佐野 雅己 (〒54 東京都文京区本郷七丁目3番1号 国立大学法人東京大学内 Tokyo, 11386, JP)
国立大学法人東京大学 (〒54 東京都文京区本郷七丁目3番1号 Tokyo, 11386, JP)
SANO, Masaki (3-1 Hongo 7-chome, Bunkyo-k, Tokyo 54, 11386, JP)
| 目的粒子を操作する方法であって、 (1)溶液中に、操作したい目的粒子とこの目的粒子よりも体積の小さい他の粒子とを存在させると共に、前記溶液中における前記他の粒子の濃度が前記目的粒子の濃度よりも大きくなるように調整する工程と、 (2)前記調整した溶液の所望の箇所に温度勾配を生じさせることで、当該温度勾配の高温側に前記目的粒子を移動させる工程と、 を有することを特徴とする目的粒子を操作する方法。 |
| 請求項1記載の方法において、 前記(2)工程は、前記溶液の所望の個所に高温側と低温側との単位距離あたりの温度差が少なくとも3℃/mm以上となる温度勾配を生じさせるものである ことを特徴とする方法。 |
| 請求項1記載の方法において、 前記(2)の工程は、レーザー光又はLED光を前記所望の個所に照射することで、前記温度勾配を生じさせるものである ことを特徴とする方法。 |
| 請求項1記載の方法において、 前記(2)の工程は、発熱電極を前記所望の個所に配置対向させることで、前記温度勾配を生じさせるものである ことを特徴とする方法。 |
| 請求項1記載の方法において、 前記(2)の工程は、前記他の粒子が、前記温度勾配の高温側から低温側に向かって高くなる濃度勾配を生じさせるような温度勾配を生じさせるものである ことを特徴とする方法。 |
| 請求項1記載の方法において、 前記(2)の工程は、前記他の粒子が、前記目的粒子に対し、前記温度勾配の高温側に向かって働く枯渇力を生じさせるような温度勾配を生じさせるものである ことを特徴とする方法。 |
| 請求項1記載の方法において、さらに、 (3)前記温度勾配を生じさせる前記所定の箇所を移動させ、前記目的粒子を上記所定の箇所の移動に追従するように操作する工程 を有することを特徴とする方法。 |
| 請求項1記載の方法において、 前記(2)の工程は、温度勾配を複数の箇所に生じさせることで、前記目的粒子を所定の挙動に操作するものである ことを特徴とする方法。 |
| 請求項1記載の方法において、 前記(1)の工程は、前記目的粒子と前記他の粒子との体積の比が少なくとも8:1以上となるように上記溶液を調整するものである ことを特徴とする方法。 |
| 請求項1記載の方法において、 前記(2)の工程は、前記温度勾配および前記温度勾配を生じさせる所定の個所を制御することで、前記目的粒子の捕捉、移動、集積、濃縮、回転のいずれか1つまたは複数の組み合わせの操作を行うものである ことを特徴とする方法。 |
| 請求項1記載の方法において、 前記(1)の工程は、大きさの異なる複数の目的粒子を溶液中に調整するものであり、 前記(2)の工程は、前記温度勾配の高温側に向かって小さい目的粒子から大きい目的粒子の順、又は大きい目的粒子から小さい目的粒子の順に集積させるものである ことを特徴とする方法。 |
| 請求項1記載の方法において、 前記(2)の工程は、前記目的粒子を上記温度勾配の高温側に向かって集積させ結晶化するものである ことを特徴とする方法。 |
| 請求項1記載の方法において、 前記目的粒子は、前記溶液が通過可能であるが前記他の粒子が通過不能である境界膜を有する粒子であり、 (2)の工程は、前記粒子の周囲で温度勾配を生じさせることで、前記境界膜を温度勾配低温側に膨張させるように移動させるものである、 ことを特徴とする方法。 |
| 目的粒子を操作する装置であって、 操作したい目的粒子とこの目的粒子よりも体積の小さい他の粒子とが存在し、前記他の粒子の濃度が前記目的粒子の濃度よりも大きくなるように調整されてなる溶液を保持する溶液保持ユニットと、 前記調整した溶液の所望の箇所に温度勾配を生じさせることで、当該温度勾配の高温側に前記目的粒子を移動させる温度勾配生成ユニットと、 を有することを特徴とする装置。 |
| 請求項14記載の装置において、 前記温度勾配生成ユニットは、前記溶液の所望の個所に高温側と低温側との単位距離あたりの温度差が少なくとも3℃/mm以上となる温度勾配を生じさせるものである ことを特徴とする装置。 |
| 請求項14記載の装置において、 前記温度勾配生成ユニットは、レーザー光又はLED光を前記所望の個所に照射する光照射器を有するものである ことを特徴とする装置。 |
| 請求項14記載の装置において、 前記温度勾配生成ユニットは、前記所望の個所に配置対向され、前記温度勾配を生じさせる発熱電極を有する ことを特徴とする装置。 |
| 請求項14記載の装置において、 前記温度勾配生成ユニットは、前記他の粒子が、前記温度勾配の高温側から低温側に向かって高くなる濃度勾配を生じさせるような温度勾配を生じさせるものである ことを特徴とする装置。 |
| 請求項14記載の装置において、 前記温度勾配生成ユニットは、前記他の粒子が、前記目的粒子に対し、前記温度勾配の高温側に向かって働く枯渇力を生じさせるような温度勾配を生じさせるものである ことを特徴とする装置。 |
| 請求項14記載の装置において、さらに、 前記温度勾配を生じさせる前記所定の箇所を移動させ、前記目的粒子を上記所定の箇所の移動に追従するように操作する移動操作ユニット を有することを特徴とする装置。 |
| 請求項14記載の装置において、 前記温度勾配生成ユニットは、温度勾配を複数の箇所に生じさせることで、前記目的粒子を所定の挙動に操作するものである ことを特徴とする装置。 |
| 請求項14記載の装置において、 前記溶液は、前記目的粒子と前記他の粒子との体積の比が少なくとも8:1以上となるように調整されたものである ことを特徴とする装置。 |
| 請求項14記載の装置において、 前記温度勾配生成ユニットは、前記温度勾配および前記温度勾配を生じさせる所定の個所を制御することで、前記目的粒子の捕捉、移動、集積、濃縮、回転のいずれか1つまたは複数の組み合わせの操作を行うものである ことを特徴とする装置。 |
| 請求項14記載の装置において、 前記溶液は、大きさの異なる複数の目的粒子を溶液中に調整するものであり、 前記温度勾配生成ユニットは、前記温度勾配の高温側に向かって小さい目的粒子から大きい目的粒子の順、又は大きい目的粒子から小さい目的粒子の順に集積させるものである ことを特徴とする装置。 |
| 請求項14記載の装置において、 前記温度勾配生成ユニットは、前記目的粒子を上記温度勾配の高温側に向かって集積させ結晶化するものである ことを特徴とする装置。 |
| 請求項14記載の装置において、 前記目的粒子は、前記溶液が通過可能であるが前記他の粒子が通過不能である境界膜を有する粒子であり、 前記温度勾配生成ユニットは、前記粒子の周囲で温度勾配を生じさせることで、前記境界膜を温度勾配低温側に膨張させるように移動させるものである ことを特徴とする装置。 |
| 特定の目的粒子を操作する方法に用いるキットであって、 容器と、 この容器に保持され、前記特定の目的粒子よりも体積の小さい他の粒子が前記目的粒子の濃度よりも大きくなる濃度に調節されてなる溶液と を有するものであることを特徴とするキット。 |
| 目的粒子を操作する方法に用いる溶液保持容器であって、 高温側と低温側との単位距離あたりの温度差が少なくとも3℃/mm以上となる温度勾配を溶液の所望の個所に生じさせるように構成されている ことを特徴とする容器。 |
| 請求項28記載の容器において、この容器は、 前記溶液と内接する面の少なくとも1部に、光吸収性材料を有するものである ことを特徴とする容器。 |
本発明は、目的粒子を操作する方法に関 、特に、様々な大きさや形状の種々の粒子 例えば、金属、鉱物、セラミック、無機化 物、有機化合物、フラーレン、カーボンナ チューブ、高分子、DNA、タンパク質、結晶 アモルファス、ウイルス、大腸菌や赤血球 どの細胞、等の操作・捕捉に利用すること できる方法に関する。
近年、多くの科学技術分野において、マ クロマニピュレーションに対する需要が急 に増大してきている。マイクロマニピュレ ションとは、生体分子やコロイド等の小さ 物体を操作するのに有効な技術であり、現 までに、多くのマイクロマニピュレーショ 技術が実用化されている。例えば、電気泳 や光ピンセット、磁気ピンセットは、コロ ド粒子に働く電磁気的な力を利用するもの あり、目的の粒子に対して、マイクロスケ ルやナノスケールの大きさで局所的な力を ぼすことができる。また、移動する微粒子 レーザー光を照射して粒子を分別する技術 開発されている(特許文献1)。
一方、流体中の粒子を分離する手段とし 、熱泳動現象(ソーレ効果)が知られている( 特許文献1)。この熱泳動現象を利用したマ クロマニピュレーション技術として、レー ーでコロイド粒子を効率的に操作する方法 報告されている(非特許文献2)。ここで、熱 動現象とは、溶液中に温度勾配が存在する き、正の泳動係数を有する分子又は粒子は 温領域側に移動し、負の泳動係数を有する 子又は粒子は高温領域側に移動する現象を う。
ところで、上述の熱泳動現象を用いたマ クロマニピュレーションでは、印加された 度勾配に対する粒子の熱泳動度とその符号 、その粒子の性質に大きく依存する。その め、特定のコロイド粒子を分離するには有 な手段であるが、任意の粒子を操作・捕捉 ようとする場合に万能に利用できる手段で ない。
また、熱泳動に起因する力は一般に小さ 、粒子に働く力の方向と大きさを制御する とは困難である。
本発明は、このような状況を鑑みてなさ たものであり、従来のマイクロマニピュレ ションでは操作・捕捉が困難であった粒子 は分子等の物質を含む様々な種類の物質を 作・捕捉する方法を提供することを目的と る。
本発明者らは、新規なマイクロマニピュ ーション技術開発の中で、粒子間に働く枯 力/エントロピー力を利用することに関する 新たな知見を得、さらに鋭意研究・実験を重 ねた結果、本発明を完成するに至ったもので ある。
すなわち、本発明者らは、より小さい粒 (例えば、高分子)の熱泳動現象を光により 密に制御することによって、その小さい粒 群に混入された大きな粒子に働く枯渇力の 向と大きさを制御できることを見出した。 のことは、小さな粒子とそれよりも大きな 子を混在させることで、大きな粒子につい は本来その物質が有する熱泳動の性質に関 らず、所望の操作を行えることを意味する 言い換えれば、この方法によれば、外部操 により実効的にソーレ係数を変化させ得る とを示すものであり、粒子の種類や属性に かわらず、2以上の粒子の大きさと濃度の関 のみで、目的粒子を操作できることを意味 るものである。
したがって、本願発明の第1の主要な観点に
よれば、
(1)溶液中に、操作したい目的粒子とこの目
粒子よりも体積の小さい他の粒子とを存在
せると共に、前記溶液中における前記他の
子の濃度が前記目的粒子の濃度よりも大き
なるように調整する工程と、
(2)前記調整した溶液の所望の箇所に温度勾
を生じさせることで、当該温度勾配の高温
に前記目的粒子を移動させる工程と、
を有することを特徴とする目的粒子を操作
る方法が提供される。
ここで、前記(2)工程は、前記溶液の所望 個所に高温側と低温側との単位距離あたり 温度差が少なくとも3℃/mm以上となる温度勾 配を生じさせるものであることが好ましい。
すなわち、前記温度勾配は、非常に局所 で勾配が急であることが望ましく、そのた の方法として、前記(2)の工程は、レーザー 又はLED光を前記所望の個所に照射すること 、前記温度勾配を生じさせるものであるこ が好ましい。また、別の方法として、前記( 2)の工程は、発熱電極を前記所望の個所に配 対向させることで、前記温度勾配を生じさ るものであってもよい。
また、上記温度勾配は、小さい他の粒子 濃度勾配が生じて、その濃度の小さい方向 目的粒子を誘導するものであるから、別の 点からは、前記(2)の工程は、前記他の粒子 、前記温度勾配の高温側から低温側に向か て高くなる濃度勾配を生じさせるような温 勾配を生じさせるものであることが望まし 。また、別の実施形態としては、前記(2)の 程は、前記他の粒子が、前記目的粒子に対 、前記温度勾配の高温側に向かって働く枯 力を生じさせるような温度勾配を生じさせ ものであってもよい。
1つの実施形態では、さらに、(3)前記温度 勾配を生じさせる前記所定の箇所を移動させ 、前記目的粒子を上記所定の個所の移動に追 従するように操作する工程を有する。このこ とで、目的粒子を自由に移動させることが可 能になる。また、上記前記(2)の工程で、温度 勾配を複数の箇所に生じさせることで、前記 目的粒子を所定の挙動に操作するものであっ てもよい。
また、一の実施形態によれば、前記(1)の 程は、前記目的粒子と前記他の粒子との体 の比が少なくとも27:1以上となるように上記 溶液を調整するものであることが好ましい。 また、より好ましくは、前記(1)の工程は、前 記目的粒子と前記他の粒子との体積の比が少 なくとも8:1以上となるように上記溶液を調整 するものである。
別の一実施形態によれば、前記(2)の工程 、前記温度勾配および前記温度勾配を生じ せる所定の個所を制御することで、前記目 粒子の捕捉、移動、集積、濃縮、回転のい れか1つまたは複数の組み合わせの操作を行 うものである。この場合、前記(1)の工程は、 大きさの異なる複数の目的粒子を溶液中に調 整するものであり、前記(2)の工程は、前記温 度勾配の高温側に向かって小さい目的粒子か ら大きい目的粒子の順、又は大きい粒子から 小さい粒子の順に集積させるものであっても よい。
さらなる別の一実施形態によれば、
前記(2)の工程は、前記目的粒子を上記温度
配の高温側に向かって集積させ結晶化する
のである。
また、さらなる別の一実施形態によれば 前記目的粒子は、前記溶液が通過可能であ が前記他の粒子が通過不能である境界膜を する粒子であり、(2)の工程は、前記粒子の 囲で温度勾配を生じさせることで、前記境 膜を温度勾配低温側に膨張させるように移 させるものであっても良い。
また、この発明の第2の主要な観点によれ ば、目的粒子を操作する装置であって、操作 したい目的粒子とこの目的粒子よりも体積の 小さい他の粒子とが存在し、前記他の粒子の 濃度が前記目的粒子の濃度よりも大きくなる ように調整されてなる溶液を保持する溶液保 持ユニットと、前記調整した溶液の所望の箇 所に温度勾配を生じさせることで、当該温度 勾配の高温側に前記目的粒子を移動させる温 度勾配生成ユニットと、を有することを特徴 とする装置が提供される。
このような構成によれば、上述した第1の 観点に係る方法を実施することができる装置 が提供される。
また、この発明の第3の主要な観点によれ ば、特定の目的粒子を操作する方法に用いる キットであって、容器と、この容器に保持さ れ、前記特定の目的粒子よりも体積の小さい 他の粒子が前記目的粒子の濃度よりも大きく なる濃度に調節されてなる溶液とを有するも のであることを特徴とするキットが提供され る。
このような構成によれば、上述した第1の 観点に係る方法を実施することができるキッ トが提供される。
また、この発明の第4の主要な観点によれ ば、目的粒子を操作する方法に用いる溶液保 持容器であって、高温側と低温側との単位距 離あたりの温度差が少なくとも3℃/mm以上と る温度勾配を溶液の所望の個所に生じさせ ように構成されていることを特徴とする容 が提供される。
ここで、この容器は、前記溶液と内接す 面の少なくとも1部に、光吸収性材料を有す るものであることが好ましい。
このような構成によれば、上述した第1の 観点に係る方法を実施することができる容器 が提供される。
本発明に係る方法は、温度勾配によって 導されたエントロピー力を用いることによ 、従来から確立されている他のマニピュレ ション技術に比べて、より一般的な粒子の 作・捕捉に利用することができる。すなわ 、本発明に係るマニピュレーション方法は 種々の大きさや形状の粒子、例えば、金属 鉱物、セラミック、無機化合物、有機化合 、フラーレン、カーボンナノチューブ、ポ スチレン等の高分子、ビーズ等に付着して ないDNA、タンパク質、結晶、アモルファス ウイルス、大腸菌や赤血球などの細胞、等 操作・捕捉に利用することができる。
なお、上記した以外の本発明の特徴及び 著な作用・効果は、次の発明の実施形態の 及び図面を参照することで、当業者にとっ 明確となる。
以下、本願発明の一実施形態および実施例
、図面を参照して説明する。
まず、本願発明は、概説すると、図1に示す
ように、
(1)ガラス容器5(液体保持ユニット)に収容さ
た溶液1中に、操作したい目的粒子2とこの
的粒子2よりも体積の小さい他の粒子3とを存
在させると共に、前記溶液1中における前記
の粒子3の濃度が前記目的粒子2の濃度よりも
大きくなるように調整する工程と、
(2)前記調整した溶液1の所望の箇所に、例え
ば、レーザー光源4(温度勾配生成ユニット)か
らレーザー光Lを照射して局所的な温度勾配
生じさせることで、当該温度勾配の高温側
前記目的粒子2を移動(凝集、回転、等)させ
工程と、
を有することを特徴とする目的粒子2を操作
する方法、およびその方法を実施するための
装置である。
図1に示す例では、前記液体保持ユニット としてのガラス容器5は、その内面に、金属 コーティング6が被着されており、レーザー Lをこの金属膜コーティング6の近傍に集光 せることにより、この金属膜コーティング6 介して、溶液1中に温度勾配を生じさせるよ うに構成されている。また、前記レーザー光 源4には移動操作ユニット8が設けられており レーザー光Lの焦点の位置を溶液1またはガ ス容器5の方向へ、若しくはこれと直行する 向へ移動させることによって、生じた温度 配に係る温度分布を変化させ、また、その うな温度勾配を生じさせる個所を移動させ ことが可能なように構成されている。
このような構成によれば、物質の性質に きく依存する熱泳動現象ではなく、枯渇力/ エントロピー力を用いるマイクロマニピュレ ーションにより、目的粒子を操作することが 可能になる。
以下、まず、この発明の原理を詳しく説 する。
(粒子補足力のPEG濃度依存性)
図2(a)~(e)は、溶液中に混入する他の粒子(PEG(
ポリエチレングリコール))の濃度を0%,1%,2%,3.5%
,5%と段階的に変化させ、中心部分にレーザー
光を照射し温度勾配を形成したときに生じる
目的粒子(直径100nmの蛍光粒子)の蛍光強度分
を示した写真であり、図3及び図4は、それに
対応するグラフである。
まず、PEG濃度0%では、図2(a)に示すように 蛍光粒子の密度は熱勾配の外側(低温側)か 中心(高温側)に向かって減少している。PEG濃 度を1%にすると、図2(b)に示すように、まだ蛍 光粒子の捕捉は起こらないが、0%の場合と比 て中心付近での枯渇の程度が少なくなって る。PEG濃度2%の溶液では、図2(c)に示すよう 、蛍光粒子の捕捉が開始され、中心付近で 蛍光強度は周囲に比べて約2倍程高くなって いる。そして、PEG濃度3.5%溶液及び5%溶液では 、図2(d)および(e)に示すように、中心での密 が周辺に比べてそれぞれ10倍と100倍に増加し ている。図3のグラフは、上記図2(a)~(e)の各状 態を、蛍光粒子の位置とその位置での濃度と の関係で示したものである。
一方、粒子密度を各点における温度上昇 関数で図4に示すようにプロットすると、0% 液の場合の結果は、熱泳動による定常状態 布で説明できる。一般的に、定常状態では 粒子密度c(x)は指数関数に従う(Duhr S,Braun D( 2006)Thermophoretic depletion follows Boltzmann distribu tion.Phys.Rev.Lett.96:168301.を参照)。
ここで粒子のソーレ係数の温度依存性は さいと仮定すると、図4のデータの直線の傾 きが、粒子のソーレ係数を与える。
PEG濃度0%のデータから、この実施形態で 、粒子のソーレ係数として以下の式を得た
図4で重要なことは、溶液に高分子(PEG)が 在する場合でも粒子の密度分布が温度に対 て指数分布関数に従っており、その意味で 線の傾きが高分子存在下での実効的な以下 ソーレ係数を与えるということである。
第一近似として、その傾きは高分子濃度 比例して増加している。したがって、上記 ーレ係数は、図4の挿入図のように正から負 の値へと次の式のように変化している。
ここで最小2乗より以下の式が得られた。
上記(2)の式中のρ w はPEGの重量比を表す。図4の挿入図をさらに く見ると上記ソーレ係数の濃度依存性に非 形性が存在する可能性も示唆されるが、そ に関しては後で述べることとする。
以上により、熱泳動係数(またはソーレ係 数)の符号と大きさが高分子の濃度によって 御できるということが実証された。
(PEG濃度分布)
一方、新しいマニピュレーション法のメカ
ズムを明らかにするため、蛍光基でラベル
れたPEG分子を用いて加熱点近傍におけるPEG
濃度分布の測定を行った。加熱中心で約3℃
温度を上昇させた場合、PEGの濃度が中心付近
で約15%減少することを確認した(図5及び図6)
このPEGの枯渇は、熱泳動と拡散が釣合った
常状態の分布として次のように理解できる
すなわち、PEG分子の流れは次の式で表され
。
定常状態(j p =0)においては、密度は以下の関係を満たす。
したがって、次の式
図6の直線の傾きから本発明者らは、PEG500 0に関して以下の値を得た(実施例の欄を参照) 。
高分子の密度は、中心で枯渇している。 述したように、この高分子密度が中心で枯 する分布が、ポテンシャル関数のように振 い、目的粒子のトラップを可能しているの ある。
(理論的アプローチ)
新しいマニピュレーションのメカニズムを
7(a)(b)に図示する。高分子が粒子に吸着しな
いとするとその重心は粒子の表面を通過でき
ないため、粒子の表面には枯渇層と呼ばれる
層が必ず存在する。枯渇力は、二つの枯渇層
が重なり合う時、すなわち2つの粒子が近接
る場合や粒子と壁が近接する場合に生じる(
7(b))。しかし、もし高分子の空間分布の対
性が破れると、孤立した粒子1個でも枯渇力
生じることが予想される(図7(b))。もっとも
このような場合に枯渇力が現れることはこ
まで知られていなかった。この場合に生じ
力を計算するため、我々は局所平衡の仮定
用いる。そのため、枯渇層の排除体積効果
よる自由エネルギーの差を求める。枯渇層
あることによる自由エネルギーの差は、枯
層の体積V dep
から排除された分子数δnを用いて以下のよう
に見積もることができる。
ここでρは高分子の濃度である(今の状況で 、k B nδTの項はk B Tδnの項に比べて十分小さいので無視できる) また、高分子間の相互作用は、濃度が高分 の絡まりが生じる臨界濃度(今の場合、以下 の式)に比べて小さいので無視できる。
したがって、高分子密度の非一様性によ て生じる枯渇力の大きさは、次のように見 もられる。
一方、粒子の熱泳動も考慮すると、粒子密
c(x)の流束jは、以下の拡散流
さらに、熱泳動を生じさせる力f T を定義するとj T は、次のように書くことができる。
ただし、ここでμ=1/γは粒子の易動度であり
、γはストークスの摩擦係数を表す。したが
て、熱泳動を生じさせる力は、次のように
すことができ、
これは温度勾配によって引き起こされたも
である(多くの場合、その原因は粒子の界面
張力や界面エネルギーの温度依存性に起因す
ると考えられる)(Wurger A(2007)Thermophoresis in co
mplex fluids driven by Marangoni forces.Phys.Rev.Lett.9
8:138301.及びBraibanti M,Vigolo D,Piazza R(2008) Does
thermophoretic mobility depend on particle size? Phys
.Rev.Lett.100:108303.を参照)。力は加法的なので
粒子の正味の流束は、以下のように表せ、
その結果次のようになる。
ここでアインシュタイン関係式D b (x)=μ(x)k B T(x)が局所的に成り立っていると仮定した。 常状態(j=0)では、次の式が成立する。
ただし、ここで以下の条件が付く。
また、式(5)を直接積分すると次の式を得 。
ここでc 0 は規格化定数であり、δT(x)=T(x)-T 0 は温度の増分、δρ(x)=ρ(x)-ρ 0 は濃度の増分をそれぞれ表す。また、T 0 とρ 0 はそれぞれ基準点x 0 における温度と密度である(実施例の欄を参 )。
本発明者らは高分子濃度ρ(x)をすでに測定 ているので、理論的予測である(6)式と実験 得られた粒子の密度分布を比較することが きる。V dep を唯一のフィッティングパラメータとして図 3の密度分布を(6)式でフィットすることがで る。図3で理論式(6)(実線)と実験値(記号)は良 く一致している。ここで、ρ(x)を重量比で定 した場合、V dep =670であり、ρ(x)を単位体積当たりの粒子数で 定義した場合は、8325nm 3 である。V dep の最も簡単な見積もりは、粒子の表面積と枯 渇層の厚さの積であるので、V dep =4πR 2 (R g /2)で与えられる。(ただし、R g は高分子の慣性半径であり、Rは粒子の半径 ある。)これより、R g =0.6±0.1[nm]という値を得ることができる。
より好ましくは、粒子が受ける流体力学的 抵抗を考慮すると、V dep =2πRλ 2 という関係式が得られる。ここでλは、高分 と粒子の相互作用距離であり、高分子と粒 の相互作用が物理的に排他的であればλは 高分子の慣性半径R g と考えてよい。実験結果から、λ=5.8nmとなり PEG6000のR g の値に近づく。また、粒子をトラップする力 は粒子の直径に比例する。また、さらに好ま しくは、粒子の界面での撥水性が大きい場合 には、流体的境界条件が滑りなしから滑りあ りへと変化する場合を考慮する必要がある。 その場合は、以下の関係式が得られる。
ただし、lは滑り距離と呼ばれる量で粒子表 での流体の滑りやすさを表す。この表式を いるとλ=2.3nmという値が得られ、さらにPEG600 0のR g の値に近づくだけでなく、トラップ力の粒子 の直径に対する依存性をよく表しており、粒 径が小さい場合にはほぼ直径の2乗に比例し 粒径が大きい場合にはほぼ直径に比例して 大するため、最初に述べた流体摩擦を無視 た理論と流体摩擦を考慮した理論とが連続 に繋がり、実験結果をよく説明している。
(2)式の実効的ソーレ係数の高分子濃度依存
もまた説明可能である。PEGの濃度分布は、
下の指数分布で良く近似できたので(図5お
び実施例の欄を参照)、
それをさらに線形近似すると次の式が得 れる。
この結果を(6)式に代入すると(2)式が得ら 、理論的予測として次式が得られる。
この結果は、図4の挿入図の傾きと一致す る。
(まとめ)
上述の結果で、高分子の慣性半径はR g
=0.6±0.1[nm]と見積もられたが、この値はPEG6000
子の知られている値3nmに比べ小さい。この
は、おそらくポリスチレン粒子表面におけ
PEG分子の分散的引力による部分的吸着が原
であると考えられる(Bechinger C,Rudhardt D,Leide
rer P(1999)Understanding depletion forces beyond entrop
y.Phys.Rev.Lett.83:3960.を参照)。
好ましくは、流体の粘性散逸を考慮した滑 なしの境界条件を使った理論では高分子の 性半径R g =5.8nmと、より実際に近い値が得られ、補足能 力の粒子直径依存性の結果をよく表している 。
さらに好ましくは、粒子の境界条件が部分 な滑りを許す場合には、R g =2.3nmとなるだけでなく、粒子系が小さい場合 と大きい場合を含めて直径依存性をさらによ く表しているため、本件の原理の本質的な部 分はこの理論で説明可能である。
ここまでの結果をまとめると、上記した 論は、後で説明する実施例と良く一致して る。
したがって、この上述した結果は、熱泳 に駆動されたエントロピー力として全て整 的に説明できることになる。このモデルを らに改良するには、枯渇層近傍における高 子の詳細な分布の情報や上の取扱いでは無 した分子間の相互作用などを取り入れる必 がある。
ここで、図4の挿入図の
また、本願発明者らはここで述べた新し マニピュレーション法がPEG以外の高分子を いても実現できることを見出した。例えば ポリビニルピロリジン(PVP)や塩化ポリスチ ンスルホン酸(NaPSS)などの水溶性高分子でも 現できることを確認している。ただし、こ までのところPEGの場合に最も大きな効果が られている。
この発明の実施形態における有力な用途 、DNA分子の捕捉である。DNA分子のレーザー ンセットによる捕捉は、DNAをビーズなどに 着させないと困難であることが知られてい が、いくつかのグループがDNAをマニピュレ トする新しい方法を提案している。例えば 対流と熱泳動を組み合わせた方法(Braun D,Lib chaber A(2002)Trapping of DNA by thermophoretic deplet ion and convection.Phys.Rev.Lett.89:88103.を参照)や高 出力のレーザー(100mW)と対流とを使用する方 (Ichikawa M,Ichikawa H,Yoshikawa K,Kimura Y(2007)Extens ion of a DNA molecule by local heating with a lase r.Phys.Rev.Lett.99:148104.及びIchikawa M,Matsuzawa Y,Yos hikawa K(2005)Entrapping polymer chain in light well under good solvent condition.J.Phys.Soc.Jpn.74:1958-1961 参照)などがある。
しかし、本発明によれば、溶液流体の流 を誘発することなくDNA等の粒子を捕捉する とができる。このことから、ここで述べた 法は、対流効果とは全く異なるメカニズム よるものであることは明確である。
繰り返しになるが、これまで熱泳動を用 たマニピュレーションは用途が限定されて た。なぜなら熱的な力は一般に小さいから ある。本願発明において本発明者らは、熱 動の方向と大きさを簡単で明確な手法によ 制御する方法を提案した。それは、枯渇層 加わる浸透圧に基礎を置くものであり、捕 しようとする粒子の数に比べ高分子の数が いために力が増幅されることに起因してい 。
以上、本発明のメカニズムを明らかにす ため希薄溶液に関してだけ述べてきたが、P EGの濃度を上げて生物試料にとって耐えられ 温度範囲で温度を上げることにより、レー ー照射によりPEGの局所濃度が変化し、PEGに る浸透圧を数気圧変化させることが可能で る。また、捕捉力の粒子サイズ依存性を利 するとコロイドのサイズによる分離などに 応用することが可能である。
結論として、新しい光マニピュレーショ の方法とそのメカニズムがこの発明によっ 明らかとなった。加熱された点では高分子 濃度が周囲より減少するため、コロイド粒 は中心に移動した方が枯渇層によって排除 れる高分子の数が少なく、結果として高分 の運動できる空間自由度が増加する。この とにより粒子に働く力は中心に向かい、全 のエントロピーは増加する。また、高分子 度が高くなると結果として粒子のソーレ係 は負となる。この方法は、エントロピーに 礎を置いているため、従来の方法では捕捉 難しかった物体も含めて様々の種類のコロ ド物質を捕捉することが可能である。レー ーによって誘起されるエントロピー力は、 ロイドの操作やナノスケールの移動物体を 成したり、細胞や人工脂膜系における局所 浸透圧の制御など広い応用の可能性がある
また、本発明によれば、細胞やその他の 子の観察において、溶液中を浮遊する細胞 粒子を観察視野に捕捉または集積し、観察 容易にすることができる装置および方法が 供できる。また、この仕組みを利用して、 養中の浮遊細胞を経時的に自動観察する装 を構成することも可能である。
さらに、本発明によれば、捕捉、移動、 積、濃縮、または回転した目的粒子を、隔 、吸引、または固定することにより、目的 子を分離、検出、測定、または除去するこ ができる装置および方法を提供できる。そ ような装置としては、たとえば、DNAチップ プローブ近傍(ウェル等)に、目的粒子であ DNA検体を集積させ、プローブとの接触確率 高めることにより、より効率的に検体とプ ーブをハイブリダイズ(つまり固定)させ、検 出または測定感度を高めることができる装置 が考えられる。さらに、プロテインチップに おいて、タンパク質を移動、集積させ、検体 とプローブ(抗体など)の反応効率を上昇させ 検出感度を高める装置も同様に考えられる また、一般的なタンパク質等のゲル電気泳 を利用した分離方法において、電気泳動後 目的粒子(タンパク質等)のバンドを、この 明の方法で、ゲル中において更に濃縮した で、ゲルを切り取り分離することで、より 率的に目的粒子を取得することができる装 を構成できる。
さらに、本発明により、集積した目的粒 は、温度勾配に沿って大きさの順に(大から 小、または小から大)または配向して並ぶ傾 があるため、これを利用して目的粒子の結 化、目的粒子の大きさ(粒、体積、または慣 半径)の測定、目的粒子の大きさによる選別 または分離、溶液中における目的粒子の大き さの分布測定をする装置を提供することがで きる。このように、結晶化、選別、分離は、 この発明の技術分野でよく知られている様々 な方法を採用することができ、具体的には、 上記溶液保持ユニット(上記の例ではガラス 器5)をそれらの目的に適した形状に形成し、 上記移動操作ユニット8を駆動することで目 粒子を誘導することで行うことが可能であ 。また、操作の目的に応じて温度勾配生成 ニットを複数設けることで温度勾配を複数 個所で生じさせそのことで上記目的粒子を らに効率よく誘導するようにしてもよい。
次に、本実施形態による実施例を説明する
(試料と方法)
(実験装置)
赤外レーザー(Nd:YAG laser,λ=1064nm,CrystaLaser,IRC
L-500-1064)のビームを倒立顕微鏡の対物レンズ(
Olympus,N.A.=1.35,100x)を通して容器に導入し、ク
ムコートされたガラス面に焦点を絞って照
した。(図8挿入図、青色など他のレーザー
も可能なことは確認済みである)焦点の広が
は直径約1μmである。容器は溶液で満たされ
、シリコーングリースでシールされている。
粒子密度の測定を行う場合は、粒子のスペー
サーを用いて容器の厚さは2μmに製作された
容器内の温度分布は、温度感受性蛍光色素
ある2’,7’Bis(2-carboxyethyl)-5(6)carboxyfluorescein(B
CECF)(Sigma-Aldrich,Inc.No.14560)を用いて行った(図8)
。この装置では、レーザーパワーを1mW上昇さ
せる毎に約1Kの温度上昇が観測された。
他の加熱方法を試す目的で、厚い容器(20 m)も製作し、水のレーザー吸収を利用して直 接暖める方法も行った。赤外レーザー(λ=1480n m,Furukawa Electric Co.,A7XDGA15)のビームを倒立顕 鏡の対物レンズを通して容器に導入した。5 00nmのポリスチレン粒子(Polysciences,Inc.No.9003-53- 6)は、PEG6000分子の5%溶液(MW7500,Wako,Inc.No.159-0912 5)を用いて捕捉されることを確認した(図10(c)) 。
(捕捉された粒子の密度測定)
次に、本発明者らは、重量比0.05%の直径100nm
の蛍光ポリスチレンビーズ(FluoSpheres’Invitroge
n,Inc.No.F8803)を2μmの厚さの容器に入れた。捕
力が高分子濃度のどのように依存するか調
るため、0%,1%,2%,3.5%,及び5%のPEG6000分子(MW7500)
10mM Tris bufferに溶解した。各濃度において3
00枚の画像をCCDカメラ(Watec,Inc.,No.WAT-120N)で20
間取得した。画像の強度は積分され、焦点
中心として角度方向に平均され、強度分布
半径の関数として計算した。式(6)の基準点
して、密度がほぼ一定値に漸近するx 0
=16μmを採用した。
(サンプル調整)
λ-DNAは、シアニン色素YOYO-1(10nM)(Molecular Prob
e,No.Y-3601)を用い、5%PEG6000を含む10mM Tris buffer
中で基質対色素が1対6で調整した。E.Coli.は、
5%PEG6000を含む10mM Tris bufferに凍った寒天培地
から直接移動された。この条件では菌は自ら
泳ぐことはない。赤血球は発明者の一人(H.J.)
が提供し、25%血漿、PEG6000、15%の条件で測定
た。
(PEGの熱泳動)
PEG分子の熱泳動を測定するため、蛍光PEG分
(2%,MW5000,rhodamine-labeled,Nanocs,Inc.)を使用した
PEG濃度は、図5及び図6で示すように蛍光強度
から評価した。各点におけるPEG濃度の対数は
、その点での温度上昇に比例して減少してい
る。熱によるrhodamine-labeled PEGの蛍光の消失
果は、別の実験で測定を行い、-1.5%/Kである
とが確かめられたので、対応する補正を行
ている。図6は補正されたデータを示すが、
熱泳動の理論から予測される次式とよく一致
している。
このデータより、本発明者らはPEGのソー 係数として次式を得た。
この結果は、知られている値(0.045K -1
for PEG4600)(Chan J,Popov J,Kolisnek-Kehl S,Leaist D-G(
2003)Soret coefficients for aqueous polyethylene glycol
solutions and some tests of the segmental model of
polymer thermal diffusion.J.Solution Chem.32:197-214.
参照)と一致している。
(浸透圧の制御)
PEG分子の熱泳動による局所における浸透圧
の影響を調べるために、赤血球を用いて、
験を行った。浸透圧の変化による赤血球の
状の変化についてはよく知られている。PEG6
000、15%(分圧140mOS,3.4atm)を含む希薄な溶液(210mO
S,5.3atm)中に赤血球をいれ、赤血球の近くをレ
ーザー照射で10℃上昇させると、赤血球は膨
した。この温度勾配は赤血球周辺のPEGを40%
渇させ、これは分圧80mOS(1.9atm)低下に相当す
る。赤血球細胞膜は、半透膜であり、PEGの枯
渇による浸透圧の変化は、直接、赤血球の形
状に影響した。レーザー照射を停止すると、
赤血球の膨張は直ぐに元に戻った(図12、図13)
。同様の結果は、人工脂質2重膜の小胞(ベシ
ル)を用いた実験でも行い、ベシクルの体積
がレーザー照射前と後では100倍以上変化する
ことを確認した。
(実験結果)
溶液を入れた薄い容器中内に、赤外レーザ
(出力:約4mW)を集束させ、最小で0.1℃/μm、最
大で1℃/μm程度の大きな温度勾配でありなが
温度上昇は小さく抑えた(約4度)温度分布を
成した(図8および実施例の欄を参照)。温度
配を形成する方法としては、容器の片面の
ラスに光を吸収する膜をコーティングし、
を吸収させる方法と水分子の直接の光吸収
利用する2つの方法を採用した。この装置の
構成において、微小ポリスチレン粒子の密度
分布を測定した。図9は、直径100nmの蛍光ポリ
スチレン粒子の蛍光強度分布を示す。ポリス
チレン粒子は、熱泳動の影響により高温領域
から低温領域に移動するため、中心の蛍光強
度は周囲より弱くなる。一般に、分子や粒子
が正の熱泳動係数を持つ場合には、低温領域
に移動し、負の熱泳動係数を持つ場合は、高
温領域に移動する。ポリスチレン粒子やDNA分
子など多く物体は、室温付近では正の熱泳動
係数を持っていることが知られている。しか
し、我々は、溶液に僅かの高分子を加えると
、驚くべきことに熱泳動係数の符号に関わら
ず、ポリスチレン粒子やDNA分子が高温側に向
かって移動し、捕捉されることを見出した。
これは、温度勾配中に高分子が置かれたこと
により、熱泳動係数の符号や大きさが変化し
たことを意味していると考えることができる
。
本発明者らは、この現象を様々の物体を いて検証した。図9で高温から逃げた同じポ リスチレン粒子を5%のポリエチレングリコー (PEG、分子量7500)溶液に入れると、実際にレ ザーの集束点に粒子が補足される。レーザ を照射するとレーザースポットの中心付近 局所的に温度は約4℃上昇する(図8)。この時 、粒子の分布に極端な変化が観測された。粒 子は加熱点の近傍に向かって移動する。100nm 粒子は、加熱点の周辺で運動しながら捕捉 れ(図10(a))、500nmの粒子は、より大きな力で 捉されるため、レーザー光が当たった容器 上に2次元のコロイド結晶を形成する。この ときの引力が及ぶ範囲は、5μmから10μmに達し 、ほぼ温度上昇が起こっている領域に対応し ている。これは、レーザーピンセットの捕捉 領域(1μm)に比べて大きい。レーザースポット または容器を1秒間に数ミクロン程度の速度 移動すると、捕捉された粒子はレーザース ットとともに移動する。我々は、水の光吸 を用いることにより、表面加熱ではなく3次 中の焦点加熱でもトラップできることも確 した。溶液中の1点に波長1.5μmのレーザーを 集光すると、3次元のコロイド凝集体が中心 形成されることを確かめた(図10(c)と実施例 欄を参照)。
次に、本発明者らは、捕捉力を確かめる めDNA分子を用いた実験を行った。λファー のDNA(48kbps)をYOYO-1で染色したものを高分子溶 液中で局所的に温度を上げることにより捕捉 することに成功した(図10(d))。一般にビーズ どに付着させずにDNA分子を捕捉することは の方法では難しいが、この方法では直接捕 することに成功した。この方法の更なる可 性として、細胞生物学への応用可能性を調 るため、大腸菌と赤血球にも適用を試み、 ーザーで捕捉することに成功した(図10(e)及 図10(f))。
ここまでの実験に関して、新しいマニピ レーションの方法では、レーザービームの 密な調整や特別な入力角度の設定も不要で ることを付け加えておく。斜め入射のレー ービームでも動作することは、通常のレー ーピンセットと異なる点である。また、こ マニピュレーションでは、高分子濃度やレ ザーパワー、温度勾配などを変えることに り系統的に制御することが可能である。さ に、PEG以外の他の水溶性高分子でも同じ効 が起こることを我々は確認した。また、目 粒子として粒径20nmのポリスチレン粒子と粒 径6nm(慣性半径3nm)のPEGを用いて、同じ効果が こることを確認した。
(容器およびキット)
続いて、本実施形態に係る容器およびこの
器と溶液とを有するキットについて説明す
。
まず、本発明の一実実施形態に係る容器 、目的粒子を操作する方法に用いる溶液保 容器であって、高温側と低温側との単位距 あたりの温度差が少なくとも3℃/mm以上とな る温度勾配を溶液の所望の個所に生じさせる ように構成されているものである。このよう な容器は、当該容器の形体、形状、容量、容 積、大きさ、重量、等を最適化することで用 意される。
また、この容器は、前記溶液と内接する面 少なくとも1部に、光吸収性材料を設けるこ とで、上記温度差を効率的に生じさせるもの を得ることができる。この光吸収性材料とし ては、例えば、クロムやITO(酸化インジウム ズ)膜等が挙げられる。なお、ITOとは酸化イ ジウム(In 2 O 3 )に数%の酸化スズ(SnO 2 )を添加した化合物である。この光吸収性材 に、上記実施例で示したように、レーザー や赤外線等を集光させることによって、当 容器に保持された溶液の所望の箇所に温度 配を生じさせている。例えば、ITO膜に関し は、Infrared Phys.Technol.36(1995)779-784に示すよう に、赤外線を吸収することが知られている。 このため、このITOを本発明の一実施形態に係 る容器において適用する場合には、上記のよ うなITOの赤外吸収作用によって、ITOが光エネ ルギーを熱エネルギーに変換し、当該容器に 保持された溶液に温度勾配を生じさせること が可能となる。また、このITOを当該容器の所 望の箇所に適用することによって、間接的に 、当該容器に保持された溶液の所望の箇所に 温度勾配を生じさせることが可能となる。な お、ITO膜においては、集光させる光の種類と して赤外線を用いるのが好ましいが、赤外線 に限られるものではなく、前記容器に適用す る光吸収性材料の種類に応じて、集光させる 光の種類は適宜変更可能である。つまり、光 吸収性材料に特定の種類の光を集光させるこ とによって、当該集光された光を熱に変換さ せることができれば、任意の光吸収性材料と 光との組み合わせであっても良い。
また、光吸収性材料を適用しない場合に 、長波長レーザー光の照射や焦点深度の変 等によって溶液中の所望の箇所に上述した 度勾配を生じさせるように、当該容器を構 する。
次に、本発明の一実施形態に係るキット 、容器と、この容器に保持され、前記特定 目的粒子よりも体積の小さい他の粒子が前 目的粒子の濃度よりも大きくなる濃度に調 されてなる溶液とを有するものである。す わち、操作したい目的粒子を混合させるこ で、本発明に係る目的粒子を操作する方法 適用可能な溶液と容器とを用意可能にする め、本発明の一実施形態に係るキットには 容器と、当該目的粒子よりも体積の小さい の粒子が前記目的粒子の濃度よりも大きく る濃度に調節されてなる溶液とが含まれて る。本実施形態に係る前記他の粒子として 、後述するように、ポリエチレングリコー (PEG)、ポリビニルピロリジン(PVP)、塩化ポリ スチレンスルホン酸(NaPSS)等の高分子等が挙 られるが、上記のような構成を達成できる のであれば、特に限定されない。
(本実施形態の変形例、他の実施形態、用語
定義)
この発明は、上述した一実施形態に限定さ
るものではなく、発明の要旨を変更しない
囲で種々変形可能である。
例えば、上記一実施形態および実施例に いては、レーザー光を集光させることによ て、局所的な温度勾配を生じさせたが、こ 方法に限定されるものではなく、他の方法 よって局所的な温度勾配を生じさても同様 効果を得ることができる。
例えば、図11は、粒子中に吸熱部材を配 し、これに対して均一光を照射することに り、この吸熱部材の周囲で温度勾配を生じ せた例である。
この例によれば、図11(a)に示すように、 熱部材を偏心させて配置することで、目的 子の周囲の温度勾配を偏らせることにより 目的の粒子を操作・捕捉することも可能で る。さらに、図11(b)に示すように、特定の形 状を有するような吸熱部材を配置することに よって、目的の粒子を、特定の動作、例えば 回転させることも可能である。
また、本願明細書において使用する「他 粒子」とは、溶液中に存在可能なすべての 質を指す。具体的には、ポリエチレングリ ール(PEG)、ポリビニルピロリジン(PVP)、塩化 ポリスチレンスルホン酸(NaPSS)等の高分子、 である。その形状は、球状、棒状、多孔体 たは不規則な形状であり、その粒径は、目 粒子との対比において、(6)式でexpの中の第 項目(の絶対値)が第一項目(の絶対値)より大 くなる条件を満たすような粒径であればよ 。つまり、粒径比が小さい場合は、「他の 子」の密度を増やすことで条件を満たすこ が可能となる。したがって、その粒径は、 れらに限定されるものではないが、少なく も目的粒子より小さければよく、好ましく 、目的の粒子の1/2以下であり、より好まし は目的の粒子の1/7以下であり、更に好まし は目的の粒子の1/10や1/30以下であることが ましい。また、その体積は、これらに限定 れるものではないが、少なくとも目的粒子 り小さければよく、好ましくは、目的の粒 の1/8以下であり、より好ましくは目的の粒 の1/147以下であり、更に好ましくは目的の粒 子の1/1000や1/27000以下であることが望ましい なお、粒子の形状が球状ではない場合や多 体である場合等は、その慣性半径のおよぶ 囲をもって球状粒子とみなして、本願明細 において使用する粒径や体積を計算するこ も可能である。また、「他の粒子」として 分子を用いた場合は、その濃度が高くなる 高分子鎖の絡まりの効果が生じるが、その 合は絡まりネットワークの相関長をもって 子の粒径や体積を計算することが可能であ 。
また、本願明細書において使用する「目的 粒子」の形状は、球状、棒状、多孔体また 不規則な形状を含み、その粒径は、これら 限定されるものではないが、好ましくは、 なくとも10nm以上であることが望ましい。ま た、その体積は、これらに限定されるもので はないが、好ましくは、少なくとも1000nm 3 以上であることが望ましい。
また、本願明細書において使用する「溶 」とは、任意の溶媒及び溶質を有し、2以上 の物質から構成される液体又はゲル状態の混 合物である。
また、本願明細書において使用する「熱 動現象」とは、上述したように、温度勾配 ある領域に存在する粒子が、当該粒子の熱 動、又は当該分子と水分子等との相互作用 よって、高温側から低温側に、又は低温側 ら高温側に移動する現象である。一般に、 子や粒子が正の熱泳動係数を持つ場合には 低温側に移動し、負の熱泳動係数を持つ場 は、高温側に移動する。また、ポリスチレ 粒子やDNA分子など多く物体は、室温付近で 正の熱泳動係数を有することが知られてい 。
また、本願明細書において使用する「枯 力」とは、任意の2つの粒子間の距離が、溶 液中の他の高分子が入り込めない程度に接近 する場合に発生する力を指す。
さらに、本願明細書において使用する「 度」とは、重量濃度のことではなく、数密 を意味する。
また、この実施形態では、溶液に温度勾 を生じさせる温度勾配生成ユニットとして レーザー光を照射するレーザー光源を例と て説明したが、例えば、LED光を照射するこ によって温度勾配を生じさせても良い。ま 、発熱電極を溶液の所望の箇所に配置対向 せることによって温度勾配を生じさせても い。さらに、金属膜コーティングを用いず 、長波長のレーザー光を用いたり、レーザ 光の焦点深度を変化させることにより局所 熱を実現し、温度勾配を生じさせても良い
要するに、この発明では、他の粒子であ PEG等の濃度が、前記温度勾配の高温側から 温側に向かって高くなる濃度勾配を生じさ るような温度勾配を生じさせるものであれ 良く、温度勾配は3℃/mm程度で良く、このよ うな手段としては上述した例以外にも様々な ものが考えられる。また、別の観点では、前 記温度勾配生成ユニットは、前記他の粒子が 、前記目的粒子に対し、前記温度勾配の高温 側に向かって働く枯渇力を生じさせるような 温度勾配を生じさせるものであればよい。
さらに、前記温度勾配を生じさせる前記 定の箇所を移動させ、前記目的粒子を上記 定の箇所の移動に追従するように操作する 動操作ユニットについては、上記の例に限 ず、さまざまなものを採用することが可能 ある。たとえば、光源を移動させるのでは く、ガラス容器側を移動させるような方法 とってもよい。
また、その他、本発明は、さまざまに変 可能であることは言うまでもない。
1…溶液
2…目的粒子
3…他の粒子
4…レーザー光源
5…ガラス容器
6…金属膜コーティング
8…移動操作ユニット
L…レーザー光
Next Patent: WO/2009/110267
