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Title:
METHOD OF WORKING WORKPIECE OF HIGHLY BRITTLE NONMETALLIC MATERIAL AND APPARATUS THEREFOR
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/099663
Kind Code:
A1
Abstract:
Scribe crack resulting from growth of scribe line cannot be formed to a desirable depth through sequentially forming of a heating region, cooling region and reheating region. Accordingly, there is provided a method comprising, sequentially performed, the first step of irradiating heating region (3) with a heating energy with its intensity controlled and conducting scanning along predetermined working line (2b); the second step of irradiating cooling region (4a) positioned posteriorly in the direction of relative movement of the heating region (3) of the first step with cold energy and conducting scanning along the predetermined working line (2b) to thereby form a scribe line; and the third step of irradiating reheating region (5a) positioned posteriorly in the direction of relative movement of the cooling region (4a) of the second step with a heating energy with its intensity controlled and conducting scanning along the predetermined working line (2b) to thereby form a scribe line, wherein in order to form scribe crack (5b) resulting from growth of the scribe line to a desirable depth, the heating energy quantity (P) per area of the reheating region (5a) of the third step is regulated in accordance with a depth characteristic formula for the scribe crack (5b).

Inventors:
FUJIMURA HIROSHI (JP)
YONAI TOSHIFUMI (JP)
OHMORI KENICHI (JP)
KOZAWA MASAHIRO (JP)
MOCHIZUKI YASUHITO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/051193
Publication Date:
August 21, 2008
Filing Date:
January 28, 2008
Export Citation:
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Assignee:
JAPAN STEEL WORKS LTD (JP)
JOYO ENGINEERING CO LTD (JP)
FUJIMURA HIROSHI (JP)
YONAI TOSHIFUMI (JP)
OHMORI KENICHI (JP)
KOZAWA MASAHIRO (JP)
MOCHIZUKI YASUHITO (JP)
International Classes:
C03B33/09; B28D5/00
Domestic Patent References:
WO2003026861A12003-04-03
WO2003013816A12003-02-20
Foreign References:
JP2003321234A2003-11-11
JP2001179473A2001-07-03
Attorney, Agent or Firm:
SOGA, Michiharu et al. (8th Floor Kokusai Building,1-1, Marunouchi 3-chome, Chiyoda-k, Tokyo 05, JP)
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Claims:
高脆性非金属材料製の被加工物(1)を線状の加工予定線(2b)に沿ってスクライビングするとき、
強度が制御された加熱エネルギーを所定の加熱領域(3)に照射して、加工予定線(2b)に沿って走査する第1の工程と、前記第1の工程の加熱領域(3)の相対的移動方向の後方に位置する所定の冷却領域(4a)に冷熱エネルギーを照射して、加工予定線(2b)に沿って走査し、スクライブ線を形成する第2の工程と、前記第2の工程の冷却領域(4a)の相対的移動方向の後方に位置する所定の再加熱領域(5a)に強度が制御された加熱エネルギーを照射して、加工予定線(2b)に沿って走査してスクライブ亀裂(5b)を形成する第3の工程とを順次に備える高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法において、
スクライブ線を成長させたスクライブ亀裂(5b)を所定の深さに形成するために、
δ:スクライブ亀裂(5b)の所定深さ、
δ :第2の工程の終了後におけるスクライブ線の深さ、
P:第3の工程の再加熱領域(5a)の単位面積当たりの加熱エネルギー量、
A:被加工物(1)の形状特性及び熱特性に依存した比例係数、
m:m≧1の実数係数として、
スクライブ亀裂(5b)の深さ特性式δ=δ +A・P
を満足するように第3の工程の再加熱領域(5a)の単位面積当たりの加熱エネルギー量(P)を調整することを特徴とする高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
前記第1の工程の前に、被加工物(1)の加工予定線(2b)の少なくともスクライビング開始端部に、微小亀裂(2a)を形成する微小亀裂形成工程を行うことを特徴とする請求項1の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
前記第1の工程が、加熱エネルギーとしてCO レーザーを用い、CO レーザーの照射によって被加工物(1)の軟化点より低い温度で加熱領域(3)を加熱すると共に、加熱領域(3)の形状が、加工予定線(2b)の接線方向に長い楕円形状をなし、かつ、前記楕円形状の相対的移動方向の後部にエネルギー密度を多く分布させることを特徴とする請求項1又は2の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
前記第2の工程が、水の微粒子を含む空気流を放射して被加工物(1)に冷熱エネルギーを与えると共に、空気流の水分量が、前記第1の工程の加熱エネルギーの照射によって昇温した被加工物(1)の被加工面を室温程度にまで冷却させるに足る潜熱量を有し、かつ、前記第2の工程の終了後に被加工面に残存する水の微粒子の全てが前記第3の工程の加熱エネルギーによって蒸発するように設定されていることを特徴とする請求項1,2又は3の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
前記第3の工程が、加熱エネルギーとして再加熱用のCO レーザーを用い、再加熱用のCO レーザーの照射によって被加工物(1)の軟化点より低い温度で加熱すると共に、再加熱領域(5a)の形状が加工予定線(2b)の直角方向に長い楕円形状をなし、かつ、前記楕円形状の相対的移動方向の前部にエネルギー密度を多く分布させることを特徴とする請求項1,2,3又は4の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
前記第1の工程の加熱エネルギーとして用いるCO レーザーの出力が、適正にスクライブ線を形成するために、30~300Wの範囲に維持する条件を満たすと共に、a1は加熱領域(3)の楕円の短軸長さ、b1は加熱領域(3)の楕円の長軸長さ、hは被加工物(1)の板厚として、
a1=(1~40)×h、及びb1=(10~100)×h
の関係を満たし、かつ、前記CO レーザーが、焦点位置を被加工物(1)の被加工面の内部に合わせた状態で加工予定線(2b)に対し相対的移動方向の前方から斜めに入射することを特徴とする請求項3,4又は5の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
前記第3の工程の再加熱領域(5a)が、前記第2の工程の冷却領域(4a)の相対的移動方向の後方に(0~10)×10 -3 mの範囲の距離を隔てた位置として形成され、かつ、加熱エネルギーとして用いる前記再加熱用のCO レーザーの出力が100~1000Wの範囲に調整・維持する条件を満たすと共に、a2は再加熱領域(5a)の楕円の短軸長さ、b2は再加熱領域(5a)の楕円の長軸長さ、hは被加工物(1)の板厚として、
a2=(4~25)×h、及びb2=(10~60)×h
の関係を満たし、かつ、前記再加熱用のCO レーザーがその焦点位置を被加工面の内部に合わせた状態で加工予定線(2b)に対し相対的移動方向の後方から斜めに入射することを特徴とする請求項5又は6の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
前記第2の工程の冷却領域(4a)の加工予定線(2b)の直角方向の幅が、前記第1の工程のCO レーザーによる加熱領域(3)の楕円の短軸長さa1より大きく、かつ、前記第3の工程の再加熱用のCO レーザーによる再加熱領域(5a)の楕円の長軸長さb2より小さいことを特徴とする請求項7の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
ステージ(6)上の高脆性非金属材料製の被加工物(1)を線状の加工予定線(2b)に沿ってスクライビングするとき、
強度が制御された加熱エネルギーを所定の加熱領域(3)に照射して、加工予定線(2b)に沿って走査する第1の工程と、前記第1の工程の加熱領域(3)の相対的移動方向の後方に位置する所定の冷却領域(4a)に冷熱エネルギーを照射して、加工予定線(2b)に沿って走査し、スクライブ線を形成する第2の工程と、前記第2の工程の冷却領域(4a)の相対的移動方向の後方に位置する所定の再加熱領域(5a)に強度が制御された加熱エネルギーを照射して、加工予定線(2b)に沿って走査する第3の工程とを順次に備える高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法において、
第3の工程を行う再加熱手段(20)が、レーザー発振装置(20)を備え、レーザー発振装置(20)から射出されるレーザー光(21)の照射によって被加工物(1)の再加熱領域(5a)を加熱し、スクライブ線を成長させたスクライブ亀裂(5b)を所定の深さに形成すると共に、
スクライブ亀裂(5b)を所定の深さに形成するために行うレーザー光(21)による加熱エネルギーの量の調整が、再加熱領域(5a)の形状、面積及び加熱エネルギー分布の割合を変更させずに、レーザー発振装置(20)からのレーザー光(21)の出力を増減調節して行い、スクライブ亀裂(5b)を所定の深さに形成した被加工物(1)をロボットによってステージ(6)から一体として搬出し、その後、スクライブ亀裂(5b)に沿つて被加工物(1)を分断し、複数枚の部材を得ることを特徴とする高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
被加工物(1)の加工予定線(2b)の少なくともスクライビング開始端部に、微小亀裂(2a)を形成する微小亀裂形成手段と、強度が制御された加熱エネルギーを所定の加熱領域(3)に照射して加工予定線(2b)に沿って走査する第1の工程を行う加熱手段(10)と、前記第1の工程の加熱領域(3)の相対的移動方向の後方に位置する所定の冷却領域(4a)に冷熱エネルギーを照射して、加工予定線(2b)に沿って走査し、スクライブ線を形成する第2の工程を行う冷却手段(30)と、前記第2の工程の冷却領域(4a)の相対的移動方向の後方に位置する所定の再加熱領域(5a)に強度が制御された加熱エネルギーを照射して、加工予定線(2b)に沿って走査してスクライブ亀裂(5b)を形成する第3の工程を行う再加熱手段(20)とを順次に備え、
高脆性非金属材料製の被加工物(1)を線状の加工予定線(2b)に沿ってスクライビングする高脆性非金属材料製の被加工物の加工装置であって、
スクライブ線を成長させたスクライブ亀裂(5b)を所定の深さに形成するために、
δ:スクライブ亀裂(5b)の深さ、
δ :第2の工程の終了後におけるスクライブ線の深さ、
P:第3の工程の再加熱領域(5a)の単位面積当たりの加熱エネルギー量、
A:被加工物(1)の形状特性及び熱特性に依存した比例係数、
m:m≧1の実数係数として、
スクライブ亀裂(5b)の深さ特性式δ=δ +A・P
を満足するように第3の工程の再加熱領域(5a)の単位面積当たりの加熱エネルギー量(P)を調整することを特徴とする高脆性非金属材料製の被加工物の加工装置。
Description:
高脆性非金属材料製の被加工物 加工方法及びその装置

 本発明は、高脆性非金属材料製の被加工 の加工方法及びその装置に関し、特に、熱 力を利用した非金属材料製の被加工物の加 方法及びその装置であって、レーザー光を 加工物表面に集光照射して形成されるスク イブを利用する加工方法及びその装置に関 るものである。

 この種の従来の装置として、特許文献1~ 許文献4などで提案されているものが知られ いる。

 図5に示すものは特許文献1(特開平1-108006 公報)により提案されているものであり、図 において符号101はガラスにて代表される高 性非金属材料製の被加工物であり、被加工 101の加工予定線103の端部位置に硬質工具等 て切欠き102(初期亀裂)を入れ、切欠き102の くでレーザービームによる熱源104を照射す 。被加工物101を熱源104で局部的に加熱し続 ると仮想等温線105の接線方向に熱応力が作 するので、切欠き102の先端から熱源104の方 に亀裂106が発生する。従って、熱源104を加 予定線103に沿って移動させれば亀裂106が熱 104に追従し、脆性材料製の被加工物101が所 の形状に割断できることになる。

 図6に示すものは特許文献2(特開平5-32428号 公報)により提案されているものである。こ 方法にあっては、先ず、高脆性非金属材料 の被加工物111の表面部に図6(a)に示すように い吸収率を有する紫外線レーザー光L1を集 させ、その集光点を加工予定線(113)に沿って 移動させる。これにより、集光点近傍でアブ レーションが生じ、被加工物111の一部が蒸散 して図6(b)に示すように浅いスクライビング 112が形成される。続いて、被加工物の一部 除去された細長いこの溝112に沿って被加工 111に高い吸収率を有する赤外線レーザー光L2 を図6(c)に示すように照射し、浅いスクライ ング溝112に発生する熱応力によってスクラ ビング深さを図6(d)に示すように分断する。

 図7に示すものは特許文献3(特表平8-509947 公報)により提案されているものであり、高 性非金属材料製の被加工物121の加工予定線 おいて表面から内部に至る亀裂を形成して 断するに当たり、加工予定線上にレーザー 等の加熱帯域になる加熱ビーム122を移動さ ながら照射し、その後、加熱ビーム122によ て照射された加熱領域に対し、加熱ビーム1 22の後方に位置する冷却ノズルから噴射させ 冷却媒体によって冷却させて冷却帯域123を 成し、V=k×a(b+l)/δ1よって規定される速度で 断させるものである。

 これにより、冷却条件及び割断速度に関 する加熱ビーム122のパラメータの選択によ て与えられた特性の被加工物121に必要な深 の盲亀裂124(以下、「ブラインドクラック」 という。)(スクライビング)を形成させること ができる。また、この加工法にあっては、被 加工物121の表面近傍のみに加熱及び冷熱を与 えることで実施可能なので、割断速度の高速 化が実現できるとしている。

ここで、V:ビームスポット及び被加工物121の 対的な移動速度
    k:被加工物121の材料の熱物理特性及び ームの出力密度
    a:被加工物121の材料の表面上の加熱ビ ムスポットの横方向長さ
    b:被加工物121の材料の表面上の加熱ビ ムスポットの縦方向長さ
    l:加熱ビームスポットの後端縁から冷 帯域133の前端縁までの距離(以下、「加熱・ 却間距離」という。)
    δ1:ブラインドクラックの深さ

 特許文献4(特表2003-534132号公報)に記載され 加工法は、図8に示すように被加工物131にミ ロ割れを生成する第1のステップ、レーザー ビームを被加工物131に照射して加熱する第2 ステップ、レーザー照射された熱影響領域 に冷却ノズルから冷媒を噴霧して冷却する 3のステップ、及び冷却領域背後の場所に所 の力を作用させて完全破断させる第4のステ ップを順次に実行することで構成されたもの である。ここで、第4のステップで作用させ 所定の力とは、図10によれば、機械的な破断 器ツール(ギロチン型破断機等)、図9に符号188 で示される膨張可能な溝用空気袋(ステージ 掘られた溝に埋め込まれたチューブ状の袋) シャッタを通過した二重破断ビーム又は単 TEMビーム(割断予定線の周囲に与える熱衝撃 力)である。装置としては、ブラインドクラ クを生成する第1のステップから第3のステッ プを一体にした一体化クラッキング装置の前 方に、被加工物131を予熱するレーザー・スク ライビング加速装置が具備されている。

特開平1-108006号公報

特開平5-32428号公報

特表平8-509947号公報

特表2003-534132号公報

 特許文献1記載の発明にあっては、切欠き 102の近くからレーザービームによる熱源104を 照射するのみであり、被加工物101を切り開く ように割断ラインの亀裂先端が加工表面に対 して垂直方向に向くため、僅かな熱バランス の変動により加工予定線103に対し割断ライン がずれることがある。また、被加工物101の軟 化点温度を越えない範囲で熱源104を照射する ため、亀裂106を急速に進展させるための十分 な熱応力が発生し難い。そのため、割断速度 を高速化することができないと共に、被加工 物101のサイズが大きくなるにつれて割断速度 が小さくなる傾向がある。加えて、亀裂深さ を正確に制御することはできないなどの技術 的課題がある。

 特許文献2記載の発明は、アブレーション によって蒸散した被加工物111の微粉末が被加 工物111の表面や加工装置の内部に飛散・付着 して、後工程の障害となる恐れがあるので、 微粉末の除去装置等の付帯設備が必要になっ てくる。また、浅いスクライビング溝112の表 面はアブレーションとはいえ、熱改質されて 断面強度や品位が低下する等の恐れがあり、 切断面の強度や品質に重大な悪影響を及ぼす 可能性がある。更に、浅いスクライビング溝 112の先端形状によっては、加工予定線に正確 に沿う切断が困難になり、また、被加工物101 の軟化点を超えない上限のパワーを有する赤 外線レーザー光を照射しても、熱応力が不十 分でスクライビング溝112が深化しない可能性 がある。

 特許文献3記載の発明は、特許文献1,2記載 の発明の問題は解決しているが、ブラインド クラック124の深さを任意に変えることが不可 能である。本発明者等は、例えば同一被加工 物121の加工途中でブラインドクラック124の深 さを変える場合、移動速度V、加熱ビーム122( 熱帯域)の縦・横方向長さa,b、加熱・冷却間 距離l、或いはビームの出力密度kの何れか一 又は複数のパラメータを変更・制御する必 があるを知得した。この中では移動速度Vの 変更が最も簡便であると思われるが、これに よって被加工物121の表面が受ける加熱熱量及 び冷却熱量が変動してしまう。従って、過熱 により被加工物121の表面が溶融したり、逆に 熱量不足によって十分な熱応力が発生しなく なる現象や、加熱・冷却間距離lが適正値か 外れる等の現象が生じ、ブラインドクラッ 124自体が形成されなくなる。結果的に、同 被加工物121の加工中に、ブラインドクラッ 124深さを任意に変更することは不可能であ 。ちなみに、ブラインドクラック124深さの 更は、加工予定線を交差させるために必要 あり、また、被加工物121の端部付近を割断 る場合、ブラインドクラック124が垂直に形 されずに湾曲することがあるので、深さを えたりする必要性がある。

 加えて、ブラインドクラックを被加工物 全厚さに入れることができない。従って、 然であるが、全厚さに渡ってブラインドク ック深さを任意に制御することができない の問題がある。

 特許文献4記載の発明にあっては、被加工 物の全厚さに渡ってブラインドクラックの深 さを任意に制御することは不可能であるとい う技術的課題がある。なぜなら、一体化クラ ッキング装置は、ある一定の深さ(通常、板 の半分以下)のブラインドクラックを入れる とは可能であるが、ステップ4の補助切断装 置では何れの方法であっても最終的に分断す ることを可能であっても、当該ブラインドク ラックを成長させて途中で止めることができ ないからである。

 また、第3のステップとして、レーザー照 射された熱影響領域内に冷却ノズルから冷媒 を噴霧して冷却し冷却領域を生成するため、 冷却領域の前後部分に渡る単一の加熱領域が 生成されることになり、1つの被加工物の加 中において冷却領域の後部の加熱領域(再加 領域)のみの加熱エネルギーの量を同一面積 としたまま任意に調整することができない。 勿論、前部の加熱領域(加熱領域)の加熱エネ ギーの量を同一面積かつ同一量に維持しな ら、後部の加熱領域(再加熱領域)の加熱エ ルギーの量を同一面積としながら増減調整 ることもできない。

 加えて、構成される補助切断装置の内、非 触で行える二重破断ビーム又は単一TEMビー による熱衝撃力は、安定した破断面品質を るのが困難等の技術的課題もある。
 特許文献4では、シャッタによってレーザー 光を一部遮断し、パワー調整を行っているた め、被加工物に照射されるレーザー光の照射 面積が変動する。このため、被加工物を完全 破断させずに所定深さにまでスクライビング を正確に行うことが困難である。

 本発明は、上述した課題を解決するため なされたもので、ガラス、セラミック或い 半導体材料等の高脆性非金属材料に複数の 熱エネルギーと冷熱エネルギーとを組み合 せて照射し、被加工物の欠損を生じさせず 該材料中に発生する熱応力によってスクラ ブ亀裂を所望する方向に進展させ、かつ、 クライブ亀裂を所定の深さに形成できるフ キシブルで実用的な非金属材料の加工方法 びその装置を提供することを目的としてい 。その構成は、次の通りである。

 請求項1記載の発明は、高脆性非金属材料製 の被加工物1を線状の加工予定線2bに沿ってス クライビングするとき、
強度が制御された加熱エネルギーを所定の加 熱領域3に照射して、加工予定線2bに沿って走 査する第1の工程と、前記第1の工程の加熱領 3の相対的移動方向の後方に位置する所定の 冷却領域4aに冷熱エネルギーを照射して、加 予定線2bに沿って走査し、スクライブ線を 成する第2の工程と、前記第2の工程の冷却領 域4aの相対的移動方向の後方に位置する所定 再加熱領域5aに強度が制御された加熱エネ ギーを照射して、加工予定線2bに沿って走査 してスクライブ亀裂5bを形成する第3の工程と を順次に備える高脆性非金属材料製の被加工 物の加工方法において、
スクライブ線を成長させたスクライブ亀裂5b 所定の深さに形成するために、
δ:スクライブ亀裂5bの所定深さ、
δ :第2の工程の終了後におけるスクライブ線の さ、
P:第3の工程の再加熱領域5aの単位面積当たり 加熱エネルギー量、
A:被加工物1の形状特性及び熱特性に依存した 比例係数、
m:m≧1の実数係数として、
スクライブ亀裂5bの深さ特性式δ=δ +A・P
を満足するように第3の工程の再加熱領域5aの 単位面積当たりの加熱エネルギー量Pを調整 ることを特徴とする高脆性非金属材料製の 加工物の加工方法である。
 請求項2記載の発明は、前記第1の工程の前 、被加工物1の加工予定線2bの少なくともス ライビング開始端部に、微小亀裂2aを形成す る微小亀裂形成工程を行うことを特徴とする 請求項1の高脆性非金属材料製の被加工物の 工方法である。
 請求項3記載の発明は、前記第1の工程が、 熱エネルギーとしてCO レーザーを用い、CO レーザーの照射によって被加工物1の軟化点 り低い温度で加熱領域3を加熱すると共に、 熱領域3の形状が、加工予定線2bの接線方向 長い楕円形状をなし、かつ、前記楕円形状 相対的移動方向の後部にエネルギー密度を く分布させることを特徴とする請求項1又は 2の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方 である。
 請求項4記載の発明は、前記第2の工程が、 の微粒子を含む空気流を放射して被加工物1 冷熱エネルギーを与えると共に、空気流の 分量が、前記第1の工程の加熱エネルギーの 照射によって昇温した被加工物1の被加工面 室温程度にまで冷却させるに足る潜熱量を し、かつ、前記第2の工程の終了後に被加工 に残存する水の微粒子の全てが前記第3の工 程の加熱エネルギーによって蒸発するように 設定されていることを特徴とする請求項1,2又 は3の高脆性非金属材料製の被加工物の加工 法である。
 請求項5記載の発明は、前記第3の工程が、 熱エネルギーとして再加熱用のCO レーザーを用い、再加熱用のCO レーザーの照射によって被加工物1の軟化点 り低い温度で加熱すると共に、再加熱領域5a の形状が加工予定線2bの直角方向に長い楕円 状をなし、かつ、前記楕円形状の相対的移 方向の前部にエネルギー密度を多く分布さ ることを特徴とする請求項1,2,3又は4の高脆 非金属材料製の被加工物の加工方法である
 請求項6記載の発明は、前記第1の工程の加 エネルギーとして用いるCO レーザーの出力が、適正にスクライブ線を形 成するために、30~300Wの範囲に維持する条件 満たすと共に、a1は加熱領域3の楕円の短軸 さ、b1は加熱領域3の楕円の長軸長さ、hは被 工物1の板厚として、
a1=(1~40)×h、及びb1=(10~100)×h
の関係を満たし、かつ、前記CO レーザーが、焦点位置を被加工物1の被加工 の内部に合わせた状態で加工予定線2bに対し 相対的移動方向の前方から斜めに入射するこ とを特徴とする請求項3,4又は5の高脆性非金 材料製の被加工物の加工方法である。
 請求項7記載の発明は、前記第3の工程の再 熱領域5aが、前記第2の工程の冷却領域4aの相 対的移動方向の後方に(0~10)×10 -3 mの範囲の距離を隔てた位置として形成され かつ、加熱エネルギーとして用いる前記再 熱用のCO レーザーの出力が100~1000Wの範囲に調整・維持 する条件を満たすと共に、a2は再加熱領域5a 楕円の短軸長さ、b2は再加熱領域5aの楕円の 軸長さ、hは被加工物1の板厚として、
a2=(4~25)×h、及びb2=(10~60)×h
の関係を満たし、かつ、前記再加熱用のCO レーザーがその焦点位置を被加工面の内部に 合わせた状態で加工予定線2bに対し相対的移 方向の後方から斜めに入射することを特徴 する請求項5又は6の高脆性非金属材料製の 加工物の加工方法
 請求項8記載の発明は、前記第2の工程の冷 領域4aの加工予定線2bの直角方向の幅が、前 第1の工程のCO レーザーによる加熱領域3の楕円の短軸長さa1 より大きく、かつ、前記第3の工程の再加熱 のCO レーザーによる再加熱領域5aの楕円の長軸長 b2より小さいことを特徴とする請求項7の高 性非金属材料製の被加工物の加工方法であ 。
 請求項9記載の発明は、ステージ6上の高脆 非金属材料製の被加工物1を線状の加工予定 2bに沿ってスクライビングするとき、
強度が制御された加熱エネルギーを所定の加 熱領域3に照射して、加工予定線2bに沿って走 査する第1の工程と、前記第1の工程の加熱領 3の相対的移動方向の後方に位置する所定の 冷却領域4aに冷熱エネルギーを照射して、加 予定線2bに沿って走査し、スクライブ線を 成する第2の工程と、前記第2の工程の冷却領 域4aの相対的移動方向の後方に位置する所定 再加熱領域5aに強度が制御された加熱エネ ギーを照射して、加工予定線2bに沿って走査 する第3の工程とを順次に備える高脆性非金 材料製の被加工物の加工方法において、
第3の工程を行う再加熱手段20が、レーザー発 振装置20を備え、レーザー発振装置20から射 されるレーザー光21の照射によって被加工物 1の再加熱領域5aを加熱し、スクライブ線を成 長させたスクライブ亀裂5bを所定の深さに形 すると共に、
スクライブ亀裂5bを所定の深さに形成するた に行うレーザー光21による加熱エネルギー 量の調整が、再加熱領域5aの形状、面積及び 加熱エネルギー分布の割合を変更させずに、 レーザー発振装置20からのレーザー光21の出 を増減調節して行い、スクライブ亀裂5bを所 定の深さに形成した被加工物1をロボットに ってステージ6から一体として搬出し、その 、スクライブ亀裂5bに沿って被加工物1を分 し、複数枚の部材を得ることを特徴とする 脆性非金属材料製の被加工物の加工方法で る。
 請求項10記載の発明は、被加工物1の加工予 線2bの少なくともスクライビング開始端部 、微小亀裂2aを形成する微小亀裂形成手段と 、強度が制御された加熱エネルギーを所定の 加熱領域3に照射して加工予定線2bに沿って走 査する第1の工程を行う加熱手段10と、前記第 1の工程の加熱領域3の相対的移動方向の後方 位置する所定の冷却領域4aに冷熱エネルギ を照射して、加工予定線2bに沿って走査し、 スクライブ線を形成する第2の工程を行う冷 手段30と、前記第2の工程の冷却領域4aの相対 的移動方向の後方に位置する所定の再加熱領 域5aに強度が制御された加熱エネルギーを照 して、加工予定線2bに沿って走査してスク イブ亀裂5bを形成する第3の工程を行う再加 手段20とを順次に備え、
高脆性非金属材料製の被加工物1を線状の加 予定線2bに沿ってスクライビングする高脆性 非金属材料製の被加工物の加工装置であって 、
スクライブ線を成長させたスクライブ亀裂5b 所定の深さに形成するために、
δ:スクライブ亀裂5bの深さ、
δ :第2の工程の終了後におけるスクライブ線の さ、
P:第3の工程の再加熱領域5aの単位面積当たり 加熱エネルギー量、
A:被加工物1の形状特性及び熱特性に依存した 比例係数、
m:m≧1の実数係数として、
スクライブ亀裂5bの深さ特性式δ=δ +A・P
を満足するように第3の工程の再加熱領域5aの 単位面積当たりの加熱エネルギー量Pを調整 ることを特徴とする高脆性非金属材料製の 加工物の加工装置である。

 独立請求項1,10記載の発明によれば、被加 工物を相対移動させながら、一連の工程つま り第1の工程から第3の工程を被加工物に順次 体的に作用させると共に、第3の工程の加熱 エネルギーの量をスクライブ亀裂の深さ特性 式に従って増減調整するので、第1の工程及 第2の工程の適用によって加工予定線に沿っ 形成した亀裂状のスクライブ線を第3の工程 の適用によって所望する任意の深さに制御し ながら、より深いスクライブ面を有するスク ライブ亀裂に比較的高速度で進展させる効果 が得られる。特に、第1の工程の加熱領域に 与する加熱エネルギーの量を同一面積かつ 一量に維持しながら、同一面積に維持した 部の再加熱領域の加熱エネルギーの量を増 調整することにより、亀裂状のスクライブ を任意の深さのスクライブ亀裂に進展させ ことが可能になる。スクライブ線を成長さ たスクライブ亀裂は、第3の工程の加熱エネ ギーの量をスクライブ亀裂の深さ特性式に って増減調節して、高精度に所望の深さに 成することができる。

 また、被加工物を蒸散させてスクライビ グするのではなく、熱応力によって安定的 切り開いて行くので、材料欠損による割断 境の悪化(微粉末の飛散等)や割断面強度・ 面品位の低下を防ぐことができる。更に、 加工物の端部を加工する場合、従来の技術 は加工予定線に対して実際の加工線が逸脱 湾曲し易いが、本発明によればスクライブ さを任意に制御することができるので、加 予定線に沿った加工線の軌道を加工途中で 修正できる効果を奏する。

 請求項2記載の発明によれば、加工予定線 の少なくともスクライビング開始端部に入れ た微小亀裂を起点として、スクライビングが 進展し易くなる効果がある。

 請求項3記載の発明によれば、第1の工程が 加熱エネルギーとしてCO レーザーを用いてなされると共に、加熱領域 の形状が、加工予定線の接線方向に長い楕円 形状をなし、かつ、楕円形状の相対的移動方 向の後部にエネルギー密度を多く分布させる 。これにより、簡単かつ正確に所定温度ひい ては所定圧縮応力を有する楕円形状の加熱領 域を形成することができ、第2の工程の冷却 域の適用によって形成されるスクライブ線 確実に安定して生成できる効果を奏する。 なわち、縦長の加熱レーザービームの照射 より、加工予定線の近傍に圧縮応力が生じ その直後に冷熱エネルギーを照射すること 加熱領域が急激に冷却されるため、大きな 張応力が発生し、加工予定線に沿って安定 にスクライブ線が進展する。加工予定線の なくともスクライビング開始端部に微小亀 を入れれば、この微小亀裂に大きな引張応 が発生し、加工予定線に沿って安定的にそ 亀裂が進展する。

 請求項4記載の発明によれば、第2の工程 、水の微粒子を含む空気流を放射して被加 物1に冷熱エネルギーを与えてなされるから 簡単に所定温度ひいては所定引張応力を有 る冷却領域を形成することができる。しか 、空気流の水分量が、第1の工程で昇温した 被加工物の被加工面を室温程度にまで冷却さ せるに足る潜熱量を有し、かつ、第2の工程 終了後に被加工面に残存する水の微粒子の てが第3の工程の加熱エネルギーによつて蒸 するように設定されているので、所定引張 力を有する冷却領域の形成と被加工面に水 が残存することに伴う品質低下の防止とが 良好に両立する。

 請求項5記載の発明によれば、第3の工程が 加熱エネルギーとして再加熱用のCO レーザーを用いてなされると共に、再加熱領 域の形状が、加工予定線の直角方向に長い楕 円形状をなし、かつ、楕円形状の相対的移動 方向の前部にエネルギー密度を多く分布させ る。これにより、簡単かつ正確に所定温度ひ いては所定圧縮応力を有する楕円形状の加熱 領域を形成することができ、第2の工程の冷 領域の適用によって形成されるスクライブ の成長深さを簡単かつ正確に制御すること できる。すなわち、加工予定線に沿って進 し始めたスクライブ線に対し横長の加熱レ ザービームを照射するとスクライブ線先端 辺が集中的に圧縮応力場となり、スクライ 線先端を深さ方向に進展させるだけの曲げ ーメントが容易に発生する。このスクライ 深さは曲げモーメントの大きさによって制 することができるので、この横長の加熱レ ザービームのパワー(第3の工程の再加熱領域 の単位面積当たりの加熱エネルギー量)を調 することで所望の深さのスクライブ面を有 るスクライブ亀裂が得られる。

 請求項6記載の発明によれば、CO レーザーの焦点位置を被加工物の被加工面の 内部に合わせた状態で第1の工程の加熱領域 所定の大きさにし、かつ、加熱エネルギー して用いるCO レーザーの出力を30~300Wの範囲に維持するこ により、第2の工程で所定引張応力を有する 却領域を形成しながらスクライブ線が適正 形成される。CO レーザーを加工予定線に対し相対的移動方向 の前方から斜めに入射させれば、第2の工程 冷熱エネルギーの付与が支障なくなされる

 請求項7記載の発明によれば、再加熱用のCO レーザーの焦点位置を被加工物の被加工面の 内部に合わせた状態で第3の工程の再加熱領 を所定の大きさにし、かつ、再度の加熱エ ルギーとして用いるCO レーザーの出力を100~1000Wの範囲に調整・維持 することにより、第2の工程で形成されるス ライブ線が適正に所望する深さに成長する CO レーザーを加工予定線に対し相対的移動方向 の後方から斜めに入射させれば、第2の工程 冷熱エネルギーの付与が支障なくなされる

 請求項8記載の発明によれば、第2の工程の 却領域の加工予定線2bの直角方向の幅が、第 1の工程のCO レーザーによる加熱領域の楕円の短軸長さよ り大きく、かつ、第3の工程の再加熱用のCO レーザーによる再加熱領域の楕円の長軸長さ より小さいので、加熱領域の全体を冷却領域 によって冷却し、かつ、冷却領域の全体を再 加熱領域によって加熱するように、適正な大 きさの冷却領域を形成しながら、スクライビ ングが良好になされる。

 請求項9記載の発明によれば、請求項1,10 載の発明と同様の効果を得ることが可能で ることに加え、次の効果を奏することがで る。(第2の)レーザー発振装置から射出され レーザー光(再加熱ビーム)のパワーを調整す る場合、基本的にビームプロファイルは変わ らず全体的なパワーのみが変化することにな る。つまり、第3の工程の再加熱領域の形状 面積には変化は生じない。このため、再加 領域と冷却領域の相対位置に変化がなく、 裂状のスクライブ線に作用する引張応力つ り亀裂を開口させる力をパワーのみに依存 て変えることが可能となる。従って、亀裂 開口させる力をレーザー光(再加熱ビーム)の パワーに応じて連続的にコントロールできる ことになり、スクライブ亀裂を所望する所定 深さに形成させることが容易になる。

 そして、スクライブ亀裂の深さを被加工 1の場所によって適正な異なる深さに形成し ておけば、スクライブ亀裂を深い箇所と浅い 箇所とが混在する所定の深さに形成した被加 工物をロボットによってステージから一体と して搬出し、その後の工程でスクライブ亀裂 に沿って被加工物を分断し、複数枚の部材を 得ることができる。その結果、被加工物のハ ンドリングの容易さと後工程での分断の容易 さとが良好に両立する。

本発明の1実施の形態に係る高脆性非金 属材料製の被加工物の加工方法の原理を示す 斜視図。 同じく加工装置の全体を示す斜視図。 同じく加工状態を示す説明図。 同じくレーザーエネルギー密度-スクラ イビング深さの特性を示す線図。 従来の切断方法を示す説明図。 他の従来の加工方法を示し、図6(a)はレーザ 照射を示す説明図、図6(b)はCO レーザー照射を示す説明図、図6(c)はスクラ ビング孔を示す説明図、図6(d)は薄板ガラス 切断を示す説明図。 別の従来の加工方法を示す斜視図。 更に他の従来の加工方法を示す斜視図 同じく更に他の従来の加工方法を示し 図9(a)は膨張状態を示す図、図9(b)は非膨張 態を示す図。 同じく更に他の従来の加工方法を示す 説明図。

 以下、この発明の一実施形態を図1~図4を参 して説明する。
 図中において符号1は切込み生成つまりスク ライビングの加工対象となる脆性材料製の基 板状の被加工物であり、ガラスにて代表され る非金属材料によって製作されている。通常 、被加工物1(脆性非金属材料製の被加工物)は 、透明体である。被加工物1は、ステージ6上 交換可能に載置され、直線状に設定される 工予定線2bに沿って切断するために、第1の 程として形成する加熱領域3、第2の工程と て形成する冷却領域4a及び第3の工程として 成する再加熱領域5aの各中心が加工予定線2b に間隔を置いて順次に設定され、必要に応 、被加工物1の被加工面の少なくともスクラ イビング開始端部に微小亀裂2aを施す微小亀 形成工程を行う。加熱領域3と再加熱領域5a は間隔を置いて生成され、また、加熱領域3 及び再加熱領域5aは、被加工物1の軟化点より 低い温度で加熱する。

 ステージ6には、図2に示すように微小亀 2aを施すための亀裂生成手段40、加熱領域3を 生成するための加熱手段の要部となる第1の ーザー発振装置10、その後に冷却領域を生成 するための冷却手段30及び更にその後に加熱 域を再度生成するための再加熱手段の要部 なる第2のレーザー発振装置20が一体的に装 される。すなわち、亀裂生成手段40、第1の ーザー発振装置10、冷却手段30及び第2のレ ザー発振装置20が加工系用ステージ(図示せ )に設定され、この加工系用ステージ又は基 戴置用のステージ6の少なくとも一方は駆動 装置(図示せず)を備え、それによって被加工 1及びステージ6と加工系(つまり加熱領域3、 冷却領域4a及び再加熱領域5a)が加工予定線2b 沿って矢印A1方向に連続的相対移動をする。

 この加工系(加熱領域3、冷却領域4a及び再 加熱領域5a)を加工予定線2bに沿って矢印A1方 に一体的に相対移動させるために、第1のレ ザー発振装置10、冷却手段30及び第2のレー ー発振装置20が加工系用ステージ(図示せず) 設置されるのみならず、ビームエキスパン ー12,22、赤外線用ミラー13,23及びシリンドリ カルレンズ14,24、更に冷却手段30についても 工系用ステージに設置させ、一体的に保持 せる。第1,第2のレーザー発振装置10,20は、別 個独立のレーザー発振装置であり、個別にレ ーザー光のパワー(加熱エネルギー密度(単位 積当たりの加熱エネルギー量))を増減調節 ることができる。

 亀裂生成手段40は、図2に示すよう駆動機 がなく、被加工物1との接触により自由に回 転する回転刃を有する。この亀裂生成手段40 、被加工物1への加工系による加工開始前に 加工予定線2bの延長線上に沿って被加工物1の 外側から矢印A1方向に相対移動つまり走査さ 、被加工物1の加工予定線2bの少なくともス ライビング開始端部に、微小亀裂2aを形成 ればよく、スクライビング開始端部にスク イビングのきっかけとなる初期亀裂を形成 せ、亀裂生成後に加工予定線2bから速やかに 退避させる。しかして、亀裂生成手段40を用 て必要に応じて行う微小亀裂形成工程は、 熱領域3を形成する第1の工程の前に、被加 物1の被加工面のスクライビング開始端部(図 2上で被加工物1の左端)に、必要に応じて微小 亀裂を施す工程として実施される。

 第1のレーザー発振装置10は、図2に示すよ うに第1のレーザー光である赤外線レーザー 11を射出する。第1のレーザー発振装置10から 射出される赤外線レーザー光11は、赤外線レ ザー用エキスパンダー12を通過して長軸ビ ム径を調整され、赤外線用ミラー13によって 反射してシリンドリカルレンズ14を透過した 、被加工物1に照射され、被加工物1が楕円 状に局部的に加熱される加熱領域3を生成す 。その際、赤外線レーザー光11の焦点が被 工物1の内部に位置し、かつ、レーザー光11 ビームがビームの相対的移動方向(矢印A1方 )の前方から斜めに照射されるように調整す 。すなわち、被加工物1に照射される部分の 赤外線レーザー光11は、平面視で、加工予定 2b上に位置している。

 この被加工物1に形成される加熱領域3は 赤外線レーザー光11によって加熱されて圧縮 応力を有する領域であり、シリンドリカルレ ンズ14によって赤外線レーザー光11のビーム 状を楕円に集光され、長軸を加工予定線2b方 向に合致させて照射される。加熱領域3の短 幅は、シリンドリカルレンズ14で制御するた め、長軸幅の調整用としてビームエキスパン ダー12を使用する。

 加熱領域3を生成する赤外線レーザー光11に 、例えば波長10.6μmのCO レーザーを使用する。そして、CO レーザーの照射によって被加工物1の軟化点 り低い温度で加熱するに当たり、CO レーザーを照射する領域の形状が加工予定線 2bの接線方向に長い楕円形状とし、かつ、楕 形状の後部に、前部に比較してエネルギー 度を多く分布させることが望ましい。第1の 工程は、所定の領域に強度が制御された加熱 エネルギーを照射するように、加工予定線2b 沿って赤外線レーザー光11を走査して行う

 そして、第1の工程の加熱エネルギーとして 用いるCO レーザーの出力は、適正に亀裂状のスクライ ブ線を形成し、第3の工程までの実施によっ 所望する深さの破断面を有するスクライブ 裂5bを形成するために、30~300Wの範囲に維持 る条件を満たすように第1のレーザー発振装 10に設定する。また、a1は加熱領域3の楕円 短軸長さ、b1は加熱領域3の楕円の長軸長さ hは被加工物1の板厚として、
a1=(1~40)×h、及びb1=(10~100)×h
の関係を満たすように設定する。

 冷却手段30は、水補給槽32から配管31を通 て供給される水と、エアコンプレッサー34 ら配管33を通じて供給される圧縮空気とを混 合して霧状の冷却媒体35となし、この霧状の 却媒体35をノズルから被加工物1の加熱領域3 の直後に吹出すことで加工予定線2b上の被加 物1が冷却されて引張応力を有する冷却領域 4aを生成する。冷却領域4aは、相対的移動方 A1の加熱領域3の後方に局所的に生成される とが望ましく、特に、加熱領域3の短軸長さ 度に相対的移動方向A1に延在させることが ましい。水、圧縮空気共に、調整弁(図示せ )によって流量を増減調整できる。液晶パネ ルなどのデバイスの切断では、水滴の付着が 問題となることもあるので水の供給量は少な い方が望ましく、従ってノズル先端は細い方 がよい。相対的に移動する冷却領域4aによっ 被加工物1の加工予定線2b上に発生した引張 力が微小亀裂2aを亀裂先端4bの位置に進行さ せる。この亀裂がスクライブ線になる。被加 工物1の材料により、微小亀裂2aを省略した場 合でも、加熱領域3及び冷却領域4aを順次に形 成することにより、微小亀裂2aと同様の亀裂 被加工物1の端部から進展させることも可能 な場合がある。

 冷熱エネルギーとして水を噴霧した微粒 を含む空気流を放射(放出)するに当たって 、水分量を適正に設定することが望まれる すなわち、第1の工程の加熱エネルギーの照 によって昇温した被加工物1の被加工面を室 温程度に十分冷却させるに足る潜熱量を有す る水分量を与え、かつ、第2の工程の終了後 被加工物1の被加工面、少なくとも加工予定 2b又はその付近に残存する水の微粒子が第3 工程の加熱エネルギーによって全て蒸発す 程度に抑えた水分量とすることが望ましい 第2の工程は、第1の工程の加熱エネルギー 照射する領域の後方に位置して、冷熱エネ ギーを照射・供給して加工予定線2bに沿って 走査する。

 熱応力を利用する非金属材料の赤外線レ ザーの照射によるスクライビングは、被加 物1の表面部が圧縮応力場となり、次いで冷 却媒体によって冷却領域を形成して引張応力 を誘起し、この応力が材料の引張り強度を超 えたときに起こる。

 第2のレーザー発振装置20は、赤外線レーザ 、例えば波長10.6μmの再加熱用のCO レーザーを射出する。第2のレーザー発振装 20から射出される第2のレーザー光であるレ ザー光21は、赤外線レーザー用エキスパンダ ー22を通過して長軸ビーム径を調整され、赤 線用ミラー23によって反射してシリンドリ ルレンズ24を透過した後、被加工物1に照射 れ、被加工物1が楕円形状に局部的に加熱さ る再加熱領域5aを生成する。その際、赤外 レーザー光21の焦点が被加工物1の内部に位 し、かつ、レーザー光21のビームがビームの 相対的移動方向(矢印A1方向)の後方から斜め 照射されるように調整する。すなわち、被 工物1に照射される部分の赤外線レーザー光2 1は、平面視で、加工予定線2b上に位置してい る。また、再加熱領域5aの前端と冷却領域4a 後端との間には、所定の間隔距離を設ける うに調整することが望まれる。この所定の 隔距離は、具体的には0~10mmの距離とする。

 しかして、再加熱領域5aは、赤外線レー ー光21によって被加工物1の軟化点より低い 度で加熱させてスクライブ線の先端である 裂先端4bを切り開く領域であり、シリンドリ カルレンズ24によって赤外線レーザー光21の ーム形状を楕円に集光され、長軸を加工予 線2bの直角方向に合致させて照射される。再 加熱領域5aの短軸幅は、シリンドリカルレン 24で制御するため、長軸幅の調整用として ームエキスパンダー22を使用する。この再加 熱領域5aを生成する第3の工程は、強度が制御 された加熱エネルギーを所定の再加熱領域5a 照射して加工予定線2bに沿って走査して行 。

 第3の工程は、加熱エネルギーとして再加熱 用のCO レーザーを用い、かつ、再加熱用のCO レーザーの照射によって被加工物1の軟化点 り低い温度で加熱するに当たり、冷却領域4a に付与される冷熱エネルギーによるスクライ ブ線の形成作用を殆ど減殺しないように選択 された距離だけ離した位置に照射し、かつ、 照射する領域の形状を加工予定線2bの直角方 に長い楕円形状とし、かつ、楕円形状の進 方向前部に、後部に比較してエネルギー密 を多く分布させる。第3の工程の加熱エネル ギーは、その全体の量(出力)を増減調節する とにより、第1の工程及び第2の工程の実施 よって形成されたスクライブ線を所望する さに進展させてスクライブ亀裂5bを形成する ことができる。

 そして、第3の工程の再加熱領域5aは、第2の 工程の冷却領域4aの相対的移動方向A1の後方 (0~10)×10 -3 mの範囲の距離を隔てた位置として形成させ かつ、加熱エネルギーとして用いる再加熱 のCO レーザー(赤外線レーザー光21)のビームの出 が100~1000Wの範囲に調整・維持する条件を満 すように設定する。また、a2は再加熱領域5a 楕円の短軸長さ、b2は再加熱領域5aの楕円の 長軸長さ、hは被加工物1の板厚として、
a2=(4~25)×h、及びb2=(10~60)×h
の関係を満たすように設定する。

 冷却領域4aと再加熱領域5aとの位置関係は 、実際には、再加熱エネルギー量が最も少な いエネルギー量で所定深さのスクライブ亀裂 5bを形成することができる位置関係を実験的 求める。被加工物1の板厚や単板であるか貼 り合わせガラスからなる被加工物1であるか よって後工程で完全切断できるスクライブ 裂5bの深さひいては冷却領域4aと再加熱領域5 aとの位置関係が異なるので、実験的に求め るを得ない。

 また、第2の工程の冷却領域4aはほぼ円形状 なし、冷却領域4aの加工予定線2bの直角方向 の幅及び接線方向の幅が、いずれも第1の工 のCO レーザーによる加熱領域3の楕円の短軸長さa1 より大きく、かつ、第3の工程の再加熱用のCO レーザーによる再加熱領域5aの楕円の長軸長 b2より小さく設定する。また、楕円形状を す再加熱領域5aの長軸長さb2は、加熱領域3の 短軸長さよりも大きく、再加熱領域5aの短軸 さは加熱領域3の長軸長さよりも小さい。

 なお、赤外線レーザー光11の照射に際し は、被加工物1の軟化点を超えるような密度 熱を加えると冷却された後に熱応力が残留 てしまい材料のスクライブ亀裂5bの形成を 御不能にしてしまうため、加熱しすぎない 慮が必要である。また、加熱領域3の後方に 成される冷却領域4a及び冷却領域4aの後方に 生成される再加熱領域5aは、上述したように 1の工程として形成する加熱領域3、第2の工 として形成する冷却領域4a及び第3の工程と て形成する再加熱領域5aの各中心が加工予 線2b上に間隔を置いて反相対的移動方向A1に 次に設定されている状態をいう。

 次に作用について説明する。
 先ず、被加工物1をステージ6上に載置させ 必要に応じて微小亀裂形成工程を行う。す わち、被加工物1の被加工面の加工予定線2b スクライビング開始端部に微小亀裂を施し スクライビングを円滑に開始させると共に 円滑に継続させる。また、第1のレーザー発 装置10から赤外線レーザー光11を射出させ、 第2のレーザー発振装置20からレーザー光21を 出させ、また、冷却手段30から冷却媒体35を 吹き出させる状態にする。

 この状態から、右端位置にあるステージ6 を反矢印A1の方向に相対移動させ、加工系(加 熱領域3、冷却領域4a及び再加熱領域5a)を加工 予定線2bに沿って相対的移動方向(矢印A1方向) に一体的に相対移動させる。これにより、赤 外線レーザー光11が被加工物1の加工予定線2b 左端から局所的に照射され始め、赤外線レ ザー光11が照射された被加工物1の箇所に、 加工物1の軟化点より低い所定温度にまで上 昇した加熱領域3が生成される。微小亀裂2aが 形成されている場合には、微小亀裂2aを含む 分から赤外線レーザー光11が局所的に照射 れ始める。加熱領域3では、加熱中心に比較 強い圧縮応力が発生し、その外周には緩衝 を挟んで弱い引張応力が発生する。加熱領 3の大きさは、微調整機構を持つ図示しない 支持台を介して加工系用ステージに設置され るシリンドリカルレンズ14により任意に変更 ることができる。

 引き続き、ステージ6の相対移動により、 加熱領域3つまりレーザー光11の照射領域の直 後に、水と空気が冷却手段30内で混合されて 状をなす冷却媒体35が被加工物1の加工予定 2bの左端(微小亀裂2a)から噴霧され始め、冷 領域4aを作成する。これにより、比較的強 引張応力が発生し、強い応力集中が局所的 生じるため、被加工物1の引張強度を超え、 部から生じた亀裂が亀裂先端4bへと進行し める。この進行する亀裂はスクライブ線で る。亀裂状のスクライブ線は、被加工物1の 面付近に形成され、被加工物1が切断される ことはない。微小亀裂2aが形成されている場 には、微小亀裂2aの鋭利な先端箇所に強い 張応力が発生し、微小亀裂2aの先端内部に強 い応力集中が生じるため、被加工物1の引張 度を容易に超え、微小亀裂2aが亀裂先端4bへ 安定的に進行し始め、スクライブ線が生成 れる。

 引き続き、ステージ6の相対移動により、 冷却領域4aつまり冷却媒体35の噴霧領域から 当な距離を置いて、赤外線レーザー光21が被 加工物1の加工予定線2bの左端(微小亀裂2a)か 局所的に照射され始め、被加工物1の軟化点 り低い所定温度にまで上昇した再加熱領域5 aが生成される。再加熱領域5aでは、一旦冷却 された被加工物1を再度加熱することになり しかも加工予定線2bと直角方向に長い圧縮応 力場となるため、亀裂先端4b及びその付近と る被加工物1の内部に大きな曲げ応力が生じ 、亀裂先端4bが被加工物1の内部方向つまり深 さ方向に進展し始める。すなわち、スクライ ブ線が亀裂先端4b位置に進行し更に再加熱領 5aに達することにより、スクライブ線が深 方向にも進展し、所定のスクライブ深さの クライブ亀裂5bが得られる。

 第1の工程での赤外線レーザー光11による 長の加熱ビーム(加工予定線2bに対し接線方 に細長い楕円形状のビーム)の照射により、 加工予定線2bの近傍に圧縮応力が生じ、その 後に第2の工程での冷熱エネルギーを照射つ まり当てることで加熱領域が冷却領域4aに達 て急激に冷却されるため、加工予定線2bの 始端部(必要に応じて入れた微小な亀裂)に大 きな引張応力が発生し、加工予定線2bに沿っ 安定的にその亀裂が進展し始め、スクライ 線が形成される。その進展し始めた亀裂つ りスクライブ線に対し第3の工程での横長の 加熱ビーム(加工予定線2bに対し直交方向に細 長い楕円形状のレーザー光21)を照射するとス クライブ線の先端周辺つまり亀裂先端周辺が 広い面積に亘って圧縮応力場となり、亀裂を 深さ方向に進展させるに足る曲げモーメント が発生する。この亀裂深さは曲げモーメント の大きさによって制御することができるので 、この横長の加熱ビームのパワーを調整する ことで所望の深さの亀裂が連続するスクライ ブ亀裂5bが得られる。この加熱ビームのパワ の調整は、照射面積を同一に維持しながら 3の工程として単独で行うことができると共 に、1つの被加工物1の加工予定線2bに対する 工の途中でも単独で行うことができる。ス ライブ亀裂5bの深さの変更は、加工予定線を 交差させるために必要があり、また、被加工 物1の端部付近をスクライブする場合には、 クライビングが垂直になされずに湾曲する とがあるので、深さを変えて湾曲を抑えた することがある。

 更に、被加工物1を完全に分断させずに、ス クライブ亀裂5bの深さを所望する所定の深さ 止めるメリットについて説明する。
 ガラス板あるいはパネルからなる被加工物1 を最後には所定形状の複数のパネル(部材)に かく分断する際、レーザー光11,21の照射に って完全に分断してバラバラにするより、 クライブ線を成長させたスクライブ亀裂5bの 深さを所望する途中で止めて一部を残して一 体化させたままとし、後工程でバラバラにす る方がハンドリングしやすい場合がある。し かしながら、スクライブ亀裂5bが深過ぎる場 には、被加工物1の次工程へのロボットによ る移送途中などのハンドリング時にスクライ ブ亀裂が進行し、被加工物1が不用意に分断 れることがあり、逆にスクライブ亀裂5bが浅 過ぎる場合、後工程で分断させ難くなり、一 体化させることがかえつて手間になることが ある。その場合、分断工程まで被加工物1が 体化を維持するように、1枚の被加工物1の場 所に応じてスクライビング深さを変えておけ ば、最適なハンドリングひいては能率的な処 理が可能となる。

 すなわち、スクライブ亀裂5bを所定の深 に変化させて形成した被加工物1をロボット よってステージ6から一体として搬出し、そ の後、スクライブ亀裂5bに沿って被加工物1を 分断し、複数枚の基板(部材)を得るようにす 。例えば、移送途中でスクライブ亀裂5bの さが進行し分断し易い場所はスクライブ亀 5bを浅く形成しておき、分断しにくい場所は スクライブ亀裂5bを深く形成しておく。これ より、ハンドリングの容易さと後工程での 断の容易さとが良好に両立する。

 図4は、3種類の板厚(0.7mm,0.5mm,0.3mm)のガラス 板からなる被加工物1について再加熱領域5a 生成する赤外線レーザー光21のパワー(レー ー光21のエネルギー密度)に対するスクライ ング深さ(スクライブ亀裂5bの深さ)を求めた 試験結果の一例を示す。具体的には、約0.02~0 .22(W/mm )の範囲のエネルギー密度のレーザー光21を照 射した。これは、第2のレーザー発振装置20の パワーを50Wから200~250Wの範囲で調節して実現 きる。

 これにより、ガラス基板の板厚に係わらず 外線レーザー光21のエネルギー密度を約0.02W /mm から約0.09~0.22W/mm に向けて増加させるにつれて、スクライビン グ深さ(スクライブ亀裂5bの深さ)が連続的に きくなり、ガラス基板が分断に至るまでの で、スクライビング深さ(スクライブ亀裂5b 深さ)を任意に変化させることができること 分かる。すなわち、第3の工程での赤外線レ ーザー光21のパワー(エネルギー密度)の増減 更により、再加熱領域5aの圧縮応力、つまり は亀裂先端4b(スクライブ線の内端部)に作用 る曲げ応力を任意に制御できることを意味 ている。但し、再加熱領域5aを生成するため に加熱エネルギーとして用いる再加熱用のCO レーザーのビームの出力は、上述したように 第2のレーザー発振装置20のパワーを100~1000Wの 範囲に調整・維持すればよい。

 実験によれば、第3の工程の赤外線レーザー 光21による加熱エネルギー密度P(再加熱領域5a の単位面積当たりの加熱エネルギー量)によ て、スクライブ亀裂5bの深さδは、次式で関 付けられることが見出された。すなわち、 =δ +A・P (スクライブ亀裂5bの深さ特性式)
ここで、δ:スクライブ亀裂5bの深さ(所望する 所定深さ)、
    δ :第2の工程の終了後におけるスクライブ線の さ、
    P:第3の工程の加熱エネルギー密度(再加 熱領域(5a)の単位面積(mm )当たりの加熱エネルギー量)、
    A:被加工物(1)の形状特性及び熱特性に 存した比例係数、
    m:m≧1の実数係数

 このスクライブ亀裂5bの深さ特性式におけ パラメター、すなわち、第2の工程の終了後 おけるスクライブ線の深さδ 、被加工物1の形状特性及び熱特性に依存し 比例係数A、並びに実数係数mは、以下の実験 的な手順にて決定することができる。なお、 被加工物1の形状特性とは、被加工物1の厚さ 外にパネル構造の違いによるものを含む。 ネル構造になった貼り合わせガラスからな 被加工物1は、ガラス同士を接着させるシー ル材を有しているが、そのシールのパターン によってスクライブ亀裂5bの深さが異なつて る。被加工物1の熱特性とは、比熱の他、熱 伝導率、熱膨張率等を含む。但し、再加熱領 域5aの大きさ及び形状は、1枚の被加工物1の 理において変化させず同じである。

 実際には、加工対象である被加工物1に対し て、次の手順1~3を実施する。
 予め、形成すべきスクライブ亀裂5bの深さδ を定める。スクライブ亀裂5bの深さは、完全 断を行うか否か、また、次工程の割断工程 の割断手段やロボットによる移動中の割れ 止を図る観点から全厚を考慮して定まる。 定の厚さ(全厚)の被加工物1に対して、所定 相対移動速度で所定の深さのスクライブ亀 5bを形成するとき、スクライブ線の深さδ を手順1)にて求める。スクライブ線の深さδ は、形成すべきスクライブ亀裂5bの深さδか ほぼ定まる。

手順1)所望する所定相対移動速度において、 1及び第2の工程の加工条件を実験的に決定 、第2の工程終了後におけるスクライブ線の さδ を求める。ここで、第1の工程の加工条件と 、加熱エネルギー量と加熱領域3の大きさ及 形状で決まる。第2の工程の加工条件とは、 冷熱エネルギー量及び加熱領域3と冷却領域4a との位置関係等をさす。

手順2)次に、当該相対移動速度における手順1 で求めた加工条件において、第3の工程の再 熱領域5aの単位面積当たりの加熱エネルギー 量P(赤外線レーザ光パワー)を実験的に変化さ せ、加熱エネルギー密度に換算した適当な代 表値(P ,P ・・・)に対する、スクライブ亀裂5bの深さδ ・・・)を求める。再加熱領域5aの単位面積当 たりの加熱エネルギー量Pは、加工予定線2bに 対して所定位置の走査線上でのものである。

手順3)手順1及び手順2で求めたδ (第2の工程の終了後におけるスクライブ線の さ)、並びに(P )、(P )・・・をスクライブ亀裂5bの深さ特性式δに てはめ、最小自乗法により比例係数A及び実 数係数mを算出する。

 実験によって得られた図4の3種類の板厚に して、それぞれスクライブ線の深さδ 、比例係数A、及び実数係数mを求め、表1にま とめた。表1より、スクライブ亀裂5bの深さδ 、3種類の板厚ともに、適合率Rが0.98以上で ることから、δ=δ +A・P の式でほぼ関係付けられることが分かる。こ れらの特性式から、それぞれ所定の相対移動 速度(180mm/sec,310mm/sec,370mm/sec)において第2の工 の終了後における所定のスクライブ線の深 δ が得られるとき、第3の工程の赤外線レーザ (CO レーザー)の加熱エネルギー量P(W/mm )を適当な値に調整することで、所望するス ライブ亀裂5bの深さδが得られることが分か 。つまり、1枚の被加工物1に対する処理の 中で加熱エネルギー量Pを変化させて、スク イブ亀裂5bの深さδを調整変更することがで きる。

 表2は、2種類のレーザー光11,21のビームパラ メータ、及びガラス基板(被加工物1)の板厚を 変更して、スクライビング方法を試験した結 果をNo.1~21に集約したものである。第1の工程 の加熱エネルギーとして用いるCO レーザーのパラメターを前方加熱ビームパラ メターとし、第3の工程での加熱エネルギー して用いるCO レーザーのパラメターを後方加熱ビームパラ メターとし、第2の工程の冷却領域4aの後端縁 と第3の工程の再加熱領域5aの前端縁との間の 距離を冷熱-後方加熱ビーム間距離とし、被 工物1及びステージ6と加工系(つまり加熱領 3、冷却領域4a及び再加熱領域5a)との連続的 対移動速度を走査速度としてある。

 これにより、無アルカリガラス製のガラ 基板(1)の各板厚(1.1mm,0.7mm,0.63mm,0.5mm,0.3mm,0.2mm 及び0.05mm)におけるスクライブ深さ(スクライ 亀裂5bの深さδ)は、楕円形状をなすレーザ 光11,21のビーム寸法(a1,b1、a2,b2)、第1,第2のレ ーザー発振装置10,20のビームパワー(出力)、 却領域4aと再加熱領域5aとの距離、及びスク イビング速度(走査速度)に影響されるだけ なく、これらのパラメータ間の特定な関係 あることが分かる。

 被加工物1の厚さにもよるが、切断面(ス ライブ亀裂5b)が被加工物1の裏面にまで伸展 れば、加工予定線2b上に進行方向前側から 次に加熱領域3、冷却領域4a及び再加熱領域5a を生成させながら、加熱領域3、冷却領域4a及 び再加熱領域5aと被加工物1とに相対移動を与 えることで、被加工物1を完全に分断するこ が可能になる。切断面(スクライブ亀裂5b)の 展によっては被加工物1が完全に切断されな い場合(被加工物1を完全に切断させない場合 含む)には、その後の工程で被加工物1にブ イク力を作用させ、被加工物1を切断面(スク ライブ亀裂5b)に案内させて切断する。

 ところで、特許文献4では、シャッタによ ってレーザー光を一部遮断し、加熱エネルギ ー量の調整を行っているが、再加熱ビーム( ーザー光21)の加熱エネルギー量の調整は、 ャッタによる加熱エネルギー量の調整に比 てより効果的である。その理由は次の通り ある。

 第2のレーザー発振装置20から射出される ーザー光21(再加熱ビーム)のパワー調整を第 2のレーザー発振装置20の出力調整で行う場合 、基本的にビームプロファイルは変わらず全 体的な加熱エネルギー量(第3の工程の加熱エ ルギー密度(再加熱領域5aの単位面積当たり 加熱エネルギー量))のみが変化して被加工 1に照射されることになる。つまり、同じ相 移動速度において、第3の工程の再加熱領域 5aの形状、面積及びレーザー光21の照射エネ ギー分布の割合に変化は生じない。このた 、再加熱領域5aと冷却領域4aとの相対位置に 化がなく、スクライブ線の先端に作用する 張応力つまり亀裂を開口させる力をパワー( 再加熱領域5aの単位面積当たりの加熱エネル ー量)のみに依存して変えることが可能とな る。従って、スクライブ線を開口させる力が パワー(再加熱領域5aの単位面積当たりの加熱 エネルギー量)に応じて連続的にコントロー できることになり、一本のスクライブ亀裂5b を所望する深さに変化させながら形成させる ことが可能になる。一方、シャッタにより加 熱エネルギー量を調整する場合、レーザービ ームが一部カットされるので、ビームプロフ ァイルひいては照射形状、面積が変化する。

 このように、シャッター調整は、加熱エ ルギー量と同時にビームプロファイルが変 するので、再加熱領域5aと冷却領域4aとの位 置関係が急激に変わる。これによって、亀裂 状のスクライブ線に作用する引張応力の変動 、消滅等が起こりやすく、スクライブ亀裂を 所望する深さに形成することが困難になる傾 向にある。

 すなわち、シャッタによって再加熱用の ーザー光21の後側(冷却領域4aから遠い側)又 前側を遮蔽又は開放することによる被加工 1への加熱エネルギー量の調整は、1つの被 工物1の一本のスクライブ亀裂5bの加工途中 の適用に困難を伴う。なぜなら、レーザー 21の後側又は前側を遮蔽又は開放することに よる加熱エネルギー量の増減調整は、レーザ ー光21の後端縁部又は前端縁部を移動させる とになるため、被加工物1とレーザー光21と 相対移動をさせながら、更にレーザー光21 照射による再加熱領域5aと冷却領域4aとの相 関係を変化させて、正確にスクライブ亀裂 進展させる作業に困難を伴う。