Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
MULTI-LAYERED SINTERED SLIDE MEMBER
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/016840
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a multi-layered sintered slide member comprising a back metal and a porous sintered layer that is diffusion-bonded to the back metal integrally, wherein the porous sintered layer comprises 3 to 10 wt% of an Sn component, 10 to 30 wt% of a Ni component, 0.5 to 4 wt% of a P component, 30 to 50 wt% of an Fe component, 1 to 10 wt% of a high-speed tool steel component, 1 to 5 wt% of a graphite component, and 20 to 55 wt% of a copper component.

Inventors:
YUASA TAKAYUKI (JP)
YORIFUJI MASAYA (JP)
YAMANE TOMOYUKI (JP)
NISHIMURA SHINYA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/002050
Publication Date:
February 05, 2009
Filing Date:
July 30, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
CATERPILLAR JAPAN LTD (JP)
OILES INDUSTRY CO LTD (JP)
YUASA TAKAYUKI (JP)
YORIFUJI MASAYA (JP)
YAMANE TOMOYUKI (JP)
NISHIMURA SHINYA (JP)
International Classes:
B22F7/00; B22F7/04; C22C1/05; C22C33/02; F16C33/10; F16C33/12
Foreign References:
JPS57101603A1982-06-24
JPH01108304A1989-04-25
JPH08109450A1996-04-30
JPS5939481B21984-09-25
JPH0791569B21995-10-04
Other References:
See also references of EP 2184121A4
Attorney, Agent or Firm:
TAKADA, Takeshi (Hanabusa Building 12-6, Minamiaoyama 5-chome, Minato-k, Tokyo 62, JP)
Download PDF:
Claims:
 錫成分3~10重量%と、ニッケル成分10~30重量%と、燐成分0.5~4重量%と、鉄成分30~50重量%と、高速度工具鋼成分1~10重量%と、黒鉛成分1~5重量%と、銅成分20~55重量%とを含む多孔質焼結合金層が裏金に一体に接合されていることを特徴とする複層焼結摺動部材。
 多孔質焼結合金層には、潤滑油が5~20容量%の割合で含有されている請求項1に記載の複層焼結摺動部材。
 高速度工具鋼成分は、モリブデン系高速度工具鋼及びタングステン系高速度工具鋼のいずれかから選択されたものである請求項1又は2に記載の複層焼結摺動部材。
 裏金は、鋼製パイプからなり、該多孔質焼結合金層は該鋼製パイプの内面に一体に接合されている請求項1から3のいずれか一項に記載の複層焼結摺動部材。
 裏金は、鋼板からなり、該多孔質焼結合金層は該鋼板の表面に一体に接合されている請求項1から3のいずれか一項に記載の複層焼結摺動部材。
Description:
複層焼結摺動部材

 本発明は、とくに高荷重、低速度条件下 使用されて好適な複層焼結摺動部材に関し 詳しくは、裏金と該裏金に一体に接合され 多孔質焼結合金層とからなる複層焼結摺動 材に関する。

特公昭59-39481号公報

特公平7-91569号公報

 従来、複層からなる焼結摺動部材として 、薄鋼板の表面に多孔質焼結合金層を一体 接合し、該焼結合金層を内側にして円筒状 捲回した、所謂巻きブッシュ軸受、又は鋼 パイプの内面に接着剤を介して多孔質焼結 金層を一体に接合した円筒状摺動部材があ 。しかしながら、前者の巻きブッシュ軸受 おいては、円筒状に曲げ加工する際に焼結 金層に大きな圧縮応力が加わり、薄鋼板と 結合金層との間の接合強度の低下や不均一 きたす虞があり、また曲げ加工による方法 は焼結合金層の肉厚を大きくとることがで ず、自ずから摺動部材としての使用範囲が 定されるという問題を含んでいる。また、 者の円筒状摺動部材においては、鋼製パイ の内面と多孔質焼結合金層との間に強固な 合強度が得られ難いという問題がある。

 上記実情に鑑み本出願人は、鋼製パイプ らなる裏金の内面に、銅(Cu)を主成分とし、 これに一定量の錫(Sn)、ニッケル(Ni)、燐(P)及 黒鉛(C)からなる多孔質焼結合金層を一体に 合した複層焼結摺動部材、及びこれにさら 一定量の鉄(Fe)を加えてなる多孔質焼結合金 層を一体に接合した複層焼結摺動部材(特許 献1所載)を、また鋼板からなる裏金の表面に 上記と同様の多孔質焼結合金層を一体に接合 した複層焼結摺動部材(特許文献2所載)を提案 した。

 上記特許文献1及び特許文献2に記載され 複層焼結摺動部材においては、とくに成分 のNi成分が焼結時に鋼裏金の表面に拡散して その界面を合金化し、多孔質焼結合金層の鋼 裏金との接合強度を増大させ、さらに成分中 のPと一部合金化してNi-P合金を形成し、銅合 とぬれ性の良いNi-P合金が焼結合金層と鋼裏 金との界面に介在して、界面にNiの拡散によ 合金化と相俟って焼結合金層を鋼裏金に強 に接合させるものである。そして、多孔質 結合金層と鋼裏金とが強固に接合されてい ことから、荷重特性が大幅に向上され、焼 合金層の摩擦摩耗特性と相俟って焼結摺動 材の適用範囲を拡大するものであり、従来 焼結摺動部材ではなし得なかった高荷重(高 面圧)用途への適用を可能とするものであっ 。

 しかしながら、上記複層焼結摺動部材の許 面圧は49MPa(500kgf/cm 2 )前後であり、それ以上の高面圧が作用する 途、例えば、射出成形機のトグルブッシュ 油圧ショベルなどの建設機械における関節 軸受では、多孔質焼結合金層の耐疲労性及 耐摩耗性などの観点から更なる向上が求め れる。

 本発明者は、上記複層焼結摺動部材の耐 重特性及び摩擦摩耗特性の更なる向上を図 べく鋭意検討を重ねた結果、上記多孔質焼 合金層に、さらに所定量の高速度工具鋼成 を含有することにより、多孔質焼結合金層 疲労耐久性を向上させるとともに、耐荷重 性及び摩擦摩耗特性を向上させ、前記高荷 (高面圧)用途への適用が可能であるとの知 を得た。

 本発明は上記知見に基づき完成されたも であり、その目的とするところは、上記許 面圧を超える高面圧が作用する用途におい も、疲労耐久性、耐荷重特性及び摩擦摩耗 性に優れた複層焼結摺動部材を提供するこ にある。

 本発明の複層焼結摺動部材は、錫成分3~10 重量%と、ニッケル成分10~30重量%と、燐成分0. 5~4重量%と、鉄成分30~50重量%と、高速度工具 成分1~10重量%と、黒鉛成分1~5重量%と、銅成 20~55重量%とを含む多孔質焼結合金層が裏金 一体に拡散接合されていることを特徴とす 。

 本発明の複層焼結摺動部材によれば、Ni成 が焼結時に裏金の表面に拡散してその界面 合金化し、さらに成分中のP成分と一部液相 形成してCu-Ni-Sn合金とぬれ性のよいNi-P合金( Ni 3 P)を生成し、このNi 3 Pが裏金と多孔質焼結合金層との界面に介在 て、界面においてNi成分の拡散による合金化 と相俟って多孔質焼結合金層を裏金に強固に 接合一体化させる。また、焼結時に生成され た硬質の金属間化合物であるNi 3 PがCu-Ni-Sn合金相の粒界に介在し、さらにそれ 自体微細な金属間化合物、主に炭化物からな る硬質の高速度工具鋼成分がCu-Ni-Sn合金相と Fe相の粒界に分散含有されているので多孔質 焼結合金層の疲労耐久性、耐荷重性及び摩擦 摩耗特性が大幅に向上される。

 本発明の複層焼結摺動部材において、裏 に一体に拡散接合された多孔質焼結合金層 は、潤滑油が5~20容量%の割合で含有されて るとよい。潤滑油としては、エンジン油、 ア油などの鉱油、エステル油などの合成油 用途に応じて適宜選択される。

 この潤滑油は、多孔質焼結合金層に分散 有された黒鉛成分自体の潤滑性と相俟って 擦摩耗特性を向上させることができる。

 本発明の複層焼結摺動部材において、高 度工具鋼成分は、好ましくはタングステン( W)系高速度工具鋼又はモリブデン(Mo)系高速度 工具鋼が使用され、とくにMo系高速度工具鋼 好適に使用される。

 本発明の複層焼結摺動部材において、裏 は、鉄鋼製パイプ又は平板状の鋼板からな ているとよく、該多孔質焼結合金層は鉄鋼 パイプの円筒状の内面又は板、ブロック等 平板状の鋼板の平坦な表面に一体に拡散接 されているとよい。

 円筒状の内面に多孔質焼結合金層を一体 拡散接合した複層焼結摺動部材は円筒軸受 して、また平坦な表面に多孔質焼結合金層 一体に拡散接合した複層焼結摺動部材は、 のままの形態で、摺動板、すべり板として は多孔質焼結合金層を内側にして円筒状に 回した形態で、所謂巻きブッシュとして、 らにはブロックの平坦な表面に多孔質焼結 金層を一体に拡散接合させた複層焼結摺動 材は、治工具を構成する部品として適用さ る。

 本発明によれば、Sn成分3~10重量%と、Ni成分1 0~30重量%と、P成分0.5~4重量%と、Fe成分30~50重 %と、高速度工具鋼成分1~10重量%、黒鉛成分1~ 5重量%とCu成分20~55重量%とを含む多孔質銅系 結体が裏金に一体に拡散接合されてなる複 焼結摺動部材であって、焼結時に生成され 硬質の金属間化合物であるNi 3 PがCu-Ni-Sn合金相の粒界に介在し、さらにそれ 自体微細な金属間化合物、主に炭化物からな る硬質の高速度工具鋼成分がCu-Ni-Sn合金相と Fe相の粒界に分散含有されているので多孔質 焼結合金層の疲労耐久性、耐荷重性及び摩擦 摩耗特性が大幅に向上されており、高面圧が 作用する用途への適用を可能とした複層焼結 摺動部材を提供することができる。

 以下、本発明の複層焼結摺動部材につい 詳細に説明する。

 本発明の好ましい例の複層焼結摺動部材 は、Sn成分3~10重量%と、Ni成分10~30重量%と、P 成分0.5~4重量%と、Fe成分30~50重量%と、高速度 具鋼成分1~10重量%と、黒鉛成分1~5重量%と、C u成分20~55重量%とを含む多孔質焼結合金層が 金に一体に拡散接合されている。

 斯かる複層焼結摺動部材において、多孔 焼結合金層を形成するCu成分は、多孔質焼 合金層の地の強度、靱性、機械的強度及び 摩耗性の向上に寄与する。Sn成分は、焼結過 程における232℃の温度から液相を生じ、Cu成 及び後述するNi成分と合金化してCu-Ni-Sn合金 を形成し、多孔質焼結合金層の地の強度、靭 性、機械的強度及び耐摩耗性の向上に寄与す る。Sn成分は、その配合量が3重量%未満では 述した効果を充分発揮しなく、また10重量% 超えて配合すると焼結性に悪影響を及ぼす したがって、Sn成分の配合量は3~10重量%、就 5~8重量%が適当である。

 Ni成分は、焼結時に後述するP成分と一部液 を形成し、かつ前記Cu-Ni-Sn合金とぬれ性の いNi-P合金(Ni 3 P)を生成し、Cu-Ni-Sn合金相の多孔質焼結合金 と裏金との界面に介在して、界面においてNi 成分の拡散による合金化と相俟って多孔質焼 結合金層を裏金に強固に接合一体化させる作 用をなす。また、焼結時に生成されたNi 3 Pの金属間化合物は硬質であり、これがCu-Ni-Sn 合金相の粒界に介在することにより多孔質焼 結合金層に耐摩耗性の向上をもたらす。Ni成 の配合量が10重量%未満では上述した効果が られず、また30重量%を超えて配合しても上 した効果に顕著な差が現れないため、その 合量の上限は30重量%である。したがって、N i成分の配合量は10~30重量%、就中10~20重量%が 当である。

 P成分は、Cu成分と、また成分中のNi成分 一部合金化して多孔質焼結合金層の地の強 を高めると共に耐摩耗性の向上に寄与する P成分は還元力が強いため、裏金の表面をそ 還元作用により清浄化し、前述したNi成分 裏金表面への拡散による合金化を助長する 果がある。なお、Ni-P合金の効果については 述したとおりである。P成分はその配合量が 0.5重量%未満では上述した効果を充分発揮し く、また4重量%を超えて配合するNi-P合金の 生量が多くなり却って耐摩耗性を低下させ 虞がある。したがって、P成分は0.5~4重量%、 中0.5~2重量%が適当である。P成分としては、 P-Cu合金、例えばCu-15%P合金の形態で配合され のがよい。

 Fe成分は、Cu成分と固溶しないが合金組織 中に分散して、とくに地の強度を高める効果 を発揮するとともに焼結時にCu成分の一部がF e成分に拡散する際、焼結体の多孔性を増大 せる効果を発揮する。一般にFe成分はP成分 存在下において、P成分と合金化して硬いFe-P 合金を析出する傾向を示すが、本発明におい てはFe-Pの合金化の温度よりも低い温度でNi-P 合金化するので、Ni-P合金化によりFe-Pの合 化を抑制する作用を発揮するため、50重量% での比較的多量のFe成分の含有が可能となる 。Fe成分はその配合量が30重量%未満では上記 た効果を充分発揮しなく、また50重量%を超 て配合するとFe-P合金を析出する虞がある。 したがって、Fe成分は30~50重量%、就中35~45重 %が適当である。

 高速度工具鋼(SKH)成分は、それ自体に微 な金属間化合物や炭化物が存在するので、 れが焼結組織中に分散して硬質相としての 割を果たすとともに焼結時に高速度工具鋼 分からの合金元素が拡散して地の強化をも らし(所謂分散強化)、銅系焼結体の耐摩耗性 を向上させる。高速度工具鋼成分はその配合 量が1重量%未満では、上記効果を発揮しなく また10重量%を超えて配合すると硬質相の分 する量が多くなり、却って耐摩耗性の低下 来たす。したがって、高速度工具鋼の配合 は、1~10重量%、就中2~3重量%が適当である。 速度工具鋼成分は、日本工業規格(JIS)のG4403 に規定されている高速度工具鋼材の粉末であ り、とくにMo系のSKH40、SKH50ないしSKH59の高速 工具鋼材、すなわちSKH40-C:1.23~1.33%、Si:0.45% 下、Mn:0.40%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr :3.80~4.50%、Mo:4.70~5.30%、W:5.70~6.70%、V:2.70~3.20%、 Co:8.00~8.88%及びFe:残部、SKH50-C:0.77~0.87%、Si:0.70% 以下、Mn:0.45%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、 Cr:3.50~4.50%、Mo:8.00~9.00%、W:1.40~2.00%、V:1.00~1.40% びFe:残部、SKH51-C:0.80~0.88%、Si:0.45%以下、Mn:0. 40%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:3.80~4.50% Mo:4.70~5.20%、W:5.90~6.70%、V:1.70~2.10%及びFe:残部 、SKH52-C:1.00~1.10%、Si:0.45%以下、Mn:0.40%以下、P: 0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:3.80~4.50%、Mo:5.50~6.50 %、W:5.90~6.70%、V:2.30~2.60%及びFe:残部、SKH53-C:1.1 5~1.25%、Si:0.45%以下、Mn:0.40%以下、P:0.030%以下 S:0.030%以下、Cr:3.80~4.50%、Mo:4.70~5.20%、W:5.90~6.7 0%、V:2.70~3.20%及びFe:残部、SKH54-C:1.25~1.40%、Si:0 .45%以下、Mn:0.40%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以 、Cr:3.80~4.50%、Mo:4.20~5.00%、W:5.20~6.00%、V:3.70~4. 20%及びFe:残部、SKH55-C:0.87~0.95%、Si:0.45%以下、M n:0.40%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:3.80~4. 50%、Mo:4.70~5.20%、W:5.90~6.70%、V:1.70~2.10%、Co:4.50~ 5.00%及びFe:残部、SKH56-C:0.85~0.95%、Si:0.45%以下 Mn:0.40%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:3.80~ 4.50%、Mo:4.70~5.20%、W:5.90~6.70%、V:1.70~2.10%、Co:7.0 0~9.00%及びFe:残部、SKH57-C:1.20~1.35%、Si:0.45%以下 、Mn:0.40%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:3.8 0~4.50%、Mo:3.20~3.90%、W:9.00~10.00%、V:3.00~3.50%、Co: 9.50~10.50%及びFe:残部、SKH58-C:0.95~1.05%、Si:0.70% 下、Mn:0.40%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr :3.50~4.50%、Mo:8.20~9.20%、W:1.50~2.10%、V:1.70~2.20%及 びFe:残部、SKH59-C:1.05~1.15%、Si:0.70%以下、Mn:0.40 %以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:3.50~4.50%、 Mo:9.00~10.00%、W:1.20~1.90%、V:0.90~1.30%、Co:7.50~8.50% 及びFe:残部の粉末が推奨される。

 黒鉛成分は、焼結合金組織中に分散含有 れて固体潤滑作用をなすものである。配合 が1重量%未満では固体潤滑作用を期待でき 、また5重量%を超えて配合すると焼結合金層 の強度を低下させる。したがって、黒鉛成分 の配合量は、1~5重量%、就中2~3重量%が適当で る。

 つぎに、上記成分組成からなる焼結合金 を裏金に一体に接合して複層とした複層焼 摺動部材の製造方法について説明する。

 この複層焼結摺動部材を形成する裏金と ては、一般構造用炭素鋼鋼管(JIS-G-3444)若し は機械構造用炭素鋼鋼管(JIS-G-3445)からなる 製パイプ、又は一般構造用圧延鋼材(JISG3101) 若しくは機械構造用炭素鋼鋼材(JIS-G-4051)から なる鋼板が使用される。

 以下、各裏金を使用した複層焼結摺動部 の製造方法について説明する。

 <裏金に鋼製パイプを使用した複層焼結摺 動部材の製造方法>
 Cu粉末20~55重量%に対し、Sn粉末3~10重量%と、N i粉末10~30重量%と、P-Cu合金(Cu-15%P)粉末のP成分 0.5~4重量%と、Fe粉末30~50重量%と高速度工具鋼 末1~10重量%と、黒鉛粉末1~5重量%とをV型ミキ サーで混合して混合粉末を作製する。

 この混合粉末を所要の金型内で2~7トン/cm 2 (196~686MPa)の範囲の圧力下で加圧し、該混合粉 末からなる円筒状の成形圧粉体を作製する。 この成形圧粉体を鋼製パイプの内面に圧入嵌 合したのち、中性もしくは還元性雰囲気に調 整した加熱炉内に置き、900~1000℃の温度で60~9 0分間焼結し、該成形圧粉体の焼結と同時に 成形圧粉体の鋼製パイプの内面への拡散接 を行わせ、鋼製パイプの内面に焼結合金層 一体に拡散接合した複層焼結摺動部材を作 する。

 この製造方法において、焼結時における 形圧粉体の膨張量(外径側)が鋼製パイプの 張量より小さい場合は、成形圧粉体の内面 セラミックス粉末を充填して成形圧粉体の 径側への膨張量を拘束し、これを外径側に かわせ、さらに焼結後の冷却時における成 圧粉体の内径側への収縮量を拘束し、これ 外径側に向かわせることにより、鋼製パイ と成形圧粉体との間に強固な接合を得るこ ができる。

 このようにして作製された複層焼結摺動 材に機械加工を施して所望の円筒軸受を作 したのち、含油処理を施すことにより、該 孔質焼結合金層に潤滑油が5~20容量%の割合 含有される。

 <裏金に鋼板を使用した複層焼結摺動部材 の製造方法>
 裏金に鋼板を使用する場合は、その製造方 として粉末圧延法を利用することが好まし 、この粉末圧延法を利用した製造方法につ て説明する。上記した複層焼結摺動部材の 造方法における混合粉末と同様の混合粉末 作製し、該混合粉末に、粉末結合剤を添加 、均一に混合して湿潤性を有する原料粉末 作製する。粉末結合剤としては、ヒドロキ プロピルセルロース(HPC)が好ましく使用さ る。

 該原料粉末を双ロールを持つ横型圧延ロ ルに供給し、成形圧粉体からなる圧延シー を作製する。

 該圧延シートを前記裏金上に重ね合わせた ち、これを中性又は還元性雰囲気に調整し 焼結炉内で900~1000℃の温度で、かつ0.1~5.0kgf/ cm 2 (0.0098~0.49MPa)の圧力下で60~90分間焼結し、圧延 シートの焼結と同時に裏金への焼結合金層の 拡散接合を行わしめ、該焼結合金層と裏金と が拡散接合により一体化された複層焼結摺動 部材を作製する。

 このようにして作製された複層焼結摺動 材に機械加工を施して所望の摺動板又はす り板を作製したのち、含油処理を施すこと より、該多孔質焼結合金層に潤滑油が5~20容 量%の割合で含有される。

 上記した製造方法において、焼結過程にお る232℃の温度で成分中のSn成分の液相が生 され、更に875℃付近の温度からNi-P合金(Ni 3 P)を主体とする液相が生成されて焼結が進行 る、所謂液相焼結である。これらの製造方 で作製された複層焼結摺動部材の多孔質焼 合金層のCu-Ni-Sn合金の粒界に硬質のNi 3 Pが介在され、かつそれ自体微細な金属間化 物や炭化物を含む硬質の高速度工具鋼成分 Cu-Ni-Sn合金相とαFe相の粒界に分散含有され いるので、多孔質焼結合金層の疲労耐久性 耐荷重特性及び摩擦摩耗特性が大幅に向上 れ、結果として高面圧が作用する用途への 用が可能となる。

 以下、実施例により本発明を詳細に説明 るが、本発明はその要旨を超えない限り、 下の実施例に何ら限定されないのである。

 実施例1~5及び比較例1~2は、複層焼結摺動 材を円筒状の形態の摺動部材(円筒軸受)に 用した例である。

 実施例1~5
 内径33.6mm、外径45mm、長さ20mmの寸法を有す 一般構造用炭素鋼鋼管(STK400)からなる鋼製パ イプを準備した。

 250メッシュの篩を通過するアトマイズSn 末5重量%と、250メッシュの篩を通過する還元 Ni粉末15重量%と、120メッシュの篩を通過する 砕P-Cu合金(P15%)粉末7重量%と、240メッシュの を通過する還元Fe粉末30~45重量%と、200メッ ュの篩を通過する水アトマイズ高速度工具 粉末2~3重量%、48メッシュの篩を通過し250メ シュの篩を通過しない天然黒鉛粉末2重量%と 、残部が150メッシュの篩を通過する電解Cu粉 とをV型ミキサーに投入し、30分間混合して 合粉末を得た(Sn:5重量%、Ni:15重量%、P:1.05重 %、Fe:30~45重量%、高速度工具鋼:2~3重量%、天 黒鉛:2重量%、Cu:残部)。

 該混合粉末を円筒状の中空部を備えた金型 中空部に装填し、成形圧力5トン/cm 2 (490MPa)で成形して内径27.4mm、外径33.6mm、長さ2 0mmであって、密度が6.6~6.8g/cm 3 を有する円筒状の成形圧粉体を作製した。

 成形圧粉体を該鋼製パイプの内面にその軸 向から圧入嵌合した後、該成形圧粉体の内 にセラミックス粉末(Al 2 O 3 :83重量%とSiO 2 :17重量%の混合物)を充填し、これをアンモニ 分解ガス雰囲気に調整した焼結炉において 960℃の温度で85分間焼結し、該成形圧粉体 焼結と同時に鋼製パイプの内面との拡散接 を行わしめ、焼結合金体と鋼製パイプとを 合一体化した。

 ついで、これに機械加工を施して内径30mm、 外径45mm、長さ20mmの複層焼結摺動部材を得た この複層焼結摺動部材の多孔質焼結合金層 密度は6.8~7.0g/cm 3 であった。この複層焼結摺動部材に含油処理 を施したところ、該多孔質焼結合金層への含 油率は13~15容量%であった。

 比較例1
 上記実施例と同様の内径33.6mm、外径45mm、長 さ20mmの寸法を有する一般構造用炭素鋼管か なる鋼製パイプを準備した。

 250メッシュの篩を通過するアトマイズSn 末8重量%と、250メッシュの篩を通過する還元 Ni粉末28重量%と、120メッシュの篩を通過する 砕P-Cu合金(P15%)粉末7重量%と、150メッシュの を通過する天然黒鉛粉末5重量%と、残部が15 0メッシュの篩を通過する電解Cu粉末とをV型 キサーに投入し、30分間混合して混合粉末を 得た(Sn:8重量%、Ni:28重量%、P:1.05重量%、天然 鉛:5重量%、Cu:残部)。

 該混合粉末を円筒状の中空部を備えた金型 中空部に装填し、成形圧力5トン/cm 2 (490MPa)で成形して内径27.4mm、外径33.6mm、長さ2 0mmであって、密度が5.8g/cm 3 を有する円筒状の成形圧粉体を作製した。

 成形圧粉体を該鋼製パイプの内面にその 方向から圧入嵌合した後、該成形圧粉体の 面にセラミックス粉末(実施例と同じ)を充 し、これをアンモニア分解ガス雰囲気に調 した焼結炉において、960℃の温度で60分間焼 結し、該成形圧粉体の焼結と同時に鋼製パイ プの内面との拡散接合を行わしめ、焼結合金 体と鋼製パイプとを接合一体化した。

 ついで、これに機械加工を施して内径30mm、 外径45mm、長さ20mmの複層焼結摺動部材を得た この複層焼結摺動部材の多孔質焼結合金層 密度は6.0g/cm 3 であった。この複層焼結摺動部材に含油処理 を施したところ、該多孔質焼結合金層への含 油率は15容量%であった。

 比較例2
 上記実施例と同様の内径33.6mm、外径45mm、長 さ20mmの寸法を有する一般構造用炭素鋼鋼管 らなる鋼製パイプを準備した。

 250メッシュの篩を通過するアトマイズSn 末8重量%と、150メッシュの篩を通過する還元 Ni粉末28重量%と、120メッシュの篩を通過する 砕P-Cu合金(P15%)粉末7重量%と、150メッシュの を通過する天然黒鉛粉末5重量%と、残部が15 0メッシュの篩を通過する電解Cu粉末とをV型 キサーに投入し、10分間混合して混合粉末を 得た(Sn:8重量%、Ni:28重量%、P:1.05重量%、天然 鉛:5重量%、Cu:残部)。

 この混合粉末60重量%に対し、100メッシュ 篩を通過する還元Fe粉末を40重量%混合し、V ミキサーで10分間混合して混合粉末を得た(S n:4.8重量%、Ni:16.8重量%、P:0.63重量%、Fe:40重量% 、天然黒鉛:3重量%、Cu:残部)。

 該混合粉末を円筒状の中空部を備えた金型 中空部に装填し、成形圧力5トン/cm 2 (490MPa)で成形して内径27.4mm、外径33.6mm、長さ2 0mmであって、密度が6.0g/cm 3 を有する円筒状の成形圧粉体を作製した。

 以下、比較例1と同様の方法で内径30mm、外 45mm、長さ20mmの複層焼結摺動部材を得た。こ の複層焼結摺動部材の多孔質焼結合金層の密 度は6.4g/cm 3 であった。この複層焼結摺動部材に含油処理 を施したところ、該多孔質焼結合金層への含 油率は14容量%であった。

 次に、上記実施例1~5及び比較例1~2で得た 層焼結摺動部材について、表1に示す試験条 件で摩擦摩耗特性を、また表2に示す試験条 で疲労耐久性を試験した。

 (表1)
 (摩擦摩耗試験条件)
 負荷面圧  100MPa(1020kgf/cm 2 )
 摺動速度  7.83×10 -3 m/sec(0.47m/min)
 揺動角度  90°
 耐久時間  100時間
 相手軸材  高周波焼入れしたクロムモリブ デン鋼(SMC440)
 運動形態  相手軸連続ラジアルジャーナル 揺動運動
 潤滑条件  試験開始前にグリース塗付

 (表2)
 (耐疲労性試験条件)
 円筒軸受(複層焼結摺動部材)寸法 内径30mm 外径45mm、長さ
                  20mm(受圧面積6cm 2 )
 最大荷重             88MPa(898kgf/cm 2 )
 最小荷重             0.2MPa(2kgf/cm 2 )
 荷重サイクル           20Hz
 試験方法 円筒軸受(受圧面積6cm 2 )に1秒間に最大荷重と最小荷重を交互に20 回 負荷し、摺動面となる焼結合金層に亀裂が生 じるまでのサイクル数(最大1000万サイクル)で 評価した。

 実施例及び比較例の複層焼結摺動部材の成 組成、摩擦摩耗特性及び耐疲労性の試験結 を表3及び表4に示す。
 
 

 表4中、比較例1及び2の複層焼結摺動部材 、摩擦摩耗試験において試験時間が40時間 超えた時点で摩擦係数が急激に上昇したた 、その時点で試験を中止した。摩耗量は試 時間40時間での摩耗量を示した。

 以上の試験結果から、実施例1~5の複層焼 摺動部材は、高負荷条件(100MPa)においても 擦係数が低く安定した摺動を示し、摩耗量 22~28μmと少なく優れた摩擦摩耗特性を示した 。一方、比較例1及び2の複層焼結摺動部材は 高負荷条件においては試験時間100時間を達 できず試験を中止した。また、疲労耐久性 試験においては、実施例1~5の複層焼結摺動 材は、比較例1及び2の複層焼結摺動部材の10 0倍の疲労耐久性を示した。

 以上のように、実施例からなる複層焼結 動部材は、従来の複層焼結摺動部材の許容 圧である49MPaを遥かに超えた荷重条件にお ても優れた摩擦摩耗特性を及び耐疲労性を しており、高面圧が作用する用途、例えば 出成形機のトグルブッシュ、油圧ショベル の建設機械の関節部軸受への適用を可能と るものである。

 次に、複層焼結摺動部材を平板状の形態 摺動板に適用した実施例について説明する

 実施例6~7及び比較例3、平板状の複層焼結 摺動部材についての例である。

 実施例6~7
 幅170mm、長さ600mm、厚さ5mmの寸法を有する、 一般構造用圧延鋼材(SS400)からなる鋼板を準 した。

 混合粉末として、前記実施例1及び実施例 4と同様の混合粉末を作製した。該混合粉末 対し、それぞれ5重量%HPC水溶液(HPC100g、エチ アルコール120ml及び水1780ml)を0.3重量%添加し 、5分間V型ミキサーで均一に混合し、これを 料粉末とした。

 該原料粉末を双ロールを持つ横型圧延ロー にロール間隔0.3mm、ロール速度0.3m/minの条件 下で通し、密度6.8g/cm 3 、厚さ2mmの圧延シート(成形圧粉体)を作製し 。これを幅170mm、長さ600mmの寸法に切断し、 これを鋼板上に重ね合わせたのち、アンモニ ア分解ガス雰囲気に調整された焼結炉におい て、圧力0.7kgf/cm 2 (0.069MPa)をかけながら、960℃の温度で85分間焼 結し、圧延シートの焼結と同時に鋼板との拡 散接合を行わしめ、焼結合金層と鋼板とが拡 散接合された複層摺動部材を作製した。

 これに機械加工を施し、一辺35mm、厚さ6.5mm 複層焼結摺動部材を得た。この複層焼結摺 部材の多孔質焼結合金層の密度は6.9g/cm 3 であった。この複層焼結摺動部材に含油処理 を施したところ、多孔質焼結合金層への含油 率は15容量%であった。

 比較例3
 上記実施例6~7と同様の幅170mm、長さ600mm、厚 さ5mmの寸法を有する、一般構造用圧延鋼材か らなる鋼板を準備した。

 250メッシュの篩を通過する噴霧Sn粉末5重 %と、150メッシュの篩を通過する還元Ni粉末2 0重量%と、120メッシュの篩を通過する搗砕P-Cu 合金(P15%)粉末7重量%と、300メッシュの篩を通 する還元Fe粉末32重量%と、48メッシュの篩を 通過し250メッシュの篩を通過しない天然黒鉛 粉末5重量%と、残部が150メッシュの篩を通過 る電解Cu粉末とをV型ミキサーに投入し、30 間混合して混合粉末を得た(Sn:5重量%、Ni:20重 量%、P:1.05重量%、Fe:32重量%、天然黒鉛:5重量% Cu:残部)。 

 この混合粉末に対し、5重量%HPC水溶液(実 例と同じ)を0.3重量%添加し、5分間V型ミキサ ーで均一に混合し、これを原料粉末とした。

 該原料粉末を双ロールを持つ横型圧延ロー にロール間隔0.3mm、ロール速度0.3m/minの条件 下で通し、密度5.90g/cm 3 、厚さ2mmの圧延シート(成形圧粉体)を作製し 。これを幅170mm、長さ600mmの寸法に切断し、 これを前記鋼板上に重ね合わせた。

 ついで、アンモニア分解ガス雰囲気に調整 た焼結炉において、圧力0.7kgf/cm 2 (0.069MPa)をかけながら、940℃の温度で40分間焼 結し、圧延シートの焼結と同時に鋼板との拡 散接合を行わしめ、焼結合金層と鋼板とが接 合一体化された複層焼結摺動部材を作製した 。

 これに機械加工を施し、一辺35mm、厚さ6.5mm 複層焼結摺動部材を得た。この複層焼結摺 部材の多孔質焼結合金層の密度は6.0g/cm 3 であった。この複層焼結摺動部材に含油処理 を施したところ、多孔質焼結合金層への含油 率は26容量%であった。

 次に、上記実施例6~7及び比較例3で得た複 層焼結摺動部材について、表5に示す試験条 で摩擦摩耗特性を試験した。

 (表5)
 (摩擦摩耗試験条件)
  負荷面圧  100MPa(1020kgf/cm 2 )
  摺動速度  0.12m/sec(7m/min)
  ストローク 80mm
  往復回数  100,000回
  相手材   ねずみ鋳鉄(FC250)板
  潤滑条件  試験開始前にグリース塗付

 実施例6~7及び比較例3の複層焼結摺動部材 の成分組成、摩擦摩耗特性の試験結果を表6 示す。

 表6中、比較例3の複層焼結摺動部材は、 験時間が30時間を超えた時点で摩擦係数が急 激に上昇したため、その時点で試験を中止し た。摩耗量は試験時間30時間での摩耗量を示 た。

 以上の試験結果から、実施例6~7の複層焼 摺動部材は、高負荷条件(100MPa)においても 擦係数が低く安定した摺動を示し、摩耗量 35μm以下と少なく優れた摩擦摩耗特性を示し た。一方、比較例3の複層焼結摺動部材は、 負荷条件においては試験時間100時間を達成 きず試験を中止した。

 以上のように、本発明の複層焼結摺動部材 、裏金に一体に接合された多孔質焼結合金 を形成するNi成分が焼結時に裏金の表面に 散してその界面を合金化し、さらに成分中 P成分と一部液相を形成してCu-Ni-Sn合金と親 性のよいNi-P合金(Ni 3 P)を生成し、このNi 3 Pが裏金と多孔質焼結合金層との界面に介在 て、界面においてNi成分の拡散による合金化 と相俟って多孔質焼結合金層を裏金に強固に 接合一体化させるとともに、焼結時に生成さ れた硬質の金属間化合物であるNi 3 PがCu-Ni-Sn合金相の粒界に介在し、さらにそれ 自体微細な金属間化合物、主に炭化物からな る硬質の高速度工具鋼成分がCu-Ni-Sn合金相と Fe相の粒界に分散含有されているので多孔質 焼結合金層の疲労耐久性、耐荷重性及び摩擦 摩耗特性が大幅に向上され、高面圧が作用す る用途への適用が可能となる。