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Patent Searching and Data


Title:
ORGANIC ELECTROLUMINESCENT ELEMENT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/139275
Kind Code:
A9
Abstract:
Provided is an organic electroluminescent (EL) element which has a structure which solves the trade-off between the problem of lowering the drive voltage and the problem of improving the yield. The organic EL element includes a substrate, a pair of electrodes provided on the substrate, and an organic electroluminescent layer interposed between the pair of electrodes. The pair of electrodes includes an anode and a cathode. The organic EL layer includes at least a light-emitting layer and a positive hole injection layer which is in contact with the anode. The positive hole injection layer is composed of an n-type semiconductor host material and a p-type semiconductor guest material, and features the lowest unoccupied molecular orbital (LUMO) level EHIC of the host material and the highest occupied molecular orbital (HOMO) level of the guest material or the equivalent electron band level EGV satisfying |EHIC| + 0.5 eV ³ |EGV| > |EHIC| - 0.6 eV.

Inventors:
TERAO YUTAKA (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/057933
Publication Date:
June 17, 2010
Filing Date:
April 21, 2009
Export Citation:
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Assignee:
FUJI ELECTRIC HOLDINGS (JP)
TERAO YUTAKA (JP)
International Classes:
H01L51/50
Attorney, Agent or Firm:
TANI, Yoshikazu et al. (Akasaka 2-chome Minato-k, Tokyo 52, JP)
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Claims:
 基板と、該基板上に設けられた一対の電極と、該一対の電極に挟持される有機EL層とを含み、該一対の電極は陽極および陰極を含み、該有機EL層は、発光層と、陽極と接触する正孔注入層とを少なくとも含み、該正孔注入層はn型半導体ホスト材料とp型半導体ゲスト材料からなり、該ホスト材料のLUMO準位E HIC と該ゲスト材料のHOMO準位または価電子帯準位E GV が、
|E HIC |+0.5eV≧|E GV |>|E HIC |-0.6eV
を満たすことを特徴とする有機EL素子。
 前記正孔注入層ホスト材料のLUMO準位E HIC と前記正孔注入層に隣接する発光層のHOMO準位E EMV が、
|E HIC |>|E EMV |-1.0eV
の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
 前記正孔注入層と前記発光層の間に正孔輸送層をさらに含み、前記正孔注入層ホスト材料のLUMO準位または伝導帯準位E HIC と前記正孔注入層に隣接する正孔輸送層のHOMO準位E HTV が、
|E HIC |>|E HTV |-1.0eV
の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
 前記正孔輸送層のLUMO準位が発光層のLUMO準位より高いことを特徴とする請求項3に記載の有機EL素子。
 前記正孔注入層ホスト材料のLUMO準位E HIC 、および前記正孔注入層ゲスト材料のHOMO準位E GV が、
|E HIC |≧|E GV |>|E HIC |-0.6eV
の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
 前記正孔注入層ホスト材料のLUMO準位または伝導帯準位E HIC の絶対値|E HIC |が5.0eV以上であることを特徴とする請求項5に記載の有機EL素子。
 前記正孔注入層のゲスト材料の濃度が、前記正孔注入層の全分子数を基準として50モル%以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
 前記正孔注入層のホスト材料が、下式(1)
(式中、Rは、各出現毎に、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、ハロゲン、アルコキシ基、アリールアミノ基、エステル基、アミド基、芳香族炭化水素基、複素環式基、ニトロ基、シアノ基からなる群から選択される)の構造を有するヘキサアザトリフェニレン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
 前記正孔注入層のホスト材料が、下式(2)
の構造を有するヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリルであることを特徴とする請求項8に記載の有機EL素子。
 前記正孔注入層のホスト材料が、酸化モリブデン(MoO 3 )、酸化タングステン(WO 3 )および酸化バナジウム(V 2 O 5 )からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
Description:
有機EL素子

 本発明は、フラットパネルディスプレイ よび照明用光源に応用可能な有機EL素子に する。特に、低駆動電圧で動作し、消費電 の低い有機エレクトロルミネッセンス素子 提供することを目的とする。

 近年、有機エレクトロルミネッセンス素 (以下、有機EL素子とも称する)は実用化に向 けての研究が活発に行われている。有機EL素 は低電圧で高い電流密度が実現できるため 高い発光輝度および発光効率を実現するこ が期待されている。この有機EL素子には、 機EL層を挟持する第1電極および第2電極が設 られており、光を取り出す側の電極は、高 過率であることが求められている。このよ な電極材料として、通常、酸化物透明導電 (TCO)材料(例えば、インジウム-スズ酸化物(IT O)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、インジウム- タングステン酸化物(IWO)等)が用いられている が、これらの材料は、仕事関数が約5eVと比較 的大きいので有機材料への正孔注入電極(陽 )として用いられる。

 従来型の正孔注入層を用いた従来技術の有 EL素子の一例の断面図を図1に示し、その正 注入過程を図2に示す。有機EL素子の発光は 基板201上に設けられた陽極202から発光層205 材料の最高占有分子軌道(HOMO)へ注入された 孔と、陰極207から最低非占有分子軌道(LUMO) 注入された電子によって生成された励起子 励起エネルギーが緩和するときに光を放出 ることによって得られる。有機EL層は少な とも発光層205を含む。一般的には、発光層 の正孔注入と電子注入を効率的に行うため 、有機EL層は、発光層に加えて、キャリア輸 送層を含む積層構造を有する。キャリア輸送 層は、正孔注入層203、正孔輸送層204、電子輸 送層206または電子注入層のいずれかまたは全 てを含んでもよい。ここで、正孔は、図2に すように、陽極202のフェルミ準位E F から、正孔注入層203のHOMOおよび正孔輸送層20 4のHOMOを介して、発光層205のHOMOへと注入され る。

 最近では、有機EL素子のさらなる低消費 力化を目的として、この様な積層構造の有 EL層を有する有機EL素子において、キャリア 送層への不純物のドーピングにより、キャ アの実効移動度を向上させるとともに、電 からのキャリア注入障壁を低減して、素子 駆動電圧を下げる技術が、特開平4-297076号 報、特開平11-251067号公報、特表2004-514257号公 報、Organic Electronics, Vol. 4, Issues 2-3(2003年9 )、89頁、ならびにApplied Physics Letters. Vol.  73, Issue 20(1998年11月)、2866頁に開示されてい (特許文献1~3、ならびに非特許文献1および2 照)。

 この技術は、無機半導体のp型ドーピング やn型ドーピングと同様の技術で、正孔注入 または正孔輸送層の場合、これらを構成す 正孔輸送材料中に、電子受容性の高い材料( クセプター)を不純物として混合することに より、電極からの正孔注入障壁(陽極の仕事 数と隣接する正孔輸送材料のHOMO準位との差) の低減、および正孔の実効移動度の向上を図 ることができる。電子注入層または電子輸送 層の場合は、これらを構成する電子輸送材料 中に、電子供与性の高い材料(ドナー)を不純 として混合することにより、電極からの電 注入障壁(陰極の仕事関数と隣接する電子輸 送材料のLUMO準位との差)の低減、および電子 実効移動度の向上を図ることができる。

 一方、LUMO準位または導電帯準位が深いn型 導体を正孔注入層に用い、陽極からの正孔 入性を向上させることにより、有機EL素子の 低駆動電圧化を図る技術が提案されている。 たとえば、特開2000-223276号公報、Applied Physics  Letters, Vol. 87, Issue 19(2005年11月7日)、Article s 193508、Journal of Applied Physics, Vol. 101, Issu e 2(2007年1月15日)、Articles 026105において、n型 無機半導体を用いた技術が提案されている( 許文献4、ならびに非特許文献3および4参照) また、特表2003-519432号公報には、n型有機半 体を用いた技術が提案されている(特許文献 5参照、なお特表2003-519432号公報中では、開示 されている有機半導体材料はp型半導体とし 機能するとされているが、実際にはn型半導 である)。n型半導体正孔注入層を用いた従 技術の有機EL素子の一例の断面図を図3に示 、その正孔注入過程を図4に示す。図3に示す 有機EL素子は、基板301の上に、陽極302、n型半 導体正孔注入層303、正孔輸送層304、発光層305 、電子輸送層306および陰極307を有する。陰極 307から電子輸送層306を介した発光層305のLUMO の電子注入は、従来型の有機EL素子(たとえ 、図1に示した素子)と同様の過程で行われる 。一方、正孔は、正孔輸送層304のHOMOの電子 、n型半導体正孔注入層303のLUMOに移動し、正 孔輸送層304のHOMOに正孔を残すことで開始さ る。ここで、陽極302および陰極307によって 加された電界により、n型半導体正孔注入層3 03のLUMOに移動した電子は陽極302のフェルミ準 位E F へと移動し、正孔輸送層304のHOMOの正孔は発 層305のHOMOへと移動する。このような機構に って、全体として陽極302から発光層305への 孔注入が行われる。なお、図4においては、 正孔の移動を破線の矢印で示し、電子の移動 を実線の矢印で示した(以下、同様)。

 この技術においては、陽極と正孔輸送層 の間に前述のようなn型半導体からなる正孔 注入層を挿入することにより、陽極-正孔注 層-正孔輸送層間のフェルミエネルギーを整 させる。その過程において、各層界面にお る電荷の移動障壁が低下することによって 孔注入性が向上する。その結果として有機E L素子の駆動電圧が低下する。

 この技術を用いた有機EL素子へ電圧を印 した際の正孔の移動は、正孔輸送層のHOMO(あ るいは価電子帯)準位にある電子が正孔注入 のLUMO(あるいは伝導帯)準位へ移動し、正孔 送層内に正孔を生成する。正孔注入層内に った電子は、LUMO(あるいは伝導帯)準位を通 て陽極方向へ輸送され、最終的には陽極の ェルミ準位へ入り、電流として検出される 一方、正孔輸送層内に生成された正孔は、 孔輸送層内を移動し、発光層へと注入され 励起子生成に利用される。このn型半導体を 孔注入層に用いた有機EL素子の低駆動電圧 技術は、陽極材料のフェルミ準位と正孔輸 層のHOMO(あるいは価電子帯)準位間のギャッ が大きい場合に特に有効である。

特開平4-297076号公報

特開平11-251067号公報

特表2004-514257号公報

特開2000-223276号公報

特表2003-519432号公報

Organic Electronics, Vol. 4, Issues 2-3(2003年9 )、89頁 Applied Physics Letters. Vol. 73, Issue 20(1998 11月)、2866頁 Applied Physics Letters, Vol. 87, Issue 19(2005 11月7日)、Articles 193508 Journal of Applied Physics, Vol. 101, Issue 2(2 007年1月15日)、Articles 026105

 有機EL素子の駆動電圧を下げるための単 な方法として、有機EL層全体の膜厚を薄くす るという手段が考えられる。しかし、全体の 膜厚を薄くすると、基板上に付着したパーテ ィクルによる陽極-陰極間短絡による素子欠 を誘発しやすくなる。特にフラットパネル ィスプレイでは、画素欠陥および/またはラ ン欠陥が多発し、ディスプレイパネルの生 歩留まりを著しく落すことにつながってし う。そのため、歩留まり向上という観点か は、有機EL素子全体の膜厚は厚い方が好ま いが、駆動電圧が高くなってしまう。すな ち、低駆動電圧化の課題と歩留まり向上と う課題とのトレードオフが存在する。

 従来技術のように、キャリア輸送層への不 物のドーピングによってキャリアの実効移 度を増大させて駆動電圧の上昇を抑制する みには、以下のような問題点がある。電子 送層中の不純物として用いられる電子供与 の高い材料としては、Li、Csなどのアルカリ 金属、またはLiF、CsF、LiO 2 、Cs 2 CO 3 などのアルカリ金属塩が一般的に用いられて いる。しかしながら、これらの材料は大気中 での安定性が低く、取り扱いに注意が必要で ある。加えて、多くの場合、高価な蒸着源の 使用が必要となる。さらに、アルカリ金属は 、その小さいサイズ(サブナノメートルオー ー)のために有機EL層中でマイグレーション 起こしやすく、有機EL層を構成する他の層を 汚染する可能性がある。前述の材料に代えて 、より大きなサイズ(ナノメートルオーダー) 有し、HOMOが比較的に浅い有機材料を用いる ことが検討されているが、そのような有機材 料は不安定であり、かつそれによって得られ る効果が小さいという問題点がある。

 一方、n型半導体を正孔注入層として用い る構成においては、n型半導体の電子移動度 必ずしも大きくないことが問題である。し がって、正孔注入層の膜厚を増大させた場 に抵抗が増大し、結果として駆動電圧が増 してしまう。

 また、特に低分子材料を用いた有機EL素 は、光が素子から出射する際の界面におけ 反射成分が大きい。これは、有機EL層材料お よび電極に用いる透明導電膜は高い屈折率(n= 1.8~2.1程度)を有し、有機EL素子と接する媒体( とえば1.5程度の屈折率を有するガラス、お び約1の屈折率を有する空気)との屈折率差 大きいためである。加えて、当該有機EL素子 の発光スペクトルおよび発光輝度は、素子内 での光の多重干渉の影響を大きく受ける。し たがって、所望の発光スペクトルおよび十分 な発光輝度が得られるように、光学的な観点 から有機EL層全体の膜厚を設計する必要があ 。しかしながら、発光層内の正孔および電 のバランス、ならびに駆動電圧への影響を 慮して各層の膜厚を設計するのは困難な部 が存在する。特に、前述の通り、十分な歩 まりが得られる膜厚以上での設計となると 駆動電圧が著しく高くなってしまうケース あった。

 本発明は、n型半導体材料を正孔注入層に 用いて、陽極からの正孔注入障壁を大幅に低 減させる技術において、このn型半導体材料 n型の不純物ドープを施すことにより、キャ ア輸送性能をさらに向上させることに基づ 。具体的には、隣接する層材料のHOMO準位と 同等以下のLUMO準位を有するn型半導体(電子輸 送性材料)のホスト材料に対して、HOMO準位が 記ホスト材料のLUMO準位と同等以上にあるゲ スト材料をドープして、正孔注入層を構成す る。

 本発明の有機EL素子は、基板と、該基板上 設けられた一対の電極と、該一対の電極に 持される有機EL層とを含み、該一対の電極は 陽極および陰極を含み、該有機EL層は、発光 と、陽極と接触する正孔注入層とを少なく も含み、該正孔注入層はn型半導体ホスト材 料とp型半導体ゲスト材料からなり、該ホス 材料のLUMO準位E HIC と該ゲスト材料のHOMO準位または価電子帯準 E GV が、
  |E HIC |+0.5eV≧|E GV |>|E HIC |-0.6eV
を満たすことを特徴とする。ここで、正孔注 入層および発光層と接触する正孔輸送層をさ らに含んでもよく、正孔輸送層のLUMO準位は 発光層のLUMO準位より高いことが好ましい。 た、(a)正孔注入層のホスト材料のLUMO準位E HIC 、および正孔注入層に隣接する発光層のHOMO 位E EMV が、
  |E HIC |>|E EMV |-1.0eV
の関係を満たすこと、または(b)正孔注入層の ホスト材料のLUMO準位E HIC 、および前記正孔輸送層のHOMO準位E HTV が、
  |E HIC |>|E HTV |-1.0eV
の関係を満たすことが望ましい。さらに、上 記(a)または(b)の関係を満たす場合、(c)E HIC の絶対値|E HIC |が5.0eV以上であることが望ましい。また、前 記正孔注入層のゲスト材料の濃度が、前記正 孔注入層の全分子数を基準として50モル%以下 であることが望ましい。

 本発明の有機EL素子において、前記正孔 入層のホスト材料が、下式(1)の構造を有す ヘキサアザトリフェニレン誘導体

(式中、Rは、各出現毎に、水素原子、炭素 1~10の炭化水素基、ハロゲン、アルコキシ基 、アリールアミノ基、エステル基、アミド基 、芳香族炭化水素基、複素環式基、ニトロ基 、シアノ基からなる群から選択される)、特 下式(2)の構造を有するヘキサアザトリフェ レンヘキサカルボニトリル

であることが望ましい。あるいはまた、正孔 注入層のホスト材料が、酸化モリブデン(MoO 3 )、酸化タングステン(WO 3 )または酸化バナジウム(V 2 O 5 )であってもよい。

 本発明の構成を採用することによって、 孔注入層はn型半導体材料からなるホスト材 料およびp型半導体からなるゲスト材料から 成されるが、このp型半導体はホスト材料中 おいてn型ドーパントとして機能することに より優れた正孔注入性能および電荷輸送性能 を有する正孔注入層を得ることが可能となる 。本発明の正孔注入層は高い電子移動度を有 するので、素子駆動電圧の上昇を伴うことな しに、膜厚を増加させることができる。この 膜厚の増大は、基板上のパーティクルに起因 する欠陥の発生を抑制し、生産性を向上させ 、高い歩留まりで有機EL素子を生産すること 可能にする。また、膜厚の自由度が増大す ことによって、発光層内の正孔-電子バラン ス、駆動電圧などを犠牲にすることなしに、 光学干渉を考慮した有機EL層の設計が可能と る。さらに、正孔注入層の優れた正孔注入 能および正孔輸送性能は、駆動電圧が低く かつ長寿命の有機EL素子を提供する。

図1は、従来型の正孔注入層を用いた従 来技術の有機EL素子の一例を示す断面図であ 。 図2は、従来型の正孔注入層を用いた従 来技術の有機EL素子における正孔注入過程を 明する図である。 図3は、n型半導体正孔注入層を用いた 来技術の有機EL素子の一例を示す断面図であ る。 図4は、n型半導体正孔注入層を用いた 来技術の有機EL素子における正孔注入過程を 説明する図である。 図5は、n型ドープn型半導体正孔注入層 用いた本発明の有機EL素子の一例を示す断 図である。 図6は、n型ドープn型半導体正孔注入層 用いた本発明有機EL素子における正孔注入 程を説明する図である。 図7は、参考例1および2、ならびに比較 1の有機EL素子の電流-電圧特性を示すグラフ である。 図8は、実施例1および比較例2の有機EL 子の電流-電圧特性を示すグラフである。 図9は、実施例1および比較例2の有機EL 子の電流密度-外部量子収率特性を示すグラ である。

 本発明の有機EL素子は、基板と、該基板 に設けられた一対の電極と、該一対の電極 挟持される有機EL層とを含み、該一対の電極 は陽極および陰極を含み、該有機EL層は、発 層と、陽極と接触する正孔注入層とを少な とも含み、該正孔注入層は、n型半導体ホス ト材料とp型半導体ゲスト材料とを含むこと 特徴とする。

 本発明の有機EL層は、n型半導体材料からな ホスト材料およびp型半導体からなるゲスト 材料から構成される正孔注入層と、正孔およ び電子の再結合によって光を発する発光層と を必須の構成要素として含む。有機EL層は、 孔輸送層、電子輸送層および/または電子注 入層をさらに含んでもよい。本発明の有機EL は、たとえば以下のような層構成を採るこ ができる。
(A) 陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(B) 陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(C) 陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子 注入層/陰極
(D) 陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子 注入層/陰極
(E) 陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子 輸送層/陰極
(F) 陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子 輸送層/電子注入層/陰極

 上記の例示の構成のうち、正孔注入層と 光層とが直接接触する(A)、(B)および(D)の構 においては、陰極から注入された電子が発 層を通過して正孔注入層に到達しないよう 材料構成または障壁構成(たとえば、発光層 および電子輸送層のLUMO(導電帯)準位と、陰極 のフェルミ準位との関係)を有することが望 しい。電子が発光層を通過して正孔注入層 到達した場合、電子は正孔注入層のLUMO準位 入り、正孔との再結合(すなわち、励起子生 成、および引き続く発光)に寄与することな 陽極に到達し、有機EL素子の発光効率を低下 させることになる。前述の構成を採ることに よって、前述の機構に基づく有機EL素子の発 効率低下を防止することが可能となる。

 図5に本発明に係る有機EL素子の一例の断 図を示す。図5の有機EL素子は、前述の(E)の 成の有機EL層を有し、基板101の上に、陽極10 2、n型ドープn型半導体からなる正孔注入層103 、正孔輸送層104、発光層105、電子輸送層106、 および陰極107が積層された構成を有する。図 5においては、基板101に直接接触して配置さ る第1電極として陽極102を用いた例を示した 、第1電極として陰極107を用いてもよい。そ の場合、積層順序は、基板101側から、陰極107 、電子輸送層306、発光層105、正孔輸送層104、 正孔注入層103、および陽極102となる。

 発光層からの光を外部に取り出すために 陽極102および陰極107のいずれか一方は光透 性電極であることが必要である。光の取り し効率向上のために、他方の電極は光反射 電極であることが望ましい。陽極102および 極107のどちらを光透過性とし、どちらを光 射性とするかは、用途に依存して適宜選択 ることができる。

 以下、本発明の有機EL素子の各構成要素 ついて述べる。

  [基板101]
 本発明の基板101は、フラットパネルディス レイの支持基板として一般的に使用されて る材料を用いて形成することができる。た えば、ガラス(無アルカリ、アルカリ)、あ いはポリカーボネートのようなプラスティ クなどの透明材料を用いて透明な基板101を 成することができる。本発明における「透 」とは、400~700nmの波長範囲内で50%以上の光 過率を有することを意味する。あるいはま 、前述の透明材料を用いて形成した支持体 に、ブラックマトリクス、カラーフィルタ 、色変換層、平坦化層、パッシベーション などの層を設けた機能性基板を、基板101と て用いてもよい。これらの追加の層は、多 表示が可能な有機EL素子を形成する際に有用 である。

 また、基板101は必ずしも透明である必要 ない。したがって、シリコンまたはセラミ クのような不透明材料を用いて基板101を形 することができる。さらに、複数のスイッ ング素子(TFTなど)を形成したシリコン基板 ガラス基板、プラスティック基板などを、 板101として使用してもよい。

  [陽極102]
 本発明に用いられる陽極102は、前述のよう 光透過性でも光反射性でもよい。光透過性 する場合は、一般的に知られている透明導 性材料を用いて、陽極102を形成することが きる。用いることができる透明導電膜材料 、ITO(インジウム-スズ酸化物)、IZO(インジウ ム-亜鉛酸化物)、IWO(インジウム-タングステ 酸化物)、AZO(Alドープ亜鉛酸化物)などの透明 導電性酸化物材料、および、ポリ(3,4-エチレ ジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホ ート)(PEDOT:PSS)などの高導電性高分子材料を む。さらに、陽極配線の電気抵抗の低減、 よび/または反射、透過率の制御を目的とし 、薄い金属材料膜(膜厚が50nm程度以下であ )と前述の透明導電性材料膜との積層構造体 することもできる。

 光反射性の陽極102を形成する際は、高反 率の金属、アモルファス合金または微結晶 合金などの反射性材料を用いることができ 。陽極102を、前述の反射性材料の膜と、前 の透明導電性材料膜との積層構造体として よい。高反射率の金属は、Al、Ag、Ta、Zn、Mo 、W、Ni、Crなどを含む。高反射率のアモルフ ス合金は、NiP、NiB、CrPおよびCrBなどを含む 高反射率の微結晶性合金は、NiAl、Ag合金な を含む。

 透明導電性酸化物材料、高反射率の金属 アモルファス合金および微結晶性合金の膜 、蒸着、スパッタなどの当該技術において られている任意の方法で形成することがで る。一方、PEDOT:PSSなどの高導電性高分子材 の膜は、スピンコート、インクジェット印 など当該技術で知られている任意の方法で 成することができる。

  [陰極107]
 陰極107は、低仕事関数(4.0eV以下)の金属、低 仕事関数の合金、低仕事関数の電気伝導性化 合物、およびこれらの混合物を用いて形成す ることができる。これら材料の具体例は、ナ トリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグ シウム、リチウム、マグネシウム・銀合金 アルミニウム/酸化アルミニウム、アルミニ ム・リチウム合金、インジウム、希土類金 などを含む。

 本発明に用いられる陰極107は、前述のよ に光透過性でも光反射性でもよい。光透過 の陰極107が望ましい場合、前述の材料の薄 (膜厚10nm程度以下である)と前述の透明導電 酸化物材料の膜との積層構造体を陰極とし 用いることができる。光反射性の陰極107が ましい場合、陰極107を前述の低仕事関数材 の薄膜の単層としてもよい。あるいはまた 陰極107を、前述の低仕事関数材料の薄膜と 前述の反射性材料の膜との積層構造体をと てもよい。

 前述の低仕事関数材料の膜は、蒸着、ス ッタなどの当該技術において知られている 意の方法により作製することができる。

  [電極の形状」
 本発明の陽極102および陰極107のそれぞれは 一体の膜として形成されてもよい。この場 、本発明の有機EL素子は、面発光光源とし 使用することができる。あるいはまた、陽 102および陰極107の一方または両方を複数の 分電極に分割することによって、複数の独 して制御可能な発光部を有する有機EL素子を 得ることができる。

 たとえば、陽極102および陰極107の両方を 複数のストライプ状部分電極で構成し、陽 102のストライプ状部分電極が延びる方向を 陰極107のストライプ状部分電極が延びる方 と交差させることによって、パッシブマト クス駆動型の有機EL素子を得ることができ 。この場合、好ましくは、陽極102のストラ プ状部分電極が延びる方向を、陰極107のス ライプ状部分電極が延びる方向と直交させ 。

 別法として、陽極102および陰極107のうち 板101側に形成される電極(基板側電極)を複 の部分からなる部分電極として形成し、他 (対向電極)を一体の共通電極として形成して もよい。ここで、基板側電極の部分電極を、 基板101上に設けてもよい複数のスイッチング 素子と1対1で接続することによって、アクテ ブマトリクス駆動型の有機EL素子を得るこ ができる。

  [有機EL層]
 以下、有機EL層の各構成層について詳述す 。各構成層は、蒸着(抵抗加熱蒸着または電 ビーム加熱蒸着)などの当該技術において知 られている任意の手段を用いて作製すること ができる。

   [正孔注入層103]
 本発明における正孔注入層103は、n型半導体 からなるホスト材料とp型半導体からなるゲ ト材料とで構成される。ホスト材料は、隣 する有機EL層の構成層材料のHOMO準位E NV (発光層と隣接する場合には発光層のHOMO準位E EMV 、正孔輸送層と隣接する場合には正孔輸送層 のHOMO準位E HTV )と同等以下のLUMO準位E HIC を有する。「隣接する有機EL層の構成層」と 、正孔注入層103の陽極102とは反対側に接触 ている層を意味し、前述の(A)、(B)および(D) 構成においては発光層105であり、(C)、(E)(図 5の構成)および(F)の構成においては正孔輸送 104である。本発明の目的において、各構成 のHOMO準位は、通常負の数値であり、その絶 対値は大気中光電子分光装置(たとえば理研 器株式会社製AC-2)などによって測定されるイ オン化ポテンシャル(I p )に相当する。また、各構成層のLUMO準位は、 述のように測定されるイオン化ポテンシャ と、光吸収によるバンドギャップの測定値 を用いて計算することができる。

 非晶質状態にある材料のHOMOおよびLUMO準位 、複数の分子の軌道相互作用によって複数 エネルギー準位に分裂し、通常ガウシアン 布にしたがって分布し、それぞれ価電子帯 よび導電帯を形成する。本明細書において 狭義(気相状態)のHOMOおよび価電子帯を「HOMO と総称し、狭義(気相状態)のLUMOおよび導電 を「LUMO」と総称する。上記のHOMOおよびLUMO 位の分布を考慮すると、下記の式(I)の関係 満たすことによって、隣接する有機EL層の 成層のHOMO準位にある電子が正孔注入層103のL UMO準位へ移動する際の障壁を低くすることが できる。
  |E HIC |≧|E NV |-1.0eV   (I)

 また、ゲスト材料、および隣接する有機EL の構成層の材料の設計の自由度を向上させ という観点から、ホスト材料のLUMO準位E HIC は、下記の式(II)を満たすことが望ましい。
  |E HIC |≧5.0eV   (II)

 特に、発光層の発光色を青色とすることが 望される場合、E HIC は、下記の式(II’)を満たすことが望ましい
  |E HIC |≧5.5eV   (II’)

 一方、正孔注入層103を構成するゲスト材料 、ホスト材料のLUMO準位E HIC と同等以上のHOMO準位E GV を有する。前述と同様に準位の分布を考慮す ると、E GV は、下記の式(III)の関係を満たすことが望ま い。
  |E HIC |+0.5eV≧|E GV |>|E HIC |-0.6eV   (III)
より好ましくは、E GV は、下記の式(III’)の関係を満たすことが望 しい。
  |E HIC |≧|E GV |>|E HIC |-0.6eV   (III’)

 式(III)の関係を満たすことによって、ホ ト材料のLUMOとゲスト材料のHOMOとの間の電子 授受が容易となる。その結果、ホスト材料と ゲスト材料が電荷移動錯体を形成し、正孔注 入層103全体としてのキャリア移動度が増大し 、有機EL素子の駆動電圧を低くすることが可 となる。さらに、式(III)の関係を満たすこ によって、隣接する有機EL層の構成層への正 孔注入も容易となる。また、本発明の正孔注 入層103は、全分子数を基準として50モル%以下 のゲスト材料を含むことが望ましい。

 本発明の正孔注入層103のホスト材料とし 用いることができる材料は、式(1)の構造を するヘキサアザトリフェニレン誘導体:

(式中、Rは、各出現毎に、水素原子、炭素 1~10の炭化水素基、ハロゲン、アルコキシ基 、アリールアミノ基、エステル基、アミド基 、芳香族炭化水素基、複素環式基、ニトロ基 、シアノ基からなる群から選択される)を含 。より好ましくは、ホスト材料は、式(2)の 造を有するヘキサアザトリフェニレンヘキ カルボニトリル(HAT-6CN)である。

 あるいはまた、2,3,5,6-テトラフロロ-7,7,8,8- トラシアノキノジメタン(F 4 -TCNQ)のようなテトラシアノキノジメタン誘導 体などの有機半導体材料を、正孔注入層103の ホスト材料として用いてもよい。さらに、酸 化モリブデン(MoO 3 )、酸化タングステン(WO 3 )、酸化バナジウム(V 2 O 5 )などのn型無機半導体をホスト材料として用 てもよい。

 正孔注入層103のゲスト材料として用いる とができる材料は、ホスト材料に対する電 供与性を有する材料であり、一般的な有機E L素子の正孔輸送材料を含む。用いることが きるゲスト材料の例は、N,N’-ジフェニル-N,N ’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4 ,4’-ジアミン(TPD)、N,N,N’,N’-テトラキス(4- トキシフェニル)-ベンジジン(MeO-TPD)、4,4’,4 -トリス{1-ナフチル(フェニル)アミノ}トリフ ェニルアミン(1-TNATA)、4,4’,4”-トリス{2-ナフ チル(フェニル)アミノ}トリフェニルアミン(2- TNATA)、4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルフェ ニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、4,4 -ビス{N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ}ビフ ニル(NPB)、2,2’,7,7’-テトラキス(N,N-ジフェ ルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-TAD )、N,N’-ジ(ビフェニル-4-イル)-N,N’-ジフェニ ル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(p-BPD)、 リ(o-ターフェニル-4-イル)アミン(o-TTA)、トリ (p-ターフェニル-4-イル)アミン(p-TTA)、1,3,5-ト ス[4-(3-メチルフェニルフェニルアミノ)フェ ニル]ベンゼン(m-MTDAPB)、4,4’,4”-トリス-9-カ バゾリルトリフェニルアミン(TCTA)を含む。

 何らの理論に拘束されることを意図するも ではないが、本発明の正孔注入層103は、以 の機構によって隣接する有機EL層の構成層 に正孔をもたらすものと考えられる。
(a) 隣接する有機EL層の構成層のHOMO準位にあ 電子を正孔注入層103のホスト材料のLUMO準位 に引き抜いて、隣接する有機EL層の構成層に 孔を生成する。引き抜かれた電子はホスト 料のLUMO準位を移動し、陽極102のフェルミ準 位E F に移動する。
(b) 正孔注入層103のゲスト材料のHOMOにある電 子が、ホスト材料のLUMO準位に移動し、ゲス 材料に正孔を生成する。ホスト材料に移動 た電子は、ホスト材料のLUMO準位を移動し、 極102のフェルミ準位E F に移動する。ゲスト材料の正孔は、隣接する 有機EL層の構成層へと移動し、隣接する有機E L層の構成層に正孔を生成する。

 上記の構成を採る本発明の正孔注入層103は 高いキャリア移動度(すなわち、低いバルク 抵抗)を有するため、膜厚を比較的厚くする とができる。正孔注入層103の膜厚の増大は 基板101および/または基板側電極(図5の構成 おいては陽極102)の上に付着したパーティク によって引き起こされる陽極-陰極間短絡に よる素子欠陥を防止する点において有効であ る。しかしながら、正孔注入層103のホスト材 料として可視域(400~700nm)における吸光係数が きい材料を用いると、発光層105の発光が正 注入層103に吸収され、発光輝度が低下する それがある。この場合には、ホスト材料と て可視域の吸光係数の小さい材料を用いる とが望ましい。たとえば、HAT-6CN、MoO 3 、WO 3 などが好ましい材料である。

   [正孔輸送層104]
 正孔輸送層104は、正孔注入層103から移動し 正孔を発光層105に輸送するための層である 正孔輸送層104は、任意選択的に設けてもよ 層であるが、設けることが非常に望ましい である。前述の(C)、(E)または(F)の構成のよ に正孔輸送層104が存在する場合、正孔輸送 104のHOMO準位E HTV がE NV であり、前述の式(I)を満たすことが必要であ る。また、発光効率の低下を防止するために 、発光層105のLUMO準位に存在する電子が発光 105から流出することを防止する機能を有す ことが望ましい。したがって、正孔輸送層10 4のLUMO準位E HTC および発光層105のLUMO準位E EMC が、下記の式(V)を満たすことが望ましい。
    |E EMC |>|E HTC |   (V)

 正孔輸送層104は、トリアリールアミン部 構造を有する材料、カルバゾール部分構造 有する材料、オキサジアゾール部分構造を する材料など、当該技術において知られて る任意の材料を用いて形成することができ 。

 また、発光層105への正孔注入性を考慮する 、正孔輸送層104のHOMO準位E HTV (すなわち、E NV )が、発光層105のHOMO準位E EMV に近いことが望ましい。この観点から、例え ば、発光層のホスト材料として9,10-ジ(2-ナフ ル)アントラセン(ADN)(Ip=5.8eV)を用いる場合は 、NPB(Ip=5.4eV)、spiro-TAD(Ip=5.4eV)、p-TTA(Ip=5.6eV)、m -MTDAPB(Ip=5.7eV)、TCTA(Ip=5.7eV)などの材料を用い 正孔輸送層104を作製することが望ましい。

   [発光層105]
 発光層105は、陽極102から注入された正孔と 極から注入された電子とを再結合して励起 を生成し、そして励起子の緩和の際に発光 る層である。発光層105は、所望する色調に じて選択される材料から作製することがで る。たとえば、青色から青緑色の光を発す 発光層105を形成するためには、ベンゾチア ール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオ サゾール系などの蛍光増白剤;スチリルベン ゼン系化合物;芳香族ジメチリデイン系化合 などを使用することができる。あるいはま 、これらの材料をホスト材料として用い、 望の光学バンドギャップを有するドーパン を添加することによって、発光層105を作製 てもよい。ドーパントとしては、たとえば ーザ色素としての使用が知られているペリ ン(青色)などを用いることができる。

 前述の(A)、(B)または(D)の構成のように発光 105が正孔注入層103と接触する場合、発光層1 05のHOMO準位E EMV がE NV であり、前述の式(I)を満たすことが必要であ る。また、この構成の場合、発光層105から正 孔注入層103への電子の流出を防止するために 、発光層105のLUMO準位E EMC を、正孔注入層103の反対側に隣接する電子輸 送層106または電子注入層のLUMO準位E ETC 、あるいは陰極107のフェルミ準位E F' より浅くして(式(VI)または式(VII))、正孔-電子 再結合部位(励起子生成部位)を発光層105の正 注入層103との界面とは反対側の界面付近と ることが好ましい。
    |E ETC |≧|E EMC |   (VI)
     |E F' |≧|E EMC |   (VII)

   [電子輸送層106]
 電子輸送層106は、陰極107から注入された電 、または陰極107から電子注入層(不図示)を して注入された電子を、発光層105へ伝達す ための層である。電子輸送層106は、任意選 的に設けてもよい層である。電子輸送層106 :2-(4-ビフェニリル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3 ,4-オキサジアゾール(PBD)、1,3,5-トリス(4-t-ブ ルフェニル-1,3,4-オキサジアゾリル)ベンゼン (TPOB)のようなオキサジアゾール誘導体;3-フェ ニル-4-(1’-ナフチル)-5-フェニル-1,2,4-トリア ール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体;トリ ジン誘導体;フェニルキノキサリン類;5,5’- ス(ジメシチルボリル)-2,2’-ビチオフェン(BM B-2T)、5,5’-ビス(ジメシチルボリル)-2,2’:5’2 ’-ターチオフェン(BMB-3T)のようなチオフェン 誘導体;アルミニウムトリス(8-キノリノラー )(Alq 3 )のようなアルミニウム錯体などを用いて形 することができる。

   [電子注入層]
 電子注入層(不図示)は、陰極107からの電子 注入を促進し、注入された電子を電子輸送 106または発光層105へ伝達するための層であ 。電子注入層1は、任意選択的に設けてもよ 層である。一般的に、電子注入層は:Li 2 O、およびNa 2 Oなどのアルカリ金属酸化物;Na 2 SおよびNa 2 Seなどのアルカリ金属カルコゲナイド;CaO、BaO 、SrOおよびBeOなどのアルカリ土類金属酸化物 ;BaSおよびCaSeなどのアルカリ土類金属カルコ ナイド;LiF、NaF、KF、CsF、LiCl、KClおよびNaCl どのアルカリ金属ハロゲン化物;CaF 2 、BaF 2 、SrF 2 、MgF 2 およびBeF 2 などのアルカリ土類金属のハロゲン化物;ま はCs 2 CO 3 などのアルカリ金属炭酸塩を用いて作製する ことができる。

 あるいはまた、前述の電子輸送層106用の材 に対して、Li、Na、K、Csなどのアルカリ金属 、LiF、NaF、KF、CsFなどのアルカリ金属ハロゲ 化物、またはCs 2 CO 3 などのアルカリ金属炭酸塩をドープして、電 子注入層を作製してもよい。

  <参考例1>
 本参考例は、本発明の有機EL素子に用いる 孔注入層のキャリア移動度の高さを実証す ことを目的とする。ガラス基板(縦50mm×横50mm ×厚さ0.7mm;コーニング製1737ガラス)上に、DCマ グネトロンスパッタ法(ターゲット:In 2 O 3 +10質量%ZnO、放電ガス:Ar+0.5体積%O 2 、放電圧力:0.3Pa、放電電力:1.45W/cm 2 、基板搬送速度162mm/min)を用いて膜厚110nmのIZO 膜を形成した。次いで、得られたIZO膜をフォ トリソグラフィ法により2mm幅のストライプ形 状に加工することにより、IZO電極を形成した 。

 次いで、IZO電極上に、HAT-6CN(Ip≒5.8eV)とNPB (Ip=5.4eV)を同時に抵抗加熱蒸着して、膜厚100nm のNPBドープHAT-6CN膜を形成した。このとき、HA T-6CNの蒸着速度を1Å/sに設定し、NPBの蒸着速 を0.25Å/sに設定した。得られたNPBドープHAT- 6CN膜中のNPBの含有量は、膜厚比から計算する と、膜中の全分子数を基準として約10モル%で あった。

 引き続いて、真空を破ることなしに、幅2 mmのスリット状開口部を有するメタルマスク 通して、蒸着速度0.5Å/sにて金を蒸着させ 膜厚20nm、幅2mmの金電極を形成し、モデル素 を得た。

  <参考例2>
 NPBの蒸着速度を1.75Å/sに設定したことを除 て、参考例1の手順を繰り返して、モデル素 子を得た。NPBドープHAT-6CN膜中のNPBの含有量 、膜厚比から計算すると、膜中の全分子数 基準として約45モル%であった。

  <比較例1>
 参考例1と同様の手順によりIZO電極を形成し た。次いで、IZO電極上に、1Å/sの蒸着速度に てHAT-6CNのみを蒸着し、膜厚100nmのHAT-6CN膜を 成した。引き続いて、参考例1と同様の手順 より金電極を形成して、モデル素子を得た

  <評価1>
 参考例1および2、ならびに比較例1のモデル 子のIZO電極を陽極とし、金電極を陰極とす ように電圧を印加して、電流-電圧特性を測 定した。その結果を図7に示す。図7から、参 例1および2のNPBドープHAT-6CN膜は、比較例1の HAT-6CN単体膜よりも電流が流れやすいことが かる。すなわち、NPBドープHAT-6CN膜は、HAT-6CN 単体膜よりも高いキャリア移動度(正孔移動 )を有することが分かる。さらに、参考例1お よび2の比較から、ゲスト材料NPBの含有量の 大によって、キャリア移動度が増大してい ことが分かる。

  <実施例1>
 基板101として、縦50mm×横50mm×厚さ0.7mmのコ ニング製1737ガラスを用いた。基板101上に、D Cマグネトロンスパッタ法(ターゲット:In 2 O 3 +10質量%ZnO、放電ガス:Ar+0.5体積%O 2 、放電圧力:0.3Pa、放電電力:1.45W/cm 2 、基板搬送速度162mm/min)を用いて膜厚110nmのIZO 膜を形成した。次いで、得られたIZO膜をフォ トリソグラフィ法により2mm幅のストライプ形 状に加工することにより、110nmの膜厚および2 mmの幅を有する陽極102を形成した。

 次いで、陽極102上に、HAT-6CNとNPBを同時に抵 抗加熱蒸着して、膜厚200nmのNPBドープHAT-6CN膜 からなる正孔注入層103を形成した。このとき 、HAT-6CNの蒸着速度を1Å/sに設定し、NPBの蒸 速度を0.9Å/sに設定した。得られた正孔注入 層103中のNPBの含有量は、体積比から計算する と、正孔注入層103中の全分子数を基準として 約30モル%であった。ここで、ホスト材料であ るHAT-6CNのLUMO準位(E HIC )は、約-5.8eVであった。また、ゲスト材料で るNPBのHOMO準位(E GV )は、-5.4eVであった。

 さらに、抵抗加熱蒸着法を用いて、正孔注 層103の上に、NPBからなる膜厚20nmの正孔輸送 層104、4,4’-ビス(2、2’-ジフェニルビニル)ビ フェニル(DPVBi)からなる膜厚25nmの発光層105、A lq3からなる膜厚20nmの電子輸送層106を順次形 した。これらの層は、全て1Å/sの蒸着速度 て形成した。ここで、正孔輸送層104の材料 あるNPBのHOMO準位(E NV =E HTV )は、-5.4eVであり、LUMO準位(E HTC )は、-2.4eVであった。また、発光層105の材料 あるDPVBiのLUMO準位(E EMC )は、-2.9eVであった。

 さらに、抵抗加熱蒸着法を用いて、電子 送層106の上に、0.2Å/sの蒸着速度にてLiFを 着し、膜厚1nmの電子注入層を形成した。最 に、抵抗加熱蒸着法を用いて、電子注入層 上に、幅2mmのスリット状開口部を有するメ ルマスクを通して、2Å/sの蒸着速度にてAlを 蒸着し、膜厚100nmの陰極107を形成した。

 引き続いて、陰極107以下の層を形成した 層体を、大気にふれることなしに窒素置換 ライボックス中に移送した。ドライボック 中で、4辺付近にエポキシ系接着剤を塗布し た封止ガラス板(縦41mm×横41mm×厚さ1.1mm、日本 電気硝子製OA-10)を、陰極107以下の層を覆うよ うに接着して封止を行い、有機EL素子を得た

  <比較例2>
 正孔注入層として、膜厚200nmのHAT-6CN膜を形 したことを除いて実施例1の手順を繰り返し て、有機EL素子を得た。

  <評価2>
 実施例1および比較例2の有機EL素子の電流- 圧特性を測定した。その結果を図8に示す。 た、発光輝度の角度依存性がランバーシア 則(lambertian rule)にしたがうと仮定した場合 外部量子効率の電流依存特性を図9に示す。

 図8から明らかなように、NPBドープHAT-6CN膜 らなる正孔注入層103を有する実施例1の有機E L素子の駆動電圧は、HAT-6CN単体膜からなる正 注入層を有する比較例2の有機EL素子と比較 て、電流密度1A/cm 2 において約4V、および電流密度0.1A/cm 2 において約1.5V低くなっている。一方、図9よ 、実施例1および比較例2の有機EL素子の外部 量子効率は、ほぼ同等であることがわかる。 この結果から、本発明にしたがって、深いLUM O準位を有するホスト材料に対してゲスト材 をドープした正孔注入層を用いることによ て、有機EL素子の発光特性に影響を与えるこ となしに、駆動電圧の低電圧化が達成できる ことが明らかとなった。

 101,201,301 基板
 102,202,302 陽極
 103 n型ドープn型半導体からなる正孔注入層
 203 n型半導体正孔注入層
 303 従来型正孔注入層
 104,204,304 正孔輸送層
 105,206,306 発光層
 106,206,306 電子輸送層
 107,207,307 陰極




 
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