石川 順三 (〒10 京都府京都市西京区京都大学桂 国立大学法人京都大学大学院工学研究科内 Kyoto, 6158510, JP)
TSUJI, Hiroshi (KYOTO UNIVERSITY Kyoto Daigaku Katsura, Nishikyo-k, Kyoto-shiKyoto 10, 6158510, JP)
辻 博司 (〒10 京都府京都市西京区京都大学桂 国立大学法人京都大学大学院工学研究科内 Kyoto, 6158510, JP)
GOTOH, Yasuhito (KYOTO UNIVERSITY Kyoto Daigaku Katsura, Nishikyo-k, Kyoto-shiKyoto 10, 6158510, JP)
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JAPAN SCIENCE AND TECHNOLOGY AGENCY (1-8 Honcho 4-chome, Kawaguchi-shi Saitama, 12, 3320012, JP)
独立行政法人科学技術振興機構 (〒12 埼玉県川口市本町4丁目1番8号 Saitama, 3320012, JP)
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ISHIKAWA, Junzo (KYOTO UNIVERSITY Kyoto Daigaku Katsura, Nishikyo-k, Kyoto-shiKyoto 10, 6158510, JP)
石川 順三 (〒10 京都府京都市西京区京都大学桂 国立大学法人京都大学大学院工学研究科内 Kyoto, 6158510, JP)
| 先端が尖っていてシリコンを主成分とするエミッタ(18)を有している電界放出型電子源の製造方法において、 前記エミッタ(18)の形成後に少なくとも前記エミッタ(18)の先端部に炭素イオン(40)を注入するイオン注入工程を備えており、 かつ、前記イオン注入工程において、前記炭素イオン(40)のエネルギー(単位はkeV)を一方の軸、前記炭素イオン(40)の注入量(単位は×10 17 ions/cm 2 )を他方の軸とする直交座標上の点P 1 ~P 6 の座標を(エネルギー,注入量)でそれぞれ表すと、P 1 (5,0.8)、P 2 (5,1.5)、P 3 (10,2.5)、P 4 (15,3.0)、P 5 (15,2.0)およびP 6 (10,1.6)の6点間を直線で結んで囲まれる範囲内にある条件で炭素イオン(40)を注入することを特徴とする電界放出型電子源の製造方法。 |
| 前記イオン注入工程における炭素イオン(40)が、負の炭素イオンである請求の範囲第1項に記載の電界放出型電子源の製造方法。 |
| 先端が尖っていてシリコンを主成分とするエミッタ(18)を有している電界放出型電子源の製造方法において、 前記エミッタ(18)の形成後に少なくとも前記エミッタ(18)の先端部に炭素イオン(40)を注入するイオン注入工程を備えており、 かつ、前記イオン注入工程において、前記炭素イオン(40)のエネルギー(単位はkeV)を一方の軸、前記炭素イオン(40)の注入量(単位は×10 17 ions/cm 2 )を他方の軸とする直交座標上の点P 1 ~P 6 の座標を(エネルギー,注入量)でそれぞれ表すと、P 1 (5,0.8)、P 2 (5,1.5)、P 3 (10,2.5)、P 4 (12,2.7)、P 5 (12,1.7)およびP 6 (10,1.6)の6点間を直線で結んで囲まれる範囲内にある条件で炭素イオン(40)を注入することを特徴とする電界放出型電子源の製造方法。 |
| 前記イオン注入工程における炭素イオン(40)が、負の炭素イオンである請求の範囲第3項に記載の電界放出型電子源の製造方法。 |
| 先端が尖っていてシリコンを主成分とするエミッタ(18)を有している電界放出型電子源の製造方法において、 前記エミッタ(18)の形成後に少なくとも前記エミッタ(18)の先端部に炭素イオン(40)を注入するイオン注入工程と、 前記イオン注入工程後に、炭素を含むガスを用いて発生させたプラズマを少なくとも前記エミッタ(18)の先端部に照射するプラズマ処理工程とを備えており、 かつ、前記イオン注入工程において、前記炭素イオン(40)のエネルギー(単位はkeV)を一方の軸、前記炭素イオン(40)の注入量(単位は×10 17 ions/cm 2 )を他方の軸とする直交座標上の点P 1 ~P 6 の座標を(エネルギー,注入量)でそれぞれ表すと、P 1 (5,0.8)、P 2 (5,1.5)、P 3 (10,2.5)、P 4 (15,3.0)、P 5 (15,1.5)およびP 6 (10,1.0)の6点間を直線で結んで囲まれる範囲内にある条件で炭素イオン(40)を注入することを特徴とする電界放出型電子源の製造方法。 |
| 前記イオン注入工程における炭素イオン(40)が、負の炭素イオンである請求の範囲第5項に記載の電界放出型電子源の製造方法。 |
| 先端が尖っていてシリコンを主成分とするエミッタ(18)を有している電界放出型電子源の製造方法において、 前記エミッタ(18)の形成後に少なくとも前記エミッタ(18)の先端部に炭素イオン(40)を注入するイオン注入工程と、 前記イオン注入工程後に、炭素を含むガスを用いて発生させたプラズマを少なくとも前記エミッタ(18)の先端部に照射するプラズマ処理工程とを備えており、 かつ、前記イオン注入工程において、前記炭素イオン(40)のエネルギー(単位はkeV)を一方の軸、前記炭素イオン(40)の注入量(単位は×10 17 ions/cm 2 )を他方の軸とする直交座標上の点P 1 ~P 6 の座標を(エネルギー,注入量)でそれぞれ表すと、P 1 (5,0.8)、P 2 (5,1.5)、P 3 (10,2.5)、P 4 (12,2.7)、P 5 (12,1.2)およびP 6 (10,1.0)の6点間を直線で結んで囲まれる範囲内にある条件で炭素イオン(40)を注入することを特徴とする電界放出型電子源の製造方法。 |
| 前記イオン注入工程における炭素イオン(40)が、負の炭素イオンである請求の範囲第7項に記載の電界放出型電子源の製造方法。 |
この発明は、例えば、イオンビームの空 電荷中和装置、フィールドエミッションデ スプレイ、光源(フィールドエミッションラ ンプ)、高い耐環境特性を要求される環境下 使用される電子源等に用いられる電界放出 電子源の製造方法に関する。
この種の電界放出型電子源の製造方法の 例が特開平5-242796号公報(特許文献1)に記載 れている。
この従来の製造方法は、電界放出型電子源
構成するエミッタの表面に炭素イオンを注
した後、300℃~1200℃の温度で数時間アニー
することにより、エミッタの表面を仕事関
の低いSiC層に変えるものである。これによ
て、良好な電子放出特性を得ることができ
とされている。但し、炭素イオンのエネル
ー、注入量等の注入条件は、特開平5-242796号
公報には何も記載されていない。
上記従来の製造方法においては、良好な 子放出特性を得るために、エミッタ表面に 素イオンを注入した後に、300℃~1200℃の温 で数時間アニールするアニール処理が必要 あり、このアニール処理の分、工程数が多 なり、製造に時間およびコスト等が多くか るという課題がある。
そこでこの発明は、アニール処理を要す ことなく、電子放出特性が良好でありかつ 寿命の電界放出型電子源を得ることができ 製造方法を提供することを主たる目的とし いる。
この発明に係る製造方法は、1つの局面では 、先端が尖っていてシリコンを主成分とする エミッタを有している電界放出型電子源の製 造方法において、エミッタの形成後に少なく ともエミッタの先端部に炭素イオンを注入す るイオン注入工程を備えており、かつ、イオ ン注入工程において、炭素イオンのエネルギ ー(単位はkeV)を一方の軸、炭素イオンの注入 (単位は×10 17 ions/cm 2 )を他方の軸とする直交座標上の点P 1 ~P 6 の座標を(エネルギー,注入量)でそれぞれ表す と、P 1 (5,0.8)、P 2 (5,1.5)、P 3 (10,2.5)、P 4 (15,3.0)、P 5 (15,2.0)およびP 6 (10,1.6)の6点間を直線で結んで囲まれる範囲内 (直線上を含む。以下同様)にある条件で炭素 オンを注入することを特徴としている。
上記製造方法によれば、イオン注入工程 にアニール処理を行わなくても、電子放出 性が良好でありかつ長寿命の電界放出型電 源が得られることを、実験およびシミュレ ションで確認することができた。
アニール処理を行わなくても良いのは、 記注入条件でエミッタの表層部に注入され 炭素原子が、エミッタを構成しているシリ ン原子の周辺に介在することによって、シ コンを主成分とするエミッタが半導体とい よりはむしろ金属的な電気伝導を持つ状態 なり、そのために、アニール処理がなくて 良好な電子放出特性を発現できたものと考 られる。
電子放出の寿命を延ばすことができたの 、上記注入条件で注入した炭素イオンによ エミッタの表層部内での炭素原子濃度分布 、炭素原子がエミッタを構成するシリコン 子と結合してシリコンの酸化を抑制するの 効果的な分布になったからである。
他の局面では、イオン注入工程において、P 1 (5,0.8)、P 2 (5,1.5)、P 3 (10,2.5)、P 4 (12,2.7)、P 5 (12,1.7)およびP 6 (10,1.6)の6点間を直線で結んで囲まれる範囲内 にある条件で炭素イオンを注入しても良い。
この発明に係る製造方法は、さらに他の局 では、先端が尖っていてシリコンを主成分 するエミッタを有している電界放出型電子 の製造方法において、エミッタの形成後に なくともエミッタの先端部に炭素イオンを 入するイオン注入工程と、イオン注入工程 に、炭素を含むガスを用いて発生させたプ ズマを少なくともエミッタの先端部に照射 るプラズマ処理工程とを備えており、かつ イオン注入工程において、炭素イオンのエ ルギー(単位はkeV)を一方の軸、炭素イオン 注入量(単位は×10 17 ions/cm 2 )を他方の軸とする直交座標上の点P 1 ~P 6 の座標を(エネルギー,注入量)でそれぞれ表す と、P 1 (5,0.8)、P 2 (5,1.5)、P 3 (10,2.5)、P 4 (15,3.0)、P 5 (15,1.5)およびP 6 (10,1.0)の6点間を直線で結んで囲まれる範囲内 にある条件で炭素イオンを注入することを特 徴としている。
上記製造方法によれば、イオン注入工程 にアニール処理を行わなくても、電子放出 性が良好でありかつより長寿命の電界放出 電子源が得られることを、実験およびシミ レーションで確認することができた。
プラズマ処理工程を付加することによっ 電子放出の寿命が更に延びるのは、エミッ の表面に炭素系の被膜が形成され、これが ミッタ表面の酸化を抑制する働きをするか である。
さらに他の局面では、イオン注入工程にお て、P 1 (5,0.8)、P 2 (5,1.5)、P 3 (10,2.5)、P 4 (12,2.7)、P 5 (12,1.2)およびP 6 (10,1.0)の6点間を直線で結んで囲まれる範囲内 にある条件で炭素イオンを注入しても良い。
イオン注入工程における炭素イオンとし 、負の炭素イオンを用いても良い。
本発明の1つの局面によれば、イオン注入 工程後にアニール処理を行わなくても、電子 放出特性が良好でありかつ長寿命の電界放出 型電子源を得ることができる。その結果、ア ニール工程を省いて、工程数の削減、製造コ ストの低減等を図ることが可能になる。
本発明の他の局面によれば、1つの局面の 発明の効果と同様の効果に加えて次の更なる 効果を奏する。即ち、1つの局面の発明に比 て、炭素イオンのエネルギーの上限値を小 くしているので、イオン注入による炭素原 がエミッタ内部の奥深くに入り過ぎるのを 制して、エミッタの表層部内での炭素原子 度分布を、より確実に、エミッタを構成す シリコンの酸化を抑制するのに効果的な分 にすることができる。
本発明のさらに他の局面によれば、1つの 局面の発明の効果と同様の効果に加えて次の 更なる効果を奏する。即ち、プラズマ処理工 程を付加することによって、エミッタの表面 に炭素系の被膜が形成され、これがエミッタ 表面の酸化を抑制する働きをするので、電子 放出の寿命を更に延ばすことができる。即ち 、より長寿命の電界放出型電子源を得ること ができる。
本発明のさらに他の局面によれば、上記 明の効果と同様の効果に加えて次の更なる 果を奏する。即ち、上記発明に比べて、炭 イオンのエネルギーの上限値を小さくして るので、イオン注入による炭素原子がエミ タ内部の奥深くに入り過ぎるのを抑制して エミッタの表層部内での炭素原子濃度分布 、より確実に、エミッタを構成するシリコ の酸化を抑制するのに効果的な分布にする とができる。
炭素イオンを負の炭素イオンとした場合 は、エミッタへのイオン注入と同時に、例 ばゲート電極のような電気的に浮いた電極 イオン注入を行っても、当該電極の帯電を 正イオンを注入する場合に比べて小さく抑 することができる。従って、当該電極に特 リード線を接続して帯電を抑制することを なくて済むので、製法を簡素化することが きる。また、炭素イオンを作る場合は、正 オンよりも負イオンの方が、簡単にかつ大 に作ることができるので、上記のような注 量を実現することが容易になる。
10 電界放出型電子源、16 カソード基板 18 エミッタ、20 絶縁層、22 ゲート電極、28 第2ゲート電極、40 炭素イオン、42 プラズ 。
図1は、電界放出型電子源の一例を拡大し て示す概略平面図である。図2は、図1に示す 界放出型電子源の一つのエミッタ周りを拡 して示す断面図である。
この電界放出型電子源10は、電界放出型 子源アレイ(略してFEA)とも呼ばれるものであ り、多数の(例えば1000~5000個程度の)エミッタ1 8を有している。但し、エミッタ18の数は、こ れに限られるものではなく、1個以上で任意 ある。エミッタ18の配置の仕方も任意である 。
この電界放出型電子源10は、図2にその一 分を拡大して示すように、導電性のカソー 基板16と、このカソード基板16の表面に形成 されていて先端が尖った形状をした多数の微 小なエミッタ18と、この各エミッタ18の先端 近を微小な間隙26をあけて取り囲む、各エミ ッタ18に共通のゲート電極(引出し電極とも呼 ばれる)22と、このゲート電極22とカソード基 16との間に設けられていて両者間を絶縁す 絶縁層20とを備えている。カソード基板16と エミッタ18とは互いに電気的に導通してい 。
カソード基板16は、例えばシリコンを主 分とする材料から成る。即ち、カソード基 16は、シリコン基板でも良いし、シリコン基 板にホウ素(B)、リン(P)、ヒ素(As )、アンチモ ン(Sb )等の不純物が含まれている基板でも良 い。カソード基板16は、その他の導電性材料 例えば金属から成るものでも良い。また、 縁性の基板の表面に、例えばシリコンを主 分とする導電性膜(層)を形成して表層部の が導電性を有する構造のものでも良い。
各エミッタ18は、先端が鋭く尖った形状 している。換言すれば、先端ほど尖った形 をしている。図2に示した例は円錐状をして るが、それ以外に角錐状等の形状をしてい も良い。
各エミッタ18は、シリコンを主成分とす 材料から成る。例えば、シリコンのみから っていても良いし、シリコンにホウ素、リ 、ヒ素、アンチモン等の不純物が含まれて ても良い。各エミッタ18は、図2に示す例の うに、カソード基板16の表面に、当該カソー ド基板16と一体的に形成しても良いし、別体 形成しても良い。いずれにしても、カソー 基板16と各エミッタ18とは電気的に導通状態 にある。
ゲート電極22は、各エミッタ18に対応する 位置に微小な小孔24を有している。各小孔24 、例えば円形をしており、この各小孔24の中 心部に各エミッタ18の先端付近が、小孔24の 壁との間に微小な間隙26をあけて位置してい る。
絶縁層20は、例えば二酸化シリコン(SiO 2 )から成るが、その他の絶縁材から成るもの も良い。
上記カソード基板16(換言すれば、当該カ ード基板16と導通状態にある各エミッタ18) ゲート電極22との間に、ゲート電極22を正極 にして(換言すれば各エミッタ18を負極側に て)例えば50V~100V程度の直流電圧を印加する 、各エミッタ18の先端部に電界が集中し、 界放射(電界放出)現象により、各エミッタ18 先端部から電子12が放出される。
上記のような電界放出型電子源10の製造 法の一例を図3、図4A~図4Cを参照して説明す 。
まず、カソード基板16を準備する(基板準備
程50)。その状態を図4Aに示す。
次に、上記カソード基板16にエッチングプ
セスを施して、所定箇所に上記エミッタ18を
形成し(エミッタ形成工程51)、かつ、薄膜形
プロセスによって、所定領域に上記絶縁層20
を形成し(絶縁層形成工程52)、更に、薄膜形
プロセスによって、所定領域に上記ゲート
極22を形成する(ゲート電極形成工程53)。ゲ
ト電極形成工程53後の状態を図4Bに示す。
次に、各エミッタ18の先端部を含む領域 、炭素イオン40を注入する(イオン注入工程54 )。その状態を図4Cに示す。
上記例では、複数のエミッタ18、絶縁層20 およびゲート電極22の形成後に、複数のエミ タ18の先端部を含む広い領域に炭素イオン40 を注入するようにしているけれども、必ずし もそのようにしなくても良い。要は、各エミ ッタ18の形成後に少なくとも各エミッタ18の 端部に炭素イオン40を注入すれば良い。電子 12の電界放出に寄与するのは各エミッタ18の 端部であり、少なくともその先端部を改質 ることができれば良いからである。
また、例えば、絶縁層20やゲート電極22を 形成する前に、各エミッタ18の先端部に炭素 オン40を注入しても良い。その場合、各エ ッタ18の先端部だけに炭素イオン40を注入し も良いし、各エミッタ18の先端部を含む領 に炭素イオン40を注入しても良い。
炭素イオン40を注入する上記イオン注入 程54においては、炭素イオン40のエネルギー よび注入量が重要であることが実験および ミュレーションによって確かめられた。こ を以下に詳述する。
実験結果の一例を図5に示す。これは、図1 図2に示した構成をしていてカソード基板16 よびエミッタ18がシリコンを主成分としてお り、かつ1024個のエミッタ18を有しているもの に、注入量を変えて、負の炭素イオン40を注 して得られた各電界放出型電子源10から放 される電子電流(放出電流)の時間変化を測定 したものである。イオン注入後にアニールは 行っていない。放出電流は、コレクタ電極に 流れる電流で測定した。雰囲気は、酸素含有 雰囲気を実現するために、酸素ガスを1×10 -6 Pa導入した状態で測定した。注入炭素イオン4 0のエネルギーは5keVとした。
図5中の線A~Cは、それぞれ、炭素イオン40の 入量が、(A)1×10 16 ions/cm 2 、(B)3×10 16 ions/cm 2 、(C)1×10 17 ions/cm 2 の場合のものである。線Dは、比較例として (D)炭素イオン注入を行わなかった場合のも である。初期電流はいずれも15μA程度である 。
炭素イオン注入を行わない(D)の場合は、 子は放出されるものの、放出電流は時間経 に伴って急激に低下しており、寿命が非常 短いことが分かる。放出電流が半減するま の時間は5時間程度である。これに対して、 (A)の注入量では、放出電流が半減するまでの 時間は12時間程度であり、(B)の注入量では20 間程度であり、(C)の注入量では50時間程度で ある。いずれも(D)の比較例に比べて寿命が延 びており、かつ注入量が増えるほど寿命が延 びていることが分かる。
上記実験結果等に基づいて、注入炭素イ ン40のエネルギーおよび注入量の好ましい 囲をシミュレーションによって求めた。
イオン注入による炭素原子がエミッタ18 構成するシリコン原子と結合して、シリコ の酸化を抑制することで電子放出特性の悪 を防ぐためには、エミッタ18の表層部内での 炭素原子の濃度分布は、(1)表面から深さ40nm 度までの深さの範囲内において、(2)炭素原 濃度の最低値が20%、(3)炭素原子濃度のピー 値が40%~60%の範囲内となるような分布が好ま いことが実験によって明らかになっている
これを満たすイオン注入条件の一例を図6に 示す。この図は、横軸を炭素イオンのエネル ギー[keV]、縦軸を炭素イオンの注入量[×10 17 ions/cm 2 ]とする直交座標であり、この直交座標上の P 1 ~P 6 の座標を(エネルギー,注入量)でそれぞれ表す ことにする(図7、図10、図11も同様)。
炭素イオン40は、点P 1
(5,0.8)、P 2
(5,1.5)、P 3
(10,2.5
)、P 4
(15,3.0)、P 5
(15,2.0)およびP 6
(10,1.6)の6点間を直線a~fで結んで囲まれる範囲
R 1
内(直線上を含む。以下同様)にある条件で注
することが好ましい。その理由は次のとお
である。なお、上記範囲R 1
を図6中にハッチングを付して示している(以
に述べる範囲R 2
~R 4
も同様)。
炭素イオン40のエネルギーの下限値を線a 示すように5keVにしているのは、エミッタ18 表層部の炭素導入層の上記厚さ(40nm程度)を 低限確保するためであり、これより低いエ ルギーでは上記厚さの炭素導入層が形成で ない。
炭素イオン40のエネルギーの上限値を線d 示すように15keVにしているのは、これより 高いエネルギーだと炭素原子がエミッタ18の 内部の奥深くに入り過ぎるために、注入量を 増加させても上記厚さの範囲での炭素原子濃 度が上がらず、炭素イオン注入による改質の 効果が失われるためである。
線b、cで示す炭素イオン40の注入量の上限 は、エミッタ18内部での炭素原子の上限側の 度が上記ピーク値の60%を超えないようにす ためである。これよりも高濃度の炭素導入 、エミッタ18の膨張を招き、電子放出特性 悪化、エミッタ18の破壊等につながるので好 ましくない。
線e、fで示す炭素イオン40の注入量の下限 は、エミッタ18の表層部(深さ40nm程度までの 囲)での炭素原子濃度を、上記最低値の20%以 、かつ上記ピーク値の40%以上の範囲に維持 るためである。炭素原子濃度がこの範囲よ も低いと、電子放出特性の劣化を抑制する 果を十分に発揮することができなくなるの 好ましくない。
上記イオン注入工程54において、上記範囲R 1 内にある条件で炭素イオン40を注入すること よって、各エミッタ18の先端部内での炭素 子濃度分布が、各エミッタ18を構成するシリ コン原子と結合してシリコンの酸化を抑制す るのに効果的な分布になるので、各エミッタ 18からの電子放出の寿命を延ばすことができ 。
また、上記製造方法では、上述したよう 、イオン注入工程後にアニール処理は行っ いない。アニール処理を行わなくても良い は、上記注入条件で各エミッタ18の表層部 注入された炭素原子が、各エミッタ18を構成 しているシリコン原子の周辺に介在すること によって、シリコンを主成分とするエミッタ 18が半導体というよりはむしろ金属的な電気 導を持つ状態になり、そのために、アニー 処理がなくても良好な電子放出特性を発現 きたものと考えられる。
ちなみに、通常の半導体形成用のイオン 入では、イオン注入によってシリコンの結 が壊されてアモルファス化するために、半 体としての良い特性を出すために、再結晶 のプロセス、即ちアニール処理が必要とな 。これに対して、電界放出型電子源でエミ タにシリコンを用いる場合には、半導体と ての良好な性質を得る必要は必ずしもなく 上述した金属的な電気伝導を有していれば いので、アニール処理を行わなくても良い もちろん、炭素導入層が著しく変化しない 囲で、必要に応じて、アニール処理を施し もかまわない。
従って、上記製造方法によれば、イオン 入工程54の後にアニール処理を行わなくて 、電子放出特性が良好でありかつ長寿命の 界放出型電子源10を得ることができる。その 結果、アニール工程を省いて、工程数の削減 、製造コストの低減等を図ることが可能にな る。
図7に示す例のように、イオン注入工程54に ける炭素イオン40のエネルギーの上限値を dで示すように12keVに下げても良い。この場 の炭素イオン40の注入条件の好ましい範囲は 、点P 1 (5,0.8)、P 2 (5,1.5)、P 3 (10,2.5)、P 4 (12,2.7)、P 5 (12,1.7)およびP 6 (10,1.6)の6点間を直線a~fで結んで囲まれる範囲 R 2 内となる。
このようにすれば、炭素イオン40のエネ ギーの上限値を小さくしているので、イオ 注入による炭素原子がエミッタ18の内部の奥 深くに入り過ぎるのを抑制して、エミッタ18 表層部内での炭素原子濃度分布を、より確 に、エミッタ18を構成するシリコンの酸化 抑制するのに効果的な分布にすることがで る。
上記イオン注入工程54の後に、更に、炭 を含むガスを用いて発生させたプラズマを なくともエミッタ18の先端部に照射してプラ ズマ処理を行うプラズマ処理工程を実施して も良い。
例えば図8に示すプラズマ処理工程の例のよ うに、複数のエミッタ18の先端部を含む領域 プラズマ42を照射する(入射させる)。このプ ラズマ処理工程は、例えば、公知のリアクテ ィブエッチング装置等を用いて行うことがで きる。プラズマ42は、例えば、CHF 3 (三フッ化メタン)ガスをプラズマ化したもの ある。但し、これ以外で炭素を含むガスを ラズマ化したものでも良い。
なお、プラズマ42は、各エミッタ18の先端 部だけに照射しても良いし、図8に示す例の うに各エミッタ18の先端部を含む広い領域に 照射しても良い。要は、少なくとも各エミッ タ18の先端部に照射すれば良い。電子12の電 放出に寄与するのは各エミッタ18の先端部で あり、少なくともその先端部をプラズマ処理 できれば良いからである。
上記プラズマ処理工程によって、各エミッ 18の先端部の表面に炭素系の被膜が形成さ 、この被膜が各エミッタ18の先端部表面の酸 化を抑制する働きをするので、電界放出型電 子源10の寿命をより長くすることができる。 記炭素系の被膜は、CHF 3 ガスを用いた場合は、C、H、Fの元素から成る 被膜である。
実験結果の一例を図9に示す。これは、図5 示した線A~Cの場合とそれぞれ同一条件(即ち 一のエネルギーおよび注入量)で炭素イオン 注入後に、CHF 3 プラズマによるプラズマ処理を更に施した場 合の例である。線E~Gは、線A~Cにそれぞれ対応 している。このプラズマ処理には、リアクテ ィブエッチング装置を用いた。プラズマ処理 条件は、CHF 3 ガスの流量を80sccm、装置内のガス圧を2.5Pa、 入高周波電力を80W、プラズマ処理時間を30 とした。
図9中の線E~Gに示すように、いずれの注入 量においても、図5に示した炭素イオン注入 けの場合に比べて、時間経過に伴う放出電 の低下が遥かに小さいことが分かる。即ち 電界放出型電子源10の寿命をより長くするこ とが可能になったことが分かる。
イオン注入工程54の後に更にプラズマ処理 程を施す場合の、イオン注入工程54における 炭素イオン40のエネルギーおよび注入量の好 しい範囲の一例を図10に示す。炭素イオン40 は、点P 1 (5,0.8)、P 2 (5,1.5)、P 3 (10,2.5)、P 4 (15,3.0)、P 5 (15,1.5)およびP 6 (10,1.0)の6点間を直線a~fで結んで囲まれる範囲 R 3 内にある条件で注入することが好ましい。そ の理由は次のとおりである。
即ち、イオン注入工程54に加えてプラズ 処理工程を実施すると、プラズマ処理によ てエミッタ18の表面付近(例えば深さ10nm程度 で)の炭素原子濃度を高めることができるの で、イオン注入工程54によって浅い領域に導 する炭素原子は、イオン注入工程54のみの 合に比べて若干少なくて済む。例えば、イ ン注入によるエミッタ18の表面での炭素原子 濃度は、10%以上を確保できれば良い。従って 、線e、fで示す炭素イオン40の注入量の下限 、図6に示した場合に比べて小さくて済む。 a~dは図6の場合と同じである。
イオン注入工程54の後にプラズマ処理工程 実施する場合も、図11に示す例のように、イ オン注入工程54における炭素イオン40のエネ ギーの上限値を線dで示すように12keVに下げ も良い。この場合の炭素イオン40の注入条件 の好ましい範囲は、点P 1 (5,0.8)、P 2 (5,1.5)、P 3 (10,2.5)、P 4 (12,2.7)、P 5 (12,1.2)およびP 6 (10,1.0)の6点間を直線a~fで結んで囲まれる範囲 R 4 内となる。このようにすることによる効果は 、図7の所で述べた効果と同様である。
上記イオン注入工程54における炭素イオ 40として、正の炭素イオン40を用いても良い 、負の炭素イオン40を用いても良い。各エ ッタ18にイオン注入された炭素の物性はどら らも同じだからである。
もっとも、負の炭素イオン40を用いると 図4Cを参照して、エミッタ18へのイオン注入 同時に、例えばゲート電極22のように電気 に浮いた(即ち電気的に絶縁されていてどこ も接続されていない)電極にイオン注入を行 っても、当該ゲート電極22の帯電を、正イオ を注入する場合に比べて小さく抑制するこ ができる。これは、簡単に言えば次の理由 よる。即ち、正イオン注入ではゲート電極2 2に正の電荷がどんどん蓄積されてゲート電 22の電位が上がるのに対して、負イオン注入 の場合は、負の炭素イオン40の入射に伴って ート電極22から二次電子が放出され、炭素 オン40のエネルギーが上記範囲の場合は二次 電子放出係数は1よりも大きいので、ゲート 極22は負イオンを注入しているにも拘わらず 若干正に帯電する。しかし、二次電子の運動 エネルギーは小さいので、ゲート電極22が正 帯電すると、二次電子は周辺の接地電位(こ れは相対的に電子にとっては高い電位になる )に追い返され、結果としてゲート電極22に戻 るしかなく、結局、イオン一つの入射に対し て電子一つが放出されるようなゲート電極22 電位(例えば数V程度)で帯電が停止する。従 て、ゲート電極22に特にリード線を接続し 帯電を抑制することをしなくて済むので、 法を簡素化することができる。
また、炭素イオン40を作る場合は、正イ ンよりも負イオンの方が、簡単にかつ大量 作ることができるので、上記のような注入 を実現することが容易になるという利点も る。これは、簡単に言えば次の理由による 即ち、炭素イオンを作ろうとすると、通常 イオン源(正イオン源)では、典型的には次の 方法による。(a)炭素系のガスを放電室に流し てプラズマとし、炭素イオンを引き出す。(b) 炭素のターゲットにイオンを照射し、表面状 態を調整する等して電子が炭素イオンと共に 真空中に放出されないようにする。(a)の方法 が一般的だが、炭化水素系のガスは放電室内 で重合し高分子化合物を形成する等、装置へ の悪影響が大きい。(b)の方法はそのような影 響はないが、一般にこの方法で大量の炭素イ オンを作るのは難しい。
負イオンの場合、正イオンの(b)の方法に た方法で、但し、セシウム等のアルカリ金 を炭素ターゲットに供給して、電子を炭素 子と共に真空中に放出させて負の炭素イオ を作ることができる。この負の炭素イオン 放出効率は最適化されており、例えば20%程 の効率を有することが知られている。この め、炭素イオンを作るのは正イオンよりも イオンの方が簡単である。
なお、炭素イオン40を注入する方法とし 、例えば、(a)質量分離した炭素イオン40を注 入するイオン注入法、(b)質量分離せずに炭素 イオン40を含むイオンを注入する非質量分離 のイオン注入法(これはイオンドーピング( 録商標)法とも呼ばれている)、(c)炭素を含む ガス中でグロー放電プラズマを発生させて炭 素イオン40を注入するプラズマドーピング法 等のいずれを採用しても良い。プラズマド ピング法の場合は、カソード基板16(または れを保持するホルダ)に印加する負のバイア ス電圧によって、炭素イオン40のエネルギー 制御することができる。
注入に使用する炭素イオン40は、原子状 二原子分子、その他の分子状(炭化水素も含 )、クラスター等いずれでも良い。
また、この発明に係る製造方法は、図12 示す例のように、ゲート電極22よりも電子12 放出側にゲート電極22に沿って設けられて て、多数の小孔30を有する第2ゲート電極(こ は第2引出し電極とも呼ばれる)28を更に備え ている電界放出型電子源10の製造にも適用す ことができる。各エミッタ18に対する炭素 オン注入およびプラズマ処理の効果は、図2 示す電界放出型電子源10の場合と変わらな からである。
以上のように本発明の実施の形態につい 説明を行なったが、上述の各実施の形態の 成を適宜組み合わせることも当初から予定 ている。また、今回開示した実施の形態は べての点で例示であって制限的なものでは いと考えられるべきである。本発明の範囲 、請求の範囲によって示され、請求の範囲 均等の意味および範囲内でのすべての変形 含まれる。
