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Title:
METHOD OF PRODUCING HARD BUTTER
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/031679
Kind Code:
A1
Abstract:
A method of producing a hard butter which comprises conducting an ester exchange reaction by treating one or more substances selected from among straight-chain saturated fatty acids having 16 to 22 carbon atoms and lower alcohol esters of the same and a triglyceride having an oleoyl group and/or a linoloyl at the 2-position with a granulated lipase powder containing lipase originating in Rhizopus oryzae and/or Rhizopus delemar and soybean flour, and, after the completion of the reaction, removing the lipase powder. This method is industrially suitable for producing a hard butter which has excellent properties as a substitute for cacao butter.

Inventors:
ARIMOTO SHIN (JP)
UEHARA HIDETAKA (JP)
SUGANUMA TOMOMI (JP)
TSUCHIYA KINYA (JP)
NEGISHI SATOSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/066172
Publication Date:
March 12, 2009
Filing Date:
September 08, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NISSHIN OILLIO GROUP LTD (JP)
ARIMOTO SHIN (JP)
UEHARA HIDETAKA (JP)
SUGANUMA TOMOMI (JP)
TSUCHIYA KINYA (JP)
NEGISHI SATOSHI (JP)
International Classes:
A23D9/00; C11C3/10; C12P7/64
Domestic Patent References:
WO2003000832A12003-01-03
WO1996010643A11996-04-11
WO2003000832A12003-01-03
Foreign References:
JPS6261589A1987-03-18
JPH07155107A1995-06-20
JPH11246893A1999-09-14
JPS5571797A1980-05-30
JPH0369516B21991-11-01
JPH069465B21994-02-09
Other References:
See also references of EP 2204097A4
Attorney, Agent or Firm:
KUMAKURA, Yoshio et al. (Shin-Tokyo Bldg.3-1, Marunouchi 3-chom, Chiyoda-ku Tokyo 55, JP)
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Claims:
 炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸及びその低級アルコールエステルから選ばれる1種以上と2位にオレオイル基及び/又はリノロイル基を有するトリグリセリドに、Rhizopus oryzae由来及び/又はRhizopus delemar由来のリパーゼと大豆粉末とを含有する造粒粉末リパーゼを作用させてエステル交換反応を行い、反応後、粉末リパーゼを除去することを特徴とするハードバターの製造方法。
 炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸及びその低級アルコールエステルから選ばれる1種以上のものとして、ステアリン酸及び/又はその低級アルコールエステルを用い、1,3-ジステアロイル-2-オレオイルグリセリン及び/又は1,3-ジステアロイル-2-リノロイルグリセリンに富んだハードバターを製造する請求項1記載の製造方法。
 炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸及びその低級アルコールエステルから選ばれる1種以上のものとして、パルミチン酸又はその低級アルコールエステルとステアリン酸又はその低級アルコールエステルとの混合物を用い、2位にオレオイル基及び/又はリノロイル基を有しパルミトイル基とステアロイル基を各1基づつ有するトリグリセリドに富んだハードバターを製造する請求項1記載の製造方法。
 2位にオレオイル基を有するトリグリセリドが、シア脂低融点部分、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイック紅花油、ハイオレイックローリノレン菜種油、パーム油又はパーム分別油から選ばれる1種以上である請求項1~3のいずれか1項記載の製造方法。
 大豆粉末が脂肪含有量5質量%以上のものである請求項1~4のいずれか1項記載の製造方法。
 大豆粉末の脂肪含有量が10~25質量%である請求項5記載の製造方法。
 大豆粉末が、全脂大豆粉である請求項1~6のいずれか1項記載の製造方法。
 粉末リパーゼの90質量%以上が粒径1~100μmである請求項1~7のいずれか1項記載の製造方法。
 粉末リパーゼを除去した後、蒸留、分別及び精製を行う請求項1~8のいずれか1項記載の製造方法。
 炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸及びその低級アルコールエステルが炭素数が異なる2種類以上の脂肪酸を使用するエステル交換において、直鎖飽和脂肪酸及びその低級アルコールエステルの炭素数16、18、20,22の脂肪酸毎の質量百分率の値と2位にオレオイル基及び/又はリノロイル基を有するトリグリセリドの1及び3位の炭素数16、18、20、22の脂肪酸残基毎の質量百分率の値の乖離が10%以内であることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項記載の製造方法。
Description:
ハードバターの製造方法

 本発明は、1,3位に炭素数16~22の飽和脂肪酸 基、2位にオレオイル基を有するトリグリセ ド(F MS OF MS )の製造方法、特にカカオ脂の代用脂(CBE)とし て優れるハードバターの製造方法に関するも のである。本発明は、又、1,3位に炭素数16~22 飽和脂肪酸残基、2位にリノロイル基(リノ ル酸残基)を有するトリグリセリド(F MS LF MS )の製造方法、特にチョコレートの硬度調整 として優れるハードバターの製造方法に関 るものである。

(発明の背景)
 カカオ脂をはじめとするハードバターは、 ョコレートを主とした製菓、製パンなどの 品および医薬品、化粧品などに広く用いら ている。これらのハードバターは、1,3-ジパ ルミトイル-2-オレオイルグリセリン(POP)、2位 にオレオイル基を有しパルミトイル基とステ アロイル基を各1基づつ有するトリグリセリ (POS)及び1,3-ジステアロイル-2-オレオイルグ セリン(SOS)などの分子内に1つの不飽和結合 有するトリグリセリド類(F MS OF MS )を主成分としている。又、チョコレートの 度調整剤として優れる1,3-ジステアロイル-2- ノロイルグリセリン(SLS)などの分子内に2つ 不飽和結合を有するトリグリセリド類も知 れている。
 一般的に、このようなトリグリセリドは、 の成分を含む天然の油脂、例えばパーム油 シア脂、サル脂、イリッペ脂などの油脂ま はその分画油として得ることができる。こ らのうち、POPに富む油脂としてはパーム油 、POSに富む油脂としてはイリッペ脂が、SOS 富む油脂としてはシア脂、サル脂などが用 られる。カカオ脂代用脂などのハードバタ としてはこれらをそのままもしくは適宜配 して用いられるのが一般的である。しかし がら、シア脂、サル脂、イリッペ脂などは 生種であるため、天候などによって、その 穫量や価格が大きく変動し、最悪の場合に 必要量が確保できないとの問題がある。

 そこで、上記トリグリセドを、パーム油、 ア脂、サル脂、イリッペ脂などの油脂の分 油としてではなくて、特定の油脂に1,3選択 リパーゼを作用させ、エステル交換反応を 用して製造する方法が提案されている(特許 文献1~5)。これらの文献には、1,3選択性リパ ゼとして、リゾプス系リパーゼ、アスペル ルス系リパーゼ、ムコール系リパーゼ、パ クレアチックリパーゼ、米ヌカリパーゼを いることが記載されている。
 また、一般的に上記のようなエステル交換 応の場合、反応後の脂肪酸を回収して、水 添加して再利用される。この場合、POSのよ な1,3位が異なるトリグリセリドを製造する 的で複数種類の脂肪酸を原料に使用する場 、回収した脂肪酸原料の組成をリバランス るために、回収脂肪酸原料を分析し、不足 る脂肪酸原料を加える工程が必要となる。
 しかしながら、より効率的で、より工業的 適したカカオ脂代用ハードバターの製造方 が望まれている。

特開昭55-071797

特公平03-069516

特公平06-009465

WO96/10643

WO03/000832

 本発明は、カカオ脂の代用脂として優れた 性を有するハードバターの工業的に適した 造方法を提供することを目的とする。
 本発明は、カカオ脂の代用脂として優れた 性を有するハードバターの工業的に適した 造方法を提供するに当り、さらに、反応の 択性と反応効率が向上した製造方法を提供 ることを目的とする。
 本発明は、又、カカオ脂の代用脂として優 た特性を有するハードバターの工業的に適 た製造方法であって、脂肪酸原料のリバラ スを行わない簡便な製造方法を提供するこ を目的とする。

 本発明は、炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸及 その低級アルコールエステルから選ばれる1 以上と2位にオレオイル基及び/又はリノロ ル基を有するトリグリセリドを、特定のリ ーゼを蛋白質を含有する特定の材料で造粒 てなる造粒粉末リパーゼの作用を利用して ステル交換反応に供すると、上記課題を解 できるとの知見に基づいてなされたのであ 。
 すなわち、本発明は、炭素数16~22の直鎖飽 脂肪酸及びその低級アルコールエステルか 選ばれる1種以上と2位にオレオイル基及び/ はリノロイル基を有するトリグリセリドに Rhizopus oryzae由来及び/又はRhizopus delemar由来 リパーゼと大豆粉末とを含有する造粒粉末 パーゼを作用させてエステル交換反応を行 、反応後、粉末リパーゼを除去することを 徴とするハードバターの製造方法を提供す 。
 本発明は、又、1位と3位が異なる直鎖飽和 肪酸であるトリグリセリドの製造方法を提 する。また、その製造方法において、直鎖 和脂肪酸及びその低級アルコールエステル 炭素数16、18、20,22の脂肪酸毎の質量百分率 値と2位にオレオイル基及び/又はリノロイル 基を有するトリグリセリドの1及び3位の炭素 16、18、20、22の脂肪酸残基毎の質量百分率 値の乖離が10%以内であることで、回収して 用する原料脂肪酸及びその低級アルコール ステルのリバランスを不要とする製造方法 提供する。

 本発明によれば、ステアリン酸又は、ステ リン酸の低級アルコールエステルを用いる 、簡易にかつ効率的に、SOS及び/又はSLSに富 む油脂を得ることができる。また、ベヘン酸 又は、ベヘン酸の低級アルコールエステルを 用いると、1,3-ベヘニル-2-オレオイルグリセ ン(BOB)及び/又は1,3-ベヘニル-2-リノロイルグ セリン(BLB)に富んだ油脂を得ることができ 。同様に、ステアリン酸とパルミチン酸の 合物又は、ステアリン酸の低級アルコール ステルとパルミチン酸の低級アルコールエ テルの混合物を用いると、製造が困難なPOS び/又はPLSに富む油脂を得ることができる。 、パルミチン酸の低級アルコールエステル 用いるとPOP及び/又はPLPに富む油脂を得るこ とができるので、これらのようにして得られ た、SOSに富む油脂、BOBに富む油脂、POSに富む 油脂、POPに富む油脂、SLSに富む油脂、BLBに富 む油脂、PLSに富む油脂、及びPLPに富む油脂を それぞれ単独で、又は所望の比率で混合して 、カカオ脂に近い性能のカカオ脂代用ハード バターを得ることや、カカオ脂とは違った新 しい特性のカカオ脂代用ハードバターを得る ことができる。このようなハードバターは、 特に、カカオ脂及び甘味料と組み合わせるこ とによって、優れたチョコレート製品を提供 することができる。
 本発明によれば、1位と3位が異なる直鎖飽 脂肪酸基であるトリグリセリドを製造する 合、回収して使用する原料脂肪酸及びその 級アルコールエステルのリバランスを不要 することができ、簡便な製造方法となり、 た、回収した脂肪酸及びその低級アルコー エステル中の特定の脂肪酸が過剰とならな ため、回収した脂肪酸及びその低級アルコ ルエステルの一部を廃棄せずに使用するこ ができるために原料効率のよい製造方法を 供することができる。

 本発明でハードバターを製造するために用 る原料油脂としては、2位にオレオイル基及 び/又はリノロイル基を有するトリグリセリ 又はこれに富む油脂が好ましいものとして げられる。特に、SOOやPOOのように1位及び3位 に導入する飽和脂肪酸基を1位又は3位のいず か1方にあらかじめ有するトリグリセリドを 一定量(好ましくは1~70質量%)含む油脂が、後 する飽和脂肪酸又は飽和脂肪酸の低級アル ールエステルの必要量が少なくてすむため ましい。具体的に、2位にオレオイル基を有 るトリグリセリド又は油脂として、1,3-ジラ ウロイル-2-オレオイルグリセリン、1,3-ジミ ストイル-2-オレオイルグリセリン、トリオ オイルグリセリン、シア脂低融点部分(例え 、ヨウ素価70~80)、ハイオレイックヒマワリ 、ハイオレイック紅花油、ハイオレイック ーリノレン菜種油、パーム油、パーム分画 、これらの混合油などがあげられる。また 2位にリノロイル基を有する油脂としてハイ リノールサフラワー油、大豆油、グレープシ ードオイルなどがあげられる。
 これらのうち、上記シア脂低融点部分、ハ オレイックヒマワリ油、ハイオレイックロ リノレン菜種油、パーム油、パーム分画油 好ましい。特に、SOSに富んだハードバター 製造するには、シア脂低融点部分やハイオ イックヒマワリ油を用いるのが好ましく、P OSに富んだハードバターを製造するには、パ ム分画油、特にパーム油を2回分画して得た POP及びPOOの合計含有量が40質量%以上(好まし は95質量%以下)であるパーム分画油を用いる が好ましい。また、PLPに富んだハードバタ やSLSに富んだハードバターを製造するには ハイリノールサフラワー油が好ましい。
 炭素数16から22の飽和脂肪酸としては、ステ アリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸が好まし い。
 炭素数16から22の飽和脂肪酸の低級アルコー ルエステルにおける低級アルコールとしては 、炭素数1~6のアルコールであるのが好ましく 、特に、メタノール、エタノール、イソプロ ピルアルコールが好ましく、このなかでもエ タノールが好ましい。
 2位にオレオイル基を有するトリグリセリド 対炭素数16から22の飽和脂肪酸及び/又はその 級アルコールエステルの使用比率(モル比) 、1/2以下であるのが好ましく、特に、1/2~1/30 であるのが好ましい。

 本発明では、炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸 びその低級アルコールエステルから選ばれ 1種以上のものとして、ステアリン酸及び/又 はその低級アルコールエステルを用いて、1,3 -ジステアロイル-2-オレオイルグリセリン(SOS) 及び/又は1,3-ジステアロイル-2-リノロイルグ セリン(SLS)に富んだハードバターを製造す のが好ましい。又、ステアリン酸及び/又は の低級アルコールエステルの代わりに、パ ミチン酸又はその低級アルコールエステル 用いて、1,3-ジパルミトイル-2-オレオイルグ リセリン(POP)及び/又は1,3-ジパルミトイル-2- ノロイルグリセリン(PLP)に富んだハードバタ ーを製造するのも好ましい。又、ベヘン酸又 はその低級アルコールエステルを用いて、1,3 -ジベヘニル-2-オレオイルグリセリン(BOB)及び /又は1,3-ジベヘニル-2-リノロイルグリセリン( BLB)に富んだハードバターを製造するのも好 しい。
 本発明では、さらに、炭素数16~22の直鎖飽 脂肪酸及びその低級アルコールエステルか 選ばれる1種以上のものとして、パルミチン 又はその低級アルコールエステルとステア ン酸又はその低級アルコールエステルとの 合物を用い、2位にオレオイル基及び/又は ノロイル基を有しパルミトイル基とステア イル基を各1基づつ有するトリグリセリド(POS 及び/又はPLS)に富んだハードバターを製造す のが好ましい。
 本発明では、同様に、炭素数16~22の直鎖飽 脂肪酸及びその低級アルコールエステルか 選ばれる1種以上のものとして、ベヘン酸又 その低級アルコールエステルとパルミチン 又はその低級アルコールエステルとの混合 を用い、2位にオレオイル基及び/又はリノ イル基を有しベヘニル基とパルミトイル基 各1基づつ有するトリグリセリド(BOP及び/又 BLP)に富んだハードバターを製造するのが好 しい。

 また、炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸及びそ 低級アルコールエステルから選ばれる1種以 のものとして、ベヘン酸又はその低級アル ールエステルとステアリン酸又はその低級 ルコールエステルとの混合物を用い、2位に オレオイル基及び/又はリノロイル基を有し ヘニル基とステアロイル基を各1基づつ有す トリグリセリド(BOS及び/又はBLS)に富んだハ ドバターを製造するのが好ましい。
 ここで、「SOS及び/又はSLSに富んだハードバ ター」とは、ハードバターを構成する全トリ グリセド種中で、1,3-ジステアロイル-2-オレ イルグリセリン及び/又は1,3-ジステアロイル -2-リノロイルグリセリンを10質量%以上含むこ とをいい、好ましくは一番多い量のトリグリ セド種がSOS及び/又はSLSにであることをいう ここで上限は、90質量%であるのが好ましい 「POS及び/又はPLSに富んだ」とは、ハードバ ーを構成する全トリグリセド種中で、POS及 /又はPLSを10質量%以上含むことをいい、好ま しくは一番多い量のトリグリセド種が、POS及 び/又はPLSであることをいう。ここで上限は 90質量%であるのが好ましい。

 本発明では、炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸 びその低級アルコールエステルが炭素数が なる2種類以上の脂肪酸を使用するエステル 換において、その比率を変えることでPOP及 /又はPLPのような対称型の2位にオレオイル 及び/又はリノロイル基を有するトリグリセ ドとPOS及び/又はPLSのような非対称型の2位 オレオイル基及び/又はリノロイル基を有す トリグリセリドの割合を変化させることが きる。一方、本発明では、エステル交換後 反応系中に残存する脂肪酸及びその低級ア コールエステルを必要に応じて水素添加し 再利用できる。
 再利用する場合、再利用する脂肪酸および の低級アルコールエステルの脂肪酸組成と2 位にオレオイル基を有するトリグリセリドの 1,3位の脂肪酸組成が同じであると脂肪酸のリ バランスが不要になる利点がある。直鎖飽和 脂肪酸及びその低級アルコールエステルの炭 素数16、18、20,22の脂肪酸毎の質量百分率の値 と2位にオレオイル基を有するトリグリセリ の1及び3位の炭素数16、18、20、22の脂肪酸残 毎の質量百分率の値の乖離が10%以内である とが好ましい。さらに、乖離が5%以内であ ことがより好ましく、乖離が3%以内が最も好 ましい。例えば、1位及び3位の炭素数16の脂 酸が50質量%で炭素数18の脂肪酸が50質量%のパ ーム分別油とパルミチン酸エチルエステル、 ステアリン酸エチルエステルをエステル交換 する場合は、使用するパルミチン酸エチルエ ステル35~65質量%とステアリン酸エチルエステ ル65~35質量%の混合物を用いるのが好ましい。

 本発明で用いるリパーゼとしては、リゾプ 属のリゾプス デレマー(Rhizopus delemar)及び ゾプス オリザエ(Rhizopus oryzae)が使用でき 。1,3-特異性リパーゼであるのが好ましい。
 これらのリパーゼとしては、ロビン社の商 :ピカンターゼR8000や、天野エンザイム社の 品:リパーゼF-AP15等が挙げられるが、最も適 したリパーゼとしては Rhizopus oryzae由来、天 野エンザイム社の商品:リパーゼDF“Amano”15-K (リパーゼDともいう)が挙げられる。このもの は粉末リパーゼである。なお、このリパーゼ DF“Amano”15-Kについては、従来Rhizopus delemar 来の表記であった。
 本発明で使用するリパーゼとしては、リパ ゼの培地成分等を含有したリパーゼ含有水 液を乾燥して得られたものでもよい。本発 では、粉末リパーゼとしては、球状で、水 含量が10質量%以下であるものを用いるのが ましい。特に、リパーゼ粉末の90質量%以上 粒径1~100μmであるのが好ましい。又、pHが6~7 .5に調整されてなるリパーゼ含有水溶液を噴 乾燥して製造されるものが好ましい。
 本発明では、大豆粉末を用いて上記リパー を造粒し、粉末化した造粒粉末リパーゼ(粉 末リパーゼともいう)を用いる。

 ここで、大豆粉末としては、脂肪含有量が5 質量%以上である大豆粉末を用いるのが好ま い。脂肪含有量が5質量%以上である大豆粉末 としては、脂肪含有量が10質量%以上であるの が好ましく、さらに15質量%以上であるのが好 ましく、一方、25質量%以下であるのが好まし い。特に脂肪含有量が18~23質量%である大豆粉 末が好ましい。
 ここで、脂肪としては脂肪酸トリグリセリ 及びその類縁体があげられる。大豆の脂肪 量は、ソックスレー抽出法などの方法によ 容易に測定することができる。
 本発明では、このような大豆粉末として、 脂大豆粉を用いることができる。また大豆 末の原料として豆乳を用いることもできる 大豆粉末は、大豆を常法により粉砕して製 することができ、その粒径は0.1~600μm程度で あるのが好ましい。粒径は、粉末リパーゼの 粒径の測定方法と同様の方法により測定する ことができる。
 リパーゼに対する大豆粉末の使用量は、質 基準で0.1~200倍の量であるのが好ましく、0.1 ~20倍の量であるのがより好ましく、0.1~10倍の 量が最も好ましい。

 本発明で用いる粉末リパーゼは、水分含量 10質量%以下であるのが好ましく、特に、1~8 量%であるのが好ましい。
 本発明で用いる粉末リパーゼの粒径は任意 することができるが、粉末リパーゼの90質 %以上が粒径1~100μmであるのが好ましい。平 粒径は10~80μmが好ましい。又、粉末リパーゼ の形状は球状であるのが好ましい。
 粉末リパーゼの粒径は、例えば、HORIBA社の 度分布測定装置(LA-500)を用いて測定するこ ができる。
 本発明で用いる粉末リパーゼは、リパーゼ び大豆粉末を溶解・分散させた水溶液を、 プレードライ、フリーズドライ、及び溶剤 澱・乾燥の中から選ばれるいずれか1種の乾 燥方法で乾燥し、製造することができる。
 ここで、リパーゼ及び大豆粉末を溶解・分 させた水溶液は、リパーゼ粉末と大豆粉末 水に溶解・分散させたり、大豆粉末が溶解 分散した水溶液にリパーゼ粉末を混合した 、又は、後に説明するリパーゼ含有水溶液 大豆粉末を混合することにより得ることが きる。

 リパーゼ及び大豆粉末を溶解・分散させた 溶液を乾燥させる過程では、リパーゼ及び/ 又は大豆粉末の粒子が凝集して、リパーゼ及 び大豆粉末を含有する造粒物が形成される。 この造粒物は、リパーゼの培地成分を含んで いてもよい。
 このようにして調製した粉末リパーゼは、 のままエステル交換に使用することができ 。
 リパーゼ及び大豆粉末を溶解・分散させた 溶液中の水の量は、リパーゼ及び大豆粉末 の合計質量に対して水の質量を調整する。 体的には、リパーゼ及び大豆粉末との合計 量に対する水の質量が、0.5~1,000倍であるの 好ましく、1.0~500倍であるのがより好ましく 、3.0~100倍が最も好ましい。
 特に、スプレードライにより粉末リパーゼ 製造する場合は、装置の特性からリパーゼ び大豆粉末との合計質量に対する水の質量 、2.0~1,000倍であるのが好ましく、2.0~500倍で あるのがより好ましく、3.0~100倍が最も好ま い。
 なお、リパーゼ含有水溶液を原料として使 する場合で、リパーゼ含有水溶液中のリパ ゼ含量が不明な時は、フリーズドライ、そ 他の減圧乾燥によりリパーゼ含有水溶液を 末化してリパーゼ含量を求め、リパーゼ質 を算出することができる。

 ここで、リパーゼ含有水溶液としては、菌 を除去したリパーゼ培養液、精製培養液、 れらから得たリパーゼを再度水に溶解・分 させたもの、市販の粉末リパーゼを再度水 溶解・分散させたもの、市販の液状リパー 等が挙げられる。さらに、リパーゼ活性を り高めるために塩類等の低分子成分を除去 たものがより好ましく、また、粉末性状を り高めるために糖等の低分子成分を除去し ものがより好ましい。
 リパーゼ培養液としては、例えば、大豆粉 ペプトン、コーン・ステープ・リカー、K 2 HPO 4 、(NH 4 ) 2 SO 4 、MgSO 4 ・7H 2 O等含有する水溶液があげられる。これらの 度としては、大豆粉0.1~20質量%、好ましくは1 .0~10質量%、ペプトン0.1~30質量%、好ましくは0. 5~10質量%、コーン・ステープ・リカー0.1~30質 %、好ましくは0.5~10質量%、K 2 HPO 4  0.01~20質量%、好ましくは0.1~5質量%である。 、(NH 4 ) 2 SO 4 は0.01~20質量%、好ましくは0.05~5質量%、MgSO 4 ・7H 2 Oは0.01~20質量%、好ましくは0.05~5質量%である 培養条件は、培養温度は10~40℃、好ましくは 20~35℃、通気量は0.1~2.0VVM、好ましくは0.1~1.5VV M、攪拌回転数は100~800rpm、好ましくは200~400rpm 、pHは3.0~10.0、好ましくは4.0~9.5に制御するの よい。

 菌体の分離は、遠心分離、膜濾過などで行 のが好ましい。また、塩類や糖等の低分子 分の除去は、UF膜処理により行うことがで る。具体的には、UF膜処理を行い、リパーゼ を含有する水溶液を1/2量の体積に濃縮後、濃 縮液と同量のリン酸バッファーを添加すると いう操作を1~5回繰り返すことにより、低分子 成分を除去したリパーゼ含有水溶液を得るこ とができる。
 遠心分離は200~20,000×g、膜濾過はMF膜、フィ タープレスなどで圧力を3.0kg/m 2 以下にコントロールするのが好ましい。菌体 内酵素の場合は、ホモジナイザー、ワーリン グブレンダー、超音波破砕、フレンチプレス 、ボールミル等で細胞破砕し、遠心分離、膜 濾過などで細胞残さを除去することが好まし い。ホモジナイザーの攪拌回転数は500~30,000rp m、好ましくは1,000~15,000rpm、ワーリングブレ ダーの回転数は500~10,000rpm、好ましくは1,000~5 ,000rpmである。攪拌時間は0.5~10分、好ましく 1~5分がよい。超音波破砕は1~50kHz、好ましく 10~20kHzの条件で行うのが良い。ボールミル 直径0.1~0.5mm程度のガラス製小球を用いるの よい。
 乾燥工程前の途中の工程において、リパー 含有水溶液を濃縮してもよい。濃縮方法は 特に限定されるものではないが、エバポレ ター、フラッシュエバポレーター、UF膜濃 、MF膜濃縮、無機塩類による塩析、溶剤によ る沈殿法、イオン交換セルロース等による吸 着法、吸水性ゲルによる吸水法等があげられ る。好ましくはUF膜濃縮、エバポレーターが い。UF膜濃縮用モジュールとしては、分画 子量3,000~100,000、好ましくは6,000~50,000の平膜 たは中空糸膜、材質はポリアクリルニトリ 系、ポリスルフォン系などが好ましい。

 次に、リパーゼ及び大豆粉末を溶解・分散 せた水溶液を乾燥する方法であるスプレー ライ、フリーズドライ、又は溶剤沈澱・乾 について説明する。
 スプレードライは、例えば、ノズル向流式 デイスク向流式、ノズル並流式、デイスク 流式等の噴霧乾燥機を用いて行うのがよい 好ましくはデイスク並流式が良く、アトマ ザー回転数は4,000~20,000rpm、加熱は入口温度1 00~200℃、出口温度40~100℃で制御してスプレー ドライするのが好ましい。特に、リパーゼと 大豆粉末を含有する水溶液の温度を20~40℃に 整し、次いで70℃~130℃の乾燥雰囲気内に噴 するのが好ましい。又、乾燥前に水溶液のp Hを7.5~8.5に調整しておくのが好ましい。
 フリーズドライ(凍結乾燥)は、例えば、ラ サイズの少量用凍結乾燥機、棚段式凍結乾 により行うのが好ましい。さらに、減圧乾 により調製することもできる。

 溶剤沈殿・乾燥は、リパーゼ及び大豆粉末 溶解・分散させた水溶液を、使用する溶剤 徐々に添加して沈殿物を生成させ、得られ 沈殿物を遠心分離機を用いて遠心分離を行 て沈殿を回収した後、減圧乾燥する。一連 操作は、粉末リパーゼの変性・劣化を防止 るために、室温以下の低温条件下で行うの 好ましい。
 溶剤沈澱で用いる溶剤として、例えば、エ ノール、アセトン、メタノール、イソプロ ルアルコール、及びヘキサン等の水溶性溶 又は親水性溶剤が挙げられ、これらの混合 剤も使用することができる。その中でも粉 リパーゼの活性をより高めるために、エタ ール又はアセトンを用いることが好ましい
 使用する溶剤の量は特に限定されないが、 パーゼ及び大豆粉末を溶解・分散させた水 液の体積に対し、1~100倍の体積の溶剤を使 するのが好ましく、2~10倍の体積の溶剤を使 するのがより好ましい。
 また、溶剤沈澱した後、沈殿物は静置後に 過により得ることができるが、1,000~3,000×g 度の軽度な遠心分離により得ることもでき 。得られた沈殿物の乾燥は、例えば、減圧 燥により行うことができる。

 本発明では、粉末リパーゼを製造する過程 、脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸をさらに 添加してもよい。具体的には、リパーゼ及び 大豆粉末を溶解・分散させた水溶液に、脂肪 酸エステル及び/又は脂肪酸を接触させた後 乾燥することにより得ることができる。
 このような脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸 の接触を行うことにより、リパーゼ活性及び 安定性をより向上させることができる。
 使用する脂肪酸エステルとしては、モノア コール又は多価アルコールと脂肪酸との脂 酸エステルが挙げられる。多価アルコール 脂肪酸エステルは、部分エステルでも良く フルエステルでも良い。
 ここで、モノアルコールとしてはアルキル ノアルコール、フィトステロール等のステ ール類が挙げられる。アルキルモノアルコ ルを構成するアルキル部分は、炭素数が6~12 の中鎖アルキル又は炭素数が13~22の長鎖アル ルであるのが好ましく、飽和でも不飽和で よく、直鎖でも分岐鎖でもよい。フィトス ロールとしては、例えばシトステロール、 チグマステロール、カンペステロール、フ ステロール、スピナステロール、ブラシカ テロール等が好ましい。また、多価アルコ ルとしては、グリセリン、ジグリセリンや カグリセリン等のグリセリン縮合物、プロ レングリコール等のグリコール類、ソルビ ール等が挙げられる。
 使用する脂肪酸エステルの構成脂肪酸、及 使用する脂肪酸は、特に限定されないが、 脂由来の脂肪酸であることが好ましい。例 ば、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、 ンデカン酸等の炭素数が6~12の中鎖脂肪酸、 オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシ ノール酸、エルシン酸等の炭素数が13~22の長 不飽和脂肪酸が挙げられる。
 その他、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸 オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン 等の長鎖飽和脂肪酸も挙げられる。

 使用する脂肪酸エステルとしては、油脂、 脂由来の脂肪酸を構成成分とするジグリセ ド、モノグリセリドから選ばれる1種又は2 以上が好ましい。また、脂肪酸エステルの 部を加水分解することにより得られる、部 エステルと脂肪酸の混合物を使用すること できる。
 なお、粉末リパーゼに使用する脂肪酸エス ル及び脂肪酸は、粉末リパーゼを用いて行 エステル交換やエステル化に使用する原料 同じものを選択するのが好ましい。
 ここで、脂肪酸エステルとして使用する油 は、特に限定されないが、加水分解反応及 エステル化反応を行うことで粉末リパーゼ 製造する場合は、反応温度において液体の 脂を使用することが好ましい。
 油脂として、例えば、菜種油、ひまわり油 オリーブ油、コーン油、ヤシ油、ゴマ油、 花油、大豆油、それらのハイオレイン品種 油脂、綿実油、米油、アマニ油、パーム油 パーム油の分別油、パーム核油、つばき油 カカオ脂、シア脂、シア脂の分別脂、サル 、サル脂の分別脂、及びイリッペ脂等など 植物性油脂、トリオレイン(トリオレイン酸 グリセリド)、トリカプリリン(トリオクタン グリセリド)、トリアセチン(トリ酢酸グリ リド)、トリブチリン(トリブタン酸グリセリ ド)などのトリグリセリド(合成油脂)、魚油、 牛脂、ラード等の動物性油脂といった油脂の 1種又は2種以上の混合物があげられる。これ の中でも植物性油脂が好ましい。

 脂肪酸エステル、又は脂肪酸エステルと脂 酸を原料として使用する場合、リパーゼ及 大豆粉末を溶解・分散させた水溶液に、脂 酸エステル、又は脂肪酸エステルと脂肪酸 添加して接触させ、スターラーやスリーワ モーター等で均一に攪拌して加水分解及び/ 又は乳化・分散させた後に、スプレードライ 、フリーズドライ又は溶剤沈殿・乾燥から選 ばれる1種の乾燥方法で乾燥することで、粉 リパーゼを製造することができる。
 ここで、乾燥を、エステル化反応を伴う脱 により行うこともできる。すなわち、加水 解及び/又は乳化・分散させた後、続いて脱 水しながらエステル化反応を行い、必要に応 じて未反応物等の油分を濾過することにより 、粉末リパーゼを製造することができる。

 粉末リパーゼの製造に使用する脂肪酸エス ル及び/又は脂肪酸の添加量は、リパーゼ及 び大豆粉末の合計質量に対して0.1~500倍の質 であるのが好ましく、0.2~100倍の質量である がより好ましく、0.3~50倍の質量が最も好ま い。
 ただし、スプレードライを使って粉末リパ ゼを製造する場合、使用する脂肪酸エステ 及び/又は脂肪酸の添加量は、リパーゼ及び 大豆粉末の合計質量に対して0.1~10倍の質量で あるのが好ましく、0.2~10倍の質量であるのが より好ましく、0.3~10倍の質量が最も好ましい 。
 スプレードライを使用する場合、脂肪酸エ テル及び/又は脂肪酸の添加量が多くなると 、水分の蒸発が不完全になったり、得られる 粉末リパーゼが過剰な脂肪酸エステル及び/ は脂肪酸により回収しにくくなる等の問題 発生するからである。
 スプレードライの装置の改良や回収形態の 更により、使用する脂肪酸エステル及び/又 は脂肪酸の添加量の上限値を高くすることも できるが、必要以上に脂肪酸エステル及び/ は脂肪酸を含有すると濾過等の工程が必要 なる。
 脂肪酸エステル及び/又は脂肪酸を含有する 粉末リパーゼを、溶剤沈殿を用いて製造する 場合、使用する溶剤の量は、脂肪酸エステル 及び/又は脂肪酸と、リパーゼ及び大豆粉末 溶解・分散させた水溶液とを合計した全質 の値に対し、1~100倍の値の体積の溶剤を使用 するのが好ましく、2~10倍の体積の溶剤を使 するのがより好ましい。
 溶剤沈殿を行う前に、後に説明する濾過助 を添加した場合には、更に濾過助剤を加え 質量を全質量として、溶剤を使用する。

 粉末リパーゼの製造工程には、更に、濾過 剤を添加する工程を含むことができる。
 使用できる濾過助剤としては、シリカゲル セライト、セルロース、でんぷん、デキス リン、活性炭、活性白土、カオリン、ベン ナイト、タルク、砂等があげられる。この ち、シリカゲル、セライト、セルロースが ましい。濾過助剤の粒径は任意でよいが、1 ~100μmが好ましく、5~50μmが特に好ましい。
 エステル交換反応前後又は反応中に使用で る濾過助剤は、リパーゼ及び大豆粉末の合 質量に対し1~500質量%の量を添加することが ましく、10~200質量%の量を添加することがさ らに好ましい。この範囲の量を使用すると、 濾過時の負担がより小さくなり、大規模な濾 過設備や高度な遠心分離等の濾過前処理を必 要としないからである。

 また、粉末リパーゼ中に濾過助剤を含有さ ることもできる。スプレードライ又はフリ ズドライにより乾燥を行って粉末リパーゼ 得る場合には、乾燥の前又は後のどちらで 過助剤を添加してもよい。
 溶剤沈殿後に乾燥させる方法によって乾燥 行う場合には、乾燥して得られた粉末リパ ゼへ濾過助剤を添加するのが好ましい。
 得られた粉末リパーゼに含有させる濾過助 の量は、リパーゼと大豆粉末の合計質量を 準として1~500質量%とすることができ、10~200 量%であることがさらに好ましい。

 本発明では、2位にオレオイル基を有するト リグリセリドと炭素数16から22の飽和脂肪酸 び/又はその低級アルコールエステルを含有 る原料に、上記粉末リパーゼを添加して、 法でエステル交換反応を行う。この場合、 料100質量部当り、粉末リパーゼを0.01~10質量 部(好ましくは0.01~2質量部、より好ましくは0. 1~1.5質量部)添加し、30~100℃の温度(好ましく 35~80℃、より好ましくは40~60℃)で、0.1~50時間 (好ましくは0.5~30時間、より好ましくは1~20時 )エステル交換反応を行うのが好ましい。反 応はバッチ式で行うのが好ましい。反応温度 は反応基質である油脂が溶解する温度で酵素 活性を有する温度であれば何度でもかまわな い。最適な反応時間は、酵素添加量、反応温 度などにより変化する。
 エステル交換反応後、脂肪酸及び/又はその 低級アルコールエステルを除去するのが好ま しい。除去の方法はどんな方法を用いてもか まわないが、蒸留法を用いるのが好ましい。
 エステル交換反応後、または脂肪酸及び/又 はその低級アルコールエステル除去後、通常 の分別工程を行うのが好ましい。分別には、 溶剤をもちいても用いなくてもかまわない。 溶剤分別で使用する溶剤としては、アセトン 、ヘキサン、エタノール、含水エタノールな どが上げられるが、アセトン、ヘキサンが好 ましい。ここで、エステル交換反応物100質量 部当り、溶剤を50~1000質量部添加し、分別を なうのが好ましい。
 このようにハードバターが得られるが、必 に応じて、脱溶剤、脂肪酸除去、脂肪酸低 アルコールエステル除去、脱色、脱臭等の 常の油脂の精製を行ってもよい。

 チョコレート製品は、上記のハードバター カカオ脂とを混合した油脂成分および糖成 とからなる。上記ハードバターは油脂成分 に10質量%以上、好ましくは20質量%以上、さ に好ましくは30質量%以上含まれていること 好ましい。糖は通常チョコレートに使用さ るものであれば何でもかまわない。例えば ショ糖、果糖、あるいはこれらの混合物を げることができる。ソルビトールなどの糖 ルコールを用いても良い。また、通常のチ コレート製品に含まれる任意の成分につい も含ませることができる。これらの例とし は、乳化剤(通常レシチン)、香料、脱脂粉 、全脂粉乳などがあげられる。
 次に本発明を実施例により詳細に説明する

製造例1(粉末リパーゼ組成物1の調製)
 天野エンザイム社の商品:リパーゼDF“Amano 15-K(リパーゼDともいう)の酵素溶液(150000U/ml) 、予めオートクレーブ滅菌(121℃、15分)を行 い、室温程度に冷やした脱臭全脂大豆粉末( 肪含有量が23質量%、商品名:アルファプラスH S-600、日清コスモフーズ(株)社製)10%水溶液を 拌しながら3倍量加え、0.5N NaOH溶液でph7.8に 調整後、噴霧乾燥(東京理科器械(株)社、SD-100 0型)を行い、粉末リパーゼ組成物1(90質量%以 が粒径1~100μmである)を得た。

実施例1
 シア脂低融点部分(商品名:Lipex205、Aarhuskarlsh am社製)10g、ステアリン酸エチルエステル(商 名:エチルステアレート、(株)井上香料製造 製)10gを混合し、粉末リパーゼ組成物1を0.5質 量%添加し、60℃で4時間攪拌反応した。ろ過 理により酵素粉末を除去し、反応物1を18.0g た。

比較例1
 シア脂低融点部分(商品名:Lipex205、Aarhuskarlsh am社製)10g、ステアリン酸エチルエステル(商 名:エチルステアレート、(株)井上香料製造 製)10gを混合し、ノボザイムズA/S社製リポザ ムRM-IM(ムコール・ミーハイ由来の固定化リ ーゼ)を15.0質量%添加し、60℃で4時間攪拌反 した。ろ過処理により固定化酵素を除去し 反応物2を18.0g得た。
 反応物1及び2のTAG組成を、GLC法により分析 た(以下、同じ)。またXOX/(XXO+OXX)は銀の付い 陽イオン交換基を結合したカラムを使用し HPLC法により分析した。結果を表1に示す。

表1 TAG組成
注1)TAG組成は、全トリグリセリド中の各トリ リセリドの組成を示す。
XOX/(XXO+OXX)は、2つの飽和脂肪酸残基および1つ のオレオイル基を有するトリグリセリドの内 、1位及び3位に飽和脂肪酸残基を有するトリ リセリドと2位に飽和脂肪酸残基を有するト リグリセリドの比である。
P:パルミチン酸残基、S:ステアリン酸残基、O: オレイン酸残基、L:リノール酸残基、tr:微量( trace)
 この結果から、本発明によればXOX/(XXO+OXX)が シア脂低融点部分以上であり、また、一般的 な固定化酵素であるリポザイムRM-IM(比較例1) 比較して粉末リパーゼ組成物1は、反応の選 択性と反応効率が向上することがわかる。

実施例2
 ハイオレイックヒマワリ油(商品名:オレイ リッチ、昭和産業(株)製)8g、ステアリン酸エ チルエステル(商品名:エチルステアレート、( 株)井上香料製造所製)12gを混合し、粉末リパ ゼ組成物1を0.5質量%添加し、40℃で7時間攪 反応した。ろ過処理により酵素粉末を除去 、反応物3を19g得た。

比較例2
 ハイオレイックヒマワリ油(商品名:オレイ リッチ、昭和産業(株)製)8g、ステアリン酸エ チルエステル(商品名:エチルステアレート、( 株)井上香料製造所製)12gを混合し、ノボザイ A/S社製リポザイムRM-IM(ムコール・ミーヘイ 来の固定化リパーゼ)を15.0質量%添加し、40 で7時間攪拌反応した。ろ過処理により酵素 末を除去し、反応物4を19g得た。

表2 TAG組成結果
注1)TAG組成は、全トリグリセリド中の各トリ リセリドの組成を示す。
XOX/(XXO+OXX)は、2つの飽和脂肪酸残基および1つ のオレオイル基を有するトリグリセリドの内 、1位及び3位に飽和脂肪酸残基を有するトリ リセリドと2位に飽和脂肪酸残基を有するト リグリセリドの比である。
P:パルミチン酸残基、S:ステアリン酸残基、O: オレイン酸残基、L:リノール酸残基、tr:微量( trace)
 この結果から、本発明によれば反応物のXOX/ (XXO+OXX)及び使用酵素量と反応時間から、反応 の選択性と反応効率が向上することがわかる 。

実施例3
 ハイオレイックヒマワリ油(商品名:オレイ リッチ、昭和産業(株)製)1200g、ステアリン酸 エチルエステル(商品名:エチルステアレート (株)井上香料製造所製)1800gを混合し、粉末 パーゼ組成物1を0.5質量%添加し、40℃で7時間 攪拌反応した。ろ過処理により酵素粉末を除 去し、反応物5を2978g得た。得られた反応物5 2978gを薄膜蒸留し、蒸留温度140℃にて反応物 から留分5(1700g)と蒸留残渣5を1270g得た。蒸留 渣5の乾式分別を行い、固形部5(600g)と液状 5(600g)を得た。また、留分5(1700g)を常法によ 完全水素添加処理を行い、水素添加物5を1600 g得た。

「サイクル1回目」
 ハイオレイックヒマワリ油(商品名:オレイ リッチ、昭和産業(株)製)600g、上記で得た液 部5(600g)、水素添加物5(1200g)を混合し、粉末 パーゼ組成物1を0.5質量%添加し、40℃で7時 攪拌反応した。ろ過処理により酵素粉末を 去し、反応物6を2376g得た。得られた反応物6( 2376g)を薄膜蒸留し、蒸留温度140℃にて反応物 から留分6(1150g)と蒸留残渣6(1150g)を得た。蒸 残渣6の乾式分別を行い、固形部6(570g)と液状 部6(570g)を得た。また、留分6(1150g)を常法によ り完全水素添加処理を行い、水素添加物6(1100 g)を得た。

「サイクル2回目」
 ハイオレイックヒマワリ油(商品名:オレイ リッチ、昭和産業(株)製)550g、上記で得た液 部6(550g)、水素添加物6(1100g)を混合し、粉末 パーゼ組成物1を0.5質量%添加し、40℃で7時 攪拌反応した。ろ過処理により酵素粉末を 去し、反応物7(2178g)を得た。得られた反応物 7(2376g)を薄膜蒸留し、蒸留温度140℃にて反応 から留分7(1080g)と蒸留残渣7(1080g)を得た。蒸 留残渣7の乾式分別を行い、固形部7(535g)と液 部7(535g)を得た。また、留分7(1080g)を常法に り完全水素添加処理を行い、水素添加物7(10 00g)を得た。

  表3 TAG組成結果
注1)TAG組成は、全トリグリセリド中の各トリ リセリドの組成を示す。
XOX/(XXO+OXX)は、2つの飽和脂肪酸残基および1つ のオレオイル基を有するトリグリセリドの内 、1位及び3位に飽和脂肪酸残基を有するトリ リセリドと2位に飽和脂肪酸残基を有するト リグリセリドの比である。
P:パルミチン酸残基、S:ステアリン酸残基、O: オレイン酸残基、L:リノール酸残基、tr:微量( trace)

実施例4
 ハイオレイックヒマワリ油(商品名:オレイ リッチ、昭和産業(株)製)1200gに、ステアリン 酸エチルエステル(商品名:エチルステアレー 、(株)井上香料製造所製)1800gを混合し、粉 リパーゼ組成物1を0.5質量%添加し、40℃で7時 間攪拌反応させた。ろ過処理により酵素粉末 を除去し、反応物8(2987g)を得た。得られた反 物8(2900g)を薄膜蒸留を行い、蒸留温度140℃ て反応物より脂肪酸エチルエステルを除去 、蒸留残渣8(1100g)を得た。得られた蒸留残渣 8(1000g)にヘキサン2000gを加え溶解した後、-10 に冷却して得られた固形部をろ別した後、 法によりヘキサン除去及び精製を行い、ハ ドバター1(450g)を得た。

表4 TAG組成
注1)TAG組成は、全トリグリセリド中の各トリ リセリドの組成を示す。
XOX/(XXO+OXX)は、2つの飽和脂肪酸残基および1つ のオレオイル基を有するトリグリセリドの内 、1位及び3位に飽和脂肪酸残基を有するトリ リセリドと2位に飽和脂肪酸残基を有するト リグリセリドの比である。
P:パルミチン酸残基、S:ステアリン酸残基、O: オレイン酸残基、L:リノール酸残基、tr:微量( trace)

実施例5
 PL65(ISF社製)1200gに、ステアリン酸エチルエ テル(商品名:エチルステアレート、(株)井上 料製造所製)1400gと、パルミチン酸エチルエ テル(商品名:エチルパルミテート、(株)井上 香料製造所製)1400gを混合して原料9を調製し 。調製した原料9に、粉末リパーゼ組成物1を 0.3質量%添加し、40℃で16時間攪拌反応させた ろ過処理により酵素粉末を除去し、反応物9 を3999g得た。得られた反応物9(3993g)を薄膜蒸 にかけ、蒸留温度140℃にて脂肪酸エチルエ テルを留去し、蒸留残渣9を1316gと留分9を2656 g得た。
 得られた蒸留残渣9から、アセトンを5倍量(w t/wt)用いた溶剤分別法により、冷却温度20℃ 高融点部を、冷却温度10℃で低融点部を除去 した後、定法により精製(脱色、脱臭)を行い ハードバター2(HB2)を391g得た。
 原料のPL65と反応物9、蒸留残渣9、ハードバ ー2のTAG組成を表5に、PL65の脂肪酸組成(全、 2位、1,3位)を表6に、原料9、反応物9、および 分9に含まれる脂肪酸エチルエステルの組成 を表7に示す。脂肪酸の組成はGLC法により分 した。また、2位脂肪酸組成は1,3位特異的な 素による加水分解反応を利用したGLC法によ 分析した。1,3位脂肪酸組成は全および2位脂 肪酸組成の結果から計算により求めた。
 酵素反応の前後で、炭素数16(C16)と炭素数18( C18)の脂肪酸エチルエステルの比率にほとん 変化は見られなかった。脂肪酸エチルエス ルを用いた反応では、脂肪酸エチルエステ が非常に高価なため、繰返し利用すること 望まれる。そのためには、反応の前後でC16 C18の比率が変化しないことが望ましい。原 のPL65の1,3位脂肪酸組成を見ると、C16とC18が ぼ等量含まれており、この組成と反応時に 込む原料の脂肪酸エチルエステル組成が等 いことが望ましい。なお、オレイン酸(18:1) よびその低級アルコールエステルは、水素 加反応により簡便にステアリン酸(18:0)およ その低級アルコールエステルにすることが きる。

表5 TAG組成分析結果
注1)TAG組成は、全トリグリセリド中の各トリ リセリドの組成を示す。
P:パルミチン酸残基、S:ステアリン酸残基、O: オレイン酸残基、L:リノール酸残基、tr:微量( trace)

  表6 PL65の脂肪酸組成分析結果

 表7 原料9、反応物9、および留分9の脂肪酸 チルエステル組成分析結果

実施例6
 実施例5で得られた留分9を2600g測りとり、そ こにニッケル触媒(商品名:SO-850、堺化学工業 式会社製)を7.8g添加し、圧力容器にて水素 スを吹き込みながら、180℃、3kg/cm 2 で、3時間反応した。触媒をろ過により取り き、水素添加脂肪酸エチルエステル(水素添 物9)を2525g得た。組成を表8に示す。

 表8 水素添加脂肪酸エチルエステル(水素添 加物9)の脂肪酸エチルエステル組成分析結果

実施例7
 PL65(ISF社製)900gに、実施例6で得られた水素 加脂肪酸エチルエステル9を2100gを添加して 合し原料10を調製した。調製した原料10に粉 リパーゼ組成物1を0.3質量%添加し、40℃で16 間攪拌反応させた。ろ過処理により酵素粉 を除去し、反応物10を2968g得た。
 原料のPL65と反応物10のTAG組成を表9に、原料 油(PL65)と反応油(反応物10)に含まれる、脂肪 エチルエステルの組成を表10に示す。
 水素添加脂肪酸エチルエステル9を用いて反 応しても、パルミチン酸およびステアリン酸 を用いた場合と同様に反応することができた 。また、反応の前後で、炭素数16(C16)と炭素 18(C18)の脂肪酸エチルエステルの比率にほと ど変化は見られなかった。以上の結果から 脂肪酸エチルエステルは、蒸留と水素添加 行うことで、繰返し利用できることがわか た。

表9 TAG組成分析結果
注1)TAG組成は、全トリグリセリド中の各トリ リセリドの組成を示す。
P:パルミチン酸残基、S:ステアリン酸残基、O: オレイン酸残基、L:リノール酸残基、tr:微量( trace)

  表10 原料油(原料10)、反応油(反応物10)の 肪酸エチルエステル組
成分析結果

実施例8
 上記ハードバター(実施例4ハードバター1)を 用い、表11の配合にてチョコレートの試作と 価を行った。製造時の粘度や型抜けなどに に問題はなかった。得られたチョコレート 20℃にて1週間保存した後にスナップ性、艶 口溶けの評価を行った。その結果、ハード ター1を用いたチョコレート1は、口どけが くかつスナップ性に優れており、代用脂を 用しない対照チョコレート1と同等の品質で った。

表11 チョコレートの配合(質量%)
(チョコレート評価結果)
 上記方法で製造したチョコレートの型から 剥離性、スナップ性、艶、口溶けを評価し 。評価結果を表12に示した。

表12 板チョコレートの評価結果

 10人のパネラーによる官能試験によって評 した。判定基準は以下のとおりである。
<判定基準>
 スナップ性  ◎:きわめて良好なスナップ を持つ
        ○:良好なスナップ性を持つ
        △:スナップ性に劣る
 口溶け    ◎:口どけがきわめて良好であ
        ○:口どけが良好である
        △:口どけが悪い
 艶      ◎:きわめて良好
        ○:良好だが一部にくもりがみら る
        △:艶がない
 剥離性    ◎:冷却後15分ではがれる
        ○:冷却後20分ではがれる
        △:はがれない

実施例9
 ハイリノールサフラワー油(日清オイリオグ ループ(株)製)1600gに、ステアリン酸エチルエ テル(商品名:エチルステアレート、(株)井上 香料製造所製)2400gを混合し、粉末リパーゼ組 成物1を0.3質量%添加し、40℃で20時間攪拌反応 させた。ろ過処理により酵素粉末を除去し、 反応物11を3920g得た。得られた反応物11(3900g) 薄膜蒸留にかけ、蒸留温度140℃にて反応物11 から脂肪酸エチルを除去し、脂肪酸エチル含 量が3.7質量%である蒸留残渣11を1555g得た(表13) 。

表13 組成分析結果
注1)TAG組成は、全トリグリセリド中の各トリ リセリドの組成を示す。
 XOX/(XXO+OXX)は、2つの飽和脂肪酸残基および1 のオレオイル基を有するトリグリセリドの 、1位及び3位に飽和脂肪酸残基を有するト グリセリドと2位に飽和脂肪酸残基を有する リグリセリドの比である。
 P:パルミチン酸残基、S:ステアリン酸残基、 O:オレイン酸残基、L:リノール酸残基、tr:微 (trace)