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Patent Searching and Data


Title:
NUTRITIONAL COMPOSITION FOR PREVENTION OF HYPERGLYCEMIA
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/096579
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a nutritional composition for preventing hyperglycemia, which comprises a nitrogen source, a lipid and a sugar component, wherein the nitrogen source comprises free isoleucine and/or free leucine, the lipid comprises a middle-chain fatty acid triglyceride, and the sugar component comprises palatinose and/or trehalose. The nutritional composition has an excellent nutritional balance even when the nutritional composition is ingested for a long period, can prevent the development of hyperglycemia after the nutritional composition is administered, and enables the reduction in the amount of insulin to be administered.

Inventors:
FUJIMAKI MIO (JP)
TANISAKA SATOKO (JP)
HAYASHI NAOKI (JP)
KON ITARU (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/051688
Publication Date:
August 06, 2009
Filing Date:
February 02, 2009
Export Citation:
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Assignee:
AJINOMOTO KK (JP)
FUJIMAKI MIO (JP)
TANISAKA SATOKO (JP)
HAYASHI NAOKI (JP)
KON ITARU (JP)
International Classes:
A61K31/7016; A23L33/00; A61K9/06; A61K9/08; A61K9/14; A61K9/16; A61K9/20; A61K31/198; A61K31/22; A61P3/02; A61P3/10; A61P17/02; A61P39/06; A61P43/00
Domestic Patent References:
WO2004022049A12004-03-18
WO2003022288A12003-03-20
Foreign References:
JP2005350371A2005-12-22
JPH0867630A1996-03-12
JP2006117557A2006-05-11
JPH08140628A1996-06-04
JPH11158075A1999-06-15
Attorney, Agent or Firm:
KUMAKURA, Yoshio et al. (Shin-Tokyo Bldg.3-1, Marunouchi 3-chom, Chiyoda-ku Tokyo, JP)
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Claims:
 窒素源、脂質及び糖質を含有する栄養組成物であって、窒素源に遊離イソロイシン及び/又は遊離ロイシンを含有し、脂質に中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有し、糖質にパラチノース及び/又はトレハロースを含有することを特徴とする高血糖抑制用栄養組成物。
 遊離イソロイシン及び/又は遊離ロイシンを栄養組成物100kcalあたり0.05~2.0g含有する請求項1記載の栄養組成物。
 中鎖脂肪酸トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数が6~12である請求項1又は2記載の栄養組成物。
 中鎖脂肪酸トリグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数が8及び/又は10である請求項3記載の栄養組成物。
 中鎖脂肪酸トリグリセリドの含量が、総脂肪中の5~75重量%である請求項1~4のいずれかに1項記載の栄養組成物。
 糖質中のパラチノース及び/又はトレハロースの含有量が50質量%以下である請求項1~5のいずれか1項記載の栄養組成物。
 遊離イソロイシン及び/又は遊離ロイシン対パラチノース及び/又はトレハロースの質量比が1/75~4/1である請求項1~6のいずれか1項記載の栄養組成物。
 インスリン分泌刺激物質と併用してなる請求項1~7のいずれか1項記載の栄養組成物。
 栄養組成物の形態が、粉末、顆粒状、板状、スティック状、ゲル状又は液状である請求項1~8のいずれか1項記載の栄養組成物。
 栄養組成物が、経腸用の流動食の形態にある請求項1~8のいずれか1項記載の栄養組成物。
 栄養組成物が、容器に収容されてなる請求項1~8のいずれか1項記載の容器入り栄養組成物。
 300~600mlの栄養組成物が容器に収容されている請求項11に記載の栄養組成物。
 光、空気、加熱に由来する内容物の酸化や分解を抑制するための工程制御がなされた製造工程を通して栄養組成物が製造され、保存時に酸素若しくは酸素及び光に由来する劣化が抑制される包装材料で構成された容器に収容されてなる請求項1~12のいずれか1項に記載の栄養組成物。
 栄養組成物のカロリー濃度が1.5kcal/ml以上である請求項1~13のいずれか1項記載の栄養組成物。
 栄養組成物の粘度が500mPa・s以上である請求項1~14のいずれか1項記載の栄養組成物。
 褥瘡、創傷の予防及び治癒の促進に用いるための請求項1~15のいずれか1項記載の栄養組成物。
 手術前後の栄養管理に用いるための請求項1~16のいずれか1項記載の栄養組成物。
 高血糖に伴う酸化ストレスの軽減あるいは防止に用いるための請求項1~17のいずれか1項記載の栄養組成物。
 100kcal当りカリウムを35~155mg、リンを20~100mg含有する、高血糖を伴う腎臓病患者用の請求項1~18のいずれか1項記載の栄養組成物。
Description:
高血糖抑制用栄養組成物

 本発明は、高血糖抑制作用を有し、栄養 ランスに優れた栄養組成物に関するもので る。

 必須アミノ酸はヒトの生命維持の他、日々 生活を快適に営むために必須の栄養要素で るが、各種疾病などに対して治療効果を有 るため、医薬品、栄養剤又はサプリメント どの有効成分として使用されている。
 例えば、ロイシン、イソロイシン及びバリ の少なくとも1種を含有する耐糖能異常用薬 剤及び飲食品が提案されている(特許文献1及 2)。これらの公報において実際に実施例で いられているのは、ロイシン単独、又はロ シン、イソロイシン及びバリンの混合物で り、これらをラットに1.5g/kgの量で経口投与 て、血糖値の推移を調べている。そして、 の耐糖能異常用薬剤は、従来の糖尿病薬を うことが難しいとされる、肝臓障害を有す 耐糖能異常の治療、改善及び/又は予防に特 に有効であるとしている。
 パラチノース及びトレハロースは糖質の一 であり、血糖値コントロール用栄養組成物 必須成分として用いることが提案されてい (特許文献3)。この発明では、糖質のエネル ー比率中のパラチノース及び/又はトレハロ ースは60~100%であると規定されており、また 途、本発明者にてパラチノースの血糖値コ トロール効果について調べたところ、糖質 68.5質量%以上を占める量でパラチノースを用 いないと、パラチノースの血糖値上昇抑制効 果が十分発揮されないことを確認した(図1参 )。

 一方、イソロイシン、ロイシン及びバリン ら選ばれる1種又は2種以上である分岐鎖ア ノ酸及びパラチノースを含有する肝障害者 栄養組成物が提案されている(特許文献4)。 の発明の実施例では、糖質の75質量%の量で ラチノースが使用された場合、より緩やか 糖質が燃焼され、好ましい特性を有するも とされている。
 いずれにしても上記種々の栄養組成物は、 糖値上昇抑制効果などを奏するものである 、長期間摂取するには、特に糖質の消化吸 が劣り、栄養バランスに大きな問題がある 高血糖を有する患者に対しては一般に栄養 限が指導され、三大栄養素のうちでも特に ネルギー基質として利用効率が高い糖質が 高血糖是正のため制限される。そのような 況に、腸管からの吸収が極めて緩徐な上述 パラチノースやトレハロースを大量に用い と、体内たんぱく質合成や生体維持に必要 エネルギーを十分供給できないことになり この状態が長期間持続すれば、低栄養状態 陥ることが言われている。よってこの栄養 導にあたっては、慎重な対応が推奨され、 に高齢者においては食事療法を行う場合に 、栄養不良に陥らないように、適切にエネ ギーに配慮された栄養組成物の提供がなさ ることが推奨されている(非特許文献1)。し がって、栄養療法に関して、血糖値を下げ ことはもちろんのこと、栄養バランスに優 、効率良くエネルギー供給が可能な栄養組 物が切望されている。
 一方、糖尿病の増加に伴い、糖尿病の合併 である糖尿病性腎症の患者数も増加してい 。近年、透析導入症例に占める糖尿病性腎 の割合は4割を超え、透析人口において最も 多い腎不全原疾患とも報告されており(非特 文献2)、高血糖を伴う腎臓病患者用の栄養組 成物も望まれている。

特開2003-171271号公報

特開2006-28194号公報

WO2003/022288号公報

特開2005-350371号公報 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドラ イン日本糖尿病学会編、pp21-25、2004、南江堂 日本透析医学会統計調査委員会、透析学 会誌、41(1)、1、2008

 本発明は、長期間摂取した場合でも栄養バ ンスに優れ、かつ投与後の高血糖を抑制で 、インスリン投与量を軽減できる栄養組成 を提供することを目的とする。
 本発明は、又、糖質中のパラチノース及び/ 又はトレハロースの含有量を低減でき、ひい てはパラチノース及び/又はトレハロースの 対含有量を低減できる栄養組成物を提供す ことを目的とする。
 本発明は、又、高血糖を伴う腎臓病患者用 栄養組成物を提供することを目的とする。

 本発明は、遊離のイソロイシン及び/又は遊 離のロイシン、パラチノース及び/又はトレ ロース及び中鎖脂肪酸トリグリセリドを併 すると、優れた高血糖抑制効果が得られ、 つ栄養バランスに優れた栄養組成物が得ら ること、及び糖質中のパラチノース及び/又 トレハロースの含有量を低減でき、ひいて パラチノース及び/又はトレハロースの絶対 含有量を低減でき、これにより上記課題を解 決できるとの知見に基づいてなされたもので ある。
 すなわち、本発明は、窒素源、脂質及び糖 を含有する栄養組成物であって、窒素源と て遊離のイソロイシン及び/又は遊離ロイシ ンを含有し、脂質が中鎖脂肪酸トリグリセリ ドを含有し、糖質がパラチノース及び/又は レハロースを含有することを特徴とする高 糖抑制用栄養組成物を提供する。

 本発明で用いる遊離イソロイシン及び遊離 イシンは、L-体、D-体及びDL-体のいずれをも 使用することができるが、L-体を用いるのが ましい。本発明では、特に遊離イソロイシ を用いるのが好ましい。これら遊離イソロ シンあるいは遊離ロイシンは栄養組成物100 kcalあたり0.1~2.0gを含有することが好ましく さらには栄養組成物100 kcalあたり0.3~1.5gが好 ましい。
 本発明では、窒素源として、これ以外の遊 アミノ酸、例えば、グルタミン酸及びその 、バリン、アルギニン及びその塩、グルタ ン、トリプトファン、ヒスチジン及びその 、グリシン、アラニンなどを併用すること できるが、全窒素源中のイソロイシン及び/ 又はロイシンの量を2質量%~100質量%とするの 好ましく、特に、6質量%~80質量%とするのが ましく、さらに6質量%~40質量%とするのが好 しい。
 本発明では、上記窒素源に加えて、脱脂粉 や全粉乳、カゼインやホエー及びその分解 等の乳たんぱく質源、コラーゲン及びその 解物、分離大豆たんぱく質や小麦たんぱく 及びその分解物などの植物性たんぱく質や の加水分解物(ペプチド)を用いてもよい。
 尚、窒素源の割合は、栄養組成物の固形分1 00質量部当り12~27質量部とするのがよい。

 本発明では、脂質の全部又は一部として中 脂肪酸トリグリセリドを用いる。ここで、 鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、脂肪酸 リグリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素 が6~12であるのが好ましく、特に脂肪酸トリ グリセリドを構成する脂肪酸残基の炭素数が 8及び/又は10であるのが好ましい。本発明で いる中鎖脂肪酸トリグリセリドは、例えば 市場から市販品として容易に入手すること できる。
 中鎖脂肪酸トリグリセリドはエネルギー効 に優れ、炭素数が16以上の脂肪酸(長鎖脂肪 トリグリセリド)からなる紅花油や大豆油な どの通常の食用油脂に比較して、吸収速度は 速く、糖質に近いといわれている。さらに体 内の組織中では、カルニチンという媒体がな くともミトコンドリア内で素早く燃焼し、生 体に蓄積せず、生体エネルギーの産生量は非 常に高い。したがって、血糖値を上げない好 適な脂肪であるが、この中鎖脂肪酸トリグリ セリドは、エネルギー産生以外の、生体機能 維持に必要である必須脂肪酸とはならず、こ れのみでは生体機能を維持できない。したが って、発明品の特定配合比が重要である。他 方、上述の通常の食用油脂である長鎖脂肪酸 トリグリセリドも脂肪であるために、カロリ ーは高く、血糖値を上昇させないが、大量に 長期間摂取した場合には、高脂血症の発症、 動脈硬化の起因、インスリン抵抗性の増大が あり、かえって耐糖能異常を促進する。
 本発明では、総脂質中の10~75質量%が中鎖脂 酸トリグリセリドであるのが好ましく、特 、15質量%~60質量%とするのが好ましい。その 他は、食用油脂を用いる。食用油脂としては 、パーム油、やし油、綿実油、ひまわり油、 落花生油、シソ油、あまに油、なたね油、大 豆油、サフラワー油、オリーブ油、こめ油、 コーン油、ごま油、カカオバター等の植物性 油脂や、牛脂、豚脂、魚油、バター、バター オイル等の動物性油脂の他、ショートニング に代表される加工油脂等が挙げられ、用途に 応じて数種類を選択し組み合わされて使用さ れる。これらの油脂は、特に水分を多く含む 形態においては、脂肪酸モノグリセリドや有 機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸 エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン 等の乳化剤を用い、乳化処理され、適宜エマ ルジョンとして分散状態にあることが好まし い。また特に必須脂肪酸であるω6系脂肪酸/ω 3系脂肪酸比が0.5~4.5となるよう、食用油脂や 化剤の選択及び使用量が決定されるのが好 しい。
脂質の割合は、栄養組成物の固形分100質量部 当り9~27質量部とするのがよい。

 本発明では、糖質の一部として、パラチノ ス及び/又はトレハロース、好ましくはパラ チノースを用いる。糖質中のパラチノース及 び/又はトレハロースの含有量が50質量%以下 あるのが好ましく、特に5~40質量%とするのが 好ましい。又、パラチノース及び/又はトレ ロースの絶対含有量は、栄養バランスから って栄養組成物100kcalあたり0.5から7.5gである ことが好ましい。その他の糖質源としては、 この記載によって特定されないが、例として は市販の消化吸収に優れたエネルギー源とし て利用されうるでんぷんやその分解物(デキ トリン)、ショ糖、果糖などが挙げられる。
 本発明では、又、糖質の割合を栄養組成物 固形分100質量部当り22~68質量部とするのが い。
 本発明では、イソロイシン及び/又はロイシ ン対パラチノース及び/又はトレハロースの 量比が1/75~4/1であるのが好ましく、より好ま しくは1/50~2/1である。

 本発明では、カロリー源として、たんぱ 質やペプチド、アミノ酸等の窒素源、糖質 脂質以外にも、エネルギーとして生体内に 利用されうる各種食品素材を使用すること できる。例としては、アルコール、一部の 物繊維、オリゴ糖、有機酸及びその塩等が げられる。これらはカロリー源としての配 以外にも、その他栄養素の補給、乳化や色 、レオロジー等に関する製剤的安定性、風 向上、微生物対策、pH調整、生体内での3次 能を目的とする等、様々な必要性に応じて 択され、使用される。

 このように、特定量の遊離イソロイシン び/又は遊離ロイシンを含有し、特定量のパ ラチノース及び/又はトレハロースを併用す ことにより、パラチノース及び/又はトレハ ース単独摂取に比較して非常に強い血糖値 上昇の抑制作用がみられ、さらに特定量の 鎖脂肪酸トリグリセリドを併用することに り格段の抑制効果が発揮される。この栄養 成物の特徴は、これまでのただ単に血糖を 下させることのみに注目した先行技術に比 して、血糖値を上げないで効率のよいエネ ギー供給を果たすことである。

 本発明の栄養組成物は、さらに、食物繊維 ビタミンやミネラルなどを含有することが きる。食物繊維としては、難消化性デキス リン、ペクチン、ガラクトマンナンなどの 溶性食物繊維、大豆や小麦に由来するフス や結晶セルロースなどの非水溶性食物繊維 あげられる。ビタミンとしては、ビタミンA 、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタ ミンB12、ビタミンC、ビタミンK、ビタミンD3 ニコチン酸アミド、葉酸、β-カロテン、パ トテン酸、ビタミンE、ビオチンなどがあげ れ、ミネラルとしては、カルシウム、リン 銅、亜鉛、マンガン、クロム、モリブデン セレン、鉄、ナトリウム、カリウム、マグ シウム、ヨウ素などがあげられる。これら 、有機酸塩や無機酸塩、化学合成品等に代 される食品添加物としての他、各種食品か の抽出エキスや酵母など、食品素材から由 して配合されてもよい。さらに、脂質など 均一に分散するために、乳化剤などの界面 性剤を含有してもよい。本発明の栄養組成 には、さらに各種天然や合成甘味料、着色 、香料及び、カルニチンやαーリポ酸など いわゆる機能性栄養素を配合することがで る。
 近年、糖尿病など糖質代謝異常により高血 状態が継続すると、生体内では過剰な活性 素による反応が誘導されることが問題とな ている。酸化反応の過剰な状態は動脈硬化 など、糖尿病合併症を増悪させるといわれ いる。本発明に対して、特にビタミンA(β- ロテンやレチノール)、ビタミンE(トコフェ ール)、ビタミンCあるいは亜鉛やセレンなど 、抗酸化能を有するビタミンや微量元素を本 発明中に配合することは、誠に好ましい。ま た、その他の抗酸化活性を有するCoQ10や、カ キン、アントシアニン、イソフラボンに代 されるポリフェノールなど、機能性栄養素 も併用すると、さらに好ましい。

 本発明は、カリウム、リン含有量を調整 ることで、高血糖を伴う腎臓病患者に対し も、高血糖のリスクを下げ、適切な栄養管 が可能な栄養組成物を提供できる。このよ な高血糖を伴う腎臓病患者用の栄養組成物 おける100kcalあたりのカリウム含量は35~155mg 好ましく、さらに50~130mgが最も好ましい。 た、100kcalあたりのリン含量は20~100mgが好ま く、さらに好ましくは35~80mgである。

 今日、糖尿病は増え続け、高齢化が重なっ 高齢者における糖尿病患者数は非常に多く っている。高齢の糖尿病患者では寝たきり 栄養管理や栄養補給で管を用いて胃に栄養 成物を入れることもある。一般に高齢者の の容積は小さく、したがって、これら高齢 の場合には、高濃度の高栄養組成物が好適 ある。しかし、糖質が入った総合栄養であ て高濃度な栄養物を投与すると、高血糖の スクが上がることは明らかである。
 本発明の栄養組成物のカロリー濃度は、患 の状態に応じて最適なものが選ばれ、0.5kcal /mlから始まり1.5kcal/ml以上でもよい。特に胃 容積が小さな高齢者および高血糖を伴う腎 病患者では、投与、摂取可能な栄養組成物 水分量に制限があり、1.5kcal/ml以上が好まし 。上限は特に限定されないが、3.0kcal/ml程度 であるのが好ましい。本発明品においては、 カロリー濃度が高く、高栄養価であっても高 血糖を起因しない。

 本発明には、インスリン刺激物質、イン リン様物質が組み合わせられることによっ 、さらに有効性が増強される。一例に遊離 ルギニンが挙げられる。アルギニンは膵β 胞に作用しインスリンの分泌を促すといわ ており、このような物質と遊離のイソロイ ン及び/又は遊離のロイシン、パラチノース び/又はトレハロース及び中鎖脂肪酸トリグ リセリドの併用による好適な相乗効果はこれ まで、認められていなかった。併用するこれ ら物質については、上述のアルギニンを例に とれば0.01g~20g/100kcalを併用することが好まし 、0.1g~10g/100kcalであるのがより好ましい。遊 離アルギニンの配合においては、経口及び経 管投与時に消化作用を必要としない形態、例 えば遊離アルギニン、アルギニン塩酸塩、ア ルギニン硝酸塩、アルギニン硫酸塩、アルギ ニン有機酸塩、アルギニングルタミン酸塩等 、遊離アルギニン及びその塩の形態の原料を 使用する。

 本発明の栄養組成物としては、粉末、顆粒 、板状、スティック状、ゲル状又は液状な の各種の形態をとることができるが、液状 あるのが好ましく、特に経腸用の流動食の 態にあるのが好ましい。
 本発明の栄養組成物は、経口摂取が不十分 患者に対しては、液状物を投与チューブを いて直接腸や胃に給与することができる。 に胃に直接投与する場合には、胃食道に栄 組成物が逆流し肺炎など重篤な症状の原因 なる場合がある。その際は、本発明の栄養 成物に増粘剤などを加えて組成物の粘度を 由に調整できる。この場合好ましくは、500m Pa・s以上で7,000mPa・s(23℃)以下がよい。さら 、高齢者の誤嚥のリスクを軽減するために いかようにも粘度を増すこともできる。ま 場合によっては栄養組成物を高粘度に調製 ておき、機械的操作や希釈等により粘度を 減し使用することも可能である。
 本発明では、又、増粘剤などを加えること く、原材料の選択、製造工程の改変、製剤 度の調整等により、5~20,000mPa・s(23℃)の粘度 のものとして使用することができる。

 一方、栄養物を投与した後の血糖値の異常 上昇は、単に糖尿病などの疾患のほかに、 科的手術を実施した場合にも多く起こりう 。外科的な手術侵襲の大きい手術直後の時 は、ホルモン環境の変化が大きく、高血糖 きたし術後栄養管理の問題点となっている さらに、術前の高血糖を管理しないままで 、手術の実施もできない。本発明の栄養組 物は、これらの場合の栄養管理においても 糖を低下させ、栄養の回復効果も有する好 な組成物である。
 また、耐糖能異常である者は、血管の障害 とくに微小血管での血流低下が起こり、末 組織へ酸素供給が低下することが知られて る。このことから手術後においては縫合不 を起こしやすく、また長期の寝たきりの患 においては、褥瘡の発生がみられる。した って、本発明では血糖を管理しながら、栄 状態を適切に保つことが可能となり、褥瘡 創傷の予防や治癒促進に有用である。
 本発明では、1回の服用で遊離イソロイシン 及び/又は遊離ロイシンを少なくとも0.3g摂取 きるように容器に収容されているのが好ま い。つまり、容器に収容されている食品の てを摂取すると、人の胃の中に、遊離イソ イシン及び/又は遊離ロイシンが少なくとも 0.3gもたらされるのが好ましい。
 本発明の栄養組成物を経腸用の流動食の形 とする場合、容量が50~1000mlの容器に収容す のが好ましい。また本栄養組成物は従来知 れている高血糖抑制用栄養組成物と比較し より食後高血糖を抑制する効果が高いこと ら、より多くの量を一度に投与することも 能である。この場合、使いきりタイプの包 形態とすることで簡便に衛生的に用いるこ ができ、また大容量であることから輸送・ 材コスト的に有利であり、安価で環境に配 した製品として消費者に提供することが可 となる。この場合の単位あたりの充填量は3 00~600mlであるのが好ましく、より好ましくは3 00~400mlである。高齢者や子供の場合には、胃 積も大きくなく、この場合好ましくは、1回 の服用には80~400mlがよく、さらに好ましくは1 00~300mlとするのがよい。
 本発明の栄養組成物を収容する容器として 、易開封性の容器であるのが好ましく、又 自立性があるのが好ましい。このような容 としては、特開2005-040630号公報、特開2003-327 259号公報などに記載の容器をあげることがで きる。

 一方、本発明の栄養組成物中には各種食 素材が含まれるが、製造時や保存中におい その一部が酸化や分解を引き起こす可能性 ある。特に油脂類は劣化し易く、その中で 魚油やシソ油、アマニ油等は高度不飽和脂 酸を大量に含むため更に酸化しやすく、不 な臭い、味の劣化に繋がる。また、過酸化 を含む油脂を摂取した場合、生体にとって 化ストレスとなり、老化やがんの促進、生 習慣病の一因となることが示唆されている このような酸化や分解は、(i)製造方法や(ii) 包装形態を工夫することにより極力抑えるこ とが可能である。具体的には(i)製造時調合液 中への空気の巻き込みを極力抑えることや、 遮光下で実施すること、調合後、脱気装置や 不活性ガスのバブリングにより空気を除去す ること、必要以上の加熱は避け、調合終了後 殺菌処理までは可能な限り低温状態に保つこ と、充填は不活性ガス雰囲気下での実施若し くは充填後不活性ガス置換し、残気部を極力 少なくするよう密封すること(ii)バリアフィ ム、例えばアルミやアルミナ、シリカ等か なる蒸着フィルムや脱酸素包材の使用、さ にはエージレス等脱酸素剤を封入した包装 態、さらには紫外線吸収インクや特殊バリ 性インク等で表面印刷された包材の使用、 らには外包材に梱包後ガス置換や脱気処理 行う等することで達成される。これにより 油脂の酸化はもとよりビタミンCやレチノー 、ビタミンEなどの栄養成分の残存率低下、 風味の悪化等も抑制でき、本製品においてよ り好ましい形態となりうる。

 以下本発明を実施例により詳細に説明する 、本発明は以下の実施例にのみ限定される のではない。
実施例1
 原材料を表1に示す配合割合となるように計 量し、2,000kcal /2,000mlの仕込み時の調合を実 した。3Lのステンレスバケツに調合水776gを 量し、湯浴にて70~80℃に加温した。攪拌しな がら、デキストリン、不溶性食物繊維、ミネ ラル含有酵母、ビオチン酵母、グルコン酸亜 鉛、グルコン酸銅、クエン酸第一鉄ナトリウ ムを投入分散した。次いで、食用油脂、中鎖 脂肪酸トリグリセリド、β―カロテン懸濁液 ビタミンEオイル及び乳化剤を70~80℃にて混 溶解した液を投入した。次いで、これに乳 んぱく質、パラチノース、水溶性食物繊維 投入し、溶解した。
 別途、ステンレス容器に加温した水180g(30~40 ℃)をはり、クエン酸、水酸化カルシウム、 エン酸三ナトリウム、炭酸カリウム、塩化 グネシウム、グリセロリン酸カルシウム、 ルタミン酸ナトリウムを順次溶解し、この を、3Lのステンレス容器にて先に調製した液 に投入、混合した。次いで、イソロイシン、 エリソルビン酸ナトリウム、ビタミンミック スをこれに投入して分散溶解させ、さらには 香料を投入した。最後にアスコルビン酸ナト リウムを投入溶解してよく混合した。全量が 2,000mlとなるように調合水で定量後、均一な となるまで撹拌した。この液を高圧ホモジ イザーで乳化(均質圧:70MPa)した。これを透明 スタンディングパウチ(包材構成:蒸着PET/Ny/CPP )に1個あたりの重量が200ml(214g)となるように 填し、124℃でレトルト殺菌処理を行った。5 後に測定したこの液体の粘度は6.4mPa・s(24℃ )であった。また、別途アセプティック充填 より117ml(125g)のパックに充填した。
ここで、透明スタンディングパウチの構成材 料であるNy及びCPPは、ナイロン及び無延伸ポ プロピレンの略称である(以下、同じ)。
 これらいずれの包装形態においても乳化は 期にわたり安定であった。又、この栄養組 物は栄養バランスに優れたものであり、長 継続的な摂取が可能である。ここで、使用 た中鎖脂肪酸トリグリセリドを構成する脂 酸残基の炭素数は6~12であった。また、ω6系 脂肪酸/ω3系脂肪酸比は2.7に調整した。糖質 のパラチノースの含有量は、16.4質量%(39.2/239 .2)であり、本発明品100kcal中のパラチノース 量は1.96gである。また、本発明品100kcal中の 離イソロイシンの量は0.5gであり、遊離イソ イシン/パラチノースの質量比は、1/3.9(10/39. 2)である。

 このようにして製造した本発明の栄養組 物に増粘剤を適宜加え、回転式粘度計(BH-80 東機産業)を用いて粘度を測定したところ、 350~20,000mPa・sの安定した高粘度組成物にも調 できることを確認した(23℃)。また、本発明 品の溶液を噴霧乾燥し、これを造粒すること により、粉末及び顆粒が安定して製造出来た 。さらに加熱した本発明品にカンテンや市販 の各種ゼリー調製食品(例:ヘルッシュ(登録商 標)ジェルメイク)を適量添加、溶解し、冷却 ることでゲル状の形態に調製することも可 であった。

 表1 実施例1の配合組成(2,000kcal/2,000ml)

実施例2
 原材料の配合割合を表2に示すように計量し 、1,000g(2,000kcal)の仕込み時の調合を実施した 2Lのステンレス容器に調合水320gを計量し、 浴にて70~80℃に加温した。次いで、TKロボミ ックス(プライミクス社)にて、3000rPmの高速攪 拌条件化、トレハロース、クエン酸第一鉄ナ トリウム、グルコン酸亜鉛、グルコン酸銅、 クエン酸カリウム、塩化カリウム、リン酸カ リウム、グルコン酸ナトリウムの順に混合溶 解した。次いで食用油脂と中鎖脂酸トリグリ セリド、β―カロテン懸濁液、ビタミンEオイ ル、乳化剤を70~80℃にて混合溶解した液を投 した。次いで、デキストリン、乳たんぱく 、不溶性食物繊維、グルタミン酸ナトリウ 、ロイシン、各種ミネラル含有酵母、ビオ ン酵母、香料の順に投入混合し、均一な溶 分散溶液となった後、調合水120mlに水溶性 物繊維、硫酸マグネシウム、塩化マグネシ ム、乳酸カルシウムを溶解した液を徐々に 入した。次いで、ビタミンミックス、アス ルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナト ウムを投入し、分散溶解させた。これの重 を測定しながら1,000gまで加水し、均一な状 となるまで混合した。これをスパウト付ス ンディングパウチ(パウチフィルム構成:PET/Al /Ny/CPP)に100ml毎に充填し、125℃でレトルト殺 を実施した。この比重は1.18であり、この溶 のカロリー濃度は2.0kcal/g (2.4kcal/ml)である この試料を25℃で保存し、殺菌処理の翌日、 回転式粘度計(BH-80、東機産業)にてローターNo .3、12rpmの条件下で測定したところ、約4,000mPa ・sであった(25℃)。長期保存においても乳化 長期にわたり安定であった。この液に水を えて500mPa・s(25℃)の均質な栄養組成物にも また市販の増粘剤を加えて7,000mPa・s(25℃)の 質な高粘度の溶液にも調整可能であった。 た、加熱した本発明品にカンテンや市販の 種ゼリー調製食品(例:ヘルッシュ(登録商標) ジェルメイク)を適量添加、溶解し、冷却す ことでゲル状の形態に調整することも可能 あった。さらに本発明品の溶液を噴霧乾燥 、これを造粒することにより、粉末及び顆 が安定して製造出来た。ここで使用した中 脂肪酸トリグリセリドを構成する脂肪酸残 の炭素数は8~10であった。また、ω6系脂肪酸/ ω3系脂肪酸比は1.5であった。糖質中のトレハ ロースの含有量は、9.5質量%(18.3/192.8)であり 本発明品100kcal中のトレハロースの量は0.92g ある。また、本発明品100kcal中の遊離ロイシ の量は0.27gであり、遊離ロイシン/トレハロ スの質量比は、1/3.4(5.40/18.3)である。

 表2 実施例2の配合組成(2,000kcal/1,000g)

実施例3
 原材料を表3に示す配合割合となるように計 量し、実施例1と同様な方法で、2,000kcal/2,000ml の栄養組成物を調製し、これを透明スタンデ ィングパウチに1個あたりの重量が200gとなる うに充填し、124℃でレトルト殺菌処理を行 た。このとき液体の粘度は6.0mPa・s(24℃)で った。乳化は長期にわたり安定であった。 、この栄養組成物は栄養バランスに優れた のであり、長期継続的な摂取が可能である ここで使用した中鎖脂肪酸トリグリセリド 構成する脂肪酸残基の炭素数が6~12であった また、ω6系脂肪酸/ω3系脂肪酸比は4.0であっ た。糖質中のパラチノースの含有量は、16.4 量%(39.2/239.2)であり、本発明品100kcal中のパラ チノースの量は1.96gである。また、本発明品1 00kcal中の遊離イソロイシンの量は0.5gであり 遊離イソロイシン/パラチノースの質量比は 1/3.9(10/39.2)である。また、100kcal中の遊離ア ギニンは1.5gであった。
 このようにして製造した本発明の栄養組成 に増粘剤を適宜加え、回転式粘度計(BH-80、 機産業)にて粘度を測定したところ、350~20,00 0mPa・sであり、安定した高粘度組成物にも調 できることを確認した(23℃)。また、加熱し た本発明品にカンテンや市販の各種ゼリー調 製食品(例:ヘルッシュ(登録商標)ジェルメイ )を適量添加、溶解し、冷却することでゲル の形態に調製することも可能であった。さ に本発明品の溶液を噴霧乾燥し、これを造 することにより、粉末及び顆粒が安定して 造出来た。

表3 実施例3の配合組成(2,000kcal/2,000ml)

実施例4
 原材料を表4に示す配合割合となるように計 量し、3000L(1kcal/1ml)仕込み時の実機試作を行 た。タンクNo.1に温水1164kg(70~80℃)を張込み、 攪拌しながら、デキストリン、不溶性食物繊 維、ミネラル含有酵母、クエン酸第一鉄ナト リウムを投入分散した。次いで、食用油脂、 中鎖脂肪酸トリグリセリド、β―カロテン懸 液、ビタミンEオイル及び乳化剤を70~80℃に 混合溶解した液を投入した。次いで、これ 乳たんぱく質、パラチノース、水溶性食物 維を投入し、溶解した。
 別のタンクに温水135kg(30~40℃)をはり、クエ 酸、水酸化カルシウム、クエン酸三ナトリ ム、炭酸カリウム、塩化マグネシウム、グ セロリン酸カルシウム、グルタミン酸ナト ウムを順次溶解し、この液を、先に調製し タンクNo.1の液に投入、混合した。この作業 を2回繰り返した。次いで、イソロイシン、 リソルビン酸ナトリウム、ビタミンミック をこれに投入して分散溶解させ、さらには 酸と香料を投入した。この液を脱気処理(約2 0cmHg)後、高圧ホモジナイザーにて乳化圧98MPa 処理し、プレートクーラーにより液温10℃ 下とした。貯液タンクに貯留後、アスコル ン酸ナトリウムを投入溶解し全量が3000Lとな るように調合水で定量し、均一な液となるま で撹拌した。これをポート付き透明フィルム バッグ(バッグフィルム構成:PET/蒸着PET/Ny/CPP) 1個あたり400mlとなるように充填し、充填後 気バーにて残気部分を15ml以下とした状態で ヒートシールにて密封後、124℃でレトルト殺 菌処理を行った。
8日後に測定したこの液体の粘度は6.3mPa・s(24 )であった。
 また、本発明品100kcal中の遊離イソロイシン の量は0.5gであり、遊離イソロイシン/パラチ ースの質量比は、1/3.9(15.0/58.8)である。

表4 実施例4の配合組成 3000L仕込み

試験例1
 実施例4で得られた試作品について、室温(25 ℃前後)にて保存した時の6ヶ月までの長期安 性試験を実施した。試験開始時および室温 て6ヶ月間静置した時の試作品の物性値測定 や各種評価を行なった。
・粒度分布(メジアン径)
 レーザー散乱式粒度分布測定装置(LS 13 320( 商品名)、ベックマン・コールター社製)にて PIDS(偏光差動散乱)アセンブリーを使用し、 折率を液体(懸濁液部):1.32、試料:実部1.45、 部0の条件にて解析した。
・pH
 pHメーター(HM-25R型(商品名)、TOA DKK(株)社製) にて測定した。
・粘度
 回転式粘度計(BH-80(商品名)、東機産業社製) て、ローターNo.10を用い、60rpmの条件下で測 定した。
・官能評価
 風味、香り、舌触りについて、保存開始直 の試作品を標準試料として比較を行った。
標準試料と比較して、遜色ないと判断された 場合を適とした。
・色差
 試料5gを測定用セルに採取し、分光式色彩 (SE-2000(商品名)、日本電色工業(株)社製)を用 て測定した。
・外観
 乳化状態の変化に伴うクリームの発生や、 溶性の塩の形成、色調の著しい変化等、目 にて状態を観察した。
・チューブ流動性
 試料のポートにチューブ(JMS栄養セット(商 名)、JMS社製)と5Frのカテーテル(サフィード ィーディングチューブ(商品名)、テルモ社製 )を接続し、高さ1mから内容液を自然滴下させ 、滴下した量を15分ごとに測定した。バッグ の液が無くなるまで滴下を続け、時間あた の平均滴下流量を求め、チューブ流動性と た。
・耐酸性
 試料100mlをビーカーに採取し、スターラー 用いて撹拌しながら予め調製しておいた2%塩 酸溶液を徐々に加えた。2分間撹拌後、性状 観察し、pHを測定した。この時、数十個以上 のカード状浮遊物が確認されるまで(塩酸溶 を加えた後に発生する凝集物が消失しない) pHを測定した。

比較例1
 市販の流動食(メディエフ(登録商標)バッグ 味の素(株)製)について、試験例1と同様の保 存試験を実施し、物性値測定や各種評価を行 なった。

 得られた測定結果を表5に示した。粒度分 布、pH、粘度、色差のいずれについても、6ヶ 月間の保存により大きな変化は認められず、 少なくとも6ヶ月間、製品として十分な安定 を有するものであることが示された。官能 評価においても経時変化が小さく、経口摂 上好ましい形態を維持できた。また本発明 は粘度が低く流動性が良く、各種栄養チュ ブやカテーテル、特に内径が小さく長い仕 であっても使用が可能である。更に耐酸性 も優れることから、カテーテルへの胃酸逆 が生じた場合に流動食の凝固が発生しにく 、カード化の原因として報告されている菌 増殖(非特許文献3:外科と代謝・栄養、日本 科代謝栄養学会誌、pp73、42(3)、2008)が発生し た場合、酸性を示す薬剤と同時或いはその前 後で使用された場合においても、チューブ詰 まりを起こしにくいと言える。以上から、本 発明品は経管栄養における使用に際しても、 極めて好ましい形態を有している。

表5 実施例1及び比較例1の保存安定性試験結

実施例5
 原材料を表6に示す配合割合となるように計 量し、4,500kcal /4,500mlの仕込み時の調合を実 した。5Lのステンレスバケツに調合水2000gを 量し、湯浴にて70~80℃に加温した。攪拌し がら、デキストリン、不溶性食物繊維、乳 んぱく質、パラチノース、水溶性食物繊維 ミネラル含有酵母、ビオチン酵母、グルコ 酸亜鉛、グルコン酸銅、クエン酸第一鉄ナ リウム、イソロイシン、グルタミン酸ナト ウムを投入分散した。次いで、食用油脂、 鎖脂肪酸トリグリセリド、β―カロテン懸濁 液、ビタミンEオイル及び乳化剤を70~80℃にて 混合溶解した液を投入した。
 別途、ステンレス容器に加温した水300g(30~40 ℃)をはり、クエン酸、水酸化カルシウム、 エン酸三ナトリウム、炭酸カリウム、塩化 グネシウムを順次溶解し、この液を、5Lのス テンレス容器にて先に調製した液に投入、混 合した。次いで、リン酸三カルシウム、ビタ ミンミックスをこれに投入して分散溶解させ 、フレーバーを投入した。最後にエリソルビ ン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム を投入溶解してよく混合した。全量が4,500ml なるように調合水で定量後、均一な液とな まで撹拌した。この液を高圧ホモジナイザ で乳化(均質圧:70MPa)した。これをポート付き 透明フィルムバッグ(バッグフィルム構成:PET/ 蒸着PET/Ny/CPP)に1個あたりの容量が300mlとなる うに充填し、124℃でレトルト殺菌処理を行 た。本品は、粘度 7.0mPa・s(24℃)であり、経 時保存安定性に優れ、特に高温保存時(40~60℃ )においてもクリームの発生が極めて少なく 不溶性リン酸カルシウムに由来しない沈殿 の発生も認められなかった。風味やチュー 流動性も良好であった。
 また、本発明品100kcal中の遊離イソロイシン の量は0.5gであり、遊離イソロイシン/パラチ ースの質量比は、1/3.9(22.5/88.2)である。

 表6 実施例5の配合組成(4,500kcal/4,500ml)

発明品の栄養組成物の効力の評価実験
実験1(参考例:パラチノースのみを使用したと きの効力)
 耐糖能に異常を呈する糖尿病モデルラット あるGKラット(7週齢の雄、日本エスエルシー (株))を用いて実験を行った。GKラットは18時 絶食し、糖質(12g/100kcal)の一部を0g、4.4g、8.9g /100kcalのパラチノースに置き換えた表7に示し た栄養組成物A、B、C(実施例1の栄養組成ベー 、ただし遊離イソロイシン無配合)をそれぞ れ経口投与し(12 kcal/kgB.W.)、血糖値を測定し (測定機器:富士ドライケム5500、富士フイル (株)製)。
 その結果、栄養組成物Cは栄養組成物Aに比 栄養組成物投与15、30、60分後の血糖値の上 を有意に抑制した(15、30分:p<0.01、60分:p< 0.05、パラメトリックDunnet型多重検定、図1)。 しかし、栄養組成物Bは栄養組成物Aとの比較 おいて血糖値の上昇を抑制しなかった(図1)
 この結果から、パラチノースのみを用い、 離イソロイシンと併用しない場合、糖質の 70質量%以上を占める量でパラチノースを用 ないと、パラチノースの血糖値上昇抑制効 が十分発揮しないことが判明した。

表7 栄養組成物A、B、Cの配合組成 (2,000kcal/2, 000ml)

実験2
 本発明品の血糖上昇抑制効果ついて、耐糖 に異常を呈する糖尿病モデルラットであるG Kラット(7週齢の雄、日本エスエルシー(株))を 用いて実験を実施した。実施例1で調製した 発明の栄養組成物と遊離イソロイシン及び ラチノース無配合の栄養組成物Aを18時間絶 したラットにそれぞれ経口投与し(12kcal/kgB.W. )、血糖値を測定した(測定機器:富士ドライケ ム5500、富士フイルム(株)製)。
 結果を図2に示すが、本発明品は栄養組成物 Aに比べ栄養組成物投与60、120分後の血糖値の 上昇を有意に抑制した(p<0.05、t検定、図2) この結果から、遊離のイソロイシンとパラ ノースとの併用により、非常に強い血糖上 抑制効果が発揮されることが判明した。パ チノースの血糖値上昇抑制効果は、糖質の 70質量%以上の割合でパラチノースを配合し いと十分発揮されないが、100kcalあたり0.5gの 遊離のイソロイシンとの併用により、糖質の 16質量%までパラチノースの量を低減すること が可能となった。

実験3
 実施例2で調製した本発明品と栄養組成物D それぞれGKラット(14週齢の雄、日本エスエル シー(株))の胃瘻を介して胃内へ経管投与し(12 kcal/kgB.W.)、血糖値を測定した(測定機器:富士 ライケム5500、富士フイルム(株))。栄養組成 物Dは、表8の配合に基づき実施例2と同様に製 造し、この溶液のカロリー濃度は2.4kcal/mlで り、また粘度をはじめとした物理的性質は 施例2と同等である。油脂については、ω6系 肪酸/ω3系脂肪酸比を1.5となるよう食用油脂 の使用比率を調整した。中鎖脂肪酸トリグリ セリドを構成する脂肪酸残基の炭素数は6~12 ある。この中鎖脂肪酸の全脂肪に対する割 は18重量%である。糖質中にはトレハロース 含まず、また、遊離のロイシンも含有して ない。
 この実験の結果、本発明品は栄養組成物Dに 比べ投与15、30、60分後の血糖値の上昇を有意 に抑制した(p<0.05、t検定、図3)。対照の栄 組成物Dは、カロリー濃度を2.4kcal/ml(比重1.18) と高カロリーに調製されており、これを糖尿 病モデルラットに投与すると高血糖を誘発し た。しかし、実施例2の組成では、カロリー 度を2.4kcal/ml(比重1.18)として投与した場合に いても、血糖値の上昇を抑えた(図3)。
 高齢の糖尿病患者の中には、自分で栄養摂 ができず、胃瘻を介して直接、胃に栄養組 物を投与する患者が多く存在する。一般に 齢者の胃の容積は小さいことから、使用す 栄養組成物は体積の小さい高カロリー濃度 好適であるが、投与速度が等しい場合、カ リー濃度が高くなる程高血糖を引き起こし すいのは明らかである。しかし、結果が示 ように、2.4kcal/mlの高カロリー濃度であって も本発明品は高血糖を起因しないことが明ら かとなった。

表8  栄養組成物Dの配合組成(2,000kcal/1,000g)

実験4
 耐糖能異常を発症する糖尿病モデルラット あるZDFラット(10週齢の雄、日本チャールス リバー(株))を用いて、本発明品のヘモグロ ンA1c(HbA1c)の上昇抑制効果を検証した。HbA1c 、過去約1ヶ月間の血糖値を反映する指標で ある。また、ZDFラットは、病態の悪化に伴い 、10週齢から徐々にHbA1cが上昇し、ヒトの糖 病が悪化していく過程に近い状態を示すモ ルである。ラットをHbA1cの平均値が等しくな るように2群に分けた後、栄養組成物100kcalあ り0.5gの遊離イソロイシンと2.0gのパラチノ スを含有する栄養組成物Eと、遊離のイソロ シン及びパラチノース無配合の栄養組成物F をそれぞれ自由摂取させ、4週間後のHbA1cを比 較した(栄養組成物配合組成:表9、測定機器:DC A2000システム、シーメンスメディカルソリュ ションズ・ダイアグノスティクス(株)製)。 養組成物EおよびFのビタミン、ミネラルの 合には、ラット標準飼料を用いた(AIN-93Gビタ ミン混合及びAIN-93Gミネラル混合、オリエン ル酵母工業(株)製)。
 その結果、栄養組成物Eは、栄養組成物Fに べ、HbA1cの上昇率を有意に抑制することが判 明し、栄養組成物100kcalあたり0.5gの遊離イソ イシンと2.0gのパラチノースの組み合わせ( 離イソロイシン/パラチノースの質量比1/4、 質中のパラチノース含有量12質量%)は、長期 間の血糖コントロールに有用であり、自由に 経口摂取可能な条件においても血糖上昇を抑 制できることを証明した(p<0.05、t検定、図4 )。

表9  栄養組成物E、Fの配合組成(100kcal/27g)

実験5
 耐糖能異常を発症するStreptozocin(STZ)誘発性 尿病ラットを用いて、本発明品のHbA1cの上昇 抑制効果を検証した。STZ誘発性糖尿病ラット は、STZ投与後にHbA1cが上昇し、ヒトの糖尿病 悪化していく過程に近い状態を示すモデル ある。SDラット(7週齢の雄、日本チャールス ・リバー(株))にSTZ60mg/kgB.W.を腹腔内投与し、 尿病モデルラットを作製した。STZ投与8日後 に、ラットをHbA1cの平均値が等しくなるよう 2群に分けた後、実施例1の組成を有した粉 状栄養組成物と遊離イソロイシン及びパラ ノース無配合の栄養組成物Aの粉末状栄養組 物をそれぞれ自由摂取させ、6週間後のHbA1c 比較した(測定機器:DCA2000システム、シーメ スメディカルソリューションズ・ダイアグ スティクス(株)製)。実施例1に示した本発明 の配合組成物(調合水は使用していない)およ 栄養組成物Aの配合組成物は、万能混合撹拌 機((株)ダルトン製)を用いて、原材料を混合 作製した。
 その結果、本発明の栄養組成物は、栄養組 物Aに比べ、HbA1cの上昇を有意に抑制するこ が判明した。したがって、本発明の栄養組 物は、粉末状であっても血糖コントロール 有用であることを証明した(p<0.01、t検定 図5)。
 糖尿病患者及び耐糖能が異常な場合の栄養 取時の急激な血糖値上昇の抑制には、イン リン注射や経口血糖降下薬が用いられてい 。インスリンや経口血糖降下薬は血糖上昇 抑制する作用が強い一方、低血糖や胃腸障 、浮腫、貧血などの副作用も併せ持つ。ま 、インスリン療法を行っている過半数の患 が「針を刺すのは痛い」と考えているとの 告(非特許文献4:加来浩平、プラクティス、2 2(3)、240、2005)もあり、インスリン注射は精神 的なストレスが大きいことが伺える。本発明 は、長期間摂取した場合においても投与期間 中の高血糖を抑制することから、インスリン 及び経口血糖降下薬の投与量を減量し、薬剤 の副作用及び針刺しのストレスの軽減に貢献 できる。

実験6
 耐糖能に異常を呈する糖尿病モデルラット あるGKラット(日本エスエルシー(株))を低栄 の状態に落とし、本発明の組成物の栄養効 を検証した。すなわち、11週齢のGKラットに 無たんぱく質ラット飼料を21日間投与し、耐 能異常低栄養状態のモデルラットを作製し 。これらのラットを体重及び空腹時血糖値 平均が等しくなるように2群に分け、一方に は実施例1の液状の本発明組成物を、また他 には糖尿病患者の血糖コントロールを良好 保つことが報告されている市販の食物繊維 オリゴ糖配合、糖質・脂質調整液栄養食(「 ピオン」(登録商標)α:以下、Tα)(非特許文献 5:齋藤まり、静脈経腸栄養、23(増刊号)、311、 2008)を、開腹手術により造設した胃瘻を介し 、胃内へポンプを用い、0~1日目は20kcal/18時 /匹、1~2日目は45kcal/18時間/匹、2~7日目は65kca l/18時間/匹、7日目以降は71kcal/20時間/匹の量 10日間、経管投与した。Tαの主要栄養組成を 表10に示した。
 この試験を実施した結果、投与中(投与終了 1時間前)の血糖値は本発明品の群でTαよりも 値となった(図6)。また、本発明品の群の体 窒素は良く保たれ(図7)、体重は飼育期間が くなるほど栄養バランスに優れた本発明品 群が高値となり(図8)、本品の栄養バランス 有効な検証となった。耐糖能異常者は、代 異常に起因する血管障害や血流低下により 手術後の縫合不全や長期臥床による褥瘡を 症しやすい。創傷や褥瘡の治癒にはバラン に優れた栄養素が欠かせず、バランスの悪 栄養摂取による栄養不良状態はそれらの発 リスクを上げ、治癒の延長を招く。本発明 栄養組成は、摂取後の高血糖を抑制しなが 、栄養状態を適切に保つことが可能であり 創傷、褥瘡の予防や治癒促進に非常に有用 ある。

表10  市販製品 Tα配合組成(200kcal/200ml)
※:ビタミンB1及びクロムを豊富に配合(上記 事摂取基準推奨量充足率の約2倍)

実験7
 耐糖能に異常を呈する糖尿病モデルラット あるGKラット(日本エスエルシー(株))を低栄 の状態に落とし、本発明の組成物の栄養効 を検証した。すなわち、5週齢のGKラットに たんぱく質ラット飼料を21日間投与し、耐 能異常低栄養状態のモデルラットを作製し 。これらのラットを2群にわけ、一方には実 例1の液状の本発明組成物を、また他方には Tαを、投与ノズルを用いて、1~2日目は20kcal/10 0gB.W.、3日目以降は25kcal/100gB.W.の量を8日間摂 させた。このTαは、糖質にはパラチノース トレハロースあるいは遊離のイソロイシン 遊離のロイシンまた中鎖脂肪酸トリグリセ ドも配合されていない。また、ω6系脂肪酸/ ω3系脂肪酸比は、3.6である。この試験を実施 した結果、体重は飼育期間が長くなるほど栄 養バランスに優れた本発明品の群が高値とな り、栄養バランスの有効な検証となった(図9) 。したがって、本発明品は経管投与時だけで なく、経口摂取においても栄養バランスに優 れた組成であることを確認した。

実験8
 耐糖能異常を発症する糖尿病モデルラット あるGKラット(25週齢の雄、日本エスエスシ (株))を用いて実験を実施した。18時間絶食し たラットに、実施例1で調製した本発明の栄 組成物を8kcal/kg、遊離イソロイシン及びパラ チノース無配合の栄養組成物Aを6kcal/kgで経口 投与し、血糖値を測定した(測定機器:富士ド イケム5500、富士フイルム(株)製)。
 本発明品投与後の血糖値は、栄養組成物Aよ りも投与量が多いにも関わらず同様の血糖推 移を示した(p=0.05、t検定、図10)。この結果は 血糖値の上昇抑制効果を有する本発明品は 血糖値の上昇抑制を考慮していない栄養組 物より、より多くのエネルギーや栄養素の 取が可能であることを示す。本結果は、血 値の上昇抑制が考慮されていない栄養組成 の摂取時には、血糖値の上昇を恐れて一回 225mlしか摂取できないのに対し、本発明品 約1.3倍の300mlもの摂取が可能であることを示 すものである。血糖値を上昇させない栄養バ ランスに優れた栄養組成物である本発明品の 摂取量の増加は、糖尿病患者の栄養状態の維 持、改善に繋がる。中でも、栄養状態の悪化 した糖尿病患者に対し、本発明品は栄養バラ ンスの良く高カロリーが投与可能となる、大 変有用な組成である。

パラチノースの効果を確認するため、 養組成物A~Cを調製し、これらを経口投与し 後の血糖値の推移を示した図である。 実施例1で調製した本発明品及び栄養組 成物Aを経口投与した後の血糖値の推移を示 た図である。 実施例2で調製した本発明品及び栄養組 成物Dを経口投与した後の血糖値の推移を示 た図である。 栄養組成物E及び栄養組成物Fを長期経 摂取させた後のヘモグロビンA1cの変化率を す図である。 実施例1の粉末状本発明品及び栄養組成 物Aを長期経口摂取させた後のヘモグロビンA1 cの変化率を示す図である。 実施例1で調製した本発明品及び市販の Tαの経管投与中の血糖値を示す図である。 実施例1で調製した本発明品及び市販の Tαを経管投与した後の窒素出納を示す図であ る。 実施例1で調製した本発明品及び市販の Tαを経管投与した後の体重の推移を示す図で ある。 実施例1で調製した本発明品及び市販の Tαを経口摂取させた後の体重増加率を示す図 である。 実施例1で調製した本発明品(8kcal/kgB.W.) 及び栄養組成物A(6kcal/kgB.W.)を経口投与した後 の血糖値の推移を示す図である。