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Patent Searching and Data


Title:
METHOD FOR PRODUCING STRETCH SHEET
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/116440
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a method for producing a stretch sheet wherein damage to a nonwoven fabric (3) is controlled effectively when the nonwoven fabric (3) is passed through the gap between a pair of rotating gear rolls (41, 43) and drawn. A stretch sheet (3a) is produced by passing a nonwoven fabric (3) containing a plurality of kinds of fiber through the gap between a pair of gear rolls (41, 43) rotating while allowing a plurality of teeth (41t, 43t) formed in the outer circumferential surfaces (41a, 43a) to mesh mutually, and then drawing the nonwoven fabric (3) in the circumferential direction of the gear rolls (41, 43) by means of the teeth (41t, 43t). Circumferential speed (S) of the gear rolls (41, 43) is in the range of 50-300 (m/min). Maximum value of distortion per unit time imparted to the nonwoven fabric (3) in the gap between the pair of gear rolls (41, 43) is in the range of 5-100 (sec-1).

Inventors:
AKAKI KENICHI (JP)
MATSUMOTO YOSHIHIKO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/054658
Publication Date:
September 24, 2009
Filing Date:
March 11, 2009
Export Citation:
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Assignee:
UNI CHARM CORP (JP)
AKAKI KENICHI (JP)
MATSUMOTO YOSHIHIKO (JP)
International Classes:
D04H1/4291; D04H1/4374; D04H1/4382; D04H1/4391; D04H1/736; D06C3/06
Domestic Patent References:
WO2007138733A12007-12-06
Foreign References:
JP2003510206A2003-03-18
JP2002513723A2002-05-14
JP2007177384A2007-07-12
Other References:
See also references of EP 2258895A4
Attorney, Agent or Firm:
ISSHIKI & CO. (JP)
All international patent business corporation (JP)
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Claims:
 外周面に形成された複数の歯を互いに噛み合わせながら回転する一対のギアロールの間隙に、複数種類の繊維を含む不織布を通すことにより、該不織布を前記歯によって前記ギアロールの周方向に延伸して伸縮性シートを製造する方法において、
 前記ギアロールの周速が50~300(m/min)の範囲であり、
 前記一対のギアロールの間隙において前記不織布に付与される単位時間当たりの歪みの最大値が、5~100(sec ―1 )の範囲であることを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
 請求項1に記載の伸縮性シートの製造方法であって、
 前記一対のギアロールの直径が300~600(mm)の範囲であることを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
 請求項2に記載の伸縮性シートの製造方法であって、
 前記一対のギアロールの直径が450~600(mm)の範囲であることを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
 請求項1乃至3のいずれかに記載の伸縮性シートの製造方法であって、
 前記不織布は、前記複数種類の繊維として、少なくとも伸縮性繊維と、前記伸縮性繊維の弾性限界の伸びよりも小さな伸びで塑性変形を起こす伸長性繊維とを含んでおり、
 前記伸縮性繊維は熱可塑性エラストマ繊維であり、前記伸長性繊維は熱可塑性ポリオレフィン繊維であることを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
 請求項1乃至4のいずれかに記載の伸縮性シートの製造方法であって、
 前記ギアロールの直径は、
 前記ギアロールにより前記不織布に付与される歪みと、前記ギアロールの周速と、前記周方向の前記歯の形成ピッチ又は前記一対のギアロールの前記歯の噛み合い深さと、前記単位時間当たりの歪みの最大値と、に基づいて決められることを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
Description:
伸縮性シートの製造方法

 本発明は、伸縮性シートの製造方法に関 る。

 衛生材料の一例としての使い捨ておむつ おいて、着用者の胴周りを締める締め付け 材(例えば前身頃や後身頃のウエスト周りの 部分)として、伸縮性シートが使用されるこ がある。この伸縮性シートは、例えば、材 としての不織布に延伸加工を施すことによ て製造される(例えば、特表2002-513723号公報 参照)。そして、この延伸加工の一例として ギア延伸」という方法がある(例えば、特開 2007-177384号公報を参照)。

 この「ギア延伸」は、外周面に歯が形成 れた上下一対のギアロールによって不織布 延伸する方法である。詳しくは、上下一対 ギアロールのロール間隙に前記不織布を通 、その際に、互い噛み合う上下のギアロー の歯によって三点曲げ状に不織布を変形し 延伸するものである。そして、この延伸後 は、不織布に伸縮性が発現され、もって伸 性シートとなる。

 但し、これら歯の噛み合いによって延伸 るため、ギア延伸に係る諸条件(ギアロール の周速等)によっては不織布に大きな損傷を えてしまい、場合によっては、延伸中に破 に至る虞がある。

 この点につき、本願出願人が鋭意調査し 結果、(1)一対のギアロールの間隙において 、不織布の歪み速度(不織布に付与される単 位時間当たりの歪み)が、前記間隙の入口か 出口にかけて時々刻々と変化すること、(2) 該歪み速度がピークを有すること、(3)歪み 度のピークたる歪み速度の最大値が、不織 の損傷に影響することを見出し、本願発明 完成に至った。

 本発明は、上記のような従来の問題に鑑 てなされたものであって、回転する一対の アロールの間隙に不織布を通して延伸する に、当該不織布の損傷を有効に抑えること 可能な伸縮性シートの製造方法を提供する とを目的とする。

 上記目的を達成するための主たる発明は、
 外周面に形成された複数の歯を互いに噛み わせながら回転する一対のギアロールの間 に、複数種類の繊維を含む不織布を通すこ により、該不織布を前記歯によって前記ギ ロールの周方向に延伸して伸縮性シートを 造する方法において、
 前記ギアロールの周速が50~300(m/min)の範囲で あり、
 前記一対のギアロールの間隙において前記 織布に付与される単位時間当たりの歪みの 大値が、5~100(sec ―1 )の範囲であることを特徴とする伸縮性シー の製造方法である。

 本発明の他の特徴については、本明細書 び添付図面の記載により明らかにする。

 本発明によれば、回転する一対のギアロ ルの間隙に不織布を通して延伸する際に、 該不織布の損傷を有効に抑えることができ 。

ギア延伸の説明用の側面図であり、一 を拡大して示している。 図2A及び図2Bは、延伸加工によって伸縮 性が発現されるメカニズムの説明図であり、 不織布3の荷重-伸び曲線を示している。 図3Aは、延伸加工前(つまり未延伸)の繊 維の状態を示す模式図である。図3Bは延伸加 中(つまり負荷中)の繊維の状態を示す模式 である。図3Cは延伸加工後(つまり除荷後)の 維の状態を示す模式図である。図3Dは延伸 工後の不織布3を再度伸ばした際の繊維の状 を示す模式図である。 図4A及び図4Bは、延伸歪みたる総歪みε all の定式化に供する図である。 噛み合い開始点Psから最大噛み合い点Pm までに付与される歪み速度dε/dtの変化を示す グラフである。 噛み合い状態図である。 図7A及び図7Bは、ロール間隙における延 伸時間tと局所歪み速度dε/dtとの関係を示す ラフである。 図8A及び図8Bは、それぞれ、ギア延伸時の局 歪み速度の最大値を90(sec ―1 )及び95(sec ―1 )にして延伸後の不織布3の表面写真である。 図9A及び図9Bは、それぞれ、ギア延伸時の局 歪み速度の最大値を100(sec ―1 )及び110(sec ―1 )にして延伸後の不織布3の表面写真である。 ギア延伸時の局所歪み速度の最大値を115(sec ―1 )にして延伸後の不織布3の表面写真である。 ギア延伸に係る諸条件の設定手順の一 例のフロー図である。 図12A乃至図12Dは、局所歪み速度の最大値が5~1 00(sec ―1 )の範囲に収まるようなロール径Dを求める際 用いられるグラフである。 図13A乃至図13Dは、図12A乃至図12Dのグラ フのデータを、局所歪み速度の最大値とロー ル径Dとの関係に整理し直したグラフである 局所歪み速度の最大値が100(sec ―1 )となる周速Sとロール径Dとの関係を示すグラ フである。

符号の説明

 3 不織布、3a 伸縮性シート、
 41 ギアロール、41a 外周面、41t 歯、
 43 ギアロール、43a 外周面、43t 歯、
 P 形成ピッチ、F 最大噛み合い深さ、
 P0 原点、P1 変曲点、
 Ps 噛み合い開始点、Pm 最大噛み合い点、
 S 周速

 本明細書及び添付図面の記載により、少 くとも以下の事項が明らかとなる。

 外周面に形成された複数の歯を互いに噛み わせながら回転する一対のギアロールの間 に、複数種類の繊維を含む不織布を通すこ により、該不織布を前記歯によって前記ギ ロールの周方向に延伸して伸縮性シートを 造する方法において、
 前記ギアロールの周速が50~300(m/min)の範囲で あり、
 前記一対のギアロールの間隙において前記 織布に付与される単位時間当たりの歪みの 大値が、5~100(sec ―1 )の範囲であることを特徴とする伸縮性シー の製造方法。

 このような伸縮性シートの製造方法によ ば、不織布に付与される単位時間当たりの みの最大値で数値範囲を規定している。こ で、当該最大値は、延伸時に生じ得る不織 の損傷に対して適確に関連付け可能である よって、当該最大値の数値範囲を規定する とにより、延伸時における不織布の損傷を 効に抑制することができる。

 また、不織布に付与される単位時間当たり 歪みの最大値を100(sec ―1 )以下にしているので、延伸時における不織 の損傷を有効に抑制することができ、更に 、同最大値を5(sec ―1 )以上にしているので、当該最大値を低くし ぎることに起因した生産性の悪化を有効に ぐこともできる。

 かかる伸縮性シートの製造方法であって、
 前記一対のギアロールの直径が300~600(mm)の 囲であるのが望ましい。 
 このような伸縮性シートの製造方法によれ 、ギアロールの直径を300(mm)以上にしている ので、前記単位時間当たりの歪みの最大値を 下げ易くなり、その結果として、前記最大値 が100(sec ―1 )以下という条件を満足させるための諸条件 例えば、ギアロールの周速や、前記周方向 歯の形成ピッチ、不織布に付与される総歪 などの条件を緩和できて、つまり、これら 値の設定可能範囲を広くすることができる

 また、直径を600(mm)以下としているので、ギ アロールを安価に製造できて、製造コストの 削減を図れる。 
 更には、ギアロールの直径を300~600(mm)の範 にしているので、局所歪み速度の最大値を 率良く低下させることができる。

 かかる伸縮性シートの製造方法であって、
 前記一対のギアロールの直径が450~600(mm)の 囲であるのが望ましい。 
 このような伸縮性シートの製造方法によれ 、直径が450(mm)未満のギアロールとの対比に おいては、前記単位時間当たりの歪みの最大 値を同値に維持しながらも、ギアロールの周 速を高くすることができて、その結果、生産 性を高めることができる。

 かかる伸縮性シートの製造方法であって、
 前記不織布は、前記複数種類の繊維として 少なくとも伸縮性繊維と、前記伸縮性繊維 弾性限界の伸びよりも小さな伸びで塑性変 を起こす伸長性繊維とを含んでおり、
 前記伸縮性繊維は熱可塑性エラストマ繊維 あり、前記伸長性繊維は熱可塑性ポリオレ ィン繊維であるのが望ましい。 
 このような伸縮性シートの製造方法によれ 、不織布は、伸縮性繊維及び伸長性繊維と て、それぞれ、熱可塑性エラストマ繊維及 熱可塑性ポリオレフィン繊維を含んでいる で、延伸後の不織布に確実に伸縮性を発現 せることができる。

 かかる伸縮性シートの製造方法であって、
 前記ギアロールの直径は、
 前記ギアロールにより前記不織布に付与さ る歪みと、前記ギアロールの周速と、前記 方向の前記歯の形成ピッチ又は前記一対の アロールの前記歯の噛み合い深さと、前記 位時間当たりの歪みの最大値と、に基づい 決められるのが望ましい。 
 このような伸縮性シートの製造方法によれ 、延伸時における前記不織布の損傷を有効 抑制可能なギアロールの直径を容易に見出 ことができる。

 ===本実施形態の伸縮性シート3aの製造方法== =
 <<ギア延伸について>>
 図1はギア延伸の説明図である。ギア延伸は 、外周面41a,43aに、周方向に沿って所定の形 ピッチPで波状に歯(所謂「平歯車」と同じ歯 形の歯)が形成された上下一対のギアロール41 ,43を用いて行われる。すなわち、これら互い に同形状のギアロール41,43が一定の周速Sで駆 動回転している間に、これらギアロール41,43 ロール間隙に不織布3を通し、その際に互い に噛み合う上ギアロール41の歯41tと下ギアロ ル43の歯43tとによって不織布3を三点曲げ状 変形して(図1の右側の拡大図を参照)、これ ギアロール41,43の周方向に延伸することに り行われる。そして、当該延伸後には不織 3に伸縮性が発現されて伸縮性シート3aとな 。

 このギア延伸の材料となる不織布3は、例 えば、溶融紡糸等によって伸長性繊維と伸縮 性繊維とを所定の配合比で混合生成してなる 混繊タイプの不織布3である。ここで、伸縮 繊維とは、弾性的に伸長可能な繊維のこと 言い、伸長性繊維とは、概ね非弾性的に伸 可能な繊維のことを言う。なお、換言する 、伸長性繊維とは、伸縮性繊維の弾性限界 伸びよりも小さな伸びで塑性変形を起こす 維であると言うこともできる。

 伸長性繊維としては熱可塑性ポリオレフ ン繊維を例示でき、また、伸縮性繊維とし は熱可塑性エラストマ繊維を例示できる。 可塑性ポリオレフィン繊維は、例えばポリ ロピレン繊維やポリエステル繊維などの単 繊維や、ポリプロピレンやポリエステルか なる芯鞘構造の複合繊維などであり、また 熱可塑性エラストマ繊維は、例えば、ポリ レタン繊維などである。

 不織布3の製法としては、スパンボンド法や ケミカルボンド法等が挙げられる。また、不 織布3の坪量及び繊維径は、それぞれ、20~50(g/ m 2 )の範囲及び10~30(μm)の範囲から適宜選択され 更に、伸長性繊維と伸縮性繊維との配合比 、20~80%の範囲から適宜選択される。

 ギアロール41(43)の歯41t(43t)の形成ピッチPは 2~6(mm)の範囲から選択され、好ましくは4~5(mm )の範囲であり、以下の例では4.9(mm)である。 アロール41(43)の周速Sは、50~300(m/min)の範囲 ら選択される。なお、ここで言う周速Sとは 歯41t(43t)の先端の速度のことである。また 上ギアロール41と下ギアロール43との最大噛 合い深さFは、不織布3に付与すべき総歪みε all と上記形成ピッチPとに基づいて定まり(後述 式2を参照)、つまり、上記の形成ピッチPの 囲において、0.6~2.0の範囲から選択された総 歪みε all が達成されるように選択される。なお、総歪 みε all の定義等については後述する。

 図2A及び図2Bは、ギア延伸によって不織布 3に伸縮性が発現されるメカニズムの説明図 ある。両図とも、不織布3の荷重-伸び曲線を 示している。

 未延伸の不織布3に対して延伸加工を施す べく、伸縮性繊維の弾性限界内で前記不織布 3に張力(以下、荷重とも言う)を付与すると、 その延伸加工中においては、図2Aのような荷 -伸び曲線を描く。すなわち、張力の負荷時 よりも除荷時の方が、同じ伸びにおける荷重 が低くなるようなヒステリシスを有した荷重 -伸び曲線を描く。

 そして、この延伸後に再度張力を付与し 場合には、図2Bに示すような荷重-伸び曲線 描く。詳しくは、図2Bの原点P0から変曲点P1 では、非常に低い弾性率で伸縮するが、変 点P1を超えると荷重が概ね二次曲線状に急 に上昇するようになる。そして、通常は、 の低い弾性率の範囲Rの発現をもって、延伸 工により不織布3に伸縮性が発現されたもの と見なしており、また、無負荷状態の原点P0 ら前記変曲点P1までの伸びの量Jを、「発現 れた伸縮量J」と定義している。

 ちなみに、このように延伸加工後におい 、前記原点P0から前記変曲点P1までは非常に 低い弾性率で伸縮するようになる理由につい ては、次のように説明できる。

 図3Aは、延伸加工前(つまり未延伸)の繊維 の状態を示す模式図であり、図3Bは延伸加工 (つまり負荷中)の繊維の状態を示す模式図 あり、図3Cは延伸加工後(つまり除荷後)の繊 の状態を示す模式図である。なお、一般に 織布3を構成する最小単位構造は、図3Aに示 ように伸縮性繊維と伸長性繊維とが並列接 されたものとしてモデル化できる。

 図3Aに示す未延伸の不織布3を延伸すると 図3Bに示すように、伸縮性繊維の方は弾性 形をするが、前記伸縮性繊維よりも弾性限 の伸びの小さい伸長性繊維の方は、比較的 い段階から塑性変形を開始して細長く塑性 形する。よって、この状態から張力を除荷 ると、図3Cに示すように、伸縮性繊維の方は 弾性伸びが無くなるだけで、つまり、その全 長は張力の付与前と概ね同じ長さに戻るので あるが、伸長性繊維の方は、塑性伸び分だけ 全長が伸びて弛んだ状態になっている。

 そして、このような延伸加工後の不織布3 に対して再度張力を付与すると、伸長性繊維 の弛み分が伸びきってその全長が張るまでは 、伸縮性繊維の弾性変形のみで上記張力に抗 するので、図2Bに示すように、不織布3は非常 に低い弾性率で伸びていくが、図3Dに示すよ に、上述の伸長性繊維の弛みが無くなって の全長が張った時点からは、当該伸長性繊 の弾塑性変形も前記張力に抗するようにな ので、ここからは、不織布3を伸ばすのに要 する張力の大きさが急激に上昇する。つまり 、この伸長性繊維の弛みが無くなるポイント が図2Bの変曲点P1であり、もって、このよう ことから、延伸加工後の荷重-伸び曲線は、 2Bに示すように、変曲点P1までは不織布3は 常に低い弾性率で伸縮し、そして、変曲点P1 を超えると荷重が急激に増加するような荷重 -伸び曲線になるのである。ちなみに、前記 点P0から前記変曲点P1までの範囲R、すなわち 、「発現された伸縮量J」の範囲Rの内側であ ば、張力が除荷されると、概ね図2Bの負荷 の荷重-伸び曲線を辿って原点P0まで戻るの 言うまでもない。

 ここで、上記延伸時の延伸量Eと同義のパラ メータとして、「延伸歪みε all 」というパラメータを導入する。この延伸歪 みε all は、通常の歪みの概念と同様に、延伸時の延 伸方向の全長Lbと延伸前の延伸方向の全長La を用いて下式1で定義される。 
 ε all =(Lb-La)/La  …式1

 この延伸歪みε all は、図4A及び図4Bに示す歯41t,43tの幾何学的関 から、歯41tと歯43tとの最大噛み合い深さF及 び歯41t(43t)の形成ピッチPの関数として表現さ れる。すなわち、図1の左拡大図の噛み合い 始点Psにおいて、図4Aに示すように元々全長 前記Pであった不織布3が、図1Bの右拡大図の 最大噛み合い点Pmにおける延伸時には、最大 み合い深さFで互いに噛み合う歯41t,43tによ て図4Bに示すように三点曲げ状に変形されて 延伸されることから、延伸歪みε all は下式2のように表される。 
 ε all =2×(√(F 2 +(P/2) 2 )-(P/2))/P  …式2

 なお、この延伸歪みε all は、謂わばギア延伸によって付与される歪み の合計値であるので、以下では、総歪みε all とも言い、後述する局所歪み速度に係る歪み εとは区別する。

 <<ギア延伸中の不織布3の歪み速度につ て>>
 一般に加工対象物を引っ張り変形する際に その歪み速度(加工対象物に付与される単位 時間当たりの歪み)が大きいと加工対象物へ 損傷が大きくなり、最悪の場合には加工中 破断してしまう。そのため、加工中の歪み 度を低く抑えることが重要であるが、これ 、ギア延伸においても例外ではない。

 ここで、ギア延伸における歪み速度を求め 参考的手法としては、例えば、図1の噛み合 い開始点Psから最大噛み合い点Pmまでに付与 れる上記総歪みε all を、当該総歪みε all の付与に要した時間、つまり、噛み合い開始 点Psから最大噛み合い点Pmまでの回転に要し 時間t all で除算して求めることが考えられる。そして 、この手法は、歪み速度が、噛み合い開始点 Psから最大噛み合い点Pmまでに亘って一定で る前提で求めるものであり、謂わば、歪み 度の平均値(=ε all /t all )を求めるものと言える。

 しかしながら、本願出願人が鋭意調査した ころによれば、ギアロール41,43の周速Sを一 に維持して延伸する場合であっても、当該 伸中の歪み速度は、後述する図5に示すよう に、噛み合い開始点Psから最大噛み合い点Pm での範囲に亘って一定ではなくて時々刻々 変化するものであり、また、同範囲におい 歪み速度がピークを有することが判明した そして、当然ながら、このピークの値は、 述の参考的手法で求まる平均値(=ε all /t all )よりも大きい。よって、このような場合に 、上述の参考的手法により求まる平均値(=ε all /t all )よりも、歪み速度の最大値の方を指標とし 用いた方が、起こり得る不織布3の損傷に対 て、より適確に関連付け可能と考えられる

 そこで、本実施形態に係る伸縮性シート3 aの製造方法では、噛み合い開始点Psから最大 噛み合い点Pmまでに亘る各瞬間の歪み速度dε/ dtを、所定の回転角δθの刻みで求めるととも に、これら各瞬間の歪み速度dε/dtのうちのピ ーク値たる最大値を指標として、当該最大値 が所定範囲に収まるようにギア延伸の諸条件 を設定するようにしている。そして、これに より、不織布3の損傷を有効に抑制している

 以下、得られた知見を示しながら、本実 形態に係る伸縮性シート3aの製造方法につ て説明する。

 図5は、噛み合い開始点Psから最大噛み合 点Pmまでに付与される歪み速度dε/dtの変化 示すグラフである。横軸には時間tを取って り、縦軸には歪み速度dε/dtを取っている。 た、同図において、グラフの左端が噛み合 開始点Psであり、同右端が最大噛み合い点Pm であるとともに、最大噛み合い点Pmの時間tを 時間軸の零点に揃えて示している。なお、グ ラフの欄外に延伸諸元を示しているが、この 延伸中のギアロール41,43の周速Sは200(m/min)で 定である。

 図5からわかるように、ギアロール41,43の 速Sを一定にしていても、歪み速度は一定で はなく変化している。また、最大噛み合い点 Pmよりも噛み合い開始点Ps寄りの位置で、歪 速度は最大値を迎えている。ちなみに、こ ように歪み速度の最大値が、最大噛み合い Pmよりも噛み合い開始点Ps寄りに位置する方 、より不織布3に損傷を与え易いことがわか っている。

 このようなグラフは、作図によって取得さ る。すなわち、図6の実線及び2点鎖線で示 ように、先ず、所定の回転角δθの一例とし 0.1°刻みで上下のギアロール41,43を順次回転 させながら、各瞬間での歯41t,43tの噛み合い 態を作図する。そして、着目した噛み合い 態図(図6の2点鎖線)の不織布3の長さL(n)と、 の直前の噛み合い状態図(図6の実線)の不織 3の長さL(n-1)とを、これら図から計って求め 下式3に代入し、これにより、着目した瞬間 の歪み速度dε/dt(以下、局所歪み速度dε/dtと 言う)を求める。 
 dε/dt=(L(n)―L(n-1))/L(n-1)/δt …式3

 なお、上式3中のδtは、着目した噛み合い状 態図と、その直前の噛み合い状態図との間の 状態変化に要する時間であり、つまり、前記 回転角δθたる0.1°の回転に要する時間である 。この時間δtは、ギアロール41,43の直径D(m)( 下、ロール径Dとも言う)及び周速S(m/min)を用 て下式4により求められる。 
 δt(sec)=(π×D/S)×60×(δθ/360°) …式4

 そして、着目する噛み合い状態図を、順 、噛み合い開始点Psから最大噛み合い点Pmの 方へ移しながら、上式3及び上式4に基づいて 瞬間の局所歪み速度dε/dtを求めることによ 、図5のグラフを得ることができる。

 図7A及び図7Bは、ロール径D以外の条件を 定してロール径Dを4水準(150、450、900、1800、3 600(mm))で振りながら、ロール間隙(噛み合い開 始点Psから最大噛み合い点Pmまでの範囲)にお る延伸時間tと局所歪み速度dε/dtとの関係の グラフを書いたものである。なお、図7Aは、 速Sが100(m/min)の場合であり、図7Bは200(m/min) 場合である。また、ロール径Dとは、歯41t(43t )の先端における最大径のことを言う。

 図7A及び図7Bから、ロール径Dが大きい方 、局所歪み速度の最大値が低くなることが かる。また、図7Aと図7Bとの比較から、周速S が小さい方が局所歪み速度の最大値が低くな ることがわかる。すなわち、局所歪み速度は 、ロール径D及び周速Sによって変化すること わかる。

 なお、ここではグラフで示していないが、 記の局所歪み速度が総歪みε all によっても変化し、総歪みε all が小さい方が、局所歪み速度の最大値が低く なることも明らかになっている。

 図8A乃至図10は、局所歪み速度の最大値と不 織布3の損傷レベルとの関係を説明するため 図であり、各図は、順番に、ギア延伸時の 所歪み速度の最大値を90、95、100、110、及び1 15(sec ―1 )にして延伸後の不織布3の表面写真である。 お、何れも、ロール径Dが450(mm)で形成ピッ Pが4.9(mm)の場合である。

 これらの写真を見ると、局所歪み速度の最 値が110(sec ―1 )及び115(sec ―1 )では、不織布表面に縞状の繊維の密度むら 生じており、もって、延伸時の損傷が大き が、局所歪み速度の最大値が100(sec ―1 )以下では、縞状の密度むらは殆ど観察され 、もって、延伸時の損傷がごく小さいレベ に抑制されていることがわかる。

 そこで、本実施形態に係る伸縮性シート3a 製造方法では、局所歪み速度dε/dtの最大値 5~100(sec ―1 )の範囲に収まるように、ギア延伸に係る諸 件を設定するようにしている。

 <<ギア延伸に係る諸条件の設定手順に いて>>
 図11は、ギア延伸に係る諸条件の設定手順 一例のフロー図である。 
 設定すべき諸条件としては、不織布3に付与 すべき総歪みε all 、ギアロール41(43)の周速S、歯41t(43t)の形成ピ ッチP、上ギアロール41の歯41tと下ギアロール 43の歯43tの最大噛み合い深さF、ギアロール41( 43)の直径Dたるロール径Dが有る。

 そして、先ず、伸縮性シート3aの伸縮量J等 要求仕様に基づいて、不織布3に付与すべき 総歪みε all が決定される(S10)。ここでは、総歪みε all が1.7に決定されたものとする。 
 次に、製造ラインの搬送速度等のライン仕 に基づいてギアロール41(43)の周速Sが決定さ れる(S20)。ここでは、周速Sが100(m/min)に決定 れたものとする。 
 次に、歯41t(43t)の形成ピッチPと最大噛み合 深さFとが、総歪みε all 及び前述の式2に基づいて決定される(S30、S40) 。ここでは、形成ピッチPが4.9(mm)に決定され ものとし、その場合には、当該形成ピッチP の4.9(mm)と総歪みε all の1.7と式2とに基づいて、最大噛み合い深さF 6.14(mm)と決定される。 
 そうしたら、最後にロール径Dを決定する(S5 0)。この決定方法は、図12A乃至図12Dのグラフ 基づいて、局所歪み速度の最大値が5~100(sec ―1 )の範囲に収まるロール径Dのなかから最小径 なるロール径Dを選択することによりなされ る。

 例えば、図12A乃至図12Dには、総歪みε all と局所歪み速度の最大値との関係を示すグラ フが、ロール径Dと周速Sとをパラメータとし 記載されている。すなわち、図12Aには周速S が50(m/min)の場合が示されており、図12Bには100 (m/min)の場合が、また、図12Cには200(m/min)の場 が、更には、図12Dには300(m/min)の場合が示さ れており、そして、これら各図には、各々、 ロール径Dが150、300、450、600、750、及び900(mm) グラフが記載されている。

 よって、上記の既に設定済みの条件として 先ず周速Sが100(m/min)の一群のグラフが記載 れた図12Bを参照するとともに、これらのグ フのなかで、総歪みε all が1.7において局所歪み速度の最大値が5~100(sec ―1 )の範囲に収まるロール径Dを探す。ここでは ロール径Dが300(mm)だと局所歪み速度の最大 が114(sec ―1 )であるところ、450(mm)では、同最大値は92(sec ―1 )となるので、ロール径Dは450(mm)と決定される 。 
 そして、以上をもってギア延伸に係る全条 が設定されたことになる。

 なお、図12A乃至図12Dの各グラフは、上述し 噛み合い状態図に基づいて予め算出される すなわち、不織布3に付与すべき総歪みε all 、周速S、及び、ロール径Dを各々複数水準で って噛み合い状態図を作成し、これら噛み い状態図に基づいて図5の局所歪み速度と延 伸時間のグラフを求める。そして、上述の各 水準につき局所歪み速度の最大値を求め、こ れを横軸が総歪みε all で縦軸が局所歪み速度の最大値のグラフにプ ロットすることにより、上述の図12A乃至図12D が作成される。

 ちなみに、上述の設定手順では、図12A乃至 12Dの総歪みε all と局所歪み速度の最大値とのグラフに基づい て最後にロール径Dを決定したが、何等これ 限るものではなく、同グラフに基づいて最 に周速Sを決定しても良いし、または、総歪 ε all 、最大噛み合い深さF、及び、形成ピッチPの れか一つを最後に決めても良い。

 <<ロール径Dの好ましい範囲について> >
 図13A乃至図13Dは、図12A乃至図12Dのグラフの ータを、局所歪み速度の最大値とロール径D との関係に整理し直したグラフである。すな わち、これら図13A乃至図13Dは、それぞれ、ギ ア延伸によって付与される総歪みε all が0.6、1.3、1.7、2.0の場合であるとともに、各 図には、それぞれ、周速Sが50、100、200、300(m/ min)の4本のグラフが示されている。

 図13Dを見ると、周速Sの異なる4水準の何 のグラフにあっても、局所歪み速度の最大 は、ロール径Dが300~450(mm)の辺りまでは急激 減少しているが、600(mm)の辺りからは減少勾 が小さくなり、そして、それよりも大きい では概ね横ばいとなっている。

 よって、局所歪み速度の最大値を効率良く 下させるには、ロール径Dを300~600(mm)の範囲 設定するのが良いと考えられる。なお、こ 傾向は、図13Dの総歪みε all が2.0の場合のみならず、0.6、1.3、1.7について も同様に見受けられる(図13A乃至図13Cを参照) 従って、周速50~300(m/min)の範囲において0.6~2. 0の範囲の任意値の総歪みε all を不織布3に付与する場合には、ロール径Dを3 00~600(mm)にするのが好ましいと言える。

 図14は、局所歪み速度の最大値が100(sec ―1 )となる周速Sとロール径Dとの関係を示すグラ フであり、総歪みε all の水準を上述と同様に4水準(0.6、1.3、1.7、2.0) で振っている。なお、これらのグラフも、上 述と同様に噛み合い状態図に基づいて局所歪 み速度の最大値が100(sec ―1 )となる周速Sとロール径Dとの組み合わせを求 め、これらを縦軸及び横軸としてプロットし て取得される。

 図14を見ると、何れの総歪みε all の水準にあっても、ロール径Dが大きくなる つれて、局所歪み速度の最大値100(sec ―1 )を満足する周速Sが大きくなる傾向を示して り、もって、ロール径Dを大きくすれば、不 織布3の損傷を低いレベルに維持しながら、 速Sを高めて不織布3の生産能力の向上を図れ ることがわかる。よって、生産性を加味する と、ロール径Dを上述の300~600(mm)の範囲に設定 するよりは、450~600(mm)の範囲に設定する方が いと考えられ、更に好ましくは、550~600(mm) 範囲に設定すると良いと考えられる。

 ===その他の実施の形態===
 以上、本発明の実施形態について説明した 、本発明は、かかる実施形態に限定される のではなく、以下に示すような変形が可能 ある。

 上述の実施形態では、複数種類の繊維を む不織布3として、伸長性繊維と伸縮性繊維 との2種類の繊維を含む不織布3を例示したが 繊維の種類は何等2種類に限るものではなく 、3種類以上であっても良い。

 上述の実施形態では、複数種類の繊維を む不織布3として、伸長性繊維と伸縮性繊維 とが混合してなる混繊タイプの不織布3を例 したが、当該不織布3は混繊タイプに限るも ではない。例えば、不織布3の厚み方向に、 伸長性繊維のみの層と伸縮性繊維のみの層と が層状に分かれて積層されていても良い。な お、これらの層の数は2層に限るものではな 、例えば、伸縮性繊維のみの層が上下の伸 性繊維のみの層で挟まれた3層構造の不織布3 であっても良い。

 上述の実施形態では、ギア延伸にまつわ 設備としてギアロール41,43しか説明してい かったが、適宜な付帯設備を設けても良い 例えば、ギアロール41,43の上下流の位置にそ れぞれテンションロールを配置して不織布3 張力を付与しても良いし、ギアロール41,43や テンションロールを加熱するためのヒーター 等を配置しても良い。