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Patent Searching and Data


Title:
MICROBE COMPLEX
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/078438
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided is a means to deliver viable microbes to the intestinal tract by a simple method without genetically engineering the microbe. For this purpose, a complex (aggregate) of a microbe such as lactobacillus, a polysaccharide and a fusion peptide, wherein a peptide that has the ability to bind to the surface of the above microbe and a peptide that has the ability to bind to the above polysaccharide have been linked, for example, a fusion protein of the peptidoglycan-binding domain of peptidoglycan hydrolase and the starch-binding domain of amylase, is formed. Preferably, this complex is coated with amylose or starch.

Inventors:
KATAKURA YOSHIO (JP)
TARAHOMJOO SHIRIN (IR)
SHIOYA SUTEAKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/072979
Publication Date:
June 25, 2009
Filing Date:
December 17, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV OSAKA (JP)
MEIJI DAIRIES CORP (JP)
KATAKURA YOSHIO (JP)
TARAHOMJOO SHIRIN (IR)
SHIOYA SUTEAKI (JP)
International Classes:
C12N1/20; C07K19/00; C12N9/26; C12N15/09
Other References:
"Abstracts of the 59th Annual Meeting of the Society for Biotechnology, Japan", August 2007, article TARAHOMJOO S ET AL.: "Construction of whole cell biocatalysts based on the cell surface adhesive enzymes.", pages: 89
BOSMA T ET AL.: "Novel surface display system for proteins on non-genetically modified gram-positive bacteria.", APPL. ENVIRON. MICROBIOL., vol. 72, 2006, pages 880 - 889, XP002569980, DOI: doi:10.1128/AEM.72.1.880-889.2006
RAHA A R ET AL.: "Cell surface display system for Lactococcus lactis: a novel development for oral vaccine.", APPL. MICROBIOL. BIOTECHNOL., vol. 68, 2005, pages 75 - 81, XP002374776, DOI: doi:10.1007/s00253-004-1851-8
RODRIGUEZ-SANOJA R ET AL.: "Microbial starch-binding domain.", CURR. OPIN. MICROBIOL., vol. 8, 2005, pages 260 - 267, XP004936708, DOI: doi:10.1016/j.mib.2005.04.013
LIAN W-C ET AL.: "Viability of microencapsulated bifidobacteria in simulated gastric juice and bile solution.", INT. J. FOOD MICROBIOL., vol. 86, 2003, pages 293 - 301, XP002437472, DOI: doi:10.1016/S0168-1605(02)00563-9
LEENHOUTS K ET AL.: "Anchoring of proteins to lactic acid bacteria.", ANTONIE VAN LEEUWENHOEK, vol. 76, 1999, pages 367 - 376, XP002493781, DOI: doi:10.1023/A:1002095802571
CRITTENDEN R ET AL.: "Adhesion of Bifidobacteria to granular starch and its implications in probiotic technologies.", APPL. ENVIRON. MICROBIOL., vol. 67, 2001, pages 3469 - 3475, XP002963187, DOI: doi:10.1128/AEM.67.8.3469-3475.2001
TARAHOMJOO S ET AL.: "New strategy for enhancement of microbial viability in simulated gastric conditions based on display of starch-binding domain on cell surface.", J. BIOSCI. BIOENG., vol. 105, 3 June 2008 (2008-06-03), pages 503 - 507
YOSHIO KATAKURA ET AL.: "Denpun Ketsugo Domain Hyoso Teiji ni yoru Nyusankin eno Ieki Taisei no Fuyo", JAPAN SOCIETY FOR BIOSCIENCE, BIOTECHNOLOGY, AND AGROCHEMISTRY 2008 NENDO (HEISEI 20 NENDO) TAIKAI KOEN YOSHISHU, 5 March 2008 (2008-03-05), pages 130
"Conferring new functions on lactic acid bacteria with cell surface adhesive proteins", March 2008, DEPARTMENT OF BIOTECHNOLOGY, GRADUATE SCHOOL OF ENGINEERING, OSAKA UNIVERSITY, article TARAHOMJOO S: "A new strategy for enhancement of microbial viability in simulated gastric conditions based on the display of starch binding do...", pages: 43 - 56, 6...
Attorney, Agent or Firm:
SHIMURA, Hisashi (2-3-4 Minamisenba, Chuo-k, Osaka-shi Osaka 81, JP)
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Claims:
 微生物と、多糖類と、前記微生物と前記多糖類に結合可能なペプチドとからなる微生物複合体。
 微生物と、多糖類と、前記微生物の表面に結合する能力を有するペプチド及び前記多糖類に結合する能力を有するペプチドを連結した融合ペプチドとからなる微生物複合体。
 微生物の表面に結合する能力を有するペプチドが、ペプチドグリカンに結合する能力を有するペプチドである請求項1又は2の何れか1項に記載の微生物複合体。
 微生物の表面に結合する能力を有するペプチドが、ペプチドグリカン加水分解酵素のペプチドグリカン結合ドメインである請求項1又は2の何れか1項に記載の微生物複合体。
 前記多糖類が、デンプン、アミロース、ペクチン、セルロース、マンナン、グリコーゲンの何れか1種又は2種以上である請求項1~4の何れか1項に記載の微生物複合体。
 前記多糖類が、デンプン、アミロース、ペクチンの何れか1種又は2種以上であり、多糖類に結合するペプチドが、アミラーゼのデンプン結合ドメインを含むペプチドである請求項1~4の何れか1項に記載の微生物複合体。
 前記微生物が、乳酸菌である請求項1~6の何れか1項に記載の微生物複合体。
 前記複合体が、多糖類及び/又はタンパク質のコーティング層を有する請求項1~7の何れか1項に記載の微生物複合体。
 前記多糖類が、デンプン、アミロース、ペクチン、セルロース、マンナン、アミロースの何れか1種又は2種以上である請求項8に記載の微生物複合体。
 微生物の表面に結合する能力を有するペプチド及び多糖類に結合する能力を有するペプチドを連結した融合ペプチド。
 前記微生物の表面に結合する能力を有するペプチドが、ペプチドグリカン加水分解酵素である請求項10に記載のペプチド。
 前記微生物の表面に結合する能力を有するペプチドが、ペプチドグリカン加水分解酵素のペプチドグリカン結合ドメインである請求項10に記載のペプチド。
 多糖類に結合する能力を有するペプチドが、アミラーゼである請求項10~12の何れか1項に記載のペプチド。
 多糖類に結合する能力を有するペプチドが、アミラーゼのデンプン結合ドメインである請求項10~12の何れか1項に記載のペプチド。
Description:
微生物複合体

 本発明は微生物複合体、具体的には、微 物と多糖類及び前記微生物と前記多糖類に 合可能なペプチドとからなる複合体、さら 詳しく言うと、微生物と多糖類及び前記微 物の表面に結合する能力を有するペプチド び前記多糖類に結合する能力を有するペプ ドを連結した融合ペプチドとからなる複合 に関する。

 近年、プロバイオティクスに関する研究 盛んに行われている。プロバイオティクス は、一般には腸内細菌構成(腸内細菌叢)の ランスを改善することにより、宿主に有益 作用をもたらす生きた微生物と定義されて る。プロバイオティクスの有する機能とし 、免疫活性化作用、便秘・下痢の防止、血 コレステロールの低下作用、血圧降下作用 どが報告されている。そして、プロバイオ ィクスの摂取が病原微生物の侵入を防ぎ、 活習慣病を予防することが期待されている 現在、実用されている代表的なプロバイオ ィクスとして乳酸菌が挙げられる。プロバ オティクスとして利用される微生物に求め れる条件として、宿主の腸内フローラの一 であること、安価かつ容易に取り扱えるこ 、胃液や胆汁酸などに耐えて上部消化管(GIT) を生きた状態で通過して腸内に到達できるこ と、増殖部位である下部消化管(小腸下部、 腸)で増殖可能なこと、食品などの形態で有 な菌数が維持できることなどが挙げられる

 特表2002-511403号公報には、乳酸菌等の微生 が生きたままで下部消化管まで到達可能な ンプンカプセルが開示されている。このデ プンカプセルは、α-アミラーゼなどの酵素 よる加水分解によって内部が多孔質構造と ったデンプン顆粒を微生物で充填し、さら 、そのデンプン顆粒をアミロースによって 覆化したものである。このようなデンプン プセルは、長期間室温で保存できるととも 、活性を保ちつつ腸管にまで到達する。

特表2002-511403号公報

 しかしながら、上記デンプンカプセルで 、デンプンに微生物が被着しなければ、多 質となったデンプン粒子に微生物を取り込 ことが困難であり、デンプンの多孔質構造 取り込まれた微生物が漏れ出る可能性があ 。低pHや胆汁酸下における微生物の生存は ンプンとの結着に依存するものと考えられ が、すべての微生物が好ましいデンプンと 結着能を有しているものでもない。また、 ンプンへの結合能を付与するために、微生 に対して遺伝子工学的手法を用いることも えられるが、消費者の関心からは好ましい 法ではない。

 本発明は上記の背景技術に鑑みてなされ ものであって、微生物に対して遺伝子工学 手法を用いず、簡便な方法で生菌を腸管に で到達させることのできる複合体を提供す ことを目的とするものであり、本発明の微 物複合体は、微生物と多糖類と前記微生物 前記多糖類に結合可能なペプチド、例えば 微生物と多糖類と前記微生物のペプチドグ カンと前記デンプンの両者に結合可能なペ チドとから構成される。

 本発明によると、微生物に胃酸や胆汁酸 対する耐性を付与し、微生物を生きたまま 腸管まで到達させることができる。また、 生物の種類によらず複合体を形成できる。 かも、ペプチドと微生物と多糖類を混合す という極めて簡単な方法により得ることが きる。

ベクターpQCPHの構築を示す図である。 ベクターpQCAの構築を示す図である。 ベクターpQCLSの構築を示す図である。 融合タンパク質の発現カセットの構造 である。 精製した融合タンパク質およびデンプ と融合タンパク質の結合を解析したSDS-PAGE 結果である。レーン1はニッケルキレートカ ムによって精製した融合タンパク質、レー 2はデンプンと反応させた後の上澄液、レー ン3はその対照としてデンプンを除いた場合 、レーン4はイオン交換樹脂により、さらに 製した融合タンパク質であり、レーンMは分 子サイズマーカーである。 Lactobacillus   casei 細胞と融合タンパク質の結合を示すSDS-PAGEの 果である。レーンMは分子サイズマーカー( 5と同じマーカーである。)を、レーン1は融 タンパク質とインキュベートした細胞、レ ン2は融合タンパク質を添加していない細胞 ある。 融合タンパク質を結合させた Lb.   casei 細胞とデンプンが凝集体を形成していること を示す写真である。 人工的な胃の状態における Lb.   casei 細胞の生存率の経時変化を示すグラフである 。△と▲は、それぞれpH3.0における細胞単独 場合とアミロースでコーティングした複合 の場合を示し、□と■は、それぞれpH2.0に ける細胞単独の場合とアミロースでコーテ ングした複合体の場合を示している。

 本発明の微生物複合体は、微生物と多糖 と前記微生物と前記多糖類に結合可能なペ チドとからなる。

 本発明において用いられる多糖類は、1種 類もしくは複数種類の単糖を構成単位とする 有機化合物を指す。その種類は特に限定され るものではなく、例えば、デンプンの他に、 グリコーゲン、ペクチン、アミロース、セル ロース、マンナン、キチンなどが例示される 。用いる多糖類では、微生物が腸内に到達し た時、微生物が複合体から解放されるよう、 その分解酵素が腸管に存在するものが望まし い。具体的には、小腸のアミラーゼで分解さ れるデンプンやグリコーゲン、ペクチン、ア ミロースが例示される。これらの多糖類を用 いれば、上部消化管を通過した後、複合体が 消化され、微生物が複合体から解放される。 また、入手の容易性を考慮すればデンプンが 望ましく用いられる。

 デンプンの種類は特に限定されるもので なく、天然物由来によるデンプンのみなら 、天然デンプンを化学的に処理し、化学修 を行った化学修飾多糖類デンプンのいずれ もよい。本発明の複合体は、食品や医薬の 態として摂取されるものであるので、好ま くは天然のデンプンが用いられる。

 天然のデンプンとしては、トウモロコシ ンプン、ジャガイモデンプン、サツマイモ ンプン、小麦デンプン、米デンプン、タピ カデンプン、ソルガムデンプンなど各種植 から得られるデンプンが例示され、起源と る植物は限定されない。また、デンプン中 含まれるアミロース、アミロペクチン含量 特に問われるものでもなく、高アミロース ウモロコシデンプンのようにアミロース含 を高めたデンプンを用いてもよい。また、 リコーゲン、ペクチン、アミロースについ も、その起源は限定されず、グリコーゲン あれば牡蠣由来のものを用いてもよい。ま 、本発明においては単一の多糖類のみなら 、2種以上の多糖類を用いてもよい。

 デンプンとしては、顆粒状のものが好ま く用いられる。顆粒状のデンプンは、上記 各種デンプンを水に懸濁し、懸濁液から沈 分離することにより得られる。その粒子径 特に制約を受けるものではないが、好まし は整粒されたものを用いるのがよい。その 子径は概ね0.1~100μm程度である。さらに好ま しくは粒子径が0.5~5μm程度のデンプン粒を用 るのが望ましい。微生物菌体に比べて相対 に小さすぎるとデンプンの周囲に微生物が 合できなくなると考えられる。また、粒子 が微生物の菌体に比べて相対的に大きすぎ と、ペプチドを介して微生物が結着した複 体同士の凝集が困難になり、死滅する菌体 多くなると考えられ、いずれにせよ十分な 性を有する複合体が提供できなくなるおそ が強くなる。

 本発明において用いられる微生物も特に制 されるものではないが、プロバイオティク として好ましい乳酸菌やビフィズス菌が例 される。この乳酸菌としては、乳酸桿菌属 連鎖球菌属、ラクトコッカス属、ロイコノ トック属、コリネバクテリウム属、エンテ コッカス属、ビフィドバクテリウム属、ス レプトコッカス属に属する菌、より具体的 は、 Lactobacillus   casei などが例示される。もっとも、プロバイオテ ィクスとして利用できる微生物のみならず、 低pH環境下での保存だけに限らず、その他生 た状態で保存する必要性があれば、それら 微生物を対象とすることもできる。乳酸菌 外には、例えば、バシラス属の微生物、酵 などが例示される。

 本発明では、ペプチドを介在させて多糖 と微生物を結着させているので、このペプ ドとの付着性が重要となる。つまり、本発 に係る融合ペプチドが多糖類と微生物との 着剤の役割を果たす。このペプチドは、具 的には、微生物に結合する能力を有するペ チド(微生物付着ペプチド)と、多糖類と結 可能なペプチド(多糖類結合ペプチド)とを融 合させたものである。本発明において微生物 付着ペプチドとは、微生物の細胞の表面に存 在、もしくはその一部が露出して存在する細 胞膜の構成成分、例えば、膜タンパク質、細 胞壁に局在するタンパク質、細胞壁を構成す るペプチドグリカンやマンナンなどを認識し て、それと結着できるペプチドを意味し、対 象となる微生物の表面に付着できるペプチド であれば、いかなる微生物付着ペプチドであ ってもよい。例えば、乳酸菌の細胞壁に局在 する、ペプチドグリカン加水分解酵素(例え 、"Cell Wall Attachment of a Widely Distributed Pep tidoglycan Bindging Domain Is Hindered by Cell Wall  Constituents", A. Steen et al.,Journal of Biological  Chemistry, Vol.278, No.26, 23874-23881 (2003) 参照) S-layer protein(SlpA)("Surface Display of the Receptor -Binding Region of the Lactobacillus brevis S-Layer P rotain in Lactococccus lactis Provides Nonadhesive Lac tococci with the Ability To Adhere to Intestinal Epi thelial Cells", silja Avall-Jaaslelainen et al., Appli ed and Environmental Microbiology, Vol.69, No.4, 2230- 2236 (2003) 参照)が挙げられる。また、融合ペ プチドでは、微生物付着ペプチドの全部が必 要とされるものではなく、少なくとも微生物 の細胞表面に付着できる本質的な部位、つま り、そのペプチドの表面付着に関与するドメ インを有していればよい。このドメインとし て、例えば、乳酸菌の細胞膜を構成するペプ チドグリカンに付着するペプチドグリカン加 水分解酵素のC-末端にある繰り返し領域(例え ば、同前)やSlpAのN末端領域が例示される。な お、本発明においてペプチドとは、数個のア ミノ酸がペプチド結合した狭義のペプチドの みを意味するものではなく、十数個から数十 のアミノ酸が結合したオリゴペプチドのみな らず、数百程度のアミノ酸が結合したタンパ ク質レベルのものも含む広い概念で用いられ る。つまり、本発明のペプチドは、上記機能 を発揮できる程度のアミノ酸がペプチド結合 したものであればよい。

 一方、本発明では、多糖類との結着によ 微生物を保護する必要があることより、融 ペプチドには多糖類との結合を可能にする プチドが必要とされる。この融合ペプチド は、微生物付着ペプチドと同様に、多糖類 結合可能なペプチドの全部が必要とされる のではなく、少なくとも多糖類を認識でき ドメインがあればよい。このような多糖類 結合可能なペプチドとして例えば、セルロ スに結合するセルロース結合ドメイン(セル ラーゼ類など)、デンプンに結合するアミラ ゼ類のデンプン結合ドメインが例示される

 これら微生物付着ペプチドと多糖類結合 プチドは任意に組み合わせることができ、 合体を形成させる微生物や多糖類の種類等 よって種々の組み合わせが考えられる。融 ペプチドは一般的な遺伝子工学的手法によ て得られる。つまり、微生物付着ペプチド 好ましくはその表面付着ドメインと、多糖 に結合する能力を有するペプチド、好まし はその多糖類結合ドメインのアミノ酸配列 コードする塩基配列を発現ベクターに組み み、それを大腸菌等の適当な宿主で発現さ ることにより得られる。また、融合ペプチ は遺伝子工学的手法を用いずとも、上記の 生物付着能と多糖類結合能を合わせ持つ天 のタンパク質を選び、その全体もしくはそ 一部を用いてもよい。

 本発明の複合体は、得られた融合ペプチド 多糖類と微生物を混合するだけで簡単に得 ことができる。多糖類や融合ペプチド、微 物の濃度は多糖類の粒子径、微生物の種類 目的とする複合体に含まれる菌数等によっ 適宜調整される。その一例を挙げると、1×1 0 9 cfu/mlの菌体に対して、0.1~100 mg/ml、好ましく 2~7 mg/mlのデンプン及び0.01~10 mg/mlの融合ペ チドを混合する。

 複合体の作製は、融合ペプチドと多糖類 微生物を溶液もしくは分散液状で同時に混 してもよいが、まず微生物(菌体の表面)に 合ペプチドを結合させた上で多糖類とを結 させ、そして融合ペプチドが結合した微生 と多糖類の混合比率を調整することによっ 凝集体を形成させるのが好ましい。これに り微生物と多糖類が交互に集合し、生菌を り込んだ凝集体が形成されるものと期待さ るからである。融合ペプチドと微生物との 合やその後のデンプン溶液との混合は微生 が生存できる温度であれば、どのような温 でもよいが、結合力が高まる4℃程度の低温 行うことが望ましい。

 得られた複合体の凝集体は、そのまま食 や医薬品として摂取できるほか、適宜の賦 剤を用いて錠剤や顆粒剤などの任意の剤型 加工したり、チーズやヨーグルト、清涼飲 水などの食品原料として用いることができ 。

 また、得られた凝集体は、デンプン、ア ロース、ペクチン、セルロース、マンナン アミロース、タンパク質など、凝集体(凝集 粒子)を被覆しうる適当な1種又は2種以上の被 覆成分によって適宜コーティングされること もある。これらのうち、被覆成分としては、 デンプン及びα-アミロースが好ましい。デン プンやα-アミロースは胃液中において消化を 受けにくい一方、腸管において容易に酵素処 理されるので、凝集体から微生物の放出が速 やかに行われる。コーティングは、例えば、 得られた凝集体に上記成分の水溶液やエタノ ール等の有機溶媒による溶液をスプレーして 行われる。被覆成分の溶液濃度は適宜調整さ れるが、好ましくは0.1~5%程度である。この結 果、胃液や胆汁酸による耐性がさらに付与さ れる。また、デンプンやアミロースを水に懸 濁して高い温度で処理し、高い濃度で溶解さ せた溶液を調製し、この中に凝集体を入れて 低温に保ち、溶解度を超えたデンプンやアミ ロースを凝集体の表面に沈着させることもで きる。

 得られた複合体は、pH2~3の低pH環境下でも 生存し、耐酸性が付与される。従って、これ らの複合体を食品や医薬品の形態として摂取 することにより、微生物が生菌の状態で下部 消化管にまで達することが期待される。

 〔融合タンパク質の調製〕
 融合タンパク質を発現させる宿主として、 腸菌 Escherichia   coli  XL1-Blue を用い、この大腸菌をLB(Luria-Bertani) 地又はLB寒天培地にて37℃で培養した。

 (ベクターの構築)
 微生物の表面とデンプンに結合可能な融合 プチド(融合タンパク質)を発現させるため T5プロモーターを持つベクターpQE31(Qiagen社) 、 Lactococcus   lactis  IL1403株(Agricultural Research Service Culture Collec tion、NRRL)のペプチドグリカン加水分解酵素(EM BL:AE006264)のペプチドグリカン結合ドメイン(CP H)をコードする遺伝子と、 Streptococcus   bovis  148株のα-アミラーゼのリンカー配列および ンプン結合ドメインをコードする遺伝子を 入した。

 融合タンパク質発現のためのベクターは次 3つのステップにより構築した。まず、 Lc.   lactis  IL1403の染色体DNAからCPH遺伝子をpQE31に組み んだpQCPHを構築した(図1参照)。次にそれに Streptococcus   bovis  148株のα-アミラーゼ(EMBL:AB000830)のリンカー 列およびデンプン結合ドメインをコードす 遺伝子を組み込んだpQCAを構築した(図2参照) 。そして、pQCAから最終目的である融合タン ク質を発現させるための遺伝子カセット(図4 )を組み込んだ発現ベクターpQCLSを構築した( 3参照)。

 1.pQCPHの構築
 ゲノム情報が公開されている Lc lactis  IL1403株の染色体DNAをテンプレートとして、5 '-tgcgcgccatgggtacttctaattccggtggttcaacagcの塩基配列で 示されるcph-F(フォワード:配列番号1)及び5'-gcg gatccttatttaatacgaagatattgaccの塩基配列で示されるc ph-R(リバース:配列番号2)をプライマーとするP CRにより、CPHをコードするDNA断片を調製した Nco Iと Bam HIで消化した、この断片を、同じく Nco Iと Bam HI で消化したpQE31(Qiagen GmbH, Hilden, Germany)に クローニングし、pQCPHを構築した。

 2.pQCAの構築
 5'-tctctcgagaaatcataaaaaatttatttgctttgtgagcgの塩基配 で示されるpch-NF(フォワード:配列番号3)と5'-a a ggatcc cctttaatacgaagatattgaccaattaaaatggの塩基配列で示さ るcph-NR(リバース:配列番号4)をプライマーと るPCRにより、pQCPHのT5プロモーター中にある Xho IサイトからCPH遺伝子の3´末端までを増幅し Xho Iと Bam HIで消化した。pQE31に Streptococcus   bovis  148株のα-アミラーゼがクローニングされたp QEAmy31(東京農業大学 佐藤英一博士から提供:D irect Production of Ethanol from Raw Corn Starch via  Fermentation by Use of a Novel Surface-engineered Y east Strain Codisplaying Glucoamylase and α-Amylase,  Hasayori Shigechi, Eiichi Satoh et al., Applied and  Environmental Microbiology, Vol.70, No.8, 5037-5040 (20 04) 参照)を Xho Iと Bam HIで消化し、PCRで得た断片を連結した。なお 3´末端側のプライマーは、CPH遺伝子の終始 ドンが取り除かれ、α-アミラーゼ遺伝子に Bam HIサイトを介して接続した時、フレームが合 ように作製した。

 3.pQCLSの構築
 pQE31Amyを鋳型として、5'-aa ggatcc gggccaagctagccaagcagctcの塩基配列で示されるプラ マーLink-F(フォワード:配列番号5)と5'-gcg cca attatc tgg gttttggの塩基配列で示されるプライマーLink-R( バース:配列番号6)を用い、α-アミラーゼの 媒ドメインとデンプン結合ドメイン(以下、 SBD)の間のリンカー配列部分をコードする遺 子をPCRによって調製した。pQCAを Bam HIと Bst XIで消化してCD領域とリンカー配列部分をコ ドする遺伝子を除去し、代わりにpQE31Amyを鋳 型としてPCRで調製したリンカー配列部分をコ ードする断片を挿入し、pQCLSを構築した。融 タンパク質を発現させるための遺伝子カセ トの塩基配列を配列番号7に示す。

 pQCLSが導入された大腸菌は、100μg/mlのアン シリン及び15μg/mlのテトラサイクリンを加え たLB培地にて37℃で一晩、培養し、遠心分離 より集菌した。次に、抗生物質を含む新鮮 前記LB培地に菌体を移し、660nmにおける濁度( OD 660 )が0.5となるまで37℃で培養した。その後、イ ソプロピル-β-D-チオガラクトシドを1mMとなる ように前記培地に加え、融合タンパク質の発 現を誘導した。プラスミドの維持のために、 培地には最終濃度400μg/mlのアンピシリンを添 加した。4時間以上、培養した後、集菌した

 〔融合タンパク質の精製〕
 融合タンパク質のN末端のヒスチジンタグと ニッケルキレートカラム(Ni-NTA superflow column (1.5ml), Qiagen社)との相互作用を利用した、金 属アフィニティクロマトグラフィにより、融 合タンパク質を精製した。上記培養培地100ml ら集めた大腸菌の菌体を、結合用緩衝液(50m M NaH 2 PO 4 (pH8),   300mM NaCl, 10mM imidazole)に懸濁し、終濃度が1mg /mlとなるようにリゾチームを添加して、1時 、氷上でインキュベートした。

 細胞を超音波によって破砕し、遠心分離し 上澄液を、前記結合用緩衝液によって平衡 したNi-NTAカラムにアプライした。カラムを 合用緩衝液(50mM NaH 2 PO 4 (pH8),   300mM NaCl, 20mM imidazole)で洗浄した後、溶出用 緩衝液(250mM NaH 2 PO 4  (pH8),   300mM NaCl, 20mM imidazole)で吸着したタンパク質 を溶出した。溶出液は限外濾過により20mM Tri s-HCl緩衝液(pH8.0)に置換し、20mM Tris-HCl緩衝液( pH8.0)で平衡化した陰イオン交換樹脂Super Q 5P Wにアプライし、0~1M NaClの直線濃度勾配によ て溶出させた。融合タンパク質が含まれる 分を集めて限外濾過によって濃縮し、脱塩 た。精製された融合タンパク質の純度は12% SDS-PAGEを行い、Coomasie Brilliant Blue R250で染 して確認した。

 (細胞表面との付着アッセイ)
 得られた融合タンパク質と細胞の付着(結合 )を確認すべく次のアッセイを行った。 Lactobacillus   casei  NRRL B-441 を、MRS培地(Difco Laboratories, Detroit , MI, USA)にて37℃で、OD 660 が1となるまで培養した。細胞を遠心分離に り集菌し、OD 660 が1.5となるよう、0.12mg/mlの前記融合タンパク 質を含むMRS培地に懸濁し、37℃で2時間、穏や かに振とうした。細胞を0.1 Mのリン酸ナトリ ウム緩衝液(pH 7.0)(PB)で洗浄した後、SDS-PAGE用 緩衝液(20%(w/v) glycerol, 125mM Tris-HCl (pH 6.8),  4% SDS, 5%(v/v) β-mercaptoethanol, 0.01% bromophenol  blue)に分散させ、5分間、煮沸した。細胞に結 合した融合タンパク質は、前記と同様の方法 にてSDS-PAGE法にて検出した。

 (デンプンとの結合アッセイ)
 また、得られた融合タンパク質とデンプン 結合を確認すべく次のアッセイを行った。N i-NTAカラムによって精製した融合タンパク質 液(0.06mg/ml in PB) 200μlを、等量のデンプン 粒懸濁液(10mg/ml in PB)と混合し、37℃で3時 、穏やかに振とうした。遠心分離した後、SD S-PAGEにより上澄液中の未結合の融合タンパク 質を検出した。

 〔複合体の形成とマイクロカプセル化〕
 次に、乳酸菌と融合タンパク質とデンプン の複合体を形成させた。複合体の形成は、 ず、乳酸菌と融合タンパク質を上記付着ア セイと同じ条件にて付着させ、その後、デ プン懸濁液と混合してデンプンと結合させ 。すなわち、MRS培地にてOD 660 が1となるまで培養した乳酸菌培養液の1.5 ml 遠心分離して、得られた菌体を0.12mg/mlの融 タンパク質を含むMRS培地に懸濁し、30℃で2 間、インキュベートした。遠心分離した後 PBを加えて懸濁する操作を2回、繰り返して 浄し、未付着の融合タンパク質を除去した そして、細胞濃度が1×10 9  cells/ml(OD 600 =1)となるようにPBに懸濁した。

 等量の前記細胞懸濁液とPBに分散したデ プン粒子懸濁液を混合し、室温で30分間、穏 やかに撹拌してから1時間、放置した。対照 して、デンプンを添加しない場合、および 記細胞懸濁液を添加しない場合でも実験し 。複合体の形成は、肉眼と位相差顕微鏡に る観察により確認した。また、デンプンへ 細胞結合率を、Crittendenらの方法(Crittenden, R. , et al., Adhesion of bifidobacteria to granular sta rch and its implications in probiotic technologies. A pplied and Environmental Microbiology, Vol.67, No.8, 3 469-3475 (2001) 参照)により計測した。

 アミロースによるコーティング(マイクロ カプセル化)は、複合体を1%の馬鈴薯由来のア ミロース溶液(アミロースはシグマ社製)を用 て行った。即ち、10mg/mlのアミロース懸濁液 を、耐圧容器に入れて180℃で1時間、加熱し 室温まで放冷することによりアミロースを 解し、この溶液の0.5mlを複合体と緩やかに混 合し、4℃で一晩、ゲル化させることにより った。

 〔人工胃液中における細胞の生存率の測定
 ペプシンを0.5%の生理食塩水に3mg/mlとなるよ うに溶解し、12M HClでpHを2.0又は3.0に調整し 人工胃液を調製した。人工胃液は濾過した 、滅菌した。微生物複合体(5×10 7 cells)を1mlの人工胃液に混合し、37℃でインキ ベートした。一定時間の間隔で、遠心分離 より人工胃液を除去して、複合体をPBで洗 し、さらに生理食塩水で2回、洗浄した。そ て、複合体を30units/mlのα-アミラーゼ(Megazyme , Bray, Ireland)を含むPBに懸濁し、40℃で20分間 、インキュベートして複合体から細胞を放出 させた。生菌数は、MRS寒天培地上にて37℃で 24時間、培養して計測した。

 〔結果及び考察〕
 (融合タンパク質の発現とその精製)
 大腸菌の培養液の1Lから融合タンパク質の 0.3gが得られ、その75%は可溶性画分に存在し 。SDS-PAGEで測定した分子サイズは、56kDaであ り、理論値と一致した。なお、アフィニティ クロマトグラフィにより精製した試料には、 56kDa以外にも、71kDaおよび73kDaのタンパク質も 含まれていた(図5、レーン1)。また、融合タ パク質のアミノ酸配列を配列番号8に示す。

 トウモロコシ由来のデンプンとの結合実 では、目的の融合タンパク質に加えて、こ らの2つのタンパク質も、ある程度、デンプ ンに結合した(図5、レーン2)。目的の融合タ パク質のみを得るために、上記のとおり陰 オンクロマトグラフィを用いた(図5、レーン 4)。陰イオンクロマトグラフィにより精製し 融合タンパク質は、デンプンと結合したの (図5、レーン2)、デンプンと結合能を有する 活性体であることがわかった。また、図示は しないが、精製した融合タンパク質は、トウ モロコシデンプンだけでなく、馬鈴薯デンプ ンにも結合することを確認した。

 (融合タンパク質と細胞の付着)
  Lb casei  NRRL B-441株の細胞を精製した融合タンパク とインキュベートし、その上清に残存する 合タンパク質をSDS-PAGEによって確認した(図6) 。融合タンパク質は、細胞に付着しているこ とが確認され、Crittendenらの方法によれば、 細胞に6×10 4 分子の融合タンパク質が付着していた。

 (複合体の形成)
 融合タンパク質を付着させた細胞の一定量 対し、デンプンの濃度を変えて、デンプン の結合を調べた。凝集体の大きさを目視で 照と比較した結果を表1に示す。融合タンパ ク質を結合させていない細胞を用いた場合の 凝集の程度は、デンプンのみを用いた対照と 同程度であった。これに対して、細胞に融合 タンパク質を付着させた細胞を用いた場合、 デンプン濃度が2mg/mlでの凝集の程度は対照よ りも強くなり、5mg/mlでは明らかに対照よりも 強くなった。このときの細胞のデンプンへの 結合率は、融合タンパク質を添加しない場合 は4.4%であったのに対し、添加した場合は32% あった。融合タンパク質を添加した場合の 酸菌とデンプンの凝集物の顕微鏡写真を図7 示す。

 (人工胃液中における細胞の生存率)
  Lb.   casei  NRRL B-441株の細胞を融合タンパク質によっ デンプンと結合させ、さらにアミロースで ーティングした複合体を人工胃液で処理し 時の生存率を表2及び図8に示す。遊離の細胞 をpH2.0と3.0で1時間処理した場合の生残率は、 それぞれ0.002%と0.74%であったのに対して、融 タンパク質によってデンプンと結合させア ロースでコーティングした場合、pH2.0と3.0 1時間処理した場合の生残率は、それぞれ6% 64%に上昇した。また、表2に示すように、ア ロースによるコーティングを行わない場合 pH3.0の人工胃液で1時間処理した場合の生存 は11%であった。

 以上のように、融合タンパク質を用いて乳 菌にデンプンとの複合体(凝集体)を形成さ れば、人工胃液における生存率を著しく上 させることが確認できた。また、表2では、 合タンパク質を添加せずとも生存率が上昇 ているが、このことは、すでにWang et al., が報告しているように、低pHの環境下におい てデンプンが存在していること、およびデン プン顆粒と混在していることによるものと考 えられる。また、融合タンパク質を用いずに デンプンとの複合体をアミロースでコーティ ングした場合にも、生存率が上昇しているが 、 Lb.   casei  NRRL B-441株が元々、ある程度、デンプンお びアミロースに結合する能力をもっている めであると考えられる。

 本発明によれば、低pH環境下における微 物の生存率を上昇させることができる。こ ため、低pH環境下にある上部消化管を通過し て、生きた状態で下部消化管に菌体を届ける ことができ、本発明の利用が乳酸菌などのプ ロバイオティックスの応用範囲を広げる。