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Title:
NEGATIVE ELECTRODE AND METHOD FOR PRODUCING NEGATIVE ELECTRODE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/041612
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a negative electrode which is capable of maintaining a negative electron affinity even at temperatures higher than room temperature or in an oxidizing atmosphere. Specifically disclosed is a method for producing a negative electrode comprising a negative electron affinity surface having a surface oxygen coverage of 0.2-0.5 ML, wherein an electron-emitting surface made of diamond is oxidized by boiling cleaning with a mixed acid, atmospheric annealing or oxygen plasma processing, and then the oxidized surface is heat-treated at a temperature higher than 200˚C but not higher than 900˚C in vacuum or in an inert gas.

Inventors:
TAKEUCHI DAISUKE (JP)
RI SUNG-GI (JP)
YAMASAKI SATOSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/067482
Publication Date:
April 02, 2009
Filing Date:
September 26, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NAT INST OF ADVANCED IND SCIEN (JP)
TAKEUCHI DAISUKE (JP)
RI SUNG-GI (JP)
YAMASAKI SATOSHI (JP)
International Classes:
H01J1/304; H01J9/02
Foreign References:
JP2001068011A2001-03-16
JPH09320450A1997-12-12
Other References:
SUNG-GI RI ET AL.: "Surface electronic properties on boron doped (111) CVD homoepitaxial diamond films after oxidation treatments", DIAMOND AND RELATED MATERIALS, vol. 16, no. 4-7, July 2007 (2007-07-01), pages 831 - 835
TAKEUCHI D. ET AL.: "Zenko Denshi Hoshutsuritsu Bunkoho ni yoru n-gata Diamond kara no Denshi Hoshutsu Kiko ni Kansuru Kenkyu (I)", HEISEI 16 NENDO DAI 18 KAI ABSTRACTS OF DIAMOND SYMPOSIUM, 29 November 2004 (2004-11-29), pages 232 - 233
YAMADA T. ET AL.: "Field emission from surface-modified heavily phosphorus-doped homoepitaxial (111) diamond", PHYSICA STATUS SOLIDI (A), vol. 204, 30 August 2007 (2007-08-30), pages 2957 - 2964, Retrieved from the Internet [retrieved on 20081208]
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Claims:
電子放出表面がダイヤモンドから成っており、該ダイヤモンド表面が表面伝導層を持ち、かつ該表面の酸素被覆率が0.2~0.5MLであり、かつ負の電子親和力を持つことを特徴とする陰極。
前記ダイヤモンドが単結晶であることを特徴とする請求項1記載の陰極。
前記ダイヤモンド単結晶表面が(111)面、又は(100)面、又は(110)面のいずれか一つであることを特徴とする請求項2記載の陰極。
前記ダイヤモンドが多結晶であることを特徴とする請求項1記載の陰極。
前記ダイヤモンド多結晶表面が(111)面、又は(100)面、又は(110)面のいずれか一つに配向していることを特徴とする請求項4記載の陰極。
前記ダイヤモンドが、pn接合、pin接合、金属ダイヤモンド接合、および単層のうちのいずれか1つを形成し、前記ダイヤモンドから成る電子放出表面が負の電子親和力を持ち、該ダイヤモンド内部に自由電子あるいは自由励起子を形成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の陰極。
電子放出表面がダイヤモンドから成っており、該ダイヤモンド表面を混酸による沸騰洗浄処理で酸化処理する工程と、前記酸化処理されたダイヤモンド表面を真空中で200℃より高く900℃以下で熱処理する工程とを備えたことを特徴とする陰極の製造方法。
前記酸化処理する工程を、ダイヤモンド表面を混酸による沸騰洗浄処理で酸化処理する工程の代わりに、前記ダイヤモンド表面を大気中で200℃より高く900℃以下の熱処理で酸化処理する工程としたことを特徴とする請求項6記載の陰極の製造方法。
前記酸化処理する工程を、ダイヤモンド表面を混酸による沸騰洗浄処理で酸化処理する工程の代わりに、前記ダイヤモンド表面を酸素プラズマ中で酸化処理する工程としたことを特徴とする請求項6記載の陰極の製造方法。
前記熱処理する工程を、酸化処理されたダイヤモンド表面を真空中で200℃より高く900℃以下で熱処理する工程の代わりに、前記酸化処理されたダイヤモンド表面を不活性ガス中で200℃より高く900℃以下で熱処理する工程と
したことを特徴とする請求項6記載の陰極の製造方法。
前記酸化処理する工程を、ダイヤモンド表面を混酸による沸騰洗浄処理で酸化処理する工程の代わりに、前記ダイヤモンド表面を大気中で200℃より高く900℃以下の熱処理で酸化処理する工程とし、
前記熱処理する工程を、酸化処理されたダイヤモンド表面を真空中で200℃より高く900℃以下で熱処理する工程の代わりに、前記酸化処理されたダイヤモンド表面を不活性ガス中で200℃より高く900℃以下で熱処理する工程としたことを
特徴とする請求項6記載の陰極の製造方法。
前記酸化処理する工程を、ダイヤモンド表面を混酸による沸騰洗浄処理で酸化処理する工程の代わりに、前記ダイヤモンド表面を酸素プラズマ中で酸化処理する工程とし、
前記熱処理する工程を、酸化処理されたダイヤモンド表面を真空中で200℃より高く900℃以下で熱処理する工程の代わりに、前記酸化処理されたダイヤモンド表面を不活性ガス中で200℃より高く900℃以下で熱処理する工程としたことを
特徴とする請求項6記載の陰極の製造方法。
Description:
[規則37.2に基づく発明の名称]  極及び陰極の製造方法

 本発明は、電子放出表面がダイヤモンド ら成っており、該ダイヤモンド表面に、酸 処理と熱処理を別々にあるいは同時に施す とによって、安定化させた負の電子親和力 付与した該ダイヤモンド表面を持つ陰極お び該陰極の製造方法である。

 各用途において最適な材料・構造を用い 様々な陰極が開発されている。その場合、 空障壁(仕事関数あるいは電子親和力)χ、陰 極温度Tc、および陰極前面での電界強度Ecが 限要素であるが、これら制限を破るものと て期待されるのが、真空障壁を負にする考 方である。すでにGaAsなどでは、薄膜成長時 不純物高濃度ドーピングによる表面近傍の 向きのエネルギーバンド湾曲を利用した擬 的な負の電子親和力状態を得たパルス動作 光励起電子銃が試作されているが、劣化の 題が残されている。

 これに対し、半導体であるダイヤモンド 表面を水素終端することによって、負の電 親和力が実現できることが明らかになって る。他の物性、つまり高硬度、熱伝導性、 学的安定性においても、共有結合であり単 素材料であるダイヤモンドは、最も有望で るとされている。また、イオン性の高いワ ドバンドギャップ半導体である窒化ホウ素( BN)や窒化アルミニウム(AlN)において、水素終 ダイヤモンドと同じ表面双極子の極性を生 る面においても負の電子親和力が得られる 期待されている(特許文献1、非特許文献1、 特許文献2参照)。これらを負の電子親和力 面を持つ材料のn形半導体に自由電子を注入 きれば、伝導帯の自由電子にとって真空障 が負の状態が得られ、容易に電子放出が得 れると考えられていた。

 特許文献1あるいは非特許文献1あるいは 特許文献2で述べているように、ダイヤモン やイオン性の高いワイドバンドギャップ半 体の表面を水素化することによって、電子 和力が低下し、負の電子親和力が得られる 合もあることはよく知られている。特にダ ヤモンドの場合、水素と炭素の結合エネル ーは大きく、超高真空では800~900℃の高温で の熱処理でようやく結合を切り離すことがで きる。(非特許文献3参照)

 しかし、これら材料の水素終端表面は、 化雰囲気ではその安定性が低い熱処理温度 も失われてしまうことが報告されている。 とえば、ダイヤモンドの水素終端表面は、 気中での200℃から400℃の熱処理でほぼ消滅 ることが報告されている。(非特許文献4参 )

 したがって、高い電子放出効率を利用で る負の電子親和力を利用した陰極を応用し 装置が実用的な使用時間に耐えるには、室 より高い温度や酸化雰囲気でも負の電子親 力を維持できる陰極が必要不可欠であるが これに関する知的財産情報は公開されてい い。

 つまり、一般に酸化した後のダイヤモンド 表面は負の電子親和力を失っており、負の 子親和力を利用する陰極には応用できない 考えられている。その結果、水素終端表面 実用上信頼性が低いと判断される材料とな ていた。学術的には、水素化したダイヤモ ド表面に特有の表面伝導層が、酸化したダ ヤモンド(111)表面に存在するという新しい 告があるが、負の電子親和力表面および陰 に関する報告は無い。(非特許文献5参照)

特開2002-352694号公報 D. Takeuchi, et al., Appl. Phys. Lett. 86 (200 5) 152103 S. Sque, et al., Phys. Rev. B 73 (2006) 08531 3 D. Takeuchi et al.: Diamond Relat. Mater. 15 ( 2006) 698 B. F. Mantel et al: Diamond Relat. Mater 9 (2 000) 1032 S.-G. Ri et al: Diamond Relat. Mater. 16, 831 (2007)

 本発明は、上記に鑑み提案されたもので り、安定化した負の電子親和力を持つダイ モンド表面を用いた陰極を提供する。陰極 製造方法の中で、ダイヤモンド表面の酸化 ロセスと同時にあるいは後で熱処理して、 子放出にエネルギー的制限の無い負の電子 和力に安定性を持たせた表面を持つ、高効 陰極を提供することを目的とする。

 本発明は、電子放出表面がダイヤモンド ら成っており、該ダイヤモンド表面が表面 導層を持ち、かつ該表面の酸素被覆率が0.2~ 0.5MLであり、かつ負の電子親和力を持つ陰極 ある。

 また、本発明は、段落0009のダイヤモンド が単結晶である陰極である。

 また、本発明は、段落0010のダイヤモンド 単結晶表面が(111)面、又は(100)面、又は(110)面 のいずれか一つである陰極である。

 また、本発明は、段落0009のダイヤモンド が多結晶である陰極である。

 また、本発明は、段落0012のダイヤモンド 多結晶表面が(111)面、又は(100)面、又は(110)面 のいずれか一つに配向している陰極である。

 また、本発明は、電子放出表面がダイヤ ンドから成っており、該ダイヤモンド表面 混酸による沸騰洗浄処理で酸化処理する工 と、酸化処理された該ダイヤモンド表面を 空中で200℃より高く900℃以下で熱処理する 程とを備える陰極の製造方法である。

 また、本発明は、電子放出表面がダイヤ ンドから成っており、該ダイヤモンド表面 大気中で200℃より高く900℃以下の熱処理で 化処理する工程と、酸化処理された該ダイ モンド表面を真空中で200℃より高く900℃以 で熱処理する工程とを備える陰極の製造方 である。

 また、本発明は、電子放出表面がダイヤ ンドから成っており、該ダイヤモンド表面 酸素プラズマ中で酸化処理する工程と、酸 処理された該ダイヤモンド表面を真空中で2 00℃より高く900℃以下で熱処理する工程とを える陰極の製造方法である。

 また、本発明は、電子放出表面がダイヤ ンドから成っており、該ダイヤモンド表面 混酸による沸騰洗浄処理で酸化処理する工 と、酸化処理された該ダイヤモンド表面を 活性ガス中で200℃より高く900℃以下で熱処 する工程とを備える陰極の製造方法である

 また、本発明は、電子放出表面がダイヤ ンドから成っており、該ダイヤモンド表面 大気中で200℃より高く900℃以下の熱処理で 化処理する工程と、酸化処理された該ダイ モンド表面を不活性ガス中で200℃より高く9 00℃以下で熱処理する工程とを備える陰極の 造方法である。

 また、本発明は、電子放出表面がダイヤ ンドから成っており、該ダイヤモンド表面 酸素プラズマ中で酸化処理する工程と、酸 処理された該ダイヤモンド表面を不活性ガ 中で200℃より高く900℃以下で熱処理する工 とを備える陰極の製造方法である。

 また、本発明は、前記段落0009から段落001 9のダイヤモンドが、pn接合を、又はpin接合を 、又は金属ダイヤモンド接合を、又は単層を 形成している陰極又は該陰極の製造方法であ る。

 本発明は、負の電子親和力に耐久性のあ ダイヤモンド表面を用いた陰極を提供する ダイヤモンド表面の酸化プロセスと同時に るいは後で熱処理して、電子放出にエネル ー的制限の無い負の電子親和力に耐久性を たせた表面を持つ、高効率陰極を提供する とを目的とする。

 従来、負の電子親和力をダイヤモンド表 に付加する場合、水素終端構造を形成する 要があり、それにはマイクロ波水素プラズ 処理か、あるいは800℃程度の温度で原子状 素をダイヤモンド表面に照射することによ て得られるが、該水素終端構造を陰極の製 方法全体を通じて保持する必要があった。

 これは、陰極の製造方法を大きく制限す 要因であった。また、水素終端の製造方法 の安定性については未知であり、製造方法 不確定性を増大する要因であった。

 これに対し、一旦ダイヤモンド表面を酸 した場合、負の電子親和力の保持に制限さ ず、陰極のための加工や電極形成などの製 方法を自由に導入することが可能となった そして、負の電子親和力を陰極の製造方法 おいて、熱処理のみによって付与すること 、負の電子親和力を製造方法で失うことな 最大限に生かすことが可能となった。

 さらに、製造後も負の電子親和力が損な れやすい環境の影響を受けても、ある範囲 であれば、適当な熱処理によって再生が可 となる。つまり、耐久性を有した負の電子 和力を利用した陰極となっている。

 本発明により、加熱、および高電界印加 必要としない室温で初速度分布が0.025eV程度 の安定した電子の連続又はパルス放出を可能 とする自由電子および自由励起子を応用した あらゆる陰極に応用できる。

 また、本発明は、光陰極(フォトカソード )に応用できる。

 また、本発明は、高エネルギー電子線を エネルギー程度の電子線に変換する陰極(エ ネルギー変換器)に応用できる。

 また、段落0026又は段落0027又は段落0028を 用した負イオン生成器(負イオン源)又は電 中和器(ニュートライザ又はニュートラライ )に応用できる。

 また、本発明は、熱に強い性質から巨大 電力系統スイッチ・バスの超小型化などの ワーエレクトロニクスへ応用できる。

 また、本発明は、電子放出を真空以外の 液・ガス雰囲気中にも可能なため微小領域( マイクロチャネル)化学反応制御、等へ応用 きる。

 また本発明は、従来得られなかった理想 な面陰極に応用できる。

電子親和力発現の原理となる双極子に る表面電気二重層モデルの概念図。 負の電子親和力表面を実証する、全光 子放出率分光の測定結果。 図2のバンドギャップ相当の光励起エネ ルギー付近を拡大して示した図。 ダイヤモンド中の自由励起子を介して イヤモンドの負の電子親和力表面で起こる 子放出のエネルギー模式図。 実施例1に係る陰極の断面概略図。 実施例1に係る陰極の製造方法。電子放 出表面6は、負の電子親和力を備えるダイヤ ンドpn接合を覆う表面であるが、該表面は、 pn接合を持つ本素子の表面全体あるいは表面 一部でよい。 実施例1の陰極製造方法で、表面を酸化 処理した場合のX線光電子分光スペクトルのC1 sレベルを示した図。 図7の表面が正の電子親和力であること を示す全光電子放出率分光スペクトルの図。 実施例1の陰極製造方法で、表面を酸化 処理し、続いて表面を真空中で加熱処理した 該表面が負の電子親和力を備えることを示す 全光電子放出率分光スペクトルの図。 実施例2の陰極製造方法で、アルゴン 活性ガス中で熱処理した場合に負の電子親 力が得られていえることを示す全光電子放 率分光スペクトルの図。 図10の表面で、真空中熱処理した場合 X線光電子分光スペクトルのC1sレベルを示し た図。 各工程で、陰極表面が持つ表面伝導層 のホール測定結果を示す図。混酸による沸騰 洗浄処理がWO、その後の熱処理がWO-AN、大気 熱処理がAO、その後、有機溶媒で洗浄して窒 素雰囲気中で熱処理したのがAO-有機洗浄―AN 大気中熱処理後にそのまま窒素雰囲気中で 処理したのがAO-ANであり、それぞれシート 抗、シートキャリア濃度、移動度を示す。 本発明で安定化した負の電子親和力と 表面伝導層を持つ酸化表面(点線枠内)と、水 終端、酸素終端、および部分的に水素終端 た表面との比較概念図。 図12の左下、水素終端表面を熱処理す ことで表面に欠陥による準位が生成される とを示す全光電子放出率分光スペクトルの 。 実施例3の陰極製造方法で、大気中ア ール酸化処理後に真空中で熱処理した場合 負の電子親和力が得られていえることを示 全光電子放出率分光スペクトルの図。 実施例4に係る陰極の断面概略図。 実施例4に係る陰極の製造方法。電子 出表面5は、負の電子親和力を備えるダイヤ ンドpn接合を覆う表面であるが、該表面は pn接合を持つ本素子の表面全体あるいは表面 の一部でよい。 実施例4の陰極製造方法で、真空中熱 理した場合の表面が負の電子親和力である とを示す全光電子放出率分光スペクトルの 。 実施例1から4の熱処理温度に対し、そ ぞれの範囲外に当たる温度での熱処理の全 電子放出率分光法の結果を比較例1として示 す。 実施例4の陰極製造方法で、表面を酸 処理した場合のX線光電子分光スペクトルのC 1sレベルを示した図。 実施例4の陰極製造方法で、真空中熱 理した場合のX線光電子分光スペクトルのC1s ベルを示した図。

符号の説明

1  ダイヤモンド基板
2  第一導電形CVDダイヤエピタキシャル膜
3  第二導電形CVDダイヤエピタキシャル膜
4  第一電極
5  第二電極
6  電子放出表面
11  第一導電形ダイヤモンド基板
12  第二導電形CVDダイヤエピタキシャル膜
13  第一電極
14  第二電極
15  電子放出表面

 以下に、この発明の実施の形態について、 細に説明する。
 まず、負の電子親和力の構造について説明 る。電磁気学から一般に、電子親和力は図1 に示すように、表面の電気二重層の形成によ って生じると考えられており、表面側に正電 荷が生じる図1右側の双極子の配列構造に負 電子親和力は由来すると考えられている。 のような構造は、実際にはダイヤモンドの 素終端表面において安定であると考えられ おり、水素終端したダイヤモンドの特異な 性として認知されている。内部の自由電子 この双極子からなる電気二重層の作るエネ ギー利得(外部へのポテンシャルドロップ)に よって容易に外部に放出されると考えられる 。一方、ダイヤモンドの酸素終端表面や炭素 が表面に現れる清浄表面又は再構成表面では 、逆の図1左側の状態となっており、正の電 親和力が生じて、容易に外部に放出されな と考えられる。そして、図1左側が一般的な 料の表面構造となっている。

 水素終端ダイヤモンド表面に紫外線を照射 た場合の、光電子放出に関する量子効率(相 対値)をとったものが図2である。図2は、水素 終端IIa形アンドープダイヤモンド(001)単結晶 面の特性を表す。
 図2では、室温でのダイヤモンドのバンドギ ャップ5.47eVに対し、1eV以上低い4.4eV付近から 激に光電子放出率が立ち上がるのがわかる さらに、5.27eVから2桁以上立ち上がる。
 図3に、この図2のバンドギャップ励起付近 詳細図を示す。四つの立ち上がりが確認で る。すなわち、低い励起光エネルギーから 5.26eV、5.315eV、5.485eV、5.54eVである。最大値と 最小値、中央の二値、それぞれの平均は5.40eV であり、丁度ダイヤモンド中の自由励起子の 基底状態と一致する。また、両組み合わせに 対するエネルギー差はそれぞれ0.14eVと0.085eV 、これらは丁度、それぞれダイヤモンド中 TOフォノン、およびTAフォノンの、ダイヤモ ド伝導帯底の運動量空間位置(X点方向0.76)に おける値と一致する。すなわち、ここで得ら れている放出された光電子は、光吸収の際に 自由励起子生成を伴っていることを意味する 。

 上記の内容を矛盾なく説明できる、水素 端表面付近のエネルギーバンド構造が図4で ある。特徴は、真空準位が結晶内部の伝導帯 底の下にある負の電子親和力表面となってい ることと、ダイヤモンド表面に固有の表面非 占有準位が水素終端構造によってダイヤモン ドのエネルギーギャップ中に下がってきてい ることである(非特許文献1、2参照)。段落0034 述べた4.4eVからの光吸収は、結晶内部の価 子帯頂上と同じエネルギー位置の表面占有 位頂上から、前期の表面非占有準位への励 によって起こる。さらに、信号は真空中に 子が放出されて初めて検出されうるわけで るから、4.4eVは、価電子帯頂上と真空準位と のエネルギー差に相当する。ダイヤモンドの バンドギャップが5.47eVであるから、約1.1eVの の電子親和力が形成できていることがこれ 証明される。そして、この負の電子親和力 面に自由励起子が来ることによって、実際 電子放出が得られている。

 段落0035で述べた電子放出原理は、外部か らの紫外光ではなく、結晶内部で自由励起子 を生成する、あるいは自由励起子の励起エネ ルギー相当の紫外光が発生し、負の電子親和 力表面に到達することによっても起こりうる ことは自明である。さらに、自由励起子の励 起エネルギー未満の紫外光でも、4.4eV以上の ネルギーを有していれば電子放出が起こる とも自明である。すなわち、結晶内部の欠 や不純物に自由励起子が束縛され、発光す 場合でも、その光エネルギーが4.4eV以上で れば陰極動作可能となる。

 さて、水素終端表面の特徴として、表面伝 層の存在が挙げられる。これは、水素終端 面のみで発現せず、表面へのある吸着物の 与が必要であることが知られている。水素 端表面が負の電子親和力を持つことと関連 せたモデルが提唱されている。しかし、非 許文献5により、酸化した表面でもこの表面 伝導層が存在することが明らかになった。
 現在、その発現機構については不明な点も いが、本発明の実施例ではその存在につい の結果も合わせて示し、本発明の特徴とし 関与していることを明らかにする。なお、 面伝導層の存在は抵抗値のみで決定される のではない。半導体結晶本来の電気特性と ての電荷密度が一桁以上増加し、かつ電荷 移動度が減少し、かつ大気中の吸着物によ てこれら一連の現象が発現する場合に、表 伝導層が存在すると定義できる。

 図4は、ダイヤモンド中の自由励起子を介し てダイヤモンドの負の電子親和力表面で起こ る電子放出のエネルギー模式図である。
 縦軸はエネルギーレベルE(eV)、横軸は結晶 部から真空に向けての空間位置を表す。自 励起子あるいはそれに相当するエネルギー 持った光が、結晶外部あるいは内部からダ ヤモンドの負の電子親和力表面に到達する 、負の電子親和力表面固有の4.4eVのエネルギ ーギャップを超えたエネルギーを持つ電子状 態間で自由励起子あるいは相当するエネルギ ーを持つ光の吸収が起こり、価電子帯に相当 する表面占有準位から伝導帯に相当する表面 非占有準位に電子が励起され、これが真空準 位以上であるので外部に放出される原理を説 明している。
 図4に示す原理図より、ダイヤモンドから成 る電子放出表面が負の電子親和力を持つ陰極 では、該ダイヤモンドの伝導帯に自由電子を 形成する、あるいは該ダイヤモンド内部に自 由励起子を形成することができれば、陰極と して動作する。
 したがって、該ダイヤモンドが、pn接合を 又はpin接合を、又は金属ダイヤモンド接合 、又は単層を形成している陰極でよい。該 イヤモンドへの電流注入、あるいは光照射 あるいは電子線照射により、該ダイヤモン 内部に自由電子あるいは自由励起子を形成 ることができ、陰極として動作する。

 また、段落0038のpn接合、又はpin接合、又は 属ダイヤモンド接合の該ダイヤモンドは、 縁基板上に形成されたもの、あるいは伝導 のあるダイヤモンド単層を用いて形成され ものである。
 上記の実施の形態を踏まえつつ、以下に本 明の実施例を示し、さらに詳細に説明する

 図5は本発明の第1実施例に係る陰極の断 概略図を示す。実施例1の陰極は基板1、第一 導電形CVDダイヤエピタキシャル膜2、第二導 形CVDダイヤエピタキシャル膜3、第一電極4、 第二電極5、電子放出表面6で構成されている 負の電子親和力を備える電子放出表面から 抜き矢印のように電子放出電流が得られる

 図6に図5の陰極の製造方法を示す。高温高 法で合成され市販されているIb(111)基板を用 した。大きさは、2mm×2mmで厚さ0.5mmである。 この基板上に、第一導電形としてn形のCVDダ ヤエピタキシャル膜を、第二導電形としてp のCVDダイヤエピタキシャル膜を用いた。n形 の合成条件は、水素ガスに対するメタンガス の流量比0.05%、ドーピングガスとしてフォス ィンをメタンガスに対する流量比1%、全ガ 流量400sccmで、圧力75Torr、マイクロ波750W、基 板温度900℃でマイクロ波プラズマCVD合成によ り合成した。また、p形の合成条件は、水素 スに対するメタンガスの流量比0.15%、ドーピ ングガスとしてジボランをメタンガスに対す る流量比10ppm、全ガス流量400sccm、圧力50Torr、 マイクロ波1200W、基板温度920~1050℃でマイク 波プラズマCVD合成により合成した。成長直 は水素終端表面を有し、負の電子親和力を つ。その後、フォトリソグラフィーにより マスクを蒸着し、CF 2 HガスによりICPプラズマでエッチングする。 エッチングプロセス後に洗浄を兼ねて混酸 よる沸騰洗浄処理で酸化処理を行う。つま 硝酸と硫酸を1:3の比とする混酸中で、230℃ 1時間煮沸させる。該酸化処理は、ダイヤモ ドpn接合を覆う表面に行うが、pn接合を持つ 該陰極の表面全体あるいは表面の一部でよい 。さらにフォトリソグラフィーを行い、第一 電極4および第二電極5をEB蒸着した。電極は タンを用い、白金をキャップ層とした。最 に、酸化処理された表面を真空中で400℃で 熱処理し、負の電子親和力表面6を形成した

 図6に従って製造方法を説明する。
1.ダイヤモンドIb(111)基板1上に第一導電型CVD イヤエピタキシャル膜2を成長し、さらに第 導電型CVD膜3をエピタキシャル成長させる( 6A)。
2.膜3と膜2に段差を有するようにプラズマ加 する(図6B)。
3.全体に沸騰洗浄処理で酸化処理する。
4.膜2上に第一電極4を蒸着し、膜3上に第二電 5を蒸着する(図6C)。
5.膜3を真空中で熱処理し、電子放出表面6を 成する(図6D)。

 混酸による沸騰洗浄処理で酸化処理した場 の表面状態を示す、X線光電子分光スペクト ルの結果が図7に示されている。図7は、ダイ モンド(111)表面のWO(混酸による沸騰洗浄処 )における、C1sコアレベル(炭素sp3結合エネル ギー)のスペクトルである。縦軸はNormalized in tensity(炭素sp3結合エネルギーピーク強度によ 規格化)[arb.units(任意単位)]、横軸はC1s core  level shift(炭素sp3結合エネルギー状態からの 合エネルギーの変化)[eV(エレクトロンボルト )]を表す。
 図7において、「a」は-1.0(eV)[surface reconstruct ion(表面再構成によるエネルギー変化)]、「b は+1.4(eV)[C-OH or C-O-C(水酸基との結合または ーテル結合によるエネルギー変化)]、「c」 +2.9(eV)[C=O(カルボニル基との結合によるエネ ルギー変化)]となる。

 炭素原子(C)のsp3電子に相当するエネルギ 位置を0eVとした場合、+1.4eVと+2.9eVにピーク 観測されている。それぞれ、C-OHまたはC-O-C 合、およびC=O結合の炭素原子のK殻電子の状 態に相当すると考えられている。学術的にダ イヤモンド(111)表面の酸素終端構造について 未解決なままであるが、酸素(O)の量はほぼ0 .66分子層(0.66ML)に相当し試料表面は酸化され 。また、再構成した炭素量は0.22分子層(0.22M L)であり、0.88MLが水素以外の終端状態に変化 た。全反射赤外吸収フーリエ変換赤外分光( ATR-FTIR)スペクトルからもC-H結合は観測されず 、水素終端はほぼ除去されたと言える。

 図8は、図7と同じ表面の光電子放出率の分 スペクトルである。図8は、ダイヤモンド(111 )表面をCVD処理し、熱混酸処理した後の特性 表す。「Eg=5.47eV」はバンドギャップ、「矢 d」は(正の)電子親和力χ=0.5eV、特性曲線「e は、Y~(hν-6.0) 3.5 を意味する。
 横軸がPhoton Energy(励起光エネルギー)(eV)、 軸がTotal Photoelectron Yield(全光電子放出率の 定値を対数でとったもの)(rel.units(相対値)) 、6.2~6.3eV付近に光電子が放出されるエネル ー閾値が存在することがわかる。これまで 知見から、これは価電子帯からの励起であ ことがわかる(非特許文献1、2、3)。したがっ て、バンドギャップエネルギー5.47eVを考慮す ると、0.5±0.1eVの電子親和力が得られている とがわかる。誤差はフィッティングとフォ ンエネルギーを考慮している。つまり、電 親和力は正である。

 次に、真空中で加熱処理した後の表面に対 る光電子放出率の分光スペクトルを図9に示 す。図9は、ダイヤモンド(111)表面をCVD処理し 、真空中、600°Cで熱処理した後の特性を表す 。「Eg=5.47eV」はバンドギャップ、「矢印f」 負の電子親和力χ<0eVを意味する。
 処理温度は600℃で処理時間は30分である。 軸が励起光エネルギー、縦軸が全光電子放 率の測定値を対数でとったもので、バンド ャップエネルギー5.47eVより低い励起光エネ ギーに光電子が放出されるエネルギー閾値 存在することがわかる。
 また、バンドギャップエネルギー付近で、 ペクトルに幾つか立ち上がる閾値が存在し おり、光電子放出率が二桁以上大きくなっ いることがわかる。図2~4で示したように、 れは負の電子親和力の状態であることがわ る。

 実施例1と同様のプロセスを行うが、真空中 熱処理ではなく、不活性ガス中で200℃より高 く加熱処理した後の、光電子放出率の分光ス ペクトルを図10に示す。
 図10は、ダイヤモンド(111)表面をCVD処理し、 熱混酸処理した後、Ar雰囲気中で420°CでRTA処 した後の特性を表す。「矢印g」は負の電子 親和力χ<0eVを意味する。
 不活性ガスとしてアルゴン(Ar)を使用し、5sc cmの流量で圧力は200Pa、処理温度は420℃で30分 である。横軸が励起光エネルギー、縦軸が全 光電子放出率の測定値を対数でとったもので 、バンドギャップエネルギー5.47eVより低い励 起光エネルギーに光電子が放出されるエネル ギー閾値が存在することがわかる。また、バ ンドギャップエネルギー付近で、スペクトル に幾つか立ち上がる閾値が存在しており、光 電子放出率が二桁以上大きくなっていること がわかる。図2~4で示したように、これは負の 電子親和力の状態であることがわかる。

 段落0045の表面のX線光電子分光スペクトル 結果を図11に示す。図11は、ダイヤモンド(111 )表面のWO-AN(混酸による沸騰洗浄処理後の熱 理)における、C1sコアレベルシフトのスペク ルである。図11において、「h」は-1.0(eV)[surf ace reconstruction]、「j」は+1.4(eV)[C-OH or C-O-C] 「k」は+2.9(eV)[C=O]となる。
 図7と同様に、炭素原子(C)のsp3電子に相当す るエネルギー位置を0eVとした場合、+1.4eVと+2. 9eVにピークが観測されている。それぞれ、C-O HまたはC-O-C結合、およびC=O結合の炭素原子の K殻電子の状態に相当すると考えられている 酸素(O)の量はほぼ0.26分子層(0.26ML)に相当し 図7の0.66MLが半分以下程度に減少している。 た、再構成した炭素量は0.09分子層(0.09ML)で り、0.35MLが水素以外の終端状態として存在 ている。

 一方、混酸による沸騰洗浄処理(WO)とその後 の熱処理(WO-AN)との間で図5の電子放出表面6の シート抵抗、シートキャリア濃度、移動度の 変化を本実施例2のp形ダイヤエピタキシャル と同じ合成法で得られた試料表面のホール 定から測定した結果を図12に示す。図12Aは 工程におけるシート抵抗の変化を示す。縦 はシート抵抗、横軸は工程を表す。
 横軸のWO(混酸による沸騰洗浄処理)、
   WO-AN(混酸による沸騰洗浄処理後の熱処理 )、
   AO(1st)(大気中熱処理)、
   AO-有機洗浄-AN(大気中熱処理後に、有機 媒で洗浄してから、窒素雰囲気中で熱処理)
   AO(2nd)(AO-有機洗浄-AN処理後の二回目の大 中熱処理)、
   AO-AN(大気中熱処理後にそのまま窒素雰囲 気中で熱処理)、を表す。

 図12Bは各工程におけるシートキャリア濃度 変化を示す。縦軸はシートキャリア濃度を す。図12Cは各工程における移動度の変化を す。縦軸は移動度を表す。
 図12より、請求項1の表面伝導層を兼ね備え 、負の電子親和力を持つ表面が、WO-ANによ て得られたことがわかる。
 つまり、段落0041又は段落0045に記載の製造 法により、請求項1の電子放出面がダイヤモ ドから成る陰極で、該表面が表面伝導層を ち、かつ該表面の酸素被覆率が0.2~0.5MLであ 、かつ負の電子親和力を持つ陰極が得られ 。

 以上から本発明により得られた表面につい 図13のようにまとめられる。図13中、「SC」 表面伝導度、「NEA」は負の電子親和力を意 する。
 図13左が水素終端表面、および熱処理によ て水素が部分的に脱離した表面に対応し、 13右は酸化により得られた表面と熱処理によ って得られた表面を示す。図13の左下と右上 、水素(H)および酸素(O)いずれも終端してい い部分は、表面欠陥の存在を示している。
 図14に水素終端を熱処理した場合に現れる 面欠陥準位に対応した全光電子放出率分光 ペクトルの一例を示す。
 図14はIIa(001)(IIa型は真性半導体程度の高純 ダイヤモンド結晶を表し、(001)は結晶面方位 を表す)の特性を示し、図14(A)は超高真空中、 600°Cで1時間のアニールを行った特性、図14(B) は超高真空中、670°Cで1時間のアニールを行 た特性、図14(C)は超高真空中、830°Cで1時間 アニールを行った特性、を表す。

 図4に示す原理図に対応した、負の電子親 和力による価電子帯からの電子放出に対応す る4.4eV付近からの立ち上がりエネルギー位置 り低いエネルギー領域に、新たに図4に示す 原理図に対応したバンドギャップ中のエネル ギー位置に対応するスペクトルが現れており 、バンドギャップ中に欠陥による準位が新た に導入されていることがわかる。また、図13 右上に対応する表面の欠陥については、こ までの電極との界面で得られるショットキ 接合特性の詳細な研究から公知の事実とな ている(非特許文献5)。

 つまり本発明の電子放出表面は図13右下の 線で囲まれた状態を特徴とする表面である 水素終端表面は、表面伝導層が高い伝導度(S C:大)で存在し、負の電子親和力(NEA)を有する それを熱処理すると、SCは小さくなり、NEA 劣化する。一方、本請求項に記載のある酸 処理で得られる表面は右上であり、SCは小さ くかつNEAではない。
 しかし本請求項に記載の熱処理によって、S CおよびNEAとも回復する。つまり、熱処理に って酸素終端は部分的に残っているが、残 の部分は水素終端が回復していると言える つまり水素終端表面は熱処理等によってNEA 不安定であるが、酸素終端表面を熱処理し 得られる安定な表面でNEAを発現できること 、本発明の原理であるといえる。なお、部 的水素終端表面である図12左下の状態からNEA を回復するには、酸化処理しても右上の状態 にとどまるだけであるので、有効ではない。 水素プラズマ処理等で再水素化処理という完 全初期化プロセスで左上にすれば、NEAが回復 することは自明である。

 実施例1と同様のプロセスを行うが、ダイ ヤモンド(111)表面をCVD処理し、酸化処理とし 、混酸による沸騰洗浄処理(WO)ではなく、大 気中で420℃で30分の加熱酸化処理(AO)を行い、 真空中で600℃、30分の熱処理した後の、光電 放出率の分光スペクトルを図15に示す。「 印f」は負の電子親和力χ<0eVを意味する。 軸が励起光エネルギー、縦軸が全光電子放 率の測定値を対数でとったもので、バンド ャップエネルギー5.47eVより低い励起光エネ ギーに光電子が放出されるエネルギー閾値 存在することがわかる。また、バンドギャ プエネルギー付近で、スペクトルに幾つか ち上がる閾値が存在しており、光電子放出 が二桁以上大きくなっていることがわかる 図2~4で示したように、これは負の電子親和 の状態であることがわかる。なお、不活性 ス中の熱処理によっても表面伝導層の電気 性は図12のAO-ANとなり、WO-AN同様となる。つ り、請求項1を満たす陰極が形成された。

 図16は実施例4に係る陰極の断面概略図を示 。実施例4の陰極は第一導電形基板11、第二 電形CVDダイヤエピタキシャル膜12、第一電 13、第二電極14、電子放出表面15で構成され いる。負の電子親和力を備える電子放出表 から白抜き矢印のように電子放出電流が得 れる。
 図17に図16の陰極の製造方法を示す。本実施 例で得られる陰極の高温高圧法で合成される p形IIb(100)基板を用意した。大きさは、2.5mm×2. 5mmで厚さ0.5mmである。この基板上に、メタン スと水素ガスの流量比1%とした。全ガス流 400sccmで、圧力75Torr、マイクロ波750W、基板温 度900℃でマイクロ波プラズマCVD合成により、 n形CVD(100)ダイヤモンド薄膜を作製した。成長 直後は水素終端表面を有し、負の電子親和力 を持つ。これを硝酸と硫酸を1:3の比とする混 酸中で、230℃で1時間煮沸させる。

 図17に従って製造方法を説明する。
1.第一導電型ダイヤモンド(001)基板11上に第二 導電型CVDダイヤエピタキシャル膜12を成長さ る(図17A)。
2.全体に沸騰洗浄処理で酸化処理する。
3.膜12上に第一電極13を蒸着し、膜1上に第二 極14を蒸着する(図17B)。
4.真空中で熱処理し、電子放出表面15を形成 る(図17C)。
 p形であるがこの表面と同じCVD(001)ダイヤモ ド薄膜の光電子放出率の分光スペクトルで 、7.5 eV付近まで明瞭な光電子放出は観測さ れなかった。バンドギャップエネルギー5.47eV を考慮すると、2.0eV以上の電子親和力が得ら ていることがわかる。つまり、電子親和力 正である。

 次に、段落0054の表面を真空中で熱処理した 後の光電子放出率の分光スペクトルを図18に す。図18は、ダイヤモンド(001)表面をCVD処理 し、熱混酸処理した後、真空中で800°Cで熱処 理した後の特性を表す。「矢印n」は負の電 親和力χ<0eVを意味する。
 真空度は10 -7 Pa台で、処理温度は800℃、処理時間30分であ 。横軸が励起光エネルギー、縦軸が全光電 放出率の測定値を対数でとったもので、バ ドギャップエネルギー5.47eVより低い励起光 ネルギーに光電子が放出されるエネルギー 値が存在することがわかる。また、バンド ャップエネルギー付近で、スペクトルに立 上がる閾値が存在しており、光電子放出率 5倍程度大きくなっていることがわかる。図2 ~4で示したように、これは負の電子親和力の 態であることがわかる。

 つまり、段落0052に記載の製造方法により 、請求項1の電子放出面がダイヤモンドから る陰極で、該表面が表面伝導層を持ち、か 負の電子親和力を持つ陰極が得られた。な 、酸素の被覆率については比較例2で述べる

比較例1

 実施例1から4の熱処理温度に対し、それぞ の範囲外に当たる温度での熱処理の全光電 放出率分光法の結果を比較例1として図19に す。図19は、ダイヤモンド(111)表面をCVD処理 、混酸煮沸処理した後、真空中で30分熱処 した後の特性を表す。
 図19中、混酸による沸騰洗浄処理後が黒四 、200℃での真空中熱処理後が実線、600℃で 処理後が白三角、900℃での処理後が白丸で る。明らかに、600℃での処理後以外は負の 子親和力が得られていない。ただし900℃の 果ではバンドギャップ付近からまだ光電子 出率スペクトルの成分が残っていることを まえて、この比較例から、熱処理温度範囲 200℃より高く、900℃以下であることがわか 。

比較例2

 実施例4の段落0054の酸化処理後のX線光電子 光スペクトルの結果が図20に示されている
 図20は、ダイヤモンド(001)表面のWOにおける C1sコアレベルシフトのスペクトルである。
 図20において、「p」は-1.1(eV)、「q」は+1.3(eV )[C-OH or C-O-C]、「r」は+2.6(eV)[C=O]となる。
 炭素原子(C)のsp3電子に相当するエネルギー 置を0eVとした場合、の+1.3eVと+2.6eVにピーク 観測されている。それぞれ、C-OHまたはC-O-C 合、およびC=O結合の炭素原子のK殻電子の状 態に相当すると考えられている。表面は、水 素終端表面の2x1再構成から1x1再構成している 。酸素(O)の量はほぼ0.55分子層(0.55ML)に相当し 試料表面は酸化された。また、再構成した炭 素量は0.17分子層(0.17ML)であり、0.72MLが水素以 外の終端状態に変化した。全反射赤外吸収フ ーリエ変換赤外分光(ATR-FTIR)スペクトルから C-H結合は観測されず、水素終端はほぼ除去 れたと言える。

 実施例4の段落0054の酸化処理の次に不活性 ス中で加熱処理した後の、ダイヤモンド(001) 表面のWO-ANにおける、C1sコアレベルシフトの ペクトルを図21に示す。
 図21において、「s」は-1.1(eV)、「t」は+1.3(eV )[C-OH or C-O-C]、「u」は+2.6(eV)[C=O]となる。
 不活性ガスとしてアルゴン(Ar)を使用し、5sc cmの流量で圧力は200Pa、処理温度は420℃で30分 である。図7、9、20と同様に、炭素原子(C)のsp 3電子に相当するエネルギー位置を0eVとした 合、+1.4eVと+2.9eVにピークが観測されている それぞれ、C-OHまたはC-O-C結合、およびC=O結 の炭素原子のK殻電子の状態に相当すると考 られている。酸素(O)の量はほぼ0.51分子層(0. 51ML)に相当し、図20の0.55MLとほぼ同程度であ 。また、再構成した炭素量は0.25分子層(0.25ML )であり、0.76MLが水素以外の終端状態として 在している。

 この表面の光電子放出率の分光スペクト では、7.5 eV付近まで明瞭な光電子放出は観 測されなかった。バンドギャップエネルギー 5.47eVを考慮すると、2.0eV以上の電子親和力が られていることがわかる。つまり、電子親 力は正である。

 この比較例2ならびに実施例4から、電子 出表面がダイヤモンドであるが、酸素被覆 が0.5MLより大きい場合は、負の電子親和力が 現れないことがわかる。したがって、本発明 が与える負の電子親和力と表面伝導層を兼ね 備える電子放出表面がダイヤモンドである陰 極の表面は、酸素被覆率が0.2~0.5MLであること がわかる。なお、実施例4の通り、製造方法 記載の熱処理温度の範囲でより高い処理温 で熱処理を行うことにより、必ず請求項1の 極が形成できる。

 以上の様に、本発明は、電子放出表面が イヤモンドから成り、該ダイヤモンド表面 、混酸による沸騰洗浄処理又は大気中アニ ル又は酸素プラズマによる処理により酸化 理する工程と、該酸化処理された表面を、 空中又は不活性ガス中で200℃より高く900℃ 下で熱処理し負の電子親和力表面を形成す 工程とを備える陰極、および該陰極の製造 法である。この材料物性を最大限引き出し あらゆる電子応用(化学・生化学を含む)お び電子ビーム応用への展開が可能であり、 色照明、殺菌・浄水、電子ビーム応用分析 電力スイッチング素子・高輝度電子銃・高 度X線装置、マイクロ流路内局所化学反応用 ソード等の各種情報センシング、環境技術 医療、等の幅広い分野への応用が可能とな 。