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Patent Searching and Data


Title:
ORGANOPOLYSILOXANE COMPOSITION AND PROCESS FOR PRODUCING ROPE STRUCTURE WITH THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/118996
Kind Code:
A1
Abstract:
An organopolysiloxane composition is provided with which a rope structure having excellent fatigue properties can be produced. Also provided are: a rope structure obtained with the composition; and a process for producing the rope structure. The organopolysiloxane composition includes an organopolysiloxane represented by the following formula (I) and having an average degree of polymerization of 50,000-200,000. This organopolysiloxane composition is applied to liquid-crystal polymer filaments in the step of forming a rope structure from the liquid-crystal polymer filaments. [Chemical formula 1] (I) (In the formula, X1, X2, X3, and X4 are the same or different and each represents -H, -OH, -COOH, -R, -NH2, -ROH, -RCOOH, or -RNH2 (wherein R represents alkyl or aryl), and m and n each is an integer of 1 or larger.)

Inventors:
UEHATA AKIHIRO (JP)
OGINO YUJI (JP)
MINE MARIKO (JP)
YAMAMOTO YOUICHI (JP)
KAWAMOTO MASAO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/000642
Publication Date:
October 01, 2009
Filing Date:
February 17, 2009
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Assignee:
KURARAY CO (JP)
UEHATA AKIHIRO (JP)
OGINO YUJI (JP)
MINE MARIKO (JP)
YAMAMOTO YOUICHI (JP)
KAWAMOTO MASAO (JP)
International Classes:
C08L83/04; D06M15/643; D07B1/02
Foreign References:
JP2007160759A2007-06-28
JP2003137609A2003-05-14
JP2007016333A2007-01-25
JP2007523267A2007-08-16
JP2006518011A2006-08-03
JP2004524244A2004-08-12
JP2003261765A2003-09-19
JP2005226199A2005-08-25
JP2004197263A2004-07-15
JPH07305277A1995-11-21
JPS599270A1984-01-18
Other References:
See also references of EP 2275491A4
Attorney, Agent or Firm:
SUGIMOTO, Shuji et al. (JP)
Shuji Sugimoto (JP)
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Claims:
 液晶ポリマーフィラメントに適用するためのオルガノポリシロキサン組成物であって、下記式(I)で表わされるとともに、平均重合度が50,000~200,000であるオルガノポリシロキサンを含むロープ構造体用オルガノポリシロキサン組成物。
 
 (式中、X1,X2,X3及びX4は、それぞれ同一または異なって、-H、-OH,-COOH、-R、-NH 2 、-ROH、-RCOOH、または-RNH 2 を表し、Rはアルキル基またはアリ-ル基を示す。またm,nは1以上の整数を示す。)
 請求項1において、乳化剤および浸透剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するオルガノポリシロキサン組成物。
 請求項2において、浸透剤がジアルキルスルホサクシネートおよびシリコーン系界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であるオルガノポリシロキサン組成物。
 ロープ構造体を製造する方法であって、
 液晶ポリマーフィラメントを形成または準備するフィラメント形成工程と、
 液晶ポリマーフィラメントからヤーンを形成するヤーン形成工程と、
 前記液晶ポリマーヤーンからストランドを形成するストランド形成工程と、
 前記液晶ポリマーストランドからロープ構造体を形成するロープ構造体形成工程とを含み、
 前記フィラメント形成工程、前記ヤーン形成工程、前記ストランド形成工程、および前記ロープ構造体形成工程からなる群から選ばれる少なくとも一つの工程において、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物を前記液晶ポリマーフィラメントの少なくとも一部に適用するロープ構造体の製造方法。
 請求項4において、フィラメント形成工程において、オルガノポリシロキサン組成物を液晶ポリマーフィラメントに対して付着させる製造方法。
 請求項4または5において、液晶ポリマーフィラメントを構成する液晶ポリマーが全芳香族ポリエステルで構成される製造方法。
 請求項4~6のいずれか一項において、フッ素樹脂を付着する工程を実質的に含まない製造方法。
 液晶ポリマーフィラメントからなるヤーンで構成され、請求項1~3のいずれか一項に記載のオルガノポリシロキサン組成物を用いたロープ構造体。
 請求項4~7のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたロープ構造体。
 
Description:
オルガノポリシロキサン組成物 よびそれを用いたロープ構造体の製造方法 関連出願

 本願は2008年3月25日出願の特願2008-078670の 先権を主張するものであり、その全体を参 により本出願の一部をなすものとして引用 る。

 本発明は、耐疲労性に優れたコード、ロ プ、ケーブル等のロープ構造体の製造方法 関する。なお、通常、直径が1/4インチ(6.4mm) から5インチ(127mm)のものをロープとし、それ 上のものをケーブル、それ以下のものをコ ドと称する場合が多い。

 従来、コード、ロープ、ケーブル等のロ プ構造体は、陸・海運業、漁業、農業など 産業資材分野で広く使用され、このような ープ構造体の原糸としてポリプロピレン、 イロン、ビニロンなどの合成繊維が使われ いる。しかし、これらの繊維で形成された ープ構造体は、使用に伴う疲労により切断 やすく、したがって耐用年数を向上するこ が出来ない。

 特に、最近の陸上及び水産資材分野にお る用途の細分化、技術の多様化等に伴い、 品に対する要求性能は益々向上、拡大する 向があり、これらのロープ構造体を用いて 海洋より高質量物を滑車、ドラム、プーリ などを介して引き上げに用いる場合、ロー 構造体へのダメージが大きく見られる。

 例えば、特開平2-210072号公報(特許文献1) は、強度10g/d以上かつ弾性率400g/d以上を有す る繊維に対して、下記一般式で示されるオル ガノポリシロキサンおよびフッ素樹脂を付着 した高強度・高弾性率繊維が開示されている 。

 

 式中、m,nは1以上の整数、XはOH,NH 2 ,R-OH,又はR-NH 2 を示す。但しRはアルキル基またはフェニル を示す。

 この発明では、前記オルガノポリシロキ ンとフッ素樹脂とを組み合わせて高強力・ 弾性率繊維に適用することにより、高強力 高弾性率繊維の耐摩耗性を向上させている

 また、米国特許6945153号明細書(特許文献2) には、ロープの耐用年数を向上させるため、 リオトロピック液晶フィラメントまたはサー モトロピック液晶フィラメントと、高強力・ 高弾性率ポリエチレンフィラメントとから形 成した編み込みロープが開示されている。

特開平2-210072号公報

米国特許6945153号明細書

 しかしながら、特許文献1では耐疲労性が 不十分であるとともに、オルガノポリシロキ サン単独では、湿潤時および高温時での高強 力・高弾性率繊維の耐摩耗性が低下してしま う。そのためフッ素樹脂の付着が必要となる が、その一方で、フッ素樹脂を付着させる際 に高温焼成が必要であるため、高温焼成に由 来して、繊維の性能が低下する虞がある。ま た、特許文献2においても、さらなる耐疲労 の向上が望まれている。

 従って本発明の目的は、耐疲労性に優れた ープ構造体を製造するのに有用なオルガノ リシロキサン組成物およびそれを用いたロ プ構造体、さらにはその製造方法を提供す ことにある。
 本発明の別の目的は、高荷重をかけた場合 あっても、優れた耐疲労性をロープ構造体 付与することができるオルガノポリシロキ ン組成物およびそれを用いたロープ構造体 さらにはその製造方法を提供することにあ 。
 本発明のさらに別の目的は、湿潤下および/ または高温下で用いた場合であっても、耐疲 労性をロープ構造体に付与することができる オルガノポリシロキサン組成物およびそれを 用いたロープ構造体、さらにはその製造方法 を提供することにある。

 本発明者らは、上記した従来技術の問題 を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、特 の高重合度のオルガノポリシロキサン(以下 、ポリシロキサンと称する場合がある)を、 晶ポリマーフィラメントヤーンに対して、 み合わせることにより、従来では達成でき かった耐疲労性、特に高負荷を加えた場合 、湿潤下および/または高温下で用いた場合 あっても、ロープ構造体に対して優れた耐 労性を与えることを見出し、本発明を完成 た。

 すなわち、上記の検討結果に基づいてなさ た本発明は、
 液晶ポリマーフィラメントに適用するため オルガノポリシロキサン組成物であって、 記式(I)で表わされるとともに、平均重合度 50,000~200,000であるオルガノポリシロキサン 含むロープ構造体用オルガノポリシロキサ 組成物である。

 

 (式中、X1,X2,X3及びX4は、それぞれ同一また 異なって、-H、-OH,-COOH、-R、-NH 2 、-ROH、-RCOOH、または-RNH 2 を表し、Rはアルキル基またはアリ-ル基を示 。またm,nは1以上の整数を示す。)

 前記オルガノポリシロキサン組成物は、 化剤および浸透剤からなる群から選ばれる なくとも1種を含有していてもよく、例えば 、浸透剤は、ジアルキルスルホサクシネート およびシリコーン系界面活性剤からなる群か ら選ばれる少なくとも1種であってもよい。

 さらに、本発明はロープ構造体を製造する 法を包含し、前記製造方法は、液晶ポリマ フィラメントを形成または準備するフィラ ント形成工程と、液晶ポリマーフィラメン からヤーンを形成するヤーン形成工程と、 記液晶ポリマーヤーンからストランドを形 するストランド形成工程と、前記液晶ポリ ーストランドからロープ構造体を形成する ープ構造体形成工程とを含み、前記フィラ ント形成工程、前記ヤーン形成工程、前記 トランド形成工程、および前記ロープ構造 形成工程からなる群から選ばれる少なくと 一つの工程(例えば、フィラメント形成工程 )において、前記オルガノポリシロキサン組 物を前記液晶ポリマーフィラメントの少な とも一部に適用する。なお、この製造方法 は、フッ素樹脂を付着する工程を実質的に まなくてもよい。
 前記製造方法では、液晶ポリマーフィラメ トを構成する液晶ポリマーは、全芳香族ポ エステルで構成されていてもよい。

 さらに本発明は、液晶ポリマーフィラメ トからなるヤーンで構成され、前記オルガ ポリシロキサン組成物を用いたロープ構造 を包含するとともに、前記の製造方法によ 製造されたロープ構造体についても包含す 。

 本発明では、特定の高重合度を有するオ ガノポリシロキサンを液晶ポリマーフィラ ントヤーンに対して適用することにより、 ープ構造体の耐疲労性を向上することがで る。そして、本発明では、高荷重をかけた 合や湿潤下および/または高温下であっても 、液晶ポリマーフィラメントヤーンで構成し たロープ構造体に対して優れた耐疲労性を付 与することができる。

 この発明は、添付の図面を参考にした以 の好適な実施例の説明から、より明瞭に理 されるであろう。しかしながら、実施例お び図面は単なる図示および説明のためのも であり、この発明の範囲を定めるために利 されるべきものではない。この発明の範囲 添付の請求の範囲によって定まる。

実施例で得られたロープ構造体の耐疲 特性を測定する方法を示す概略図である。

[ロープ構造体の製造方法]
 本発明のロープ構造体の製造方法は、液晶 リマーフィラメントを形成または準備する ィラメント形成工程と、前記液晶ポリマー ィラメントからヤーンを形成するヤーン形 工程と、前記液晶ポリマーヤーンからスト ンドを形成するストランド形成工程と、前 液晶ポリマーストランドからロープ構造体 形成するロープ構造体形成工程とを含み、 記フィラメント形成工程、前記ヤーン形成 程、前記ストランド形成工程、および前記 ープ構造体形成工程からなる群から選ばれ 少なくとも一つの工程において、特定のオ ガノポリシロキサン組成物を前記液晶ポリ ーフィラメントの少なくとも一部に適用す 。

(液晶ポリマーフィラメント形成工程)
 本発明では、液晶ポリマーフィラメントは サーモトロピック液晶ポリマーフィラメン (例えば、全芳香族ポリエステル繊維)また リオトロピック液晶ポリマーフィラメント( えば、全芳香族系ポリアミド繊維)のいずれ を用いてもよい。また、これらの液晶ポリマ ーフィラメントを、組み合わせて使用しても よい。また、液晶ポリマーフィラメントは、 市販の液晶ポリマーフィラメントを準備した ものであってもよいし、液晶ポリマーからフ ィラメントを形成または紡糸したものであっ てもよい。

 全芳香族系ポリアミド繊維としては、例 ば、パラフェニレンフタルアミド繊維、芳 族系ポリエーテルアミド繊維などが挙げら る。パラフェニレンフタルアミド繊維は、 ュポン社から「ケブラー(登録商標)」、帝 テクノプロダクツ(株)から「トワロン(登録 標)」として上市され、芳香族系ポリエーテ アミド繊維は、帝人(株)から「テクノーラ( 録商標)」として上市されている。

 これらの液晶繊維のうち、湿潤環境におい も耐疲労性を維持できる観点から、全芳香 ポリエステル繊維が好ましい。
 前記全芳香族ポリエステル繊維を構成する リアリレート系溶融異方性ポリマーは、芳 族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族 ドロキシカルボン酸等より重合されて得ら るポリマーであり、例えば、下記化3及び化 4に示す構成単位の組合せからなるものであ 。

 

 

 特に好ましくは、下記化5に示す(A)、(B)の 反復構成単位からなる部分が80モル%以上であ る全芳香族ポリエステルであり、特に(B)の成 分が3~45モル%である全芳香族ポリエステルが も好ましい。

 

 本発明にいう溶融異方性とは、溶融相に いて光学的異方性を示すことである。この 性は、例えば試料をホットステージにのせ 窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光 観察することにより認定できる。

 全芳香族ポリエステル繊維を構成するポ アリレート系溶融異方性ポリマーとして好 しいものは融点(以下、Mpと称す)が260~360℃ 範囲のものであり、さらに好ましくはMpが270 ~350℃のものである。なお、Mpは示差走査熱量 計(メトラー社DSC)により主吸熱ピークが現れ 温度を測定することにより求められる。

 なお、前記ポリアリレート系溶融異方性 リマーには、本発明の効果を損なわない範 内で、ポリエチレンテレフタレート、変性 リエチレンテレフタレート、ポリオレフィ 、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポ アミド、ポリフェニレンサルファイド、ポ エステルエーテルケトン、フッ素樹脂等の 可塑性ポリマーを添加してもよい。

 次に、溶融異方性ポリマーの紡糸方法につ て述べる。溶融異方性ポリマーは、ノズル 通過する時のせん断速度を10 3 ~10 5 sec -1 とすると、紡糸時に著しい分子配向が生じる ため、通常のポリエチレンテレフタレート紡 糸原糸などに行われている紡糸後の延伸を行 なわなくとも、紡糸原糸のままで強度8cN/dtex 上、弾性率400cN/dtex以上の繊維となる。本発 明にいうせん断速度γは、円形ノズルの場合 次式により求めることが出来る。
 γ=4Q/πr 3 (sec -1 )
但し r:ノズルの半径(cm)
 Q:単孔当たりのポリマー吐出量(cm 3 /sec)

 紡糸原糸は、熱処理することにより強度・ 性率を更に向上させることが可能である。 処理は(Mp-80℃)~Mpの温度条件で行なうのが好 ましい。本発明の全芳香族ポリエステル繊維 の融点は熱処理温度を上げるに従い上昇する ので、熱処理方法としては段階的に温度を上 昇させながら熱処理する方法が好ましい。熱 処理雰囲気としては、窒素、アルゴン等の不 活性ガスや空気等の活性ガス、あるいはそれ らを組み合わせた雰囲気などが好適に用いら れる。また上記熱処理を減圧下で行っても何 等差し支えない。
 例えば、このような全芳香族ポリエステル 維は、(株)クラレから「ベクトラン(登録商 )」として上市されている。

 液晶ポリマーフィラメントは、通常、単 維デシテックスが0.1~100デシテックス程度、 好ましくは1.0~50デシテックス程度である。

 液晶ポリマーフィラメントの強度は、例 ば、10~100cN/dtex程度、より好ましくは15~80cN/d tex程度であってもよい。また、液晶ポリマー フィラメントの弾性率は、例えば、300~2000cN/d tex程度、より好ましくは450~1500cN/dtex程度であ ってもよい。

 また、液晶ポリマーフィラメントには、 要に応じて、酸化チタンやカオリン、シリ 、酸化バリウム等の無機物、カーボンブラ ク、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、 外線吸収剤、光安定剤、各種添加剤を添加 てもよい。

(液晶ポリマーヤーン形成工程)
 そして、液晶ポリマーフィラメントを集束 、必要に応じて撚りを掛けた後、ロープ構 体の構成単位である、液晶ポリマーフィラ ントヤーンを形成することができる。
 ヤーンを構成するフィラメントは、例えば 50~5000フィラメント程度、好ましくは100~4000 ィラメント程度、より好ましくは150~3000フ ラメント程度であってもよい。

(液晶ポリマーストランド形成工程)
 ストランド形成工程では、前記ヤーンを所 の本数集束し、これらのヤーンが撚り合わ れ、または編み組みされてストランドを形 する。なお、ヤーンに撚りがかけられてい 場合、ストランドに撚りをかけるには、通 、ヤーンとは反対方向の撚りがかけられる また、ストランド形成工程では、複数回に たり、第1次ストランド、第1次ストランド ら形成される第2次ストランドとして形成さ てもよい。

 ストランドを構成するヤーンの本数は、 えば、ロープ構造体に求められるサイズお び強度に応じて自由に設定することができ が、例えば、2~50本程度、好ましくは2~30本 度、より好ましくは2~10本程度であってもよ 。

(液晶ポリマーロープ構造体形成工程)
 ロープ構造体形成工程では、前記ストラン を所定の本数集束し、これらのストランド 撚り合わされ、または編み組みされて、ロ プ構造体を形成する。なお、ストランドに りがかけられている場合、ロープ構造体に りをかけるには、通常、ストランドとは反 方向の撚りがかけられる。

 ロープ構造体を構成するストランドの本 は、例えば、ロープ構造体に求められるサ ズおよび強度に応じて自由に設定すること できるが、例えば、2~50本程度、好ましくは 2~30本程度、より好ましくは2~20本程度であっ もよい。

[オルガノポリシロキサン組成物]
 本発明のロープ構造体の製造方法では、本 明のオルガノポリシロキサン組成物を前記 晶ポリマーフィラメントの少なくとも一部 適用する。本発明のオルガノポリシロキサ 組成物は、少なくとも、下記に示される特 のオルガノポリシロキサンを含有する。

(オルガノポリシロキサン)
 本発明に使用するオルガノポリシロキサン 、下記式(I)により示される繰り返し単位か なる。

 

 (式中、X1,X2,X3及びX4は、それぞれ同一また 異なって、-H、-OH,-COOH、-R、-NH 2 、-ROH、-RCOOH、または-RNH 2 を表し、Rはアルキル基(例えば、メチル基、 チル基などのC 1-5 アルキル基)またはアリ-ル基(例えば、フェニ ル基)を示す。またm,nは1以上の整数を示す。)

 本発明における最も重要な点は、このオ ガノポリシロキサンが、平均重合度が50,000~ 200,000である高重合度グレードであるという とである。明確な理由は定かではないが、 下のようなメカニズムが考えられる。すな ち、液晶ポリマーフィラメントが束ねられ ロープを形成すると、繊維/繊維間には摩擦 生じる。そして、このような摩擦は、液晶 リマーフィラメント間であっても発生し、 の結果、液晶ポリマーフィラメントのフィ リル化を引き起こすだけでなく、耐疲労性 低下につながる。

 しかしながら、高重合度ポリシロキサン 用いると、ポリシロキサンは、高重合度を 持したままで、フィラメント間に入り込み 平滑性だけでなく皮膜形成能をヤーンに付 するのではないかと考えれる。そして、こ ような皮膜形成により繊維間、すなわち液 ポリマーフィラメントの摩擦を低減させて ープ構造体の耐疲労性を向上させるのでは いかと考えられる。

 なお、このような効果は、低分子量ポリ ロキサンを用いても得られず、高重合度ポ シロキサンを用いて特定の繊維で構成され ロープ構造体の耐疲労性を向上させるとい 思想は、従来技術には存在しなかった知見 ある。

 このような高分子量ポリシロキサンの平 重合度は、50,000~200,000程度、好ましくは70,00 0~170,000程度(例えば70,000~150,000程度)、さらに ましくは85,000~160,000程度である。

 帯電性が低い点では、式(I)で表わされるポ シロキサン(I)のX1,X2,X3及びX4(以下、単にXと する場合がある)は水素原子、アルキル基又 はアリ-ル基からなるポリシロキサン、なか もXがメチル基であるポリシロキサン(ジメチ ルポリシロキサン)が好ましい。
 また、表面平滑性の観点からは、X1,X2およ X4がメチル基であり、X3がヒドロキシル基で るポリシロキサンが好ましい。

 ポリシロキサンの付着量は、ロープ構造 の耐疲労性を向上できる限り特に限定され いが、例えば、液晶ポリマーフィラメント 総量100質量部に対して、0.1質量部以上、好 しくは0.3質量部以上、10質量部以下、好ま くは5質量部以下であってもよい。

(乳化剤)
 オルガノポリシロキサン組成物は、オルガ ポリシロキサン(I)に加えて、乳化剤を含ん いてもよい。高重合度ポリシロキサンは、 接フィラメントへ付着させることもできる 、高重合度ポリシロキサンを均一に付着さ る観点から、前記ポリシロキサンを乳化剤 よりエマルジョン化し、繊維に付着させる が好ましい。また、乳化剤と高重合度ポリ ロキサンとを組み合わせることにより、繊 の表面平滑性を向上することが出来る。

 乳化剤としてはノニオン系、アニオン系 びカチオン系などの乳化剤を用いればよい たとえば、ノニオン系乳化剤としては、ポ オキシエチレンエーテル類(例えば、ポリオ キシエチレンアルキルエ-テル、ポリオキシ チレンアルキルアリールエーテル、ポリオ シエチレンアリールエ-テルなど)、ポリエチ レングリコールエステルなどが例示できる。 アニオン系乳化剤としては、例えば、金属石 鹸類、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウ ムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ア ルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなど のアルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙 げられる。カチオン系乳化剤としては、例え ば、モノアルキルアンモニウム・クロライド 、ジアルキルアンモニウム・クロライドなど の第4級アンモニウム塩が例示できる。

 これらの乳化剤は、単独でまたは組み合わ て使用できる。これらの乳化剤のうち、ア オン系及びノニオン系乳化剤を併用したも が特に好ましい。
 乳化剤の使用量はポリシロキサン100質量部 対して1~80質量部程度、好ましくは5~70質量 程度、さらに好ましくは10~60質量部程度であ ってもよい。

(浸透剤)
 オルガノポリシロキサン組成物は、オルガ ポリシロキサン(I)に加えて、浸透剤を含ん いてもよい。特に、高重合度ポリシロキサ のフィラメント間への浸透性を向上するた 、前記乳化剤とともに、浸透剤を用いるの 好ましい。
 浸透剤としては、ポリシロキサン溶液の表 張力を低下させてポリシロキサンを均一に 着させることができる観点から、ジアルキ スルホサクシネート、シリコーン系界面活 剤(例えば、ポリエーテル変性シリコーン、 ポリグリセリン変性シリコーンなど)などが 示できる。これらの浸透剤は、単独でまた 組み合わせて使用できる。これらの浸透剤 うち、ジアルキルスルホサクシネートが好 しい。

 浸透剤の使用量はポリシロキサン100質量 に対して0.5~10質量部程度、好ましくは1~8質 部程度、さらに好ましくは1.5~7質量部程度 あってもよい。

(オルガノポリシロキサン組成物の適用工程)
 オルガノポリシロキサン組成物は、オルガ ポリシロキサン組成物の適用工程により、 記液晶ポリマーフィラメントの少なくとも 部に適用される。
 このような適用工程により得られるロープ 造体では、ポリシロキサンは、ロープ構造 の耐疲労性を向上できる限り、液晶ポリマ フィラメントの少なくとも一部に対して付 していればよいが、繊維全体に対して付着 ていてもよい。

 ポリシロキサンを付着させる方法として 、液晶ポリマーフィラメントの少なくとも 部に対してポリシロキサンを付着できる限 特に限定されず、上述の通り、前記フィラ ント形成工程、前記ヤーン形成工程、前記 トランド形成工程、および前記ロープ構造 形成工程の少なくとも一つの工程において オルガノポリシロキサン組成物を適用すれ よい。

 このような適用方法としては、例えば、 浸処理、吐出処理、塗布処理、浸漬搾液処 などが挙げられ、このような処理を、ロー 構造体全体、またはロープ構造体の各構成 位(例えば、フィラメント、ヤーン、ストラ ンド)に対して適用してもよい。

 例えば、含浸処理では、対象物(すなわち 、フィラメント、ヤーン、ストランド、ロー プ構造体から選択される少なくとも一つ)全 を含浸浴に浸漬させた後、対象物に対して 燥・熱処理を行うことにより、液晶ポリマ フィラメントに対してポリシロキサン組成 を付着させることができる。

 また、吐出処理では、ポリシロキサンを 定濃度(原液または希釈液)で有する溶液と 、その溶液を一定速度で走行する走行糸(例 ば、フィラメント、ヤーン、ストランド、 ープ構造体)にカラス口等から吐出させ、液 晶ポリマーフィラメントに対してポリシロキ サン組成物を付着させることができる。

 また、塗布処理では、ポリシロキサン溶 に一部浸した回転ロ-ラ上で走行糸(例えば フィラメント、ヤーン、ストランド、ロー 構造体)を走行させ、液晶ポリマーフィラメ トに対してポリシロキサン組成物を付着さ ることができる。

 また、浸漬搾液処理では、ポリシロキサ 溶液中で走行糸(例えば、フィラメント、ヤ ーン、ストランド、ロープ構造体)を走行さ 、この走行糸をマングル等で絞して、液晶 リマーフィラメントに対してポリシロキサ 組成物を付着させることができる。

 これらの処理のうち、吐出処理、塗布処 、浸漬搾液処理は、含浸処理と比較して、 燥・熱処理に多大の設備、コストがかから いため好ましい。

 また、オルガノポリシロキサン組成物を 用する工程は、ポリシロキサンの付着量を めることができるため、フィラメント形成 程、ヤーン形成工程で行われるのが好まし 、特にフィラメント形成工程で行われるの 好ましい。

 なお、本発明のロープ構造体では、高重合 ポリシロキサンを用いるため、フッ素樹脂 実質的に含まなくとも、湿潤下でのロープ 耐疲労性を向上できる。そのため、製造工 には、フッ素樹脂を付着する工程を実質的 含まなくてもよい。
 フッ素樹脂を含む場合、繊維の焼成温度を 度に高くする必要があり、それによって繊 の性能低下が起きる虞があるが、フッ素樹 を含まない場合、高温焼成工程(例えば、200 ℃以上の高温焼成工程)を含むことなく、ロ プ構造体を形成できるため、高温焼成によ 繊維の性能低下を防ぐことができる。

[ロープ構造体]
 本発明のロープ構造体は、液晶ポリマーフ ラメントからなるヤーンで構成され、前記 ルガノポリシロキサン組成物を用いている また、このようなロープ構造体は、前記に 載の製造方法により製造することができる

 具体的には、本発明のロープ構造体は、 晶ポリマーフィラメントからなるヤーンで 成されたロープ構造体であって、フィラメ トの少なくとも一部に対して、平均重合度 50,000~200,000であるオルガノポリシロキサン(I )が付着しているロープ構造体である。

 本発明において、特定の重合度を有する ルガノポリシロキサン(I)は、少なくとも液 ポリマーフィラメントからなるヤーンを含 ロープ構造体と組み合わせることにより、 ープ構造体の耐疲労性などを大幅に向上す ことができ、前記ロープ構造体は、液晶ポ マーヤーン単独で構成されていてもよいが 液晶ポリマーヤーンと組み合わせる限り、 の他の樹脂で構成されたポリマーヤーン(例 えば、強度10g/d以上かつ弾性率400g/d以上を有 る各種高強度・高弾性率有機繊維)を含んで いてもよい。

 このようなロープ構造体は、目的に応じて 前述したように直径が小さなコード形態か 直径が大きなケーブル形態までのいずれの 径であってもよいが、例えば、直径0.5cm~15cm 程度、好ましくは1cm~10cm程度であってもよい
 また、前記ロープ構造体は、例えば、撚り わせロープ構造、ブレイドロープ構造、お び多重ブレイドロープ構造などの構造を有 てもよい。

 また、耐水性や強度を向上させるため、 ープ構造体は、コーティング剤によりコー ィングされてもよい。コーティング剤とし は、コールタール、ビチュメン、ポリウレ ンなどが例示できる。

 以下、実施例により本発明を更に詳細に 明するが本発明は下記の実施例に限定され ものではない。なお以下の実施例において ポリアリレート系溶融異方性ポリマーの対 粘度ηinh、融点、強度および弾性率は下記 方法により測定したものを示す。

[対数粘度]
 ポリマー試料をペンタフルオロフェノール 0.1質量%溶解し(60~80℃)、60℃の恒温槽中で、 ウベローデ型粘度計で相対粘度(ηrel)を測定 、次式によって計算した。
 ηinh=ln(ηrel)/c
ここでcはポリマー濃度(cN/dtexl)である。

[融点]
 示差走査熱量計(メトラー社製DSC)で観察さ る主吸熱ピークのピーク温度を融点Mp(℃)と た。

[繊維強度・弾性率]
 JIS  L1013に準拠して測定した。

[屈曲疲労性試験]
 図1に示す屈曲疲労性試験機1において、定 車1および動滑車2に対して、それぞれロープ 構造体3,3をかけ、2本のロープ構造体の両端 かしめた後、動滑車2に対して7500lbsfの荷重 かけるとともに、定滑車1を1分当たり6回、44 インチストロークで往復させた。そしてロー プ構造体が切断に至るまでの往復回数を測定 し、その回数をもって耐疲労性を評価した。

[水付与屈曲疲労性試験]
 屈曲疲労性試験を行う前に、あらかじめ、 ープ構造体を約1時間水中に浸漬し、水中か ら取り出したロープ構造体をそのまま用いて 、前述の屈曲疲労性試験を水1L/min滴下しなが ら行い、ロープ構造体が切断に至るまでの往 復回数を測定し、その回数をもって水付与後 の耐疲労性を評価した。

[高熱・高湿度付与後の屈曲疲労性試験]
 屈曲疲労性試験を行う前に、あらかじめ、 ープ構造体を恒温恒湿器中で80℃、相対湿 80%の条件下にて700時間保管処理した後、標 状態(温度:20±2℃、相対湿度65±2%)の試験室内 に取り出し、30分以内に前述の屈曲疲労性試 を行い、ロープ構造体が切断に至るまでの 復回数を測定し、その回数をもって水付与 の耐疲労性を評価した。

実施例1
(1)液晶ポリマーフィラメントの製造工程
 パラアセトキシ安息香酸(A)と2,6-アセトキシ ナフトエ酸(B)の仕込み比を7:3(モル比)とし、 合温度310℃でアセテート法による重合を行 、繰り返し構成単位(A)と(B)のモル比が7:3で る全芳香族ポリエステルポリマー(ηinh=5.8、 Mp=280℃)を作製した。この全芳香族ポリエス ルを単軸押し出し機を用いて紡糸温度315℃ て0.15mm径、300ホールの口金より巻取り速度20 00m/分で紡糸し、1670dtex/300フィラメントの紡 原糸を得た。得られた紡糸原糸を乾燥窒素 囲気にて260℃で2時間、280℃で12時間熱処理 、液晶ポリマーフィラメント(単繊維5.6デシ ックス、強度24.2cN/dtex、弾性率520cN/dtex)を得 た。

(2)ポリシロキサンの付着工程
 そして、この液晶ポリマーフィラメントに して、平均重合度100,000ジメチルポリシロキ サンのエマルジョン(松本油脂製薬(株)製「マ ツモトソフナー318」)95質量部、浸透剤として ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩 5質量部を含むポリシロキサン溶液を付着さ た。前記ポリシロキサンの付着量は、液晶 リマーフィラメント100質量部に対して、2.5 量部であった。

(3)ロープ形成工程
 次いで、前記液晶ポリマーフィラメントヤ ンを2本合わせてストランドを形成し、この ストランドを12本組み合わせることにより、 径3/4インチのロープを得た。
 得られたロープの耐屈曲疲労性を測定した 結果を表1に示す。また、このロープに対し ては、水付与後および高熱・高湿度付与後に ついても屈曲疲労性試験を行った。その結果 を表2に示す。

実施例2
 液晶ポリマーフィラメント100質量部に対す ポリシロキサンの割合を5質量部としたこと 以外は実施例1と同様にしてロープを得た。 られたロープの耐屈曲疲労性の結果を表1に す。

実施例3
 液晶ポリマーフィラメント100質量部に対す ポリシロキサンの割合を1質量部としたこと 以外は実施例1と同様にしてロープを得た。 られたロープの耐屈曲疲労性の結果を表1に す。

実施例4
 平均重合度が170,000であるポリシロキサンを 用いた以外は、実施例1と同様にしてロープ 得た。得られたロープの耐屈曲疲労性の結 を表1に示す。

比較例1
 平均重合度が45,000であるポリシロキサンを いた以外は、実施例1と同様にしてロープを 得た。得られたロープの耐屈曲疲労性の結果 を表1に示す。また、このロープに対しては 水付与後および高熱・高湿度付与後につい も屈曲疲労性試験を行った。その結果を表2 示す。

比較例2
 平均重合度が25,000であるポリシロキサンを いた以外は、実施例1と同様にしてロープを 得た。得られたロープの耐屈曲疲労性の結果 を表1に示す。

比較例3
 実施例1のポリシロキサン溶液に代えて、パ ラフィン系乳化剤60質量部、ポリオキシエチ ン10質量部、オレイン酸エステル25質量部、 オレイン酸カリウム5質量部からなる油剤を いた以外は実施例1と同様にしてロープを得 。得られたロープの耐屈曲疲労性の結果を 1に示す。

 表1から明らかなように、実施例のロープ 構造体は、高荷重下であるにもかかわらず、 耐屈曲疲労性が比較例のロープ構造体と比べ て高かった。以上から、特定のオルガノポリ シロキサン組成物を適用することで、液晶ポ リマーフィラメントから形成されるロープ構 造体の耐疲労性を向上できることは明白であ る。

 また、表2に示すように、実施例のロープ 構造体では、湿潤時、高温時であっても、優 れた耐屈曲疲労性を示したが、比較例のロー プ構造体では、いずれも耐屈曲疲労性に劣っ ていた。以上から、特定のオルガノポリシロ キサン組成物を適用する場合、液晶ポリマー フィラメントから形成されるロープ構造体の 耐疲労性が、湿潤時や高温時であっても向上 できることが明白である。

 本発明のロープ構造体は、従来のロープ 造体に比べ耐疲労性が飛躍的に改善されて るため、海洋または陸上の構造の固定、質 物の吊り下げ用、牽引用、土木工事用、ス ーツ、レジャー用などの分野で非常に好ま く利用できる。

 以上のとおり、本発明の好適な実施形態を 明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲 、種々の追加、変更または削除が可能であ 、そのようなものも本発明の範囲内に含ま る。