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Title:
NONAQUEOUS ELECTROLYTE RECHARGEABLE BATTERY
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/081594
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided is a nonaqueous electrolyte rechargeable battery including a negative-electrode current collector (16), a negative-electrode active material layer (15) provided on the negative-electrode current collector (16), a positive-electrode current collector (11), a positive-electrode active material layer (12) provided on a surface of the positive-electrode current collector (11) being opposed to the negative-electrode active material layer (15), at least one layer of an inorganic insulation layer (13) provided between the positive-electrode active material layer (12) and the negative-electrode active material layer (15), and formed of inorganic particles, wherein the inorganic insulation layer (13) does not include a binder.

Inventors:
TAKAHASHI KEIICHI
MINO SHINJI
YOSHIDA TSUNENORI
Application Number:
PCT/JP2008/004012
Publication Date:
July 02, 2009
Filing Date:
December 26, 2008
Export Citation:
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Assignee:
PANASONIC CORP (JP)
TAKAHASHI KEIICHI
MINO SHINJI
YOSHIDA TSUNENORI
International Classes:
H01M4/02; H01M4/13; H01M4/131; H01M4/1391; H01M10/05; H01M10/058; H01M50/417; H01M50/489
Foreign References:
JP2007311084A2007-11-29
JP2005183179A2005-07-07
Attorney, Agent or Firm:
OKUDA, Seiji (10th FloorOsaka Securities Exchange Bldg.,8-16, Kitahama 1-chom, Osaka-shi Osaka 41, JP)
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Claims:
 負極集電体と、
 前記負極集電体上に設けられた負極活物質層と、
 正極集電体と、
 前記正極集電体のうち前記負極活物質層に対向する面上に設けられた正極活物質層と、
 前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に設けられ、無機粒子からなる少なくとも1層の多孔性無機絶縁層と
を備え、
 前記多孔性無機絶縁層はバインダを含んでいない、非水電解質二次電池。
 前記多孔性無機絶縁層は、前記無機粒子をキャリアガスと共に噴射することにより形成された層である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
 前記多孔性無機絶縁層は、前記無機粒子が、バインダを介さず、直接結合している層である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
 前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に設けられたセパレータをさらに備え、
 前記多孔性無機絶縁層は、前記セパレータと前記負極活物質層との間および前記セパレータと前記正極活物質層との間のうちの少なくとも一方に設けられている、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
 前記多孔性無機絶縁層を2層備え、
 前記2層の多孔性無機絶縁層のそれぞれは、前記セパレータと前記負極活物質層との間、および前記セパレータと前記正極活物質層との間に設けられている、請求項4に記載の非水電解質二次電池。
 前記多孔性無機絶縁層は、前記無機粒子を含むエアロゾルを形成し、前記エアロゾルを、前記正極活物質層、前記負極活物質層および前記セパレータのうちの少なくとも1つに衝突させることにより形成された層である、請求項4に記載の非水電解質二次電池。
 前記無機粒子は、無機酸化物粒子、無機窒化物粒子、無機フッ化物粒子もしくはリチウムイオン伝導性無機固体電解質、これらの混合物または化合物である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
 前記無機粒子の平均粒径は、0.05μm以上10μm以下である、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
 前記無機粒子はアルミナである、請求項1から8のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
 前記多孔性無機絶縁層は、前記正極活物質層の表面に設けられている、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
 集電体と、
 前記集電体上に設けられた活物質層と、
 前記活物質層の表面に設けられ、無機粒子からなる多孔性無機絶縁層と
を備え、
 前記多孔性無機絶縁層はバインダを含んでいない、非水電解質二次電池の電極。
 前記多孔性無機絶縁層は、40%以上95%以下の緻密度および0.3μm以上20μm以下の厚さを有する、請求項11に記載の非水電解質二次電池の電極。
 前記多孔性無機絶縁層は、0.05μm以上5μm以下の粒子径を有する扁平状の粒子を有する、請求項11に記載の非水電解質二次電池の電極。
 前記多孔性無機絶縁層は、無機粒子をキャリアガスと共に噴射することにより形成された層である、請求項11に記載の非水電解質二次電池の電極。
 前記多孔性無機絶縁層は、アルミナ、ムライト、シリカ、チタニア、およびマグネシアから選ばれる物質を含む、請求項11に記載の非水電解質二次電池の電極。
 請求項11に記載の電極からなる正極と、
 負極と、
 非水溶媒を含む電解液とを備える、非水電解質二次電池。
 前記活物質層は、リチウム複合酸化物を含む、請求項16に記載の非水電解質二次電池。
 請求項11に記載の電極からなる負極と、
 正極と、
 非水溶媒を含む電解液とを備える、非水電解質二次電池。
 有機高分子系セパレータを含まない、請求項16または18に記載の非水電解質二次電池。
 非水電解質二次電池に用いられるセパレータであって、
 前記セパレータの表面の少なくとも一部に設けられ、無機粒子からなる多孔性無機絶縁層を備え、
 前記多孔性無機絶縁層はバインダを含んでいない、セパレータ。
 正極活物質層を有する正極と、負極活物質層を有する負極と、セパレータとを備えた非水電解質二次電池の製造方法であって、
 前記正極活物質層、前記負極活物質層または前記セパレータの表面に、無機粒子をキャリアガスと共に噴射することにより、前記無機粒子からなる多孔性無機絶縁層を形成する工程(a)と、
 前記正極および前記負極によって前記セパレータを挟持させて電極群を形成し、前記電極群をケースに収納後、前記ケース内に非水電解質を充填する工程(b)とを包含する、非水電解質二次電池の製造方法。
 前記工程(a)は、前記無機粒子を含むエアロゾルを形成し、前記エアロゾルを、前記正極活物質層、前記負極活物質層または前記セパレータの表面に衝突させる、請求項21に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
Description:
非水電解質二次電池

 本発明は、非水電解質二次電池用の電極 およびそれを用いた非水電解質二次電池に する。

 リチウムイオン二次電池は、正極と負極 の間に、それぞれの極板を電気的に絶縁し さらに電解液を保持する役目を果たすセパ ータを有する。現在、セパレータとして、 にポリエチレンやポリプロピレン等からな 有機高分子系微多孔性フィルムが使用され いる。

 これらの樹脂からなる微多孔性フィルム 、100℃程度の温度で収縮するという性質を する。したがって、活物質層の一部が剥が 落ちること等によってリチウムなどの金属 素が析出した時や、外部から釘のような鋭 な形状の突起物が電池を貫いた時には、短 電流が流れ、流れる電流により瞬時に発生 る反応熱によってセパレータが収縮する。 パレータが収縮すると、正極と負極との間 短絡面積がさらに拡大してしまう。

 短絡を防止する対策の1つとして、特許文 献1は、負極活物質層または正極活物質層の 面に、多孔性保護膜を形成する方法を開示 ている。この多孔性保護膜は、アルミナな の無機物の粉体を、樹脂製結着剤と混合し 混合物を負極活物質層または正極活物質層 表面に塗布することにより形成される。

 特許文献2は、活物質層表面に固体微粒子 を含む多孔性コーティング膜を塗布形成する 技術を開示している。

 特許文献3は、多孔質絶縁膜をスパッタリン グによって負極表面に形成する技術を開示し ている。特許文献3には、スパッタリング法 より多孔質絶縁膜を形成する場合、その厚 は5nmから100nmが望ましいと記載されている。

特開平7-220759号公報

特許第3371301号明細書

特開平6-36800号公報

 特許文献1および2に開示されているよう 塗工法によって多孔性保護膜を形成すると その多孔性保護膜の密着性は低いといった 題があった。

 また、活物質層は、バインダ(結着剤)を む有機溶剤と活物質との混合物を集電体上 塗布することにより形成される。したがっ 、その上に、さらにバインダを含む有機溶 が混合された多孔性保護膜を塗布すると、 方の層の有機溶剤に他方の層が溶解し、活 質層と多孔性保護膜とが相互に混ざり合っ しまう場合があった。これを防止するため 、上部に塗る塗料に用いる溶剤として、下 のバインダが溶けにくい別の有機溶剤を用 なければならなかった。また、そのような 機溶剤を用いられても、乾燥時の収縮率の いで、極板に反りが生じる場合があった。

 一方、特許文献3のスパッタリング法によ り形成された多孔質絶縁膜は、強い内部応力 を有する。そのため、特許文献3の方法では 正極と負極との間を十分に絶縁できるほど 厚い膜を形成することは難しい。また、ス ッタリング法では緻密性の高い膜が形成さ るため、正極と負極との間のイオン伝導性 低下するといった問題もある。

 本発明は、上記課題を解決するためにな れたものであり、その目的は、電極間の電 的絶縁性とイオン伝導性を確保しつつ、活 質層と無機絶縁層との間の密着性を高める とにより短絡の進行しにくい安全性に優れ 非水電解質二次電池、および非水電解質二 電池用の電極を提供することにある。

 本発明の第1の非水電解質二次電池は、負 極集電体と、前記負極集電体上に設けられた 負極活物質層と、正極集電体と、前記正極集 電体のうち前記負極活物質層に対向する面上 に設けられた正極活物質層と、前記正極活物 質層と前記負極活物質層との間に設けられ、 無機粒子からなる少なくとも1層の多孔性無 絶縁層とを備え、前記多孔性無機絶縁層は インダを含んでいない。

 ある実施形態において、前記多孔性無機 縁層は、前記無機粒子をキャリアガスと共 噴射することにより形成された層である。

 ある実施形態において、前記多孔性無機 縁層は、前記無機粒子が、バインダを介さ 、直接結合している層である。

 ある実施形態において、前記正極活物質 と前記負極活物質層との間に設けられたセ レータをさらに備え、前記多孔性無機絶縁 は、前記セパレータと前記負極活物質層と 間および前記セパレータと前記正極活物質 との間のうちの少なくとも一方に設けられ いる。

 ある実施形態において、前記多孔性無機 縁層を2層備え、前記2層の多孔性無機絶縁 のそれぞれは、前記セパレータと前記負極 物質層との間、および前記セパレータと前 正極活物質層との間に設けられている。

 ある実施形態において、前記多孔性無機 縁層は、前記無機粒子を含むエアロゾルを 成し、前記エアロゾルを、前記正極活物質 、前記負極活物質層および前記セパレータ うちの少なくとも1つに衝突させることによ り形成された層である。

 ある実施形態において、前記無機粒子は 無機酸化物粒子、無機窒化物粒子、無機フ 化物粒子もしくはリチウムイオン伝導性無 固体電解質、これらの混合物または化合物 ある。

 ある実施形態において、前記無機粒子の 均粒径は、0.05μm以上10μm以下である。

 ある実施形態において、前記無機粒子は ルミナである。

 ある実施形態において、前記多孔性無機 縁層は、前記正極活物質層の表面に設けら ている。

 本発明の非水電解質二次電池の電極は、 電体と、前記集電体上に設けられた活物質 と、前記活物質層の表面に設けられ、無機 子からなる多孔性無機絶縁層とを備え、前 多孔性無機絶縁層はバインダを含んでいな 。

 ある実施形態において、前記多孔性無機 縁層は、40%以上95%以下の緻密度および0.3μm 上20μm以下の厚さを有する。

 ある実施形態において、前記多孔性無機 縁層は、0.05μm以上5μm以下の粒子径を有す 扁平状の粒子を有する。

 ある実施形態において、前記多孔性無機 縁層は、無機粒子をキャリアガスと共に噴 することにより形成された層である。

 ある実施形態において、前記多孔性無機 縁層は、アルミナ、ムライト、シリカ、チ ニア、およびマグネシアから選ばれる物質 含む。

 本発明の第2の非水電界質二次電池は、本 発明の電極からなる正極と、負極と、非水溶 媒を含む電解液とを備える。

 ある実施形態において、前記活物質層は リチウム複合酸化物を含む。

 本発明の第2の非水電界質二次電池は、本 発明の電極からなる負極と、正極と、非水溶 媒を含む電解液とを備える。

 ある実施形態において、有機高分子系セ レータを含まない。

 本発明のセパレータは、非水電解質二次 池に用いられるセパレータであって、前記 パレータの表面の少なくとも一部に設けら 、無機粒子からなる多孔性無機絶縁層を備 、前記多孔性無機絶縁層はバインダを含ん いない。

 本発明の非水電解質二次電池の製造方法 、正極活物質層を有する正極と、負極活物 層を有する負極と、セパレータとを備えた 水電解質二次電池の製造方法であって、前 正極活物質層、前記負極活物質層または前 セパレータの表面に、無機粒子をキャリア スと共に噴射することにより、前記無機粒 からなる多孔性無機絶縁層を形成する工程( a)と、前記正極および前記負極によって前記 パレータを挟持させて電極群を形成し、前 電極群をケースに収納後、前記ケース内に 水電解質を充填する工程(b)とを包含する。

 ある実施形態において、前記工程(a)は、 記無機粒子を含むエアロゾルを形成し、前 エアロゾルを、前記正極活物質層、前記負 活物質層または前記セパレータの表面に衝 させる。

 本発明の非水電解質二次電池では、多孔 無機絶縁層は、バインダを含んでおらず、 孔性無機絶縁層に含まれる無機粒子は、他 無機粒子や他の部材の表面に、直接的に結 している。したがって、バインダにより接 された場合と比較して、多孔性無機絶縁層 密着性は高くなる。そのため、正極、負極 よびセパレータを加工する工程において無 絶縁層の一部が欠落し、電極間の短絡が起 るといった問題を回避することができる。

(a)、(b)は、本発明におけるリチウムイ ン二次電池の第1の実施形態を示す断面図で ある。 本発明の原理を示すために行なった実 の結果を示す図である。 (a)、(b)は、釘などの鋭利な形状の突起 が電池を貫いた場合の電池内の状態を模式 に示す断面図である。 (a)は、本実施形態のリチウムイオン二 電池における正極を示す断面図であり、(b) 、リチウムイオン二次電池の正極の表面に 機絶縁層13が形成された状態の画像を示す である。 本発明のリチウムイオン二次電池に用 るセパレータを示す図である。 実施形態の無機絶縁層を形成するのに いるエアロゾルデポジション装置の概略図 示す図である。 本発明によるリチウムイオン二次電池 第2の実施形態を示す断面図である。 本発明によるリチウムイオン二次電池 第3の実施形態を示す断面図である。 本発明によるリチウムイオン二次電池 第4の実施形態を示す断面図である。 本発明によるリチウムイオン二次電池 の第5の実施形態を示す断面図である。 実施例1における正極Bの断面(正極集電 体11と正極活物質層12との接合面に垂直な方 の断面)のSEM画像を示す図である。

符号の説明

1    正極
2    負極
11   正極集電体
12   正極活物質層
13   無機絶縁層
14   セパレータ
15   負極活物質層
16   負極集電体
18   活物質粒子
21   突起物
22   短絡箇所に生じた空間
34   ラミネート型電池
35   外装ケース
36   正極リード
37   負極リード
38   樹脂絶縁材料
40   円筒型電池
41   正極
41a  正極リード
42   負極
43   セパレータ
44   電極群
45   正極端子
46   絶縁パッキン
47   下部絶縁リング
48   電池缶
49   封口板
51   ガスボンベ
52a、52b 配管
53   エアロゾル発生器
54   成膜チャンバー
55   噴射ノズル
56   基板
57   基板ホルダー
58   排気ポンプ
59a、59b バルブ
60   無機絶縁粒子
61   エアロゾル

 (第1の実施形態)
 図1(a)、(b)は、本発明におけるリチウムイオ ン二次電池の第1の実施形態を示す断面図で る。なお、図1(a)、(b)には、リチウムイオン 次電池の主要部が示されているが、本実施 態のリチウムイオン二次電池は、角型電池 円筒型電池などの捲回型電池であってもよ し、積層型電池であってもよい。図1(a)に示 すリチウムイオン二次電池は、正極集電体11 よび正極活物質層12を有する正極1と、負極 電体16および負極活物質層15を有する負極2 、正極1と負極2との間に挟まれたセパレータ 14とを備える。セパレータ14と正極活物質層12 との間には、複数の無機粒子からなり、バイ ンダを含んでいない多孔性の無機絶縁層13が けられている。

 無機絶縁層13は、複数の無機粒子をキャ アガスと共に噴射することにより形成され 。具体的には、正極1およびセパレータ14を れぞれ準備し、正極活物質層12またはセパレ ータ14の表面に、無機粒子を含むエアロゾル 噴射して、無機絶縁層13を形成する(AD法)。 の後、正極1、セパレータ14および負極2を組 み立てて、図1(a)に示すように配置させる。

 AD法による成膜のメカニズムは、無機粒 の衝突に伴う、新生面の生成および結合に ると考えられている。すなわち、無機粒子 ある原料粉体が下地(集電体またはその上に 成された絶縁層)に衝突すると、その衝撃に より、一次粒子は扁平状に変形したり、複数 の粒子に破砕される。この変形および破砕に より、新たな結合に関与する新生面が生じる 。「新生面」とは、瞬間的に原子の結合手( ングリングボンド)が露出した、高い活性状 にある面のことをいう。これら2つの新生面 が接触することにより、一次粒子は、下地や 他の一次粒子と直接的に結合する。一次粒子 を衝突させる速度を高めて運動エネルギーを 大きくすることにより、粒子をより顕著に扁 平状にすることができる。扁平状の度合いが 大きくなれば、より緻密な膜を形成すること ができる。

 この製造方法によると、無機粒子が、正 活物質層12の表面や他の無機粒子に直接的 結合する。この直接的な結合は、バインダ による接着よりも強いため、本実施形態の 機絶縁層の密着性は、バインダにより接合 れた場合と比較して高くなる。無機絶縁層 バインダを含んでいるかどうかは、無機絶 層中の樹脂成分の有無を分析することによ て判断できる。具体的には、EPMAなどによる 機絶縁層中の元素マップから、バインダの 成元素であるCやFなどが無機絶縁層中に顕 に含まれていないかを調べることによって 断すればよい。

 ここで、本発明の原理を示すために行な た実験について説明する。本実験では、正 として、無機絶縁層を有さない単なる銅板( 正極(a))、バインダを含む無機絶縁層が表面 形成された銅極(正極(b))、およびバインダを 含まない無機絶縁層が表面に形成された銅極 (正極(c))の3種類を用いた。正極(b)上の無機絶 縁層は、アルミナ粒子とバインダとを含むス ラリーを銅板上に塗布することによって形成 した。正極(c)上の無機絶縁層は、AD法によっ アルミナ粒子を含むエアロゾルを銅板に噴 することによって形成した。セパレータと ては、厚さ16μmのポリプロピレン微多孔フ ルムを用いた。

 3種類の正極(a)~(c)のそれぞれと負極との にセパレータを配して、電解液中に浸漬さ 、サンプル(a)~(c)を作製した。この状態で、 テンシオスタットを用いて、正・負極間に 銅の溶解電位以上の電位差を与え、ファラ ー電流の増大を時間変化とともに観測した そのとき極間に流れるファラデー電流の経 変化の様子を図2に示す。

 図2に示すように、サンプル(a)では、短時 間のうちに電流値の増大がみられる。ファラ デー電流の増大は、正極からの銅の溶解およ び負極への銅の析出に伴って生じることから 、このサンプル(a)では、金属析出に伴う耐短 絡性が十分でないことがわかる。一方、サン プル(b)では、電流が増大するまでの時間がサ ンプル(a)と比較して遅くなっている。さらに 、サンプル(c)では、サンプル(b)と比較して、 電流の増加が抑制されている。この結果から 、バインダフリーの無機絶縁層を有する正極 は、非常に良好な耐短絡性を示すことが確認 された。なお、電子絶縁層の有無およびバイ ンダーの有無による影響のみを比較するため に、サンプル(a)~(c)の正極および負極として 銅板を用いた。そのため、サンプル(a)~(c)は 活物質層を有する電池とは異なる構成を有 る。

 一方、図1(b)に示すリチウムイオン二次電 池では、無機絶縁層13が、セパレータ14と正 1との間ではなく、セパレータ14と負極2との に設けられているが、それ以外の構成は、 1(a)と同じである。

 図1(b)に示すリチウムイオン二次電池の無 機絶縁層13は、負極活物質層15またはセパレ タ14の表面に、複数の無機粒子を含むエアロ ゾルを噴射することにより形成される。その 後、正極1、セパレータ14および負極2を組み てることにより、図1(b)に示すリチウムイオ 二次電池が得られる。

 なお、図1(a)、(b)では、正極1および負極2 いずれか一方とセパレータ14との間に無機 縁層13を設けているが、正極1とセパレータ14 との間、および負極2とセパレータ14との間の 両方に無機絶縁層13を設けてもよい。

 図1(a)、(b)では、電極群が収納される電極 缶や、電極缶内に充填される電解液などの図 示を省略している。

 本実施形態のリチウムイオン二次電池で 、無機絶縁層13に含まれる無機粒子は、他 無機粒子や、正極活物質層12、負極活物質層 15またはセパレータ14の表面に、直接的に結 している。したがって、バインダにより接 された場合と比較して、無機絶縁層13の密着 性は高くなる。そのため、正極1、負極2およ セパレータ14を加工する工程において無機 縁層13の一部が欠落し、電極間の短絡が起こ るといった問題を回避することができる。

 また、無機絶縁層13がバインダを含まな ため、無機絶縁層13が、正極活物質層12や負 活物質層15と混じり合うという問題が生じ い。したがって、正極活物質層12や負極活物 質層15に用いるバインダの種類を考慮するこ なく、無機絶縁層13を形成することができ 。特に、従来では正極活物質層の上に無機 縁層を形成するのが困難であったが、本実 形態の無機絶縁層13は、正極活物質層12にど ようなバインダが用いられている場合でも 正極活物質層12の上に密着性の高い無機絶 層13を形成することができる。

 また、無機絶縁層13はバインダを含まず 質的に無機粒子のみから構成されるため、 機絶縁層13の体積あたりの容量が大きくなる といった利点もある。

 さらに、無機絶縁層13を正極活物質層12の 上に形成すると、次のような利点がある。図 3(a)、(b)は、釘などの鋭利な形状の突起物が 池を貫いた場合の電池内の状態を模式的に す断面図である。図3(a)は無機絶縁層13が設 られていない従来の電池を示し、図3(b)は本 施形態の電池を示す。図3(a)に示す従来の電 池において、例えば、正極集電体111はアルミ ニウムであり、正極活物質層112はニッケル酸 リチウムであり、セパレータ114はオレフィン 系樹脂の微多孔フィルムであり、負極活物質 層115は炭素であり、負極集電体116は銅である 。図3(a)に示すように、従来の電池において 突起物121が電池を貫くと、突起物121の周囲 ジュール熱が発生してセパレータ114が溶融 、収縮する。これにより、セパレータ114に 、突起物121の周囲に穴122が生じる。発熱量 大きいとセパレータ114の穴122は大きく拡大 る場合がある。

 一方、図3(b)に示す電池の正極集電体11、 極活物質層12、セパレータ14、負極活物質層 15および負極集電体16も、図3(a)に示す電池と じ材料からなり、また、図3(b)に示す無機絶 縁層13は、アルミナからなる。図3(b)に示すよ うに、本実施形態の電池において、突起物21 電池を貫くと、従来と同様に、突起物21の 囲でジュール熱が発生してセパレータ14が溶 融し、収縮する。これにより、セパレータ14 は、突起物21の周囲に穴22が生じる。ジュー ル熱は発生し続けるためセパレータ14の穴22 拡大するが、セパレータ14と正極活物質層12 の間に無機絶縁層13が配置しているため、 パレータ14が収縮しても、正極活物質層12と 極活物質15との間の短絡は起こりにくくな 。

 次に、無機絶縁層13について詳細に説明 る。無機絶縁層13は、1層から構成されてい もよいし、複数層から構成されていてもよ 。

 無機絶縁層13を形成するための無機粒子 しては、絶縁性の多孔性無機粒子を用いる 例えば、アルミナを主成分とする無機粒子 用い、エアロゾルデポジション法により、 機絶縁層13を形成すればよい。この場合、ア ルミナ粒子(一次粒子)の平均粒径は、0.05μm以 上10μm以下であることが望ましい。アルミナ 子の粒径が0.05μm未満の場合には、粒子の重 量不足のため、正極活物質層12、負極活物質 15またはセパレータ14の表面と結合するため の運動エネルギーが不足し、アルミナ粒子の 堆積が困難になる。逆にアルミナ粒子の粒径 が10μmを超えると、アルミナ粒子が正極活物 層12、負極活物質層15またはセパレータ14の 面を削り取る現象が生じ、無機絶縁層13が 成されにくくなる。

 アルミナ粒子の平均粒径としては1.0~1.5μm付 近がより望ましく、アルミナ粒子の平均粒径 がこの範囲内にあると、アルミナ粒子の付着 効率がさらに高くなる。また、アルミナ以外 の電子絶縁性の無機粒子としては、ZrO 2 、TiO 2 、Y 2 O 3 、SiO 2 、MgO、AlN、ZrN、TiN、YN、Si 3 N 4 、Mg 3 N 2 、AlF 3 、CaF 2 またはリン酸リチウム系固体電解質などを用 いることができる。これらのうち1種類のみ 単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わ て用いてもよい。また異種の無機粒子から る複数の層を積層することにより、無機絶 層13を形成してもよい。さらに、2種類以上 無機粒子を用いる場合には、それぞれの種 の無機粒子の平均粒径が異なっていてもよ 。

 無機絶縁層13の緻密度は40%以上95%以下で ることが好ましい。さらに好ましくは、70% 上90%以下であることが好ましい。無機絶縁 13の緻密度が95%以下であること(すなわち、 孔質であること)、さらに好ましくは90パー ント以下であることにより、この電極10を用 いた電池では、正極と負極との間のイオン伝 導性が適切な範囲に調整される。また、無機 絶縁層13の緻密度が40%以上であることにより 無機絶縁層13内の無機粒子同士の結合や、 機粒子と下地との間の結合を強固に保つこ ができる。

 無機絶縁層13の緻密度とは、無機絶縁層13 の嵩密度を、無機絶縁層13を構成する材料の 密度で割った値である。嵩密度は、無機絶 層13の質量を、無機絶縁層13の体積で割った 値である。無機絶縁層13の体積は、成膜面積 膜厚とを測定し、これらを積算することに り算出することができる。また、場合によ ては、嵩密度をX線薄膜反射率法から求める ことができる。一方、真密度とは、空隙のな い状態での単位容積当たりの重量をいう。文 献(セラミック工学ハンドブック(第2版)・応 編)によると、アルミナ、ムライト、シリカ チタニア、およびマグネシアのそれぞれの 密度は、3.98、3.19、1.96、4.27、および3.585で る。なお、緻密度は相対密度と同義である

 無機絶縁層13の厚さは特に限定されない 、例えば、0.1μm以上100μm以下であればよい 無機絶縁層13による信頼性向上の機能を充分 に発揮するとともに、電池の設計容量を維持 する観点からは、0.3μm以上5μm以下であるこ が望ましい。なお、例えばスパッタリング で形成された絶縁膜は大きな内部応力を有 るため、スパッタリング法により、0.3μm以 の厚い膜を形成するのは困難である。また 無機絶縁層13の厚さは5μm以下であれば、イ ン透過性を高く保つことができる。

 積層構造の無機絶縁層13を形成した場合 おいても、総厚さが0.3μm以上5μm以下である とが望ましい。また、無機絶縁層13の厚さ 、1μm以上であればさらに好ましい。

 図1(a)、(b)に示すように、正極1と負極2と 間に無機絶縁層13を形成するためには、正 1、負極2およびセパレータ14のいずれかの表 に無機絶縁層13を形成した後に、これらを み立てればよい。以下では、まず正極1の表 に無機絶縁層13を形成する形態について説 する。

 図4(a)は、本実施形態のリチウムイオン二 次電池における正極を示す断面図である。図 4(a)に示すように、本実施形態における正極1 、正極集電体11および正極活物質層12を有し 、正極1の表面上には、複数の無機粒子から り、バインダを含んでいない少なくとも1層 多孔性の無機絶縁層13が形成されている。

 このように正極1の表面に無機絶縁層13を 成した場合には、無機絶縁層13が形成され いる面をセパレータ14に対向させることによ り、図3(a)に示すようなリチウムイオン二次 池を得ることができる。

 図4(a)では、正極1の表面に無機絶縁層13が 形成されているが、負極2の表面に無機絶縁 13を形成してもよい。この場合にも、無機絶 縁層13が形成されている面をセパレータ14に 向させることにより、図3(b)に示すようなリ ウムイオン二次電池を得ることができる。

 図4(b)は、リチウムイオン二次電池の正極 の表面に無機絶縁層13が形成された状態の画 を示す図である。図4(b)に示すように、正極 活物質層12は複数の粒子18が結合することに り形成され、正極活物質層12の表面の凹凸に 沿って、無機絶縁層13が形成されていること わかる。

 本実施形態の正極活物質層12および負極 物質層15は、活物質、バインダおよび導電剤 を含む一般的な活物質層である。

 正極活物質層12を形成する物質としては コバルト酸リチウム、コバルト酸リチウム 変性体、ニッケル酸リチウム、ニッケル酸 チウムの変性体、マンガン酸リチウムまた マンガン酸リチウムの変性体などの複合酸 物を用いることができる。各変性体には、 ルミニウム、マグネシウムなどの元素を含 ものがある。また、正極活物質層12を形成す るための材料として、コバルト、ニッケルお よびマンガンの少なくとも2種を含む複合酸 物を用いてもよく、2種以上の複合酸化物を わせて用いてもよい。

 正極活物質層12に用いるバインダの種類 特に限定されず、PTFE(四フッ化エチレン樹脂 )、変性アクリロニトリルゴム粒子またはPVDF( ポリフッ化ビニリデン)などを用いることが きる。PTFEなどは正極合剤層の原料ペースト 増粘剤となるカルボキシメチルセルロース ポリエチレンオキシド、変性アクリロニト ルゴムなどと組み合わせて用いることが望 しい。PVDFは単一でバインダと増粘剤の双方 の機能を有する。

 正極集電体11としては、例えば、アルミ ウム箔が用いられ、概ね市販で入手可能な5~ 20μmの厚さのアルミニウム箔が用いられる。

 導電剤としてはアセチレンブラック、各 黒鉛などを用いることができる。これらは 独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい 。

 負極活物質層15としては、各種天然黒鉛 たは各種人造黒鉛を用いることが一般的で るが、シリサイドなどのシリコン含有複合 料や各種合金材料を用いることができる。 えばケイ素単体、ケイ素合金、ケイ素と酸 とを含む化合物、ケイ素と窒素とを含む化 物、スズ単体、スズ合金、スズと酸素とを む化合物、およびスズと窒素とを含む化合 よりなる群から選択される少なくとも1種を いるのが望ましい。

 ケイ素合金としては、例えば、SiB 4 、SiB 6 、Mg 2 Si、Ni 2 Si、TiSi 2 、MoSi 2 、CoSi 2 、NiSi 2 、CaSi 2 、CrSi 2 、Cu 5 Si、FeSi 2 、MnSi 2 、NbSi 2 、TaSi 2 、VSi 2 、WSi 2 、ZnSi 2 、SiCが挙げられる。

 ケイ素と酸素とを含む化合物としては、例 ば、Si 2 N 2 O、SiO x (0<x≦2)、SnSiO 3 、LiSiOが挙げられる。

 ケイ素と窒素とを含む化合物としては、例 ば、Si 3 N 4 、Si 2 N 2 Oが挙げられる。

 スズ合金としては、例えば、Mg 2 Snが挙げられる。

 スズと酸素とを含む化合物としては、例え 、SnO x (0<x≦2)、SnSiO 3 が挙げられる。

 スズと窒素とを含む化合物としては、例え 、Sn 3 N 4 、Sn 2 N 2 Oが挙げられる。

 負極集電体16としては、例えば、厚さが5~ 50μmの銅箔やニッケル箔が挙げられる。

 次に、セパレータ14の表面に無機絶縁層13 を形成する形態について説明する。

 図5は、本発明のリチウムイオン二次電池 に用いるセパレータを示す図である。本実施 形態におけるセパレータは、セパレータ14と セパレータ14の表面に設けられた無機絶縁 13とを備える。なお、図5では、セパレータ14 の上面のみに無機絶縁層13が形成されている 、セパレータ14の上面および下面に無機絶 層13が形成されていてもよい。

 このように、セパレータ14の表面に無機 縁層13を形成した場合には、無機絶縁層13が 成されている面を正極活物質層12および負 活物質層15のうちの少なくともいずれか一方 に対向させることにより、図1(a)、(b)に示す うなリチウムイオン二次電池を得ることが きる。

 セパレータ14としては、特に限定されな が、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの リオレフィン系樹脂からなる微多孔フィル を用いることが一般的である。微多孔フィ ムは1種のポリオレフィン系樹脂からなる単 膜でも2種以上のポリオレフィン系樹脂から なる多層膜であってもよい。

 次に、エアロゾルデポジション法により 機絶縁層13を形成する方法を説明する。

 図6に、実施形態の無機絶縁層を形成する のに用いるエアロゾルデポジション装置の概 略図を示す。図6に示すガスボンベ51には、エ アロゾルを発生させるための気体が貯蔵され ている。ガスボンベ51は、配管52aを介してエ ロゾル発生器53に連結され、配管52aは、エ ロゾル発生器53の内部に引き出されている。 エアロゾル発生器53の内部には、一定量のア ミナ粒子60が投入されており、配管52aの先 は、堆積されたアルミナ粒子60の層内に挿入 されている。エアロゾル発生器53に連結され もう1つの配管52bは、成膜チャンバ54に連結 れ、成膜チャンバ54の内部において、配管52 bの端部は、噴射ノズル55に接続されている。

 成膜チャンバ54の内部において、基板ホ ダ57には基板56が保持され、基板56は、噴射 ズル55に対向して配置されている。例えば、 正極の表面に無機絶縁層を形成する場合には 、基板56として、集電体の表面に正極活物質 が形成された状態の正極が配置されている 成膜チャンバ54には、成膜チャンバ54内の真 空度を調整するための排気ポンプ58が接続さ ている。

 図示は省略するが、本実施形態の電極を 成する成膜装置は、基板ホルダ57を横方向 たは縦方向(基板ホルダ57において噴射ノズ 55に対向する平面内の横方向または縦方向) 一定速度で移動させる機構を備える。基板 ルダ57を縦方向および横方向に移動させなが ら成膜を行うことにより、基板56の上に、所 の面積の活物質層を形成することができる

 無機絶縁層13を形成する工程では、まず ガスボンベ51内の気体を配管52aを通じてエア ロゾル発生器53に導入し、無機絶縁粒子60で るアルミナ粒子をエアロゾル発生器53内に撒 き上げ、気体中にアルミナ粒子が分散した状 態のエアロゾルを発生させる。発生したエア ロゾルは、配管52bを通じて噴射ノズル55より 板56に向けて噴射される。エアロゾルの噴 速度は、噴射ノズル55の形状、配管52bの長さ や内径、ガスボンベ51のガス内圧、および排 ポンプ58の排気量(成膜チャンバ54の内圧)な の影響を受けて変動する。例えば、エアロ ル発生器53の内圧を数万Paとし、成膜チャン バ54の内圧を数百Paとし、噴射ノズルの開口 の形状を内径1mmの円形状とした場合、エア ゾル発生器53と成膜チャンバ54との内圧差に り、エアロゾルの噴射速度を数百m/secとす ことができる。

 加速されて運動エネルギーを得たエアロ ル中のアルミナ粒子が基板56に衝突して、 撃エネルギーで細かく破砕される。そして これらの破砕粒子が基板56に接合されること 、および破砕粒子同士が接合されることによ り、アルミナ層が形成される。複数の粒子に 破砕されなくても、一次粒子内に粒界が形成 され、この粒界によって、1つの一次粒子内 複数の領域に区切られることもある。

 例えば、成膜チャンバ54の内圧を100Pa、エ アロゾル発生器の内圧を50000Paに保てば、正 集電体上に厚さ3μm程度のアルミナ層を形成 ることができる。

 エアロゾルの発生に用いられる気体とし は、例えば、アルゴンやヘリウムのような 活性ガス、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガス 乾燥空気、またはそれらの混合ガスが用い れる。また、材料に応じて、水素ガスのよ な還元性ガスを用いてもよい。

 その後、正極および負極によってセパレ タを挟持させて電極群を形成する。その後 電極群を電池缶に収納後、電池缶内に非水 解質を充填する。

 本実施形態の製造方法では、アルミナ粒 を、他のアルミナ粒子や、基板56の表面に 直接的に結合させることができる。したが て、バインダにより接着する場合と比較し 、無機絶縁層の密着性を高めることができ 。そのため、正極、負極およびセパレータ 加工する工程において無機絶縁層の一部が 落し、電極間の短絡が起こるといった問題 回避することができる。

 (第2の実施形態)
 次に、正極と負極との間に有機高分子系の パレータを設けない実施形態を説明する。

 図7は、本発明によるリチウムイオン二次 電池の第2の実施形態を示す断面図である。 お、図7には、リチウムイオン二次電池の主 部が示されているが、本実施形態のリチウ イオン二次電池は、角型電池や円筒型電池 どの捲回型電池であってもよいし、積層型 池であってもよい。

 本実施形態のリチウムイオン二次電池は 正極1および負極2を備え、セパレータを有 ない。正極1は、例えばアルミニウムなどの またはシートからなる正極集電体11と、正 集電体11の表面(上面)に形成され、例えばリ ウム複合酸化物を正極活物質として含む正 活物質層12とを備える。正極活物質層12の表 面(上面)には、例えばアルミナからなる無機 縁膜13が形成されている。一方、負極2は、 えば銅箔やニッケル箔からなる負極集電体1 6と、負極集電体16の表面(下面)に形成され、 えば黒鉛類またはリチウム合金を負極活物 として含む負極活物質層15とを備える。

 本実施形態では、有機高分子系のセパレ タを設けないため、無機絶縁層13のみによ て正極1と負極2との間の絶縁を図る必要があ る。本発明者の検討結果によると、無機絶縁 層13の緻密度は、80%以上92%以下であることが ましい。無機絶縁層13の緻密度が80%以上で れば、無機絶縁層13の空孔に不純物が蓄積し にくい。したがって、たとえ不純物が導体で あっても、空孔に蓄積された不純物を介して 電極間に電子が移動するという問題を回避す ることができる。また、無機絶縁層13の緻密 が92%以下であれば、高いイオン伝導性を確 することができる。

 例えば、スパッタリング法で形成した膜 緻密度は概ね95%よりも大きい。そのような では、常温で十分にイオンを通過させるこ ができない。一方、常温で成膜したCVD法や 工法で形成した膜の緻密度は40から60%程度 あり、20μm以上の膜厚にしないと正極と負極 との間の絶縁性を十分確保しにくい。

 無機絶縁層13の厚さは特に限定されない 、例えば、0.1μm以上100μm以下であればよい 無機絶縁層13の厚さは、5μm以上20μm以下であ ることが好ましく、この場合には、無機絶縁 層13のみによって正極1と負極2との間が十分 絶縁される。無機絶縁層13の厚さが5μmより さければ、正極1と負極2との間の絶縁性を十 分に保つことが困難になる。また、無機絶縁 層13の厚さが20μmより大きくなれば、膜内の 小孔が小さく、かつ少なくなるため、十分 イオン透過性を確保しにくくなる。

 本実施形態では、第1の実施形態と同様の 効果を得ることができる。それに加え、セパ レータを設けないため、正極1と負極2との間 距離を短くすることができる。これにより 素子の小型化が可能になるといった利点が る。

 (第3の実施形態)
 次に、正極とセパレータとの間、および負 とセパレータとの間の両方に無機絶縁層を 成する形態について説明する。

 図8は、本発明によるリチウムイオン二次 電池の第3の実施形態を示す断面図である。 お、図8には、リチウムイオン二次電池の主 部が示されているが、本実施形態のリチウ イオン二次電池は、角型電池や円筒型電池 どの捲回型電池であってもよいし、積層型 池であってもよい。

 本実施形態のリチウムイオン二次電池は 例えばアルミニウムなどの箔またはシート らなる正極集電体11と、正極集電体11の表面 (上面)に形成され、例えばリチウム複合酸化 を正極活物質として含む正極活物質層12と 備える。正極活物質層12の表面(上面)には、 えばアルミナからなる無機絶縁膜13が形成 れている。一方、負極2は、例えば銅箔やニ ケル箔からなる負極集電体16と、負極集電 16の表面(下面)に形成され、例えば黒鉛類ま はリチウム合金を負極活物質として含む負 活物質層15とを備える。正極1と負極2との間 にはセパレータ14が配置され、セパレータ14 うち負極2側の表面には無機絶縁層13が形成 れている。本実施形態では、正極1とセパレ タ14との間、および負極2とセパレータ14と 間が、2層の無機絶縁層13によって絶縁され 。本実施形態の無機絶縁層13は、第1の実施 態における無機絶縁層13と同様の緻密度およ び厚さの範囲を有していることが好ましい。

 次に、セパレータ14の上に無機絶縁層13を 形成する方法について説明する。図6に示す アロゾルデポジション装置を用い、エアロ ル発生器53内に、無機粒子60としてアルミナ 投入しておく。成膜チャンバ54内の基板ホ ダ57には、基板56として旭化成製ポリエチレ セパレータを固定した。この状態で、ガス ンベ51からエアロゾル発生器53に気体を導入 し、エアロゾルを発生させる。エアロゾルを 基板56(セパレータ)の表面に噴射することに り、厚さ2μmの無機絶縁層13を形成する。成 する面積は、電池内で対向する負極の面積 よって決定される。例えば、負極の面積よ もわずかに大きい面積だけ成膜すればよい 成膜条件は、成膜チャンバ54の内圧を100Paと 、キャリアガスとしてヘリウムを用いれば い。また、無機絶縁層13の緻密度を例えば60 %とすればよい。

 本実施形態では、第1の実施形態と同様の 効果を得ることができる。さらに、正極1と パレータ14との間、および負極2とセパレー 14との間の両方に無機絶縁層13を形成するた 、電極間の短絡をさらに確実に防止するこ ができる。

 (第4の実施形態)
 次に、円筒型のリチウムイオン二次電池の 施形態を説明する。図9は、本発明によるリ チウムイオン二次電池の第4の実施形態を示 断面図である。本実施形態の円筒型電池40は 、円筒型の電極群44と、これを収容する電池 48とを有する。電極群44は、帯状の正極1お び負極2が、それらの間に配置されたセパレ タ43と共に捲回された構造を有する。なお 図示は省略するが、正極1、負極2またはセパ レータ43の表面には、無機絶縁層が形成され いる。電極群44には、リチウムイオンを伝 する電解質(図示せず)が含浸されている。電 池缶48の開口は、正極端子45を有する封口板49 で塞がれている。正極1には、アルミニウム の正極リード41aの一方の端が接続されてお 、他方の端は封口板49の裏面に接続されてい る。封口板49の周縁には、ポリプロピレン製 絶縁パッキン46が配置されている。負極板42 には、銅製の負極リード(図示せず)の一方の が接続されており、他方の端は電池缶48に 続されている。電極群44の上下には、それぞ れ上部絶縁リング(図示せず)および下部絶縁 ング47が配置されている。

 本実施形態の無機絶縁層は、第1の実施形 態における無機絶縁層13と同様の緻密度およ 厚さを有していることが好ましい。ただし 本実施形態ではセパレータ43を必ずしも設 なくてもよく、その場合の無機絶縁層13は、 第2の実施形態と同様の緻密度および厚さを していることが好ましい。

 円筒型電池の製造方法では、長尺状の正 1および負極2(電極原反)を作製する工程や所 定の電極形状にするための裁断工程などを行 った後、正極1および負極2を、セパレータ43 共に巻芯に巻き取る。通常、これらの各種 程は、正極1および負極2を、巻き出しロール 、巻き取りロールまたはガイドローラーなど の走行系を用いて走行させることにより行わ れる。従来では、走行工程中に、活物質層の 表面に塗布形成した無機絶縁層の一部が脱落 する場合があった。しかしながら、本実施形 態のように、無機粒子同士を直接結合させる 方法では、無機絶縁層の一部が脱落するとい った不具合が生じにくく、耐短絡性などの信 頼性を向上させることができる。

 非水溶媒からなる電解液としては、LiPF 6 、LiBF 4 などの各種リチウム塩を溶質として用いるこ とができる。非水溶媒としてはエチレンカー ボネート、プロピレンカーボネート、ジメチ ルカーボネート、ジエチルカーボネート、メ チルエチルカーボネートなどを用いることが 望ましいが、これらに限定されるわけではな い。非水溶媒は1種を単独で用いることもで るが、2種以上を組み合わせて用いることも きる。

 (第5の実施形態)
 次に、積層型のリチウムイオン二次電池の 施形態を説明する。図10は、本発明による チウムイオン二次電池の第5の実施形態を示 断面図である。図10に示すように、本実施 態の積層型電池34は、表面に無機絶縁層13が 成された正極1と、正極1と対向する負極2と 正極1と負極2との間に配置されたセパレー 14とを備える。正極1は、例えばアルミニウ などの箔またはシートからなる正極集電体11 と、例えばリチウム複合酸化物を正極活物質 として含む正極活物質層12と、例えばアルミ からなる無機絶縁層13から構成されている 一方、負極2は、例えば銅箔やニッケル箔か なる負極集電体16と、例えば黒鉛類または チウム合金を負極活物質として含む負極活 質層15とから構成されている。

 セパレータ14は電解質溶液を含んでいる 正極1、負極2およびセパレータ14は、外装ケ ス35の内部に収納されており、外装ケース35 の中は電解質溶液34が充填されている。外装 ース35の両端部は樹脂材料38により密閉され ると共に、樹脂材料38によって正極リード36 よび負極リード37が固定されている。正極リ ード36および負極リード37は、外装ケース35と 集電体11、16との間にそれぞれ介在し、正極1 よび負極2を固定している。

 正極活物質層12は、例えば、バインダ(結 剤)を溶解した有機溶剤と、正極活物質であ るリチウム複合酸化物との混合物を正極集電 体11上に塗布することにより形成される。一 、無機絶縁層13は、正極活物質層12の表面に 、無機粒子を含むエアロゾルを供給すること により形成される。塗工法により形成された 正極活物質層12の表面は凹凸を有しているた 、その表面に無機絶縁層13の材料を堆積さ ると、無機絶縁層13内に微小孔が形成される 。

 無機絶縁層13は、典型的にはAD法により形 成され、その下地(正極活物質層12や負極活物 質層15)と強固に接合する。その接合状態は、 断面を電子顕微鏡を用いて観察(断面TEM観察) ることにより解析できる。

 本実施形態では、無機絶縁層13は、バイ ダを含んでおらず、無機絶縁層13に含まれる 無機粒子は、他の無機粒子や活物質層の表面 に、直接的に結合している。したがって、バ インダにより接着された場合と比較して、無 機絶縁層13の密着性は高くなる。そのため、 極1および負極2を加工する工程において無 絶縁層13の一部が欠落し、電極間の短絡が起 こるといった問題を回避することができる。

 本実施形態の無機絶縁層13は、第1の実施 態における無機絶縁層13と同様の緻密度お び厚さを有していることが好ましい。

 従来から用いられているセパレータの厚 は、通常、15μmから30μm程度である。この厚 さのセパレータを用い、かつ無機絶縁層13を 成すると、正極活物質層12と負極活物質層15 との間の距離が、無機絶縁層13の分だけ増加 る。そのため、容量値が低下する。容量値 低下を防止するためには、10μm以上25μm以下 の厚さのセパレータを用いることが好ましい 。この場合には、セパレータ14の厚さと無機 縁層13の厚さとの合計が従来のセパレータ 厚さと同程度になるため、正極活物質層12と 負極活物質層15との間の距離を従来と同程度 保つことができる。

 本実施形態では、セパレータ14は必ずし 設けられていなくてもよい。その場合の無 絶縁層13は、第2の実施形態における無機絶 層13と同様の緻密度および厚さを有している ことが好ましい。

 次に、本発明によるリチウムイオン二次 池の製造方法の実施形態を説明する。本実 形態の製造方法では、まず、正極集電体11 準備する。正極集電体11としては、アルミニ ウム箔またはアルミニウム合金箔を用いるこ とが好ましい。ただし、アルミニウム箔の他 に、電池内で化学的に安定な電子伝導体であ れば何を用いてもよい。例えば、アルミニウ ム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、炭素 または導電性樹脂などからなる箔またはシー トを用いることができる。正極集電体11の厚 は、特に限定されないが、例えば5μmから500 μmである。

 次に、正極活物質層12の材料を、バイン (結着剤)、およびN-メチルピロリドン(NMP)等 有機溶剤とともにスラリー化して正極集電 11の上に塗布し、乾燥および圧延工程を経る ことにより、正極活物質層12を形成する。正 活物質層12として、例えば、厚さ50μmのリチ ウム複合酸化物膜を形成すればよい。

 リチウム複合酸化物膜は、例えば一般式(1): Li x M 1-y L y O 2 で表されるリチウム複合酸化物からなる膜で ある。式(1)中の元素Mは、NiおよびCoからなる より選択される少なくとも1種であり、元素 Lは、アルカリ土類元素、NiおよびCo以外の遷 元素、希土類元素、IIIb族元素、およびIVb族 元素からなる群より選択される少なくとも1 である。さらに、元素Lとしては、Al、Mn、Ti Mg、Zr、Nb、Mo、WおよびYからなる群より選択 される少なくとも1種であるのがより好まし 。これらの元素は、単独で用いてもよく、2 以上を組み合わせて用いてもよい。酸素と 結合力が強いことから、これらのなかでも 元素LはAlであるのが好ましい。これらのリ ウム複合酸化物膜を形成する場合には、粒 径が0.1μmから40μm程度の活物質材料が用い れる。

 結着剤としては、ポリテトラフルオロエ レン(PTFE)、または変性アクリロニトリルゴ 粒子を、増粘効果のあるカルボキシメチル ルロース(CMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)、 または可溶性変性アクリロニトリルゴムと組 み合わせたものや、ポリフッ化ビニリデン(PV DF)やその変性体等が用いられる。また、導電 剤としてアセチレンブラック、ケッチェンブ ラック、または各種グラファイト等が添加さ れる。

 無機絶縁層13は、原料粉体である無機粒 を、キャリアガスと共に、正極活物質層12の 表面に噴射することにより形成される。この 典型的な方法としては、AD法がある。無機絶 層13の原料粉体は、典型的にはアルミナで り、その他にも、シリカ、チタニア、マグ シアおよびムライトから選ばれる物質を用 てもよい。

 AD法による無機絶縁層13の形成には、例え ば、図6に示すような成膜装置が用いられる 図6に示すように、真空状態の成膜室54内で 、基板ホルダ57に、基板56である正極板が保 されている。成膜室54内には、エアロゾル 噴射するためのノズル55が配置されている。 ノズル55は、円形や微小幅のライン形状をし 所定の大きさの噴出口を具備し、噴出口は 基板56である正極板に向けられている。

 成膜室54には、成膜室54内の真空度を調整 するための真空ポンプ58が接続されている。 た、ノズル55は配管52bに接続され、配管52b 、成膜室54の外部に引き出されている。配管 52bには、エアロゾル発生室53からのエアロゾ の供給を制御するための切り替え弁59aが設 られている。エアロゾル発生室53内には、 ルミナなど絶縁体からなる原料粉体60が保持 されており、また、エアロゾル発生室53には キャリアガスが供給される配管52aが接続さ ている。配管52aには、キャリアガスの供給 制御する切り替え弁59aが設けられている。

 ここで、AD法によるエアロゾルの発生か 成膜までの手順を説明する。まず、切り替 弁59aを開くことにより、配管52aからエアロ ル発生室53内にキャリアガスを導入する。キ ャリアガスが導入されると、エアロゾル発生 室53内で原料粉体60が舞い上がり、原料粉体60 とキャリアガスが混合されたエアロゾル61が じる。この状態で切り替え弁59aを開くと、 管52b内と成膜室54内との気圧差により、エ ロゾル61がノズル55を通じて成膜室54に供給 れる。これにより、基板56上に、無機絶縁層 13(図10に示す)が形成される。

 AD法では、常温またはそれに近い温度で 正極活物質層12の表面にエアロゾルが供給さ れる。200℃以上の高温で処理を行うと正極活 物質層12(図10等に示す)がダメージを受けるこ とがあるが、AD法では、そのような高温で処 を行う必要がないため、正極活物質層12に メージが及びにくい。

 また、無機絶縁層13をAD法により形成する ことにより、無機絶縁層13を構成する粒子同 や、無機絶縁層13と正極活物質層12とが直接 的に強固に接合される。このため、無機絶縁 層13自体の剥離が抑制され、剥離によって無 絶縁層13の表面積が減少し、無機絶縁層13を 介した熱の伝導性が低下するのが回避される 。これにより、電池内部で発生する熱が電池 内部にこもる現象が抑制される。

 無機絶縁層13の材料としては、平均粒径 0.5μmから3μmの一次粒子を用いることが好ま い。

 原料粉体60の材料の平均粒径は、例えば (株)マイクロトラック製の湿式レーザ粒度分 布測定装置により測定することができる。こ の場合、粉体の粒子径分布における積算頻度 の割合が50%である時の粒径(メディアン値:D50) を、平均粒径とする。

 無機粒子13の材料を衝突させることによ 、一次粒子は変形または破砕されるため、 機絶縁層13を構成する一次粒子(無機粒子)の 径は、材料の粒径よりも小さくなると考え れる。その観点から、無機絶縁層13におけ 一次粒子(無機粒子)の粒径は、0.05μm以上5μm 下であることが好ましい。一次粒子が扁平 になっている場合には、一次粒子の径のう 最も短いものの長さが0.05μm以上であり、一 次粒子の径のうち最も長いものの長さが5μm 下であることが好ましい。また、衝突のと の衝撃により、材料の一次粒子内に粒界が 成され、粒界によって一次粒子内が複数の 域に区切られている場合には、粒界によっ 区切られた1つの領域の径が、上記範囲内で ることが好ましい。

 一次粒子が衝突の際の衝撃によって扁平 に変形することにより、緻密であり、かつ 孔を内包する無機絶縁層13を形成すること できる。これにより、無機絶縁層13のイオン 透過性を高めることができるため、この無機 絶縁層13が組み込まれたリチウムイオン二次 池では、良好な充放電特性が得られる。

 無機絶縁層13の材料の平均粒径は、断面SE M観察によって求めることができる。例えば 5000から30000倍の断面SEM写真より、インター プト法により、ある領域を横切る粒子径の10 点平均より算出した値を平均粒径の値とする 。

 次に、図10に示す負極活物質層15として、 例えば、真空蒸着法により、シリコンなどの 負極活物質からなる薄膜を負極集電体16上に 成する。真空蒸着法のほかにも、例えば、 極活物質、バインダ、および導電材を含む 極合剤を負極集電体16の上に塗布すること より負極活物質層15を形成してもよい。この 負極活物質層15は、リチウムを吸蔵・放出可 な材料から形成されていればよく、例えば 黒鉛類、難黒鉛化性炭素材料、リチウム合 または金属酸化物などを用いればよい。リ ウム合金としては、ケイ素、スズ、アルミ ウム、亜鉛およびマグネシウムからなる群 り選ばれる少なくとも1種を含む合金が好ま しい。金属酸化物としては、シリコンを含有 する酸化物、または錫を含有する酸化物が好 ましい。負極活物質の平均粒径は、特に限定 されないが、例えば1nmから30μmである。

 その後、正極1、セパレータ14および負極2 を組み合わせて電極群を形成する。その後、 電極群を電池缶に収納し、電池缶内に非水電 解液34を充填する。

 セパレータ14の材質は特に限定されない 、ポリエチレンまたはポリプロピレンなど オレフィン系樹脂の微多孔フィルムを、単 あるいは複合させて用いるのが一般的であ 、複合させて用いる方がより好ましい。ポ オレフィン系微多孔フィルムをセパレータ14 として用いると、高温(130℃程度以上の温度) に、セパレータ14が収縮して、セパレータ14 に含まれる孔が閉塞する(いわゆるシャット ウン)。これにより、イオン透過性が消失し 電池の安全性を高めることができる。

 非水電解液34の塩としては、LiPF 6 およびLiBF 4 などの各種リチウム化合物を用いることがで きる。また、溶媒として、エチレンカーボネ ート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチ ルカーボネート(DEC)、およびエチルメチルカ ボネート(EMC)を単独または組み合わせて用 ることができる。

 本実施形態では、無機絶縁層13だけでな セパレータ14によって正極1と負極2との間の 縁性を高めることができるため、さらに安 性を高めることができる。

  (特性評価について)
 次に、無機絶縁層や電池の特性を評価した 果について説明する。

  (第1の特性評価)
 まず、エアロゾルデポジション法により形 した無機絶縁層と、塗工法により形成した 機絶縁層との密着強度を比較した結果につ て説明する。エアロゾルデポジション法に り実験例1~4の無機絶縁層を形成し、塗工法 より比較例5の無機絶縁層を形成し、これら の無機絶縁層について評価を行った。

  (実験例1)
 実験例1の無機絶縁層を、図6に示す装置を いて形成した。成膜チャンバ54には、市販の 蒸着装置(ULVAC社製、VPC-400)を改造したものを いた。エアロゾル発生器53には、市販の攪 機(特殊機化工業社製、T.K.アヂホモミクサー 2M-03型)を用いた。なお、市販の容積1リット 圧送ボトル(KSK社製、RBN-S)を超音波洗浄器(( )島津製作所製、SUS-103)中に設置したものを アロゾル発生器53として用いてもよい。

 また、配管52a、52bとしては内径4mmの配管 用い、噴射ノズル55としては市販のノズル( プレーイングシステムジャパン製のYB1/8MSSP3 7)を用いた。噴射ノズル55から2mm離れた位置 、基板56として市販のスライドガラスを設置 した。基板ホルダ57は横方向に移動でき、噴 ノズル55は縦方向に移動できる可動式とし 。基板ホルダ57および噴射ノズル55の移動量 制御することにより、成膜する面積を制御 た。

 無機絶縁層を形成する工程では、まず、 均粒径1μmのアルミナ粉(和光純薬工業株式 社製)40gをエアロゾル発生器53内に仕込んだ 次に、排気ポンプ58で成膜チャンバ54からエ ロゾル発生器53までを真空引きした。そし 、エアロゾル発生器53内にヘリウムガスを送 り込んで、攪拌を開始し、ヘリウムガス中に アルミナ粒子が分散したエアロゾルを発生さ せ、配管52bを介して噴射ノズル55よりエアロ ルを基板56に向けて噴射した。このとき、 リウムガスの流量は13~20リットル/分とした また、成膜時間を6時間とし、成膜時におけ 成膜チャンバ54内の真空度を50Pa~150Pa程度と た。

 噴射ノズルを速度7mm/分で縦方向に10mm移動 せた後、基板ホルダ57を速度7mm/分で横方向 5mm移動させることを繰り返し、基板56のスラ イドガラス上に、面積50mm 2 、厚さ3μmの無機絶縁層を3サンプル形成した

 なお、平均粒径は、島津製作所製のセデ グラフ5000-01装置で測定した。

  (実験例2)
 平均粒径0.1μmのアルミナ粉を用いて、それ 外は実験例1と同じ条件とし、基板56のスラ ドガラス上に、面積50mm2、厚さ5μmの無機絶 層を1サンプル形成した。

  (実験例3)
 平均粒径2.5μmのアルミナ粉を用いて、それ 外は実験例1と同じ条件とし、基板56のスラ ドガラス上に、面積50mm2、厚さ5μmの無機絶 層を1サンプル形成した。

  (実験例4)
 平均粒径10μmのアルミナ粉を用いて、それ 外は実験例1と同じ条件とし、基板56のスラ ドガラス上に、面積50mm2、厚さ5μmの無機絶 層を1サンプル形成した。

  (比較例1)
 平均粒径1μmのアルミナ粉を用いて、アルミ ナ粉950g、日本ゼオン(株)製ポリアクリロニト リル変性ゴム結着剤BM-720H(固形分8重量%)625g、 および適量のNMPを、双腕式練合機にて攪拌し て多孔膜ペーストを作製した。

 次に、市販のスライドガラス上に、多孔 ペーストを塗布した後、乾燥させることに り、厚さ3μmの無機絶縁層を3サンプル形成 た。

  (評価1)
 実験例1の無機絶縁層を3サンプル、比較の めの無機絶縁層(比較例1)を3サンプル用いて 価1を行った。具体的には、それぞれのサン プルを、5mm×5mmの正方形になるように切断し 、得られた切断片を5個ずつ用いて、無機絶 縁層とスライドガラスの接合強度を測定した 。接合強度はフォトテクニカ株式会社製の薄 膜密着強度測定器ロミュラスにより測定した 。その際、2.7mm径のエポキシ接着剤付アルミ スタッドピン(フォトテクニカ製)と、8mm角 エポキシ接着剤付セラミック製バッキング レート(フォトテクニカ製)とを用いた。

 測定の結果、実験例1の無機絶縁層の接合 強度は10~40MPa、比較例1の無機絶縁層の接合強 度は0.1~1MPaとなり、実験例1の無機絶縁層の接 合強度は比較例の無機絶縁層の接合強度に比 べて高いことがわかった。以上の結果から、 エアロゾルデポジション法により形成された 無機絶縁層では、活物質層との密着性が向上 するため、耐短絡性などの信頼性に優れた非 水電解質二次電池を提供することが期待でき る。

  (評価2)
 本発明の無機絶縁層のうち、実験例2、実験 例3および実験例4の3サンプルを、評価1と同 の方法で評価した。その結果、3サンプルの ずれの接合強度も20MPa程度で、概ね差は見 れなかった。このことから、平均粒径0.1μm ら10μm程度のアルミナ粉では付着強度に差が 見られず、これらの平均粒径は適度な粒径サ イズであるとわかる。

  (第2の特性評価)
 次に、無機絶縁層13を有する電池(実施例)と 、有さない電池(比較例)とを作製し、それぞ の電池の特性を評価した結果について説明 る。

  (実施例1)
 実施例1として、電池AからCを形成した。電 Aは、図1(a)に示すように、正極活物質層12と セパレータ14との間に電子絶縁層13が配置す 電池であり、電池B、Cは、図7に示すような パレータ14を有さない電池である。

(1)リチウム複合酸化物の合成
 Ni原子、Co原子、Al原子のモル比が80:15:5とな るように混合した硫酸ニッケル、硫酸コバル トおよび硫酸アルミニウムの混合物3kgを、10L の水に溶解させて、原料溶液を得た。この原 料溶液に、水酸化ナトリウムを400g加えて、 殿を得た。この沈殿を十分に水洗した後、 燥させて、共沈水酸化物を得た。得られた 沈水酸化物3kgに、所定量の水酸化リチウム 混合し、酸素分圧が0.5気圧である雰囲気中 、温度750℃で10時間焼成させて、リチウム複 合酸化物(LiNi 0.8 Co 0.15 Al 0.05 O 2 )を得た。

(2)正極の作製
 正極活物質層12の材料(活物質粉体)として前 述のニッケル酸リチウム粉体を用い、活物質 粉体1kgと、呉羽化学(株)製のPVDF#1320(固形分12 量%のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液)0.5kgと アセチレンブラック40gとを、適量のNMPとと に双腕式練合機にて攪拌し、正極合剤ペー トを調製した。この正極合剤ペーストを厚 15μmのAl箔よりなる集電体11aの上に塗布し、 燥させた後、総厚さが65μmになるように圧 処理して、正極活物質層12を形成した。

 さらに、図6に示すような成膜装置を用い て、正極活物質層12上に、アルミナからなる 機絶縁層13を堆積させた。本実施例では、 極板A、B、Cを形成し、それぞれの無機絶縁 13の膜厚を1μm、10μm、20μmとした。成膜条件 しては、アルミナ原料の平均粒径を0.8μm、 膜真空度を100Pa、キャリアガス流量を10L/min 成膜温度を30℃、キャリアガスをヘリウム し、20mm×20mmの領域が成膜されるよう正極1お よびノズル55を動かしながら無機絶縁層13を 成した。正極板A、B、Cのそれぞれを形成す ときの成膜レートは一定にして、成膜時間 10min、50minおよび100minと変化させることによ 、膜厚を異なるものとした。

 図11は、正極Bの断面(正極集電体11と正極 物質層12との接合面に垂直な方向の断面)のS EM画像を示す図である。図11に示すように、 極活物質層12の上に、アルミナからなる無機 絶縁層13が、扁平状の粒子形態を保って緻密 堆積していることが確かめられた。

(3)負極の作製
 人造黒鉛3kgを、日本ゼオン(株)製のBM-400B(固 形分40重量%の変性スチレン-ブタジエンゴム 分散液)200g、カルボキシメチルセルロース(CM C)50g、および適量の水とともに、双腕式練合 にて攪拌し、負極合剤を調製した。この負 合剤を厚さ12μmの銅箔からなる負極集電体16 の片面に塗布した後、乾燥し、圧延して、負 極集電体16上に活物質層12bを形成した。これ より、厚さ160nmの負極2を得た。

(4)電池の組み立て
 上記で得られた正極1および負極2を、組み わせて電極群を形成した。正極リード36を正 極集電体11に接続し、負極リード37を負極集 体16に接続した。正極板Aと負極2との間のみ セパレータ14を挟み、正極板B、Cと負極2と 間にはセパレータ14を挟まずに、正極板B上 電子絶縁層13と負極2における負極活物質層15 とを接触させた。発電要素を2枚のフィルム 挟み、その後2枚のフィルムの周縁部を加熱 着により接合して、フィルムからなる外装 ース35を構成し、外装ケース35内に電極群を 収容した。このとき、5gの非水電解液を外装 ース35内に注液した。非水電解液には、ビ レンカーボネート2重量%、ビニルエチレンカ ーボネート2重量%、フルオロベンゼン5重量% およびフォスファゼン5重量%を含む、エチレ ンカーボネートとメチルエチルカーボネート の混合溶媒(体積比10:30)に、LiPF 6 を1.5mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。 た、外装ケース35の両端を樹脂材料38で充填 し、外装ケース35を密閉すると共に、正極リ ド36および負極リード37を固定した。このよ うに、電極A、B、Cを有するリチウムイオン二 次電池A、B、Cを作製した。

  (実施例2)
 実施例2では、無機絶縁層13の材料として、 ルミナの代わりにシリカ、チタニア、マグ シアおよびムライトを用いた。それ以外は 施例1と同様の条件で、正極板D、E、F、Gを 製した。正極D、E、F、Gを用いて、実施例1と 同様の方法により、セパレータを有さない電 池D、E、F、Gを作製した。

  (実施例3)
 実施例3として、図8に示すような、正極活 質層12の表面およびセパレータ14の表面に電 絶縁層13が形成されている電池Iを形成した その方法を以下に説明する。

 実施例1の正極活物質層と同様の正極活物 質層の上に、アルミナからなる厚さ2μmの無 絶縁層13を形成した(正極板I)。成膜条件とし ては、アルミナ原料の平均粒径を0.8μm、成膜 真空度を100Pa、キャリアガス流量を10L/min、成 膜温度を30℃、キャリアガスをヘリウムとし 20mm×20mmの領域が成膜されるよう正極1およ ノズル55を動かしながら無機絶縁層13を形成 た。正極板Iの無機絶縁層13を形成するとき 成膜レートは一定にして、成膜時間を20min した。

 ポリエチレンからなるセパレータ14の上 、アルミナからなる厚さ2μmの無機絶縁層13 堆積した(セパレータI)。成膜条件としては アルミナ原料の平均粒径を0.8μm、成膜真空 を700Pa、キャリアガス流量を15L/min、成膜温 を30℃、キャリアガスをヘリウムとし、20mm× 20mmの領域が成膜されるようセパレータ14およ びノズル55を動かしながら無機絶縁層13を形 した。セパレータIの無機絶縁層13を形成す ときの成膜レートは一定にして、成膜時間 20minとした。

 実施例1と同様の方法によって負極を形成 した。この負極と、正極板I、セパレータIと 実施例1と同様の方法で組み立てて、電池I 得た。

  (比較例1)
 正極集電体および正極活物質層からなる正 と、負極集電体および負極活物質層からな 負極とを、セパレータを介して配置させて 極群を得た。正極活物質層の表面および負 活物質層の表面には、無機絶縁層を形成し かった。セパレータとして、ポリエチレン ポリプロピレンとの複合フィルム(セルガー ド(株)製の2300、厚さ25μm)を用い、比較用電池 Hを作製した。

  (比較例2)
 実施例1の正極活物質層と同様の正極活物質 層の上に、バインダを含む無機絶縁層を有す る正極を形成した(正極J)。無機絶縁層用の多 孔性ペーストは、平均粒径1μmのアルミナ粉 用いて、アルミナ粉950g、日本ゼオン(株)製 リアクリロニトリル変性ゴム結着剤BM-720H(固 形分8重量%)625g、および適量のNMPを、双腕式 合機にて攪拌することにより作製した。こ を正極活物質層の上に塗布した後、乾燥さ ることにより無機絶縁層を得た。正極Jと、 機絶縁層を有していない負極とを、セパレ タを介して配置させて電極群Jを得た。この 電極群Jを実施例1と同様の方法によって組み てることにより、電池Jを得た。

  (特性評価)
 上述の実施例で得られた電池A-G、Iおよび比 較例で得られた比較用電池H、Jに対して、4.3V の充電電圧で充電処理を行った。その後、20 の環境下で充放電レート試験を行った。充 電条件は、電池の閉路電圧が4.3Vに達するま で2.5mA/cm 2 で定電流充電し、閉路電圧が4.3Vに達した後 、充電電流が100mAに減少するまで4.3Vで定電 充電するものとした。充電状態で72時間放置 した前後の電圧値を測定し、電圧変化率を調 べた。さらに、充電後の電池を、昇温速度5 /minで、150℃(電池I、Jについては160℃)まで昇 温し、そのままの温度に保持する加熱試験を 行った。その結果のうち電池A-Hについては表 1に、電池I、Jについては表2に示す。

 表1、表2に示すように、72時間後の開路電 圧値は、セパレータを有する電池Aでも、セ レータを有さない電池BからGでも、比較用電 池Hの3.95Vよりも高いことがわかる。実施例1 たは2の電池AからGは、それぞれ、原料の粒 、膜厚および緻密度が異なるが、いずれの 池でも、高い開路電圧値が得られている。 れにより、実施例1または2の電池AからGでは 比較用電池Hよりも、自己放電が少なく、電 解質の絶縁性が高く、安定性も良好であるこ とがわかった。さらに、150℃に保持する加熱 試験において、実施例1または2の電池AからG は、温度が150℃を超えることはなかった。 た、実施例3の電池Iでは、温度が160℃を超え ることはなかった。一方、比較用電池Hでは 試験開始から60分後に、温度が150℃を超えた ことが観測された。比較用電池Jでは、試験 始から60分後に、温度が160℃を超えたことが 観測された。この結果により、実施例1から3 電池AからG、Iの熱安定性は高く、これらの かでも、実施例3の電池Iの安定性は特に高 ことがわかる。

 本発明の非水電解質二次電池は、熱安定 に優れているため、携帯機器や情 報機器 通信機器およびAV機器のような電子機器の電 源、例えば安全性に 優れたポータブル用電 等に有用である。