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Title:
METHOD FOR PROMOTING IMMUNE RESPONSE COMPRISING INHIBITING CD22 FUNCTION IN B CELLS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/078673
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to elucidate a relationship between deregulation of signaling by CD22 and a rapid response of B cells by IgG-BCR and the like, and to provide a method capable of inducing a rapid immune response and defending against infection instead of a vaccine. The invention relates to a method for promoting an immune response caused by intense clonal proliferation and production of a large amount of antibody-producing cells as observed in memory immune responses even in naive B cells expressing IgM-BCR and IgD-BCR by inhibiting CD22 function in B cells; and a screening method for a substance capable of promoting an immune response based on a change in CD22 function in B cells.

Inventors:
TSUBATA TAKESHI (JP)
ONODERA TAISHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/074634
Publication Date:
July 03, 2008
Filing Date:
December 21, 2007
Export Citation:
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Assignee:
JAPAN SCIENCE & TECH AGENCY (JP)
TSUBATA TAKESHI (JP)
ONODERA TAISHI (JP)
International Classes:
A61K45/00; A61K39/00; A61K39/395; A61P37/04; C12N5/10; C12N15/09; C12P21/08; C12Q1/02; G01N33/15; G01N33/50
Other References:
O'KEEFE T.L. ET AL.: "Hyperresponsive B Cells in CD22-Deficient Mice", SCIENCE, vol. 274, no. 5288, 1996, pages 798 - 801, XP008109176
KELM S. ET AL.: "The Ligand-binding Domain of CD22 Is Needed for Inhibition of the B Cell Receptor Signal, as Demonstrated by a Novel Human CD22-specific Inhibitor Compound", JOURNAL OF EXPERIMENTAL MEDICINE, vol. 195, no. 9, 2002, pages 1207 - 1213, XP002227045
WAKABAYASHI C. ET AL.: "A Distinct Signaling Pathway Used by the IgG-containing B Cell Antigen Receptor", SCIENCE, vol. 298, no. 5602, 2002, pages 2392 - 2395, XP008109177
WAKABAYASHI, C. ET AL., SCIENCE, vol. 298, no. 5602, 2002, pages 2392 - 5
MARTIN, S.W.; C.C. GOODNOW, NAT IMMUNOL., vol. 3, no. 2, 2002, pages 182 - 8
NITSCHKE, L.; T. TSUBATA, TRENDS IMMUNOL, vol. 25, no. 10, 2004, pages 543 - 50
TEDDER, T.F. ET AL., ANNU REV IMMUNOL, vol. 15, 1997, pages 481 - 504
KARLIN; ALTSCHUL, PROC. NATL. ACAD. SCI. USA, vol. 87, 1990, pages 2 264 - 2268
PROC. NATL. ACAD. SCI. USA, vol. 990, 1993, pages 5873 - 5877
"Molecular Cloning - A laboratory Manual", 1989, COLD SPRING HARBOR LABORATORY PRESS
AUSBEL, F. M. ET AL.: "Current Protocols in Molecular Biology", 1995, JOHN WILEY & SONS
See also references of EP 2098246A4
Attorney, Agent or Firm:
ABE, Masahiro (14-1 Maebara-nishi 2-chome, Funabashi-sh, Chiba 25, JP)
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Claims:
B細胞におけるCD22機能を抑制することから成る免疫応答の促進方法。
B細胞がIgM及びIgD陽性のナイーブB細胞である、請求項1記載の方法。
免疫応答の促進が免疫応答初期におけるB細胞の増殖、分裂及び/又は生存の亢進を含む、請求項1又は2記載の方法。
B細胞がIgG1 + B細胞IgM + B細胞及び胚中心B細胞を含む、請求項3記載の方法。
免疫応答の促進がB細胞のクラススイッチ及び/又は分化の早期化を含む、請求項1又は2記載の方法。
IgG1 + 陽性細胞へのクラススイッチであり、又は、抗体産生細胞数及び胚中心B細胞への分化である、請求項5記載の方法。
免疫応答初期が抗原による免疫後3~5日である、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
免疫応答の促進が抗体産生細胞数及び産生抗体量の増大及び/又は早期化を含む、請求項1記載の方法。
産生が増大及び又は早期化される抗体がIgG及び/又はIgMである、請求項8記載の方法。
CD22機能の抑制がCD22遺伝子の欠損又は変異による機能障害によるものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
CD22機能の抑制がCD22遺伝子の発現の抑制によるものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
CD22遺伝子の発現の抑制が転写レベルで行われる、請求項11記載の方法。
CD22遺伝子に特異的な siRNAによる遺伝子ノックダウンを用いる、請求項12記載の方法。
siRNAがCD22遺伝子の塩基配列又はその一部の連続する塩基配列を含む21~23個の塩基から成るオリゴヌクレオチド及びその相補的オリゴヌクレオチドから成る二本鎖RNAである、請求項13記載の方法:
CD22機能の抑制がB細胞受容体シグナル伝達を阻害することによるものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
B細胞及び/又はCD22若しくはCD22遺伝子がマウス由来である、請求項1ないし15のいずれか一項に記載の方法。
CD22機能が抑制されているB細胞。
CD22遺伝子がノックアウトされたノックアウト動物から単離されたものである、請求項17記載のB細胞。
請求項1ないし15のいずれか一項に記載の方法、又は請求項17若しくは18記載のCD22機能が抑制されているB細胞を利用することを特徴とする、抗体の製造方法。
抗体がT細胞依存性抗原に対するものである、請求項19記載の製造方法。
B細胞におけるCD22機能の変化に基づき、免疫応答を促進させる物質のスクリーニング方法。
請求21に記載のスクリーニング方法であって、以下の工程:
 (a) 被検物質とB細胞を接触させる工程、
 (b)該細胞におけるCD22機能を検出する工程、及び
 (c)該機能を抑制させる物質を選択する工程、を含む方法。
B細胞及び/又はCD22若しくはCD22遺伝子がマウス由来である、請求項19ないし22のいずれか一項に記載の方法。
請求項21ないし23のいずれか一項に記載の方法に用いるスクリーニングキット。
Description:
B細胞におけるCD22機能を抑制す ことから成る免疫応答の促進方法

 本発明は、CD22機能を抑制することから成 る免疫応答の促進方法等に関する。

通常のT細胞依存性抗原に反応したIgMおよ IgD陽性のナイーブB細胞は免疫応答初期にお て赤脾髄及びBridging channelに移動して増殖 、extrafollicular fociを形成する。ここで増殖 たplasmablastは抗体産生細胞へと分化して抗体 を産生し、抗原排除に働く。この初期に生成 された抗体産生細胞の多くは短寿命であり、 一部はIgGクラスなどへのクラススイッチを起 こす。抗原に反応したB細胞の一部は濾胞内 増殖し胚中心を形成する。胚中心反応時にB 胞は免疫グロブリンV領域に点突然変異を蓄 積して抗原に対してより親和性をあげる。ま た、胚中心B細胞の多くはクラススイッチを こす。この胚中心反応を経た抗体産生細胞 その後の抗体産生を担う。初回免疫応答の に抗原刺激によって活性化したB及びTリンパ 球の一部は記憶リンパ球となる。記憶B細胞 胚中心B細胞の一部から生成する。記憶リン 球は長期間生存し、同じ抗原に再度暴露さ た時、ナイーブB細胞に比し迅速に増殖して bridging channel及び赤脾髄にplasmablastとplasma cel lの巨大なfociを形成し、その結果迅速かつ大 の抗体産生がおこる。ワクチンは免疫記憶 誘導することにより感染防御を行うもので る。

B細胞抗原受容体(B cell receptor; BCR)は膜型 疫グロブリンとシグナルコンポーネントIgα /Igβ分子分子からなる。抗原と反応するとIgα /Igβ分子(クラスII抗原)を通して細胞内にシグ ナルを伝達する。BCRの共受容体であるCD19やCD 22、CD72またFcγR2BはこのBCRシグナル伝達を正 しくは負に制御することで、適切なシグナ の閾値を調節し、細胞増殖や抗体産生細胞 の分化、もしくは不応答やアポトーシスを こすなどB細胞の運命決定を左右する。この でもCD22はBCRシグナル伝達を負に制御する分 子として知られる。CD22の細胞内領域には3つ ITIMモチーフが存在しており、BCR架橋の後に 直ちにリン酸化されフォスファターゼである SHP-1をBCR近傍にリクルートし活性化すること 、BCRシグナル伝達を負に制御する。

記憶B細胞は主にIgGにクラススイッチした 胞から分化し、膜型IgGをBCRとして発現する IgG-BCRはナイーブB細胞が発現するIgM-BCRおよ IgD-BCRと同様にIgα/Igβ分子を介してシグナル 伝達する。しかし、近年、IgG-BCRが記憶B細 の迅速な応答に関与することを示唆する知 が得られた(Wakabayashi, C., et al., Science, 2002 . 298(5602): p. 2392-5)。Goodnowらのグループは、 ほぼすべてのB細胞がHEL特異的なIgGを発現す トランスジェニックマウスを作成し、IgG陽 ナイーブB細胞の免疫応答について解析した 彼らは、抗原刺激の際にIgG陽性ナイーブB細 胞が、記憶免疫応答の際と同様に迅速に増殖 し、巨大なplasmablast のfociを形成し、さらに 多量の抗体産生をすることを明らかにした( Martin, S.W. and C.C. Goodnow, Nat Immunol, 2002. 3( 2): p. 182-8)。この結果は、IgG-BCRがIgM-BCRやIgD- BCRの機能とは異なった機能を持ち、記憶応答 の際の迅速なB細胞の活性化に関与すること 示す。

一方、本発明者らは、IgM-BCRおよびIgD-BCRがCD22 による負の制御を受けるが、IgG-BCRはCD22によ 制御を受けず、その結果、IgG-BCRが効率よく シグナル伝達をすることを明らかにした(Wakab ayashi, C., et al., Science, 2002. 298(5602): p. 239 2-5)。
Nitschke, L. and T. Tsubata,. Trends Immunol, 2 004. 25(10): p. 543-50. Tedder, T.F., et al., Annu Rev Immunol, 1997.  15: p. 481-504.

しかしながら、CD22によるシグナル制御の 除がIgG-BCRによるB細胞の迅速な応答にどの程 度関与しているのか、また、CD22の機能を制 することにより記憶応答の際のような迅速 抗体応答を誘導できるかはこれまで不明で った。

そこで本発明者は上記課題を解決すべく、 ほぼすべてのB細胞がハプテンNPに反応するQM ウスとCD22欠損マウスを交配して得られたNP 応性CD22欠損B細胞の免疫応答時における生 内動態を詳細に解析し、その結果、野生型 くらべ、CD22が欠損することでIgM-BCR及びIgD-BC Rを発現するナイーブB細胞においても、記憶 疫応答時に認められるような強力なクロー 増殖と大量の抗体産生細胞の産生が起こる とを明らかにし、本発明を完成した。

 即ち、本発明は、以下の各態様を含むもの ある。
[態様1]B細胞におけるCD22機能を抑制すること ら成る免疫応答の促進方法。
[態様2]B細胞がIgM及びIgD陽性のナイーブB細胞 ある、態様1記載の方法。
[態様3]免疫応答の促進が免疫応答初期におけ るB細胞の増殖、分裂及び/又は生存の亢進を む、態様1又は2記載の方法。
[態様4]B細胞がIgG1 + B細胞IgM + B細胞及び胚中心B細胞を含む、態様3記載の方 法。
[態様5]免疫応答の促進がB細胞のクラススイ チ及び/又は分化の早期化を含む、態様1又は 2記載の方法。
[態様6]IgG1 + 陽性細胞へのクラススイッチであり、又は、 抗体産生細胞数及び胚中心B細胞への分化で る、態様5記載の方法。
[態様7]免疫応答初期が抗原による免疫後3~5日 である、態様2~6のいずれか一項に記載の方法 。
[態様8]免疫応答の促進が抗体産生細胞数及び 産生抗体量の増大及び/又は早期化を含む、 様1記載の方法。
[態様9]産生が増大及び又は早期化される抗体 がIgG及び/又はIgMである、態様8記載の方法。
[態様10]CD22機能の抑制がCD22遺伝子の欠損又は 変異による機能障害によるものである、態様 1~9のいずれか一項に記載の方法。
[態様11]CD22機能の抑制がCD22遺伝子の発現の抑 制によるものである、態様1~9のいずれか一項 に記載の方法。
[態様12]CD22遺伝子の発現の抑制が転写レベル 行われる、態様11記載の方法。
[態様13]CD22遺伝子に特異的な siRNAによる遺伝 子ノックダウンを用いる、態様12記載の方法
[態様14]siRNAがCD22遺伝子の塩基配列又はその 部の連続する塩基配列を含む21~23個の塩基か ら成るオリゴヌクレオチド及びその相補的オ リゴヌクレオチドから成る二本鎖RNAである、 態様13記載の方法:
[態様15]CD22機能の抑制がB細胞受容体シグナル 伝達を阻害することによるものである、態様 1~9のいずれか一項に記載の方法。
[態様16]B細胞及び/又はCD22若しくはCD22遺伝子 マウス由来である、態様1ないし15のいずれ 一項に記載の方法。
[態様17]CD22機能が抑制されているB細胞。
[態様18]CD22遺伝子がノックアウトされたノッ アウト動物から単離されたものである、態 17記載のB細胞。
[態様19]態様1ないし15のいずれか一項に記載 方法、又は態様17若しくは18記載のCD22機能が 抑制されているB細胞を利用することを特徴 する、抗体の製造方法。
[態様20]抗体がT細胞依存性抗原に対するもの ある、態様19記載の製造方法。
[態様21]B細胞におけるCD22機能の変化に基づき 、免疫応答を促進させる物質のスクリーニン グ方法。
[態様22]請求21に記載のスクリーニング方法で あって、以下の工程:
 (a) 被検物質とB細胞を接触させる工程、
 (b)該細胞におけるCD22機能を検出する工程、 及び
 (c)該機能を抑制させる物質を選択する工程 を含む方法。
[態様23]B細胞及び/又はCD22若しくはCD22遺伝子 マウス由来である、態様19ないし22のいずれ か一項に記載の方法。
[態様24]態様21ないし23のいずれか一項に記載 方法に用いるスクリーニングキット。

 本発明によって、初めて、B細胞における CD22機能を抑制・制御することによって、免 応答が促進されることが解明され、本発明 法によってB細胞におけるCD22機能を抑制する ことによって、IgM-BCR及びIgD-BCRを発現するナ ーブB細胞においても、記憶免疫応答時に認 められるような強力なクローン増殖と大量の 抗体産生細胞の産生が起こさせることができ た。このような結果は、記憶B細胞で発現す IgG-BCRを介するシグナル伝達がCD22によるシグ ナル抑制を受けないことにより、記憶免疫応 答における迅速なB細胞活性化がおこること 示すと共に、CD22の機能を制御することによ 迅速な免疫応答を誘導しワクチンに代わっ 感染防御ができる可能性を示唆するもので る。

CD22欠損B細胞は免疫応答初期においてextrafolli cular plasmablastのburstを起こすことを示す図で る。(Fig1A)単離したB細胞のフローサイトメ リー解析。CD23 + でNIP反応性BCR + B細胞のパーセンテージを示す(左)。またNIP反 応性BCRの発現量をhistogramで示す(右)(Fig1B)Adopte d transferのプロトコール。 CD22欠損B細胞は免疫応答初期においてex trafollicular plasmablastのburstを起こすことを示 、共焦点蛍光顕微鏡で観察した脾臓組織切 である(Fig1C)。 免疫後3,5,7日目にCD22 +/+ QM B細胞(下の折れ線)またはCD22 -/- QMB細胞(上の折れ線)を移植したrecipientマウス 脾細胞を採取し、B220(Fig2,A-F)、Ly5.2(Fig2,A-F) IgM(Fig2C)、IgG1(Fig2D)の発現、またNIP反応性及 PNA反応性(Fig2,E,F)をフローサイトメトリーで 析した。死細胞はDAPIにより染色し解析から 除外した。recipientマウスのDAPI-、2x10 5 脾細胞のうちのDonor由来B細胞数(B220 + ,Ly5.2 + )(Fig2,A,B)、IgM + Donor由来B細胞(B220 + ,Ly5.2 + ,IgM + )(Fig2C)、IgG1+Donor由来B細胞(B220 + ,Ly5.2 + ,IgG1 + )(Fig2D)、及びDonor由来胚中心B細胞(B220 + ,Ly5.2 + ,NIP及びPNAに反応)( Fig2,E,F)の細胞数を求めた 各群4個体の平均値をBarで示す。 図3と同様である。 図3と同様である。 免疫応答時のDonor B細胞の増殖、クラススイ チ、及び胚中心B細胞への分化をフローサイ トメトリーにより観察した結果を示す。(Fig3A )B細胞の細胞分裂。ネガティブコントロール してB細胞移植後PBSのみを注射して2日目に 様に解析した結果を最下段に示す。死細胞 DAPIにより染色し解析から除外した。それぞ recipientマウスの全脾細胞の内、DAPI- 、2x10 5 細胞を解析した結果を示す。同じ実験を2回 い同様の結果を得ている。(Fig3B)細胞分裂に 存したIgクラススイッチと胚中心B細胞への 化。IgG1 + B細胞のパーセンテージを示す(上,中段)。胚 心B細胞(CD38 lo )のパーセンテージを示す(下段)。死細胞はDAP Iにより染色し解析から除外した。recipientマ スのDAPI- 、2x10 5 脾細胞を解析した結果を示す。同じ実験を2 行い同様の結果を得ている。 (Fig4,A,B)脾臓中の抗体産生細胞数。免疫後3,5,7 日目にCD22 +/+ QM B細胞(黒:下の折れ線)またはCD22 -/- QMB細胞(赤:上の折れ線)を移植したrecipientマウ スから脾細胞を採取し、全脾細胞1x10 6 のうちのDonor B細胞由来のNP特異的なIgM a 抗体(Fig4A)およびIgG1 a 抗体(Fig4B)産生細胞数をELISPOT法により測定し 。各群4個体の平均値をBarで示す。(Fig4,C,D) 清中のDonor B細胞由来のNP特異的抗体価。Reci pientマウスの血清に含まれるCD22 +/+ QM B細胞(黒:下の折れ線)またはCD22 -/- QMB細胞(赤:上の折れ線)由来のNP特異的なIgM a 抗体(Fig4C)、IgG1 a 抗体(Fig4D)の産生量(μg/ml)をELISA法により測定 た。各群4個体の平均値をBarで示す。

本発明においては、B細胞におけるCD22機能 抑制(又は、阻害)することによって、免疫 答の促進作用が見られる。ここで、「B細胞 とは、通常、IgM及びIgD陽性のナイーブB細胞 (成熟B細胞)を意味するが、必ずしもこのタイ プに限定されず、一般的に、T細胞依存性抗 に反応して活性化され抗体産生細胞に分化 るような能力を潜在的に有するB細胞を含む のである。更に、本発明方法において、B細 胞等の各種細胞及びCD22(遺伝子)は、マウス及 びヒト等の哺乳類を含む当業者に公知の任意 の動物細胞由来のものが含まれる。

 本発明方法における免疫応答の促進作用に 、当業者に公知の任意の反応、例えば、免 応答初期におけるB細胞の増殖及び生存の亢 進、特に、抗原刺激によるB細胞の増殖、分 及び/又は生存の亢進、例えば、免疫応答初 における、IgG1 + B細胞、IgM + B細胞及び胚中心B細胞数のCD22 +/+ B細胞に比べて約2~3倍の増加、例えば、IgG1 + 陽性細胞へのB細胞のクラススイッチ及び/又 、例えば、抗体産生細胞及び胚中心B細胞へ の分化の早期化、脾臓などの免疫器官におけ るIgG及び/又はIgM等の抗体産生細胞の増大数 及び、例えば、産生抗体量の血清中での増 (CD22 +/+ B細胞に比べて約3~5倍)、及び/又はそれらの早 期化、並びに、B細胞受容体シグナル伝達の 害等の当業者に公知の多様な態様が含まれ 。

 ここで、「免疫応答初期」とは、免疫原 なった抗原の種類、免疫応答の促進作用に ける態様の相違等によって1~2日程度は変動 るが、通常、免疫(抗原による感作・刺激) の数日間、例えば、免疫後3~5日を意味する

 本発明の方法において、B細胞におけるCD2 2機能の抑制は、当業者に公知の様々な遺伝 工学(ゲノム工学)的方法・手段で実施するこ とが出来る。免疫応答が有意に促進される限 り、CD22機能が完全に抑制又は阻害されてい 必要はない。

 B細胞におけるCD22機能の抑制は、例えば CD22遺伝子の欠損又は変異による機能障害等 CD22遺伝子自体に対する作用の結果によるも のであり得る。このような遺伝子自体に対す る作用は、例えば、当業者に公知の遺伝子タ ーゲッティング技術によって、CD22遺伝子を ックアウトさせたり、各種の遺伝子変異導 法によって該遺伝子に突然変異等を導入さ ることにより、所定の機能を有していないCD 22変異体が発現されるようにすることによっ 達成することが可能である。

或いは、CD22遺伝子の発現を抑制すること よってCD22機能の抑制をすることが可能であ 。このような発現の抑制は、転写及び翻訳 の任意の各段階で実施することが可能であ 。

 例えば、転写レベルでの抑制にはCD22遺伝 子(DNA又はmRNA)を標的とするsiRNA等のRNA干渉(RNA i)を誘導する核酸配列(該遺伝子の部分塩基配 列に特異的な配列を有する一本鎖RNA又は二本 鎖RNA)による遺伝子ノックダウン、アンチセ スRNA、又は各種のリボザイム等を用いる方 を挙げることが出来る。

RNA干渉を誘導する核酸は、当業者であれば 、公知の各種のデータベースに登録されてい るCD22遺伝子の塩基配列、例えば、マウスCD22 伝子に関してはGenBank/EMBL/DDBJ のaccession numb er(ACCESSION No.L16928)に基き、適宜設計して調製 することが出来る。例えば、CD22遺伝子の塩 配列又はその一部の連続する塩基配列を含 15~30個、特に、21~23個の塩基から成るオリゴ クレオチド及びその相補的オリゴヌクレオ ドから成る二本鎖RNAである。尚、かかるsiRN Aには、細胞内で上記核酸配列がDicer により 化されて生成されるものも含まれる。

又、転写レベルで抑制するには、CD22遺伝 の発現調節領域を操作することによって転 反応が正常に行われないようにすることも 能である。

 更に、当業者に公知の各種形質転換方法 用いて、CD22の機能を任意の段階で阻害する 物質を発現させることで、CD22機能を抑制す ことも可能である。

 B細胞におけるCD22機能の抑制は、インビ ロ又はインビボで生起させることが可能で る。インビボの場合には、例えば、CD22遺伝 がノックアウトされたマウス等のノックア ト動物を作製することにより達成される。

 従って、本発明は又、CD22機能が抑制された B細胞(集団)にも係る。このような細胞は、例 えば、上記のCD22遺伝子がノックアウトされ マウス等の哺乳動物であるノックアウト動 、或いは、遺伝的にこのようなノックアウ 動物に由来するマウス等の哺乳動物(例えば 本明細書の実施例に記載されているQMマウ のような、特定の抗原(ハプテン)に反応する マウス等の他の動物との掛け合わせで作製さ れたもの)の脾細胞からCD23+濾胞B細胞を当業 に公知のソーティング技術を用いて単離す ことによって調製することが可能である。 の一例として、実施例1で調製されたCD22 -/- QMマウスの脾細胞(IgH a ,Ly5.2)を挙げることが出来る。或いは、上記 各種遺伝子工学的技術を適用することによ て、CD22機能が抑制されたB細胞(集団)を容易 作製することも可能である。更に、ES細胞 の各種の幹細胞においてCD22遺伝子をノック ウトし、これをB細胞に分化させることによ って、本発明のCD22機能が抑制されたB細胞を ることも可能である。

 このようなCD22機能が抑制されたB細胞は 本発明方法に使用される他に、免疫応答反 を解析する手段、又は、免疫応答反応に関 する物質等のスクリーニング方法等で有効 使用することができる。

本発明は更に、上記のいずれかの方法、又 はCD22機能が抑制されているB細胞を利用する 体の製造方法にも係る。このような抗体は 当業者に公知の任意の方法・手段を用いる とによって任意の抗原に対して作製するこ が可能であり、一例として、T細胞依存性抗 原を挙げることが出来る。

 既に記載したように、B細胞におけるCD22 能を抑制することによって、免疫応答が促 されることが判明したので、この作用を利 することによって、B細胞におけるCD22機能の 変化に基づき、免疫応答を促進させる物質を スクリーニングすることが可能となる。よっ て、本発明はこのようなスクリーニング方法 及び該方法に使用するスクリーニングキット にも係る。

本発明のスクリーニング方法の一例として、 例えば、以下の工程:
 (a) 被検物質とB細胞を接触させる工程、
 (b)該細胞におけるCD22機能を検出する工程、 及び
 (c)該機能を抑制させる物質を選択する工程 を含む方法を挙げることが出来る。

 該スクリーニング方法において、CD22機能 の変化(抑制)は、当業者に公知の任意の方法 、転写及び翻訳等の任意の各段階におけるC D22遺伝子発現の抑制の程度を測定することに よって、直接に検出することが可能である。

 例えば、本発明のスクリーニング方法に いて、本発明の蛋白質の発現量は、それを ードするmRNAの量により測定することも可能 である。このようなmRNAの測定は、本明細書 の実施例に記載された該蛋白質をコードす 遺伝子(DNA)の塩基配列に基づき適宜設計した プライマーを使用したRT-PCR法等の各種定量的 PCR法、並びにマイクロアレイ(DNAチップ)法等 当業者に公知の方法で行うことが出来る。 に、既に記載したような、B細胞におけるCD2 2機能の抑制によって得られる免疫応答の促 作用に含まれる様々な態様を検出すること よって、間接的にCD22機能の変化・抑制を検 することが可能である。

本発明のスクリーニングにおいて使用する 、B細胞等の各種細胞及びCD22(遺伝子)は、マ ス及びヒト等の哺乳類を含む当業者に公知 任意の動物細胞由来のものが含まれる。又 該スクリーニングはインビトロ又はインビ で行うことができる。例えば、インビトロ おいては、被検物質の存在下にB細胞を培養 ることによって、被検物質とB細胞を接触さ せることができる。インビボでは、例えば、 被検物質を適当な方法で実験動物に投与する ことで被検物質とB細胞を体内で接触させる とができる。

 本発明のスクリーニング方法に使用され キットは、B細胞におけるCD22機能の具体的 検出・測定原理等に応じて、適当な構成を ることが出来る。該キットは、例えば、本 明の蛋白質を特異的に認識する抗体から成 試薬、又は、上記のmRNAの測定の為の、上記 伝子の増幅用プライマー及びハイブリダイ ーション用のプローブを含むことが出来る これらは、その用途に応じて、適当な長さ 例えば、10~100個の連続した塩基配列から成 。

 以上のキットに構成要素として含まれる 各種のプライマー、プローブ、又は、抗体 、当業者に公知の任意の放射性物質、蛍光 質、色素等の適当な標識物質によって標識 れていても良い。更に、上記キットには、 の構成・使用目的などに応じて、当業者に 知の他の要素又は成分、例えば、各種試薬 酵素、緩衝液、反応プレート(容器)等が含 れる。 

 尚、既に記載したように、本明細書にお て、B細胞等の各種細胞及びCD22(遺伝子)は、 マウス及びヒト等の哺乳類を含む当業者に公 知の任意の動物細胞由来のものが含まれる。 これら遺伝子に関する情報(塩基配列情報等) 当業者に公知であり、各種の公的データベ スから容易に入手することが可能である。 えば、ヒトのCD22遺伝子については、公的デ ータベース(DDBJ/EMBL/GenBank; ACCESSION No.X59350参 )に配列情報が記載されている。

 更に、本発明における「CD22」をコードす るDNA(ゲノムDNA及びcDNA)には、上記の具体的な 塩基配列からなるDNAの他に、上記DNA(又は、 れらに対応するcDNA)と相補的な塩基配列から なるDNAとストリンジェントな条件下でハイブ リダイズするDNA、及び上記DNAと約80%以上、好 ましくは約95%以上である配列相同性を示す塩 基配列からなるDNAであって、実質的にCD22の なくとも一つの作用を有する蛋白質をコー するDNAが含まれる。

 ここで、ハイブリダイゼーションは、例 ば、Molecular cloninng third.ed.(Cold Spring Harbor Lab.Press,2001)、又は、カレント・プロトコー ズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Curr ent protocols in molecular biology(edited by Frederick  M. Ausubel et al.,1987)に記載の方法等、当業 で公知の方法あるいはそれに準じる方法に って行うことができる。また、市販のライ ラリーを使用する場合、添付の使用説明書 記載の方法に従って行うことができる。

 本明細書において、「ストリンジェント 条件下」とは、例えば、温度60℃~68℃にお て、ナトリウム濃度15~900mM、好ましくは15~600 mM、さらに好ましくは15~150mM、pH6~8であるよう な条件を挙げることができる。

 従って、上記の配列番号で表される塩基 列を含むDNAと相補的な塩基配列からなるDNA ストリンジェントな条件下でハイブリダイ できるDNAとしては、例えば、該DNAの全塩基 列との相同性の程度が、全体の平均で、約8 0%以上、好ましくは約95%以上、更に好ましく 99%以上である塩基配列を含有するDNA等を挙 ることができる。

 このようなDNAは、例えば、非特許文献1及 び本明細書に開示の塩基配列情報等に基づき 調製した適当なプライマーを用いてPCR等によ り取得することが可能である。また、本発明 のDNAは当業者に公知の任意の方法によって化 学合成することも可能である。

 又、本発明の「CD22」は、上記の配列番号 で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質に加 えて、このようなアミノ酸配列において、1 若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若 くは付加されたアミノ酸配列(上記アミノ酸 列と配列相同性を有するアミノ酸配列)から なり、実質的にCD22の少なくとも一つの作用 有する蛋白質も含まれる。

 2つの塩基配列又はアミノ酸配列における 配列相同性を決定するために、配列は比較に 最適な状態に前処理される。例えば、一方の 配列にギャップを入れることにより、他方の 配列とのアラインメントの最適化を行う。そ の後、各部位におけるアミノ酸残基又は塩基 が比較される。第一の配列におけるある部位 に、第二の配列の相当する部位と同じアミノ 酸残基又は塩基が存在する場合、それらの配 列は、その部位において同一である。2つの 列における配列相同性は、配列間での同一 ある部位数の全部位(全アミノ酸又は全塩基) 数に対する百分率で示される。

 上記の原理に従い、2つの塩基配列又はア ミノ酸配列における配列相同性は、例えば、 Karlin及びAltschulのアルゴリズム(Proc.Natl.Acad.Sci .USA 87:2264-2268、1990及びProc.Natl.Acad.Sci.USA 90:58 73-5877、1993)により決定される。このようなア ルゴリズムを用いたBLASTプログラムやFASTAプ グラムは、主に与えられた配列に対し、高 配列相同性を示す配列をデータベース中か 検索するために用いられる。これらは、例 ば、米国National Center for Biotechnology Informati onのインターネット上のウェブサイトにおい 利用可能である。

 上記のような塩基配列の配列相同性又は ードするアミノ酸配列の配列相同性を示す うなDNAは、上記のようにハイブリダイゼー ョンを指標に得ることもでき、ゲノム塩基 列解析等によって得られた機能未知のDNA群 は公共データベースの中から、当業者が通 用いている方法により、例えば、前述のBLAS Tソフトウェアを用いた検索により発見する とも可能である。

 以下、本発明を実施例によって詳細に説 するが、本発明の技術的範囲は以下の実施 の記載によって何ら限定して解釈されるも ではない。又、特に記載のない場合には、 下の実施例は、例えば、Sambrook and Maniatis, in Molecular Cloning-A Laboratory Manual, Cold Spring  Harbor Laboratory Press, New York, 1989; Ausubel, F . M. et al., Current Protocols in Molecular Biology,  John Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995等に記 載されている、当業者に公知の標準的な遺伝 子工学及び分子生物学的技術に従い、実施す ることが出来る。又、本明細書中に引用され た文献の記載内容は本明細書の開示、及び、 内容の一部を構成するものである。

免疫応答初期におけるCD22欠損B細 のextrafollicular plasmablastのburst:
免疫応答の際の抗原に反応したCD22欠損B細胞 動態を明らかにするために、ほとんどすべ のB細胞がニトロフェノール(NP)に反応するQM マウスとCD22欠損マウス(デューク大学より提 )を掛け合わせることで、CD22欠損QMマウス( 下「CD22 -/- QM」と称す)を得た。通常のT細胞依存性抗原 対してはB細胞の中でも濾胞B細胞が関与して いる。そこで、CD22を欠損していないQMマウス (以下「CD22 +/+ QM」と称す)及びCD22 -/- QMマウスの脾細胞(IgH a ,Ly5.2)をPE標識抗CD23抗体(Cat No. 12-0232-85:e-Biosc ience)及びMagnet beads標識抗PE抗体(Mat.No.120-000-29 4:Miltenyi biotec)で染色した後、Auto MACSによりp ositive sortingしてNP反応性CD23 + 濾胞B細胞を得た(Fig1A)。NP特異的な表面免疫 ロブリン(B細胞抗原受容体)の発現はCD22 -/- B細胞でCD22 +/+ B細胞の約半分であった(Fig1A)。これはCD22 -/- B細胞において細胞表面のB細胞抗原受容体の 現量が下がるとの報告と一致する。尚、上 のCD22欠損マウスは、National Institute of Gener al Medical Sciences (NIGMS: 45 Center Drive MSC 6200  Bethesda, MD 20892-62 USA) によって設立された Consortium for Functional Glycomics (CFG)のCore F 又 はThe Jackson Laboratory (600 Main Street Bar Harbor , Maine 04609 USA) から入手可能(Original publicat ion name:mSiglec-2 ;Colony Code Name:CD22)である。

 次に、に示されるように、Helper T細胞を活 化するためにあらかじめCGG100μgとCFAアジュ ントでprimeしたC57BL/6 Ly5.1コンジェニックマ ウス(IgH b ,Ly5.1)1個体あたりに、上記で調製した4x10 5  の濾胞B細胞を静脈経由で移入した(Day-1)。 日(Day0)、T細胞依存性抗原であるNP-CGG50μgとal umアジュバントを用いて免疫した。免疫後3,5, 7日目にCD22 +/+ QM B細胞を移植したrecipient又はCD22 -/-  QMB細胞を移植したrecipientの脾臓組織切片を CD38抗体(青)(Cat.No.12-0381-81:e-Bioscience)、抗IgM a 抗体(Cat.No.553515:BD PharmMingen)((a)- (f))又は抗IgG 1 a 抗体(緑)(Cat.No.553500:BD PharMingen)((g)-(l))、及びN IP-APC(赤)で染色し、共焦点蛍光顕微鏡で観察 た(Fig1C)。Recipient由来の濾胞B細胞は抗CD38抗 のみで染色され、Donor由来のB細胞は抗IgMa抗 体、抗IgG1a抗体及びNIP-APCで染色された。CD22 -/- Donor B細胞由来のburstがBridging Channel(arrow)及 赤脾髄(arrowhead)に認められた。

 その結果、免疫後3日目にはCD22 +/+ B細胞移入マウスでは少数のDonor由来B細胞がB 胞濾胞とT細胞領域の境界に散在していたが 、CD22 -/- B細胞移入マウスでは同じ領域に多数のB細胞 増殖が観察された。そのほとんどがIgM陽性B 細胞であった)。5日目にはCD22 +/+ B細胞ではBridging Channelにおいてわずかにplasma blastとして増殖しているのに対し、CD22-/-B細 はBridging Channel、及び赤脾髄で爆発的なPlasma blastの増殖を見せた。その多くはIgG1へクラス スイッチしていることが観察された。7日目 おいてはCD22-/-B細胞またはCD22 +/+ B細胞のどちらもB細胞の多くはB細胞濾胞もし くは胚中心内に観察され、5日目に認められ ようなPlasmablastのクラスターは観察されず、 いくつかのplasma cellが赤脾髄に存在している 程度であった。

これらの結果から、CD22 -/- B細胞は免疫後5日目といったごく初期におい 大量のplasmablastを産生することが明らかに った。この結果は記憶B細胞が2次免疫応答の ごく初期に大量のplasmablastを形成する現象と 似しており、またGoodnowらが報告しているIgG トランスジェニックB細胞の免疫応答時5日目 認められるextrafollicular proliferative burstと共 通するものである。これらの結果はCD22によ 制御シグナルの制御の解除により記憶免疫 答時に認められるようなExtrafollicular Plasmabla stの爆発的な増殖が起こることを示している 尚、各群4匹のマウスについて同様の解析を 行い同様の結果を得た。

抗原反応後のCD22-/-B細胞の迅速な ローン増殖と生存維持:
次にCD22 -/- B細胞において免疫応答初期に認められるplasm ablastの大量の増殖のメカニズムの検索を行っ た。免疫応答の間にハプテンNPに対して応答 たB細胞はIgMから主にIgG1へのクラススイッ することが知られている、またT細胞依存性 原に対しては胚中心B細胞が産生されること が知られている。そこで実施例1と同様に、CD 22 +/+ 及びCD22 -/- B細胞(それぞれ4x10 5 cells)をrecipientマウスに移入後、Donor由来の全B 細胞、IgM陽性B細胞、IgG1陽性B細胞、また胚中 心B細胞の数をフローサイトメーターで測定 た。

その結果、CD22 +/+ 及びCD22 -/- QMB細胞は共に全B細胞、IgM陽性B細胞、IgG1陽性 B細胞、胚中心B細胞すべてが免疫後5日目まで 増殖し7日目では減少したことが判明した(Fig2 )。IgG1陽性B細胞はIgM陽性B細胞に比し若干遅 て増加する傾向にあった(Fig2D)。免疫後5日目 のピーク時には全B細胞、IgM陽性B細胞、IgG1陽 性B細胞、胚中心B細胞すべてでCD22 -/- B細胞はCD22 +/+ B細胞の約2~3倍に増加していた(Fig2E,F)。一方 免疫後7日目ではCD22 -/- QMB細胞はCD22+/+QMB細胞に比し急激に減少し、 の結果CD22 +/+ B細胞と同程度になった。したがってCD22 -/- B細胞はIgM + B細胞、IgG1 + B細胞、胚中心B細胞のすべての亜集団で免疫 答の初期にCD22 +/+ B細胞に比し増加していることが明らかとな た。

更に、CD22 -/- B細胞の増加のメカニズムを検索するため、CD 23陽性のCD22 +/+ QM B細胞またはCD22欠損QMB細胞をCFSEで染色し それぞれ4x10 6  cellsをC57BL/6 Ly5.1マウスに移植しNP-CGGで免疫 した。免疫応答時のDonor B細胞の増殖、クラ スイッチ、及び胚中心B細胞への分化をフロ ーサイトメトリーにより観察した(Fig3)。Donor B細胞の増殖は、免疫後1,2,3日目のdonor由来IgM B細胞(B220 + ,Ly5.2 + ,IgM + )のCFSEの蛍光強度をフローサイトメトリーで 出した。クラススイッチは免疫後2,3日目のD onor由来B細胞(B220 + ,Ly5.2 + )のCFSEの蛍光強度とIgG1産生から解析した。胚 中心B細胞への分化は免疫後3日目のDonor由来B 胞(B220 + ,Ly5.2 + )のCFSEの蛍光強度とCD38の発現から解析した。

免疫後1日目ではCD22 +/+ B細胞,CD22 -/- B細胞ともCFSE蛍光の減少した細胞は検出でき 細胞増殖していないことがわかった。免疫 2日目においてCD22 +/+ B細胞,CD22 -/- B細胞ともCFSE蛍光の減少した細胞が多数出現 細胞分裂が起きていることが観察されたが CD22 +/+  B細胞では4回目の分裂に留まっているにも らず、CD22 -/- B細胞では5~6回目の分裂が起きていた。また 細胞分裂のピークはCD22 +/+ B細胞では3回目であるのに対しCD22 -/- B細胞では4回目をピークとしており、CD22 -/- B細胞では免疫応答初期において細胞分裂が く起きていることが明らかとなった。この 、それぞれの分裂時のピークの高さはどの 裂時においてもCD22 -/- B細胞で高いことから、生存も亢進している とがわかる。免疫後3日目ではCD22 +/+ B細胞に比べてCD22 -/- B細胞ではCFSEの蛍光強度の減少が顕著であっ 。この結果はCD22 -/- B細胞でより速く細胞分裂を起こしているこ を示している。またDonor B細胞を移入後、抗 原を免疫していないマウスにおいては細胞分 裂が起きていないことから、この細胞増殖が 抗原特異的な反応であることが明らかである (Fig3A)。したがってCD22 -/- B細胞では抗原刺激によりB細胞の細胞増殖お び生存が共に亢進していることが明らかと った。

次いでIgG1陽性細胞の出現および胚中心B細胞 の分化をCFSEの蛍光と同時に解析した。CD22 +/+ B細胞およびCD222 -/- B細胞は共に3回目の細胞分裂時からIgG1陽性B 胞が出現してきており、免疫後3日目ではCD22 -/- B細胞由来のIgG1 + B細胞はCD22 +/+ B細胞由来のものに比し2倍程度増加していた またどちらも細胞分裂7-8回目から胚中心B細 胞(CD38 lo )に移行したがCD22 -/- B細胞由来の胚中心B細胞はCD22+/+B細胞由来の のに比し約3倍程度増加していた(Fig3B)。分化 に必要な細胞分裂回数はCD22 -/- B細胞とCD22 +/+ B細胞で違いはなかった。しかし、おそらくCD 22 -/- B細胞で細胞分裂が亢進するためにCD22 -/- B細胞からはCD22 +/+ B細胞に比し多くのIgG1 + B細胞および胚中心B細胞が生成したと考えら る。

CD22-/-B細胞による免疫応答初期に ける多量の抗体産生細胞及び抗体産生の産 :
CD22 -/- B細胞は脾臓組織切片で顕著なplasmablastのburst 観察されたのでCD22 -/- B細胞を移入したマウスでの抗体産生を検索 た。まず免疫後3,5,7日目のrecipientマウスの脾 細胞におけるDonor B細胞由来のNP特異的な抗 産生細胞数をELISPOT法により測定した(Fig4A,B) IgMクラス、IgG1クラスとも抗体産生細胞は免 疫後3日目からCD2 -/- B細胞ではCD22 +/+ B細胞の約5倍検出され、5日目においても著明 に多く、IgG1クラスは5倍以上であった。しか CD22 -/- B細胞由来の抗体産生細胞数はIgMクラス、IgG1 ラスの両方で7日目には減少した。一方、CD2 2 +/+ B細胞では7日目にいたるまで徐々に増加して りそのkineticsに違いが見られた。この結果 CD22 -/- B細胞ではCD22 +/+ B細胞に比し抗体産生細胞の出現が早期化し いることを示す。

次いで血清中におけるDonor B細胞由来のNP特 的な抗体価を測定した(Fig4C,D)。脾臓中にお る抗体産生細胞の増加に相関してCD22 -/- B細胞を移入した個体では免疫後3日目からす にIgMクラスの特異抗体が検出され、5日目に はCD22 +/+ B細胞の約3倍の特異抗体が検出された。そのk ineticsはCD22 -/- B細胞で5日目にピークを迎えているのに対し CD22 +/+ B細胞では7日目にピークを迎えており、CD22 -/- B細胞において抗体産生が早期化しているこ が示された(Fig4C)。またCD22 -/- B細胞のIgG1クラスの抗体産生もCD22 +/+ B細胞に比し顕著に増加し、増加の程度はIgM ラスの場合より大きかった。5日目から10日 にいたるまでCD22 -/- B細胞からはCD22 +/+ B細胞の約5倍量のIgG1抗体産生がおこっていた (Fig4D)。以上よりCD22 -/- B細胞では抗体産生細胞への分化が早期化し その結果免疫応答初期からCD22 +/+ B細胞に比し多量の抗体産生をすることが明 かとなった。

ワクチンなどにより免疫記憶が成立すると 、病原微生物の侵入に際して速やかに抗体産 生を含め免疫応答がおこり病原微生物を排除 するため、重篤な感染症状発生以前に病原微 生物を排除することにより感染症を防御する ことができる。記憶免疫と同様の早期の免疫 応答を誘導する薬剤等を開発できれば、ワク チンに代わって広く種々の微生物による感染 を防御することができる。このような薬剤は 、ワクチンのように個々の微生物について開 発する必要がないため、とりわけ病原微生物 が未知の新興感染症に有用である。本発明の 結果からCD22の機能を抑制・制御することに り抗体産生を早期化できることが明らかに ったので、CD22を標的にすることにより、ユ バーサルな感染防御薬の開発が可能になる 考えられる。