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Title:
NOVEL PHOTOSENSITIZER AND PHOTOVOLTAIC ELEMENT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/119085
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a novel photosensitizer that can absorb light in a wide visible light region and, even in the case of a very thin film form, can enhance a light absorption efficiency by virtue of a high light absorption coefficient. The photosensitizer is used for metal oxide semiconductor electrodes and is characterized in that the photosensitizer comprises a metal complex represented by general formula ML1L2X2, wherein M represents a group 8 transition metal of the periodic table; X represents a halogen atom, a cyano group, a thiocyanate group, an isothiocyanate group, an isocyanate group, an isocyanide group, a hydroxy group, or a bidentate ligand in which Xs are combined; L1 and L2 are ligands containing an aromatic ring and either L1 or L2 has a functional group having a COOH group or PO(OH)2 and, when the photosensitizer is adsorbed on a metal oxide semiconductor electrode through the ligand L1 or L2, the difference ΔL between energy levels of respective excited states calculated by using program calculation of GAUSSIAN03 quantum chemistry of L1 and L2 is 0.25 eV or more.

Inventors:
YAMANAKA NORIYO (JP)
MINAMI MASAKI (JP)
NAKAMURA TSUTOMU (JP)
MASUDA HIDEKI (JP)
JIN ZHENGZHE (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/001324
Publication Date:
October 01, 2009
Filing Date:
March 25, 2009
Export Citation:
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Assignee:
NIPPON OIL CORP (JP)
NAGOYA INST TECHNOLOGY (JP)
YAMANAKA NORIYO (JP)
MINAMI MASAKI (JP)
NAKAMURA TSUTOMU (JP)
MASUDA HIDEKI (JP)
JIN ZHENGZHE (JP)
International Classes:
H01M14/00; C09K3/00; H01L31/04; C07D213/22; C07D213/38; C07D471/04; C07F15/00
Domestic Patent References:
WO2007006026A12007-01-11
Foreign References:
JP2004363096A2004-12-24
JP2002100417A2002-04-05
JP2006243352A2006-09-14
JPH11176489A1999-07-02
Other References:
B. O'REGANAND; M. GRATZEL, NATURE, vol. 353, pages 737
M. GRATZEL, JOURNAL OF AMERICAN CHEMICAL SOCIETY, vol. 123, pages 1613
See also references of EP 2262049A4
Attorney, Agent or Firm:
MORITA, NOBUYUKI (JP)
Yoriyuki Morita (JP)
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Claims:
 一般式(I)で表される金属錯体からなる金属酸化物半導体電極用光増感剤であり、配位子L 1 またはL 2 を介して金属酸化物半導体電極に吸着したとき、L 1 とL 2 のGAUSSIAN03量子化学のプログラム計算を用いて算出した、それぞれの励起状態のエネルギーレベルの差δLが0.25eV以上であることを特徴とする光増感剤。
   ML 1 L 2 X 2    (I) 
 ここで、Mは周期表第8族遷移金属を示し、Xは、独立にハロゲン原子、シアノ基、チオシナネート基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、イソシアニド基、ヒドロキシ基、または、X同士が結合した場合、一般式(A)で示される2座配位子を表す。また、L 1 およびL 2 は芳香環を含む配位子であり、L 1 またはL 2 のいずれかに、COOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基、もしくは、π共役にて接続したCOOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基を有する。
(式(A)中、R 1 ~R 3 は、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルコキシアルキル基、炭素数1~30のパーフルオロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、または炭素数7~30のアラルキル基を表す。R 4 およびR 5 は、それぞれ個別に、水素、シアノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のパーフルオロアルキル基、または炭素数6~15のアリール基を表し、R 4 とR 5 が結合して環を形成してもよい。)
 請求項1において、L 1 が、下記式(II)で表される配位子であり、L 2 が下記式(III)で表される配位子であることを特徴とする光増感剤。
(式(II)中、R 6 ~R 11 、R 12 ~R 16 、R 17 ~R 19 、R 20 ~R 23 、R 24 ~R 29 、R 30 ~R 34 、R 35 ~R 37 、R 38 ~R 39 、R 40 ~R 43 、R 44 ~R 45 は、それぞれ同一でも異なっていても良く、COOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基、π共役にて接続したCOOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基、水素、炭素数1~30のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、またはアミノ基を示す。)
(式(III)中、R 114 ~R 128 は、それぞれ独立に、COOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基、π共役にて接続したCOOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基、水素、OH基、メトキシ基、ハロゲン、炭素数1~30のアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、またはニトロ基を示す。)
 請求項1において、L 1 は、その中に少なくとも一つのCOOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基、またはπ共役にて接続したCOOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基を含み、L 2 はその中にCOOH基およびPO(OH) 2 を含まず、かつ、金属酸化物半導体電極にL 1 を介して吸着したとき、L 2 の励起状態のエネルギーレベルがL 1 の励起状態のエネルギーレベルより少なくとも0.25eV以上高いことを特徴とする光増感剤。
 少なくとも1つの金属酸化物半導体層を有する光起電力素子であって、前記金属酸化物半導体層が請求項1~3のいずれかに記載の光増感剤を含むことを特徴とする光起電力素子。
Description:
新規光増感剤および光起電力素

 本発明は新規光増感剤に関し、特に色素 感型太陽電池に好適に用いられる新規光増 剤に関する。

 1991年にグレッツェルらが発表した色素増感 型太陽電池素子は、ルテニウム錯体によって 分光増感された酸化チタン多孔質薄膜を作用 電極とする湿式太陽電池であり、シリコン太 陽電池並みの性能が得られることが報告され ている(非特許文献1参照)。この方法は、チタ ニア等の安価な酸化物半導体を高純度に精製 することなく用いることができるため、安価 な色素増感型太陽電池素子を提供でき、しか も色素の吸収がブロードであるため、可視光 線のほぼ全波長領域の光を電気に変換できる という利点があり、注目を集めている。しか しながら、公知のルテニウム錯体色素は、可 視光は吸収するものの700nmより長波長の赤外 はほとんど吸収しないため赤外域での光電 換能は低い。したがって更に変換効率を上 るためには可視光のみならず赤外域に吸収 有する色素の開発が望まれていた。
 一方、ブラックダイに関して、920nmまで光 吸収することができるが、吸光係数が小さ ため、高電流値を得るためには、酸化チタ 多孔質薄膜に吸着する量を多くする必要が った。酸化チタン多孔質薄膜への吸着量を 加する方法は、種々の方法があるが、一般 には、薄膜の厚みを増加することで可能で る(非特許文献2参照)。薄膜の厚みを増加す と、逆電子移動の増加、薄膜中の電子密度 減少などによって、開放電圧値の減少、FFの 低下などが生ずるため、変換効率は大きく増 加することはできない。
 またイミダゾフェナントロリン配位子を用 た錯体を用いて、太陽電池とした報告もあ が、十分な効率を得るに至っていない(特許 文献1参照)。
オレガン(B. O’Regan)、グレツェル(M.Gratze l),「ネイチャー(Nature)」,(英国),1991年,353巻,p.7 37 グレツェル(M.Gratzel),「ジャーナル オブ アメリカン ケミカルソサイアティー」,(米 ),2001年,123巻,p.1613

国際公開特許第2007/006026号

 本発明は、可視光の広い範囲で光を吸収 、極薄い薄膜においても、光吸収効率が高 なる吸光係数の大きな新規光増感剤を提供 るものである。

 本発明者らは、金属錯体色素について幅広 検討した結果、本発明に到達した。
 すなわち、本発明は、一般式(I)で表される 属錯体からなる金属酸化物半導体電極用光 感剤であり、配位子L 1 またはL 2 を介して金属酸化物半導体電極に吸着したと き、L 1 とL 2 のGAUSSIAN03量子化学のプログラム計算を用い 算出した、それぞれの励起状態のエネルギ レベルの差δLが0.25eV以上であることを特徴 する光増感剤に関する。
   ML 1 L 2 X 2    (I) 
 ここで、Mは周期表第8族遷移金属を示し、X 、独立にハロゲン原子、シアノ基、チオシ ネート基、イソチオシアネート基、イソシ ネート基、イソシアニド基、ヒドロキシ基 または、X同士が結合した場合、一般式(A)で 示される2座配位子を表す。また、L 1 およびL 2 は芳香環を含む配位子であり、L 1 またはL 2 のいずれかに、COOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基、もしくは、π共役にて接続 たCOOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基を有する。
(式(A)中、R 1 ~R 3 は、それぞれ同一でも異なっていても良く、 水素、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30の ルコキシアルキル基、炭素数1~30のパーフル オロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、 たは炭素数7~30のアラルキル基を表す。R 4 およびR 5 は、それぞれ個別に、水素、シアノ基、炭素 数1~20のアルキル基、炭素数1~20のパーフルオ アルキル基、または炭素数6~15のアリール基 を表し、R 4 とR 5 が結合して環を形成してもよい。)

 また本発明は、上記一般式(I)において、L 1 が、下記式(II)で表される配位子であり、L 2 が下記式(III)で表される配位子であることを 徴とする光増感剤に関する。
(式(II)中、R 6 ~R 11 、R 12 ~R 16 、R 17 ~R 19 、R 20 ~R 23 、R 24 ~R 29 、R 30 ~R 34 、R 35 ~R 37 、R 38 ~R 39 、R 40 ~R 43 、R 44 ~R 45 は、それぞれ同一でも異なっていても良く、 COOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基、π共役にて接続したCOOH基ま たはPO(OH) 2 を有する官能基、水素、炭素数1~30のアルキ 基、アルケニル基、アリール基、アルコキ 基、またはアミノ基を示す。)
(式(III)中、R 114 ~R 128 は、それぞれ独立に、COOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基、π共役にて接続したCOOH基ま たはPO(OH) 2 を有する官能基、水素、OH基、メトキシ基、 ロゲン、炭素数1~30のアルキル基、アルコキ シ基、アミノ基、シアノ基、またはニトロ基 を示す。)

 また本発明は、上記一般式(I)において、L 1 は、その中に少なくとも一つのCOOH基またはPO (OH) 2 を有する官能基、またはπ共役にて接続したC OOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基を含み、L 2 はその中にCOOH基およびPO(OH) 2 を含まず、かつ、金属酸化物半導体電極にL 1 を介して吸着したとき、L 2 の励起状態のエネルギーレベルがL 1 の励起状態のエネルギーレベルより少なくと も0.25eV以上高いことを特徴とする光増感剤に 関する。

 また本発明は、少なくとも1つの金属酸化 物半導体層を有する光起電力素子であって、 前記金属酸化物半導体層が前記記載の光増感 剤を含むことを特徴とする光起電力素子に関 する。

 本発明の新規光増感剤は、可視領域にお て、幅広く光を吸収し、光起電力素子の変 効率を上げることができる。

 以下、本発明について詳細に説明する。
 本発明の光増感剤は、下記一般式(I)で表さ る金属錯体である。
   ML 1 L 2 X 2    (I)

 一般式(I)中、Mは周期表第8族遷移金属を示 、Ru、OsおよびFe等が挙げられるが、なかで Ruが好ましい。
 一般式(I)中、Xは、独立にハロゲン原子、シ アノ基、チオシナネート基、イソチオシアネ ート基、イソシアネート基、イソシアニド基 、ヒドロキシ基、または、X同士が結合した 合、一般式(A)で示される2座配位子を表す。

 式(A)中、R 1 ~R 3 は、それぞれ同一でも異なっていても良く、 水素、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30の ルコキシアルキル基、炭素数1~30のパーフル オロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、 たは炭素数7~30のアラルキル基を表す。R 4 およびR 5 は、それぞれ個別に、水素、シアノ基、炭素 数1~20のアルキル基、炭素数1~20のパーフルオ アルキル基、または炭素数6~15のアリール基 を表し、R 4 とR 5 が結合して環を形成してもよい。

 式(A)の具体例としては、下記を挙げるこ ができるが、これらに限定されるものでは い。

 配位子L 1 としては、下記の一般式(II)で示される化合 を挙げることができる。

 式(II)中、R 6 ~R 11 、R 12 ~R 16 、R 17 ~R 19 、R 20 ~R 23 、R 24 ~R 29 、R 30 ~R 34 、R 35 ~R 37 、R 38 ~R 39 、R 40 ~R 43 、R 44 ~R 45 は、それぞれ同一でも異なっていても良く、 COOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基、π共役にて接続したCOOH基ま たはPO(OH) 2 を有する官能基、水素、炭素数1~30のアルキ 基、アルケニル基、アリール基、アルコキ 基、またはアミノ基を示す。

 以下にこれらの具体例を挙げるが、本発 はこれらに限定されるものではない。

 配位子L 2 としては、下記の一般式(III)で示される化合 を挙げることができる。

 式(III)中、R 114 ~R 128 は、それぞれ独立に、COOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基、π共役にて接続したCOOH基ま たはPO(OH) 2 を有する官能基、水素、OH基、メトキシ基、 ロゲン、炭素数1~30のアルキル基、アルコキ シ基、アミノ基、シアノ基、またはニトロ基 を示す。

 以下にこれらの具体例を挙げるが、本発 はこれらに限定されるものではない。

 本発明の一般式(I)で示される金属錯体から る金属酸化物半導体電極用光増感剤におい は、一般式(I)中のL 1 およびL 2 が下記の条件を満たすことが必要である。
 すなわち、配位子L 1 、L 2 は、配位子L 1 、L 2 のうち励起状態のエネルギーレベルの低い配 位子を介して金属酸化物半導体電極に吸着し 、いずれの配位子も金属酸化物半導体電極の コンダクションバンドのエネルギーレベルよ り高い位置にある。本発明においては、配位 子L 1 またはL 2 を介して金属酸化物半導体電極に吸着したと き、L 1 とL 2 のGAUSSIAN03量子化学のプログラム計算を用い 算出した、それぞれの励起状態のエネルギ レベルの差δLが0.25eV以上であることが必要 あり、0.3eV以上であることが好ましい。
 励起状態のエネルギーレベルの差δLが0.25eV 満の場合には、配位子L 1 、L 2 のうち励起状態のエネルギーの高い方に励起 された電子は、金属酸化物に吸着している低 い方の配位子に移動することができないため 、金属酸化物半導体電極にも注入されにくく 、変換効率が低下するため、好ましくない。
 ここで、GAUSSIAN03量子化学のプログラム計算 は特に限定されないが、通常、「情報化学・ 計算化学実験」(堀憲次ら著・丸善株式会社) 参考に行なわれる。
 すなわち、CPCM溶媒モデルを用いて溶媒(エ ノール)を考慮し、DFT/TD-DFT計算をスーパーコ ンピューターHP2500を用いて行なわれる。構造 最適化および電子構造・分子軌道のエネルギ ーレベルについて、計算法はDFT/B3LYP、基底関 数はLANL2DZを適用し、計算が行われる。

 上記の条件を満足する一般式(I)で表され 化合物(光増感剤)として、下記の化合物を 示できるが、これらに限定されるものでは い。

 本発明においては、配位子L 1 中に少なくとも一つのCOOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基、またはπ共役にて接続したC OOH基またはPO(OH) 2 を有する官能基を含ませ、L 2 中にCOOH基およびPO(OH) 2 を含ませず、かつ、L 2 のエネルギーレベルがL 1 のエネルギーレベルより少なくとも0.25eV以上 高くすることにより、より好ましい効果を奏 することができる。

 上記の条件を満足する一般式(I)で表され 化合物(光増感剤)として、下記の化合物を 示できるが、これらに限定されるものでは い。

 本発明の光増感剤の合成方法について説明 る。
 一般式(I)におけるMとしてルテニウムを用い た場合を例にとって以下説明する。まず、ル テニウム前駆体に、配位子L 1 、L 2 を順次反応させた後、Xを導入する方法が好 しく用いられる。ルテニウム前駆体として 、塩化ルテニウム、ジクロロ(p-サイメン)ル ニウム二量体、ジヨード(p-サイメン)ルテニ ウム二量体等を用いることができる。L 1 、L 2 の反応は、逐次的に添加し、反応を行なって も良く、また、同時に添加して反応を行なっ ても良い。逐次的に反応を行なう場合、L 1 、L 2 どちらを先に添加しても良い。
 反応溶媒としては、一般的な有機溶媒、水 どを用いることができ、好ましくはエタノ ル、メタノール、ブタノール等のアルコー 系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチル セトアミド等のアミド系溶媒、ジメチルス ホキシド、プロピレンカーボネート、N-メ ルピロリドン等の極性溶媒が用いられる。

 反応温度は特に限定されないが、反応を進 させるためには、加温が好ましく、50~250℃ 範囲で行なうことが特に好ましい。逐次的 反応を行なう場合は、1段目の反応と2段目 反応の反応温度を変えて行なうこともでき 。また、加温については、オイルバス、ウ ーターバス、マイクロ波加熱装置等を使用 ることができる。
 反応時間は特に限定されないが、通常1分~ 日、好ましくは5分~1日であり、加熱装置に り時間を変更することが好ましい。
 Xについては、対応するアンモニウム塩、金 属塩等を添加して、反応を行なうことにより 導入することができる。反応時間、反応温度 は特に限定されない。

 つぎに本発明の光起電力素子について説明 る。
 本発明の光起電力素子の例としては、例え 、図1に示す断面を有する素子を挙げること ができる。この素子は、透明導電性基板1上 本発明の光増感剤を吸着させた金属酸化物 導体層3が配置され、金属酸化物半導体層3と 対向電極基板2の間に電解質層4が配置され、 辺がシール材5で密封されている。なお、リ ード線は透明導電性基板1と対向電基板2の導 部分に接続され、電力を取り出すことがで る。

 透明導電性基板は、通常、透明基板上に 明導電層を積層させて製造される。透明基 としては特に限定されず、材質、厚さ、寸 、形状等は目的に応じて適宜選択すること でき、例えば、無色あるいは有色ガラス、 入りガラス、ガラスブロック等が用いられ 他、無色あるいは有色の透明性を有する樹 でも良い。かかる樹脂としては、具体的に 、ポリエチレンテレフタレートなどのポリ ステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリ ーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケ ン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカ ボネート、ポリイミド、ポリメチルメタク レート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロー 、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。 お、本発明における透明とは、10~100%の透過 率を有することであり、また、本発明におけ る基板とは、常温において平滑な面を有する ものであり、その面は平面あるいは曲面であ ってもよく、また応力によって変形するもの であってもよい。

 電極の導電層を形成する透明導電層として 、本発明の目的を達成できるものである限 特に限定されず、例えば、金、銀、クロム 銅、タングステンなどの金属薄膜、金属酸 物からなる導電膜などが挙げられる。金属 化物としては、例えば、酸化錫や酸化亜鉛 、他の金属元素を微量ドープしたIndium Tin  Oxide(ITO(In 2 O 3 :Sn))、Fluorine doped Tin Oxide(FTO(SnO 2 :F))、Aluminum doped Zinc Oxide(AZO(ZnO:Al))などが好 適なものとして用いられる。
 膜厚は、通常10nm~10μm、好ましくは100nm~2μm ある。また、表面抵抗(抵抗率)は、本発明の 基板の用途により適宜選択されるところであ るが、通常0.5~500ω/sq、好ましくは2~50ω/sqであ る。

 対向電極は通常、白金、カーボン電極な を用いることができる。基板の材質は特に 定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目 に応じて適宜選択することができ、例えば 色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガ スブロック等が用いられる他、無色あるい 有色の透明性を有する樹脂でも良い。かか 樹脂としては、具体的には、ポリエチレン レフタレートなどのポリエステル、ポリア ド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニ ンサルファイド、ポリカーボネート、ポリ ミド、ポリメチルメタクリレート、ポリス レン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペ テンなどが挙げられる。また、金属プレー などを基板として用いることもできる。

 本発明の光起電力素子において用いられる 属酸化物半導体層としては特に限定されな が、例えば、TiO 2 、ZnO、SnO 2 、Nb 2 O 5 からなる層等が挙げられ、なかでもTiO 2 、ZnOからなる層が好ましい。
 本発明に用いられる金属酸化物半導体は単 晶でも多結晶でも良い。結晶系としては、 ナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型な が主に用いられるが、好ましくはアナター 型である。
 金属酸化物半導体層の形成方法としては公 の方法を用いることができ、例えば、上記 属酸化物半導体のナノ粒子分散液、ゾル溶 等を公知の方法により基板上に塗布するこ で得ることが出来る。この場合の塗布方法 しては特に限定されずキャスト法による薄 状態で得る方法、スピンコート法、ディッ コート法、バーコート法のほか、スクリー 印刷法を初めとした各種の印刷方法を挙げ ことができる。
 金属酸化物半導体層の厚みは任意であるが 通常0.5μm~50μm、好ましくは1μm~20μmである。

 本発明の光増感剤を金属酸化物半導体層に 着させる方法としては、例えば、溶媒に光 感剤を溶解させた溶液を、金属酸化物半導 層上にスプレーコートやスピンコートなど より塗布した後、乾燥する方法により形成 ることができる。この場合、適当な温度に 板を加熱しても良い。または光増感剤を溶 させた溶液に金属酸化物半導体層を浸漬し 吸着させる方法を用いることもできる。浸 する時間は光増感剤が十分に吸着すれば特 制限されることはないが、好ましくは10分~3 0時間、より好ましくは1~20時間である。また 必要に応じて浸漬する際に溶媒や基板を加 しても良い。溶液にする場合の光増感剤の 度としては、0.01~100mmol/L、好ましくは0.1~50mm ol/L程度である。
 溶媒としては、アルコール類、エーテル類 ニトリル類、エステル類、炭化水素など用 ることができる。

 また、光増感剤間の凝集等の相互作用を低 するために、界面活性剤としての性質を持 無色の化合物を添加し、金属酸化物半導体 に共吸着させてもよい。このような無色の 合物の例としては、カルボキシル基やスル 基を有するコール酸、デオキシコール酸、 ノデオキシコール酸、タウロデオキシコー 酸等のステロイド化合物やスルホン酸塩類 が挙げられる。
 未吸着の光増感剤は、吸着工程後、速やか 洗浄により除去するのが好ましい。洗浄は 式洗浄槽中でアセトニトリル、アルコール 溶媒等を用いて行うのが好ましい。
 光増感剤の吸着量は、強アルカリ溶液にて 金属酸化物半導体層から光増感剤を脱着し アルカリ溶液の光吸収量から算出される。
 また、吸着量は、金属酸化物半導体表面積 対し、1.0×10 -8 mol/cm 2 ~1.0×10 -6 mol/cm 2 の範囲で吸着することができる。

 光増感剤を吸着させた後、アミン類、4級ア ンモニウム塩、少なくとも1つのウレイド基 有するウレイド化合物、少なくとも1つのシ ル基を有するシリル化合物、アルカリ金属 、アルカリ土類金属塩等を用いて、金属酸 物半導体層の表面を処理してもよい。好ま いアミン類の例としては、ピリジン、4-t-ブ チルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げ られる。好ましい4級アンモニウム塩の例と ては、テトラブチルアンモニウムヨージド テトラヘキシルアンモニウムヨージド等が げられる。これらは有機溶媒に溶解して用 てもよく、液体の場合はそのまま用いても い。

 本発明の光起電力素子において用いられる 解質としては特に限定されず、液体系でも 体系のいずれでもよく、可逆な電気化学的 化還元特性を示すものが望ましい。ここで 可逆な電気化学的酸化還元特性を示すとい ことは、光起電力素子の作用する電位領域 おいて、可逆的に電気化学的酸化還元反応 起こし得ることをいう。典型的には、通常 水素基準電極(NHE)に対して-1~+2Vvs
NHEの電位領域で可逆的であることが望ましい 。
 電解質のイオン伝導度は、通常室温で1×10 -7 S/cm以上、好ましくは1×10 -6 S/cm以上、さらに好ましくは1×10 -5 S/cm以上であることが望ましい。
 電解質層の厚さは特に制限されないが、1μm 以上であることが好ましく、より好ましくは 10μm以上であり、また、3mm以下が好ましく、 り好ましくは1mm以下である。
 かかる電解質としては、上記の条件を満足 れば特に制限されるものでなく、液体系お び固体系とも、本技術分野で公知のものを 用することができる。

 以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に 明するが、本発明はこの実施例に限定され ものではない。

[実施例1]
<化合物1の合成>
 1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン(10ミリモル :2.10g)、酢酸アンモニウム(200ミリモル:14.4g)、 サリチルアルデヒド(12ミリモル:1.45g)を酢酸10 0mlに溶解し、4時間加熱還流下攪拌を行なっ 。反応終了後、放冷、アンモニア水にて中 した。析出した沈殿物を濾別し、水にて洗 し、減圧下乾燥を行なって化合物1を収率65% て得た。なお化合物1はNMRにて同定した。
<光増感剤1の合成>
 ジクロロ(p-サイメン)ルテニウム二量体(1ミ モル:0.61g)、化合物1(2ミリモル:0.65g)をジメ ルホルムアミド(50ml)に溶解し、アルゴン雰 気下80℃にて2時間攪拌した。続いて、2,2’- ピリジン-4,4’-カルボン酸(2ミリモル)を加 、アルゴン下にて150℃、5時間加熱攪拌を行 った。さらに、チオシアン酸アンモニウム( 1.5g)を加え、4時間加熱攪拌を行なった。
 反応終了後、減圧濃縮を行ない、得られた 渣を水に分散し、ろ過にて粗精製物として 的物を得た。メタノール中水酸化n-ブチル ンモニウム水溶液を添加し、目的物を溶解 た後、カラム精製を行った(Sephadex LH-20)。主 成分を得、減圧濃縮後、水にて希釈し、希薄 HNO 3 水溶液にてpH2とし、生成した濃赤色の沈殿物 をろ過にて回収し、減圧乾燥を行ない、目的 の光増感剤1を収率70%にて得た。光増感剤1の 定は、MSスペクトル(m/z 386)、 1 H-NMRスペクトルにて行なった。光増感剤1の 1 H-NMRスペクトルを図2に示す。

[実施例2]
<化合物2の合成>
 1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン(10ミリモル :2.10g)、酢酸アンモニウム(200ミリモル:14.4g)、 3-ヒドロキシベンズアルデヒド(12ミリモル:1.4 5g)を酢酸100mlに溶解し、4時間加熱還流下攪拌 を行なった。反応終了後、放冷、アンモニア 水にて中和した。析出した沈殿物を濾別し、 水にて洗浄し、減圧下乾燥を行なって化合物 2を収率65%にて得た。NMRにて同定した。
<光増感剤2の合成>
 ジクロロ(p-サイメン)ルテニウム二量体(1ミ モル:0.61g)、化合物2(2ミリモル:0.65g)をジメ ルホルムアミド(50ml)に溶解し、アルゴン雰 気下80℃にて2時間攪拌した。続いて、2,2’- ピリジン-4,4’-カルボン酸(2ミリモル)を加 、アルゴン下にて150℃、5時間加熱攪拌を行 った。さらに、チオシアン酸アンモニウム( 1.5g)を加え、4時間加熱攪拌を行なった。
 反応終了後、減圧濃縮を行ない、得られた 渣を水に分散し、ろ過にて粗精製物として 的物を得た。メタノール中水酸化n-ブチル ンモニウム水溶液を添加し、目的物を溶解 た後、カラム精製を行った(Sephadex LH-20)。主 成分を得、減圧濃縮後、水にて希釈し、希薄 HNO 3 水溶液にてpH2とし、生成した濃赤色の沈殿物 をろ過にて回収し、減圧乾燥を行ない、目的 の光増感剤2を収率70%にて得た。光増感剤2の 定は、MSスペクトル(m/z 386)、 1 H-NMRスペクトルにて行なった。

[実施例3]
<化合物3の合成>
 ジピリジルアミン(5.84ミリモル:1g)、4-ブロ アニソール(8.76ミリモル:1.64g)、水酸化カリ ム(8.75ミリモル:0.5g)、および触媒としての硫 酸銅(0.18ミリモル:30mg)を混合し、180℃で6時間 加熱下で攪拌した。反応終了後、放冷、クロ ロホルムと水を加え、水で洗浄後、硫酸マグ ネシウム上で溶媒を減圧留出することにより 目的物を得た。目的物をクロロホルムに溶解 した後、カラムMeOH/CHCl 3 (1/10)で精製することにより化合物3を収率65% 得た。同定はNMRに拠った。

<光増感剤3の合成>
 p-シメン塩化ルテニウム2量体([RuCl 2 (p-cymene)] 2 )(1ミリモル:0.61g)、化合物3(2ミリモル:0.65g)を メチルホルムアミド(50ml)に溶解し、アルゴ 雰囲気下80℃にて2時間攪拌した。続いて、2 ,2’―ビピリジンー4,4’カルボン酸(2ミリモ )を加え、アルゴン下にて150℃、5時間加熱攪 拌を行なった。さらに、チオシアンアンモニ ウム(1.5g)を加え、4時間加熱攪拌を行なった
 反応終了後、減圧濃縮を行ない、得られた 渣を水に分散し、ろ過にて粗精製物として 的物を得た。メタノール中水酸化n-ブチル ンモニウム水溶液を添加し、目的物を溶解 た後、カラム精製を行った(Sephadex LH-20)。主 成分を得、減圧濃縮後、水にて希釈し、希薄 硝酸水溶液にてpH2とし、生成した濃赤色の沈 殿物をろ過にて回収し、減圧乾燥を行ない、 目的の光増感錯体3を収率70%にて得た。光増 剤3の同定は、MSスペクトル、 1 H-NMRスペクトルにて行なった。光増感剤3の 1 H-NMRスペクトルを図3に示す。

[実施例4]
<光増感剤4の合成>
 p-シメン塩化ルテニウム2量体([RuCl 2 (p-cymene)] 2 )(1ミリモル:0.61g)、化合物3(2ミリモル:0.65g)を メチルホルムアミド(50ml)に溶解し、アルゴ 雰囲気下80℃にて2時間攪拌した。続いて、4 ,4’-ビス(カルボキシビニル)-2,2’-ビピリジ (2ミリモル)を加え、アルゴン下にて150℃、5 間加熱攪拌を行なった。さらに、チオシア アンモニウム(1.5g)を加え、4時間加熱攪拌を 行なった。
 反応終了後、減圧濃縮を行ない、得られた 渣を水に分散し、ろ過にて粗精製物として 的物を得た。メタノール中水酸化n-ブチル ンモニウム水溶液を添加し、目的物を溶解 た後、カラム精製を行った(Sephadex LH-20)。主 成分を得、減圧濃縮後、水にて希釈し、希薄 硝酸水溶液にてpH2とし、生成した濃赤色の沈 殿物をろ過にて回収し、減圧乾燥を行ない、 目的の光増感剤4を収率70%にて得た。錯体の 定は、MSスペクトル、 1 H-NMRスペクトルにて行なった。

<光起電力セルの作製および変換効率の測 >
 導電性基板上に支持された二酸化チタン膜 増感に基づく光起電力セルを以下のように 製した。
 導電性ガラス(フッ素ドープSnO 2 ,10ω)上にコロイド状TiO 2 粒子(粒径:20~30nm)を塗布し、450℃、30分間焼成 し(膜厚:10μm)、その上に、光を散乱させるた 、TiO 2 粒子(粒径:300~400nm)を塗布し、520℃、1時間焼 した(膜厚:6~8μm)。これら2層の膜を、30分間Ti Cl 4 溶液に浸漬した後、450℃、30分間加熱した。
 得られた膜を上記光増感剤/エタノール溶液 (3.0×10 ~4 mol/L)に15時間浸し、色素層を形成した。得ら た基板とPt薄膜のついたガラスのPt面を合わ せ、0.3mol/Lのヨウ化リチウムと0.03mol/Lのヨウ を含むアセトニトリル溶液を毛細管現象に って染み込ませ、周辺をエポキシ接着剤で 止した。なお、透明導電基板の導電層部分 対向電極にはリード線を接続した。
 このようにして得たセルに疑似太陽光を照 し、光電変換特性を測定した。短絡電流値( Jsc)、入射フォトン~電流変換効率(IPCE)を測定 た結果を、それぞれ表1、図4に示した。

[比較例1]
 δL>0.25eVの効果を示すために、δLが0.25eVよ りも小さい光増感剤5を用いて、実施例1~4と 様の操作で太陽電池セルを作製した。
 表1より、本発明の光増感剤1~4は、δLの小さ い光増感剤5と比較して、短絡電流値が大き 、また、780nmの領域において、入射フォトン の電流変換効率が優れていることが分かる。 高い変換効率を得るためには、δLは、少なく とも0.25eV以上である必要がある。

 表1より、本発明の光増感剤1~4は、比較例 1の光増感剤5に比較して、短絡電流値が大き 、また、図4より、本発明の光増感剤は、400 -700nmで比較例1の光増感剤5よりも入射フォト の電流変換効率が優れており、また、780nm 領域において、入射フォトンの電流変換効 が優れていることが分かる。

 

 本発明の新規光増感剤は、可視領域にお て、幅広く光を吸収し、光起電力素子の変 効率を上げることができるため産業上きわ て有用である。

光起電力素子の断面の例である。 光増感剤1の 1 H-NMRスペクトルである。 光増感剤3の 1 H-NMRスペクトルである。 実施例1~4および比較例1の入射フォトン ~電流変換効率(IPCE)を示す図である。

符号の説明

1 透明導電性基板
2 対向電極基板
3 色素を吸着した金属酸化物半導体層
4 電解質層
5 シール材