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Title:
METHOD OF PREVENTING SULFIDE CORROSION, HIGH-TEMPERATURE MEMBER WITH RESISTANCE TO SULFIDE CORROSION, AND METHOD OF REPAIRING HEAT-TRANSFER TUBE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/117665
Kind Code:
A1
Abstract:
A method of sulfide corrosion prevention by which a base is protected from sulfide corrosion; and a high-temperature member which has excellent resistance to sulfide corrosion. Also provided is a method of repairing a cracked heat-transfer tube which comprises: forming a silicon oxide layer on the surface of the base; applying a titanium-containing coating fluid containing titanium metal or a titanium compound to the silicon oxide layer and thermally oxidizing the coating to form a first titanium oxide layer; forming a carbon layer on the first titanium oxide layer; and applying a titanium-containing coating fluid to the carbon layer and thermally oxidizing the coating to form a second titanium oxide layer, whereby the base is protected or repaired with the silicon oxide layer, first titanium oxide layer, carbon layer, and second titanium oxide layer.

Inventors:
KAWASE MAKOTO (JP)
MORINAGA MASAHIKO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/054510
Publication Date:
October 02, 2008
Filing Date:
March 12, 2008
Export Citation:
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Assignee:
CENTRAL RES INST ELECT (JP)
KAWASE MAKOTO (JP)
MORINAGA MASAHIKO (JP)
International Classes:
C23C18/12; B05D5/00; C23C20/08; C23C28/04
Foreign References:
JP2007009315A2007-01-18
JPH09272990A1997-10-21
JPS60125375A1985-07-04
JPS637379A1988-01-13
JPH09272990A1997-10-21
Other References:
See also references of EP 2130943A4
Attorney, Agent or Firm:
KURIHARA, Hiroyuki et al. (Iwasaki Bldg. 6F3-15, Hiroo 1-chom, Shibuya-ku Tokyo 12, JP)
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Claims:
基材の表面上にケイ素酸化物層を形成する第1の工程と、
前記ケイ素酸化物層上にチタン金属又はチタン化合物を含有したチタン含有塗布液を塗布し、加熱酸化させて第1のチタン酸化物層を形成する第2の工程と
を具備することを特徴とする硫化腐食防止方法。
前記第1の工程は、ケイ素化合物を含有したケイ素含有塗布液を塗布し、加熱酸化させてケイ素酸化物層を形成することを特徴とする請求項1に記載の硫化腐食防止方法。
前記ケイ素化合物は、水素化ケイ素、シラザン系化合物、シロキサン系化合物及びケイ酸塩の少なくとも何れか一つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の硫化腐食防止方法。
前記ケイ素含有塗布液は、さらに窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム及び酸化ホウ素の少なくとも何れか一つを含有することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の硫化腐食防止方法。
前記第1のチタン酸化物層の表面上に炭素層を形成する第3の工程と、
チタン金属又はチタン化合物を含有したチタン含有塗布液を塗布し、加熱酸化させて第2のチタン酸化物層を形成する第4の工程と
をさらに具備することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の硫化腐食防止方法。
基材の表面上にケイ素化合物を含有したケイ素含有塗布液を塗布し、乾燥させてケイ素含有塗布層を形成する第1塗布工程と、
前記ケイ素含有塗布層上にチタン金属又はチタン化合物を含有した第1のチタン含有塗布液を塗布し、乾燥させて第1のチタン含有塗布層を形成する第2塗布工程と、
前記ケイ素含有塗布層及び前記第1のチタン含有塗布層を加熱酸化させてケイ素酸化物層及び第1のチタン酸化物層を形成する加熱酸化工程と
を具備することを特徴とする硫化腐食防止方法。
前記第2塗布工程後に、前記第1のチタン含有塗布層上に炭素層を形成する炭素層形成工程と、
前記炭素層上に第2のチタン含有塗布液を塗布し、乾燥させて第2のチタン含有塗布層を形成する第3塗布工程とを具備し、
前記加熱酸化工程では、前記第3塗布工程後に、前記炭素層を加熱させて脱脂すると共に、前記ケイ素含有塗布層、前記第1のチタン含有塗布層、及び前記第2のチタン含有塗布層を加熱酸化させて前記ケイ素酸化物層、前記第1のチタン酸化物層、及び前記第2のチタン酸化物層を形成することを特徴とする請求項6に記載の硫化腐食防止方法。
前記加熱酸化工程後に、前記第1のチタン酸化物層上に炭素層を形成する炭素層形成工程と、
前記炭素層上に第2のチタン含有塗布液を塗布・乾燥させると共に加熱して前記炭素層を脱脂すると共に、第2のチタン酸化物層を形成するチタン酸化物層形成工程とを具備する
ことを特徴とする請求項6に記載の硫化腐食防止方法。
基材と、
該基材の表面上に設けられたケイ素酸化物層と、
該ケイ素酸化物層上に設けられた第1のチタン酸化物層と
を具備することを特徴とする耐硫化腐食性高温部材。
前記第1のチタン酸化物層上に設けられた炭素層と、
前記炭素層上に設けられた第2のチタン酸化物層と
をさらに具備することを特徴とする請求項9に記載の耐硫化腐食性高温部材。
ボイラに配設された伝熱管の亀裂が生じた部位の表面上にケイ素酸化物層を形成する第1の工程と、
前記ケイ素酸化物層上にチタン金属又はチタン化合物を含有したチタン含有塗布液を塗布し、加熱酸化させて第1のチタン酸化物層を形成する第2の工程と
を具備することを特徴とする伝熱管の補修方法。
前記第1の工程は、ケイ素化合物を含有したケイ素含有塗布液を塗布し、加熱酸化させてケイ素酸化物層を形成することを特徴とする請求項11に記載の伝熱管の補修方法。
前記ケイ素化合物は、水素化ケイ素、シラザン系化合物、シロキサン系化合物及びケイ酸塩の少なくとも何れか一つであることを特徴とする請求項11又は12に記載の伝熱管の補修方法。
前記ケイ素含有塗布液は、さらに窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム及び酸化ホウ素の少なくとも何れか一つを含有することを特徴とする請求項11~13の何れか一項に記載の伝熱管の補修方法。
前記第1のチタン酸化物層の表面上に炭素層を形成する第3の工程と、
チタン金属又はチタン化合物を含有したチタン含有塗布液を塗布し、加熱酸化させて第2のチタン酸化物層を形成する第4の工程と
をさらに具備することを特徴とする請求項11~14の何れか一項に記載の伝熱管の補修方法。
ボイラに配設された伝熱管の亀裂が生じた部位の表面上にケイ素化合物を含有したケイ素含有塗布液を塗布し、乾燥させてケイ素含有塗布層を形成する第1塗布工程と、
前記ケイ素含有塗布層上にチタン金属又はチタン化合物を含有した第1のチタン含有塗布液を塗布し、乾燥させて第1のチタン含有塗布層を形成する第2塗布工程と、
前記ケイ素含有塗布層及び前記第1のチタン含有塗布層を加熱酸化させてケイ素酸化物層及び第1のチタン酸化物層を形成する加熱酸化工程と
を具備することを特徴とする伝熱管の補修方法。
前記第2塗布工程後に、前記第1のチタン含有塗布層上に炭素層を形成する炭素層形成工程と、
前記炭素層上に第2のチタン含有塗布液を塗布し、乾燥させて第2のチタン含有塗布層を形成する第3塗布工程とを具備し、
前記加熱酸化工程では、前記第3塗布工程後に、前記炭素層を加熱させて脱脂すると共に、前記ケイ素含有塗布層、前記第1のチタン含有塗布層、及び前記第2のチタン含有塗布層を加熱酸化させて前記ケイ素酸化物層、前記第1のチタン酸化物層、及び前記第2のチタン酸化物層を形成することを特徴とする請求項16に記載の伝熱管の補修方法。
前記加熱酸化工程後に、前記第1のチタン酸化物層上に炭素層を形成する炭素層形成工程と、
前記炭素層上に第2のチタン含有塗布液を塗布・乾燥させると共に加熱して前記炭素層を脱脂すると共に、第2のチタン酸化物層を形成するチタン酸化物層形成工程とを具備する
ことを特徴とする請求項16に記載の伝熱管の補修方法。
Description:
硫化腐食防止方法、耐硫化腐食 高温部材及び伝熱管の補修方法

 本発明は、硫化水素などによる腐食及び 化物腐食割れなどに対する高温部材の硫化 食防止方法、耐硫化腐食性高温部材及び伝 管の補修方法に関する。

 従来から、火力発電設備などでは、燃料 燃焼させた際に発生するガスによって、そ を構成する構造材が腐食してしまうことが きな問題となっていた。

 すなわち、構造材の一例である火力発電 ボイラのボイラ水冷壁管(基材:フェライト )や過熱器管、再熱器管などの高温伝熱管の 厚が、硫化腐食により、設計で定められた 限の肉厚よりも薄くなるという問題があっ 。更に、高温伝熱管の表面には、エレファ トスキンとも呼ばれる亀裂(溝状腐食)が生 るという問題もあった。

 このような問題を解消又は回避する方法 して、予め構造材に耐硫化腐食性を有する 膜をコーティングして硫化腐食から保護す 方法がある。また、亀裂が生じた部分に事 的に被膜をコーティングすることで亀裂を 修する方法がある。このような被膜として 、主にプラズマ溶射法を用いたニッケル・ ロム被膜が用いられてきた。

 一方、その他の被膜として、酸化チタン 子をコーティングして酸化チタン粒子から る被膜を構造材などに設けることにより、 造材の耐硫化腐食性を向上させる方法が提 されている(例えば特許文献1参照)。

特開平9-272990号公報

 しかしながら、上述したように、構造材に 化チタン粒子からなる被膜を設けても、酸 チタン粒子間に硫化水素(H 2 S)が侵入して硫化腐食が進行してしまい、際 った耐硫化腐食性が得られないという問題 あった。また、このような酸化チタン粒子 らなる被膜の耐硫化腐食性を向上させるた には被膜を厚くする必要があり、被膜の剥 が発生しやすいという問題や被膜形成のコ トが高くなるという問題があった。

 一方、構造材の表面にチタン金属又はチ ン化合物などが含まれる塗布液を塗布して 造材の表面上にチタン酸化物層を直接形成 ることにより耐硫化腐食性を向上させる方 が考えられるが、構造材の表面にチタン酸 物層を形成する際の塗布溶液の乾燥過程で じる内部応力によってチタン酸化物層にク ック(ひび割れ)が発生してしまうおそれが る。その結果、そのクラックから構造材の 化腐食が進行してしまうおそれがあるとい 問題があった。

 また、プラズマ溶射法を用いたニッケル クロム被膜は高価であると共に長時間の施 作業を要し、構造材の表面の保護又は補修 はコスト面で不適であるという問題もあっ 。

 本発明は、上述した事情に鑑み、チタン 化物層のクラックの発生を防止することに り、硫化腐食に対する硫化腐食防止方法を 供し、優れた耐硫化腐食性を有する耐硫化 食性高温部材を提供し、亀裂が生じた伝熱 の補修方法を提供することを目的とする。

 ケイ素酸化物はアルカリ金属と反応して 化してしまうので、ボイラ燃焼灰などのよ なアルカリ金属が含まれるものと接触する 能性のある部材には、通常、ケイ素酸化物 が作製されることはない。しかしながら、 発明者は、ケイ素酸化物層上にチタン金属 はチタン化合物などが含まれる塗布液を塗 してチタン酸化物層を形成すると、チタン 化物層のクラックの発生を防止することが きることを見出すと共に、さらにケイ素酸 物層上にチタン酸化物層が形成されること より、ケイ素酸化物層とアルカリ金属とが 応することがないことを見出し、本発明に った。

 上記課題を解決する本発明の第1の態様は 、基材の表面上にケイ素酸化物層を形成する 第1の工程と、前記ケイ素酸化物層上にチタ 金属又はチタン化合物を含有したチタン含 塗布液を塗布し、加熱酸化させて第1のチタ 酸化物層を形成する第2の工程とを具備する ことを特徴とする硫化腐食防止方法にある。

 かかる第1の態様では、ケイ素酸化物層を 設けることにより、第1のチタン酸化物層を 成する際に第1のチタン酸化物層内に内部応 が発生しても第1のチタン酸化物層にクラッ クが発生するのを防止することができるので 、ケイ素酸化物層上に緻密でクラックの極め て少ない第1のチタン酸化物層を形成するこ ができる。

 本発明の第2の態様は、前記第1の工程は ケイ素化合物を含有したケイ素含有塗布液 塗布し、加熱酸化させてケイ素酸化物層を 成することを特徴とする第1の態様に記載の 化腐食防止方法にある。

 かかる第2の態様では、容易にケイ素酸化 物層を形成することができる。

 本発明の第3の態様は、前記ケイ素化合物 は、水素化ケイ素、シラザン系化合物、シロ キサン系化合物及びケイ酸塩の少なくとも何 れか一つであることを特徴とする第1又は第2 態様に記載の硫化腐食防止方法にある。

 かかる第3の態様では、より容易にケイ素 酸化物層を形成することができる。

 本発明の第4の態様は、前記ケイ素含有塗 布液は、さらに窒化ホウ素、酸化アルミニウ ム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム及 び酸化ホウ素の少なくとも何れか一つを含有 することを特徴とする第1~3の何れか一つの態 様に記載の硫化腐食防止方法にある。

 かかる第4の態様では、さらに容易にケイ 素酸化物層を形成することができる。

 本発明の第5の態様は、前記第1のチタン 化物層の表面上に炭素層を形成する第3の工 と、チタン金属又はチタン化合物を含有し チタン含有塗布液を塗布し、加熱酸化させ 第2のチタン酸化物層を形成する第4の工程 をさらに具備することを特徴とする第1~4の れか一つの態様に記載の硫化腐食防止方法 ある。

 かかる第5の態様では、拡散反応によって 基材を構成する鉄などが第2のチタン酸化物 を通って耐硫化腐食性高温部材の表面へ拡 することを防止することができる。また、 2のチタン酸化物層内に内部応力が発生した してもその内部応力に応じて炭素層が変形 て第2のチタン酸化物層内の内部応力を緩和 することができるので、炭素層上にクラック の少ない第2のチタン酸化物層を形成するこ ができる。

 本発明の第6の態様は、基材の表面上にケ イ素化合物を含有したケイ素含有塗布液を塗 布し、乾燥させてケイ素含有塗布層を形成す る第1塗布工程と、前記ケイ素含有塗布層上 チタン金属又はチタン化合物を含有した第1 チタン含有塗布液を塗布し、乾燥させて第1 のチタン含有塗布層を形成する第2塗布工程 、前記ケイ素含有塗布層及び前記第1のチタ 含有塗布層を加熱酸化させてケイ素酸化物 及び第1のチタン酸化物層を形成する加熱酸 化工程とを具備することを特徴とする硫化腐 食防止方法にある。

 かかる第6の態様では、ケイ素酸化物層を 設けることにより、第1のチタン酸化物層を 成する際に第1のチタン酸化物層内に内部応 が発生しても、第1のチタン酸化物層にクラ ックが発生するのを防止することができるの で、ケイ素酸化物層上に緻密でクラックの極 めて少ない第1のチタン酸化物層を形成する とができる。また、ケイ素酸化物層及び第1 チタン酸化物層はまとめて加熱酸化されて 成されているので、これらの酸化物層にク ックが生じる可能性は低くなり、この結果 耐食性の高い酸化物層を基材に形成するこ ができる。更に、まとめて加熱酸化するの 、各塗布層ごとに加熱する場合と比較する 製造上の手間が省けるので、合理的に酸化 層を基材に形成できる。

 本発明の第7の態様は、前記第2塗布工程 に、前記第1のチタン含有塗布層上に炭素層 形成する炭素層形成工程と、前記炭素層上 第2のチタン含有塗布液を塗布し、乾燥させ て第2のチタン含有塗布層を形成する第3塗布 程とを具備し、前記加熱酸化工程では、前 第3塗布工程後に、前記炭素層を加熱させて 脱脂すると共に、前記ケイ素含有塗布層、前 記第1のチタン含有塗布層、及び前記第2のチ ン含有塗布層を加熱酸化させて前記ケイ素 化物層、前記第1のチタン酸化物層、及び前 記第2のチタン酸化物層を形成することを特 とする第6の態様に記載の硫化腐食防止方法 ある。

 かかる第7の態様では、拡散反応によって 基材を構成する鉄などが第2のチタン酸化物 を通って耐硫化腐食性高温部材の表面へ拡 することを防止することができる。また、 2のチタン酸化物層内に内部応力が発生した してもその内部応力に応じて炭素層が変形 て第2のチタン酸化物層内の内部応力を緩和 することができるので、炭素層上にクラック の少ない第2のチタン酸化物層を形成するこ ができる。その結果、より確実に炭素の析 を防止できる。また、加熱酸化によりケイ 酸化物層・チタン酸化物層を形成すると共 、炭素を脱脂することも同時に行うことが きる。

 本発明の第8の態様は、前記加熱酸化工程 後に、前記第1のチタン酸化物層上に炭素層 形成する炭素層形成工程と、前記炭素層上 第2のチタン含有塗布液を塗布・乾燥させる 共に加熱して前記炭素層を脱脂すると共に 第2のチタン酸化物層を形成するチタン酸化 物層形成工程とを具備することを特徴とする 第6の態様に記載の硫化腐食防止方法にある

 かかる第8の態様では、ケイ素酸化物層と 第1のチタン酸化物層とが纏めて加熱酸化さ ることにより形成され、その後、第2のチタ 酸化物層が形成されると共に炭素層が脱脂 れる。

 本発明の第9の態様は、基材と、該基材の 表面上に設けられたケイ素酸化物層と、該ケ イ素酸化物層上に設けられた第1のチタン酸 物層とを具備することを特徴とする耐硫化 食性高温部材にある。

 かかる第9の態様では、基材上にチタン酸 化物層が直接形成された(ケイ素酸化物層が けられていない)ものと比較して、緻密でク ックの極めて少ない均一な第1のチタン酸化 物層を有しているので、優れた耐硫化腐食性 を有する。

 本発明の第10の態様は、前記第1のチタン 化物層上に設けられた炭素層と、前記炭素 上に設けられた第2のチタン酸化物層とをさ らに具備することを特徴とする第9の態様に 載の耐硫化腐食性高温部材にある。

 かかる第10の態様では、第1のチタン酸化 層と第2のチタン酸化物層との間に炭素層が 設けられているので、拡散反応によって基材 を構成する鉄などが第2のチタン酸化物層を って耐硫化腐食性高温部材の表面へ拡散す ことを防止することができる。また、耐硫 腐食性高温部材は、クラックの極めて少な 均一な第2のチタン酸化物層を有しているの 、より優れた耐硫化腐食性を有する。

 本発明の第11の態様は、ボイラに配設さ た伝熱管の亀裂が生じた部位の表面上にケ 素酸化物層を形成する第1の工程と、前記ケ 素酸化物層上にチタン金属又はチタン化合 を含有したチタン含有塗布液を塗布し、加 酸化させて第1のチタン酸化物層を形成する 第2の工程とを具備することを特徴とする伝 管の補修方法にある。

 かかる第11の態様では、伝熱管に生じた 裂は、この亀裂上に形成されたケイ素酸化 層及び第1のチタン酸化物層により補修され 。また、本態様では、ケイ素酸化物層上に 密でクラックの極めて少ない第1のチタン酸 化物層が形成される。このため、クラックか ら亀裂部分が露出してしまうことが低減され 、より確実に亀裂を補修することができる。

 本発明の第12の態様は、前記第1の工程は ケイ素化合物を含有したケイ素含有塗布液 塗布し、加熱酸化させてケイ素酸化物層を 成することを特徴とする第11の態様に記載 伝熱管の補修方法にある。

 かかる第12の態様では、容易にケイ素酸 物層を形成することができる。

 本発明の第13の態様は、前記ケイ素化合 は、水素化ケイ素、シラザン系化合物、シ キサン系化合物及びケイ酸塩の少なくとも れか一つであることを特徴とする第11又は第 12の態様に記載の伝熱管の補修方法にある。

 かかる第13の態様では、より容易にケイ 酸化物層を形成することができる。

 本発明の第14の態様は、前記ケイ素含有 布液は、さらに窒化ホウ素、酸化アルミニ ム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム び酸化ホウ素の少なくとも何れか一つを含 することを特徴とする第11~13の何れか一つの 態様に記載の伝熱管の補修方法にある。

 かかる第14の態様では、さらに容易にケ 素酸化物層を形成することができる。

 本発明の第15の態様は、前記第1のチタン 化物層の表面上に炭素層を形成する第3の工 程と、チタン金属又はチタン化合物を含有し たチタン含有塗布液を塗布し、加熱酸化させ て第2のチタン酸化物層を形成する第4の工程 をさらに具備することを特徴とする第11~14 何れか一つの態様に記載の伝熱管の補修方 にある。

 かかる第15の態様では、伝熱管に生じた 裂は、この亀裂上に形成されたケイ素酸化 層及び第1のチタン酸化物層に加え、炭素層 び第2のチタン酸化物層より確実に補修され る。また、本態様では、第2のチタン酸化物 内に内部応力が発生したとしてもその内部 力に応じて炭素層が変形して第2のチタン酸 物層内の内部応力を緩和することができる で、炭素層上にクラックの少ない第2のチタ ン酸化物層が形成される。このため、クラッ クから亀裂部分が露出してしまうことが更に 低減され、より一層確実に亀裂を補修するこ とができる。

 本発明の第16の態様は、ボイラに配設さ た伝熱管の亀裂が生じた部位の表面上にケ 素化合物を含有したケイ素含有塗布液を塗 し、乾燥させてケイ素含有塗布層を形成す 第1塗布工程と、前記ケイ素含有塗布層上に タン金属又はチタン化合物を含有した第1の チタン含有塗布液を塗布し、乾燥させて第1 チタン含有塗布層を形成する第2塗布工程と 前記ケイ素含有塗布層及び前記第1のチタン 含有塗布層を加熱酸化させてケイ素酸化物層 及び第1のチタン酸化物層を形成する加熱酸 工程とを具備することを特徴とする伝熱管 補修方法にある。

 かかる第16の態様では、伝熱管に生じた 裂は、この亀裂上に形成されたケイ素酸化 層及び第1のチタン酸化物層により補修され 。また、本態様では、ケイ素酸化物層及び 1のチタン酸化物層はまとめて加熱酸化され て形成されているので、これらの酸化物層に クラックが生じる可能性が更に低くなる。こ のため、クラックから亀裂部分が露出してし まうことが更に低減され、より一層確実に亀 裂を補修することができる。

 本発明の第17の態様は、前記第2塗布工程 に、前記第1のチタン含有塗布層上に炭素層 を形成する炭素層形成工程と、前記炭素層上 に第2のチタン含有塗布液を塗布し、乾燥さ て第2のチタン含有塗布層を形成する第3塗布 工程とを具備し、前記加熱酸化工程では、前 記第3塗布工程後に、前記炭素層を加熱させ 脱脂すると共に、前記ケイ素含有塗布層、 記第1のチタン含有塗布層、及び前記第2のチ タン含有塗布層を加熱酸化させて前記ケイ素 酸化物層、前記第1のチタン酸化物層、及び 記第2のチタン酸化物層を形成することを特 とする第16の態様に記載の伝熱管の補修方 にある。

 かかる第17の態様では、伝熱管に生じた 裂は、この亀裂上に形成されたケイ素酸化 層及び第1のチタン酸化物層に加え、炭素層 び第2のチタン酸化物層より補修される。ま た、本態様では、ケイ素酸化物層、第1のチ ン酸化物層及び第2のチタン酸化物層はまと て加熱酸化されて形成されているので、こ らの酸化物層にクラックが生じる可能性が に低くなる。このため、クラックから亀裂 分が露出してしまうことが更に低減され、 り一層確実に亀裂を補修することができる

 本発明の第18の態様は、前記加熱酸化工 後に、前記第1のチタン酸化物層上に炭素層 形成する炭素層形成工程と、前記炭素層上 第2のチタン含有塗布液を塗布・乾燥させる と共に加熱して前記炭素層を脱脂すると共に 、第2のチタン酸化物層を形成するチタン酸 物層形成工程とを具備することを特徴とす 第16の態様に記載の伝熱管の補修方法にある 。

 かかる第18の態様では、ケイ素酸化物層 第1のチタン酸化物層とが纏めて加熱酸化さ ることにより形成され、その後、第2のチタ ン酸化物層が形成されると共に炭素層が脱脂 される。

 本発明に係る硫化腐食防止方法によれば 第1のチタン酸化物層はケイ素酸化物層上に 形成されるので、第1のチタン酸化物層が形 される際に、第1のチタン酸化物層内に内部 力が発生したとしても第1のチタン酸化物層 にクラックが発生するのを防止することがで きる。その結果、ケイ素酸化物層上に緻密で クラックの極めて少ない均一な第1のチタン 化物層を形成することができる。また、本 明に係る耐硫化腐食性高温部材は、優れた 硫化腐食性を有するので、これらを使用し 機器の信頼性及び耐久性を飛躍的に改善す ことができる。更に、本発明に係る伝熱管 補修方法は、伝熱管に生じた亀裂を確実に 且つ安価に補修することができる。

実施形態1に係る耐硫化腐食性高温部材 を示す概略図である。 実施形態2に係る耐硫化腐食性高温部材 を示す概略図である。 硫化腐食試験における実施例1の板状試 験片Aの拡大断面写真である。 硫化腐食試験における比較例1の板状試 験片Bの拡大断面写真である。

符号の説明

 1,1A 耐硫化腐食性高温部材
 10 基材
 20 ケイ素酸化物層
 30 第1のチタン酸化物層
 40 炭素層
 50 第2のチタン酸化物層

 以下、本発明を実施するための最良の形 について説明する。なお、本実施形態の説 は例示であり、本発明は以下の説明に限定 れない。

 (実施形態1)
 図1は、本実施形態に係る耐硫化腐食性高温 部材を示す概略図である。図1に示すように 耐硫化腐食性高温部材1は、基材10の表面上 ケイ素酸化物層20と、第1のチタン酸化物層30 とが順次形成されたものである。

 ケイ素酸化物層20は、基材10の表面上に緻 密に形成できるものであれば特に限定されな いが、非晶質状態のものが好ましい。非晶質 状態のケイ素酸化物層20とすることにより、 細は後述するが、第1のチタン酸化物層30を 成する際に第1のチタン酸化物層30にクラッ が発生することを防止して緻密でクラック 極めて少ない均一な第1のチタン酸化物層30 形成することができる。

 ケイ素酸化物層20を構成するケイ素酸化物 しては、例えば、SiO、SiO 2 又はこれらの混合状態が挙げられる。また、 ケイ素酸化物層20の厚さは特に限定されない 、0.1~10μmの範囲が好ましい。この範囲の厚 のケイ素酸化物層20は容易に形成すること できると共に、第1のチタン酸化物層30を形 する際に第1のチタン酸化物層30にクラック 発生することを充分に防止することができ 。

 なお、ケイ素酸化物層20には、窒化ホウ 、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、 化ジルコニウム、酸化ホウ素又はこれらの 合物が含有されていてもよい。これらの物 をケイ素酸化物層20に含有させることにより 、ケイ素酸化物層20の強度を向上させること できる。

 第1のチタン酸化物層30は、ケイ素酸化物層2 0上に緻密に形成できるものであれば特に限 されない。第1のチタン酸化物層30を構成す チタン酸化物としては、例えば、TiO、Ti 2 O 3 、TiO 2 、Ti 2 O 5 、TiO 3 、又はこれらの混合状態が挙げられる。また 、第1のチタン酸化物層30の厚さは特に限定さ れないが、0.01~10μmの範囲が好ましく、0.01~5μ mの範囲がより好ましく、特に0.01~1μmの範囲 好ましい。この範囲の厚さの第1のチタン酸 物層30は容易に形成することができ、且つ 基材10の硫化腐食を充分に防止することがで きる。

 基材10は、その耐硫化腐食性高温部材1が 用される温度に対して充分な耐熱性を有し その表面にケイ素酸化物層20を設けること できるものであれば特に限定されない。こ ような基材10を構成する物質としては、例え ばフェライト鋼、オーステナイト鋼、マルテ ンサイト鋼などの耐熱構造材が挙げられる。

 かかる構造の耐硫化腐食性高温部材1は、 詳細は後述するが、基材上にチタン酸化物層 が直接形成された(ケイ素酸化物層20が設けら れていない)ものと比較して、緻密でクラッ の極めて少ない均一な第1のチタン酸化物層3 0を有しているので、優れた耐硫化腐食性を することになる。

 以下に、本実施形態に係る硫化腐食防止 法について説明する。本実施形態に係る硫 腐食防止方法は、基材10の表面上にケイ素 合物を含有したケイ素含有塗布液を塗布し 加熱酸化させてケイ素酸化物層20を形成する と共に、ケイ素酸化物層20上にチタン金属又 チタン化合物を含有したチタン含有塗布液 塗布し、加熱酸化させて第1のチタン酸化物 層30を形成するというものである。

 ここで、ケイ素含有塗布液とは、ケイ素 合物が溶解した溶液や、ケイ素化合物が分 した分散液などを含むものをいう。ケイ素 合物としては、加熱処理によってケイ素酸 物層20を形成することができるものであれ 特に限定されず、水素化ケイ素(例えばアル キシシラン、クロロシランなど)、シラザン 系化合物(例えばポリシラザンなど)、シロキ ン系化合物(例えばシロキサン、シリコーン など)、ケイ酸塩(例えばメチルシリケート、 チルシリケートなど)などが挙げられる。

 このようなケイ素化合物を含有したチタ 含有塗布液としては、基材10上に塗布され 後、加熱酸化された際にケイ素酸化物層20を 形成することができるものであれば特に限定 されない。ケイ素含有塗布液としては、具体 的には、アクアミカNP110, NN310, NN320, NL110A,  NL120A, NL150A, NP110, NP140, SP140(AZエレクトロニ ックマテリアルズ(株)社製)などが挙げられる 。

 なお、このようなケイ素含有塗布液には 窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグ シウム、酸化ジルコニウム、酸化ホウ素、 はこれらの混合物が含有されていてもよい

 また、チタン含有塗布液とは、チタン金属 はチタン化合物が溶解した溶液や、チタン 属又はチタン化合物が分散した分散液など 含むものをいう。なお、チタン金属とはチ ンのみからなる物質をいい、例えばチタン 微粉末を必要に応じて分散助剤などの添加 と共に溶媒に分散させることにより塗布液 することができる。チタン化合物としては 例えばチタンテトラエトキシド(Ti(C 2 H 5 O) 4 )、チタン(IV)メトキシド(Ti(OCH 3 ) 4 )、ホウ化チタン(TiB 2 )、三塩化チタン(TiCl 3 )、硫酸チタン(IV)(Ti(SO 4 ) 2 )、硫酸チタン(III)(Ti 2 (SO 4 ) 3 )、リン酸チタンリチウム(LiTi 2 P 3 O 12 )、シュウ酸チタンカリウム(K 2 TiO(C 2 O 4 ) 2 )、臭化チタン(IV)(TiBr 4 )、フッ化チタン(IV)ナトリウム(Na 2 TiF 6 )、フッ化チタン(IV)(TiF 4 )、フッ化チタン(IV)アンモニウム((NH 4 ) 2 TiF 6 )、フッ化チタン(IV)カリウム(K 2 TiF 6 )、ペルオキソチタン酸(Ti(OOH)(OH) 3 )、四塩化チタン(TiCl 4 )、オキシ硫酸チタン(IV)(TiOSO 4 )、チタンアルコキシド(チタンテトライソプ ポキシド(TTIP:Ti((CH 3 ) 2 CHO) 4 )など)、チタニウムブトキシド(TNBT:Ti(OC 4 H 9 ) 4 )などが挙げられるが、ペルオキソチタン酸 四塩化チタン、オキシ硫酸チタン(IV)、チタ アルコキシド、チタニウムブトキシドが好 しい。

 このようなチタン金属又はチタン化合物を 有したチタン含有塗布液としては、ケイ素 化物層20上に塗布された後、加熱酸化され 際にケイ素酸化物層20の表面上に不純物を残 存させず、ケイ素酸化物層20上に第1のチタン 酸化物層30を形成することができるものであ ば特に限定されないが、チタン金属を含有 た塗布液が好ましい。チタン含有塗布液と ては、具体的には、PTA-85(株式会社鯤コーポ レーション社製)、PTA-170(株式会社鯤コーポレ ーション社製)、PSA-015(株式会社光触媒研究所 製)、PSA-02(株式会社光触媒研究所製)、PSO-306( 式会社光触媒研究所製)、AT-01(株式会社光触 媒研究所製)、AT-03(株式会社光触媒研究所製) ペルオキソチタン酸(Ti(OOH)(OH) 3 )、四塩化チタン(TiCl 4 )、オキシ硫酸チタン(IV)(TiOSO 4 )、チタンアルコキシド(チタンテトライソプ ポキシド(TTIP:Ti((CH 3 ) 2 CHO) 4 )など)、チタニウムブトキシド(TNBT:Ti(OC 4 H 9 ) 4 )などが挙げられる。

 このようなケイ素含有塗布液及びチタン 有塗布液を用いて基材10上にケイ素酸化物 20及び第1のチタン酸化物層30を形成する。具 体的には、まず、基材10上にケイ素含有塗布 を塗布する。この基材10の表面上にケイ素 有塗布液を塗布する方法は特に限定されな 。例えば、スプレーを用いてスラリー状の イ素含有塗布液を基材10に吹き付ける、いわ ゆるスプレーコーティング法、槽に満たされ たケイ素含有塗布液に基材10を浸漬する方法 ハケなどを用いてケイ素含有塗布液を基材1 0に塗布する方法などが挙げられる。

 そして、ケイ素含有塗布液を加熱酸化す 。このケイ素含有塗布液を加熱酸化する方 も特に限定されず、ケイ素含有塗布液を直 加熱酸化してもよいし、ケイ素含有塗布液 乾燥させた後に加熱酸化してもよい。なお ケイ素含有塗布液を加熱酸化する際に、ケ 素含有塗布液にパラジウムなどの触媒を添 してもよい。このような触媒を添加するこ により、ケイ素含有塗布液の加熱酸化を促 させることができると共に加熱温度を低下 せることができる。また、基材10の表面に 孔質の灰などが付着している場合には、塗 されたケイ素含有塗布液を乾燥させる前に 例えば吸引装置(掃除機などを改良したもの) などにより、多孔質の灰などに含まれる気体 (空気など)を取り除くことが好ましい。多孔 の灰などに含まれる気体を取り除くことに り、より緻密なケイ素酸化物層20を形成す ことができる。

 次に、ケイ素酸化物層20上にチタン含有 布液を塗布した後、チタン含有塗布液を加 酸化する。このチタン含有塗布液を塗布す 方法及び加熱酸化する方法も上述したケイ 含有塗布液を塗布する方法と同様に特に限 されない。そして、何れの加熱酸化方法を いても、チタン含有塗布液を加熱酸化する 中でチタン含有塗布液から形成される第1の タン酸化物層30から水分などの液体成分が 去されて第1のチタン酸化物層30が乾燥する とになる。その結果、第1のチタン酸化物層3 0は収縮して、第1のチタン酸化物層30内に内 応力が発生する。

 ここで、本実施形態では、第1のチタン酸 化物層30はケイ素酸化物層20上に設けられる で、現時点でその理由は不明であるが、第1 チタン酸化物層30内に内部応力が発生した しても第1のチタン酸化物層30にクラックが 生するのを防止することができる。その結 、ケイ素酸化物層20上に緻密でクラックの極 めて少ない均一な第1のチタン酸化物層30を形 成することができる。

 (実施形態2)
 図2は、本実施形態の耐硫化腐食性高温部材 を示す概略図である。本実施形態の耐硫化腐 食性高温部材1Aは、図2に示すように、第1の タン酸化物層30上に炭素層40と、第2のチタン 酸化物層50とをさらに設けたものである。す わち、本実施形態の耐硫化腐食性高温部材1 Aは、基材10の表面上にケイ素酸化物層20と、 1のチタン酸化物層30と、炭素層40と、第2の タン酸化物層50とを順次設けた5層構造から るものである。

 炭素層40は、第1のチタン酸化物層30上に けることができるのであれば特に限定され い。また、炭素層40の厚さは特に限定されな いが、10~30μmの範囲が好ましい。この範囲の さの炭素層40は容易に設けることができ、 述する効果を充分に達成することができる

 第2のチタン酸化物層50は、炭素層40上に けることができるのであれば特に限定され い。第2のチタン酸化物層50を構成するチタ 酸化物としては、第1のチタン酸化物層30と 様である。また、第2のチタン酸化物層50の さも特に限定されないが、0.01~10μmの範囲が ましく、0.01~5μmの範囲がより好ましく、特 0.01~1μmの範囲が好ましい。なお、その他の 成要素は実施形態1に係る耐硫化腐食性高温 部材1と同様であるため、同一の符号を付し 説明を省略する。

 かかる構造の耐硫化腐食性高温部材1Aは 第1のチタン酸化物層30と第2のチタン酸化物 50との間に炭素層40を設けることにより、実 施形態1で説明した効果に加えて、拡散反応 よって基材10を構成するFeなどが第2のチタン 酸化物層50を通って耐硫化腐食性高温部材1A 表面へ拡散することを防止することができ ので、耐硫化腐食性を向上させることがで る。なお、この効果は第2のチタン酸化物層5 0が形成されなくても発揮される。また、耐 化腐食性高温部材1Aは、詳細は後述するが、 クラックの少ない均一な第2のチタン酸化物 50を有しているので、より優れた耐硫化腐食 性を有することになる。

 次に、本実施形態に係る硫化腐食防止方 について説明する。なお、ケイ素酸化物層2 0及び第1のチタン酸化物層30の形成方法は実 形態1と同様であるので、説明を省略する。 実施形態に係る硫化腐食防止方法は、第1の チタン酸化物層30の表面上に炭素層40を形成 ると共に、チタン金属又はチタン化合物を 有したチタン含有塗布液を塗布し、加熱酸 させて第2のチタン酸化物層50を形成すると うものである。

 炭素層40を形成する方法は特に限定されな 。例えば、ケイ素酸化物層20及び第1のチタ 酸化物層30が形成された基材10をH 2 、CO、CO 2 、N 2 、及びH 2 Oからなる雰囲気下で加熱し炭素析出させる 法や、例えばShintron D-4807(神東塗料株式会社 製)、スーパーカーボンコート(東北カーボン 式会社製)などの炭素系塗料をケイ素酸化物 層20及び第1のチタン酸化物層30が形成された 材10に吹き付けるスプレーコーティング法 それらの炭素系塗料で満たされた槽にケイ 酸化物層20及び第1のチタン酸化物層30が形成 された基材10を浸漬する方法、ハケなどを用 てそれらの炭素系塗料をケイ素酸化物層20 び第1のチタン酸化物層30が形成された基材10 に塗布する方法などが挙げられる。

 また、第2のチタン酸化物層50を形成する 法も特に限定されず、第1のチタン酸化物層 30と同様にして形成することができる。そし 、第1のチタン酸化物層30を形成する場合と 様に、何れの加熱酸化方法を用いても、チ ン含有塗布液を加熱酸化する途中でチタン 有塗布液から形成される第2のチタン酸化物 層50から水分などの液体成分が除去されて第2 のチタン酸化物層50が乾燥することになる。 の結果、第2のチタン酸化物層50は収縮して 第2のチタン酸化物層50内に内部応力が発生 る。

 ここで、本実施形態では、第2のチタン酸 化物層50は、炭素層40上に設けられるので、 散反応によって基材10を構成するFeなどが第2 のチタン酸化物層50を通って耐硫化腐食性高 部材1Aの表面へ拡散することを防止するこ ができる。また、第2のチタン酸化物層50内 内部応力が発生したとしてもその内部応力 応じて炭素層40が変形して第2のチタン酸化 層50内の内部応力を緩和することができる。 その結果、第2のチタン酸化物層50にクラック が発生するのを防止してクラックの少ない均 一な第2のチタン酸化物層50を形成することが できる。

 (実施形態3)
 実施形態1及び実施形態2では、ケイ素含有 布液、及びチタン含有塗布液を個別に塗布 加熱酸化したが、これに限定されず、まと て加熱酸化を行ってもよい。

 例えば、基材10にケイ素含有塗布液を塗 し、乾燥させてケイ素含有塗布層を形成す (第1塗布工程)。

 次に、ケイ素含有塗布層上に、チタン含 塗布液を塗布し、乾燥させて第1のチタン含 有塗布層を形成する(第2塗布工程)。

 次に、第1のチタン含有塗布層上に、炭素 層40を形成する(炭素層形成工程)。

 そして、炭素層40上に、チタン含有塗布 を塗布し、乾燥させて第2のチタン含有塗布 を形成する(第3塗布工程)。

 最後に、ケイ素含有塗布層、第1・第2の タン含有塗布層、炭素層を纏めて加熱する( 熱酸化工程)。これにより、ケイ素酸化物層 20、第1のチタン酸化物層30、及び第2のチタン 酸化物層50が形成されると共に、炭素層40が 脂される。これらの工程により、図2に示し ように、基材10にケイ素酸化物層20、第1の タン酸化物層30、炭素層40、第2のチタン酸化 物層50が形成される。

 なお、ケイ素含有塗布液の塗布方法、チ ン含有塗布液の塗布方法、及び炭素層40の 成方法は、実施形態1及び実施形態2に説明し た種々の方法を用いることができる。

 このように、ケイ素酸化物層20及び第1・ 2のチタン酸化物層30・50がまとめて加熱酸 されて形成されると、これらの酸化物層に ラックが生じる可能性は低くなり、この結 、耐硫化腐食性の高い酸化物層を基材に形 することができる。また、炭素層40の脱脂も 同時に行えるので合理的である。更に、まと めて加熱酸化するので、各塗布層ごとに加熱 する場合と比較すると製造上の手間が省ける ので、合理的に酸化物層を基材に形成できる 。

 他にも、第1塗布工程、第2塗布工程、及 加熱酸化工程を順次行って、図1に示したよ にケイ素酸化物層20、及び第1のチタン酸化 層30を基材10に形成してもよい。

 また、第1塗布工程、第2塗布工程、及び 熱酸化工程を順次行った後、第1のチタン酸 物層30上に炭素層40を形成する。その後、炭 素層40上にチタン含有塗布液を塗布・乾燥さ ると共に加熱して第2のチタン酸化物層50を 成してもよい(チタン酸化物層形成工程)。

 このように、本発明に係る硫化腐食防止 法は、各塗布工程で形成した各塗布液(層) 纏めて加熱酸化させてもよいし、塗布液(層) ごとに個別に加熱酸化させてもよい。これに より、例えば熱源や塗布液の塗布方法などに 応じて適宜加熱する順番を組み合わせて柔軟 に基材10に酸化物層を形成することができる

 (実施形態4)
 上述した実施形態1~3では、硫化腐食などに り亀裂が生じていない基材10の表面上に第1 チタン酸化物層30等を設けることで基材10を 硫化腐食から保護したが、本発明はそれに限 定されず、亀裂が生じた基材上に第1のチタ 酸化物層30等を設けて補修してもよい。例え ば、亀裂が生じた基材としては、石炭、石油 又はLNG等の燃料を燃焼させる火力発電用ボイ ラの水壁管、過熱器管、再熱器管などの高温 伝熱管を挙げることができる。これらの高温 伝熱管の表面には、火力発電用ボイラの運転 に伴う還元性燃焼炎(低酸素濃度、高硫化水 濃度下の燃焼)による硫化腐食や熱応力によ 、エレファントスキンとも呼ばれる亀裂(溝 状腐食)が生じることがあり、本発明は、こ ような亀裂を補修するために用いることも 能である。

 例えば、実施形態1と同様に、ケイ素酸化 物層及びチタン酸化物層を高温伝熱管の亀裂 が生じた部位の表面に形成してもよい。

 具体的には、まず、高温伝熱管の亀裂が じた部位に付着した腐食物、例えば硫化物 どを除去する。具体的には、当該部位にサ ドブラストを実施して腐食物を除去する。 に、高温伝熱管の亀裂が生じた部位の表面 にケイ素含有塗布液を塗布し、乾燥させて イ素含有塗布層を形成する。そして、ケイ 含有塗布液を加熱酸化してケイ素酸化物層 形成する。次に、このケイ素酸化物層上に チタン含有塗布液を塗布し、乾燥させてチ ン含有塗布層を形成する。そして、このチ ン含有塗布層を加熱酸化してチタン酸化物 を形成する。

 これにより、高温伝熱管に生じたエレフ ントスキン状の亀裂は、この亀裂上に形成 れたケイ素酸化物層及びチタン酸化物層に り補修される。また、ケイ素酸化物層上に タン酸化物層を形成することから、チタン 化物層内に内部応力が発生してもチタン酸 物層にクラックが発生するのを防止するこ ができるので、ケイ素酸化物層上に緻密で ラックの極めて少ないチタン酸化物層を形 される。このため、クラックから亀裂部分 露出してしまうことが低減され、より確実 亀裂を補修することができる。

 もちろん、ケイ素含有塗布液、及びチタ 含有塗布液を個別に加熱酸化するのではな 、まとめて加熱酸化してもよい。ケイ素酸 物層及びチタン酸化物層をまとめて加熱酸 することにより形成すると、これらの酸化 層にクラックが生じる可能性が更に低くな 。このため、クラックから亀裂部分が露出 てしまうことが更に低減され、より一層確 に亀裂を補修することができる。

 また、実施形態2と同様に、ケイ素酸化物 層、第1のチタン酸化物層、炭素層、第2のチ ン酸化物層を高温伝熱管の亀裂が生じた部 の表面に形成してもよい。

 具体的には、まず、高温伝熱管の亀裂が じた部位に付着した腐食物、例えば硫化物 どを除去する。具体的には、当該部位にサ ドブラストを実施して腐食物を除去する。 に、高温伝熱管の亀裂が生じた部位の表面 にケイ素含有塗布液を塗布し、乾燥させて イ素含有塗布層を形成する。そして、ケイ 含有塗布液を加熱酸化してケイ素酸化物層 形成する。次に、このケイ素酸化物層上に 第1のチタン含有塗布液を塗布し、乾燥させ て第1のチタン含有塗布層を形成する。そし 、この第1のチタン含有塗布層を加熱酸化し 第1のチタン酸化物層を形成する。次に、第 1のチタン酸化物層上に、炭素層を形成する 更に、この炭素層上に第2のチタン含有塗布 を塗布し、乾燥させて第2のチタン含有塗布 層を形成する。そして、この第2のチタン含 塗布層を加熱酸化して第2のチタン酸化物層 形成する。

 この場合においても、高温伝熱管に生じ エレファントスキン状の亀裂は、この亀裂 に形成されたケイ素酸化物層、第1のチタン 酸化物層、炭素層及び第2のチタン酸化物層 より補修される。また、第2のチタン酸化物 内に内部応力が発生したとしてもその内部 力に応じて炭素層が変形して第2のチタン酸 化物層内の内部応力を緩和することができる 。このため、クラックの少ない第2のチタン 化物層50を形成することができ、クラックか ら亀裂部分が露出してしまうことが一層低減 され、より確実に亀裂を補修することができ る。

 また、ケイ素含有塗布液、第1のチタン含 有塗布液及び第2のチタン含有塗布液をまと て加熱酸化してもよい。ケイ素酸化物層、 1のチタン酸化物層及び第2のチタン酸化物層 をまとめて加熱酸化することにより形成する と、これらの酸化物層にクラックが生じる可 能性が更に低くなる。このため、クラックか ら亀裂部分が露出してしまうことが更に低減 され、より一層確実に亀裂を補修することが できる。

 更に、実施形態4に係る伝熱管の補修方法 は、従来のプラズマ溶射法を用いたニッケル ・クロムを伝熱管に被膜する補修方法に比べ て、遥かに安価に施工することができる。

 (他の実施形態)
 上述した実施形態1~4では、上述したケイ素 有塗布液を塗布した後、加熱酸化すること よりケイ素酸化物層20を形成したが、ケイ 酸化物層20の形成方法は特に限定されず、例 えばスパッタリングなどで形成してもよい。

 また、上述したようなケイ素酸化物層と タン酸化物層とからなる2層は、基材上に何 層形成されていてもよい。その2層を基材上 より多く形成することにより、耐硫化腐食 をより向上させることができる。さらに、 イ素酸化物層とチタン酸化物層とからなる2 と、それとは別のケイ素酸化物層とチタン 化物層とからなる2層との間に炭素層などが 形成されていてもよい。このような炭素層を より多く形成することにより、耐硫化腐食性 をさらに向上させることができる。

 <実施例1>
 クロムモリブデン鋼(STBA24)からなる板状基 の表面上に、二酸化ケイ素層(SiO 2 層)と、第1の二酸化チタン層(第1のTiO 2 層)と、炭素層と、第2の二酸化チタン層(第2 TiO 2 層)とを形成した。この板状基材の大きさは 1mm厚×15mm長×10mm幅とした。

 具体的には、まず、この板状基材の表面を セトンで脱脂して乾燥させた。その後、こ 板状基材をアクアミカNP110(AZエレクトロニ クマテリアルズ(株)社製)溶液に浸漬してか 取り出し、乾燥させた。そして、バーナを いて基材を加熱することによって、アクア カNP110溶液に含まれる溶剤を蒸発させると共 にケイ素化合物を酸化させ、この板状基材の 表面上に厚さが0.5μmのSiO 2 層を形成した。

 次に、SiO 2 層が形成された板状基材をPSO-306(株式会社光 媒研究所製)溶液に浸漬してから取り出し、 乾燥させた。そして、再度バーナを用いてこ の板状基材を加熱することによって、PSO-306 液に含まれる溶剤を蒸発させると共にチタ 金属を酸化させ、SiO 2 層上に厚さが0.5μmの第1のTiO 2 層を形成した。

 さらに、得られた板状基材をShintron D-4807( 東塗料株式会社製カーボン系導電性塗料)で プレーコーティングし、乾燥させた。そし 、再度バーナを用いてこの板状基材を加熱 ることによって、Shintron D-4807に含まれる溶 剤を蒸発させ、第1のTiO 2 層上に厚さが20μmの炭素層を形成した。

 そして、上述した第1のTiO 2 層の形成方法と同様にして炭素層上に0.5μmの 第2のTiO 2 層を形成して、板状試験片Aを得た。すなわ 、板状基材上に0.5μmのSiO 2 層、0.5μmの第1のTiO 2 層、20μmの炭素層、0.5μmの第2のTiO 2 層が順次形成された板状試験片Aを得た。

 <比較例1>
 SiO 2 層を形成しないこと以外は、実施例1と同様 して、クロムモリブデン鋼の表面上に1μmの 1のTiO 2 層、28μmの炭素層、2.5μmの第2のTiO 2 層が順次形成された板状試験片Bを得た。

 (硫化腐食試験)
 実施例1の板状試験片A、及び比較例1の板状 験片Bを用いて硫化腐食試験を行った。硫化 腐食試験は、各板状試験片を硫化水素(H 2 S)が300ppm含まれた下記表1に示す雰囲気中、500 ℃で200時間加熱することにより行なった。

 実施例1の板状試験片Aの実験結果を図3に、 較例1の板状試験片Bの実験結果を図4に示す 図4に示す板状試験片Bには、第2のTiO 2 層から第1のTiO 2 層にかけてクラックがあり、そのクラックか ら硫化腐食が進行し、第1のTiO 2 層と炭素層との間に硫化鉄層が形成されてい ることが確認された。また、そのクラックを 通って硫化鉄層の硫化鉄が第2のTiO 2 層の表面に析出していることが確認された。 さらに、板状基材と第1のTiO 2 層との間に酸化クロム層が硫化腐食に伴い生 成されていることが確認された。

 一方、図3に示す板状試験片Aにはクラック なく、第1のTiO 2 層と炭素層との間に硫化鉄層は確認されず、 また第2のTiO 2 層の表面にも硫化鉄が析出していないことが 確認された。さらに、板状基材とSiO 2 層との間に酸化クロム層も生成されていない ことが確認された。