、例えば、クロロメチル、ブロモ チル、フルオロメチル、ジクロロメチル、 ブロモメチル、ジフルオロメチル、トリク ロメチル、トリブロモメチル、トリフルオ メチル、2,2-ジクロロエチル、2,2,2-トリクロ ロエチル等が挙げられ、好ましくはトリフル オロメチルである。

 「アルコキシ基」としては、炭素数1~6の 鎖又は分枝のアルコキシ基、例えば、メト シ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキ 、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、 tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチ オキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオ シ等が挙げられ、好ましくはメトキシ又は トキシである。

 「置換基を有していてもよいアリール基 の「アリール基」としては、炭素数6~14のア リール基、例えば、フェニル、1-ナフチル、2 -ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニ である。

 当該アリール基は置換可能な位置に置換 を有していてもよく、そのような置換基と ては、ハロゲン原子(上記で定義したものと 同じものが例示される)、アルキル基(上記で 義したものと同じものが例示される)、ハロ アルキル基(上記で定義したものと同じもの 例示される)、ヒドロキシ基、アルコキシ基( 上記で定義したものと同じものが例示される )、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。当 置換基の数は特に限定されないが、1~3個が ましい。置換基の数が2個以上の場合、それ の置換基は同一又は異なっていてもよい。

 「置換基を有していてもよいアラルキル 」の「アラルキル基」は、上記定義の「ア ール基」で置換された上記定義の「アルキ 基」である。当該アリール基の置換数は特 限定されないが、1~3個が好ましい。「アラ キル基」としては、例えば、ベンジル、フ ネチル、1-フェニルエチル、1-フェニルプロ ピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロ ル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル、 ンズヒドリル、トリチル等が挙げられ、好 しくはベンジルである。

 当該アラルキル基は置換可能な位置に置 基を有していてもよく、そのような置換基 しては、ハロゲン原子(上記で定義したもの と同じものが例示される)、アルキル基(上記 定義したものと同じものが例示される)、ハ ロアルキル基(上記で定義したものと同じも が例示される)、ヒドロキシ基、アルコキシ (上記で定義したものと同じものが例示され る)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。 該置換基の数は特に限定されないが、1~3個 好ましい。置換基の数が2個以上の場合、そ らの置換基は同一又は異なっていてもよい

 R 2 で示される「アミノ基の保護基」としては、 アミノ基の保護基として用いられる自体公知 の保護基を特に制限なく使用することができ る。そのような保護基としては、-CO 2 R 3 (式中、R 3 は、アルキル基、置換基を有していてもよい アリール基、置換基を有していてもよいアラ ルキル基または9-フルオレニルメチル基を示 。)、-COR 4 (式中、R 4 は、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニ ル基、置換基を有していてもよいアリール基 または置換基を有していてもよいアラルキル 基を示す。)、置換基を有していてもよいア ルキル基等が挙げられる。「アミノ基の保 基」の具体例として、メトキシカルボニル エトキシカルボニル、イソブトキシカルボ ル、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、アリルオ シカルボニル、ベンジルオキシカルボニル p-メトキシベンジルオキシカルボニル、p-ニ トロベンジルオキシカルボニル、9-フルオレ ルメチルオキシカルボニル、ベンゾイル、 ンジル、ベンズヒドリル、トリチル等が挙 られる。

 R 1 は、好ましくはアルキル基であり、より好ま しくは炭素数1~4のアルキル基であり、さらに 好ましくはメチルまたはエチルであり、特に 好ましくはメチルである。
 R 2 は、好ましくは-CO 2 R 3 (式中、R 3 は前記と同義である。)であり、より好まし はtert-ブトキシカルボニル(Boc)である。

 「アルカリ金属原子」としては、カリウム ナトリウム、リチウム等が挙げられる。
 「アルカリ土類金属原子」としては、カル ウム、マグネシウム等が挙げられる。
 Mは、好ましくはアルカリ金属原子であり、 より好ましくはカリウム、ナトリウムであり 、特に好ましくはカリウムである。
 本発明の方法において用いられる原料であ 、ビフェニルアラニンエステル化合物(1)は 例えば、次の方法で製造することができる

(式中、各記号は前記と同義である)

工程1
 化合物(4)とヒダントインを、塩基の存在下 反応させることにより、化合物(5)を得るこ ができる。
工程2
 化合物(5)を還元することにより、化合物(6) 得ることができる。
 還元は、好ましくは、接触水素添加により うことができる。
工程3
 化合物(6)を加水分解することにより、化合 (7)を得ることができる。
工程4
 化合物(7)を、アミノ基の保護およびカルボ シル基のエステル化反応に供することによ 、ビフェニルアラニンエステル化合物(1)を ることができる。アミノ基の保護とカルボ シル基のエステル化は常法に従って行うこ ができる。アミノ基の保護とカルボキシル のエステル化の順序は特に限定されず、任 の順序で行うことができる。

 ビフェニルアラニンエステル化合物(1)に 、α位の炭素原子を不斉中心とする2種の光 異性体(L体とD体)が存在するが、本発明の方 法に用いられるビフェニルアラニンエステル 化合物(1)は、これらの光学異性体を等量含む ラセミ体であっても、一方の光学異性体を過 剰に(任意の割合で)含む混合物であってもよ 。好ましくはラセミ体である。

 このようにして得られたビフェニルアラ ンエステル化合物(1)を、Bacillus属に属する 生物由来のプロテアーゼを用いて加水分解 る。当該プロテアーゼを用いて加水分解す と、L体が優先的に加水分解される。

 Bacillus属に属する微生物由来のプロテア ゼとしては、エナンチオ選択性に優れるこ から、Bacillus licheniformis由来のプロテアーゼ が好ましい。Bacillus licheniformis由来のプロテ ーゼの具体例としては、サブチリシン(subtil isin)を含有するBacillus licheniformis由来のプロ アーゼが挙げられ、好ましくはアルカラー (登録商標、ノボザイム社)、特に好ましくは アルカラーゼ2.4L(登録商標、ノボザイム社)で ある。

 上記プロテアーゼの純度あるいは形態に いては特に制限されるものではなく、精製 素、粗酵素、微生物培養物、菌体、それら 処理物等の種々の形態で用いることができ 。ここで処理物とは、例えば、凍結乾燥菌 、菌体破砕物、菌体抽出物等をいう。さら 、上記のような種々の純度あるいは形態の 素を例えば、シリカゲルやセラミックス等 無機担体、セルロース、イオン交換樹脂等 固定化したものを使用してもよい。

 上記プロテアーゼの使用量は、特に限定 れないが、ビフェニルアラニンエステル化 物(1)1gに対して、精製酵素に換算して、通 0.001~0.5g、好ましくは0.001~0.1gである。

 上記プロテアーゼによる加水分解は、プ テアーゼの種類にもよるが、pH6~13、好まし はpH6~10、より好ましくは6.0~9.5の範囲で行わ れる。上記pH範囲で加水分解を行うことによ 、光学純度の高い生成物を得ることができ 。

 pHを上記範囲に保持するには、適宜、アル リおよび/または緩衝剤を使用することがで る。
 緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝剤、 酸緩衝剤、アミノ酸緩衝剤、アミノスルホ 酸緩衝剤等の緩衝剤等が挙げられる。

 リン酸緩衝剤としては、リン酸水素二ナト ウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水 二カリウム、リン酸二水素カリウム等が挙 られる。
 酢酸緩衝剤としては、酢酸ナトリウム、酢 カリウム等が挙げられる。

 アミノ酸緩衝剤のアミノ酸とは、1分子中 にアミノ基(置換アミノ基や環状構造となっ 置換アミノ基も含む)とカルボキシル基の両 を有する有機化合物(アミノ基の水素原子が 側鎖部分と環状構造となったイミノ酸も含む )であり、α-アミノ酸だけでなく、β-アミノ 、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸等も含まれる。α -アミノ酸の具体例としては、グリシン、ア ニン、α-アミノ酪酸、ロイシン、イソロイ ン、バリン、フェニルアラニン、トリプト ァン、チロシン、メチオニン、システイン スレオニン、セリン、プロリン、ヒドロキ プロリン、アスパラギン、グルタミン等の 性アミノ酸;アスパラギン酸、グルタミン酸 の酸性アミノ酸;リジン、トリプトファン、 アルギニン、オルニチン、ヒスチジン、ヒド ロキシリジン等の塩基性アミノ酸等が挙げら れる。β-アミノ酸の具体例としては、β-アラ ニン、β-アミノ酪酸等が挙げられる。γ-アミ ノ酸の具体例としては、γ-アミノ酪酸等が挙 げられる。δ-アミノ酸の具体例としては、5- ミノ吉草酸等が挙げられる。アミノ酸とし は、グリシンが好ましい。

 アミノスルホン酸緩衝剤のアミノスルホ 酸とは、上記アミノ酸におけるカルボキシ 基の代わりにスルホ基を有する有機化合物 あり、具体例としては、タウリン、N-メチ タウリン、2-(4-モルホリニル)エタンスルホ 酸等が挙げられ、好ましくはタウリンであ 。

 緩衝剤としては、タウリンまたはリン酸 衝剤が好ましく、タウリンが特に好ましい

 緩衝剤の濃度は、通常0.05~0.8M、好ましく 0.1~0.8M、より好ましくは0.1~0.5Mである。緩衝 液の濃度を上記の範囲とすることにより、光 学純度の高い生成物が得られる。

 緩衝剤の使用量は、濃度にもよるがビフ ニルアラニンエステル化合物(1)1gに対して 通常0.1~100mL、好ましくは0.4~10mLである。緩衝 液の使用量がこの範囲内であると、円滑に反 応を進行させることが可能になる。

 アルカリを使用する場合、固体または水 液として使用されるが、操作上水溶液が好 しい。アルカリ水溶液としては、アルカリ 属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリ ウム)水溶液、アルカリ土類金属水酸化物(水 化カルシウム、水酸化マグネシウム)水溶液 、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭 カリウム)水溶液、アルカリ土類金属炭酸塩( 炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)水溶液 アルカリ金属炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウ 、炭酸水素カリウム)水溶液、アルカリ土類 金属炭酸水素塩(炭酸水素カルシウム、炭酸 素マグネシウム)水溶液等が挙げられる。中 も、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化 リウム水溶液が好ましく、水酸化カリウム 溶液が特に好ましい。

 アルカリの使用量は、pH6~13に調節できる であればよい。

 pHの調整は、タウリンと水酸化カリウム 溶液;またはリン酸緩衝剤と水酸化カリウム 溶液;により行うことが好ましく、タウリン と水酸化カリウム水溶液で行うことが特に好 ましい。

 上記の加水分解は、有機溶媒と水の混合溶 中で行われる。
 加水分解用の有機溶媒としては、疎水性有 溶媒、親水性有機溶媒が挙げられる。
 疎水性有機溶媒としては、メチルtert-ブチ エーテル(MTBE)、ジイソプロピルエーテル等 エーテル類;トルエン、ヘキサン、シクロヘ サン、ヘプタン等の炭化水素類等が挙げら る。親水性有機溶媒としては、テトラヒド フラン(THF)等のエーテル類;メタノール、エ ノール、イソプロパノール、n-ブタノール tert-ブタノール等のアルコール類;ジメチル ルホキシド等のスルホキシド類;アセトン等 ケトン類;アセトニトリル等のニトリル類等 が挙げられる。これらの有機溶媒は単独で又 は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 有機溶媒としては、MTBEまたはトルエンが好 ましく、MTBEが特に好ましい。

 有機溶媒の使用量は、ビフェニルアラニ エステル化合物(1)1gに対して、通常1~50mL、 ましくは1~5mLである。有機溶媒の使用量がこ の範囲内であると、円滑に反応を進行させる ことが可能になる。

 なお、上記の緩衝剤やアルカリ水溶液中 水は溶媒も兼ねる。

 上記の加水分解は、ビフェニルアラニンエ テル化合物(1)、Bacillus属に属する微生物由 のプロテアーゼ、溶媒、アルカリもしくは の水溶液および/または緩衝剤を混合するこ により行われる。
 これらの添加順序は特に限定されず、例え 、
(i)有機溶媒に溶解したビフェニルアラニンエ ステル化合物(1)をアルカリおよび/または緩 剤に添加し、次いで上記プロテアーゼを添 する、
(ii)有機溶媒に溶解したビフェニルアラニン ステル化合物(1)にアルカリおよび/または緩 剤を添加し、次いで上記プロテアーゼを添 する、
(iii)有機溶媒に溶解したビフェニルアラニン ステル化合物(1)に上記プロテアーゼ(必要に より水も)を添加し、次いでアルカリおよび/ たは緩衝剤を添加(好ましくは滴下)する、
(iv)有機溶媒に溶解したビフェニルアラニン ステル化合物(1)に上記プロテアーゼおよび 衝剤(必要により水も)を添加し、次いでアル カリを添加(好ましくは滴下)する等の手法が げられる。

 上記プロテアーゼは、必要により反応中 追加してもよい。また、反応中に反応液のp Hが上記範囲より低下した場合には、上記の ルカリまたはそれらの水溶液を用いて反応 のpHを上記範囲に調整する。

 加水分解の反応温度は、酵素の安定性およ 反応速度の観点から、好ましくは30~60℃、 り好ましくは35~55℃、特に好ましくは40~45℃ ある。
 加水分解の反応時間は、通常3~24時間、好ま しくは4~15時間である。

 加水分解後の反応混合物を水層と有機層 分液することにより、加水分解により生成 たL-ビフェニルアラニン化合物の塩(2')と未 応のD-ビフェニルアラニンエステル化合物(3 )を分離することができる。このとき、水層 L-ビフェニルアラニン化合物の塩(2')が、有 層にD-ビフェニルアラニンエステル化合物(3) が含有される。なお、公知の方法により、有 機層からD-ビフェニルアラニンエステル化合 を精製することができる。

 本発明においては、L-ビフェニルアラニ 化合物の塩(2')を含む上記の水層に無機塩と 機溶媒を加えて、L-ビフェニルアラニン化 物の塩(2')を有機溶媒で抽出する。これによ 、当該水層からL-ビフェニルアラニン化合 の塩(2')を塩の形態のままで回収することが きる。

 ここで、無機塩としては、塩化ナトリウ 、塩化カリウム、塩化アンモニウム等が挙 られ、経済性およびL-ビフェニルアラニン 合物の塩(2')の溶解度の観点から、塩化カリ ムまたは塩化ナトリウムが好ましい。無機 の使用量は、抽出率等の観点から、L-ビフ ニルアラニン化合物の塩(2')を含む水溶液100g に対して、通常6g以上、好ましくは6~9gである 。無機塩は、上記水層に飽和量以上に加えて もよい。

 抽出用の有機溶媒としては、MTBE、トルエン 、酢酸エチル等の溶媒が挙げられ、中でも、 MTBEまたはトルエンが好ましく、特にMTBEが好 しい。
 有機溶媒の使用量は、L-ビフェニルアラニ 化合物の塩(2')を含む水溶液100gに対して、通 常20g~100g、好ましくは25g~50gである。
 抽出は、必要に応じて、2回以上行ってもよ い。
 抽出は、通常10~50℃で行う。

 L-ビフェニルアラニン化合物の塩(2')を含む 出液は、アルカリ水溶液で洗浄してもよい アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム 溶液、水酸化ナトリウム水溶液等が挙げら 、通常5~15%濃度(w/w)である。アルカリ水溶液 の使用量は、L-ビフェニルアラニン化合物の (2')1モルに対して、0.95~1.01モルである。
 アルカリ水溶液で洗浄する場合、収率向上 ために、この水溶液に塩化カリウム、臭化 リウム、塩化ナトリウム等の無機塩を加え のがよい。無機塩の使用量は、アルカリ水 液中の無機塩濃度が5%(w/w)以上となる量でよ い。

 このように、本発明の方法によれば、L- フェニルアラニン化合物の塩(2')を、一旦遊 酸に変換することなく、塩の形態のままで 収することができる。

 回収されたL-ビフェニルアラニン化合物 塩(2')は、エステル化、次いでラセミ化して フェニルアラニンエステル化合物(1)に変換 ることにより、酵素水解の原料を回収する とができる。

 一方、D-ビフェニルアラニンエステル化 物(3)は、中性エンドペプチダーゼ阻害剤等 医薬を製造する中間体として有用である。 えば、特開平6-228187号公報に記載の方法を用 いて、D-ビフェニルアラニンエステル化合物( 3)から、当該公報に記載されたN-ホスホノメ ル-ビフェニル置換ジペプチド誘導体を製造 ることができる。

 以下、L-ビフェニルアラニン化合物の塩(2 ')を、エステル化、次いでラセミ化して、ビ ェニルアラニンエステル化合物(1)に変換す 方法について説明する。

 まず、L-ビフェニルアラニン化合物の塩(2') エステル化して、L-ビフェニルアラニンエ テル化合物(2)を得る。
 エステル化は、通常溶媒中で行われるが、 記のL-ビフェニルアラニン化合物の塩(2')を む抽出液をそのまま使用するのが好ましい 必要に応じて、溶媒を加えてもよい。その 媒としては、MTBEまたはトルエンが好ましく 、中でも、MTBEがより好ましい。

 エステル化は常法に従って行うことができ 例えば、メタノール、エタノール等のアル ール類と酸による方法;ジメチル硫酸、ジエ チル硫酸等の硫酸エステル((R 1 O) 2 SO 2 )と塩基による方法;R 1 OHとDCC等の縮合剤による方法;ヨウ化メチル、 ブロモエタン、塩化ベンジル等のハライド(R 1 X,X:ハロゲン原子)と塩基による方法;等が挙げ られ、中でも、副生物および簡便性の観点か ら、硫酸エステルと塩基による方法が好まし い。

 以下、塩基と硫酸エステルによる方法につ て説明する。
 塩基としては、通常炭酸水素ナトリウム、 酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化ナ リウム、水酸化カリウム等の無機塩基類、 イソプロピルエチルアミン、2,6-ジメチルピ リジン、トリエチルアミン、ピリジン等の有 機塩基類が挙げられ、中でも、炭酸水素ナト リウムが好ましい。
 塩基の使用量は、L-ビフェニルアラニン化 物の塩(2')1モルに対して、通常0.3~1.2モル、 ましくは0.8~1.2モルである。

 硫酸エステルとしては、目的とするL-ビフ ニルアラニンエステル化合物(2)に応じて選 されるが、本発明ではメチルエステルが好 しく、従ってジメチル硫酸が好適に使用さ る。
 硫酸エステルの使用量は、L-ビフェニルア ニン化合物の塩(2')1モルに対して、通常1.2~2. 5モル、好ましくは1.6~2.0モルである。

 エステル化の手順としては、反応性の観 から、塩基とL-ビフェニルアラニン化合物 塩(2')を含む溶液に、硫酸エステルを滴下す ことが好ましい。

 エステル化の温度は、通常30~50℃である 反応時間は、試薬量、反応温度等にもよる 、通常1~10時間である。反応の終了はHPLC分析 により確認できる。

 反応終了後、トリエチルアミン等のアミ を加えて、30~50℃の温度で2~5時間攪拌する とにより、残存する硫酸エステルを分解さ ることができる。アミンの使用量は、使用 た硫酸エステルに対して10モル%程度でよい

 次いで、分離した水層を分液除去し、有機 を脱水する。脱水は、無水硫酸マグネシウ 、無水硫酸ナトリウム、モレキュラーシー ス等の脱水剤を用いてもよいが、操作性の 点から、水と共沸する溶媒(例えば、トルエ ン等)で共沸脱水する方法が好ましい。
 水と共沸する溶媒の使用量は、十分に脱水 きる量であればよいが、溶液量に対して、 常50~100重量%である。

 次のラセミ化は、L-ビフェニルアラニン ステル化合物(2)を単離せずに脱水後の溶液 まま行ってもよく、或いは一旦、結晶等の 体や油状物等として単離した後、ラセミ化 行ってもよい。

 前者の場合には、溶液中の水分量が500ppm 下であることが好ましく、従って、脱水を 分に行うことが好ましい。

 後者においては、例えば、R 1 がアルキル基であり、かつR 2 が-CO 2 R 3 であるL-ビフェニルアラニンエステル化合物( 2)の場合には、脱水後の溶液を濃縮して、メ ノールと水から結晶化させることができる このように、一旦、結晶等の固体や油状物 として単離することにより、上記エステル 反応の残骸物(例えば、硫酸エステル由来の 化合物)による塩基の消費を防止できるため より少ない量の塩基でラセミ化することが き、また、これにより、L-ビフェニルアラニ ンエステル化合物(2)の加水分解も防止するこ とができる。

 以下、メタノールと水から結晶化させる好 な具体例を説明する。
 メタノールの使用量は、L-ビフェニルアラ ンエステル化合物(2)100gに対して、通常380~520 g、好ましくは450~490gである。

 メタノールに溶解した溶液に、約45~55℃ 温度で水を滴下する。加える水の量は、L-ビ フェニルアラニンエステル化合物(2)100gに対 て、通常160~220g、好ましくは190~210gである。 を加えた後、種結晶を少量加え、同温度で 拌する。結晶析出を確認した後、同温度で を加えて十分結晶を析出させる。このとき 水の量は、L-ビフェニルアラニンエステル 合物(2)100gに対して、通常0~60g、好ましくは40 ~60gである。約5℃まで冷却し、結晶をろ過、 70%メタノール水溶液で洗浄する。減圧下乾 することにより、L-ビフェニルアラニンエ テル化合物(2)の結晶を得ることができる。

 次いで、エステル化により得られたL-ビ ェニルアラニンエステル化合物(2)をラセミ して、ビフェニルアラニンエステル化合物(1 )に変換する。

 このラセミ化工程では、L-ビフェニルア ニンエステル化合物(2)を前記エステル化工 で得られた脱水後の溶液のままで使用して よく、一旦単離したL-ビフェニルアラニンエ ステル化合物(2)を使用してもよい。後者の場 合は、L-ビフェニルアラニンエステル化合物( 2)を溶媒に溶解する。ここで、溶媒としては トルエンまたはMTBEが好ましく、中でも、MTB Eがより好ましい。溶媒は、L-ビフェニルアラ ニンエステル化合物(2)100gに対して、通常150~2 30g、好ましくは180~220g使用する。

 ラセミ化は、塩基を用いて行われる。
 塩基としては、トリエチルアミン等の有機 基;炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム 等のアルカリ金属炭酸水素塩;炭酸カリウム 炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;ナ リウムメチラート、ナトリウムエチラート カリウムtert-ブチラート等のアルカリ金属 ルコラート;水素化ナトリウム、水素化カリ ム等のアルカリ金属水素化物等;およびこれ らの混合物が挙げられ、アルカリ金属アルコ ラート、アルカリ金属炭酸塩;およびこれら 混合物が好ましく、中でも、取り扱いの観 から、アルカリ金属アルコラートが好まし 、経済性の観点から、ナトリウムメチラー が特に好ましい。塩基は溶液の状態で滴下 て加えてもよい。

 塩基の使用量としては、L-ビフェニルア ニンエステル化合物(2)を前記エステル化工 で得られた脱水後の溶液のままで使用する 合には、L-ビフェニルアラニンエステル化合 物(2)に対して、通常20~120モル%、好ましくは50 ~100モル%である。

 また、一旦単離したL-ビフェニルアラニ エステル化合物(2)を使用する場合は、アル リ金属炭酸塩では、通常5~50モル%、好ましく は10~50モル%である。アルカリ金属アルコラー トでは、通常1~5モル%、好ましくは2~4モル%で る。

 前記したように、一旦単離したL-ビフェ ルアラニンエステル化合物(2)を使用するこ により、前記エステル化の残骸物による塩 の消費をなくすことができるので、より少 い量の塩基でラセミ化することができる。 た、これにより、L-ビフェニルアラニンエス テル化合物(2)の加水分解も防止することがで きる。

 ラセミ化促進の観点から、メタノール、エ ノール、イソプロパノール等のアルコール を加えることが好ましい。
 アルコール類の使用量は、L-ビフェニルア ニンエステル化合物(2)に対して、通常10~120 量%、好ましくは10~30重量%である。

 ラセミ化の温度は、通常30~70℃、好まし は30~60℃、より好ましくは30~40℃である。反 時間は、試薬の使用量、温度にもよるが、 常10分~25時間、好ましくは10分~6時間である ラセミ化反応の終了はHPLCで確認することが できる。

 ラセミ化終了後、反応液に酢酸等の酸を加 て、エステルの分解を抑制することが好ま い。ここで、酸の使用量は、ラセミ化に使 した塩基に対して、通常1.1~1.3倍モル量であ る。
 ラセミ化終了後の後処理は、常法に従って われる。

 このようにして得られたビフェニルアラ ンエステル化合物(1)の溶液は、酵素水解に のまま供してもよいし、濃縮後、別の有機 媒に溶解した後、酵素水解に供してもよい

 以下に製造例、実施例を挙げて、本発明 さらに詳しく説明するが、本発明はこれら 施例に限定されるものではない。

 光学活性体の光学純度(エナンチオマー過剰 率)とラセミ化は、高速液体クロマトグラフ ー(HPLC)分析により決定した。
HPLC分析条件:
カラム;   キラルパック AD-RH(ダイセル化学 工業株式会社)(4.5 mmφ x 15 cm、5μm)
移動相;   A液; 0.1%リン酸水溶液
       B液; アセトニトリル
溶離条件;  B液40%(15分)-30分-80%(0分)グラジエ ト
カラム温度; 40℃
流速;    1.0 mL/分
検出器;   UV(254 nm)
保持時間;  L-N-Boc-ビフェニルアラニン;        10分
       D-N-Boc-ビフェニルアラニン;         13分
       L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチル ステル; 27分
       D-N-Boc-ビフェニルアラニンメチル ステル; 30分
      (Bocは、tert-ブトキシカルボニル基の 略である)

エステル化は以下の条件で分析した。
HPLC分析条件:
カラム;SUMIPAX A212 ODS (住化分析センター株 会社製) (φ: 6mm×L:15cm)
移動相;A液; 25mMリン酸水素ニカリウム水溶液 (リン酸にてpHを6.8に調整)
    B液; アセトニトリル
溶離条件;B液40%(5分)-20分-80%(5分)グラジエント
カラム温度;40℃
流速;1.0mL/分
検出器;UV(254nm)
保持時間;L-N-Boc-ビフェニルアラニン ; 7分
     L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエス テル;  24分

製造例1(DL-ビフェニルアラニン (7 )の製造)
 4-ビフェニルアルデヒド (1) (100.0 g, 0.549  mol)、ヒダントイン(82.4 g, 0.823 mol)および酢 アンモニウム(63.5 g, 0.824 mol)を酢酸(360 mL) 中で5時間加熱還流した。水(360 mL)を加えた 、室温に冷却し、析出した結晶を濾取して イソプロパノール-水(1:1, 400 mL)で洗浄する とによりヒダントイン体 (5) (143.14 g, 収 98.7%)を得た。
 ヒダントイン体 (5) (60.2 g)、THF(540 mL)およ び水(60 mL)の混合物に5%パラジウム-炭素(50%含 水品、2.7 g)を加え、0.5 MPaの水素雰囲気下、 60℃で3時間撹拌した。触媒を濾過により除い た後、濾液を濃縮して還元体 (6) (60.63 g、 率100%)を得た。
 還元体 (6) (59.7 g, 0.224 mol)、エチレング コール(300 mL)および水(10 mL)の混合物に水酸 化ナトリウム(36.65 g)を加え、130-140℃で5時間 撹拌した。室温に冷却後、水(130 mL)を加え、 濃塩酸(85 g)と水(99 g)からなる塩酸水溶液を えて、混合物のpHを6.9とした。析出した結 を濾取し、水(300 mL)、ついでメタノール(300 mL)で洗浄した。結晶を乾燥して、DL-ビフェ ルアラニン (7) (53.25 g, 収率98.4%)を得た。

製造例2(DL-N-Boc-ビフェニルアラニ メチルエステル (1a)の製造)
 DL-ビフェニルアラニン (7) (20.0 g, 0.0829 mo l)を10%水酸化ナトリウム(116 g, 0.29mol)水溶液 加えた。THF(50 mL)を加えた後、30℃でジ-tert- ブチルジカーボネート(23.5 g, 0.108 mol)のTHF(2 0 mL)溶液を1時間かけて滴下した。さらに、 トラブチルアンモニウムブロミド(0.20 g, 0.6 2 mmol)を加えた後、30℃でジメチル硫酸(12.5 g , 0.099 mol)を滴下した。室温で16時間撹拌後 ジメチル硫酸(5.4 g, 0.0428 mol)を加え、35℃ 4.5時間撹拌した。さらにジメチル硫酸(2.93 g , 0.0232 mol)を加え、35℃で2.5時間撹拌した。
 MTBE(40 mL)および水(100 mL)を加えた後、分液 て水層を除去し、DL-N-Boc-ビフェニルアラニ メチルエステル (1a)のMTBE溶液104.1 gを得た
 HPLCで定量した結果、DL-N-Boc-ビフェニルアラ ニンメチルエステル (1a)の含量は29.4 gであ 、DL-ビフェニルアラニン (7)からの収率は99. 8%であった。
 こうして得られたDL-N-Boc-ビフェニルアラニ メチルエステル (1a)のMTBE溶液のうち78.1 g 濃縮乾固した。残渣をイソプロパノール(9 m L)とヘプタン(80 mL)から再結晶して、DL-N-Boc- フェニルアラニンメチルエステル (1a) (19.1 g)を無色結晶として得た
(再結晶収率86.6%)。
1 H-NMR (CDCl 3 ); 1.42 (9H, s), 3.09 (1H, dd, J=5, 14 Hz), 3.16  (1H, dd, J=5, 14 Hz), 3.74 (3H, s), 4.55-4.70 (1H, m), 4.90-5.08 (1H, m), 7.20 (2H, d, J=8 Hz), 7.33 (1H, t, J=8 Hz), 7.43 (2H, t, J=8 Hz), 7.52 (2H, d, J=8 Hz), 7.57 (2H, d, J=8 Hz).

製造例3(DL-N-Boc-ビフェニルアラニ メチルエステル (1a)の酵素水解)
 DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a) 25.0g(70.3mmol)をMTBE 41.14gに溶かした溶液 、水11.25gとタウリン1.76g(14.1mmol)およびアル ラーゼ2.4L FG(Bacillus licheniformis由来)(ノボザ ム社)4.50gを添加し40℃で攪拌した。そこに5% 水酸化カリウム水溶液47.28g(40.67mmol)を滴下し がら40℃で17時間攪拌した。この時の反応液 のpHの範囲は6.30から8.16であった。
 反応液を分析したところ、D-N-Boc-ビフェニ アラニンメチルエステル (3a)の光学純度は99 .4%ee、L-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウム塩  (2'a)の光学純度は99.9%eeであった。
 反応液を5分間静置後、分液し、有機層A35.72 gと水層A83.46gを得た。その水層にトルエン37.5 gを加えて、40℃で30分間撹拌した。5分間静置 後、分液し、有機層B42.80gと水層B76.80gを得た 有機層Aと有機層Bを合一し、水58gと炭酸ナ リウム1.49gを加えて、40℃で30分間撹拌した 5分間静置後、分液し、有機層C76.07gを得た。 得られた有機層C76.07gを50℃に保温しながら濃 縮を行い、63.2gを留去した。
 その濃縮残12.87gにメタノール75mLを加えて、 40℃に保温しながら、水18.75gを加えた。D-N-Boc -ビフェニンアラニンメチルエステル (3a)の 晶2mgを加えて、40℃で30分間撹拌した。そこ 水12.5gを30分間かけて滴下し、40℃にて1時間 保温した。次に20℃まで冷却し、濾過した。 晶をメタノール8.75gと水3.75gとを混合した溶 液で洗浄した。
 その結晶を減圧乾燥することにより、D-N-Boc -ビフェニルアラニンメチルエステル (3a)の 色結晶10.94gを得た。D-N-Boc-ビフェニルアラニ ンメチルエステル (3a)の収率はDL-N-Boc-ビフェ ニルアラニンメチルエステル (1a)に対して43. 8%であった。

実施例1
(i) L-N-Bocビフェニルアラニンカリウム塩 (2'a )の回収
 製造例3と同様の方法で得られた、L-N-Boc-ビ ェニルアラニンカリウム塩 (2'a) 55.4g(0.146mo l)を含んだ水溶液328.54g(水層B)にトルエン50gと 食塩37.5gを加えて、40℃にて20分間撹拌した。 5分間静置後、分液し、有機層156.23gを得た。

(ii) L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステ  (2a)の製造
 この有機層に炭酸水素ナトリウム12.27g(0.146m ol)を加えて、40℃で撹拌した。そこにジメチ 硫酸33.15g(0.263mol)を2時間かけて滴下し、40℃ で1時間撹拌した。反応液をHPLCで分析したと ろ、原料は検出限界以下であった。
 その反応液にトリエチルアミン2.95g(0.029mol) 加えて40℃で3時間撹拌した。5分間静置後、 分離した水層を分液除去し、有機層114.04gを た。そこにトルエン86.72gを加えて、50℃に保 温しながら濃縮を行い、トルエン57.92gを留去 した。そこにトルエン7.39gを加えてトルエン 液150.23gを得た。得られたトルエン溶液を定 量すると、L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチル ステル (2a)の収率はL-N-Boc-ビフェニルアラ ンカリウム塩 (2'a)に対して96.2%であった。 た、カールフィッシャー水分測定器にて測 を行うと、得られたトルエン溶液の水分含 は204ppmであった。
L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (2 a)
1 H-NMR (CDCl 3 ); 1.42 (9H, s), 3.09 (1H, dd, J=6, 12 Hz), 3.17  (1H, dd, J=6, 12 Hz), 3.73 (3H, s), 4.60-4.65 (1H, m), 5.01 (1H, d, J= 8Hz), 7.20 (2H, d, J=8 Hz),  7.33 (1H, t, J=8 Hz), 7.43 (2H, t, J=8 Hz), 7.52  (2H, d, J=8 Hz), 7.57 (2H, d, J=8 Hz).

(iii) L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステ ル (2a)のラセミ化
 L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル  (2a) 50g(0.141mol)を含んだトルエン溶液150.23gに タノール50gを加えて40℃にて撹拌した。そ に28% ナトリウムメチラートメタノール溶液 27.20g(0.141mol)を1時間かけて滴下し、40℃で1時 撹拌した。
 反応溶液を分析すると、L-N-Boc-ビフェニル ラニンメチルエステル (2a)の光学純度は0.02% ee、DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステ  (1a)のHPLC面積百分率値は89.3%であった。
 その反応溶液に酢酸10.16g(0.169mol)を15分間か て滴下し、40℃で30分間撹拌した。
 次に水50gを加えて、40℃で5分間撹拌した。5 分間静置後、分液し、有機層151.90gを得た。 機層に水45gと炭酸水素ナトリウム2.37g(0.028mol )を加えて、40℃で50分間撹拌した。5分間静置 後、分液し、有機層147.67gを得た。得られた 液をHPLCにて定量すると、DL-N-Boc-ビフェニル ラニンメチルエステル (1a)の収率はL-N-Boc- フェニルアラニンメチルエステル (2a)に対 て89.7%であった。
 その溶液を54~56℃に保温しながら濃縮を行 、62.67gを留去した。そこにMTBE75gを加えて、5 2℃に保温しながら濃縮を行い、74.23gを留去 た。そこにMTBE75gを加えて、52℃に保温しな ら濃縮を行い、84.71gを留去した。そこにMTBE5 1.46gを加え127.52gの溶液を得た。得られた溶液 をHPLCにて定量すると、DL-N-Boc-ビフェニルア ニンメチルエステル (1a)の収率はL-N-Boc-ビフ ェニルアラニンメチルエステル (2a)に対して 89.5%であった。またMTBE溶液中のトルエンの含 量は18.5%であった。

実施例2
(i) L-N-Bocビフェニルアラニンカリウム塩 (2'a )の回収
 L-N-Boc-ビフェニルアラニンカリウム塩 (2'a)5 0.0g(0.132mol)を含んだ水溶液227.19gにMTBE 70.0gと 化カリウム 25.0gを加えて、40℃にて30分間 拌した。5分間静置後、分液し、有機層204.97g を得た。その有機層に10% 水酸化カリウム水 液 73.9g(0.132mol)と塩化カリウム 10gを加えて 、40℃にて15分間撹拌した。5分間静置後、分 し、有機層190.18gを得た。
(ii) L-N-Boc-ビフェニルアラニンエステル (2a) 製造
 得られた有機層95.1g(L-N-Boc-ビフェニルアラ ンカリウム塩 22.5g相当)に炭酸水素ナトリウ ム5.55g(0.066mol)を加えて、35℃で撹拌した。そ にジメチル硫酸15.0g(0.119mol)を30分間かけて 下し、35℃で5時間撹拌した。反応液を分析 たところ、未反応のL-N-Boc-ビフェニルアラニ ンカリウム塩 (2'a)はHPLC分析において0.19%で った。
 その反応液にトリエチルアミン1.33g(0.013mol) 水 35gを加えて35℃で3時間撹拌した。5分間 置後、分液し、水層(78.16g)を除いた。有機 に2.5wt%炭酸ナトリウム水溶液41.9g(0.010mol)を えて、1時間20分撹拌した。5分間静置後、分 し、有機層60.74gを得た。有機層を定量した 果、L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエス ル (2a)の収率はL-N-Boc-ビフェニルアラニンカ リウム塩 (2'a)に対して92.3%であった。
(iii) L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステ ル (2a)の晶析
 上記の方法で得られたL-N-Boc-ビフェニルア ニンメチルエステル (2a)のMTBE溶液408.12gを減 圧濃縮し、油状の濃縮残130.3gを得た。そこに メタノール617.4gを加え、40℃で撹拌し、メタ ール溶液747.65g (L-N-Boc-ビフェニルアラニン チルエステル (2a) 130.3g相当を含有)を得た
 得られたメタノール溶液373.82g (L-N-Boc-ビフ ニルアラニンメチルエステル (2a) 65.1g相当 を含有)を50℃に保温しながら、水130.3gを加え た。L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステ の種晶1mgを加えて、1時間撹拌した。そこに 水32.6gを30分間かけて滴下し、50℃で1時間撹 した。次に5℃まで冷却し、析出した結晶を 過した。結晶はメタノール45.6gと水19.5gを混 合した溶液で洗浄した。
 その結晶を減圧乾燥することにより、白色 L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル  (2a)の結晶60.77gを得た。L-N-Boc-ビフェニルアラ ニンメチルエステル (2a)の収率はL-N-Boc-ビフ ニルアラニンカリウム塩 (2'a)に対して93.3% あった。

実施例3 (L-N-Boc-ビフェニルアラニ ンメチルエステル (2a)のラセミ化)
 L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル  (2a) 20g(56.3mmol)をMTBE40gに溶解し、30℃に保温 た。そこにメタノール4.0gと28% ナトリウム チラートメタノール溶液0.22g(1.1mmol)を混合し た溶液を添加し、30℃にて2時間撹拌した。
 反応溶液を分析すると、L-N-Boc-ビフェニル ラニンメチルエステル (2a)の光学純度は0.44% ee、DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステ  (1a)のHPLC面積百分率値は98.9%であった。
 その反応溶液に酢酸0.07g(1.2mmol)を添加し、30 ℃で5分間撹拌した。次に水20gを加えて、30℃ で5分間撹拌した。5分間静置後、分液し、有 層(上層)61.56gを得た。そこに水18gと炭酸水 ナトリウム0.94g(11.3mmol)を加えて、30℃で30分 撹拌した。5分間静置後、分液し、有機層58. 80gを得た。得られた有機層をHPLCにて定量す と、DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエス ル (2a)の収率はL-N-Boc-ビフェニルアラニンメ チルエステル (1a)に対して100%であった。HPLC 量値は101.6%であった。

実施例4 (L-N-Boc-ビフェニルアラニ ンメチルエステル (2a)のラセミ化)
 L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル  (2a) 2.0g(5.63mmol, 81.25%ee)をMTBE 2.0gとメタノ― 12.0gに溶解し、60℃に保温した。そこに炭酸 カリウム0.15g(1.13mmol)を添加し、60℃にて8時間 撹拌した。
 反応液を分析すると、L-N-Boc-ビフェニルア ニンメチルエステル (2a)の光学純度は2.25%ee DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)のHPLC面積百分率値は81.3%であった。

実施例5 (L-N-Boc-ビフェニルアラニ ンメチルエステル (2a)のラセミ化)
 L-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル  (2a) 2.0g(5.63mmol, 81.25%ee)をMTBE 2.0gとメタノー 12.0gに溶解し、60℃に保温した。そこに炭酸 ナトリウム0.12g(1.13mmol)を添加し、60℃にて25 間撹拌した。
 反応液を分析すると、L-N-Boc-ビフェニルア ニンメチルエステル (2a)の光学純度は6.02%ee DL-N-Boc-ビフェニルアラニンメチルエステル (1a)のHPLC面積百分率値は90.0%であった。

 本発明の方法によれば、ビフェニルアラ ンエステル化合物の酵素水解後の反応液か 、簡便な操作によりL-ビフェニルアラニン 合物の塩を塩の形態のままで回収できる。 た、この回収されたL-ビフェニルアラニン化 合物の塩をエステル化、次いでラセミ化する ことにより、ビフェニルアラニンエステル化 合物に変換できるので、酵素水解の原料を回 収できる。このように、酵素水解の目的物で はないL-ビフェニルアラニン化合物を有効利 することができるので、本発明の方法は経 的に有利な方法である。