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Title:
MOLECULE RECOGNIZING MATERIAL AND PROCESS FOR PRODUCING THE MOLECULE RECOGNIZING MATERIAL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/028661
Kind Code:
A1
Abstract:
This invention provides a novel molecule recognizing material, which can realize shape control and can realize excellent selectivity and capture efficiency of a template molecule, and a simple process for producing the molecule recognizing material. The molecule recognizing material is characterized in that it is a core-shell particle comprising a shell layer provided on the surface of a core particle and a template molecule is imprinted on the shell layer. The production process of the molecule recognizing material is characterized by comprising the following steps: (a) the step of introducing an iniferter group into the surface of a core particle, (b) the step of, after step (a), adsorbing a template molecule onto the surface of the core particle, (c) the step of, after step (b), forming a shell layer onto the surface of the core particle.

Inventors:
UGAJIN HIROSHI (JP)
KAWAGUCHI HARUMA (JP)
UENO NORIO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/065526
Publication Date:
March 05, 2009
Filing Date:
August 29, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV KEIO (JP)
SHISEIDO CO LTD (JP)
UGAJIN HIROSHI (JP)
KAWAGUCHI HARUMA (JP)
UENO NORIO (JP)
International Classes:
B01J20/26; B01J13/02; B01J13/04; B82B1/00; B82B3/00; C07K17/02; C08F291/00; G01N30/88; B01D15/08
Foreign References:
JP2003509550A2003-03-11
Other References:
See also references of EP 2198952A4
Attorney, Agent or Firm:
IWAHASHI, Yuji (KanagawaKanagawa-ku, Yokohama-shi, Kanagawa 45, JP)
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Claims:
 コア粒子表面にシェル層を備えたコア-シェル粒子であり、前記シェル層に鋳型分子がインプリントされていることを特徴とする分子識別材料。
 前記コア粒子が、単分散ポリマー微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の分子識別材料。
 前記鋳型分子がタンパク質であることを特徴とする請求項1または2に記載の分子識別材料。
 下記工程を含むことを特徴とする請求項1~3に記載の分子識別材料の製造方法。
(a)コア粒子表面にイニファータ基を導入する工程、
(b)(a)工程後、鋳型分子を前記コア粒子表面に吸着させる工程、
(c)(b)工程後、前記コア粒子表面にシェル層を形成する工程、
を含むことを特徴とする分子識別材料の製造方法。
 さらに、
(d)(c)工程後、前記粒子から鋳型分子を溶出させる工程、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の分子識別材料の製造方法。
Description:
分子識別材料及びその製造方法 関連出願

 本出願は、2007年 8月30日付け出願の日本 特許出願2007-224772号の優先権を主張してお 、ここに折り込まれるものである。

 本発明は分子識別材料及びその製造方法 関し、特にその識別性及び捕捉性の改善に する。

 生体には、例えば、肺の膜が吸入された 気から酸素のみを選り分けるという、いわ る分子識別能が備わっている。このように 子を特異的に識別する能力を人工的に付与 た材料を創り出す試みは、従来盛んに行わ てきた。分子識別材料は、その特定の分子 みを探知、選別、吸着ないし放出させる等 様々な機能の利用において、医療、美容、 品等をはじめとする多岐の分野に応用が予 され、その完成が強く望まれている。

 特に近年、分子識別能力を有する機能性高 子材料の創製に向けた研究が盛んに行われ おり、その開発手法のひとつとして「分子 ンプリント法」への注目が高まっている。
 分子インプリント法とは、分子識別のター ット分子(鋳型分子)とモノマーとの混在下 架橋高分子を作製した後に鋳型分子を取り くことで、その形状や性質といった情報を 分子の網目に記憶させるといった非常に簡 な手法であり、これにより得られた鋳型分 を選択的に吸着(捕捉)することが可能である インテリジェントゲルは高選択的・高感度な 分離やセンサー、触媒などへの応用が期待さ れている。

 例えば、Derekらは、ターゲット分子とし Bovine hemoglobin (BHb)を用い、acrylamide (AAm)と 混在下でpolyacrylamide hydrogelsを作製している( 非特許文献1)。ここで、アクリレート系の窒 含有ポリマーであるPAAmは、水溶性であり安 価、そして容易に生成でき、さらには魅力的 な構造パラメータを有するように設計されて いるため、生体分子をインプリントする基板 として適当であることが報告されている。次 いで、前記polyacrylamide hydrogelsよりBHbを取り くことでゲル内にBHbのインプリント空隙を するHydrogel-based molecularly imprinted polymers (hy dro MIPs)を作製し、これが他の構造類似体に べBHbに対して高い選択性をもつことを示し いる。

 しかしながら、従来の分子インプリント により得られるバルクゲルにおいては、そ インプリント空隙が形成される場を制御す ことは困難であった。3次元網目構造のゲル 内部に形成されたインプリント空隙で鋳型分 子の捕捉を行うには、鋳型分子がゲルに接近 するだけでなく、その内部に侵入することが 必須となる。タンパク質等のある程度分子量 が大きな高分子を鋳型分子に用いた場合、タ ンパク質をゲル内部へ侵入させることは容易 ではない。すなわち、より効率的な鋳型分子 の捕捉を実現するには、インプリント空隙が 材料の最表面もしくはその近傍に制御された 形で存在していることが望ましい。

 そこで、Wangらは、ナノ多孔性アルミナの孔 壁(内壁)にBHbを固定化し、次いでAAmとN,N'-methy lene-bis-(acrylamide)(MBAAm)の混合物で孔内を満た 重合を行った。その後、アルミナ膜を除去 ることで、最表面近傍のみにインプリント 隙を有する細いチューブ状のポリマーを作 し、高い選択性で効率よく鋳型分子を捕捉 ることを実現している(非特許文献2)。
 しかしながら、前記技術はインプリント空 の位置を制御することを可能にしたものの ポリマー粒子の形やサイズはアルミナ孔に って不均一にならざるを得なかった。
 このように、分子認識材料の作製について 従来盛んに研究が続けられているが、粒子 態の制御と、該粒子表面へのインプリント 隙形成とを両立するという問題点が未解決 あるゆえに、いまだ産業利用に至っていな った。
Derek et al., Anal. Chim. Acta, 542, 61-65 (20 05) Wang et al., Anal. Chem, 78, 317-320 (2006)

 本発明はこのような背景において行われ ものであり、形態の制御が可能で、且つ鋳 分子の選択性及び捕捉効率に優れた新規の 子識別材料、及びその簡便な製造方法を提 することを目的とする。

 上記目的を達成するために本発明者らが鋭 検討を行った結果、基材となる粒子表面を リマーからなるシェル層で被覆し、該シェ 層に鋳型分子と相補的なインプリントを施 ことで、粒子表面近傍に分子識別性の高い ンプリント部位を備えた分子識別材料が得 れることを見出し、本発明を完成するに至 た。
 すなわち、本発明にかかる分子識別材料は コア粒子表面にシェル層を備えたコア-シェ ル粒子であり、前記シェル層に鋳型分子がイ ンプリントされていることを特徴とする。
 また、本発明においては、前記コア粒子が 単分散ポリマー微粒子であることが好適で る。
 さらに、前記鋳型分子がタンパク質である とが好適である。

 また、前記分子識別材料の製造方法は、下 工程を含むことを特徴とする。
(a)コア粒子表面にイニファータ基を導入する 工程、
(b)(a)工程後、鋳型分子を前記コア粒子表面に 吸着させる工程、
(c)(b)工程後、前記コア粒子表面にシェル層を 形成する工程。
 前記製造方法は、さらに、
(d)(c)工程後、前記粒子から鋳型分子を溶出さ せる工程、
を含むことが好適である。

 本発明によれば、多様な鋳型分子に対す 選択性および捕捉効率に優れた分子識別材 を容易に得ることができる。また、本発明 かかる分子識別材料は、その分子吸着・放 機能を利用して、例えば、特定物質の精製 不要な物質の選択的な除去、有用な物質を 持・放出する担体としての使用等、様々な 野において応用することができる。また、 来分子識別材料に期待されてきたドラッグ リバリーなどにも利用できる。

本発明にかかる分子識別材料の構造を 式的に表した図である。 N,N-ジエチルジチオカルバミン酸ナトリ ウム三水和物(NaDC)溶液の検量線を示すグラフ である。 透過型電子顕微鏡(TEM)によるSt-VBC-AAm共 合単分散微粒子(SVA粒子)およびN,N-ジエチル チオカルバメート基を導入したSVA粒子(SVA-DC 粒子)の写真である。 SVA-DC粒子のタンパク質吸着量を経時的 示したグラフである。 SVA-DC粒子のタンパク質吸着量をタンパ 質濃度ごとに示したグラフである。 TEMによるシェル層形成後のSVA-DC粒子の 真である。 分子識別粒子の電気泳動移動度(EPM)お び水中粒径を示したグラフである。 TEMによるSVA-DC粒子および、SVA-DC粒子を ア粒子として表面にアクリルアミド(AAm)を20 分重合させたコア-シェル粒子(SVA-A粒子)の写 である。 SVA-A一粒子あたりのウシヘモグロビン(B Hb)吸着量および溶出量を示したグラフである 。 分子識別粒子のタンパク質捕捉能を示 したグラフである。 SVA-DC粒子へのBHb吸着量を示したグラフ である。 SVA-DC粒子、SVA-A粒子、コントロール粒 について、DSLによる水中粒径測定、電気泳 移動度測定の結果を示したグラフである。 コア粒子へのBHb吸着量に対するSVA-A粒 からのBHb溶出量を示したグラフである。 分子識別粒子(MIP)及びコントロール粒 へのBHb吸着等温線を示したグラフである。 BHbをインプリントしたMIPの各種タンパ ク質の吸着挙動を示すグラフである。 吸着系溶媒によるMIPのタンパク質吸着 量の変化を示すグラフである。 BHbをインプリントしたMIPの、タンパク 質2成分系における各種タンパク質の吸着挙 を示すグラフである。 BHbをインプリントしたMIPの、タンパク 質2成分系における各種タンパク質の吸着挙 を時間変化で示したグラフである。

 以下、本発明について詳細に説明する。
 本発明にかかる分子識別材料は、基材とな 粒子に下記処理を施すことにより製造する とができる。図1は各段階の粒子の構造を模 式的に表したものである。
(1)粒子表面へのイニファータ基の導入(図1(A))
(2)粒子表面への鋳型分子(ターゲット分子)の 着(図1(B))
(3)粒子表面におけるリビングラジカル重合に よるシェル層の形成(図1(C))。
(4)鋳型分子の溶出によるインプリント空隙の 形成(図1(D))

 各段階については後述するが、本発明の製 方法を図1に沿って簡約すると、基材粒子に 導入したイニファータ基を開始種とするリビ ングラジカル重合を行い、該粒子表面にポリ マーをグラフト化する。すなわち、本発明に かかる分子識別材料は、基材粒子(コア粒子) 外層にポリマー(シェル層)をグラフトした ア-シェル型粒子を基本構造としている。
 ここで、本発明においては、前記シェル層 グラフトに先立ち、コア粒子に識別の対象 なる鋳型分子を吸着させておくことにより 鋳型分子がシェル層にインプリントされた 子を得ることができる。また、必要に応じ 前記シェル層から鋳型分子を溶出させれば 鋳型分子に相補的なインプリント空隙を備 た分子識別材料を得ることも可能となる。

 以下、本発明の分子識別材料の構造を、上 処理段階に沿って説明する。
(1)粒子表面へのイニファータ基の導入
 まず、基材となる粒子について説明する。
 本発明にかかる分子識別材料の基材として 、後述するイニファータ基の導入が可能な のであれば制限はないが、特に、粒子サイ および形状がほぼ均一な単分散ポリマー微 子を用いることが好ましい。単分散ポリマ 微粒子は、公知の合成方法、例えば、ソー フリー乳化重合法、懸濁重合法、シード乳 重合法といったラジカル重合による合成方 に準じて、モノマーからなる混合物を開始 の存在下で重合させることにより得ること できる。特に、本発明においては、粒径が 御された高純度の粒子が得られる点から、 ープフリー乳化重合による単分散ポリマー 粒子を用いることが好ましい。

 ソープフリー乳化重合法は、イオン性残基 有する開始剤を使用し、これが粒子表面に 荷を与えることで、乳化剤に代わって粒子 安定化させる。また、乳化重合より粒径分 を狭めることができるという利点もある。 発明のように粒子表面に官能基を導入し、 子表面を機能化したり、表面を反応場とし 使用する場合には、特に清浄な表面を有す 粒子を作製することが重要となる。
 ソープフリー乳化重合では、溶媒を水とし 水に不溶のモノマーと、水溶性の開始剤を いる。その粒子発生のメカニズムは、まず 溶性の開始剤が水にわずかに溶解している ノマーと反応して水相で活性オリゴマーを 成する。このオリゴマーは、ある臨界の鎖 で水に不溶となり析出し、粒子の核となる リゴマーミセルを形成する。析出後もオリ マーは成長を続けるが、互いに合一・凝集 て重合体粒子としての特性を満たすように る。油滴として存在していた未反応モノマ はオリゴマーミセルに分配され、重合の場 水相から粒子核へと移り反応が進行する。 応の場が析出粒子に移った段階では、溶解 ノマーと開始ラジカルとの開始反応は重要 はなくなり、たとえ起こったとしても速や に既存の粒子核に吸収され、粒子数は一定 なる。
 微粒子の表面構造は、主として重合開始剤 コモノマーによって制御され、開始剤残基 粒子表面に局在する確率は、微粒子のサイ や高分子の分子量、開始剤残基の極性に依 する。親水性モノマーと疎水性モノマーの ープフリー乳化共重合では、重合中に親水 モノマーユニットが表面に集まり、微粒子 表面に形成される水和構造により安定性を る。

 単分散ポリマー微粒子を形成するモノマー 制限はないが、微粒子表面にイニファータ を導入することを考慮して、側鎖および/ま たは末端に置換基を有するものを1種以上選 しておくことが好適である。
 単分散ポリマー微粒子を構成するモノマー しては、スチレン、α-メチルスチレン、ジ チルスチレン、モノクロロスチレン、ジク ロスチレン、4-ビニルベンジルクロリド、 チレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4- チル-1-ペンテン、1-ヘキセン、ビニルシクロ ヘキサン、シクロブテン、シクロペンテン、 シクロへキセン、アクリルアミド、N,N-ジメ ルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルア ド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルア ミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ヒ ロキシメチルアクリルアミド、N-イソブトキ シメチルアクリルアミド、N-tert-ブチルアク ルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミ ド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、2 -アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン 、メタクリルアミド、アクロイルモルホリ 、アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニル ロリドン、N-ビニルカルバゾール、ビニルピ リジン;アクリル酸、アクリル酸メチル、ア リル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アク リル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、 クリル酸t-ブチル、アクリル酸n-ヘキシル、 アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シク ロへキシル、アクリル酸フェニル、アクリル 酸2-ピリジル、アクリル酸2-エチルヘキシル アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル 酸2-メトキシエチル、アクリル酸2-エトキシ チル、アクリル酸n-ラウリル、アクリル酸n- デシル、アクリル酸n-ステアリル、アクリ 酸ベンジル、アクリル酸テトラヒドロフル リル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸 リル、アクリル酸エチルカルビノール、ジ チルアミノアクリレート、トリメチロール ロパントリアクリレート、1,4-ブタンジオー ジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジア クリレート、ネオペンチルグリコールジアク リレート、ペンタエリスリトールトリアクリ レート、アクリル酸ソーダ、等のアクリル酸 およびアクリル酸エステル化合物;メタクリ 酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エ ル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸 イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタ リル酸t-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、 メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸 シクロへキシル、メタクリル酸フェニル、メ タクリル酸2-ピリジル、メタクリル酸2-エチ ヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピ ル、メタクリル酸2-メトキシエチル、メタク ル酸2-エトキシエチル、メタクリル酸n-ラウ リル、メタクリル酸n-ドデシル、メタクリル n-ステアリル、メタクリル酸ベンジル、メ クリル酸テトラヒドロフルフリル、メタク ル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メ クリル酸エチルカルビノール、ジメチルア ノメタクリレート、トリメチロールプロパ トリメタクリレート、1,4-ブタンジオールジ タクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタ クリレート、ネオペンチルグリコールジメタ クリレート、ペンタエリスリトールトリメタ クリレート、グリセロールメタクリレート、 メタクリル酸ソーダ、等のメタクリル酸およ びメタクリル酸エステル化合物などのラジカ ル重合性モノマーを挙げることができる。
 特に好適なモノマーとして、スチレン、4- ニルベンジルクロリド(VBC)、アクリルアミド 、アクリル酸、グリセロールメタクリレート が挙げられる。また、側鎖および/または末 に置換基を有し、微粒子表面においてイニ ァータ基を導入させるためのモノマーとし は、4-ビニルベンジルクロリド(VBC)、グリセ ールメタクリレート等が好ましい。

 重合開始剤としては、上記粒子合成方法に いてラジカル重合を開始し得るものであれ 特に制限はなく、例えば、過酸化ベンゾイ 等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリ (AIBN)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等 アゾ系化合物の他、過硫酸カリウム、過硫 アンモニウム等の過硫酸系重合開始剤が挙 られる。また、これらの重合開始剤によら とも、光化学反応や、放射線照射等によっ も重合を行うことができる。
 重合温度は使用する開始剤の重合開始温度 より設定し得る。例えば、過酸化物系重合 始剤では、通常70℃程度とすればよい。
 重合時間は特に制限されず、生成する粒子 大きさに合わせて、通常2~24時間程度の間で 適宜調整することができる。

 本発明においては、特に、モノマーとし スチレン(St)、4-ビニルベンジルクロリド(VBC )、アクリルアミド(AAm)を適用した単分散ポリ マー微粒子が好適に用い得る。前記粒子の製 造例を以下に示すが、本発明はこれに制限さ れない。

(製造例)St-VBC-AAm共重合単分散微粒子(SVA粒子)
 撹拌棒、アリーン式冷却管、セラムラバー 攪拌シールを取り付けた300ml四つ口丸底フ スコに、モノマーとしてスチレン(St)2.85g、4- ビニルベンジルクロリド(VBC)0.10g、アクリル ミド(AAm)0.05g、溶媒として水75gを入れ、70℃ 300rpmにて攪拌した。所定温度の恒温槽中で30 分間窒素置換を行った後、開始剤として過硫 酸カリウム(KPS)0.1gを水10gに溶解させたものを 注射器で系内に添加した。その後さらに30分 窒素置換を行い、重合反応を24時間行った 重合終了後のラテックス分散液は13500rpm、12 間、15℃の条件で遠心分離を行い、上澄み デカンテーションにより除去した後、下層 粒子を水で再分散させる操作を4回繰り返し 精製し、粒子分散液を得た。

 上記製造例は、開始剤を過硫酸カリウム し70℃の条件でソープフリー乳化重合を行 ものである。アクリルアミドのモノマーユ ットおよび電荷のある開始剤末端は親水性 あるために成長過程において粒子内部に侵 せず、粒子の表面に留まっている。このた 、得られる微粒子(SVA粒子)は、表面に開始剤 由来の負電荷を有し、静電反発力によって分 散安定性を得ている。また、親水性であるア クリルアミドのモノマーユニットが粒子表面 に存在することで、スチレン由来の疎水的な 場の粒子表面への露出を少なくする、シェル 層導入の際の反応の足場となる、などの役割 が期待できる。

 また、上記製造例を含め、本発明に使用 る基材粒子の形態及びサイズは、分子識別 料の使用目的や識別する分子の性質等によ 、粒子の製造において適宜調整して用いる とができる。本発明の基材粒子として好ま くは、粒径が0.05~2μm、さらに好ましくは0.1~ 0.5μmのほぼ均一な球状粒子である。

 続いて、このように得られた粒子の表面に イニファータ基(iniferter基)を導入する。イ ファータとは、1982年にOtsuらによって提案さ れた、開始剤への連鎖移動(CT)および/または 次ラジカル停止(PRT)能をもつラジカル開始 である。イニファータは、このようなリビ グラジカル重合開始剤としてだけでなく、 制剤、重合停止剤、連鎖移動剤としても機 し、これを利用することにより、後述のシ ル層形成にかかるグラフト重合を制御する とが可能となる。
 すなわち、イニファータ基の導入とは、前 イニファータ機能を有する官能基の導入、 いては、シェル層形成の開始種を導入する とを意味する。

 リビングラジカル重合の開始種となるイニ ァータ基としては、光、熱、または金属錯 の添加によりラジカルを生じる官能基があ 。
 紫外線によりラジカルとなる官能基(光イニ ファータ)の例として、N,N-ジメチルジチオカ バメート基、N,N-ジヒドロキシエチルジチオ カルバメート基、N,N-ジメチルフェニルジチ カルバメート基、N-メチル-N-エチルジチオカ ルバメート基、N-メチル-N-ヒドロキシエチル チオカルバメート基、N-メチル-N-メチルフ ニルジチオカルバメート基、N-エチル-N-ヒド ロキシエチルジチオカルバメート基、N-エチ -メチルフェニルジチオカルバメート基、N- ドロキシエチル-N-メチルフェニルジチオカ バメート基等が挙げられる。
 熱によりラジカルとなる官能基(熱イニファ ータ)の例として、1,1,2,2-テトラフェニルエタ ン誘導体があり、例えば1-メチル-1,1,2,2-テト フェニルエチル基、1-エチル-1,1,2,2-テトラ ェニルエチル基、1-ヒドロキシ-1,1,2,2-テトラ フェニルエチル基、1-メトキシ-1,1,2,2-テトラ ェニルエチル基、1-エトキシ-1,1,2,2-テトラ ェニルエチル基、1-ベンジルオキシ-1,1,2,2-テ トラフェニルエチル基、1-シアノ-1,1,2,2-テト フェニルエチル基、1-カルボキシエチル-1,1, 2,2-テトラフェニルエチル基、1-トリメチルシ リルオキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエチル基等 が挙げられる。
 また、金属錯体の添加によってラジカルを 成する、原子移動ラジカル重合(ATRP)による 始種の官能基としては、ハロゲン化アルキ 誘導体があり、ハロアルカン類、ハロケト 類、ハロニトリル類、ハロエステル類、ハ アルキルベンゼン類などがある。

 本発明においては、いずれの種類のイニ ァータ基を導入することも可能であるが、 温下で重合反応を進めることのできる点で 特に光イニファータ基の適用が好ましい。 イニファータ基の場合、加熱により重合が 始されることから、タンパク質を鋳型分子 した際に熱変性を誘起してしまうことがあ 。

 粒子表面への上記イニファータ基の導入は 粒子の有する置換基と、イニファータ基を するイニファータ化試薬とを、水系溶媒中 おいて撹拌下で反応させることにより行な れる。反応後、溶媒を除去すれば、表面に ニファータ基を備えた粒子を得ることがで る。
 イニファータ化試薬としては、例えば、カ バメート系化合物、アミノキシル化合物、 レン化合物、ジセレニド化合物およびジフ ニルエタン誘導体が挙げられる。

 カルバメート系化合物としては、例えば、N ,N-ジエチルジチオカルバメート、n-ブチル-N,N -ジメチルジチオカルバメート、ベンジルジ オカルバメート、ベンジル-N,N-ジメチルジチ オカルバメート、ベンジル-N,N-ジエチルジチ カルバメート、チウラムモノスルフィド、N ,N’-ジメチルチウラムモノスルフィド、N,N,N ,N’-テトラメチルチウラムモノスルフィド N,N’-ジエチルチウラムモノスルフィド、N,N ,N’,N’-テトラエチルチウラムモノスルフィ 、チウラムジスルフィド、N,N-ジメチルチウ ラムジスルフィド、N,N,N’,N’-テトラメチル ウラムジスルフィド、N,N’-ジエチルチウラ ムジスルフィド、N,N’-ジメチルチウラムテ ラスルフィド、N,N,N’,N’-テトラエチルチウ ラムジスルフィド、p-キシレンビス(ジチオカ ルバメート)、p-キシレンビス(N,N-ジメチルジ オカルバメート)、p-キシレンビス(N,N-ジエ ルジチオカルバメート)、1,2-ビス(N,N-ジエチ ジチオカルバミル)エタン、1,2-ビス(N,N-ジメ チルジチオカルバミル)エタン、1,2,3-トリス(N ,N-ジメチルジチオカルバミル)プロパン、1,2,4 ,5-テトラキス(N,N-ジエチルジチオカルバミル チル)ベンゼン、1-(N,N-ジエチルジチオカル ミル)エチルアセテート、またはそれらの塩 ないしはその水和物等が挙げられる。
 また、前記化合物として、下記構造式で示 れるジメチルジチオカルバメート基を有す ポリエチレンオキシド誘導体(POE2K)を用いる ことができる。

 アミノキシル化合物としては、例えば、( (2’,2’,6,6’-テトラメチル-1’-ピペリジニル オキシ)メチル)ベンゼン、1-フェニル-1-(2’,2 ,6’,6’-テトラメチル-1’-ピペリジニルオ シ)エタン、1-(4’-ブロモフェニル)-1-(2”,2” ,6”,6”-テトラメチル-1’-ピペリジニルオキ )エタン、1-ナフチル-1-(2’,2’,6’,6’-テト メチル-1”-ピペニルジニルオキシ)エタン、 1-フェニル-1-(2’,2’,6’,6’-テトラメチル-1 -ピペリジニルオキシ)プロパン、1-(ベンジル オキシ)-2-フェニル-2-(2’,2’,6’,6’-テトラ チル-1’-ピペリジニルオキシ)エタン、1-ヒ ロキシ-2-フェニル-2-(2’,2’,6’,6’-テトラ チル-1’-ピペリジニルオキシ)エタン、フェ ル-4-シアノ-4-(2’,2’,6’,6’-テトラメチル- 1’-ピペリジニルオキシ)ペンタノアート、ペ ンタフルオロフェニル-4-シアノ-4-(2’,2’,6’ ,6’-テトラメチル-1’-ピペリジニルオキシ) ンタノアート、3-フェニル-1-(2’,2’,6’,6’- テトラメチル-1’-ピペリジニルオキシ)プロ ン、1-((2’,2’,6’,6’-テトラメチル-1’-ピ リジニルオキシ)メチル)-4-(トリフルオロメ ル)ベンゼン、またはそれらの塩、ないしは の水和物等が挙げられる。

 セレン化合物としては、例えば、ベンジ フェニルセレニド、p-メチルベンジルフェ ルセレニド、p-エチルベンジルフェニルセレ ニド、ベンジルトリルセレニド、キシレニル ジフェニルジセレニド、キシレニルジトリル ジセレニド等が挙げられる。

 ジセレニド化合物としては、例えば、ジ ェニルジセレニド、ジトリルジセレニド、 -(p-クメニル)ジセレニド、ジ-(1-ナフチル)ジ セレニド、ジ-(2-ナフチル)ジセレニド、ジ-(p- t-ブチルフェニル)ジセレニド、またはそれら の塩、ないしはその水和物等が挙げられる。

 ジフェニルエタン誘導体としては、例え 、1,2-ジシアノ-1,2-ジフェニルコハク酸ジエ ル、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、3 ,4-ジエチル-3,4-ジフェニルヘキサン、4,5-ジメ チル-4,5-ジフェニルオクタン、2,3-ジメチル-2, 3-ジフェニルブタン、2,2,3,3-テトラフェニル タン、1,2-ジシアノ-1,1,2,2-テトラフェニルエ ン、3,3,4,4-テトラフェニルヘキサン、また それらの塩、ないしはその水和物等が挙げ れる。

 本発明においては、特にN,N-ジエチルジチオ カルバメートまたはPEO2Kを用い、粒子上にN,N- ジエチルジチオカルバメート基を導入するこ とが好適である。
 例えば、前記製造例によるSVA粒子に光イニ ァータ基N,N-ジエチルジチオカルバメート基 を導入する場合、SVA粒子の表面に存在するVBC 残基のクロロメチル基にイニファータ化試薬 を反応させると、粒子表面に光イニファータ 基が導入される。
 具体的には、SVA粒子にイニファータ化試薬 してN,N-ジエチルジチオカルバミン酸ナトリ ウム三水和物(NaDC)を作用させ、下記の置換反 応を経て粒子表面にN,N-ジエチルジチオカル メート基を導入することができる。

(2)粒子表面への鋳型分子の吸着
 次に、イニファータ基を導入した前記粒子 、識別のターゲットとなる分子、すなわち 型分子を吸着させる。
 鋳型分子となる分子は、タンパク質が好適 あるが、その他の天然または合成化合物、 らにウイルス等であってもよい。
 鋳型分子となる分子のサイズは、吸着させ 基材粒子の大きさや形状にもよるが、単体 1~20nm程度が好ましい。また、特に分子量500~ 100万のタンパク質が好適に使用され得る。
 鋳型分子が大きすぎると、基材粒子への鋳 分子の吸着や、その後のシェル層の形成が 十分なことがあり、また、鋳型分子が小さ ぎると、シェル層に十分な厚みをもたせる とができず、形成したインプリント間隙が れてしまうことがある。

 イニファータ基を導入した粒子への鋳型分 の吸着は、基材粒子や使用する鋳型分子の 性に応じ、公知の方法により行うことがで る。一般的には、粒子と鋳型分子を適当な 媒中で混合し、その分子間力や静電相互作 を利用して鋳型分子を粒子表面へ吸着せし ることで鋳型吸着粒子を得ることができる
 例えば、単分散ポリマー微粒子にタンパク を吸着させる際、重合開始剤の影響からポ マー微粒子の表面電位が負になっていると れば、タンパク質分子の等電点を基準にし 、該分子が正に帯電するpHに溶媒を調整す ことで、静電相互作用によりタンパク質を 子に吸着させることができる。
 なお、特にタンパク質の鋳型分子を適用す 場合、タンパク質が溶媒へ完全に溶解せず 溶解しきれない分子が沈降を起こしてしま ことがある。そのような場合、遠心分離等 より沈降部を除く上澄みを予め分取してお 、この上澄みを粒子との混合に用いること 好ましい。

 粒子に吸着させる鋳型分子の濃度や処理時 は、粒子および鋳型分子の種類、サイズ、 たは処理量により適宜設定することができ 。また、本工程における鋳型分子の吸着量 、分子識別に機能するインプリント部の数 決定する条件の一つであることから、吸着 の調整によって分子識別材料の機能性制御 可能であると考えられる。
 一方で、鋳型分子の粒子への吸着量は、あ 程度で飽和に達し、過剰に高濃度の鋳型分 を作用させても、吸着量は一定以上にはな ないと考えられる。同様に、吸着処理時間 過剰に長くしても、飽和量以上の吸着は得 れないことを考慮する必要がある。

 通常、鋳型分子濃度は、粒子1個あたりの 表面を10~50%覆うことのできる程度であれば十 分に機能性の高い分子識別材料を製造するこ とができ、吸着処理は、室温下にて15分~24時 程で達成し得る。

(3)粒子表面へのシェル層の被覆
 鋳型分子を吸着させた粒子は、これをコア 子とし、先に導入したイニファータ基を開 種としてリビングラジカル重合を誘起して 粒子表面にシェル層を構成する重合性モノ ーをグラフトしていく。
 コア粒子表面におけるシェル層の形成は、 知のイニファータ法に準じて行なうことが きる。具体的には、コア粒子、重合性モノ ー、および架橋剤を溶媒中において混合し 開始種に応じてリビングラジカル重合を開 させる。すなわち、コア粒子へ光イニファ タ基を導入したのであれば紫外線(UV)の照射 、熱イニファータ基であれば加熱、または金 属錯体の添加によってラジカルを生成するイ ニファータ基であれば金属錯体の添加により 重合を開始する。

 粒子表面におけるグラフト重合に適用し得 重合性モノマーは、ラジカル重合によりポ マーを形成できるものであれば問題なく使 することができる。
 このようなモノマーとしては、例えば、ス レン、α-メチルスチレン、ジメチルスチレ 、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン エチレン、プロピレン、クロロエチレン、1 ,1-ジクロロエチレン、1-ブテン、イソブテン 1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1- ンテン、1-ヘキセン、ビニルシクロヘキサ 、シクロブテン、シクロペンテン、シクロ キセン、アクリルアミド、N,N-ジメチルアク ルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N -ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N- イソプロピルアクリルアミド、N-ブトキシア リルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、 N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-イソ トキシメチルアクリルアミド、2-アクリルア ミド-2-メチルプロパンスルホン酸、メタクリ ルアミド、アクロイルモルホリン、アクリロ ニトリル、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、 N-ビニルカルバゾール、ビニルピリジン;アク リル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチ ル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソ ロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t- ブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸 クロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル アクリル酸フェニル、アクリル酸2-ピリジ 、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸 2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-メトキ エチル、アクリル酸2-エトキシエチル、アク リル酸n-ラウリル、アクリル酸n-ドデシル、 クリル酸n-ステアリル、アクリル酸ベンジル 、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アク リル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アク リル酸エチルカルビノール、ジメチルアミノ アクリレート、トリメチロールプロパントリ アクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリ ート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート ネオペンチルグリコールジアクリレート、 ンタエリスリトールトリアクリレート、ア リル酸ソーダ、等のアクリル酸及びアクリ 酸エステル化合物;メタクリル酸、メタクリ ル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリ ル酸n-プロピル、メタリル酸イソプロピル、 タクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル 、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シ ロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2-ピ ジル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタ クリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル 2-メトキシエチル、メタクリル酸2-エトキシ エチル、メタクリル酸n-ラウリル、メタクリ 酸n-ドデシル、メタクリル酸n-ステアリル、 メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸テトラ ヒドロフルフリル、メタクリル酸グリシジル 、メタクリル酸アリル、メタクリル酸エチル カルビノール、ジメチルアミノメタクリレー ト、トリメチロールプロパントリメタクリレ ート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート 1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネ ペンチルグリコールジメタクリレート、ペ タエリスリトールトリメタクリレート、メ クリル酸ソーダ、等のメタクリル酸及びメ クリル酸エステル化合物などのラジカル重 性モノマーを挙げることができる。上記モ マーは単独もしくは2種以上を組合わせて用 いることが可能である。本発明においては、 特にアクリル酸、アクリルアミドが好適に使 用し得る。

 架橋剤としては、モノマーの反応性官能 と反応して共有結合を形成し得る官能基を2 以上有する多官能性化合物を用いることがで きる。具体的には、例えば、N,N’-メチレン スアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタ リルアミド等のビスアクリルアミド類、エ レングリコールジ(メタ)アクリレート、ポ エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等 の長鎖ジアクリレート類、ジビニルベンゼン 等が挙げられ、特にN,N’-メチレンビスアク ルアミドが好適である。

 重合溶媒は、グラフト重合によるシェル層 形成を阻害するものでなければ、特に限定 れない。例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン等 の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シク ロペンタン等の脂環族炭化水素類、ベンゼン 、トルエン等の芳香族炭化水素類、テトラヒ ドロフランなどのエーテル系化合物類を使用 する。
 また、重合温度は、ラジカル重合の開始剤 より適宜決定される。リビングラジカル重 の開始種が光イニファータ基であれば、紫 線照射によってラジカルを発生するため、 に制限されない。また、金属錯体の添加に ってラジカルが生成されるイニファータ基 開始種とした場合も、重合温度は特に制限 れない。開始種が、熱イニファータ基であ 場合には、熱でラジカルが発生するため、5 0~150℃で重合を行う。

 重合の停止は、紫外線照射によってラジカ 生成を起こしているのであれば紫外線照射 停止による。加熱によってラジカルが生成 ているのであれば加熱の停止による。また 金属錯体の添加によってラジカルを生成し いるのであれば、金属錯体の除去、もしく 酸素の封入などによる不活性化によって速 かに重合は停止される。また、モノマーを て重合により消費した場合にも重合は停止 れる。
 生成したコア-シェル粒子の精製は、一般的 なポリマーの精製方法に従い、貧溶媒による 沈殿、透析、重合溶媒の留去などによって行 うことができる。

 リビングラジカル重合によるポリマー生成 、ラジカル重合と異なり、再結合や不均化 より停止せず、上記の停止処理を行うまで 一に進行するため、各開始種の重合量はほ 同じになる。したがって、本発明によれば シェル層を粒子表面にほぼ均一な厚さで形 することができる。
 また、本発明においては、このようなリビ グラジカル重合の性質を利用し、重合処理 間、またはモノマーないし架橋剤濃度を適 調整することにより、重合量すなわちシェ 層の厚みを制御することが可能である。ま 、粒子へのイニファータ基の導入量によっ リビンググラフト重合の開始種の数を調整 ることでも、重合量の制御が可能である。
 本発明では、鋳型のインプリント部が粒子 面近傍となるようにするため、コア粒子に 着させた鋳型分子の厚みに応じてシェル層 厚みを制御することが好ましい。

(4)鋳型分子の溶出によるインプリント空隙の 形成
 上記したコア-シェル粒子には、粒子表面の シェル層に鋳型分子が埋まった状態で分散し ている。本発明においては、これらの鋳型分 子をシェル層から溶出させることにより、鋳 型分子の構造が模られたインプリント空隙を 表面に備えた粒子を得ることができる。
 なお、本発明にかかる分子識別材料は、イ プリント部に鋳型分子を保持した粒子、お び鋳型分子を除いたインプリント空隙を備 た粒子の両方を包含することを意図するも である。したがって、シェル層からの鋳型 子の溶出は必要に応じて行うことができ、 た、一度鋳型分子を溶出した後で、粒子に 浄等を施し、再度インプリント空隙へ適合 子を保持させて用いてもよい。

 シェル層中の鋳型分子の溶出は、形成し コア-シェル粒子を適当な溶媒に溶出させる ことにより、除去することができる。溶出に 使用する溶媒は、粒子を損ねるものでなけれ ば、溶出する鋳型分子の種類に応じて適宜選 択することができる。例えば、タンパク質を 鋳型分子とした場合、ドデシル硫酸ナトリウ ム(SDS)を含む酢酸溶液が溶媒として好適に使 され得る。

 以上の工程により得られる本発明にかかる 子識別材料は、化粧品、医薬品および食品 、分子識別材料の利用が想定される全ての 野において適用することができる。
 また、本発明にかかる分子識別材料の粒子 態は、その効果を損なわない限り任意であ 、使用目的に応じた形および粒径とするこ ができる。
 前記分子識別材料の使用用途としては、例 ば、HPLCカラム担体として、特定分子の高精 度な分離に利用することができる。また、イ ンプリント空隙等に酵素などの特定分子を保 持させた微粒子を化粧品等に配合して、ケミ カルピーリング剤として利用することも可能 である。さらに、肌上の不用な物質を選択的 に吸収する粉体として化粧料に配合するなど 、本発明の分子識別材料を成分として各種製 品に適用する他、高価な医薬品原料を分離精 製するなど原料生産の段階での利用も期待で きる。
 以下、実施例を示して本発明を説明するが 本発明はこれにより限定されるものではな 。

実施例1
 まず、下記方法により、St-VBC-AAm共重合単分 散微粒子(SVA粒子)を得た。
SVA粒子の製造方法
 撹拌棒、アリーン式冷却管、セラムラバー 攪拌シールを取り付けた300ml四つ口丸底フ スコに、モノマーとしてスチレン(St)2.85g、4- ビニルベンジルクロリド(VBC)0.10g、アクリル ミド(AAm)0.05g、溶媒として水75gを入れ、70℃ 300rpmにて攪拌した。所定温度の恒温槽中で30 分間窒素置換を行った後、開始剤として過硫 酸カリウム(KPS)0.1gを水10gに溶解させたものを 注射器で系内に添加した。その後さらに30分 窒素置換を行い、集合反応を24時間行った 重合終了後のラテックス分散液は13500rpm、12 間、15℃の条件で遠心分離を行い、上澄み デカンテーションにより除去した後、下層 粒子を水で再分散させる操作を4回繰返して 製し、粒子分散液を得た。
 上記ソープフリー乳化共重合における転化 を重量法により求めたところ、83.5%であっ 。

 続いて、上記で得たSVA粒子表面に、下記方 によりイニファータ基を導入した。
イニファータ基導入方法
 300ml三つ口丸底フラスコにSVA粒子を固形分 2.0g入れ、全量が70gとなるように蒸留水を加 た。この反応容器に撹拌棒、攪拌シールを りつけ氷冷下200rpmで攪拌した。N,N-ジエチル ジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物(NaDC) 0.74gを30gの水に溶解させ、系内に少しずつ加 た。その後、室温にて一晩反応させた後、1 3500rpm、12分、15℃の条件で遠心精製を4回行い 、イニファータ基としてN,N-ジエチルジチオ ルバメート基を有するSVA-DC粒子を得た。

 上記にて得たイニファータ基導入SVA粒子に し、その形態を以下の方法で確認した。
<イニファータ基の定量>
 NaDCはC=S結合(n→π * )に起因する紫外領域での吸収が352(nm)付近に り、希薄な溶液ではLambert-Beerの法則に従い 濃度に比例して吸光度が上昇した。そこでS VA粒子とNaDCとの改質反応後、遠心精製の際に 得られる上澄み液(FT、W1~3)の352(nm)における吸 光度から粒子へ導入されたイニファータ量を 測定した。
 吸光度の測定は超純水を用いてベースライ を引き、サンプルを分光光度計(BioSpec-1600 S eries、島津製作所製)に入れ、20℃にて行なっ 。1つのサンプルから得られた上澄みの吸光 度の和(FT+W1+W2+W3)を求め、母液から得た検量 (図2)より上澄み液中に残存するNaDC量を求め 。さらに、仕込みイニファータ量から残存 を差引くことで、粒子への固定化量を算出 た。

 以上の上澄み定量から求めた粒子表面のイ ファータ量は、2.6units/nm 2 であった。したがって、上記イニファータ基 導入処理により、SVA粒子に十分な量の官能基 を導入できたことが示された。

<粒子の形態>
 透過型電子顕微鏡(TEM)において凹凸のある 料に電子線を照射すると試料の厚さによっ 吸収が起こり、濃淡のある像が得られる。 た、対物絞りを焦面の位置に挿入して観察 ると、試料によって散乱された電子のうち ある角度以上の角度で散乱されたものは遮 される。このようにして生じるコントラス は試料の厚さによって異なる。
 試料はCuのTEM用グリッドにコロジオン膜を り付けて、支持膜の上に載せた。コロジオ とは、硝化度の低い(11~12%)=ニトロセルロー の酢酸アミル溶液である。コロジオン溶液 、1.5~2%酢酸アミル溶液である。コロジオン 液を水面上に一滴落とすと、水の表面張力 よって液滴は水面上に広がる。そして、溶 が蒸発すると水面上に100Å程度の薄膜がで る。コロジオン膜の厚さは水温でコントロ ルできるため、40℃程度の水面を利用して膜 を作製した。これを銅メッシュ上に貼り付け て乾燥させ、支持膜とした。

 作製した各ラテックス粒子を適当な濃度に 釈し、金属メッシュ上に支持されたコロジ ン膜に沈着固定した。これをTEM(JSM-5200、日 電子製)にて適当な倍率にて撮影し、粒子径 体を観察した。TEMによって撮影したSVA(図3(A) よびSVA-DC(図3(B))の写真を図3に示す。
 また、この写真の粒子径をノギスを用いて 定し、次式に従って乾燥状態における粒子 数平均粒子径(D n )、および重量平均粒子径(D w )を算出した。また、D w /D n の値から粒子径の単分散性を評価した。
   D n =σN i D i /N i
   D w =σN i D i 4 /N i D i 3
*N i :直径D i である粒子数

 電子線が物質に衝突すると散乱を受ける この散乱電子は対物レンズの絞りによって ットされて像面に到着しないために暗いコ トラストを生じる。この散乱に程度は重量 さに比例する。非晶質試料がコロジオン支 膜状に分散している場合のコントラストは この散乱コントラストが支配的となる。し がって、図3において、黒く写っている影が スチレンを主成分とするコア部分である。

 図3よりSVA粒子の乾燥粒径は数平均粒子径(D n )が334.2(nm)、重量平均粒子径(D w )が334.6(nm)、単分散性(D w /D n )は1.001となり、単分散コア粒子が作製できた ことが確認された。
 なお、一般に粒子懸濁液を平滑な基板上で 燥させると、媒体の流れによって粒子が移 し、蒸発速度の大きいところで粒子は基板 集積する。また、粒子と基板の相互作用が い場合には、媒体の表面張力により粒子間 引力が働き、粒子は局所的に集積する。そ ため、図3の各サンプルは粒子が密集した状 態となったと考えられる。
 図3および測定値より明らかなように、SVA粒 子は形およびサイズの均一な単分散粒子であ った。また、粒子表面へイニファータ基導入 した後も、同様に均一粒子を維持しているこ とが確認された。

<水中粒子径の測定>
 動的光散乱法とは微粒子分散液の散乱光の らぎを測定することにより粒子径を求める 法である。懸濁溶液や溶液中に分散した微 子は常にミクロブラウン運動をしている状 にあり、その動きは大きな粒子ほど遅く、 さな粒子ほど速い。粒子間相互作用が無視 きるような十分希薄なラテックス中にレー ー光(He-Neレーザー:632.8nm)を入射すると、粒 により光は散乱されるが、散乱される光の 長は粒子自体のミクロブラウン運動により 間とともにゆらぐ。この光の波長のゆらぎ 、それぞれの粒子の粒径に対応している。 ンホール系の光子検出装置によりこのゆら を観察し、光子相関法を用いてその自己相 関数などを解析することにより、粒径やそ 分布についての情報を得ることができる。 の方法により求められた粒径は、流体力学 半径(d)であり、Stokes-Einsteinの式により算出 れる。
   d=kT/(6πηD)
D:拡散係数、k:ボルツマン定数、T:絶対温度

 実際の測定では、生成した各粒子を少量取 、蒸留水で適当な濃度に希釈して全透明セ に入れ、PCS(Photon Correlation Spectroscopy:PAR III 、大塚電子製)を用いて、ラテックス粒子の 中粒径を適当な温度にて測定した。また、 分散性の指標となる分散度D w /D n を計算した。
 前記動的光散乱法により測定したSVA粒子の 体力学的半径は、370(nm)であり、分散度は1.0 14であった。
 以上の測定結果から、本発明にかかる分子 別材料において、ソープフリー乳化重合に る単分散粒子が、形態的にもイニファータ の導入に対しても、基材となる粒子として 適であると考えられる。

 続いて、上記製造方法によるSVA-DC粒子に鋳 分子(タンパク質)を吸着させ、その吸着状 を分析した。まず、タンパク質の吸着方法 説明する。
タンパク質の吸着方法
 上記方法で作製したSVA-DC粒子2.5mg(固形分)を 2mLマイクロチューブに取り、10mMリン酸ナト ウム緩衝液(SPB)(pH7.0)で3回バッファー置換を て完全に上澄みを取り除いた。その後、500p pmのウシヘモグロビン(BHb)溶液を200μL加え、 ーモミキサーで振り混ぜながら37℃で1時間 粒子とタンパク質を作用させた。
 粒子とタンパク質を作用させた後、遠心分 にて上澄み180μLを除去し(非結合画分FT)、さ らに同バッファー180μLを加えて遠心分離を行 い、3回洗浄した(洗浄画分W1~W3)。

<タンパク質吸着量の定量>
 下記2つの定量法により、タンパク質吸着量 を定量した。
 一つはビシンコニン酸(BCA)法によるタンパ 質吸着量である。
 96穴マイクロプレート(IWAKI製)に200μLのBCA溶 (ReagentA:ReagentB=50:1で混合)と、FT、W1~W3のサン プル溶液5μLを打ち、37℃で2時間インキュベ トした。測定はマイクロプレートリコーダ (MPR A4i、東ソー製)で行い、波長570nmでの吸 度を測定した。また、このとき濃度既知の ンパク質溶液を調製し、検量線を作成した
 粒子へのタンパク質の吸着量は、仕込みの ンパク質量から上澄み(FT、W1~W3)中の未吸着 ンパク質量を差引くことによって求めた。

 他方は、Soret吸収帯スペクトル測定による 量である。
 BHbの構成成分であるヘムは、鉄-ポルフィリ ン錯体の構造をもつ。ポルフィリン環の吸収 スペクトルを測定すると、400nm付近にSoret吸 帯スペクトルが観察される。この性質を利 して、遠心分離により得た上澄み(FT、W1~W3) 波長405.5での吸光度を測定した。また、この とき濃度既知のタンパク質溶液を調製し、検 量線を作成した。
 粒子へのタンパク質の吸着量は、BCA法と同 に、仕込みのタンパク質量から上澄み(FT、W 1~W3)中の未吸着タンパク質量を差引くことに って求めた。

 上記両測定から求めたタンパク質吸着量を 時的に表したグラフを図4に示す。
 また、BHb溶液を500ppmとしたサンプルと、1000 ppmとしたサンプルについて、SVA-DC粒子へのBHb 吸着量の比較を行った。一粒子あたりのタン パク質吸着量(図5(A))、仕込みタンパク質を100 としたときの吸着した全タンパク質の割合( 5(B))を図5に示す。

 図4より、タンパク質は反応開始後直ちに粒 子上へ吸着していることが明らかである。吸 着は反応時間15分で平衡に達し、その後吸着 はほぼ一定であった。
 したがって、イニファータ基を導入した単 散微粒子をタンパク質溶液中で作用させる とにより、容易に吸着が可能であることが かった。
 また、図5(A)より、鋳型分子タンパク質溶液 を500ppmとした際も、1000ppmとした際も、吸着 はほぼ同じであったが、タンパク質濃度が50 0ppmあるいは1000ppmの場合、それぞれのBHb全量 対しての吸着率は約50%と25%であった(図5(B)) コア粒子1個あたりの表面のうちBHbにより被 覆されている割合(表面被覆率)は、どちらの 度においても3割程度であった。
 この結果から、タンパク質の粒子への吸着 には上限があり、本試験例においてSVA-DC粒 にBHbを吸着させた場合には、表面被覆率3割 が上限であると考えられる。また、タンパク 質濃度500ppmと1000ppmで粒子に吸着したタンパ 質量が同じであったことから、より低濃度 上限までの吸着が可能であることが示唆さ た。

 続いて、上記方法により鋳型分子(タンパク 質)を吸着させたSVA-DC粒子へ下記方法でシェ 層を導入し、その粒子の状態を分析した。
シェル層の導入
 表面に光イニファータ基をもつSVA-DC粒子を ア粒子とし、UV照射によるリビングラジカ 重合によって表面にAAmシェル層を有するコ シェル粒子の作製を行った。
 上記方法により作製したSVA-DC(水中粒径360nm) 、モノマーとしてアクリルアミド(AAm)を2.0g、 アクリル酸(AAc)0.04g、架橋剤としてN,N’-メチ ン-ビス-(アクリルアミド)(MBAAm)を0.36gに、溶 媒を全量が200gとなるように加え、反応容器 入れた。前記反応容器にリービッヒ冷却管 取り付け、スターラーチップにて攪拌、窒 雰囲気下で、室温にて1時間、400Wの高圧UVラ プにてUV照射を行った。UV照射後の反応液は 、13500rpmで35分、15℃の条件で上澄みが透明に なるまで遠心分離、デカンテーション、再分 散を3回繰り返して精製を行った。これによ 、表面にAAmシェル層を有するSVA-A粒子を得た 。

 下記表1に示すようなSVA-DCの添加量(x)、溶 媒の種類、SVA-DC粒子上へのタンパク質(BHb)吸 の有無の条件とした試験例1~3について、シ ル層導入後の動的光散乱およびTEMによる粒 径、導入前後での粒径の増大をそれぞれ評 した。結果を下記表1に示す。また、下記試 験例2のシェル層形成後のTEM画像を図6に示す

 図6の画像から、コアシェル型粒子が形成 されていることが明らかである。中央の黒い 影がコア部分であり、その周囲の灰色の影が シェル部分である。ポリアクリルアミド(PAAm) シェル層の厚さは150nm程度であり、イニファ タ法によるUVグラフト重合が十分に進行し といえる。

 表1に示すとおり、いずれの試験例において も粒径の増大が認められ、PAAmシェル層の導 が達成されたことが示唆された。また、粒 添加量が減少するにつれ、得られるSVA-A粒子 の粒径が増大する傾向にあった。これは、粒 子添加量の違いはすなわち反応系内の重合開 始点濃度の違いであることから、重合開始点 濃度が低いほど一つの開始点に取り込まれる モノマー量が増加するため、結果として粒径 が増大したものと考えられる。
 また、溶媒を水としてもリン酸バッファー( SPB)としても重合の進行は十分に認められ、 ンパク質を吸着させたSVA-DC粒子においても しい粒径の増加、すなわちPAAmによるシェル の形成が認められた。
 以上のことから、鋳型分子を吸着させたコ 粒子表面において、イニファータ法によるU Vグラフト重合を行うことにより、シェル層 導入が可能であることが確認された。
 また、コア粒子の添加量の調整により、前 シェル層の層厚の制御が可能であることが 唆された。

 続いて、シェル層を導入したSVA-A粒子から 鋳型分子(タンパク質)を溶出し、得られた分 子識別材料を評価した。
タンパク質の溶出
 上記したシェル層の導入例において、SVA-DC0 .5g、AAm0.5g、MBAAm0.09g、AAc0.01gとし、溶媒とし SPBを全量が200gとなるように加えて作製した ンプルを用い、シェル層からのタンパク質 溶出を行った。
 ここで用いたSVC-DC粒子は、タンパク質(BHb) 着反応を行った後のものである。また、高 UVランプの照射によるグラフト重合の開始か ら10分、20分に定量送液ポンプを用いてサン リングを行い、30分で重合反応を終了した。 これにより、所定の重合時間に応じたコアシ ェル(SVA-A)粒子を得た。それぞれのサンプル ついて上記の方法で遠心精製を行い、下記 ャラクタリゼーションを行った。

 前記各コアシェル粒子サンプル2.5mg(固形 )は、2mLマイクロチューブに入れ、コア粒子 表面に吸着させたBHbの溶出を行った。すなわ ち、前記マイクロチューブに、タンパク質溶 出液として10wt%SDSを含む10%AcOH溶液(SDS:AcOHaq)を 180μL加え再分散させた後に、13500rpm、10分、5 の条件で遠心分離を行い、上澄み180μLを除 する操作を3回繰り返した(溶出画分R1~R3)。 ンパク質溶出後のサンプルは10mM SPB(pH7.0)で 分に洗浄し、インプリント空隙を有する粒 (分子識別粒子)を得た。

<コアシェル粒子のキャラクタリゼーショ >
 上記で得たコアシェル粒子は、PCS(動的光散 乱法による水中粒径)、TEM、および電気泳動 動度の測定により行なった。PCSおよびTEMに る測定は前述の方法と同様とした。以下、 気泳動移動度の測定方法を説明する。

 コンパクトゼータ電位測定装置(ZEECOM、マイ クロテック・ニチオン社製:セル厚み0.76nm、 止層0.15nm、電極間距離9cm)を用いて各粒子の 気泳動移動度を測定した。1mMのKCl水溶液に 散させた各粒子(SVA-DC粒子および重合時間を 10分、20分、30分とした各SVA-A粒子)をセル内に 満たし、循環水を用いてセル内を所定の温度 に保った。ここに電圧をかけ静止面に浮遊し ている粒子の移動度を測定し、次式を用いて 電気泳動移動度を算出した。測定はそれぞれ 20個の粒子について行い、その平均値を用い 。
   μ=v×d/V
v:移動速度、d:電極間距離、V:電圧
 電気泳動移動度(EPM)およびPCSの測定結果を 7に示す。また、SVA-DC粒子および重合時間20 としたSVA-A粒子のTEM画像を図8に示す。

 図7において、重合前後の各サンプルの水中 粒径に大きな変化は見られなかった。動的光 散乱法による測定値は±25nm程度の標準偏差を 含んでおり、この範囲内における粒径変化を 正確に測定することは困難であると考えられ る。一方、電気泳動移動度では、重合の進行 に伴い、移動度が負へ増大する傾向が認めら れた。
 コア粒子はアニオン性開始剤であるKPSを用 て作製しているため、その表面はKPS由来の 電荷を帯びている。重合に伴い負方向へ移 度が増大する理由としては、PAAmシェル層導 入の際、モノマーとして微量のAAcを用いてい ることに起因すると考えられる。AAcは構造中 にビニル基とカルボキシル基を有しており、 このカルボキシル基がpH依存的に解離し負電 をもつ。すなわち、本測定は1mMのKCl中で行 ったため、AAcを有するシェル層が導入され ほど、コアシェル型粒子表面の電荷はコア 子と比較して負方向に強くなったと考えら る。
 以上から、電気泳動移動度により、鋳型分 を吸着したコア粒子上にシェル層が形成さ たことが定性的に確認された。また、重合 応時間に比例して重合度合いに変化が見ら たことから、反応時間によるシェル層の層 制御の可能性が示唆された。

 さらに、図8より、重合前後で粒子の様子 が明らかに変化していることが観察された。 SVA-DC粒子においては、一つ一つの粒子の表面 がはっきりとしているのに対し、グラフト重 合を20分行なったSVA-A粒子においては、各粒 の輪郭が不明瞭であり、表面にぼんやりと いスキン層が存在する様子が伺えた。この とからも、コア粒子の表面へ薄いPAAmシェル が導入されていることが示唆された。

<タンパク質溶出量の定量>
 定量は、前述のSoret吸収帯スペクトル測定 同様に行った。ただし、遠心分離により得 上澄み(R1~R3)の波長395.0nmでの吸光度を測定し た。また、溶出液に所定のタンパク質(BHb)を かした濃度既知のBHb-SDS:AcOHaqを調製し、検 線を作成した。
 前記方法により、上澄み(R1~R3)中のタンパク 質量として算出される値として、粒子から溶 出されたタンパク質量を得た。SVA-A一粒子あ りのBHb吸着量および溶出量を図9に示す。な お、各サンプルにおける吸着量とは、コア(SV A-DC)粒子表面にもともと吸着していたBHb量を し、溶出量とはPAAmシェル層のグラフト重合 反応後に得られたコアシェル(SVA-A)粒子から 出されたBHb量を表す。

 図9によれば、重合時間10分のサンプルにお ては、ほぼ完全にBHbが溶出された。一方、 合時間20分および30分のサンプルでは、吸着 量の7割程度のBHbが溶出した。このことから 重合時間が長くなるほど、導入されるPAAmシ ル層の厚さは増大し、コア粒子表面に存在 るBHbの溶出量は減少すると推察された。
 以上より、表面に鋳型分子を吸着し、シェ 層を導入したコアシェル粒子から、十分量 鋳型分子の溶出が可能であることが明らか なるとともに、該粒子表面において、鋳型 子溶出量に相当する程度のインプリント空 が形成されたことが示唆された。

<ターゲット分子の捕捉>
 上記したタンパク質の溶出工程により得た 重合時間の異なる各分子識別粒子(MIP)につ て、ターゲットタンパク質の捕捉能を検討 た。
 すなわち、各粒子2.5mgに200μLのBHb溶液(500ppm) を加え、37℃において1時間インキュベートを 行い、粒子へのBHbの捕捉を試みた。粒子に捕 捉されたタンパク質の定量は、上記したタン パク質溶出量の定量と同様の方法による。
 また、コントロールとして、タンパク質未 出の各コアシェル(SVA-A)粒子についても、重 合時間の異なるサンプル毎に同様の試験を行 った。結果を図10に示す。

 ここで、図10において、各MIPは図9の各サ プルに相当し、SVA-A粒子からのBHb溶出量に 当する程度のインプリント空隙を有すると えられる。一方、コントロールの粒子にお ては、コア粒子表面に吸着させたBHbはその まシェル層内に存在しており、インプリン 空隙は存在しない。すなわち、コントロー におけるBHb吸着量は、シェル層表面に不可 的に吸着したBHb量を示す。MIPのシェル層表 にもこれと同程度のBHbの吸着が起きている 考えられる。このことから、MIPの再捕捉量 、各重合時間におけるMIPへのBHbの全吸着量 らコントロールへのBHbの吸着量を差引いた とした。再捕捉量として有意な値が得られ ことは、すなわち、MIP表面にインプリント 隙が存在し、その空隙に対して位置選択的 BHbの吸着が起きていることを定性的に裏付 るものである。

 図10によれば、どの重合時間のMIPにおい も再捕捉が認められ、シェル層表面にBHbの ンプリント空隙を有する微粒子が得られた とが示唆された。

実施例2
 下記MIP製造例における製造過程、及び製造 れた分子識別粒子(MIP)について、以下記載 る各試験を行った。
MIP製造例
(1)St-VBC-AAm共重合単分散微粒子(SVA粒子)にイニ ファータ基としてN,N-ジエチルジチオカルバ ート基を導入し、SVA-DC粒子(コア粒子)を得た 。
(2)500ppm BHb溶液40mLに前記SVA-DC 0.5gを添加し、 pH7.0及び37℃の条件下で1時間インキュベート た。その後、遠心分離により粒子を分離し これを洗浄してBHbを表面に吸着させたSVA-DC 子を得た。
(3)続いて、前記SVA-DC粒子 0.5g、アクリルアミ ド(AAm) 0.25g、N,N’-メチレン-ビス-(アクリル ミド)(MBAAm) 0.045g、アクリル酸(AAc) 0.005gに10m M SPB(リン酸バッファー、pH7.0)を加え、合計20 0gの混合液とした。この混合液にUVを照射し 室温で1時間重合反応させた。反応後、遠心 離及び洗浄を繰り返して表面にAAmのシェル を有するSVA-A粒子(コア-シェル粒子)を得た
(3)10wt%SDS:10%AcOH溶液(pH2.8)に前記SVA-A粒子を加 、室温下で遠心分離を3回繰り返して粒子に 着したBHbを溶出させ、固形分としてBHbをイ プリントしたMIPを得た。

<コア粒子表面へのターゲット分子の吸着&g t;
 上記MIP製造例の(2)工程において、SVA-DC粒子 吸着したBHb量を定量した。500ppm BHb溶液中 BHb量(投入量)に対する実際のBHb吸着量(吸着 )を図11に示す。
 図11に示すとおり、BHb投入量の43%がSVA-DC粒 への吸着に消費され、これらはSVA-DC粒子表 の約30%を被覆していた。

<シェル層の形成>
 上記MIP製造例において、(2)工程で得たSVA-DC 子、(3)工程で得たSVA-A粒子、(2)工程を経ず (3)工程を行なったコントロール粒子(BHb未吸 )のそれぞれについて、DLSによる水中粒径測 定及び電気泳動移動度測定を行なった。結果 を図12に示す。
 図12に示すとおり、各サンプルの水中粒径 SVA-DC粒子で342nm、SVA-A粒子で350nm、コントロ ル粒子で352nmとなり、(3)工程によりシェル層 が形成され、粒径が増大していることが明ら かである。また、電気泳動移動度測定の結果 から、SVA-DC粒子表面にアクリル酸を含むシェ ル層ができたことがわかる。

<BHbの除去>
 上記MIP製造例において、(2)工程でSVA-DC粒子 吸着したBHb量(吸着量)と、(3)工程でSVA-A粒子 から溶出したBHb量(溶出量)をそれぞれ定量し 。SVA-DC粒子のBHb量については、(3)工程と同 に10wt%SDS:10%AcOH溶液(pH2.8)に溶出させたもの 定量した。結果を図13に示す。
 図13に示す結果から、コア粒子に吸着させ BHb粒子の約60%が(3)工程において除去され、 ンプリント空隙が形成されていることが分 る。

<ターゲット分子の吸着>
 上記MIP製造例により得たMIPと、(2)工程を経 に(3)工程を行なったコントロール粒子(イン プリント空隙未形成)について、各粒子2.5mgを 異なる濃度(0~500ppm)のBHb溶液(10mM SPB(pH7.0))200μ Lに添加し、37℃の条件下で1時間反応させた これらの結果から得られたBHbの吸着等温線 図14に示す。
 図14に示すとおり、BHbのインプリント空隙 有するMIPは、空隙をもたないコントロール 子に比べ、同じ濃度下でほぼ倍のBHb吸着量 示した。また、両粒子ともBHb溶液の濃度に じてBHb吸着量は上昇するが、吸着量が飽和 達するとほぼ一定となった。すなわち、MIP 用いることで、より多くのターゲット分子 補足することができる。

<ターゲット分子の識別>
 上記製造例により得たMIPの各種タンパク質 対する吸着量を検討した。
試験方法
 ウシヘモグロビン(BHb)、ミオグロビン(Mb)、 シ血清アルブミン(BSA)、α-ラクトアルブミ (α-LA)、免疫グロブリンG(IgG)、リゾチーム(LZM ))のそれぞれについて、前記タンパク質を500p pmの濃度で含む10mM SPB(pH7.0)を調製し、吸着系 溶媒とした。MIP2.5mgを前記吸着系溶媒200μLへ 加し、37℃で1時間反応させた。反応後、各 ンプルのMIPに吸着したタンパク質量を定量 た。結果を図15に示す。なお、図14中のイン プリント空隙の量は、前記MIP調製例において コアシェル粒子から溶出されたタンパク質の 量を示し、MIPのインプリント空隙へのターゲ ットタンパク質の吸着許容量を表す。

 図15に示すとおり、BHbをインプリントしたMI Pは、ほぼインプリント空隙の吸着許容量に るまで該空隙にBHbを捕捉した。しかしなが 、IgG及びLZMにも、MIPに吸着が認められた。 れは、MIPの表面電荷が負であり、IgG及びLZM pH7.0において正に荷電しているため、静電引 力によって該タンパク質がMIP表面に吸着した と考えられた。また、IgG及びLZMの吸着には、 その特性から疎水性相互作用も関係している と考えられる。
 一方、pH7.0において中性を示すMb、負に荷電 するBSA及びα-LAとのようなタンパク質につい は、いずれも負に荷電するMIPにほとんど吸 しなかった。なお、BHbもまたpH7.0において 性を示すタンパク質であることを考慮すれ 、インプリント部が特定タンパク質に対し 極めて高い捕捉力を有していることが示唆 れる。
 したがって、本発明にかかる分子識別材料 あるMIPをもって、インプリントされた分子 識別し、捕捉させることが可能である。

 さらに、下記の吸着系溶媒(PBS)を用い、BHb びIgGについて上記と同様の方法で試験を行 た。結果を図16に示す。
 なお、図16において、インプリント空隙の は、前記MIP調製例においてコアシェル粒子 ら溶出されたタンパク質の量を示し、MIPの ンプリント空隙へのターゲットタンパク質 吸着許容量を表す。また、「SPB」は上記試 における結果を示し、「PBS」は下記吸着系 媒を用いた本試験の結果を示す。
吸着系溶媒の調製
 10mM SPBへ150mM NaClを加えてpH7.0に調整し、吸 着系溶媒(PBS)を得た。

 図16に示すとおり、塩を添加した吸着系溶 (PBS)を使用したサンプルでは、SPBを吸着系溶 媒としたものに比べ、MIPへのIgG吸着量が大幅 に低減されていた。一方で、インプリント分 子であるBHbの捕捉量は、吸着系溶媒における 塩の有無に係わらず良好であった。
 IgG吸着量の低減は、吸着系溶媒へ添加した の作用によって、MIPとIgGの間の静電引力が 蔽されたことによると考えられる。
 したがって、本発明にかかる分子識別材料 適用において、吸着系溶媒に塩を添加する とにより、識別性の精度を向上させること 可能である。

 次に、インプリント分子を含むタンパク質2 成分系において、MIPへの吸着挙動を以下の試 験方法により検討した。
試験方法
 ウシヘモグロビン(BHb)及び競合させるタン ク質(competitor)の1:1(w/w)混合物を500ppmの濃度で 含む10mM SPB(pH7.0)を調製し、吸着系溶媒とし 。MIP2.5mgを前記吸着系溶媒200μLへ添加し、37 で1時間反応させた。反応後、各サンプルの MIPに吸着したタンパク質を定量した。タンパ ク質の定量は、上記したタンパク質溶出量の 定量と同様の方法による。
 ウシ血清アルブミン(BSA)、ミオグロビン(Mb) α-ラクトアルブミン(α-LA)、フィブリノーゲ ン(FBG)、免疫グロブリンG(IgG)、リゾチーム(LZM )をそれぞれcompetitorとして用いた結果を図17 示す。
 図17に示すとおり、競合するタンパク質の 類に係わらず、MIPはインプリント分子に対 て優れた捕捉性を示した。

 さらに、BSA、FBG、IgGをcompetitorとする上記2 分系吸着試験において、反応時間によるタ パク質吸着量の変化を調査した。
 BHb及びcompetitorのMIP吸着試験は上記方法にし たがい、反応時間のみを0.5、1、4、6、24時間 変えてそれぞれ行った。結果を図18に示す
 図18に示すとおり、インプリント分子(BHb)の 吸着は、1~4時間の反応で飽和に至り、反応時 間が4時間を越えると吸着量はほぼ一定とな た。この吸着量変化は、いずれのcompetitorを いたサンプルにおいても同様であることか 、MIPのインプリント分子に対する反応は、c ompetitorの吸着挙動にほとんど影響を受けてい ないと推察された。