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Title:
METHOD OF TREATING NONFERROUS SMELTING INTERMEDIARY PRODUCT CONTAINING ARSENIC
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/011317
Kind Code:
A1
Abstract:
A method that in the treatment of arsenic contained in a nonferrous smelting intermediary product, especially treatment of arsenic in the form of a sulfide, while satisfying the leaching standards (according to Environment Agency Notification No. 13), would produce stable scorodite excelling in filterability easily without cumbersome operation with high reproducibility. Scorodite is produced through the leaching step of leaching out arsenic within a weakly acidic region from a nonferrous smelting intermediary product containing arsenic; the liquid adjusting step of adding an oxidizing agent to the leachate to thereby carry out an oxidation from trivalent arsenic to pentavalent arsenic; and the crystallization step of converting the arsenic contained in the adjusted liquid to scorodite crystals.

Inventors:
ABUMIYA MITSUO (JP)
SATO YUSUKE (JP)
MIKAMI HIRONOBU (JP)
OOUCHI MASAMI (JP)
FUJITA TETSUO (JP)
MATSUMOTO MASAYOSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/062611
Publication Date:
January 22, 2009
Filing Date:
July 11, 2008
Export Citation:
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Assignee:
DOWA METALS & MINING CO LTD (JP)
ABUMIYA MITSUO (JP)
SATO YUSUKE (JP)
MIKAMI HIRONOBU (JP)
OOUCHI MASAMI (JP)
FUJITA TETSUO (JP)
MATSUMOTO MASAYOSHI (JP)
International Classes:
C01G28/00; B01D9/02; C02F1/70; C02F1/72; C22B3/44; C22B7/00; C22B30/04
Foreign References:
JP2000219920A2000-08-08
JP2006198448A2006-08-03
JPH04238816A1992-08-26
JP2003137552A2003-05-14
JPH09315819A1997-12-09
JPH09110428A1997-04-28
Other References:
DIMITRIOS FILIPPOU ET AL.: "Arsenic Immobilization by Controlled Scorodite Precipitation", JOM, vol. 49, no. 12, December 1997 (1997-12-01), pages 52 - 54, XP003024717
Attorney, Agent or Firm:
ANIYA, Setuo et al. (6-1 Iidabashi 4-chom, Chiyoda-ku Tokyo 72, JP)
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Claims:
 砒素を含む非鉄製錬中間産物から、pHを4.0以上、6.5以下に保持しながら砒素を浸出する第1の工程と、
 前記pH保持を非保持とし、当該pHの変化を成り行きとしながら砒素を浸出する第2の工程と、
 当該浸出液に酸化剤を添加して、3価砒素を5価砒素へ酸化する第3の工程と、
 当該調整液中の砒素をスコロダイト結晶へ転換する第4の工程と、を有することを特徴とする砒素の処理方法。
 前記非鉄製錬中間産物に含まれる砒素が、硫化物形態、または、硫化物形態と酸化物形態との混合形態であることを特徴とする請求項1に記載の砒素の処理方法。
 前記第1の工程が、前記非鉄製錬中間産物をスラリー化し、空気または酸素またはこれらの混合ガスを吹き込みながら、温度を50℃以上とし水酸化ナトリウム添加によりpHを4.0以上、6.5以下に保持しながら行う工程であり、
 前記第2の工程が、非鉄製錬中間産物に含まれる砒素の50%以上、90%以下を浸出した時点で前記pH保持を非保持とし、引き続き空気または酸素またはこれらの混合ガスを吹き込みながら浸出を継続し、pHが4以下まで低下した時点で反応を終了する浸出工程であることを特徴とする請求項1または2に記載の砒素の処理方法。
 前記第1の工程が、前記非鉄製錬中間産物をスラリー化し、空気または酸素またはこれらの混合ガスを吹き込みながら、温度が50℃以上とし水酸化ナトリウム添加によりpHを4.0以上、6.5以下に保持しながら行う工程であり、
 前記第2の工程が、非鉄製錬中間産物に含まれる砒素の50%以上、90%以下を浸出した時点で前記pH保持を非保持とし、引き続き空気または酸素またはこれらの混合ガスを吹き込みながら浸出を継続し、pHが4以下まで低下した時点で前記ガスの吹き込みを停止し、さらに10分間以上攪拌した後、終了する浸出工程であることを特徴とする請求項1または2に記載の砒素の処理方法。
 前記第3の工程が、前記浸出液へ過酸化水素を40℃以上で添加し、3価砒素を5価砒素に酸化した後、当該反応後液と金属銅とを接触させ、残留する過酸化水素を除去する液調整工程であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の砒素の処理方法。
 前記第4の工程が、前記液調整後液へ、第一鉄(Fe 2+ )塩を添加溶解し、それを酸化反応させる結晶化工程であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の砒素の処理方法。
 前記酸化を、pH1以下の領域で行う事を特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の砒素の処理方法。
 前記酸化反応を、温度50℃以上で行うことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の砒素の処理方法。
 前記酸化反応が、空気または酸素またはこれらの混合ガスを吹き込むものであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の砒素の処理方法。
 三酸化二砒素(As 2 O 3 )および/または亜砒酸イオンを含み、50℃以上に加温され、pH値が1以上の中性側であり、硫化銅と銅イオンと銅の5価砒素化合物とを含む水溶液へ、
 空気および/または酸素を吹き込むことで、当該水溶液中の3価砒素を5価砒素へ酸化することを特徴とする砒素の酸化方法。
 三酸化二砒素(As 2 O 3 )および/または亜砒酸イオンを含み、50℃以上に加温され、pH値が2以上の中性側であり、硫化銅を含む水溶液へ、
 空気および/または酸素を吹き込むことで、前記硫化銅の一部を溶解させて銅の5価砒素化合物を生成させながら、当該水溶液中の3価砒素を5価砒素へ酸化することを特徴とする砒素の酸化方法。
 空気および/または酸素の吹き込み開始時のpH値が2以上であり、吹き込み停止時のpH値が2未満であることを特徴とする請求項10または11に記載の砒素の酸化方法。
 前記水溶液中の3価砒素が5価砒素へ酸化した後、パルプが生成した当該水溶液を濾過して濾過殿物を回収し、当該濾過殿物を前記硫化銅の代替物として用いることを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載の砒素の酸化方法。
 前記水溶液中の3価砒素が5価砒素へ酸化した後、パルプが生成した当該水溶液を中和してpH値を3以上とすることで、当該水溶液中の銅イオンを銅の5価砒素化合物として晶出させた後、濾過して濾液と濾過殿物を回収し、当該濾過殿物を硫化銅の代替物として用いることを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載の砒素の酸化方法。
Description:
砒素を含む非鉄製錬中間産物の 理方法

 本発明は、砒素を含有する製錬中間産物 ら砒素を抽出し、これを安定な砒素化合物 あるスコロダイトの結晶とする砒素の処理 法に関する。

 砒素を含有する化合物の安定化について、 下の文献が存在する。
 特許文献1には、製錬煙灰に含まれる砒素を 対象としたスコロダイトの生成方法が記載さ れている。

 特許文献2には、硫化砒素の浸出法に関し 、硫化砒素を含むスラリーに空気を吹き込み ながらアルカリを添加し、pHを5~8に保持しな ら砒素の浸出を行うことが記載されている

 非特許文献1は、砒酸鉄、砒酸カルシウム 、砒酸マグネシウムの溶解度積について報告 している。当該文献によれば、砒酸カルシウ ムと砒酸マグネシウムとは、アルカリ領域で のみ安定であり、一方、砒酸鉄は中性から酸 性領域で安定であり、極少の溶解度がpH3.2で2 0mg/lと報告されている。

 非特許文献2には、砒酸鉄とスコロダイト との溶解度が開示されている。当該文献によ れば、弱酸性領域においてスコロダイトから の砒素の溶解度は、非結質の砒酸鉄のそれよ り2桁低いことが示され、スコロダイトが安 な砒素化合物であることを開示している。

 非特許文献3では、硫酸工場排水や製錬排 水に含まれる砒素を対象としたスコロダイト の生成方法が記載されている。

特開2005-161123号公報

特公昭61-24329号公報 西村忠久・戸沢一光:東北大学選鉱製錬 究所報告第764号第34巻第1号別刷 1978.June E.Krause and V.A.Ettel,“Solubilities and Stabili ties of Ferric Arsenate Compounds”Hydrometallurgy,22,3 11-337,(1989) Dimitrios Filippou and George P.Demopoulos,“Arse nic Immobilization by Cotrolled Scorodite Precipitation ”JOM Dec.,52-55,(1997)

 近年、世界的に非鉄製錬を取り巻く鉱石原 確保の環境は、非常に厳しいものがある。 に、銅製錬の分野においては、非鉄メジャ による寡占化が進み、さらに新興国等の新 な消費大国が出現したことにより、需給が 迫した状況にある。
 当該状況下、各国においては公害に対する 境分野への規制が強化され、義務化されつ ある。本発明者らは、今後は環境と共存で る鉱山・製錬所が当業界を主導していくも と考えた。

 ここで、非鉄製錬において懸念される公害 は、SO 2 ガスによる大気汚染や、砒素による土壌汚染 や排水汚染が挙げられる。特に砒素に関して は、将来的に銅鉱石中の砒素含有量が増える ことになることから、今までにも増して万全 の対策が必要となる。
 従来、国内の臨海非鉄製錬所では、クリー 精鉱を処理原料とすることで問題なく操業 行ってきた。しかし、今後、銅鉱石中の砒 含有量の増加が予想されることから、砒素 製錬中間産物として系外へ抜き出し、何ら の形で安定化し管理保管することが必要と ると考えた。

 海外では、砒素を、砒酸カルシウムや三 化二砒素、又は硫化砒素化合物として管理 管している製錬所が数多くある。しかし、 発明者らの考察に拠れば、これらの砒素化 物は自然環境下において完全に安定ではな 。

 ここで、本発明者らは、上述した文献を検 した。
 しかし、いずれの方法も、生産性の観点、 成するスコロダイトの安定性の観点、等に 題点が見出された。

 本発明は、このような状況の下でなされ ものであり、その解決しようとする課題は 非鉄製錬中間産物に含まれる砒素の処理、 に硫化物形態の砒素の処理において、溶出 準(環境庁告示13号準拠)を満足し、且つ、濾 過性に優れ、且つ安定なスコロダイトの結晶 を、再現性良く、煩雑な操作なしに簡便に生 成する方法を提供することにある。

 本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意 究を行った。その結果、まず、非鉄製錬中 産物から浸出により砒素を抽出する工程(浸 出工程)、次に、当該浸出液中の3価砒素を酸 剤を用いて5価に酸化し、さらに残留する酸 化剤を除去する工程(液調整工程)、当該液調 後液に第一鉄(Fe 2+ )塩を添加溶解した後、酸性下で酸化処理し スコロダイトの結晶を生成させる工程(結晶 工程)の3つの工程を行い、さらに、当該非 製錬中間産物から浸出により砒素を抽出す 工程を、pHを4.0以上、6.5以下に保持しながら 砒素を浸出する第1の工程と、前記pH保持を非 保持とし、当該pHの変化を成り行きとしなが 砒素を浸出する第2の工程とすることで、当 初の非鉄製錬中間産物に含有されていた砒素 を、濾過性に優れ且つ安定なスコロダイトと して回収することが可能になるとの全く新規 な知見を得た。
 そして、本発明者等は、3価砒素含有水溶液 に、硫化銅、銅イオン、および、銅の5価砒 化合物の3種類の物質を、触媒として共存さ た条件下で、当該3価砒素含有水溶液を加温 しつつ、ここへ酸化性ガスを吹き込むことで 、短時間に3価砒素を5価砒素へ酸化出来る酸 反応を知見した。さらに、本発明者らは、 該酸化反応終期には、3価砒素の99%以上まで が5価砒素に酸化されることを確認し、本発 を完成した。

 即ち、上述の課題を解決するための第1の手 段は、
 砒素を含む非鉄製錬中間産物から、pHを4.0 上、6.5以下に保持しながら砒素を浸出する 1の工程と、
 前記pH保持を非保持とし、当該pHの変化を成 り行きとしながら砒素を浸出する第2の工程 、
 当該浸出液に酸化剤を添加して、3価砒素を 5価砒素へ酸化する第3の工程と、
 当該調整液中の砒素をスコロダイト結晶へ 換する第4の工程と、を有することを特徴と する砒素の処理方法である。

 第2の手段は、
 前記非鉄製錬中間産物に含まれる砒素が、 化物形態、または、硫化物形態と酸化物形 との混合形態であることを特徴とする第1の 手段に記載の砒素の処理方法である。

 第3の手段は、
 前記第1の工程が、前記非鉄製錬中間産物を スラリー化し、空気または酸素またはこれら の混合ガスを吹き込みながら、温度を50℃以 とし水酸化ナトリウム添加によりpHを4.0以 、6.5以下に保持しながら行う工程であり、
 前記第2の工程が、非鉄製錬中間産物に含ま れる砒素の50%以上、90%以下を浸出した時点で 前記pH保持を非保持とし、引き続き空気また 酸素またはこれらの混合ガスを吹き込みな ら浸出を継続し、pHが4以下まで低下した時 で反応を終了する浸出工程であることを特 とする第1または第2の手段に記載の砒素の 理方法である。

 第4の手段は、
 前記第1の工程が、前記非鉄製錬中間産物を スラリー化し、空気または酸素またはこれら の混合ガスを吹き込みながら、温度が50℃以 とし水酸化ナトリウム添加によりpHを4.0以 、6.5以下に保持しながら行う工程であり、
 前記第2の工程が、非鉄製錬中間産物に含ま れる砒素の50%以上、90%以下を浸出した時点で 前記pH保持を非保持とし、引き続き空気また 酸素またはこれらの混合ガスを吹き込みな ら浸出を継続し、pHが4以下まで低下した時 で前記ガスの吹き込みを停止し、さらに10 間以上攪拌した後、終了する浸出工程であ ことを特徴とする第1または第2の手段に記載 の砒素の処理方法である。

 第5の手段は、
 前記第3の工程が、前記浸出液へ過酸化水素 を40℃以上で添加し、3価砒素を5価砒素に酸 した後、当該反応後液と金属銅とを接触さ 、残留する過酸化水素を除去する液調整工 であることを特徴とする第1から第4の手段の いずれかに記載の砒素の処理方法である。

 第6の手段は、
 前記第4の工程が、前記液調整後液へ、第一 鉄(Fe 2+ )塩を添加溶解し、それを酸化反応させる結 化工程であることを特徴とする第1から第5の 手段のいずれかに記載の砒素の処理方法であ る。

 第7の手段は、
 前記酸化を、pH1以下の領域で行う事を特徴 する第1から第6の手段のいずれかに記載の 素の処理方法である。

 第8の手段は、
 前記酸化反応を、温度50℃以上で行うこと 特徴とする第1から第7の手段のいずれかに記 載の砒素の処理方法である。

 第9の手段は、
 前記酸化反応が、空気または酸素またはこ らの混合ガスを吹き込むものであることを 徴とする第1から第8の手段のいずれかに記 の砒素の処理方法である。

 第10の手段は、
 三酸化二砒素(As 2 O 3 )および/または亜砒酸イオンを含み、50℃以 に加温され、pH値が1以上の中性側であり、 化銅と銅イオンと銅の5価砒素化合物とを含 水溶液へ、
 空気および/または酸素を吹き込むことで、 当該水溶液中の3価砒素を5価砒素へ酸化する とを特徴とする砒素の酸化方法である。

 第11の手段は、
 三酸化二砒素(As 2 O 3 )および/または亜砒酸イオンを含み、50℃以 に加温され、pH値が2以上の中性側であり、 化銅を含む水溶液へ、
 空気および/または酸素を吹き込むことで、 前記硫化銅の一部を溶解させて銅の5価砒素 合物を生成させながら、当該水溶液中の3価 素を5価砒素へ酸化することを特徴とする砒 素の酸化方法である。

 第12の手段は、
 空気および/または酸素の吹き込み開始時の pH値が2以上であり、吹き込み停止時のpH値が2 未満であることを特徴とする第10または第11 手段に記載の砒素の酸化方法である。

 第13の手段は、
 前記水溶液中の3価砒素が5価砒素へ酸化し 後、パルプが生成した当該水溶液を濾過し 濾過殿物を回収し、当該濾過殿物を前記硫 銅の代替物として用いることを特徴とする 10から第12の手段のいずれかに記載の砒素の 化方法である。

 第14の手段は、
 前記水溶液中の3価砒素が5価砒素へ酸化し 後、パルプが生成した当該水溶液を中和し pH値を3以上とすることで、当該水溶液中の イオンを銅の5価砒素化合物として晶出させ 後、濾過して濾液と濾過殿物を回収し、当 濾過殿物を硫化銅の代替物として用いるこ を特徴とする第10から第13の手段のいずれか に記載の砒素の酸化方法である。

 第1から第9に記載のいずれかの手段によれ 、濾過性に優れ、且つ、安定なスコロダイ の結晶を、再現性良く、煩雑な操作なしに 便に生成することが出来た。さらに生成し コロダイトの結晶は、溶出基準値(環境庁告 13号準拠)を大幅に満足することが出来た。
 また、第10から第14に記載のいずれかの手段 によれば、非鉄製錬所内で容易に調達可能な 資材を用いることで、低操業コスト、低設備 コストでありながら99%以上の酸化率をもって 、3価砒素を5価砒素へ酸化することが可能に った。さらに、本発明によれば、酸化反応 了時の溶液のpH値は1以上、2未満であり、ス コロダイト(FeAsO 4 ・2H 2 O)生成に好適である。従って、当該観点から 低操業コスト、低設備コストに資するもの ある。

 上述したように本発明は、砒素を含む非鉄 錬中間産物から、弱酸性領域で砒素を浸出 る浸出工程と、当該浸出液に酸化剤を添加 て3価砒素を5価砒素へ酸化する液調整工程 、当該調整液中の砒素をスコロダイト結晶 転換する結晶化工程とを有する砒素の処理 法に関するものである。
 そして、低操業コスト、低設備コストであ ながら99%以上の酸化率をもって、3価砒素を 5価砒素に酸化する方法を提供することであ 。
 以下、図1に示すフローをチャートを参照し ながら、第1の実施形態について、1.砒素を含 む非鉄製錬中間産物、2.浸出工程、3.液調整 程、4.調整液中の砒素をスコロダイト結晶へ 転換する結晶化工程、実施例1~3、比較例1の に詳細に説明する。
 次に、第2の実施形態として、低操業コスト 、低設備コストでありながら99%以上の酸化率 をもって、3価砒素を5価砒素へ酸化する方法 ついて、図3に示すフローチャートを参照し ながら、1.被処理対象物、2.3価砒素の酸化反 、3.3価砒素の酸化反応開始時のpH値、4.3価 素の酸化反応終了時のpH値、実施例4~8、比較 例2~6の順に詳細に説明し、さらに、本発明者 らの考える、5.3価砒素の酸化反応モデルにつ いて説明する。

(第1の実施形態)
1.砒素を含む非鉄製錬中間産物
 本発明に係る砒素を含む非鉄製錬中間産物( 1)とは、砒素を含む製錬工程水や排水に例え 、硫化水素や水硫化ソーダ、あるいは硫化 ーダ等の硫化剤を反応させ回収される殿物 あり、砒素が硫化物形態であることを特徴 する。以下、硫化殿物と略称する場合があ 。

2.浸出工程
 本発明に係る浸出工程は、浸出液のpHを弱 性領域に制御しながら砒素を浸出する第1工 (本明細書において、便宜のため、前期浸出 工程という場合がある。)(2)と、浸出液のpH制 御を非保持とし、当該pHの変化を成り行きと ながら砒素を浸出する第2工程(本明細書に いて、便宜のため、後期浸出工程という場 がある。)(3)とを有する。以下、前期浸出工 (2)と、後期浸出工程(3)とについて説明する

(a)第1工程(前期浸出工程)
 まず、上記「1.砒素を含む非鉄製錬中間産 」で説明した砒素を含む硫化殿物を、水で パルプしパルプ状とする。次に当該パルプ 殿物を、温度50℃以上、好ましくは80℃以上 し、空気又は酸素又はこれらの混合ガスを き込みながら、水酸化ナトリウム(NaOH)を添 して、pHを4.0以上、6.5以下に保持しながら 出する。
 当該pHを4.0以上、6.5以下に保持しながら浸 を行うことで、水酸化ナトリウムの添加量 抑制しながら効率的に砒素を浸出すること 出来た。

 これは、以下のように考えられる。
 当該前期浸出工程(2)においては、下記、(式 1)、(式2)の反応により、NaOHが消費されながら 砒素が浸出されているものと考えられる。
  As 2 S 3 +3/2O 2 +H 2 O=2HAsO 2 +3S・・・・・・(式1)
  HAsO 2 +1/2O 2 +NaOH=NaH 2 AsO ・・・・・(式2)
 ここで、本発明者らの検討によると、当該 階においてpHを6.5以上に上げると、NaOHが消 量が急激に増加することを知見した。恐ら は、pHが上昇することで、上記(式2)の反応 代わり、下記(式3)の反応が進行するためと えられる。
  HAsO 2 +1/2O 2 +2NaOH=Na 2 HAsO ・・・・(式3)

 上述の推論に拠れば、NaOHの消費量は、( 3)の反応が(式2)の反応の2倍である。従って NaOHの消費量を抑える意味から、反応pHは6.5 下、好ましくは6.0が最適であることに想到 た。

 一方、硫化殿物を長期間大気雰囲気下にて 管すると、硫化殿物自体が酸化し、一部の 化砒素は三酸化二砒素(As 2 O 3 )と硫酸とに分解される。従って、当該硫化 物を水でリパルプした場合、上述の三酸化 砒素は亜砒酸(HAsO 2 )となって溶出し、硫酸酸性のパルプとなる この場合、前期浸出工程において(式4)及び( 5)に示す様に、添加NaOHが消費され、pHがな なか上昇しないこととなる。
  H 2 SO 4 +2NaOH=Na 2 SO 4 +2H 2 O・・・・(式4)
  HAsO 2 +NaOH=NaAsO 2 +H 2 O・・・・・(式5)
 このような場合には、NaOHの消費量を考え、 pHを6まで上げずに、pH4を達するレベルまで上 げ、以下同様の操作を行うことが出来る。こ の場合、3価砒素の5価砒素への酸化効率は若 低下するものの、操作は十分に可能である 尚、pH4まで達することのないレベルであっ も、同様の操作を行うことも不可能ではな が、3価の砒素から5価の砒素への酸化効率 さらに低下し、3価砒素の割合が増えるので 温度低下時に結晶が出やすくなる。従って 温度管理を慎重に行うことが求められる。
 以上のことから、前期浸出工程においてはp Hを4.0以上とすることが好ましい。

(b)第2工程(後期浸出工程)
 上述したpHを4.0以上、6.5以下に保持しなが の浸出は、水酸化ナトリウムの添加量を抑 しながら効率的に砒素を浸出出来る、優れ 浸出方法である。ところが、本発明者らの らなる検討によると、当該方法には以下の 点があることを見出した。
 即ち、硫化殿物中に含まれる硫化砒素の50% 上、さらには90%近くが浸出された浸出後半 段階において、当該殿物中に硫化砒素と伴 含有されている重金属類(例えば、鉛や亜鉛 、等)が溶出することである。そして、これ 溶出した重金属類は、当該PH領域において浸 出液中の5価の砒素と反応して砒酸化合物を 成し、沈殿してしまう為、浸出率が低下し しまうのである。

 また、当該浸出後半の段階において、NaOHの 消費量が増加することも判明した。このNaOH 費量の増加は、浸出パルプ中の元素状態の 黄が、下記(式6)に示す硫酸生成反応を起こ て、H 2 SO 4 として溶解する為であると考えられる。
  S+3/2O 2 +H 2 O=H 2 SO 4 ・・・・・・(式6)

 さらに、当該浸出後半の段階において、元 状態の硫黄の一部がSO 4 2- (硫酸根)以外の形態(形態は不明)をとって溶 し、次工程である液調整工程の酸化効率を 下させることも判明した。さらに加えて、 発明者らは、当該硫黄化合物が、最終工程 ある結晶化工程まで残留すると、当該結晶 工程(6)にて生成されるスコロダイト(7)が微 で安定性に乏しいものとなり、濾過性が極 に悪化し、操業に著しく支障を及ぼすこと も想到した。

 以上の知見から、本発明者らは、pHを4.0以 、6.5以下に保持しながらの前期浸出工程(2) 、砒素の浸出率が50%以上90%以下の時点迄、 施して終了することとし、それ以降は、NaOH 用いたpH調整を非保持とする後期浸出工程(3 )を実施する構成に想到した。すなわち、NaOH どの薬剤によりpHの調整をせずに、pHは反応 が進むに従う事とする。さらに具体的にはNaO Hの添加を停止すれば良い。
 当該後期浸出工程(3)において、NaOHを用いた pH調整を非保持とすると、当該浸出液(6)のpH 浸出の進行とともに4未満へ低下していく。 れは、下記(式7)、(式8)によりpHが4未満へ低 するものと考えられる。
  As 2 S 3 +3/2O 2 +H 2 O=2HAsO 2 +3S・・・・・・(式7)
  HAsO 2 +1/2O 2 +H 2 O=H 2 AsO 4 - +H + ・・・・・・(式8)

 尚、前記侵出工程(2)から後期侵出工程(3) と切り換えるパラメーターとなる、砒素の およその浸出率は、上記(式2)に基づき、消 したNaOH量より容易に推定が出来る。

 後期侵出工程(3)の段階において浸出液(4)のp Hを4未満としたことで、pHを5~8として浸出を えた場合に比較して、浸出液(4)中の鉛濃度 約一桁低い水準とすることが出来た。特に 浸出液(4)の鉛は、後工程である結晶化工程(6 )において、第一鉄塩として硫酸鉄を用いた 合、PbSO 4 (硫酸鉛)を形成し、これがスコロダイト(7)に 入する結果、鉛の溶出値が環境基準を超す 因となり得るものである。従って、当該観 からも、本発明の効果は大きなものである

 さらに好ましいことに、浸出液(4)のpHが酸 側である程、元素状態の硫黄は安定であり 解し難くなる。この結果と考えられるが、 発明者らは、何らかの要因で元素状態の硫 がSO 4 2- (硫酸根)以外の形態(形態は不明)で一部が溶 した場合であっても、pHが4未満の状態にお る酸化浸出である後期侵出工程(3)を継続す ば、当該形態が全て分解される現象を見出 た。本発明者等は、pHが4未満の領域におい 浸出残渣(8)が、当該形態の分解における触 的作用を果たしているものと推定している

 加えて好ましいことに、処理対象である硫 殿物に、水銀が多い場合や、銅が易溶性の 態で含有されている場合、浸出残渣(8)に含 れる硫黄を硫化剤として利用することが出 る。
 具体的には、硫化殿物から浸出液(4)に溶解 てくる水銀、銅を、下記(式9)、(式10)により 除去し浸出残渣(8)に入れてしまい、銅製錬(9) の工程へ投入することが出来る。つまり、浸 出残渣(8)に含まれるSを硫化剤として活用す ことが出来る。
  Hg 2+ +4/3S+4/3H 2 O=HgS+1/3SO 4 2- +8/3H + ・・・(式9)
  Cu 2+ +4/3S+4/3H 2 O=CuS+1/3SO 4 2- +8/3H + ・・(式10)

3.第3工程(本明細書において、便宜のため、 調整工程と記載する場合がある。)
 液調整工程(5)は、上記「2.浸出工程」で得 れた浸出液(4)へ、酸化剤を添加し3価として 解している砒素を5価砒素に酸化し、当該反 応後、液中に残留する酸化剤を除去する工程 である。

 まず、酸化剤について説明する。
 一般に、3価砒素を5価砒素へ酸化するのは 酸性領域より中性領域、さらに中性領域よ アルカリ性領域の方が容易である。しかし 本発明に係る浸出液は酸性である。そこで 当該酸性の浸出液にアルカリ(例えば、水酸 ナトリウム)添加を行い、液性をアルカリ性 とした上で、砒素の酸化を行うことが考えら れる。ところが、本発明者らの検討によると 、当該液性のアルカリ化には多量のアルカリ 添加が必要で、コスト的に不利であることに 加え、液中の塩類濃度が増加し、後工程のス コロダイト(7)生成に悪影響を及ぼすことに想 到した。なお、3価砒素、5価砒素とあるのは イオン価数が+3価砒素(プラス3価)、または+5 価砒素(プラス5価)のことを称している。

 次に、本発明者らは、中性領域(pH6~7)での 酸素を用いた砒素の酸化を検討した。しかし 、砒素の酸化は不十分なものに留まることが 判明した。そこで、銅系触媒の使用を検討し た。当該検討結果については、後述する第2 実施形態にて説明する。

 ここで本発明者らは酸化剤として、過酸化 素(H 2 O 2 )を用いることに想到した。そこで、当該過 化水素を用い、酸性領域下で砒素の酸化を 討したところ当該酸化が十分に進行するこ を確認した。因みに、酸素、過マンガン酸 過酸化水素、およびオゾンの酸化還元電位( 準水素電極基準)を表1に示す。
 ところが、当該砒素の酸化反応後に、液中 残留する過酸化水素は、後工程の結晶化工 (6)において添加される第一鉄塩の一部を酸 する為、第一鉄イオン濃度を正確に管理す ためには、これを除去することが望ましい

 そこで、本発明者らは、今度は、当該液 に残留する過酸化水素の処理方法を検討し 。まず、金、銀等の金属のコロイドを添加 残留過酸化水素を分解除去することを試み 。ところが、当該貴金属コロイドの添加法 、原料コストが高い上に、ハンドリング性 ロスによる損失も考えられ適用は困難であ た。ここで、本発明者らは、残留過酸化水 を分解するのではなく、金属銅と接触させ 消費による除去を行うという画期的な着想 想到し、残留過酸化水素の除去に成功した

 以下、具体的に説明する。
 まず、用いる過酸化水素は、濃度30~35%の汎 品で良い。
 酸性領域下における3価砒素の5価砒素への 化は、下記(式11)、(式12)により進行すると考 えられる。
  HAsO 2 +H 2 O 2 =H 3 AsO 4 ・・・・・・・(式11)
  HAsO 2 +H 2 O 2 =H 2 AsO 4 - +H + ・・・・(式12)

 過酸化水素の添加量は、3価砒素濃度と、 (式11)、(式12)とに基づき、反応当量の1~1.2倍 を添加することが好ましい。尤も、3価砒素 度不明の場合は、当該過酸化水素添加後、 温80℃における液の酸化還元電位が500mv(Ag/Ag Cl電極基準)以上に達していることを目安とし ても良い。

 過酸化水素の添加時間は、酸化される3価 砒素濃度による。例えば、濃度20g/lの3価砒素 を酸化する場合、添加時間を5分間以上とす ことが好ましい。添加時間を十分にとるこ で、過酸化水素の一部が急速に分解し、気 の発生が多くなり添加効率が悪化すること 回避出来るからである。さらに好ましくは 添加時間を10分間~15分間とする。

 過酸化水素添加による3価砒素の5価砒素 の酸化は非常に早く、pHの低下と反応熱によ る液温の上昇が観察される。尤も、反応時間 は、酸化を完全に行う観点から60分間以上が ましく、液の酸化還元電位が450mV(Ag/AgCl電極 基準)以下となった時点で終了することが望 しい。

 ここで、過酸化水素の添加効果を測定した1 例について説明する。
 まず、48g/lの砒素濃度を有する溶液を準備 た。尚、当該48g/lの砒素の内、21g/lが3価の砒 素、27g/lが5価の砒素であった。
 当該砒素溶液へ過酸化水素の添加を行った 、その際、1の試料においては過酸化水素添 加終了時の酸化還元電位を355mV(80℃)(Ag/AgCl電 基準)、2の試料においては過酸化水素添加 了時の酸化還元電位を530mV(80℃)(Ag/AgCl電極基 準)となる量の過酸化水素を添加した。その 、1、2の試料について各々80℃で90分間、反 を行った。そして、当該反応後における溶 中の3価砒素濃度を測定したところ、1の試料 においては2.4g/lであり、2の試料においては0. 1g/l以下であることが判明した。
 当該測定結果より、過酸化水素添加の添加 については、上述したように液温80℃にお る液の酸化還元電位が500mv(Ag/AgCl電極基準)以 上に達していることを目安とすれば良いこと が裏付けられた。

 当該砒素の酸化反応後に残留する過酸化水 は、金属銅を接触させることで除去する。 体的には、当該溶液へ銅粉を添加し攪拌し 反応させる方法が一般的である。尤も、実 のプラント操業においては簡便化を図る目 で、銅板や銅屑を充填したカラムを通液す ことでも目的は達成される。
 液温度は、反応を完結させるため、40℃以 とすることが好ましい。
 当該除去反応は、下記(式13)のように進むと 考えられる。
  Cu 0 +H 2 O 2 +H 2 SO 4 =CuSO 4 +2H 2 O・・・・(式13)
 この結果、当該除去反応はpHの上昇を伴う で、pHが一定値を示した時点で終了と判断出 来る。

 本発明に係る液調整工程(5)によれば、浸 液(4)が酸性領域であっても、煩雑な操作も く3価砒素を5価砒素に酸化出来、後工程に ける砒素のスコロダイト(7)への高変換率を 持出来る。

4.第4工程(本明細書において、便宜のため、 晶化工程と記載する場合がある。)
 結晶化工程(6)は、上記「3.液調整工程」で られた調整液中の5価砒素を、スコロダイト( 7)へと結晶化する工程である。
 前記液調整工程(5)を終えて得られる調整液 砒素濃度は、スコロダイトの生産性を考え 場合、20g/l以上、好ましくは30g/l以上の濃厚 液であることが好ましい。
 まず、当該調整液に対し第一鉄(Fe 2+ )塩を添加溶解し、室温にて硫酸(H 2 SO 4 )を添加しpH1に調整する。ここで、第一鉄塩 合物は種々あるが、設備の耐腐食性の観点 よび入手の容易性の観点から、硫酸第一鉄 好ましい。
 第一鉄塩の添加量は、Fe純分量として被処 砒素総モル量の1倍当量以上、好ましくは1.5 当量である。

 第一鉄塩を添加し、pH調整を終えたら、 該調整液を所定の反応温度まで昇温する。 こで反応温度は、50℃以上であればスコロダ イト(7)が析出可能である。しかし、スコロダ イトの粒径を大きくする観点からは、反応温 度が高い程、好ましい。尤も、大気雰囲気下 での反応を可能とする観点からは、反応温度 を90~100℃とすることが望ましい。

 当該調整液が、所定の反応温度に到達した 、空気または酸素またはこれら混合ガスの き込みを開始し、強攪拌を行って気液混合 態をつくり、所定の反応温度を保ちながら 温酸化反応を進める。
 当該高温酸化反応は、下記(式14)~(式19)の様 進行すると考えられる。
(反応の前半)
  2FeSO 4 +1/2O 2 +H 2 SO 4 =Fe 2 (SO 4 ) 3 +H 2 O・・・(式14)
  2H 3 AsO 4 +Fe 2 (SO 4 ) 3 +4H 2 O=2FeAsO 4 ・2H 2 O+3H 2 SO 4 ・・・・(式15)
(全反応式(式14+式15)を、下記(式16)に示す。)
  2H 3 AsO 4 +2FeSO 4 +1/2O 2 +3H 2 O=2FeAsO 4 ・2H 2 O+2H 2 SO 4 ・・・・(式16)
(As濃度が低下した反応後半)
  2FeSO 4 +1/2O 2 +H 2 SO 4 =Fe 2 (SO 4 ) 3 +H 2 O・・・・(式17)
  2/3H 3 AsO 4 +1/3Fe 2 (SO 4 ) 3 +4/3H 2 O=2/3FeAsO 4 ・2H 2 O+H 2 SO 4 ・・・・(式18)
(全反応式(式17+式18)を、下記(式19)に示す。)
  2/3H 3 AsO 4 +2FeSO 4 +1/2O 2 +4/3H 2 O=2/3FeAsO 4 ・2H 2 O+2/3Fe 2 (SO 4 ) 3 ・・・・(式19)

 酸化方法にもよるが、当該高温酸化反応 始後、2時間~3時間で、pH、砒素濃、Fe濃度が 急激に低下する。当該段階において、液の酸 化還元電位は95℃で400mv以上(Ag/AgCl電極基準) 示す。そして、含有されている砒素の90%以 がスコロダイト(7)の結晶となる。当該高温 化反応開始後、3時間以降は、液中に残留す 砒素が少量低下するのみで、pHや液電位は ど変化しない。尚、当該高温酸化反応を完 に平衡状態で終えるには、好ましくは5時間~ 7時間の継続を行う。

 上述した本発明に係る結晶化工程(6)によ ば、反応操作が簡単であり、途中pH調整の 要もなく、含有される砒素を確実にスコロ イト(7)の結晶へ変換可能である。生成する 液(10)は、排水処理工程(11)にて処理すればよ い。得られるスコロダイト(7)の結晶は、沈降 性、濾過性に優れ、濾過後の付着水分が10%前 後と低く、さらに砒素品位が30%にも及ぶので 減容化が達成され、かつ、耐溶出性に優れ安 定である。従って、砒素を、製錬工程から安 定な形として除去し保管可能となる。

 以下に実施例を示し、本発明をより具体的 説明する。
(実施例1)
1.砒素を含む非鉄製錬中間産物
 砒素を含む非鉄製錬中間産物として発生す 硫化殿物695wet・gを測り取った。当該硫化殿 物の組成を表2に示す。

2.浸出工程
 (a)前期浸出工程
 1.にて測り取った硫化殿物を2Lビーカーに投 入し、純水にてリパルプし容量を1.6Lとした
 当該パルプ化した硫化殿物を、弱攪拌しな ら加温し温度を90℃にした後、500g/l濃度の 酸化ナトリウム溶液を添加してpH6に調整し 。次いで、当該ビーカー底部より、ガラス を用いて酸素ガスによる800cc/分の吹き込み 開始し、強攪拌下、水酸化ナトリウム溶液 加を続けてpH6を保ちながら浸出を行った。 度500g/lの水酸化ナトリウム溶液の添加量は80 ccであった。

 (b)後期浸出工程
 浸出開始後、47分間経過時点でpH保持を非保 持とし(水酸化ナトリウム溶液の添加終了)、 らに酸素を継続吹き込みながら浸出開始後 210分間経過時点まで浸出を行い、浸出を終 した。pH保持を止めた時点から、pHの変化は 反応の成り行きに任せたところ、浸出終了時 のpHは90℃で2.67であった。得られた浸出液の 位を、表3に示す。

3.液調整工程
 得られた浸出液中の3価砒素濃度は21g/lであ た。
 当該浸出液900ccを1lビーカーに投入し、加熱 した。当該浸出液の液温が40℃となった時点 ら、濃度30%のH 2 O 2 32.9gの添加を開始し、11分間で添加終了した 過酸化水素の添加終了時において、浸出液 酸化還元電位は74℃で552mv(Ag/AgCl電極基準)で った。尚、当該過酸化水素の添加量は、前 3価砒素を酸化するに必要な量の1.15倍当量 ある。
 当該浸出液への加熱は継続し、80℃に昇温 た。尚、攪拌は空気を巻き込まない程度の 拌とした。当該反応時の液温-pH-酸化還元電 の推移を表4に示す。
 当該反応は、液の酸化還元電位が423mvとな た時点で終了とした。当該反応終了時点お て、蒸発の為、液量が若干減少していたの 、純水を添加し反応前の900ccとし、これを調 整液とした。

 上記調整液を冷却し、その液温が40℃とな た時点で銅粉3.7gを添加し、当該銅粉添加時 脱H 2 O 2 処理反応の開始時とした。
 当該銅粉として試薬1級の銅粉末を用いたが 、実操業では電気銅屑等の使用も可能である 。尚、銅粉は全量が溶解するまで繰り返し使 用することが出来る。反応は短時間に終了し 調整後液を得た。本実施例においては反応に 消費したCu量、すなわち反応終了後の調整液 Cu濃度は136mg/lであった。
 表5に、脱H 2 O 2 処理反応の開始時から終了時までの、調整液 の液温、pH、酸化還元電位の推移を示す。

4.結晶化工程
 得られた調整液を純水で希釈し砒素濃度を4 5g/lに調整し、その800ccを2Lビーカーに移し95% 酸を添加してpH1.15へ調整した。そして、前 調整液に含有される砒素のモル量の、1.5倍 モル量に相当する第一鉄(Fe 2+ )量である200gの硫酸第一鉄(FeSO 4 ・7H 2 O)を投入して溶解し、さらに95%硫酸を添加し 、30℃でpH1.0へ調整した。尚、当該硫酸第一 鉄は、試薬1級を用いた。
 当該液を95℃へ昇温し、次いで2Lビーカー底 部よりガラス管を用い酸素ガスを950cc/分で吹 き込みを開始し、強攪拌下、気液混合状態で 7時間に亘り高温酸化反応させて、スコロダ トの結晶を生成させた。
 当該高温酸化反応による当該液中の砒素の コロダイトへの転換率、生成したスコロダ トの組成、および、環境庁告示13号準拠に る溶出試験結果を、表6に示す。
 また当該スコロダイトのX線回折結果を図2 示した。

 表6、図2の結果から、本実施例に係るス ロダイトは、濾過性に優れ、且つ、砒素の 出が殆どない安定な結晶であることが判明 た。

(実施例2)
1.砒素を含む非鉄製錬中間産物
 実施例1と同種の硫化殿物503wet・gを測り取 た。当該硫化殿物の組成を表7に示す。

2.浸出工程
 (a)前期浸出工程
 得られた硫化殿物を、2Lビーカーに投入し 水にてリパルプし容量を1.6Lとした。当該パ プ化した硫化殿物を、弱攪拌しながら加温 温度を90℃にした後、500g/l濃度の水酸化ナ リウム溶液を添加してpH4.1に調整した。次い で、当該ビーカー底部より、ガラス管を用い て酸素ガスによる800cc/分の吹き込みを開始し 、強攪拌下、水酸化ナトリウム溶液添加を続 けてpH4.1を保ちながら浸出を行った。濃度500g /lの水酸化ナトリウム溶液の添加量は76ccであ った。

 (b)後期浸出工程
 浸出開始後、6分間経過時点でpH保持を非保 とし(水酸化ナトリウム溶液の添加終了)、 らに酸素を継続吹き込みながら、浸出開始 、130分間経過時点まで浸出を行い、浸出を 了した。浸出終了時のpHは90℃で2.33であった 。得られた浸出液の品位を表8に、得られた 出残渣(水洗浄済み)の品位を表9に示す。砒 としての浸出率は90.8%であった。

3.液調整工程
 当該浸出液900ccを1Lビーカーに投入し、加熱 した。当該浸出液の液温が40℃となった時点 ら、濃度30%のH 2 O 2 44.1gの添加を開始し、12分間で添加終了した 過酸化水素の添加終了時において、浸出液 酸化還元電位は78℃で589mv(Ag/AgCl電極基準)で った。当該浸出液への加熱は継続し、80℃ 昇温した。
 尚、攪拌は空気を巻き込まない程度の攪拌 した。当該反応時の液温-pH-酸化還元電位の 推移を表10に示す。
 当該反応は、液の酸化還元電位が420mvとな た時点で終了とし、調整液を得た。

 上記調整液を冷却し、その液温が55℃とな た時点で銅粉1.8gを添加し、当該銅粉添加時 脱H 2 O 2 処理反応の開始時とした。
 当該銅粉として試薬1級の銅粉末を用いた。 反応は短時間に終了し調整後液を得た。本実 施例においては反応に消費したCu量、すなわ 反応終了後の調整液のCu濃度は153mg/lであっ 。
 表11に、脱H 2 O 2 処理反応の開始時から終了時までの、調整液 の液温、pH、酸化還元電位の推移を示す。

4.結晶化工程
 得られた調整液を純水で希釈し砒素濃度を4 5g/lに調整し、その800ccを2Lビーカーに移し95% 酸を添加してpH1.15へ調整した。そして、前 調整液に含有される砒素のモル量の、1.5倍 モル量に相当する第一鉄(Fe 2+ )量である200gの硫酸第一鉄(FeSO 4 ・7H 2 O)を投入して溶解し、さらに95%硫酸を添加し 、30℃でpH1.0へ調整した。尚、当該硫酸第一 鉄は、試薬1級を用いた。
 当該液を95℃へ昇温し、次いで2Lビーカー底 部よりガラス管を用い酸素ガスを950cc/分で吹 き込みを開始し、強攪拌下、気液混合状態で 7時間に亘り高温酸化反応させて、スコロダ トの結晶を生成させた。
 当該高温酸化反応による当該液中の砒素の コロダイトへの転換率、生成したスコロダ トの組成、および、環境庁告示13号準拠に る溶出試験結果を、表12に示す。

 表12の結果から、本実施例に係るスコロ イトは、濾過性に優れ、且つ、砒素の溶出 殆どない安定な結晶であることが判明した

(実施例3)
1.砒素を含む非鉄製錬中間産物
 実施例3と後述する比較例1においては、浸 工程を、上述した前期浸出工程と後期侵出 程とする本発明の効果を確認するため、同 の製錬硫化物を用い、浸出工程を、前期浸 工程と後期侵出工程とした場合と、一段階 工程とした場合の効果の差異を検討した。

 製錬硫化物730wet・gを、2Lビーカーに投入 、純水にてリパルプし容量を1.6Lとした。当 該製錬硫化物品位を表13に示す。

2.浸出工程
 (a)前期浸出工程
 製錬硫化物のリパルプを弱攪拌しながら加 し、90℃にした後、濃度500g/lの水酸化ナト ウム溶液を添加してpH6に調整した。次いで ビーカー底部より酸素ガスを800cc/分で吹き みを開始し、強攪拌下、前記水酸化ナトリ ム溶液を添加し、pH6を保ちながら浸出を行 た。

 (b)後期浸出工程
 上記浸出開始後、143分間の時点でpH保持を 保持とした(水酸化ナトリウム溶液の添加を 止した。)。
 さらに酸素の吹き込みは継続ながら、当該 出開始後、210分間経過時点で浸出を終了し 。浸出終了時における浸出液のpHは3.49(90℃) であった。
 当該浸出において使用した、濃度500g/lの水 化ナトリウム溶液の量は62ccであった。得ら れた浸出残渣(水洗浄済み)品位を表14に示す 砒素の浸出率は92.7%であった。また、得られ た浸出液の品位を表15に、S分析値の内訳を表 16に示す。

3.液調整工程
 今回は、後述する比較例1との比較を目的と したので、液調整工程は実施しなかった。

4.結晶化工程
 上記侵出工程で得られた浸出液を純水で希 し、砒素濃度を45g/lに調整した。
 当該希釈液800ccを2Lビーカーに移し、95%硫酸 を用いpH1.15へ調整した。ここへ、試薬1級の 酸第一鉄(FeSO 4 ・7H 2 O)を200g投入して溶解し、さらに95%硫酸にて30 でpH1.0へ調整した。このとき、添加された 一鉄(Fe 2+ )量は、含有される砒素モル量の1.5モル当量 ある。
 硫酸第一鉄の溶解した当該液を加熱して95 へ昇温し、次いでビーカー底部よりガラス を用いて、酸素ガスの950cc/分量の吹き込み 開始し、強攪拌を行って、気液混合状態で7 間高温酸化反応を行った。

 当該高温酸化反応で生成した結晶は、X線回 折の結果、図2で示したスコロダイトと同様 スコロダイトであると同定された。
 当該生成したスコロダイトの結晶は、沈降 ・ろ過性共に良好であり、As溶出値も0.26mg/l と、規制値(<0.3mg/l)を満足した。ここで、As 溶出値が規制値内ではあったものの、0.26mg/l なったのは、当該結晶化工程において砒素 殿率が低い、すなわち液中の3価砒素濃度が 高かった為と考えられる。
 当該高温酸化反応による当該液中の砒素の コロダイトへの転換率、および、生成した コロダイトの水分および砒素溶出値を表20 示す。

(比較例1)
1.砒素を含む非鉄製錬中間産物
 上述した実施例3と同様に、表13に示す製錬 化物を用い730wet・gを、2Lビーカーに測り取 純水にてリパルプし1.6Lとした。

2.浸出工程
 製錬硫化物のリパルプを弱攪拌しながら加 し温度を90℃にした。そして、本比較例1で 、500g/l濃度の水酸化ナトリウム溶液を添加 てpH7に調整した。次いで、当該ビーカー底 よりガラス管を用い酸素ガスを800cc/分で吹 込みを開始し、強攪拌下、当該水酸化ナト ウム溶液の添加によりpH7を保ちながら225分 浸出した。

 使用した500g/l濃度の水酸化ナトリウム溶 の量は188ccであった。得られた浸出残渣(水 浄済み)の品位を表17に示す。砒素の浸出率 91.2%であった。また、得られた浸出液の品 を表18に、S分析値の内訳を表19に示す。

3.液調整工程
 液調整工程は実施しなかった。

4.結晶化工程
 上述した実施例3と同様の結晶化工程を実施 した。
 当該高温酸化反応で生成した結晶は、X線回 折の結果、スコロダイトと同定された。
 当該生成したスコロダイトの結晶は、沈降 がなく、ろ過性も不良であった。As溶出値 28mg/lと、規制値(<0.3mg/l)を満足せず、水分 も69%と高かった。
 当該高温酸化反応による当該液中の砒素の コロダイトへの転換率、および、生成した コロダイトの水分および砒素溶出値を表20 示す。

(第2の実施形態)
 本発明者らの検討によると、上述した過酸 水素(H 2 O 2 )を用いた酸化方法は、3価砒素の酸化速度が く、かつ、溶液温度を高温として反応させ ことにより、ほぼ100%近い3価砒素の酸化が 成される。しかし、過酸化水素は高価な薬 である。

 一方、オゾン(O 3 )を用いた酸化方法は、溶液温度に関係なく かつ、短時間に、ほぼ100%近い3価砒素の酸化 が達成される。しかし、以下の問題がある。
 オゾン発生設備自体が高コストである。さ にオゾンの酸化力が強い為、周辺装置の仕 も高度化せざるを得ず、システム全体とし は非常な高コストとなる。
 オゾンは人体に有害である為、未反応で大 に放出されるオゾンを回収・無害化する付 設備が必要となる。
 オゾンは酸素より水に溶けやすく、反応後 は特異の刺激臭を放つ等の問題がある。当 問題を除くため、後工程において溶存した ゾンを除去する工程が必要となる。

 一方、粉状金属銅等を触媒として添加する 法では、以下の問題点が明らかとなった。
1)被処理液の砒素濃度が低い(例えば、3g/L程 )場合には、砒素の酸化率は100%近い。しかし 、被処理液の砒素濃度が高い(例えば、60~70g/L 程度)場合は砒素の酸化率が79%程度に低下す 。
2)金属銅(Cu°)が銅イオン(Cu 2+ )に変化する際に、3価砒素から5価砒素への変 化に影響を与える。そして、当該変化の際、 3価砒素に対して少なくとも等モル以上の金 銅が必要であるとしている。さらに、難水 性銅化合物(Cu 2 O、CuS)においても、金属銅と同様の効果が認 られるとしている。この結果、3価砒素化合 物である亜砒酸の処理に際して、大量の薬剤 (銅源)が必要である。
3)上記2)で説明したように、当該方法では亜 酸(3価砒素)の処理に際して大量の銅源を使 。この結果、反応後の溶液には数10g/Lの大量 の銅イオンが残る。従って、反応後の溶液か らの銅の回収工程が必要となり、銅回収コス トの負担増を招く。
4)当該反応は、酸性溶液中(例えば、pH値が0、 FA(遊離酸)値が130g/L)における反応であるため 反応後の溶液には大量の酸分が残る。従っ 、反応後の溶液をベースとして5価砒素化合 物を生成するためには、大量のアルカリが必 要である。これは、当該方法において、粉状 金属銅および/または難水溶性銅化合物を、 解させる必要があるため、すなわち必然的 酸分が必要とされることから、避けられな 問題でもある。

 以下、本発明を実施するための第2の実施 形態について、図3に示すフローチャートを 照しながら、1.被処理対象物、2.3価砒素の酸 化反応、3.3価砒素の酸化反応開始時のpH値、4 .3価砒素の酸化反応終了時のpH値、実施例4~8 比較例2~6の順に詳細に説明し、さらに、本 明者らの考える、5.3価砒素の酸化反応モデ について説明する。

 本実施形態によれば、非鉄製錬所内で容 に調達可能な資材を用いることで、低操業 スト、低設備コストでありながら99%以上の 化率をもって、3価砒素を5価砒素へ酸化す ことが可能になった。

1.被処理対象物
 本実施の形態は、高濃度の砒素溶液の作製 最適な処理方法である。
 つまり、本実施の形態によれば、溶解度の さな3価砒素を、溶解度の大きな5価砒素へ 易に酸化可能である。従って、3価砒素源と て固体である三酸化二砒素〈1〉を用いるこ とにより、3価砒素が5価砒素へ酸化されるの 並行して当該三酸化二砒素が溶解し、3価砒 素が適時供給される形となる。この結果、数 10g/Lの高濃度な5価砒素溶液、すなわち濃厚な 砒酸溶液の作成が容易となるものである。

2.3価砒素の酸化反応
 酸化工程〈4〉に係る本実施の形態を導出す るにあたり、本発明者らは、銅を砒素の酸化 触媒として用い、3価砒素を酸素により酸化 る工程に関して検討を行った。
 当該検討のいくつかを、以下に記載する。

1)酸化触媒として銅イオンのみを使用する(後 述の比較例3、比較例4に相当する。)。
2)酸化触媒として硫化銅のみを使用する(後述 の比較例5に相当する。)。
3)酸化触媒として硫化銅と銅イオンとの2種を 共存させて使用する(後述の比較例6に相当す 。)。
4)酸化触媒として硫化銅と銅イオンと銅の5価 砒素化合物との3種を共存させて使用する(後 の実施例4~8に相当する。)。

 上述の検討の結果、1)~4)ともに、銅の酸化 媒効果は認められた。しかし、酸化速度、 化率の観点から4)が、1)~3)と比較して効果が 躍的に向上することを知見した。
 当該知見に基づき、酸化触媒としては、硫 銅と、銅イオンと、銅の5価砒素化合物(砒 銅)との3種を共存させて使用することとした 。
 以下、(a)硫化銅源、(b)銅イオン源、(c)銅の5 価砒素化合物(砒酸銅)、および、(d)反応温度 (e)吹き込みガス種と吹き込み量、について 細に説明する。

 (a)硫化銅源
 硫化銅源〈2〉は、硫化銅固体、硫化銅粉末 などを用いることが出来る。尤も、反応性を 確保する観点からは、粉状であることが望ま しい。また、硫化銅には、大別して、CuSとCu 2 Sとの形態が存在する(結晶格子中銅の一部が 損した組成のCu 9 S 5 もある。)。本実施形態においては、そのど らでも効果があり、これらの混合であって 良い。さらに、硫化銅源は、出来るだけ純 な硫化銅(不純物が極力少なく、純度の高い 化銅。)であることが好ましい。これは、純 度の高い硫化銅を用いることで、As 2 S 3 、ZnS、PbS、CdS、等の混入を回避できるからで ある。
 これら、As 2 S 3 、ZnS、PbS、CdS、等が混入してくると、以下、 (式20~23)に記載する反応がおこり、3価砒素の 化反応に必要な銅イオンの供給が妨げられ 。
 さらに、As 2 S 3 、すなわち硫化砒素においては、意識的に銅 イオンを添加した場合であっても以下に記載 する反応がおこり、最適な銅イオン濃度の維 持が難しくなるだけでなく、水素イオン(H + )発生反応が起きる。そして、水素イオン(H + )が発生すると、反応系のpH値が低下していま い、本発明に係る3価砒素の酸化反応の維持 困難となり、3価砒素の酸化が困難になる。

  Cu 2+ +1/3As 2 S 3 +4/3H 2 O=CuS+2/3HAsO 2 +2H + ・・・(式20)
  Cu 2+ +ZnS=CuS+Zn 2+ ・・・(式21)
  Cu 2+ +PbS=CuS+Pb 2+ ・・・(式22) 
  Cu 2+ +CdS=CuS+Cd 2+ ・・・(式23)     

 ここで、硫化銅源〈2〉として、製錬中間産 物として回収される硫化銅を考えた場合、当 該回収された硫化銅中には、上述したAs 2 S 3 、ZnS、PbS、CdS、等が相当量含まれている。従 って、硫化銅源〈2〉として、製錬中間産物 して回収される硫化銅をそのまま用いるこ は好ましくない。もし、用いたい場合には 事前に上述の硫化物を反応分解等により除 し、硫化銅としての純度を上げておけば良 。

 銅製錬所であれば、以下に記載する方法で 本発明に適した純度の高い硫化銅を簡単に 造可能である。
  (1)電気銅を硫酸酸性下(FA(遊離酸)=50~300g/L) 、加温しつつエアレーションして溶解(Cu=10~ 30g/L)させ銅溶液を得る。
  (2)得られた銅溶液を、50℃以上でNaSHやH 2 S等の硫化剤と反応させて硫化銅を回収する
  (3)回収された硫化銅を水洗浄し、付着酸 を取り除く。
 この水洗浄後の硫化銅は不純物が少なく、 燥状態であっても湿潤状態であっても、本 明に適用可能である。

 (b)銅イオン源
 銅イオン源〈3〉は、処理水溶液において銅 イオンとなるものを用いれば良い。例えば、 硫酸銅は常温にて固体であり、水に溶解して 直ぐに銅イオンとなるため好ましい。金属銅 、金属銅粉を用いてもよいが、イオン化する まで溶解を待つ必要がある。

 (c)銅の5価砒素化合物(砒酸銅)
 本実施形態に係る銅の5価砒素化合物として 砒酸銅がある。砒酸銅の溶解度積は、砒酸鉄 (FeAsO 4 )に匹敵するものであり、弱酸性から中性領 にて容易に形成する5価砒素化合物である。
 本実施形態では、3価砒素を含む水溶液に硫 化銅を添加し、初期pH値を2以上とし酸化反応 を開始する。この為、添加された硫化銅表面 では、3価砒素の5価砒素への酸化と、硫化銅 溶解による銅イオンの供給とが並行する為 瞬時に砒酸銅の生成が起きるものと考えら る。また、反応終了時には、溶液が弱酸性 域へ自然移行するものの、この時点では5価 砒素および銅イオン共にg/Lオーダーまで濃縮 されている。当該濃縮により、砒酸銅の生成 能力は、依然低下することがない。
 ここで、溶液のpH値が1を割り込む酸性側と らなければ、砒酸銅の形成能力が極端に低 することはない為、pH値の管理を行うこと 好ましい。

 (d)反応温度
 砒素の酸化は、溶液温度が高いほうが良好 ある。具体的には、砒素の酸化を進めるた には50℃以上の温度が求められる。実操業 考慮し、反応槽の材質や反応後の濾過操作 前提とすれば70~90℃、好ましくは80℃前後に 温〈5〉する。

 (e)吹き込みガス種と吹き込み量
 吹き込みガス〈6〉が、空気であっても3価 素の酸化反応は可能である。しかし、酸素 または、空気と酸素との混合ガスを吹き込 ガス〈6〉とした場合は、溶液中の砒素濃度 低い範囲であっても酸化速度が維持され、 き込み(ガス)容量も小さくなるため、これ 伴うヒートロスも少なくなり反応温度の維 管理が容易になる。そこで、酸化速度、反 温度の維持管理の観点から、吹き込みガス 6〉は、酸素、または、酸素と空気との混合 スが好ましい。

 吹き込みガス〈6〉の単位時間当たりの吹き 込み量は、反応槽の気液混合状態により、最 適値が変化する。例えば、微細気泡発生装置 等を用いれば、酸化効率はさらに向上し、吹 き込み量を減らすことが可能となる。
 従って、実機操業時には、その気液混合状 や酸素吹き込み方式等を加味して最適値を 出すことが肝要である。

3.3価砒素の酸化反応開始時のpH値
 本発明に係る3価砒素の酸化反応の基本式は 、以下であると考えられる。
  As 2 O 3 +H 2 O=2HAsO 2 ・・・・(式24)
 三酸化二砒素が水に亜砒酸(3価砒素)として 解する反応      
  2HAsO 2 +O 2 +2H 2 O=2H 2 AsO 4 - +2H + ・・・・(式25)
 亜砒酸(3価砒素)が酸化する反応
  2HAsO 2 +O 2 +2H 2 O=2H 3 AsO 4 ・・・・(式26)
 亜砒酸(3価砒素)が酸化する反応

 後述する実施例のように、全砒素溶解時の 素濃度が40g/L以上の濃厚液の場合は、亜砒 の溶解度が小さいため三酸化二砒素は全量 期に溶解するのではない。
 濃厚砒素液の場合は、亜砒酸が、(式25)、( 26)により溶解度の大きい砒酸へ酸化され、 砒酸濃度が減少すると並行して、(式24)によ 亜砒酸が系内へ補給される反応が進行する のと考えられる。つまり、反応初期は、固 の三酸化二砒素が懸濁しながら溶解してい ものと考えられる。

 ここで、亜砒酸の砒酸への酸化は、(式25)、 (式26)によるものと考えられる。
 当該亜砒酸の砒酸への酸化反応において、 期の30分間で溶液のpH値が2前後へ急激に低 する挙動を示す。当該挙動から、pH2以上の 性側では主に(式25)により酸化が進んでいる のと推定できる。その後の30分間以降では pH値の低下は緩慢となることから、反応は主 に(式26)にて進んでいるものと推定できる。
 以上のことから、本発明により3価砒素を効 率的に酸化し、且つ、反応終了時のpH値を弱 性に制御するためには、酸化反応開始時(空 気および/または酸素の吹き込み開始時)のpH を2以上とすれば良いことが理解される。

4.3価砒素の酸化反応終了時のpH値
 本発明に係る実施の形態において、後述す 実施例4~8の結果が示すように、3価砒素の酸 化反応終了時(空気および/または酸素の吹き み停止時)のpH値は、全て2未満であり、具体 的には1.8前後となった。
 当該1.8前後のpH値は、5価砒素化合物生成に ましいpH値である(酸濃度が適正値にある。) 。これは、5価砒素化合物である砒酸鉄生成 最適pH域がpH3.5~4.5であるため、酸分の中和の ため消費される中和剤が少なくて済むからで ある。
 一方、スコロダイト(FeAsO 4 ・2H 2 O)生成は、pH1前後の5価砒素溶液が元液として 用いられるため、少量の逆中和剤(例えば硫 )添加によりpH調整が可能となるからである さらに、詳細は後述する実施例8にて説明す が、反応終了時のpH値は、2未満であり1以上 であることが好ましい。

 3価砒素の酸化反応終了時(空気および/また 酸素の吹き込み停止時)のpH値が2未満であり 、具体的には1.8前後となるのは、上記(式24)~( 式26)により、もたらされるものと考えられる 。
 まず、(式24)により、三酸化二砒素が水に亜 砒酸(3価砒素)として溶解する。尤も、出発原 料が固体の三酸化二砒素である場合に限られ ず、すでに亜砒酸として3価砒素が溶解して る水溶液の場合でも同様である(従って、本 明は、一般の排水処理にも適用可能である 合があると考えられる。)。

 上述の酸化工程〈4〉で得られた産物を、 濾過〈7〉において、濾液〈8〉と濾過物〈9〉 とに分離する。濾過〈7〉においては、例え 、フィルタープレスの様な、通常の濾過方 を適用できる。上述の酸化工程〈4〉にて、 の5価砒素化合物が生成されるものの、粘性 が高まる等の濾過性の問題がないからである 。

 得られた濾液〈7〉は、上述したように1.8前 後のpH値を有する砒酸溶液である。当該1.8前 のpH値は、5価砒素化合物生成に好ましいpH であることから、濾液〈7〉から、低コスト つ高生産性をもって5価砒素化合物を生成出 来る。
 一方、濾過物〈9〉は、硫化銅と、銅の5価 素化合物との混合物であるので、そのまま 化触媒として繰り返し使用することが出来 。この繰り返し使用の際、一部溶解した硫 銅に相応する量の硫化銅を、新たに追加添 すれば、触媒効果はさらなる向上が期待出 る。

5.3価砒素の酸化反応機構のモデル 
 本発明に係る硫化銅と、銅イオンと、銅の5 価砒素化合物よる3元系触媒は、高い酸化率 酸化速度を兼ね備えたものである。この3元 触媒が発揮する酸化触媒効果は、硫化銅表 での各イオン種の接触がもたらす電池的な 応に起因するものと考えられる。

 例えば、pH2前後の領域を例として、酸化反 機構のモデルを考える。
 まず、3価砒素の酸化を電極反応に置き換え れば、陽極反応は(式27)、陰極反応は(式28)と て示される。
  As 2 O 3 +5H 2 O=2H 3 AsO 4 +4H + +4e - ・・・・・(式27)
  4H + +O 2 +4e - =2H 2 O・・・・・(式28)
 すなわち3価砒素の酸化反応は(式27)にて示 反応が進むが、反応を進めるためには電気 に中性を維持する必要がある。従って、硫 銅表面で進む(式28)で示す陰極反応の進行が 反応性を左右するものと考えられる。この とから、常に活性度の高い硫化銅表面の確 が重要になるものと考えられる。

 すなわち本反応モデル系では、銅イオンが 存し、且つ、弱酸pH領域の反応であるため 硫化銅表面では(式29)に示す砒酸銅化合物の 出反応が起きるものと考えられる。
  Cu 2+ +H 3 AsO 4 +H 2 O=CuHAsO 4 ・H 2 O+2H +  ・・・・(式29) 
 上記(式29)により、硫化銅表面には水素イオ ン(H + )が補給され、(式30)(式31)に示す反応が並行し て進むと考えられる。
  CuS+2H + +1/2O 2 =Cu 2+ +S°+H 2 O ・・・・・(式30)
  CuS+H + +2O 2 =Cu 2+ +HSO 4 -  ・・・・・(式31)

 ここで、硫化銅表面には、砒酸銅化合物が 成されているため、酸素供給が不十分とな 、(式30)に示すS°(元素状硫黄)生成反応も進 と考えられる。さらに(式30)(式31)の進行に い、局所的にCuイオン濃度が上昇し、且つ、 水素イオン(H + )濃度の低下が生じるものと推定される。そ て、当該局所においては、(32式)に示す硫化 の生成反応が、上記(式30)(式31)と並行的に 行するものと考えられる。
  Cu 2+ +4/3S°+4/3H 2 O=CuS+1/3HSO 4 - +7/3H + ・・・・・(式32)
 (式32)は、硫化銅であるCuSの晶出を示すもの であり、硫化銅の表面には活性度が高い新生 面としてのCuS晶出が確保されることを意味す るものである。

 さらに(式32)で生成する水素イオン(H + )は、(式30)(式31)の示す反応へ供給される他、 砒酸銅化合物の溶解反応((式29)の逆反応)でも 消費される。この結果、銅イオンの硫化銅表 面への補給と、砒酸(H 3 AsO 4 )の沖合への拡散とが、進行するものと考え れる。
 尚、後述の[比較例6]に示すpH0条件下では、( 式29)に示す反応が基本的に進行せず、また、 (式32)に示す反応も進み難くなる為、酸化効 が極端に低下するのだと解釈される。

(実施例4)
 試薬グレードの三酸化二砒素(品位を表21に す。)、試薬グレードの硫化銅(品位を表22に 示す。)を準備した。
 上述したように、硫化銅には、大別してCuS Cu 2 Sとの2形態、さらに、結晶格子中銅の一部が 損した組成のCu 9 S 5 がある。そして、いずれの形態でも使用可能 であり、また、いずれかの形態の混合であっ ても良い。
 本実施例に用いた硫化銅のX線回折の結果を 、図4に示す。尚、図4において、CuSのピーク △で、Cu 2 Sのピークを☆で、Cu 9 S 5 を◆で示した。当該X線回折の結果から、本 施例に用いた硫化銅はCuSと、Cu 2 Sと、Cu 9 S 5 との混合物と考えられる。

 反応容器は1リットルビーカーを使用し、 攪拌措置は700rpmの2段タービン羽および4枚邪 板を使用し、ガス吹き込みは、ガラス管を して前記ビーカー底部より酸素の吹き込み 実施した(強攪拌状態とし、気液混合状態に て酸化した)。

 三酸化二砒素50gと、硫化銅48gとを反応容 に投入し、純水800ccでリパルプし80℃へ加温 した。次いで、撹拌装置を用いて溶液の攪拌 を開始し、さらに、当該反応容器の底部に酸 素ガスの吹き込みを400cc/分にて開始し、3価 素の酸化を行った。尚、酸素ガス吹き込み 始直前の溶液のpH値は3.09(at80℃)であった。

 溶液の攪拌と酸素ガスの吹き込みとを90 間継続し、当該3価砒素の酸化を行った。そ て30分間ごとに、溶液の、温度、pH値、酸化 還元電位、銅イオン量、3価砒素量、5価砒素 を測定した。当該測定結果を表23に示す。 、酸化還元電位は、Ag/AgCl電極基準値である

 当該3価砒素の酸化を90分間継続して行っ 後、溶液を濾過し、沈殿物として回収した 媒を水洗浄し、当該触媒の品位分析とX線回 折とを行った。当該反応後の触媒の品位分析 結果を表24に、X線回折結果を図5に示した。 、図5において、CuSのピークを△で、銅の5価 砒素化合物のピークを○で示した。

 以上、表23、表24、および図5より、本実施 4に係る反応系において、硫化銅と、銅イオ と、銅の5価砒素化合物(砒酸銅)とが共存し いることが理解されるものである。
 さらに、本実施例4においては、3価砒素の 化速度、酸化率とも高いことが判明した。 に、酸化率においては酸化反応開始後90分間 の時点で、既に99%以上に達していることが認 められた。

(実施例5)
 反応容器に投入する硫化銅の量を半分の24g した以外は、実施例4と同様の操作を行い、 同様の測定を行った。
 尚、酸素ガス吹き込み開始直前の溶液のpH は2.96(at80℃)であった。
 30分間ごとに、溶液の、温度、pH値、酸化還 元電位、銅イオン量、3価砒素量、5価砒素量 測定した結果を表25に示し、沈殿物として 収した触媒の水洗後の品位分析結果を表26に 示す。

 本実施例5においては、CuS添加量を実施例4 半分とし、当該半減の効果を検討したもの ある。
 その結果、実施例4に較べて、3価砒素の酸 速度は若干劣るが、酸化能力は十分保持さ 、酸化反応開始後120分間の時点で99%以上の 化が認められた。実施例4と同様、3価砒素の 酸化能力、速度共に、実用化に十分好適と考 えられる。

(実施例6)
 本実施例では、実施例4と同様だが、さらに 試薬グレードの硫酸銅(CuSO 4 ・5H 2 O)16gを反応容器に投入した。当該硫酸銅の投 量は、銅イオンとして5g/Lに相当する量であ る。本実施例は、反応初期より銅イオン濃度 を高めた場合の実施例である。
 尚、酸素ガス吹き込み開始直前の溶液のpH は2.98(at80℃)であった。
 30分間ごとに、溶液の、温度、pH値、酸化還 元電位、銅イオン量、3価砒素量、5価砒素量 測定した結果を表27に示す。

 本実施例では、反応終了時の120分時点にお て酸素ガス吹き込みを停止した。そして、 度500g/LのNaOH溶液を添加して、溶液をpH=3.5へ 中和し、液中に溶存する銅イオンを5価砒素 合物として晶出させた後、濾過操作を行っ 。尚、NaOH溶液の添加量は40ccであった。
 濾過操作により得られた濾液の全砒素濃度 、29.6g/L、銅濃度は80mg/Lであり、砒酸銅化合 物形成に伴う、濃度低下が認められた。
 一方、濾過操作により回収された殿物は165g ・wetであった。当該殿物のうち5g・wetを採取 、水分測定したところ水分=59.9%であった。 た、当該殿物のうち5g・wetを、水洗浄し品 分析を行った。回収された殿物の品位分析 果を表28に示す。 

 本実施例6は、実施例4における反応初期よ Cuイオン濃度を高めたものである。
 表27の結果から、本実施例においても、高 酸化率にて反応が完結していることが認め れた。
 一方、本実施例6では、実施例4に比して若 酸化速度が落ちている。従って、反応系内 銅イオン濃度は、必要以上に高く設定する 要がないことが判明した。反応系内の銅イ ン濃度は、1~5g/L程度で十分と判断される。

 尤も、触媒として、湿式硫化反応で生成さ た直後の硫化銅を用いる場合、当該硫化銅 難溶性の挙動を取る。そこで、湿式硫化反 で生成された直後の硫化銅を触媒として用 る場合は、反応系内への銅イオンの添加が 効である。
 また、本実施例では、中和により添加した イオンを、銅の5価砒素化合物として回収し ている。銅イオンの回収方法は、銅の5価砒 化合物として回収する方法以外にも、元素 硫黄やZnS等の、銅イオンと反応し硫化銅を 成する薬剤を添加する方法によっても良い

(実施例7)
 試薬グレード三酸化二砒素50gを準備した。
 実施例6で回収した全殿物(実施例6で、測定 サンプルに供した10g・wetは除く。)と、三酸 化二砒素50gとを反応容器へ投入し、純水707cc リパルプし、パルプ中の水分を800ccとした 当該パルプを80℃に加温し、次いで、反応容 器の底部に酸素ガスの吹き込みを400cc/分にて 開始した。
 尚、酸素ガス吹き込み開始直前のpH値は3.03( at79℃)であった。

 30分間ごとに、溶液の、温度、pH値、酸化 還元電位、銅イオン量、3価砒素量、5価砒素 を測定した結果を表29に示す。

 90分間反応させた後、酸素吹き込みを停止 、500g/LのNaOH溶液を添加して溶液のpH値を3.0 中和した後、当該溶液を濾過した。尚、該Na OH溶液の使用量は36ccであった。
 得られた濾液の全砒素濃度は44.8g/L、Cu濃度 210mg/Lであり、砒素濃度はほぼ配合値濃度の ものが回収されていることが判明した。
 一方、得られた殿物は122g・wetであった。得 られた殿物のうち5g・wetを採取し水分測定し ところ水分=48.9%であった。また、得られた 物のうち5g・wetを水洗浄し分析を行った。 殿物として回収した触媒の品位分析結果を 30に示す。

 本実施例7は、実施例4~8のなかで、最も酸化 効率が高く、且つ、酸化速度も速かった。具 体的には、反応60分時点で既に95%の酸化が認 られ、反応90分時点ではほぼ100%近い99.6%の 化率を示した。
 本実施例7に係る触媒も、硫化銅と、銅イオ ンと、砒酸銅化合物(銅の5価砒素化合物)との 3種共存である。そして、本実施例7に係る触 は、実施例4、5に比較して、特に砒酸銅化 物(銅の5価砒素化合物)の含有比率が高いも である。当該砒酸銅化合物の高含有比率が 酸化性能向上へ寄与しているものと考えら る。すなわち、当該寄与現象は、「酸化反 のモデル」にて説明したように、砒酸銅化 物の形成・存在が活性なCuSの新生面生成に 与していることを裏付けるものと考えられ 。

(実施例8)
 パルプに濃硫酸を添加することで、酸素吹 込み開始直前のpH値を1.0(at80℃)へ調整した 外は、実施例5と同様の操作を行った。

 30分間ごとに、溶液の、温度、pH値、酸化 還元電位、銅イオン量、3価砒素量、5価砒素 を測定した結果を表31に示す。また、反応 の触媒品位(水洗浄済み)を表32に示す。

 本実施例8は、添加した硫化銅量は実施例5 同様であるが、酸化開始直前の溶液のpH値を 1に調整したものである。
 この結果、酸化能力が実施例5に較べて低下 し、120分間後の時点で72%の酸化率であった。 酸化率100%に到達させるためには、長時間反 させる必要があると考えられるが、酸化能 自体は十分保持している。

 上述した酸化速度減少の原因は、共存する 酸銅が大幅に減少した為であると考えられ 。さらに、溶液のpH値が1では、硫化銅の溶 量が増える為、未溶解分として回収される 化銅の量(リサイクル量)が減り、コスト的 も不利となる。
 以上のことから、溶液のpH値は2以上として 応を開始し、少なくともpH値1以上で酸化反 を終了することが、反応性確保、CuS回収量 保の観点から好ましいと考えられる。

(比較例2)
 試薬グレードの三酸化二砒素50gのみを反応 器に投入し、純水800ccでリパルプした以外 、実施例4と同様の操作を行った。
 尚、酸素ガス吹き込み開始直前のpH値は2.80( at80℃)であった。
 そして30分間ごとに、溶液の、温度、pH値、 酸化還元電位、銅イオン量、3価砒素量、5価 素量を測定した。当該測定結果を表33に示 。

 本比較例2では、3価砒素の酸化が殆ど進 ないことが判明した。

(比較例3)
 試薬グレードの三酸化二砒素50gと、試薬グ ード硫酸銅(CuSO 4 ・5H 2 O)16g(Cuイオンとして5g/L)を反応容器に投入し 純水800ccでリパルプした以外は、実施例4と 様の操作を行った。
 尚、酸素ガス吹き込み開始直前のpH値は3.33( at80℃)であった。
 そして30分間ごとに、溶液の、温度、pH値、 酸化還元電位、銅イオン量、3価砒素量、5価 素量を測定した。当該測定結果を表34に示 。

 本比較例3では、比較例2に較べれば酸化 進行が認められるが、その程度は小さい。

(比較例4)
 試薬グレード三酸化二砒素50gと、試薬グレ ド硫酸銅(CuSO 4 ・5H 2 O)32g(銅イオンとして10g/L)を反応装置に投入し 、純水800ccでリパルプした以外は、実施例4と 同様の操作を行った。
 尚、酸素ガス吹き込み開始直前のpH値は3.45( at81℃)であった。
 そして30分間ごとに、溶液の、温度、pH値、 酸化還元電位、銅イオン量、3価砒素量、5価 素量を測定した。当該測定結果を表35に示 。

 本比較例4では、溶液中のCuイオン濃度を高 したことにより、酸化の進行は認められる しかし、その酸化の進行程度はまだ小さく さらなる銅イオンの添加補給が必要と考え れ、実用化には不適と考えられる。

(比較例5)
 試薬グレード三酸化二砒素50gと、試薬グレ ド硫化銅(CuS)48gと硫黄粉末20gとを反応装置 投入し、純水800ccでリパルプした以外は、実 施例4と同様の操作を行った。
 尚、酸素ガス吹き込み開始直前のpH値は2.67( at80℃)であった。
 そして30分間ごとに、溶液の、温度、pH値、 酸化還元電位、銅イオン量、3価砒素量、5価 素量を測定した。当該測定結果を表36に示 。

 反応終了後に溶液を濾過し、得られた澱物 水洗浄し、品位分析とX線回折を行った。
 反応後の触媒品位(水洗浄済み)を表37に、ま た、X線回折結果を図6に示した。尚、図6にお いて、CuSのピークを△で、硫黄のピークを■ で示した。
 品位分析において、砒素が0.1%検出されたが 、これは未洗浄分の液付着分由来と考えられ る。
 図6および表37より、本比較例5においては、 銅イオンと銅の5価砒素化合物との存在は認 られず、硫化銅単味の触媒系であることが 解される。

 本比較例5では、酸化の進行が認められる。 従って、比較例3、4で説明したCuイオン単味 りも、硫化銅単味の方が酸化の方が触媒と ての能力は高いことが判明した。しかし、 用化の観点からは、その酸化の進行程度は だ小さく不適と考えられる。

(比較例6)
 パルプに濃硫酸を添加し、pH値を0(at80℃)に 整した後 酸素吹き込みを開始した以外は 実施例4と同様の操作を行った。
 そして30分間ごとに、溶液の、温度、pH値、 酸化還元電位、銅イオン量、3価砒素量、5価 素量を測定した。当該測定結果を表38に示 。

 反応終了後に溶液を濾過し、得られた澱物 水洗浄し、品位分析とX線回折を行った。
 反応後の触媒品位(水洗浄済み)を表39に、ま た、X線回折結果を図7に示した。尚、図7にお いて、CuSのピークを△で、三酸化二砒素のピ ークを□で示した。

 本比較例6においては、砒素の酸化が進行せ ず、反応後触媒にも砒素が10.6%検出された。 た、図7が示す様に、X線回折の結果から三 化二砒素が確認されることから、酸化反応 においても、三酸化二砒素が未溶解のまま っているものと理解される。
 これは、溶液が硫酸酸性のpH値が0で酸化反 を開始したため、三酸化二砒素の溶解度が 下したこと。さらに、溶液中へ溶出した3価 砒素が、溶解度が大きな5価砒素へ酸化され ことなく溶液中に残留し、溶液中の3価砒素 度が低下しないため、三酸化二砒素の一部 未溶解のまま残っているためであると考え れる。

 本比較例6の結果から、砒素の酸化反応を 、砒酸銅が形成できないpH値が0の条件から始 めた場合、触媒となる物質は、硫化銅と銅イ オンとの2元系となり、酸化能力が激減した のと考えられる。 結局のところ、本特許に 係る砒素の酸化反応は、少なくともpH値1以上 条件で開始することが好ましいことが判明し た。

本発明に係る砒素の処理方法を示すフ ーチャートである。 実施例1に係るスコロダイト結晶のX線 折結果のチャートである。 本発明(第2実施形態)の実施形態に係る ローチャートである。 実施例4に係る硫化銅のX線回折結果で る。 実施例4に係る澱物のX線回折結果であ 。 比較例5に係る澱物のX線回折結果であ 。 比較例6に係る澱物のX線回折結果であ 。