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Title:
METHOD OF DECOMPOSING THERMOSET RESIN AND RECOVERING PRODUCT OF DECOMPOSITION
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/082009
Kind Code:
A1
Abstract:
A method by which reusable compounds can be efficiently recovered from products of the decomposition of a thermoset resin and which can facilitate the reuse of the aqueous solution resulting from the recovery of the compounds. In the method, a thermoset resin comprising a polyester moiety and a crosslink moiety where the polyester moiety is crosslinked is decomposed, and reusable products of the decomposition are recovered. This method comprises: (A) a step in which the thermoset resin is decomposed with subcritical water containing a hydroxylated inorganic compound having a valence of 2 or higher; (B) a step in which the decomposition products obtained are subjected to solid-liquid separation to recover a solid matter comprising a carboxylate of a compound comprising a residual acid group derived from the polyester and a residual group derived from the crosslink moiety; and (C) a step in which an acid is added to the solid matter recovered and the resultant mixture is subjected to solid-liquid separation to recover a solid matter containing that compound.

Inventors:
HIDAKA MASARU (JP)
NAKAGAWA TAKAHARU (JP)
IZUMITANI TAKUMI (JP)
MATSUI JUNKO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/073803
Publication Date:
July 02, 2009
Filing Date:
December 26, 2008
Export Citation:
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Assignee:
PANASONIC ELEC WORKS CO LTD (JP)
INT CT ENVIRONMENTAL TECH TFR (JP)
HIDAKA MASARU (JP)
NAKAGAWA TAKAHARU (JP)
IZUMITANI TAKUMI (JP)
MATSUI JUNKO (JP)
International Classes:
C08J11/14; B01J3/00; C08J11/08; C08J11/16
Foreign References:
JP2006232934A2006-09-07
JP2005048051A2005-02-24
Attorney, Agent or Firm:
TANAKA, Mitsuo et al. (IMP Building 3-7, Shiromi 1-chome,Chuo-ku, Osaka-sh, Osaka 01, JP)
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Claims:
 ポリエステル部とその架橋部を含む熱硬化性樹脂を分解して再利用可能な分解生成物を回収する方法であって、
(A)該熱硬化性樹脂を、2価以上の水酸基含有の無機化合物を含む亜臨界水で分解する工程と、
(B)得られた分解生成物を固液分離して、ポリエステル由来の酸残基と架橋部由来の残基を含んでなる化合物のカルボン酸塩を含む固形分を回収する工程と、
(C)回収した固形分に酸を加えた後、これを固液分離して前記化合物を含む固形分を回収する工程と、
を含む、方法。
(D)回収した固形分を、前記化合物を溶解させることができる溶媒に接触させて、前記化合物を当該溶媒に溶解して回収する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
亜臨界水分解後の分離濾液を繰り返し亜臨界水分解の仕込み液として再利用する、請求項1または2に記載の方法。
 2価以上の水酸基含有の無機化合物は、水酸化カルシウムを含んでなる、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
Description:
熱硬化性樹脂の分解および分解 成物の回収方法

 本特許出願は、日本国特許出願第2007-335218 (出願日:2007年12月26日)について優先権を主張 するものであり、ここに参照することによっ て、その全体が本明細書中へ組み込まれるも のとする。
 本発明は、熱硬化性樹脂を亜臨界水で分解 て再利用可能な分解生成物(例えばモノマー 類、スチレン-フマル酸共重合体など)を回収 る方法に関するものである。

 従来、プラスチック廃棄物はそのほとんど 埋立処分あるいは焼却処分されており、資 として有効活用されていなかった。また、 立処分では、埋立用地の確保が困難である とや埋立後の地盤が不安定化するといった 題点があり、一方、焼却処分では、炉の損 、有機ガスや悪臭の発生、CO 2 の発生といった問題点があった。

 そのため、日本国において、平成7年に容 器包装廃棄法が制定され、プラスチックの回 収再利用が義務付けられるようになった。さ らに、各種リサイクル法の施行にともない、 プラスチックを含む製品の回収リサイクルの 流れは加速する傾向にある。

 これらの状況に合わせて、近年、プラス ック廃棄物を再資源化することが試みられ おり、その一つとして、超臨界水または亜 界水を反応媒体としてプラスチックを分解 て再利用可能な分解生成物を回収する方法 提案されている(特許文献1~5参照)。

 しかしながら、これらの方法ではプラス ックがランダムに分解されるために、一定 質の分解生成物を得ることが困難であった

 この問題点を解決する技術として、多価ア コールと多塩基酸からなるポリエステルを 橋剤で架橋した熱硬化性樹脂を、亜臨界水 用いて熱硬化性樹脂の熱分解温度未満で分 させることで、熱硬化性樹脂の原料として 利用できるモノマーと共に、スチレン-フマ ル酸共重合体を得る技術が提案されている( 許文献6参照)。

特表昭56-501205号公報

特開昭57-4225号公報

特開平5-31000号公報

特開平6-279762号公報

特開平10-67991号公報

国際公開WO2005/092962号パンフレット

 しかしながら、上記特許文献6の方法にお いては、スチレン-フマル酸共重合体を得る とはできるものの、水酸化カリウムや水酸 ナトリウム等の水溶性のアルカリを含有す 亜臨界水で熱硬化性樹脂を分解しているた 、分解反応により生成したスチレン-フマル 共重合体は塩として水溶液中に溶解した状 で存在する。そのため、炭酸カルシウムや 酸化アルミニウム等の無機充填材やガラス 維等の無機物を含むプラスチックを亜臨界 で分解した場合、生成したスチレン-フマル 酸共重合体を含む水溶液と無機物とを固液分 離して分離液を回収する工程が必要になるが 、その分離工程時に分離液に含まれるスチレ ン-フマル酸共重合体がロスすること、さら その後、分離液に酸を加えてスチレン-フマ 酸共重合体を析出させてこれを固液分離し 固形分を回収する工程が必要になるが、そ 分離工程の際にもスチレン-フマル酸共重合 体がロスすること、等の問題があり、生成し たスチレン-フマル酸共重合体の回収率が十 とはいえなかった。また、スチレン-フマル 共重合体を回収した後の水溶液はスチレン- フマル酸共重合体以外の樹脂溶解分と塩を含 有しているため、廃水処理やその水溶液の再 利用のための処置がさらに必要になるという 問題があった。

 本発明は、以上の通りの事情に鑑みてな れたものであり、熱硬化性樹脂の分解生成 から、再利用可能なポリエステル由来の酸 基と架橋部由来の残基を含んでなる化合物( 例えば、スチレン-フマル酸共重合体)を効率 く回収することができ、しかも前記化合物 回収した後の水溶液の再利用を容易にする とができる方法を提供することを課題とし いる。

 本発明は、上記の課題を解決するために、 下の[1]~[4]の発明を含む:
[1] ポリエステル部とその架橋部を含む熱硬 性樹脂を分解して再利用可能な分解生成物 回収する方法であって、
(A)該熱硬化性樹脂を、2価以上の水酸基含有 無機化合物を含む亜臨界水で分解する工程 、
(B)得られた分解生成物を固液分離して、ポリ エステル由来の酸残基と架橋部由来の残基を 含んでなる化合物のカルボン酸塩を含む固形 分を回収する工程と、
(C)回収した固形分に酸を加えた後、これを固 液分離して前記化合物を含む固形分を回収す る工程と、
を含む、方法。
[2] (D)回収した固形分を、前記化合物を溶解 せることができる溶媒に接触させて、前記 合物を当該溶媒に溶解して回収する工程を らに含む、前記[1]に記載の方法。
[3] 亜臨界水分解後の分離濾液を繰り返し亜 界水分解の仕込み液として再利用する、前 [1]または[2]に記載の方法。
[4] 2価以上の水酸基含有の無機化合物は、水 酸化カルシウムを含んでなる、前記[1]~[3]の ずれかに記載の方法。

 本発明によれば、2価以上の水酸基含有の 無機化合物を含む亜臨界水で分解することに より、加水分解が促進し、分解生成物の固形 分として、すなわち、非水溶性の塩としてポ リエステル由来の酸残基と架橋部由来の残基 を含んでなる化合物(例えばスチレン-フマル 共重合体)を効果的に得ることができる。当 該化合物は、亜臨界水による分解で水溶液に 溶解しないことから、当該水溶液との分離の 際に当該化合物のロスを抑えることができる 。また、このときの分離液を再度亜臨界水と して利用することができる。

 そして、回収した前記化合物のカルボン 塩を含む固形分に酸を加えた後、これを固 分離して前記化合物を含む固形分を回収し さらに前記化合物を溶解させることができ 溶媒に接触させて、前記化合物を溶解する とによって、効率よく前記化合物を回収す ことができる。また、前記化合物のカルボ 酸塩を含む固形分に酸を加えて固液分離し 後の分離液を、前記化合物のカルボン酸塩 含む固形分に加える酸として再利用するこ ができる。

 上記方法において、2価以上の水酸基含有 の無機化合物として水酸化カルシウムを用い ることにより、ポリエステル部の加水分解を 促進することができると共に、さらに前記化 合物を非水溶性の塩として効率よく回収する ことができる。

本発明の方法の実施形態〔1〕(樹脂の 、酸として塩酸を使用)の操作を工程順に示 たフローチャートである。 本発明の方法の実施形態〔2〕(樹脂の 、酸として硫酸を使用)の操作を工程順に示 たフローチャートである。 本発明の方法の実施形態〔3〕(樹脂お び無機物、酸として塩酸を使用)の操作を工 順に示したフローチャートである。 本発明の方法の実施形態〔4〕(樹脂お び無機物、酸として硫酸を使用)の操作を工 順に示したフローチャートである。 スチレン-フマル酸のカルボン酸塩と、 これに酸を加えた後の状態を示した図である 。

 以下、本発明の方法の実施形態〔1〕~〔4 について詳細に説明する。

 本発明において分解対象となる熱硬化性 脂は、ポリエステルを架橋して得られたも であり、ポリエステル部とその架橋部を含 ものである。

 ポリエステル部は、多価アルコールと多 基酸とを重縮合させることにより多価アル ール残基と多塩基酸残基とがエステル結合 介して互いに連結したポリエステルに由来 る。ポリエステル部は、不飽和多塩基酸に 来する二重結合を含んでいてもよい。

 架橋部は、ポリエステル部を架橋する部 である。架橋部は、例えば架橋剤に由来す 部分であるが、特に限定されない。架橋部 、1個の架橋剤に由来する部分であってもよ く、複数の架橋剤が重合したオリゴマーまた はポリマーに由来する部分であってもよい。 また、架橋部とポリエステル部の結合位置お よび結合様式も特に限定されない。

 したがって、「ポリエステル部とその架 部を含む熱硬化性樹脂」とは、多価アルコ ルと多塩基酸から得られるポリエステルが 橋部を介して架橋された網状の熱硬化性樹 (網状ポリエステル樹脂)である。このよう 熱硬化性樹脂としては、本発明を適用した きに上記した効果を得ることができるもの あれば、いかなる態様の樹脂であってもよ 。すなわち、樹脂の種類と構造、架橋部(架 剤)の種類、量および架橋度などに制限はな い。

 本発明が適用される熱硬化性樹脂は、主 して加熱等により硬化(架橋)された樹脂で るが、本発明を適用したときに上記した効 を得ることができるものであれば、加熱等 より硬化(架橋)が進行する未硬化の樹脂また は部分的に硬化された樹脂であってもよい。

 本発明が好適に適用される熱硬化性樹脂 しては、多価アルコールと不飽和多塩基酸 らなる不飽和ポリエステルが架橋剤により 橋された網状ポリエステル樹脂が挙げられ 。

 ポリエステル部の原料である多価アルコ ルの具体例としては、エチレングリコール プロピレングリコール、ネオペンチルグリ ール、ジエチレングリコール、ジプロピレ グリコール等のグリコール類などが挙げら る。これらは1種単独で、あるいは2種以上 併用して用いることができる。

 ポリエステル部の原料である多塩基酸の 体例としては、無水マレイン酸、マレイン 、フマル酸等の脂肪族不飽和二塩基酸など 挙げられる。これらは1種単独で、あるいは 2種以上を併用して用いることができる。ま 、無水フタル酸などの飽和多塩基酸を不飽 多塩基酸と併用してもよい。

 多価アルコールと多塩基酸の共重合体で るポリエステルを架橋する架橋剤には、ス レンなどが含まれるが、その他、メタクリ 酸メチル等の重合性ビニルモノマーなど、 の架橋剤を併用してもよい。

 また、本発明において分解対象となる熱 化性樹脂には、実施形態〔3〕及び〔4〕の うに、炭酸カルシウムや水酸化アルミニウ 等の無機充填材や、ロービングを切断した ョップドストランド等のガラス繊維等の無 物や、その他の成分が含有されていてもよ 。

 本発明では、以下の実施形態〔1〕~〔4〕 工程(A)~(D)のような工程により、上記の熱硬 化性樹脂を分解し、再利用可能な分解生成物 であるポリエステル由来の酸残基と架橋部由 来の残基を含んでなる化合物(以下、「化合 (I)」と称する。)を回収する。例えば、熱硬 性樹脂がフマル酸やマレイン酸を多塩基酸 して使用し、且つ、スチレンを架橋剤とし 使用して得られたものである場合、化合物( I)としてスチレン-フマル酸共重合体が回収さ れる。

 以下、図1~4のフローチャートを参照しな ら本発明の方法を工程順に説明する。なお 以下の実施形態〔1〕~〔4〕は、あくまでも 発明の例示に過ぎず、本発明は、これらの 施形態に限定されるものではない。

 図1に示される実施形態〔1〕は、熱硬化性 脂のみを分解し、塩酸を用いてスチレン-フ ル酸共重合体のカルボン酸塩を開環させて スチレン-フマル酸共重合体を回収する方法 である。
 図2に示される実施形態〔2〕は、実施形態 1〕の塩酸の代わりに硫酸を用いてスチレン- フマル酸共重合体のカルボン酸塩を開環させ て、スチレン-フマル酸共重合体を回収する 法である。
 図3に示される実施形態〔3〕は、炭酸カル ウム、ガラス繊維を含む熱硬化性樹脂を分 し、塩酸を用いてスチレン-フマル酸共重合 のカルボン酸塩を開環させて、スチレン-フ マル酸共重合体を回収する方法である。
 図4に示される実施形態〔4〕は、実施形態 3〕の塩酸の代わりに硫酸を用いてスチレン- フマル酸共重合体のカルボン酸塩を開環させ て、スチレン-フマル酸共重合体を回収する 法である。

 まず実施形態〔1〕について説明する。最 初に、熱硬化性樹脂を、亜臨界水中で分解す る(工程(A))。このとき、水酸基含有の無機化 物を含む亜臨界水を用いる。ここで、「水 基含有の無機化合物」とは、分解反応の触 として作用し、分解によって得られる化合 (I)がカルボン酸塩として水中に溶解せず、 体として生成させるための触媒である。す わち、水酸基含有の無機化合物は、それ自 の水への溶解性は加味せず、化合物(I)のカ ボン酸と反応して非水溶性の物質を生成さ る化合物である。このような水酸基含有の 機化合物としては、2価または3価あるいは れ以上の価数の水酸基含有の無機化合物で ることを要する。単原子イオンで考えた場 、最大の価数として4価(Sn)の無機化合物を考 慮することができる。具体的には、水酸化カ ルシウムや水酸化アルミニウム等が好適なも のとして例示することができる。例えば、水 酸化カルシウムを用いた場合、化合物(I)の2 のカルボン酸がCa原子を介して閉環したり、 後述する図5に示すように、別の化合物(I)の ルボン酸とCa原子を介して結合して環が形成 されるため、化合物(I)は水に溶けにくい状態 になる。

 このような2価以上の水酸基含有の無機化合 物の水中濃度は、特に制限されるものではな いが、飽和濃度以上であることが好ましい。 ここで水酸化カルシウムの場合、溶解度は0.1 7g(水100g(25℃))である。飽和濃度未満では、分 解反応の触媒としての効果は小さく、化合物 (I)のカルボン酸塩の生成量が少なくなる。
 また、2価以上の水酸基含有の無機化合物の 使用量は、特に制限されるものではないが、 熱硬化性樹脂100質量部に対して、2~50質量部 あることが好ましい。

 他方、水酸化ナトリウムや水酸化カリウ 等の1価の水酸機含有の無機化合物を用いた 場合はそれぞれ、水溶性のカリウム塩やナト リウム塩となるため、これを分離・回収する ことができない。

 この工程では、2価以上の水酸基含有の無 機化合物を含む水を熱硬化性樹脂に加え、温 度と圧力を上昇させて水を亜臨界状態にして 熱硬化性樹脂を分解する。熱硬化性樹脂に対 する水の添加量は、熱硬化性樹脂100質量部に 対して好ましくは200~500質量部の範囲である

 亜臨界水によるプラスチックの分解処理 、一般的に熱分解反応および加水分解反応 よって起こるものであり、多価アルコール 多塩基酸を含む原料により製造された熱硬 性のプラスチックにおいても同様であるが 加水分解反応が支配的になる。亜臨界水の 度や圧力を適切な条件とすることにより、 択的に加水分解反応が起こり、多価アルコ ルと多塩基酸のモノマーあるいはこれらが 数個結合したオリゴマーに分解される。

 したがって、本発明においても、上記の 硬化性樹脂を亜臨界水に接触させて処理す ことにより、多価アルコールと多塩基酸お び化合物(I)に分解することができる。分解 て得られたモノマーやオリゴマーは、回収 てプラスチックの製造原料として再利用す ことができる。

 本発明において「亜臨界水」とは、水の 度が水の温度(臨界温度374.4℃)以下であって 、且つ、温度が140℃以上であり、その時の圧 力が0.36MPa(140℃の飽和蒸気圧)以上の範囲にあ る状態の水をいう。この場合、イオン積が常 温常圧の水の約100~1000倍になる。また、亜臨 水の誘電率は有機溶媒並みに下がることか 、亜臨界水の熱硬化性樹脂表面に対する濡 性が向上する。これらの効果によって加水 解が促進され、熱硬化性樹脂をモノマー化 よび/またはオリゴマー化することができる 。

 本発明において、分解反応時における亜 界水の温度は、分解・回収の対象である熱 化性樹脂の熱分解温度未満であり、好まし は180~300℃の範囲である。分解反応時の温度 が180℃未満であると、分解処理に多大な時間 を要するため処理コストが高くなる場合があ り、さらに化合物(I)の収率が低くなる傾向が ある。分解反応時の温度が300℃を超えると、 化合物(I)の熱分解が著しくなり、化合物(I)が 低分子化されて多種多様な誘導体が生成され 、化合物(I)として回収することが困難になる 傾向がある。

 亜臨界水による処理時間は、反応温度な の条件によって異なるが、通常は1~4時間で る。分解反応時における圧力は、反応温度 どの条件によって異なるが、好ましくは2~15 MPaの範囲である。

 以上のように、2価以上の水酸基含有の無 機化合物を含む亜臨界水で熱硬化性樹脂を分 解することで、分解反応により生成した化合 物(I)のカルボン酸塩は、水不溶成分として析 出し、2価以上の水酸基含有の無機化合物と もに固形分として回収される。一方、分解 応により生成したポリエステル由来のモノ ー(多価アルコールと多塩基酸)は、水可溶成 分として化合物(I)のカルボン酸塩等の固形分 と分離される。一部溶解した2価以上の水酸 含有の無機化合物も水可溶成分に含まれて る。

 次に、図1にも示すように、得られた分解 生成物を固液分離して、化合物(I)のカルボン 酸塩を含有する固形分を回収する(工程(B))。

 具体的には、亜臨界水と分解生成物を含 反応容器を冷却した後、濾過等の方法で容 の内容物を固液分離する。これにより、化 物(I)のカルボン酸塩と2価以上の水酸基含有 の無機化合物が固形分として分離される。

 一方、モノマー成分である多価アルコー と多塩基酸(有機酸)を溶解している水溶液 分離濾液として分離される。この分離濾液 、多価アルコールと多塩基酸を含有したま 亜臨界水として他の熱硬化性樹脂の分解に 利用することができる。しかも、繰り返し 利用することで、それぞれの分解反応時に 成する多価アルコールと多塩基酸を順次水 液中に溶解させて、多価アルコールと多塩 酸を高濃度で回収することも可能である。

 次に、図1にも示すように、工程(B)で回収 した固形分に塩酸を加えて化合物(I)のカルボ ン酸塩を化合物(I)へ変化させた後、化合物(I) を含む固形分を回収する(工程(C))。この際、2 価以上の水酸基含有の無機化合物である水酸 化カルシウムは塩酸を加えることにより、水 溶性カルシウム塩となって水に溶解する。

 具体的には、分解後の固形分中に存在す 化合物(I)のカルボン酸塩は図5に示すような 状態で存在している。化合物(I)の塩は、ポリ エステル由来の酸残基の骨格および架橋部由 来の残基の骨格(化合物(I)がスチレン-フマル 共重合体である場合、スチレン骨格および マル酸骨格)を有し、カルボキシル基に2価 上の水酸基含有の無機化合物由来の金属Mが 合した状態(-COO-M-OOC-)のカルボン酸塩であり 、非水溶性を示すものである。この状態では 、後述する水溶性アルカリ、有機溶媒への溶 解が困難なため、塩酸を加えることで2価以 の金属Mを介して閉環している化合物(I)のカ ボン酸基を開環させ、水溶性アルカリ、有 溶媒への溶解が可能な化合物(I)とする。そ て、これを固液分離して、化合物(I)を回収 ることができる。

 また、分解後の固形分中に2価以上の水酸 基含有の無機化合物である水酸化カルシウム が存在し、塩酸を加えることにより、水溶性 カルシウム塩となって水に溶解するため、固 液分離して化合物(I)を回収することができる 。

 工程(C)に使用する酸としては、化合物(I) カルボン酸塩を後述する水溶性アルカリと 有機溶媒への溶解が可能な化合物(I)に変換 ることができるものであり、2価以上の水酸 基含有の無機化合物である水酸化カルシウム を溶解させて、水溶性カルシウム塩となって 水に溶解させるものが挙げられ、塩酸、硝酸 等が挙げられる。

 工程(C)における酸の濃度および供給量は 特に制限されないが、化合物(I)中のカルボ 酸基をすべて開環させることができ、さら 2価以上の水酸基含有の無機化合物である水 酸化カルシウムを溶解させることができる量 以上を供給すればよい。塩酸の場合、例えば 、濃塩酸(約35%溶液)を用いると、化合物(I)100 量部に対して、濃塩酸60~150質量部、水酸化 ルシウム100質量部に対して、濃塩酸300~450質 量部が好ましい。つまり化合物(I)、水酸化カ ルシウムがともに100質量部の場合、濃塩酸の 総量は360~600質量部となる。なお、作業性の から、固形分が浸漬する濃度まで酸を水で 釈することが好ましいが、希釈しすぎると 水が多くなるため好ましくない。

 また、工程(C)における酸の供給は、工程( B)で回収した固形分に、所定量の酸を添加す ことで行ってもよく、あるいは、当該固形 を、所定量の酸に浸漬させることで行って よい。

 工程(C)で分離した濾液(水溶液)は、再度 工程(C)に用いられる塩酸および/または塩酸 釈用の水として、工程(B)で回収した固形分 加えて化合物(I)のカルボン酸塩を化合物(I) 変化させるために再利用することができる 繰り返し再利用して溶解している塩濃度が くなった場合には、水を蒸発させて塩を回 する。蒸発させた水は再利用することがで る。

 次に実施形態〔2〕について説明する。熱 硬化性樹脂を亜臨界水中で分解し(工程(A))、 2にも示すように、得られた分解生成物を固 液分離して、化合物(I)のカルボン酸塩と含有 する固形分を回収する(工程(B)までは実施形 〔1〕と同様である)。

 また分離濾液は、実施形態〔1〕と同様、 多価アルコールと多塩基酸を含有したまま亜 臨界水として他の熱硬化性樹脂の分解に再利 用することができる。しかも、繰り返し再利 用することで、それぞれの分解反応時に生成 する多価アルコールと多塩基酸を順次水溶液 中に溶解させて、多価アルコールと多塩基酸 を高濃度で回収することも可能である。

 工程(C)において、塩酸の代わりに硫酸を えることで、2価以上の金属Mを介して閉環 ている化合物(I)のカルボン酸基を開環させ ことができるが、水に不溶なカルシウム塩 ある硫酸カルシウムが生成する。また2価以 の水酸基含有の無機化合物である水酸化カ シウムも硫酸を加えることで、硫酸カルシ ムが生成する。

 硫酸と同様に、2価以上の金属Mを介して閉 している化合物(I)のカルボン酸基を開環さ ることができ、且つ、水に不溶な塩を形成 ることができる酸も工程(C)に使用すること できる。このような酸としては、例えば、 酸、燐酸等が挙げられる。
 ここで、工程(C)における酸の濃度および供 量は、硫酸の場合、例えば、濃硫酸(約98%溶 液)を用いると、化合物(I)100質量部に対して 濃硫酸30~50質量部、水酸化カルシウム100質量 部に対して、濃硫酸130~170質量部が好ましい つまり、化合物(I)、水酸化カルシウムがと に100質量部の場合、濃硫酸の総量は160~220質 部となる。なお、作業性の点から、固形分 浸漬する濃度まで酸を水で希釈することが ましいが、希釈しすぎると廃水が多くなる め好ましくない。

 工程(C)で分離した濾液(水溶液)は、再度 工程(C)に用いられる硫酸および/または硫酸 釈用の水として、工程(B)で回収した固形分 加えて化合物(I)のカルボン酸塩を化合物(I) 変化させるために再利用することができる この水溶液は塩が含まれていないため、何 も繰り返して再利用することができる。

 次に、図2にも示すように、工程(C)で回収 した固形分(化合物(I)と硫酸カルシウムの混 物)をアセトン等の溶媒に接触させて固形分 化合物(I)を溶解させ、化合物(I)を回収する( 工程(D))。

 具体的には、化合物(I)を溶解させること できる溶媒を上記固形分に供給し、これを 温で攪拌して化合物(I)を前記溶媒に溶解し 後、固形分中の他の無機物(硫酸カルシウム )から分離する。次いで、前記溶媒を気化さ て化合物(I)を回収する。

 このような化合物(I)を溶解させることがで る溶媒は、分解生成物の固形分から化合物( I)のみを溶解させるために用いられる。当該 媒とは、水や水溶性のアルカリ水溶液やア トン、テトラヒドロフラン(THF)、メタノー 、オクタノール、クロロホルム等の有機溶 が挙げられる。
 なお、これらの溶媒は、1種単独で、あるい は2種以上を併用して用いることができる。
 また、前記溶媒の使用量は、化合物(I)に対 て、例えば、アセトンの場合、化合物(I)100 量部に対して、アセトン200~3000質量部であ 。

 次に実施形態〔3〕について説明する。分 解対象は無機物(炭酸カルシウム及びガラス 維)を含む熱硬化性樹脂である。実施形態〔1 〕と同様に亜臨界水中で分解し(工程(A))、図3 にも示すように、得られた分解生成物を固液 分離して、化合物(I)のカルボン酸塩、2価以 の水酸基含有の無機化合物、そして無機物( 酸カルシウム、ガラス繊維)が混合した固形 分を回収する(工程(B))。

 また分離濾液は、実施形態〔1〕と同様、 多価アルコールと多塩基酸を含有したまま亜 臨界水として他の熱硬化性樹脂の分解に再利 用することができる。しかも、繰り返し再利 用することで、それぞれの分解反応時に生成 する多価アルコールと多塩基酸を順次水溶液 中に溶解させて、多価アルコールと多塩基酸 を高濃度で回収することも可能である。

 工程(C)において、実施形態〔1〕と同様に塩 酸を加えることで、2価以上の金属Mを介して 環している化合物(I)のカルボン酸基を開環 せることができ、さらに2価以上の水酸基含 有の無機化合物である水酸化カルシウム、お よび無機物中の炭酸カルシウムは、水溶性カ ルシウム塩となって水に溶解する。
 その後、固液分離することで、化合物(I)と 機物中のガラス繊維が固形分として回収さ る。
 ここで、工程(C)における酸並びにその濃度 よび供給量は、塩酸の場合、例えば、濃塩 (約35%溶液)を用いると、化合物(I)100質量部 対して、濃塩酸60~150質量部、水酸化カルシ ム100質量部に対して、濃塩酸300~450質量部、 らに炭酸カルシウム100質量部に対して、濃 酸210~300質量部が好ましい。つまり化合物(I) 、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムがそれ ぞれ100質量部の場合、濃塩酸の総量は570~900 量部となる。なお、作業性の点から、固形 が浸漬する濃度まで酸を水で希釈すること 好ましいが、希釈しすぎると廃水が多くな ため好ましくない。

 このとき、濾液は実施形態〔1〕と同様、 再度、工程(C)に用いられる塩酸および/また 塩酸希釈用の水として、工程(B)で回収した 形分に加えて化合物(I)のカルボン酸塩を化 物(I)へ変化させるために再利用することが きる。繰り返し再利用して溶解している塩 度が高くなった場合には、水を蒸発させて を回収する。蒸発させた水は再利用するこ ができる。

 次に、図3にも示すように、工程(C)で回収し た固形分(化合物(I)とガラス繊維の混合物)を セトン等の溶媒に接触させて固形分の化合 (I)を溶解させ、固液分離してガラス繊維と 離し、アセトン等を気化させて化合物(I)を 収する(工程(D))。
 ここで、工程(D)に使用する溶媒およびその 用量は、実施形態〔2〕と同様である。

 次に実施形態〔4〕について説明する。分 解対象は無機物(炭酸カルシウム及びガラス 維)を含む熱硬化性樹脂である。実施形態〔1 〕と同様に亜臨界水中で分解し(工程(A))、図4 にも示すように、得られた分解生成物を固液 分離して、化合物(I)のカルボン酸塩、2価以 の水酸基含有の無機化合物、そして無機物( 酸カルシウム、ガラス繊維)が混合した固形 分を回収する(工程(B))。

 また分離濾液は、実施形態〔1〕と同様、 多価アルコールと多塩基酸を含有したまま亜 臨界水として他の熱硬化性樹脂の分解に再利 用することができる。しかも、繰り返し再利 用することで、それぞれの分解反応時に生成 する多価アルコールと多塩基酸を順次水溶液 中に溶解させて、多価アルコールと多塩基酸 を高濃度で回収することも可能である。

 工程(C)において、実施形態〔2〕と同様に硫 酸を加えることで、2価以上の金属Mを介して 環している化合物(I)のカルボン酸基を開環 せることができるが、水に不溶なカルシウ 塩である硫酸カルシウムが生成する。また2 価以上の水酸基含有の無機化合物である水酸 化カルシウムも硫酸を加えることで、硫酸カ ルシウムが生成する。さらに、無機物中の炭 酸カルシウムも硫酸を加えることで、硫酸カ ルシウムが生成する。
 その後、固液分離することで、化合物(I)、 酸カルシウム、ガラス繊維が混合した固形 として回収される。
 ここで、工程(C)における酸並びにその濃度 よび供給量は、硫酸の場合、例えば、濃硫 (約98%溶液)を用いると、化合物(I)100質量部 対して、濃硫酸30~50質量部、水酸化カルシウ ム100質量部に対して、濃硫酸130~170質量部が ましい。さらに炭酸カルシウム100質量部に して、濃硫酸100~150質量部が好ましい。つま 化合物(I)、水酸化カルシウム、炭酸カルシ ムがそれぞれ100質量部の場合、濃硫酸の総 は260~370質量部となる。なお、作業性の点か ら、固形分が浸漬する濃度まで酸を水で希釈 することが好ましいが、希釈しすぎると廃水 が多くなるため好ましくない。

 工程(C)で分離した濾液(水溶液)は、再度 工程(C)に用いられる硫酸および/または硫酸 釈用の水として、工程(B)で回収した固形分 加えて化合物(I)のカルボン酸塩を化合物(I) 変化させるために再利用することができる この水溶液は塩が含まれていないため、何 も繰り返して再利用することができる。

 次に、図4にも示すように、工程(C)で回収し た固形分(化合物(I)、硫酸カルシウム、ガラ 繊維の混合物)をアセトン等の溶媒に接触さ て固形分の化合物(I)を溶解させ、固液分離 て硫酸カルシウム、ガラス繊維と分離し、 セトン等を気化させて化合物(I)を回収する( 工程(D))。
 ここで、工程(D)に使用する溶媒およびその 用量は、実施形態〔2〕と同様である。

 図1~4の実施形態〔1〕~〔4〕に示されるよ な本発明の方法により回収される化合物(I) 、改質して熱硬化性樹脂の原材料との相溶 を付与することによって、熱硬化性樹脂の 化収縮を抑制する低収縮剤として再利用可 であり、またアルカリ塩の状態では、セメ トや顔料等の分散剤、洗剤ビルダー等に再 用が可能である。

 以下、実施例により本発明をさらに詳し 説明するが、本発明はこれらの実施例に何 限定されるものではない。

<実施例1>
 プロピレングリコール、ネオペンチルグリ ール、およびジプロピレングリコールから るグリコール類と、無水マレイン酸とを等 ル量で重縮合させて不飽和ポリエステルを 成した。この不飽和ポリエステルのワニス( 溶剤未添加)に架橋剤のスチレンを等モル量 合した液状樹脂100質量部に、炭酸カルシウ 165質量部とガラス繊維90質量部を配合し、こ れを硬化させて不飽和ポリエステル樹脂成形 品(以下、「熱硬化性樹脂」という)を得た。

 この熱硬化性樹脂4gと、純水16gと、水酸 カルシウム0.24gを反応管に仕込み、260℃の恒 温槽に浸漬し、反応管内の純水を亜臨界状態 にして4時間浸漬したまま放置し、熱硬化性 脂の分解処理を行った。

 その後、反応管を恒温槽から取り出して 却槽に浸漬し、反応管を急冷して室温まで した。分解処理後の反応管の内容物は、水 溶成分と未溶解樹脂残渣と炭酸カルシウム ガラス繊維であり、この内容物を濾過する とにより固形分を分離して回収した。

 次にこの固形分約3.7g(分解後の残渣すべ )を1規定の塩酸40mLに浸漬させて固形分中の 酸カルシウムを溶解、未溶解樹脂残渣中の チレン-フマル酸共重合体のカルボン酸基を 環しているカルシウムと反応して開環させ 固形分を分離して回収した。

 そして、その固形分をアセトン20mLに浸漬さ せて、濾過することにより、アセトン溶解物 とアセトン未溶解物に分離した。アセトン溶 解物の重量を測定し、スチレン-フマル酸共 合体の回収率を下記式により算出した。
回収率(%)=(アセトン溶解物の量)/(熱硬化性樹 に含有されるスチレン-フマル酸共重合体の 量)×100
 ここで、「アセトン溶解物の量」は、固形 にアセトンを加えるとスチレン-フマル酸共 重合体が溶解し、その後濾過して得られたア セトン溶液を蒸発させて残った固形物の重量 である。
 また、「熱硬化性樹脂に含有されるスチレ -フマル酸共重合体の量」は、分解して得ら れた化合物をNMRで分析して算出した酸残基と 架橋部由来の分子の数の比率と、用いた架橋 部成形材料の量より求めた化合物(I)の推定含 有量である。
 試験条件、スチレン-フマル酸共重合体の回 収率の結果を表1に示す。

<実施例2>
 実施例1において、水酸化カルシウムの量を 0.95gにした以外は実施例1と同様の条件で試験 を行い、スチレン-フマル酸共重合体を回収 た。試験条件、スチレン-フマル酸共重合体 回収率の結果を表1に示す。

<実施例3>
 実施例1において、水酸化カルシウムの量を 1.18gにした以外は実施例1と同様の条件で試験 を行い、スチレン-フマル酸共重合体を回収 た。試験条件、スチレン-フマル酸共重合体 回収率の結果を表1に示す。

<比較例>
 実施例1において、水酸化カルシウムを使用 しなかった以外は実施例1と同様の条件で試 を行い、スチレン-フマル酸共重合体を回収 た。試験条件、スチレン-フマル酸共重合体 の回収率の結果を表1に示す。

 表1の結果より、2価以上の水酸基含有の 機化合物を含む亜臨界水で熱硬化性樹脂を 解することにより(実施例1~3)、2価以上の水 基含有の無機化合物を含まない亜臨界水で 解した比較例と比べて、スチレン-フマル酸 重合体の回収率を飛躍的に向上させること 確認できた。