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Patent Searching and Data


Title:
NOVEL SUGAR-LINKED CHLORIN DERIVATIVE AND PROCESS FOR PRODUCTION THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/102669
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a novel sugar-linked chlorin derivative which is useful as a substance for photo-dynamic therapy, is stable, and can act as a photosensitizing substance having high phototoxicity even when used in a small quantity. Also disclosed is a process for producing the derivative. Specifically disclosed are a S-glycosylated chlorin derivative represented by the general formula (1) and a metal complex thereof. In the general formula (1), X1 to X20 independently represent a group selected from the group consisting of F-, sugar-S-, sugar-Z-S- and sugar-O-Z-S- and at least one among X1 to X20 representsa group selected from the group consisting of sugar-S-, sugar-Z-S- and sugar-O-Z-S- [wherein F represents a fluorine atom, S represents a sulfur atom, O represents an oxygen atom, Z represents a hydrocarbon group having 1 to 6 carbon atoms]; and R5 and R6 independently represent a hydrogen atom or an organic group or may together form a ring.

Inventors:
OBATA MAKOTO (JP)
YANO SHIGENOBU (JP)
HIROHARA SHIHO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/052277
Publication Date:
August 28, 2008
Filing Date:
February 12, 2008
Export Citation:
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Assignee:
REI MEDICAL CO LTD (JP)
OBATA MAKOTO (JP)
YANO SHIGENOBU (JP)
HIROHARA SHIHO (JP)
International Classes:
C07H15/26; A61K31/7056; A61P35/00; A61P43/00
Domestic Patent References:
WO2006088476A22006-08-24
WO2000061584A12000-10-19
WO2002020536A12002-03-14
WO2002020536A12002-03-14
Foreign References:
JP2005500335A2005-01-06
JP2002523509A2002-07-30
JP2005500335A2005-01-06
Other References:
CHEN X. ET AL.: "Efficient Synthesis and Photodynamic Activity of Porphyrin-Saccharide Conjugates: Targeting and Incapacitating Cancer Cells", BIOCHEMISTRY, vol. 43, no. 34, 2004, pages 10918 - 10929, XP008115960
MAESTRIN A.P.J. ET AL.: "A novel chlorin derivative of meso-tris(pentafluorophenyl)-4-pyridylporphyrin: Synthesis, photophysics and photochemical properties", JOURNAL OF THE BRAZILIAN CHEMICAL SOCIETY, vol. 15, no. 6, 2004, pages 923 - 930, XP008115955
SHIHO HIROHARA: "Sugar-dependent aggregation of glycoconjugated chlorins and its effect on photocytotoxicity in HeLa cells", JOURNAL OF PHOTOCHEMISTRY AND PHOTOBIOLOGY B: BIOLOGY, vol. 84, 2006, pages 56 - 63
XIN CHEN: "Efficient synthesis and photodynamic activity of porphyrin-saccharide conjugates: targeting and incapacitating cancer cells", BIOCHEMISTRY, vol. 43, 2004, pages 10918 - 10929, XP008115960, DOI: doi:10.1021/bi049272v
Attorney, Agent or Firm:
KAMITANI, Eriko (Ueshio 2-chome Chuo-k, Osaka-shi Osaka 64, JP)
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Claims:
下記一般式(1)で示されるS-グリコシル化クロリン誘導体。

式中、X 1 ~X 20 は、互いに独立して、F-、糖-S-、糖-Z-S-、及び糖-O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基で、且つX 1 ~X 20 のうち少なくとも1つは糖-S-、糖-Z-S-、及び糖-O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基であり(ここで、Fはフッ素原子、Sは硫黄原子、Oは酸素原子、Zは炭素数1~6の炭化水素基である)、
R 5 及びR 6 は、互いに独立して水素原子又は有機基であり、互いに環を形成していてもよい。
下記一般式(1)’で示される請求項1に記載のS-グリコシル化クロリン誘導体。

式中、X 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 は、互いに独立して、F-、糖-S-、糖-Z-S-、及び糖-O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基で、且つX 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 のうち少なくとも1つは糖-S-、糖-Z-S-、及び糖-O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基であり(ここで、Fはフッ素原子、Sは硫黄原子、Oは酸素原子、Zは炭素数1~6の炭化水素基である)、
R 5 及びR 6 は、互いに独立して水素原子又は有機基であり、互いに環を形成していてもよい。
前記(1)’式中、X 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 は、糖-S-である請求項2に記載のクロリン誘導体。
下記一般式(2)で示されるS-グリコシル化クロリン誘導体。

式中、X 1 ~X 20 は、互いに独立して、F-、糖-S-、糖-Z-S-、及び糖-O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基で、且つX 1 ~X 20 のうち少なくとも1つは糖-S-、糖-Z-S-、及び糖-O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基であり(ここで、Fはフッ素原子、Sは硫黄原子、Oは酸素原子、Zは炭素数1~6の炭化水素基である)、
R 5 及びR 6 は、互いに独立して水素原子又は有機基であり、互いに環を形成していてもよく、Mは金属である。
下記一般式(2)’で示される請求項4に記載のS-グリコシル化クロリン誘導体。

式中、X 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 は、互いに独立して、F-、糖-S-、糖-Z-S-、及び糖-O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基で、且つX 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 のうち少なくとも1つは糖-S-、糖-Z-S-、及び糖-O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基であり(ここで、Fはフッ素原子、Sは硫黄原子、Oは酸素原子、Zは炭素数1~6の炭化水素基である)、
R 5 及びR 6 は、互いに独立して水素原子又は有機基であり、互いに環を形成していてもよく、Mは金属である。
前記(2)’式中、X 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 は、糖-S-である請求項5に記載のクロリン誘導体。
前記金属Mが遷移金属である請求項4~6のいずれかに記載のクロリン誘導体。
前記金属Mが、Pt、Pd、及びAuからなる群より選ばれる1種である請求項4~6のいずれかに記載のクロリン誘導体。
前記有機基は、低級アルキル又はQ-(CH 2 ) k -(ここで、Qは低級アルキル、アリール、アミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、低級アルキルイミノ、又はシクロアルキル基であり、kは0~3の整数である)である請求項1~8のいずれかに記載のS-グリコシル化クロリン誘導体。
前記糖は、単糖類、二糖類又は多糖類である請求項1~9のいずれかに記載のS-グリコシル化クロリン誘導体。
前記糖は、下記式で表されるペントース又はヘキソースである請求項10に記載のクロリン誘導体。
前記糖はグルコースである請求項11に記載のクロリン誘導体。
前記糖は、D体である請求項10~12のいずれかに記載のクロリン誘導体。
インビトロ又はインビボにて、請求項1~13のいずれかに記載のクロリン誘導体と、標的となるウィルス、細菌、若しくはこれらの感染細胞;腫瘍細胞;又は腫瘍状組織と接触させた後、前記クロリン誘導体に吸収される波長の光線を照射することにより、前記標的を破壊する方法。
請求項1~13のいずれかの化合物を有効成分として含有する医薬。
請求項1~13のいずれかの化合物を有効成分として含有する、腫瘍又は固形癌の光線力学的治療用剤。
請求項1~13のいずれかの化合物を有効成分として含有する、皮膚病の光線力学的治療用剤。
請求項1~13のいずれかの化合物を有効成分として含有し、製薬学的に許容できる固体又は液体状の担体又は賦形剤を含有する医薬組成物。
請求項1~13の化合物の医薬としての使用。
請求項1~13の化合物の疾患治療薬としての使用。
請求項1~13の化合物の診断薬としての利用。
テトラフェニルポルフィリンのA環を還元反応又は付加反応に供してテトラフェニルクロリンとする工程を経て、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンを得る工程;及び
 該テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンと糖又は糖誘導体のチオールエステルと反応させて、S-グリコシル化する工程
を含む請求項1~3のいずれかに記載のクロリン誘導体の製造方法。
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンのA環を還元反応又は付加反応に供してテトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンとする工程;
 得られた反応混合物からテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンを分離除去し、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンを得る工程;及び
 該テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンと糖又は糖誘導体のチオールエステルと反応させて、S-グリコシル化する工程
を含む請求項1~3のいずれかに記載のクロリン誘導体の製造方法。
テトラフェニルポルフィリンのA環を還元反応又は付加反応に供してテトラフェニルクロリンを得る工程、及びテトラフェニルポルフィリン又はテトラフェニルクロリンと金属塩とを反応させる工程を経てテトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンの金属錯体を得る工程;並びに
 該テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンの金属錯体に、糖又は糖誘導体のチオールエステルを反応させてS-グリコシル化する工程
を含む請求項4~8のいずれかに記載のクロリン誘導体の製造方法。
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンと金属塩とを反応させてテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンの金属錯体を得る工程;
 前記テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン金属錯体のポルフィリンのA環を還元反応又は付加反応に供してテトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンの金属錯体とする工程;
 得られた反応混合物からテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンの金属錯体を分離除去し、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンの金属錯体を得る工程;及び
 該テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンの金属錯体に、糖又は糖誘導体のチオールエステルを反応させてS-グリコシル化する工程
を含む請求項4~8のいずれかに記載のクロリン誘導体の製造方法
Description:
新規な糖連結クロリン誘導体及 その製造方法

 本発明は、光毒性が高い新規な糖連結ク リン誘導体とその製造方法、並びに当該ク リン誘導体を用いた医薬に関する。

 光線力学的療法(PDT)は、標的となる疾患 織中に光感作性物質を投与して、癌または 瘍組織や病変部に集積させた後、適当な波 の光を照射することにより、癌組織のみを 択的に破壊する治療方法である。PDTは、光 作性物質が特定波長の光により励起され、 体組織に傷害的に作用することを利用した ので、活性化された光感作性物質からの直 的または間接的なエネルギー移動による分 状酸素からの一重項酸素の生成が、腫瘍破 の主因であると現在考えられている。

 PDTに用いられる光感作性物質としては、 ルフィリン誘導体がよく知られており、ポ ヘマトポルフィリンエーテル(例えば、フォ トフリン(登録商標))やタラポルフィリンナト リウムなどのように、すでに実用化されてい るものもある。しかし、ヘマトポルフィリン やその2量体の最大吸収波長は630nmであり、モ ル吸光係数も3000と低いため、PDTの治療効果 5~10mmの表層癌に限定されてしまっている。 た、光過敏症といった副作用の問題もある このため、適用範囲が広く、副作用が少な 種々のポルフィリン誘導体が研究され、提 されている。

 一般に、PDTは、癌、腫瘍組織だけでなく 正常組織も損傷させることになるため、で るだけ少量で光毒性を示す光感作性物質を 用することが求められる。また、副作用軽 の点から、光が照射されない条件下では、 胞毒性が低いことが求められる。近年、ポ フィリン環に糖を連結することにより、光 射下での強い細胞毒性を維持しながら、暗 下での細胞毒性を軽減できることが見出さ 、糖連結ポルフィリン誘導体をPDT用薬剤へ 用することが提案されている。

 例えば、特許文献1には、O-グリコシル化に り、グルコース等の単糖類又はアセチル化 糖類をフェニル基に結合させた、テトラフ ニルバクテリオクロリン誘導体及びその金 錯体が提案されている。
 このO-グリコシル化テトラフェニルバクテ オクロリン誘導体は、まず、アセチル化糖 O-グリコシル化したテトラフェニルポルフィ リン誘導体を製造し、次いで炭酸アルカリ金 属存在下、還元剤により還元して、テトラフ ェニルバクテリオクロリン誘導体とし、次い で、アルカリ処理して、アセチル化糖の脱ア セチルを行なって、単糖類残基の水酸基を遊 離の状態とすることにより製造している。

 そして、5,10,15,20-テトラキス〔3-(β-D-グル コピラノシルオキシ)フェニル〕バクテリオ ロリン、5,10,15,20-テトラキス〔3-(β-D-アラビ ピラノシルオキシ)フェニル〕バクテリオク ロリン、5,10,15,20-テトラキス〔3-(β-D-キシロ ラノシルオキシ)フェニル〕バクテリオクロ ンを合成し、これらのO-グリコシル化バク リオクロリン誘導体が740nm付近に強い吸収ピ ークをもつこと、これらのバクテリオクロリ ン誘導体に光を照射すると、細胞毒性を示す ことが開示されている。

 また、非特許文献1には、5,10,15,20-テトラ ス〔3-(β-D-グルコピラノシルオキシ)フェニ 〕クロリン等のO-グリコシル化クロリン誘 体を合成して、この化合物が暗所では細胞 性を示さないが、光照射により細胞毒性を したと報告している。

 さらに、特許文献2には、S-グリコシル化 より、ガラクトース、キシロース、グルコ ス等の単糖類、マルトース等の二糖類を連 させたポルフィリン誘導体が提案されてい 。具体的には、ハロゲン化アルコキシフェ ルポルフィリン誘導体にチオ糖アセチルを 応させて、アルコキシ基のハロゲンとチオ- 糖アセチルとを置換反応し、次いで脱アセチ ル化により、S-グリコシル化アルコキシポル ィリン誘導体を製造している。また、アル キシフェニル基に代えて、ペンタフルオロ ェニル基がポルフィリン環に結合している 合には、ペンタフルオロフェニルポルフィ ンにチオ糖アセチルを反応させることによ 、S-グリコシル化テトラフルオロフェニル ルフィリンを合成している。

 そして、これらの糖連結ポルフィリン誘導 は、光照射により細胞毒性を示し、グリコ ル化されていない類似のポリフィリン誘導 よりも光毒性活性が強いことを開示してい 。
 特許文献2には、所望であれば、Mg、Zn、Snな どで処理して金属複合体としてもよいとの記 載はあるが、合成例は示されていない。

 S-グリコシル化テトラフェニルポルフィリ については、非特許文献2でも報告されてい 。テトラ(ペンタフルオロフェニル)ポルフ リン(TPPF 20 )を合成し、このTPPF 20 と糖のチオアセテート誘導体とを反応させる ことにより、5,10,15,20-テトラキス(4,1’-チオ- ルコシル-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ポ ルフィリン等のS-グリコシル化テトラ(ペンタ フルオロフェニル)ポルフィリンを合成し、 れらのポルフィリン誘導体を細胞と接触さ た後、光照射により細胞死が観察できるこ 、さらに糖の種類により光毒性が異なるこ を報告している。

WO2002-020536

特表2005-500335 Shiho Hiroharaら、「Sugar-dependent aggregation  of glycoconjugated chlorins and its effect on photocy totoxicity in HeLa cells」Journal of Photochemistry a nd Photobiology B:Biology 84(2006)56-63 Xin Chenら、「Efficient Synthesis and Photodyna mic Activity of Porphyrin-Saccharide Conjugates:Targetin g and Incapacitating Cancer Cells」、Biochemistry 200 4,43,10918-10929

 以上のように、糖連結ポルフィリン、ク リン誘導体についても、開発、研究が進め れているが、光毒性、安全性、さらに生産 の点で更なる改良余地がある。本発明では 暗所では安定で、少量で高い光毒性を示し 生産性に優れた新規な糖連結クロリン誘導 及びその製造方法を提供することにある。

 本発明者らは、種々の糖連結ポルフィリ 誘導体、クロリン誘導体を検討した結果、 線力学的治療用剤として有用な、暗所で安 で且つ少量で高い光毒性を示すことができ 光感作物質となる、新規な糖連結型クロリ 誘導体及びその製造方法を見出した。

 よって、本発明は、新規な糖連結型クロ ン誘導体である、下記一般式(1)で表されるS -グリコシル化クロリン誘導体又は下記一般 (2)で表されるS-グリコシル化クロリン誘導体 の金属錯体を提供する。

 式中、X 1 ~X 20 は、互いに独立して、F-、糖-S-、糖-Z-S-、及 糖-O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基で、 且つX 1 ~X 20 のうち少なくとも1つは糖-S-、糖-Z-S-、及び糖 -O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基であり( ここで、Fはフッ素原子、Sは硫黄原子、Oは酸 素原子、Zは炭素数1~6の炭化水素基である)、R 5 及びR 6 は、互いに独立して水素原子又は有機基であ り、互いに環を形成していてもよい。

 好ましくは下記(1)’式、(2)’式で表される うに、クロリン環に対してp位にあるX 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 のうちの少なくとも1つが糖-S-、糖-Z-S-、及び 糖-O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基であ 、クロリン環に対してo位及びm位がフッ素 子の場合のS-グリコシル化クロリン誘導体又 はその金属錯体である。より好ましくは、X 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 の全てが糖-S-の場合である。

 また、前記糖は、単糖類、二糖類、又は 糖類であり、好ましくは下記式で表される ントース又はヘキソースであり、より好ま くはグルコースである。また、糖はD体であ ることが好ましい。

 本発明のS-グリコシル化クロリン誘導体 、インビトロ又はインビボにて、標的とな ウィルス、細菌、若しくはこれらの感染細 ;腫瘍細胞;又は腫瘍状組織と接触させた後、 前記クロリン誘導体に吸収される波長の光線 を照射することにより、前記標的を破壊する ことに適用することができる。従って、本発 明は、上記クロリン誘導体又はその金属錯体 を有効成分とする、医薬、特に、腫瘍若しく は固形癌、又は皮膚病の光線力学的治療用剤 、あるいは診断薬をも提供する。

 また、本発明は、上記本発明のS-グリコシ 化クロリン誘導体及びその金属錯体の製造 法を提供する。
 上記一般式(1)で表されるクロリン誘導体の 造方法は、テトラフェニルポルフィリンのA 環を還元反応又は付加反応に供してテトラフ ェニルクロリンとする工程を経て、テトラキ ス(ペンタフルオロフェニル)クロリンを得る 程;及び該テトラキス(ペンタフルオロフェ ル)クロリンと糖又は糖誘導体のチオールエ テルと反応させて、S-グリコシル化する工 を含む。

 前記テトラフェニルポルフィリンとして 予め芳香環がフッ素化されたテトラキス(ペ ンタフルオロフェニル)ポルフィリンを用い ことが好ましい。すなわち好ましい製造方 としては、テトラキス(ペンタフルオロフェ ル)ポルフィリンのA環を還元反応又は付加 応に供してテトラフェニルクロリンとする 程;得られた反応混合物からテトラキス(ペン タフルオロフェニル)ポルフィリンを分離除 し、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ク ロリンを得る工程;及び該テトラキス(ペンタ ルオロフェニル)クロリンと糖又は糖誘導体 のチオールエステルと反応させて、S-グリコ ル化する工程を含む方法である。

 上記一般式(2)で表されるクロリン誘導体 金属錯体の製造方法は、テトラフェニルポ フィリンのA環を還元反応又は付加反応に供 してテトラフェニルクロリンを得る工程、及 びテトラフェニルポルフィリン又はテトラフ ェニルクロリンと金属塩とを反応させる工程 を経てテトラキス(ペンタフルオロフェニル) ロリンの金属錯体を得る工程;並びに該テト ラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンの 属錯体に、糖又は糖誘導体のチオールエス ルを反応させてS-グリコシル化する工程を む。

 上記一般式(2)で表されるクロリン誘導体 金属錯体のより好ましい製造方法は、テト キス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリ と金属塩とを反応させてテトラキス(ペンタ ルオロフェニル)ポルフィリンの金属錯体を 得る工程;前記テトラキス(ペンタフルオロフ ニル)ポルフィリン金属錯体のポルフィリン のA環を還元反応又は付加反応に供してテト キス(ペンタフルオロフェニル)クロリンの金 属錯体とする工程;得られた反応混合物から トラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィ リンの金属錯体を分離除去し、テトラキス( ンタフルオロフェニル)クロリンの金属錯体 得る工程;及び該テトラキス(ペンタフルオ フェニル)クロリンの金属錯体に、糖又は糖 導体のチオールエステルを反応させてS-グ コシル化する工程を含む。

 本発明の糖連結クロリン誘導体は、暗所で 性がなく、光照射下で強い細胞毒性を示す とができる。
 本発明の製造方法によれば、本発明の糖連 クロリン誘導体を高収率で製造することが き、またクロリン誘導体として、高融点の 移金属錯体を製造することもできる。

本発明の糖連結クロリン誘導体の製造 法の一実施形態を説明するための図である 本発明の糖連結クロリン誘導体の製造 法の一実施形態を説明するための図である 薬剤濃度0.5μMのときの光毒性試験の結 を示すグラフである。 薬剤濃度0.09μMのときの光毒性試験の結 果(No.6,7,8,9,14,15)を示すグラフである。 薬剤濃度0.09μMのときの光毒性試験の結 果(No.8,16)を示すグラフである。 薬剤濃度0.5μMのときの暗所における細 毒性試験の結果を示すグラフである。 実施例4(H 2 TFPC-SCH 2 CH 2 OAcGlc)のESI-MSスペクトルである。 実施例4(H 2 TFPC-SCH 2 CH 2 OAcGlc)のESI-MSスペクトルのシミュレーション 果である。 実施例5(H 2 TFPC’-SAcGlc)のESI-MSスペクトルである。 実施例5(H 2 TFPC’-SAcGlc)のESI-MSスペクトルのシミュレーシ ョン結果である。

〔S-グリコシル化クロリン誘導体及びその製 方法〕
 本発明は、新規な光感作性物質として、下 一般式(1)で示されるS-グリコシル化クロリ 誘導体を提供する。

 式中、X 1 ~X 20 は、互いに独立して、F-、糖-S-、糖-Z-S-、及 糖-O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基で、 且つX 1 ~X 20 のうち少なくとも1つは糖-S-、糖-Z-S-、及び糖 -O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基である

 ここで、Fはフッ素原子、Sは硫黄原子、O 酸素原子、Zはメチレン基、エチレン基、プ ロピレン基、α-ブチレン基、β-ブチレン基、 シクロへキシレン、o-フェニレン基、m-フェ レン基、p-フェニレン基等の炭素数1~6の炭化 水素基である。

 本発明のグリコシル化クロリン誘導体は クロリンに結合している4個のフェニル基の うち、少なくとも1つがS-グリコシル化されて いればよく、クロリン環に対して、o位、m位 p位のいずれかがS-グリコシル化されていれ よい。また、各フェニル基において、2個以 上がS-グリコシル化されていてもよい。

 好ましくは、下記(1)’式に示すように、各 ェニル基において、クロリン環に対してp位 にあるX 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 の少なくともいずれかが糖-S-、糖-Z-S-、及び -O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基で、o 、m位はフッ素原子の場合であり、より好ま しくは、p位にあるX 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 の全てがグリコシル化されている。また、糖 は、チオ基に直接連結されていてもよいし、 Sと糖との間に、-Z-、-O-Z-の連結基が介在して いてもよい。好ましくは、糖はチオ基に直接 連結されている。


 連結される糖としては、下記式で表される ントース又はヘキソースなどの単糖類;ショ 糖、マルトース、ラクトースなどの2糖類;デ プン、アミロース、グリコーゲンなどの多 類などが挙げられるが、好ましくは単糖類 あり、より好ましくはペントース又はヘキ ースである。単糖類は、D体であってもよい し、L体であってもよいが、D体が好ましく用 られる。

 ペントースとしては、アラビノース、キ ロース、ラムノースなどがある。また、ヘ ソースとしては、具体的には、グルコース ガラクトース、マンノース、アロース、ア トロース、グロース、イドース、タロース あり、これらのうち、グルコースが最も好 しく用いられる。グルコースのときの光毒 が優れているからである。

 (1)及び(1)’式中、X 1 ~X 20 のうち、2つ以上が糖-S-、糖-Z-S-、及び/又は -O-Z-S-(以下、これらの基を特に区別しないと きは、「S-グリコシル化基」と総称する)に置 換されている場合、連結される糖の種類は同 一であってもよいし、異なっていてもよい。 また、単糖類と多糖類といった異なる種類の 糖が連結されていてもよい。好ましくは、糖 の種類が全て同一の場合であり、より好まし くは、置換されているS-グリコシル化基に含 れている糖の全てがグルコースの場合であ 。

 上記(1)及び(1)’式中、R 5 及びR 6 は、水素原子又は互いに独立した有機基であ る。
 前記有機基としては、例えば、低級アルキ 又はQ-(CH 2 ) k -である。Qは、低級アルキル、アリール、ア ノ、低級アルキルアミノ、イミノ、低級ア キルイミノ又はシクロアルキル基である。 こで、低級アルキルとは、メチル、エチル n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec- チル、tert-ブチル、ペンチル等の炭素数1~5の 直鎖又は分岐アルキルをいう。kは0~3の整数 ある。
 R 5 とR 6 が互い環を形成していてもよく、例えば、R 5 とR 6 で、ポルフィリン環の1~24番号法でA環の2位、 3位に結合するイミノ基、第3級アミンを構成 ていてもよい。

 以上のようなS-グリコシル化クロリン誘 体の好ましい具体例としては、5,10,15,20-テト ラキス〔4-(β-D-グルコピラノシルチオ)-2,3,5,6- テトラフルオロフェニル〕クロリン、5,10,15,2 0-テトラキス〔4-(β-D-グルコピラノシルチオ)- 2,3,5,6-テトラフルオロフェニル〕-2,3-〔メタ (N-メチル)イミノメタノ〕クロリンなどが挙 られる。

 以上のような構成を有するS-グリコシル クロリン誘導体は、暗所では細胞毒性は示 ないが、光照射下で強い細胞毒性を示すこ ができる。特に、O-グリコシル化クロリン誘 導体よりも、強い細胞毒性を有する。そして 、ポルフィリン誘導体と比べて長波長におけ る吸収が大きく(吸収極大波長650nm)、また糖 連結により化合物は水溶性となり、さらに 胞親和性、細胞透過性も高くなっているよ である。

 次に、本発明のS-グリコシル化クロリン 導体の製造方法について説明する。本発明 S-グリコシル化クロリン誘導体の製造方法は 、テトラフェニルポルフィリンのA環を還元 応又は付加反応に供してテトラフェニルク リンとする工程を経て、テトラキス(ペンタ ルオロフェニル)クロリンを得る工程;及び テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリ ンと糖又は糖誘導体のチオールエステルと反 応させて、S-グリコシル化する工程を含む。

 クロリンに結合している芳香環のフッ素 は、ポルフィリンをクロリンに変換した後 なってもよいが、予めフッ素化された芳香 が結合したポルフィリン、すなわちテトラ ス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン 用いて、これをクロリンに変換することが ましい。すなわち、本発明の好ましいS-グリ コシル化クロリン誘導体の製造方法は、テト ラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリ のA環を還元反応又は付加反応に供してテト ラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンと る工程;得られた反応混合物からテトラキス (ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンを分 除去し、テトラキス(ペンタフルオロフェニ ル)クロリンを得る工程;及び該テトラキス(ペ ンタフルオロフェニル)クロリンと糖又は糖 導体のチオールエステルと反応させて、S-グ リコシル化する工程を含む。

 以下、テトラキス(ペンタフルオロフェニ ル)ポルフィリンを用いた場合について、本 明の製造方法を、図1を参照しつつ詳述する

 まず、5,10,15,20-テトラキス(ペンタフルオロ ェニル)ポルフィリン(H 2 TFPPと略記)を出発原料とし、ポルフィリン環 1~24番号法における2、3位(ピロール環A環)を 元して、あるいは適宜化合物を付加するこ により、クロリン環にする。還元は、約3当 量の炭酸アルカリ金属の存在下、それぞれの 基にもっとも適した量の還元剤、例えばヒド ラゾン、セミカルバゾン、p-トルエンスルホ ルヒドラジドを用いて行なうことができる また、付加反応の場合、1,3-ジヒドロベンゾ チオフェン2,2-ジオキシド、N-メチルグリシン とパラホルムアルデヒドの組合わせ等をピロ ール環A環の2、3位に環化付加反応させること によって、A環の二重結合を一重結合として よい。あるいは、臭化ベンジル等のハロゲ 化ベンジル、ハロゲン化アルキルなどを、 素化トリブチル錫などの連鎖移動剤の存在 で、ピロール環A環に付加反応させることに ってA環の二重結合を一重結合としてもよい 。

 反応後、H 2 TFPPを反応混合物から分離除去する。分離除 方法としては、再結晶、シリカゲルクロマ グラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー により行なうことができる。
 ポルフィリン誘導体の分離除去後、得られ テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロ ン誘導体に、糖のチオールエステル(糖-SR)を 作用させて、糖スルフィドをテトラフルオロ フェニル基に連結させて、S-グリコシル化テ ラフルオロフェニルクロリン誘導体(H 2 TFPC-S-糖)を得る。図1に示すH 2 TFPC-S-糖は、4個のフェニル基全てのp位に糖が 連結した場合を示している。H 2 TFPC-S-糖において、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 は糖-SRに由来する糖残基である。

 加える糖のチオールエステル(糖-SR)の量 、クロリン環に連結している4個のペンタフ オロフェニル基のうち、糖を連結しようと るフェニル基の数に応じて設定すればよい 例えば、過剰量の糖のチオールエステルを 加した場合には、クロリン環に結合してい 4個のフェニル基のうちの1個以上のフェニ 基に2個以上の糖が連結することになり、過 量の糖のチオールエステルしか添加しなか た場合には、クロリン環に結合している4個 のフェニル基のうち、S-グリコシル化されな フェニル基も残存した糖連結クロリンが得 れることになる。

 好ましくは、クロリン環に連結している4 個全てのペンタフルオロフェニル基のp位がS- グリコシル化されるように、糖のチオールエ ステルの添加量を調整し、リサイクル法を用 いたゲル濾過クロマトグラフィを併用するこ とにより、S-グリコシル化工程を行なうこと 好ましい。尚、使用する糖-SRを構成するR基 としては、Rがアシル基、アルキル基等が挙 られる。

 また、糖のチオールエステル(糖-SR)中の としては、糖分子中の水酸基をアシル基等 保護基で保護したものを用いることが好ま い。保護基としては、アセチル、ピバロリ 等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基等の芳香 アシル基;ベンジル基等のアラルキル基が挙 げられる。これらの保護基のうち、アセチル 基が特に好ましい。

 保護基で水酸基がブロックされている糖 使用した場合には、次いで、アルカリ処理 により、保護基を脱離除去する。保護基が シル基の場合には、アルカリ溶液を加えて 水分解すればよい。例えば、ジクロロメタ 、メタノール、エタノール、テトラヒドロ ランあるいはこれらの混合溶媒中、ナトリ ムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナ リウム-t-ブトキシド、カリウムメトキシド カリウムエトキシド、カリウム-t-ブトキシ 等のアルカリ金属アルコキシドのようなア カリを用いて、保護された化合物を処理す ことにより、保護基を除去する。保護基が ラルキル基の場合には、パラジウム触媒を った水素添加により除去することができる 保護基が結合した糖では、細胞内への薬剤 移行が妨げられ、細胞毒性効果が得られな からである。

 チオ基と糖との間に連結基Z又は-O-Z-が介 する場合、テトラキス(ペンタフルオロフェ ニル)クロリン誘導体に作用させる糖のチオ ルエステルとして、連結基を有するチオー エステル(糖-Z-SR又は糖-O-Z-SR)を用いればよい 。

 以上のような製造方法では、グリコシル化 前に、ポルフィリンをクロリンに変換して るので、ポルフィリンからクロリンへの変 工程の条件の設定が容易となる。すなわち 糖は120℃くらいで分解してしまい、またこ 以上の高温では糖とポルフィリン骨格との 合が切断されてしまうおそれがあるため、 の変換工程をそれ以上の高温を必要とする うな反応を行なわせることができなかった この点、グリコシル化前であれば、例えば ポルフィリン骨格のピロールA環の環化付加 反応(通常、120℃以上の加熱必要)によっても ロリン変換工程を行なうことができる。
 また、ポルフィリン骨格誘導体とクロリン 格誘導体の混合物から、クロリン骨格誘導 を分離精製する場合、糖連結ポルフィリン 導体混合物から糖連結クロリン誘導体を分 精製する場合と比べて、糖が連結していな ポルフィリン誘導体から糖が連結されてい いクロリン誘導体を分離精製する方が容易 あり、分離精製効率が高い。ひいては生産 に優れている。

〔金属錯体タイプのS-グリコシル化クロリン 導体及びその製造方法〕
 本発明は、また、新規な光感作性物質とし 、下記一般式(2)で示されるS-グリコシル化 ロリン誘導体を提供する。


(2)式中、X 1 ~X 20 、R 5 及びR 6 は、(1)式の場合と同様である。
 Mは金属であり、具体的には、遷移金属、II 、III族、IV族の金属であり、好ましくは、Pt 、Pd、Au、Al、Zn等の遷移金属であり、より好 しくはPt、Pd、Auといった貴金属である。金 の導入により光照射下での細胞毒性が高め れ、特に、貴金属の導入の場合に細胞毒性 上効果が大きい。また、Pt、Pd、Au等の貴金 導入反応は高温で行なわなければならず、 との関係で従来の方法では導入が困難であ たが、後述する本発明の製造方法により、 収率で製造することができる。

 本発明の金属錯体タイプのS-グリコシル化 ロリン誘導体としては、好ましくは、下記(2 )’式に示すように、クロリン環に対してp位 あるX 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 の少なくともいずれかが糖-S-、糖-Z-S-、及び -O-Z-S-からなる群から選ばれる1つの基で、o 、m位はフッ素原子の場合であり、より好ま しくは、p位にあるX 1 、X 2 、X 3 、及びX 4 の全てがグリコシル化されているものである 。

 以上のような構成を有するS-グリコシル クロリン誘導体の金属錯体は、金属が導入 れていないS-グリコシル化クロリン誘導体を 製造した後、該当する金属の塩酸塩、硫酸塩 等の金属塩を作用させることによって、所望 の金属錯体を製造してもよいが、次に述べる 本発明の製造方法により製造することが、糖 の安定性、精製のしやすさなど、生産性の点 から好ましい。

 本発明のS-グリコシル化クロリン誘導体 金属錯体の製造方法は、テトラフェニルポ フィリンのポルフィリンのA環を還元反応又 付加反応に供してテトラフェニルクロリン 得る工程、及びテトラフェニルポルフィリ 又はテトラフェニルクロリンと金属塩とを 応させる工程を経てテトラキス(ペンタフル オロフェニル)クロリンの金属錯体を得る工 ;並びに該テトラキス(ペンタフルオロフェニ ル)クロリンの金属錯体に、糖又は糖誘導体 チオールエステルを反応させてS-グリコシル 化する工程を含む。

 クロリン環に結合している芳香環のフッ 化は、金属塩との反応後であってもよいし 反応前であってもよい。いずれの場合でも S-グリコシル化前に金属を導入しているの 、反応混合物から目的とするテトラフェニ クロリンの金属錯体の分収効率が高く、S-グ リコシル化クロリン誘導体の金属錯体の生産 性に優れている。さらに、糖又は糖誘導体の チオールエステルとの反応を、目的とするテ トラフェニルクロリンの金属錯体を得た後に 行なっているので、金属導入のための反応、 ポルフィリン環からクロリンへの反応条件を 広範囲から選択することができる。

 より好ましくは、まず、テトラフェニル ルフィリンのポルフィリンと金属塩を反応 せてテトラフェニルポルフィリンの金属錯 を得た後、ポルフィリン環のA環を還元反応 又は付加反応に供してテトラフェニルクロリ ンとする方法である。これにより、テトラフ ェニルクロリンの金属錯体の収率をより高め ることが可能である。

 本発明のS-グリコシル化クロリン誘導体 金属錯体の製造方法において、予めフッ素 された芳香環が結合したポルフィリン、す わち、テトラキス(ペンタフルオロフェニル) ポルフィリンを用いることが、より好ましい 。従って、好ましいS-グリコシル化クロリン 導体の金属錯体の製造方法は、テトラキス( ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンと金 塩とを反応させてテトラキス(ペンタフルオ フェニル)ポルフィリンの金属錯体を得る工 程;前記テトラキス(ペンタフルオロフェニル) ポルフィリン金属錯体のポルフィリンのA環 還元反応又は付加反応に供してテトラキス( ンタフルオロフェニル)クロリンの金属錯体 とする工程;得られた反応混合物からテトラ ス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンの 金属錯体を分離除去し、テトラキス(ペンタ ルオロフェニル)クロリンの金属錯体を得る 程;及び該テトラキス(ペンタフルオロフェ ル)クロリンの金属錯体に、糖又は糖誘導体 チオールエステルを反応させてS-グリコシ 化する工程を含む。

 以下、テトラキス(ペンタフルオロフェニ ル)ポルフィリンを用いた場合について、本 明の製造方法を、図2を参照しつつ詳述する

 まず、出発原料となる5,10,15,20-テトラキス( ンタフルオロフェニル)ポルフィリン(H 2 TFPPと略記)に、金属Mを導入する。金属Mの導 は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、カルボン 塩など、有機酸、無機酸との塩を、H 2 TFPPと反応させることにより行なう。
 例えば、H 2 TFPPと導入しようとする金属塩を適当な有機 媒中に懸濁して加熱還流し、得られた反応 合物を冷却後、減圧濃縮して、カラムクロ トグラフィにより目的成分を分収すればよ 。

 加熱条件は、金属の種類により適宜設定 れる。亜鉛等のイオン半径の小さな金属の 合には、30~100℃で5~25時間程度の加熱でよい が、Pd、Pt等のイオン半径の大きな金属を導 する場合、200~250℃で80~100時間の加熱が必要 なる。糖が連結される前に行なうので、ポ フィリン骨格が安定に存在できる条件であ ばよいことから、このような高温、長時間 加熱を行なうことができる。

 次いで、得られたH 2 TFPPの金属錯体(MTFPPと略記)を、還元する。還 方法は、前述のテトラキス(ペンタフルオロ フェニル)ポルフィリン誘導体からクロリン 導体への変換工程で行なった還元反応、付 反応と同様の方法にて行なうことができる 図2中、得られるテトラキス(ペンタフルオロ フェニル)クロリン誘導体を、MTFPCで示す。

 次に、S-グリコシル化する(図2中、得られる S-グリコシル化クロリン誘導体を、MTFPC-S-糖 示す。このMTFPC-S-糖は、4個のペンタフルオ フェニル基の全てがS-グリコシル化された場 合を示している。R 1 、R 2 、R 3 、R 4 は糖-SRに由来する糖残基である)。グリコシ 化の方法も、前述のS-グリコシル化クロリン 誘導体の製造で行なった方法と同様の方法に て行なうことができる。糖の保護基除去が必 要な場合、保護基除去方法も、前述のS-グリ シル化クロリン誘導体の製造で行なった方 と同様の方法により行なうことができる。

 チオ基と糖との間に連結基Z又は-O-Z-が介 する場合、得られたテトラキス(ペンタフル オロフェニル)クロリン誘導体に作用させる のチオールエステルとして、連結基を有す チオールエステル(糖-Z-SR又は糖-O-Z-SR)を用い ればよい。

 本発明の製造方法によれば、クロリン骨 への金属の導入を、グリコシド化より先に なっているので、金属導入反応条件の許容 囲が広くなる。従って、従来、O-グリコシ 化クロリン誘導体の金属錯体の場合には、 の安定性との関係から、100℃以下程度の加 条件で導入できる金属の錯体しか合成でき かったが、本発明の製造方法によれば、そ よりも高温、長時間の加熱還流が必要とな Pt、Pd等の貴金属の導入が可能となり、より 毒性が高い金属錯体を得ることができる。

 以上のような金属錯体タイプのS-グリコ ル化クロリン誘導体の吸収帯は、金属の導 により600nm付近となるが、S-グリコシル化ク リン誘導体と同様に、糖残基の導入により 溶性を示し、また暗所下では細胞毒性を示 ないが、光照射下で強い細胞毒性を示す。S -グリコシル化クロリン誘導体の場合と同様 、光照射下での細胞毒性は、O-グリコシル化 クロリン誘導体の金属錯体よりも大きい。

〔用途〕
 上記本発明のS-グリコシル化クロリン誘導 は、暗所下では細胞毒性を示さないが、光 射下で強い細胞毒性を示すことを利用して 標的となる生物材料と、暗所下でインビト 又はインビボで接触させて、細胞内に取り ませた後、クロリン誘導体の吸収波長の光 照射することにより、標的を破壊する用途 用いることができる。
 ここで、標的としては、ウィルス又はバク リア又はこれらの感染細胞;腫瘍;腫瘍状組 などが挙げられ、特に腫瘍組織に親和性を し、腫瘍部に集積できることから、腫瘍の 壊に用いることができる。

 従って、本発明のS-グリコシル化クロリ 誘導体及びその金属錯体は、悪性腫瘍(maligna nt tumor)に分類される癌(cancer)の治療薬として 利用できる。本発明で対象とする悪性腫瘍は 、上皮性悪性腫瘍だけでなく、肉腫(saucoma)に 分類されるような非上皮組織を発生母地とす るような悪性腫瘍も含む。特に腫瘍細胞が塊 状、充実性に増殖する固形癌(solid carcinoma)、 光が届く表層癌の治療に有用である。具体的 には、食道癌、肺癌、胃癌、子宮頸癌、子宮 体癌等の子宮癌、皮膚癌、前立腺癌、腎臓癌 などが挙げられる。皮膚癌には、原発性(扁 上皮癌、基底細胞癌、表皮付属機癌)の他、 臓癌の皮膚転移も含まれる。

 また、本発明のS-グリコシル化クロリン 導体及びその金属錯体は、悪性腫瘍だけで く、良性腫瘍に対しても親和性を有するこ から、局所投与により、日光角化症、皮膚 癬症等の皮膚病の光線力学的治療薬として 利用も可能である。

 さらに、本発明のS-グリコシル化クロリ 誘導体の腫瘍集積性を利用して、PET等との 用により、癌の診断に利用することも可能 ある。

 本発明のS-グリコシル化クロリン誘導体 最大吸収波長が650nmとポルフィリン系化合物 よりも長波長となり、特に、水溶性で組織内 部への浸透を期待できるので、表層癌だけで なく、表皮よりも深い領域にある腫瘍又は固 形癌に対する適用が期待できる。一方、本発 明のS-グリコシル化クロリン誘導体の金属錯 の吸収波長は600nm付近であることから、光 届く表層癌や皮膚病の光線力学的治療薬、 断薬に適している。

〔医薬組成物〕
 本発明の医薬組成物は、上記本発明のS-グ コシル化クロリン誘導体(金属錯体タイプを む)(以下、特に区別しない場合は、本項目 において、両者をまとめて「S-グリコシル化 クロリン誘導体」という)を有効成分として 有し、製薬学的に許容できる固体又は液体 の担体を含有する。
 有効成分であるS-グリコシル化クロリン誘 体及びその金属錯体は、上述のように、い れも水溶性で細胞透過性に優れ、光毒性が いので、腫瘍又は固形癌の光線力学的治療 剤として好適に使用できる。

 本発明の組成物の有効成分の化合物は、 テーテル、静脈内または筋肉内注射により 与でき、またその他の非経口的な経路で投 することができる。また、経皮的にも投与 きる。その他、体内の深部の腫瘍組織へ直 に局所注入することができる。

 本発明で用いられる担体は、製剤の種類 応じて適宜選択される。注射用製剤で調製 る場合、有効成分の化合物を含む無菌の水 液又は分散液あるいは無菌の凍結乾燥剤の に製剤化することができる。液体担体とし は、例えば、水、生理食塩水、エタノール 含水エタノール、グリセロール、プロピレ グリコール、植物油が好ましい。

 本発明の医薬組成物には、有効成分とと に、ラクトース、スクロース、第2リン酸カ ルシウム、カルボキシメチルセルロース等の 希釈剤;ステアリン酸マグネシウム、ステア ン酸カルシウムおよびタルクのような滑剤; ンプン、グルコース、糖蜜、ポリビニルピ リドン、セルロース及びその誘導体等の結 剤を含み得る。

 本発明のS-グリコシル化クロリン誘導体又 その金属錯体の投与量は、治療すべき対象 目的によって異なるが、一般に、S-グリコシ ル化クロリン誘導体の量として、腫瘍の診断 のためには、1~3mg/kg(フォトフリン)、腫瘍治 のためには、30~0.3mg/kgHpD(フォトフリン)、好 しくは1~5mg/kgHpD(フォトフリン)または20~0.2mg/ kgPHEである。
 有効成分であるS-グリコシル化クロリン誘 体又はその金属錯体の細胞毒性は高いこと ら、従来よりも投与量を少なくして、同等 上の効果を得ることを期待できる。このこ は、代謝、排泄に要する時間が短くて済む とを意味し、光線力学的療法の活用利便性 高める。

 腫瘍の治療のためには、S-グリコシル化ク リン誘導体又はその金属錯体を投与した後 治療すべき部位に、該当化合物の吸収帯を む光線を照射する。具体的には、500nm以上の 光線照射により一重項酸素を発生して、目的 の細胞毒性を発揮することができるが、好ま しくは最大吸収波長の光の割合が高い光線を 照射することである。
 照射源としては、レーザー、ハロゲンラン などが用いられる。レーザとしては、色素 ーザ、半導体レーザ、アルゴンレーザなど 励起に必要な波長の光線が得られるもので ればよい。

 本発明のS-グリコシル化クロリン誘導体は 吸光係数が大きいため、照射する光線の強 は、通常用いる光増感剤に比べて弱くても い。従って、本発明のテトラフェニルクロ ン誘導体又はその金属錯体を用いる光線力 的療法は、療法を受ける生体にとって受け 負担がより少なくなる。具体的には、光線 射量は、1~20J/cm 2 である。

〔S-グルコシル化クロリン誘導体の製造〕
実施例1:S-グルコシル化クロリン誘導体
 (1)H 2 TFPPの製造(テトラキス(ペンタフルオロフェニ ル)ポルフィリン誘導体の合成)

 ペンタフルオロベンズアルデヒド(5g)とピロ ール(2mL)を窒素置換したジクロロメタン(1.2L) 溶解した。得られた溶液に、三フッ化ホウ エーテル錯体(1mL)を加え、4時間、加熱還流 た後、クロラニル(6.9g)を加えて、さらに12 間、加熱還流した。得られた反応混合物を 却し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラム 充填し、クロロホルムを用いて溶離するこ により、5,10,15,20-テトラキス(ペンタフルオ フェニル)ポルフィリン(「H 2 TFPP」と略記)を分収した。減圧濃縮後、さら クロロホルムとメタノールの混合溶媒から 結晶した(収量3.8g、収率61%)。

 (2)H 2 TFPCの製造(ポルフィリン誘導体からクロリン 導体への変換)
 (1)で製造したH 2 TFPP(892mg)、N-メチルグリシン(171mg)及びパラホ ムアルデヒド(134mg)を、トルエン(200mL)に溶 した。得られた溶液を、窒素雰囲気下、N-メ チルグリシン(約400mg)とパラホルムアルデヒ (400mg)を2時間毎に加えながら、20時間加熱還 する。反応混合物を冷却後、溶媒を減圧留 する。クロロホルム(50mL)を加え、水洗し過 量のN-メチルグリシンとパラホルムアルデ ドを除去する。トルエン溶液を無水硫酸ナ リウムで乾燥後、溶媒を減圧留去する。得 れた粗生成物をシリカゲルカラムに充填し クロロホルムを用いて溶離することにより 5,10,15,20-テトラキス(ペンタフルオロフェニ )-2,3-〔メタノ(N-メチル)イミノメタノ〕クロ ン(H 2 TFPCと略記)を分収し、さらに減圧濃縮した(収 量595mg、収率55%)。

 (3)H 2 TFPC-SAcGlcの製造(S-グルコシル化)
 (2)で得られたH 2 TFPC(102mg)、2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グル ピラノシルチオアセチル(AcGlcSAcと略記)(375mg) 及びジエチルアミン(2mL)をジメチルホルムア ド(20mL)に溶解し、室温下16時間攪拌した。 応混合物に、クロロホルム(20mL)を加え、水 した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥 、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物 シリカゲルカラムに充填し、クロロホルム びメタノールの混合溶媒で溶離し、さらに ル浸透クロマトグラフ分収装置により、5,10, 15,20-テトラキス〔4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル- β-D-グルコピラノシルチオ)-2,3,5,6-テトラフル オロフェニル〕-2,3-〔メタノ(N-メチル)イミノ メタノ〕クロリン(H 2 TFPC-SAcGlcと略記)を得た(収量210mg、収率94%)。

 (4)H 2 TFPC-SGlcの製造(アセチル保護基の除去)
 H 2 TFPC-SAcGlc(185mg)をジクロロメタン(20mL)とメタノ ールの混合物に溶解した。得られた溶液にナ トリウムメトキシドをpH9になるまで加えた後 、窒素雰囲気下、15~20℃で12時間、さらに、45 ~50℃の湯浴で3時間加熱還流した。得られた 応混合物を冷却し、次いで酢酸で中和し減 濃縮した。得られた沈殿をろ別し、水洗後 真空乾燥して、5,10,15,20-テトラキス〔4-(β-D- ルコピラノシルチオ)-2,3,5,6-テトラフルオロ フェニル〕-2,3-〔メタノ(N-メチル)イミノメタ ノ〕クロリン(H 2 TFPC-SGlcと略記)を得た(収量81mg、収率47%)。得 れた化合物は、 19 F-NMRスペクトルから、全てのフェニル基のp位 がS-グリコシル化されていることが確認でき 。

 実施例2:H 2 TFPC-SGlcのPd錯体
 (1)PdTFPPの製造(金属の導入)
 実施例1の(1)で製造したH 2 TFPP(1g)と塩化パラジウム(0.4g)をベンゾニトリ (35mL)に溶解した。得られた溶液を、窒素置 後、窒素雰囲気下、220℃で96時間加熱還流 、得られた反応混合物を、冷却後、減圧濃 した。得られた粗生成物を、アルミナカラ に充填し、クロロホルムを用いて溶離する とにより分収した。さらにシリカゲルクロ トグラフィーにより分収し、得られた生成 を減圧濃縮した後、さらにジクロロメタン メタノールの混合溶媒から再結晶すること より、〔5,10,15,20-テトラキス(ペンタフルオ フェニル)ポルフィリナト〕パラジウム(II)(Pd TFPPと略記)を得た(収量0.76g、収率70%)。

 (2)PdTFPCの製造(ポルフィリン環からクロリン 環への変換)
 (1)で製造したPdTFPP(0.4g)、N-メチルグリシン(0 .2g)及びパラホルムアルデヒド(0.17g)を、トル ン(50mL)に溶解し、実施例1(2)の変換工程に準 じてポルフィリン環のA環を環化付加するこ によりクロリン骨格に変換した後、シリカ ルクロマトグラフィーにより分収し、減圧 縮後、さらにゲル浸透クロマトグラフ装置 より目的成分を分収し、クロロホルムとヘ サンの混合溶媒から再結晶して、{5,10,15,20- トラキス(ペンタフルオロフェニル)-2,3-〔メ ノ(N-メチル)イミノメタノ〕クロリナト}パ ジウム(PdTFPCと略記)を得た(収量0.075g、収率17 %)。

 (3)PdTFPC-SAcGlcの製造(S-グルコシル化)
 (2)で得られたPdTFPC(0.11g)、AcGlcSAc(0.19g)及びジ エチルアミン(3mL)をジメチルホルムアミド(30m L)に溶解し、実施例1(3)に準じて、S-グリコシ 化を行なった。得られた粗生成物をゲル浸 クロマトグラフ分収装置により目的成分を 収し、溶媒を減圧留去することにより、{5,1 0,15,20-テトラキス〔4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチ -β-D-グルコピラノシルチオ)-2,3,5,6-テトラフ オロフェニル〕-2,3-〔メタノ(N-メチル)イミ メタノ〕クロリナト}パラジウム(II)(PdTFPC-SAc Glcと略記)を得た(収量0.15g、収率66%)。

 (4)PdTFPC-SGlcの製造(アセチル保護基の除去)
 (3)で得られたPdTFPC-SAcGlc(0.15g)をジクロロメ ン(20mL)とメタノール(20mL)の混合溶媒に溶解 、実施例1(4)に準じて、グルコースの水酸基 保護基であるアセチル基を除去し、逆相液 クロマトグラフ装置で、目的成分を分収し 溶媒を減圧留去後、その残渣を分子量カッ オフが1000の透析膜を用いて脱塩し、溶媒留 去後、{5,10,15,20-テトラキス〔4-(β-D-グルコピ ノシルチオ)-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル 〕-2,3-〔メタノ(N-メチル)イミノメタノ〕クロ リナト}パラジウム(II)(PdTFPC-SGlcと略記)を得た (収量0.065g、収率59%)。得られた化合物は、 19 F-NMRスペクトルから、全てのフェニル基のp位 がS-グリコシル化されていることが確認でき 。

 実施例3;H 2 TFPC-SGal
 実施例1の(3)S-グルコシル化工程において、A cGlcSAcに代えて、2,3,4,6-テトラ-o-アセチル-β-D- ガラクトピラノシルアセチルチオアセチル(Ac GalSAcと略記)を用いた以外は、実施例1と同様 して、糖がガラクトースである5,10,15,20-テ ラキス〔4-(β-D-ガラクトピラノシルチオ)-2,3, 5,6-テトラフルオロフェニル〕-2,3-〔メタノ(N- メチル)イミノメタノ〕クロリン(H 2 TFPC-SGalと略記)を得た(収量86mg、収率84%)。

〔ポルフィリン誘導体の製造〕
 比較例1;H 2 TFPP-SGlc
 実施例1(1)で合成したH 2 TFPP(55mg)、AcGlcSAc(207mg)及びジエチルアミン(0.8m L)をジメチルホルムアミド(10mL)に溶解し、室 下24時間攪拌し、実施例1(3)に準じてS-グリ シル化を行ない、ゲル浸透クロマトグラフ 収装置により分収し、溶媒を減圧留去する とにより5,10,15,20-テトラキス(4-(2,3,4,6-テトラ -O-アセチル-β-D-グルコピラノシルチオ)-2,3,5,6 -テトラフルオロフェニル)ポルフィリン(H 2 TFPP-SAcGlcと略記)を得た(収量100mg、収率76%)。

 得られたH 2 TFPP-SAcGlc(152mg)をジクロロメタン(20mL)とメタノ ール(20mL)の混合溶媒に溶解し、実施例1(4)に じて、アセチル基の除去反応後、逆相液体 ロマトグラフ装置で、目的成分を分収した 分収した溶液から溶媒を減圧留去して、5,10, 15,20-テトラキス〔4-(β-D-グルコピラノシルチ )-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル〕ポルフィ リン(H 2 TFPP-SGlcと略記)を得た(収量56mg、収率37%)。

 比較例2:PdTFPP-SGlc
 実施例2(1)で合成したPdTFPP(77mg)、AcGlcSAc(224mg) 及びジエチルアミン(1.2mL)をジメチルホルム ミド(10mL)に溶解し、実施例1(3)に準じてS-グ コシル化を行ない、ゲル浸透クロマトグラ 分収装置により分収し、溶媒を減圧留去す ことにより、{5,10,15,20-テトラキス〔4-(2,3,4,6- テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルチオ )-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル〕ポルフィ ナト}パラジウム(II)(PdTFPP-SAcGlcと略記)を得た (収量157mg、収率89%)。

 得られたPdTFPP-SAcGlc(184mg)をジクロロメタ (20mL)とメタノール(20mL)の混合溶媒に溶解し 実施例1(4)に準じて、アセチル基を除去反応 、逆相液体クロマトグラフ装置で、目的成 を分収した。分収した溶液から溶媒を減圧 去して、{5,10,15,20-テトラキス〔4-(β-D-グル ピラノシルチオ)-2,3,5,6-テトラフルオロフェ ル〕ポルフィリナト}パラジウム(II)(PdTFPP-SGl cと略記)を得た(収量46mg、収率25%)。

〔O-グリコシル化クロリン誘導体〕
 比較例3:m-TGlcPC
 WO2002-20536に記載の方法に準じて、まず5,10,15 ,20-テトラキス〔3-(2’,3’,4’,6’-テトラ-O-ア セチル-β-D-グルコピラノシルオキシ)フェニ 〕ポルフィリン(以下、TGlcPPと略記)を合成し 、次いで、ポルフィリン環のA環を還元して 下記式で表される5,10,15,20-テトラキス〔3-(β- D-グルコピラノシルオキシ)フェニル〕クロリ ン(m-TGlcPCと略記)を得た。

 参考例1:PtTFPC
 実施例2(1)において、塩化パラジウムに代え て塩化白金酸ナトリウムを使用してPtTFPPを製 造し、さらに実施例の方法と同様にしてポル フィリン環からクロリン環へ変換することに より、PtTFPCを得た。

 参考例2:
 市販品の5,10,15,20-テトラキス(4-スルホフェ ル)ポルフィリン(TPPSと略記)を用いた。

〔光毒性の評価方法〕
 HeLa細胞を96穴プレートに5×10 3 cells/well(培地容積100μL)だけ播き、5%CO 2 存在下、37℃で24時間培養した。これに2%ジメ チルスルホキシドを含む薬剤溶液を100μL加え 、所定濃度にした。これをさらに5%CO 2 、37℃で24時間培養した。その後、培地を排 し、リン酸緩衝溶液100μLで2回洗浄した。各 ェルに10%ウシ胎児血清(FCS)を含むダルベッ 改変イーグル培地(DMEM)を100μL加えた。500nmの カットフィルターとウォータージャケットを つけた100Wのハロゲンランプを用いて、所定 量(16J/cm 2 )の光を照射した。その後、さらに5%CO 2 、37℃で24時間培養した。これにWST-8アッセイ により、薬剤を添加していない場合に対する 相対値としての細胞生存率を算出した。各薬 剤について6サンプル試験して得られた結果 平均値を求めた。
 尚、所定光量は、パワーメータを用いて、 射時間を調節することにより調整した。
 WSTアッセイは、細胞の脱水素酵素の活性を 定する方法の1つで、生細胞の量に依存して テトラゾリウム塩(WST-8)が分解される。この 解量を吸光光度法で測定することにより生 胞の相対量を調べた。

〔光毒性比較〕
(1)薬剤濃度0.5μM
 上記実施例及び比較例で製造、及び製造中 体として得られたクロリン誘導体又はポル ィリン誘導体、及び参考例について、上記 価方法に基づいて、薬剤濃度0.5μMのときの 毒性を測定した。結果を図3に示す。図3中 化合物No.に対応する化合物は、表1に示す通 である。

 図3において、化合物No.1と6,No.2と7、No.3と 8、No.4と9を比較すると、いずれも糖が連結し ている方が光毒性効果が高いことがわかる。 また、No.6と10、No.7と11、No.8と12、No.9と13との 比較から、糖の水酸基がアセチル基で保護さ れていると、光毒性が消失することがわかる 。さらに、No.3,4,5の比較から、クロリン誘導 において、金属を導入することにより、光 性が高くなることがわかった。

 一方、S-グルコシド化クロリン誘導体(No.8 ,9)、S-グルコシド化ポルフィリン誘導体(No.6,7 )、O-グルコシドクロリン誘導体(No.15)、S-ガラ クシドクロリン誘導体(No.16)は、いずれも市 品のTPPS(No.14)と比べて、高い光毒性を示した 。

(2)薬剤濃度0.09μM
 表1に示す化合物No.6~9、14~16について、上記 価方法に基づいて、薬剤濃度0.09μMのときの 光毒性を測定した。結果を図4及び図5に示す

 薬剤濃度0.5μMのときには、S-グルコシド クロリン誘導体(No.8,9)とS-グルコシド化ポル ィリン誘導体(No.6,7)、O-グルコシド化クロリ ン誘導体(No.15)との比較において光毒性の差 は認められなかったが、薬剤濃度0.09μMでは 図4に示すように、糖連結クロリン誘導体と 糖連結ポルフィリン誘導体との間で顕著な差 違が認められた。つまり、No.6,7,14とNo.8,9との 比較からわかるように、薬剤濃度0.09μMの濃 では、ポルフィリン誘導体における糖連結 よる光毒性の向上効果が認められなかった 、クロリン誘導体では、薬剤濃度0.09μMの濃 において、糖連結による顕著な光毒性向上 果が認められた。

 また、No.8、9と15の比較から、糖連結クロ リン誘導体として0.5μMのときには光毒性に差 違は認められなかったが、0.09μMでは、S-グリ コシル化クロリン誘導体とO-グリコシル化ク リン誘導体との間で光毒性に差違が認めら 、Sグリコシル化クロリン誘導体(No.8,9)の方 光毒性が高かった。

 さらに、図5から、薬剤濃度0.09μMのとき は、S-グリコシド化クロリン誘導体において 、連結する糖がグルコースの場合(No.8)の方が 、ガラクトースの場合(No.16)よりも光毒性が く、同程度の光毒性効果を得るために必要 量が、グルコース連結クロリン誘導体では なくて済むことがわかる。

〔暗所における細胞毒性比較〕
 上記実施例1,2の化合物(No.8、9)を、光照射し ない(光量0J/cm 2 )ときの細胞生存率を光毒性評価方法に準じ 調べた。結果を図6に示す。
 図6からわかるように、いずれの化合物も、 暗所下では、細胞毒性がないことがわかる。

〔連結基介在クロリン誘導体の製造〕
 実施例4;H 2 TFPC-SCH 2 CH 2 OAcGlc
 実施例1の(3)S-グルコシル化工程において、2 ,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシ チオアセチル(AcGlcSAc)に代えて、2-(S-アセチ )メルカプトエチル 2,3,4,6-テトラ-O-アセチル -β-D-グルコピラノシド(AcGlcOCH 2 CH 2 SAc)を用いた以外は、実施例1と同様にして、 記構造を有するS-グリコシド化クロリン誘 体を得た。

 得られたH 2 TFPC-SCH 2 CH 2 OAcGlcをESI-MSによりスペクトル測定した(イオ 化モードESI、スペクトル記録間隔1.0sec、オ フィス電圧掃引200V)。得られたスペクトルを 図7に示す。目的化合物の平均質量である2585 該当するピーク(2584.50012)が認められた。ま 、図7に示すマススペクトルと、H 2 TFPC-SCH 2 CH 2 OAcGlcをシミュレーションして得られるマスス ペクトル(図8参照)とは、主たるピーク(2583.5 2588.5、2589.5)がほぼ一致していた。従って、H 2 TFPC-SCH 2 CH 2 OAcGlcが合成されていることが確認できる。実 施例1と同様にしてアセチル保護基を除去す ば、目的とするクロリン誘導体を合成でき 。

〔他のクロリン誘導体の製造〕
 実施例5:H 2 TFPC’-SAcGlc
 上記で合成したH 2 TFPP1gをトルエン20mlに溶かし、60℃で加熱しな がら、臭化ベンジル9.76mL、水素化トリブチル 錫24mL、アゾイソブチロニトリル1.7gを17日か て加えた。ヘキサンを分離液として用いた リカゲルカラムクロマトグラフィを用いて 生成物から目的成分を分画し、さらにゲル 透クロマトグラフ分収装置により目的成分 集めた。さらにクロロホルムとアセトニト ルから再結晶して、下記構造を有する、10,15 ,20-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)-2-ベ ンジルクロリン(H 2 TFPC’と略記)35mgを得た。

 H 2 TFPC’を用いて実施例1と同様にして、S-グル シル化を行ない、下記構造を有するS-グリコ シド化クロリン誘導体(HTFPC’-SAcGlc)を得た。

 得られたHTFPC’-SAcGlcをESI-MSによりスペク ル測定した(イオン化モードESI、スペクトル 記録感覚1.0sec、オリフィス電圧掃引150V)。得 れたスペクトルを図9に示す。目的化合物の 理論平均質量である2444.13に該当するピーク(2 443.43072)が認められた。また、図9に示すマス ペクトルと、HTFPC’-SAcGlcをシミュレーショ して得られるマススペクトル(図10参照)とは 、主たるピーク(2442.5、2444.5、2445.5、2446.5)が ぼ一致していたことから、HTFPC’-SAcGlcが合 されていることが確認できる。実施例1と同 様にしてアセチル保護基を除去すれば、目的 とするクロリン誘導体を合成できる。

 実施例6:糖が5分子連結したS-グルコシル化 ロリン誘導体(H 2 TFPC-SGlc 5 )
 実施例1において、H 2 TFPC-SAcGlcを合成した際に得られた副生成物を リカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒は酢酸 エチル:ヘキサン=3:2、H 2 TFPC-SAcGlc(Rf値=0.18)、H 2 TFPC-SAcGlc 5 (Rf値=0.11))で分離、精製した。目的のフラク ョンについて、ESI-MSの測定を行なったとこ 、H 2 TFPC-SAcGlcに由来するピークは確認されず、目 化合物(H 2 TFPC-SAcGlc 5 )の平均質量である2752.51及び2774.49に該当する ピーク(2751.53及び2773.8747)のみが認められ、1 子内にグルコース5分子が連結したS-グルコ ル化クロリン誘導体が得られていることが 認できた。

 得られたH 2 TFPC-SAcGlc 5 (479mg)をジクロロメタン(30ml)とメタノール(30ml )の混合溶媒に溶解した後、ナトリウムメト シド(188mg)を添加して、窒素雰囲気下、25℃ 24時間攪拌した。得られた反応混合物を冷却 し、次いで酢酸で中和して、減圧濃縮した。 得られた沈殿をろ別し、水洗後、真空乾燥し てH 2 TFPC-SGlc 5 を得た(収量326mg)。ESI-MS測定を行なったとこ 、H 2 TFPC-SGlc 5 の平均質量である1912.30及び1934.28に該当する ーク(1911.58及び1933.55)が認められ、H 2 TFPC-SGlc 5 であることが確認できた。

〔S-グリコシル化クロリンの他の金属錯体の 造〕
 実施例7:
 実施例1で製造したH 2 TFPC-SGlcのメタノール溶液に塩化亜鉛を添加し 、30℃で24時間反応させた。反応後、ESI-MSに りスペクトル測定したところ、H 2 TFPC-SGlcのNa溶液で主として認められる1758m/zの ピークが低くなり、1820.4のピークが現われた 。このピークは、H 2 TFPC-SGlcの亜鉛錯体の理論平均質量のピークと ほぼ一致していた。

 実施例8:
 実施例1で製造したH 2 TFPC-SGlcと塩化マンガンとを、メタノール(10ml) と水(10ml)の混合溶媒中で、80℃で24時間反応 せた。反応後、ESI-MSによりスペクトル測定 たところ、1788.29のピークが現われた。この ークは、H 2 TFPC-SGlcのマンガン錯体の理論平均質量のピー クとほぼ一致していた。

 本発明の新規な糖連結クロリン誘導体及 その金属錯体は、水溶性で組織透過性がよ 、光照射により強い光毒性を示すので、PDT 療用薬剤の有効成分として有用である。さ に、本発明の新規な糖連結クロリン誘導体 、従来よりも長波長領域に強い吸収ピーク 有するので、従来のPDT治療用薬剤よりも適 範囲の拡大が可能となる。