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Title:
METHOD FOR PURIFICATION OF OPTICALLY ACTIVE Α-FLUOROCARBOXYLIC ACID ESTERS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/025169
Kind Code:
A1
Abstract:
A method for purification of an optically active α-fluoro- carboxylic acid ester represented by the general formula [1] by removing fluoride ions from the ester to reduce the amount of fluoride ions contained in the ester: [Chemical formula 30] [1] [wherein R1 is alkyl having 1 to 6 carbon atoms; R2 is alkyl having 1 to 4 carbon atoms; and * represents an asymmetric carbon atom], characterized in that the ester is distilled in the presence of an organic base. According to the method, the residual fluoride ion concentration of the optically active α-fluorocarboxylic acid ester can be reduced remarkably by relatively easy operation. It is preferable that the organic base be a tertiary amine, particularly tri-n-butylamine.

Inventors:
ISHII AKIHIRO
TSURUTA HIDEYUKI
MORINO YUZURU
TAKAHASHI MIKIHIRO
Application Number:
PCT/JP2008/064016
Publication Date:
February 26, 2009
Filing Date:
August 05, 2008
Export Citation:
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Assignee:
CENTRAL GLASS CO LTD (JP)
ISHII AKIHIRO
TSURUTA HIDEYUKI
MORINO YUZURU
TAKAHASHI MIKIHIRO
International Classes:
C07C67/54; C07C67/307; C07C67/62; C07C69/63; C07B53/00; C07B57/00; C07B61/00
Domestic Patent References:
WO2008090755A12008-07-31
Foreign References:
JPS61271249A1986-12-01
JP2006290870A2006-10-26
JP2007212495A2007-08-23
Other References:
See also references of EP 2189438A4
Attorney, Agent or Firm:
HASHIMOTO, Takeshi et al. (Ekisaikai Bldg. 1-29, Akashi-ch, Chuo-ku Tokyo 44, JP)
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Claims:
式[1]
[式中、R 1 は炭素数1から6のアルキル基を表し、R 2 は炭素数1から4のアルキル基を表し、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性α-フルオロカルボン酸エステルに含まれるフッ化物イオンを低減除去する精製方法であって、有機塩基の存在下に蒸留することを特徴とする、光学活性α-フルオロカルボン酸エステルの精製方法。
請求項1において、前記精製に付される、式[1]で示される光学活性α-フルオロカルボン酸エステルが、式[7]
[式中、R 1 は炭素数1から6のアルキル基を表し、R 2 は炭素数1から4のアルキル基を表し、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性α-ヒドロキシカルボン酸エステルを、スルフリルフルオリド(SO 2 F 2 )、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CF 3 SO 2 F)またはノナフルオロブタンスルホニルフルオリド(C 4 F 9 SO 2 F)と反応させることにより、製造されるもの(不斉炭素の立体化学は反転する)であることを特徴とする、請求項1に記載の光学活性α-フルオロカルボン酸エステルの精製方法。
請求項2において、前記反応を、有機塩基の存在下かつ反応溶媒の非存在下に行う、請求項2に記載の光学活性α-フルオロカルボン酸エステルの精製方法。
請求項1乃至請求項3において、光学活性α-フルオロカルボン酸エステルが、式[2]
[式中、Rはメチル基またはエチル基を表し、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性2-フルオロプロピオン酸エステルであり、前記蒸留時に存在させる有機塩基が、第三級アミンであることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の、光学活性α-フルオロカルボン酸エステルの精製方法。
請求項4において、光学活性α-フルオロカルボン酸エステルが、式[3]
で示される(R)-2-フルオロプロピオン酸メチルであり、第三級アミンがトリn-ブチルアミンであることを特徴とする、請求項4に記載の光学活性α-フルオロカルボン酸エステルの精製方法。
Description:
光学活性α-フルオロカルボン酸 ステルの精製方法

 本発明は、医農薬および光学材料の重要 間体である光学活性α-フルオロカルボン酸 ステルの精製方法に関する。

発明の背景

 本発明で対象とする光学活性α-フルオロ ルボン酸エステルは、医農薬および光学材 の重要中間体である。本発明に関連する代 的な公知技術としては、特許文献1および特 許文献2が挙げられる。これらの公知技術は 脱ヒドロキシフッ素化の反応終了液を無機 基の水溶液に注ぎ込み、水層にフッ化物イ ンを固定化して低減除去する方法である。

 また本出願人は、本出願に先立ち「光学活 α-ヒドロキシカルボン酸エステルを有機塩 の存在下かつ反応溶媒の非存在下にスルフ ルフルオリド(SO 2 F 2 )、トリフルオロメタンスルホニルフルオリ (CF 3 SO 2 F)またはノナフルオロブタンスルホニルフル リド(C 4 F 9 SO 2 F)と反応させ、目的生成物である光学活性α- ルオロカルボン酸エステルを含む反応終了 に酸を加えて蒸留することにより、フッ化 イオンが低減された光学活性α-フルオロカ ボン酸エステルが、高い化学純度且つ光学 度で簡便に製造できること」を見出し、既 出願した[特願2007-212495号、実施例2(前半部) 実施例3(前半部)、参考例1と参考例2を参照]

特開2006-83163号公報

特開2006-290870号公報

発明の概要

 本発明の目的は、医農薬および光学材料 重要中間体である光学活性α-フルオロカル ン酸エステルの大量規模での生産に適した 弗方法を提供することにある。

 特許文献1および特許文献2の脱弗方法は 目的生成物の水溶性が高い場合には脱弗後 回収率が低下するという問題があった。ま フッ化物イオンを固定化するために使用す 水の量が比較的多く、大量規模での脱弗に いては廃水処理に負荷が掛かるという問題 あった。

 特願2007-212495号の脱弗方法は、操作が簡 なため大量規模での脱弗には適しているが 脱弗効果が十分ではないという問題があっ 。目安として、フッ化物イオン濃度を100ppm 度に低減することはできても、10ppm未満に高 度に低減することは困難であった。

 この様に、光学活性α-フルオロカルボン エステルの大量規模での生産に適した脱弗 法が強く望まれていた。

 本発明者らは、上記の課題を解決するた に鋭意検討した結果、光学活性α-フルオロ ルボン酸エステルに含まれるフッ化物イオ が、有機塩基の存在下に蒸留することによ 、簡便に且つ効率良く低減除去できること 見出した。

 すなわち、本発明は、光学活性α-フルオ カルボン酸エステルの大量規模での生産に した脱弗方法を提供する。

 本発明に依れば、式[1]
[式中、R 1 は炭素数1から6のアルキル基を表し、R 2 は炭素数1から4のアルキル基を表し、*は不斉 炭素を表す]で示される光学活性α-フルオロ ルボン酸エステルに含まれるフッ化物イオ を低減除去する精製方法であって、有機塩 の存在下に蒸留することを特徴とする、光 活性α-フルオロカルボン酸エステルの精製 法(第1方法)が提供される。

 第1方法は、前記精製に付される、式[1]で示 される光学活性α-フルオロカルボン酸エステ ルが、式[7]
[式中、R 1 は炭素数1から6のアルキル基を表し、R 2 は炭素数1から4のアルキル基を表し、*は不斉 炭素を表す]で示される光学活性α-ヒドロキ カルボン酸エステルを、スルフリルフルオ ド(SO 2 F 2 )、トリフルオロメタンスルホニルフルオリ (CF 3 SO 2 F)またはノナフルオロブタンスルホニルフル リド(C 4 F 9 SO 2 F)と反応させることにより、製造されるもの( 不斉炭素の立体化学は反転する)であること 特徴とする第2方法であってもよい。

第2方法は、前記反応を、有機塩基の存在 かつ反応溶媒の非存在下に行うことを特徴 する第3方法であってもよい。

第1方法乃至第3方法のいずれか1つの方法は、 光学活性α-フルオロカルボン酸エステルが、 式[2]
[式中、Rはメチル基またはエチル基を表し、* は不斉炭素を表す]で示される光学活性2-フル オロプロピオン酸エステルであり、前記蒸留 時に存在させる有機塩基が、第三級アミンで あることを特徴とする、第4方法であっても い。

第4方法は、光学活性α-フルオロカルボン酸 ステルが、式[3]
で示される(R)-2-フルオロプロピオン酸メチル であり、第三級アミンがトリn-ブチルアミン あることを特徴とする、第5方法であっても よい。

詳細な説明

 本発明の特徴および公知技術ならびに、 公開の特願2007-212495号記載の技術との比較 ついて、以下に纏める。

1)本発明の脱弗効果は極めて高く、フッ化 イオン濃度を10ppm未満に高度に低減するこ ができ、特願2007-13020号に比べて有利な点で る。また本発明の脱弗効果は、代表的な無 脱弗剤に比べて格段に優れていることも明 かにした[実施例1と、参考例2(反応終了液に 酸を加えて蒸留を行う)、比較例2(フッ化ナト リウム)、比較例3(塩化カルシウム・二水和物 )の比較]。

2)本発明の脱弗方法は、水溶性の高い化合 に対しても収率良く回収することができ、 許文献1および特許文献2に比べて有利な点 ある。式[3]で示される(R)-2-フルオロプロピ ン酸メチルは水溶性の比較的高い化合物で るが、本発明の脱弗方法を適用すると収率 く回収することができる。該化合物は農薬 重要中間体として有用性が顕著であるため 本発明の対象化合物として好適である。

3)本発明の脱弗方法は、廃水処理の負荷が殆 掛からないため大量規模での脱弗に適して り、特許文献1および特許文献2に比べて有 な点である。
4)本発明の脱弗方法は、蒸留操作において加 条件下で有機塩基に曝すことになるが、有 塩基が有する塩基性や求核性に起因する、 位のラセミ化やフッ素原子の置換等の副反 は全く認められず、高い光学純度と化学純 を保持した状態で脱弗を行うことができる

5)本発明で使用する有機塩基は、回収再利 においても無機脱弗剤に比べて有利である 無機脱弗剤の回収再利用は一般に困難であ 、使用後は廃棄する場合が多い。一方、有 塩基の回収再利用は後述の通り容易に行う とができる。

 この様に、本発明により、光学活性α-フ オロカルボン酸エステルの脱弗を大量規模 行うことができる。

 本発明の光学活性α-フルオロカルボン酸 ステルの精製方法について詳細に説明する

 先ず、本発明において「脱弗」とは、「 機化合物に含まれるフッ化物イオンを低減 去する」ことを指す。また本発明の光学活 α-フルオロカルボン酸エステルに含まれる ッ化物イオンの存在形態としては、特に制 はないが、通常は「フッ化水素」、「有機 基とフッ化水素からなる塩または錯体」、 無機塩基とフッ化水素からなる塩または錯 」または「光学活性α-フルオロカルボン酸 ステルとフッ化水素からなる錯体」として 在する。

 式[1]で示される光学活性α-フルオロカルボ 酸エステルのR 1 としては、メチル基、エチル基、プロピル基 、ブチル基、アミル基、ヘキシル基が挙げら れ、炭素数が3以上のアルキル基は直鎖また 分枝を採ることができる。

 式[1]で示される光学活性α-フルオロカルボ 酸エステルのR 2 としては、メチル基、エチル基、プロピル基 、ブチル基が挙げられ、炭素数が3以上のア キル基は直鎖または分枝を採ることができ 。またR 1 とR 2 のアルキル基同士が共有結合してラクトン環 を形成することもできる。

 式[1]で示される光学活性α-フルオロカル ン酸エステルの不斉炭素の立体化学として 、R配置またはS配置を採ることができ、エ ンチオマー過剰率(%ee)としては、特に制限は ないが、90%ee以上のものを用いればよく、通 は95%ee以上が好ましく、特に97%ee以上がより 好ましい。

 式[1]で示される光学活性α-フルオロカル ン酸エステルの製造方法としては、特に制 はないが、特許文献1、特許文献2、特願2007- 212495号、国際公開2006/037887号パンフレットお び特開2006-169251号公報を参考にして製造す ことができる(未公開の特願2007-212495号の製 方法については詳細に後述する)。本発明の 製方法は、その製造方法に依らず、光学活 α-フルオロカルボン酸エステルの脱沸に広 採用することができる。その中でも、得ら た該エステルの含有量が比較的高いものに して顕著な脱沸効果を示し、具体的には、 量パーセントで70%以上のものを用いればよ 、通常は80%以上が好ましく、特に90%以上が り好ましい。

 有機塩基としては、特に制限はないが、代 的なものとしては、式[4]
[式中、R 1 、R 2 およびR 3 はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1か 12のアルキル基を表す(但し、R 1 、R 2 およびR 3 が同時に水素原子を採ることはない)。炭素 が3以上のアルキル基は直鎖または分枝を採 ことができ、またアルキル基同士が共有結 して含窒素複素環を形成することもできる] で示されるアミン、および、式[5]
[式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 およびR 5 はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1か 6のアルキル基を表す。炭素数が3以上のアル キル基は直鎖または分枝を採ることができる ]で示されるピリジン類が挙げられる。その でも前者のアミンの方が好ましく、該アミ の中でも、第三級アミンが第一級アミンお び第二級アミンに比べてより好ましく、加 条件下の蒸留操作においても、式[6]
[式中、R 1 は炭素数1から6のアルキル基を表し、R 2 およびR 3 はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1か 12のアルキル基を表す(但し、R 2 およびR 3 が同時に水素原子を採ることはない)。炭素 が3以上のアルキル基は直鎖または分枝を採 ことができ、またR 2 およびR 3 のアルキル基同士が共有結合して含窒素複素 環を形成することもできる。*は不斉炭素を す]で示される光学活性α-フルオロカルボン アミドを副生することがない。斯かる第三 アミンとしては、トリメチルアミン、トリ チルアミン、ジイソプロピルエチルアミン トリn-プロピルアミン、トリn-ブチルアミン 、トリn-ペンチルアミン、トリn-ヘキシルア ン等が挙げられる。また、蒸留操作におい は、対象化合物である光学活性α-フルオロ ルボン酸エステルとの沸点差が、大気圧で30 ℃以上あるものを用いればよく、通常は40℃ 上が好ましく、特に50℃以上がより好まし 、さらに、「フッ化水素との塩または錯体 が適度な流動性を有し、回収再利用が容易 行える第三級アミンを選定することが重要 ある。本発明の好適な対象化合物である(R)-2 -フルオロプロピオン酸メチルの脱沸におい は、第三級アミンの中でも、トリn-ブチルア ミンが極めて好ましい。

 有機塩基の使用量としては、特に制限は いが、式[1]で示される光学活性α-フルオロ ルボン酸エステルに含まれるフッ化物イオ 1モルに対して0.7~100モルを用いればよく、 常は0.8~75モルが好ましく、特に0.9~50モルが り好ましい。式[1]で示される光学活性α-フ オロカルボン酸エステルの製造方法によっ は、既に所定量以上の有機塩基を含んでい 場合もあり、この様な場合には、新たに有 塩基を加えることなく蒸留精製を行うこと できる。

 本発明の精製方法においては、脱沸操作 使用した有機塩基を回収再利用することが きる。蒸留を好適な操作条件下で行うと、 用後の有機塩基は「フッ化水素との塩また 錯体(フッ化水素との混合物)」の形で、釜 (蒸留残渣)から回収することができる。該釜 残を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水 酸化カルシウム等から調製したアルカリ性水 溶液で中和し、遊離した有機塩基を分液し、 必要に応じて水洗または脱水操作を行い、蒸 留することにより、有機塩基を高い化学純度 で収率良く回収することができる。回収した 有機塩基は、脱弗効果が低下することなく再 利用できる。この様な方法で回収再利用を行 う場合には、脂溶性が高く、脱水し易い有機 塩基が好適である。当然、回収再利用の方法 は、上記の手法に限定されるものではない。

 蒸留の操作条件としては、対象化合物で る式[1]で示される光学活性α-フルオロカル ン酸エステルの沸点を考慮して、当業者に って、圧力およびバス温度(釜温度)を適宜 定することができるが、減圧蒸留が、蒸留 度を適度に低減できるために、好ましい。 圧蒸留を行う場合の減圧度(蒸留時の系内の 対圧をいう。以下同じ。)としては、特に制 限はないが、大気圧未満の範囲で行えばよく 、通常は70kPa以下が好ましく、特に50kPa以下 より好ましい。但し、0.1kPaを下回ると、脱 の効率が下がり、または有機塩基との分離 率が下がり、かえって操作上、不都合にな ことがあるので、好ましくない。したがっ 、例えば0.5kPa~50kPaの範囲で蒸留を行うこと 、好ましい態様である。

 また蒸留における塔頂温度は、上記減圧 に依存するが、バス温度としては、当然こ 塔頂温度よりも高い温度を設定する。バス 度も減圧度に依存することとなるが、この 度としては、200℃以下の範囲であり、通常 175℃以下が好ましく、特に150℃以下がより ましい。バス温度に下限値はないが、20℃ 上、さらに好ましくは30℃以上のバス温度で 蒸留を行うと、蒸留が安定しやすいので、有 利である。したがって、バス温度20~175℃は好 ましい温度として挙げられ、30~150℃は一層好 ましい温度である。

 必要に応じて、本発明の脱弗操作を繰り すことにより、光学活性α-フルオロカルボ 酸エステルに含まれるフッ化物イオンをさ に高度に低減除去することができる。

 本発明の精製方法においては、対象化合物 有用性、有機塩基の入手容易性、顕著な脱 効果、蒸留の操作性、蒸留での有機塩基と 象化合物の分離性、副反応が起こらないこ 、および有機塩基の回収再利用の容易性等 ら判断すると、「式[2]で示される光学活性2 -フルオロプロピオン酸エステルと第三級ア ンの組み合わせによる蒸留」が好ましい態 であり、特に「式[3]で示される(R)-2-フルオ プロピオン酸メチルとトリn-ブチルアミンの 組み合わせによる蒸留」がより好ましい態様 である。
[光学活性α-フルオロカルボン酸エステルの 造方法]
 本発明において、前記精製に付される、式[ 1]で示される光学活性α-フルオロカルボン酸 ステルの製造方法(合成方法)としては、式[7 ]
[式中、R 1 は炭素数1から6のアルキル基を表し、R 2 は炭素数1から4のアルキル基を表し、*は不斉 炭素を表す]で示される光学活性α-ヒドロキ カルボン酸エステルを、スルフリルフルオ ド(SO 2 F 2 )、トリフルオロメタンスルホニルフルオリ (CF 3 SO 2 F)またはノナフルオロブタンスルホニルフル リド(C 4 F 9 SO 2 F)と反応させる方法(不斉炭素の立体化学は反 転する)が挙げられる。

 また、大量規模での製造に適した方法とし は、前述の中でも、特願2007-212495号記載の 法が挙げられ、次の二つの特徴を有してお 、高い生産性で且つ少ない廃棄物で製造で るため、工業的な方法として非常に有用で る。
1)反応溶媒を一切用いないニートの状態で目 とする反応が良好に進行し、光学活性α-フ オロカルボン酸エステルが極めて高い光学 度(好適な場合には99%ee以上)で収率良く得ら れること[実施例2(前半部)、実施例3(前半部) 参考例1および参考例2]。
2)さらに反応終了液を直接、蒸留精製するこ により、光学活性α-フルオロカルボン酸エ テルが極めて簡便に回収でき、またこの時 酸を加えて蒸留精製することにより、回収 れる光学活性α-フルオロカルボン酸エステ 中の有機塩基含量とフッ化物イオン濃度が 果的に低減できること[参考例2と、実施例2( 前半部)、実施例3(前半部)および参考例1の比 ]。

 よって、「光学活性α-フルオロカルボン エステルを特願2007-212495号の好適な方法で 造し、本発明の好適な脱弗方法で精製する み合わせ(例えば、実施例2および実施例3)」 極めて好ましい態様である。

 特願2007-212495号の製造方法は未公開のた 、以下に説明する。

 該製造方法は、下記の[製法1]から[製法7] 含み、光学活性α-フルオロカルボン酸エス ルの工業的な製造方法を提供する。

 製法1は、式[7]
[式中、R 1 は炭素数1から6のアルキル基を表し、R 2 は炭素数1から4のアルキル基を表し、*は不斉 炭素を表す]で示される光学活性α-ヒドロキ カルボン酸エステルを、スルフリルフルオ ド(SO 2 F 2 )、トリフルオロメタンスルホニルフルオリ (CF 3 SO 2 F)またはノナフルオロブタンスルホニルフル リド(C 4 F 9 SO 2 F)と反応させることにより、式[1]
[式中、R 1 、R 2 および*は上記と同じものを表し、不斉炭素 立体化学は反転する]で示される光学活性α- ルオロカルボン酸エステルを製造する方法 あって、該反応を、有機塩基の存在下かつ 応溶媒の非存在下に行う、光学活性α-フル ロカルボン酸エステルを製造する方法であ 。

 製法2は、製法1に記載の反応によって得 れた、光学活性α-フルオロカルボン酸エス ルを含む反応終了液に、酸を加えて蒸留精 することを特徴とする、光学活性α-フルオ カルボン酸エステルを製造する方法である

 製法3は、酸が有機酸であることを特徴と する、製法2に記載の光学活性α-フルオロカ ボン酸エステルを製造する方法である。

 製法4は、式[8]
[式中、Rはメチル基またはエチル基を表し、* は不斉炭素を表す]で示される光学活性乳酸 ステルを、スルフリルフルオリド(SO 2 F 2 )またはトリフルオロメタンスルホニルフル リド(CF 3 SO 2 F)と反応させることにより、式[2]
[式中、Rおよび*は上記と同じものを表し、不 斉炭素の立体化学は反転する]で示される光 活性2-フルオロプロピオン酸エステルを製造 する方法であって、該反応を、トリエチルア ミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn- ロピルアミン、トリn-ブチルアミン、トリn- ペンチルアミン、トリn-ヘキシルアミン、ピ ジン、2,3-ルチジン、2,4-ルチジン、2,6-ルチ ン、3,4-ルチジン、3,5-ルチジン、2,4,6-コリ ンまたは3,5,6-コリジンの存在下かつ反応溶 の非存在下に行う、光学活性2-フルオロプロ ピオン酸エステルを製造する方法。

 製法5は、製法4に記載の反応によって得 れた、光学活性2-フルオロプロピオン酸エス テルを含む反応終了液に、有機酸を加えて減 圧蒸留精製することを特徴とする、光学活性 2-フルオロプロピオン酸エステルを製造する 法である。

 製法6は、式[9]
で示される(S)-乳酸メチルを、スルフリルフ オリド(SO 2 F 2 )と反応させることにより、式[3]
で示される(R)-2-フルオロプロピオン酸メチル を製造する方法であって、該反応を、トリエ チルアミンまたはトリn-ブチルアミンの存在 かつ反応溶媒の非存在下に行う、(R)-2-フル ロプロピオン酸メチルを製造する方法であ 。

 製法7は、製法6に記載の反応によって得 れた、(R)-2-フルオロプロピオン酸メチルを む反応終了液に、安息香酸を加えて減圧蒸 精製することを特徴とする、(R)-2-フルオロ ロピオン酸メチルを製造する方法である。

 上記の[製法1]から[製法7]を実施するため 最良の形態を詳細に示す。

 まず、式[7]で示される光学活性α-ヒドロ シカルボン酸エステルを、有機塩基の存在 かつ反応溶媒の非存在下に、スルフリルフ オリド、トリフルオロメタンスルホニルフ オリドまたはノナフルオロブタンスルホニ フルオリドと反応させることにより、式[1] 示される光学活性α-フルオロカルボン酸エ テルを製造する「反応工程」について、説 する。

 該反応工程では、目的とする光学活性α- ルオロカルボン酸エステルとは逆の立体化 を有する、光学活性α-ヒドロキシカルボン エステルを出発原料とし、ヒドロキシル基 脱離基に誘導(立体保持)し、フッ素アニオ と二分子求核置換反応(立体反転)を行う。

 該反応の出発原料および目的生成物の不 炭素の立体化学としては、ヒドロキシル基 脱離基に誘導する工程は立体保持で進行し フッ素アニオンで二分子求核置換反応する 程は立体反転で進行する。よって式[7]で示 れる光学活性α-ヒドロキシカルボン酸エス ルのα位R体からは式[1]で示される光学活性 -フルオロカルボン酸エステルのα位S体が得 れ、同様にα位S体からはα位R体が得られる

 式[7]で示される光学活性α-ヒドロキシカル ン酸エステルのR 1 としては、メチル基、エチル基、プロピル基 、ブチル基、アミル基、ヘキシル基が挙げら れ、炭素数3以上のアルキル基は直鎖または 枝を採ることができる。好適な例において 反応終了液を直接、蒸留することにより式[1 ]で示される光学活性α-フルオロカルボン酸 ステルが回収できるが、この時に沸点が低 方がより回収し易いため、その中でもメチ 基、エチル基およびプロピル基が好ましく 特にメチル基およびエチル基がより好まし 。

 式[7]で示される光学活性α-ヒドロキシカル ン酸エステルのR 2 としては、メチル基、エチル基、プロピル基 、ブチル基が挙げられ、炭素数3以上のアル ル基は直鎖または分枝を採ることができる 上記と同様に沸点が低い方がより回収し易 ため、その中でもメチル基およびエチル基 好ましく、特にメチル基がより好ましい。 らにR 1 とR 2 のアルキル基同士が共有結合でラクトン環を 形成することもできる。

 式[7]で示される光学活性α-ヒドロキシカ ボン酸エステルの不斉炭素の立体化学とし は、R配置またはS配置を採ることができ、 ナンチオマー過剰率(%ee)としては、特に制限 はないが、90%ee以上のものを用いればよく、 常は95%ee以上が好ましく、特に97%ee以上がよ り好ましい。

 式[7]で示される光学活性α-ヒドロキシカ ボン酸エステルは、Synthetic Communications(米 ),1991年,第21巻,第21号,p.2165-2170を参考にして 市販されている種々の光学活性α-アミノ酸 ら同様に製造することができる。また実施 および参考例で用いた(S)-乳酸メチルは市販 を利用した。

 ヒドロキシル基を脱離基に誘導する反応 としては、スルフリルフルオリド、トリフ オロメタンスルホニルフルオリドまたはノ フルオロブタンスルホニルフルオリドが挙 られる。その中でもフッ素の原子経済性、 業的な入手、後処理操作および廃棄物処理 考慮すると、スルフリルフルオリドおよび リフルオロメタンスルホニルフルオリドが ましく、特にスルフリルフルオリドがより ましい。

 スルフリルフルオリド、トリフルオロメ ンスルホニルフルオリドまたはノナフルオ ブタンスルホニルフルオリドの使用量とし は、特に制限はないが、式[7]で示される光 活性α-ヒドロキシカルボン酸エステル1モル に対して0.7~7モルを用いればよく、通常は0.8~ 5モルが好ましく、特に0.9~3モルがより好まし い。

 有機塩基としては、特に制限はないが、代 的なものとしては、第三級アミンおよびピ ジン類が挙げられる。斯かる有機塩基とし は、トリメチルアミン、トリエチルアミン ジイソプロピルエチルアミン、トリn-プロ ルアミン、トリn-ブチルアミン、トリn-ペン ルアミン、トリn-ヘキシルアミン、ピリジ 、2,3-ルチジン、2,4-ルチジン、2,5-ルチジン 2,6-ルチジン、3,4-ルチジン、3,5-ルチジン、2, 3,4-コリジン、2,4,5-コリジン、2,5,6-コリジン 2,4,6-コリジン、3,4,5-コリジン、3,5,6-コリジ 等が挙げられる。その中でもトリエチルア ン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn-プ ロピルアミン、トリn-ブチルアミン、トリn- ンチルアミン、トリn-ヘキシルアミン、ピリ ジン、2,3-ルチジン、2,4-ルチジン、2,6-ルチジ ン、3,4-ルチジン、3,5-ルチジン、2,4,6-コリジ および3,5,6-コリジンが好ましい。本製法は 応溶媒の非存在下に反応させるため、反応 内で副生する、有機塩基とフッ化水素の塩 たは錯体、または有機塩基とRfSO 3 H[式中、Rfはフッ素原子、トリフルオロメチ 基またはノナフルオロブチル基を表す]の塩 たは錯体が適度な流動性を有して良好に攪 できることが重要であり、斯かる有機塩基 しては、特にトリエチルアミンおよびトリn -ブチルアミンがより好ましい[(S)-乳酸メチル (1.0eq)、スルフリルフルオリド(1.2eq)と有機塩 (1.2eq)を用いて実施例または参考例と同様に 反応を行い、得られた反応終了液の室温にお ける流動性を調査したところ、有機塩基にト リエチルアミンまたはトリn-ブチルアミンを いた場合の方が、ジイソプロピルエチルア ンまたはトリn-プロピルアミンを用いた場 に比べて流動性が良好であった。表-1を参照 ]。また、蒸留操作においては、目的化合物 ある光学活性α-フルオロカルボン酸エステ との沸点差が、大気圧で30℃以上あるものを 用いればよく、通常は40℃以上が好ましく、 に50℃以上がより好ましく、さらに、回収 利用が容易に行える有機塩基を選定するこ が重要である。これらの観点を考慮すると 本製法の好適な目的化合物である(R)-2-フル ロプロピオン酸メチルの製造においては、 リn-ブチルアミンが極めて好ましい。

 有機塩基の使用量としては、特に制限は いが、式[7]で示される光学活性α-ヒドロキ カルボン酸エステル1モルに対して0.7~7モル 用いればよく、通常は0.8~5モルが好ましく 特に0.9~3モルがより好ましい。

 本製法の重要な態様である“反応溶媒の 存在下に反応させる”とは、上述の反応試 以外に、反応溶媒(有機溶媒、水等の液体) 系内に、実質的に存在させずに、反応を行 ことをいう。具体的には式[7]で示される光 活性α-ヒドロキシカルボン酸エステル1モル 対して0.1L(リットル)未満の状態を指し、通 は0.07L未満が好ましく、特に0.05L未満がより 好ましい。系内に反応溶媒を意図的に添加す ることなく反応を行う態様が「反応溶媒の非 存在下に反応させる」典型であり、極めて好 ましい。“反応溶媒の非存在下に反応させる ”ことにより、式[1]で示される光学活性α-フ ルオロカルボン酸エステルが高い生産性で且 つ少ない廃棄物で製造できる。

 反応温度としては、本製法は反応溶媒の非 在下に反応させるため、反応系内で副生す 、有機塩基とフッ化水素の塩または錯体、 たは有機塩基とRfSO 3 H[式中、Rfはフッ素原子、トリフルオロメチ 基またはノナフルオロブチル基を表す]の塩 たは錯体が適度な流動性を有して良好に攪 できることが重要であり、斯かる反応温度 しては、通常は-20~+70℃が好ましく、特に-10 ~+50℃がより好ましい。またスルフリルフル リド、トリフルオロメタンスルホニルフル リドまたはノナフルオロブタンスルホニル ルオリドの沸点以上の反応温度で反応を行 場合には耐圧反応容器を使用することがで る。

 反応圧力としては、特に制限はないが、 気圧(0.1MPa)~2MPaの範囲で行えばよく、通常は 大気圧~1.5MPaが好ましく、特に大気圧~1MPaがよ り好ましい。よってステンレス鋼(SUS)または ラス(グラスライニング)の様な材質ででき 耐圧反応容器を用いて反応を行うことが好 しい。

 反応時間としては、特に制限はないが、2 4時間以内の範囲で行えばよく、出発原料、 機塩基、ヒドロキシル基を脱離基に誘導す 反応剤および反応条件等により異なるため ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグ フィー、液体クロマトグラフィー、核磁気 鳴(NMR)等の分析手段により、反応の進行状況 をモニターし、出発原料が殆ど消失した時点 を終点とすることが好ましい。

 上記の「反応工程」で得られた光学活性 -フルオロカルボン酸エステルは、その後、 後処理工程」に付すことによって、単離す ことができる。この後処理手段としては、 に制限はない。しかし本製法においては、 応溶媒が用いられていないことから、反応 了液を直接(特段の後処理操作を行うことな く、そのまま)蒸留することができ、それが に好適である。前記の様に本製法の反応に いては、反応溶媒の存在しない条件下であ にも拘らず、分離の難しい不純物がほとん 生成しない。したがって、反応終了液をそ まま蒸留工程に付しても、高い純度で、な かつ高い光学純度で、目的とする式[1]で示 れる光学活性α-フルオロカルボン酸エステ が回収できる。以下、この蒸留工程につい 、説明する。

 蒸留の条件としては、その沸点を考慮し 、当業者によって、圧力およびバス温度(釜 温度)を適宜設定することができるが、減圧 留が、蒸留温度を適度に低減できるために 好ましい。減圧蒸留を行う場合の減圧度(蒸 時の系内の絶対圧をいう。以下同じ。)とし ては、特に制限はないが、大気圧未満の範囲 で行えばよく、通常は50kPa以下が好ましく、 に25kPa以下がより好ましい。但し、0.1kPaを 回ると、蒸留の分離効率が下がり、かえっ 操作上、不都合になることがあるので、好 しくない。したがって、例えば0.3kPa~25kPaの 囲で蒸留を行うことは、好ましい態様であ 。

 また蒸留における塔頂温度は、上記減圧 に依存するが、バス温度としては、当然こ 塔頂温度よりも高い温度を設定する。バス 度も減圧度に依存することとなるが、この 度としては、200℃以下の範囲であり、通常 175℃以下が好ましく、特に150℃以下がより ましい。バス温度に下限値はないが、20℃ 上、さらに好ましくは40℃以上のバス温度で 蒸留を行うと、蒸留が安定しやすいので、有 利である。したがって、バス温度20~175℃は好 ましい温度として挙げられ、40~150℃は一層好 ましい温度である。

 必要に応じて、回収した留出物を分別蒸 することにより、目的生成物をより高い純 で得ることができる。

 本製法においては、反応に使用した有機塩 を回収再利用することができる。反応と蒸 を好適な操作条件下で行うと、使用後の有 塩基は「RfSO 3 H[式中、Rfはフッ素原子、トリフルオロメチ 基またはノナフルオロブチル基を表す]との または錯体(RfSO 3 Hとの混合物)」または「フッ化水素との塩ま は錯体(フッ化水素との混合物)」の形で、 残(蒸留残渣)から回収することができる(大 分は前者の形)。該釜残を水酸化ナトリウム 水酸化カリウム、水酸化カルシウム等から 製したアルカリ性水溶液で中和し、遊離し 有機塩基を分液し、必要に応じて水洗また 脱水操作を行い、蒸留することにより、有 塩基を高い化学純度で収率良く回収するこ ができる。回収した有機塩基は、反応性が 下することなく再利用できる。この様な方 で回収再利用を行う場合には、脂溶性が高 、脱水し易い有機塩基が好適である。当然 回収再利用の方法は、上記の手法に限定さ るものではない。

 上記蒸留工程は“反応終了液に酸を加え 行う”ことにより、一層好ましく実施でき 。すなわち、「反応終了液」に対して、酸( 好ましくは有機酸、より好ましくは安息香酸 )を添加し、その液を蒸留工程に付すことに って、反応に用いられた有機塩基や、残存 るフッ化物イオンが効果的に除去され(フッ 物イオン濃度は100ppm程度に低減できる。参 例2を参照)、式[1]で示される光学活性α-フ オロカルボン酸エステルがより高い純度、 い生産性で且つより少ない廃棄物で製造で る。

 本製法において、式[8]で示される光学活性 酸エステルを、スルフリルフルオリド(SO 2 F 2 )またはトリフルオロメタンスルホニルフル リド(CF 3 SO 2 F)と、トリエチルアミン、ジイソプロピルエ ルアミン、トリn-プロピルアミン、トリn-ブ チルアミン、トリn-ペンチルアミン、トリn- キシルアミン、ピリジン、2,3-ルチジン、2,4- ルチジン、2,6-ルチジン、3,4-ルチジン、3,5-ル チジン、2,4,6-コリジンおよび3,5,6-コリジンか ら選ばれる有機塩基の存在下かつ反応溶媒の 非存在下に反応させ、式[2]で示される光学活 性2-フルオロプロピオン酸エステルを得る方 は、生成物の有用性が顕著であることや、 製法の効果が顕著であることから、特に好 しい態様である。

 また、式[9]で示される(S)-乳酸メチルを、ス ルフリルフルオリド(SO 2 F 2 )と、トリエチルアミンおよびトリn-ブチルア ミンから選ばれる有機塩基の存在下かつ反応 溶媒の非存在下に反応させ、式[3]で示される (R)-2-フルオロプロピオン酸メチルを得る方法 は、生成物の有用性が顕著であること、原料 化合物の入手が特に容易であることや、本製 法の効果が顕著であること等から、極めて好 ましい態様である。

 上記の「後処理工程」において、“反応 了液に酸を加えて行う蒸留”は、本願発明 実施する上では敢えて実施する必要はない すなわち、上記の「反応工程」に引き続き 反応終了液に酸を加えることなく蒸留回収 た、光学活性α-フルオロカルボン酸エステ に対して、有機塩基を加えて蒸留すること より、本発明の目的を十分に達成すること できる。但し、上記の“反応終了液に酸を えて行う蒸留”を行なうことを妨げるもの はない。

 実施例により本発明の実施の形態を具体 に説明するが、本発明はこれらの実施例に 定されるものではない。

 「フッ化物イオン濃度」は、「対象化合 の容量」に対する「フッ化物イオンの重量 としてppmで表示し、例えば、対象化合物1L( ットル)にフッ化物イオンが1mg含まれている ものを1ppmとする。「フッ化物イオン含有量 の算出に用いた(R)-2-フルオロプロピオン酸 チルの比重は、20℃での実測値である1.07を 用した。

 また、脱弗効果を正確に見極める目的で 前述の方法で製造した(R)-2-フルオロプロピ ン酸メチルに所定量のフッ化水素を加え、 望のフッ化物イオン濃度に調整することも きる。

 [実施例1]
 ステンレス鋼(SUS)製蒸留装置(理論段数15段) 、下記式
で示される(R)-2-フルオロプロピオン酸メチル 92.6kg[フッ化物イオン濃度679ppm(フッ化物イオ 含有量3.1mol)、化学純度99.7%、光学純度98.5%ee 、水分541ppm]とトリn-ブチルアミン2.3kg(12.4mol フッ化物イオン含有量に対して4.0eq)を加え 分別蒸留(塔頂温度45~51℃、減圧度10.7~17.3kPa) ることにより、主留81.3kg(フッ化物イオンを 全く検出せず、化学純度100.0%、光学純度98.5%e e、水分318ppm)を回収した(回収率87.8%)。

 [比較例1]
 ステンレス鋼(SUS)製蒸留装置(理論段数15段) 、下記式
で示される(R)-2-フルオロプロピオン酸メチル 91.0kg(フッ化物イオン濃度725ppm、化学純度99.8% 、光学純度98.5%ee、水分1,427ppm)を加え、分別 留(塔頂温度50~53℃、減圧度13.3~18.3kPa)するこ により、主留86.1kg(フッ化物イオン濃度は全 く減少せず、化学純度99.6%、光学純度98.6%ee、 水分1,322ppm)を回収した(回収率94.6%)。

 [比較例2、比較例3]
 ポリエチレン製反応容器に、下記式
で示される(R)-2-フルオロプロピオン酸メチル 100g(フッ化物イオン濃度725ppm、化学純度99.8% 光学純度98.5%ee、水分1,427ppm)と無機脱弗剤(フ ッ化ナトリウムまたは塩化カルシウム・二水 和物)10gを加え、室温で15分間攪拌し、無機脱 弗剤を濾過し、フッ化物イオン濃度を測定し た。結果を表-2に纏めた。化学純度および光 純度は低下せず。

 また、無機脱弗剤にアルミナまたはシリ ゲルを用いて同様の脱弗操作を実施したが 脱弗効果は実施例1に比べて劣っており、フ ッ化物イオン濃度を10ppm未満に低減除去する とはできなかった。

 実施例1および比較例1から比較例3で得られ 知見を以下に纏める。
1)有機塩基の非存在下での蒸留は、脱弗効果 全く認められない(実施例1と比較例1の比較) 。
2)代表的な無機脱弗剤は、有機塩基の存在下 の蒸留に比べて脱沸効果が低い(実施例1と 比較例2、比較例3の比較)。

 [実施例2]
 ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記
で示される(S)-乳酸メチル106.8kg(1.026kmol、1.00eq 、光学純度99.0%ee)とトリn-ブチルアミン190.1kg( 1.026kmol、1.00eq)を加え、-10℃の循環式冷媒で 却してスルフリルフルオリド(SO 2 F 2 )105.1kg(1.030kmol、1.00eq)をボンベより吹き込ん 。内温を室温まで徐々に昇温して同温度で4 間攪拌した。反応の変換率を 1 H-NMRにより測定したところ95%であった。

 次いで、反応終了液を、そのまま減圧蒸留( 減圧度;1.0kPa、バス温度;75℃)に付したところ 下記式
で示される(R)-2-フルオロプロピオン酸メチル の留出物95.4kgを得た。回収率は84%であった。 留出物の化学純度(ガスクロマトグラフィー より算出)、光学純度(キラルガスクロマトグ ラフィーにより算出)、トリn-ブチルアミン含 量(ガスクロマトグラフィーにより算出)、フ 化物イオン濃度および水分は、それぞれ96.5 %、97.4%ee、1.5%、543ppm、317ppmであった。

 (R)-2-フルオロプロピオン酸メチルの 1 H-および 19 F-NMRスペクトルは参考例1と同じであった。

 釜残(蒸留残渣)に水560kgを加え、0℃の循 式冷媒で冷却して48%水酸化ナトリウム水溶 をpHが12になるまで加え、遊離した有機層を 相分離し、回収有機層を水105kgで洗浄した 次いで、ガラス製蒸留装置(理論段数15段)を いて分別蒸留(塔頂温度79~82℃、減圧度14~16hP a)することにより、主留156kg(化学純度99.9%以 、水分0.1%未満)を回収した(回収率82%)。回収 たトリn-ブチルアミンは、反応性が低下す ことなく再利用できた。

 ステンレス鋼(SUS)製蒸留装置(理論段数15 )に、上記で得られた(R)-2-フルオロプロピオ 酸メチル95.4kg(フッ化物イオン含有量2.5mol) トリn-ブチルアミン2.5kg[13.5mol、フッ化物イ ン含有量に対して5.4eq{(R)-2-フルオロプロピ ン酸メチルに含まれていたトリn-ブチルアミ ンは考慮していない}]を加え、分別蒸留(塔頂 温度47~52℃、減圧度11.2~11.7kPa)することにより 、主留85.1kg(フッ化物イオンを全く検出せず 化学純度99.9%、光学純度97.4%ee、水分379ppm)を 収した(回収率89.2%)。

 [実施例3]
 ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記
で示される(S)-乳酸メチル129.0kg(1.239kmol、1.00eq 、光学純度99.0%ee)とトリn-ブチルアミン275.8kg( 1.488kmol、1.20eq)を加え、-10℃の循環式冷媒で 却してスルフリルフルオリド(SO 2 F 2 )130.4kg(1.278kmol、1.03eq)をボンベより吹き込ん 。内温を室温まで徐々に昇温して同温度で4 間攪拌した。反応の変換率および選択率を 1 H-NMRにより測定したところ、それぞれ99.9%、94 .2%であった。

 次いで、反応終了液を、そのまま減圧蒸留( 減圧度;0.4~1.5kPa、内温;75~85℃)に付したところ 、下記式
で示される(R)-2-フルオロプロピオン酸メチル の留出物145.1kgを得た。回収率は94.1%(全量抜 出し;変換率×選択率×1/100)であった。留出物 の化学純度(ガスクロマトグラフィーにより 出)、光学純度(キラルガスクロマトグラフィ ーにより算出)、トリn-ブチルアミン含量(ガ クロマトグラフィーにより算出)およびフッ 物イオン濃度は、それぞれ87.4%、97.1%ee、12.6 %、28.5ppmであった。

 (R)-2-フルオロプロピオン酸メチルの 1 H-および 19 F-NMRスペクトルは参考例1と同じであった。

 ステンレス鋼(SUS)製蒸留装置(理論段数15 )に、上記で得られた(R)-2-フルオロプロピオ 酸メチル145.1kg(トリn-ブチルアミンを21.3kg含 む)を加え(新たにトリn-ブチルアミンを加え ことなく)、分別蒸留(塔頂温度49~52℃、減圧 10.5~12.0kPa)することにより、主留113.9kg(フッ 物イオンを全く検出せず、化学純度99.9%、 学純度97.2%ee、水分275ppm)を回収した(回収率92 .0%)。

 反応終了液の釜残(減圧蒸留残渣)に2.5%水 化ナトリウム水溶液2577kgを加え、内温50~60 で3時間攪拌し、室温まで冷却した後に遊離 た有機層を二相分離し、回収有機層を水117k gで洗浄した。ここで得られたトリn-ブチルア ミン231.7kgに(R)-2-フルオロプロピオン酸メチ 分別蒸留(脱弗)の釜残27.2kg(トリn-ブチルアミ ンを21.3kg含む)を加え、ステンレス鋼(SUS)製蒸 留装置(理論段数15段)を用いて分別蒸留(塔頂 度81~84℃、減圧度1.2~2.0kPa)することにより、 主留243.5kg(化学純度99.9%以上、水分410ppm)を回 した(回収率88.3%)。回収したトリn-ブチルア ンは、反応性が低下することなく再利用で た。

 [参考例1]
 ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記
で示される(S)-乳酸メチル12.0g(115mmol、1.00eq、 学純度99.0%ee以上)とトリエチルアミン13.0g(12 8mmol、1.11eq)を加え、-20℃の冷媒浴で冷却して スルフリルフルオリド(SO 2 F 2 )13.5g(132mmol、1.15eq)をボンベより吹き込んだ。 内温を室温まで徐々に昇温して同温度で2時 30分攪拌した。反応の変換率をガスクロマト グラフィーにより測定したところ95%以上であ った。

 次いで、反応終了液を、そのまま減圧蒸留( 減圧度;15kPa、バス温度;70℃)に付したところ 下記式
で示される(R)-2-フルオロプロピオン酸メチル の留出物10.3gを得た。回収率は84%であった。 出物の化学純度(ガスクロマトグラフィーに より算出)、光学純度[ガスクロマトグラフィ により算出;エステル基をヒドリド還元して (R)-2-フルオロプロパノールに誘導し、そのMos her酸エステルを分析]、トリエチルアミン含 ( 1 H-NMRにより算出)およびフッ化物イオン濃度は 、それぞれ94.2%、99.0%ee以上、3.8mol%、342ppmで った。

 (R)-2-フルオロプロピオン酸メチルの 1 H-および 19 F-NMRスペクトルを下に示す。
1 H-NMR[基準物質;(CH 3 ) 4 Si,重溶媒;CDCl 3 ],δ ppm;1.59(dd,23.6Hz,6.8Hz,3H),3.81(s,3H),5.03(dq,48.6Hz ,6.9Hz,1H).
19 F-NMR(基準物質;C 6 F 6 ,重溶媒;CDCl 3 ),δ ppm;-22.77(dq,47.2Hz,23.8Hz,1F).

[参考例2]
 ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記
で示される(S)-乳酸メチル258g(2.48mol、1.00eq、 学純度99.0%ee以上)とトリエチルアミン278g(2.75 mol、1.11eq)を加え、内温を0~11℃に制御しなが スルフリルフルオリド(SO 2 F 2 )280g(2.74mol、1.10eq)をボンベより吹き込んだ。 温を室温まで徐々に昇温して同温度で終夜 拌した。反応の変換率をガスクロマトグラ ィーにより測定したところ92%であった。

 次いで、反応終了液に安息香酸76g(0.62mol、 剰に使用したトリエチルアミンに対して2.30e q)を加えて減圧蒸留(減圧度;1.5kPa、バス温度;7 0℃)に付したところ、下記式
で示される(R)-2-フルオロプロピオン酸メチル の留出物193gを得た。回収率は73%であった。 出物の化学純度(ガスクロマトグラフィーに り算出)、光学純度[ガスクロマトグラフィ により算出;エステル基をヒドリド還元して( R)-2-フルオロプロパノールに誘導し、そのMosh er酸エステルを分析]、トリエチルアミン含量 ( 1 H-NMRにより算出)およびフッ化物イオン濃度は 、それぞれ97.3%、99.5%ee、痕跡量(0.2mol%未満)、 89ppmであった。

 (R)-2-フルオロプロピオン酸メチルの 1 H-および 19 F-NMRスペクトルは参考例1と同じであった。

 この様に参考例2では、「反応終了液に酸 を加えて蒸留を行う」ことによって、トリエ チルアミン含量、フッ化物イオン濃度を、参 考例1に比べ、さらに顕著に低減することが きた。