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Patent Searching and Data


Title:
METHOD FOR SPINNING SILK FROM COCOON OF SILKWORM EXPRESSING FOREIGN GENE, AND PRODUCT PRODUCED BY EMPLOYING THE METHOD
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2010/047293
Kind Code:
A1
Abstract:
A cocoon is dried under low temperature (60˚C or lower) conditions, rather than the conditions where the temperature is higher than 100˚C which has been employed conventionally for the production of a raw silk from a cocoon.  Further, the boiling of a cocoon is carried out by employing a vacuum infiltration treatment at a low temperature (a subatmospheric pressure treatment), rather than a high-temperature treatment at 100˚C or higher or a treatment with hot water having a temperature around the boiling point which has been employed conventionally.  As an alternate cocoon boiling method, a combination of the swelling of sericin with an alkali and the penetration of hot water into a cocoon layer by using a surfactant, an enzyme or the like is carried out.  The silk reeling is carried out at a lower temperature than that has been employed conventionally. As a result, it is found that a raw silk can be produced from a cocoon of a silkworm that expresses a foreign gene without deteriorating the properties of a foreign protein contained in the cocoon of the silkworm.

Inventors:
TAKABAYASHI CHIYUKI (JP)
TAMURA TOSHIKI (JP)
MACHII HIROAKI (JP)
IIZUKA TETSUYA (JP)
SEZUTSU HIDEKI (JP)
TATEMATSU KENICHIRO (JP)
KINOSHITA HARUO (JP)
MIYAZAKI EIKO (JP)
YAMADA KATSUSHIGE (JP)
KURIHARA HIROYUKI (JP)
ASAKURA TETSURO (JP)
KUWABARA NOBUO (JP)
YAMAGUCHI JUNJI (JP)
NAKAMURA TAKASHI (JP)
YOSHII KEI (JP)
MIYAWAKI ATSUSHI (JP)
KARASAWA SATOSHI (JP)
AOKI RIHO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/067977
Publication Date:
April 29, 2010
Filing Date:
October 19, 2009
Export Citation:
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Assignee:
NAT INST OF AGROBIO SCIENCES (JP)
TAKABAYASHI CHIYUKI (JP)
TAMURA TOSHIKI (JP)
MACHII HIROAKI (JP)
IIZUKA TETSUYA (JP)
SEZUTSU HIDEKI (JP)
TATEMATSU KENICHIRO (JP)
KINOSHITA HARUO (JP)
MIYAZAKI EIKO (JP)
YAMADA KATSUSHIGE (JP)
KURIHARA HIROYUKI (JP)
ASAKURA TETSURO (JP)
KUWABARA NOBUO (JP)
YAMAGUCHI JUNJI (JP)
NAKAMURA TAKASHI (JP)
YOSHII KEI (JP)
MIYAWAKI ATSUSHI (JP)
KARASAWA SATOSHI (JP)
AOKI RIHO (JP)
International Classes:
D01B7/00; A01K67/033; A61L17/00; A61L27/00; D01B7/04; D01F9/18
Domestic Patent References:
WO2008081922A12008-07-10
Foreign References:
JPS5215687B21977-05-02
JP2006137739A2006-06-01
JPS5812362B21983-03-08
JPS63120105A1988-05-24
JP3723949B22005-12-07
JP3545578B22004-07-21
JPH0735603B21995-04-19
JPH108323A1998-01-13
JP3840541B22006-11-01
JPS588784Y21983-02-17
JPS4913926Y11974-04-06
JPS54156811A1979-12-11
JPS60200074A1985-10-09
JPS5423710A1979-02-22
JPS54120716A1979-09-19
Other References:
SHIGETO SHIMIZU: "Aratani Kaihatsu sareta Shinkushiki Kogata Nimayuki no Gaiyo", SILK REPORT, 1 September 2008 (2008-09-01), pages 8 - 10
CHIYUKI TAKABAYASHI ET AL.: "Mayuito Fibroin ni yoru Gokuboso Jinko Kekkan'yo Kizai no Sakushutsu", NIPPON SILK GAKKAI SHI, vol. 16, 3 December 2007 (2007-12-03), pages 144 - 145
TOSHIAKI KAGAWA ET AL.: "Kasan Mayu no Micro-ha Shosha Kanso ni Tsuite", NIPPON SANSHIGAKU ZASSHI, vol. 63, no. 6, 27 December 1994 (1994-12-27), pages 488 - 493
Attorney, Agent or Firm:
SHIMIZU, Hatsushi et al. (JP)
Spring water Original aim (JP)
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Claims:
アルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少なくとも1つを含む低温溶液で真空浸透することを特徴とする、トランスジェニックカイコが吐糸した繭を生糸とする方法。
下記(a)から(g)の工程を含む、請求項1に記載の方法;
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を乾燥させる工程、
(b)工程(a)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液に浸漬する工程、
(c)工程(b)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下で繰糸する工程。
工程(a)において概ね80℃以下の条件下にて繭を乾燥させる、請求項2に記載の方法。
工程(a)において真空条件下にて繭を乾燥させる、請求項2に記載の方法。
アルカリ剤が炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群より選択され、界面活性剤がノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選択され、酵素がタンパク質分解酵素である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
下記(a)から(g)の工程を含む、絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を生糸とする方法;
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を乾燥させる工程、
(b)工程(a)の繭を低温湯水(概ね80℃以下)に浸漬する工程、
(c)工程(b)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で真空浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で真空浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下で繰糸する工程。
工程(a)において概ね80℃以下の条件下にて繭を乾燥させる、請求項6に記載の方法。
工程(a)において真空条件下にて繭を乾燥させる、請求項6に記載の方法。
外来タンパク質が蛍光色素タンパク質、細胞付着活性を有するタンパク質、酸性及びアルカリ性のアミノ酸を主とするペプチド、及びカイコ以外の生物由来のフィブロインタンパク質及びセリシンタンパク質からなる群より選択される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
請求項1~9に記載の方法によって得られる生糸。
請求項10に記載の生糸から得られる編み物及び織物。
請求項10に記載の生糸から得られる立体構造物。
請求項10に記載の生糸から作成される医療用資材。
手術用縫合糸、人工血管、人工皮膚、人工腱、人工骨、及び角膜培養のフィルムからなる群より選択される請求項13に記載の医療用資材。
下記(a)から(g)の工程を含む遺伝子組換え生糸の製造方法;
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を乾燥させる工程、
(b)工程(a)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液に浸漬する工程、
(c)工程(b)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下で繰糸する工程。
下記(a)から(g)の工程を含む遺伝子組換え生糸の製造方法;
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジェニックカイコが吐糸した繭を乾燥させる工程、
(b)工程(a)の繭を低温湯水(概ね80℃以下)に浸漬する工程、
(c)工程(b)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で真空浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で真空浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下で繰糸する工程。
工程(a)において概ね80℃以下の条件下にて繭を乾燥させる、請求項15又は16に記載の方法。
工程(a)において真空条件下にて繭を乾燥させる、請求項15又は16に記載の方法。
Description:
外来遺伝子発現カイコ繭の製糸 法及びそれによる製品

 本発明は、外来遺伝子発現カイコ繭の製 方法及び当該方法により得られる製品に関 る。より具体的には本発明は、外来遺伝子 現カイコ繭から糸を引き出す段階において 外来遺伝子発現カイコ繭の特性を失わせる となく繭を乾燥、煮繭、繰糸する技術に関 る。

 生繭の中の蛹は、そのままおいておけば に変態し、繭糸によって構成される繭殻の 糸を押しのけ、蛾として繭殻から出る。こ によりその繭は繰糸不能となるため、蛾が 殻から出る前に、殺蛹と繭乾燥を行う必要 ある。通常繭乾燥を行う場合、初期温度を1 15℃以上(130℃以上で行う場合もある)とし、 の後徐々に温度を下げ、5時間から6時間かけ て60℃まで下げるなどの方法が行われている

 また煮繭は通常、進行式煮繭機を用いて われる。煮繭は、40℃程度の温度における 糸の浸漬から始まり、100℃を超える温度に 蒸気処理を行う浸透高温処理、その後75℃く らいの低温部へ繭糸を入れる浸透低温処理、 その後再び蒸気処理を行う触蒸処理、沸騰温 度から徐々に60℃位まで温度を下げる調整処 等により行われる。このように煮繭では、 気及び沸点に近い高温水と低温水を組み合 せた処理により、繭腔内へ蒸気や湯の出し れを行う。これにより、繭層セリシン(繭糸 の周りを覆っている水溶性タンパク質)が膨 柔和され、繭からの繭糸の解れが良くなる

 繰糸では、約90℃熱水の中の繭から稲穂の 先を利用して繭から糸口を出す索緒(さくち )を行い、糸口を出し繰糸を行う。
 このような従来の製糸方法では、絹タンパ は高温により熱変性を受ける。その結果、 の染色性や織物の風合いが損なわれる。近 、外来タンパク質を含有するカイコ繭の作 が行われているが、外来タンパク質の性質 損なうことなく繭を生糸とする技術が求め れている。
 なお、本発明の先行技術文献を以下に示す

低温薬品煮繭装置:松本介・真砂義郎・ 野盛夫、実用新案出願公開 昭55-11197

真空煮繭機:西尾方男、特許公報 昭49-139 26

 本発明はこのような状況に鑑みてなされ ものであり、本発明の課題は、外来タンパ 質の性質を損なうことなく、またフィブロ ンタンパク質、セリシンタンパク質が熱変 を受けずに、外来遺伝子を発現するカイコ 繭を生糸とする方法を提供することにある

 本発明者らは、上記課題を解決するに当た 、通常繭を生糸とする際に行われているよ な100℃を越える条件下での繭の乾燥ではな 、従来よりも低温(概ね80℃以下)条件下での 繭の乾燥を試みた。また煮繭においては、従 来の100℃以上の高温蒸気処理や沸点近くの高 温水処理ではなく、従来よりも低温かつ真空 浸透処理(減圧処理)を試みた。またこれとは なる煮繭方法として、アルカリによるセリ ンの膨潤、界面活性剤、酵素等による繭層 の湯水の浸透の組み合わせ処理を試みた。 らに本発明者らは、従来よりも低温で繰糸 行うことを試みた。
 その結果本発明者らは、外来遺伝子を発現 るカイコの繭に含まれる外来タンパク質の 質を損なうことなく、またフィブロインタ パク質、セリシンタンパク質が熱変性を受 ずに、絹糸腺中に外来遺伝子を発現するカ コの繭を生糸とすることが可能であること 見出した。本発明はこのような知見に基づ ものであり、次の〔1〕~〔18〕を提供する。
〔1〕アルカリ剤、界面活性剤、酵素等の少 くとも1つを含む低温溶液で真空浸透するこ を特徴とする、トランスジェニックカイコ 吐糸した繭を生糸とする方法。
〔2〕下記(a)から(g)の工程を含む、〔1〕に記 の方法;
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランス ジェニックカイコが吐糸した繭を乾燥させる 工程、
(b)工程(a)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、 又は酵素及び界面活性剤を含む溶液に浸漬す る工程、
(c)工程(b)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、 又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空 浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、 又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空 浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下 繰糸する工程。
〔3〕工程(a)において概ね80℃以下の条件下に て繭を乾燥させる、〔2〕に記載の方法。
〔4〕工程(a)において真空条件下にて繭を乾 させる、〔2〕に記載の方法。
〔5〕アルカリ剤が炭酸ナトリウム及び炭酸 素ナトリウムからなる群より選択され、界 活性剤がノニオン系界面活性剤、アニオン 界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及び 性界面活性剤からなる群より選択され、酵 がタンパク質分解酵素である、〔1〕から〔4 〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕下記(a)から(g)の工程を含む、絹糸腺内 外来タンパク質を含むトランスジェニック イコが吐糸した繭を生糸とする方法;
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランス ジェニックカイコが吐糸した繭を乾燥させる 工程、
(b)工程(a)の繭を低温湯水(概ね80℃以下)に浸 する工程、
(c)工程(b)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で 空浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で 空浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下 繰糸する工程。
〔7〕工程(a)において概ね80℃以下の条件下に て繭を乾燥させる、〔6〕に記載の方法。
〔8〕工程(a)において真空条件下にて繭を乾 させる、〔6〕に記載の方法。
〔9〕外来タンパク質が蛍光色素タンパク質 細胞付着活性を有するタンパク質、酸性及 アルカリ性のアミノ酸を主とするペプチド 及びカイコ以外の生物由来のフィブロイン ンパク質及びセリシンタンパク質からなる より選択される、〔1〕から〔8〕のいずれか に記載の方法。
〔10〕〔1〕から〔9〕に記載の方法によって られる生糸。
〔11〕〔10〕に記載の生糸から得られる編み 及び織物。
〔12〕〔10〕に記載の生糸から得られる立体 造物。
〔13〕〔10〕に記載の生糸から作成される医 用資材。
〔14〕手術用縫合糸、人工血管、人工皮膚、 工腱、人工骨、及び角膜培養のフィルムか なる群より選択される〔13〕に記載の医療 資材。
〔15〕下記(a)から(g)の工程を含む遺伝子組換 生糸の製造方法;
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランス ジェニックカイコが吐糸した繭を乾燥させる 工程、
(b)工程(a)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、 又は酵素及び界面活性剤を含む溶液に浸漬す る工程、
(c)工程(b)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、 又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空 浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、 又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空 浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下 繰糸する工程。
〔16〕下記(a)から(g)の工程を含む遺伝子組換 生糸の製造方法;
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランス ジェニックカイコが吐糸した繭を乾燥させる 工程、
(b)工程(a)の繭を低温湯水(概ね80℃以下)に浸 する工程、
(c)工程(b)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で 空浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で 空浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下 繰糸する工程。
〔17〕工程(a)において概ね80℃以下の条件下 て繭を乾燥させる、〔15〕又は〔16〕に記載 方法。
〔18〕工程(a)において真空条件下にて繭を乾 させる、〔15〕又は〔16〕に記載の方法。

繭の乾燥歩合の時間変化を示すグラフ ある。 絹糸線内に外来遺伝子を発現するカイ の繭の煮繭例を示す図である。 蛍光発色するトランスジェニック繭糸 インテリア用素材としての利用を示す写真 ある。 細胞付着性を有するトランスジェニッ 繭糸より作成した人工血管を示す写真であ 。 トランスジェニック繭糸による人工血 基材とPTFE(テフロン(登録商標)系樹脂)によ 人工血管基材をラットへ移植した状態を示 写真である。 トランスジェニック繭糸による人工血 基材とPTFE(テフロン(登録商標)系樹脂)によ 人工血管基材をラットへ移植後3ヶ月経過し 状態を示す写真である。

 本発明は、アルカリ剤、界面活性剤、酵素 の少なくとも1つを含む低温溶液で真空浸透 することを特徴とする、絹糸腺内に外来タン パク質を含むトランスジェニックカイコが吐 糸した繭を生糸とする方法に関する。また本 発明は、遺伝子組換え生糸の製造方法に関す る。
 より具体的には本発明は、以下の工程を含 絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランス ェニックカイコが吐糸した繭を生糸とする 法に関する。また本発明は、以下の工程を む遺伝子組換え生糸の製造方法に関する。
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランス ジェニックカイコが吐糸した繭を概ね80℃以 の条件下にて、真空条件下にて、又は常温 つ真空条件下にて乾燥させる工程、
(b)工程(a)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、 又は酵素及び界面活性剤を含む溶液に浸漬す る工程、
(c)工程(b)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、 又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空 浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭をアルカリ剤及び界面活性剤、 又は酵素及び界面活性剤を含む溶液中で真空 浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下 繰糸する工程。

(1)トランスジェニックカイコが吐 糸した繭
 本発明ではまず、絹糸腺内に外来タンパク を含むトランスジェニックカイコを取得す 。絹糸腺内に外来タンパク質を含むトラン ジェニックカイコは、例えば、後部絹糸腺 異的に発現するタンパク質をコードするDNA( 例えば、フィブロインH鎖またはL鎖のタンパ 質をコードする遺伝子)に、外来タンパク質 をコードするDNAを繋ぎ、この融合遺伝子を有 するトランスジェニックカイコを作ることに よって取得することができる。当業者であれ ば、例えば以下の文献に開示された内容に従 い、絹糸腺内に外来タンパク質を含むトラン スジェニックカイコを以下の文献に記載の公 知の手法によって製造、取得することが出来 るがこれらの方法に限定されない。
・ 特開2006-137739
・ WO2008/081922
・ Tamura, T., Thibert, C., Royer, C., Kanda, T.,  Abraham, E., Kamba, M., Komoto, N., Thomas, J.L., Ma uchamp, B., Chavancy, G., Shirk, P., Fraser, M., Pru dhomme, J.C., Couble, P., Toshiki, T., Chantal, T.,  Corinne, R., Toshio, K., Eappen, A., Mari, K., Natuo , K., Jean-Luc, T., Bernard, M., Gerard, C., Paul,  S., Malcolm, F., Jean-Claude, P. and Pierre, C. (200 0) Germline transformation of the silkworm Bombyx mor i L. using a piggyBac transposon-derived vector. Nat Biotechnol, 18, 81-84
・ Tomita, M., Munetsuna, H., Sato, T., Adachi, T.,  Hino, R., Hayashi, M., Shimizu, K., Nakamura, N.,  Tamura, T. and Yoshizato, K. (2003) Transgenic silkwo rms produce recombinant human type III procollagen in  cocoons. Nat Biotechnol, 21, 52-56.
・ Yamao, M., Katayama, N., Nakazawa, H., Yamakawa, M., Hayashi, Y., Hara, S., Kamei, K. and Mori, H. (1999) Gene targeting in the silkworm by use of a baculovirus. Genes Dev, 13, 511-516.
・ Kojima K, Kuwana Y, Sezutsu H,Kobayashi I, Uchin o K, Tamura T, Tamada Y. 2007. New Method for Modi fication of Fibroin Heavy Chain Protein in Transgenic  Silkworm. Biosci BiotechnolBiochem.71, 2943-2951.
・ Kurihara H, Sezutsu H, Tamura T, YamadaK. 2007. Production of an active feline interferon in the co coonof transgenic silkworms using the fibroin H-chain expression system.Biochem. Biophys. Res. Commun. 355, 976-980.
・ Tamura, T., Kuwabara, K., Uchino, K.,Kobayashi, I ., and Kanda,T. 2007 An Improved DNA Injection Metho d forSilkworm Eggs Drastically Increases the Efficienc y of ProducingTransgenic Silkworms. J. Insect Biotechn ol. Sericol.76,155-159.
・ Yanagisawa S, Zhu Z, Kobayashi I,Uchino K, Tamad a Y, Tamura T, Asakura T. 2007. Improving Cell-Adhes iveProperties of Recombinant Bombyx mori Silk by Inco rporation of Collagen or Fibronectin Derived Peptides Produced by Transgenic Silkworms. Biomacromolecules8(11 ), 3487-3492.等

 本発明のトランスジェニックカイコは、絹 腺内に外来タンパク質を有する。絹糸線内 含まれる外来タンパク質としては、例えばC FP、GFP、YFP、DsRed、KO、KikGr、Kaede、Dronpa等の 光・色素タンパク質、コラーゲンやフィブ ネクチン、細胞の成長因子等の細胞付着活 を有するタンパク質、アスパラギン酸、グ タミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジ 等の酸性及びアルカリ性のアミノ酸を主と るペプチド、クモやヤママユガ、真珠貝等 イコ以外の生物由来のフィブロインタンパ 質及びセリシンタンパク質及びその一次構 に由来するペプチド等が挙げられるがこれ に限定されない。
 絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランス ェニックカイコが取得されれば、当業者で れば容易に当該カイコから繭を得ることが 来る。

(2)繭の乾燥
 本発明では、絹糸腺内に外来タンパク質を むトランスジェニックカイコが吐糸した繭 概ね80度以下(例えば79度、78度、77度、76度 75度、74度、73度、72度、71度が挙げられるが れらに限定されない)の条件下で乾燥させる 。より好ましくは70度以下、さらに好ましく 60度以上70度以下(例えば61度、62度、63度、64 度、65度、66度、67度、68度、69度が挙げられ がこれらに限定されない)、特に好ましくは5 5度以上65度以下(例えば56度、57度、58度、59度 、60度、61度、62度、63度、64度が挙げられる これらに限定されない)の条件下で繭を乾燥 せる。
 繭の乾燥は、熱風式乾燥機を使用して乾燥 せることが出来るほか、真空式乾燥機、マ クロウェーブ(電磁波)を使用して行うこと 出来る。
 繭を乾燥させる程度は、その品種や性状に って異なるが、36-44%(例えば36%、37%、38%、39% 、40%、41%、42%、43%、44%が挙げられるがこれら に限定されない)の乾燥歩合が得られるまで 燥させることが好ましい。あるいは、20~24時 間程度(例えば20時間、21時間、22時間、23時間 、24時間が挙げられるがこれらに限定されな )乾燥させることが好ましい。乾燥歩合は、 当業者であれば繭の性状に応じて適切に決定 することが出来る。例えば「春嶺×鐘月」等 普通蚕繭では、42-43%の乾燥歩合が適切であ が、繭層重の割に蛹重が重い場合はより小 い乾燥歩合を選択することが出来る(例えば 36-38%程度の乾燥歩合とすることが出来る)。 お本発明においては、繭の乾燥は一定温度 条件下で行うことが好ましい。

 また本発明では、絹糸腺内に外来タンパク を含むトランスジェニックカイコが吐糸し 繭を概ね80度以下の条件下で乾燥させる代 りに、真空条件下、又は常温かつ真空条件 で乾燥させることも可能である。80度以下、 真空条件下、あるいは常温かつ真空条件下で の乾燥は、上述とおり、熱風式乾燥機を使用 して乾燥させることが出来るほか、真空式乾 燥機、マイクロウェーブ(電磁波)を使用して うことも出来る。例えば、繭を60℃の一定 度で乾燥させる場合、図1に示すように、24 間程度の時間をかけることにより、約45%の 燥歩合にもっていくことが出来る。このよ にして得られる繭は、黴が生えることなく 存が可能となる。
 なおこのような方法で繭を乾燥させる場合 蛹から出た水分を早く乾燥機の外へはき出 必要がある。乾燥機の中が湿気で満たされ と繭糸の解れ(解じょ)が悪くなるためであ 。真空条件下で乾燥する場合、温度をかけ がら真空にすることにより、熱風のみによ て乾燥させる場合に比べ、効率よく乾燥さ ることが出来る。

(3)アルカリ剤、界面活性剤、酵素 等を含む溶液への浸漬
 本発明では、繭をアルカリ剤、界面活性剤 酵素等の少なくとも1つを含む溶液に浸漬す る。より好ましくは、繭をアルカリ剤及び界 面活性剤を含む溶液、又は酵素及び界面活性 剤を含む溶液に浸漬する。

 本発明のアルカリ剤としては、炭酸ナト ウム及び炭酸水素ナトリウムが挙げられる これらに限定されない。

 また本発明の界面活性剤としてはノニオン 界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチ ン系界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙 られるがこれらに限定されない。
 ノニオン系界面活性剤としては、例えばポ オキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸 ルビタンエステル、アルキルポリグルコシ 、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモ グリセリルエーテルなどが挙げられるがこ らに限定されない。
 アニオン系界面活性剤としては、例えば脂 酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アル ルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベ ゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩 どが挙げられるがこれらに限定されない。
 カチオン系界面活性剤としては、例えばア キルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキ ジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジ ジメチルアンモニウム塩などが挙げられる これらに限定されない。
 両性系界面活性剤としては、例えばアルキ ジメチルアミンオキシド、アルキルカルボ シベタインなどが挙げられるがこれらに限 されない。

 また本発明の酵素としてはタンパク質分 酵素が挙げられるがこれに限定されない。 ンパク質分解酵素としては、例えばセリン ロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ システインプロテアーゼ、金属プロテアー 、パパイン酵素、アルカラーゼなどが挙げ れるがこれらに限定されない。

 浸漬処理は、例えば以下のようにして行う とが出来るが、これに限定されない。金属 の網籠へ入れた繭を例えば炭酸ナトリウム0 .15%、ノニオン系界面活性剤0.3%混合溶液(処理 水)へ20分浸漬する。これにより、繭層表面に 水分が浸み込む状態とすることが出来る。炭 酸ナトリウム、界面活性剤の濃度、及び処理 時間は、当業者であれば繭の性状によって適 宜調整することが出来る。
 なお本発明においては、酵素及び界面活性 を含む溶液がより好ましい。酵素及び界面 性剤の組み合わせとしては、本明細書に記 の酵素及び界面活性剤より特定可能なあら る組み合わせが含まれる。

(4)アルカリ剤、界面活性剤、酵素 等を含む溶液中での真空浸透
 本発明では繭を、アルカリ剤、界面活性剤 酵素の少なくとも1つを含む溶液中で真空浸 透する。より好ましくは、繭をアルカリ剤及 び界面活性剤を含む溶液、又は酵素及び界面 活性剤を含む溶液に浸漬する。アルカリ剤、 界面活性剤、酵素としては、上述のものが挙 げられる。
 真空浸透処理(減圧浸透処理)は、例えば以 の方法により行うことが出来る。浸漬処理 た繭を処理水へ入れたまま真空装置へ移動 、真空とする。真空度は-620mmHg程度(例えば-6 40mmHg~-600mmHg、より好ましくは-630mmHg~-610mmHg程 )が適当であるがこれに限定されない。真空 度が例えば-620mmHgに到達した時点で、5分~10分 かけて常圧まで復圧する。こうすることによ り、繭腔内外の圧力差により処理水が徐々に 繭層内へ浸透する。このときに急激に復圧す ると一気に処理水が繭腔内へ入ろうとするた め、繭が圧力差により潰れる場合がある。ま た処理水が繭層の薄い部分や繭層通り易い部 分を通るため、均一な煮繭ができない場合が ある。従って、急激な復圧は避けるべきであ る。当業者であれば、繭の性状に応じて適切 な復圧時間を設定することが出来る。
 なお本発明においては、アルカリ剤及び界 活性剤を含む溶液で前述の浸漬処理を行っ 場合、真空浸透処理もアルカリ剤及び界面 性剤を含む溶液で行うことが好ましい。ま 酵素及び界面活性剤を含む溶液で前述の浸 処理を行った場合、真空浸透処理も酵素及 界面活性剤を含む溶液で行うことが好まし 。
 また本発明において真空とは、絶対真空に 定されず、減圧も含む。

(5)真空脱水
 本発明では、アルカリ剤、界面活性剤、酵 の少なくとも1つを含む溶液中で真空浸透し た繭を真空中で脱水する。真空脱水の方法は 特に限定されるものではないが、例えば以下 の方法により繭を真空中で脱水することが出 来る。真空浸透処理した繭を処理水から引き 上げ、真空装置で真空処理を行う。真空度は 上記と同様-620mmHg程度(例えば-640mmHg~-600mmHg、 り好ましくは-630mmHg~-610mmHgが挙げられるが れらに限定されない)とすることが好ましい これに限定されない。この真空処理は、例 ば5分~10分かけるなど、徐々に行うことが好 ましい。徐々に真空処理を行うことにより繭 腔内の処理水を徐々に繭層の外に排出するこ とが出来る。急激に真空処理を行うと、溶液 が繭層の薄い所や、処理水の通り易い所を通 るため、均一な煮繭処理ができない場合があ る。

(6)アルカリ剤、界面活性剤、酵素 等を含む溶液中での真空浸透
 本発明では真空中で脱水した繭に対して、 度、アルカリ剤及び界面活性剤、又は酵素 び界面活性剤を含む溶液中で真空浸透処理 行う。真空浸透処理は、例えば上述の方法 よって行うことが出来るがこの方法に限定 れない。
 真空浸透と真空脱水を繰り返すことにより 繭糸の解離性を増すことができる。一方、 空浸透と真空脱水を繰り返すことにより上 糸が増加し、生糸量歩合が減少するなどの 害も生ずる。従って、真空浸透と真空脱水 回数は繭特性により調整することが肝要で る。例えば、真空浸透、真空脱水、真空浸 のサイクルを1回あるいは2回繰り返しとす ことが出来る。
 なおこの処理も、上記(4)と同様、真空処理 よって繭腔内へ処理水を浸透させる時には 真空状態から常圧への復圧は時間をかけて 々に行うことが好ましい。逆に真空処理に って繭腔内の処理水を繭腔外へ排出する時 は、時間をかけて真空状態へ移行すること 好ましい。煮繭処理においては、繭層の繭 の膠着部位のセリシンを徐々に膨潤軟和さ ることが重要である。本発明においては、 ルカリ剤や酵素等がセリシンの膨潤軟和の 目を担い、界面活性剤が繭層繭糸の膠着部 への浸透の役目を担う。
 なお、アルカリ剤及び界面活性剤を含む溶 で前述の浸漬処理や真空浸透処理を行った 合、再度の真空浸透処理もアルカリ剤及び 面活性剤を含む溶液で行うことが好ましい また酵素及び界面活性剤を含む溶液で前述 浸漬処理や真空浸透処理を行った場合、再 の真空浸透処理も酵素及び界面活性剤を含 溶液で行うことが好ましい。

(7)繭の水への浸漬
 本発明の方法では次に、繭を水に浸漬する (6)までの煮繭処理により得られた繭は、そ 表面がアルカリで覆われている。そのまま 置しておくと、繭層表面に付着しているア カリによりセリシンが膨潤する傾向となり 緒糸が多くなる。そのため、常温水に浸漬 、繭層表面のセリシンを収斂させる必要が る。繭の水への浸漬は、繭層表面に付着し いるアルカリがとれ、繭層表面のセリシン 収斂するまで(例えば10分から20分程度)行う

(8)繰糸
 本発明では、60℃以下の条件下で繰糸を行 。より好ましくは50度以下、より好ましくは 35度から45度の条件下(例えば35度、36度、37度 38度、39度、40度、41度、42度、43度、44度、45 度が挙げられるがこれらに限定されない)で 糸を行う。繰糸は自動繰糸機、多条繰糸機 しくは座繰器により行うことが出来る。
 繰糸は、上記方法により繭層セリシンを膨 軟和させた繭から繭糸を引き出し、それを 本、セリシンで抱合させながら1本の生糸と するものである。繰糸に先立ち、概ね80℃以 の温湯内で索緒箒(稲穂を束ねたもの)で、 の表面をこすり、数本の繭糸を引き出した( 緒と称す)後に、1本の糸口になるまで、更 引き出して正緒とする(抄緒と称す)。その繭 (正緒繭)から引き出した繭糸を目的の太さに るように数本合わせ集緒器(例えば陶器等で 作られたもので、ボタン形状でその中心に細 い孔の開いたもの)を通過した生糸を、集緒 上に設けられた二つの鼓車で再び集緒器近 に戻し、集緒器から上がってきたばかりの 条と縒り合わせて(ケンネル縒りと称す)小枠 に巻き取る。座繰器、多条繰糸機は目的繊度 にあうように一定の繭数で繰糸を行い(定粒 )、自動繰糸機では繊度感知器により一定の さとなるように繊度制御を行う(定繊式)。 糸については、文献(総合蚕糸学 日本蚕糸 会編 P.358-369. 1979.、日本製糸技術史 加藤 一著 P.59-144. 1976.)も参照される。

 また本発明は、以下(a)から(g)の工程を含む 糸腺内に外来タンパク質を含むトランスジ ニックカイコが吐糸した繭を生糸とする方 を提供する。また以下(a)から(g)の工程を含 遺伝子組換え生糸の製造方法を提供する。
(a)絹糸腺内に外来タンパク質を含むトランス ジェニックカイコが吐糸した繭を概ね80℃以 の条件下にて、真空条件下にて、又は常温 つ真空条件下にて乾燥させる工程、
(b)工程(a)の繭を低温湯水(概ね80℃以下)に浸 する工程、
(c)工程(b)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で 空浸透する工程、
(d)工程(c)の繭を真空脱水する工程、
(e)工程(d)の繭を低温湯水中(概ね80℃以下)で 空浸透する工程、
(f)工程(e)の繭を水に浸漬する工程、及び
(g)工程(f)の繭を低温(概ね50℃以下)の条件下 繰糸する工程。

 上記方法においてトランスジェニックカイ の繭の取得、繭の乾燥、繭の低温湯水への 漬、繭の真空浸透、繭の真空脱水、繭の水 の浸漬、繭の繰糸は上述の方法によって行 ことが出来る。
 本発明においては、80度以下(例えば79度、78 度、77度、76度、75度、74度、73度、72度、71度 挙げられるがこれらに限定されない)の低温 湯水、より好ましくは70度以下(例えば69度、6 8度、67度、66度、65度、64度、63度、62度、61度 が挙げられるがこれらに限定されない)の低 湯水、さらに好ましくは55度以上60度以下(例 えば56度、57度、58度、59度が挙げられるがこ らに限定されない)の低温湯水が用いられる 。

 また本発明は、上記方法によって得られ 生糸を提供する。さらに本発明は当該生糸 ら得られる編み物及び織物を提供する。加 て本発明は、当該生糸から得られる立体構 物を提供する。本発明の立体構造物の例と てはランプシェード、ワンピース・ジャケ ト・ショール等の洋装品、着物、帯、洋服 パネル、壁紙、椅子のシート、名刺、本の 装等が挙げられるがこれに限定されない。 ンプシェード、ワンピース・ジャケット・ ョール等の洋装品、着物、帯、洋服、パネ 、壁紙、椅子のシート、名刺、本の表装等 周知の方法によって作成することが出来る

 さらに本発明は、本発明の方法によって得 れる生糸から作成される医療用資材を提供 る。医療用資材としては手術用縫合糸、人 血管、人工皮膚、人工腱、人工骨、角膜培 のフィルム等が挙げられるがこれらに限定 れない。本発明の生糸の医療用資材用に使 するための加工等は、当業者に公知の方法 よって行うことが出来る。
 なお本明細書において引用された全ての先 技術文献は、参照として本明細書に組み入 られる。

 以下実施例により本発明をさらに詳しく 明するが、本発明は以下の実施例に限定さ るものではない。

〔実施例1〕絹糸線内に外来遺伝 を発現するカイコの繭の製糸
1.方法
1.1 乾燥工程
 通常、最高温度115℃ないし120℃から徐々に 度を下げて、5時間30分位経過後に60℃へ変 ていくという乾燥方法が行われている。こ 場合、約42%の乾燥歩合が得られる。一方本 施例では、温度勾配はとらずに、60℃の一定 温度に保たれた乾燥機内に繭を入れ、20時間 ら24時間かけて繭を乾燥させた。結果、目 とする乾燥歩合が得られた(図1)。

1.2 煮繭工程
 本発明では、低温(60℃以下)状態で繭層セリ シンを膨潤軟和するために、アルカリ剤、界 面活性剤、酵素等を用いて煮繭を行う。以下 に、アルカリ剤及び界面活性剤を用いた例を 示す。
 まず、0.1~0.4%の炭酸ナトリウム、0.2~0.4%のノ ニオン系界面活性剤を作製し、その中に外来 遺伝子発現カイコの繭を20分間浸漬させた。 の後、真空容器中で-600mmHgまで真空にして その状態で放置後徐々に復圧させ、繭腔内 徐々に溶液を浸透させた。その後真空容器 で溶液から繭を出し、その状態で真空状態 させ繭腔内の溶液を脱水させた。この操作 より繭層繭糸の籠目構造に溶液が浸潤する め、繭糸相互を膠着させているセリシンを 潤軟和させることができる。その後、繭を び溶液に入れ、再び真空状態として繭腔内 溶液を浸透させ、終了後常温水によりセリ ンを収斂させた。以上の工程を図2に示す。

1.3 繰糸工程
 通常繭から緒糸を出すために、85℃~90℃の 湯に入れて、繭層表面のセリシンを膨潤軟 させながら索緒箒にて繭糸を導き出す処理 行う。また繰糸では、約40℃の繰解槽の煮熟 繭から繭糸を解離し、約60℃の雰囲気中の小 に生糸を巻き取っている。本発明では、索 温度、繰解槽の温度を50℃、小枠部の温度 40℃とし、緒糸、繰糸を行った。

2.結果
 表1は、絹糸線内に外来遺伝子を発現するカ イコの繭について繰糸を行った結果を示す。 従来、60℃以下の低温繰糸では繰糸は不能で ったが、本発明の方法を使用することによ 繰糸を行うことが出来た。

 本発明は、絹糸線内に外来遺伝子を発現 るカイコの繭を対象として、従来にない低 処理による製糸技術を提供するものであり 生繭繰糸(生繭を高温乾燥しないで生の状態 のまま繰糸すること)を行う場合など、絹糸 内に外来遺伝子を発現するカイコの繭に限 ず、通常使われる普通品種繭にも適用でき 。

〔実施例2〕蛍光発色するトラン ジェニック繭糸のインテリア用素材として 利用
 蛍光発色するトランスジェニック繭糸を、 ンテリア用素材として利用した。蛍光発色 るトランスジェニック繭糸を直接、球形の 枠に自身の持っているセリシンで膠着させ がら巻き、乾燥後、型枠から外した。この うな方法により作製されたインテリアを図3 に示す。図3左は内側に光源のないもの(外部 らの光だけのもの)、図3中は光源に白色光 用いたもの、図3右は光源にブラックライト 用いたものである。蛍光発色するトランス ェニック繭糸を素材としたインテリアでは ブラックライトにより蛍光を発することが 認された。

〔実施例3〕細胞付着性繭糸の人 血管基材への応用
 細胞付着性を有するトランスジェニック繭 により人工血管用基材を作製した(図4)。図4 に示した人工血管は、内径が1.5mm~5mmまでのも のであり、この素材は繭乾燥60℃、煮繭は60 以下、繰糸は50℃で行った結果得られた生糸 より作製したものである。図5は、トランス ェニック繭糸による人工血管基材とPTFE(テフ ロン(登録商標)系樹脂)による人工血管基材を ラットへ移植した状態を示す。図6は、それ をラットへ移植後3ヶ月経過した状態を示す トランスジェニック繭糸による人工血管基 では、細胞増殖が進んでいることがわかる

〔参考例〕トランスジェニックカ イコの繭の作成
 蛍光を持つトランスジェニックカイコはKoji maら(2007)又はKuriharaら(2007)に記載されたベク ーに緑色蛍光タンパク質(GFP)又は赤色蛍光タ ンパク質(DsRed)遺伝子を挿入し、プラスミド して大腸菌からDNAを精製した。このベクタ プラスミドをTamuraら(2007)の方法に従って、 イコの卵中に注射した。プラスミドを注射 た卵から孵化した幼虫の次世代において、 の単眼や繭の蛍光により、トランスジェニ クカイコを同定し、これらを系統化した。 統化されたトランスジェニックカイコと実 品種を交配し、選抜育成することによって 形質を高め、得られた日本種系統と中国系 を交配してF1を作成した。このF1を桑の葉又 人工飼料で飼育することにより、蛍光を持 トランスジェニックカイコの繭を作成した

 本発明により、外来タンパク質の性質を損 うことなく、またフィブロインタンパク質 セリシンタンパク質が熱変性を受けずに、 糸腺中に外来遺伝子を発現するカイコの繭 生糸とする方法が提供された。カイコの品 改良において、従来の交配による方法では 界があることから、近年、遺伝子組換え技 を使用した外来遺伝子を発現するカイコの の作出が活発に行われている。しかしなが 、外来遺伝子を発現するカイコの繭を従来 方法で製糸すると、外来タンパク質が変性 てしまうという問題があった。
 一方本発明の方法を用いることにより、絹 腺中に外来遺伝子を発現するカイコが吐糸 た繭の特徴がそのまま生かされた生糸を得 ことが可能である。本発明は、外来遺伝子 発現するカイコの繭を生糸とする際に有用 ある。