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Title:
OIL-AND-FAT COMPOSITION, PROCESS FOR PRODUCTION OF THE COMPOSITION, CHOCOLATE, AND PROCESS FOR PRODUCTION OF THE CHOCOLATE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/081777
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is an oil-and-fat composition suitable for the coating with a tempered chocolate, particularly suitable for the enrobing with the chocolate. Also disclosed is a low-fat tempered chocolate suitable for coating, particularly enrobing. Specifically disclosed is an oil-and-fat composition which has a content of an oleoyldipalmitin (P2O) component of 70 to 85% by mass, which contains a symmetric triglyceride 1,3-dipalmitoyl-2-oleoylglycerin (POP) in the oleoyldipalmitin (P2O) component at a ratio of the amount of 1,3-dipalmitoyl-2-oleoylglycerin (POP) to the amount of the oleoyldipalmitin (P2O) component [(POP)/(P2O)] of 0.95 or more by mass, and which has a content of tripalmitin (PPP) of 2 to 6% by mass. The oil-and-fat composition is added to a tempered chocolate.

Inventors:
AKAHANE AKIRA (JP)
HATANO YOSHIYUKI (JP)
HARUNA HIROFUMI (JP)
UEHARA HIDETAKA (JP)
NEGISHI SATOSHI (JP)
KIKUCHI YUKA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/072691
Publication Date:
July 02, 2009
Filing Date:
December 12, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NISSHIN OILLIO GROUP LTD (JP)
AKAHANE AKIRA (JP)
HATANO YOSHIYUKI (JP)
HARUNA HIROFUMI (JP)
UEHARA HIDETAKA (JP)
NEGISHI SATOSHI (JP)
KIKUCHI YUKA (JP)
International Classes:
A23D9/00; A23G1/00; A23G1/30
Domestic Patent References:
WO2008010543A12008-01-24
Foreign References:
JPH11187814A1999-07-13
JPH07155107A1995-06-20
JP2005073613A2005-03-24
JPH07264981A1995-10-17
Other References:
URAKAMI A. ET AL.: "Yozai Bunbetsuho ni yoru Hard Butter Seizo Gijutsu no Kaihatsu to Kogyoka", JOURNAL OF THE JAPAN OIL CHEMISTS' SOCIETY, vol. 35, no. 12, 1986, pages 995 - 1000
Attorney, Agent or Firm:
HIRATA, Tadao et al. (World-Wide-Center 1-13, Sanban-cho, Chiyoda-k, Tokyo 75, JP)
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Claims:
 オレオイルジパルミチン(P2O)の含有量が70~85質量%であり、オレオイルジパルミチン(P2O)の内、対称型トリグリセリドである1,3-ジパルミトイル-2-オレオイルグリセリン(POP)のオレオイルジパルミチン(P2O)に対する質量比(POP/P2O)が0.95以上である油脂組成物であって、かつ、トリパルミチン(PPP)の含有量が2~6質量%であることを特徴とする油脂組成物。
 オレオイルジパルミチン(P2O)の含有量が75~85質量%であることを特徴とする請求項1記載の油脂組成物。
 トリパルミチン(PPP)の含有量が3~5質量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の油脂組成物。
 請求項1~3のいずれか1項に記載の油脂組成物を3~60質量%含有することを特徴とするテンパリング型チョコレート類。
 請求項1~3のいずれか1項に記載の油脂組成物を2~19質量%含有し、油分の含有量が29~38質量%であって、かつ、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有することを特徴とするテンパリング型チョコレート類。
 前記油脂組成物中の1,3-ジパルミトイル-2-オレオイルグリセリン(POP)の含有量が72質量%以上であることを特徴とする請求項5記載のテンパリング型チョコレート類。
 前記油脂組成物における1,3-ジパルミトイル-2-オレオイルグリセリン(POP)のオレオイルジパルミチン(P2O)に対する質量比(POP/P2O)が0.96以上であることを特徴とする請求項5又は請求項6記載のテンパリング型チョコレート類。
 コーティング又はエンローバー用であることを特徴とする請求項4~7の何れか1項に記載のテンパリング型チョコレート類。
 請求項4~8の何れか1項に記載のテンパリング型チョコレート類を使用した菓子類またはパン類。
 請求項1~3の何れか1項に記載の油脂組成物をチョコレート類に3~60質量%配合することを特徴とするテンパリング型チョコレート類のテンパリング後の粘度上昇を抑制する方法。
 請求項1~3の何れか1項に記載の油脂組成物をチョコレート類に3~60質量%配合することを特徴とするテンパリング型チョコレート類の製造方法。
 請求項1~3のいずれか1項に記載の油脂組成物とポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとからなるテンパリング型チョコレート類の粘度低減持続剤。
 請求項1~3のいずれか1項に記載の油脂組成物とポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとを配合することを特徴とするテンパリング型チョコレート類の粘度低減持続方法。
 請求項1~3のいずれか1項に記載の油脂組成物を2~19質量%配合し、油分の含有量を29~38質量%に調整する工程と、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを配合する工程とを有することを特徴とするテンパリング型チョコレート類の製造方法。
Description:
油脂組成物とその製造方法及び ョコレート類とその製造方法

 本発明は、油脂組成物に関し、特にテン リング型チョコレート類のエンローバー用 に適した油脂組成物に関するものである。 た、本発明は、チョコレート類に関し、特 エンローバー用途に適したテンパリング型 ョコレート類に関するものである。

 なお、本発明で「チョコレート類」とは 規約「チョコレート類の表示に関する公正 約」乃至法規上の規定により限定されるも ではなく、いわゆるカカオ代用脂等を使用 たチョコレート類及び油脂加工食品をも含 ものである。

 チョコレートは、カカオ脂を含む油脂及 砂糖等の甘味料を必須成分とするものであ が、カカオ脂は比較的高価であるため、カ オ脂の代替となる脂肪(カカオ代用脂)の利 が広まって来た。カカオ代用脂は、テンパ ング型と非テンパリング型に大別される。 ンパリング型は、カカオ脂と近似した対称 のトリグリセリド構造を持つため、カカオ との相溶性が良く、カカオ独特の芳香味に んだチョコレートができるが、油脂の結晶 を3鎖長β型に揃えるためのテンパリングと う調温工程を経る必要がある。

 また、チョコレートは、その形態として 、そのまま食される固形チョコレートに加 、例えばビスケットやクッキー等の焼き菓 へのコーティング又はエンローバー、包餡 サンド等の複合菓子にも幅広く使用されて る。

 焼き菓子等にチョコレートをエンローバ (上掛け)する場合、特に、テンパリング型 ョコレートをエンローバーする場合は、エ ローバーされるチョコレートの量を一定に て製品のバラつきを防ぐために、テンパリ グ後もチョコレート生地の粘度を低く保つ 要がある。このため、テンパリング型チョ レートをエンローバーするには、通常のテ パリング作業に加え、テンパリング後も煩 なチョコレート生地の温度調節が不可欠で る。

 テンパリング後のチョコレート生地の粘 上昇を抑えるために、融点が低い液体油や 融点硬化油を配合する方法(例えば、特許文 献1参照)が採られ得るが、粘度は低下するも の、エンローバー後のチョコレート生地の きが遅くなる難点があった。乾きを改善す ために少量の高融点油脂を添加する場合も るが、粘度の上昇や口溶けが優れない等の の問題があり、十分に満足の行くものでは かった。

 また、パーム中融点部(PMF)も同様に、チ コレートをソフトにする用途に使用され得 が、同様にエンローバー後の耐熱性等に問 があった。耐熱性等の問題解決のため、1-パ ルミト-2-オレオ-3-ステアリン(POSt)と1,3-ステ ロ-2-オレイン(StOSt)の組成比と合計量、及び リセリン-ジ脂肪酸エステルの含量を規定し たハードバター組成物(例えば、特許文献2参 )も提案されているが、機能的には従来のテ ンパリング型カカオ代用脂と何等変わるもの ではなかった。


 また、近年、カカオ豆、カカオ代用脂等の ョコレート原材料の価格高騰により、経済 観点から油分の低いチョコレート類が求め れているが、エンローバー用途のテンパリ グ型チョコレート類は粘度上昇抑制のため 通常、油分が40%程度必要であり、スナップ が重視される所謂板チョコと比べ低油分化 困難であった。低油分化に関しては、例え 、特別な糖類を使用した低油分・低カロリ チョコレート類(例えば、特許文献3参照)が られているが、経済性に乏しく、また、そ 実際の製造はおおよそ困難なものであった  

特開昭59-135841号公報

特開平7-264981号公報

特開平10-99022号公報

 本発明の課題は、テンパリング型チョコ ートのコーティング、特にエンローバー(上 掛け)用途に適した油脂組成物を提供するこ である。また、本発明の課題は、コーティ グ、特にエンローバー(上掛け)用途に適した 低油分のテンパリング型チョコレート類を提 供することである。

 本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意 究を行った結果、パーム中融点部のオレオ ルジパルミチン(P2O)の対称性と濃度を高め 改質油に、一定量のトリパルミチンを含有 せた油脂組成物を、テンパリング型チョコ ート類に配合した場合、意外にもテンパリ グ後の粘度上昇が抑制され、且つ、エンロ バー後の乾きが速く、口溶けにも優れてい という現象を見出し、本発明を完成させる 至った。


 また、本発明者らは上記課題を解決すべく 意研究を行った結果、パーム中融点部のオ オイルジパルミチン(P2O)の対称性と濃度を めた特定の油脂と、ポリグリセリン縮合リ ノレイン酸エステルとを併用することで、 来、油分を低減すると増粘が起こるため困 であると考えられていたエンローバー用の ンパリング型チョコレート類の油分を低減 きることを見出し、本発明を完成させるに った。 

 すなわち、第1の本発明は、オレオイルジパ ルミチン(P2O)の含有量が70~85質量%であり、オ オイルジパルミチン(P2O)の内、対称型トリ リセリドである1,3-ジパルミトイル-2-オレオ ルグリセリン(POP)のオレオイルジパルミチ (P2O)に対する質量比(POP/P2O)が0.95以上である 脂組成物であって、かつ、トリパルミチン(P PP)の含有量が2~6質量%であることを特徴とす 油脂組成物である。
 第2の本発明は、オレオイルジパルミチン(P2 O)の含有量が75~85質量%であることを特徴とす 第1の発明をより特定した油脂組成物である 。
 第3の本発明は、トリパルミチン(PPP)の含有 が3~5質量%であることを特徴とする第1又は 2の本発明をより特定した油脂組成物である
 第4の本発明は、第1~3の本発明の何れかの油 脂組成物を3~60質量%含有するテンパリング型 ョコレート類である。

 第5の本発明は、第1~3の本発明の何れかの油 脂組成物を2~19質量%含有し、油分の含有量が2 9~38質量%であって、かつ、ポリグリセリン縮 リシノレイン酸エステルを含有することを 徴とするテンパリング型チョコレート類で る。
 第6の本発明は、上記油脂組成物中の1,3-ジ ルミトイル-2-オレオイルグリセリン(POP)の含 有量が72質量%以上であることを特徴とする第 5の本発明をより特定したテンパリング型チ コレート類である。
 第7の本発明は、上記油脂組成物における1,3 -ジパルミトイル-2-オレオイルグリセリン(POP) のオレオイルジパルミチン(P2O)に対する質量 (POP/P2O)が0.96以上であることを特徴とする第 5又は第6の本発明をより特定したテンパリン 型チョコレート類である。
 第8の本発明は、コーティング又はエンロー バー用であることを特徴とする第4~7の本発明 の何れかのテンパリング型チョコレート類で ある。
 第9の本発明は、第4~8の本発明の何れかのテ ンパリング型チョコレート類を使用した菓子 類またはパン類である。 
 第10の本発明は、第1~3の本発明の何れかの 脂組成物をチョコレート類に3~60質量%配合す ることを特徴とするテンパリング型チョコレ ート類のテンパリング後の粘度上昇を抑制す る方法である。
 第11の本発明は、第1~3の本発明の何れかの 脂組成物をチョコレート類に3~60質量%配合す ることを特徴とするテンパリング型チョコレ ート類の製造方法である。

 第12の本発明は、第1~3の本発明の何れかの 脂組成物とポリグリセリン縮合リシノレイ 酸エステルとからなるテンパリング型チョ レート類の粘度低減持続剤である。
 第13の本発明は、第1~3の本発明の何れかの 脂組成物とポリグリセリン縮合リシノレイ 酸エステルとを配合することを特徴とする ンパリング型チョコレート類の粘度低減持 方法である。
 第14の本発明は、第1~3の本発明の何れかの 脂組成物を2~19質量%配合し、油分の含有量を 29~38質量%に調整する工程と、ポリグリセリン 縮合リシノレイン酸エステルを配合する工程 とを有することを特徴とするテンパリング型 チョコレート類の製造方法である。 

 また、上記第5~9及び12~14の何れかの本発 に記載されている第1~3の本発明の何れかの 脂組成物に換えて、後述する代替油脂組成 、すなわち、1,3-ジパルミトイル-2-オレオイ グリセリン(POP)の含有量が65質量%以上であ 、オレオイルジパルミチン(P2O)に対するPOPの 質量比(POP/P2O)が0.90以上である油脂組成物を 用することができ、これらも本発明である

 本発明によると、テンパリング型チョコ ートのコーティング、特にエンローバー(上 掛け)用途に適した油脂組成物を提供するこ ができる。また、本発明によると、コーテ ング、特にエンローバー(上掛け)用途に適し た低油分のテンパリング型チョコレート類を 提供することができる。

テンパリング後のチョコレート生地の 度変化を示した図である。(比較参考例、実 施例4~5、比較例5~7) テンパリング後のチョコレート生地の 度変化を示した図である。(比較参考例、実 施例6~8、比較例8~9)

〔本発明の第1の実施の形態〕
(油脂組成物の組成)
 本発明の第1の実施の形態に係る油脂組成物 は、オレオイルジパルミチン(P2O)の含有量が7 0~85質量%であり、オレオイルジパルミチンの 、対称型トリグリセリド(POP)の質量比(POP/P2O )が0.95以上である油脂組成物であって、且つ トリパルミチン(PPP)を2~6質量%含有する。こ で、脂肪酸を表す記号を説明すると、P:パ ミチン酸、O:オレイン酸である。

 本発明でいうオレオイルジパルミチン(P2O )とは、結合位置に関係なくパルミチン酸が2 所、オレイン酸が1箇所に結合したトリアシ ルグリセロール種、すなわち、PPO、POP、及び OPPの総和を意味する。オレオイルジパルミチ ンの内、対称型トリグリセリドに相当するの は1,3-ジパルミトイル-2-オレオイルグリセリ であるPOPのみである。対称型トリグリセリ (POP)の質量比が0.95以上とは、POP/P2Oが質量ベ スで0.95以上ということである。

 本発明の油脂組成物は、P2O含量が70~85質 %であることが必要であり、75~85質量%である とが好ましい。より好ましくは、75~80質量% ある。このような油脂組成物は化学合成に っても得られるが、P2Oを豊富に含有する植 油脂、特にパーム油を分別等の加工をする とによって得ることが経済的で好ましい。

 また、本発明の油脂組成物は、上記P2O中 対称型トリグリセリド(POP)の質量比(POP/P2O) 0.95以上であることが必要であり、0.96以上で あることが好ましく、0.97以上であることが り好ましい。

 P2O含量及びPOP/P2O比が上記範囲である場合 、テンパリング型チョコレート類に配合する ことで、テンパリング後の生地粘度の上昇を 有意に抑制することができる。

 P2O中のPOP濃度を上げる方法としては、パ ム油(ヨウ素価(以下IV)約52)から高融点部(パ ムステアリン、IV30~36)と低融点部(IV62~68)と 乾式分別及び/又は溶剤分別により取り除い 中融点部(ソフト、IV41~47、POP:40質量%以上、P 2O:50質量%以上、POP/P2O=0.82~0.90)、及び中融点部 (ソフト)から更に低融点部を取り除いた中融 部(ハード、IV31~37、POP:55質量%以上、P2O:70質 %以上、POP/P2O=0.84~0.94)から適宜選択したもの を原料油として、パルミチン酸と混合し、リ パーゼ製剤を用いて1,3位選択的エステル交換 を行ってPOP濃度を高めた上で、残余の脂肪酸 を蒸留にて除去し、更にトリ飽和トリグリセ リド(主にPPP)とジ不飽和モノ飽和トリグリセ ドとを分別により除いた中融点部として得 れる。より具体的には、例えば、特開昭55-7 1797号公報、特開昭61-209298号公報に開示され いる。別の方法としては、同様のパーム中 点部を原料として、リパーゼ製剤により1,3 選択的エステル交換を行ってPOP/P2O比を高め 上で、副生したトリ飽和トリグリセリド(主 にPPP)とジ不飽和モノ飽和トリグリセリドと 分別により除いた中融点部として得ること できる。より具体的には特開平11-169191号公 に開示されている。また、別の方法として 、同様のパーム中融点部を原料として溶剤 別と乾式分別とを繰り返し、得ることがで る。より具体的には特開2000-336389号公報に開 示されている。


 また、本発明の油脂組成物は、トリパルミ ン(PPP)含量が2~6質量%であることが必要であ 、3~5.5質量%であることが好ましく、3~5質量% であることがより好ましい。3~4質量%である とがさらに好ましい。一般的にはテンパリ グ型代用脂中のトリ飽和トリグリセリドは テンパリング後の増粘やチョコレートの口 け性低下を引き起こすため、上記に例示し 公報におけるパーム中融点加工油を含め、 きる限り少なくすることが好ましいとされ いるが、本発明の油脂組成物の場合、意外 も、適量(2~6質量%)を含有することで、テン リング後に増粘することなく、コーティン もしくはエンローバー(上掛け)後は乾きが速 く、口溶けも良好であることが見出された。 PPP含量の調整は、トリパルミチンに富んだ油 脂を添加することや、エステル交換反応で副 生するPPPを利用することにより行なうことが できる。 

(油脂組成物の製造方法)
 本発明の油脂組成物は、上記のP2O含量及びP OP比が高められたパーム中融点加工油、例え 、パーム中融点部を原料として、リパーゼ 剤により1,3位選択的エステル交換を行ってP OP/P2O比を高めた上で、副生したトリ飽和トリ グリセリド(主にPPP)とジ不飽和モノ飽和トリ リセリド(主にPOO)とを分別により除いた中 点部に、トリパルミチンもしくはトリパル チンに富んだ油脂を少量配合することによ て、P2Oの含有量が70~85質量%であり、P2Oの内 対称型トリグリセリド(POP)の質量比(POP/P2O)が 0.95以上である油脂組成物であって、且つ、 リパルミチン(PPP)を2~6質量%含有する油脂組 物として得られる。トリパルミチンに富ん 油脂としては、パームステアリンを更に分 した2段分別ステアリン(以下パームハードス テアリンという、ヨウ素価15未満、PPP含量70 量%以上)が挙げられ、油脂組成物中に2~6質量 %配合されるのが好ましい。

 本発明の油脂組成物の更に好ましい製造方 としては、上記同様のパーム中融点部を出 原料として、溶剤または乾式分別により、P 2Oが70質量%以上に濃縮され、POP/P2O比が0.89~0.94 、更に好ましくは0.91~0.94までに高められた高 融点もしくは中融点部を得た後、1,3位選択性 の高いリパーゼによりエステル交換反応を行 うことが挙げられる。この方法によれば、最 後のエステル交換の工程で更にPOP/P2O比が高 られ、且つ、PPPの生成が同時に達成される め、PPPを後から別に添加する必要が無く、 済的で好ましい。

POP + PPO →(1,3位エステル交換)→ POP + POO(P POの減少) + PPP(PPPの生成) ⇒ (POP/P2O比向上)

(油脂組成物の用途)
 本発明の油脂組成物は、テンパリング型チ コレート類に配合され、テンパリング後の ョコレート生地の粘度上昇を抑える効果を するものであるから、その用途はコーティ グチョコレート類、特に、エンロービング シンを使用してなされるエンローバー(上掛 け)用途に適している。その他チョコレート 外にも、練り込み用油脂、スプレー用油脂 クリーム用油脂等に適した製菓用油脂の用 に用いることができる。

(油脂組成物中のその他の成分:乳化剤)
 本発明の油脂組成物は、その機能を阻害し い限り、チョコレートのブルーム耐性向上 アンチマイグレーション機能強化等を目的 、乳化剤を加えても良い。このときの乳化 としては、食用に使用できるものであれば 限がないが、ポリグリセリン脂肪酸エステ 、ショ糖脂肪酸エステル及びソルビタン脂 酸エステルの中から選ばれた1種または2種 上の乳化剤を使用するのが好ましく、ポリ リセリン脂肪酸エステル又はショ糖脂肪酸 ステルを使用するのがさらに好ましい。

(チョコレート類への配合量)
 本発明の油脂組成物のテンパリング型チョ レート類への配合量は、3質量%以上であり 5質量%以上であることが好ましい。上限はテ ンパリング型チョコレート類の油分含量が上 限となり、一般的には35~60質量%である。従っ て、本発明の油脂組成物のテンパリング型チ ョコレート類への配合量は3~60質量%であり、3 ~35質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましく 、3~15質量%が更に好ましく、5~15質量%が最も ましい。

 しかしながら、求められるテンパリング チョコレート類の特性によって勘案される のであって、例えば、現時点でのCODEX(国際 品規格)委員会による5%ルール(チョコレート 中にカカオ代用脂が5%を超えて含まれるとチ コレート表示が出来ない)を意識した場合、 3~5質量%の配合が好ましいケースもある。上 範囲で本発明の油脂組成物をテンパリング チョコレート類に配合することにより、テ パリング後の粘度上昇が有意に抑制される


(チョコレート類の製造方法)
 本発明のテンパリング型チョコレート類の 造は、本実施の形態に係る油脂組成物を使 すること以外は、基本的には従来からの公 の方法に準じて実施すれば良い。例えば、 糖やカカオマス等の固形分と油脂とを混合 てミキシングする工程を行なった後、混合 に対しロール掛け、コンチングを行い、テ パリング後に冷却固化して製造することが きる。 

(チョコレート類中のその他の成分)

 本発明のテンパリング型チョコレート類は その機能を阻害しない限り、チョコレート ブルーム耐性向上、アンチマイグレーショ 機能強化等を目的に、乳化剤を加えても良 。このときの乳化剤としては、食用に使用 きるものであれば制限がないが、ポリグリ リン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステ 及びソルビタン脂肪酸エステルの中から選 れた1種または2種以上の乳化剤を使用する が好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステ 又はショ糖脂肪酸エステルを使用するのが らに好ましい。 


 また、本発明のテンパリング型チョコレー 類は、通常のチョコレートに含有されるカ オ分、糖、タンパク質、乳製品、炭水化物 抗酸化剤、ビタミン、調味料、香辛料、水 等を含有させてもよい。 

(チョコレート類の用途)

 本発明のテンパリング型チョコレート類は 通常のチョコレート類の使用用途であれば 何れにおいても使用できるが、テンパリン 後のチョコレート生地の粘度上昇が抑えら るという特徴を有するものであるから、そ 用途はコーティングチョコレート類、特に エンロービングマシンを使用してなされる ンローバー(上掛け)用途に適している。菓 類又はパン類などに本発明のテンパリング チョコレート類を好適に使用できる。 

(本発明の第1の実施の形態の効果)

 本実施の形態によれば、本発明の油脂組成 をテンパリング型チョコレート類に3質量% 上配合することで、テンパリング後の粘度 昇が抑制され、コーティング、特にエンロ バー後の乾きも速く、口溶けにも優れたコ ティング、特にエンローバー用のテンパリ グ型チョコレート類を提供することができ 。 

〔本発明の第2の実施の形態〕

(チョコレート類の組成)
 本発明の第2の実施の形態に係るテンパリン グ型チョコレート類は、上記本発明の第1の 施の形態に係る油脂組成物を2~19質量%含有し 、油分の含有量が29~38質量%であって、かつ、 ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル を含有する。 


(代替油脂組成物)
 本発明の第2の実施の形態において、上記本 発明の第1の実施の形態に係る油脂組成物に えて、1,3-ジパルミトイル-2-オレオイルグリ リン(POP)の含有量が65質量%以上であり、オ オイルジパルミチン(P2O)に対するPOPの質量比 (POP/P2O)が0.90以上である油脂組成物を用いて よい。 


 POPが65質量%以上である油脂組成物は、化学 成によっても得られるが、POPを豊富に含有 る植物油脂、特にパーム油を分別等の加工 することによって得ることが経済的で好ま い。POP濃度を上げる方法としては、前述の 法がある。 


 油脂組成物中のPOP含量は、65質量%以上であ 必要があり、72質量%以上であることがより ましい。POP含量の上限としては特に限定は いが、過度の濃縮は期待できる効果以上に スト増しとなるので、90質量%以下、より実 的には80質量%以下であることが好ましい。


 また、P2Oに対するPOPの質量比(POP/P2O)は、0.90 以上である必要があり、0.92以上であること 好ましく、0.94以上であることが更に好まし 、0.96以上であることが最も好ましい。POP/P2 O比の上限としては特に限定はないが、過度 対称性の向上は期待できる効果以上にコス 増しとなるので、0.98以下であることが好ま い。POP/P2O比が上記範囲である場合、テンパ リング型チョコレート類に配合することで、 チョコレート類の口溶けが良くなり、テンパ リング後の生地粘度上昇を有意に抑制するこ とができる。 


 油脂組成物中のトリパルミチン(PPP)含量に いては、上記本発明の第1の実施の形態に係 油脂組成物と同様であるが、代替油脂組成 においては、PPP含量の規定は必須ではなく 下限値が1質量%以上であることが好ましく 2~6質量%含有されていることがより好ましい  


 当該代替油脂組成物の好ましい製造方法と ては、上記のPOP含量及びPOP/P2O質量比が高め られたパーム中融点加工油、例えば、パーム 中融点部(ハード)を原料として、リパーゼ製 により1,3位選択的エステル交換を行ってPOP/ P2O比を高めた上で、副生したトリ飽和トリグ リセリド(主にPPP)とジ不飽和モノ飽和トリグ セリド(主にPOO)とを分別により除きPOP含量 高めた中融点部に、トリパルミチンもしく トリパルミチンに富んだ油脂を少量配合す ことによって、POPの含有量が65質量%以上で り、POP/P2Oが0.90以上であって、且つ、トリパ ルミチン(PPP)を2~6質量%含有する油脂組成物と して得られる。トリパルミチンに富んだ油脂 としては、パームステアリンを更に分別した 2段分別ステアリン(以下パームハードステア ン、ヨウ素価15未満、PPP含量70質量%以上)が げられ、油脂組成物中に2~6質量%配合される のが好ましい。 


 当該代替油脂組成物の更に好ましい製造方 としては、上記同様のパーム中融点部(ハー ド)を出発原料として、溶剤または乾式分別 より、POPが70質量%以上に濃縮され、POP/P2O比 0.89~0.94、更に好ましくは0.91~0.94までに高め れた高融点もしくは中融点部を得た後、1,3 選択性の高いリパーゼによりエステル交換 応を行うことが挙げられる。この方法によ ば、最後のエステル交換の工程で更にPOP/P2O 比が高められ、且つ、PPPの生成が同時に達成 されるため、PPPを後から別に添加する必要が 無く、簡便かつ経済的で好ましい。

POP + PPO →(1,3位エステル交換)→ POP + POO(P POの減少) + PPP(PPPの生成) ⇒ (POP/P2O比向上)

(チョコレート類への配合量)

 本実施の形態における油脂組成物のテンパ ング型チョコレート類への配合量は、テン リング型チョコレート中2~19質量%であり、3~ 14質量%であることが好ましく、3~9質量%であ ことが最も好ましい。上記範囲で本発明を 成する油脂組成物をテンパリング型チョコ ート類に配合することにより、カカオ脂が ッチなチョコレート配合であっても、テン リン後の粘度上昇が有意に抑制される。ま 、チョコレート油分中の油脂組成物の配合 合としては、5~50質量%であることが好ましく 、7~30質量%であることが更に好ましく、9~19質 量%であることが最も好ましい。 


(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステ )
 本発明のテンパリング型チョコレート類は 上記本発明の第1の実施の形態に係る油脂組 成物又は上記の代替油脂組成物の他に、ポリ グリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含 有するものである。ポリグリセリン縮合リシ ノレイン酸エステルは、縮合リシノレイン酸 ポリグリセリン、ポリグリセリンポリリシノ レート、ポリグリセリン縮合リシノール酸エ ステル等と表記されることがある。製法とし ては主にヒマシ油から得られるリシノレイン 酸を脱水縮合した縮合リシノレイン酸とポリ グリセリンとのエステル化により得られるが 、実際的には市販品を使用するのが簡便で経 済的であり好ましい。市販品としては、坂本 薬品工業株式会社のSY-GlysterCR-310、CR-500、CR-ED 、CRS-75、太陽化学株式会社のサンソフトNo.818 DG、818SK、818R等が適宜使用できる。 


 テンパリング型チョコレート類へのポリグ セリン縮合リシノレイン酸エステルの添加 は、チョコレート全量に対して0.1~1.0質量% 好ましく、0.1~0.5質量%であることがより好ま しい。添加量が上記範囲である場合、経済的 に効率よくチョコレート生地の粘度低減持続 効果が得られるので好ましい。また、レシチ ン0.1~1.0質量%、好ましくは0.1~0.5質量%と併用 て使用される場合、より経済的に効率よく ョコレート生地の粘度低減持続効果が得ら るので好ましい。 


(チョコレート類の油分)
 本発明のテンパリング型チョコレート類は 上記本発明の第1の実施の形態に係る油脂組 成物又は上記の代替油脂組成物とポリグリセ リン縮合リシノレイン酸エステルとを併用す ることにより、通常のエンローバーに使用さ れるテンパリング型チョコレート(油分約40%) りも低油分ながら、テンパリング後も粘度 減持続効果が得られる。粘度低減持続効果 は、テンパリング直後の生地粘度を低減す のみではなく、その後数時間、粘度の低い 態を持続する効果である。 


 本発明のテンパリング型チョコレート類の 分は、29~38質量%であり、31~37質量%であるこ が好ましく、33~36質量%であることが更に好 しい。本発明のテンパリング型チョコレー 類の油分が上記範囲にある場合、テンパリ グ後に粘度低減持続効果が得られるので好 しい。 


(チョコレート生地のテンパリング後の粘度)
 チョコレート生地のテンパリング後の粘度 測定には、B型粘度計を使用し、32℃で、ロ ターNo6、回転数4rpmで測定した場合、粘度が 10000~30000mPasであることが好ましく、10000~25000m Pasであることがより好ましく、10000~20000mPasで あることが最も好ましい。チョコレート生地 のテンパリング後の粘度が上記範囲にある場 合、エンロービング(上掛け)作業が安定して えるので好ましい。 


(粘度低減持続剤)
 また、本発明のテンパリング型チョコレー 類においては、上記本発明の第1の実施の形 態に係る油脂組成物又は上記の代替油脂組成 物とポリグリセリン縮合リシノレイン酸エス テルとを混合したものを剤(粘度低減持続剤) して配合すると簡便で良い。粘度低減持続 としての油脂組成物とポリグリセリン縮合 シノレイン酸エステルとの混合比(質量比) 、90:10~99:1であることが好ましい。該粘度低 持続剤は、油脂組成物とポリグリセリン縮 リシノレイン酸エステルとを混合し、必要 応じて加熱融解し、均一な混合物とするこ で得られる。該粘度低減持続剤のチョコレ ト類への配合量は、2~19質量%であることが ましく、3~14質量%であることがより好ましく 、3~9質量%であることが最も好ましい。配合 が上記範囲にある場合、テンパリング後に 度低減持続効果が得られるので好ましい。 


(チョコレート類の製造方法)
 本発明のテンパリング型チョコレート類の 造は、チョコレート類の油分が29~38質量%の 囲になるように調整しつつ、上記本発明の 1の実施の形態に係る油脂組成物又は上記の 代替油脂組成物とポリグリセリン縮合リシノ レイン酸エステルとを併用すること以外は、 基本的には従来からの公知の方法に準じて実 施すれば良い。例えば、粉糖やカカオマス等 の固形分と油脂とを混合してミキシングする 工程を行なった後、混合物に対しロール掛け 、コンチングを行い、テンパリング後に冷却 固化して製造することができる。ポリグリセ リン縮合リシノレイン酸エステルは、コンチ ングの追油時に添加することが好ましい。 

(チョコレート類中のその他の成分)

 本発明のテンパリング型チョコレート類は その機能を阻害しない限り、チョコレート ブルーム耐性向上、アンチマイグレーショ 機能強化等を目的に、その他の乳化剤を加 ても良い。このときの乳化剤としては、食 に使用できるものであれば制限がないが、 合リシノレインエステル以外のポリグリセ ン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル びソルビタン脂肪酸エステルの中から選ば た1種または2種以上の乳化剤を使用するの 好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステル たはショ糖脂肪酸エステルを使用するのが らに好ましい。 


 また、本発明のテンパリング型チョコレー 類は、通常のチョコレートに含有されるカ オ分、糖、タンパク質、乳製品、炭水化物 抗酸化剤、ビタミン、調味料、香辛料、水 等を含有させてもよい。 

(チョコレート類の用途)

 本発明のテンパリング型チョコレート類は 通常のチョコレート類の使用用途であれば 何れにおいても使用できるが、テンパリン 後のチョコレート生地の粘度上昇が抑えら るという特徴を有するものであるから、そ 用途はコーティングチョコレート類、特に エンロービングマシンを使用してなされる ンローバー(上掛け)用途に適している。菓 類又はパン類などに本発明のテンパリング チョコレート類を好適に使用できる。 

(本発明の第2の実施の形態の効果)
 本実施の形態によれば、低油分であり経済 にも優れたものでありながら、テンパリン 直後の粘度を低減することができ、テンパ ング後の粘度上昇が抑制され、長時間、粘 低減状態を持続でき、かつ、コーティング 特にエンローバー後の乾きも速く、口溶け も優れたコーティング、特にエンローバー 適した低油分(油分29~38質量%)のテンパリン 型チョコレート類を提供することができる

 以下、実施例により本発明を更に詳細に 明するが、本発明はこれらの実施例により 何等制限されるものではない。

〔リパーゼ製剤の調製〕
リパーゼ製剤A:
 ノボザイムズA/S社製リポザイムTL-IM5gを特殊 機化工業(株)製L型マイコロイダーを用いて粉 砕した。粉砕したリパーゼの粒子径を堀場製 作所製の粒度分布計LA-500を用いて測定したと ころ、平均粒子径66.4μmであった。この粉末 ろ過助剤としてセルロースパウダー(日本製 ケミカル社製:平均粒子径30μm)を5g加えて粉 組成物を得た。この粉末組成物5gに対し、 種油(日清オイリオグループ(株)社製)90gおよ 商品名:O.D.O(日清オイリオグループ(株)社製 トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル)10g を添加して25℃で5時間攪拌した後ろ過して、 粉末リパーゼ製剤Aを得た。

リパーゼ製剤B:
 天野エンザイム社の商品:リパーゼDF“Amano 15-K(リパーゼDともいう)の酵素溶液(150000U/ml) 、予めオートクレーブ滅菌(121℃、15分)を行 い、室温程度に冷やした脱臭全脂大豆粉末( 肪含有量が23質量%、商品名:アルファプラスH S-600、日清コスモフーズ(株)社製)10%水溶液を 拌しながら3倍量加え、0.5N NaOH溶液でpH7.8に 調整後、噴霧乾燥(東京理科器械(株)社、SD-100 0型)を行い、粉末リパーゼ製剤Bを得た。

(実施例1~8、比較例1~9))
〔油脂組成物の調製〕
 (比較例1)油脂組成物1:
 パーム油中融点部1(組成 POP 62.3質量%、PPO+O PP 11.9質量%含有、マレーシアISF社製)を油脂 成物1とした。

 (比較例2)油脂組成物2:
 パーム油中融点部1(組成 POP 62.3質量%、PPO+O PP 11.9質量%含有、マレーシアISF社製)1200gに、 リパーゼ製剤Aを0.2質量%添加し、70℃で2時間 拌反応させた。ろ過処理によりリパーゼ製 を除去し、反応物を1184g得た。得られた反 物、1132gに、アセトン5660gを加え溶解した後 20℃に冷却し得られた固形部を除去した。 状部をさらに5℃まで冷却して得られた固形 をろ別した後、定法によりアセトン除去お び精製を行い、油脂組成物2を792g得た。

 (実施例1)油脂組成物3:
 油脂組成物2にパームハードステアリン(ヨ 素価13)を対油2%添加して、油脂組成物3を得 。

 (比較例3)油脂組成物4:
 パーム油中融点部2(組成 POP 71.5質量%、PPO+O PP 6.2質量%含有、マレーシアISF社製)を油脂組 成物4とした。

 (実施例2)油脂組成物5:
 パーム油中融点部2(組成 POP 71.5質量%、PPO+O PP 6.2質量%含有、マレーシアISF社製)350gに、 パーゼ製剤Bを0.3質量%添加し、50℃で2時間攪 拌反応させた。ろ過処理によりリパーゼ製剤 を除去し、反応物337gを得た。得られた反応 を定法により精製を行い、油脂組成物5を283g 得た。

 (実施例3)油脂組成物6:
 油脂組成物2にパームハードステアリン(ヨ 素価13、PPP 71%含有)を6質量%配合して、油脂 成物6を得た。

 (比較例4)油脂組成物7:
 油脂組成物2にパームハードステアリン(ヨ 素価13、PPP 71%含有)を9質量%配合して、油脂 成物7を得た。

 上記油脂組成物1~7のトリアシルグリセリ (TAG)組成、及びPOP/P2Oの比を表1に示す(表中 %は質量%を示す)。TAG組成はGLC(島津製作所製 GC-2010)で、POP/P2O質量比はLC-MS/MS(日本ウォー ーズ社製 Quattro micro)にて分析を行った。

 GLCを用いたTAG組成分析法についてさらに詳 く説明する。GLC分析条件を以下に挙げる。
カラム:Rtx-65TG(Restek社製)、15m×0.1μm×0.25mm
検出器:FID
キャリアガス:He
スプリット比、60:1
カラム温度℃:350℃(1min)→(1℃/min)→365℃(4min)
注入口温度:365℃
検出器温度:365℃

 LC-MS/MSを用いたPOP/P2Oの分析法についてさら 詳しく説明する。LC-MS/MSの分析条件を以下 挙げる。
カラム:一般的なODSカラム(4.6mm×25cm)2本連結
溶出溶剤:アセトン/アセトニトリルの混合系
    80/20~100/0グラージェントモード
流速:0.5ml/min
イオン源:APCI
質量分析部:MRMモード
 まず、POPと(PPO+OPP)との比を、POPとPPOの標準( フナコシ株式会社製)から作成した検量線を いて算出した。POPとPPOとを比率を振って混 し、上記条件にてLC-MS/MSに供した。M/Z=833(P2O) のプロダクトイオン M/Z=551(PO)とM/Z=557(PP)の比 率(PO/PP)を算出し、これとPOPとPPOの標準混合 との間の検量線を作成した。試料を標準と 様に上記条件にて分析してPO/PP比を求め、検 量線よりPOPと(PPO+OPP)との比を算出し、POP/P2O に換算した。

〔チョコレート生地における粘度上昇抑制効 果検証1〕
 油脂組成物1~5(比較例1~3、実施例1~2)それぞ を使用して、表2の配合に従ってチョコレー 生地1300gを調製し(比較参考例、比較例5~7、 施例4~5)、卓上型テンパリングマシンを用い て50℃/3分 ⇒ 29℃/1分 ⇒31℃/3分の条件でテ ンパリング後、温調付きミキサーに移し、31 における粘度変化を経時的に記録した。粘 はBH型粘度計を用い、ローターNo.6、回転数4 rpmで計測した。測定結果を表3及び図1に示し (表3及び図1中の粘度の単位;mPas)。

 また、別途、テンパリング後のチョコレ ト生地を型に流し込み剥離性を見ることで きの速さの指標とした。得られたチョコレ トは20℃にて1週間保存した後に口溶けの評 を行った。結果は表2に記した。

<剥離性>
◎:冷却後15分で剥がれる(乾きが速い)
○:冷却後20分で剥がれる
△:上記時間で剥がれない(乾きが遅い)

<口溶け>
◎:口溶けが良好である
○:口溶けが良好であるが、少し後に残る
△:口溶けが悪い

 表1、表2、表3及び図1の結果から、以下のこ とが分かる。
 油脂組成物1~7は全てP2Oの含有量が70~85質量% 範囲であり、その中で油脂組成物2~6は75~85 量%の範囲であった。
 POP/P2Oが0.95以上であり、PPPを2~6質量%含有す 油脂組成物3又は油脂組成物5を5質量%配合し た実施例4及び実施例5のチョコレートは、テ パリング後の粘度上昇が有意に抑制され、 た、チョコレートの乾き(剥離性)も良好で った。
 POP/P2O比が0.84と低い油脂組成物1を配合した 較例5のチョコレートは、粘度上昇抑制効果 に劣り、また、油脂組成物1にはPPPが3.2質量% まれているが、乾き(剥離性)も特段優れた のではなかった。
 POP/P2O比が0.98と高い油脂組成物2を配合した 較例6のチョコレートは、粘度上昇抑制効果 に優れていたが、油脂組成物2はPPPを1.3質量% か含まないため、乾き(剥離性)は特段優れ ものではなかった。
 POP/P2O比が0.92と、0.95に満たない油脂組成物4 を配合した比較例7のチョコレートは、粘度 昇抑制効果は見られるものの満足の行くレ ルではなかった。また、油脂組成物4はPPPを1 .8質量%しか含まないため、乾き(剥離性)は特 優れたものではなかった。
 従って、テンパリング後の粘度上昇を抑制 、かつ、乾きが速い特性を得るには、油脂 成物はP2Oの含有量が70~85質量%、POP/P2Oが0.95 上であり、PPPを2~6質量%含有する必要がある とが分かった。

〔チョコレート生地における粘度上昇抑制効 果検証2〕
 油脂組成物3(実施例1)、油脂組成物6(実施例3 )、及び油脂組成物7(比較例4)を使用して、表4 の配合に従ってチョコレート生地1300gを調製 (比較参考例、比較例8~9、実施例6~8)、卓上 テンパリングマシンを用いて50℃/3分 ⇒ 29 /1分 ⇒31℃/3分の条件でテンパリング後、 調付きミキサーに移し、31℃における粘度変 化を経時的に記録した。粘度はBH型粘度計を い、ローターNo.6、回転数4rpmで計測した。 定結果を表5及び図2に示した(表5及び図2中の 粘度の単位; mPas)。

 また、別途、テンパリング後のチョコレ ト生地を型に流し込み剥離性を見ることで きの速さの指標とした。得られたチョコレ トは20℃にて1週間保存した後に口溶けの評 を行った。結果は表4に記した。

<剥離性>
◎:冷却後15分で剥がれる(乾きが速い)
○:冷却後20分で剥がれる
△:上記時間で剥がれない(乾きが遅い)

<口溶け>
◎:口溶けが良好である
○:口溶けが良好であるが、少し後に残る
△:口溶けが悪い

 表1、表4、表5及び図2の結果から、以下のこ とが分かる。
 POP/P2Oが0.95以上であり(0.98)、PPPを2~6質量%含 する(3.1質量%)油脂組成物3を配合したチョコ レートは、チョコレート中に1質量%のみの配 (比較例8)ではテンパリング後の粘度上昇抑 の効果が十分ではなく、また、乾き(剥離性 )も何も配合していない比較参考例よりも優 なかった。
 油脂組成物3を3質量%配合した実施例6では、 粘度上昇抑制及び乾きが十分なレベルに達し ており、10質量%配合した実施例7では、テン リング後の粘度上昇が極めて抑制され、ま 、チョコレートの乾き(剥離性)も良好であり 、口溶けも良好なものであった。
 POP/P2Oが0.95以上であり(0.96)、PPPを2~6質量%含 する(5.5質量%)油脂組成物6を配合した実施例 8は、粘度上昇抑制及び乾きとも十分なレベ にあった。
 POP/P2Oが0.95以上であり(0.95)、PPP含量が7.6質 %である油脂組成物7を配合した比較例9は、 粘傾向が著しくなり、口溶けにも影響が出 きた。
 従って、テンパリング後の粘度上昇を抑制 、かつ、乾きが速い特性を得るには、本発 の油脂組成物は3質量%以上チョコレートに 合される必要があり、その効果は配合量が いほど優れたものである。また、油脂組成 中のPPP含量が6質量%を超えると増粘傾向が著 しくなるため、油脂組成物中のPPP含量は2~6質 量%とする必要があることが分かった。

(実施例9~11、比較例10~11))

〔油脂組成物の調製〕
油脂組成物A(前述の油脂組成物1と同じ):
 パーム油中融点部1(組成 POP 62.3質量%、POP/P 2O=0.84、PPP 3.2重量%、マレーシアISF社製)を油 組成物Aとした。 


油脂組成物B(前述の油脂組成物2と同じ):
 パーム油中融点部1(組成 POP 62.3質量%、POP/P 2O=0.84、PPP 3.2質量%、マレーシアISF社製)1200g 、リパーゼ製剤Aを0.2質量%添加し、70℃で2時 間攪拌反応させた。ろ過処理によりリパーゼ 製剤Aを除去し、反応物を1184g得た。得られた 反応物、1132gに、アセトン5660gを加え溶解し 後、20℃に冷却し得られた固形部を除去した 。液状部をさらに5℃まで冷却して得られた 形部を濾別した後、定法によりアセトン除 および精製を行い、油脂組成物B(組成 POP 78 .1質量%、POP/P2O=0.98、PPP 1.3質量%)を792g得た。


油脂組成物C(前述の油脂組成物3と同じ):
 油脂組成物Bにパームハードステアリン(ヨ 素価13、マレーシアISF社製)を対油2%添加して 、油脂組成物C(組成 POP 78.0質量%、POP/P2O=0.98 PPP 3.1質量%)を得た。 


油脂組成物D(前述の油脂組成物5と同じ):
 パーム油中融点部2(組成 POP 71.5質量%、POP/P 2O=0.92、PPP 1.8質量%、マレーシアISF社製)350gに 、リパーゼ製剤Bを0.3質量%添加し、50℃で2時 攪拌反応した。ろ過処理によりリパーゼ製 Bを除去し、反応物337gを得た。得られた反 物を定法により精製を行い、油脂組成物D(組 成 POP 72.1質量%、POP/P2O=0.96、PPP 3.7質量%)を28 3g得た。 


 上記油脂組成物A~DのP2O及びPPP含量はGLC(島津 製作所製 GC-2010)で、POP/P2O比はLC-MS/MS(日本ウ ーターズ社製 Quattro micro)にて分析を行っ 。GLC分析条件及びLC-MS/MSの分析条件は、前述 の条件と同じである。 


〔チョコレート生地における粘度低減持続効 果検証3〕
 油脂組成物A~Dを使用して、表6の配合に従っ てチョコレート生地1300gを調製し(比較参考例 、比較例10~11、実施例9~11)、卓上型テンパリ グマシンを用いて50℃/3分 ⇒ 29℃/1分 ⇒32 /3分の条件でテンパリング後、温調付きミ サーに移し、32℃における粘度変化を経時的 に記録した。粘度はBH型粘度計を用い、ロー ーNo.6、回転数4rpmで計測した。測定結果を 7に示した(表7の粘度の単位;mPas)。 


 また、別途、テンパリング後のチョコレー 生地を型に流し込み、剥離性を見ることで ーティングまたはエンローバー後の乾きの さの指標とした。得られたチョコレートは2 0℃にて1週間保存した後に口溶けの評価を行 た。結果は表6に記した。 


<剥離性>
◎:冷却後15分で剥がれる(乾きが速い)
○:冷却後20分で剥がれる
△:上記時間で剥がれない(乾きが遅い) 


<口溶け>
◎:口どけが良好である
○:口どけが良好であるが、少し後に残る
△:口どけが悪い 




 表7より明らかな様に、実施例9~11のチョコ ート生地は、テンパリング直後の生地粘度 、通常のチョコレートである比較参考例よ 低減されるだけではなく、生地粘度の低い 態を5~6時間持続することができた。 

 なお、表6より明らかな様に、実施例9の ョコレート生地の乾き(剥離性)は特段優れた ものではなかったが、口溶けは良好であり、 実施例10~11のチョコレート生地は、チョコレ トの乾き(剥離性)及び口溶けが良好なもの あった。

 本発明の油脂組成物を配合したテンパリ グ型チョコレート類は、テンパリング後の 度が低く抑えられるために、コーティング 特にエンローバー(上掛け)用途に最適であ 、従来複雑な温度調節が必要であったエン ービング作業の負荷を大いに軽減するもの ある。


 また、本発明のテンパリング型チョコレー 類は、テンパリング後の粘度が低く抑えら るために、コーティング、特にエンローバ (上掛け)用途に最適であり、また、低油分 あることから、経済性にも優れたものであ 。