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Title:
METHOD FOR MODIFICATION OF CELLULOSE, MODIFIED CELLULOSE, CELLOURONIC ACID, AND CELLULOSE MICROCRYSTAL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/107795
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a method for modifying a cellulose while preventing the reduction of its molecular weight. The method involves the step of oxidizing an alkali-treated cellulose or a regenerated cellulose in a neutral or acidic reaction solution containing an N-oxyl compound and an oxidizing agent capable of oxidizing an aldehyde group.

Inventors:
ISOGAI AKIRA (JP)
SAITO TSUGUYUKI (JP)
TAMURA NAOYUKI (JP)
HIROTA MASAYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/053727
Publication Date:
September 03, 2009
Filing Date:
February 27, 2009
Export Citation:
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Assignee:
UNIV TOKYO (JP)
ISOGAI AKIRA (JP)
SAITO TSUGUYUKI (JP)
TAMURA NAOYUKI (JP)
HIROTA MASAYUKI (JP)
International Classes:
C08B15/04
Foreign References:
JP2003089701A2003-03-28
Other References:
ISOGAI, A. ET AL.: "Preparation of polyuronic acid from cellulose by TEMPO-mediated oxidation", CELLULOSE, vol. 5, no. 3, September 1998 (1998-09-01), pages 153 - 164
Attorney, Agent or Firm:
SHIGA, Masatake et al. (JP)
Masatake Shiga (JP)
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Claims:
 N-オキシル化合物とアルデヒド基を酸化する酸化剤とを含む中性又は酸性の反応溶液中で、アルカリ処理セルロース又は再生セルロースを酸化させる工程を有することを特徴とするセルロースの改質方法。
 前記反応溶液に緩衝液を添加することを特徴とする請求項1に記載のセルロースの改質方法。
 前記酸化剤として亜ハロゲン酸又はその塩を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースの改質方法。
 前記N-オキシル化合物が、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル(TEMPO)、又は4-アセトアミド-TEMPOであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のセルロースの改質方法。
 結晶表面に位置するセルロースのC6位水酸基の少なくとも一部が、カルボキシル基又はカルボキシル基の金属塩のみで置換されていることを特徴とする改質セルロース。
 セルロースのC6位水酸基の全てあるいは50%以上が、カルボキシル基又はカルボキシル基の金属塩のみで置換されていることを特徴とするセロウロン酸。
 結晶表面に位置するセルロースのC6位水酸基の少なくとも一部が、カルボキシル基又はカルボキシル基の金属塩のみで置換されていることを特徴とする不水溶性のセルロース微結晶。
Description:
セルロースの改質方法、改質セ ロース、セロウロン酸、セルロース微結晶

 本発明は、セルロースの改質方法、改質セ ロース、セロウロン酸、セルロース微結晶 関するものである。
  本願は、2008年2月29日に、日本に出願され 特願2008-051351号に基づき優先権を主張し、 の内容をここに援用する。

 天然に多量に存在するバイオマスである ルロースは、その安全性、強度など利点を かし、種々の分野で用いられている。また 化学改質によって新たな機能を付加した様 な改質セルロースが利用されており、代表 な例として、セルロースの水酸基を接点と てカルボキシル基を化学的に導入すること 成されている。

 例えば特許文献1,2に記載の処理方法は、主 化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いて -グルコースの1級水酸基をカルボキシル基に 酸化するものである。この処理方法によれば 、アルカリとモノクロロ酢酸を用いる部分カ ルボキシメチル化や、クロロホルム中にN 2 O 4 を添加するカルボキシル化のように毒物や劇 物を使用しないため、安全で効率的にカルボ キシル基を導入することができる。

特開平10-251302号公報

特開2001-49591号公報

 上記従来の処理方法では、触媒量のNaBrと TEMPOを含むアルカリ処理セルロースや再生セ ロースの水分散液に、次亜塩素酸ナトリウ (NaClO)水溶液を主酸化剤として加えて酸化反 応(TEMPO触媒酸化反応)を進める。この処理方 では、反応中にカルボキシル基の生成によ てpHが低下するため、希水酸化ナトリウム水 溶液(通常、0.5M程度のNaOH)を常に添加して反 系のpHを8~11に維持する。

 図9,10に、次亜塩素酸ナトリウムを主酸化 剤とし、臭化ナトリウム(NaBr)とTEMPOを触媒量 えることによって、セルロースの1級水酸基 をアルデヒド基を経てカルボキシル基に酸化 する機構を示す。上記の方法を再生セルロー スあるいはマーセル化セルロース(5%以上のNaO H水溶液で膨潤させた後、水洗したセルロー )に適用した場合には、セルロースのC6位の1 水酸基のみを全て、選択的にアルデヒド基 経てカルボキシル基に酸化することにより 水溶性のセロウロン酸(Cello-Uronic acid, ポリ ウロン酸)が得られる。また、天然セルロー に適用した場合には、セルロースの結晶構 を維持しながら、セルロースの結晶表面に 置するC6位の1級水酸基のみを、選択的にカ ボキシル基あるいはアルデヒド基に酸化す ことができ、C6位の水酸基がカルボキシル基 又はカルボキシル基のナトリウム塩で置換さ れた改質セルロースを得ることができる。

 しかし、本発明者らがさらに研究を重ね ところ、上記従来の処理方法及びこれによ 得られる改質セルロースにおける課題も明 かになってきた。以下、かかる課題につい 詳細に説明する。

 (1)まず、従来の処理方法により得られる改 セルロースでは、処理前よりも大きく重合 (分子量)が低下してしまうことが判明した 例えば、再生セルロースを処理すると、未 理時には350以上である重合度が40程度にまで 低下する。
 そこで本発明は、分子量の低下を抑制でき セルロースの改質方法を提供することを目 の一つとする。

 (2)また、従来の処理方法では、TEMPO触媒酸 反応中に、反応液のpHを常に一定にする必要 がある。そのために、反応溶液にpHメーター 設置し、希NaOH水溶液を滴下し続けるオープ ン型の反応系を構成しなければならず、反応 容器を密閉できないことで、反応により生じ るガスの処理や、反応効率の点でも不利であ る。
 そこで本発明は、反応系の改善によりpH管 を容易にするとともに反応容器の密閉を可 にしたセルロースの改質方法を提供するこ を目的の一つとする。

 上記課題を解決するために、本発明のセ ロースの改質方法は、N-オキシル化合物と アルデヒド基を酸化する酸化剤とを含む中 又は酸性の反応溶液中で、アルカリ処理セ ロース又は再生セルロースを酸化させる工 を有することを特徴とする。

 本発明の改質方法では、N-オキシル化合 の存在下、アルデヒド基を酸化する酸化剤 用いて、アルカリ処理セルロースや再生セ ロースの酸化処理を行うので、セルロース C6位水酸基をカルボキシル基にまで酸化する ことができ、C6位にアルデヒド基が生成する を防ぐことができる。

 ここで、従来の処理方法では、pH8~11の弱ア カリ性条件でTEMPO触媒酸化を行うため、図11 中央に示すように、C6位にアルデヒド基(CHO基 )が中間体として生成する。このアルデヒド には、pH8~11の条件で極めて容易にベータ脱 反応が起こる。その結果、図11右側に示すよ うに、セルロースの分子鎖が切断され、得ら れる改質セルロースの分子量が著しく低下す ると考えられる。
 これに対して本発明の改質方法では、上述 たようにアルデヒド基が生成するのを防ぐ とができ、仮にアルデヒド基が短時間存在 たとしても、反応溶液のpHが中性又は酸性 あるため、弱アルカリ~強アルカリ性で起き ベータ脱離反応が生じることはない。
したがって本発明によれば、アルデヒド基の 反応によるセルロース分子鎖の切断を防ぐこ とができ、重合度の高い改質セルロースを得 ることができる。

 また、アルデヒド基が速やかに酸化され ことで、セルロース結晶の表面にマイナス 電を有するカルボキシル基のみが生成され ので、不水溶性の改質セルロースを水等に 散させた場合には、カルボキシル基による 電反発作用によって改質セルロースを均一 分散させることができる。

 前記反応溶液に緩衝液を添加することが好 しい。このような方法とすることで、pH維 のために酸やアルカリを添加する必要が無 なり、pHメーターも不要になる。したがって 、本発明に係る改質方法では反応容器を密閉 することができる。
 そして、反応容器を密閉すれば、反応系に する加温や加圧が可能である。また反応溶 から発生するガスが系外に放出されること ないため安全面でも優れた改質方法となる また酸化剤の分解によって生じるガスが大 に放散されることがないため、酸化剤の使 量を少なくすることができるという利点も る。

 前記酸化剤としては亜ハロゲン酸又はその を用いることができる。また、前記酸化剤 して、過酸化水素と酸化酵素の混合物、又 過酸を用いることもできる。
 これらの酸化剤を用いることで、1級水酸基 をカルボキシル基に酸化することができ、C6 のアルデヒド基の生成を効果的に防ぐこと できる。

 前記反応溶液のpHを4以上7以下とすること が好ましい。このような範囲とすることで、 効率よく酸化剤をセルロースに作用させるこ とができ、セルロースの改質を短時間で効率 よく実施することができる。

 前記反応溶液に次亜ハロゲン酸又はその を添加することが好ましい。このような改 方法とすることで、反応速度を著しく向上 せることができ、処理効率を大きく向上さ ることができる。

 前記N-オキシル化合物が、2,2,6,6-テトラメ チル-1-ピペリジン-N-オキシル(TEMPO)であるこ が好ましい。また、本発明に係る改質方法 は、N-オキシル化合物として4-アセトアミドT EMPOを用いることで、処理効率を向上させる とができる。

 次に、本発明の改質セルロースは、セルロ スのC6位水酸基の全てあるいは50%以上が、 ルボキシル基又はカルボキシル基の金属塩 みで置換されていることを特徴とする水溶 のセロウロン酸である。あるいは結晶表面 位置するセルロースのC6位水酸基の少なくと も一部が、カルボキシル基又はカルボキシル 基の金属塩のみで置換されていることを特徴 とする水不溶性の改質セルロースである。
 本発明に係る改質セルロースは、先に記載 本発明の改質方法により得られる改質セル ースであり、改質対象物によって種々の形 を採りうる。
 例えば、再生セルロースを用いた場合には 従来の処理方法を用いた場合よりも重合度 高いセロウロン酸が得られる。また、アル リ処理したセルロースを用いた場合には、 水溶性のセルロース微結晶を得ることがで る。このセルロース微結晶は、その表面に 入されたカルボキシル基の荷電反発作用に って、水等の分散媒に均一に分散させるこ ができるものである。

 なお、金属塩としては、先の改質方法で られる典型的なものはナトリウム塩である 、他の金属であってもよく、金属の置換に って不水溶性となったり、機能性を付与さ た改質セルロースも本発明の範囲に含まれ 。置換可能な金属としては、カリウム、リ ウムなどのアルカリ金属のほか、カルシウ 、マグネシウム、アルミニウム、シリカ、 タン、バナジウム、マンガン、鉄、コバル 、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バリウムなど 々なものが挙げられる。これらの金属は、 途および必要物性などにより自在に選択す ことができる。

 本発明のセルロースの改質方法によれば、 ルロースの1級水酸基がカルボキシル基又は カルボキシル基の金属塩のみで置換され、従 来に比して重合度の高い改質セルロースを得 ることができる。かかる改質方法は、セロウ ロン酸の調製やセルロース微結晶の機能化に 適用することができる。
 本発明の改質セルロースは、改質処理時の 分子化が抑えられた重合度の高いものであ ため、高分子量のセロウロン酸となる。ま 、機能化されたセルロース微結晶となる。

本発明に係る改質方法におけるカルボ シル基の生成機構を示す図。 本発明に係る改質方法におけるセルロ スの酸化機構を示す図。 本発明に係る改質方法使用される装置 を示す図。 従来の処理方法で使用される装置を示 す図。 実施例1に係るNMRスペクトル測定結果を 示すグラフ。 実施例1に係るセロウロン酸のカルボキ シル基量測定結果。 実施例1に係るセロウロン酸の重合度測 定結果。 実施例2に係る改質セルロースのカルボ キシル基量測定結果。 実施例2に係る改質セルロースの電子顕 微鏡写真。 従来処理方法におけるセルロースの酸 機構を示す図。 従来処理方法におけるセルロースの酸 化機構を示す図。 ベータ脱離反応による分子鎖の切断を 説明する図。

符号の説明

 100 反応容器、101 キャップ、110 反応溶 、120 加熱装置

 以下、図面を参照しつつ本発明の実施の 態について説明する。

 (セルロースの改質方法)
 本発明に係るセルロースの改質方法は、改 対象物であるアルカリ処理セルロースや再 セルロースに、反応溶液が中性又は酸性で る条件下で、N-オキシル化合物を酸化触媒 用いて、アルデヒド基を酸化する酸化剤を 用させることで上記のセルロースを酸化さ るものである。
 本発明に係る改質方法を適用できるセルロ スとしては、植物資源からリグニン等の不 物を除去、精製して得る天然セルロースを ったん溶媒に溶解させて得られる再生セル ース(ビスコースレーヨン、銅アンモニアレ ーヨン(キュプラ)、テンセル、ポリノジック リョセル等)のほか、セルロース(天然セル ース、再生セルロース)をアルカリ処理した のを挙げることができる。

 天然セルロースは、植物、動物、バクテ ア産生ゲル等のセルロースの生合成系から 離した精製セルロースである。具体的には 針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コット リンターやコットンリント等の綿系パルプ 麦わらパルプやバガスパルプ等の非木材系 ルプ、バクテリアセルロース、ホヤから単 されるセルロース、海草から単離されるセ ロースなどを例示することができる。

 セルロースのアルカリ処理は、例えばセル ースに対してアルカリ溶液を散布して湿潤 せる方法や、アルカリ水溶液にセルロース 浸漬又は懸濁する方法により行うことがで る。
 アルカリとしては、通常、アルカリ金属成 、例えばアルカリ金属水酸化物(水酸化ナト リウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムな ど)、アルカリ金属炭酸水溶液(炭酸水素ナト ウム、炭酸水素カリウムなど)を使用できる 。これらのアルカリ金属化合物は単独で又は 2種以上混合して用いてもよい。これらのう でも、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化 トリウムを用いることが好ましい。用いる ルカリの濃度は、セルロースを膨潤させて ルロースI型の結晶構造を非晶あるいはセル ースII型に変換するのに必要な濃度であり 6%以上30%以下が望ましい。アルカリ処理時間 は1分以上1日以下が望ましい。アルカリ処理 はろ過等により水で洗浄してアルカリを除 し、未乾燥状態で次の酸化反応に供する。

 セルロースを酸化する工程において、反 溶液におけるセルロースの分散媒には、典 的には水が用いられる。反応溶液中のセル ース濃度は、試薬(酸化剤、触媒等)の十分 溶解が可能であれば特に限定されない。通 は、反応溶液の重量に対して5%程度以下の濃 度とすることが好ましい。

 また、繊維状のセルロースの改質処理を う場合には、叩解等の表面積を拡大する処 を施してもよい。これにより反応効率を高 ることができ、生産性を高めることができ 。なお、セルロースは、単離、精製の後や ルカリ処理の後、ネバードライ状態で保存 たものを用いることが好ましい。ネバード イ状態で保存することで、ミクロフィブリ の集束体を膨潤しやすい状態に保持するこ ができるので、反応効率を高めることがで る。

 反応溶液に添加される触媒としては、N-オ シル化合物が用いられている。N-オキシル化 合物としては、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペ ジンーN-オキシル)及びC4位に各種の官能基 有するTEMPO誘導体を用いることができる。特 に、TEMPO及び4-アセトアミドTEMPOは、反応速度 において好ましい結果が得られている。
 N-オキシル化合物の添加は触媒量で十分で り、具体的には、反応溶液に対して0.1~4mmol/l の範囲で添加すればよい。好ましくは、0.1~2m mol/lの添加量範囲である。

 酸化剤としては、水酸基の酸化によって 成するアルデヒド基も酸化することができ 酸化剤が用いられる。このような酸化剤と ては、亜ハロゲン酸又はその塩(亜塩素酸ナ トリウムなど)、過酸化水素と酸化酵素(ラッ ーゼ)の混合物、過酸などを例示することが できる。なお、過酸としては、過硫酸(過硫 水素カリウムなど)、過酢酸、過安息香酸な 、種々のものを用いることができる。酸化 の含有量は、1~50mmol/lの範囲とすることが好 ましい。

 このようにアルデヒド基をカルボキシル基 酸化することができる酸化剤を用いること 、C6位のアルデヒド基の生成を防ぐことが きる。
 図1は、本発明におけるカルボキシル基の生 成機構を示す図である。図1に示すように、N- オキシル化合物を触媒とした酸化反応では、 グルコース成分の1級水酸基が選択的に酸化 れてアルデヒド基を含む中間体が生成する 能性がある。しかし本発明では、アルデヒ 基を酸化する酸化剤を含むため、この中間 のアルデヒド基は速やかに酸化され、カル キシル基に変換される。これにより、アル ヒド基を含まない改質セルロースを得るこ ができる。

 また、上述した酸化剤を主酸化剤として用 るのを前提として、次亜ハロゲン酸又はそ 塩を添加することが好ましい。例えば、少 の次亜塩素酸ナトリウムを添加することで 反応速度を大きく向上させることができる
 図2は、次亜塩素酸ナトリウムを含む場合の 反応機構を示す図である。図2に示すように 反応溶液に添加された次亜塩素酸ナトリウ は、TEMPOの酸化剤として機能し、酸化された TEMPOがセルロースのC6位の1級水酸基を酸化し C6位にアルデヒド基を生成する。そして、 成したアルデヒド基は、主酸化剤である亜 素酸ナトリウムによって迅速にカルボキシ 基に酸化される。また、アルデヒド基の酸 の際に、亜塩素酸ナトリウムが次亜塩素酸 トリウムに変化する。さらに、生成した次 塩素酸ナトリウムはTEMPOの酸化剤として補充 される。
 このように、反応溶液に次亜塩素酸ナトリ ムを添加することで、TEMPOの酸化反応を促 することができ、反応速度を高めることが きる。

 なお、次亜ハロゲン酸塩等の添加量を多 しすぎると、これらが主酸化剤として機能 るためにセルロースの低分子化が生じたり て所望の改質セルロースを得られなくなる それがある。そこで、次亜ハロゲン酸塩等 添加量は、1mmol/l程度以下とすることが好ま しい。

 本発明において、反応溶液のpHは、中性 ら酸性の範囲で維持される。より具体的に 、4以上7以下のpH範囲とすることが好ましい 特に、反応溶液のpHが8以上とならないよう 留意すべきである。これは、セルロースのC 6位に一時的に生成するアルデヒド基による ータ脱離反応が生じないようにするためで る。

 さらに、反応溶液に緩衝液を添加すること 好ましい。緩衝液としては、リン酸緩衝液 酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝 、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液等、種々の 衝液を用いることができる。
 緩衝液を用いて反応中のpH変化を抑えるよ にすることで、pHを維持するための酸やアル カリの連続的な添加が不要になり、またpHメ ターの設置も不要になる。そして、酸やア カリの添加が不要であることから、反応容 を密閉することができる。

 ここで、図3Aは、本発明の改質方法を実施 るための装置の一例を示す図である。図3Bは 、従来の処理方法を実施するための装置を示 す図である。
 図3Aに示すように、本発明の製造方法では 反応容器100に改質対象物(セルロース)、触媒 、酸化剤、緩衝液等を含む反応溶液110が収容 されており、さらにキャップ101により反応容 器100は密閉されている。また、温浴槽120のよ うな加熱装置を用いて、反応容器100を加熱す ることができ、反応温度を上昇させることが できる。また場合によっては、反応容器100に 内部を加圧する加圧装置を併設してもよい。

 一方、図3Bに示す従来の処理方法では、 応溶液210を収容した反応容器200の上部は開 しており、この開口部を介して、併設され pH調整装置250のpH電極251や、pH調整用の希NaOH 液を供給するノズル252が反応溶液210内に設 されている。このように従来の処理方法で 、反応容器210をオーブン型にせざるを得な ため、共酸化剤である次亜塩素酸ナトリウ の分解により発生した塩素ガスが大気中に 部放出されてしまう。そうすると、放出さ た塩素ガスを処理する装置が必要になった 、酸化剤の損失により次亜塩素酸ナトリウ を必要以上に添加しなければならなくなる

 このように、本発明に係る改質方法では 反応容器100を密閉することができるので、 応溶液110の温度を上昇させて反応効率を高 ることができる。したがって本発明によれ 、セルロースを効率よく短時間で改質する とができる。一方、従来の処理方法でも反 溶液210の温度を上昇させることは可能であ が、塩素ガスの放出量が増えるため、排ガ 処理や酸化剤の使用量の点で好ましくない

 本発明のセルロースの改質方法では、改 対象物であるセルロースの態様によって異 る形態の改質セルロースを得ることができ 。なお、先に説明した改質処理の条件は、 下に示す改質対象物に合わせて適宜変更す きものである。

 まず、再生セルロースを改質対象物とし 場合には、高分子量のセロウロン酸を得る とができる。このセロウロン酸は、種々の 途、例えば、製紙用添加剤、糊剤、接着剤 乳化剤や保護コロイド、懸濁剤、合成洗剤 ビルダー、粘性安定剤(乳剤、クリーム、ジ ャムなど安定剤)、結合剤、粘調剤などとし 用いることができる。

 さらに、アルカリ処理したセルロースを改 対象物とした場合には、不水溶性のセルロ ス微結晶が得られる。このセルロース微結 は、セルロースII型の結晶構造を有する10~50 0nmサイズの微結晶(ナノクリスタル)であり、 来得られていない新規物質である。
 このアルカリ処理したセルロースから得ら るセルロース微結晶は、それ自体は不水溶 であるが、軽微な分散処理によって媒体中 分散させることができる。すなわち、セル ース微結晶が媒体に分散されたセルロース 結晶分散液を得ることができる。

 分散に用いる媒体(分散媒)としては、通 は水が好ましいが、水以外にも目的に応じ 親水性の有機溶媒を用いることができる。 のような親水性有機溶媒としては、水に可 のアルコール類(メタノール、エタノール、 ソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタ ノール、tert-ブタノール、メチルセロソルブ エチルセロソルブ、エチレングリコール、 リセリン等)、エーテル類(エチレングリコ ルジメチルエーテル、1,4-ジオキサン、テト ヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メ ルエチルケトン)やN,N-ジメチルホルムアミド 、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスル キサイド等を例示することができる。さら 、複数種の親水性有機溶媒を混合したもの あってもよい。

 分散工程において用いる分散装置として 、一般的なバス型超音波照射装置や家庭用 キサーで十分であるが、超音波ホモジナイ ー、高圧ホモジナイザー、二軸混練り装置 の装置を用いてもよい。これらのほかにも 家庭用や工業生産用に汎用的に用いられる 散装置で容易にセルロース微結晶分散液を られる。

 (改質セルロース)
 次に、以上に説明した本発明の改質方法に り得られる不水溶性の改質セルロースは、 晶表面に位置するセルロースのC6位水酸基 少なくとも一部が、カルボキシル基又はカ ボキシル基の金属塩のみで置換されている 水溶性の改質セルロースとして特定するこ ができる。また本発明のセロウロン酸は、 ルロースのC6位水酸基の全て又は50%以上が、 カルボキシル基又はカルボキシル基の金属塩 のみで置換されているセロウロン酸として特 定することができる。
 あるいは、結晶表面に位置するセルロース C6位水酸基の少なくとも一部がカルボキシ 基の金属塩で置換され、かつアルデヒド基 含有量が0.05mmol/g未満である不水溶性の改質 ルロースとして特定することができる。又 セルロースのC6位水酸基の全て又は50%以上 、カルボキシル基又はカルボキシル基の金 塩のみで置換され、かつアルデヒド基の含 量が0.05mmol/g未満であるセロウロン酸として 定することができる。

 すなわち、不水溶性の改質セルロースの結 表面あるいはセロウロン酸において、C6位 アルデヒド基が全く無い、あるいは全く無 とみなせるものである。なお、アルデヒド が全く無いとみなせる場合というのは、ア デヒド基の含有量が0.05mmol/g未満であること 対応する。
 このような範囲とすることで、アルデヒド に起因する重合度の低下が抑えられ、所望 改質効果を得ることができる。アルデヒド の量は、より好ましくは0.01mmol/g以下であり 、さらに好ましくは、0.001mmol/g以下である。
 なお、現在知られている測定方法における ルデヒド基の検出限界が0.001mmol/g程度であ から、望ましい態様としては、測定を行っ もアルデヒド基が検出されない改質セルロ スである。
 また、従来の処理方法では、TEMPO触媒酸化 おいて、必ずカルボキシル基とアルデヒド の双方が生成する。したがって本発明の改 セルロースは、上記の特徴によって従来の 理方法で得られる改質セルロースとは明確 異なるものとして特定することができる。

 また、本発明に係る改質セルロースは、C 6位のアルデヒド基を含まないものであるこ で、加熱による変性を生じにくいものとな ている。すなわち、従来の処理方法でセル ースを処理すると、高温に加熱したときに 色を生じる改質セルロースとなるが、本発 に係る改質セルロースでは、このような着 は生じない。したがって本発明によれば、 熱される用途にも好適に用いることができ 改質セルロースを得ることができる。

 なお、従来の処理方法で得られる改質セ ロースに着色が生じるのは、以下の理由に ると考えられる。従来の処理方法で得られ 改質セルロースの結晶表面に生成するアル ヒド基は、0.5mmol/g以下(通常0.3mmol/g以下)と ルボキシル基に比べて少量であるが、洗浄 の改質セルロースの結晶表面にも残存して る。そのために、アルデヒド基を有する還 糖におけるキャラメル化と同様の反応によ 着色が生じると考えられる。

 なお、本発明に係る改質セルロースにおい 、カルボキシル基含有量は0.05mmol/g~5mmol/gで ることが好ましく、0.05mmol/g~1mmol/gであるこ がより好ましい。さらには、0.05mmol/g~1mmol/g あることが望ましい。
 また、金属塩を形成する金属としては、ナ リウム、カリウム、リチウム、カルシウム マグネシウム、アルミニウム、シリカ、チ ン、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト ニッケル、銅、亜鉛、銀、バリウムなどを げることができる。これらの金属は必要と れる物性や用途に応じて適宜選択すること できる。

 以下、実施例により本発明をさらに詳細 説明する。ただし、本発明は以下の実施例 限定されるものではない。

 (実施例1)
 本実施例では、本発明に係るセルロースの 質方法を用いたセロウロン酸の製造方法に いて説明する。

 再生セルロース(旭化成社製ベンリーゼ:重 度680)1gを、pH4.8に調整した0.1M酢酸水溶液に 散させた。
 三角フラスコに入れた分散液に、4-アセト ミド-TEMPOを0.096g(0.45mmol)、次亜塩素酸ナトリ ムの9%溶液を0.83ml(1mmol)、市販の80%亜塩素酸 トリウムを1.70g(15mmol)添加して反応溶液を調 製した。その後、三角フラスコを密閉し、60 に保持した状態で、マグネチックスターラ で攪拌した。

 次に、エタノール:水=3:1の溶液に反応溶 を注入し、反応溶液中の固形分をエタノー :水=3:1の洗浄液によってろ過あるいは遠心分 離洗浄した。次いで、得られた固形分を乾燥 させることで、セルロースをTEMPO酸化させた ロウロン酸を得た。

 そして、得られたセロウロン酸を水に溶解 せ、 13 C-NMRスペクトルを測定した。測定結果を図4に 示す。図4に示すように、60ppm付近のセルロー スのC6位のピークが全く観測されていないこ から、上記の製造手順により均一な化学構 を有するセロウロン酸が得られていること 確認された。

 また、本発明者らは、触媒及び緩衝液の種 、及び反応時間を上記の製造手順から変更 てセロウロン酸を調製した。
 具体的には、触媒の種類(TEMPO、4-アセトア ド-TEMPO)と、緩衝液の種類(pH4.8酢酸緩衝液、p H6.8リン酸緩衝液)とをそれぞれ組み合わせた4 種類の反応溶液を用い、反応時間(8時間、24 間、72時間)を変えてセロウロン酸を調製し 。
 そして、得られたセロウロン酸について、 ルボキシル基の量の測定と、重合度の測定 行った。

 カルボキシル基の量は、以下の手法により 定することができる。
 まず、乾燥重量を精秤したセロウロン酸試 から0.5~1重量%のスラリーを60ml調製し、0.1M 塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05M 水酸化ナトリウム水溶液を滴下して電気伝 度を測定する。測定はpHが11になるまで続け る。そして、電気伝導度の変化が緩やかな弱 酸の中和段階において消費された水酸化ナト リウム量(V)から、下式を用いて官能基量を決 定する。この官能基量がカルボキシル基の量 である。
 官能基量(mmol/g)=V(ml)×0.05/セルロースの質量( g)

 図5は、上記各試料についてのカルボキシル 基量の測定結果を示すグラフである。
 図5に示す結果から、4-アセトアミド-TEMPOを いた場合、初期(反応時間が短い条件)では pH4.8の酢酸緩衝液の方が効率は高くなるが、 24時間以上の条件では酢酸緩衝液とリン酸緩 液で差がないことが確認された。これに対 て、TEMPOを用いた場合には、pH6.8のリン酸緩 衝液を用いた場合の方が反応効率が高くなっ た。

 なお、上記と同様の式からアルデヒド基 量も測定することができる。上記のカルボ シル基量の測定に供したセルロース試料を 酢酸でpH4~5に調整した2%亜塩素酸ナトリウム 水溶液中でさらに48時間常温で酸化し、上記 法によって再び官能基量を測定する。測定 れた官能基量から上記カルボキシル基の量 引いた量がアルデヒド基の量である。

 次に、重合度の測定結果について説明す 。本願明細書において重合度とは、「1本の セルロース分子中に含まれる平均グルコース 成分の数」であり、重合度に162をかければ分 子量となる。本実施例では、0.5Mの銅エチレ ジアミン溶液に、前もって水素化ホウ素ナ リウムで還元して、残存アルデヒド基をア コールに還元した後に各酸化セルロース試 を溶解させ、粘度法にて重合度を求めた。 エチレンジアミン溶液はアルカリ性である め、酸化セルロース中にアルデヒド基が残 していた場合には、溶解過程でベータ脱離 応が起こって分子量が低下してしまう可能 があるために、予め還元処理してアルデヒ 基をアルコール性水酸基に変換しておいた 0.5Mの銅エチレンジアミン溶液に溶解させた ルロースの粘度から、セルロースの重合度 求める式については、以下の文献を参考に た。

 (文献)Isogai, A., Mutoh, N., Onabe, F., Usuda, M. , “Viscosity measurementsof cellulose/SO 2 -amine-dimethylsulfoxide solution”, Sen’i Gakkaishi, 45, 299-306 (1989).

 図6は、重合度の測定結果を示すグラフで ある。図6に示すように、いずれの条件にお ても、セロウロン酸の重合度は、改質処理 施さないセルロース(重合度680)に比べて低下 しており、130~220程度である。しかし、従来 処理方法で得られるセロウロン酸の重合度 40程度であるから、本発明に係る改質方法に より得られるセロウロン酸は従来品に比して 十分に高い重合度を有している。

 (実施例2)
 本実施例では、本発明に係るセルロースの 質方法を用いたセルロース微結晶の機能化 ついて説明する。

 本実施例では、改質対象物として、以下の 順でアルカリ処理したセルロースを用いた
 針葉樹漂白クラフトパルプと、広葉樹クラ トパルプをそれぞれ20%水酸化ナトリウム水 液に浸漬し、これらを水洗浄してアルカリ 理セルロース(マーセル化セルロース)を得 。そして、このアルカリ処理セルロースを 上記実施例1で用いた反応溶液によって改質 理した。得られた改質セルロースは、実施 1で調製したセロウロン酸と異なり、精製後 も水には溶解しないものであった。

 また、得られた改質セルロースについて、 ルボキシル基量の測定と、X線回折パターン の測定を行った。
 図7は、カルボキシル基量の測定結果を示す グラフである。図7に示すように、アルカリ 理セルロースを用いた場合には、再生セル ースを用いた場合と比べるとカルボキシル の導入量は少ないことが確認された。また X線回折パターンの測定結果から、本実施例 改質セルロースはセルロースII型の結晶形 有しており、改質処理後もその結晶化度を 持していることが確認された。

 次に、得られた改質セルロースを水に分散 せ、超音波照射処理したところ、透明な分 液が得られた。
 図8は、かかる水分散液の乾燥物の電子顕微 鏡写真である。図8に示すように、本実施例 得られた改質セルロースは、10~500nm程度のサ イズのセルロース微結晶(ナノクリスタル)で ることが判明した。
 このように、本発明に係るセルロースの改 方法をアルカリ処理セルロースに適用する とで、セルロースII型の結晶形を有し、表 にカルボキシル基が導入されたセルロース 結晶及びその分散液を調製することができ 。

 天然に多量に存在するセルロースの安全性 強度など利点を生かしながら、本発明のセ ロースの改質方法によって、従来に比して 合度の高い改質セルロースを得ることがで る。種々の分野で用いられている天然セル ースより、利用分野がさらに広がることが 待される。
 また、本発明の水溶性の改質セルロースは 改質処理時の低分子化が抑えられた重合度 高いものであるため、高分子量のセロウロ 酸となる。また、不水溶性の改質セルロー は、機能化されたセルロース微結晶となる 種々の分野での利用が期待される。
 それらの産業上の利用可能性は、例えば、 来の衣料用品、雑貨用品、インテリア用品 寝具用品、産業用資材等の繊維製品が挙げ れる。また、製紙用添加剤、糊剤、接着剤 乳化剤や保護コロイド、懸濁剤、合成洗剤 ビルダー、粘性安定剤、結合剤、粘調剤な が挙げられる。さらに、生分解性高分子材 、生体親和材料又はナノテク・ナノ材料な の新しい応用も期待される。