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Title:
METHOD OF EVALUATING FOAM-HOLDING PROPERTY OF FERMENTED MALT DRINK AND MARKER FOR EVALUATING FOAM-HOLDING
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/111527
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide a method of evaluating the foam-holding property of a fermented malt drink wherein the foam-holding property of the fermented malt drink is evaluated by using the concentration of yeast thioredoxin (MT) in the fermented malt drink or the raw material liquid during the fermentation of the fermented malt drink as an indication having a negative correlation to the foam-holding property of the fermented malt drink and also using the concentration of protein Z (MZ) in the fermented malt drink or the raw material liquid before the fermentation or the raw material liquid during the fermentation of the fermented malt drink as an indication having a positive correlation to the foam-holding property of the fermented malt drink. According to this evaluation method, the foam-holding property can be evaluated from the concentrations of the definite proteins in the fermented malt drink or the raw material liquid before the fermentation or the raw material liquid during the fermentation without directly measuring the foam-holding property of the fermented malt drink.

Inventors:
IIMURE TAKASHI (JP)
TAKOI KIYOSHI (JP)
ITO KAZUTOSHI (JP)
TAKEDA KAZUYOSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/054200
Publication Date:
September 18, 2008
Filing Date:
March 07, 2008
Export Citation:
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Assignee:
SAPPORO BREWERIES (JP)
IIMURE TAKASHI (JP)
TAKOI KIYOSHI (JP)
ITO KAZUTOSHI (JP)
TAKEDA KAZUYOSHI (JP)
International Classes:
G01N33/14; C12Q1/00; C12C7/00
Foreign References:
JP2002365277A2002-12-18
Other References:
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LEISEGANG R. ET AL.: "Degradation of a Foam-Promoting Barley Protein by a Proteinase from Brewing Yeast", J. INST. BREW., vol. 111, no. 2, 2005, pages 112 - 117, XP008117661
SHIMOI H.: "Seishu Kobo no Koho Keisei ni Kanyo suru Idenshi AWA1", JOURNAL OF THE BREWING SOCIETY OF JAPAN, vol. 97, no. 7, 2002, pages 474 - 480, XP008117662
KANEKO T. ET AL.: "Molecular Marker for Protein Z Content in Barley", BREED SCI., vol. 49, no. 2, 1999, pages 69 - 74, XP002997612
BAMFORTH ET AL., J. SCI. FOOD AGRIC., vol. 84, 2004, pages 1001 - 1004
VAN NIEROP ET AL., J. AGRIC. FOOD CHEM., vol. 52, 2004, pages 3120 - 3129
OSTERGAARD ET AL., PROTEOMICS, vol. 4, 2004, pages 2437 - 2447
SASS BAK-JENSEN ET AL., PROTEOMICS, vol. 4, 2004, pages 728 - 742
FINNIE; SVENSSON, PROC. 9TH INTERNATIONAL BARLEY GENETICS SYMPOSIUM, 2004, pages 431 - 436
MENA ET AL., PLANT MOL. BIOL., vol. 20, 1992, pages 451 - 458
Attorney, Agent or Firm:
HASEGAWA, Yoshiki et al. (Ginza First Bldg.10-6, Ginza 1-chom, Chuo-ku Tokyo 61, JP)
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Claims:
 麦芽発酵飲料の泡持ちの良さの判定方法であって、
 麦芽発酵飲料又は当該麦芽発酵飲料の発酵中原料液における酵母チオレドキシンの濃度(M T )を、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さと負の相関関係を有する指標として用い、
 麦芽発酵飲料又は当該麦芽発酵飲料の発酵前原料液若しくは発酵中原料液におけるプロテインZの濃度(M Z )を、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さと正の相関関係を有する指標として用いて、
麦芽発酵飲料の泡持ちの良さを判定する判定方法。
 式:a-b×M T +c×M Z [式中、aは正の数、負の数又は0であり、b及びcは正の数である。]の値を、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さと正の相関関係を有する指標として用いて、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さを判定する、請求項1記載の判定方法。
 式:a-b×M T +c×M Z においてaが0である、請求項2記載の判定方法。
 式:a-b×M T +c×M Z において、a、b及びcが、M T 及びM Z を変数としたときの、麦芽発酵飲料のNIBEM値を予測する重回帰式の偏回帰係数である、請求項2記載の判定方法。
 さらに、麦芽発酵飲料又は当該麦芽発酵飲料の発酵前原料液若しくは発酵中原料液におけるBarley dimeric alpha-amylase inhibitor(BDAI-1)の濃度(M B )を、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さと正の相関関係を有する指標として用いて、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さを判定する、請求項1記載の判定方法。
 式:a-b×M T +c×M Z +d×M B [式中、aは正の数、負の数又は0であり、b、c及びdは正の数である。]の値を、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さと正の相関関係を有する指標として用いて、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さを判定する、請求項5記載の判定方法。
 式:a-b×M T +c×M Z +d×M B においてaが0である、請求項6記載の判定方法。
 式:a-b×M T +c×M Z +d×M B において、a、b、c及びdが、M T 、M Z 及びM B を変数としたときの、麦芽発酵飲料のNIBEM値を予測する重回帰式の偏回帰係数である、請求項6記載の判定方法。
 酵母チオレドキシンからなる、麦芽発酵飲料の泡持ち判定用マーカー。
 Barley dimeric alpha-amylase inhibitor(BDAI-1)からなる、麦芽発酵飲料の泡持ち判定用マーカー。
Description:
麦芽発酵飲料の泡持ちの良さの 定方法及び泡持ち判定用マーカー

 本発明は、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さ 判定方法及び泡持ち判定用マーカーに関す 。

 ビール等の麦芽発酵飲料の泡は、薄い液 の膜に包まれた炭酸ガスの気泡の集合体で り、気が抜けたり、香味が変化したりする を防ぐ蓋の役目をするほか、香り立ちを向 させる働きがある。このため、麦芽発酵飲 の泡持ちは、麦芽発酵飲料の品質を判断す 重要な要素の1つとされ、麦芽発酵飲料の泡 持ちを良くするための研究がされている。

 従来、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さは、N IBEM値、すなわち、20℃の麦芽発酵飲料を泡注 ぎ出し機で標準グラスに注いで生じる泡の高 さが30mm降下するのに要する時間(秒)を基準と して判定されている。

 また、これまでに、大麦に含まれるLTP-1 ホルデインが麦芽発酵飲料の泡持ちに関与 るタンパク質として報告されている(非特許 献1及び2)。

 最近では、ゲノム情報を基にタンパク質を 羅的に解析するプロテオミクスを利用した 究が行われており、麦芽発酵飲料の原料と る大麦においては、麦芽特性と二次元電気 動パターンとを比較して、標的とする麦芽 性に関与するタンパク質を絞り込む試みが されている(非特許文献3~5)。
Bamforthら、2004年、J.Sci.Food Agric.、84巻、p .1001-1004 Van Nieropら、2004年、J.Agric.Food.Chem.、52巻 p.3120-3129 Ostergaardら、2004年、Proteomics、4巻、p.2437-2 447 Sass Bak-Jensenら、2004年、Proteomics、4巻、p. 728-742 Finnie及びSvensson、2004年、Proc.9th Internation al Barley Genetics Symposium、p.431-436

 しかしながら、麦芽発酵飲料の泡持ちの さの判定基準であるNIBEM値は、温度、天候 さらには人為的な要因が大きく影響するた 、異なる条件で測定されたNIBEM値を相互に比 較して泡持ちの良さを判定することは困難で ある。

 また、大麦中のLTP-1やホルデインは、麦 発酵飲料の泡持ちに関連することが報告さ ているが、NIBEM値との相関関係については明 らかとされておらず、泡持ちを判定するため の汎用性のあるマーカーとして実用化される には至っていない。

 さらに、大麦においてもプロテオミクス 究は推進されているが、麦芽発酵飲料の泡 ちに関連する新たなタンパク質は見出され いない。

 そこで、本発明の目的は、麦芽発酵飲料 泡持ちを直接測定することなく、麦芽発酵 料又はその発酵前原料液若しくは発酵中原 液における所定のタンパク質の濃度から泡 ちの良さを判定することが可能な、麦芽発 飲料の泡持ちの良さの判定方法を提供する とにある。本発明の目的はまた、麦芽発酵 料の泡持ち判定用マーカーを提供すること ある。

 上記目的を達成するため、本発明は、麦芽 酵飲料の泡持ちの良さの判定方法であって 麦芽発酵飲料又は当該麦芽発酵飲料の発酵 原料液における酵母チオレドキシンの濃度( M T )を、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さと負の相 関係を有する指標として用い、麦芽発酵飲 又は当該麦芽発酵飲料の発酵前原料液若し は発酵中原料液におけるプロテインZの濃度( M Z )を、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さと正の相 関係を有する指標として用いて、麦芽発酵 料の泡持ちの良さを判定する判定方法を提 する。

 本発明者らは、プロテオミクスをツール してビール中のタンパク質を網羅的に解析 、NIBEM値の高い泡持ちの良いビールでは、 母チオレドキシン濃度が低く、プロテインZ 度及びBarley dimeric alpha-amylase inhibitor(以下 BDAI-1)濃度が高いことを明らかにした。さら に、酵母チオレドキシン濃度及びプロテイン Z濃度とNIBEM値との重相関関係を統計的に解析 した結果、これらの濃度を麦芽発酵飲料の泡 持ちの良さの判定に利用可能であることを見 出した。

 上記判定方法では、麦芽発酵飲料等の酵 チオレドキシン濃度及びプロテインZ濃度を 測定すれば、NIBEM値を測定することなく泡持 の良さを判定することができる。また、酵 チオレドキシン濃度及びプロテインZ濃度の 測定は、温度、天候、さらには人為的な要因 の影響を排除して行うことができるため、NIB EM値の測定と比べて汎用性があり、かつ、正 な泡持ちの良さの判定を実現することがで る。

 上記判定方法では、具体的には、例えば、 :a-b×M T +c×M Z [式中、aは正の数、負の数又は0であり、b及 cは正の数である。]の値を、麦芽発酵飲料の 泡持ちの良さと正の相関関係を有する指標と して用いて、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さを 判定することが好ましく、上記値は、NIBEM値 比例関係にある値として麦芽発酵飲料の泡 ちの良さの判定に使用することができる。 の場合、aを0とすれば、より簡便な判定が 能となる。

 また、上記式:a-b×M T +c×M Z において、a、b及びcは、M T 及びM Z を変数としたときの、麦芽発酵飲料のNIBEM値 予測する重回帰式の偏回帰係数であること 好ましい。

 この場合には、NIBEM値測定用の専用装置、 準グラス等を使用してNIBEM値を直接測定する ことなく、酵母チオレドキシン濃度(M T )及びプロテインZ濃度(M Z )からNIBEM値を予測することが可能となる。ま た、この判定方法で測定した泡持ちの良さは 、既に従来法で測定されたNIBEM値と比較する ともできる。

 上記判定方法では、さらに、麦芽発酵飲料 は当該麦芽発酵飲料の発酵前原料液若しく 発酵中原料液におけるBDAI-1の濃度(M B )を、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さと正の相 関係を有する指標として用いて、麦芽発酵 料の泡持ちの良さを判定することが好まし 。

 泡持ちの良さに関する指標として、麦芽 酵飲料又は麦芽発酵飲料の発酵中原料液の 母チオレドキシン濃度、及び麦芽発酵飲料 は麦芽発酵飲料の発酵前原料液若しくは発 中原料液のプロテインZ濃度に加えて、麦芽 発酵飲料又は麦芽発酵飲料の発酵前原料液若 しくは発酵中原料液のBDAI-1濃度を用いれば、 麦芽発酵飲料の泡持ちの良さをより正確に判 定することが可能となる。

 上記判定方法では、具体的には、例えば、 :a-b×M T +c×M Z +d×M B [式中、aは正の数、負の数又は0であり、b、c びdは正の数である。]の値を、麦芽発酵飲 の泡持ちの良さと正の相関関係を有する指 として用いて、麦芽発酵飲料の泡持ちの良 を判定することが好ましく、この場合、aを0 とすれば、より簡便な判定が可能となる。

 また、上記式:a-b×M T +c×M Z +d×M B において、a、b、c及びdは、M T 、M Z 及びM B を変数としたときの、麦芽発酵飲料のNIBEM値 予測する重回帰式の偏回帰係数であること 好ましい。

 この場合には、NIBEM値測定用の専用装置、 準グラス等を使用してNIBEM値を直接測定する ことなく、酵母チオレドキシン濃度(M T )、プロテインZ濃度(M Z )及びBDAI-1濃度(M B )からより正確にNIBEM値を予測することが可能 となり、既に従来法で測定されたNIBEM値と比 することもできる。

 本発明はまた、酵母チオレドキシンから る、麦芽発酵飲料の泡持ち判定用マーカー 提供する。

 酵母チオレドキシンは、麦芽発酵飲料の 持ちに対する負の要因として捉えることが き、麦芽発酵飲料又は麦芽発酵飲料の発酵 原料液の酵母チオレドキシン濃度が高くな と麦芽発酵飲料の泡持ちが悪くなるため、 持ち判定用マーカーとして使用することが き、泡持ちの良い麦芽発酵飲料に使用する 母系統の選抜マーカーとしても使用するこ ができる。

 本発明はまた、BDAI-1からなる、麦芽発酵 料の泡持ち判定用マーカーを提供する。

 BDAI-1は、麦芽発酵飲料の泡持ちに対する の要因として捉えることができ、麦芽発酵 料又は麦芽発酵飲料の発酵前原料液若しく 発酵中原料液のBDAI-1濃度が高くなると麦芽 酵飲料の泡持ちが良くなるため、泡持ち判 用マーカーとして使用することができ、泡 ちの良い麦芽発酵飲料に使用する大麦品種 選抜マーカーとしても使用することができ 。

 本発明によれば、NIBEM値を直接測定する となく泡持ちの良さを判定することができ NIBEM値を予測することもできる。また、本発 明の泡持ちの良さの判定方法は、温度、天候 、さらには人為的な要因の影響を排除して行 うことができるため、NIBEM値の測定と比べて 用性があり、かつ、正確な泡持ちの良さの 定を実現することができる。

 さらに、本発明の泡持ち判定用マーカー 、泡持ちの良い麦芽発酵飲料に使用する酵 系統の選抜マーカー又は大麦品種の選抜マ カーとして使用することができる。

泡持ちの良いビールと泡持ちの悪いビ ルとの間でスポット濃度に有意な差が認め れ、泡持ちの良いビールで濃度が高かった ロテインZのスポットを示す二次元電気泳動 の写真である。 泡持ちの良いビールと泡持ちの悪いビ ルとの間でスポット濃度に有意な差が認め れ、泡持ちの良いビールで濃度が低かった 母チオレドキシンのスポットを示す二次元 気泳動の写真である。 泡持ちの良いビールと泡持ちの悪いビ ルとの間でスポット濃度に有意な差が認め れ、泡持ちの良いビールで濃度が高かったB DAI-1のスポットを示す二次元電気泳動の写真 ある。 NIBEM値を目的変数として、プロテインZ 度及び酵母チオレドキシン濃度を説明変数 して用いた場合の、NIBEM予測値とNIBEM実測値 との関係を示すグラフである。 NIBEM値を目的変数として、プロテインZ 度、酵母チオレドキシン濃度及びBDAI-1濃度 説明変数として用いた場合の、NIBEM予測値 NIBEM実測値との関係を示すグラフである。

 以下、本発明の好適な実施形態について 細に説明する。

 本発明の判定方法は、麦芽発酵飲料の泡持 の良さの判定方法であり、麦芽発酵飲料又 当該麦芽発酵飲料の発酵中原料液における 母チオレドキシンの濃度(M T )を、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さと負の相 関係を有する指標として用い、麦芽発酵飲 又は当該麦芽発酵飲料の発酵前原料液若し は発酵中原料液におけるプロテインZの濃度( M Z )を、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さと正の相 関係を有する指標として用いて、麦芽発酵 料の泡持ちの良さを判定することを特徴と る。

 本明細書において、「泡持ち」とは、麦 発酵飲料をグラスに注いだときに生じる泡 消えるまでに要する時間のことをいい、「 持ちが良い」とは、この時間が長いことを 味し、「泡持ちが悪い」とは、この時間が いことを意味する。また、「泡持ちの良さ とは、泡持ちが良い又は悪いといった泡持 の程度のことであって、対象とする麦芽発 飲料と泡持ちを比較するときの基準のこと ある。「泡持ちの良さの判定方法」とは、 数の麦芽発酵飲料の泡持ちを比較して泡持 の良し悪しを判定するための方法をいう。

 「麦芽発酵飲料」とは、麦芽を原料に用 て醸造した飲料のことをいい、例えば、ビ ル、発泡酒又は原料に麦芽を含有する雑酒 挙げられる。ビールとは、麦芽、ホップ及 水を原料として発酵させたもの又は麦芽、 ップ、水及び麦その他の政令で定める物品( 麦、米、とうもろこし、こうりゃん、ばれい しょ、でんぷん、糖類、又は財務省で定める 苦味料若しくは着色料)を原料として発酵さ たものであって、麦芽使用率が2/3以上のも をいい、発泡酒とは、麦芽又は麦を原料の 部とした酒類で発泡性を有する酒類であっ 、麦芽使用率が2/3未満のものをいう。

 「麦芽発酵飲料の発酵前原料液」とは、 芽から麦汁を得る途中の仕込み工程から麦 を得るまでの間の原料液若しくは煮沸前の 汁、又は、麦汁を煮沸し、引き続き冷却し 酵母を投入する前の冷麦汁ができるまでの の麦汁若しくは冷麦汁のことをいう。「麦 発酵飲料の発酵中原料液」とは、上記冷麦 に酵母を投入した後、発酵工程を経て麦芽 酵飲料となるまでの全ての発酵液のことを う。

 「酵母チオレドキシン」とは、酸化還元 素であり、酵母から麦芽発酵飲料中に溶出 れる酵母由来のタンパク質である(NCBI Access ion NP_011725)。

 麦芽発酵飲料の酵母チオレドキシン濃度(M T )は、例えば、ELISA法、ウエスタンブロッティ ング法、二次元電気泳動で分画したタンパク 質を染色して得られる染色領域(以下、スポ ト)の画像解析、プロテインチップによる解 、アフィニティークロマトグラフィーによ 定量分析、等によって測定することができ 。

 ELISA法又はウエスタンブロッティング法 使用する抗酵母チオレドキシン抗体は、発 に使用する酵母の酵母チオレドキシンを特 的に認識できる抗体であればよく、例えば 酵母チオレドキシンのアミノ酸配列を基に 成したペプチドを抗原として使用し、ウサ 、マウス等に免疫して作成することができ 。

 また、二次元電気泳動で分画したタンパ 質を染色して得られるスポットの画像解析 は、酵母チオレドキシンのスポットを画像 し、その単位面積当たりの染色度合いを数 化し(例えば、ピクセル強度)、この数値を 母チオレドキシンのスポット全体について 計することで、酵母チオレドキシンの濃度 算出することができる。

 また、「プロテインZ」とは、大麦の種子 又はビール中に存在するセリンプロテアーゼ インヒビターであり、プロテインZ4及びプロ インZ7の2種類のタンパク質を合わせたもの ことをいう。プロテインZ4(NCBI Accession CAA66 232)及びプロテインZ7(NCBI Accession CAA64599)は、 いずれも大麦セリンプロテアーゼインヒビタ ーのサブファミリーの一員であり、両者のア ミノ酸配列は約73%の相同性を有している。

 麦芽発酵飲料又は麦芽発酵飲料の発酵前原 液若しくは発酵中原料液のプロテインZ濃度 (M Z )は、例えば、ELISA法、ウエスタンブロッティ ング法、二次元電気泳動で分画したタンパク 質を染色して得られるスポットの画像解析、 プロテインチップによる解析、アフィニティ ークロマトグラフィーによる定量分析、等に よって測定することができる。

 ELISA法又はウエスタンブロッティング法 使用する抗プロテインZ抗体は、発酵に使用 る大麦のプロテインZ4及びZ7の双方を認識で きる抗体が好ましく、例えば、プロテインZ4 びZ7のアミノ酸配列の共通領域を基に合成 たペプチドを抗原として使用し、ウサギ、 ウス等に免疫して作成することができる。 ロテインZ4及びZ7の双方を認識できる抗体が 手できない場合には、プロテインZ4のみを 異的に認識する抗体でプロテインZ4を定量し 、プロテインZ7のみを特異的に認識する抗体 、プロテインZ7を定量し、これらの総和か プロテインZの濃度を見積もってもよい。

 また二次元電気泳動で分画したタンパク を染色して得られるスポットの画像解析で 、プロテインZのスポットを画像化し、その 単位面積当たりの染色度合いを数値化し(例 ば、ピクセル強度)、この数値をプロテインZ のスポット全体について合計することで、プ ロテインZの濃度を算出することができる。

 上記判定方法では、具体的には、例えば、 :a-b×M T +c×M Z [式中、aは正の数、負の数又は0であり、b及 cは正の数である。]の値を、麦芽発酵飲料の 泡持ちの良さと正の相関関係を有する指標と して用いて、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さを 判定することが好ましく、上記値は、NIBEM値 比例関係にある値として麦芽発酵飲料の泡 ちの良さの判定に使用することができる。 の場合、aを0とすれば、より簡便な判定が 能となる。

 また、上記式:a-b×M T +c×M Z において、a、b及びcは、M T 及びM Z を変数としたときの、麦芽発酵飲料のNIBEM値 予測する重回帰式の偏回帰係数であること 好ましい。

 麦芽発酵飲料のNIBEM値を予測する重回帰式 偏回帰係数は、NIBEM値を測定した複数の麦芽 発酵飲料等について、麦芽発酵飲料又は麦芽 発酵飲料の発酵中原料液の酵母チオレドキシ ン濃度(M T )、及び麦芽発酵飲料又は麦芽発酵飲料の発 前原料液若しくは発酵中原料液のプロテイ Z濃度(M Z )を測定し、各麦芽発酵飲料のNIBEM値を目的変 数とし、上記酵母チオレドキシン濃度(M T )及びプロテインZ濃度(M Z )を説明変数として重回帰分析を行えば求め ことができる。

 また、上記判定方法は、さらに、麦芽発酵 料又は麦芽発酵飲料の発酵前原料液若しく 発酵中原料液のBDAI-1濃度(M B )を、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さと正の相 関係を有する指標として用いて、麦芽発酵 料の泡持ちの良さを判定することが好まし 。

 「BDAI-1」とは、Barley dimeric alpha-amylase in hibitorのことであり(NCBI Accession CAA08836)、大 由来のα-amylaseを阻害しないが、昆虫由来の -amylaseを阻害することが知られている(Menaら 1992年、Plant Mol.Biol.、20巻、p.451-458)。

 麦芽発酵飲料のBDAI-1濃度(M B )は、例えば、ELISA法、ウエスタンブロッティ ング法、二次元電気泳動で分画したタンパク 質を染色して得られるスポットの画像解析、 プロテインチップによる解析、アフィニティ ークロマトグラフィーによる定量分析、等に よって測定することができる。

 ELISA法又はウエスタンブロッティング法 使用する抗BDAI-1抗体は、発酵に使用する麦 又は大麦のBDAI-1を特異的に認識できる抗体 あればよく、例えば、BDAI-1のアミノ酸配列 基に合成したペプチドを抗原として使用し ウサギ、マウス等に免疫して作成すること できる。

 また、二次元電気泳動で分画したタンパ 質を染色して得られるスポットの画像解析 は、BDAI-1のスポットを画像化し、その単位 積当たりの染色度合いを数値化し(例えば、 ピクセル強度)、この数値をBDAI-1のスポット 体について合計することで、BDAI-1の濃度を 出することができる。

 上記判定方法では、具体的には、例えば、 :a-b×M T +c×M Z +d×M B [式中、aは正の数、負の数又は0であり、b、c びdは正の数である。]の値を、麦芽発酵飲 の泡持ちの良さと正の相関関係を有する指 として用いて、麦芽発酵飲料の泡持ちの良 を判定することが好ましく、この場合、aを0 とすれば、より簡便な判定が可能となる。

 また、上記式:a-b×M T +c×M Z +d×M B において、a、b、c及びdは、M T 、M Z 及びM B を変数としたときの、麦芽発酵飲料のNIBEM値 予測する重回帰式の偏回帰係数であること 好ましい。

 麦芽発酵飲料のNIBEM値を予測する重回帰式 偏回帰係数は、NIBEM値を測定した複数の麦芽 発酵飲料について、麦芽発酵飲料又は麦芽発 酵飲料の発酵中原料液の酵母チオレドキシン 濃度(M T )、並びに麦芽発酵飲料又は麦芽発酵飲料の 酵前原料液若しくは発酵中原料液のプロテ ンZ濃度(M Z )及びBDAI-1濃度(M B )を測定し、各麦芽発酵飲料のNIBEM値を目的変 数とし、上記酵母チオレドキシン濃度(M T )、プロテインZ濃度(M Z )及びBDAI-1濃度(M B )を説明変数として重回帰分析を行えば求め ことができる。

 また、本発明の泡持ち判定用マーカーは 酵母チオレドキシン又はBDAI-1からなること 特徴とする。

 「泡持ち判定用マーカー」とは、麦芽発 飲料又は麦芽発酵飲料の発酵前原料液若し は発酵中原料液における濃度がNIBEM値と相 性を示し、麦芽発酵飲料の泡持ちの良さを 定又は予測するための指標となるタンパク のことをいう。なお、これまで、酵母チオ ドキシン及びBDAI-1が、麦芽発酵飲料の泡持 の良さの判定又は予測に利用可能であるこ は全く知られていなかった。

 酵母チオレドキシンは、麦芽発酵飲料の 持ちに対する負の要因として捉えることが き、麦芽発酵飲料又は麦芽発酵飲料の発酵 原料液の酵母チオレドキシン濃度が高くな と麦芽発酵飲料の泡持ちが悪くなるため、 持ち判定用マーカーとして使用することが き、泡持ちの良い麦芽発酵飲料に使用する 母系統の選抜マーカーとしても使用するこ ができる。一方、BDAI-1は、麦芽発酵飲料の 持ちに対する正の要因として捉えることが き、麦芽発酵飲料又は麦芽発酵飲料の発酵 原料液若しくは発酵中原料液のBDAI-1濃度が くなると麦芽発酵飲料の泡持ちが良くなる め、泡持ち判定用マーカーとして使用する とができ、泡持ちの良い麦芽発酵飲料に使 する大麦品種の選抜マーカーとしても使用 ることができる。

 酵母チオレドキシンは、発酵に使用した 母から麦芽発酵飲料中に溶出され、例えば ELISA法、ウエスタンブロッティング法、二 元電気泳動で分画したタンパク質を染色し 得られるスポットの画像解析、プロテイン ップによる解析、アフィニティークロマト ラフィーによる定量分析、等によって測定 ることができる。

 また、BDAI-1は、麦芽又は大麦から麦芽発 飲料又は麦芽発酵飲料の発酵前原料液若し は発酵中原料液中に溶出され、例えば、ELIS A法、ウエスタンブロッティング法、二次元 気泳動で分画したタンパク質を染色して得 れるスポットの画像解析、プロテインチッ による解析、アフィニティークロマトグラ ィーによる定量分析、等によって測定する とができる。

 以下、実施例及び比較例に基づいて本発 をより具体的に説明する。但し、本発明は 以下の実施例に限定されるものではない。

〔実施例1:ビールの泡持ちに影響を与えるタ パク質の同定〕
 泡持ちの良いビールに含まれるタンパク質 び泡持ちの悪いビールに含まれるタンパク を各々二次元電気泳動で分画し、ゲル中の ンパク質を銀染色することにより検出され 各染色領域(以下、スポット)の画像解析を い、泡持ちの良いビールと泡持ちの悪いビ ルとの間で含有濃度に有意な差が認められ タンパク質を質量分析により同定した。以 に詳細に記載する。

 まず、泡持ちの良いビール(NIBEM値275~321) び泡持ちの悪いビール(NIBEM値238~254)を各々脱 気し、Bradford法でタンパク質濃度を定量後、 のうち3mLをMiliQ水で平衡化したPD-10カラム( マシャムバイオサイエンス社)にアプライし 4mLのMiliQ水で溶出することにより脱塩した こうして得られた脱塩後の各ビールサンプ を、再度Bradford法でタンパク質濃度を定量し 、全量を各々凍結乾燥した。

 その後、凍結乾燥した各ビールサンプル 、ローディングバッファー(8M尿素、2% CHAPS 0.28% DTT)に溶解し、各ビールサンプル中に 有されるタンパク質(100μg)を二次元電気泳動 で分画した。二次元電気泳動は、Multiphor II ステム(アマシャムバイオサイエンス社)を用 いて、同社のプロトコルに従って行った。

 二次元電気泳動後には、分画されたゲル のタンパク質をアマシャムバイオサイエン 社のSilver Staining Kit,Proteinを用いて銀染色 た。但し、泡持ちの良いビールと泡持ちの いビールとの間で含有濃度に大きな差が認 られたスポットを質量解析する際には、和 社の銀染色MSキットを用いて銀染色した。

 銀染色後のゲルは、Image Master 2-D platinum (アマシャムバイオサイエンス社)で画像解析 た。各スポットのタンパク質濃度(以下、ス ポット濃度)は、まず、デンシトメーターを いて各スポットの染色の程度をvol%を単位と て定量し、この値にBradford法で定量した脱 前のビールサンプルのタンパク質濃度を乗 て算出した。

 画像解析によって、泡持ちの良いビール 泡持ちの悪いビールとの間でスポット濃度 大きな差が認められたスポットについては 質量分析を行うためにゲルからゲルスポッ を切り出し、銀染色MSキット(和光社)に添付 されている脱色液に浸漬することにより脱色 した。脱色後のゲルスポットには、Trypsinを むトリスバッファー(pH8.0)を加え、35℃で20時 間、酵素処理した。その後、ゲルから消化後 のタンパク質を溶出し、脱塩後に自然乾燥し 、MALDI TOF-MS(Voyager-DE STR;Applied Biosystems社)で 量分析した。タンパク質データベースは、N CBInr及びBaEST020808を使用し、MS-Fit Searchで検索 した。

 但し、酵母チオレドキンの質量分析は、 色後のゲルスポットにLysyl endopeptidaseを含 トリスバッファー(pH8.0)を加え、35℃、3時間 酵素処理を行い、引き続き、Trypsinを加え、 さらに35℃、20時間の酵素処理を行い、その 、サンプル溶液をLC-MS/MS(MAGIC 2002、Michrom Bio resources,Inc,USA)で分析することによって行った 。

 その結果、泡持ちの良いビールと泡持ち 悪いビールとの間でスポット濃度に差が認 られたタンパク質を同定できたが、実施例2 以降で示す重回帰分析において、NIBEM値との 関関係に寄与したタンパク質は、プロテイ Z、酵母チオレドキシン及びBDAI-1の3つのみ あった。

 図1は、泡持ちの良いビールと泡持ちの悪 いビールとの間でスポット濃度に有意な差が 認められ、泡持ちの良いビールで濃度が高か ったプロテインZのスポットを示す二次元電 泳動の写真である。図2は、泡持ちの良いビ ルと泡持ちの悪いビールとの間でスポット 度に有意な差が認められ、泡持ちの良いビ ルで濃度が低かった酵母チオレドキシンの ポットを示す二次元電気泳動の写真である 図3は、泡持ちの良いビールと泡持ちの悪い ビールとの間でスポット濃度に有意な差が認 められ、泡持ちの良いビールで濃度が高かっ たBDAI-1のスポットを示す二次元電気泳動の写 真である。

〔実施例2:NIBEM値を目的変数とし、泡持ちの いビールと泡持ちの悪いビールとの間でス ット濃度に有意な差が認められたタンパク を説明変数として用いた場合の重回帰分析
 市販されている10種類の麦芽発酵飲料(ビー 、発泡酒)のNIBEM値、及び実施例1で同定した タンパク質の各麦芽発酵飲料中の濃度を測定 し、各麦芽発酵飲料のNIBEM値と各タンパク質 濃度との間の単回帰分析を行ったところ有 な相関関係は認められなかった。

 そこで、上記タンパク質の濃度のうちの2 つの濃度を説明変数として用いた場合の重回 帰分析を行った。

 NIBEM値は、HAFFMANS社のNIBEM-T装置、INPACK2000 びNIBEM値測定用の標準グラスを用いて測定 た。具体的には、上記の麦芽発酵飲料を各 20℃の状態にし、泡注ぎ出し機により炭酸ガ スを用いて標準グラスに注ぎ出し、生じた泡 の高さの降下をNIBEM-T装置で追尾し、NIBEM値を 測定した。NIBEM値は、泡の高さが30mm降下する のに要した時間(秒)とした。

 各タンパク質の濃度は、実施例1で記載し たように、10種類の麦芽発酵飲料に含有され タンパク質を二次元電気泳動で分画し、銀 色後のゲルをImage Master 2-D platinumで画像解 析し、目的とするタンパク質のスポットの染 色の程度(単位はvol%)をデンシトメーターで測 定し、この値にBradford法で定量した各麦芽発 飲料のタンパク質濃度を乗じて算出した。

 その結果、NIBEM値を目的変数とし、プロテ ンZ濃度及び酵母チオレドキシン濃度を説明 数とした場合にのみ、危険率1%で有意な相 関係が認められた。重回帰式は、NIBEM値=229.9 3+(-0.9238×酵母チオレドキシン濃度)+(0.0040×プ テインZ濃度)であり、標準化した重回帰式 、NIBEM値=(-0.689×酵母チオレドキシン濃度)+(0. 641×プロテインZ濃度)であった(補正R 2 =0.709)。

 図4は、NIBEM値を目的変数として、プロテ ンZ濃度及び酵母チオレドキシン濃度を説明 変数として用いた場合の、NIBEM予測値とNIBEM 測値との関係を示すグラフである。

 以上の結果より、プロテインZ及び酵母チ オレドキシンは、麦芽発酵飲料の泡持ち判定 用マーカーとして使用することができ、プロ テインZを、泡持ちの良さと正の相関関係を する指標として、また、酵母チオレドキシ を、泡持ちの良さと負の相関関係を有する 標として用いて、麦芽発酵飲料の泡持ちの さを判定することができることが明らかと った。

 次に、NIBEM値を目的変数とし、プロテイ Z濃度及び酵母チオレドキシン濃度に、実施 1で同定したタンパク質の濃度を説明変数と してさらに加えて、重回帰分析を行った。

 その結果、NIBEM値を目的変数とし、プロテ ンZ濃度、酵母チオレドキシン濃度及びBDAI-1 度を説明変数とした場合にのみ、危険率1% 有意な相関関係が認められた。重回帰式は NIBEM値=196.74+(-0.9299×酵母チオレドキシン濃度 )+(0.0057×プロテインZ濃度)+(0.1169×BDAI-1濃度)で あり、標準化した重回帰式は、NIBEM値=(-0.694× 酵母チオレドキシン濃度)+(0.895×プロテインZ 度)+(0.441×BDAI-1濃度)であった(補正R 2 =0.856)。

 図5は、NIBEM値を目的変数として、プロテ ンZ濃度、酵母チオレドキシン濃度及びBDAI-1 濃度を説明変数として用いた場合の、NIBEM予 値とNIBEM実測値との関係を示すグラフであ 。

 以上の結果より、BDAI-1も麦芽発酵飲料の 持ち判定用マーカーとして使用することが き、酵母チオレドキシン濃度を、泡持ちの さと負の相関関係を有する指標として、ま 、プロテインZ濃度及びBDAI-1濃度を、泡持ち の良さと正の相関関係を有する指標として用 いて、泡持ちの良さを判定することができる ことが明らかとなった。