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Patent Searching and Data


Title:
METHOD OF DEGRADATION RECOVERY FOR POLYETHYLENE TEREPHTHALATE RESIN
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/153093
Kind Code:
A1
Abstract:
A product containing a polyethylene terephthalate resin is hydrolyzed under easily practicable conditions without formation of a supercritical or subcritical condition. There is disclosed a method of degradation recovery for polyethylene terephthalate resin including hydrolytic processing and fractional recovery processing. In the hydrolytic processing, a processing object containing a polyethylene terephthalate resin is exposed to, at a processing temperature not higher than the melting point temperature of the polyethylene terephthalate resin, an atmosphere of steam filled at a pressure equal to the saturated steam pressure at the processing temperature so that the polyethylene terephthalate resin contained in the processing object is hydrolyzed by the saturated steam generated at the processing temperature to thereby form degradation products corresponding to components prior to the polymerization of the polyethylene terephthalate resin. In the fractional recovery processing, the hydrolyzates obtained by the hydrolysis are fractionated into a gaseous or liquid component and a solid component which are separately recovered.

Inventors:
NAKAMURA KOICHI (JP)
TOYODA SHIGETO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/060750
Publication Date:
December 18, 2008
Filing Date:
June 12, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NAKAMURA KOICHI (JP)
TOYODA SHIGETO (JP)
International Classes:
C07C27/02; C07C29/09; C07C31/20; C07C51/09; C07C63/26; C08J11/14
Domestic Patent References:
WO2007102488A12007-09-13
Foreign References:
JP2006262520A2006-09-28
JP2004323411A2004-11-18
JPH0977905A1997-03-25
JPH08325198A1996-12-10
Attorney, Agent or Firm:
FUKUCHI, Takeo (Shibuya-ku Tokyo, 31, JP)
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Claims:
 ポリエチレンテレフタレート樹脂をその原料物質であるエチレングリコールおよびテレフタル酸に分解して回収するポリエチレンテレフタレート樹脂の分解回収方法であって、加水分解処理と、分別回収処理とを有し、
 前記加水分解処理は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む被処理物を、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点温度以下の処理温度条件下で、水や水滴に浸漬させることなく、その処理温度における飽和水蒸気圧の圧力で満たされた水蒸気雰囲気内に曝露させ、その処理温度で発生した飽和水蒸気によって前記被処理物中に含まれるポリエチレンテレフタレート樹脂を加水分解し、エチレングリコールおよびテレフタル酸を生成し、前記エチレングリコールの気体または液状成分およびテレフタル酸の固形成分の物性の違いによって選択的に前記エチレングリコールの気体または液状成分を凝縮する処理であり、
 前記分別回収処理は、前記加水分解処理により分別して生成されたエチレングリコールの気体または液状成分と、テレフタル酸の固形成分とをそれぞれ別個に回収する処理であることを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂の分解回収方法。
 前記加水分解処理は、加水分解の処理雰囲気温度および蒸気圧を維持しながら反応させ、処理後は飽和蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に則り降温中維持し、かつそのための十分な水蒸気の存在の条件を維持しつつ冷却することによりエチレングリコールの気体または液状成分およびテレフタル酸の固形成分を生成させる処理であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレンテレフタレート樹脂の分解回収方法。
 前記加水分解処理は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む被処理物を、前記処理対象樹脂の結晶化温度以上前記処理対象樹脂の融点温度以下の温度条件で、その処理温度における飽和水蒸気圧で満たされた水蒸気雰囲気内に曝露させて前記処理対象樹脂の加水分解反応を起こさせ、反応の結果、エチレングリコールの気体または液状成分およびテレフタル酸の固形成分を生じさせる処理であることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載のポリエチレンテレフタレート樹脂の分解回収方法。
 前記加水分解処理は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む被処理物を、150℃以上230℃以下の温度条件のもと、その処理温度における飽和水蒸気圧で満たされた水蒸気雰囲気内に曝露させて、前記被処理物に含まれるポリエチレンテレフタレート樹脂に加水分解反応を起こさせ、反応の結果、エチレングリコールの気体または液状成分およびテレフタル酸の固形成分を生成させる処理であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のポリエチレンテレフタレート樹脂の分解回収方法。
 前記加水分解処理に先立って、前記分解再生すべき合成樹脂の融点を上限として、少なくとも前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の結晶化温度の近傍、または結晶化温度以上の温度で加熱する前処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のポリエチレンテレフタレート樹脂の分解回収方法。
Description:
ポリエチレンテレフタレート樹 の分解回収方法

 本発明は、ポリエチレンテレフタレート 脂を加水分解処理して分解生成物を回収す 方法に関する。

 自然界で微生物に与えられた、驚くべき 力の一つは、高分子有機化合物の加水分解 力である。微生物はこの反応を常温および 圧という全く自然の環境の中で、いとも簡 にやってのけ、有機物連鎖を分断して分子 を小さくする。この方法は何億年という長 時間をかけて微生物が獲得し、改良してき 方法であり、通常「酵素による加水分解法 と言われている。

 この酵素による加水分解法は、現在のと ろ我々人間が知能の総力を結集してもその 似をすることは難しい。この「酵素による 水分解法」による分解物、すなわち、微生 によって分解された結果物は、他の全ての 物にとって有用な成分となり、そのまま吸 され組織化されていく基本要素となる。

 酵素による加水分解法は、現段階では人 が真似をすることが難しいが、酵素による 水分解法以外の方法を用いて同じ結果を得 方法が1つある。その方法は「物理エネルギ ーを用いた加水分解法」である。この方法は 、元々何千メートルもの深海の底に地球内部 より吹き出して来る熱水による分解の現象と 類似した方法である。この方法によれば、温 度および圧力がともに遙かに水の臨界(375℃,2 20気圧)を超えた状態で反応が進行する。そし て、反応の結果、有機化合物を加水分解し、 金属を含めた多くの物質(化合物)を分解し、 質の構成成分を溶出させることができる。

 このような高圧と高温の状態を、より現 的な状態(より常温に近い状態)にしたとき も加水分解は可能である。とりわけ有機物 100℃、1気圧を超えると、時間の積で徐々に 水分解する。そして、このような「物理エ ルギーを用いた加水分解法」の結果は、微 物が行った「酵素による加水分解法」の結 と同等になる。この原理を利用して生分解 プラスチック等を分解する方法として、例 ば特許文献1には、超臨界熱水処理を利用す る方法、特許文献2には、亜臨界状態の熱水 利用する方法が紹介されている。

 また、特許文献3には、各温度の蒸気圧で 加水分解する生分解性プラスチック含む有機 系廃棄物の処理方法が記載されている。特許 文献3の処理方法では、生分解性プラスチッ が混在する有機系廃棄物に希釈水を添加し 加水分解槽により加水分解を行い、メタン 酵槽を用いて嫌気性条件化で加水分解され 分解生成物のメタン発酵を行い、発酵によ 生成したメタンガスを回収する。加水分解 、120℃~250℃の温度において、5~60分間、各温 度での蒸気圧で実施される。

 また、特許文献4には、生分解性ポリエス テルのモノマー化方法が記載されている。特 許文献4のモノマー化方法では、ポリ乳酸と 用性プラスチック(例えばPET、PSなど)との混 物が水分と共に、ポリ乳酸の融点以下の温 (160℃~170℃)で、約30分間以上処理され、ポ 乳酸のモノマーである乳酸が分離回収され 。

 また、特許文献5には、混合廃プラスチック の熱分解装置が記載されている。特許文献5 載の熱分解装置は、攪拌型反応器の下方に ンク型反応器を設置し、PETを含む混合廃プ スチックを攪拌型反応器において充填物と もに攪拌しながら水蒸気と接触させ、PETを 水分解する。

特開平11-292777

特開2003-313283

特開2005-95729

特開2005-330211

特開2000-204376

 超臨界や亜臨界状態での反応の例に限ら 、一般に、高圧下では、比較的低温であっ も物質は分圧比の影響で相転移する。しか 、有機物の場合、温度が比較的低くても圧 が飽和水蒸気圧より高いと炭化し、温度が 和水蒸気圧より低いと溶剤等の液化混入を ねくなどの危険が生じる。したがって、実 に「物理エネルギーを用いた加水分解法」 有効に活用するには、温度および圧力など 含めた処理条件の設定が難しい。

 即ち、超臨界および亜臨界流体を処理に 用する場合には、その極めて高い温度およ 圧力条件を発生させ、維持できる処理装置 必要となる。一般的に、高温かつ高圧状態 維持するための装置は、容積が大きくなる どその製作が難しく、製作コストが飛躍的 高くなるため、大規模な工業設備に応用す のが難しい。さらに、超臨界および亜臨界 水の持つ極めて高い分解能力は、処理対象 機物に留まらず処理容器そのものにも及ぶ めに、分解を防ぐために高価な材料を装置 使用する必要がある。

 また、ポリエチレンテレフタレート樹脂 品の使用後の再生利用として最も効率的で ましいのは、使用済みのポリエチレンテレ タレート樹脂製品を再びポリエチレンテレ タレート樹脂製品の原料に戻してリサイク することである。ポリエチレンテレフタレ ト樹脂製品の原料として活用する以上、高 度の原料に戻すことが望ましいのは云うま もない。

 また、ポリエチレンテレフタレート樹脂 品中には物質が混入していたり、製品に付 しているインクや塗料、そしてフィラーな 多くの混合物質が含まれていたりする。ポ 乳酸製品の再利用に倣ってポリエチレンテ フタレート樹脂製品をリサイクルするため は、混合物質を分別し、ポリエチレンテレ タレート樹脂の分解生成物のみを抽出する 要がある。このような事情から、ポリエチ ンテレフタレート樹脂製品を再生して活用 るため、分解の条件、分解生成物を分別す 手法、さらには、原料の純度、濃度を確保 る手法を確立することが必要である。

 上記の特許文献3では、被処理物を飽和水 蒸気以下の圧力で満たし、生分解性プラスチ ックに希釈水を添加して加水分解槽により加 水分解を行う技術が提案されているが、この 技術は生分解性プラスチックを水に浸して加 水分解することを前提としている。しかしな がら、このような条件下で生成される物は、 メタンガス生成用としては十分であっても、 生分解性プラスチックの再生用としては不十 分である。

 また、上記の特許文献4には、ポリ乳酸の 融点以下の温度で処理することが記載されて いるが、試料を水に浸して加水分解すること を前提としており、分解に時間がかかり過ぎ たり、試料に変性が生じたりする場合がある 。一方、上記の特許文献5のように、ポリエ レンテレフタレートに過熱水蒸気を接触さ て加水分解を生じさせる技術が提案されて るが、過熱水蒸気では焦げ付き等が生じる

 本発明は、ポリエチレンテレフタレート 脂を含む製品を超臨界または亜臨界状態を 成することなく実現容易な条件で加水分解 理して、ポリエチレンテレフタレート樹脂 再生に利用可能な分解生成物を分別回収す ことを目的としている。

 (1)上記の目的を達成するため、本発明に るポリエチレンテレフタレート樹脂の分解 収方法は、ポリエチレンテレフタレート樹 をその原料物質であるエチレングリコール よびテレフタル酸に分解して回収するポリ チレンテレフタレート樹脂の分解回収方法 あって、加水分解処理と、分別回収処理と 有し、前記加水分解処理は、ポリエチレン レフタレート樹脂を含む被処理物を、前記 リエチレンテレフタレート樹脂の融点温度 下の処理温度条件下で、水や水滴に浸漬さ ることなく、その処理温度における飽和水 気圧の圧力で満たされた水蒸気雰囲気内に 露させ、その処理温度で発生した飽和水蒸 によって前記被処理物中に含まれるポリエ レンテレフタレート樹脂を加水分解し、エ レングリコールおよびテレフタル酸を生成 、前記エチレングリコールの気体または液 成分およびテレフタル酸の固形成分の物性 違いによって選択的に前記エチレングリコ ルの気体または液状成分を凝縮する処理で り、前記分別回収処理は、前記加水分解処 により分別して生成されたエチレングリコ ルの気体または液状成分と、テレフタル酸 固形成分とをそれぞれ別個に回収する処理 あることを特徴としている。

 このように、本発明のポリエチレンテレ タレート樹脂の分解回収方法では、超臨界 態や、亜臨界状態を形成しなくても、ポリ チレンテレフタレート樹脂を含む被処理物 飽和水蒸気圧の圧力で満たされた水蒸気雰 気内に曝露することにより、飽和水蒸気の ネルギーを用いて低圧かつ低温の条件でポ エチレンテレフタレート樹脂の分解処理を うことが可能になる。

 その結果、処理を行う装置にかかるコス を低減できる。そして、加水分解処理によ 、ポリエチレンテレフタレート樹脂の重合 の状態の原料物質が得られ、その成分を原 としてもとの樹脂製品と全く同じかそれ以 の品質で、ポリエチレンテレフタレート樹 製品を再生することができる。また、この 解回収方法は、サイクルを何度繰り返して 原料としての劣化がない。このように、本 明によれば、廃棄物処理の問題、資源の有 活用の問題を解決して好ましい資源のクロ ズドサイクルシステムを実現できる。ポリ チレンテレフタレート樹脂は、テレフタル とエチレングリコールを重合反応させて生 される。また、分解生成物の物性の違いに って選択的に特定の分解生成物を抽出する とで、分解生成物の回収が容易になる。な 、抽出するとは、ある特定の物質を抜き出 ことをいう。

 このように薬品類、触媒などを一切使用 ずに、ポリエチレンテレフタレート樹脂を 合前のテレフタル酸とエチレングリコール 加水分解できた意義は、学術的にも工業的 も非常に大きい。特に、単純な方式で効率 くポリエチレンテレフタレート樹脂を分解 きる本方法は、従来法のような複雑なプラ トを必要としないことから、規模や設置場 に関する自由度が高く、幅広い業種および 途への応用が期待できる。

 (2)また、本発明に係るポリエチレンテレ タレート樹脂の分解回収方法は、前記加水 解処理が、加水分解の処理雰囲気温度およ 蒸気圧を維持しながら反応させ、処理後は 和蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に則り降温中 持し、かつそのための十分な水蒸気の存在 条件を維持しつつ冷却することによりエチ ングリコールの気体または液状成分および レフタル酸の固形成分を生成させる処理で ることを特徴としている。

 圧力を飽和水蒸気圧曲線に則り降温中維 する制御によって、析出する結晶成分を他 成分(顔料等)から分離することができるた 、選択された特定成分を高純度の単体とし 得ることができる。また、圧力を飽和水蒸 圧曲線に則り降温中維持する制御によって 析出する成分を熱変性させることなく分離 ることができる。

 (3)また、本発明に係るポリエチレンテレ タレート樹脂の分解回収方法は、前記加水 解処理が、ポリエチレンテレフタレート樹 を含む被処理物を、前記処理対象樹脂の結 化温度以上前記処理対象樹脂の融点温度以 の温度条件で、その処理温度における飽和 蒸気圧で満たされた水蒸気雰囲気内に曝露 せて前記処理対象樹脂の加水分解反応を起 させ、反応の結果、エチレングリコールの 体または液状成分およびテレフタル酸の固 成分を生じさせる処理であることを特徴と ている。

 (4)また、本発明に係るポリエチレンテレ タレート樹脂の分解回収方法は、前記加水 解処理が、ポリエチレンテレフタレート樹 を含む被処理物を、150℃以上230℃以下の温 条件のもと、その処理温度における飽和水 気圧で満たされた水蒸気雰囲気内に曝露さ て、前記被処理物に含まれるポリエチレン レフタレート樹脂に加水分解反応を起こさ 、反応の結果、エチレングリコールの気体 たは液状成分およびテレフタル酸の固形成 を生成させる処理であることを特徴として る。

 このように、ポリエチレンテレフタレー 樹脂を飽和水蒸気に曝露することで、超臨 または亜臨界の圧力と比べ低い圧力の中に かかわらず150℃以上230℃以下の条件でポリ チレンテレフタレート樹脂を加水分解でき 。また、その設定温度での飽和水蒸気圧の とで数時間のうちに被処理物中のポリエチ ンテレフタレート樹脂を加水分解すること できる。完全分解した場合には、分解生成 としてテレフタル酸およびエチレングリコ ルが得られるが、十分に分解していない場 には、ポリエチレンテレフタレートのオリ マー、テレフタル酸ジメチル、その他の中 生成物を含んだ分解生成物が得られる。

 (5)また、本発明に係るポリエチレンテレ タレート樹脂の分解回収方法は、前記加水 解処理に先立って、前記分解再生すべき合 樹脂の融点を上限として、少なくとも前記 リエチレンテレフタレート樹脂の結晶化温 の近傍、または結晶化温度以上の温度で加 する前処理を行うことを特徴としている。

 このようにして、前処理としてポリエチ ンテレフタレート樹脂を加熱して結晶化さ た後、加水分解処理を行う。その結果、そ 後の加水分解処理を効率よく行うことがで 処理時間を減少させることができる。

 本発明によれば、超臨界状態や、亜臨界 態を形成しなくても、ポリエチレンテレフ レート樹脂製品の廃棄物を加水分解し、そ 反応生成物を気体または液状成分と固体成 に分別して回収することができる。これに り、ポリエチレンテレフタレート樹脂の、 合前の状態の原料物質が得られ、その成分 原料としてもとの樹脂製品と全く同じかそ 以上の品質で、樹脂製品を再生することが きる。また、このサイクルを何度繰り返し も原料としての劣化がない。このように、 発明によれば、廃棄物処理の問題、資源の 効活用の問題を解決して好ましい資源のク ーズドサイクルシステムを実現できる。

加水分解装置の構成図である。 有機物の加水分解メカニズムを説明す 図である。 飽和水蒸気圧曲線を示すグラフである 本発明方法を実施するシステムの構成 である。 本発明方法を示すフローチャートであ 。 ポリエチレンテレフタレート樹脂の温 とエネルギー吸収量との関係を示すグラフ ある。 加水分解処理したポリエチレンテレフ レート樹脂のIRチャートである。 テレフタル酸の純粋試薬(和光純薬)のIR チャートである。 加水分解処理したポリエチレンテレフ レート樹脂のIRチャートである。 加水分解処理したポリエチレンテレフ タレート樹脂のIRチャートである。 加水分解処理したポリエチレンテレフ タレート樹脂のIRチャートである。 水溶液のMSスペクトルスキャンの分析 果を示す図である。 水溶液のガスクロマトグラフィーの結 果を示す図である。 エチレングリコールのみについてのガ スクロマトグラフィーの結果を示す図である 。 ポリエチレンテレフタレート樹脂につ いての実験結果を示す図である。 前処理のために使用する装置の一例を 示す概略図である。

符号の説明

1 処理チャンバー
2 抽出管
3 冷却塔
4 循環ポンプ
5 ヒータ
6 蒸気戻り口
7 蒸気送出口
8 投入口
9 排出口
10 攪拌羽根
11、11’ ドレイン
12 中央監視室
13 加水分解制御装置
14 モニター
15 フィルター
16 前処理用の処理チャンバー
21 ヒータ
31a 第1の保持部
31b 第2の保持部
32 底部
V1、V2 容器

 (実施形態1)
 以下に本発明の実施形態を示す。本発明は 加水分解処理と、分別回収処理とを順に行 、ポリエチレンテレフタレート樹脂を重合 の原料成分に再生する方法の発明である。 水分解処理においては、ポリエチレンテレ タレート樹脂を含む被処理物を、そのポリ チレンテレフタレート樹脂の融点温度以下 処理温度条件のもとで、その処理温度にお る飽和水蒸気圧以下の圧力で満たされた水 気雰囲気内に曝露させ、その処理温度で発 した水蒸気によって被処理物中に含まれる 成樹脂を加水分解する。この結果、ポリエ レンテレフタレート樹脂の重合前の原料成 が再生成される。分別回収処理においては 加水分解処理による分解生成物を気体また 液体成分であるエチレングリコールと、固 成分であるテレフタル酸とに分別する。気 または液体成分は、ポリエチレンテレフタ ート樹脂の重合前の原料成分である。さら 液体成分中に含まれる固形成分をフィルタ で除去することにより、液体成分の純度を めることができる。さらには、降下温度を 御することによって、析出する結晶成分を の水溶性成分(顔料等)から分離することが きるため、選択された特定成分を高純度の 体として得ることができる。

 図1に、本発明の加水分解処理に用いる装 置の一実施形態を示す。図1において、加水 解処理を行う装置は、処理チャンバー1と、 出管2と、冷却塔3と、循環ポンプ4との組み わせを備えている。処理チャンバー1は、内 部に投入された被処理物を加熱して加水分解 処理を行う釜であり、その外壁にはジャケッ ト型ヒータ5(この例では電気式)が装備され、 処理チャンバー1と、冷却塔3間は、抽出管2で 接続されている。

 抽出管2は、処理チャンバー1の下部の蒸 戻り口6と、上部の蒸気送出口7間をつなぐ循 環管路である。冷却塔3は、その管路内に接 されている。循環ポンプ4は、冷却塔3の上流 側の管路内に接続されている。また、処理チ ャンバー1は、被処理物の投入口8と排出口9と を有している。処理チャンバー1はその内部 、垂直軸を中心に回転しながら処理チャン ー1内に投入された被処理物を攪拌する攪拌 根10を装備する。

 処理チャンバー1の攪拌羽根10の下には、 リエチレンテレフタレート樹脂製品を保持 るための第1の保持部31aおよびテレフタル酸 を保持するための第2の保持部31bが設けられ いる。第1の保持部31aおよび第2の保持部31bは 、水蒸気を通す網目状フィルターとして構成 されている。第1の保持部31aの網目は、粗く 成されており、ポリエチレンテレフタレー 樹脂が分解したときに、骨材等の固形物が 1の保持部31aに保持される。一方、第2の保持 部31bの網目は、第1の保持部31aより細かく形 されており、ポリエチレンテレフタレート 脂が分解されて生成されたテレフタル酸が 2の保持部31bに保持される。処理チャンバー1 の底部32は、第2の保持部31bから間隔を空けて 形成されており、水または処理により生じる 溶液をポリエチレンテレフタレート樹脂製品 に接触することなく溜めることができるよう に構成されている。なお、ポリエチレンテレ フタレートが完全に分解されない場合には、 第2の保持部31bには、ポリエチレンテレフタ ートのオリゴマー、テレフタル酸ジメチル その他の中間生成物を含んだ分解生成物も 持される。

 冷却塔3は、抽出管2内の気体(蒸気)を冷却 する熱交換器である。循環ポンプ4は、被処 物の加水分解処理後、処理チャンバー1内の 蒸気を冷却塔3に強制送風する。冷却塔3は 冷却塔3内に蒸気中の加水分解成分である抽 されたエチレングリコール水溶液を貯める めのドレイン11を備える。冷却塔3内に貯め れたエチレングリコール水溶液は、抽出液 して容器V1内に回収される。また、チャン ー1内で加水分解後一旦気化して水に溶入さ たエチレングリコール水溶液はドレイン11 を開くことによって、容器V2に回収される。 容器V1、V2或いはドレイン11、11’には、フィ ター15が介装されている。

 上記装置を用い、ポリエチレンテレフタレ ト樹脂製品を含む廃棄物を被処理物として の加水分解処理を行う。図2(A)は、加水分解 による有機物の分解メカニズムを示す図であ る。図2(A)に示すように、加水分解とは、結 している有機物の酸素と他の原子(例えば炭 C)との間に水素イオンおよび水酸化物イオ (H + とOH - )を作用させて結合を切る反応である。

 すなわち、加水分解とは、「C」と「O」と 間で電子が移動し偏在して、分極が起こり そこに水素イオンおよび水酸化物イオン「H + 」と「OH - 」が引き寄せられて電気的に結合する現象で ある。加水分解には、電子と原子とのそれぞ れが持つエネルギーが深く関係しており、温 度および圧力の設定はこの電子と原子の励起 エネルギーに直接作用している。従って、反 応時の温度および圧力によって加水分解反応 の反応速度は変化する。

 図2(B)は加水分解によるポリエチレンテレ フタレートの分解メカニズムを示す図である 。温度および圧力を制御することによってポ リエチレンテレフタレート樹脂を加水分解さ せ、テレフタル酸およびエチレングリコール にする。このエチレングリコールは高圧下で あれば比較的低温でも、一旦気体となる。そ して、この気体は水溶性であるため高圧力下 で瞬時に熱水に多量に溶解する。これによっ て多量のエチレングリコールを溶液で回収す ることが可能となる。気体として残るエチレ ングリコールは冷却塔ドレインにて回収され る。一方、テレフタル酸は、粉末状の固体と して残留する。本発明においては、加水分解 処理で、処理チャンバー1内の温度と圧力を 御する。その際に、図3に示すように水蒸気 を飽和水蒸気圧曲線に沿って上げ、一定時 その状態を保つとともに、反応終了時には 飽和水蒸気圧曲線に沿って降温させる。こ ように水蒸気圧を飽和水蒸気圧曲線に沿っ 制御することで、ポリエチレンテレフタレ ト樹脂が炭化または変性するのを防止する とができる。

 ちなみに、ある温度および圧力下で1成分 系の気液両相が共存するとき、その気相をな す蒸気が飽和に達している場合にその蒸気を 飽和蒸気という。そして、そのときの圧力は 飽和蒸気圧である。ある物質の液体の周囲で 、その物質の分圧がその液体の蒸気圧に等し いとき、その液体と気体は気液平衡の状態に ある。温度を下げると蒸気は凝結して液体に なる。逆に温度を上げると液体は気化する( 気になる)。また、固相と気相の間でも同様 平衡状態が保たれ、この転移を昇華という

 加水分解処理においては、処理チャンバ 1内の分圧としての水蒸気圧を飽和水蒸気圧 曲線に沿って制御する。この時、エチレング リコールの分圧比はごく低いため、水蒸気圧 が支配的である。ポリエチレンテレフタレー ト樹脂を加水分解させるための飽和水蒸気圧 を実現する温度および圧力域では、少しでも その温度が高くなるとポリエチレンテレフタ レート樹脂が炭化または変性し、低いと溶剤 の液化混入の危険が生ずる。そこで、処理チ ャンバー内の雰囲気の温度と、水蒸気圧力と をコンピュータ制御し、微妙な反応領域を飽 和水蒸気圧曲線に沿って通過させる。

 図4に、処理チャンバー内で進行する加水 分解反応の進行を監視するシステムの構成を 示す。中央監視室12には、加水分解制御装置1 3としてコンピュータが設置されている。コ ピュータは、ヒータ5の電源投入,攪拌羽根10 駆動制御,処理時間の設定,配管のバルブの 閉制御,循環ポンプ4の駆動制御などを含めて 、処理チャンバー1内で進行させる加水分解 理に必要な一切の制御および設定情報の管 を行う。また、コンピュータは、加水分解 応の進行状況、生成されたテレフタル酸、 チレングリコールの状態および冷却塔3から られた抽出液の状態を、モニター14により 視する。コンピュータは、更にこれらのサ プリングを行う。

 この実施形態においては、上記装置を用 、使用済みのポリエチレンテレフタレート 脂製品を含む被処理物の加水分解処理を行 。加水分解処理では、加熱モード処理と、 却モード処理とを順に行う。上記装置を用 てポリエチレンテレフタレート樹脂製品の 料を再生させる再生方法を図5および図1を 照して説明する。

 図5に示すように、まず、被処理物を、飽 和水蒸気圧を得るのに十分な量の水分ととも に処理チャンバー1内に投入し、処理チャン ー1を密閉する(ステップS1)。

 処理チャンバー1内に被処理物を投入した のち、投入口8を閉じ、タイマーをセットし ヒータ5に通電する(ステップS2)。そして、処 理チャンバー1内を150℃以上230℃以下の一定 度に設定し加熱しつつ加熱モード処理を開 する。加熱モード処理では処理チャンバー1 の圧力を、150℃以上230℃以下の設定加熱温 での飽和水蒸気圧に保つ。当然に昇温中も の温度での飽和水蒸気圧を保たせる。また 一定間隔(例えば2秒)ごとに1回程度攪拌羽根 10を回転駆動して処理チャンバー1内の原料を 攪拌する。水または水滴に浸漬させず、ポリ エチレンテレフタレート樹脂に飽和水蒸気が あたる積算面積を最大にさせることが特徴で ある。

 加水分解処理の加熱モード処理の時間は イマーで設定する。加熱モード処理では、 出管2の蒸気送出口7および蒸気戻り口6を閉 る。そして、処理チャンバー1内を密閉した 状態で、被処理物を加熱および加圧し、加熱 温度での飽和水蒸気圧のもとで被処理物の加 水分解を進行させる。設定時間が経過すると ブザーで報知する。また設定時間前であって も、処理条件の異常(温度異常、圧力異常)が 生したときには、ブザーで報知することも きる。

 この状態で一定時間をかけて処理チャン ー1内を加熱しながら、処理チャンバー1内 発生する飽和水蒸気の雰囲気中に被処理物 曝して加水分解反応を進行させる。加熱モ ド処理によって、ポリエチレンテレフタレ ト樹脂の加水分解反応が進行する。そして テレフタル酸の粉末が残留し、水蒸気と共 エチレングリコールおよびその蒸気が生成 れ、その蒸気が処理チャンバー1に充満する 予め定められた時間経過後、ヒータ5の電源 を遮断して加熱モード処理を完了する(ステ プS3)。

 被処理物の加水分解処理に要する時間は 被処理物および処理チャンバー1の容量にも よるが、通常は2~38時間である。つまり密閉 れた処理チャンバー1内で、150℃以上230℃以 の範囲内の温度で加熱したときには、その 定温度での飽和水蒸気圧のもとで数時間の ちに被処理物中のポリエチレンテレフタレ ト樹脂を加水分解することができる。なお 上記の加熱温度は、特に160℃以上230℃以下 することが好ましい。一般的に、高温かつ 圧状態を維持するための装置は、容積が大 くなるほどその製作が難しく、製作コスト 高くなるため、できるだけ処理温度を下げ 必要がある。一方、温度が低すぎると、反 時間がかかり過ぎてしまう。処理温度が230 を超えると、ポリエチレンテレフタレート 脂が他物質へ変性したり、高温度により他 質が合成されたりする危険性が高まり純粋 テレフタル酸やエチレングリコールの収率 落ちる可能性がある。コストを抑えつつ、 る程度の回収量を確保するには、上記のよ に加熱温度を160℃以上230℃以下の温度とす のが好適である。

 タイマーで設定した加熱モード処理の時 が経過したときには、加熱を終了し、次い 冷却モード処理に移行する(ステップS4)。冷 却モード処理では、図3に示す飽和水蒸気圧 線に従って、処理チャンバー1内の圧力と温 を制御しつつ処理チャンバー1内部を降温さ せる(ステップS5)。冷却モード処理では、送 側,戻り側の抽出管2のバルブを開き、循環ポ ンプ4を起動して処理チャンバー1内の水蒸気 抽出管2内に吸引する。そして、冷却塔3を 由させて水蒸気の一部を凝結させ、乾燥冷 後の乾燥空気は再び処理チャンバー1内に戻 。そして、処理チャンバー1内の水蒸気を冷 却塔3と処理チャンバー1間で循環させる。

 冷却モード処理においては、処理チャン ー1内には、底部32にエチレングリコールの 液、粗いメッシュ状フィルタ(網目フィルタ )を用いた第1の保持部31aの上にはポリエチレ テレフタレート樹脂に混合した骨材等の固 物が残り、その下部に設けられた細かいメ シュ状フィルタ(網目フィルタ)を用いた第2 保持部31bの上にはテレフタル酸が残る。被 理物から抽出されて蒸気中に含まれる抽出 は、冷却塔3内に送り込まれる。そして、抽 出物は、冷却塔3内で冷却され、凝結してエ レングリコール水溶液として冷却塔3内に貯 られる。

 処理チャンバー1内の水蒸気の温度および 圧力は、処理チャンバー1内の冷却が繰り返 れることによって次第に下がる。処理チャ バー1内の温度・圧力が十分に下がった(少な くとも100℃で1気圧以下)ことを確認したら、 却塔3のドレイン11を開き、フィルター15を して冷却塔3内で抽出されたエチレングリコ ル水溶液を容器V1内に回収する(ステップS6) そして、これと共にドレイン11’を開き、 ィルター15を通すことで処理チャンバー1内 溶液を容器V2に回収する。また固形物は排出 口9から回収する(ステップS7)。

 容器V1およびV2内に回収したエチレングリ コール水溶液を濾過することによって、ポリ エチレンテレフタレート樹脂製品に含まれて いる骨材、フィラーの微粒子およびポリエチ レンテレフタレート樹脂製品に付着していた 印刷インクや顔料などが除かれる。その結果 、エチレングリコール水溶液として純粋なエ チレングリコールを得ることができる。

 各容器内に回収されたエチレングリコー 水溶液では、さらに液の温度を降下させフ ルターで濾過することによって、他の固形 を分離することができる。

 こうして得られたエチレングリコールは ポリエチレンテレフタレート樹脂の重合前 アルコール類であり、ポリエチレンテレフ レート樹脂生成の原料になる。また、処理 ャンバー1から回収された固形物は、主とし てポリエチレンテレフタレート樹脂の原料と なるテレフタル酸の粉末である。これらの固 形成分についても液体成分と同様に再生利用 できる。

 なお、容器V1およびV2内に回収したエチレ ングリコール水溶液および処理チャンバー1 ら回収されたテレフタル酸の固形分を、再 ポリエチレンテレフタレート樹脂製品の原 とし、フィルターで濾過された他の固形生 物や純度の低い生成物は、例えば再びプラ チック材料にリサイクルするか土壌改良材 加工してもよい。

  (実験例1)
 図6に、ポリエチレンテレフタレートの温度 とDSC(エネルギー吸収量)との関係を示す。図6 に示すように、ポリエチレンテレフタレート のDSCグラフでは132.7℃で発熱のピークが、257. 3℃で吸熱のピークが生じる。つまり、このDS C測定に用いたポリエチレンテレフタレート 結晶化温度は132.7℃であり融点が257.3℃であ 。つまり、他の一般的ポリエチレンテレフ レートの結晶化温度と融点も、この数値に いものと考えられる。

 また、試料の融点である257℃を越えると 和蒸気圧は40気圧を越え、ポリエチレンテ フタレート樹脂は液状化し、他の混入成分 溶融化または変性、焼きつきなどを起こし 加水分解をしても、重合前生成物を高い純 で得ることは難しくなる。したがって、処 温度の範囲を、150℃以上230℃以下に設定す ことが実用に即しているものと考えられる このような考察に基づいて以下の実験を行 た。

 ポリエチレンテレフタレートの加水分解 飽和水蒸気中でその熱エネルギーのみを用 て行った。実験サンプルには、試料1として ポリエチレンテレフタレートボトルの側面を 5mmの角薄板状にカットしたもの、試料2とし ポリエチレンテレフタレートボトルの口部 厚部分を5mm角にカットしたもの、試料3とし ポリエチレンテレフタレート製繊維を用い 。加水分解反応には、硝子製反応装置(耐圧 硝子社ハイパーグラスター(TEM-V1000))を用いた 。

 まず、密閉された硝子製反応装置の内部 、水を入れたシャーレの上に、浸水しない うにステンレス網を設置した。そして、各 料の1gをステンレス網に設置し、一定時間 和水蒸気に曝露して加水分解を進行させた そして、それぞれについて、処理後の試料 よび水蒸気が液化して得られた溶液を分析 た。

 処理後の試料には、フーリエ変換赤外分 光度計(日本分光社製FT/IR-6200)で赤外分光分 (IR分析)を行った。また、水蒸気が液化して 得られた溶液については、ガスクロマトグラ フ・質量分析計(GC-MS)を用いてガスクロマト ラフィーを行った。

 その結果、150℃、4.7気圧の飽和水蒸気圧 件で各試料について加水分解を行った場合 は、すべての試料について30時間の加水分 処理で、加水分解の生成物であるテレフタ 酸がIRにて検出された。しかし、ポリエチレ ンテレフタレートの存在を示すIRピークも強 残っており、分解は進行の途中であると分 った。

 一方、160℃、6.1気圧の条件で加水分解を った場合では、16時間の加水分解処理でテ フタル酸とポリエチレンテレフタレートの ークがほぼ同じ強度で観測された。この場 には、上記の150℃、4.7気圧の条件の場合よ も加水分解が進んでいると考えられる。同 温度および圧力の条件で、試料1~3について 処理時間を22時間に伸ばすと、試料1および 料3は白化し、もろくなった。白化した試料 対して赤外分光分析を行ったところ、ポリ チレンテレフタレート樹脂は完全に分解さ テレフタル酸ピークのみとなった。試料2に ついては、38時間処理を行ったところで、試 の加水分解が進みテレフタル酸のピークが リエチレンテレフタレート樹脂のピークと 等であった。

 図7は、160℃、6.1気圧の条件で22時間加水 解を行った試料1のポリエチレンテレフタレ ート薄板のIRチャートである。図8は、テレフ タル酸の純粋試薬(和光純薬)のIRチャートで る。図7および図8に示すように両者のピーク はほとんど同じであり、ポリエチレンテレフ タレート樹脂が加水分解によりほぼ完全にテ レフタル酸に変化していることが分かる。

 一方、図9は、180℃、9.9気圧の条件で10時 加水分解を行った試料1のポリエチレンテレ フタレート薄板のIRチャートである。180℃、9 .9気圧の条件で加水分解を行った場合では、 べての試料について7時間の処理でテレフタ ル酸とポリエチレンテレフタレートのIRピー がほぼ同じ強度となった。10時間処理では 試料1および試料3の繊維状ポリエチレンテレ フタレート樹脂片が完全に分解されテレフタ ル酸が生成された。24時間処理では、試料2も 完全に分解が終了した。

 200℃、15.4気圧の条件で加水分解を行った 場合では、2時間以内で、いずれのサンプル 完全に分解されて、テレフタル酸が生じた 図10および図11は、試料3のポリエチレンテレ フタレート製繊維について分析して得たIRチ ートである。どちらのIRチャートも生成物 テレフタル酸であることを示している。

 一方、180℃、9.9気圧で14時間の加水分解 理を行った後の水蒸気が液化して得られた を、クロマトグラフィー分析した結果、ポ エチレンテレフタレートの分解生成物のエ レングリコール(1,2-エタンジオール)である とを定性分析により知ることができた。

図12、図13は、ガスクロマトグラフィーの 果を示す図である。図12は、GC/MSによりMSス クトルスキャンを行った結果を示しており 縦軸は時間(分)、横軸はカウント値を示して いる。図13は、水蒸気が液化して得られた液 クロマトグラフィーにより分析した結果を している。図13の横軸は、時間(分)、縦軸は 強度の%を示している。図14は、エチレングリ コールのみについてガスクロマトグラフィー を行ったときの結果を示す図である。図13お び図14に示すように、両者に示されるスペ トルはほとんど等しい。したがって、水蒸 が液化して得られた液にエチレングリコー が含まれており、試料の加水分解によりエ レングリコールが生成されたことが実証さ た。このように、実験によりポリエチレン レフタレート分解生成物であるテレフタル とエチレングリコールが両方検出できたた 、150℃以上200℃以下の温度での飽和水蒸気 曝露することでポリエチレンテレフタレー 樹脂の加水分解が可能であることが実証さ た。また、この結果と図6に示すポリエチレ テレフタレートの特性を考慮すると、200℃ 超える範囲についても230℃以下であれば、 分にポリエチレンテレフタレートを分解で ると考えられる。一方、230℃を超える温度 処理した場合には、ポリエチレンテレフタ ートの他物質への変性や高温度による他物 合成の危険性が高まり、純粋なテレフタル やエチレングリコールの収率が落ちること 考えられる。

 図15は、上記の実験結果をまとめた表で る。図中の記号Aは、試料の加水分解が完全 終了し、赤外分光分析によりテレフタル酸 IRピークのみが測定されたことを示してい 。図中の記号Bは、試料の加水分解が進みテ フタル酸のピークがポリエチレンテレフタ ート樹脂のピークと同等であることを示し いる。図中の記号Cは、ポリエチレンテレフ タレート樹脂のピークの中にテレフタル酸生 成のピークが認められ、分解途中であったこ とを示している。また、各記号に付随するか っこの中の数値は処理時間を示している。こ の結果から、ポリエチレンテレフタレート樹 脂を飽和水蒸気に曝露することで、従来技術 で提案されている圧力より低い圧力の中にも かかわらず150℃以上230℃以下の条件でポリエ チレンテレフタレート樹脂を加水分解できる ことが示された。さらに、ポリエチレンテレ フタレート樹脂を繊維状にすれば、160℃以上 230℃以下の条件で2時間から22時間の処理でほ ぼ完全にポリエチレンテレフタレート樹脂を 分解することができることが示された。

 このように薬品類、触媒などを一切使用 ずに、160℃から230℃以下の飽和蒸気圧のみ 、しかも短時間(2~30時間)に、ポリエチレン レフタレート樹脂をテレフタル酸とエチレ グリコールに加水分解できた意義は、学術 にも工業的にも非常に大きい。特に、単純 オートクレーブのみで効率よくポリエチレ テレフタレート樹脂を分解できる本方法は 従来法のような複雑なプラントを必要とし いことから、規模や設置場所に関する自由 が高く、幅広い業種および用途への応用が 待できる。

 以上の結果からポリエチレンテレフタレ ト樹脂について反応生成物を気体または液 成分と固体成分に分別して回収可能である とが確認された。このように、ポリエチレ テレフタレート樹脂製品の廃棄物を上記の 法で加水分解し、その反応生成物を気体ま は液状成分と固体成分に分別して回収する とができる。そして、廃棄物処理の問題、 源の有効活用の問題を解決して好ましい資 のクローズドサイクルシステムを実現でき 。

 (実施形態2)
 上記の実施形態では、加水分解処理におい 被処理物の加熱を開始するが、加水分解処 の前に被処理物を加熱する前処理を行って よい。本実施形態では、ポリエチレンテレ タレート樹脂を含む被処理物の加水分解処 に先立ち、前処理をした後、飽和水蒸気圧 もとでの加水分解処理を行う。前処理の結 、加水分解反応が促進され、140℃近傍の比 的低い飽和水蒸気圧のもとでも、ポリエチ ンテレフタレート樹脂をテレフタル酸およ エチレングリコールに分解することが可能 なる。また、同一の温度条件における、ポ エチレンテレフタレート樹脂の完全分解に する時間も大幅に短縮される。

 本実施形態において、前処理は、水分を えない環境の下でポリエチレンテレフタレ ト樹脂を、ポリエチレンテレフタレートの 晶化温度を上まわる温度を目安に0.5から5時 間ほど加熱する処理であり、加水分解処理は 、ポリエチレンテレフタレート樹脂を被処理 物として加水分解する処理である。

 本実施形態では、上記装置を用い、ポリ チレンテレフタレート樹脂を含む被処理物 例えばポリエチレンテレフタレート樹脂を む廃棄物の加水分解処理を行う。廃棄物の 生処理において最も大切なことは、再生に 要なエネルギー(コスト)を最小にするとい ことである。本実施形態によるポリエチレ テレフタレート樹脂の再生処理においては 処理温度、処理圧力、および処理時間をど ように最小化するかということが、重要な 題となる。

 前処理としてポリエチレンテレフタレー 樹脂を結晶化させた後、加水分解処理を行 ことで、処理時間を減少させることができ 。アモルファス状態のポリエチレンテレフ レートを結晶化させることによって、同一 温度条件(例えば、150℃)において、結晶化 せていないものよりも短時間で加水分解処 できることが明らかになった。

 本実施形態においては、上記装置を用い ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む被 理物として、加水分解処理に先立って前処 を行う。次いで加水分解処理の加熱モード 理と、冷却モード処理とを順に行う。上記 置を用いてポリエチレンテレフタレート樹 を含む廃棄物を処理し、その原料を再生さ る再生方法を図16および図1を参照して説明 る。

 まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂 含む廃棄物からなる被処理物を、処理チャ バー1内に投入し、投入口8を閉じる。そし 、前処理として、約30分以上の時間をかけて 処理チャンバー1内をポリエチレンテレフタ ート樹脂の結晶化点近くの温度で加熱する その後、加水分解処理に移行し、加熱モー 処理を開始する。タイマーで設定した加水 解処理の時間が経過したときには、加熱を 了し、そのままチャンバーを冷却する。冷 が完了したら、エチレングリコール水溶液 テレフタル酸の粉末を完全に分離して回収 る。

 容器V1およびV2内に回収したエチレングリ コール水溶液および処理チャンバー1から回 されたテレフタル酸の固形生成物は、再び リエチレンテレフタレート樹脂製品の原料 なる。

 上記の例では、加水分解処理用の処理チ ンバー1内でポリエチレンテレフタレート樹 脂を含む被処理物の前処理を行うが、前処理 は必ずしも加水分解処理用の処理チャンバー 内で行う必要はない。前処理用の処理チャン バーを特別に用意し、図16に示すように前処 用の処理チャンバー16内でヒータ21の加熱に より被処理物の前処理を行った後、前処理用 の処理チャンバー16内から取り出した結晶化 リエチレンテレフタレート樹脂を、加水分 処理用の処理チャンバー1内に投入し、加水 分解処理用の処理チャンバー1内で加水分解 理を行うこともできる。

 前処理用の処理チャンバー16を特別に用 することの実益を一例により説明する。例 ば前処理用の処理チャンバー16をコンビニエ ンスストア、レストランなどのポリエチレン テレフタレート樹脂廃棄物の発生地に据え付 け、ポリエチレンテレフタレート樹脂廃棄物 の発生地において、前処理を行って処理物を 減容する。このように各地に散在したポリエ チレンテレフタレート樹脂廃棄物の発生地に 据え付けられたそれぞれの処理チャンバー16 16、・・・から前処理された結晶化ポリエ レンテレフタレート樹脂を中央処理施設に 収する。そして、回収された結晶化ポリエ レンテレフタレート樹脂を中央処理施設に え付けられた大型の加水分解処理用の処理 ャンバー1内で一挙に加水分解処理を行うこ でその処理効率を高めることができる。

 上記の実施形態ではヒータ21を使用して 理チャンバーを水と一緒に直接加熱するが 大型のシステムでは、別途用意したボイラ 等を使用して加熱水蒸気を生成し、それを 理チャンバー内に投入する方が効率的であ 。また、処理施設の設置場所に応じて、電 ではなくガスまたは石油などを燃焼させた を利用することもできる。将来的には、燃 電池を利用したシステムを構築することに って、燃料電池から作り出される電気エネ ギーと廃熱の両方を利用した高エネルギー 率の処理装置を構築することが可能である




 
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