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Patent Searching and Data


Title:
METHOD FOR PRODUCING CYCLIC POLYARYLENE SULFIDE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/105438
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a method for producing a cyclic polyarylene sulfide, wherein a cyclic polyarylene sulfide is produced by heating a reaction mixture which is composed of at least a linear polyarylene sulfide (a), a sulfidizing agent (b), a dihalogenated aromatic compound (c) and an organic polar solvent (d). This method for producing a cyclic polyarylene sulfide is characterized in that not less than 1.25 liters of the organic polar solvent is used per 1 mole of the sulfur content in the reaction mixture. This method enables to efficiently produce a cyclic polyarylene sulfide, more specifically a cyclic oligoarylene sulfide by an economical and simple process in a short time.

Inventors:
HORIUCHI SHUNSUKE (JP)
YAMASHITA KOHEI (JP)
TSUCHIYA KAYO (JP)
YAMAUCHI KOJI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/053357
Publication Date:
September 04, 2008
Filing Date:
February 27, 2008
Export Citation:
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Assignee:
TORAY INDUSTRIES (JP)
HORIUCHI SHUNSUKE (JP)
YAMASHITA KOHEI (JP)
TSUCHIYA KAYO (JP)
YAMAUCHI KOJI (JP)
International Classes:
C08G75/02; C08G75/0213; C08G75/0254; C08G75/0259
Domestic Patent References:
WO2007034800A12007-03-29
Foreign References:
JPS62232437A1987-10-12
JP2007231255A2007-09-13
Other References:
See also references of EP 2116562A4
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Claims:
少なくとも
(a)線状ポリアリーレンスルフィド、
(b)スルフィド化剤、
(c)ジハロゲン化芳香族化合物、および
(d)有機極性溶媒、
を含む反応混合物を、加熱して反応させて環式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法であって、反応混合物中のイオウ成分1モルに対して有機極性溶媒を1.25リットル以上用いることを特徴とする環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
加熱温度が反応混合物の常圧における還流温度を超える温度であることを特徴とする請求項1に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
有機極性溶媒の使用量が反応混合物中のイオウ成分1モルに対して50リットル以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
反応混合物を加熱する際の圧力がゲージ圧で0.05MPa以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
ジハロゲン化芳香族化合物(c)がジクロロベンゼンであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
スルフィド化剤(b)がアルカリ金属硫化物であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させることで得られたポリアリーレンスルフィドを、線状ポリアリーレンスルフィド(a)として用いることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とをスルフィド化剤のイオウ成分1モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶媒を用いて、加熱して反応させて得られた環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィド混合物から、環式ポリアリーレンスルフィドを分離することによって得られた線状ポリアリーレンスルフィドを線状ポリアリーレンスルフィド(a)として用いることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド製造方法。
少なくとも、線状ポリアリーレンスルフィド、スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物、有機極性溶媒からなる反応混合物を、反応混合物中のイオウ成分1モルに対して有機極性溶媒を1.25リットル以上用いて加熱して反応させて得られた環式ポリアリーレンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィド混合物から、環式ポリアリーレンスルフィドを分離することによって得られた線状ポリアリーレンスルフィドを線状ポリアリーレンスルフィド(a)として用いることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィド製造方法。
線状ポリアリーレンスルフィド(a)の重量平均分子量が2,500以上であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
Description:
環式ポリアリーレンスルフィド 製造方法

 本発明は環式ポリアリーレンスルフィド 製造方法に関する。より詳しくは環式オリ アリーレンスルフィドを経済的且つ簡易な 法で短時間に効率よく製造する方法に関す 。

 芳香族環式化合物はその環状であること ら生じる特性に基づく高機能材料や機能材 への応用展開可能性、たとえば包接能を有 る化合物としての特性や、開環重合による 分子量直鎖状高分子の合成のための有効な ノマーとしての活用など、その構造に由来 る特異性で近年注目を集めている。環式ポ アリーレンスルフィド(以下、ポリアリーレ ンスルフィドをPASと略する場合もある)も芳 族環式化合物の範疇に属し、上記同様に注 に値する化合物である。

 環式ポリアリーレンスルフィドの製造方 としては、たとえばジアリールジスルフィ 化合物を超希釈条件下で酸化重合する方法 提案されている(たとえば特許文献1参照。) この方法では環式ポリアリーレンスルフィ が高選択で生成し、線状ポリアリーレンス フィドはごく少量しか生成しないと推測さ 、確かに環式ポリアリーレンスルフィドが 収率で得られると考えられる。しかしなが 、この方法では超希釈条件で反応を行うこ が必須とされており、反応容器単位容積あ りに得られる環式ポリアリーレンスルフィ はごくわずかであり、効率的に環式ポリア ーレンスルフィドを得るとの観点では課題 多い方法であった。また該方法は酸化重合 用いた方法であり、この方法は室温近傍の 和な条件が必須であるため、反応に数十時 の長時間が必要であり生産性に劣る方法で った。さらに該方法で副生するポリアリー ンスルフィドは原料のジアリールジスルフ ド由来のジスルフィド結合を含む分子量の いものであり、目的物である環式ポリアリ レンスルフィドと分子量が近いために、環 ポリアリーレンスルフィドと副生するポリ リーレンスルフィドの分離が困難であり高 度な環式ポリアリーレンスルフィドを効率 く得ることは極めて困難であった。加えて 該方法では酸化重合の進行のために例えば クロロジシアノベンゾキノンなど高価な酸 剤が原料のジアリールジスルフィドと等量 要であり、安価に環式ポリアリーレンスル ィドを得ることはできなかった。酸化重合 金属触媒の存在下、酸化剤として酸素を利 する方法も提案されており、この方法では 化剤が安価であるが、反応の制御が困難で 種多量の副生オリゴマーが生成し、また他 では反応に極めて長時間が必要など課題が く、いずれの場合でも純度の高い環式ポリ リーレンスルフィドを安価に効率良く得る とはできなかった。

 環式ポリアリーレンスルフィドの他の製 方法として、4-ブロモチオフェノールの銅 をキノリン中の超希釈条件下で加熱する方 が開示されている。この方法も前記特許文 1と同様に超希釈条件が必須であり、また反 に長時間が必要であり生産性の極めて低い 法であった。さらにこの方法では副生する 化銅を生成物である環式ポリアリーレンス フィドから分離することが困難であり、得 れる環式ポリアリーレンスルフィドは純度 低いものであった(例えば特許文献2参照。)

 環式ポリアリーレンスルフィドを高収率 得る方法として、1,4-ビス-(4’-ブロモフェ ルチオ)ベンゼンなどのジハロ芳香族化合物 硫化ナトリウムとをN-メチルピロリドン中 還流温度下に接触させる方法が開示されて る(例えば非特許文献1。)。この方法では反 混合物中のイオウ成分1モルに対する有機極 溶媒量が1.25リットル以上であるため環式ポ リアリーレンスルフィドが得られると推測で きるが、原料に線状ポリアリーレンスルフィ ドを用いていないためジハロ芳香族化合物を 多量に用いることが必要であり、また用いて いるジハロ芳香族化合物が極めて特殊な化合 物であるため、工業的な実現性に乏しい方法 であり改善が望まれていた。

 汎用的な原料からの環式ポリアリーレン ルフィドの製造方法として、ジハロゲン化 香族化合物としてp-ジクロロベンゼンと、 ルカリ金属硫化物として硫化ナトリウムを 機極性溶媒であるN-メチルピロリドン中で反 応させ、ついで加熱減圧下で溶媒を除去後、 水で洗浄する事で得られたポリフェニレンス ルフィドを、塩化メチレンで抽出して得られ た抽出液の飽和溶液部分から回収する方法が 開示されている(たとえば特許文献3参照。)。 この方法では生成物の大部分が高分子量ポリ フェニレンスルフィドであり、環式ポリアリ ーレンスルフィドが極微量(収率1%未満)しか られないという問題があった。

 また、ポリアリーレンスルフィドを得る 法として、少なくとも1個の核置換ハロゲン を含有する芳香族化合物またはチオフェンと アルカリ金属モノスルフィドとを極性有機溶 媒中で高められた温度において反応せしめる 方法が開示されている(例えば特許文献4、特 文献5,特許文献6参照)。これらの方法は本発 明の目的と異なりポリアリーレンスルフィド を得ることを目的としているおり、環式ポリ アリーレンスルフィドの製造に関しては何ら 開示されていない。また、これらの方法は分 子量の高いポリアリーレンスルフィドを得る ことを目的としているため、スルフィド化剤 に対する有機極性溶媒の使用量を少なくして おり、有機極性溶媒をスルフィド化剤のイオ ウ原子1モルあたり1.25リットル以上用いた反 については何ら開示されていないのみなら 、スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対し 有機極性溶媒を1リットルを越えて用いた場 には、有用な生成物が得られないことが明 されている。さらに本発明の特徴である線 のポリアリーレンスルフィドを原料に用い ことについてもなにも言及されていない。

 線状のポリアリーレンスルフィドを原料 用いてアリーレンスルフィド系ポリマーを る方法としては、ポリアリーレンスルフィ にアルカリ金属硫化物を作用させて解重合 ることにより得られる少なくとも一方の末 にアルカリチオラート基を有するプレポリ ーとジハロゲン化芳香族化合物を重合反応 せる方法が開示されている(例えば特許文献 7参照。)。この方法はポリアリーレンスルフ ドの改質に関するものであり、本発明とは 的が異なるのみならず、環式ポリアリーレ スルフィドの製造に関してはなんら記載が い。また、この方法では分子量の高いポリ リーレンスルフィドを得ることを目的とし いるため、反応混合物中のイオウ成分1モル あたりの有機極性溶媒量が約1kg以下での反応 について開示されているだけであり、本発明 を実施するために必要な反応混合物中のイオ ウ成分1モルあたりの有機極性溶媒量が1.25リ トル以上用いた反応については何ら記載さ ていない。さらにこの方法では、まずポリ リーレンスルフィドとアルカリ金属硫化物 作用させることで少なくとも一方の末端に ルカリチオラート基を有するプレポリマー 得た後に、次いでこのプレポリマーとジハ ゲン化芳香族化合物を重合させる2段階の反 応を経ることを必須としており、本発明の様 に線状ポリアリーレンスルフィドとスルフィ ド化剤及びジハロゲン化芳香族化合物を一度 に反応させる方法と比べて、反応の厳密な制 御が必要であり、また操作も煩雑であるなど 解決すべき課題が多かった。

 ポリアリーレンスルフィドを原料として、 ルカリ金属硫化物と反応させる別の方法と ては、ポリフェニレンスルフィドの末端に オラート基を導入して高反応性ポリフェニ ンスルフィドを製造する方法(例えば特許文 献8参照。)、ポリアリーレンスルフィドにア カリ金属硫化物を作用させて少なくとも一 の末端にアルカリチオラート基を有するプ ポリマーを合成した後に、各種ジハロゲン 芳香族化合物を反応させてポリアリーレン ルフィド系コポリマーを製造する方法(例え ば特許文献9~12参照。)が開示されているが、 ずれの場合も本発明とは目的が異なり、本 明の目的である環式ポリアリーレンスルフ ドについては何ら言及されていないのみな ず、本発明を実施するために必要な反応混 物中のイオウ成分1モルあたりの有機極性溶 媒量を1.25リットル以上用いた反応について 何ら記載されていない。

特許第3200027号公報 (特許請求の範囲)

米国特許第5869599号公報 (第14頁)

特開平05-163349号公報 (第7頁)

特公昭45-3368号公報 (第6~8頁)

特公昭52-12240号公報 (第10~20頁)

特公昭63-3375号公報 (第6から9頁)

特開平04-7334号公報 (特許請求の範囲)

特開平02-140233号公報 (特許請求の範囲)

特開平04-213329号公報 (特許請求の範囲)

特開平04-311725号公報 (特許請求の範囲)

特開平05-043689号公報 (特許請求の範囲)

特開平05-98007号公報 (特許請求の範囲) Bull.Acad.Sci., vol.39,p.763-766,1990

 本発明は上記従来技術の課題を解決し、 式ポリアリーレンスルフィドの経済的且つ 易な方法で短時間に効率よく製造する方法 提供することを課題とする。

 上記課題に対し本発明は、
1.少なくとも
(a)線状ポリアリーレンスルフィド、
(b)スルフィド化剤、
(c)ジハロゲン化芳香族化合物、および
(d)有機極性溶媒、
を含む反応混合物を、加熱して反応させて環 式ポリアリーレンスルフィドを製造する方法 であって、反応混合物中のイオウ成分1モル 対して有機極性溶媒を1.25リットル以上用い ことを特徴とする環式ポリアリーレンスル ィドの製造方法、
2.加熱温度が反応混合物の常圧における還流 度を超える温度であることを特徴とする第1 項に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの 製造方法、
3.有機極性溶媒の使用量が反応混合物中のイ ウ成分1モルに対して50リットル以下である とを特徴とする第1項または第2項に記載の 式ポリアリーレンスルフィドの製造方法、
4.反応混合物を加熱する際の圧力がゲージ圧 0.05MPa以上であることを特徴とする第1~3項の いずれかに記載の環式ポリアリーレンスルフ ィドの製造方法、
5.ジハロゲン化芳香族化合物(c)がジクロロベ ゼンであることを特徴とする請求項1から4 いずれかに記載の環式ポリアリーレンスル ィドの製造方法、
6.スルフィド化剤(b)がアルカリ金属硫化物で ることを特徴とする第1~5項のいずれかに記 の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方 、
7.スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合 とを有機極性溶媒中で接触させることで得 れたポリアリーレンスルフィドを、線状ポ アリーレンスルフィド(a)として用いること 特徴とする第1~6項のいずれかに記載の環式 リアリーレンスルフィドの製造方法、
8.スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合 とをスルフィド化剤のイオウ成分1モルに対 して1.25リットル以上の有機極性溶媒を用い 、加熱して反応させて得られた環式ポリア ーレンスルフィドと線状ポリアリーレンス フィドを含むポリアリーレンスルフィド混 物から、環式ポリアリーレンスルフィドを 離することによって得られた線状ポリアリ レンスルフィドを線状ポリアリーレンスル ィド(a)として用いることを特徴とする第1~6 のいずれかに記載の環式ポリアリーレンス フィド製造方法、
9.少なくとも、線状ポリアリーレンスルフィ 、スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化 物、有機極性溶媒からなる反応混合物を、 応混合物中のイオウ成分1モルに対して有機 極性溶媒を1.25リットル以上用いて加熱して 応させて得られた環式ポリアリーレンスル ィドと線状ポリアリーレンスルフィドを含 ポリアリーレンスルフィド混合物から、環 ポリアリーレンスルフィドを分離すること よって得られた線状ポリアリーレンスルフ ドを線状ポリアリーレンスルフィド(a)とし 用いることを特徴とする第1~6項のいずれか 記載の環式ポリアリーレンスルフィド製造 法、
10.線状ポリアリーレンスルフィド(a)の重量平 均分子量が2,500以上であることを特徴とする 1~9項のいずれかに記載の環式ポリアリーレ スルフィドの製造方法、を提供する。

 本発明によれば、環式ポリアリーレンス フィドの製造方法が提供でき、より詳しく 環式オリゴアリーレンスルフィドを経済的 つ簡易な方法で短時間に効率よく製造する 法を提供できる。

以下に、本発明実施の形態を説明する。

 (1)スルフィド化剤
 本発明で用いられるスルフィド化剤とは、 ハロゲン化芳香族化合物にスルフィド結合 導入できるもの、またアリーレンスルフィ 結合に作用してアリーレンチオラートを生 するものであれば良く、例えばアルカリ金 硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫 水素が挙げられる。

 アルカリ金属硫化物の具体例としては、 えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化 リウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムお びこれら2種以上の混合物を挙げることがで き、なかでも硫化リチウムおよび/または硫 ナトリウムが好ましく、硫化ナトリウムが り好ましく用いられる。これらのアルカリ 属硫化物は、水和物または水性混合物とし 、あるいは無水物の形で用いることができ 。なお、水性混合物とは水溶液、もしくは 溶液と固体成分の混合物、もしくは水と固 成分の混合物のことをさす。一般的に入手 きる安価なアルカリ金属硫化物は水和物ま は水性混合物であるので、このような形態 アルカリ金属硫化物を用いることが好まし 。

 アルカリ金属水硫化物の具体例としては 例えば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム 水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化 ビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種 以上の混合物を挙げることができ、なかでも 水硫化リチウムおよび/または水硫化ナトリ ムが好ましく、水硫化ナトリウムがより好 しく用いられる。

 また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ 属水酸化物から、反応系においてin situで 製されるアルカリ金属硫化物も用いること できる。また、あらかじめアルカリ金属水 化物とアルカリ金属水酸化物を接触させて 製したアルカリ金属硫化物を用いることも きる。これらのアルカリ金属水硫化物及び ルカリ金属水酸化物は水和物または水性混 物として、あるいは無水物の形で用いるこ ができ、水和物または水性混合物が入手の 易さ、コストの観点から好ましい。

 さらに、水酸化リチウム、水酸化ナトリ ムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素 ら反応系においてin situで調製されるアル リ金属硫化物も用いることができる。また あらかじめ水酸化リチウム、水酸化ナトリ ムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素 接触させて調製したアルカリ金属硫化物を いることもできる。硫化水素は気体状、液 状、水溶液状のいずれの形態で用いても差 障り無い。

 本発明においてスルフィド化剤の量は、 水操作などにより線状ポリアリーレンスル ィドとジハロゲン化芳香族化合物との反応 始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる 合には、実際の仕込み量から当該損失分を し引いた残存量を意味するものとする。

 なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ 属水酸化物および/またはアルカリ土類金属 水酸化物を併用することも可能である。アル カリ金属水酸化物の具体例としては、例えば 水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化 リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウ ムおよびこれら2種以上の混合物を好ましい のとして挙げることができ、アルカリ土類 属水酸化物の具体例としては、例えば水酸 カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸 バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化 トリウムが好ましく用いられる。

 スルフィド化剤として、アルカリ金属水 化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸 物を同時に使用することが特に好ましいが この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに 対し0.95から1.50モル、好ましくは1.00から1.25 ル、更に好ましくは1.005から1.200モルの範囲 例示できる。スルフィド化剤として硫化水 を用いる場合にはアルカリ金属水酸化物を 時に使用することが特に好ましく、この場 のアルカリ金属水酸化物の使用量は硫化水 1モルに対し2.0~3.0モル、好ましくは2.01~2.50 ル、更に好ましくは2.04~2.40モルの範囲が例 できる。

 (2)ジハロゲン化芳香族化合物
 本発明の環式PASの製造において使用される ハロゲン化芳香族化合物としては、p-ジク ロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロ ベンゼン、p-ジブロモベンゼン、o-ジブロモ ベンゼン、m-ジブロモベンゼン、1-ブロモ-4- ロロベンゼン、1-ブロモ-3-クロロベンゼンな どのジハロゲン化ベンゼン、及び1-メトキシ- 2,5-ジクロロベンゼン、1-メチル-2,5-ジクロロ ンゼン、1,4-ジメチル-2,5-ジクロロベンゼン 1,3-ジメチル-2,5-ジクロロベンゼン、3,5-ジク ロロ安息香酸などのハロゲン以外の置換基を も含むジハロゲン化芳香族化合物などを挙げ ることができる。なかでも、p-ジクロロベン ンに代表されるp-ジハロゲン化ベンゼンを 成分にするジハロゲン化芳香族化合物が好 しい。特に好ましくは、p-ジクロロベンゼン を80~100モル%含むものであり、さらに好まし は90~100モル%含むものである。また、環式PAS 重合体を製造するために異なる2種以上のジ ハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて用い ることも可能である。

 ジハロゲン化芳香族化合物の使用量は、 ルフィド化剤のイオウ成分1モル当たり0.9~2. 0モルの範囲であることが好ましく、0.95~1.5モ ルの範囲がより好ましく、0.98~1.2モルの範囲 更に好ましい。

 (3)線状ポリアリーレンスルフィド
 本発明における線状PASとは、式、-(Ar-S)-の り返し単位を主要構成単位とする好ましく 当該繰り返し単位を80モル%以上含有する線 のホモポリマーまたは線状のコポリマーで る。Arとしては下記の式(A)~式(L)などであら される単位などがあるが、なかでも式(A)が に好ましい。

(ただし、式中のR1,R2は水素、炭素数1から6 アルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基 ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1と R2は同一でも異なっていてもよい。)

 この繰り返し単位を主要構成単位とする り、下記の式(M)~式(P)などで表される少量の 分岐単位または架橋単位を含むことができる 。これら分岐単位または架橋単位の共重合量 は、-(Ar-S)-の単位1モルに対して0~1モル%の範 であることが好ましい。

 また、本発明における線状PASは上記繰り し単位を含むランダム共重合体、ブロック 重合体及びそれらの混合物のいずれかであ てもよい。

 これらの代表的なものとして、ポリフェ レンスルフィド、ポリフェニレンスルフィ スルホン、ポリフェニレンスルフィドケト 、これらのランダム共重合体、ブロック共 合体及びそれらの混合物などが挙げられる 特に好ましいPASとしては、ポリマーの主要 成単位としてp-フェニレンスルフィド単位

を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポ リフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すこ もある)の他、ポリフェニレンスルフィドス ホン、ポリフェニレンスルフィドケトンが げられる。

 本発明における各種線状PASの溶融粘度に に制限は無いが、一般的な線状PASの溶融粘 としては0.1~1000Pa・s(300℃、剪断速度1000/秒) 範囲が例示でき、0.1~500Pa・sの範囲が入手の 容易性の観点で好ましい範囲といえる。また 、線状PASの分子量にも特に制限は無く、一般 的なPASを用いることが可能でありこの様なPAS の重量平均分子量としては1,000~1,000,000が例示 でき、2,500~500,000が好ましく、5,000~100,000がよ 好ましい。一般に重量平均分子量が低いほ 有機極性溶媒への溶解性が高くなるため、 応に要する時間が短くできるという利点が るが、前述した範囲であれば本質的な問題 く使用が可能である。

 このような線状PASの製造方法は特に限定 されず、いかなる製法によるものでも使用 ることが可能であるが、例えば前述した特 文献4から6に代表される、少なくとも1個の 置換ハロゲンを含有する芳香族化合物また チオフェンとアルカリ金属モノスルフィド を有機極性溶媒中で高められた温度におい 反応せしめる方法、好ましくはスルフィド 剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極 溶媒中で接触させることによって得ること できる。またこれら方法により製造されたP ASを用いた成形品や成形屑、廃プラスチック オフスペック品なども幅広く使用すること 可能である。

 また、一般的に環式化合物の製造は本発 も含み、環式化合物の生成と線状化合物の 成の競争反応であるため、環式PASの製造を 的とする方法においては、目的物の環式PAS 外に線状PASが少なからず副生物として生成 る。本発明ではこの様な副生線状PASも問題 く原料に用いることが可能であり、例えば ルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物 をスルフィド化剤のイオウ成分1モルに対し て1.25リットル以上の有機極性溶媒を用いて 加熱して反応させて得られた環式ポリアリ レンスルフィドと線状ポリアリーレンスル ィドを含むポリアリーレンスルフィド混合 から、環式ポリアリーレンスルフィドを分 することによって得られた線状ポリアリー ンスルフィドを用いる方法は、特に好まし 方法といえる。さらに、本発明の実施によ 生成する線状ポリアリーレンスルフィド、 なわち、少なくとも、線状ポリアリーレン ルフィド、スルフィド化剤、ジハロゲン化 香族化合物、有機極性溶媒からなる反応混 物を、反応混合物中のイオウ成分1モルに対 て有機極性溶媒を1.25リットル以上用いて加 熱して反応させて得られた環式ポリアリーレ ンスルフィドと線状ポリアリーレンスルフィ ドを含むポリアリーレンスルフィド混合物か ら、環式ポリアリーレンスルフィドを分離す ることによって得られた線状ポリアリーレン スルフィドを用いることは、ことさら好まし い方法である。従来、環式化合物、環式PASの 製造において副生する線状化合物、線状PASは 利用価値の無いものとして廃棄されていた。 従って環式化合物の製造においてはこの副生 線状化合物に起因する廃棄物量が多い、また 原料モノマーに対する収率が低いという課題 があった。本発明ではこの副生線状PASを原料 として使用することが可能であり、このこと は廃棄物量の著しい低減や原料モノマーに対 する収率の飛躍的な向上を可能とするという 観点で意義の大きいものである。

 線状PASの使用量は、反応開始時点、すな ち反応系に仕込んだジハロゲン化芳香族化 物の転化率が0の段階での反応混合物に線状 PASが含まれていれば良いが、線状PASの主要構 成単位である式-(Ar-S)-の繰り返し単位を基準 して、スルフィド化剤のイオウ成分1モル当 たり0.1~20繰り返し単位モルの範囲であること が好ましく、0.25~15繰り返し単位モルの範囲 より好ましく、1~10繰り返し単位モルの範囲 更に好ましい。線状PASの使用量が好ましい 囲では、特に環式PASが高収率で得られる傾 にあり、さらに短時間で反応を進行させ得 傾向にある。

 なお、線状PASの形態に特に制限はなく、 燥状態の粉末状、粉粒状、粒状、ペレット でも良いし、反応溶媒である有機極性溶媒 含む状態で用いることも可能であり、また 本質的に反応を阻害しない第三成分を含む 態で用いることも可能である。この様な第 成分としては例えば無機フィラーなどが例 でき、無機フィラーを含む樹脂組成物の形 の線状PASを用いることも可能である。

 (4)有機極性溶媒
 本発明の環式PASの製造においては有機極性 媒を反応溶媒として用いるが、なかでも有 アミド溶媒を用いるのが好ましい。具体例 しては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2- ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン どのN-アルキルピロリドン類、N-メチル-ε- プロラクタム、ε-カプロラクタムなどのカ ロラクタム類、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジ ン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチ ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリア ドなどに代表されるアプロチック有機溶媒 及びこれらの混合物などが、反応の安定性 高いために好ましく使用される。これらの かでもN-メチル-2-ピロリドンおよび1,3-ジメ ル-2-イミダゾリジノンが好ましく用いられ 。

 本発明において環式PASの製造における反 溶媒として用いる有機極性溶媒の使用量は 反応混合物が含むイオウ成分1モルに対し1.2 5リットル以上であり、好ましくは1.5リット 以上、より好ましくは2リットル以上である なおここで反応混合物が含むイオウ成分と 、原料に用いる線状ポリアリーレンスルフ ドに含まれるイオウ成分及び原料に用いる ルフィド化剤に含まれるイオウ成分の合計 ある。ここで線状ポリアリーレンスルフィ に含まれるイオウ成分の「モル数」とはイ ウ原子1個を含むポリマーの「繰り返し単位 の数」である。例えば重合度100の線状ポリフ ェニレンスルフィド1分子は1モルではなく100 ルと計算する。なお、本発明の本質を損な ない限りは、線状ポリアリーレンスルフィ 、スルフィド化剤に以外にイオウ成分を含 する化合物を付加的に反応混合物中に存在 せることも可能であるが、このような本発 の反応に対して実質的に作用しないイオウ 有化合物に由来するイオウ成分は考慮に入 なくても良い。また、有機極性溶媒の使用 の上限に特に制限はないが、より効率よく 式PASを製造するとの観点から、反応混合物 含むイオウ成分1モルに対し50リットル以下 することが好ましく、20リットル以下がよ 好ましく、15リットル以下が更に好ましい。 なお、ここでの溶媒使用量は常温常圧下にお ける溶媒の体積を基準とする。有機極性溶媒 の使用量を多くすると、環式PAS生成の選択率 が向上するが、多すぎる場合、反応容器の単 位体積当たりの環式PASの生成量が低下する傾 向に有り、更に、反応に要する時間が長時間 化する傾向がある。環式PASの生成選択率と生 産性を両立するとの観点で前記した有機極性 溶媒の使用量範囲とする事が好ましい。なお 、一般的な環式化合物の製造における溶媒の 使用量は極めて多い場合が多く、本発明の好 ましい使用量範囲では効率よく環式化合物を 得られないことが多い。本発明では一般的な 環式化合物製造の場合と比べて、溶媒使用量 が比較的少ない条件下、即ち前記した好まし い溶媒使用量上限値以下の場合でも、効率よ く環式PASが得られる。この理由は現時点定か ではないが、本発明の方法では極めて反応効 率が高く、原料であるスルフィド化剤と線状 PASの反応や、スルフィド化剤とジハロゲン化 芳香族化合物の反応、スルフィド化剤と線状 PASの反応で生成する反応中間体とジハロゲン 化芳香族化合物の反応などが極めて速やかに 進行することが、環式化合物の生成に好適に 作用しているものと推測している。なおここ で、反応混合物における有機極性溶媒の使用 量とは、反応系内に導入した有機極性溶媒か ら、反応系外に除去された有機極性溶媒を差 し引いた量である。

 (5)環式ポリアリーレンスルフィド
 本発明における環式ポリアリーレンスルフ ドとは式、-(Ar-S)-の繰り返し単位を主要構 単位とする環式化合物であり、好ましくは 該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記 般式(Q)のごとき化合物である。

 ここでArとしては前記式(A)~式(L)などであ わされる単位を例示できるが、なかでも式( A)~式(C)が好ましく、式(A)及び式(B)がより好ま しく、式(A)が特に好ましい。

 なお、環式ポリアリーレンスルフィドに いては前記式(A)~式(L)などの繰り返し単位を ランダムに含んでも良いし、ブロックで含ん でも良く、それらの混合物のいずれかであっ てもよい。これらの代表的なものとして、環 式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェ ニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニ レンスルフィドケトン、これらが含まれる環 式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体 及びそれらの混合物などが挙げられる。特に 好ましい環式ポリアリーレンスルフィドとし ては、主要構成単位としてp-フェニレンスル ィド単位

を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環 式ポリフェニレンスルフィド(以下、環式PPS 略すこともある)が挙げられる。

 環式ポリアリーレンスルフィドの前記(Q) 中の繰り返し数mに特に制限は無いが、2~50 好ましく、2~25がより好ましく、3~20が更に好 ましい範囲として例示できる。後述するよう に環式PASを含有するポリアリーレンスルフィ ドプレポリマーを高重合度体への転化する場 合には、環式ポリアリーレンスルフィドが溶 融解する温度以上に加熱して行うことが好ま しいが、mが大きくなると環式ポリアリーレ スルフィドの溶融解温度が高くなる傾向に るため、ポリアリーレンスルフィドプレポ マーの高重合度体への転化をより低い温度 行うことができるようになるとの観点でmを 記範囲にすることは有利となる。

 また、環式ポリアリーレンスルフィドは 単一の繰り返し数を有する単独化合物、異 る繰り返し数を有する環式ポリアリーレン ルフィドの混合物のいずれでも良いが、異 る繰り返し数を有する環式ポリアリーレン ルフィドの混合物の方が単一の繰り返し数 有する単独化合物よりも溶融解温度が低い 向があり、異なる繰り返し数を有する環式 リアリーレンスルフィドの混合物の使用は 記した高重合度体への転化を行う際の温度 より低くできるため好ましい。

 (6)環式ポリアリーレンスルフィドの製造方
 本発明では、少なくとも(a)線状ポリアリー ンスルフィド、(b)スルフィド化剤、(c)ジハ ゲン化芳香族化合物、(d)有機極性溶媒、か なる反応混合物を、加熱して反応させて環 ポリアリーレンスルフィドを製造する。

 本発明の環式PASの製造に際しては、上記 成分からなる反応混合物を、反応混合物の 圧下における還流温度を越えて加熱するこ が好ましい。ここで常圧とは大気の標準状 近傍における圧力のことであり、約25℃近 の温度、絶対圧で101kPa近傍の大気圧条件の とである。なお、還流温度とは反応混合物 液体成分が沸騰と凝縮を繰り返している状 の温度である。反応混合物を常圧下の還流 度を超える加熱状態にする方法としては、 えば反応混合物を常圧を越える圧力下で反 させる方法や、反応混合物を密閉容器内で 熱する方法が例示できる。

 本発明の環式PASの製造におけるより好ま い反応温度は、原料として用いる線状PASが 応混合物中で溶融解する温度である。原料 線状PASは、室温近傍では固体状態であるこ が一般的であり、固体状態では本発明の目 である環式PASの生成反応が進行しにくいが 線状PASが溶融解する温度で反応を行うこと 反応系が均一化し飛躍的に反応速度が向上 、反応に要する時間を短縮できる傾向にあ 。この温度は反応混合物中の成分の種類、 、原料に用いる線状PASの構造、分子量など よって多様に変化するため一意的に決める とはできないが、通常120~350℃、好ましくは 200~320℃、より好ましくは230~300℃、さらに好 しくは240~280℃の範囲を例示できる。この好 ましい温度範囲ではより高い反応速度が得ら れ、反応が均一で進行しやすい傾向にあるの みならず、生成した環式PASの分解なども起こ りにくい傾向にあるため、効率よく環式PASが 得られる傾向にある。また、反応は一定温度 で行う1段反応、段階的に温度を上げていく 段階反応、あるいは連続的に温度を変化さ ていく形式の反応のいずれでもかまわない

 また、反応時間は使用する原料の線状PAS 構造、分子量などや、スルフィド化剤、ジ ロゲン化芳香族化合物、有機極性溶媒の種 、およびこれら原料の量あるいは反応温度 依存するので一概に規定できないが、0.1時 以上が好ましく、0.5時間以上がより好まし 。この好ましい時間以上とすることで、未 応の原料成分を十分に減少できるため、収 良く環式PASを製造でき、また生成した環式P ASの回収がしやすくなる傾向にある。一方、 応時間に特に上限は無いが、本発明の方法 極めて高い反応速度が得られやすい特徴を するため、10時間以内でも十分に反応が進 し、好ましくは6時間以内、より好ましくは3 時間以内も採用できる。

 本発明の環式PASの製造において、反応混 物を加熱する際の圧力に特に制限はないが 反応混合物の常圧下における還流温度を越 ることが可能となる圧力が好ましい。反応 合物を加熱する際の圧力は反応混合物を構 する原料およびその組成、反応温度等によ 変化するため一意的に規定することはでき いが、好ましい圧力の下限としてゲージ圧 0.05MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上、さら に好ましくは0.4MPa以上が例示できる。また好 ましい圧力の上限としては10MPa以下、より好 しくは5MPa以下が例示できる。この様な好ま しい圧力範囲では、環式PASの製造に要する時 間を短くできる傾向にある。また、環式PASの 製造における有機極性溶媒の使用量を多くす る場合、すなわち反応混合物における原料で ある線状PAS、スルフィド化剤およびジハロゲ ン化芳香族化合物の濃度が低い条件において 、前記好ましい圧力範囲で反応を行うことの 効果が特に大きい傾向にあり、原料消費率お よび/または目的物である環式PASの選択率を り向上できる傾向がある。この理由につい は現時点定かでないが、環式PASの製造に際 、反応における加熱条件下で揮発性を有す ジハロゲン化芳香族化合物など原料はその 部が反応系内で気相に存在し、液相部の反 基質との反応が進行しにくくなる可能性が り、前記好ましい圧力範囲とすることでこ ような原料の反応系内での揮発を抑制でき ため、より効率よく反応が進行するように ると推測している。また、反応混合物を加 する際の圧力を前記好ましい圧力範囲とす ために、反応を開始する前や反応中など随 の段階で、好ましくは反応を開始する前に 後述する不活性ガスにより反応系内を加圧 ることも好ましい方法である。なおここで ージ圧とは大気圧を基準とした相対圧力の とであり、絶対圧から大気圧を差し引いた 力値と同意である。

 なお、一般に環式化合物はその前駆体で る比較的繰り返し単位数の小さい線状化合 が分子内で結合を形成することで生成する 本発明の環式PASにおいても、例えば繰り返 単位数mの線状PASが分子内反応することで繰 り返し単位数mの環式PASが生成すると思われ 本発明においては原料の線状PASがスルフィ 化剤と反応することで環式化合物の前駆体 なりうる比較的繰り返し単位数が小さい線 化合物を生成し、これを経由して環式化合 の生成が進行するものと推測している。こ で、例えば繰り返し単位数mの線状PASと繰り し単位数nの線状PASが分子間で反応すると、 繰り返し単位数(m+n)の線状PASが生成する事に る。すなわち、一般に環式化合物を製造す 際には、分子間反応による線状化合物も少 からず副生し、環式化合物の製造に際して 、分子内反応を優先的に進行させることが 要である。PASの場合、一般に繰り返し単位 の大きい線状PASは有機極性溶媒への溶解性 劣る傾向にあり、一方で温度が高いほどPAS 分の溶解性は高くなることが知られている 従って環式PASの製造を目的として、線状PAS 生成を抑制したい場合には、一般に低い反 温度が採用され、公知の環式PASの製造にお ても還流温度を超える反応温度は採用され いない。反対に線状PASの高分子量体の製造 目的とする場合には、PAS成分が有機極性溶 に十分に溶解する条件である高い反応温度 採用され、公知の分子量の高いPASの製造に いては還流温度を超える反応温度が採用さ る傾向が強く、この場合、分子量の高いPAS 高い収率で得られることが報告されている 本発明者らは、環式PASの製造方法を鋭意検 した結果、驚くべきことに、高分子量の線 PASが得られやすい温度領域である反応混合 の還流温度を超える高い温度領域が本発明 目的を達成するために好適であり、特異的 環式PASが短時間に収率良く得られることを 出し、本発明の完成に至った。さらに、本 明の環式PASの製造に好ましく採用される前 温度領域においては、環式PASが収率良く得 れるのみならず、副生する線状PASが高分子 体として得やすいという特徴を有すること 発見した。ここで、環式PASと分子量の高い 状PASは、例えば溶剤に対する溶解特性が大 に異なるため、環式PASと線状PASの分離が容 であり、このことも本発明の環式PAS製造方 の優れた効果といえる。従って、本発明の 式PASの製造方法によれば、例えば後述する 式PASの回収操作を付加的に行うことで、極 て純度の高い環式PASが得られやすい。一方 、環式PASの公知の製造法である還流温度以 の温度領域では、原料の線状PASが反応混合 中で溶融解しにくく反応が進行しにくく、 た、反応が進行しても温度が低いため副生 る線状PASは分子量の低いものしか得られな と思われ、これに基づき環式PASと線状PASの 離が困難なため、純度の高い環式PASは得ら にくい傾向にある。

 本発明の環式PASの製造方法においては、 応器に線状PAS、スルフィド化剤、ジハロゲ 化芳香族化合物、および有機極性溶媒を仕 み、これらを必須成分とする反応混合物と て反応を行う。これら必須成分を反応器に 込む順序に特に制限は無いが、まず使用す 有機極性溶媒の全量もしくは一部を仕込み 次いでその他の成分を仕込む方法が反応混 物の均一化のために好ましい。反応混合物 は前記必須成分以外に反応を著しく阻害し い第三成分や、反応を加速する効果を有す 第三成分を加えることも可能である。反応 行う方法に特に制限は無いが、攪拌条件下 行うことが反応系の均一化のために好まし 。なお、ここで前記原料を仕込む際の温度 特に制限は無く、例えば室温近傍で原料を 込んだ後に反応を行っても良いし、あらか め前述した反応に好ましい温度に温調した 応器に原料を仕込んで反応を行なうことも 能である。また反応を行っている反応系内 逐次的に原料を仕込んで連続的に反応を行 ことも可能である。

 また、スルフィド化剤、ジハロゲン化芳香 化合物、線状PAS及び有機極性溶媒として水 含むものを用いることも可能である。一般 スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合 を用いる反応は反応混合物中の水分量が増 すると、反応速度が低下する傾向にあるた 厳密な水分量の低減が必要であるが、本発 の方法では極めて早く反応が進行するため 反応混合物中の水分量を厳密に制御するこ なく十分な反応を行うことが可能である。 って本発明の反応混合物中の水分量に特に 限は無いが、反応開始時点、すなわち反応 に仕込んだジハロゲン化芳香族化合物(以下 DHAと略することもある)の転化率が0の段階に ける水分量は、反応混合物中のイオウ成分1 モル当たり0.2モル以上20モル以下が好ましい 囲として例示でき、0.5モル以上10モル以下 あることが好ましく、0.6モル以上8モル以下 より好ましい。反応混合物を形成するスル ィド化剤、有機極性溶媒、ジハロゲン化芳 族化合物、線状PAS及びその他成分が水を含 場合で、反応混合物中の水分量が前記範囲 超える場合には、反応を開始する前や反応 途中において、反応系内の水分量を減じる 作を行い、水分量を前記範囲内にする事も 能であり、これにより短時間に効率よく環 PASを得られる傾向にある。また、反応混合 の水分量が前記好ましい範囲未満の場合は 上記水分量になるように水を添加すること 好ましい方法である。なお、DHAの転化率は 以下の式で算出した値である。DHA残存量は 通常、ガスクロマトグラフ法によって求め ことができる。
(a)ジハロゲン化芳香族化合物をスルフィド化 剤に対しモル比で過剰に添加した場合
 転化率(%)=[〔DHA仕込み量(モル)-DHA残存量(モ )〕/〔DHA仕込み量(モル)-DHA過剰量(モル)〕]× 100%
(b)上記(a)以外の場合
 転化率(%)=[〔DHA仕込み量(モル)-DHA残存量(モ )〕/〔DHA仕込み量(モル)〕]×100%

 さらに、環式PASの製造において、所望の 間反応を継続し仕込んだ原料が減少した随 の段階で、線状PAS、スルフィド化剤、ジハ ゲン化芳香族化合物及び有機極性溶媒のい れか、もしくは複数を追加して更に反応を 続することも可能である。ここで追加する は、追加する前の反応混合物中のイオウ成 の量を勘案することが重要であり、原料の 加を行った後の反応混合物中のイオウ成分1 モルに対して有機極性溶媒が1.25リットル以 になる範囲内で追加を行うことが強く望ま る。

 線状PAS、スルフィド化剤及びジハロゲン 芳香族化合物を追加添加するのは、仕込ん 原料が減少した随意の段階が許容されるこ は前記した通りであるが、DHAの転化率が50% 上の段階が好ましく、70%以上の段階がより ましく、このような段階で追加する事でよ 効率よく環式PASを得ることが可能となる。

 なお、原料の追加により、反応混合物中 水分量が変化する場合、前記した好ましい 分量となるように付加的な操作を行うこと 可能であり、追加する前、追加している途 、追加後に反応混合物から水を随意量除去 る事も望ましい方法である。なお、この水 除去に際し、水以外の成分が反応混合物か 除去される場合、必要に応じてスルフィド 剤、ジハロゲン化芳香族化合物及び有機極 溶媒を更に追加する事も可能であり、除去 れた成分を再度反応混合物に戻す操作を行 てもかまわない。

 なお、本発明の環式PASの製造には、バッ 方式、及び連続方式など公知の各種重合方 、反応方式を採用することができる。また 製造における雰囲気は非酸化性雰囲気下が ましく、窒素、ヘリウム、及びアルゴン等 不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく 特に、経済性及び取扱いの容易さの面から 窒素雰囲気下が好ましい。反応圧力につい は、使用した原料及び溶媒の種類や量、あ いは反応温度等に依存し一概に規定できな ので、特に制限はない。

 (7)環式ポリアリーレンスルフィドの回収方
 本発明の環式PASの製造においては前記した 応により得られた反応混合物から環式PASを 離回収することも可能である。反応により られた反応混合物には環式PAS、線状PAS及び 機極性溶媒が含まれ、その他成分として未 応のスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族 合物や水、副生塩などが含まれる場合もあ 。

 この様な反応混合物からPAS成分を回収す 方法に特に制限は無く、例えば必要に応じ 有機極性溶媒の一部もしくは大部分を蒸留 の操作により除去した後に、PAS成分に対す 溶解性が低く且つ有機極性溶媒と混和し、 ましくは副生塩に対して溶解性を有する溶 と必要に応じて加熱下で接触させて、環式P ASを線状PASとの混合固体としてPAS成分を回収 る方法、反応混合物において環式PASおよび 状PASが溶解するに足る温度、好ましくは200 を越える温度、より好ましくは230℃以上の 度において反応混合物中に存在する固形成 と可溶成分を固液分離により分離して少な とも環式PAS、線状PASおよび有機極性溶媒を む溶液成分を回収し、この溶液成分から必 に応じて有機極性溶媒の一部もしくは大部 を蒸留等の操作により除去した後に、PAS成 に対する溶解性が低く且つ有機極性溶媒と 和し、好ましくは副生塩に対して溶解性を する溶剤と必要に応じて加熱下で接触させ 、環式PASを線状PASとの混合固体としてPAS成 を回収する方法、が例示できる。この様な 性を有する溶剤は一般に比較的極性の高い 剤であり、用いた有機極性溶媒や副生塩の 類により好ましい溶剤は異なるので限定は きないが、例えば水や、メタノール、エタ ール、プロパノール、イソプロパノール、 タノール、ヘキサノールに代表されるアル ール類、アセトンに代表されるケトン類、 酸エチル、酢酸ブチルなどに代表される酢 エステル類が例示でき、入手性、経済性の 点から水、メタノール及びアセトンが好ま く、水が特に好ましい。

 このような溶剤による処理を行うことで 環式PASと線状PASとの混合固体に含有される 機極性溶媒や副生塩の量を低減することが 能である。この処理により環式PAS及び線状P ASは共に固形成分として析出するので、公知 固液分離法を用いて環式PAS及び線状PASの混 物としてPAS成分を回収することが可能であ 。固液分離方法としては、たとえば濾過に る分離、遠心分離、デカンテーション等を 示できる。なお、これら一連の処理は必要 応じて数回繰り返すことも可能であり、こ により環式PASと線状PASとの混合固体に含有 れる有機極性溶媒や副生塩の量がさらに低 される傾向にある。

 また、上記の溶剤による処理の方法とし は、溶剤と反応混合物を混合する方法があ 、必要により適宜撹拌または加熱すること 可能である。溶剤による処理を行う際の温 に特に制限は無いが、20℃~220℃が好ましく 50℃~200℃が更に好ましい。この様な範囲で 例えば副生塩の除去が容易となり、また比 的低圧の状態で処理を行うことが可能であ ため好ましい。ここで、溶剤として水を用 る場合、水は蒸留水あるいは脱イオン水で ることが好ましいが、必要に応じてギ酸、 酸、プロピオン酸、酪酸、クロロ酢酸、ジ ロロ酢酸、アクリル酸、クロトン酸、安息 酸、サリチル酸、シュウ酸、マロン酸、コ ク酸、フタル酸、フマル酸などの有機酸性 合物及びそのアルカリ金属塩、アルカリ土 金属塩、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸 どの無機酸性化合物およびアンモニウムイ ンなどを含む水溶液を用いることも可能で る。この処理後に得られた環式PASと線状PAS の混合固体が処理に用いた溶剤を含有する 合には必要に応じて乾燥などを行い、溶剤 除去することも可能である。

 上で例示した回収方法では、環式PASは線 PASとの混合物(以下PAS混合物と称する場合も ある)として回収される。環式PASと線状PASの 離を行う方法としては例えば、環式PASと線 PASの溶解性の差を利用した分離方法、より 体的には環式PASに対する溶解性が高く、一 で環式PASの溶解を行う条件下では線状PASに する溶解性に乏しい溶剤を必要に応じて加 下でPAS混合物と接触させて、溶剤可溶成分 して環式PASを得る方法が例示できる。ここ 、本発明の環式PASの製造方法では、前述し ようにPAS混合物に含まれる線状PASが高分子 体として得られやすいという特徴があり、 式PASと線状PASの溶剤への溶解性の違いが大 いため、上記の溶解性を利用した分離方法 より効率良く環式PASを得ることが可能であ 。線状PASの分子量は後述する環式PASを溶解 能な溶剤に溶解しにくい、好ましくは溶解 ない特性を有する分子量であることが好ま く、重量平均分子量で2,500以上が例示でき、 5,000以上が好ましく、10,000以上がより好まし 例示できる。

 環式PASと線状PASの分離に用いる溶剤とし は環式PASを溶解可能な溶剤であれば特に制 はないが、溶解を行う環境において環式PAS 溶解するが線状PASは溶解しにくい溶剤が好 しく、線状PASは溶解しない溶剤がより好ま い。PAS混合物を前記溶剤と接触させる際の 応系圧力は常圧もしくは微加圧が好ましく 特に常圧が好ましく、このような圧力の反 系はそれを構築する反応器の部材が安価で るという利点がある。この観点から反応系 力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条 は避けることが望ましい。用いる溶剤とし はPAS成分の分解や架橋など好ましくない副 応を実質的に引き起こさないものが好まし 、PAS混合物を溶剤と接触させる操作をたと ば常圧環流条件下で行う場合に好ましい溶 としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘ タン、オクタン、シクロヘキサン、シクロ ンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等 炭化水素系溶媒、クロロホルム、ブロモホ ム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1 ,1-トリクロロエタン、クロロベンゼン、2,6- クロロトルエン等のハロゲン系溶媒、ジエ ルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソ ロピルエーテル等のエーテル系溶媒、N,N-ジ チルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミ ド、ジメチルスルホキシド、トリメチルリン 酸、N,N-ジメチルイミダゾリジノン、メチル チルケトンなどの極性溶媒を例示できるが 中でもベンゼン、トルエン、キシレン、ク ロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、1, 2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、 ロロベンゼン、2,6-ジクロロトルエン、ジエ チルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソ プロピルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミ 、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスル キシド、トリメチルリン酸、N,N-ジメチルイ ミダゾリジノン、メチルエチルケトンが好ま しく、トルエン、キシレン、クロロホルム、 塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メチル エチルケトンがより好ましく例示できる。

 PAS混合物を溶剤と接触させる際の雰囲気 特に制限はないが、接触させる際の温度や 間などの条件によってPAS成分や溶剤が酸化 化するような場合には、非酸化性雰囲気下 行うことが望ましい。なお、非酸化性雰囲 とは気相の酸素濃度が5体積%以下、好まし は2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的 に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、 アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを 指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容 易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。

 PAS混合物を溶剤と接触させる温度に特に 限はないが、一般に温度が高いほど環式PAS 溶剤への溶解は促進される傾向にあるが、 状PASの分子量が低い場合、線状PASの溶解も 進される傾向にある。線状PASの分子量が前 した好ましい分子量である場合は、環式PAS の溶解性の差が大きくなるため、高い温度 PAS混合物の溶剤との接触を行っても環式PAS 線状PASが好適に分離できる傾向にある。ま 、前記したように、PAS混合物の溶剤との接 は大気圧下でおこなうことが好適であるの 、上限温度は使用する溶剤の大気圧下での 流条件温度にすることが望ましく、前述し 好ましい溶剤を用いる場合はたとえば20~150 、好ましくは30~100℃を具体的な温度範囲と て例示できる。

 PAS混合物を溶剤と接触させる時間は、用 る溶剤種や温度等によって異なるため一意 には限定できないが、たとえば1分~50時間が 例示でき、この様な範囲では環式PASの溶剤へ の溶解が十分になる傾向にある。

 PAS混合物を溶剤と接触させる方法は、公 の一般的な手法を用いれば良く特に限定は いが、たとえばPAS混合物と溶剤を混合し、 要に応じて攪拌した後に溶液部分を回収す 方法、各種フィルター上のPAS混合物に溶剤 シャワーすると同時に環式PASを溶剤に溶解 せる方法、ソックスレー抽出法原理による 法などいかなる方法も用いることができる PAS混合物と溶剤を接触させる際の溶剤の使 量に特に制限はないが、たとえばPAS混合物 量に対する浴比で0.5~100の範囲が例示できる 。浴比がこの様な範囲の場合、PAS混合物と溶 剤を均一に混合し易く、また、環式PASが溶剤 へ十分に溶解し易くなる傾向にある。一般に 、浴比が大きい方が環式PASの溶剤への溶解に は有利であるが、大きすぎてもそれ以上の効 果は望めず、逆に溶剤使用量増大による経済 的不利益が生じることがある。なお、PAS混合 物と溶剤の接触を繰り返し行う場合は、小さ い浴比でも十分な効果を得られる場合が多い 。またソックスレー抽出法は、その原理上、 PAS混合物と溶剤の接触を繰り返し行う場合と 類似の効果が得られるので、この場合も小さ な浴比で十分な効果を得られる場合が多い。

 PAS混合物を溶剤と接触させた後に、環式P ASを溶解した溶液が固形状の線状PASを含む固 スラリー状で得られた場合、公知の固液分 法を用いて溶液部を回収することが好まし 。固液分離方法としては、たとえば濾過に る分離、遠心分離、デカンテーション等を 示できる。このようにして分離した溶液か 溶剤の除去を行うことで環式PASの回収が可 となる。一方、固体成分については、環式P ASがまだ残存している場合、再度溶剤との接 及び溶液の回収を繰り返し行うことでより 率よく環式PASを得ることも可能である。こ 操作により環式PAS溶液を分離した後に得ら る固形分は線状PASを主要成分とする高純度 線状PASとして使用価値のあるものであり、 たその全量もしくは一部を、必要に応じて 存溶剤を除去するなどの処理を施して再度 発明の環式PASの原料として好適に用いるこ ができる。

 前述のようにして得られた環式PASを含む 液から溶剤の除去を行い、環式PASを固形成 として得ることも可能である。ここで溶剤 除去は、たとえば加熱し、常圧以下で処理 る方法や、膜を利用した溶剤の除去を例示 きるが、より収率よく、また効率よく環式 リアリーレンスルフィドを得るとの観点で 常圧以下で加熱して溶剤を除去する方法が ましい。なお、前述の様にして得られた環 PASを含む溶液は温度によっては固形物を含 場合もあるが、この場合の固形物も環式ポ アリーレンスルフィド混合物に属するもの あるので、溶剤の除去時に溶剤に可溶の成 とともに回収する事が望ましく、これによ 収率よく環式PASを得られるようになる。こ で溶剤の除去は、少なくとも50重量%以上、 ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重 %以上、よりいっそう好ましくは95重量%以上 溶剤を除去することが望ましい。加熱によ 溶剤の除去を行う際の温度は用いる溶剤の 性に依存するため一意的には限定できない 、通常、20~150℃、好ましくは40~120℃の範囲 選択できる。また、溶剤の除去を行う圧力 常圧以下が好ましく、これにより溶剤の除 をより低温で行うことが可能になる。

 (8)その他後処理
 かくして得られた環式ポリアリーレンスル ィドは十分に高純度であり、各種用途に好 に用いることができるが、さらに以下に述 る後処理を付加的に施すことによってより っそう純度の高い環式PASを得ることが可能 ある。

 前記(7)までの操作によって得られた環式P ASは、用いた溶剤の特性によってはPAS混合物 に含まれる不純物成分を含む場合がある。 のような少量の不純物を含む環式PASを不純 は溶解するが、環式PASは溶解しない、もし は環式PASの溶解しにくい第二の溶剤と接触 せることで、不純物成分を選択的に除去す ことが可能な場合が多い。

 環式PAS混合物を前記第二の溶剤と接触さ る際の反応系圧力は常圧もしくは微加圧が ましく、特に常圧が好ましく、このような 力の反応系はそれを構築する部材が安価で るという利点がある。この観点から反応系 力は、高価な耐圧容器を必要とする加圧条 は避けることが望ましい。第二の溶剤とし 好ましい溶剤としては、環式PASの分解や架 など好ましくない副反応を実質的に引き起 さないものが好ましく、例えばメタノール エタノール、プロパノール、ブタノール、 ンタノール、エチレングリコール、プロピ ングリコール、フェノール、クレゾール、 リエチレングリコールなどのアルコール・ ェノール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘ タン、オクタン、シクロヘキサン、シクロ ンタン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メ ルエチルケトン、ジエチルケトン、メチル ソブチルケトン、メチルブチルケトン、ア トフェノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル 酢酸エチル、酢酸ペンチル、酢酸オクチル 酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ペンチル、 リチル酸メチル、蟻酸エチル、等のカルボ 酸エステル系溶媒が例示でき、なかでもメ ノール、エタノール、プロパノール、ブタ ール、ペンタノール、エチレングリコール プロピレングリコール、ペンタン、ヘキサ 、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、 クロペンタン、アセトン、酢酸メチル、酢 エチルが好ましく、メタノール、エタノー 、プロパノール、エチレングリコール、ペ タン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シ ロヘキサン、アセトン、酢酸エチルが特に ましい。これらの溶媒は1種類または2種類 上の混合物として使用することができる。

 環式PASを第二の溶剤と接触させる温度に に制限はないが、上限温度は使用する第二 溶剤の常圧下での環流条件温度にすること 望ましく、前述した好ましい第二の溶剤を いる場合はたとえば20~100℃が好ましい温度 囲として例示でき、より好ましくは25~80℃ 例示できる。

 環式PASを第二の溶剤と接触させる時間は 用いる溶剤種や温度等によって異なるため 意的には限定できないが、たとえば1分~50時 間が例示でき、この様な時間範囲内ででは環 式PAS中の不純物の第二の溶剤への溶解が十分 となる傾向にある。

 環式PASを第二の溶剤と接触させる方法と ては固体状の環式PASと第二の溶剤を必要に じて攪拌して混合する方法、各種フィルタ 上の環式PAS固体に第二の溶剤をシャワーす と同時に不純物を第二の溶剤に溶解させる 法、固体状の環式PASを第二の溶剤を用いた ックスレー抽出を用いる方法や、溶液状の 式PASもしくは溶剤を含む環式PASスラリーを 二の溶剤と接触させて、第二の溶剤の存在 で環式PASを析出させる方法などを用いるこ ができる。なかでも溶剤を含む環式PASスラ ーを第二の溶剤と接触させる方法は、操作 に得られる環式PASの純度が高く、有効な方 である。

 環式PASを第二の溶剤と接触させた後に公 の固液分離法を用いて固体状の環式PASを回 することが可能である。固液分離方法とし は、たとえば濾過による分離、遠心分離、 カンテーション等を例示できる。固液分離 に得られた環式PAS中に不純物がまだ残存し いる場合は、再度環式PASと第二の溶剤とを 触させて、さらに不純物を除去することも 能である。

 (9)本発明の環式PASの特性
 かくして得られた環式PASは、通常、環式PAS 50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より ましくは80重量%以上含む純度の高いもので り、一般的に得られる線状のPASとは異なる 性を有する工業的にも利用価値の高いもの ある。また、本発明の製造方法により得ら る環式PASは前記式(Q)におけるmが単一ではな く、m=4~50の異なるmを有する前記式(Q)が得ら やすいという特徴を有する。ここで好まし mの範囲は4~25,より好ましくは4~20である。mが この範囲の場合、後述するように環式PASを開 環重合に用いる場合に重合反応が進行しやす く、高分子量体が得られやすくなる傾向にあ る。この理由は現時点判然とはしないが、こ の範囲の環式PASは分子が環式であるがために 生じる結合のゆがみが大きく、重合時に開環 反応が起こりやすいためと推測している。

 なお、mが単一の環式PASは単結晶として得 られるため、極めて高い融解温度を有するが 、本発明では環式PASは異なるmを有する混合 が得られやすく、これにより環式PASの融解 度が低いという特徴があり、このことはた えば環式PASを溶融して用いる際の加熱温度 低くできるという優れた特徴を発現するこ になる。

 (10)本発明の環式PASを配合した樹脂組成物
 本発明で得られた環式PASを各種樹脂に配合 て用いることも可能であり、このような環 PASを配合した樹脂組成物は、溶融加工時の ぐれた流動性を発現する傾向が強く、また 留安定性にも優れる傾向にある。この様な 性、特に流動性の向上は、樹脂組成物を溶 加工する際の加熱温度が低くても溶融加工 に優れるという特徴を発現するため、射出 形品や繊維、フィルム等の押出成形品に加 する際の溶融加工性の向上をもたらす点で きなメリットとなる。環式PASを配合した際 この様な特性の向上が発現する理由は定か はないが、環式PASの構造の特異性、すなわ 環状構造であるために通常の線状化合物と 較してコンパクトな構造をとりやすいため マトリックスである各種樹脂との絡み合い 少なくなりやすいこと、各種樹脂に対して 塑剤として作用すること、またマトリック 樹脂どうしの絡み合い抑制にも奏効するた と推測している。

 環式PASを各種樹脂に配合する際の配合量 特に制限は無いが、各種樹脂100重量部に対 て本発明の環式PASを0.1~50重量部、好ましく 0.5~20重量部、より好ましくは0.5~10重量部配 することで顕著な特性の向上を得ることが 能である。

 また、上記樹脂組成物には必要に応じて に繊維状および/または非繊維状の充填材を 配合することも可能であり、その配合量は前 記各種樹脂100重量部に対して0.5~400重量部、 ましくは0.5~300重量部、より好ましくは1~200 量部、更に好ましくは1~100重量部の範囲が例 示でき、これにより優れた流動性を維持しつ つ機械的強度が向上できる傾向にある。充填 剤の種類としては、繊維状、板状、粉末状、 粒状などのいずれの充填剤も使用することが できる。これら充填剤の好ましい具体例とし てはガラス繊維、タルク、ワラステナイト、 およびモンモリロナイト、合成雲母などの層 状珪酸塩が例示でき、特に好ましくはガラス 繊維である。ガラス繊維の種類は、一般に樹 脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく 、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョ ップドストランド、ミルドファイバーなどか ら選択して用いることができる。また、上記 の充填剤は2種以上を併用して使用すること できる。なお、本発明に使用する上記の充 剤はその表面を公知のカップリング剤(例え 、シラン系カップリング剤、チタネート系 ップリング剤など)、その他の表面処理剤で 処理して用いることもできる。また、ガラス 繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの 可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性 脂で被覆あるいは集束されていてもよい。

 また、樹脂組成物の熱安定性を保持する めに、フェノール系、リン系化合物の中か 選ばれた1種以上の耐熱剤を含有せしめるこ とも可能である。かかる耐熱剤の配合量は、 耐熱改良効果の点から前記各種樹脂100重量部 に対して、0.01重量部以上、特に0.02重量部以 であることが好ましく、成形時に発生する ス成分の観点からは、5重量部以下、特に1 量部以下であることが好ましい。また、フ ノール系及びリン系化合物を併用して使用 ることは、特に耐熱性、熱安定性、流動性 持効果が大きく好ましい。

 さらに、前記樹脂組成物には以下のよう 化合物、すなわち、有機チタネート系化合 、有機ボラン系化合物などのカップリング 、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化 物、チオエーテル系化合物、エステル系化 物、有機リン系化合物などの可塑剤、タル 、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテ エーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステ リン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジア ン・ステアリン酸・セバシン酸重宿合物、 リコーン系化合物などの離型剤、次亜リン 塩などの着色防止剤、その他、滑剤、紫外 防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などの通 の添加剤を配合することができる。上記化 物はいずれも前記各種樹脂100重量部に対し 20重量部未満、好ましくは10重量部以下、更 に好ましくは1重量部以下の添加でその効果 有効に発現する傾向にある。

 上記のごとき環式PASを配合してなる樹脂 成物を製造する方法は特に限定されるもの はないが、例えば環式PAS、各種樹脂および 要に応じてその他の充填材や各種添加剤を めブレンドした後、各種樹脂および環式PAS 融点以上において一軸または二軸押出機、 ンバリーミキサー、ニーダー、ミキシング ールなどの通常公知の溶融混合機で溶融混 する方法、溶液中で混合した後に溶媒を除 方法などが用いられる。ここで環式PASとし 環式PASの単体、すなわち前記式(Q)のmが単一 のものを用いる場合や、異なるmの混合物で っても結晶性が高く融点が高いものを用い 場合は、環式PASを環式PASが溶解する溶媒に め溶解して供給し溶融混練の際に溶媒を除 する方法、環式PASをその融点以上で一旦溶 した後に急冷することで結晶化を抑え、非 状としたものを供給する方法、あるいはプ メルターを環式PASの融点以上に設定し、プ メルター内で環式PASのみを溶融させ、融液 して供給する方法などを採用することがで る。

 ここで環式PASを配合する各種樹脂に特に 限は無く、結晶性樹脂および非晶性樹脂の 可塑性樹脂、また熱硬化性樹脂にも適用が 能である。

 ここで結晶性樹脂の具体例としては例え 、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂 シンジオタクチックポリスチレンなどのポ オレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール 脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエステ 樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹 、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエ テルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケ ン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリイミド樹脂 よびこれらの共重合体などが挙げられ、1種 または2種以上併用してもよい。中でも、耐 性、成形性、流動性および機械特性の点で ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミ 樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。また 得られる成形品の透明性の面からはポリエ テル樹脂が好ましい。各種樹脂として結晶 樹脂を用いる場合は、上述した流動性の向 の他に結晶化特性も向上する傾向がある。 た、各種樹脂としてポリフェニレンスルフ ド樹脂を用いることも特に好ましく、この 合、流動性の向上と共に、結晶性の向上、 らにはこれらが奏効した効果として射出成 時のバリ発生が顕著に抑制されるという特 が発現しやすい傾向にある。

 非晶性樹脂としては非晶性を有する溶融 形可能な樹脂であれば、特に限定されない 、耐熱性の点で、ガラス転移温度が50℃以 であることが好ましく、60℃以上であること がより好ましく、70℃以上であることがさら 好ましく、80℃以上であることが特に好ま い。上限は、特に限定されないが、成形性 どの点から300℃以下であることが好ましく 280℃以下であることがより好ましい。なお 本発明において、非晶性樹脂のガラス転移 度は、示差熱量測定において非晶性樹脂を30 ℃~予測されるガラス転移温度以上まで、20℃ /分の昇温条件で昇温し1分間保持した後、20 /分の降温条件で0℃まで一旦冷却し、1分間 持した後、再度20℃/分の昇温条件で測定し 際に観察されるガラス転移温度(Tg)を指す。 の具体例としては、非晶性ナイロン樹脂、 リカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート樹 脂、ABS樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、 よびポリ(メタ)アクリレート共重合、ポリ ルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂か 選ばれる少なくとも1種が例示でき、1種また は2種以上併用してもよい。これら非晶性樹 の中でも、特に高い透明性を有するポリカ ボネート(PC)樹脂、ABS樹脂の中でも透明ABS樹 、ポリアリレート樹脂、ポリ(メタ)アクリ ート樹脂、およびポリ(メタ)アクリレート共 重合、ポリエーテルスルホン樹脂を好ましく 使用することができる。各種樹脂として非晶 性樹脂を用いる場合には、前述の溶融加工時 の流動性向上に加えて、透明性に優れる非晶 性樹脂を使用した場合においては、高い透明 性を維持させることができるという特徴を発 現できる。ここで、非晶性樹脂組成物に高い 透明性を発現させたい場合には、環式PASとし て前記式(Q)のmが異なる環式PASを用いること 好ましい。なお、環式PASとして環式PASの単 、すなわち前記式(Q)のmが単一のものを用い 場合、この様な環式PASは融点が高い傾向に るため、非晶性樹脂と溶融混練する際に十 に溶融分散せずに樹脂中に凝集物となった 透明性が低下する傾向にあるが、前述した うに前記式(Q)のmが異なる環式PASはその融解 温度が低い傾向にあり、このことは溶融混練 時の均一性の向上に効果的である。ここで、 本発明の製造方法により得られる環式PASは前 記式(Q)におけるmが単一ではなく、m=4~50の異 るmを有する前記式(Q)が得られやすいという 徴を有するため、高い透明性を有する非晶 樹脂組成物を得たい場合に特に有利である

 上記で得られる、各種樹脂に環式PASを配 した樹脂組成物は通常公知の射出成形、押 成形、ブロー成形、プレス成形、紡糸など 任意の方法で成形することができ、各種成 品に加工し利用することができる。成形品 しては、射出成形品、押出成形品、ブロー 形品、フィルム、シート、繊維などとして 用できる。またこれにより得られた各種成 品は、自動車部品、電気・電子部品、建築 材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛 用品など各種用途に利用することができる また、上記樹脂組成物およびそれからなる 形品は、リサイクルすることが可能である 例えば、樹脂組成物およびそれからなる成 品を粉砕し、好ましくは粉末状とした後、 要に応じて添加剤を配合して得られる樹脂 成物は、上記樹脂組成物と同じように使用 き、成形品とすることも可能である。

 (11)環式PASの高重合度体への転化
 本発明によって製造される環式PASは(9)に述 たごとき優れた特性を有するので、開環重 によりポリマーを得る際のプレポリマーと て好適に用いることが可能である。なおこ でプレポリマーとしては本発明の環式PAS製 方法で得られる環式PAS単独でも良いし、所 量の他の成分を含むものでも差し障り無い 、環式PAS以外の成分を含む場合は線状PASや 岐構造を有するPASなど、PAS成分であること 特に好ましい。少なくとも本発明の環式PAS 含み、以下に例示する方法により高重合度 へ変換可能なものがポリアリーレンスルフ ドプレポリマーであり、以下PASプレポリマ と称する場合もある。

 環式PASの開環重合は環式PASの開環が起こ 、高分子量体が生成する条件下で行えばよ 、例えば本発明の環式PAS製造方法による環 PASを含む、PASプレポリマーを加熱して高重 度体に転化させる方法が好ましい方法とし 例示できる。この加熱の温度は前記PASプレ リマーが溶融解する温度であることが好ま く、このような温度条件であれば特に制限 無い。加熱温度がPASプレポリマーの溶融解 度未満では分子量の高いPASを得るのに長時 が必要となる傾向がある。なお、PASプレポ マーが溶融解する温度は、PASプレポリマー 組成や分子量、また、加熱時の環境により 化するため、一意的に示すことはできない 、例えばPASプレポリマーを示差走査型熱量 で分析することで溶融解温度を把握するこ が可能である。なお、加熱温度が高すぎる PASプレポリマー間、加熱により生成したPAS 、及びPASとポリアリーレンスルフィドプレ リマー間などでの架橋反応や分解反応に代 される好ましくない副反応が生じやすくな 傾向にあり、得られるPASの特性が低下する 合があるため、このような好ましくない副 応が顕著に生じる温度は避けることが望ま い。このような好ましくない副反応の顕在 を抑制しやすい加熱温度としては180~400℃が 例示でき、好ましくは200~380℃、より好まし は250~360℃である。一方、ある程度の副反応 起こっても差し障り無い場合には、250~450℃ 、好ましくは280~420℃の温度範囲も選択可能 あり、この場合には極短時間で高分子量体 の転化を行えるという利点がある。

 前記加熱を行う時間は使用するPASプレポ マーにおける環式PASの含有率やm数、及び分 子量などの各種特性、また、加熱の温度等の 条件によって異なるため一様には規定できな いが、前記した好ましくない副反応がなるべ く起こらないように設定することが好ましい 。加熱時間としては0.05~100時間が例示でき、0 .1~20時間が好ましく、0.1~10時間がより好まし 。0.05時間未満ではPASプレポリマーのPASへの 転化が不十分になりやすく、100時間を超える と好ましくない副反応による得られるPASの特 性への悪影響が顕在化する可能性が高くなる 傾向にあるのみならず、経済的にも不利益を 生じる場合がある。

 また、PASプレポリマーには加熱による高 合度体への転化に際しては、転化を促進す 各種触媒成分を使用することも可能である このような触媒成分としてはイオン性化合 やラジカル発生能を有する化合物が例示で る。イオン性化合物としてはたとえばチオ ェノールのナトリウム塩やリチウム塩等、 黄のアルカリ金属塩が例示でき、また、ラ カル発生能を有する化合物としてはたとえ 加熱により硫黄ラジカルを発生する化合物 例示でき、より具体的にはジスルフィド結 を含有する化合物が例示できる。なお、各 触媒成分を使用する場合、触媒成分は通常 PASに取り込まれ、得られるPASは触媒成分を 有するものになることが多い。特に触媒成 としてアルカリ金属及び/または他の金属成 分を含有するイオン性の化合物を用いた場合 、これに含まれる金属成分の大部分は得られ るPAS中に残存する傾向が強い。また、各種触 媒成分を使用して得られたPASは、PASを加熱し た際の重量減少が増大する傾向にある。従っ て、より純度の高いPASを所望する場合および /または加熱した際の重量減少の少ないPASを 望する場合には、触媒成分の使用をできる け少なくする、好ましくは使用しないこと 望まれる。従って、各種触媒成分を使用し PASプレポリマーを高重合度体へ転化する際 は、PASプレポリマーと触媒成分を含む反応 内のアルカリ金属量が100ppm以下、好ましく 50ppm以下、より好ましくは30ppm以下更に好ま くは10ppm以下であって、なお且つ、反応系 の全イオウ重量に対するジスルフィド重量 1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より ましくは0.3重量%未満、更に好ましくは0.1重 %未満になるように触媒成分の添加量を調整 して行うことが好ましい。

 PASプレポリマーの加熱による高重合度体 の転化は、通常溶媒の非存在下で行うが、 媒の存在下で行うことも可能である。溶媒 しては、PASプレポリマーの加熱による高重 度体への転化の阻害や生成したPASの分解や 橋など好ましくない副反応を実質的に引き こさないものであれば特に制限はなく、例 ばN-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルム ミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素 性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチル ルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶 、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチ ケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶 、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒 クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロ チレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、 トラクロルエタン、クロルベンゼンなどの ロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、 ロパノール、ブタノール、ペンタノール、 チレングリコール、プロピレングリコール フェノール、クレゾール、ポリエチレング コールなどのアルコール・フェノール系溶 、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳 族炭化水素系溶媒などがあげられる。また 二酸化炭素、窒素、水等の無機化合物を超 界流体状態として溶媒に用いることも可能 ある。これらの溶媒は1種類または2種類以 の混合物として使用することができる。

 前記、PASプレポリマーの加熱による高重 度体への転化は、通常の重合反応装置を用 る方法で行うのはもちろんのこと、成形品 製造する型内で行っても良いし、押出機や 融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具 した装置であれば特に制限無く行うことが 能であり、バッチ方式、連続方式など公知 方法が採用できる。

 PASプレポリマーの加熱による高重合度体 の転化の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行 ことが好ましく、減圧条件下で行うことも ましい。また、減圧条件下で行う場合、反 系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気として ら減圧条件にすることが好ましい。これに りPASプレポリマー間、加熱により生成したP AS間、及びPASとPASプレポリマー間などで架橋 応や分解反応等の好ましくない副反応の発 を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性 囲気とはPAS成分が接する気相における酸素 度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更 に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲 気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活 性ガス雰囲気であることを指し、この中でも 特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒 素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは 反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指 し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以 がより好ましく、10kPa以下が更に好ましい。 下限としては0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上 がより好ましい。減圧条件が好ましい上限を 越える場合は、架橋反応など好ましくない副 反応が起こりやすくなる傾向にあり、一方好 ましい下限未満では、反応温度によってはPAS プレポリマーに含まれる分子量の低い環式ポ リアリーレンスルフィドが揮散しやすくなる 傾向にある。

 前記したPASプレポリマーの高重合度体へ 転化は繊維状物質の共存下で行うことも可 である。ここで繊維状物質とは細い糸状の 質のことであって、天然繊維のごとく細長 引き延ばされた構造である任意の物質が好 しい。繊維状物質存在下でPASプレポリマー 高重合度体への転化を行うことで、PASと繊 状物質からなる複合材料構造体を容易に作 する事ができる。このような構造体は、繊 状物質によって補強されるため、PAS単独の 合に比べて、たとえば機械物性に優れる傾 にある。

 ここで、各種繊維状物質の中でも長繊維 らなる強化繊維を用いることが好ましく、 れによりPASを高度に強化する事が可能にな 。一般に樹脂と繊維状物質からなる複合材 構造体を作成する際には、樹脂が溶融した の粘度が高いことに起因して、樹脂と繊維 物質のぬれが悪くなる傾向にあり、均一な 合材料ができなかったり、期待通りの機械 性が発現しないことが多い。ここでぬれと 、溶融樹脂のごとき流体物質と、繊維状化 物のごとき固体基質との間に実質的に空気 たは他のガスが捕捉されないようにこの流 物質と固体基質との物理的状態の良好且つ 持された接触があることを意味する。ここ 流体物質の粘度が低い方が繊維状物質との れは良好になる傾向にある。本発明のPASプ ポリマーは融解した際の粘度が、一般的な 可塑性樹脂、たとえばPASと比べて著しく低 ため、繊維状物質とのぬれが良好になりや い。PASプレポリマーと繊維状物質が良好な れを形成した後、本発明のPASの製造方法に ればPASプレポリマーが高重合度体に転化す ので、繊維状物質と高重合度体(ポリアリー レンスルフィド)が良好なぬれを形成した複 材料構造体を容易に得ることができる。

 繊維状物質としては長繊維からなる強化繊 が好ましいことは前述したとおりであり、 発明に用いられる強化繊維に特に制限はな が、好適に用いられる強化繊維としては、 般に、高性能強化繊維として用いられる耐 性及び引張強度の良好な繊維があげられる 例えば、その強化繊維には、ガラス繊維、 素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケ 素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維が挙げ れる。この内、比強度、比弾性率が良好で 軽量化に大きな寄与が認められる炭素繊維 黒鉛繊維が最も良好なものとして例示でき 。炭素繊維や黒鉛繊維は用途に応じて、あ ゆる種類の炭素繊維や黒鉛繊維を用いるこ が可能であるが、引張強度450Kgf/mm 2 、引張伸度1.6%以上の高強度高伸度炭素繊維 最も適している。長繊維状の強化繊維を用 る場合、その長さは、5cm以上であることが ましい。この長さの範囲では、強化繊維の 度を複合材料として十分に発現させること 容易となる。また、炭素繊維や黒鉛繊維は 他の強化繊維を混合して用いてもかまわな 。また、強化繊維は、その形状や配列を限 されず、例えば、単一方向、ランダム方向 シート状、マット状、織物状、組み紐状で っても使用可能である。また、特に、比強 、比弾性率が高いことを要求される用途に 、強化繊維が単一方向に引き揃えられた配 が最も適しているが、取り扱いの容易なク ス(織物)状の配列も本発明には適している。

 また、前記したPASプレポリマーの高重合 体への転化は充填剤の存在下で行うことも 能である。充填剤としては、たとえば非繊 状ガラス、非繊維状炭素や、無機充填剤、 とえば炭酸カルシウム、酸化チタン、アル ナなどを例示できる。

 (12)PAS
 前記(11)によれば、工業上極めて有用なPASを 得ることが可能である。ここでPASとは、式、 -(Ar-S)-の繰り返し単位を主要構成単位とする 好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上 有するホモポリマーまたはコポリマーであ 。Arとしては前記式(A)~式(L)などであらわさ る単位などを例示できるが、なかでも式(A) 特に好ましい。

 この繰り返し単位を主要構成単位とする り、前記式(M)~式(O)などで表される少量の分 岐単位または架橋単位を含むことも可能であ るが、これら分岐単位または架橋単位の共重 合量は、-(Ar-S)-の単位1モルに対して0~1モル% 範囲であることが好ましい。

 また、本発明の好ましい態様によって得 れるPASは上記繰り返し単位を含むランダム 重合体、ブロック共重合体及びそれらの混 物のいずれかであってもよい。これらの代 的なものとして、ポリフェニレンスルフィ 、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポ フェニレンスルフィドケトン、これらのラ ダム共重合体、ブロック共重合体及びそれ の混合物などが挙げられる。特に好ましいP ASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp -フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、 に90モル%以上含有するポリフェニレンスル ィド(以下、PPSと略すこともある)が挙げられ る。

 本発明の好ましい態様によって得られるP ASの分子量に特に制限は無いが、好ましい範 として重量平均分子量で10,000以上、より好 しくは15,000以上、さらに好ましくは18,000以 である。重量平均分子量が10,000以上のPASで 加工時の成形性が高く、また成形品の機械 度や耐薬品性等の特性も高くなる傾向にあ 。重量平均分子量の上限に特に制限は無い 、1,000,000未満を好ましい範囲として例示で 、より好ましくは500,000未満、更に好ましく は200,000未満であり、この範囲内では高い成 加工性を得ることができる。

 本発明の好ましい態様によって得られるP ASの分子量分布の広がり、即ち重量平均分子 と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平 分子量)で表される分散度は4.0以下が例示で 、2.5以下が好ましく、2.3以下がより好まし 、2.1以下が更に好ましく、2.0以下がよりい そう好ましい。分散度が4.0以下のPASではPAS 含まれる低分子成分の量が少ない傾向にあ 、この範囲ではPASを成形加工用途に用いた 合の機械特性が高く、また、加熱した際の ス発生量や溶剤と接した際の溶出成分量が 減できる傾向にある。なお、前記重量平均 子量及び数平均分子量は例えば示差屈折率 出器を具備したSEC(サイズ排除クロマトグラ フィー)を使用して求めることができる。

 また、本発明の好ましい態様によって得 れるPASの溶融粘度に特に制限はないが、通 、溶融粘度が5~10,000Pa・s(300℃、剪断速度1000 /秒)の範囲が好ましい範囲として例示できる

 本発明の好ましい態様によれば、得られ PASは従来のものに比べ高純度であり、不純 であるアルカリ金属含量は100ppm以下のもの 得られやすい特徴がある。好ましいアルカ 金属含量としては50ppm未満、より好ましく 30ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。 ルカリ金属含有量が100ppm以下であると、例 ば高度な電気絶縁特性が要求される用途に いて高い信頼性を発現し易くなる。ここで 発明におけるPASのアルカリ金属含有量とは 例えばPASを電気炉等を用いて焼成した残渣 ある灰分中のアルカリ金属量から算出され 値であり、前記灰分を例えばイオンクロマ 法や原子吸光法により分析することで定量 ることができる。

 本発明の好ましい態様により得られるPASの の特徴は、加熱した際の重量減少が従来のP ASと比較して著しく少なく、具体的には下記 (1)を満たす傾向にある。
△Wr=(W1-W2)/W1×100≦0.18(%) ・・・(1)

 ここで△Wrは重量減少率(%)であり、常圧 非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意 の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行 った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基 とした330℃到達時の試料重量(W2)から求めら る値である。

 本発明の好ましい態様により得られるPAS △Wrが0.18%以下と極めて小さな値となる傾向 が強く、好ましくは0.15%以下、より好ましく 0.12%以下となる優れた特性を有する傾向に る。△Wrが前記範囲であることは、たとえば PASを成形加工する際の発生ガス量を低減する 傾向にあり、また、押出成形時の口金やダイ ス、また射出成型時の金型への付着物が低減 され生産性が向上する傾向がある。本発明者 らの知る限りでは公知のPASの△Wrは0.18%を越 るが、本発明の好ましい態様によって得ら るPASは分子量分布や不純物含有量が公知のPA Sと異なりきわめて高純度となりやすいがた に△Wrの値が著しく低下するものと推測して いる。

 なお、△Wrは一般的な熱重量分析によっ 求めることが可能であるが、この分析にお る雰囲気は常圧の非酸化性雰囲気を用いる 非酸化性雰囲気とは試料が接する気相にお る酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積% 下、更に好ましくは酸素を実質的に含有し い雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン の不活性ガス雰囲気であることを指し、こ 中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面 らは窒素雰囲気が特に好ましい。また、常 とは大気の標準状態近傍における圧力のこ であり、約25℃近傍の温度、絶対圧で101.3kPa 近傍の大気圧条件のことである。測定の雰囲 気が前記以外では、測定中にPASの酸化等が起 こったり、実際にPASの成形加工で用いられる 雰囲気と大きく異なるなど、PASの実使用に即 した測定になり得ない可能性が生じる。また 、△Wrの測定においては50℃から330℃以上の 意の温度まで昇温速度20℃/分で昇温して熱 量分析を行う。好ましくは50℃で1分間ホー ドした後に昇温速度20℃/分で昇温して熱重 分析を行う。この温度範囲はポリフェニレ スルフィドに代表されるPASを実使用する際 頻用される温度領域であり、また、固体状 のPASを溶融させ、その後任意の形状に成形 る際に頻用される温度領域でもある。この うな実使用温度領域における重量減少率は 実使用時のPASからのガス発生量や成形加工 際の口金や金型などへの付着成分量などに 連する。従って、このような温度範囲にお る重量減少率が少ないPASの方が品質の高い れたPASであるといえる。△Wrの測定は約10mg 度の試料量で行うことが望ましく、またサ プルの形状は約2mm以下の細粒状であること 望ましい。

 (13)PASの特性
 本発明の好ましい態様によって得られるPAS 、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質 びに機械的性質に優れ、特に従来のPASと比 て分子量分布が狭く、且つ、金属含有量が しく少ない傾向があるため、成形加工性や 械特性及び電気的特性が極めて優れており 射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形用途 みならず、押出成形により、シート、フィ ム、繊維及びパイプなどの押出成形品に成 ,使用することができる。

 本発明の好ましい態様によって得られるP ASを用いたPASフィルムの製造方法としては、 知の溶融製膜方法を採用することができ、 えば、単軸または2軸の押出機中でPASを溶融 後、フィルムダイより押出し、冷却ドラム上 で冷却してフィルムを作成する方法、あるい は、このようにして作成したフィルムをロー ラー式の縦延伸装置とテンターと呼ばれる横 延伸装置にて縦横に延伸する二軸延伸法など が例示できるが、特にこれに限定されるもの ではない。

 本発明の好ましい態様によって得られるP ASを用いたPAS繊維の製造方法としては、公知 溶融紡糸方法を適用することができ、例え 、原料であるPASチップを単軸または2軸の押 出機に供給しながら混練し、ついで押出機の 先端部に設置したポリマー流線入替器、濾過 層などを経て紡糸口金より押出し、冷却、延 伸、熱セットを行う方法などを採用すること ができるが、特にこれに限定されるものでは ない。

 また、本発明の好ましい態様によって得 れるPASは、単独で用いてもよいし、所望に じて、ガラス繊維、炭素繊維、酸化チタン 炭酸カルシウムなどの無機充填剤、酸化防 剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、着色剤など 添加することもでき、ポリアミド、ポリス ホン、ポリフェニレンエーテル、ポリカー ネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチ ンテレフタレートやポリブチレンテレフタ ートに代表されるポリエステル、ポリエチ ン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロ チレン、エポキシ基、カルボキシル基、カ ボン酸エステル基、酸無水物基などの官能 を有するオレフィン系コポリマー、ポリオ フィン系エラストマー、ポリエーテルエス ルエラストマー、ポリエーテルアミドエラ トマー、ポリアミドイミド、ポリアセター 、ポリイミドなどの樹脂を配合することも きる。

 (14)PASの用途
 本発明の好ましい態様によって得られるPAS 優れた特性として成形加工性や機械特性及 電気的特性があげられ、その用途としては 例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、 ケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ コイルボビン、コンデンサー、バリコンケ ス、光ピックアップ、発振子、各種端子板 変成器、プラグ、プリント基板、チューナ 、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフ ン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パ ーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッ 、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダ 、パラボラアンテナ、コンピューター関連 品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、 テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、 炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オ ーディオ・レーザーディスク(登録商標)、コ パクトディスク、デジタルビデオディスク の音声・映像機器部品、照明部品、冷蔵庫 品、エアコン部品、タイプライター部品、 ードプロセッサー部品等に代表される家庭 事務電気製品部品;オフィスコンピューター 関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関 連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モー ター部品、ライター、タイプライターなどに 代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、 メラ、時計等に代表される光学機器、精密 械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポン 部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃 し弁、湯温センサー、水量センサー、水道 ーターハウジングなどの水廻り部品;バルブ オルタネーターターミナル、オルタネーター コネクター,ICレギュレーター、ライトディヤ ー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバ ルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸 気系各種パイプ、エアーインテークノズルス ノーケル、インテークマニホールド、燃料ポ ンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレ ターメインボディー、キャブレタースペーサ ー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油 温センサー、スロットルポジションセンサー 、クランクシャフトポジションセンサー、エ アーフローメーター、ブレーキパッド摩耗セ ンサー、エアコン用サーモスタットベース、 暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエ ーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォ ーターポンプインペラー、タービンベイン、 ワイパーモーター関係部品、デュストリビュ ーター、スタータースイッチ、スターターリ レー、トランスミッション用ワイヤーハーネ ス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコン パネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コ イル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミ ナル、電装部品絶縁板、ステップモーターロ ーター、ランプソケット、ランプリフレクタ ー、ランプハウジング、ブレーキピストン、 ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルタ ー、燃料タンク、点火装置ケース、車速セン サー、ケーブルライナー等の自動車・車両関 連部品、その他各種用途が例示できる。

 PASフィルムの場合、優れた機械特性、電 特性、耐熱性を有しており、フィルムコン ンサーやチップコンデンサーの誘電体フィ ム用途、回路基板、絶縁基板用途、モータ 絶縁フィルム用途、トランス絶縁フィルム 途、離型用フィルム用途など各種用途に好 に使用することができる。

 PASのモノフィランメントあるいは短繊維 場合、抄紙ドライヤーキャンバス、ネット ンベヤー、バグフィルター、絶縁ペーパー どの各種用途に好適に使用することができ 。

 以下に実施例を挙げて本発明を更に具体 に説明する。これら例は例示的なものであ て限定的なものではない。

 <分子量測定>
 ポリアリーレンスルフィド及びポリアリー ンスルフィドプレポリマーの分子量はサイ 排除クロマトグラフィー(SEC)の一種である ルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC) により、ポリスチレン換算で算出した。GPCの 測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC-7100
カラム名:センシュー科学 GPC3506
溶離液:1-クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)

 <環式ポリフェニレンスルフィド生成率測 定>
 環式ポリフェニレンスルフィド化合物の生 率は、HPLCを用いて定性定量分析を行なった 。HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 LC-10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP-18 GP150-4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270n m)

 [参考例1]
 ここでは従来技術による線状PASの製造、す わちスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族 合物とを有機極性溶媒中で接触させて線状P ASの製造を行った例を示す。

 攪拌機を具備したステンレス製オートク ーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液 116.9g(1.00モル)、96%水酸化ナトリウム43.8g(1.05 モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)198.3g(2.00モ )、酢酸ナトリウム8.2g(0.10モル)、及びイオン 交換水150gを仕込んだ。オートクレーブに精 塔を取り付けた後、240rpmで攪拌を開始し、 圧で窒素を通じながら内温235℃まで約3時間 けて徐々に加熱した。この間に精留塔から2 12gが系外に留出した。また、硫化水素の飛散 量は0.012モルであった。なお、留出液をガス ロマトグラフィーにより分析した結果、水2 09gおよびNMP3.5gの混合液であり、反応系内の 及びNMPの量はそれぞれ2.3g、194.8gであること わかった。

 留出終了後、反応容器を約160℃に冷却し p-ジクロロベンゼン(p-DCB)148.5g(1.01モル)およ NMP99.1g(1.00モル)を追添加し、反応容器を窒 ガス下に密封した。400rpmで撹拌しながら、 30分かけて200℃まで昇温した後、200℃から270 ℃まで0.6℃/分の速度で昇温して、270℃で反 を140分間継続した。その後、250℃まで15分か けて冷却しながら、水36g(2.00モル)を系内に注 入し、次いで250℃から220℃まで 0.4℃/分の速 度で冷却した。その後室温近傍まで急冷した 。

 内容物を取り出し、500gのNMPで希釈してス ラリー状とし、85℃で約30分間攪拌した後、 ラリーをステンレス製80meshふるいで濾別し 固形分を回収した。得られた固形分にNMP400g 加え85℃で約30分間攪拌したのち同様に濾別 し固形分を回収した。その後800gの温水で攪 、洗浄、濾別する操作を5回繰り返し粒状の 形分を得た。これを60℃で熱風乾燥した後 120℃で減圧乾燥し、乾燥固体約90gを得た。

 この様にして得られた固体を分析した結 、赤外分光分析(装置;島津社製FTIR-8100A)にお ける吸収スペクトルより線状のポリフェニレ ンスルフィドであることがわかった。また重 量平均分子量は38,600であった。ここで得られ たポリフェニレンスルフィドを以下、線状PPS -1と称する。

 [参考例2]
 ここではスルフィド化剤とジハロゲン化芳 族化合物とをスルフィド化剤のイオウ成分1 モルに対して1.25リットル以上の有機極性溶 を用いて、加熱して反応させて得られる環 PASと線状PASを含むPAS混合物から環式PASを分 する方法により、参考例1よりも分子量の低 線状PASを製造した例を示す。

 攪拌機を具備したステンレス製オートク ーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液 14.03g(0.120モル)、96%水酸化ナトリウムを用い て調製した48重量%水溶液12.50g(0.144モル)、NMP61 5.0g(6.20モル)、及びp-DCBを仕込んだ。反応容器 内を十分に窒素置換した後、窒素ガス下に密 封した。

 400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで 1時間かけて昇温した。この段階で、反応容 器内の圧力はゲージ圧で0.35MPaであった。次 で200℃から270℃まで約30分かけて昇温した。 この段階の反応容器内の圧力はゲージ圧で1.0 5MPaであった。270℃で1時間保持した後、室温 傍まで急冷してから内容物を回収した。

 得られた内容物をガスクロマトグラフィ 及び高速液体クロマトグラフィーにより分 した結果、モノマーのp-DCBの消費率は93%、 応混合物中のイオウ成分がすべて環式PPSに 化すると仮定した場合の環式PPS生成率は18.5% であることがわかった。

 得られた内容物500gを約1500gのイオン交換 で希釈したのちに平均目開き10~16マイクロ ートルのガラスフィルターで濾過した。フ ルターオン成分を約300gのイオン交換水に分 させ、70℃で30分攪拌し、再度前記同様の濾 過を行う操作を計3回行い、白色固体を得た これを80℃で一晩真空乾燥し、乾燥固体を得 た。

 得られた固形物を円筒濾紙に仕込み、溶 としてクロロホルムを用いて約5時間ソック スレー抽出を行うことで固形分に含まれる低 分子量成分を除去した。

 抽出操作後に円筒濾紙内に残留した固形 分を70℃で一晩減圧乾燥しオフホワイト色 固体を約6.98g得た。分析の結果、赤外分光分 析における吸収スペクトルよりこれは線状の ポリフェニレンスルフィドであり、また、重 量平均分子量は6,300であった。ここで得られ ポリフェニレンスルフィドを以下、線状PPS- 2と称する。

 [参考例3]
 参考例2のクロロホルム抽出操作にて得られ た抽出液から溶媒を除去した後、約5gのクロ ホルムを加えてスラリーを調製し、これを 300gのメタノールに攪拌しながら滴下した。 これにより得られた沈殿物を濾過回収し、70 で5時間真空乾燥を行い、1.19gの白色粉末を た。この白色粉末は赤外分光分析における 収スペクトルよりフェニレンスルフィド単 からなる化合物であることを確認した。ま 、高速液体クロマトグラフィーにより成分 割した成分のマススペクトル分析(装置;日 製M-1200H)、更にMALDI-TOF-MSによる分子量情報よ り、この白色粉末は繰り返し単位数4~12の環 ポリフェニレンスルフィドを主要成分とす 混合物であり、環式ポリフェニレンスルフ ドの重量分率は約90%であることがわかった

 反応時に反応系内に存在するイオウ成分 すべてPPS成分に転化すると仮定した場合の 色粉末の収率は20.8%であった。

 [実施例1]
 撹拌機を具備したステンレス製オートクレ ブに参考例1で得られた線状PPS-1を6.49g(イオ 成分量0.0601mol)、水硫化ナトリウムの48重量% 水溶液を0.711g(水硫化ナトリウム0.341g(0.00608mol ),水0.370g(0.0205mol))、純度96%の水酸化ナトリウ を用いて調製した48重量%水溶液0.649g(水酸化 ナトリウム0.299g(0.00748mol),水0.337g(0.0187mol))、N- メチル-2-ピロリドン(NMP)615g(6.21mol)、p-ジクロ ベンゼン(p-DCB)0.894g(0.00608mol)を仕込んだ。線 状PPS-1および水硫化ナトリウムに由来するイ ウ成分の合計は0.0662molであり、反応混合物 のイオウ成分1モルあたりの溶媒量は約9.07L あった。

 反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下 密封した後、400rpmで撹拌しながら、室温か 200℃まで約1時間かけて昇温した。次いで270 ℃まで約0.5時間かけて昇温した。この段階で の反応系内の圧力はゲージ圧で0.6MPaであった 。270℃で1時間保持した後、室温近傍まで急 した。

 得られた内容物をガスクロマトグラフィ 及び高速液体クロマトグラフィーにより分 した結果、モノマーのp-DCBの消費率は58.1%、 仕込んだモノマー(p-DCB)に対する環式PASの生 率は約251%、反応混合物中のイオウ成分がす て環式PASに転化すると仮定した場合の環式P ASの生成率は23.1%であることがわかった。

 本発明の環式PASの製造方法によれば、短 間で環式PASの生成反応が進行し、さらに仕 んだモノマーよりも多量の環式PASが得られ ことがわかった。このことは仕込んだ線状P PSの一部が反応中に環式PASに変換されたこと 示唆しており、本発明では高効率で環式PAS 得られることがわかった。

 [実施例2]
 撹拌機を具備したステンレス製オートクレ ブに参考例1で得られた線状PPS-1を6.52g(イオ 成分量0.0604mol)、無水硫化リチウムを0.279g(0. 00608mol)、水酸化リチウムを0.0421g(0.00176mol)、NM Pを616g(6.22mol)、p-DCBを0.894g(0.00608mol)仕込んだ 線状PPS-1および硫化リチウムに由来するイオ ウ成分の合計は0.0665molであり、反応混合物中 のイオウ成分1モルあたりの溶媒量は約9.04Lで あった。

 反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下 密封した後、400rpmで撹拌しながら、室温か 200℃まで約1時間かけて昇温した。次いで270 ℃まで約0.5時間かけて昇温した。270℃で1時 保持した後、室温近傍まで急冷した。

 得られた内容物をガスクロマトグラフィ 及び高速液体クロマトグラフィーにより分 した結果、モノマーのp-DCBの消費率は29.5%、 仕込んだモノマー(p-DCB)に対する環式PASの生 率は約194%、反応混合物中のイオウ成分がす て環式PASに転化すると仮定した場合の環式P ASの生成率は17.8%であることがわかった。

 実施例1とは異なるスルフィド化剤を用い た場合でも、短時間で環式PASの生成反応が進 行し、さらに仕込んだモノマーよりも多量の 環式PASが得られ、このことは仕込んだ線状PPS の一部が反応中に環式PASに変換されたことを 示唆しており、本発明では高効率で環式PASが 得られることがわかった。ただし、好ましい スルフィド化剤である水硫化ナトリウムを用 いた実施例1と比較して若干生成率は低い結 であった。

 [実施例3]
 ここでは原料の線状PASとモノマー原料の仕 み比率を変えて環式PASの製造を行った結果 示す。

 線状PPS-1を5.18g(イオウ成分量0.0480mol)、水 化ナトリウムの48重量%水溶液を1.40g(水硫化 トリウム0.673g(0.0120mol),水0.730g(0.0406mol))、純 96%の水酸化ナトリウムを用いて調製した48 量%水溶液を1.30g(水酸化ナトリウム0.600g(0.0150 mol),水0.677g(0.0376mol))、p-DCBを1.76g(0.012mol)に変 して原料を仕込んだ以外は実施例1と同様に 式PASの製造を行った。

 得られた内容物をガスクロマトグラフィ 及び高速液体クロマトグラフィーにより分 した結果、モノマーのp-DCBの消費率は81.8%、 仕込んだモノマー(p-DCB)に対する環式PASの生 率は約130%、反応混合物中のイオウ成分がす て環式PASに転化すると仮定した場合の環式P ASの生成率は25.9%であることがわかった。

 得られた内容物200gを約600gのイオン交換 で希釈したのちに平均目開き10~16マイクロメ ートルのガラスフィルターで濾過した。フィ ルターオン成分を約150gのイオン交換水に分 させた後、70℃で30分攪拌し、前記同様の濾 を行う操作を計3回行い、白色固体を得た。 これを80℃で一晩真空乾燥し、乾燥固体を得 。

 得られた乾燥固体を円筒濾紙に仕込み、 剤としてクロロホルム150gを用いて約5時間 ックスレー抽出を行った。抽出液から溶媒 除去した後、約5gのクロロホルムを加えてス ラリーを調製し、これを約500gのメタノール 攪拌しながら滴下した。これにより得られ 沈殿物を濾過回収し、70℃で5時間真空乾燥 行い、0.65gの白色粉末を得た。この白色粉末 は赤外分光分析における吸収スペクトルより フェニレンスルフィド単位からなる化合物で あることを確認した。また、高速液体クロマ トグラフィーにより成分分割した成分のマス スペクトル分析、更にMALDI-TOF-MSによる分子量 情報より、この各色粉末は繰り返し単位数4~1 2の環式ポリフェニレンスルフィドを主要成 とする混合物であり、環式ポリフェニレン ルフィドの重量分率は約92%であることがわ った。

 本発明の環式PASの製造方法によれば、線 PASとモノマー原料の仕込み比率を変えても 時間で環式PASの生成反応が進行し、さらに 込んだモノマーよりも多量の環式PASが得ら ることがわかった。

 [比較例1]
 ここでは原料として線状PASと有機極性溶媒 みを用いて、スルフィド化剤およびジハロ ン化芳香族化合物を用いずに行った結果を す。

 撹拌機を具備したステンレス製オートク ーブに仕込む原料を、参考例1で得られた線 状PPS-1を6.48g(イオウ成分量0.0600mol)およびNMPを 615g(6.21mol)のみとした以外は実施例1と同様に った。なお、線状PPS-1に由来するイオウ成 の合計は0.0600molであり、反応混合物中のイ ウ成分1モルあたりの溶媒量は約10.0Lであっ 。

 得られた内容物200gを分取して実施例3と 様の方法にて回収を行ったが、得られた環 PPSを含む白色粉末は0.01g程度とごくわずかで あり、ほとんど反応が進行していないことが わかった。

 比較例1と実施例1~3の対比から明らかなよ うに、原料としてスルフィド化剤およびジハ ロゲン化芳香族化合物を用いない場合は、ほ とんど環式PASが得られないことがわかった。

 [比較例2]
 ここでは、原料として線状PAS、スルフィド 剤および有機極性溶媒のみを用いて、ジハ ゲン化芳香族化合物を用いずに行った結果 示す。

 原料としてp-DCBを仕込まなかった以外は 施例3と同様に行った。反応後に得られた内 物を高速液体クロマトグラフィーにより分 した結果、反応混合物中のイオウ成分がす て環式PASに転化すると仮定した場合の環式P ASの生成率は3.07%であることがわかった。ま 、高速液体クロマトグラフィーの分析にお ては、環式PPSとは異なる成分が主たる生成 であることがわかり、この成分はマス情報 り線状のオリゴマー成分であることがわか た。

 比較例2と実施例1~3の対比から明らかなよ うに、原料としてジハロゲン化芳香族化合物 を用いない場合は、ほとんど環式PASが得られ ないことがわかった。

 [実施例4]
 ここでは原料の線状PASを変えて環式PASの製 を行った結果を示す。

 線状PASとして参考例2で得られた線状PPS-2 6.48g(0.0600mol)仕込んだ以外は実施例1と同様 環式PASの製造を行った。

 得られた内容物をガスクロマトグラフィ 及び高速液体クロマトグラフィーにより分 した結果、モノマーのp-DCBの消費率は66.4%、 仕込んだモノマー(p-DCB)に対する環式PASの生 率は約234%、反応混合物中のイオウ成分がす て環式PASに転化すると仮定した場合の環式P ASの生成率は21.6%であることがわかった。

 次に得られた内容物200gを分取して、実施 例3と同様の方法にて回収を行った結果、純 90%で環式PPSを含む白色粉末が0.67g得られた。

 本発明の環式PASの製造方法によれば、ス フィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物と スルフィド化剤のイオウ成分1モルに対して 1.25リットル以上の有機極性溶媒を用いて、 熱して反応させて得られる環式PASと線状PAS 含むPAS混合物から環式PASを分離する方法に り得られる線状PASを用いても同様に短時間 環式PASの生成反応が進行し、さらに仕込ん モノマーよりも多量の環式PASが得られるこ がわかった。

 [実施例5]
 ここでは仕込みの原料濃度を実施例1よりも 低くして環式PASの製造を行った結果を示す。

 撹拌機を具備したステンレス製オートク ーブに参考例1で得られた線状PPS-1を3.25g(イ ウ成分量0.0301mol)、水硫化ナトリウムの48重 %水溶液を0.351g(水硫化ナトリウム0.168g(0.00300 mol),水0.183g(0.0102mol))、純度96%の水酸化ナトリ ムを用いて調製した48重量%水溶液0.313g(水酸 化ナトリウム0.144g(0.00360mol),水0.169g(0.00938mol)) N-メチル-2-ピロリドン(NMP)615g(6.21mol)、p-ジク ロロベンゼン(p-DCB)0.453g(0.00308mol)を仕込んだ 線状PPS-1および水硫化ナトリウムに由来する イオウ成分の合計は0.0331molであり、反応混合 物中のイオウ成分1モルあたりの溶媒量は約18 .2Lであった。

 反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下 密封した後、400rpmで撹拌しながら、室温か 200℃まで約1時間かけて昇温した。次いで270 ℃まで約0.5時間かけて昇温した。270℃で2時 保持した後、室温近傍まで急冷した。

 得られた内容物をガスクロマトグラフィ 及び高速液体クロマトグラフィーにより分 した結果、モノマーのp-DCBの消費率は55.8%、 仕込んだモノマー(p-DCB)に対する環式PASの生 率は約309%、反応混合物中のイオウ成分がす て環式PASに転化すると仮定した場合の環式P ASの生成率は28.8%であることがわかった。

 仕込みの原料濃度を低下させることによ 、より高収率で環式PASを得ることができる とがわかった。

 [実施例6]
 ここでは仕込みの原料濃度を実施例1よりも 高くして環式PASの製造を行った結果を示す。

 撹拌機を具備したステンレス製オートク ーブに参考例1で得られた線状PPS-1を13.0g(イ ウ成分量0.120mol)、水硫化ナトリウムの48重 %水溶液を1.43g(水硫化ナトリウム0.687g(0.0122mol ),水0.713g(0.0396mol))、純度96%の水酸化ナトリウ を用いて調製した48重量%水溶液1.26g(水酸化 トリウム0.582g(0.0146mol),水0.657g(0.0365mol))、NMP 572g(5.77mol)、およびp-DCB1.78g(0.0121mol)を仕込ん だ。線状PPS-1および水硫化ナトリウムに由来 るイオウ成分の合計は0.132molであり、反応 合物中のイオウ成分1モルあたりの溶媒量は 4.22Lであった。

 反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下 密封した後、400rpmで撹拌しながら、室温か 200℃まで約1時間かけて昇温した。次いで270 ℃まで約0.5時間かけて昇温した。270℃で1時 保持した後、室温近傍まで急冷した。

 得られた内容物をガスクロマトグラフィ 及び高速液体クロマトグラフィーにより分 した結果、モノマーのp-DCBの消費率は59.2%、 仕込んだモノマー(p-DCB)に対する環式PASの生 率は約132%、反応混合物中のイオウ成分がす て環式PASに転化すると仮定した場合の環式P ASの生成率は12.1%であることがわかった。

 仕込みの原料濃度が高い条件でも高収率 環式PASを得ることができることがわかった

 [実施例7]
 ここでは仕込みの原料濃度を実施例1よりも 高くして、原料の線状PASに参考例2の方法で られた線状PPS-2を用いて環式PASの製造を行っ た結果を示す。

 撹拌機を具備したステンレス製オートク ーブに参考例2の方法で得られた線状PPS-2を1 0.4g(イオウ成分量0.0960mol)、水硫化ナトリウム の48重量%水溶液を2.81g(水硫化ナトリウム1.35g( 0.0240mol),水1.46g(0.0811mol))、純度96%の水酸化ナ リウムを用いて調製した48重量%水溶液2.57g( 酸化ナトリウム1.19g(0.0297mol),水1.33g(0.0739mol)) NMPを617g(6.22mol)、およびp-DCB3.53g(0.0240mol)を仕 込んだ。線状PPS-2および水硫化ナトリウムに 来するイオウ成分の合計は0.120molであり、 応混合物中のイオウ成分1モルあたりの溶媒 は約5.02Lであった。

 反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下 密封した後、400rpmで撹拌しながら、室温か 200℃まで約1時間かけて昇温した。次いで270 ℃まで約0.5時間かけて昇温した。270℃で1時 保持した後、室温近傍まで急冷した。

 得られた内容物をガスクロマトグラフィ 及び高速液体クロマトグラフィーにより分 した結果、モノマーのp-DCBの消費率は86.6%、 仕込んだモノマー(p-DCB)に対する環式PASの生 率は約98%、反応混合物中のイオウ成分がす て環式PASに転化すると仮定した場合の環式PA Sの生成率は19.7%であることがわかった。

 次に得られた反応物を200g分取し、実施例 3と同様に環式PPSの回収を行い、純度86%で環 PPSを含む白色粉末1.08gを得た。

 仕込みの原料濃度が高い条件でも高収率 環式PASを得ることができ、さらに、反応物 位量あたりに得られる環式PPSの収量も多い とがわかった。

 [実施例8]
 ここでは仕込みの原料濃度を実施例6よりも さらに高くして環式PASの製造を行った結果を 示す。

 撹拌機を具備したステンレス製オートク ーブに参考例1で得られた線状PPS-1を20.7g(イ ウ成分量0.192mol)、水硫化ナトリウムの48重 %水溶液を5.61g(水硫化ナトリウム2.69g(0.0480mol) ,水2.92g(0.162mol))、純度96%の水酸化ナトリウム 用いて調製した48重量%水溶液5.22g(水酸化ナ リウム2.40g(0.0601mol),水2.71g(0.151mol))、NMPを615g (6.21mol)、およびp-DCB7.06g(0.0480mol)を仕込んだ。 線状PPS-1および水硫化ナトリウムに由来する オウ成分の合計は0.24molであり、反応混合物 中のイオウ成分1モルあたりの溶媒量は約2.50L であった。

 反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下 密封した後、400rpmで撹拌しながら、室温か 200℃まで約1時間かけて昇温した。次いで270 ℃まで約0.5時間かけて昇温した。270℃で1時 保持した後、室温近傍まで急冷した。

 得られた内容物をガスクロマトグラフィ 及び高速液体クロマトグラフィーにより分 した結果、モノマーのp-DCBの消費率は87.2%、 仕込んだモノマー(p-DCB)に対する環式PASの生 率は約55.8%、反応混合物中のイオウ成分がす べて環式PASに転化すると仮定した場合の環式 PASの生成率は11.2%であることがわかった。

 次に得られた反応物を200g分取し、実施例 3と同様に環式PPSの回収を行い、純度86%で環 PPSを含む白色粉末1.12gを得た。

 仕込みの原料濃度が高い条件でも高収率 環式PASを得ることができ、さらに反応物単 量あたりに得られる環式PPSの収量も多いこ がわかった。

 [実施例9]
 ここでは仕込みの原料濃度を実施例8よりも さらに高くして環式PASの製造を行った結果を 示す。

 撹拌機を具備したステンレス製オートク ーブに参考例1で得られた線状PPS-1を36.3g(イ ウ成分量0.336mol)、水硫化ナトリウムの48重 %水溶液を9.82g(水硫化ナトリウム4.71g(0.0840mol) ,水5.11g(0.284mol))、純度96%の水酸化ナトリウム 用いて調製した48重量%水溶液8.02g(水酸化ナ リウム3.70g(0.0924mol),水4.17g(0.232mol))、NMPを615g (6.21mol)、およびp-DCB12.3g(0.0840mol)を仕込んだ。 線状PPS-1および水硫化ナトリウムに由来する オウ成分の合計は0.42molであり、反応混合物 中のイオウ成分1モルあたりの溶媒量は約1.43L であった。

 反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下 密封した後、400rpmで撹拌しながら、室温か 200℃まで約1時間かけて昇温した。次いで270 ℃まで約0.5時間かけて昇温した。270℃で1時 保持した後、室温近傍まで急冷した。

 得られた内容物をガスクロマトグラフィ 及び高速液体クロマトグラフィーにより分 した結果、モノマーのp-DCBの消費率は82.3%、 仕込んだモノマー(p-DCB)に対する環式PASの生 率は約26.2%、反応混合物中のイオウ成分がす べて環式PASに転化すると仮定した場合の環式 PASの生成率は5.23%であることがわかった。

 次に得られた反応物を200g分取し、実施例 3と同様に環式PPSの回収を行い、純度83%で環 PPSを含む白色粉末0.91gを得た。

 仕込みの原料濃度が高い条件でも高収率 環式PASを得ることができるが、本発明のよ 好ましい濃度条件と比較すると反応物単位 あたりに得られる環式PPSの収量および純度 若干低下する事がわかった。

 [実施例10]
 原料仕込み後に200℃からの昇温を250℃まで して、250℃で1時間保持した後に室温近傍ま で急冷して反応物を得た以外は実施例8と同 に行った。

 得られた内容物をガスクロマトグラフィ 及び高速液体クロマトグラフィーにより分 した結果、モノマーのp-DCBの消費率は87.4%、 仕込んだモノマー(p-DCB)に対する環式PASの生 率は約52.5%、反応混合物中のイオウ成分がす べて環式PASに転化すると仮定した場合の環式 PASの生成率は10.8%であることがわかった。

 次に得られた反応物を600g分取し、実施例 3と同様に環式PPSの回収を行い、純度96%で環 PPSを含む白色粉末2.8gを得た。また、この環 PPSの回収における、抽出操作後に円筒濾紙 に残留した固形成分を70℃で一晩減圧乾燥 オフホワイト色の固体約20gを得た。分析の 果、赤外分光分析における吸収スペクトル りこれは線状PPSであることを確認した。

 実施例8と比べて反応温度を低くした場合 でも高収率で環式PASを得ることができ、反応 物単位量あたりに得られる環式PPSの収量はわ ずかに少ないものの、極めて高純度の環式PPS が得られることがわかった。

 [実施例11]
 ここでは実施例10で得られた線状PPSを原料 用いて環式PASの製造を行った例を示す。

 撹拌機を具備したステンレス製オートク ーブに実施例10で得られた線状PPSを19.4g(イ ウ成分量0.180mol)、水硫化ナトリウムの48重量 %水溶液を5.26g(水硫化ナトリウム2.53g(0.0450mol), 水2.74g(0.152mol))、純度96%の水酸化ナトリウム 用いて調製した48重量%水溶液4.88g(水酸化ナ リウム2.25g(0.0563mol),水2.54g(0.141mol))、NMPを577g( 5.82mol)、およびp-DCB6.62g(0.0450mol)を仕込んだ。 込んだ線状PPSおよび水硫化ナトリウムに由 するイオウ成分の合計は0.225molであり、反 混合物中のイオウ成分1モルあたりの溶媒量 約2.50Lであった。

 原料の仕込み後は実施例10と同様に行い 得られた内容物をガスクロマトグラフィー び高速液体クロマトグラフィーにより分析 た結果、モノマーのp-DCBの消費率は81.1%、仕 んだモノマー(p-DCB)に対する環式PASの生成率 は約64.5%、反応混合物中のイオウ成分がすべ 環式PASに転化すると仮定した場合の環式PAS 生成率は12.9%であることがわかった。

 次に得られた反応物を200g分取し、実施例 3と同様に環式PPSの回収を行い、純度97%で環 PPSを含む白色粉末1.02gを得た。

 実施例11より、線状PAS、スルフィド化剤 ジハロゲン化芳香族化合物、有機極性溶媒 らなる反応混合物を、加熱して反応させて られる環式PASと線状PASを含むPAS混合物から 環式PASを分離することによって得られる線 PASを、(a)線状PASとして用いた場合でも、純 の高い環式PASを高収率で得ることができる とがわかった。

 [比較例3]
 ここでは原料仕込み濃度を本発明の濃度範 よりも高い状態、すなわち反応混合物中の オウ成分1モルに対する有機極性溶媒使用量 を1.25リットル未満として反応をおこなった 果を示す。

 撹拌機を具備したステンレス製オートク ーブに参考例1で得られた線状PPS-1を43.2g(イ ウ成分量0.400mol)、水硫化ナトリウムの48重 %水溶液を11.7g(水硫化ナトリウム5.61g(0.100mol), 水6.08g(0.338mol))、純度96%の水酸化ナトリウム 用いて調製した48重量%水溶液10.4g(水酸化ナ リウム4.800g(0.120mol),水5.42g(0.301mol))、NMPを496g( 5.00mol)、およびp-DCB14.7g(0.100mol)を仕込んだ。 状PPS-1および水硫化ナトリウムに由来するイ オウ成分の合計は0.50molであり、反応混合物 のイオウ成分1モルあたりの溶媒量は約0.97L あった。

 反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下 密封した後、400rpmで撹拌しながら、室温か 200℃まで約1時間かけて昇温した。次いで270 ℃まで約0.5時間かけて昇温した。270℃で1時 保持した後、室温近傍まで急冷した。

 得られた内容物をガスクロマトグラフィ 及び高速液体クロマトグラフィーにより分 した結果、モノマーのp-DCBの消費率は75.5%、 仕込んだモノマー(p-DCB)に対する環式PASの生 率は約13.6%、反応混合物中のイオウ成分がす べて環式PASに転化すると仮定した場合の環式 PASの生成率は2.72%であった。

 原料仕込み濃度を本発明の濃度範囲より 高くした場合、生成物の大部分はポリマー( 線状PPS)となり、環式PASはほとんど得られな ことがわかった。

 本発明は環式ポリアリーレンスルフィド 経済的且つ簡易な方法で短時間に効率よく 造する方法であり、環式ポリアリーレンス フィドは高重合度の線状ポリアリーレンス フィドの原料となるので工業的に利用価値 高い。