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Title:
METHOD FOR PRODUCTION OF HEPATIC-LOBULE-LIKE CELL MASS FROM ADIPOSE-TISSUE-DERIVED CELL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/153180
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed are: a method for producing a hepatic-lobule-like cell mass from an adipose-tissue-derived cell, which is characterized by culturing the adipose-tissue-derived cell; a hepatic-lobule-like cell mass produced by the method; a method for the screening of a substance capable of promoting or inhibiting the formation of a hepatic-lobule-like cell mass, which is characterized by culturing an adipose-tissue-derived cell to produce the hepatic-lobule-like cell mass, wherein a candidate substance is added to a culture medium; and a kit for use in the screening method.

Inventors:
MATSUYAMA AKIFUMI (JP)
KOMODA HIROSHI (JP)
SAWA YOSHIKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/060980
Publication Date:
December 18, 2008
Filing Date:
June 16, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MATSUYAMA AKIFUMI (JP)
KOMODA HIROSHI (JP)
SAWA YOSHIKI (JP)
International Classes:
A61K35/12; A61L27/00; A61P1/16; C12N5/0775; C12N15/09; C12Q1/02
Domestic Patent References:
WO2006082890A12006-08-10
WO2007039986A12007-04-12
Foreign References:
JP2006254896A2006-09-28
JP2005502352A2005-01-27
Other References:
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See also references of EP 2172541A4
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ZUK ET AL., MOL. BIOL. CELL, vol. 13, 2002, pages 4279 - 4295
BESSEY, O. A. ET AL., J. BIO.L CHEM., vol. 164, 1946, pages 321 - 329
LABARCA, C. ET AL., BIOCHEM., vol. 102, 1980, pages 344 - 352
Attorney, Agent or Firm:
TANAKA, Mitsuo et al. (IMP Building 3-7, Shiromi 1-chome, Chuo-ku, Osaka-sh, Osaka 01, JP)
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Claims:
 脂肪組織由来細胞を培養することを特徴とする、脂肪組織由来細胞から肝小葉様細胞塊を得る方法。
 未分化細胞から肝小葉様細胞塊を得る工程を含む、請求項1記載の方法。
 (a)脂肪組織由来細胞から未分化細胞を得て、次に、
(b)該未分化細胞から肝小葉様細胞塊を得る、
工程を含む、請求項1または2記載の方法。
 未分化細胞から肝小葉様細胞塊を得る工程が、未分化細胞を浮遊化させた状態で培養し、肝小葉様細胞塊を形成させるものである、請求項2または3記載の方法。
 請求項1から4のいずれか記載の方法により得ることのできる、肝小葉様細胞塊。
 請求項5記載の肝小葉様細胞塊に含まれる、肝細胞。
 請求項5記載の肝小葉様細胞塊および/または請求項6記載の肝細胞を含む、肝機能の低下により生じる疾患を予防または治療するための医薬組成物。
 肝機能の低下により生じる疾患を予防または治療するための医薬品の製造のための、請求項5記載の肝小葉様細胞塊および/または請求項6記載の肝細胞の使用。
 請求項5記載の肝小葉様細胞塊および/または請求項6記載の肝細胞を対象に投与することを特徴とする、肝機能の低下により生じる疾患の治療または予防方法。
 脂肪組織由来細胞を培養して肝小葉様細胞塊を得る際に、候補物質を培地に添加することを特徴とし、肝小葉様細胞塊の形成が、候補物質不含系における形成と比較して促進されている場合に、該候補物質が肝小葉の形成を促進する物質であることを示す、肝小葉の形成を促進する物質をスクリーニングする方法。
 請求項10記載の方法により得ることのできる、肝小葉の形成を促進する物質。
 脂肪組織由来細胞を培養して肝小葉様細胞塊を得る際に、候補物質を培地に添加することを特徴とし、肝小葉様細胞塊の形成が、候補物質不含系における形成と比較して抑制されている場合に、該候補物質が肝小葉の形成を抑制する物質であることを示す、肝小葉の形成を抑制する物質をスクリーニングする方法。
 請求項12記載の方法により得ることのできる、肝小葉の形成を抑制する物質。
 請求項10または12記載の方法に用いられる、肝小葉の形成を促進または抑制する物質をスクリーニングするためのキット。
 脂肪組織由来細胞を培養して得られた肝小葉様細胞塊を候補物質を含む培地中で培養し、肝小葉様細胞塊の活性が、候補物質不含系における活性と比較して増大している場合に、該候補物質が肝小葉の活性を上昇させる物質であることを示す、肝小葉の活性を上昇させる物質をスクリーニングする方法。
 請求項15記載の方法により得ることのできる、肝小葉の活性を上昇させる物質。
 脂肪組織由来細胞を培養して得られた肝小葉様細胞塊を候補物質を含む培地中で培養し、肝小葉様細胞塊の活性が、候補物質不含系における活性と比較して低減している場合に、該候補物質が肝小葉の活性を低下させる物質であることを示す、肝小葉の活性を低下させる物質をスクリーニングする方法。
 請求項17記載の方法により得ることのできる、肝小葉の活性を低下させる物質。
 請求項15または17記載の方法に用いられる、肝小葉の活性を上昇または低下させる物質をスクリーニングするためのキット。
Description:
脂肪組織由来細胞から肝小葉様 胞塊を得る方法

 本発明は、脂肪組織由来細胞から肝小葉 胞塊を得る方法、それにより得ることので る肝小葉細胞塊、肝小葉の形成を促進また 抑制する物質および肝小葉の活性を上昇ま は低下させる物質をスクリーニングする方 、およびそのためのキットなどに関するも である。

 本邦は、諸外国に比べてC型肝炎の罹患率 が高い。C型肝炎ウイルスの感染により、慢 肝炎、肝硬変そして肝癌が発症することは 知の事実である。慢性肝炎、肝硬変の状態 はインターフェロンを主体とする内科的治 が効果的であるとされる。一方、肝癌が発 してしまえば、内科的に根治させることは 可能であり、外科的に腫瘍を摘出すること 第1選択となる。しかし、現実には進行した 硬変は肝癌の発症母地となるため、肝不全 対しても外科的治療を選択するしかなく、 篤な症例に至っては、TAEあるいはPEITといっ た治療法さえ試みることもできない。このよ うな重篤な肝硬変患者に対して肝移植が行わ れるようになって久しい。しかし、脳死肝移 植に関してはドナーの絶対的不足、また生体 肝移植に関してはドナーの安全性、健常人に メスをいれるという倫理的問題がある。そこ で、肝細胞再生による肝不全の治療という発 想が生まれた。

 近年、脂肪組織に、骨髄由来の間葉系幹 胞や臍帯血由来の幹細胞と同様に、transdiffe rentiationして脳神経系、筋骨格系、心脈管系 内分泌系の構成細胞に分化し得る細胞集団 存在が報告されている(非特許文献1)。脂肪 織は採取が容易であるので、採取された脂 組織由来間葉系幹細胞を、脂肪組織が由来 る対象のみならず、かかる対象以外の患者 用いたとしても倫理的問題は少ないとされ 。

 肝臓については、皮下脂肪組織由来幹細胞 用いて肝細胞に分化させたとの報告がある( 非特許文献2)。しかしながら、治療に用いる とができる、肝臓の最小機能単位である肝 葉を再生できるとの報告はなかった。
Gmble J. et al., Cytotherapy. 2003; 5(5): 362-9 Seo MJ. et al., Biochem Biophys Res Commun. 20 05 Mar 4; 328(1): 258-64

 本発明の解決課題は、脂肪組織由来細胞 ら肝臓の最小機能単位である肝小葉細胞塊 形成させる方法、およびそれにより得るこ のできる肝小葉細胞塊を提供することであ 。さらに、肝小葉の形成を促進または抑制 る物質および肝小葉の活性を上昇または低 させる物質をスクリーニングする方法、お びそのためのキットを開発することも、本 明の解決課題である。

 本発明者らは、上記事情に鑑み鋭意研究 重ねた結果、脂肪組織由来細胞から得られ 未分化細胞を培養すること、とりわけ、浮 化させた状態で培養することにより、高い 率で肝小葉様細胞塊を形成させ得ることを 出し、本発明を完成するに至った。

 すなわち、本発明は、
(1)脂肪組織由来細胞を培養することを特徴と する、脂肪組織由来細胞から肝小葉様細胞塊 を得る方法、
(2)未分化細胞から肝小葉様細胞塊を得る工程 を含む、(1)記載の方法、
(3)(a)脂肪組織由来細胞から未分化細胞を得て 、次に、
(b)該未分化細胞から肝小葉様細胞塊を得る、
工程を含む、(1)または(2)記載の方法、
(4)未分化細胞から肝小葉様細胞塊を得る工程 が、未分化細胞を浮遊化させた状態で培養し 、肝小葉様細胞塊を形成させるものである、 (2)または(3)記載の方法、
(5)(1)から(4)のいずれか記載の方法により得る ことのできる、肝小葉様細胞塊、
(6)(5)記載の肝小葉様細胞塊に含まれる、肝細 胞、
(7)(5)記載の肝小葉様細胞塊および/または(6) 載の肝細胞を含む、肝機能の低下により生 る疾患を予防または治療するための医薬組 物、
(8)肝機能の低下により生じる疾患を予防また は治療するための医薬品の製造のための、(5) 記載の肝小葉様細胞塊および/または(6)記載 肝細胞の使用、
(9)(5)記載の肝小葉様細胞塊および/または(6) 載の肝細胞を対象に投与することを特徴と る、肝機能の低下により生じる疾患の治療 たは予防方法、
(10)脂肪組織由来細胞を培養して肝小葉様細 塊を得る際に、候補物質を培地に添加する とを特徴とし、肝小葉様細胞塊の形成が、 補物質不含系における形成と比較して促進 れている場合に、該候補物質が肝小葉の形 を促進する物質であることを示す、肝小葉 形成を促進する物質をスクリーニングする 法、
(11)(10)記載の方法により得ることのできる、 小葉の形成を促進する物質、
(12)脂肪組織由来細胞を培養して肝小葉様細 塊を得る際に、候補物質を培地に添加する とを特徴とし、肝小葉様細胞塊の形成が、 補物質不含系における形成と比較して抑制 れている場合に、該候補物質が肝小葉の形 を抑制する物質であることを示す、肝小葉 形成を抑制する物質をスクリーニングする 法、
(13)(12)記載の方法により得ることのできる、 小葉の形成を抑制する物質、
(14)(10)または(12)記載の方法に用いられる、肝 小葉の形成を促進または抑制する物質をスク リーニングするためのキット、
(15)脂肪組織由来細胞を培養して得られた肝 葉様細胞塊を候補物質を含む培地中で培養 、肝小葉様細胞塊の活性が、候補物質不含 における活性と比較して増大している場合 、該候補物質が肝小葉の活性を上昇させる 質であることを示す、肝小葉の活性を上昇 せる物質をスクリーニングする方法、
(16)(15)記載の方法により得ることのできる、 小葉の活性を上昇させる物質、
(17)脂肪組織由来細胞を培養して得られた肝 葉様細胞塊を候補物質を含む培地中で培養 、肝小葉様細胞塊の活性が、候補物質不含 における活性と比較して低減している場合 、該候補物質が肝小葉の活性を低下させる 質であることを示す、肝小葉の活性を低下 せる物質をスクリーニングする方法、
(18)(17)記載の方法により得ることのできる、 小葉の活性を低下させる物質、
(19)(15)または(17)記載の方法に用いられる、肝 小葉の活性を上昇または低下させる物質をス クリーニングするためのキット、
を提供するものである。

 本発明により、脂肪組織由来細胞から肝 葉様細胞塊を得る方法およびそれにより得 ことのできる肝小葉様細胞塊、肝小葉の形 を促進または抑制する物質をスクリーニン する方法およびそれにより得ることのでき 肝小葉の形成を促進または抑制する物質、 小葉の活性を上昇または低下させる物質を クリーニングする方法およびそれにより得 ことのできる肝小葉の活性を上昇または低 させる物質、ならびにかかるスクリーニン のためのキットなどが提供される。

図1は、得られた脂肪組織由来細胞の顕 微鏡像である。 図2は、得られたアディポスフェアの顕 微鏡像である。 図3は、得られた肝小葉様細胞塊の顕微 鏡像である。 図4は、α-フェトプロテインについての 定量的RT-PCRの結果を示すグラフである。縦軸 はGAPDHの発現に対するα-フェトプロテインの 現の比率を表す。 図5は、アルブミンについての定量的RT- PCRの結果を示すグラフである。縦軸はGAPDHの 現に対するアルブミンの発現の比率を表す 図6は、ケラチン18についての定量的RT-P CRの結果を示すグラフである。縦軸はGAPDHの 現に対するケラチン18の発現の比率を表す。 図7は、ケラチン19についての定量的RT-P CRの結果を示すグラフである。縦軸はGAPDHの 現に対するケラチン19の発現の比率を表す。 図8は、CYP1B1についての定量的RT-PCRの結 果を示すグラフである。縦軸はGAPDHの発現に するCYP1B1の発現の比率を表す。 図9は、グルタミン合成酵素についての 定量的RT-PCRの結果を示すグラフである。縦軸 はGAPDHの発現に対するグルタミン合成酵素の 現の比率を表す。 図10は、肝小葉様細胞塊により産生さ たα-フェトプロテインについてのウェスタ ブロット分析の結果である。 図11は、肝小葉様細胞塊により産生さ たアルブミンについてのウェスタンブロッ 分析の結果である。 図12は、肝小葉様細胞塊におけるα-フ トプロテインの存在を免疫組織化学染色に り示す顕微鏡像である。 図13は、肝小葉様細胞塊におけるアル ミンの存在を免疫組織化学染色により示す 微鏡像である。 図14は、肝小葉細胞塊におけるDiI-LDLの 取り込みを示す蛍光顕微鏡像である。 図15は、肝小葉細胞塊におけるグリコ ゲンの蓄積をPAS染色により示す顕微鏡像で る。 図16は、肝小葉様細胞塊により生成さ た尿素量を示すグラフである。 図17は、肝炎マウスモデルにおける肝 葉様細胞塊の移植による効果を示すグラフ ある。縦軸は総ビリルビン濃度(mg/dL)を表す 。 図18は、マウス腎皮膜下への肝小葉様 胞塊の移植後における肝小葉様細胞塊の生 をHE染色により示す顕微鏡像である。 図19は、肝小葉様細胞塊の移植後にお るアルブミンの発現を免疫組織染色により す顕微鏡像である。 図20は、移植後の肝小葉様細胞塊にお るグリコーゲンの蓄積をPAS染色により示す 微鏡像である。 図21は、脂肪組織から得られたADMPCの 微鏡像である。 図22は、ADMPC由来のRNAを用いたRT-PCRの 果より神経提細胞特異的なマーカー遺伝子 発現を示す。 図23は、ADMPC由来のRNAを用いたRT-PCRの 果を示す電気泳動像である。 図24は、ADMPCを6継代したときのRT-PCRの 果を示すものである。 図25は、ADMPCにおけるSca-1の定量的PCRに よる発現量を示すグラフである。縦軸はSca-1/ GAPDHを表す。 図26は、ADMPCにおけるABCG2の定量的PCRに よる発現量を示すグラフである。縦軸はABCG2/ GAPDHを表す。 図27は、ADMPCにおけるSSEA-4、CD29、CD44、 CD73、CD105およびCD166の発現を示すFACS分析の結 果である。 図28は、従来法によるADSCと比較してADM PCでは線維芽細胞の夾雑が少ないことを示すF ACS分析の結果である。 図29は、ADMPCを分化させて得られた膵 分泌細胞の顕微鏡像である。 図30は、ADMPCを分化させて得られた肝 胞の顕微鏡像である。 図31は、ADMPCを分化させて得られた肝 胞におけるα-フェトプロテインの定量的PCR よる発現量を示すグラフである。縦軸はAFP( -フェトプロテイン)/GAPDHを表す。 図32は、ADMPCを分化させて得られた肝 胞におけるアルブミンの定量的PCRによる発 量を示すグラフである。縦軸はアルブミン/G APDHを表す。 図33は、ADMPCを分化させて得られた肝 胞におけるCYP1B1の定量的PCRによる発現量を すグラフである。縦軸はCYP1B1/GAPDHを表す。 図34は、ADMPCを分化させて得られた肝 胞におけるグルタミン合成酵素の定量的PCR よる発現量を示すグラフである。縦軸はグ タミン合成酵素/GAPDHを表す。 図35は、DMSOまたはOP9培養上清の存在下 にて培養された細胞におけるRT-PCRの結果を示 すものである。 図36は、定量的PCRによるDMSO存在下にて 培養した細胞におけるNkx2.5の発現を示すグラ フである。縦軸はNkx2.5/GAPDHを表す。 図37は、定量的PCRによるDMSO存在下にて 培養した細胞におけるGATA-4の発現を示すグラ フである。縦軸はGATA-4/GAPDHを表す。 図38は、定量的PCRによるDMSO存在下にて 培養した細胞におけるα-CAの発現を示すグラ である。縦軸はα-CA/GAPDHを表す。 図39は、定量的PCRによるDMSO存在下にて 培養した細胞におけるMLCの発現を示すグラフ である。縦軸はMLC/GAPDHを表す。 図40は、定量的PCRによるDMSO存在下にて 培養した細胞におけるMHCの発現を示すグラフ である。縦軸はMHC/GAPDHを表す。 図41は、ADMPC由来心筋芽細胞を含むシ トの強拡像である。 図42は、ADMPC由来心筋芽細胞を含むシ トの移植前2週間、移植前、移植後4週間およ び16週間における心エコー図である。上段はM Iコントロール、下段はADMPC由来心筋芽細胞を 含むシートを移植した心臓のものである。 図43は、ADMPCを含むシートの移植前2週 、移植前、移植後4週間および16週間におけ 心エコー図である。上段はMIコントロール 下段はADMPCを含むシートを移植した心臓のも のである。 図44は、ADMPC由来心筋芽細胞を含むシ ト(丸)、およびADMPCを含むシート(四角)を移 した心臓のLVDdの改善を示すグラフである(縦 軸の単位;mm)。 図45は、ADMPC由来心筋芽細胞を含むシ ト(丸)、およびADMPCを含むシート(四角)を移 した心臓のLVDsの改善を示すグラフである(縦 軸の単位;mm)。 図46は、ADMPC由来心筋芽細胞を含むシ ト(丸)、およびADMPCを含むシート(四角)を移 した心臓の%EFの改善を示すグラフである。 図47は、ADMPC由来心筋芽細胞を含むシ ト(丸)、およびADMPCを含むシート(四角)を移 した心臓の%FSの改善を示すグラフである。 図48は、ADMPCを含むシート(四角)と比較 してADMPC由来心筋芽細胞を含むシート(三角) 移植した心臓のLVDsの改善を示すグラフであ 。 図49は、ADMPCを含むシート(四角)と比較 してADMPC由来心筋芽細胞を含むシート(三角) 移植した心臓の%EFの改善を示すグラフであ 。 図50は、心筋芽細胞を含むシートを移 した心臓のHE染色像(100倍)である。 図51は、ADMPCを含むシートを移植した 臓のHE染色像(100倍)である。 図52は、心筋芽細胞を含むシートを移 した心臓を抗ヒトα-CA抗体を用いて免疫染 したときの、顕微鏡像(100倍)である。 図53は、ADMPCを含むシートを移植した 臓を抗ヒトα-CA抗体を用いて免疫染色したと きの、顕微鏡像(100倍)である。 図54は、心筋芽細胞を含むシートを移 した心臓を抗ヒトMHC抗体を用いて免疫染色 たときの、顕微鏡像(100倍)である。 図55は、ADMPCを含むシートを移植した 臓を抗ヒトMHC抗体を用いて免疫染色したと の、顕微鏡像(100倍)である。 図56は、ADMPC由来心筋芽細胞およびADMPC を含むシートの移植後における心臓の構造を 、抗ヒトα-CA抗体を用いて免疫染色したとき 顕微鏡像を示すグラフである。 図57は、ADMPC由来心筋芽細胞およびADMPC を含むシートの移植後における心臓の構造を 、抗ヒトMHC抗体を用いて免疫染色したときの 顕微鏡像を示すグラフである。 図58は、ADMPC由来心筋芽細胞およびADMPC を含むシートを移植した後における抗ヒトα- CA抗体陽性領域の厚みを表した図である。 図59は、ADMPC由来心筋芽細胞およびADMPC を含むシートを移植した後における抗ヒトα- CA抗体陽性領域の厚みを指標にグラフ化した である。 図60は、心筋芽細胞を含むシートを移 した心臓を抗ヒトHLA-ABC抗体を用いて免疫染 色したときの、顕微鏡像(100倍)である。 図61は、ADMPCを含むシートを移植した 臓を抗ヒトHLA-ABC抗体を用いて免疫染色した きの、顕微鏡像(100倍)である。 図62は、ADMPCおよびADSCの脂肪細胞への 化状態をオイルレッドO染色により比較した 図である。 図63は、ADMPCを分化させて得られた脂 細胞に含まれる脂質含有量を示すグラフで る。縦軸は脂質含有量(オイルレッドO含量/ ェル)を表す。 図64は、ADMPCおよびADSCの骨への分化状 をアリザリンレッド染色により比較した図 ある。 図65は、ADMPCおよびADSCの骨への分化状 をアルカリホスファターゼ活性により比較 た図である。

 本発明は、1の態様において、脂肪組織由 来細胞を培養することを特徴とする、脂肪組 織由来細胞から肝小葉様細胞塊を得る方法に 関するものである。本発明は、肝臓の最小機 能単位である肝小葉に類似する細胞塊を形成 できる点で非常に優れている。脂肪組織由来 細胞とは、内臓脂肪組織または皮下脂肪組織 から得られる細胞または細胞集団、あるいは 間葉系肝細胞、ES細胞の様な幹細胞から分化 導された生体内の脂肪組織に含まれる細胞 類似した細胞または細胞集団をいう。通常 は、脂肪組織由来細胞とは、脂肪組織由来 細胞、脂肪組織由来間質細胞、後述の脂肪 織由来多系統前駆細胞、脂肪前駆細胞また これらに類似する細胞のいずれか、あるい これら全てまたは一部からなる混合物を含 細胞集団をいう。脂肪組織由来細胞は、当 者に公知の手段・方法により脂肪組織など ら得ることができる。さらに、得られた脂 組織由来細胞を、当業者に公知の手段・方 を用いて増殖させ、例えば、形質を安定さ てもよい。脂肪組織由来細胞を、デキサメ ゾンおよびアスコルビン酸を含む培地、例 ば、ITS(10.0mg/L インスリン、5.5mg/L トラン フェリン、6.7ng 亜セレン酸ナトリウム)、1nM  デキサメサゾン、0.1mM アスコルビン酸、10n g/mL rhEGF、および5% FCSを添加した60% DMEM(低 ルコース)および40% MCDB201培地中、フィブロ クチンコートディッシュなどの培養器にて 養することにより、脂肪組織由来細胞を増 させてもよい。

 脂肪組織由来細胞が由来する動物種は、 に限定されず、好ましくは、例えば、マウ 、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウ 、サルなどを含む哺乳類、より好ましくは ヒトである。得られた肝小葉様細胞塊を用 て疾患を予防または治療すべき動物種と同 の動物種、あるいは同一個体の脂肪組織由 細胞を用いることがより好ましい。脂肪組 は生体内に十分量存在し、比較的容易に得 れるため、例えば、死体などの限られた材 から肝小葉を得る方法などと比較して、本 明は非常に優れている。例えば、自己由来 脂肪組織由来細胞を用いて本発明の上記方 を行い、得られた肝小葉様細胞塊を自己移 することで、拒絶反応を危惧することなく 硬変などの肝機能の低下により生じる疾患 治療することが可能になる。

 肝小葉様細胞塊とは、生体内の肝小葉、 よびそれに類似する機能・形態を有する細 塊をいい、例えば、肝細胞、胆管上皮細胞 内皮細胞、クッパー細胞、肝星細胞などを む。本発明の肝小葉様細胞塊は、個々の肝 胞と比べ、十分な量の分泌タンパク質を産 できる点、高い代謝能を有する点、高い解 能を有する点などで非常に優れている。ま 、細胞塊を形成させることで、例えば、移 等の目的に用い易いという利点も有する。

 本発明の、脂肪組織由来細胞から肝小葉 細胞塊の取得方法は、重要な工程として、 分化細胞から肝小葉様細胞塊を形成させる 程を含むことが好ましい。本発明の、脂肪 織由来細胞から肝小葉様細胞塊の取得方法 、重要な工程として、脂肪組織由来細胞か 未分化細胞を得る工程をさらに含むことが ましい。これらの工程は、連続して行われ もよいし、あるいは並行して行われてもよ 。

 未分化細胞とは、多種多様な細胞、例え 、肝前駆細胞、膵前駆細胞、心筋前駆細胞 血管内皮前駆細胞、骨芽細胞、軟骨芽細胞 どに分化することのできる細胞をいう。未 化細胞を得る工程は、得られた未分化細胞 増殖させる工程をさらに含んでいてもよい 未分化細胞を増殖させることで、肝小葉様 胞塊の形成効率を増大させ、得られる肝小 様細胞塊の数を増加させることなどが可能 ある。未分化細胞を得る工程は、例えば、 ーティング、MACS、ロゼッタ形成法などの抗 原抗体反応による方法、密度勾配法、形態的 に選別する方法、単一細胞クローン化などの 既知の方法を用いて行われてもよいし、脂肪 組織由来細胞を浮遊化させた状態で培養し、 アディポスフェアを形成させることにより行 われてもよい。すでに分化した細胞を死滅さ せ、かつ未分化細胞を生存・増殖させること が可能であるため、脂肪組織由来細胞を浮遊 化させた状態で培養し、アディポスフェアを 形成させることが好ましい。浮遊化状態での 培養については、後述する。ここで、アディ ポスフェアとは、未分化細胞を主成分として 含む球状体であると定義する。アディポスフ ェアの形成と次の肝小葉様細胞塊への分化は 、連続してまたは同時に生じ得るので、アデ ィポスフェアは未分化細胞の他に肝細胞、胆 管上皮細胞、内皮細胞、クッパー細胞、肝星 細胞などを含んでいてもよい。

 肝小葉様細胞塊を得る工程は、未分化細 を例えば、線維芽細胞増殖因子、肝細胞増 因子、オンコスタチンM、上皮増殖因子、お よびジメチルスルホキシドを含む培地にて培 養することにより行われ、好ましくは、かか る工程は、未分化細胞を浮遊化させた状態で 培養することにより行われる。浮遊化させて 培養することで、生体内の肝小葉に類似した 形態を有する細胞塊をより容易に得ることが できる。未分化細胞の浮遊化状態での培養は 、培養容器との接着を防止あるいは抑制して 遊離した状態に細胞を置いて、培養すること を意味する。細胞の浮遊化は種々の公知の手 段・方法で行うことができる。例えば、細胞 の接着を防止あるいは抑制するように処理さ れた、あるいは細胞の接着を防止あるいは抑 制するような材料で作られた培養容器または 装置を用いて細胞を浮遊化状態においてもよ い。培養容器または装置としては、シリコン 処理された培養容器(例えば、シリコン化フ スコ)または低接着性培養ディッシュ(例えば 、ハイドロセル(CellSeed))のごとき低接着性培 容器などがある。あるいはハンギング・ド ップ培養法を用いて細胞を浮遊化させた状 で培養させてもよい。また、浮遊化の開始 点において、あるいは浮遊化を継続させる めに、適宜、公知の手段・方法を併用して よい。かかる手段・方法の例としては、ト プシン/EDTA、コラゲナーゼ、Cell Dissociation  Buffer(GIBCO Invitrogen)などの酵素またはキレー 剤により細胞を遊離させること、スクレー ーなどを用いて物理的に細胞を掻き取るこ 、あるいは細胞回収用温度応答性培養器材( えば、レプセル(CellSeed))にて細胞を培養後 例えば、20℃で30分間インキュベーションし 細胞を剥離させる方法などがある。未分化 胞を浮遊化させた状態で培養することによ 、上記肝小葉様細胞塊が形成される。

 本発明は、もう1つの態様において、上記 方法により得ることのできる肝小葉様細胞塊 に関するものである。上述の通り、本発明の 肝小葉様細胞塊は肝細胞を含む。例えば、肝 硬変などの肝機能の低下により生じる疾患ま たはその素因を有する対象または該対象と同 種のものの脂肪組織から採取した細胞を用い て上記方法を行い、得られた肝小葉様細胞塊 を該対象に移植することで、肝硬変などの肝 機能の低下により生じる疾患を治療または予 防することなどが可能である。

 本発明は、さらなる態様において、上記 法により得ることのできる肝小葉様細胞塊 含まれる肝細胞に関するものである。

 本発明は、なおさらなる態様において、 記方法により得ることのできる肝小葉様細 塊および/またはかかる肝小葉様細胞塊に含 まれる肝細胞を含む、肝機能の低下により生 じる疾患を予防または治療するための医薬組 成物に関するものである。肝機能の低下によ り生じる疾患とは、肝臓の機能の低下のみな らず機能不全により生じる疾患を含み、例え ば、肝炎、肝硬変、肝癌、肝不全、薬剤性肝 障害、アルコール性肝障害、先天性代謝異常 、胆汁うっ滞性肝障害などである。本発明の 医薬組成物において、肝小葉様細胞塊または 肝細胞はPBSのような適当な溶液中に懸濁され ていてもよい。また、本発明の医薬組成物は 、肝小葉様細胞塊または肝細胞の他、それら の肝臓への生着を促進させる物質、肝機能改 善薬、適当な添加剤、賦形剤などを含んでい てもよい。

 本発明はまた、別のさらなる態様におい 、肝機能の低下により生じる疾患を予防ま は治療するための医薬品の製造のための、 記方法により得ることのできる肝小葉様細 塊および/またはかかる肝小葉細胞塊に含ま れる肝細胞の使用に関するものである。

 本発明は、別の態様において、上記培養 法により得ることのできる肝小葉様細胞塊 よび/またはかかる肝小葉様細胞塊に含まれ る肝細胞を対象に投与することを特徴とする 、肝機能の低下により生じる疾患の治療また は予防方法に関するものである。拒絶反応等 の点から、好ましくは、同一種、あるいは自 己の脂肪組織由来細胞から得ることのできる 肝小葉様細胞塊または肝細胞が本発明におい て用いられる。肝小葉様細胞塊または肝細胞 は、例えば、腎皮膜下、経門脈的に肝臓内、 大網内、腹腔内、脾臓内、皮下などに移植ま たは注射されてもよい。対象は、いずれのも のであってもよく、ヒト対象であってもよい し、ヒト以外の対象、例えば、マウス、サル などの哺乳類であってもよい。肝小葉様細胞 塊または肝細胞の投与量、投与回数などは、 例えば、対象の状態、疾患の重篤度などの種 々の因子に応じて適宜選択される。

 本発明はさらに、肝小葉細胞塊および/ま たはかかる肝小葉様細胞塊に含まれる肝細胞 を投与することを特徴とする、血中ビリルビ ン濃度を低減させる方法に関するものである 。かかる方法は、in vivoおよびin vitroのいず において行われてもよい。

 本発明は、さらに別の態様において、脂 組織を培養して肝小葉様細胞塊を得る際に 候補物質を培地に添加することを特徴とし 肝小葉様細胞塊の形成が、候補物質不含系 おける形成と比較して促進されている場合 、該候補物質が肝小葉の形成を促進する物 であることを示す、肝小葉の形成を促進す 物質をスクリーニングする方法に関するも である。上述の通り、肝小葉様細胞塊には 細胞が含まれるので、かかる方法は、肝細 への分化を促進する物質のスクリーニング 法も包含する。候補物質としては種々のも があり、例えば、塩基性線維芽細胞増殖因 、肝細胞増殖因子、またはオンコスタチンM のアナログまたは誘導体などが挙げられるが 、これらに限定されない。脂肪組織から肝小 葉様細胞塊を得る際の候補物質の培地への添 加は、脂肪組織由来細胞から未分化細胞を得 る工程、および未分化細胞から肝小葉様細胞 塊を得る工程のいずれか、あるいは両方で1 または複数回行われてもよい。

 肝小葉様細胞塊の形成は、例えば、顕微 観察により形成された肝小葉様細胞塊の数 計測すること、培養上清中に分泌されたα- ェトプロテイン、アルブミンなどを例えば ELISAを用いて定量すること、α-フェトプロ イン、アルブミン、CYP1B1、グルタミン合成 素、ケラチン18、ケラチン19などの遺伝子の 現を定量的PCRにより測定すること、あるい 肝小葉への分化・形成に伴い発現が減少ま は増加することが分かっているマーカー物 、例えば、トランスサイレチン、α1-抗トリ プシン、チロシンアミノトランスフェラーゼ 、グルコース-6-ホスファターゼなどを定量的 PCRまたはELISAなどにより測定することなどに り、調べることができる。

 従って、本発明は、さらなる態様におい 、上記スクリーニング方法により得ること できる、肝小葉の形成を促進する物質に関 るものである。かかる物質を本発明の脂肪 織由来細胞から肝小葉様細胞塊を得る方法 用いて、得られる肝小葉様細胞塊の数を増 させてもよいし、肝小葉様細胞塊の形成速 を増大させてもよい。または、かかる物質 、肝機能の低下により生じる疾患の治療ま は予防に用いてもよい。

 本発明のさらに別の態様は、脂肪組織由 細胞を培養して肝小葉様細胞塊を得る際に 候補物質を培地に添加することを特徴とし 肝小葉様細胞塊の形成が、候補物質不含系 おける形成と比較して抑制されている場合 、該候補物質が肝小葉の形成を抑制する物 であることを示す、肝小葉の形成を抑制す 物質をスクリーニングする方法に関するも である。上述の通り、肝小葉様細胞塊には 細胞が含まれるので、かかる方法は、肝細 への分化を抑制する物質のスクリーニング 法も包含する。候補物質としては、種々の のがあり、例えば、四塩化炭素、フェノバ ビタールなどの肝毒性を有する薬剤のアナ グまたは誘導体などが挙げられるが、これ に限定されない。かかるスクリーニング方 により得ることのできる物質は、肝機能の 進により生じる疾患の治療または予防に適 ていると考えられる。候補物質の培地への 加、肝小葉様細胞塊の形成を調べる手段・ 法については上述の通りである。

 従って、本発明は、さらなる態様におい 、上記スクリーニング方法により得ること できる、肝小葉の形成を抑制する物質に関 るものである。

 本発明は、なおさらに別の態様において 肝小葉の形成を促進または抑制する物質を クリーニングするための上記方法に用いら るキットに関するものである。本発明のキ トは、脂肪組織からの細胞取得手段、培地 培養容器、ならびに肝小葉様細胞塊の形成 調べる手段等を含んでいてもよい。通常に 、取扱説明書をキットに添付する。かかる ットを用いて、上記スクリーニングを迅速 つ容易に行うことができる。

 本発明は、もう1つの態様において、脂肪 組織由来細胞を培養して得られた肝小葉様細 胞塊を候補物質を含む培地中で培養し、肝小 葉様細胞塊の活性が、候補物質不含系におけ る活性と比較して増大している場合に、該候 補物質が肝小葉の活性を上昇させる物質であ ることを示す、肝小葉の活性を上昇させる物 質をスクリーニングする方法に関するもので ある。肝小葉の活性とは、肝小葉の解毒作用 、タンパク質合成能、代謝作用などをいう。

 肝小葉様細胞塊の活性の上昇は、例えば 培養上清中に分泌されたα-フェトプロテイ 、アルブミンなどをELISAなどを用いて定量 、かかるタンパク質量の増減により、ある はα-フェトプロテイン、アルブミン、CYP1B1 グルタミン合成酵素、ケラチン18、ケラチン 19などの遺伝子の発現を定量的PCRにより測定 、かかる遺伝子の発現の増減により、調べ ことができる。候補物質としては種々のも があり、例えば、塩基性線維芽細胞増殖因 、肝細胞増殖因子、またはオンコスタチンM のアナログまたは誘導体などが挙げられるが 、これらに限定されない。候補物質の培地へ の添加は、1回または複数回行われてもよい

 従って、本発明は、さらなる態様におい 、上記スクリーニング方法により得ること できる、肝小葉の活性を上昇させる物質に するものである。かかる物質を本発明の脂 組織由来細胞から肝小葉様細胞塊を得る方 に用いて、得られる肝小葉様細胞塊の活性 増大させてもよい。または、かかる物質を 肝機能の低下により生じる疾患の治療また 予防に用いてもよい。

 本発明は、別の態様において、脂肪組織 来細胞を培養して得られた肝小葉様細胞塊 候補物質を含む培地中で培養し、肝小葉様 胞塊の活性が、候補物質不含系における活 と比較して低減している場合に、該候補物 が肝小葉の活性を低減させる物質であるこ を示す、肝小葉の活性を低減させる物質を クリーニングする方法に関するものである 候補物質としては種々のものがあり、例え 、四塩化炭素、フェノバルビタールなどが げられるが、これらに限定されない。候補 質の培地への添加、肝小葉様細胞塊の活性 調べる手段・方法については上述の通りで る。

 従って、本発明は、さらなる態様におい 、上記スクリーニング方法により得ること できる、肝小葉の活性を低減させる物質に するものである。

 本発明は、なおさらに別の態様において 肝小葉の活性を上昇または低減させる物質 スクリーニングするための上記方法に用い れるキットに関するものである。本発明の ットは、脂肪組織からの細胞取得手段、培 、培養容器、ならびに肝小葉様細胞塊の活 を調べる手段等を含んでいてもよい。通常 は、取扱説明書をキットに添付する。かか キットを用いて、上記スクリーニングを迅 かつ容易に行うことができる。

 本発明は、1の態様において、脂肪組織由 来多系統前駆細胞を含む細胞集団に関するも のである。脂肪組織由来多系統前駆細胞は、 内胚葉、中胚葉、外胚葉などの種々の細胞系 列に分化することができる細胞であって、未 分化マーカーであるIslet-1を発現する細胞を う。脂肪組織由来多系統前駆細胞は、脂肪 織の他、胚性幹細胞などから分化させて得 ことができる。脂肪組織由来多系統前駆細 が由来する動物種は特に限定されず、好ま くは、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウ ギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、サルなどを む哺乳類、より好ましくは、ヒトである。 るいは、かかる細胞集団を用いた再生医療 より治療されるべき対象と同種または同一 ものが好ましい。

 本発明の細胞集団は、非所望な夾雑物、 えば、赤血球、血管内皮細胞などの脂肪組 由来多系統前駆細胞以外の細胞の割合が低 ので、培養の容易さ、高い分化効率などの 点を有する。かかる夾雑物を除去する手段 しては、脂肪組織由来多系統前駆細胞の比 との差を利用した手段・方法、例えば、比 法、脂肪組織由来多系統前駆細胞の付着性 の差を利用した手段・方法、例えば、EDTAの ようなキレート剤、トリプシンのような酵素 を用いた方法、ソーティング、MACSなどの抗 抗体法、形態的に選別する方法、単一細胞 ローン化、溶血法などが挙げられる。細胞 団における夾雑物の低減は、例えば、夾雑 が有するマーカーをRT-PCR、ELISAなどの方法を 用いて定量することにより、顕微鏡下で視覚 的に、あるいはフローサイトメトリー、免疫 組織染色により確認され得る。

 本発明の細胞集団は、好ましくは、少な とも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85% 90%、93%、96%、または99%の脂肪組織由来多系 前駆細胞を含む。脂肪組織由来多系統前駆 胞がかかる割合含まれることにより、本発 の細胞集団は、脂肪組織由来多系統前駆細 の維持が容易であること、分化させたとき 効率が高いことなどの利点を有する。本発 の細胞集団は、脂肪組織由来多系統前駆細 以外の他、フィーダー細胞のような脂肪組 由来多系統前駆細胞の維持または分化に有 な細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞などを んでいてもよい。かかる細胞を含むことに り、上記利点が増強され得る。

 本発明は、別の態様において、脂肪組織 ら脂肪組織由来多系統前駆細胞を得る方法 あって、(a)脂肪組織由来細胞集団から赤血 を除去し、前脂肪組織由来多系統前駆細胞 団を得て;次に、(b)該前脂肪組織由来多系統 前駆細胞集団から脂肪組織由来多系統前駆細 胞以外の細胞を除去し、脂肪組織由来多系統 前駆細胞を得る、工程を含む方法に関するも のである。本発明により、脂肪組織由来の脂 肪組織由来多系統前駆細胞以外の細胞を低減 させ、脂肪組織由来多系統前駆細胞を高収率 かつ高純度で得ることができる。本発明にお いて、上記工程は、連続して行われてもよい し、あるいは並行して行われてもよい。本発 明のこの態様に用いられる脂肪組織は、生体 内の皮下脂肪組織および内臓脂肪組織のいず れであってもよい。脂肪組織が由来する動物 種は特に限定されず、好ましくは、例えば、 ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ 、ウシ、ウマ、サルなどを含む哺乳類、より 好ましくは、ヒトである。あるいは、本発明 の方法により得ることのできる脂肪組織由来 多系統前駆細胞を用いた再生医療により治療 されるべき対象と同種または同一のものが好 ましい。

 本明細書において用いられる脂肪組織由 細胞集団は、少なくとも脂肪組織由来多系 前駆細胞を含む細胞集団をいう。脂肪組織 来細胞集団は、脂肪組織由来多系統前駆細 の他に、赤血球、血管内皮細胞、線維芽細 などを含んでいてもよい。脂肪組織由来細 集団は、例えば、脂肪組織をコラゲナーゼ どの酵素により、あるいは物理的手段・方 により処理し、および/または脂質などを例 えば、遠心分離、フィルター処理により除去 して得られる。

 赤血球は脂肪組織由来多系統前駆細胞を 着する性質を有し、これにより、脂肪組織 来多系統前駆細胞の収率を低下させ得る。 って、脂肪組織由来細胞集団から赤血球を 去することが必要になる。脂肪組織由来細 集団からの赤血球の除去は、いずれの手段 方法により行われてもよく、例えば、赤血 とそれ以外の細胞の付着性の差に基づくも 以外の手段・方法で行われるものであって よい。好ましくは、かかる除去は、比重法 溶血法、フィルター法により、より好まし は、比重法により行われる。比重法は、適 な比重の比重液、例えば、Lymphoprepなどの市 販の比重液を用いて行われ得る。用いられる 比重液の比重は、赤血球とそれ以外の細胞の 比重の間のものであればよく、好ましくは、 1.063~1.119、より好ましくは、1.070~1.110、最も ましくは、1.077である。

 本明細書において用いられる前脂肪組織 来多系統前駆細胞集団は、少なくとも脂肪 織由来多系統前駆細胞を含む細胞集団をい 。前脂肪組織由来多系統前駆細胞集団は、 肪組織由来多系統前駆細胞の他に、血管内 細胞、線維芽細胞などを含んでいてもよい 上述の通り、前脂肪組織由来多系統前駆細 集団は、実質上、赤血球を含まない。赤血 を除去して、前脂肪組織由来多系統前駆細 集団を形成させることで、続く脂肪組織由 多系統前駆細胞以外の細胞の除去が容易か 効率よく行われ得る。

 本明細書において用いられる脂肪組織由 多系統前駆細胞以外の細胞は、血管内皮細 、線維芽細胞などの付着細胞などをいう。 脂肪組織由来多系統前駆細胞集団からの脂 組織由来多系統前駆細胞以外の細胞の除去 、いずれの手段・方法により行われてもよ が、好ましくは、トリプシン以外の物質、 り好ましくは、EDTA、EGTAなどのキレート剤 最も好ましくは、EDTAを用いて行われる。好 しくは、かかる除去は、脂肪組織由来多系 前駆細胞とそれ以外の細胞との付着性の差 基づき、行われるものである。上記の他、 えば、フィルター濾過などにより、脂肪組 由来多系統前駆細胞以外の細胞を除去する とができる。これらの細胞を除去すること 、得られる脂肪組織由来多系統前駆細胞集 の純度、および収率が上昇する。

 本発明は、別の態様において、上記脂肪 織から脂肪組織由来多系統前駆細胞を得る 法により得ることのできる脂肪組織由来多 統前駆細胞に関するものである。かかる脂 組織由来多系統前駆細胞は、上述の通りIsle t-1を発現する。

 本発明は、さらなる態様において、上記 肪組織から脂肪組織由来多系統前駆細胞を る方法により得ることのできる脂肪組織由 多系統前駆細胞を含む細胞集団に関するも である。かかる細胞集団は、赤血球、血管 皮細胞などの不所望な脂肪組織由来の細胞 実質上含まないが、フィーダー細胞などの 肪組織由来多系統前駆細胞の維持・分化な に有効な細胞を含んでいてもよい。

 さらに、本発明により、シートを構成す のに十分な量の心筋芽細胞が提供される。 って、本発明は、1の態様において、心筋芽 細胞を含むシートを提供するものである。本 明細書において、心筋芽細胞とは、心筋細胞 に分化するよう方向付けられた細胞であって 、α-cardiac actin(α-CA)およびMyosin Light Chain(MLC )を発現している細胞をいう。心筋芽細胞が 来する動物種は特に限定されず、好ましく 、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、サルなどを含む 乳類、より好ましくは、ヒトである。ある は、かかる心筋芽細胞を含むシートが適用 れる対象と同種、または同一のものが好ま い。例えば、対象と同種または同一動物由 の心筋芽細胞を含むシートを対象に移植す ことで、拒絶反応を危惧することなく重症 不全を治療することなどが可能となる。

 心筋芽細胞を含むシートとは、心筋芽細 を必須構成成分として含む細胞塊をいう。 ートにおいて、心筋芽細胞は単層または重 のいずれの形態で含まれていてもよい。シ ト形態を有することにより、移植等に用い 際の取扱が容易になる。シートの心筋芽細 以外の構成成分は、いずれのものであって よく、例えば、脂肪組織由来幹細胞、心筋 胞、細胞用のスキャホールド、血管内皮、 トリクスなどが挙げられる。シートの大き および厚さは、適用される傷害領域の大き など種々の条件に応じて適宜選択され得る

 シートに含まれる心筋芽細胞の割合は、 に限定されず、例えば、かかるシートが適 される対象の状態など種々の条件に応じて 宜選択され得る。該割合は、例えば、5%、10 %、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、10 0%などである。心筋芽細胞の割合は、当業者 既知の手段、例えば、定量的RT-PCRを用いて 筋芽細胞マーカー遺伝子であるα-CAまたはML Cを定量することにより、決定され得る。

 本発明のシートの機能は、公知の方法、 えば、シートを対象に移植して、移植され 対象の心機能を心エコーにより、あるいは 張末期径(LVDd)、収縮末期径(LVDs)、左室駆出 (%EF)または左室内径短縮率(%FS)などを計測す ることにより評価して、調べることができる 。

 本発明は、もう1つの態様において、脂肪 組織由来幹細胞を培養することを特徴とする 、心筋芽細胞を得る方法を提供する。該方法 により、脂肪組織由来幹細胞から心筋芽細胞 を大量に得ることが可能となる。該方法は、 脂肪組織由来細胞から脂肪組織由来幹細胞を 得る工程を含んでいてもよい。脂肪組織由来 幹細胞とは、内胚葉、中胚葉、外胚葉などの 種々の細胞系列に分化することができる細胞 をいい、未分化マーカーであるIslet-1を発現 ている脂肪組織由来多系統前駆細胞(ADMPC)を む。脂肪組織由来幹細胞が由来する動物種 特に限定されず、好ましくは、例えば、ヒ 、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、 シ、ウマ、サルなどを含む哺乳類、より好 しくは、ヒトである。あるいは、かかる脂 組織由来幹細胞から得られた心筋芽細胞を いて治療されるべき対象と同種または同一 ものが好ましい。

 好ましくは、本発明の心筋芽細胞を得る 法は、脂肪組織由来幹細胞をDMSOまたはOP9培 養上清の存在下で培養する工程を含むもので ある。かかる条件下で脂肪組織由来幹細胞を 培養することにより、該細胞が心筋芽細胞に 分化および/または誘導され得る。かかる培 に用いられる培地は、適宜選択され得る。 かる培地は、例えば、レチノイン酸、BMP2、B MP4、TGFβ2、HGF、bFGF、チロキシン、オキシト ンまたは脂肪酸濃縮液などの種々の因子を むものであってもよい。心筋芽細胞への分 は、例えば、α-CAまたはMLCなどの心筋芽細胞 マーカーの発現をRT-PCRによって測定すること により、調べることができる。

 従って、本発明は、さらなる態様におい 、上記心筋芽細胞を得る方法により得るこ のできる心筋芽細胞を提供するものである かかる心筋芽細胞を心筋梗塞、心筋症など 心疾患の治療に用いることもできるし、あ いは心筋芽細胞を含むシートの材料として いることもできる。

 本発明は、別の態様において、心筋芽細 を含むシートを得る方法であって、下記工 :(a)脂肪組織由来幹細胞を心筋芽細胞に分化 させ、次に、(b)心筋芽細胞を含むシートを形 成させる、を含む方法を提供するものである 。これらの工程は、連続して行われてもよい し、あるいは並行して行われてもよい。かか る方法により、心筋芽細胞を含むシートを容 易かつ効率的に得ることができる。脂肪組織 由来幹細胞を心筋芽細胞に分化させる工程は 、上述の通りである。

 心筋芽細胞から心筋芽細胞を含むシートを 成させる工程は、当業者に既知の手段また 方法により達成され得る。好ましくは、該 程は、心筋芽細胞を付着した状態で増殖さ て細胞塊を形成させ、次に、形成された細 塊を剥離することにより達成され得る。用 られる心筋芽細胞の数、および培養時間は 得られるシートの大きさ、シートに含まれ 心筋芽細胞の数など種々の条件に応じて適 選択され得る。例えば、心筋芽細胞10 5 ~10 6 個を24~72時間培養することにより、シートを てもよい。細胞塊の剥離は、種々の手段、 えば、物理的刺激により行われ得る。ある は、心筋芽細胞を温度感受性培養皿にて培 し、例えば、20℃以下にてインキュベーシ ンすることにより、細胞塊を剥離してもよ 。

 従って、本発明は、さらなる態様におい 、上記心筋芽細胞を含むシートを得る方法 より得ることのできる、心筋芽細胞を含む ートに関するものである。かかる心筋芽細 を含むシートを、心筋梗塞、心筋症などの 疾患の治療に用いることができる。

 本発明は、別の態様において、心筋芽細 を含むシートまたは心筋芽細胞を対象に移 することを特徴とする、心筋の機能低下に り生じる疾患を治療および/または予防する 方法に関するものである。心筋の機能低下に より生じる疾患とは、例えば、急性心筋梗塞 、陳旧性心筋梗塞、虚血性心筋梗塞、拡張型 心筋症、先天性心疾患などである。対象への 移植は、当業者に既知の方法により行われ得 る。例えば、心筋芽細胞を含むシートを、心 筋の機能が低下した領域に移植することによ り、あるいは心筋芽細胞を冠動脈経由で移植 することにより、行われ得る。移植するシー トの大きさおよび厚さ、シートに含まれる心 筋芽細胞の数、および心筋芽細胞数は、対象 の状態、傷害領域の大きさなど種々の条件に 応じて適宜選択され得る。

 従って、本発明は、さらなる態様におい 、心機能の低下により生じる疾患を治療お び/または予防するための、心筋芽細胞を含 むシートまたは心筋芽細胞を含む組成物を提 供するものである。かかる組成物は、該シー トまたは心筋芽細胞以外に、例えば、PBS、培 地、生着を促進させる物質、心機能改善薬、 成長因子、増殖因子などを含んでいてもよい 。

 本発明は、別の態様において、心筋芽細胞 の分化を促進する物質をスクリーニングす 方法であって、下記工程:
(a)脂肪組織由来幹細胞を候補物質を含む培地 にて心筋芽細胞に分化させ;
(b)脂肪組織由来幹細胞の心筋芽細胞への分化 を調べる、
を含み、該分化が、候補物質不含培地にて脂 肪組織由来幹細胞を培養した場合の分化と比 較して促進されている場合に、該候補物質が 心筋芽細胞への分化を促進する物質であるこ とを示す方法に関するものである。候補物質 としては種々のものがあり、例えば、レチノ イン酸、BMP2、BMP4、TGFβ2、HGF、bFGF、チロキシ ン、またはオキシトンのアナログおよび誘導 体などが挙げられるが、これらに限定されな い。脂肪組織由来幹細胞の心筋芽細胞への分 化は上述の通りである。心筋芽細胞への分化 は、種々の方法、例えば、α-CAまたはMLCなど 心筋芽細胞マーカーの発現をRT-PCRによって 定することにより、調べることができる。

 従って、本発明は、さらなる態様におい 、上記心筋芽細胞への分化を促進する物質 スクリーニング方法により得ることのでき 、心筋芽細胞への分化を促進する物質に関 るものである。該物質を、上述の心筋芽細 および心筋芽細胞を含むシートの製造方法 用いて、得られる心筋芽細胞およびシート 数を増大させてもよい。または、かかる物 を心機能の低下により生じる疾患の治療ま は予防に用いてもよい。

 本発明は、別の態様において、心筋芽細胞 の分化を抑制する物質をスクリーニングす 方法であって、下記工程:
(a)脂肪組織由来幹細胞を候補物質を含む培地 にて心筋芽細胞に分化させ;
(b)脂肪組織由来幹細胞の心筋芽細胞への分化 を調べる、
を含み、該分化が、候補物質不含培地にて脂 肪組織由来幹細胞を培養した場合の分化と比 較して抑制されている場合に、該候補物質が 心筋芽細胞への分化を抑制する物質であるこ とを示す、方法に関するものである。候補物 質としては種々のものがあり、例えば、ノギ ンのアナログおよび誘導体などが挙げられる が、これらに限定されない。

 従って、本発明は、さらなる態様におい 、上記心筋芽細胞への分化を抑制する物質 スクリーニング方法により得ることのでき 、心筋芽細胞への分化を抑制する物質に関 るものである。該物質を心機能の上昇によ 生じる疾患の治療または予防に用いてもよ 。

 さらに、本発明は、心筋芽細胞への分化 促進または抑制する物質をスクリーニング るためのキットに関するものである。本発 のキットは、脂肪組織由来幹細胞、培地、 養容器、ならびに心筋芽細胞への分化を調 る手段等を含んでいてもよい。通常には、 扱説明書をキットに添付する。かかるキッ を用いて、上記スクリーニングを迅速かつ 易に行うことができる。

 本発明は、別の態様において、心筋芽細胞 含むシートの形成を促進または抑制する物 をスクリーニングする方法であって、下記 程:
(a)脂肪組織由来幹細胞を候補物質を含む培地 にて心筋芽細胞に分化させ;または
(b)候補物質存在下にて心筋芽細胞を含むシー トを形成させ;
(c)心筋芽細胞を含むシートの形成を調べる、
を含む、該形成が、候補物質不含系にて形成 させたものと比較して促進または抑制されて いる場合に、該候補物質が心筋芽細胞を含む シートの形成を促進または抑制する物質であ ることを示す方法に関するものである。シー トの形成を調べる方法は、上述の通りである 。候補物質の添加は、上記工程(a)および(b)の 両方において行われてもよいし、一方にて行 われてもよい。

 従って、本発明は、さらなる態様におい 、上記心筋芽細胞を含むシートの形成を促 または抑制する物質のスクリーニング方法 より得ることのできる、心筋芽細胞を含む ートの形成を促進または抑制する物質に関 るものである。

 さらに、本発明は、上記心筋芽細胞を含 シートの形成を促進または抑制する物質を クリーニングするためのキットに関するも である。

 以下に実施例を示して本発明を詳細かつ 体的に説明するが、実施例は本発明を限定 るものではない。

脂肪組織由来細胞の単離および培養
 ヒト脂肪組織を大きさ2~3mm 2 の断片に刻み、コラゲナーゼIを用いて消化 た。消化物を、10% FBSおよび抗生剤を含むDME Mにて24~36時間培養し、0.02% EDTAで処理して、 肪組織由来細胞を得た。得られた脂肪組織 来細胞を60% DMEM(低グルコース)、40% MCDB201 1×ITS(10.0mg/L インスリン、5.5mg/L トランスフ ェリン、6.7ng 亜セレン酸ナトリウム)、10ng/mL  rhEGF、1nM デキサメサゾン、0.1mM アスコル ン酸、および5% FCS(Hyclone)を含む培地中、フ ブロネクチンコートディッシュで3~5継代培 して拡大した。脂肪組織由来細胞の顕微鏡 を図1に示す。

脂肪組織由来細胞からの未分化細胞の取得
 脂肪組織由来細胞を0.25% トリプシン/EDTA(ナ カライテスク)で処理して解離させ、単一化 た細胞を、20% FCS、1mM グルタミン(GIBCO Invit rogen)、および1% 非必須アミノ酸(GIBCO Invitroge n)を含むノックアウトDMEM(GIBCO Invitrogen)中、 接着培養ディッシュ(Hydrocell;セルシード)に 2~3日間培養した。細胞は自己凝集し、アデ ポスフェアを形成した。アディポスフェア 顕微鏡像を図2に示す。

未分化細胞からの肝小葉様細胞塊の形成
 得られたアディポスフェアを、PBSにて2~3回 浄(1000~1200rpmにて遠心)し、60% DMEM(低グルコ ス)、40% MCDB201、1×ITS、1nM デキサメサゾン 100μM アスコルビン酸、10ng/ml rhEGF、bFGF、HG FおよびOSM(オンコスタチンM)を含む培地中、 接着培養ディッシュ(Hydrocell;セルシード)に 3~4週間培養した。培養開始の10日目から0.1%  DMSOを添加して、肝小葉様細胞塊を得た。得 れた肝小葉様細胞塊の顕微鏡像を図3に示す

肝小葉様細胞塊の肝細胞遺伝子発現特性
1.RNAの抽出
 肝小葉様細胞塊からのRNAの抽出を、RNeasy Pr otect Mini Kit(QIAGEN)を用いて、以下の通り行っ た。肝小葉様細胞塊を回収し、10μl/ml 2-メル カプトエタノール(Naacalai Tesqu)を含むバッフ ーRLTを600μl/10 7 細胞の割合で加えた。20G針でピペッティング して、細胞をホモジェナイズし、次に、70%  タノール600μlを添加した。得られた混合液7 00μlを2mlのコレクションチューブ内のRNeay Min iカラムに移し、1000rpmにて15秒間遠心した。 に、バッファーRW1 350μlをカラムに添加し、 1000rpmにて15秒間遠心した。DNase Iストック溶 (QIAGEN)10μlを、バッファーRDD 70μlに添加し 転倒混和し、RNeasy Miniカラム内のRNeasyシリ ゲルメンブレンに添加し、室温で15分間イン キュベーションした。バッファーRW1 350μlを 加し、1000rpmにて15秒間遠心した。2mlコレク ョンチューブを新たなものに交換した。カ ムにバッファーRPE 500μlを添加し、1000rpmに 15秒間遠心した。さらに、バッファーRPE 500 μlを添加し、1000rpmにて2分間遠心し、次に、1 500rpmにて1分間遠心した。カラムを1.5mlコレク ションチューブに移し、RNase free water30~50μl RNeasyシリカゲルメンブレンに添加し、1000rpm にて1分間遠心し、RNAを抽出した。

2.1本鎖cDNAの作成
 抽出したRNA溶液11.5μlに、0.5mM Random Primer(In vitorogen)0.5μlおよび10mM dNTPmix(Invitorogen)1μlを 加し、65℃にて5分間反応させ、次に、氷上 冷却した。得られた混合物に5×First-Strandバ ファー(Invitorogen)4μl、0.1M DTT(Invitorogen)1μl、R NaseOUT(Invitorogen)1μl、およびSuperScript III RT(Inv itorogen)1μlを添加し、25℃で5分間、50℃で60分 、70℃で15分間反応させ、1本鎖cDNAを作成し 。得られたcDNAを使用まで4℃にて保存した

3.リアルタイムPCR
 作成したcDNA 9μlに、TaqMan Universal PCR Master  Mix(Applied Biosystems)10μlおよびTaqMan Gene Expres sion Assays(Applied Biosystems)1μlを添加した。Appli ed Byosytems 7900 Fast Real-Time PCRシステムにて の条件でリアルタイムPCRを行った:95℃で10 間変性、95℃で15秒間および60℃で1分間を40 イクル。α-フェトプロテイン、アルブミン CYP1B1、グルタミン合成酵素、ケラチン18およ びケラチン19について用いたTaqManプローブを 下の表1に示す。また、内部標準としてGAPDH( Applied Biosystems)を用いた。対照試料として、S eo MJ. et al., Biochem Biophys Res Commun. 2005 Mar  4; 328(1): 258-64記載の方法により得られた肝 細胞(「従来法」と表す)、線維芽細胞、HepG2 および脂肪組織由来細胞(「ADSC」と表す)を いた。結果を図4~9に示す(図中の縦軸は、蛍 強度を示す)。本発明の方法により得られた 肝小葉様細胞塊が、従来法で得られた肝細胞 と比較して、α-フェトプロテイン、アルブミ ン、ケラチン18、ケラチン19、CYP1B1およびグ タミン合成酵素を高発現することが分かっ 。また、アルブミンを除くこれらの遺伝子 発現は、HepG2におけるものより有意に高かっ た。

肝小葉様細胞塊による肝性タンパク質の産生
A.ウエスタンブロット分析
1.試料の調製
 肝小葉様細胞塊をPBS(Nacalai Tesque)で3回洗浄 、次に、M-PER(PIERCE)を添加した。細胞を超音 波破砕にて溶解し、14000gにて15分間遠心して 未溶解の細胞成分を除去した。試料と当量 サンプルバッファー(Nacalai Tesque)を添加し 100℃にて5分間ボイルし、氷冷した。得られ 試料のタンパク質濃度を、BCA Protein Assay R eagent(PIERCE)を用いて測定した。

2.SDS-PAGE
 電気泳動用ゲルミニプレート(PAG ミニ「第 」;第一化学薬品)、ランニングバッファー 用いて、SDS-PAGEを行った。用いたタンパク質 の量は、5μgであった。泳動条件は、スタッ ングゲル中は10mA、ランニングゲル中は40mAと した。

3.ウェスタンブロット
 上記の泳動したゲルをブロティングバッフ ーで10分間洗浄した。次に、ゲル中のタン ク質を、Wet式ブロティング(100mA、一晩)にて トロセルロースメンブレンに写し取った。

4.免疫染色
 メンブレンを0.1% Tween20含有PBSにて10分間洗 した。ブロッキングワン(Nacalai Tesque)を用 て室温で1時間反応させた。1次抗体として、 Human Albumin抗体(BETHYL)またはAlpha Fetoprotein Ab- 2(LAB Vision)の500倍希釈液と1時間反応させた。 0.1% Tween20含有PBSにて15分間洗浄した(3回)。2 抗体として、ポリクローナルブタ抗ウサギ 疫グロブリン/HRPまたはポリクローナルウサ 抗ヤギ免疫グロブリン/HRPの1000倍希釈液と1 間反応させた。0.1% Tween20含有PBSにて15分間 浄した(3回)。ECL Plus Western Blotting Detection Reagentsを用いてバンドを検出した。結果を図 10および11に示す。本発明の方法により得ら た肝小葉様細胞塊が、α-フェトプロテイン よびアルブミンを十分量産生することが分 った。

B.免疫組織化学染色
1.切片の作成
 肝小葉様細胞塊をPBS(Nacali Tesque)で3回洗浄 、遠心した。得られたペレットをTissue-Tek OC T-compound(Sakura Fineteck Inc.)に包埋し、-30℃で 存した。クリオスタットを用いて7μmの切片 作成し、スライドガラスに貼付し、-30℃に 保存した。

2.免疫組織化学染色
 上記の切片をドライヤーで乾燥させ、4% パ ラホルムアルデヒドにて30分間固定した。PBS て5分間3回洗浄した。ブロッキングワン(Naca lai Tesque)を用いて室温にて1時間反応させた PBSで5分間3回洗浄した。1次抗体のポリクロ ナルウサギ抗ヒトアルブミン抗体(DAKO)の400 希釈液、またはポリクローナルウサギ抗ヒ α-1-フェトプロテイン抗体(DAKO)の300倍希釈液 と1時間反応させた。PBSで10分間3回洗浄した 2次抗体のAlexaFluor[商標]466ヤギ抗ウサギIgG抗 (Molecular Probes)の500倍希釈液と1時間反応さ た。PBSで10分間3回洗浄した。Perma Fluor(日本 ーナー)を用いて包埋し、顕微鏡にて観察し た。結果を図12および図13に示す。肝小葉細 塊におけるα-フェトプロテイン、およびア ブミンの存在を確認した。これにより、肝 葉細胞塊が実際にこれらのタンパク質を産 することが分かった。

肝小葉様細胞塊によるLDLの取り込み
1.LDLのDiIによる標識
 ヒトLDL(密度1.019-1.063g/ml)を単離した。単離 、正常なリポたんぱく質を有するドナーか 連続的に超遠心にかけ、saline-EDTAで透析し、 次いで0.2μmのフィルターでろ過をして滅菌す ることにより行った。続いて、前記LDLを0.5%  ウシ血清アルブミン(BSA)/PBS中において100mlのD MSO中の1,1″-dioctadecyl-3,3,3″,3″-tetramethylindocar bocyanine(DiI;Molecular Probes)(3mg/ml)と37℃で8時間 ンキュベートすることにより、リポたんぱ 質(LDL)をDiIで標識した。次に、このリポたん ぱく質をPBSで透析し、使用前にろ過した。
2.LDLの取り込み
 DiI-LDLの取り込みを検討するために、ADMPCか 分化させた肝小葉細胞塊を10μg/ml DiI-LDLを 有する無血清DMEM中で37℃3時間インキュベー させた。次いで、細胞を3回洗浄し、Permaflur 上にマウントした。このスライドを共焦点レ ーザー走査顕微鏡(Floview FV1000、Olympus)を用い て調べた。結果を図14に示す。図14から、DiI-L DLが肝小葉細胞塊の細胞質領域に多く取り込 れていることが分かる。これにより、本発 により得られる肝小葉様細胞塊がLDLを取り む機能を有することが確認できた。

肝小葉様細胞塊によるグリコーゲンの蓄積(PA S染色)
 分化させた肝小葉様細胞塊を4% パラホルム アルデヒドで固定し、パラフィンで包埋した 。サンプルを5μmの厚さにスライスして切片 作成した。次いで、この切片を1% 過ヨウ素 中で5分間酸化させ、脱イオン化水(dH 2 O)で3回リンスした。続いて、シッフ試薬で15 間処理し、5~10分間dH 2 Oでリンスした。さらにこの切片を1分間マイ ーヘマトキシリンで対比染色させ、dH 2 Oでリンスし、光学顕微鏡で観察した。結果 図15に示す。図15から、肝小葉様細胞塊には くの過ヨウ素酸シッフ染色(PAS)陽性細胞が 在することを観察できた。これにより、本 明により得られる肝小葉様細胞塊がグリコ ゲンを蓄積する機能を有することが示され 。

肝小葉様細胞塊による尿素の生成
1.尿素の生成
 肝小葉様細胞塊を5mM NH 4 Cl含有ハンクス緩衝塩溶液(Gibco)5ml中で2時間 ンキュベーションした。上清0.5mlの尿素濃度 を、QuantiChrom Urea Assay Kit(Bioassay Systems)を用 いて測定した。得られた濃度に上清の総体積 をかけて、トータルの生成尿素量を計算した 。対照としてHepG2を用いた。

2.DNA量の測定
 NH 4 Cl含有ハンクス緩衝塩溶液を除去し、肝小葉 細胞塊をPBSにて洗浄した。緩衝液を添加し 超音波破砕を行い、細胞をホモジェナイズ た。細胞ホモジネート50μlに緩衝液1mlを加 、さらに発色液50μlを添加して、攪拌した。 得られた溶液の蛍光値を、励起:356nm、放出:45 8nmにて測定し、DNA濃度を決定した。DNA濃度に 、添加した緩衝溶液の体積をかけて総DNAを計 算した。

3.生成尿素量
 得られたトータルの生成尿素量を総DNA量で り、総生成尿素量を決定した。結果を図16 示す。肝小葉様細胞塊がHepG2と比較して、十 分量の尿素を産生したことが分かった。これ により、本発明により得られる肝小葉様細胞 塊が十分な解毒作用を有することが確認でき た。

マウス肝炎モデルにおける肝小葉様細胞塊の 移植効果
1.マウス肝炎モデルの作成
 NOD-SCIDマウスに、四塩化炭素(CCl 4 )を300μl/kgにて週2回、12週間腹腔内注入し、 ウス肝炎モデルを作成した。

2.肝小葉様細胞塊の移植
 肝小葉様細胞塊をハンクス緩衝塩溶液で洗 し、遠心してペレットとした。上記のマウ をセボフルエンにて麻酔した。左傍正中切 にて開復し、左腎臓を露出し、腎皮膜を剥 してポケットを作成した。作成したポケッ 内にペレット化した細胞塊を注入して移植 た。腹壁を2層にて閉腹した。

3.解析
 移植10日目に、マウスから採血し、血中ビ ルビン濃度を測定した。結果を図17に示す。 肝小葉様細胞塊を移植した群は、移植しなか った群と比較して、血中ビリルビン濃度が低 減されることが分かった。さらに、上記の左 腎臓を用いて下記の組織学的解析を行った。 肝小葉様細胞塊を移植した左腎臓を取り出し 、すぐに10% ホルマリンで固定した。次いで パラフィンで包埋し、上記と同様の方法に りヘマトキシリンとエオシン染色(図18)およ びPAS染色(図20)を行った。一方で、肝小葉様 胞塊を移植した腎臓を用いてアルブミンに する免疫蛍光染色も行った。最初に、前記 織をOCT-compound(Sakura Fineteck Inc.)中に入れ、 ぐに凍結させた。7μmの切片を作成し、4% パ ラホルムアルデヒド/PBS(WAKO)中で30分間固定し た。この固定した切片をブロッキング溶液( ロッキングワン;Nacalai Tesque)とインキュベー トした。次いで、抗ヒトALB抗体(ヤギポリク ーナル、ウシ、マウスおよびブタALBで吸着 れ、親和精製されている、Bethyl Laboratories) 次いでAlexaFluor546ロバ抗ヤギIgG抗体(Molecular P robes)でインキュベートした。処理した切片を 蛍光顕微鏡(BX61、Olympus)で観察した(図19)。図1 8から、肝小葉様細胞塊の生着を確認できる 図19および図20各々からは、ALB抗体およびPAS 色陽性細胞を観察でき、アルブミンが発現 、グリコーゲンが蓄積していることが分か た。これらのことは肝機能が維持されてい ことを示す。以上より、本発明の方法によ 得ることのできる肝小葉様細胞塊が、肝機 の低下により生じる疾患の治療に有効であ ことが分かった。

ヒト対象からの脂肪組織の採取
 インフォームドコンセントを受けた対象10 (男性4人および女性6人)から、胃癌手術中に 分な脂肪組織を摘出した。プロトコールは Osaka University Graduate School of Medicine Review Boards for Human Researchに準ずるものであった 全ての対象を少なくとも10時間絶食させた 対象の年齢は55±5歳(平均±SE;範囲40~60歳)であ った。ステロイド剤またはTZDの投与を受けて いる対象はいなかった。対象から、腹部皮下 (筋膜表面の外側)脂肪組織および大網脂肪組 1~10gを得た。

ADMPCの単離および培養
 脂肪組織を刻み、次に、0.075% コラゲナー (Sigma Chemical Co.)含有ハンクス緩衝塩類溶液( HBSS)中、37℃のウォーターバスにて振盪しな ら1時間消化した。消化産物をCell Strainer(BD  Bioscience)で濾過し、800gにて10分間遠心した。L ymphoprep(d=1.077)(Nycomed)を用い、比重法により赤 血球を除去し、得られた前脂肪組織由来多系 統前駆細胞集団を10% ウシ胎児血清(Hyclone)を むDMEM中に細胞を播種した。24時間培養して 胞を付着させ、洗浄後、EDTAで処理して、ADM PCを得た。次に、ADMPCを、培地I:60% DMEM-低グ コース、40% MCDB201、10μg/mL EGF、1nM デキサ サゾン、100μM アスコルビン酸、および5% FB S中、密度10,000細胞/cm 2 にてヒトフィブロネクチンコートディッシュ に播種し、3から5継代し、実験に用いた。10 間培養したADMPCの顕微鏡像を図21に示す。

ADMPCの発現特性
 ADMPCおよびアディポスフェアから、Mag-Extract orキット(TOYOBO)を用いて製造元の推奨プロト ールに従い、トータルRNAを単離した。トー ルRNA500ngをDNase処理し、Superscript III逆転写酵 素RNase H(-)(Invitrogen)を用いて、cDNAを合成した 。Islet-1、Nkx2.5、GATA-4、α-CA、MLC、MHC、ネスチ ン、Neurofilament 68、ソマトスタチン、snail、sl ug、およびGAPDHについて、KOD-plus(TOYOBO)を用い 、以下の条件でRT-PCRを行った:94℃で2分間変 性、次に、94℃で15秒間の変性、予め決定し 温度で30秒間のアニーリング、68℃で30秒間 伸長を40サイクル。各遺伝子についてのアニ ーリング温度およびプライマー配列を表2に す。対照として、特表2005-502352号公報記載の 方法により得られた脂肪組織由来幹細胞(以 、「ADSC」という)を用いた。得られた増幅産 物を2% アガロースゲルにて電気泳動した。 果を図22~図24に示す。ADMPCは、アディポスフ アと同様に神経提細胞のマーカーであるsnai lおよびslugを発現することが示唆された。ま 、ADMPCは、未分化マーカー、特に心臓、肝 、膵臓の前駆細胞のマーカーとして知られ いるIslet-1を発現することが分かった。ADSCは Islet-1を発現しておらず、得られたADMPCがADSC は異なる細胞であると確認した。

 さらに、ADMPCについて上述の通りApplied By osystems 7900 Fast Real-Time PCRシステムにてリア ルタイムPCRを行い、未分化マーカーであるSca -1およびABCG2の発現を調べた。用いたTaqManプ ーブを表3に示す。結果を図25および図26に示 す。ADMPCがSca-1およびABCG2を発現していること を確認した。

 ADMPCのさらなる特性を調べるために、脂肪 胞から単離したADMPCをFACS分析にかけた。ADMPC を0.5g/L-トリプシン/0.53mM-EDTA溶液により培養 ィッシュから分離し、0.1% FBS含有Dulbecco’s  Phosphate-buffered Saline(DPBS, Nacalai Tesque)中で懸 した。一定量(5×10 5 細胞数)を、ヒトCD31(BD PharMingen)、CD105(Ancell) CD133(R&D)に対するフルオレセインイソチオ シアネート(FITC)抱合マウスモノクローナル抗 体、ヒトCD29、CD34、CD45、CD56、CD73、CD166(BD Pha rMingen)、CD44、またはCD166(Ancell)に対するフィ エリトリン(PE)抱合マウスモノクローナル抗 と4℃で30分間インキュベートした。さらに インキュベートした細胞を、ヒトSSEA-4、TRA- 1-60、TRA-1-81(Chemicon)、ABCG-2、CD117(BD PharMingen) または線維芽細胞/上皮細胞(AbD Serotec)に対 るマウスモノクローナル抗体と、ならびに 性対照として用いる非特異的なマウス抗体 を4℃で30分間インキュベートした。DPBSで洗 後、細胞をPEで標識されたヤギ抗マウスIg抗 体(BD PharMingen)と4℃で30分間インキュベート た。3回洗浄を行った後、細胞をDPBSで再懸濁 し、FACSCalibur flow cytometerおよびCellQuest Pro s oftware(BD Biosciences)を用いてフローサイトメト リーにより解析を行った。結果を図27および 28に示す。ADMPCは、造血系細胞および造血幹 細胞(CD45、ABCG-2、CD34、CD133)(Mitchell et al., Ste m Cells, 24, 376-85 (2006))、内皮細胞(CD31)のマ カー、表面抗原c-Kit(CD117)、ならびに一定のES 細胞とEG(胚性生殖)細胞(TRA-1-60およびTRA-1-81)(J ames et al., 1998およびShamblott et al., Proc. Nat l. Acad. Sci. USA 95, 1372613731(1998))の表面マー ーについて、対照と比べて発現にほとんど 化はなかった。一方、図27から、間葉系細 および/または神経幹細胞(CD29、CD44、CD73およ びCD105)(Mitchell et al., Stem Cells, 24, 376-85 (20 06)およびBarry et al., Biochem. Biophys. Res. Commu n. 265, 134139(1999))の表面マーカーおよび時期 異的胚性抗原マーカー(SSEA-4)(Kannagi et al.,  EMBO J. 2, 23552361(1983))については、発現が上 していることが確認できた。加えて、図28 らは、従来法によるADSCには、線維芽細胞の 面抗原(Zuk et al., Mol. Biol. Cell. 13, 4279-429 5(2002))陽性の細胞が83.4%存在するのに対して ADMPCでは23%のみであり、線維芽細胞の夾雑が 少ないことが分かった。これらのことより、 本発明によるADMPCは高い分化能を有し、さら は本発明の方法は精製度の高いADMPCを得る とができることが示された。

ADMPCの多分化能の確認
1.膵臓細胞への分化能
 ADMPCを国際公開公報WO2007/039986に記載の方法 より、膵内分泌細胞へ分化させた。得られ 膵内分泌細胞を図29に示す。ADMPCは、膵内分 泌細胞に分化できること、すなわち、膵前駆 細胞としての機能を有することを確認した。 また、かかるADMPCから膵内分泌細胞への分化 効率は、ADSCからのものと比較して高いもの であった(データは示していない)。

2.肝細胞への分化能
 肝前駆細胞を肝芽細胞・肝細胞へと分化さ ることが知られているDMSO(0.1%)、HGF(10ng/mL)、 bFGF(10ng/mL)、およびオンコスタチンM(10ng/mL)を 地Iに添加して培地IIを調製した。ADMPCを培 II中で14日間培養し、肝細胞を得た。得られ 肝細胞を図30に示す。ADMPCは、肝細胞へと分 化できること、すなわち、肝前駆細胞として の機能を有することを確認した。また、ADMPC ら肝細胞への分化の効率は、ADSCからのもの と比較して高いものであった(データは示し いない)。

 さらに、得られた肝細胞について上述の りApplied Byosytems 7900 Fast Real-Time PCRシステ ムにてリアルタイムPCRを行い、肝細胞への分 化を示すマーカーであるα-フェトプロテイン (AFP)、アルブミン、CYP1B1、グルタミン合成酵 の発現を調べた。対照として、ADMPCを用い 。結果を図31~34に示す。これらの遺伝子の発 現が、得られた肝細胞において上昇している ことが確認できた。

3.心筋細胞への分化能
ADMPCから心筋芽細胞への分化・誘導
 DMSO(群1)、またはOP9培養上清(群2)を含む培地 IにてADMPCを14日間培養し、得られた細胞にお る遺伝子の発現を上述の通りRT-PCRにより調 た。対照として、培地Iにて培養したADMPCを いた。結果を図35に示す。群1および2の細胞 において、心筋芽細胞のマーカーであるα-CA よびMLCが発現していること、すなわち、ADMP Cが心筋芽細胞へと分化・誘導されたことが 認できた。

心筋芽細胞への分化・誘導期間の検討
 次に、ADMPCをDMSO存在下で1、2、3、4、5、7、1 0、14日間培養して、心筋芽細胞への分化を調 べた。対照としてADMPCおよび心筋細胞を用い 。結果を図36から40に示す。DMSO存在下で培 することにより、心筋芽細胞を得られるこ が分かった。

心筋芽細胞を含むシートの作成
 得られた心筋芽細胞を、DMSOを含む培地I中 温度感受性培養皿(株式会社セルシードより 与)中37℃にて培養し、細胞塊を形成させた 20℃以下にて30分間インキュベーションする ことにより、細胞塊を剥離させ、心筋芽細胞 を含むシートを得た(図41参照)。得られたシ トを以下の移植実験に用いた。

心筋梗塞モデルラットへのシートの移植
 ヌードラットの冠動脈を結紮することによ 、心筋梗塞モデルラットを作成した。次に 傷害領域にADMPC由来心筋芽細胞を含むシー を移植した。移植前2週間、移植前、移植後2 週間、4週間および16週間における心機能を、 エコーにより、拡張末期径(LVDd)、収縮末期径 (LVDs)、左室駆出率(%EF)および左室内径短縮率( %FS)を計測して、評価した。対照として、上 同様形成させたADMPCを含むシートを用いた。 結果を図42から49に示す。心筋芽細胞を含む ートを移植して2週間および10週間後のラッ において、壁運動を確認し、心機能が著し 改善されていることが分かった。これに対 、ADMPCを含むシートを移植したラットにおい て、2週間後では壁運動を確認したが、10週間 後では確認できなかった。さらに、心筋芽細 胞を含むシートでは、8週目以降において、LV Ddが拡張し始め、EFが低下するのに対して、AD MPC由来心筋芽細胞(ADMPC由来心筋芽細胞はADMPC 0.1% DMSOにて48時間処理することで得られる) を含むシートでは、LVDd、EFともに維持され、 心機能の改善を示した。

シートを移植した心臓の組織解析
 移植後12週間および16週間にラットを犠牲死 させて、心臓を摘出した。摘出した心臓を4% パラホルムアルデヒド液で固定した後、70%  エタノールに置換した。固定した心臓を数ミ リ幅に切り出し、パラフィンで固めてブロッ クを作製した。得られたパラフィンブロック をミクロトームを用いて2μmに薄切し、スラ ドガラスに張り付け、乾燥させた。得られ 薄切片についてヘマトキシリン・エオジン 色および免疫組織染色を以下の通り行った

A.ヘマトキシリン・エオジン染色
 薄切片を脱パラフィンし、水で洗浄した。 マトキシリン液で10分間染色し、ぬるま湯 3分間色だしした。水洗後、エオジンで5分間 染色した。アルコールで分別、脱水した。キ シレンで透徹後封入し、顕微鏡にて観察した 。結果を図50および51に示す。移植したシー が生着していることが確認できた。

B.免疫組織染色
 薄切片を脱パラフィンし、水で洗浄した。 疫賦活処理し、10% 正常ヤギ血清を添加し TBS-Tに浸漬し、4℃にて24時間ブロッキングし た。TBS-Tで洗浄後、10% 正常ヤギ血清を添加 たTBS-Tで100倍希釈した1次抗体を試料に滴下 、37℃で1時間反応させた。1次抗体として、 ヒトα-cA抗体(AmericanResearch Products,Inc)、抗ヒ トMHC抗体(Upstate cell signaling solutions)および ヒトHLA-ABC抗体(株式会社 ホクドー)を用いた 。TBS-Tで洗浄後、シンプルステインラットMAX- PO(株式会社ニチレイバイオサイエンス)を滴 し、室温で30分間反応させた。TBS-Tで洗浄後 シンプルステインAEC溶液(株式会社ニチレイ バイオサイエンス)を滴下し、検鏡しながら 色させた。水で洗浄後、ヘマトキシリン液 3分間染色し、核染色を行った。水で洗浄後 非水溶性封入剤(株式会社ニチレイバイオサ イエンス)を滴下し、カバーガラスで封入し 顕微鏡および蛍光顕微鏡にて観察した。さ に、ADMPCおよびADMPC由来心筋芽細胞を含むシ トの移植領域において心筋へ分化した量お び残存心筋の量を調べるために、α-CA抗体 性の領域の厚みを測定した。結果を図51から 61に示す。心筋芽細胞を含むシートを移植し 部位が、HLA-ABC陽性、すなわちヒト由来であ り、α-CAおよびMHCを発現し心筋へと分化し、 存心筋においてもα-CAの発現が維持されて ることが確認できた。従って、移植した心 芽細胞が心筋細胞に分化転換し、かつ残存 筋が保護されていることが分かった。

4.脂肪細胞への分化能
 ADMPCを、脂肪細胞分化剤であるPPAR-γアゴニ トを用いて培養し、脂肪細胞へ分化させた 得られた脂肪細胞をオイルレッドO染色し、 脂質含有量を測定した。対照としてADSCを用 た。結果を図62および63に示す。ADMPCは、脂 細胞へと分化できること、すなわち、脂肪 駆細胞としての機能を有することが分かっ 。また、かかる分化の効率は、ADSCと比較し 高いものであった。以上より、ADMPCが多系 細胞に分化する能力を有する細胞であるこ を確認した。

5.骨組織への分化能
 ADMPCを、10nM デキサメタゾン、50mg/dl アス ルビン酸二リン酸、10mM β-グリセロリン酸(S igma)、および10% FBSを含有するDMEM中で7日間培 養することにより、骨組織への分化を誘導し た。分化状態をアリザリンレッド染色および アルカリホスファターゼ(ALPase)活性により確 した。アリザリンレッド染色については、 られた細胞を3回洗浄し、無水エタノールで 固定した。固定後、細胞を0.1% NH 4 OH(pH6.5)中の1% アリザリンレッドSで5分間染色 し、H 2 Oで洗浄した。ALPase活性においては、公知の 法に従って行った(Bessey, O. A. et al., J. Bio .l Chem. 164, 321-329(1946))。詳細に説明すると 細胞を3回洗浄した後、0-4℃において1mlの0.9%  NaCl、0.2% Triton X-100中でガラスホモジェナ ザーを用いてホモジェナイズし、1200gで15分 遠心分離を行った。上澄み液のALPase活性を 基質としてp-ニトロフェニルリン酸(p-NP)を いて調べた。詳細には、この上澄み液を0.5mM  pNPおよび0.5mM MgCl 2 を含有する0.5M Tris/HCl緩衝液(pH9.0)においてア ッセイした。反応混合物を37℃で30分間イン ュベートし、0.25体積の1N NaOHの添加により 応を止めた。pNPの加水分解を、分光光度計 おける410nmにおける吸光度の値の変化として モニターした。p-ニトロフェノールを標準と て用いた。1活性の単位を1分間に1nmolのp-NP 加水分解される量と定義した。細胞あたり ALPase活性をDNA量に基づいて計算した。DNA含 量を一般的な方法の改良により測定した(Laba rca, C. et al., Biochem. 102, 344-352(1980))。洗浄 、細胞を0-4℃において1mlの2M NaCl/25mM Tris-HC l(pH7.4)中でホモジェナイズした。12000gで10分 遠心分離後、25mlの5mg/ml ビスベンズイミダ ールを100mlの上澄み液に添加した。蛍光光度 計により励起356nmにし、発光458nmの蛍光スペ トルをモニターした。DNA濃度を仔ウシの胸 のDNAの様々な濃度から作成された標準曲線 用いて調べた。結果を図64および65に示す。 発明によるADMPCは、従来法を用いるADSCと比 してアリザリンレッド染色およびAP活性に ける強い陽性を示し、骨組織へと分化誘導 れやすいことが確認できた。以上より、ADMPC が、膵臓、肝臓、心臓、脂肪、骨などを含む 多系統の組織の細胞に分化する能力を有する ことが示された。

 本発明により、脂肪組織由来細胞から肝 葉様細胞塊を得る方法、それにより得るこ のできる肝小葉様細胞塊、肝小葉の形成を 進または抑制する物質および肝小葉の活性 上昇または低減する物質をスクリーニング る方法、およびそのためのキットが得られ ので、肝硬変、肝癌などの予防または治療 の分野、ならびに肝臓再生の研究等の分野 おいて有用である。

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