Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
PEPTIDE CAPABLE OF ACTIVATING WNT SIGNALING
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/093646
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a peptide or a salt thereof which has a relatively low molecular weight and is useful for the regulation of proliferation or differentiation of a stem cell such as a neural stem cell and a hematopoietic stem cell or the treatment of cancer, a neurological disease or other diseases such as diabetes. Specifically disclosed is a peptide of the following item (1) or (2) or a salt thereof: (1) a peptide comprising the amino acid sequence depicted in SEQ ID NO:1; or (2) a peptide which comprises an amino acid sequence having the substitution, deletion or addition of one or several amino acid residues in the amino acid sequence depicted in SEQ ID NO:1, and which has at least one Wnt signaling activation activity selected from the group consisting of an activity of inducing the adhesion of a PC12 cell, an activity of promoting the differentiation of a neural stem cell and an activity of accelerating the intracellular accumulation of β-catenin.

Inventors:
TANIHARA MASAO (JP)
KAJIWARA KAZUMI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/051224
Publication Date:
August 07, 2008
Filing Date:
January 28, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
NAT UNIV CORP NARA INST (JP)
PHG CORP (JP)
TANIHARA MASAO (JP)
KAJIWARA KAZUMI (JP)
International Classes:
C12N15/09; A61K38/00; A61P3/10; A61P9/10; A61P25/00; A61P25/08; A61P25/16; A61P25/18; A61P25/28; A61P35/00; A61P43/00; C07K14/47; C12N5/07; C12N5/0789; C12N5/0797; C12N5/095
Domestic Patent References:
WO2005040347A22005-05-06
WO2005040351A22005-05-06
WO2004032838A22004-04-22
Attorney, Agent or Firm:
SAEGUSA, Eiji et al. (1-7-1 Doshomachi, Chuo-k, Osaka-shi Osaka 45, JP)
Download PDF:
Claims:
 以下の(1)又は(2)に示すペプチド、又はその塩:
(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド
(2)配列番号1で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、PC12細胞の接着誘導活性、神経幹細胞の分化促進活性、及び細胞内βカテニン蓄積促進活性よりなる群から選択される少なくとも1種のWntシグナル伝達系活性化作用を有するペプチド。
 上記(1)又は(2)に記載のペプチドにおいて、アミノ酸配列のアミノ末端が、アセチル基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、又は1~3残基のペプチドで置換されている、請求項1に記載のペプチド又はその塩。
 上記(1)又は(2)に記載のペプチドにおいて、アミノ酸配列のカルボキシ末端が、アミド基、メチルエステル基、ブチルエステル基、1~3残基のペプチドで置換されている、請求項1に記載のペプチド又はその塩。
 上記(2)のペプチドが、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1~3個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列からなるものである、請求項1に記載のペプチド又はその塩。
 請求項1乃至4のいずれかに記載のペプチド又はその塩、及び薬学的に許容される基材又は担体を含む、医薬製剤。
 請求項1乃至4のいずれかに記載のペプチド又はその塩が、生分解性基材に担持されている、請求項5に記載の医薬製剤。
 生分解性基材がアルギン酸ゲルである、請求項6に記載の医薬製剤。
 Wntシグナル伝達系活性化用の製剤である、請求項7に記載の医薬製剤。
 幹細胞の増殖又は分化制御用の製剤である、請求項7に記載の医薬製剤。
 癌、神経疾患又は糖尿病の治療用製剤である、請求項7に記載の医薬製剤。
 Wntシグナル伝達系を活性化するのに有効量の請求項1乃至4のいずれかに記載のペプチド又はその塩を、Wntシグナル伝達系活性化が必要とされる患者に投与することを特徴とする、Wntシグナル伝達系の活性化方法。
 請求項1乃至4のいずれかに記載のペプチド又はその塩を含有する培地中で神経幹細胞を培養することによって、該神経幹細胞を神経細胞に分化させることを特徴とする、神経幹細胞の分化誘導方法。
 請求項1乃至4のいずれかに記載のペプチド又はその塩の、Wntシグナル伝達系活性化用の医薬製剤を製造するための使用。
 医薬製剤が、幹細胞の増殖又は分化制御用の製剤である、請求項13に記載の使用。
 医薬製剤が、癌、神経疾患又は糖尿病の治療用製剤である、請求項13に記載の使用。
 Wntシグナル伝達系を活性化するための、以下の(1)又は(2)に示すペプチド、又はその塩:
(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド
(2)配列番号1で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、PC12細胞の接着誘導活性、神経幹細胞の分化促進活性、及び細胞内βカテニン蓄積促進活性よりなる群から選択される少なくとも1種のWntシグナル伝達系活性化作用を有するペプチド。
 神経幹細胞を神経細胞に分化誘導するための、以下の(1)又は(2)に示すペプチド、又はその塩:
(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド
(2)配列番号1で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、PC12細胞の接着誘導活性、神経幹細胞の分化促進活性、及び細胞内βカテニン蓄積促進活性よりなる群から選択される少なくとも1種のWntシグナル伝達系活性化作用を有するペプチド。
Description:
Wntシグナル伝達系活性化ペプチ

 本発明は新規なWntシグナル伝達系を活性 するペプチド及びその塩に関する。更に詳 くは、本発明は、優れたWntシグナル伝達系 性化作用を有しており、例えば、神経幹細 や造血幹細胞等の幹細胞の増殖や分化制御 或いは癌、神経疾患、糖尿病等の疾病の治 に有用なペプチド及びその塩に関する。更 、本発明は、当該ペプチド及びその塩を用 た医薬製剤、Wntシグナル伝達系の活性化方 、及び神経幹細胞の分化誘導方法等に関す 。

 胚性幹細胞や体性幹細胞を用いる再生医 は、従来回復が不可能と考えられていた神 変性疾患などの難病の治療に希望を与える のであり、既に先駆的な臨床試験も開始さ ている。しかしながら、例えば、神経疾患 治療においても、移植する神経幹細胞の供 源、数量、神経への分化効率などの多くの 題があり、神経幹細胞の有効な増殖、分化 法が求められている(例えば、非特許文献1 照)。

 一方、Wntシグナル伝達経路は幅広い生物 に保存されており、発生や形態形成等に関 していることが知られている。Wntシグナル 達では、Wntポリペプチドと、7回膜貫通型の 細胞膜表面受容体であるFrizzledが結合するこ により引き起こされ、βカテニンを介するCa nonical経路、PCP経路、又はWnt/Ca経路が活性化 れることが明らかにされている。

 近年、Wntシグナル伝達系は、幹細胞の増 や分化の制御において重要な役割を果たし いることが解明されており、Wntシグナル伝 系を適切にコントロールすることによって 効率的に幹細胞の増殖又は分化させ得るこ が明らかにされている。例えば、非特許文 2には、Wntシグナル伝達系が上皮や血球系の 幹細胞の自己複製の調節に重要な役割を果た し、制御不全が癌化を引き起こすことが報告 されている。また、非特許文献3には、Wntシ ナル伝達系の活性化やβカテニンの安定化が 、神経幹細胞や神経前駆細胞の神経分化を促 進することが報告されている。非特許文献4 は、胚性幹細胞(ES cells)の神経前駆細胞への 分化を抑制することも報告されている。非特 許文献5には、ラット褐色細胞腫PC12細胞がWnt- 1 cDNAの導入によって、接着性の細胞への形 変化を誘導することが報告されている。非 許文献6には、Wnt-1及びWnt-3aが、神経増殖因 (NGF)によるPC12細胞の神経分化を阻害するこ が報告されている。特許文献1には、Wntポリ プチドが、造血幹細胞の増殖、分化、維持 有用であることを報告している。

 更に、Wntシグナル伝達系は、幹細胞の増 や分化の制御に関与しているだけでなく、 々な疾患の治療にも有用であることが明ら にされている。例えば、特許文献2には、Wnt ポリペプチドやこれをコードする遺伝子が、 インスリン分泌促進作用及び糖質代謝改善作 用を示すことが報告されている。特許文献3 は、Wnt-6ポリペプチド又はWnt-6ポリヌクレオ ドが、神経障害(精神分裂症、双極性障害、 単極性障害、アルツハイマー病、癲癇など) 癌(扁平上皮癌など)、心臓血管疾患、発作、 発育障害(葉状魚鱗癬など)の治療に有用であ ことが報告されている。特許文献4には、Wnt -10aポリペプチド及びポリヌクレオチドが、 、心血管疾患、パーキンソン病、双極性/単 性傷害、精神分裂病、神経障害、発育障害 の疾患の治療に有用であることが報告され いる。

 このように、Wntシグナル伝達系を適切にコ トロールすることは、幹細胞の増殖や分化 効率的に制御できるだけでなく、各種疾患 疾病の治療にも有用であることが明らかに れている。そこで従来、所望のWntシグナル 達系活性を生じさせるために、上記特許文 1~4に示されているように、Wntポリペプチド Wntポリヌクレオチドを投与乃至適用するこ が試みられている。しかしながら、従来のW ntポリペプチドやWntポリヌクレオチドの使用 は、特異性は高いものの、分子量が大きい 白質や核酸であるために、抗原性、投与方 、安定性等の問題点があり、臨床上の使用 満足できるものではなかった。

特開2000-516466号公報

特開2005-220022号公報

特開2000-60575号公報

特表2002-501744号公報 実験医学、Vol.20(9),1276-1279、2002 Nature, 434, 843-850, 2005 Biochem Biophys Res Comm, 313, 915-921, 2004; D evelopment, 131, 2791-2801, 2004; J Cell Sci, 117, 5 731-5737, 2004 Nat Biotech, 20,1240-1245, 2002 Neuron, 11, 865-875, 1993 Oncogene, 21, 6348-6355, 2002

 そこで、本発明は、分子量が比較的小さ 、神経幹細胞や造血幹細胞等の幹細胞の増 や分化制御に有用なペプチド又はその塩を 供することを目的とする。更に、本発明は 分子量が比較的小さく、癌、神経疾患、糖 病等の疾病の治療に有用なペプチド又はそ 塩を提供することを目的とする。更に、本 明は、当該ペプチド又はその塩を利用して 医薬製剤、Wntシグナル伝達系の活性化方法 及び神経幹細胞の分化誘導方法等を提供す ことを目的とする。

 本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭 検討を行ったところ、Wntタンパク質のアミ 酸配列から、部分配列Leu Cys Cys Gly Arg Gly  His Arg Thr Arg Thr Gln Arg Val Thr Glu Arg Cys  Asn Cys(配列番号1)を選択し、当該部分配列 らなるペプチド又はその塩を使用すること よって、PC12細胞の接着誘導活性、神経幹細 の分化促進活性、細胞内βカテニン蓄積促 活性等のWntシグナル伝達系活性化作用がよ 効果的に発現され、上記課題を解決できる とを見出した。本発明は、かかる知見に基 いて、更に改良を重ねることにより完成し ものである。

 即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明 提供する。
項1. 以下の(1)又は(2)に示すペプチド、又は の塩:
(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列からな ペプチド
(2)配列番号1で表されるアミノ酸配列におい 1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、若しく 付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、P C12細胞の接着誘導活性、神経幹細胞の分化促 進活性、及び細胞内βカテニン蓄積促進活性 りなる群から選択される少なくとも1種のWnt シグナル伝達系活性化作用を有するペプチド 。
項2. 上記(1)又は(2)に記載のペプチドにおい 、アミノ酸配列のアミノ末端が、アセチル 、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボ ル基、又は1~3残基のペプチドで置換されて る、項1に記載のペプチド又はその塩。
項3. 上記(1)又は(2)に記載のペプチドにおい 、アミノ酸配列のカルボキシ末端が、アミ 基、メチルエステル基、ブチルエステル基 1~3残基のペプチドで置換されている、項1に 載のペプチド又はその塩。
項4. 上記(2)のペプチドが、配列番号1で表さ るアミノ酸配列において、1~3個のアミノ酸 置換、欠失、若しくは付加されたアミノ酸 列からなるものである、項1に記載のペプチ ド又はその塩。
項5. 項1乃至4のいずれかに記載のペプチド又 はその塩、及び薬学的に許容される基材又は 担体を含む、医薬製剤。
項6. 項1乃至4のいずれかに記載のペプチド又 はその塩が、生分解性基材に担持されている 、項5に記載の医薬製剤。
項7. 生分解性基材がアルギン酸ゲルである 項6に記載の医薬製剤。
項8. Wntシグナル伝達系活性化用の製剤であ 、項7に記載の医薬製剤。
項9. 幹細胞の分化制御用の製剤である、項7 記載の医薬製剤。
項10. 癌、神経疾患又は糖尿病の治療用製剤 ある、項7に記載の医薬製剤。
項11. Wntシグナル伝達系を活性化するのに有 量の項1乃至4のいずれかに記載のペプチド はその塩を、Wntシグナル伝達系活性化が必 とされる患者に投与することを特徴とする Wntシグナル伝達系の活性化方法。
項12. 項1乃至4のいずれかに記載のペプチド はその塩を含有する培地中で神経幹細胞を 養することによって、該神経幹細胞を神経 胞に分化させることを特徴とする、神経幹 胞の分化誘導方法。
項13. 項1乃至4のいずれかに記載のペプチド はその塩の、Wntシグナル伝達系活性化用の 薬製剤を製造するための使用。
項14. 医薬製剤が、幹細胞の分化制御用の製 である、項13に記載の使用。
項15. 医薬製剤が、癌、神経疾患又は糖尿病 治療用製剤である、項13に記載の使用。
項16. Wntシグナル伝達系を活性化するための 以下の(1)又は(2)に示すペプチド、又はその :
(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列からな ペプチド
(2)配列番号1で表されるアミノ酸配列におい 1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、若しく 付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、P C12細胞の接着誘導活性、神経幹細胞の分化促 進活性、及び細胞内βカテニン蓄積促進活性 りなる群から選択される少なくとも1種のWnt シグナル伝達系活性化作用を有するペプチド 。
項17. 神経幹細胞を神経細胞に分化誘導する めの、以下の(1)又は(2)に示すペプチド、又 その塩:
(1)配列番号1で表されるアミノ酸配列からな ペプチド
(2)配列番号1で表されるアミノ酸配列におい 1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、若しく 付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、P C12細胞の接着誘導活性、神経幹細胞の分化促 進活性、及び細胞内βカテニン蓄積促進活性 りなる群から選択される少なくとも1種のWnt シグナル伝達系活性化作用を有するペプチド 。

 本発明のペプチド又はその塩は、優れたW ntシグナル伝達系活性化作用を有しており、 経幹細胞や造血幹細胞等の幹細胞の増殖や 化制御、或いは癌、神経疾患、糖尿病等の 病の治療に有用である。また、本発明のペ チド又はその塩は、Wntポリペプチドに比べ 分子量が低いため、低抗原性、投与の容易 、高安定性、基材マトリクスへの担持・固 化が容易であること等の優れた特性を備え おり、臨床上の有用性が極めて高い。

試験例2において、海馬由来神経幹細胞 を培養した後に、細胞の形態を撮影した結果 (顕微鏡写真)である。 試験例2において、海馬由来神経幹細胞 を培養した後に、細胞をニューロフィラメン ト(NF-M)、Nestinで免疫染色し、細胞の核をDAPI 染色した結果(顕微鏡写真)である。

 本発明においては各種アミノ酸残基を次 略号で記述する。

 Ala :L-アラニン残基
 Arg :L-アルギニン残基
 Asn :L-アスパラギン残基
 Asp :L-アスパラギン酸残基
 Cys :L-システイン残基
 Gln :L-グルタミン残基
 Glu :L-グルタミン酸残基
 Gly :グリシン残基
 His :L-ヒスチジン残基
 Ile :L-イソロイシン残基
 Leu :L-ロイシン残基
 Lys :L-リジン残基
 Met :L-メチオニン残基
 Phe :L-フェニルアラニン残基
 Pro :L-プロリン残基
 Ser :L-セリン残基
 Thr :L-トレオニン残基
 Trp :L-トリプトファン残基
 Tyr :L-チロシン残基
 Val :L-バリン残基
 また、本明細書においては、常法に従って プチドのアミノ酸配列を、そのN末端のアミ ノ酸残基が左側に位置し、C末端のアミノ酸 基が右側に位置するように記述する。

  1.Wntシグナル伝達系活性を有する プチド及びその塩
 本発明のペプチドとしては、下記の(1)又は( 2)に示すペプチドが挙げられる。
(1) Leu Cys Cys Gly Arg Gly His Arg Thr Arg Thr  Gln Arg Val Thr Glu Arg Cys Asn Cys (配列番号1) で表されるアミノ酸配列からなるペプチド
(2)配列番号1で表されるアミノ酸配列におい 1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、若しく 付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、P C12細胞の接着誘導活性、神経幹細胞の分化促 進活性、及び細胞内βカテニン蓄積促進活性 りなる群から選択される少なくとも1種のWnt シグナル伝達系活性を有するペプチド。

 上記(2)のペプチドにおいて、置換、欠失 しくは付加されるアミノ酸の数については 改変されたペプチドが上記Wntシグナル伝達 活性を有していることを限度として特に制 されない。例えば、アミノ酸の付加の場合 あれば、当該付加されるアミノ酸の数とし は、1~3個、好ましくは1~2個、更に好ましく 1個が挙げられる。また、例えば、アミノ酸 の欠失の場合であれば、当該欠失されるアミ ノ酸の数としては、1~3個、好ましくは1~2個、 更に好ましくは1個が挙げられる。更に、例 ばアミノ酸の置換の場合であれば、当該置 されるアミノ酸の数としては、1~3個、好ま くは1~2個、更に好ましくは1個が挙げられる

 また、上記(2)のペプチドにおいて、置換 欠失若しくは付加されるアミノ酸の位置に いては、改変されたペプチドが上記Wntシグ ル伝達系活性を有している限り特に制限さ るものではない。

 更に、上記(2)のペプチドにおいて、置換 しくは付加されるアミノ酸の種類について 、改変されたペプチドが上記Wntシグナル伝 系活性を有することを限度として、特に制 されない。但し、置換については、各アミ 酸残基は側鎖官能基の性質に基づく相同性 換であることが望ましい。アミノ酸の置換 場合であれば、例えば、CysはSerに、LeuはIle はValに、ThrはSerに、GluはAspに、GlnはAsnに、A rgはLysにそれぞれ置換可能であり、その逆の 換も可能である。

 また、上記(2)のペプチドにおいて、「Wnt グナル伝達系活性化作用」とは、PC12細胞の 接着誘導活性、神経幹細胞の分化促進活性、 及び細胞内βカテニン蓄積促進活性の中の少 くとも1種の活性を示す作用、好ましくはこ れらの中の2種以上の活性を示す作用、更に ましくはこれらの全ての活性を示す作用を えていることを意味する。上記(2)のペプチ における「Wntシグナル伝達系活性化作用」 、次のようにして確認することができる。

 <PC12細胞の接着誘導活性>
 5容量%のウマ血清及び5容量%のウシ胎児血清 を含むダルベッコのMEM培地(DMEM)に、PC12細胞 100cells/μLとなるように懸濁し、当該細胞懸 液を24穴プレートの各ウェルに500μL添加する 。各ウェルに確認対象となるペプチドを最終 濃度が100μg/mLとなるように添加し、その後、 37℃及び5%CO 2 の条件下で5日間培養し、形態観察を行う。 た、確認対象となるペプチドの代わりに、 列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペ チドを用いて、上記と同様の方法で、試験 行い、5日間培養した後の形態観察を行う。 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる プチドを添加したウェルにおいて底部に接 して扁平化したPC12細胞の数を100%として、確 認対象となるペプチドを添加したウェルにお いて底部に接着して扁平化したPC12細胞の数 50%以上、好ましくは75%以上、特に好ましく 85%以上である場合に、そのペプチドは「PC12 胞の接着誘導活性」を有するものとする。
参考文献:Neuron, 11, 865-875, 1993
 <神経幹細胞の分化促進活性>
 スフェアを形成して増殖している神経幹細 を集めて、1Vol%のN2-supplement、20ng/mLの塩基性 線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含むDMEM/F12に、適 な濃度となるように懸濁し、24穴プレート 各ウエルに500μLずつ添加する。各ウェルに 認対象となるペプチドを最終濃度が100μg/mL なるように添加し、その後、37℃及び5%CO 2 の条件下で5日間培養し、形態観察と免疫染 を行う。また、確認対象となるペプチドの わりに、配列番号1で表されるアミノ酸配列 らなるペプチドを用いて、上記と同様の方 で、試験を行い、5日間培養した後の形態観 察を行う。配列番号1で表されるアミノ酸配 からなるペプチドを添加したウェルにおい 底部に接着して軸索様神経突起を伸長して る細胞の数を100%として、確認対象となるペ チドを添加したウェルにおいて底部に接着 て軸索様神経突起を伸長しているスフェア 数が50%以上、好ましくは75%以上、特に好ま くは85%以上である場合に、そのペプチドは 神経幹細胞の分化促進活性」を有するもの する。
参考文献:Nat. Med. 6:271-277; 2000
 <細胞内βカテニン蓄積促進活性>
 5容量%のウマ血清及び5容量%のウシ胎児血清 を含むDMEM培地に、PC12細胞を懸濁し、20万cells /dishとなるように当該細胞懸濁液をディッシ (内径3.5 cm)に添加し、37℃及び5%CO 2 条件下で一日培養する。斯くしてPC12細胞が 養されたディッシュに、確認対象となるペ チドを最終濃度が100μg/mLとなるように添加 、37℃及び5%CO 2 条件下で24時間培養する。その後、細胞を回 し、細胞ペレットをSDS-ポリアクリルアミド 電気泳動(SDS-PAGE)のサンプル緩衝液に溶解す 。SDS-PAGEに供した後、親水化処理PVDF膜に転 し、抗βカテニン抗体を用いて免疫染色する ことによりβカテニンを検出する。βカテニ は、分子量92 kダルトンの部分のバンドとし て検出され、当該バンドの濃淡をデンシトメ ーターにより測定することによりβカテニン 定量化される。また、確認対象となるペプ ドの代わりに、配列番号1で表されるアミノ 酸配列からなるペプチドを用いて、上記と同 様の方法で、試験を行い、5日間培養した後 細胞内に蓄積したβカテニン量をデンシトメ ーターにより測定する。配列番号1で表され アミノ酸配列からなるペプチドを添加した 合の細胞において測定されたβカテニン量を 100%として、確認対象となるペプチドを添加 た細胞において検出されたβカテニン量が50% 以上、好ましくは75%以上、特に好ましくは90% 以上である場合に、そのペプチドは「細胞内 βカテニン蓄積促進活性」を有するものとす 。
参考文献:J Biol Chem, 277, 17901-17905, 2002
 本発明の上記(1)又は(2)に示すペプチドは、 ミノ末端(N末端)がアセチル基、メトキシカ ボニル基、ブトキシカルボニル基、又は1~3 基のペプチド等で置換されたものであって 良い。また、本発明の上記(1)又は(2)に示す プチドは、カルボキシ末端(C末端)がアミド 、メチルエステル基、ブチルエステル基、 は1~3残基のペプチド等で置換されたもので 良い。

 本発明において、上記(1)又は(2)に示すペ チドは、塩の形態であっても良い。このよ な塩としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸 乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマール酸、 ュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、オレイン酸 パルミチン酸等の酸との塩;ナトリウム、カ リウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム のアルカリ土類金属との塩;アルミニウムの 酸化物又は炭酸塩との塩;トリエチルアミン 、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、t- チルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ア ギニン等との塩等が挙げられる。

 本発明のペプチドは、通常のペプチド合 方法により行われる。例えば固相合成法ま は液相合成法によって調製されるが、固相 成法が操作上簡便である〔例えば、日本生 学会編「続生化学実験講座2 タンパク質の 学(下)」(昭和62年5月20日 株式会社東京化学 同人発行)、第641-694頁参照〕。

 本発明のペプチドの固相合成法による調 は、例えば、(1)スチレン-ジビニルベンゼン 共重合体などの反応溶媒に不溶性である重合 体に目的とするペプチドのC末端に対応する ミノ酸をそれが有するα-COOH基を介して結合 せる、(2)次いで該アミノ酸に目的とするペ チドのN末端の方向に向かって、対応するア ミノ酸またはペプチド断片を該アミノ酸また はペプチド断片が有するα-COOH基以外のα-ア ノ基などの官能基を保護したうえで縮合さ て結合させる操作と、該結合したアミノ酸 たはペプチド断片におけるα-アミノ基など ペプチド結合を形成するアミノ基が有する 護基を除去する操作とを順次繰り返すこと よってペプチド鎖を伸長させ、目的とする プチドに対応するペプチド鎖を形成する、(3 )次いで該ペプチド鎖を重合体から脱離させ かつ保護されている官能基から保護基を除 することにより目的とするペプチドを得る (4)次いでこれを精製する、ことによって実 される。ここで、ペプチド鎖の重合体から 脱離および保護基の除去は、トリフルオロ 酸を用いて同時に行うのが副反応を抑制す 観点から好ましい。また、得られたペプチ の精製は逆相液体クロマトグラフィ-やゲル ーミエイションクロマトグラフィーで行う が効果的である。

 また、本発明のペプチドの塩は、通常の 生成反応を利用することにより調製される

  2.医薬製剤
 本発明のペプチド又はその塩は、上記Wntシ ナル伝達系活性を有しており、医薬分野に ける有用効果を奏することができる。即ち 本発明のペプチド又はその塩は、Wntシグナ 伝達系の活性化によって改善乃至治療効果 期待される疾患に対する医薬として有用で る。それ故、本発明のペプチド又はその塩 、薬学的に許容される基材又は担体と共に 剤化され、医薬製剤として使用することが きる。

 当該医薬製剤は、Wntシグナル伝達系の活 化によって改善乃至治療効果が期待される 薬用途、即ち、神経幹細胞及び造血幹細胞 の幹細胞の増殖又は分化制御;或いは癌、神 経疾患、糖尿病等の疾病の治療に有用である 。中でも特に、本発明のペプチド又はその塩 は、神経幹細胞を、軸索様神経突起を伸長し ている神経細胞に分化促進させる作用に優れ ているので、当該医薬製剤は、神経幹細胞の 分化促進用の製剤として好適である。

 当該医薬製剤に使用される基材又は担体 ついては、薬学的に許容されることを限度 して特に制限されず、医薬の製剤化のため 配合されている成分を広く使用することが きる。具体的には、当該基材としては、水 生理食塩水、乳糖、デンプン、白糖、デキ トリン、ブドウ糖、カオリン、結晶セルロ ス、ケイ酸塩等の賦形剤が挙げられる。

 また、当該医薬製剤には、上記成分の他 、添加剤や薬理活性成分を含んでいても良 。当該医薬製剤に配合可能な添加剤として 、例えば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、湿潤 剤、緩衝剤、懸濁化剤、乳化剤、界面活性 、保存剤等が例示される。これらの添加剤 配合割合は、医薬組成物の用途や製剤形態 応じて適宜設定することができる。

 当該医薬製剤の剤型としては、適用形態 応じて適宜設定されるが、一例として、錠 、散剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤等の 形製剤;及び液剤、乳剤、懸濁剤等の液状製 剤が挙げられる。また、当該医薬製剤は、本 発明のペプチド又はその塩をリポソ-ム化し 製剤化したものであってもよい。

 更に、当該医薬製剤は、本発明のペプチ 又はその塩を、アルギン酸ゲルや人工コラ ゲンゲル等の生分解性基材に担持(固定化) せたものであってもよい。本発明のペプチ 又はその塩を上記生分解性基材に担持(固定 )させるには、例えば、アルギン酸ゲルやカ ルボキシル基を導入した人工コラーゲンゲル に活性エステル化法又は直接法で結合するこ とができる。カルボキシル基を導入した人工 コラーゲンゲルは、例えば人工コラーゲンゲ ルを無水コハク酸と反応させること、或いは 人工コラーゲンゲルにグルタミン酸残基を導 入することによって作製できる。ゲルの活性 エステル化は、例えば、上記ゲルをジメチル ホルムアミド等の溶媒に懸濁し、N-ヒドロキ コハク酸イミドと1-エチル-3-(3-ジメチルア ノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(WSCD・HCl) を添加し、室温で一晩振盪することにより実 施できる。活性エステル化法において、本発 明のペプチド又はその塩を上記生分解性基材 に担持(固定化)させるには、ジメチルホルム ミド等の溶媒中で、上記の活性エステル化 れたゲル100重量部に対して、本発明のペプ ド又はその塩を0.1~200重量部、好ましくは1~1 00重量部を混合して、ジイソプロピルエチル ミンの存在下10~30℃で3~48時間程度、必要に じて振盪しながらインキュベートすればよ 。一方、直接法で、本発明のペプチド又は の塩を上記生分解性基材に担持(固定化)さ るには、例えば、以下の(i)~(iii)の工程を順 実施すればよい:(i)上記ゲルをジメチルホル アミド等の溶媒に懸濁する、(ii)得られた懸 濁液にN-ヒドロキシコハク酸イミドと1-エチ -3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミ ド塩酸塩(WSCD・HCl)を添加する、(iii)次いで、 イソプロピルエチルアミンの存在下同時に 記ゲル100重量部に対して、本発明のペプチ 又はその塩を0.1~200重量部、好ましくは1~100 量部を添加して、10~30℃で3~48時間程度、必 に応じて振盪しながらインキュベートする

 また、当該医薬製剤を幹細胞の増殖又は 化制御の用途に使用する場合であれば、当 医薬製剤は、本発明のペプチド又はその塩 上記生分解性基材に担持(固定化)されてな ものが好適である。更に、かかる用途の場 、当該医薬製剤は、上記生分解性基材に担 された本発明のペプチド又はその塩と、更 神経幹細胞や造血幹細胞等の幹細胞と混合 たものであってもよい。このように幹細胞 含まれる医薬製剤は、直接又は試験管内で 養後に体内に投与することができる。

 当該医薬製剤の投与形態については、例 ば、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、 皮投与、経口投与等の全身的投与;関節内投 与等の局所投与等が挙げられ、用途や剤型等 に応じて適宜設定することができる。

 また、当該医薬製剤の投与量は、疾患の 類や程度、患者の性別や年齢、該製剤の投 形態、期待される効果等に基づいて、適宜 定することができる。当該医薬製剤の1日当 たりの投与量の一例として、本発明のペプチ ド又はその塩の投与量に換算して、通常0.01μ g/kg~2g/kg(成人)、好ましくは0.01μg/kg~200mg/kg ( 人)が挙げられる。

  3.Wntシグナル伝達の活性化方法
 前述するように、本発明のペプチド又はそ 塩は、ヒトを含むほ乳類動物においてWntシ ナル伝達系を活性化できるので、Wntシグナ 伝達系の活性化方法に使用することができ 。

 当該活性化方法は、Wntシグナル伝達系活 化が必要とされる患者に対して、本発明の プチド又はその塩を投与することによって 施される。Wntシグナル伝達系活性化が必要 される患者としては、Wntシグナル伝達系の 性化によって改善乃至治療効果が期待され 症状又は疾患を罹患している者であり、そ 具体例については上記「2.医薬製剤」の欄 記載の通りである。

 また、当該活性化方法において、本発明 ペプチド又はその塩の投与は、上記医薬製 を使用すればよく、投与形態、投与量等に いても、上記「2.医薬製剤」の欄に記載の りである。

  4.神経幹細胞の分化誘導方法
 本発明のペプチド又はその塩は、上記Wntシ ナル伝達系活性化効果に基づいて、特に、 経幹細胞を効率的に神経細胞に分化誘導さ ることができる。即ち、本発明のペプチド はその塩は、神経幹細胞の分化誘導方法に 適に使用される。

 当該分化誘導方法は、本発明のペプチド はその塩を含有する培地中で神経幹細胞を 養することにより実施される。

 当該化誘導方法で使用される培地として 、例えば、1Vol%N2-supplement、及び20ng/mLの塩基 性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含むDMEM/F12培地 、神経幹細胞を培養可能である培地が挙げ れる。

 また、上記培地中の本発明のペプチド又 その塩の含有量としては、例えば、10~500μg/ mL、好ましくは50~200μg/mLが挙げられる。

 また、当該分化誘導方法は、本発明のペ チド又はその塩、そのまま上記培地に配合 れてもよいが、アルギン酸ゲルや人工コラ ゲンゲル等の生分解性基材に担持された状 で配合されていてもよい。後者の場合、神 幹細胞をより効率的に、神経細胞に分化誘 させることが可能になる。本発明のペプチ 又はその塩を生分解性基材に担持させる方 については、上記「2.医薬製剤」の欄に記 の通りである。

 当該分化誘導方法は、上記培地に、神経幹 胞を1×10 4 ~1×10 6 cells/mLとなるように添加して、37℃、5%CO 2 条件下で、12~240時間、好ましくは24~120時間培 養することにより実施される。斯くして、神 経幹細胞を効率的に、軸索様神経突起を伸長 している神経細胞に分化誘導することができ る。

 以下、実施例により本発明を具体的に説明 る。なお、本発明はこれらの実施例により 定されるものではない。
実施例1  本発明ペプチドの合成
 Leu Cys Cys Gly Arg Gly His Arg Thr Arg Thr Gln  Arg Val Thr Glu Arg Cys Asn Cys (配列番号1)で 示されるアミノ酸配列からなるペプチドをペ プチド自動合成装置を用いて固相合成法によ り合成した。即ち、4-(2’、4’-ジメトキシフ ェニル-フルオレニルメトキシカルボニル)-ア ミノメチル)-フェノキシアセトアミド-エチル 基を0.62ミリモル/g(樹脂)の割合で有するスチ ン-ジビニルベンゼン共重合体〔スチレンと ジビニルベンゼンの構成モル比:99対1〕から る粒状樹脂〔米国アプライド・バイオシス ムズ社製、Fmocアミドレジン〕0.1ミリモルを い、目的とするペプチドのカルボキシル末 からアミノ末端に向かって順次対応するア ノ酸を結合させた。結合反応において、ア ノ酸として、米国アプライド・バイオシス ムズ社製のN α -9- (フルオレニルメトキシカルボニル)-S-ト チル-L-システイン〔Fmocシステイン〕、N α -9-(フルオレニルメトキシカルボニル)-N β -トリチル-L-アスパラギン〔Fmocアスパラギン 、N α -9-(フルオレニルメトキシカルボニル)-N G -(2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルフォニ ル)-L-アルギニン〔Fmocアルギニン〕、N α -9-(フルオレニルメトキシカルボニル)-γ-ブチ ル-L-グルタミン酸〔Fmocグルタミン酸〕、N α -9-(フルオレニルメトキシカルボニル)-O-t-ブ ル-L-トレオニン〔Fmocトレオニン 〕、N α -9-(フルオレニルメトキシカルボニル)-L-バリ 〔Fmocバリン〕、N α -9-(フルオレニルメトキシカルボニル)-N γ -トリチル-L-グルタミン〔Fmocグルタミン〕、N α -9-(フルオレニルメトキシカルボニル)-N Im -トリチル-L-ヒスチジン〔Fmocヒスチジン〕、N α -9-(フルオレニルメトキシカルボニル)-グリシ ン〔Fmocグリシン〕を、各結合ステップにつ てそれぞれ1ミリモルずつ用いた。

 得られたペプチド樹脂を、7.5vol%のフェノー ルと、2.5vol%のエタンジチオール、5vol%の水と 5容量%のチオアニソールを含むトリフルオロ 酸10mLで3時間処
理した。得られた溶液をジエチルエーテルに 加えて生じる沈殿をさらに数回ジエチルエー テルで洗浄して、ペプチドの脱保護と樹脂か らの脱離を行った。粗生成物をPD10カラム(ア シャムファルマシアジャパン)で精製してペ プチドを得た。得られた精製ペプチドをファ ルマシアバイオテク株式会社製AKTA explorer10XT 〔カラム:ミリポアウオーターズ株式会社製 バパックC18 3.9mmφ×150mm、移動相:トリフルオ ロ酢酸を0.05容量%含有するアセトニトリルと の混合溶媒(アセトニトリル濃度を30分間で5 容量%から50容量%に直線的に変化させた)、流 1.0mL/min〕に付したところ、10.3 minに単一の -クが示された。FAB法マススペクトルにより 求めた精製ペプチドの分子量は2348であった( 論値:2348.75)。

  比較例1  比較用ペプチドの合成
 Wntタンパク質のアミノ酸配列から、親水性 高くβターン領域を含む部分配列として、 記アミノ酸配列を選択し、当該アミノ酸配 からなるペプチドを実施例1と同様の方法で 成し、精製した。
Gly Arg Glu Phe Val Asp Ser Gly Glu Lys Gly Arg  Asp Leu Arg Phe Leu(配列番号2)
 但し、結合反応において、実施例1に示した アミノ酸以外に、米国アプライド・バイオシ ステムズ社製のN α -9-(フルオレニルメトキシカルボニル)-L-フェ ルアラニン〔Fmocフェニルアラニン 〕、N α -9-(フルオレニルメトキシカルボニル)-β-ブチ ル-L-アスパラギン酸〔Fmocアスパラギン酸〕 N α -9-(フルオレニルメトキシカルボニル)-O-t-ブ ル-L-セリン〔Fmocセリン〕、N α -9-(フルオレニルメトキシカルボニル)-N ε -ブトキシカルボニル-L-リジン〔Fmocリジン〕 、各結合ステップについてそれぞれ1ミリモ ルずつ用いた。

 斯くして合成し、精製されたペプチドで 、16.3 minに単一のピ-クが示され、その分子 量は1980であった(理論値:1980.21)。

  比較例2-6  比較用ペプチドの合成
 Wntタンパク質のアミノ酸配列から、親水性 高くβターン領域を含む部分配列として、 記アミノ酸配列(比較例2-6)を選択し、当該ア ミノ酸配列からなるペプチドを上記実施例1 び比較例1に記載の方法に準じて合成した。
比較例2 :Val Leu Arg Asp Arg Phe Asp Gly Ala Ser Arg Val Leu Tyr Gly Asn Arg Gly Ser Asn(配列番号3)
比較例3 :Gly Asn Arg Gly Ser Asn Arg Ala Ser Arg Ala Glu Leu Leu Arg Leu Glu Pro Glu Asp(配列番号4)
比較例4 :Ala Glu Leu Leu Arg Leu Glu Pro Glu Asp Pro Ala His Lys Pro Pro Ser Pro His Asp(配列番号5)
比較例5 :Glu Pro Glu Asp Pro Ala His Lys Pro Pro Ser Pro His Asp Leu Val Tyr Phe Glu Lys Ser Pro Asn(配 番号6)
比較例6 :Thr Phe His Trp Cys Cys His Val Ser Cys Arg Asn Cys Thr His Thr Arg Val Leu His(配列番号7)

  試験例1  PC12細胞の接着誘導活性の評価
 5容量%のウマ血清及び5容量%のウシ胎児血清 を含むDMEM培地で継代維持したPC12細胞(ATCC, CR L-1721)を、24穴プレート(NUNC社)の各ウェルに5 個/500μLずつ分注した。各ウェルに、実施例1 又は比較例1-6で得られたペプチドを、それぞ れ、最終濃度が100μg/mlになるように加え、そ の後5日間37℃、5%CO 2 下培養し、形態観察を行った。また、コント ロールとして、ペプチドを添加しないこと以 外は上記と同様の方法でPC12細胞を培養し、 態を観察した。

 その結果、実施例1で得られたペプチドを 加えたウェルでは、PC12細胞が接着し、扁平 していた。これに対して、比較例1-6で得ら たペプチドを加えたウェルでは、コントロ ルのウェルと同様、PC12細胞は球状の形態を ったまま、接着せず浮遊していた。

  試験例2  神経幹細胞の分化促進活性の評価
 妊娠16日目のWistarラット胎児(チャールス・ バー・ジャパン)から海馬を摘出した。単一 細胞に分散した後、1Vol% N2-supplement(Invitrogen )、20ng/mLのbFGF(BD Bioscience社)を含むDMEM/F12培 (ニッスイ製薬工業)に100万個/mLになるように 懸濁して、25cm 2 フラスコ(NUNC社)中で37℃、5%CO 2 下3日間培養した。

 次いで、スフェアを形成して増殖している 馬由来神経幹細胞を集めて、1Vol% N2-supplemen t、20ng/mLのbFGFを含むDMEM/F12培地に懸濁し、24 プレート(NUNC社)の各ウェルに500μL/wellずつ分 注した。各ウェルに、実施例1又は比較例1-6 得られたペプチドを、最終濃度が100μg/mLに るように加え、その後5日間37℃、5%CO 2 下培養し、形態観察と免疫染色(V. J. Allan, E d., ”Protein Localization by Fluorescence Microscopy , Oxford University Press, N.Y., 2000.)を行った また、コントロールとして、ペプチドを添 しないこと以外は上記と同様の方法で海馬 来神経幹細胞を培養し、形態観察と免疫染 を行った。

 5日後に観察した結果を図1に示す。実施 1で得られたペプチドを添加したウェルでは スフェアを形成していた海馬由来神経幹細 がプレート表面に接着して、無数の軸索様 経突起を伸長した。これに対して比較例1-6 得られたペプチドを添加したウェルでは、 ントロールのウェルと同様、スフェアを形 していた海馬由来神経幹細胞はプレート表 に接着せず浮遊し、軸索様神経突起の伸長 観測されなかった。

 また、免疫染色の結果を図2に示す。実施 例1で得られたペプチドを添加したウェルで 測された軸索様神経突起は、ニューロフィ メント(ケミコン社、NF-M(145 kD)抗体、AB1987) 或いはGFAP(ダコ社、GFAP抗体、Z0334)陽性であ た。即ち、本結果から、実施例1で得られた プチドが高効率に海馬由来神経幹細胞を神 系細胞に分化させることが明らかになった

  試験例3  細胞内βカテニン蓄積促進活性の評価
 5容量%のウマ血清及び5容量%のウシ胎児血清 を含むDMEM培地に懸濁したPC12細胞(ATCC, CRL-1721 )を3.5cmのディッシュに20万個ずつ分注し、37 、5%CO 2 下で一日培養した。その後、実施例1で得ら たペプチドを最終濃度が100μg/mlになるよう 添加した。ペプチド添加24時間後に、細胞を 回収し、細胞ペレットをSDS-ポリアクリルア ド電気泳動(SDS-PAGE)のサンプル緩衝液に溶解 た。SDS-PAGEに付した後、親水化処理PVDF膜に 写し、抗βカテニン抗体を用いて、免疫染 した。また、コントロールとして、ペプチ を添加しないこと以外は上記と同様の方法 PC12細胞を培養し、免疫染色を行った。

 その結果、βカテニンの分子量に相当す 92 kダルトンに免疫染色されたバンドが検出 され、コントロールの場合と比較して有意に 濃かった。

  実施例2  本発明のペプチドを担持したアルギン酸ゲ の製造
 10mLのメタノールに溶解した0.6g(10mmol)のエチ レンジアミン(EDA、和光純薬工業株式会社)を 2.3 g(20 mmol)のN-ヒドロキシコハク酸イミド( HOSu、(株)ペプチド研究所)を溶解した150mLのメ タノールに室温で撹拌しながら滴下した。滴 下終了後さらに1時間撹拌を続けた。析出し 結晶を濾取し、減圧下に乾燥して2.6g(収率約 90%)のエチレンジアミン2N-ヒドロキシコハク イミド塩(EDA・2HOSu)を得た。

 アルギン酸ナトリウム(フナコシ株式会社 、粘度550 cp、M/G比 1.0)の1重量%水溶液30mLに 66mgのEDA・2HOSuと0.48gの1-エチル-3-(3-ジメチル ミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(WSCD・ HCl、(株)ペプチド研究所)を溶解して、10cm×10c mのテフロン(登録商標)被覆アルミ製トレイに 流延し25℃で48時間静置して、アルギン酸の 有結合架橋ゲルを得た。

 これを、2.5mMのCaCl 2 と143mMのNaClを溶解した超純水(ミリQ水)で十分 に洗浄し、その後ミリQ水のみで洗浄した。 浄後のアルギン酸ゲルを凍結乾燥して、白 のスポンジ状ゲルを得た。

 得られたスポンジ状ゲルの0.2gをジメチル ホルムアミド4mLに浸漬し、6mgのN-ヒドロキシ ハク酸イミドと10mgのWSCD・HClを加えて、室 で一晩振盪した。スポンジ状ゲルをメタノ ルとジメチルホルムアミドで良く洗浄した 、実施例1で得られたペプチド10mgを含むジメ チルホルムアミド溶液1mLとジイソプロピルエ チルアミン0.86μLを加えて、室温で一晩振盪 た。メタノールとエタノールで良く洗浄し 、実施例1で得られたペプチドが担持された ルギン酸ゲルを得た。

  試験例4  神経幹細胞の分化促進活性の評価
 試験例2と同様にして調製したラット胎児海 馬由来神経幹細胞と、実施例2で得られたペ チドが担持されたアルギン酸ゲルを混合し 、1Vol%N2-supplement、20ng/mLのbFGFを含むDMEM/F12培 に分散し、24穴プレート(NUNC社)の各ウェル 分注した。その後、5日間、37℃、5%CO 2 下培養した。

 その結果、スフェアを形成していた海馬 来神経幹細胞がアルギン酸ゲル表面に接着 て、無数の軸索様神経突起を伸長している 経細胞に分化していることが確認された。