SAWAGUCHI MASANORI (JP)
HARA SHOJI (JP)
SAWAGUCHI MASANORI (JP)
WO2001096263A1 | 2001-12-20 |
JP2002338517A | 2002-11-27 |
FURUTA,S. ET AL.: "Facile Synthesis of a- Fluoroalkyl Sulfides under Oxidative Desulfurization-Fluorination Conditions", BULLETIN OF THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN, vol. 71, no. 11, 1998, pages 2687 - 2694
MANABU KUROBOSHI ET AL.: "Oxidative desulfurization-fluorination of 1-substituted 2, 2,2-tris(methylthio)ethanol induces difluorination under oxidation or rearrangement", TETRAHEDRON LETTERS, vol. 36, no. 34, 1995, pages 6121 - 6122
KUROBOSHI M. ET AL.: "Oxidative Fluorination reaction ni yoru Yuki Fluorine Compound no Gosei", JOURNAL OF SYNTHETIC ORGANIC CHEMISTRY, JAPAN, vol. 51, no. 12, 1993, pages 1124 - 1133
下式(A)で表される化合物をIF 5
と反応させることを特徴とする下式(B)で表されるフルオロ化合物の製造方法。 ただし、Xは、アリール基、1価ヘテロ環基、およびアルキル基から選ばれる基、または該選ばれる基中の水素原子の1個以上が置換された基を表し、Yはアリール基、1価ヘテロ環基、アルキル基、アシル基、およびアリールオキシ基から選ばれる基、または該選ばれる基中の水素原子の1個以上が置換された基、シアノ基、またはアルコキシカルボニル基を表し、Rはアリール基およびアルキル基から選ばれる基、または該選ばれる基の水素原子の1個以上が置換された基を表す。 |
Xがアリール基、および1価ヘテロ環基から選ばれる基、または該選ばれる基中の水素原子の1個以上が置換された基であり、Yがシアノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ハロゲン化アルキル基、またはハロゲン化アシル基である請求項1に記載の製造方法。 |
Rがアリール基、アルキル基、またはハロゲン化アリール基である請求項1または2に記載の製造方法。 |
反応温度が-50~100℃である請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。 |
本発明はフルオロ化合物の製造方法に関 る。さらに詳しくは、2つのフッ素原子が結 合した炭素原子を有するフルオロ化合物の製 造方法に関する。
一般に、有機化合物をフッ素化してフルオ
化合物を製造する際には、フッ素化剤が用
られている。例えば、カルボニル基を有す
化合物を、SF 4
またはDAST(ジエチルアミノサルファートリフ
オライド)を用いてフッ素化する方法が知ら
れている。しかし、これらのフッ素化剤の取
り扱いは容易でなく、値段も高価で、工業的
な製造方法に用いるフッ素化剤としては有利
ではない問題があった。
そこで、取り扱いが容易なフッ素化剤とし
、IF 5
を用いるフッ素化方法が提案されている(特
文献1)。
特許文献1では、2つのフッ素原子が結合し
炭素原子を有するフルオロ化合物をIF 5
を用いて製造する方法として、以下の式(a)~(c
)の式で示される具体例が挙げられている。
ただし、式(a)~(c)で使用した記号Etはエチル
を示し、Meはメチル基を示し、r.t.は室温(23
)で反応させたことを示し、hrは反応時間を
す。また、hexaneは反応溶媒としてヘキサン
、CH 2
Cl 2
は反応溶媒としてCH 2
Cl 2
を使用したことを示す。
また、IF 5
/Et 3
N-3HF(1:1モル比)とは、IF 5
に対するEt 3
N量が等倍モルとなるように、IF 5
と、Et 3
NとHFとの混合試薬(Et 3
N:HF=1:3モル比)とを混合したフッ素化剤を用い
て反応させたことを示す。
しかし、式(a)、(b)で得られるフルオロ化合
は、分子内にスルフィド基を有しており、
のスルフィド基を除いた化合物を入手する
めには、さらなる反応工程が必要である。
また、式(c)の反応では、原料が、2個のイオ
ウ原子を含むヘテロ環を備えた特殊な構造の
ものである。そのため、式(c)の反応における
特定の原料以外には入手が困難であり、得ら
れるフルオロ化合物の構造が限定されていた
。また、式(c)の原料を合成するには、臭気の
強いHS-CH 2
CH 2
-SHを使う必要があった。
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み
なされたものであり、2つのフッ素原子が結
合した炭素原子を有する様々な分子構造のフ
ルオロ化合物を、一段階の反応によって効率
的に製造し、しかも、工業化にも適した製造
方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭 検討した結果、モノスルフィド類をIF 5 と反応させると、スルフィド基とスルフィド 基のα位の炭素原子に結合する水素原子とを 段階の反応でフッ素原子に置換できること 見出した。すなわち、本発明の要旨は以下 とおりである。
[1]下式(A)で表される化合物をIF 5
と反応させることを特徴とする下式(B)で表さ
れるフルオロ化合物の製造方法。
ただし、Xは、アリール基、1価ヘテロ環基
およびアルキル基から選ばれる基、または
選ばれる基中の水素原子の1個以上が置換さ
た基を表し、Yはアリール基、1価ヘテロ環
、アルキル基、アシル基、およびアリール
キシ基から選ばれる基、または該選ばれる
中の水素原子の1個以上が置換された基、シ
ノ基、またはアルコキシカルボニル基を表
、Rはアリール基およびアルキル基から選ば
れる基、または該選ばれる基の水素原子の1
以上が置換された基を表す。
[2]Xがアリール基、および1価ヘテロ環基か
選ばれる基、または該選ばれる基中の水素
子の1個以上が置換された基であり、Yがシア
ノ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、
ハロゲン化アルキル基、またはハロゲン化ア
シル基である上記[1]に記載の製造方法。
[3]Rがアリール基、アルキル基、またはハロ
ゲン化アリール基である上記[1]または[2]に記
載の製造方法。
[4]反応温度が-50~100℃である上記[1]~[3]のい
れかに記載の製造方法。
本発明の原料化合物であるモノスルフィド
は製造が容易である。また、スルフィド基
結合する基の構造に殆ど制限がない。その
め、様々な分子構造を有するフルオロ化合
を容易に得ることができる。
また、フッ素化剤であるIF 5
は爆発性等の取り扱い上の問題がなく、かつ
価格も安価である。そのため、本発明の製造
方法は工業化に適している。
また、本発明の製造方法は、1つの炭素原子
に対して、一段階で2つのフッ素原子を導入
ることが可能である。したがって、本発明
よれば、2つのフッ素原子が結合した炭素原
を有するフルオロ化合物を、効率的に製造
ることができる。
本明細書においては、式(A)で表される化合
を「化合物(A)」のようにも記す。他の式で
される化合物についても同様に記す。
本発明の製造方法は、下記に示すように、
合物(A)をIF 5
と反応させることにより、化合物(B)を製造す
る方法である。
ただし、Xは、アリール基、1価ヘテロ環 、およびアルキル基から選ばれる基、また 該選ばれる基中の水素原子の1個以上が置換 れた基を表し、Yはアリール基、1価ヘテロ 基、アルキル基、アシル基、およびアリー オキシ基から選ばれる基、または該選ばれ 基中の水素原子の1個以上が置換された基、 アノ基、またはアルコキシカルボニル基を し、Rはアリール基およびアルキル基から選 ばれる基、または該選ばれる基の水素原子の 1個以上が置換された基を表す。
[化合物(A)]
化合物(A)は、スルフィド基のα位の炭素原
に、水素原子が1つ結合し、かつ、XおよびY
表される2つの置換基が結合した化合物であ
。
化合物(A)におけるXは、アリール基、1価ヘ
ロ環基、およびアルキル基から選ばれる基
または該選ばれる基中の水素原子の1個以上
置換された基である。
Xを構成するアリール基としては、フェニル
基、ナフチル基等が挙げられる。
Xを構成する1価ヘテロ環基としては、チエ
ル基、フラニル基が挙げられる。
Xを構成するアルキル基としては、直鎖構造
、分岐構造、環構造、または、部分的に分岐
構造を有する基および/または部分的に環構
を有する基であってもよい。アルキル基は
炭素数1~10個のアルキル基が好ましく、炭素
1~6個のアルキル基が特に好ましい。アルキ
基の具体例としては、メチル基、エチル基
n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基
、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロプロ
ル基、シクロブチル基、シクロペンチル基
シクロヘキシル基等が挙げられる。
また、Xは、上記の基の中の水素原子の1個
上が置換された基であってもよい。
該基中の水素原子と置換する置換基として
、IF 5
を用いたフッ素化反応において不活性な基か
ら選択されることが好ましい。フッ素化反応
において不活性な基としては、ハロゲン原子
、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。ハロ
ゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、
または臭素原子が好ましい。また、水素原子
と置換する置換基としては、炭素数1~6個のア
ルキル基、または炭素数1~6個のアルコキシ基
も好ましい。
Xを構成する置換アリール基(アリール基中
水素原子の1個以上が置換された基)としては
、ハロゲン化アリール基が好ましく、クロロ
フェニル基、ブロモフェニル基、2,3-ジフル
ロフェニル基が挙げられる。
Xを構成する置換1価ヘテロ環基(1価ヘテロ環
基中の水素原子の1個以上が置換された基)と
ては、5-メチル-2-チエニル基、4-メチル-2-チ
エニル基等が挙げられる。
Xを構成する置換アルキル基(アルキル基中
水素原子の1個以上が置換された基)としては
、フッ素原子に置換されたアルキル基が好ま
しく、フッ素原子を1個以上有するフルオロ
ルキル基がより好ましく、トリフルオロメ
ル基が特に好ましい。
化合物(A)におけるYはアリール基、1価ヘ ロ環基、アルキル基、アシル基、およびア ールオキシ基から選ばれる基、または該選 れる基中の水素原子の1個以上が置換された 、シアノ基、またはアルコキシカルボニル である。
Yを構成するアリール基、1価ヘテロ環基、
よびアルキル基は、何れもXとして選択でき
これらの基と同じものから選択できる。ま
、これらの基の中の水素原子の1個以上が置
換された置換アリール基、置換1価ヘテロ環
、および置換アルキル基も、Xとして選択で
るものと同じである。
Yとして選択できるこれらの基の中で、好ま
しい基もXにおける好ましい基と同じである
Yを構成するアシル基としては、アルカノイ
ル基またはベンゾイル基が好ましい。アルカ
ノイル基としては、炭素数が1~10個の基が好
しく、炭素数が1~6個の基が特に好ましい。
ルカノイル基の具体例としては、アセチル
、プロピオニル基、n-ブチリル基等の基が挙
げられる。
Yを構成するアリールオキシ基としては、フ
ェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
Yを構成する置換アシル基(アシル基中の水
原子の1個以上が置換された基)としては、ク
ロロアセチル基、ブロモアセチル基、トリフ
ルオロアセチル基等が挙げられる。
Yを構成する置換アリールオキシ基(アリー
オキシ基の水素原子の1個以上が置換された
)としては、4-ニトロフェノキシ基、4-シア
フェノキシ基、4-ブロモフェノキシ基、4-ク
ロフェノキシ基、4-フルオロフェノキシ基
4-メチルフェノキシ基、4-tert-ブチルフェノ
シ基等が挙げられる。
Yを構成するアルコキシカルボニル基とし ては、アルキル基部分の炭素数が1~9個である 基が好ましく、炭素数が1~5個である基がより 好ましい。アルキル基部分の構造は直鎖構造 であっても分岐構造であってもよい。アルコ キシカルボニル基の例としては、メトキシカ ルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロ キシカルボニル基、i-プロポキシカルボニ 基、n-ブトキシカルボニル基等が挙げられる 。
本発明の製造方法では、化合物(A)中のXおよ
びYは、その構造が保持されたまま、化合物(B
)中のXおよびYとなる。したがって、化合物(A)
中のXおよびYは、目的とする化合物(B)のXおよ
びYを選択すればよい。
ただし、フッ素化反応の反応性の観点から
、Xとしては電子吸引性を持たない、または
電子吸引性が弱い基を採用し、Yとして電子
引性の基を選択することが好ましい。
その理由は、本発明の製造方法における反
メカニズムに基づき以下のように考えられ
。
まず、本発明の製造方法における反応は、
下のようなメカニズムで進行すると考えら
る。なお、以下の説明は、Xがフェニル基、
Yがエトキシカルボニル基である場合を例に
げて行う。
まず、下式に示すように、IF 5
は、平衡反応により、IF 4 +
とF -
とを生成させる。
下式(I)に示すように、Xがフェニル基、Yが
トキシカルボニル基である化合物(A)は、イ
ウ原子に非共有電子対を有している。反応
、この非共有電子対をイオウ原子とIF 4 +
とが共有することにより開始する。
次に、下式(II)に示すように、IF 5
から生成したF -
は、ベンジル位の炭素原子に結合した水素原
子を引きぬき、下式(III)に示す安定なカチオ
を生成させると共に、このカチオンに再びF
-
が反応し、まずフッ素原子1個がベンジル位
炭素原子に結合する。
次いで、下式(IV)に示すように、イオウ原子
の非共有電子対をイオウ原子とIF 4 +
とが共有する。最後に、下式(V)に示すように
F -
が反応してIF 3
およびRS-Fが脱離することにより、目的とす
ジフルオロ体(VI)が生成すると考えられる。
上記メカニズムにおける反応の開始には、
合物(A)のイオウ原子に非共有電子対が存在
ることが必要とされる。もし、XおよびYの
方が電子吸引性の基である場合には、イオ
原子の非共有電子対の電子密度が低くなり
反応が開始しづらくなる。そのため、Xとし
は電子吸引性を持たない、または電子吸引
が弱い基を採用することが好ましいと考え
れる。
一方、Yとして電子吸引性の基を選択するこ
とが好ましい。Yが電子供与性の基R’である
合には、下式(VII)に示すように、イオウ原
の非共有電子対をIF 4 +
と共有することはできる。しかし、その後、
式(VIII)に示すカチオンの安定性が高くなり、
該カチオンがF -
と反応して式(IX)に示すモノフルオロ体を生
するする副反応が同時に進行してしまう。
のため、目的とするジフルオロ体(VI)の収率
低くなると考えられる。
Yが「電子吸引性の基」であれば、反応の中
間物質である式(III)に示すカチオンが、式(VII
I)に示すカチオンと同様のカチオンよりも安
性が高くなることから、(II)→(III)→(IV)の反
応が優先的に起こり、上記副反応が抑えられ
ると考えられる。
以上のことから、Xとして「電子吸引性を 持たない、または電子吸引性が弱い基」、Y して「電子吸引性の基」を選択した場合に 、反応の開始がしやすく、かつ副反応の進 を抑えられるので、より収率良く目的とす ジフルオロ体(VI)が生成するものと考えられ 。
したがって、反応性の観点から好ましいXと
しては、アリール基、および1価ヘテロ環基
ら選ばれる基、または該選ばれる基中の水
原子の1個以上が置換された基が挙げられる
ここで「水素原子の1個以上が置換された基
」における水素原子と置換する置換基は、炭
素数1~6個のアルキル基、炭素数1~6個のアルコ
キシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基
から選択される1以上であることが好ましい
反応性の観点からより好ましいXは、アリー
ル基、またはハロゲン化アリール基であり、
特に好ましくはアルキル置換されたアリール
基、またはアルコキシ置換されたアリール基
である。
また、反応性の観点から好ましいYとしては
、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アシ
ル基、ハロゲン化アルキル基、及びハロゲン
化アシル基が挙げられる。反応性の観点から
より好ましいYは、アルコキシカルボニル基
またはアシル基であり、特に好ましくは、
アノ基、またはハロゲン化アルキル基であ
。
化合物(A)中のRはアリール基およびアルキル
基から選ばれる基、または該選ばれる基の水
素原子の1個以上が置換された基である。
Rを構成するアリール基およびアルキル基は
、何れもXとして選択できるこれらの基と同
ものから選択できる。また、これらの基の
の水素原子の1個以上が置換された置換アリ
ル基および置換アルキル基も、Xとして選択
できるものと同じである。
本発明の製造方法では、化合物(A)中のRは化
合物(B)中に残らない。そのため、Rは、化合
(A)の入手の容易性及びIF 5
との反応性の観点から選択することができる
。
IF 5
との反応性の観点から好ましいRとしては、
リール基、アルキル基またはハロゲン化ア
ール基、ハロゲン化アルキル基が挙げられ
。反応性の観点からより好ましいRは、アリ
ル基、アルキル基、またはハロゲン化アリ
ル基であり、特に好ましくは、アルキル基
たはハロゲン化アリール基である。ハロゲ
化アリール基におけるハロゲン原子として
、フッ素原子、または塩素原子が好ましい
Rがアルキル基、またはハロゲン化アリール
基であればイオウ原子上の電子密度を極度に
低下させることが無いので、フッ素化反応の
進行に好ましいと考えられる。
また、化合物(A)の入手の容易性の観点から
ましいRとしては、アリール基、アルキル基
またはハロゲン化アリール基が挙げられる。
化合物(A)の入手の容易性の観点からより好ま
しいRは、アリール基またはアルキル基であ
、特に好ましくは、アルキル基である。
さらに好ましいRはメチル基である。Rがメ
ル基である化合物(A)は、入手や合成が容易
ある。また、Rがメチル基である化合物(A)は
IF 5
との反応性も良好である。
なお、化合物(A)の製造方法については後述
るが、市販品として入手することもできる
[フッ素化反応]
本発明の反応は、化合物(A)とIF 5
とを反応させて、スルフィド基とスルフィド
基のα位の炭素原子に結合する水素原子を一
の反応でフッ素化して、2つのフッ素原子が
結合した炭素原子を有するフルオロ化合物を
得る反応である。
IF 5
の量は、化合物(A)に対して1~10倍モル量が好
しく、1.5~2.0倍モル量が特に好ましい。
IF 5
はあらかじめ溶媒に溶解させておいたものを
反応系中に添加するのが取り扱いの容易さの
観点から好ましい。該溶媒は、後述のフッ素
化反応に用い得る溶媒と同一であっても異な
っていてもよい。
IF 5
の溶解に使用する溶媒は、後述のフッ素化反
応に用い得る溶媒と同一のものから選択でき
る。中でも、溶解性の観点から塩化メチレン
(CH 2
Cl 2
)が特に好ましい。
該溶媒の量は、IF 5
に対して1~10倍モル量が好ましく、3~5倍モル
がより好ましい。
フッ素化反応の反応温度は-50~100℃が好まし
く、-20~30℃が特に好ましい。反応温度が100℃
以下であれば、IF 5
の沸点(100.5℃)以下となることによりIF 5
の損失を防ぐことができるため好ましい。ま
た、30℃以下であれば、目的外の反応(たとえ
ば、他のフッ素化反応等の副反応)が抑制さ
るので好ましい。一方、反応温度が-50℃以
であれば、液相で反応を実施できるため好
しい。また、-20℃以上であれば大部分の原
の析出を防ぐことができるのでより好まし
。
反応時間は特に限定されず、原料が消失す
まで、または、反応が進行しなくなるまで
時間であることが好ましい。
フッ素化反応は無溶媒で行っても溶媒の存
下に行ってもよく、溶媒の存在下で行うの
好ましい。化合物(A)が液状である場合には
化合物(A)が溶媒としての役目を果たすため
溶媒を用いずとも反応を実施できる。
溶媒の存在下で反応させる場合、溶媒とし
は、塩化メチレン、クロロホルムなどの塩
系溶媒、トルエン、ヘキサン、ペンタンな
の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフランな
のフッ素系溶剤、ジエチルエーテル、t-ブ
ルエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、
メチルホルムアミド、ジメチルスルホキシ
、アセトニトリル等が挙げられる。中でも
キサン、塩化メチレンが好ましい。
フッ素化反応で得た化合物(B)を含む反応粗
成物は、通常の後処理として、水を加え希
し、その後、中和操作、抽出、乾燥等を行
。中和操作に用いる中和剤としては、炭酸
素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナ
リウムなどの水溶液などが挙げられ、取り
いの点から炭酸水素ナトリウムを用いるこ
が好ましい。抽出する為の溶媒は、反応に
いるものと同じ溶媒を使用できるが、ジエ
ルエーテル、塩化メチレンが好ましい。乾
に用いる乾燥剤としては、無水硫酸マグネ
ウム、無水硫酸ナトリウムなどが挙げられ
。
また、中和操作、抽出、乾燥等の後に、目
に応じた純度にするための精製処理を行っ
もよい。精製処理としては、カラムクロマ
グラフィー、蒸留、再結晶等の方法が挙げ
れる。
[化合物(A)の製造方法]
本発明の反応の出発物質である化合物(A)は
公知の化合物にY. Tamura et al. Tetrahedron Let
t., 1980, 21, 2547-2548.等に記載される方法を適
用することにより製造できる。
化合物(A)の製造方法としては、つぎの方法1
~3の何れかによるのが好ましい。
[方法1]
下式(1)で表される化合物を塩素化剤と反応
せて下式(2)で表される化合物とし、該式(2)
表される化合物を式(3)で表される化合物と
応させて化合物(A)を得る方法。ただし、式
のR、Y、およびXは前記と同じ意味を表す。
R-S-CH 2
-Y (1)
R-S-CHCl-Y (2)
H-X (3)
塩素化剤としては、N-クロロスクシンイミ
、塩化スルフリル等が挙げられ、化合物(1)
対して1~1.5倍モル量を用いるのが好ましい。
塩素化剤との反応は四塩化炭素、クロロホ
ム、塩化メチレンなどの溶媒存在下に行う
が好ましい。化合物(1)と塩素化剤との反応
度は0~100℃で行うのが好ましく、10~30℃で行
うのがより好ましい。
化合物(2)と化合物(3)の反応は、塩化メチレ
などの溶媒の存在下に行うのが好ましい。
お、化合物(3)が液状の場合は、無溶媒で行
こともできる。化合物(2)と化合物(3)の反応
度は0~100℃で行うのが好ましく、0~20℃で行
のがより好ましい。
[方法2]
下式(4)で表される化合物を式(5)で表される
合物と反応させて化合物(A)を得る方法。た
し、式中のR、Y、およびXは前記と同じ意味
表す。
X-CHCl-Y (4)
RSNa (5)
反応は化合物(5)の水溶液と化合物(4)を反応
せることが好ましく、反応温度は0~100℃で
うのが好ましく、0~20℃で行うのがより好ま
い。
[方法3]
下式(6)で表される化合物と下式(7)で表され
化合物と下式(8)で表される化合物をルイス
存在下に反応させて化合物(A)を得る方法。
だし、式中のR、Y、およびXは前記と同じ意
を表す。
H-X (6)
R-S-H (7)
Y-CH(OH) 2
(8)
反応は塩化メチレンなどの溶媒存在下で行
のが好ましく、反応温度は、反応温度は0~10
0℃で行うのが好ましく、0~20℃で行うのがよ
好ましい。用いるルイス酸としては、三フ
化ほう素―ジエチルエーテルなどが挙げら
る。
以下本発明の実施例を説明するが、本発明
範囲はこれらの実施例に限定されない。な
、製造した化合物の構造は公知のNMRのデー
と比較することにより決定した。化合物の
率は用いた原料と生成物の質量を定量する
とにより求めた。
実施例中で使用した記号の意味は、Phはフ
ニル基を示し、Etはエチル基を示し、Buはブ
ル基を示し、t-Buはターシャリーブチル基を
示し、n-Buはノルマルブチルを示し、r.t.は室
(23℃)で反応させたことを示す。
[例1]化合物(A)の調製例
[例1-1]化合物(A-1)の合成例
メチルチオ酢酸エチルの3.9g(29mmol)を四塩化
素(100ml)に溶解した溶液に、0℃で、N-クロロ
スクシンイミドの4.0g(30mmol)を少しずつ加えた
。加え終わった後、室温(23℃)で6時間攪拌し
固体を濾別したのち、濾液を10mmHgの減圧下
、91℃にて蒸留し、メチルチオクロル酢酸
チルの4.3g(25.6mmol)を得た。
得られたメチルチオクロル酢酸エチルの内
1.68g(10mmol)をベンゼンに溶解してベンゼン溶
液(5ml)とし、この溶液に、0℃でSnCl 4
の2.6g(10mmol)をゆっくり滴下した。30分攪拌後
水を加えてジエチルエーテル抽出した後、
水硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリー
バポレーターで濃縮後シリカゲルカラムク
マトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン-ジ
チルエーテル)により精製して、メチルチオ
ェニル酢酸エチル(A-1)の1.89g(9mmol)を得た。
率は80%であった。
[例1-2~例1-7]
出発物質を変更する以外は例1-1の方法と同
方法を用いて、下記化合物(A-2)、(A-3)、(A-5)~
(A-7)を合成した。出発物質、生成した化合物(
A)の関係を表1に示す。また、出発物質を変更
する以外は例1-1の方法と同じ方法を用いて、
下記化合物(A-4)を合成した。出発物質、生成
る化合物(A)の関係を表1に示す。
[例1-8]
2-クロロ-1,2-ジフェニルエタノンの5g(22mmol)
シクロヘキサン(40ml)に溶解した溶液に、メ
ルチオナトリウム15%水溶液の20mlを加え、室
(23℃)で14時間攪拌した。ジエチルエーテル
出した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し
ロータリーエバポレーターで濃縮後シリカ
ルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、
ヘキサン-ジエチルエーテル)により精製して
1,2-ジフェニル-2-メチルチオエタノン(A-8)の4
.8g(20mmol)を得た。収率は91%であった。
[例1-9]
出発物質を変更する以外は例1-8の方法と同
方法を用いて、下記化合物(A-9)を合成した
出発物質、生成した化合物(A)の関係を表1に
す。
[例1-10]
トリフルオロアセトアルデヒド水和物の1.5g
(8.1mmol)、ブタンチオールの0.74g(8.2mmol)およびt
ert-ブチルベンゼンの2.25g(16.8mmol)を塩化メチ
ンの25mlに溶解した。この塩化メチレン溶液
BF 3
-H 2
O(BF 3
とH 2
Oとの1:1(モル比)の混合物。1.5ml)を室温(23℃)
加え、同温度で2時間攪拌した。水を加えて
化メチレンで抽出し、有機層を水、飽和炭
水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄
た。無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ロー
リーエバポレーターで濃縮後シリカゲルカ
ムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサ
ン-ジエチルエーテル)により精製して、ブチ
-2,2,2-トリフルオロ―1-(tert-ブチルフェニル)
エチルスルフィド(A-10)の0.76g(2.5mmol)を得た。
率は31%であった。
[例2]
IF 5
と、IF 5
の5倍モル量の塩化メチレンを混合してIF 5
のCH 2
Cl 2
溶液(以下「IF 5
/5CH 2
Cl 2
」と記載する。)とした。
テトラフルオロエチレン製の容器にIF 5
/5CH 2
Cl 2
を1g(IF 5
として1.5mmol)、およびヘキサンの2mlを入れ、
れに0℃でメチルチオフェニル酢酸エチル(A-
1)の210mg(1.0mmol)を加え、室温で2時間攪拌した
得られた混合物をテトラフルオロエチレン
のビーカーに入れた水20mlに投入し、炭酸水
素ナトリウム水溶液で中和し、ジエチルエー
テルで抽出した後、有機層をチオ硫酸ナトリ
ウム水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで
乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮後
シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより
精製して、2,2-ジフルオロフェニル酢酸エチ
(B-1)の146mg(0.73mmol)を得た。収率は73%であった
。
[例3~11]
原料として表2に記載した化合物(A)を用い。
反応条件を表2に記載したものに変更するこ
以外は、例2の方法と同じ方法で反応を実施
た。得られた化合物(B)と収率を表2に示す。
実施例で製造した化合物の同定資料を以下
示す。
化合物(B-1): 1
H-NMR(400MHz、溶媒:CDCl 3
、基準:TMS)δ(ppm):1.31(t、3H、7.2Hz)、4.3(q、2H、7.
2Hz)、7.44~7.52(m、3H)、7.60~7.62(m、2H)。 19
F-NMR(376MHz、溶媒CDCl 3
、基準:CFCl 3
)δ(ppm):-104.5(s、2F)。
化合物(B-2): 1 H-NMR(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):2.3(t、3H、1.5Hz)、7.45~7.56(m、5H )。 19 F-NMR(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-107.4(s、2F)。
化合物(B-3): 1 H-NMR(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):7.53~7.69(m、5H)。 19 F-NMR(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-83.8(s、2F)。
化合物(B-4): 1 H-NMR(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):1.23(t、3H、7.3Hz)、4.3(q、2H、7. 3Hz)、7.5~7.6(m、3H)、7.85~7.98(m、3H)、8.2(d、1H、8. 4Hz)。 19 F-NMR(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-100.7(s、2F)。
化合物(B-5): 1 H-NMR(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):6.8~7.0(m、2H)、7.46―7.61(m、5H) 7.79―7.85(m、1H)。 19 F-NMR(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-102.7~-102.6(m、1F)、-100.6(s、1F)、-100.6(s 1F)、-100.1~-100.2(m、1F)。
化合物(B-6): 1
H-NMR(オルト体)(400MHz、溶媒:CDCl 3
、基準:TMS)δ(ppm):1.33(t、3H、7.4Hz)、4.36(q、2H、7
.2Hz)、7.34―7.65(m、3H)、7.74(d、1H、7.8Hz)。
19
F-NMR(オルト体)(376MHz、溶媒CDCl 3
、基準:CFCl 3
)δ(ppm):-102.51(s、2F)。 1
H-NMR(パラ体)(400MHz、溶媒:CDCl 3
、基準:TMS)δ(ppm):1.31(t、3H、7.3Hz)、4.36(q、2H、7
.2Hz)、7.48(d、2H、8.4Hz)、7.60(d、2H、8.5Hz)。 19
F-NMR(パラ体)(376MHz、溶媒CDCl 3
、基準:CFCl 3
)δ(ppm):-104.73(s、2F)。
化合物(B-7): 1 H-NMR(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):1.36(t、3H、7.3Hz)、4.37(q、2H、7 .1Hz)、7.07(t、1H、4.3Hz)、7.40(s、1H)、7.49(d、1H、 5.0Hz)。 19 F-NMR(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-93.45(s、2F)。
化合物(B-8): 1 H-NMR(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):7.42~7.48(m、5H)、7.57~7.63(m、3H) 8.03(d、2H、8.0Hz)。 19 F-NMR(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-98.2(s、2F)。
化合物(B-9): 1 H-NMR(オルト体)(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):1.35(s、9H、)、7.40―7.60(m、4H) 19 F-NMR(オルト体)(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-85.41(t、3F、2.2Hz)、-115.29(q、2F、2.1Hz)。 1 H-NMR(パラ体)(400MHz、溶媒:CDCl 3 、基準:TMS)δ(ppm):1.35(s、9H、)、7.52(s、4H)。 19 F-NMR(パラ体)(376MHz、溶媒CDCl 3 、基準:CFCl 3 )δ(ppm):-85.43(t、3F、2.1Hz)、-115.18(t、2F、1.8Hz)。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照
て説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱
ることなく様々な変更や修正を加えること
できることは当業者にとって明らかである
本出願は、2008年2月15日出願の日本特許出願
2008-034626に基づくものであり、その内容はこ
に参照として取り込まれる。
本発明の製造方法によって得られる2つの フッ素原子が結合した炭素原子を有するフル オロ化合物は、例えば医薬や農薬などの合成 中間体として有用である。