馬場 剛志 (〒93 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内 Saitama, 3510193, JP)
本田技研工業株式会社 (〒56 東京都港区南青山二丁目1番1号 Tokyo, 1078556, JP)
BABA, Tsuyoshi (4-1, Chuo 1-chome, Wako-sh, Saitama 93, 3510193, JP)
| エタノールを製造するために、セルロース系バイオマス原料から得られたセルロースを酵素により糖化するときに、該セルロース系バイオマス原料を前処理する方法において、 所定の間隔を存して相対向して配置された1対の砥石の間に、該セルロース系バイオマス原料と水とを連続して供給し、該砥石の一方を固定し、他方を回転させて、該セルロース系バイオマス原料を摩砕すると共に、 摩砕される該セルロース系バイオマス原料の温度が50~100℃の範囲となるように該水の供給量を制御することを特徴とするセルロース系バイオマス原料の前処理方法。 |
| 前記水の供給量の制御は、摩砕される前記セルロース系バイオマス原料の温度を測定し、該温度によるフィードバック制御により行うことを特徴とする請求項1記載のセルロース系バイオマス原料の前処理方法。 |
| 前記セルロース系バイオマス原料は、稲わらであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のセルロース系バイオマス原料の前処理方法。 |
本発明は、エタノール製造に用いられる ルロース系バイオマス原料の前処理方法に する。
従来、セルロース系バイオマス原料から られたセルロースを酵素糖化によりグルコ ス等の糖に変換し、得られた糖を発酵させ ことによりエタノールを製造する技術が知 れている。
ところが、前記セルロースは、繊維状の のが集合して結晶化し、さらに結晶化した のが集合してミクロフィブリルを形成して るため、酵素の作用を受けにくい構造を備 ている。また、前記セルロースは、リグニ 及びヘミセルロースと強固に結合し、細胞 を形成しているため、そのままでは該セル ースに対する酵素糖化反応が阻害される。
そこで、酵素糖化のために前記セルロー に前処理を施し、前記リグニンを解離し、 記ヘミセルロースを低分子化すると共に、 ルロースの結晶化度を低減することが必要 される。前記前処理として、セルロース系 イオマス原料と水蒸気と水の混合物を急速 圧力の低下に曝す水蒸気爆砕が知られてい 。前記水蒸気爆砕では、前記セルロース系 イオマス原料を予め少量の苛性アルカリと 合してもよいとされている(例えば特許文献 1参照)。
また、前記前処理として、セルロース系 イオマス原料を加圧熱水で処理する水熱処 が知られている(例えば特許文献2参照)。
しかしながら、前記従来の前処理は、いず
も高温高圧の水蒸気を用いるので、該水蒸
を得るために大きな熱エネルギーを必要と
るという不都合がある。前記熱エネルギー
、熱交換器及び蓄熱装置を設ければ回収す
ことができ、省エネルギーが可能となるが
装置システムの大型化が避けられない。
本発明は、かかる不都合を解消して、大 の装置を用いることなく、小さなエネルギ で、セルロース系バイオマス原料からリグ ンを解離し、ヘミセルロースを低分子化す と共に、セルロースの結晶化度を低減する とができるセルロース系バイオマス原料の 処理方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明の ルロース系バイオマス原料の前処理方法は エタノールを製造するために、セルロース バイオマス原料から得られたセルロースを 素により糖化するときに、該セルロース系 イオマス原料を前処理する方法において、 定の間隔を存して相対向して配置された1対 の砥石の間に、該セルロース系バイオマス原 料と水とを連続して供給し、該砥石の一方を 固定し、他方を回転させて、該セルロース系 バイオマス原料を摩砕すると共に、摩砕され る該セルロース系バイオマス原料の温度が50~ 100℃の範囲となるように該水の供給量を制御 することを特徴とする。
本発明の方法では、まず、セルロース系 イオマス原料を、所定量の水と共に、所定 間隔を存して相対向して配置された1対の砥 石の間に連続的に供給する。そして、前記砥 石の一方を固定した状態とし、他方を回転さ せる。
このようにすると、前記セルロース系バ オマス原料と水とが、前記1対の砥石間を通 過する際に、前記砥石により摩砕されると同 時に、該摩砕により発生するジュール熱によ り加熱される。前記加熱によれば、前記セル ロース系バイオマス原料が焦げ付くことが懸 念されるが、該セルロース系バイオマス原料 は、前記所定量の水と共に前記1対の砥石間 供給されるので、前記焦げ付きを防止する とができる。
このとき、本発明の方法では、前記加熱 より、摩砕される該セルロース系バイオマ 原料の温度が50~100℃の範囲となるように前 水の供給量を制御する。
摩砕される該セルロース系バイオマス原 の温度が前記範囲になるようにすると、前 加熱により、まず、前記リグニンが軟化さ る。前記リグニンは、前記摩砕のみによっ もある程度解離させることができるが、前 加熱により軟化されたリグニンが前記摩砕 受けることにより、前記解離を容易に行う とができる。
また、前記加熱により、前記セルロース バイオマス原料とともに供給される水と、 セルロース系バイオマス原料に含有されて る水とが、沸騰せしめられる。前記水は沸 により相変化を起こすので、該相変化によ 前記セルロース系バイオマス原料が膨張せ められる。前記セルロース系バイオマス原 は、前記のように膨張せしめられた状態で 前記摩砕に供されることにより、容易に粉 され、前記ヘミセルロースが除去されると に、得られたセルロースの結晶化度が低減 れる。
この結果、本発明の方法によれば、大型 装置を用いることなく、小さなエネルギー 、前記セルロース系バイオマス原料からリ ニンを解離し、ヘミセルロースを低分子化 ると共に、セルロースの結晶化度を低減す ことができ、後工程の酵素糖化において、 れた糖化効率を得ることができる。
前記セルロース系バイオマス原料の温度 50℃未満であるときには、前記リグニンの 離、前記ヘミセルロースの低分子化、前記 ルロースの結晶化度の低減がいずれも不十 になり、また水分の過多により相対的に基 濃度が低下するため、後工程の酵素糖化に いて、十分な糖化効率を得ることができな 。
一方、大気圧下における水の沸点は100℃ あるため、前記セルロース系バイオマス原 の温度を100℃を超えるものとすることは難 い。
また、前記セルロース系バイオマス原料 温度を50~100℃の範囲に維持することで、そ 熱量を後工程の酵素糖化に利用することが き、該酵素糖化工程で再度加熱する必要が い。
本発明の方法では、前記水の供給量の制 は、例えば、摩砕される前記セルロース系 イオマス原料の温度を測定し、該温度によ フィードバック制御により行うことができ 。但し、前記水の供給量の制御は、前記セ ロース系バイオマス原料の温度によるフィ ドフォワード制御により行ってもよい。
本発明の方法において、前記セルロース バイオマス原料としては、例えば稲わらを いることができる。前記セルロース系バイ マス原料として、前記稲わらを用いる場合 該稲わらには微生物が存在しており、該微 物は糖分を基質として消化するので、後工 の酵素糖化において得られた糖分が減少し エタノールの収量が低減することが懸念さ る。しかし、本発明の方法では、前記加熱 より前記微生物を死滅させることができる で、前記セルロース系バイオマス原料とし 、前記稲わらを用いる場合にも前記糖分の 少を防止することができる。
次に、添付の図面を参照しながら本発明 実施の形態についてさらに詳しく説明する 図1は本実施形態の前処理方法を示す説明的 断面図であり、図2は本実施形態の前処理方 により得られたセルロースを後工程の酵素 化に供したときの糖化効率を示すグラフで る。
本実施形態の方法は、例えば、稲わら等 セルロース系バイオマス原料から得られた ルロースを酵素により糖化してエタノール 製造するときに、該稲わらの前処理を行う のである。
本実施形態の方法では、加水率6~10重量% 自然乾燥稲わらをカッターミルで粉砕し、 径3mmのスクリーンフィルターを通過させた わらチップをセルロース系バイオマス原料 し、まず、該稲わらチップを所定量の水と に、図1に示す摩砕装置1に連続して供給する 。
図1に示す摩砕装置1は、上下方向に相対 して配置された1対の円盤状砥石2,3を備え、 側の砥石2が固定される一方、下側の砥石3 図示しない回転駆動手段により回転するよ になっている。
上側の砥石2は、内部に上方ほど小径にな る円錐壁部4を備え、円錐壁部4は上部で円筒 壁部5に連通している。さらに、円筒状壁部 5は、上部で原料ホッパー6に連通しており、 料ホッパー6の側壁には給水口7が接続され いる。下側の砥石3は、内部の円錐壁部4に対 向する部分に、下方ほど小径になる円錐壁部 8を備え、円錐壁部8は最下方で底面9に連接し ている。
そして、摩砕装置1では、砥石2,3の円錐壁 部4,8に挟まれる部分に空間部10が形成されて り、砥石2,3は、それぞれ空間部10の外周側 、摩砕面2a,3aを備えている。摩砕面2a,3aは、 定のクリアランスtを存して相対向しており 、面上に粒度の粗さ番46#の砥粒(図示せず)を えている。
前記構成を備える摩砕装置1としては、例 えば、増幸産業株式会社製スーパーグライン デル(商品名)を用いることができる(特許文献 3参照)。
前記摩砕装置1では、砥石3を回転させな ら、原料ホッパー6から前記稲わらチップが 続して供給されると共に、図示しない給水 ンプから給水口7を介して所定量の水が連続 して供給される。摩砕装置1に供給された前 稲わらチップ及び水は、空間部10から摩砕面 2a,3a間のクリアランスに流出し、摩砕面2a,3a 備えられた砥粒により摩砕され、摩砕面2a,3a の外周側に排出される。
摩砕面2a,3a間のクリアランスtは適正な範囲 設定されており、前記稲わらチップの摩砕 伴って発生するジュール熱により、該稲わ チップと水とが加熱される。このとき、前 加熱により前記稲わらチップが焦げ付いた 、該稲わらチップの表層部に多く含まれる 化ケイ素(SiO 2 )により摩砕面2a,3aが損傷を受けることが懸念 される。しかし、前記稲わらチップは、前述 のように所定量の水と共に摩砕装置1に供給 れるので、前記焦げ付きや、摩砕面2a,3aの損 傷を防止することができる。
本実施形態では、摩砕される前記稲わら ップが、前記ジュール熱による加熱により 50~100℃の範囲の温度となるように、前記給 ポンプによる水の供給量を制御する。前記 の供給量は、例えば、摩砕面2a,3aの外周側 温度センサ(図示せず)を備え、摩砕装置1か 排出される摩砕された稲わらチップの温度 検出し、検出された温度に従ってフィード ック制御することができる。
また、前記水の供給量は、前記温度セン により検出される温度を用いてフィードフ ワード制御するようにしてもよい。前記フ ードフォワード制御によれば、セルロース バイオマス原料の種類(本実施形態では稲わ らチップ)、粒度が固定されており、砥石3の 転数、摩砕面2a,3a間のクリアランスtを設定 れば、定常的なセルロース系バイオマス原 の供給量に対して給水量を設定することに り、摩砕された稲わらチップの温度がほぼ 定される。従って、前記セルロース系バイ マス原料の種類、粒度、砥石3の回転数、摩 砕面2a,3a間のクリアランスt、定常的なセルロ ース系バイオマス原料の供給量、給水量のデ ータをテーブルデータとしてまとめて初期値 を設定することにより、前記給水量の変動を 低減することができ、給水ポンプの動力を低 減することができる。
摩砕される前記稲わらチップの温度が50~1 00℃の範囲になるようにすると、前記加熱に り、まず、該稲わらチップのセルロースに 固に結合しているリグニンが軟化される。 記リグニンは、前記摩砕のみによってもあ 程度解離させることができるが、前記加熱 より軟化されたリグニンが前記摩砕を受け ことにより、前記セルロースから容易に解 させることができる。
また、前記加熱により、前記給水ポンプ ら供給される水と、前記稲わらチップに含 されている水とが、沸騰せしめられる。前 稲わらチップは、前記水が沸騰により相変 を起こすことにより膨張せしめられ、膨張 態で前記摩砕に供されることにより、容易 粉砕される。この結果、前記稲わらチップ セルロースの細胞壁を形成しているヘミセ ロースが除去されると共に、該稲わらチッ のセルロースの結晶化度が低くなる。
また、前記稲わらチップ中には微生物が 在しているが、前記加熱によれば該微生物 死滅させることができる。この結果、後工 の酵素糖化で糖分が生成したときに、該糖 が前記微生物の基質として消化されること なく、該糖分の減少を防止することができ 。
前記摩砕される稲わらチップの温度が50 未満であるときには、前記リグニンの解離 前記ヘミセルロースの低分子化、前記セル ースの結晶化度の低減がいずれも不十分に り、また水分の過多により相対的に基質濃 が低下するため、後工程の酵素糖化におい 、十分な糖化効率を得ることができない。
一方、大気圧下における水の沸点は100℃ あるため、前記水の供給量により、前記稲 らチップの温度を100℃を超えるものとする とは難しい。
また、前記摩砕される稻わらチップの温 を50~100℃の範囲に維持することで、その熱 を後工程の酵素糖化に利用することができ 該酵素糖化工程で再度加熱する必要がない
次に、摩砕装置1において前記給水ポンプ による給水量を変量して、摩砕される稲わら チップの温度を変え、それぞれの温度で得ら れたセルロースを酵素で糖化したときの糖化 率を測定した。摩砕される稲わらチップの温 度は、32℃(比較例1)、45℃(比較例2)、55℃(実 例1)、60℃(実施例2)、84℃(実施例3)、100℃(実 例4)とした。
前記酵素による糖化は、前記稲わらチッ を摩砕装置1で摩砕して得られたセルロース の水溶液(基質濃度5重量%)に、酵素として市 のセルラーゼ(ジェネンコア協和株式会社製 商品名:GC220)を酵素濃度0.5重量%となるよう 加え、pHを4.0とし、50℃で48時間振盪攪拌す ことにより行った。糖化率は、稲わらチッ の固形分析により得られたαセルロース量に 対する、前記酵素による糖化により得られた グルコース量の割合として求めた。
一方、参考例として、従来の水熱処理法 従って、前記稲わらチップを180℃、1MPaの水 蒸気で30分処理して得られたセルロースを前 各実施例及び各比較例と全く同一にして前 酵素により糖化し、糖化率を測定した。
前記各実施例及び各比較例の糖化率を、 記参考例の糖化率を1とする糖化効率として 、図2に示す。図2から、摩砕される稲わらチ プの温度が、50~100℃の範囲である実施例1~4 は、糖化効率が参考例とほぼ同等であるこ が明らかである。一方、32~45℃の範囲であ 比較例1~2では、糖化効率が参考例より低く 従来の水熱処理法に及ばないことが明らか ある。
1…摩砕装置、 2,3…砥石。
