財津 享司 (())
KATO, Hiroyuki (())
株式会社神戸製鋼所 (〒85 兵庫県神戸市中央区脇浜町二丁目10番26号 Hyogo, 6518585, JP)
ZAITSU, Kyoji (())
財津 享司 (())
| 内部拡散法によってNb 3
Sn超電導線材を製造する際に用いるNb 3
Sn超電導線材前駆体において、 中央にSnまたはSn基合金芯が配置され、その周囲にCuまたはCu基合金マトリクスと複数本のNbまたはNb基合金フィラメントとが配置されたモノエレメント線を複数本束ねて配置して構成されるマルチエレメント線を備え、 前記マルチエレメント線の前記モノエレメント線の一部は、Nb,Ta,Ti,W,MoおよびHfよりなる群から選ばれる1種以上の金属または合金からなる棒状の補強部材をCuまたはCu基合金に埋設した補強用エレメント線によって置き換えて配置されており、 前記棒状の補強部材の断面積の割合は、線材の全断面積に対して2~25%であることを特徴とする、Nb 3 Sn超電導線材前駆体。 |
| 前記モノエレメント線および補強用エレメント線は、断面外形状が同一の六角形状である、請求項1に記載のNb 3 Sn超電導線材前駆体。 |
| 棒状の補強部材の表面に被覆されるCuまたはCu基合金層は、その最小厚みが拡散熱処理前の段階で20~100μmである、請求項2に記載のNb 3 Sn超電導線材前駆体。 |
| 前記補強用エレメント線は、線材中心を中心点として点対称となるように配置された、請求項1に記載のNb 3 Sn超電導線材前駆体。 |
| 前記補強用エレメント線は、線材断面の外周囲に沿って連続的または断続的に複数本配置されると共に、その内側に前記モノエレメント線が配置された、請求項4に記載のNb 3 Sn超電導線材前駆体。 |
| 前記補強用エレメント線は、線材断面の中央部に相互に接触させて集合配置されると共に、その周囲に前記モノエレメント線が配置された、請求項4に記載のNb 3 Sn超電導線材前駆体。 |
| 請求項1~6のいずれか1項に記載の超電導線材前駆体を拡散熱処理することによってNb 3 Sn超電導相を形成した、Nb 3 Sn超電導線材。 |
本発明は、Nb 3 Sn超電導線材を内部Sn法によって製造するた の前駆体(超電導線材前駆体)およびこうした 前駆体によって製造されるNb 3 Sn超電導線材に関する。特に本発明は、超電 マグネットの素材として有用なNb 3 Sn超電導線材およびその前駆体に関するもの ある。
超電導線材が実用化されている分野には 高分解能核磁気共鳴(NMR)分析装置や核融合 置、加速器等に用いられる超電導マグネッ がある。これらの超電導マグネットでは、NM R信号の分解性能向上やデータ習得の短時間 の要求から高磁場化が求められている。超 導マグネットの高磁場化・コンパクト化に しては、超電導マグネットに使用する超電 線材の高性能化が必須となっており、特に 電導マグネットの最内層部に使用される超 導コイルの高性能化が求められている。
超電導マグネットに使用される超電導線材 しては、Nb 3 Sn線材が実用化されており、このNb 3 Sn超電導線材の製造には主にブロンズ法が採 されている。このブロンズ法では、Cu-Sn基 金(ブロンズ)マトリクス中に、複数のNbまた Nb基合金からなる芯材を埋設して複合線材 構成される。この複合線材は、押出しまた 伸線加工等の縮径加工を施すことによって 上記芯材を細径化してフィラメント(以下、 Nb基フィラメント」と呼ぶ)となる。このNb フィラメントとブロンズからなる複合線材 複数束ねて線材群となし、その外周に安定 の為の銅(安定化銅)を配置した後、更に減面 加工する。引き続き、縮径加工後の上記線材 群を600℃以上、800℃以下程度で熱処理(拡散 処理)することにより、Nb基フィラメントと ロンズマトリクスの界面にNb 3 Sn化合物層が生成される。
しかしながら、この方法ではブロンズ中に 溶できるSn濃度に限界があり(15.8質量%以下) 生成されるNb 3 Sn化合物層の厚さが薄く、また結晶性が劣化 てしまい、高い臨界電流密度Jcが得られな という欠点がある。超電導マグネット(以下 「NMRマグネット」で代表することがある)は 、線材の臨界電流密度Jcが高いほど、NMRマグ ットをコンパクトにすることができ、マグ ットのコストダウンが可能である。また、 体中の超電導部分の面積を小さくできるこ から、線材自体のコストダウンも可能とな 。
Nb 3 Sn超電導線材を製造する方法としては、上記 ロンズ法の他に、内部拡散法も知られてい 。この内部拡散法(「内部Sn法」とも呼ばれ いる)では、ブロンズ法のような固溶限によ るSn濃度に限界がないのでSn濃度をできるだ 高く設定でき、良質なNb 3 Sn相が生成可能であるため、高い臨界電流密 Jcが得られるといわれている。また上記ブ ンズ法線材では、Cu-Sn合金が冷間加工中に加 工硬化を起こすため多数回の焼鈍が必要とな るが、内部Sn法ではほとんど焼鈍の必要はな 、納期短縮も可能である。そのため、内部 散法によって製造される超電導線材(以下、 「内部拡散法Nb 3 Sn超電導線材」と呼ぶことがある)をNMRマグネ ット用途へ適用することが望まれている。
内部Sn法では、図1(Nb 3 Sn超電導線材製造用前駆体の模式図)に示すよ うに、CuまたはCu基合金(以下、「Cuマトリク 」と呼ぶことがある)4の中央部に、SnまたはS n基合金からなる芯材(以下、「Sn基金属芯」 呼ぶことがある)3aを埋設する。そして、Sn基 金属芯3aの周囲のCuマトリクス4中に、複数のN bまたはNb基合金からなる芯材(以下、「Nb基金 属芯」と呼ぶことがある)2を相互に接触しな ように配置して前駆体(超電導線材製造用前 駆体)1とする。これを伸線加工した後、熱処 (拡散熱処理)によってSn基金属芯3a中のSnを 散させ、Nb基金属芯2と反応させることによ て線材中にNb 3 Sn相を生成させる(例えば、特許文献1)。
また上記のような前駆体においては、図2 に示すように、前記Nb基金属芯2とSn基金属芯3 aが配置されたCuマトリクス4aと、その外部の 定化銅層4bの間に拡散バリア層6aを配置した 構成(前駆体5a)を採用するのが一般的である この拡散バリア層6aは、例えばNb層もしくはT a層、または、Nb層及びTa層の2層からなり、拡 散熱処理の際にSn基金属芯3a中のSnが外部に拡 散してしまうことを防止し、超電導線材内で のSnの純度を高める作用を発揮するものであ 。
上記のような、超電導線材製造用前駆体 製造は、下記の手順で行われる。まず、Nb 金属芯をCuマトリスク管に挿入し、押出し加 工や伸線加工等の縮径加工を施して複合体と し(通常、断面形状が六角形に形成される)、 れを適当な長さに裁断する。そして、Cu製 筒を有し、拡散バリア層6aを設けまたは設け ないビレット内に前記複合体を充填し、その 中央部にCuマトリクス(Cu製中実ビレット)を配 置して押出し加工した後、中央部のCuマトリ スを機械的に穿孔してパイプ状複合体を構 する。あるいは、他の方法としては、Cu外 とCu内筒で構成され、拡散バリア層6aを有し たは有さない中空ビレット内(外筒と内筒の 間)に前記複合体を複数本充填してパイプ押 しして、パイプ状複合体を構成する。
そして、これらの方法で作製されたパイ 状複合体の中央空隙部内に、Sn基金属芯3aを 挿入して縮径加工して、前記図1、2に示した うな、Nb基金属芯2とSn基金属芯3aを含む前駆 体エレメントが製造される。以下では、これ らのものを、「モノエレメント線」と呼ぶこ とがある。
上記のようにして構成された各前駆体(モ ノエレメント線)は、図1のモノエレメント線 場合は拡散バリア層6b(後記図3参照)を有す Cuマトリクス管内に、図2のシングルエレメ ト線の場合は拡散バリア層を含まないCuマト リクス管内に、複数本束ねた集合体として充 填され、更に縮径加工されて多芯型の超電導 線材製造用前駆体(以下、「マルチエレメン 線」と呼ぶことがある)とされる。
図3、4は、マルチエレメント線の構成例を
したものである。このうち図3は、前記図1に
示した前駆体1(モノエレメント線)を、拡散バ
リア層6bおよび安定化銅4dを有するCuマトリク
ス4c内に複数本束ねた集合体として埋設し、
の部分が超電導マトリクス部として構成さ
るマルチエレメント線7としたものである(
えば、非特許文献1)。図4は、前記図2に示し
前駆体5a(モノエレメント線)を、拡散バリア
層を有さないCuマトリクス4e内に複数本束ね
集合体として埋設し、その部分が超電導マ
リクス部として構成されるマルチエレメン
前駆体8としたものである(例えば、非特許文
献2)。
超電導電流は、前駆体線材を作製した後に 散熱処理(通常600~700℃で100~300時間程度)を施 すことによって生成させたNb 3 Sn相を流れることになる。そしてこのNb 3 Sn相は、機械的な歪に対して非常に敏感であ 、僅か1%程度の歪量であっても、急激に超 導特性(特に、臨界電流密度Jc)が低下するこ になる。
Nb 3 Sn超電導線材が使用される場合、その殆ど全 が超電導マグネットの状態となるが、超電 マグネットではマグネットの磁界と通電電 によって、線材に対して常時電磁力が作用 ることになる。またNb 3 Sn超電導線材では、Nb 3 Sn生成熱処理が700℃に近い高温で行われ、4.2K 以下の極低温で通電されるため、Nb 3 Sn相には周囲に配置されるCuの熱収縮による も作用することになり、歪を受けて特性が 化することになる。
前述の如く、内部拡散法Nb 3 Sn超電導線材では、ブロンズ法で製造されるN b 3 Sn超電導線材に比べて高い臨界電流密度Jcが られるものである。こうした特性は、線材 位断面積内におけるNb 3 Sn相面積がブロンズ法によって作製されたNb 3 Sn超電導線材(以下、「ブロンズ法Nb 3 Sn超電導線材」と呼ぶことがある)に比べて大 きいことに起因しているものと考えられる。 このことは、内部拡散法Nb 3 Sn超電導線材では、良好な超電導特性が得ら る分だけ歪に対して非常に敏感であるとい 問題を含むことを意味する。
こうした事情の下において、内部拡散法Nb 3 Sn超電導線材は、実用上は電磁力を加味した 雑なマグネット設計が強いられることにな 。超電導線材は耐え得る電磁力(特性が劣化 しない電磁力範囲)によって使用状態が制限 れており、内部拡散法Nb 3 Sn超電導線材が本来備えている高い超電導特 を十分に発揮するところまでに至っていな のが実情である。
本発明はこうした状況の下でなされたもの あって、その目的は、内部拡散法Nb 3 Sn超電導線材が備えている優れた超電導特性 十分に発揮させるべく、内部拡散法Nb 3 Sn超電導線材における機械的強度の強化を図 ことである。このために本発明は、従来の ロンズ法Nb 3 Sn超電導線材を超電導特性および強度の両面 凌駕することのできる内部拡散法Nb 3 Sn超電導線材、およびそのための前駆体(超電 導線材製造用前駆体)を提供する。
上記目的を達成することのできた本発明のN b 3 Sn超電導線材前駆体とは、内部拡散法によっ Nb 3 Sn超電導線材を製造する際に用いるNb 3 Sn超電導線材前駆体において、中央にSnまた Sn基合金芯が配置され、その周囲にCuまたはC u基合金マトリクスと複数本のNbまたはNb基合 フィラメントとが配置されたモノエレメン 線を複数本束ねて配置して構成されるマル エレメント線を備え、前記マルチエレメン 線の前記モノエレメント線の一部は、Nb,Ta,T i,W,MoおよびHfよりなる群から選ばれる1種以上 の金属または合金からなる棒状の補強部材を CuまたはCu基合金に埋設した補強用エレメン 線によって置き換えて配置されており、前 棒状の補強部材の断面積の割合は、線材の 断面積に対して2~25%である点に要旨を有する ものである。
本発明の上記Nb 3 Sn超電導線材前駆体においては、その構成例 して、前記モノエレメント線および補強用 レメント線は、断面外形状が同一の六角形 であるものが挙げられる。また、前記棒状 補強部材の表面に被覆されるCuまたはCu基合 金層は、その最小厚みが拡散熱処理前の段階 で20~100μmであることが好ましい。
前記補強用エレメント線は、線材中心を中
点として点対称となるように配置されたも
であることが好ましい。こうした配置の具
的な構成としては、例えば以下のものが挙
られる。
(a)前記補強用エレメント線が、線材断面の
周囲に沿って連続的または断続的に複数本
置されると共に、その内側に前記モノエレ
ント線が配置されたもの。
(b)前記補強用エレメント線が、線材断面の
央部に相互に接触させて集合配置されると
に、その周囲に前記モノエレメント線が配
されたもの。
上記のような各種超電導線材製造用前駆体 用いて、拡散熱処理することによって、希 する超電導特性(臨界電流密度Jcおよび強度) を発揮するNb 3 Sn超電導線材を製造することができる。
本発明では、内部拡散法によってNb 3 Sn超電導線材を製造する際に構成される前駆 (マルチエレメント線)において、本来Nb 3 Sn相を形成するために配置されるモノエレメ ト線の一部を、Nb,Ta,Ti,W,MoおよびHfよりなる から選ばれる1種以上の金属または合金から なる棒状の補強部材を埋設した補強用エレメ ント線によって、所定の面積割合となるよう に置き換えて配置する構成を採用した。これ により、良好な超電導特性を維持しつつ強度 的にも十分な超電導線材を得ることができた 。
1,5a 超電導線材製造用前駆体(モノエレメン
線)
2 NbまたはNb基合金芯(Nb基金属芯)
3a SnまたはSn基合金芯(Sn基金属芯)
4,4a,4c,4e CuまたはCu基合金マトリクス
6a,6b 拡散バリア層
7,8 超電導線材製造用前駆体(マルチエレメン
ト線)
10 内部拡散法エレメント線(モノエレメント
)
11 補強用エレメント線
12 Cu製パイプ
本発明の前駆体線材は、前記図3、4に示 たようなマルチエレメント線(図3の7、図4の8 )を構成する際に、その構成素材となるモノ レメント線(図3の1、図4の5a)の一部を、Nb,Ta,T i,W,MoおよびHfよりなる群から選ばれる1種以上 の金属または合金からなる棒状の補強部材を 埋設した補強用エレメント線によって置き換 えて配置したものである。これにより、前駆 体を構成するときに特別な作業をすることな く、比較的容易に前駆体を製造することがで きるという利点もある。
内部拡散法Nb 3 Sn超電導線材を製造するときの最終熱処理(拡 散熱処理)は、上述のように600~700℃程度で行 れるが、本発明で補強部材として用いる金 または合金は、こうした熱処理による焼鈍 果によっても軟化の程度が少ないと共に(高 融点金属)、加工性にも優れている必要があ 。また、4.2Kの低温における機械的強度(例え ば、0.2%耐力σ 0.2 )が十分に高いことが必要である。こうした 点から、本発明では、補強部材を構成する 材として、Nb,Ta,Ti,W,MoおよびHfよりなる群か 選ばれる1種以上の金属または合金が選ばれ 。このうち、特に好ましいのはNb,TaおよびTi (少なくともこれらの金属を含むもの)である
上記補強用エレメント線は、上記のよう 金属または合金からなる補強部材をCuまた Cu基合金に埋設して構成されるものである。 補強部材としてTiを採用した場合には、拡散 処理の際にTi部分にCuが拡散反応して硬いCu- Ti化合物が線材内に形成されることになるが こうしたCu-Ti化合物の存在は、最終的な超 導線材の強度向上に寄与することになる。
但し、拡散熱処理までに熱間加工(例えば 、熱間押し出し)を行う必要があるときには その作製中での熱によって、最終伸線加工 でに上記のようなCu-Ti化合物が形成されるこ とになると、伸線加工性に悪影響を及ぼすこ とになる。こうした事態が懸念される場合に は、Ti(補強部材)と、CuまたはCu基合金との界 にNb等によって薄い層(拡散障壁層)を形成し てCuのTiへの拡散を防止するようにすれば良 。なお、こうした拡散障壁層を形成すると には、短時間の熱(押し出し加工時の熱や加 発熱)での化合物生成を抑制すれば良く、そ の後の拡散熱処理でのCuのTiへの拡散を大き 阻害しないようにすることが有効である。 うした観点から、Nb等の拡散障壁層の厚みは Tiの直径の0.2~0.8%程度とすることが好ましい
本発明で用いる補強用エレメント線は、上 のような金属または合金からなる棒状の補 部材をCuまたはCu基合金に埋設することによ って構成される。こうした補強用エレメント 線を前駆体の補強のために配置すると、超電 導部(Nb 3 Sn相)の面積が減少してしまい、全断面積に対 する臨界電流密度Jcが低下することになる。 うしたことから、補強用エレメント線の配 割合を大きくして高強度化を指向すること も限界がある。
補強部材の素材としてTiを用いたときに( なわち、拡散熱処理によってCu-Ti化合物を 成したとき)、補強部材の面積率(線材全体の 面積率に対する補強部材の面積割合)が0.2%耐 や臨界電流密度Jcに与える影響を図5に示す また、補強部材の素材としてNbを用いたと に、補強部材の面積率が0.2%耐力や臨界電流 度Jcに与える影響を図6に示す。なお、0.2%耐 力や臨界電流密度Jcの測定方法や、超電導線 の作製条件については、後記実施例1、2に す通りである。
図5、6から明らかなように、補強部材の面 率が増加するにつれて、強度(0.2%耐力σ 0.2 )が増大すると共に、臨界電流密度Jcが低下す る傾向を示すことが分かる。一般的なブロン ズ法Nb 3 Sn超電導線材では、外部磁場18T(テスラ)にお る臨界電流密度および0.2%耐力σ 0.2 は、それぞれ130~150A/mm 2 、150~180MPa程度である。このことから、ブロ ズ法Nb 3 Sn超電導線材での両特性を凌駕するためには 内部拡散法Nb 3 Sn超電導線材中の補強部材の面積率は、2~25% 度にすれば良いことが分かる。この面積率 好ましい範囲は6~18%程度である。
本発明の前駆体線材は、前記図1、2に示 たようなモノエレメント線(図1の1、図2の5a) 、上記のようにして構成される補強用エレ ント線を組み合わせて束ね、これをCu製パ プ内に挿入した後、伸線加工することによ て、マルチエレメント線としたものである こうした前駆体の構成を、図面を用いて説 する。
図7は、本発明の前駆体を構成する状態を 説明する図であり、図中10は前記図1、2に示 たモノエレメント線(図1の1、図2の5a)、11は 記補強部材をCuまたはCu基合金に埋設するこ によって構成される補強用エレメント線を れぞれ示す。これらモノエレメント線10(以 、「内部拡散法エレメント線10」と呼ぶこ がある)と、補強用エレメント線とを複数本 ねて組合わせ、Cu製パイプ12内に挿入した後 、伸線加工してマルチエレメント線とするこ とによって、本発明の前駆体が構成される。 また、このときのCu製パイプ12はCuマトリクス を構成することになる(図4に示した4eの一部) また、こうした前駆体を構成する際に、前 図3に示したような、拡散バリア層(図3の6b 当)を形成しても良いことは勿論である。
本発明の前駆体を構成する際には、図7に 示したように、内部拡散法エレメント線(モ エレメント線)10と補強用エレメント線11が、 断面外形状が同一の六角形状であることが好 ましい。こうした構成を採用することによっ て、内部拡散法エレメント線10と補強用エレ ント線11を束ねて組み合わせる際に容易に えることになる。またこれらのエレメント (内部拡散法エレメント線10、補強用エレメ ト線11)は、その表面がCuまたはCu基合金によ て被覆された構成となるが、これらのCuま はCu基合金部分は、組合わせの際に相互に接 合されてCuまたはCuマトリクス層(図3の4c、図4 の4e相当)を形成することになる。
なお、内部拡散法エレメント線10と補強 エレメント線11は、断面の外観形状(外形状) 同一であれば、上記の効果が発揮されるも であり、必ずしも内部の形状(例えば、棒状 の補強部材の埋設位置)まで同じである必要 ないことは勿論である。また、上記「同一 とは、厳密に同一である必要もなく、設計 の誤差(例えば、Cu製パイプの組込みの段階 ±1mm程度)は許容できる。
前記補強用エレメント線11において、そ 表面のCuまたはCu合金層の厚さ(六角断面形状 の場合は最小厚さ)は、周囲との密着性向上 よる加工性向上という観点から、拡散熱処 前の段階で20~100μmであることが好ましい。 の厚さが20μm未満では、周囲エレメントとの 密着性が低くなって加工時の断線の一因とな る。また、この厚さが100μmを超えると補強部 材の面積率の低下による強度不足や、補強用 エレメント線の使用量増による臨界電流密度 Jcの低下を招くことになる。
上記のようにして内部拡散法エレメント 10と補強用エレメント線11とを組み合わせて Cu製パイプ12内に挿入して加工するに際して 、それぞれの構成部材の機械的特性が異な ことになる。線材を押し出しや伸線によっ 縮径していくに当たっては、円形状を保持 たまま、線材断面構成を崩さないようにダ スを用いた引き抜きによる伸線加工等を経 ことになる。断面構成(各材料の面積率)が伸 線加工によって変化する場合、拡散熱処理の 際にNbとSnの反応比率が線材長さ方向で希望 る超電導特性が得られなくなったり、断面 における補強部材の比率が変化してしまう いう事態も発生する。特に、本発明で構成 れる前駆体では、断面構成が非常に複雑な のとなり、加工に際しては線材断面内での 工のし易さの違い(変形抵抗の違い)が幾分か 生じることは避けることができない。
こうした現象を考慮すると、本発明の前 体において、円形状を保持したまま加工す 伸線加工を施すためには、Cuパイプ内に配 される内部拡散法エレメント線は勿論のこ 、補強用エレメント線は、線材中心を中心 として点対称となるように配置されること 好ましい。
図8は、点対称の構成を採用するときの具 体的な構成例を示す説明図である。この構成 は、補強用エレメント線11を、線材断面の外 囲に沿って連続的または断続的に複数本配 すると共に、その内側に内部拡散法エレメ ト線(モノエレメント線)10を配置したもので ある。また図9は、点対称の構成を採用する きの具体的な他の構成例を示す説明図であ 。この構成は、補強用エレメント線11を、線 材断面の中央部に相互に接触させて集合配置 すると共に、その周囲にモノエレメント線10 配置したものである。
本発明においては、上記のような前駆体を い、ブロンズ化熱処理を含めた拡散熱処理( 通常600℃以上、700℃以下程度)することによ て、良好な超電導特性(臨界電流密度Jc)を発 するNb 3 Sn超電導線材を得ることができる。具体的に 、180~600℃の温度範囲でブロンズ化熱処理(Sn をCuに拡散させる)を行なった後に、Nb 3 Snを生成させるために、600~700℃の温度範囲で 100~300時間程度の熱処理を行なう。なお、ブ ンズ化熱処理としては、180~200℃で50時間程 、340℃前後で50時間程度、550℃前後で50~100時 間等の多段階の熱処理の組合せにすることも できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体 に説明するが、本発明は下記実施例によっ 制限を受けるものではなく、前・後記の趣 に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実 することも勿論可能であり、それらはいず も本発明の技術的範囲に包含される。
(実施例1)
純度:99.9%のNb棒(直径:55mm)を、Cu製パイプ(内
:65mm)中に挿入後、このCu製パイプの両端をCu
で封止し、Cu/Nb複合ビレットを作製した。こ
複合ビレットを、押し出し・伸線して六角
面形状のCu/Nb複合単芯線(六角対辺:4mm)を作
した。
上記Cu/Nb複合単芯線:306本を外周に、同形 のCuスペーサ:439本をその中心に配置して、C u製パイプ(外径:150mm、内径:130mm)内に組込み、 両端をCuで封止し、内部拡散法ビレットを作 した。このビレットを押出し後矯正し、機 加工により中心(Cuスペーサ部分)に直径20mm 孔を開けた。その孔にSn棒(直径:19.5mm)を挿入 した後伸線加工し、六角断面形状に加工する ことによって、内部拡散法エレメント線(前 図1)を作製した。このとき、六角断面形状の 大きさ(六角対角辺長さ)、最終的に組込む本 によって変化させた(この点については、後 述する)。
一方、純度:99.9%のTi棒(直径:57mm)を、Cu製 イプ(外径:65mm、内径:57.5mm)中に挿入後、この Cu製パイプの両端をCuで封止し、Cu/Ti複合ビレ ットを作製した。この複合ビレットを、押し 出し・伸線して六角断面形状のCu/Ti複合単芯 (補強用エレメント線)を作製した。このと 、Ti棒の周囲に厚さ:0.2mmのNbシートを巻き付 る以外は上記と同様にして作製したCu/Ti複 単芯線についても準備した(後記実験No.2,7)。 このとき、六角断面形状の大きさ(六角対角 長さ)は、上記内部拡散法エレメント線と同 に、最終的に組込む本数によって変化させ (この点については、後述する)。
上記内部拡散法エレメント線:X本と、Cu/Ti 複合単芯線(補強用エレメント線):Y本とを束 、Cu製パイプ(外径:46mm、内径:38mm)中に組込ん で、抽伸法により内部拡散法多芯線(前記図3 4相当)を作製した。このときの、全断面積 対する補強部材(Cu/Ti複合単芯線のTi部分)の 積割合はZ%である。
なお、内部拡散エレメント線と補強用エ メント線の大きさ(六角対辺距離)は、組込 本数によって変化させた。例えば合計本数(X +Y)が19本の場合(下記表1の実験No.1,4)は、六角 辺:7.3mmである。合計本数(X+Y)が55本の場合( 記表1の実験No.2,6,7)は、六角対辺:4.5mmである 合計本数(X+Y)が37本の場合(下記表1の実験No.3 ,5)は、六角対辺:5.3mmである。また、こうした 加工に伴って、Cu/Ti複合単芯線における、Cu の厚さは伸線加工後で(直径:1.5mmの段階で)、 33μm(実験No.1,4)、20μm(実験No.2,6,7)、25μm(実験No .3,5)となる。
こうして得られた各種内部拡散多芯線を、 径:1.5mmとなるまで伸線加工してNb 3 Sn生成熱処理(600℃×200時間)を施した後、下記 の方法によって臨界電流密度Jcを測定した。 た、同サンプルについて、液体ヘリウム(4.2 K)中に浸漬した状態で、引張試験を実施して0 .2%耐力(σ 0.2 )を測定した。なお、臨界電流密度Jcは140A/mm 2 以上であることが必要であり、0.2%耐力(σ 0.2 )は150MPa以上であることが必要である。
[臨界電流密度Jcの測定]
液体ヘリウム中(温度4.2K)で、18Tの外部磁場
下、試料(超電導線材)に通電し、4端子法に
って発生電圧を測定し、この値が0.1μV/cmの
界が発生した電流値(臨界電流Ic)を測定し、
この電流値を、線材の全導体断面当りの断面
積で除して臨界電流密度Jcを求めた。なお、
全導体断面」とは、線材全体の断面を意味
る。
その結果を(臨界電流密度Jc、0.2%耐力)を、 部拡散法エレメントの本数X、補強用エレメ トの本数Y、補強部材の面積割合Zおよび銅 (線材全断面積に対する銅部分の断面積の割 )と共に、下記表1に示す。なお、下記表1に した実験No.1~4,7のものは、補強用エレメン 線を線材中心部に集合させて配置したもの あり(前記図9)、実験No.5のものは補強用エレ ント線を内部拡散法エレメントの外周に配 したものである(前記図8)。また、補強部材 面積割合(%)は、Cu/Ti複合単芯線のTi部分の合 計断面積S 0 の線材全断面積Sに対する割合[(S 0 /S)×100(%)]を示す。
この結果から明らかなように、本発明で規 する要件を満足する実験No.1~5のものでは、 好な臨界電流密度Jcが良好な値(200A/mm 2 )が得られている共に、適切な0.2%耐力(σ 0.2 )も150MPa以上を確保していることが分かる。
これに対し、実験No.6のものでは、補強部材 を組込んでいないので、4.2Kにおける0.2%耐力( σ 0.2 )が139MPaと低い値となっている。また、実験No .7のものでは、補強部材の面積割合が33.6%と くすることによって、4.2Kにおける0.2%耐力(σ 0.2 )は大きい値(421MPa)を示しているが、臨界電流 密度が低下している。
なお、実験No.2,7については、Ti棒の周囲に さ:0.2mmのNbシートを巻き付けてCu/Ti複合単芯 を構成したものである。これらはNbシート 存在によって、Nb 3 Sn拡散熱処理後においても補強材としてのTi は他の元素と反応しないままであったが、 の他のもの(実験No.1,3~5)については、Nb 3 Sn拡散熱処理の際のTi中にCuが拡散しており、 Ti棒部分はCu-Ti化合物に変化していた。すな ち、Tiを補強部材として用いた場合には、Cu 反応してCu-Ti系化合物を形成した場合にお ても補強部材としての機能を発揮すること 分かる。
(実施例2)
純度:99.9%のNb棒(直径:55mm)を、Cu製パイプ(内
:65mm)中に挿入後、このCu製パイプの両端をCu
で封止し、Cu/Nb複合ビレットを作製した。こ
複合ビレットを、押し出し・伸線して六角
面形状のCu/Nb複合単芯線(六角対辺:4mm)を作
した。
上記Cu/Nb複合単芯線:306本を外周に、同形 のCuスペーサ:439本をその中心に配置して、C u製パイプ(外径:150mm、内径:130mm)内に組込み、 両端をCuで封止し、内部拡散法ビレットを作 した。このビレットを押出し後矯正し、機 加工により中心(Cuスペーサ部分)に直径20mm 孔を開けた。その孔にSn棒(直径:19.5mm)を挿入 した後伸線加工し、六角断面形状に加工する ことによって、内部拡散法エレメント(前記 1)を作製した。このとき、六角断面形状の大 きさ(六角対角辺長さ)、最終的に組み込む本 によって変化させた(この点については、後 述する)。
一方、純度:99.9%のNb棒(直径:57mm)を、Cu製 イプ(外径:65mm、内径:57.5mm)中に挿入後、この Cu製パイプの両端をCuで封止し、Cu/Nb複合ビレ ットを作製した。この複合ビレットを、押し 出し・伸線して六角断面形状のCu/Nb複合単芯 を作製した。このとき、六角断面形状の大 さ(六角対角辺長さ)、最終的に組み込む本 によって変化させた(この点については、後 する)。このとき、六角断面形状の大きさ( 角対辺距離)、内部拡散法エレメント線と同 に、最終的に組込む本数によって変化させ (この点については、後述する)。
上記内部拡散法エレメント:x本と、Cu/Nb複 合単芯線:y本とを束ね、Cu製パイプ(外径:46mm 内径:38mm)中に組込んで、抽伸法により内部 散法多芯線(前記図3、4相当)を作製した。こ ときの、全断面積に対する補強部材(Cu/Nb複 単芯線のNb部分)の面積割合はz%である。
なお、内部拡散エレメント線と補強用エ メント線の大きさ(六角対辺距離)は、実施 1と同様に、組込む本数によって変化させた 例えば合計本数(x+y)が19本の場合(下記表2の 験No.8,11)は、六角対辺:7.3mmである。合計本 (x+y)が55本の場合(下記表2の実験No.9,13,14)は、 六角対辺:4.5mmである。合計本数(x+y)が37本の 合(下記表1の実験No.10,12)は、六角対辺:5.3mmで ある。また、こうした加工に伴って、Cu/Ti複 単芯線における、Cu層の厚さは伸線加工後 (直径:1.5mmの段階で)、33μm(実験No.8,11)、20μm( 験No.9,13,14)、25μm(実験No.10,12)となる。
こうして得られた各種内部拡散多芯線を、 径:1.5mmとなるまで伸線加工してNb 3 Sn生成熱処理(600℃×200時間)を施した後、実施 例1と同様の方法で臨界電流密度Jcおよび0.2% 力(σ 0.2 )を測定した(その基準は実施例1と同じ)。
その結果を(臨界電流密度Jc、0.2%耐力)を 内部拡散法エレメントの本数x、補強用エレ ント線の本数y、補強部材の面積割合zおよ 銅比(線材全断面積に対する銅部分の断面積 割合)と共に、下記表2に示す。なお、下記 2に示した実験No.8~11,14のものは、補強用エレ メント線を線材中心部に集合させて配置した ものであり(図9)、実験No.12のものは補強用エ メント線を内部拡散法エレメントの外周に 置したものである(図8)。
この結果から明らかなように、本発明で規 する要件を満足する実験No.8~12のものでは、 臨界電流密度Jcが良好な値(200A/mm 2 )が得られている共に、適切な0.2%耐力(σ 0.2 )も150MPa以上を確保していることが分かる。
これに対し、実験No.13のものでは、補強部 を組込んでいないので、4.2Kにおける0.2%耐力 (σ 0.2 )が139MPaと低い値となっている。また、実験No .14のものでは、補強部材の面積割合が33.6%と くすることによって、4.2Kにおける0.2%耐力( 0.2 )は大きい値(300MPa)を示しているが、臨界電流 密度が低下している。
以上のとおり、本発明を詳細に、また特 の実施態様を参照して説明したが、本発明 精神と範囲を逸脱することなく様々な変更 修正を加えることができることは当業者に って明らかである。本出願は2007年6月4日出 の日本特許出願(特願2007-148551)に基づくもの であり、その内容はここに参照として取り込 まれる。
