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Patent Searching and Data


Title:
METHOD FOR PRODUCING FLUORO-COMPOUND
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/102034
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a commercially suitable method for efficiently producing fluoro-compounds having various molecular structures, in which two fluorine atoms are bonded to a carbon atom, in a single-step reaction. Specifically disclosed is a method for producing a fluoro-compound represented by formula (B), which is characterized in that a compound represented by formula (A) is reacted with IF5.

Inventors:
HARA SHOJI (JP)
SAWAGUCHI MASANORI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/052434
Publication Date:
August 20, 2009
Filing Date:
February 13, 2009
Export Citation:
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Assignee:
ASAHI GLASS CO LTD (JP)
HARA SHOJI (JP)
SAWAGUCHI MASANORI (JP)
International Classes:
C07B39/00; C07C17/093; C07C22/08; C07C45/63; C07C49/233; C07C49/80; C07C67/307; C07C69/65; C07C253/30; C07C255/35; C07D333/24
Domestic Patent References:
WO2001096263A12001-12-20
Foreign References:
JP2002338517A2002-11-27
Other References:
AYUBA,S. ET AL.: "Selective trifluorination of alkyl aryl sulfides using IF5", TETRAHEDRON, vol. 60, no. 50, 2004, pages 11445 - 11451
FURUTA,S. ET AL.: "Facile Synthesis of a- Fluoroalkyl Sulfides under Oxidative Desulfurization-Fluorination Conditions", BULLETIN OF THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN, vol. 71, no. 11, 1998, pages 2687 - 2694
MANABU KUROBOSHI ET AL.: "Oxidative desulfurization-fluorination of 1-substituted 2, 2,2-tris(methylthio)ethanol induces difluorination under oxidation or rearrangement", TETRAHEDRON LETTERS, vol. 36, no. 34, 1995, pages 6121 - 6122
KUROBOSHI M. ET AL.: "Oxidative Fluorination reaction ni yoru Yuki Fluorine Compound no Gosei", JOURNAL OF SYNTHETIC ORGANIC CHEMISTRY, JAPAN, vol. 51, no. 12, 1993, pages 1124 - 1133
Attorney, Agent or Firm:
OGURI, Shohei et al. (7-13Nishi-Shimbashi 1-chome,Minato-k, Tokyo 03, JP)
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Claims:
 下式(A)で表される化合物をIF 5 と反応させることを特徴とする下式(B)で表されるフルオロ化合物の製造方法。
 ただし、Xは、アリール基、1価ヘテロ環基、およびアルキル基から選ばれる基、または該選ばれる基中の水素原子の1個以上が置換された基を表し、Yはアリール基、1価ヘテロ環基、アルキル基、アシル基、およびアリールオキシ基から選ばれる基、または該選ばれる基中の水素原子の1個以上が置換された基、シアノ基、またはアルコキシカルボニル基を表し、Rはアリール基およびアルキル基から選ばれる基、または該選ばれる基の水素原子の1個以上が置換された基を表す。
 Xがアリール基、および1価ヘテロ環基から選ばれる基、または該選ばれる基中の水素原子の1個以上が置換された基であり、Yがシアノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ハロゲン化アルキル基、またはハロゲン化アシル基である請求項1に記載の製造方法。
 Rがアリール基、アルキル基、またはハロゲン化アリール基である請求項1または2に記載の製造方法。
 反応温度が-50~100℃である請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
Description:
フルオロ化合物の製造方法

 本発明はフルオロ化合物の製造方法に関 る。さらに詳しくは、2つのフッ素原子が結 合した炭素原子を有するフルオロ化合物の製 造方法に関する。

 一般に、有機化合物をフッ素化してフルオ 化合物を製造する際には、フッ素化剤が用 られている。例えば、カルボニル基を有す 化合物を、SF 4 またはDAST(ジエチルアミノサルファートリフ オライド)を用いてフッ素化する方法が知ら れている。しかし、これらのフッ素化剤の取 り扱いは容易でなく、値段も高価で、工業的 な製造方法に用いるフッ素化剤としては有利 ではない問題があった。
 そこで、取り扱いが容易なフッ素化剤とし 、IF 5 を用いるフッ素化方法が提案されている(特 文献1)。
 特許文献1では、2つのフッ素原子が結合し 炭素原子を有するフルオロ化合物をIF 5 を用いて製造する方法として、以下の式(a)~(c )の式で示される具体例が挙げられている。

 ただし、式(a)~(c)で使用した記号Etはエチル を示し、Meはメチル基を示し、r.t.は室温(23 )で反応させたことを示し、hrは反応時間を す。また、hexaneは反応溶媒としてヘキサン 、CH 2 Cl 2 は反応溶媒としてCH 2 Cl 2 を使用したことを示す。
 また、IF 5 /Et 3 N-3HF(1:1モル比)とは、IF 5 に対するEt 3 N量が等倍モルとなるように、IF 5 と、Et 3 NとHFとの混合試薬(Et 3 N:HF=1:3モル比)とを混合したフッ素化剤を用い て反応させたことを示す。

国際公開第01/96263号パンフレット

 しかし、式(a)、(b)で得られるフルオロ化合 は、分子内にスルフィド基を有しており、 のスルフィド基を除いた化合物を入手する めには、さらなる反応工程が必要である。
 また、式(c)の反応では、原料が、2個のイオ ウ原子を含むヘテロ環を備えた特殊な構造の ものである。そのため、式(c)の反応における 特定の原料以外には入手が困難であり、得ら れるフルオロ化合物の構造が限定されていた 。また、式(c)の原料を合成するには、臭気の 強いHS-CH 2 CH 2 -SHを使う必要があった。
 本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み なされたものであり、2つのフッ素原子が結 合した炭素原子を有する様々な分子構造のフ ルオロ化合物を、一段階の反応によって効率 的に製造し、しかも、工業化にも適した製造 方法を提供することを課題とする。

 本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭 検討した結果、モノスルフィド類をIF 5 と反応させると、スルフィド基とスルフィド 基のα位の炭素原子に結合する水素原子とを 段階の反応でフッ素原子に置換できること 見出した。すなわち、本発明の要旨は以下 とおりである。

 [1]下式(A)で表される化合物をIF 5 と反応させることを特徴とする下式(B)で表さ れるフルオロ化合物の製造方法。
 ただし、Xは、アリール基、1価ヘテロ環基 およびアルキル基から選ばれる基、または 選ばれる基中の水素原子の1個以上が置換さ た基を表し、Yはアリール基、1価ヘテロ環 、アルキル基、アシル基、およびアリール キシ基から選ばれる基、または該選ばれる 中の水素原子の1個以上が置換された基、シ ノ基、またはアルコキシカルボニル基を表 、Rはアリール基およびアルキル基から選ば れる基、または該選ばれる基の水素原子の1 以上が置換された基を表す。

 [2]Xがアリール基、および1価ヘテロ環基か 選ばれる基、または該選ばれる基中の水素 子の1個以上が置換された基であり、Yがシア ノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、 ハロゲン化アルキル基、またはハロゲン化ア シル基である上記[1]に記載の製造方法。
 [3]Rがアリール基、アルキル基、またはハロ ゲン化アリール基である上記[1]または[2]に記 載の製造方法。
 [4]反応温度が-50~100℃である上記[1]~[3]のい れかに記載の製造方法。

 本発明の原料化合物であるモノスルフィド は製造が容易である。また、スルフィド基 結合する基の構造に殆ど制限がない。その め、様々な分子構造を有するフルオロ化合 を容易に得ることができる。
 また、フッ素化剤であるIF 5 は爆発性等の取り扱い上の問題がなく、かつ 価格も安価である。そのため、本発明の製造 方法は工業化に適している。
 また、本発明の製造方法は、1つの炭素原子 に対して、一段階で2つのフッ素原子を導入 ることが可能である。したがって、本発明 よれば、2つのフッ素原子が結合した炭素原 を有するフルオロ化合物を、効率的に製造 ることができる。

 本明細書においては、式(A)で表される化合 を「化合物(A)」のようにも記す。他の式で される化合物についても同様に記す。
 本発明の製造方法は、下記に示すように、 合物(A)をIF 5 と反応させることにより、化合物(B)を製造す る方法である。

 ただし、Xは、アリール基、1価ヘテロ環 、およびアルキル基から選ばれる基、また 該選ばれる基中の水素原子の1個以上が置換 れた基を表し、Yはアリール基、1価ヘテロ 基、アルキル基、アシル基、およびアリー オキシ基から選ばれる基、または該選ばれ 基中の水素原子の1個以上が置換された基、 アノ基、またはアルコキシカルボニル基を し、Rはアリール基およびアルキル基から選 ばれる基、または該選ばれる基の水素原子の 1個以上が置換された基を表す。

[化合物(A)]
 化合物(A)は、スルフィド基のα位の炭素原 に、水素原子が1つ結合し、かつ、XおよびY 表される2つの置換基が結合した化合物であ 。
 化合物(A)におけるXは、アリール基、1価ヘ ロ環基、およびアルキル基から選ばれる基 または該選ばれる基中の水素原子の1個以上 置換された基である。

 Xを構成するアリール基としては、フェニル 基、ナフチル基等が挙げられる。
 Xを構成する1価ヘテロ環基としては、チエ ル基、フラニル基が挙げられる。
 Xを構成するアルキル基としては、直鎖構造 、分岐構造、環構造、または、部分的に分岐 構造を有する基および/または部分的に環構 を有する基であってもよい。アルキル基は 炭素数1~10個のアルキル基が好ましく、炭素 1~6個のアルキル基が特に好ましい。アルキ 基の具体例としては、メチル基、エチル基 n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基 、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロプロ ル基、シクロブチル基、シクロペンチル基 シクロヘキシル基等が挙げられる。

 また、Xは、上記の基の中の水素原子の1個 上が置換された基であってもよい。
 該基中の水素原子と置換する置換基として 、IF 5 を用いたフッ素化反応において不活性な基か ら選択されることが好ましい。フッ素化反応 において不活性な基としては、ハロゲン原子 、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。ハロ ゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、 または臭素原子が好ましい。また、水素原子 と置換する置換基としては、炭素数1~6個のア ルキル基、または炭素数1~6個のアルコキシ基 も好ましい。

 Xを構成する置換アリール基(アリール基中 水素原子の1個以上が置換された基)としては 、ハロゲン化アリール基が好ましく、クロロ フェニル基、ブロモフェニル基、2,3-ジフル ロフェニル基が挙げられる。
 Xを構成する置換1価ヘテロ環基(1価ヘテロ環 基中の水素原子の1個以上が置換された基)と ては、5-メチル-2-チエニル基、4-メチル-2-チ エニル基等が挙げられる。
 Xを構成する置換アルキル基(アルキル基中 水素原子の1個以上が置換された基)としては 、フッ素原子に置換されたアルキル基が好ま しく、フッ素原子を1個以上有するフルオロ ルキル基がより好ましく、トリフルオロメ ル基が特に好ましい。

 化合物(A)におけるYはアリール基、1価ヘ ロ環基、アルキル基、アシル基、およびア ールオキシ基から選ばれる基、または該選 れる基中の水素原子の1個以上が置換された 、シアノ基、またはアルコキシカルボニル である。

 Yを構成するアリール基、1価ヘテロ環基、 よびアルキル基は、何れもXとして選択でき これらの基と同じものから選択できる。ま 、これらの基の中の水素原子の1個以上が置 換された置換アリール基、置換1価ヘテロ環 、および置換アルキル基も、Xとして選択で るものと同じである。
 Yとして選択できるこれらの基の中で、好ま しい基もXにおける好ましい基と同じである

 Yを構成するアシル基としては、アルカノイ ル基またはベンゾイル基が好ましい。アルカ ノイル基としては、炭素数が1~10個の基が好 しく、炭素数が1~6個の基が特に好ましい。 ルカノイル基の具体例としては、アセチル 、プロピオニル基、n-ブチリル基等の基が挙 げられる。
 Yを構成するアリールオキシ基としては、フ ェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。

 Yを構成する置換アシル基(アシル基中の水 原子の1個以上が置換された基)としては、ク ロロアセチル基、ブロモアセチル基、トリフ ルオロアセチル基等が挙げられる。
 Yを構成する置換アリールオキシ基(アリー オキシ基の水素原子の1個以上が置換された )としては、4-ニトロフェノキシ基、4-シア フェノキシ基、4-ブロモフェノキシ基、4-ク ロフェノキシ基、4-フルオロフェノキシ基 4-メチルフェノキシ基、4-tert-ブチルフェノ シ基等が挙げられる。

 Yを構成するアルコキシカルボニル基とし ては、アルキル基部分の炭素数が1~9個である 基が好ましく、炭素数が1~5個である基がより 好ましい。アルキル基部分の構造は直鎖構造 であっても分岐構造であってもよい。アルコ キシカルボニル基の例としては、メトキシカ ルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロ キシカルボニル基、i-プロポキシカルボニ 基、n-ブトキシカルボニル基等が挙げられる 。

 本発明の製造方法では、化合物(A)中のXおよ びYは、その構造が保持されたまま、化合物(B )中のXおよびYとなる。したがって、化合物(A) 中のXおよびYは、目的とする化合物(B)のXおよ びYを選択すればよい。
 ただし、フッ素化反応の反応性の観点から 、Xとしては電子吸引性を持たない、または 電子吸引性が弱い基を採用し、Yとして電子 引性の基を選択することが好ましい。
 その理由は、本発明の製造方法における反 メカニズムに基づき以下のように考えられ 。

 まず、本発明の製造方法における反応は、 下のようなメカニズムで進行すると考えら る。なお、以下の説明は、Xがフェニル基、 Yがエトキシカルボニル基である場合を例に げて行う。
 まず、下式に示すように、IF 5 は、平衡反応により、IF 4 + とF - とを生成させる。

 下式(I)に示すように、Xがフェニル基、Yが トキシカルボニル基である化合物(A)は、イ ウ原子に非共有電子対を有している。反応 、この非共有電子対をイオウ原子とIF 4 + とが共有することにより開始する。
 次に、下式(II)に示すように、IF 5 から生成したF - は、ベンジル位の炭素原子に結合した水素原 子を引きぬき、下式(III)に示す安定なカチオ を生成させると共に、このカチオンに再びF - が反応し、まずフッ素原子1個がベンジル位 炭素原子に結合する。
 次いで、下式(IV)に示すように、イオウ原子 の非共有電子対をイオウ原子とIF 4 + とが共有する。最後に、下式(V)に示すように F - が反応してIF 3 およびRS-Fが脱離することにより、目的とす ジフルオロ体(VI)が生成すると考えられる。

 上記メカニズムにおける反応の開始には、 合物(A)のイオウ原子に非共有電子対が存在 ることが必要とされる。もし、XおよびYの 方が電子吸引性の基である場合には、イオ 原子の非共有電子対の電子密度が低くなり 反応が開始しづらくなる。そのため、Xとし は電子吸引性を持たない、または電子吸引 が弱い基を採用することが好ましいと考え れる。
 一方、Yとして電子吸引性の基を選択するこ とが好ましい。Yが電子供与性の基R’である 合には、下式(VII)に示すように、イオウ原 の非共有電子対をIF 4 + と共有することはできる。しかし、その後、 式(VIII)に示すカチオンの安定性が高くなり、 該カチオンがF - と反応して式(IX)に示すモノフルオロ体を生 するする副反応が同時に進行してしまう。 のため、目的とするジフルオロ体(VI)の収率 低くなると考えられる。
 Yが「電子吸引性の基」であれば、反応の中 間物質である式(III)に示すカチオンが、式(VII I)に示すカチオンと同様のカチオンよりも安 性が高くなることから、(II)→(III)→(IV)の反 応が優先的に起こり、上記副反応が抑えられ ると考えられる。

 以上のことから、Xとして「電子吸引性を 持たない、または電子吸引性が弱い基」、Y して「電子吸引性の基」を選択した場合に 、反応の開始がしやすく、かつ副反応の進 を抑えられるので、より収率良く目的とす ジフルオロ体(VI)が生成するものと考えられ 。

 したがって、反応性の観点から好ましいXと しては、アリール基、および1価ヘテロ環基 ら選ばれる基、または該選ばれる基中の水 原子の1個以上が置換された基が挙げられる ここで「水素原子の1個以上が置換された基 」における水素原子と置換する置換基は、炭 素数1~6個のアルキル基、炭素数1~6個のアルコ キシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基 から選択される1以上であることが好ましい
 反応性の観点からより好ましいXは、アリー ル基、またはハロゲン化アリール基であり、 特に好ましくはアルキル置換されたアリール 基、またはアルコキシ置換されたアリール基 である。
 また、反応性の観点から好ましいYとしては 、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アシ ル基、ハロゲン化アルキル基、及びハロゲン 化アシル基が挙げられる。反応性の観点から より好ましいYは、アルコキシカルボニル基 またはアシル基であり、特に好ましくは、 アノ基、またはハロゲン化アルキル基であ 。

 化合物(A)中のRはアリール基およびアルキル 基から選ばれる基、または該選ばれる基の水 素原子の1個以上が置換された基である。
 Rを構成するアリール基およびアルキル基は 、何れもXとして選択できるこれらの基と同 ものから選択できる。また、これらの基の の水素原子の1個以上が置換された置換アリ ル基および置換アルキル基も、Xとして選択 できるものと同じである。
 本発明の製造方法では、化合物(A)中のRは化 合物(B)中に残らない。そのため、Rは、化合 (A)の入手の容易性及びIF 5 との反応性の観点から選択することができる 。
 IF 5 との反応性の観点から好ましいRとしては、 リール基、アルキル基またはハロゲン化ア ール基、ハロゲン化アルキル基が挙げられ 。反応性の観点からより好ましいRは、アリ ル基、アルキル基、またはハロゲン化アリ ル基であり、特に好ましくは、アルキル基 たはハロゲン化アリール基である。ハロゲ 化アリール基におけるハロゲン原子として 、フッ素原子、または塩素原子が好ましい
 Rがアルキル基、またはハロゲン化アリール 基であればイオウ原子上の電子密度を極度に 低下させることが無いので、フッ素化反応の 進行に好ましいと考えられる。
 また、化合物(A)の入手の容易性の観点から ましいRとしては、アリール基、アルキル基 またはハロゲン化アリール基が挙げられる。 化合物(A)の入手の容易性の観点からより好ま しいRは、アリール基またはアルキル基であ 、特に好ましくは、アルキル基である。
 さらに好ましいRはメチル基である。Rがメ ル基である化合物(A)は、入手や合成が容易 ある。また、Rがメチル基である化合物(A)は IF 5 との反応性も良好である。
 なお、化合物(A)の製造方法については後述 るが、市販品として入手することもできる

[フッ素化反応]
 本発明の反応は、化合物(A)とIF 5 とを反応させて、スルフィド基とスルフィド 基のα位の炭素原子に結合する水素原子を一 の反応でフッ素化して、2つのフッ素原子が 結合した炭素原子を有するフルオロ化合物を 得る反応である。

 IF 5 の量は、化合物(A)に対して1~10倍モル量が好 しく、1.5~2.0倍モル量が特に好ましい。
 IF 5 はあらかじめ溶媒に溶解させておいたものを 反応系中に添加するのが取り扱いの容易さの 観点から好ましい。該溶媒は、後述のフッ素 化反応に用い得る溶媒と同一であっても異な っていてもよい。
 IF 5 の溶解に使用する溶媒は、後述のフッ素化反 応に用い得る溶媒と同一のものから選択でき る。中でも、溶解性の観点から塩化メチレン (CH 2 Cl 2 )が特に好ましい。
 該溶媒の量は、IF 5 に対して1~10倍モル量が好ましく、3~5倍モル がより好ましい。

 フッ素化反応の反応温度は-50~100℃が好まし く、-20~30℃が特に好ましい。反応温度が100℃ 以下であれば、IF 5 の沸点(100.5℃)以下となることによりIF 5 の損失を防ぐことができるため好ましい。ま た、30℃以下であれば、目的外の反応(たとえ ば、他のフッ素化反応等の副反応)が抑制さ るので好ましい。一方、反応温度が-50℃以 であれば、液相で反応を実施できるため好 しい。また、-20℃以上であれば大部分の原 の析出を防ぐことができるのでより好まし 。
 反応時間は特に限定されず、原料が消失す まで、または、反応が進行しなくなるまで 時間であることが好ましい。

 フッ素化反応は無溶媒で行っても溶媒の存 下に行ってもよく、溶媒の存在下で行うの 好ましい。化合物(A)が液状である場合には 化合物(A)が溶媒としての役目を果たすため 溶媒を用いずとも反応を実施できる。
 溶媒の存在下で反応させる場合、溶媒とし は、塩化メチレン、クロロホルムなどの塩 系溶媒、トルエン、ヘキサン、ペンタンな の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフランな のフッ素系溶剤、ジエチルエーテル、t-ブ ルエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、 メチルホルムアミド、ジメチルスルホキシ 、アセトニトリル等が挙げられる。中でも キサン、塩化メチレンが好ましい。

 フッ素化反応で得た化合物(B)を含む反応粗 成物は、通常の後処理として、水を加え希 し、その後、中和操作、抽出、乾燥等を行 。中和操作に用いる中和剤としては、炭酸 素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナ リウムなどの水溶液などが挙げられ、取り いの点から炭酸水素ナトリウムを用いるこ が好ましい。抽出する為の溶媒は、反応に いるものと同じ溶媒を使用できるが、ジエ ルエーテル、塩化メチレンが好ましい。乾 に用いる乾燥剤としては、無水硫酸マグネ ウム、無水硫酸ナトリウムなどが挙げられ 。
 また、中和操作、抽出、乾燥等の後に、目 に応じた純度にするための精製処理を行っ もよい。精製処理としては、カラムクロマ グラフィー、蒸留、再結晶等の方法が挙げ れる。

[化合物(A)の製造方法]
 本発明の反応の出発物質である化合物(A)は 公知の化合物にY. Tamura et al. Tetrahedron Let t., 1980, 21, 2547-2548.等に記載される方法を適 用することにより製造できる。
 化合物(A)の製造方法としては、つぎの方法1 ~3の何れかによるのが好ましい。

[方法1]
 下式(1)で表される化合物を塩素化剤と反応 せて下式(2)で表される化合物とし、該式(2) 表される化合物を式(3)で表される化合物と 応させて化合物(A)を得る方法。ただし、式 のR、Y、およびXは前記と同じ意味を表す。
 R-S-CH 2 -Y  (1)
 R-S-CHCl-Y (2)
 H-X  (3)

 塩素化剤としては、N-クロロスクシンイミ 、塩化スルフリル等が挙げられ、化合物(1) 対して1~1.5倍モル量を用いるのが好ましい。
 塩素化剤との反応は四塩化炭素、クロロホ ム、塩化メチレンなどの溶媒存在下に行う が好ましい。化合物(1)と塩素化剤との反応 度は0~100℃で行うのが好ましく、10~30℃で行 うのがより好ましい。
 化合物(2)と化合物(3)の反応は、塩化メチレ などの溶媒の存在下に行うのが好ましい。 お、化合物(3)が液状の場合は、無溶媒で行 こともできる。化合物(2)と化合物(3)の反応 度は0~100℃で行うのが好ましく、0~20℃で行 のがより好ましい。

[方法2]
 下式(4)で表される化合物を式(5)で表される 合物と反応させて化合物(A)を得る方法。た し、式中のR、Y、およびXは前記と同じ意味 表す。
 X-CHCl-Y  (4)
 RSNa (5)
 反応は化合物(5)の水溶液と化合物(4)を反応 せることが好ましく、反応温度は0~100℃で うのが好ましく、0~20℃で行うのがより好ま い。

[方法3]
 下式(6)で表される化合物と下式(7)で表され 化合物と下式(8)で表される化合物をルイス 存在下に反応させて化合物(A)を得る方法。 だし、式中のR、Y、およびXは前記と同じ意 を表す。
 H-X  (6)
 R-S-H (7)
 Y-CH(OH) 2   (8)
 反応は塩化メチレンなどの溶媒存在下で行 のが好ましく、反応温度は、反応温度は0~10 0℃で行うのが好ましく、0~20℃で行うのがよ 好ましい。用いるルイス酸としては、三フ 化ほう素―ジエチルエーテルなどが挙げら る。

 以下本発明の実施例を説明するが、本発明 範囲はこれらの実施例に限定されない。な 、製造した化合物の構造は公知のNMRのデー と比較することにより決定した。化合物の 率は用いた原料と生成物の質量を定量する とにより求めた。
 実施例中で使用した記号の意味は、Phはフ ニル基を示し、Etはエチル基を示し、Buはブ ル基を示し、t-Buはターシャリーブチル基を 示し、n-Buはノルマルブチルを示し、r.t.は室 (23℃)で反応させたことを示す。

[例1]化合物(A)の調製例
[例1-1]化合物(A-1)の合成例
 メチルチオ酢酸エチルの3.9g(29mmol)を四塩化 素(100ml)に溶解した溶液に、0℃で、N-クロロ スクシンイミドの4.0g(30mmol)を少しずつ加えた 。加え終わった後、室温(23℃)で6時間攪拌し 固体を濾別したのち、濾液を10mmHgの減圧下 、91℃にて蒸留し、メチルチオクロル酢酸 チルの4.3g(25.6mmol)を得た。
 得られたメチルチオクロル酢酸エチルの内 1.68g(10mmol)をベンゼンに溶解してベンゼン溶 液(5ml)とし、この溶液に、0℃でSnCl 4 の2.6g(10mmol)をゆっくり滴下した。30分攪拌後 水を加えてジエチルエーテル抽出した後、 水硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリー バポレーターで濃縮後シリカゲルカラムク マトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン-ジ チルエーテル)により精製して、メチルチオ ェニル酢酸エチル(A-1)の1.89g(9mmol)を得た。 率は80%であった。

[例1-2~例1-7]
 出発物質を変更する以外は例1-1の方法と同 方法を用いて、下記化合物(A-2)、(A-3)、(A-5)~ (A-7)を合成した。出発物質、生成した化合物( A)の関係を表1に示す。また、出発物質を変更 する以外は例1-1の方法と同じ方法を用いて、 下記化合物(A-4)を合成した。出発物質、生成 る化合物(A)の関係を表1に示す。

[例1-8]
 2-クロロ-1,2-ジフェニルエタノンの5g(22mmol) シクロヘキサン(40ml)に溶解した溶液に、メ ルチオナトリウム15%水溶液の20mlを加え、室 (23℃)で14時間攪拌した。ジエチルエーテル 出した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し ロータリーエバポレーターで濃縮後シリカ ルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、 ヘキサン-ジエチルエーテル)により精製して 1,2-ジフェニル-2-メチルチオエタノン(A-8)の4 .8g(20mmol)を得た。収率は91%であった。

[例1-9]
 出発物質を変更する以外は例1-8の方法と同 方法を用いて、下記化合物(A-9)を合成した 出発物質、生成した化合物(A)の関係を表1に す。

[例1-10]
 トリフルオロアセトアルデヒド水和物の1.5g (8.1mmol)、ブタンチオールの0.74g(8.2mmol)およびt ert-ブチルベンゼンの2.25g(16.8mmol)を塩化メチ ンの25mlに溶解した。この塩化メチレン溶液 BF 3 -H 2 O(BF 3 とH 2 Oとの1:1(モル比)の混合物。1.5ml)を室温(23℃) 加え、同温度で2時間攪拌した。水を加えて 化メチレンで抽出し、有機層を水、飽和炭 水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄 た。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ロー リーエバポレーターで濃縮後シリカゲルカ ムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサ ン-ジエチルエーテル)により精製して、ブチ -2,2,2-トリフルオロ―1-(tert-ブチルフェニル) エチルスルフィド(A-10)の0.76g(2.5mmol)を得た。 率は31%であった。

[例2]
 IF 5 と、IF 5 の5倍モル量の塩化メチレンを混合してIF 5 のCH 2 Cl 2 溶液(以下「IF 5 /5CH 2 Cl 2 」と記載する。)とした。
 テトラフルオロエチレン製の容器にIF 5 /5CH 2 Cl 2 を1g(IF 5 として1.5mmol)、およびヘキサンの2mlを入れ、 れに0℃でメチルチオフェニル酢酸エチル(A- 1)の210mg(1.0mmol)を加え、室温で2時間攪拌した 得られた混合物をテトラフルオロエチレン のビーカーに入れた水20mlに投入し、炭酸水 素ナトリウム水溶液で中和し、ジエチルエー テルで抽出した後、有機層をチオ硫酸ナトリ ウム水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで 乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮後 シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより 精製して、2,2-ジフルオロフェニル酢酸エチ (B-1)の146mg(0.73mmol)を得た。収率は73%であった 。

[例3~11]
 原料として表2に記載した化合物(A)を用い。 反応条件を表2に記載したものに変更するこ 以外は、例2の方法と同じ方法で反応を実施 た。得られた化合物(B)と収率を表2に示す。

 実施例で製造した化合物の同定資料を以下 示す。
 化合物(B-1): 1 H-NMR(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):1.31(t、3H、7.2Hz)、4.3(q、2H、7. 2Hz)、7.44~7.52(m、3H)、7.60~7.62(m、2H)。 19 F-NMR(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-104.5(s、2F)。

 化合物(B-2): 1 H-NMR(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):2.3(t、3H、1.5Hz)、7.45~7.56(m、5H )。 19 F-NMR(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-107.4(s、2F)。

 化合物(B-3): 1 H-NMR(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):7.53~7.69(m、5H)。 19 F-NMR(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-83.8(s、2F)。

 化合物(B-4): 1 H-NMR(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):1.23(t、3H、7.3Hz)、4.3(q、2H、7. 3Hz)、7.5~7.6(m、3H)、7.85~7.98(m、3H)、8.2(d、1H、8. 4Hz)。 19 F-NMR(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-100.7(s、2F)。

 化合物(B-5): 1 H-NMR(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):6.8~7.0(m、2H)、7.46―7.61(m、5H) 7.79―7.85(m、1H)。 19 F-NMR(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-102.7~-102.6(m、1F)、-100.6(s、1F)、-100.6(s 1F)、-100.1~-100.2(m、1F)。

 化合物(B-6): 1 H-NMR(オルト体)(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):1.33(t、3H、7.4Hz)、4.36(q、2H、7 .2Hz)、7.34―7.65(m、3H)、7.74(d、1H、7.8Hz)。
19 F-NMR(オルト体)(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-102.51(s、2F)。 1 H-NMR(パラ体)(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):1.31(t、3H、7.3Hz)、4.36(q、2H、7 .2Hz)、7.48(d、2H、8.4Hz)、7.60(d、2H、8.5Hz)。 19 F-NMR(パラ体)(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-104.73(s、2F)。

 化合物(B-7): 1 H-NMR(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):1.36(t、3H、7.3Hz)、4.37(q、2H、7 .1Hz)、7.07(t、1H、4.3Hz)、7.40(s、1H)、7.49(d、1H、 5.0Hz)。 19 F-NMR(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-93.45(s、2F)。

 化合物(B-8): 1 H-NMR(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):7.42~7.48(m、5H)、7.57~7.63(m、3H) 8.03(d、2H、8.0Hz)。 19 F-NMR(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-98.2(s、2F)。

 化合物(B-9): 1 H-NMR(オルト体)(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):1.35(s、9H、)、7.40―7.60(m、4H) 19 F-NMR(オルト体)(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-85.41(t、3F、2.2Hz)、-115.29(q、2F、2.1Hz)。 1 H-NMR(パラ体)(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):1.35(s、9H、)、7.52(s、4H)。 19 F-NMR(パラ体)(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-85.43(t、3F、2.1Hz)、-115.18(t、2F、1.8Hz)。

 本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照 て説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱 ることなく様々な変更や修正を加えること できることは当業者にとって明らかである
 本出願は、2008年2月15日出願の日本特許出願 2008-034626に基づくものであり、その内容はこ に参照として取り込まれる。

 本発明の製造方法によって得られる2つの フッ素原子が結合した炭素原子を有するフル オロ化合物は、例えば医薬や農薬などの合成 中間体として有用である。




 
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