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Title:
PHARMACEUTICAL AGENT FOR PREVENTION AND/OR TREATMENT OF INFLAMMATORY MYOPATHY
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/078411
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a pharmaceutical agent for the prevention and/or treatment of an inflammatory myopathy, which comprises a retinoid such as 4-[(5,6,7,8-tetrahydro-5,5,8,8-tetramethyl-2- naphthalenyl)carbamoyl]benzoic acid as an active ingredient.

Inventors:
SHUDO KOICHI (JP)
ISHIDO MIWAKO (JP)
NANKI TOSHIHIRO (JP)
MIYASAKA NOBUYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/001449
Publication Date:
July 03, 2008
Filing Date:
December 21, 2007
Export Citation:
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Assignee:
R & R INC (JP)
UNIV TOKYO MEDICAL & DENTAL (JP)
SHUDO KOICHI (JP)
ISHIDO MIWAKO (JP)
NANKI TOSHIHIRO (JP)
MIYASAKA NOBUYUKI (JP)
International Classes:
A61K31/203; A61K31/196; A61P3/02; A61P17/00; A61P21/00; A61P27/02; A61P29/00; A61P31/04; A61P35/00
Foreign References:
JPH10251144A1998-09-22
Other References:
SCUDERI F. ET AL.: "IL-6-deficient mice show impaired inflammatory response in a model of myosin-induced experimental myositis", J. NEUROIMMUNOL., vol. 176, no. 1-2, May 2006 (2006-05-01), pages 9 - 15, XP005570194
SALEMI S. ET AL.: "Detection of interleukin 1beta (IL-1beta), IL-6 and tumor necrosis factor-alpha in skin of patients with fibromyalgia", J. RHEUMATOL., vol. 30, no. 1, 2003, pages 146 - 150
Attorney, Agent or Firm:
SIKs & Co. (Kyobashi-Nisshoku Bldg.8-7, Kyobashi 1-chome,Chuo-ku8-7, Kyobashi, Tokyo 31, JP)
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Claims:
炎症性ミオパチーの予防及び/又は治療のための医薬であって、レチノイドを有効成分として含む医薬。
炎症性ミオパチーが感染性炎症性ミオパチー又は悪性腫瘍に起因する炎症性ミオパチーである請求項1に記載の医薬。
炎症性ミオパチーが特発性炎症性ミオパチーである請求項1に記載の医薬。
特発性炎症性ミオパチーが多発性筋炎、皮膚筋炎、外眼筋炎、巣状筋炎、又は封入体筋炎である請求項3に記載の医薬。
炎症性ミオパチーが多発性筋炎又は皮膚筋炎である請求項1に記載の医薬。
レチノイドが非天然型のレチノイドである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の医薬。
レチノイドがレチノイン酸レセプターRARのサブタイプαに結合するレチノイドである請求項6に記載の医薬。
レチノイドが芳香環と芳香族カルボン酸又はトロポロンとが連結基を介して結合した基本骨格を有するレチノイドである請求項6又は7に記載の医薬。
レチノイドがAm80(4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルバモイル]安息香酸)又はAm580(4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8- テトラメチル-2- ナフタレニル)カルボキサミド] 安息香酸) である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の医薬。
Description:
炎症性ミオパチーの予防及び/又 は治療のための医薬

 本発明は炎症性ミオパチーの予防及び/又 は治療のための医薬に関するものである。

炎症性ミオパチーは、筋肉組織の炎症が特 徴的な疾患である。炎症性ミオパチーでは、 罹患筋ならびに血管周辺に多数のマクロファ ージ、好中球、T細胞、好酸球、好塩基球等 活性化白血球からなる炎症細胞が浸潤して り、これらの炎症細胞によって筋線維が直 傷害されたり、血管傷害を起こすことが知 れている。さらに血管傷害はしばしば筋束 辺萎縮、小梗塞像等の虚血性の変化を伴い また炎症性ミオパチーの病変部位では、細 障害性分子の発現や、サイトカインの発現 認められる。炎症性ミオパチーの中でも特 性炎症性ミオパチーは原因不明の筋組織の 症や萎縮が特徴的である疾患であり、多発 筋炎や皮膚筋炎が代表例である。多発性筋 や皮膚筋炎では、左右対称性の四肢近位筋 の筋力低下が先行することが多く、進行す と、頚筋、咽頭筋、喉頭筋等の筋力低下が こる。さらに特徴的な皮疹を呈するものは 膚筋炎という。患者は起立動作や背臥位で 頭部挙上の困難を自覚し、やがて上肢挙上 歩行の困難、嚥下困難を自覚する。症状は 々に進展するが、比較的急速な進展をみる ともある。筋痛や筋萎縮を認める場合もあ 。

 多発性筋炎と皮膚筋炎の治療法としては 主に副腎皮質ステロイド剤による薬物療法 行われている。その他に免疫抑制剤やガン グロブリンが使用されることがある。しか ながら、これらの治療に抵抗性の患者も多 みられ、また、副作用や合併する感染症等 より投与継続が困難な場合もあるため、多 性筋炎・皮膚筋炎などの特発性炎症性ミオ チーに対して優れた有効性を有する新たな 薬の提供が切望されている。

 一方、レチノイン酸(ビタミンA酸)はビタ ンAの活性代謝産物であり、発生途上にある 未熟な細胞を特有な機能を有する成熟細胞へ と分化させる作用や、細胞の増殖制御作用や 生命維持作用などの極めて重要な生理作用を 有している。これまでに合成された種々のビ タミンA誘導体、例えば、特開昭61-22047号公報 や特開昭61-76440号公報記載の安息香酸誘導体 及びジャーナル・オブ・メディシナル・ケ ストリー(Journal of Medicinal Chemistry, 1988, Vo l. 31, No. 11, p.2182)に記載の化合物なども、 様な生理作用を有することが明らかにされ いる。レチノイン酸及びレチノイン酸様の 物活性を有する上記化合物は「レチノイド と総称されている。

 例えば、オール・トランス(all-trans)・レ ノイン酸は、細胞核内に存在する核内レセ ター・スーパーファミリー (Evans, R.M., Scien ce, 240, p.889, 1988)に属するレチノイン酸レセ プター(RAR)にリガンドとして結合して、その 写因子としての活性を誘導することを通じ 動物細胞の増殖・分化あるいは細胞死など 制御することが明らかにされている(Petkovich , M., et al., Nature, 330, pp.444-450, 1987)。また 、9-cis-レチノイン酸をリガンドとするレチノ イドX レセプター(RXR)の存在が証明されてい 。レチノイドXレセプターは、ホモダイマー またはレチノイン酸レセプターとのヘテロ二 量体を形成し、標的遺伝子の転写を惹起ない し抑制して、レチノイン酸の生理活性の発現 に寄与していることが明らかにされた(Mangelsd orf, D.J. et al., Nature, 345, pp.224-229)。

 レチノイン酸様の生物活性を有する上記 合物(例えば、4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8- テトラメチル-2-ナフタレニル)カルバモイル] 息香酸: Am80など)も、レチノイン酸と同様 RARに結合して生理活性を発揮することが示 されている(Hashimoto, Y., Cell struct. Funct., 16 , pp.113-123, 1991; Hashimoto, Y., et al., Biochem.  Biophys. Res. Commun., 166, pp.1300-1307, 1990を参照 )。これらの化合物は、動物実験又は臨床に いて、ビタミンA欠乏症、上皮組織の角化症 リウマチ、遅延型アレルギー、骨疾患、及 白血病やある種の癌の治療や予防に有用で ることが見出されている。

 なお、レチノイドと炎症性ミオパチーとの 連については、急性前骨髄球性白血病患者 おいてレチノイドの一つであるオール-トラ ンス-レチノイン酸の投与により炎症性ミオ チーが誘発された症例がいくつか報告され いる(Citak, F.E., et al., Haematologica, 91, pp.8-1 0, 2006)が、レチノイドのミオパチーに対する 治療効果についてはこれまで報告がない。

特開昭61-22047号公報

特開昭61-76440号公報 Journal of MedicinalChemistry, 31, No. 11, p.218 2, 1988 Cell struct. Funct., 16,pp.113-123, 1991 Biochem. Biophys. Res.Commun., 166, pp.1300-1307, 1990 Haematologica, 91, pp.8-10, 2006

 本発明の課題は、炎症性ミオパチーに対 て高い有効性を発揮できる医薬を提供する とにある。特に、多発性筋炎・皮膚筋炎な の炎症性ミオパチーに対して優れた予防及 /又は治療効果を達成可能な医薬を提供する ことが本発明の課題である。

 本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭 研究を行った結果、レチノイン酸などのレ ノイドが多発性筋炎や皮膚筋炎などの炎症 ミオパチーに対して優れた予防及び/又は治 療効果を有していることを見出し、本発明を 完成した。

 すなわち、本発明により、炎症性ミオパチ の予防及び/又は治療のための医薬であって 、レチノイドを有効成分として含む医薬が提 供される。
 上記発明の好ましい態様によれば、炎症性 オパチーがウイルス性筋炎、細菌性筋炎、 は真菌性筋炎などの感染性炎症性ミオパチ であるか、悪性腫瘍に起因する炎症性ミオ チーである上記の医薬;炎症性ミオパチーが 特発性炎症性ミオパチーである上記の医薬; 症性ミオパチーが多発性筋炎、皮膚筋炎、 眼筋炎、巣状筋炎、又は封入体筋炎である 記の医薬;及び炎症性ミオパチーが多発性筋 又は皮膚筋炎である上記の医薬が提供され 。

 上記の発明の別の好ましい態様によれば 該レチノイドが非天然型のレチノイドであ 上記の医薬;該レチノイドが芳香環と芳香族 カルボン酸又はトロポロンとが連結基を介し て結合した基本骨格を有するレチノイドであ る上記の医薬が提供される。

 上記発明のさらに好ましい態様によれば 該レチノイドがレチノイン酸レセプター(RAR )・サブタイプα及びサブタイプβに結合する チノイドである上記の医薬;該レチノイドが レチノイドXレセプターX(RXR)に結合するレチ イドである上記の医薬;該レチノイドが置換 ェニル基と安息香酸又はトロポロンとが連 基を介して結合した基本骨格を有するレチ イドである上記の医薬;該レチノイドが4-[(5, 6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフ タレニル)カルバモイル]安息香酸又は4-[(3,5- ストリメチルシリルフェニル)カルボキサミ ]安息香酸である上記の医薬;該レチノイド ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピニル安息香酸を基 骨格とするレチノイドである上記の医薬;該 レチノイドが4-[2,3-(2,5-ジメチル-2,5-ヘキサノ) ジベンゾ[b,f][1,4]-チアゼピン-11-イル]安息香 である上記の医薬;及び、該レチノイドが4-[5 -(4,7-ジメチルベンゾフラン-2-イル)ピロール-2 -イル]安息香酸である上記の医薬が提供され 。

 別の観点からは、上記の医薬の製造のた の上記レチノイドの使用;及び炎症性ミオパ チーの予防及び/又は治療方法であって、上 のレチノイドの有効量をヒトを含む哺乳類 物に投与する工程を含む方法が本発明によ 提供される。

 本発明の医薬は炎症性ミオパチーに対し 優れた予防及び/又は治療効果を発揮できる 。

例1における筋炎スコアによる評価結果 を示した図である。 例1における炎症性サイトカインIL-1のmR NA発現量を示した図である。 例1における炎症性サイトカインTNF-αの mRNA発現量を示した図である。

 本明細書において、レチノイドとはオー -トランス-レチノイン酸または9-シス-レチ イン酸が生理作用を発現するために必要な 容体に結合してレチノイン酸に類似する作 又はその一部の作用を発揮する化合物のこ であり、少なくとも1種以上のレチノイド様 用、例えば、細胞分化作用、細胞増殖促進 用、及び生命維持作用などの1種以上の作用 を有している化合物を意味している。レチノ イドであるか否かは、H. de The, A. Dejean: 「 Retinoids: 10 years on.」, Basel, Karger, 1991, pp.2 -9に記載された方法により容易に判定できる

 また、レチノイドは一般的にレチノイン レセプター(RAR)に結合する性質を有してお 、場合によりRARとともにRXRに結合する性質 有しているが、本発明の医薬の有効成分と て用いられるレチノイドはRARのサブタイプα (RARα)に結合してアゴニスト活性を示すもの あることが好ましい。RARαのアゴニストであ るか否かの判定については、レチノイン酸レ セプター・サブタイプへの結合についても上 記文献記載の方法により容易に確認すること ができる。

 本発明の医薬の有効成分としては、天然 レチノイド又は非天然型のレチノイドのい れを用いてもよいが、好ましくは非天然型 レチノイドを用いることができる。非天然 レチノイドとしては、例えば、芳香環と芳 族カルボン酸又はトロポロンとが連結基を して結合した基本骨格を有するレチノイド 用いることができる。

 より具体的には、非天然型のレチノイド して、下記の一般式:B-X-A(式中、Bは置換基 有していてもよい芳香族基を示し、Xは連結 を示し、Aは置換基を有していてもよいカル ボン酸置換芳香族基又はトロポロニル基を示 す)で表されるレチノイドを用いることがで る。

 Bで表される芳香族基としては置換基を有 していてもよいフェニル基が好ましい。フェ ニル基上の置換基の種類、個数、及び置換位 置は特に限定されない。フェニル基上の置換 基としては、例えば、低級アルキル基を用い ることができる(本明細書において低級とは 素数1ないし6個程度、好ましくは炭素数1な し4個を意味する)。低級アルキル基としては 直鎖又は分枝鎖のアルキル基が好ましく、よ り具体的には、メチル基、エチル基、n-プロ ル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブ ル基、又はtert- ブチル基などを挙げること ができる。また、フェニル基上の置換基とし て、例えば、メトキシ基などの低級アルコキ シ基、ハロゲン原子(ハロゲン原子としては ッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ 原子のいずれでもよい)、例えばトリメチル リル基などの低級アルキル置換シリル基な を挙げることができる。フェニル基として 、例えば、2ないし4個の低級アルキル基で 換されたフェニル基、あるいは1又は2個のト リ低級アルキルシリル基で置換されたフェニ ル基などが好ましく、2ないし4個のアルキル で置換されたフェニル基、又は2個のトリメ チルシリル基で置換されたフェニル基などが より好ましい。

 フェニル基上に置換する2個の低級アルキ ル基が隣接する場合には、それらの2つの低 アルキル基は一緒になってそれらが結合す フェニル基の環構成炭素原子とともに5員環 は6員環を1個又は2個、好ましくは1個形成し てもよい。このようにして形成される環は飽 和でも不飽和でもよく、環上には1又は2個以 の低級アルキル基、例えばメチル基、エチ 基などが置換していてもよい。上記の形成 れた環上には、好ましくは2~4個のメチル基 さらに好ましくは4個のメチル基が置換して いてもよい。例えば、フェニル環上に置換す る2個の隣接する低級アルキル基が一緒にな て5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン環や5,5,8,8- トラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン などが形成されることが好ましい。Bで表さ れる芳香族基としては、芳香族複素環基を用 いてもよい。そのような例として、Bが置換 を有していてもよいベンゾフラニル基、好 しくはベンゾルフラン-2-イル基、特に好ま くはBが4,7-ジメチルベンゾフラン-2-イル基で あるレチノイドを例示することができる。

 Aで表されるカルボン酸置換芳香族基とし てはカルボン酸置換フェニル基又はカルボン 酸置換複素環基などを用いることができるが 、4-カルボキシフェニル基が好ましい。Aが示 すカルボン酸置換複素環基を構成する複素環 カルボン酸の例として、例えばピリミジン-5- カルボン酸などを挙げることができる。また 、Aで表されるトロポロニル基としてはトロ ロン-5-イル基が好ましい。これらのカルボ 酸置換芳香族基またはトロポロニル基の環 には1以上の他の置換基が存在していてもよ 。

 Xで表される連結基の種類は特に限定されな いが、例えば、-NHCO-、-CONH-、-N(R A )-(R A は低級アルキル基、例えばシクロプロピルメ チル基などを示す)、又は-C(R B )(R C )-(R B 及びR C はそれぞれ独立に水素原子又は低級アルキル 基などを示す)などを例示することができる また、Xが2価の芳香族基であってもよい。例 えば、Xがピロールジイル基である場合など 挙げることができる。さらに、Xで表される 結基とBで表される芳香族基とが結合して環 構造を形成してもよい。そのような例として 、B-X-Aで表されるレチノイドの基本骨格がジ ンゾ[b,f][1,4]チアゼピニル安息香酸又はジベ ンゾ[b,f][1,4]ジアゼピニル安息香酸となる場 を挙げることができる。なお、本明細書に いて「基本骨格」という用語は1又は2以上の 任意の置換基が結合するための主たる化学構 造を意味する。

 好ましいレチノイドとして、天然型レチ イン酸のオールトランスレチノイン酸及び 非天然型レチノイド、例えば、フェニル置 カルバモイル安息香酸又はフェニル置換カ ボキサミド安息香酸を基本骨格とするレチ イドを用いることができる。フェニル置換 ルバモイル安息香酸又はフェニル置換カル キサミド安息香酸を基本骨格とするレチノ ドは種々知られている。フェニル置換カル モイル安息香酸を基本骨格とするレチノイ の代表例としてAm80(4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5 ,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)カルバモ ル]安息香酸, Hashimoto, Y., Cell struct. Funct.,  16, pp.113-123, 1991; Hashimoto, Y., et al., Bioche m. Biophys. Res. Commun., 166, pp.1300-1307, 1990を 照)、フェニル置換カルボキサミド安息香酸 基本骨格とするレチノイドの代表例としてT ac101(4-[(3,5-ビストリメチルシリルフェニル)カ ルボキサミド]安息香酸, J. Med. Chem., 33, pp. 1430-1437, 1990)を挙げることができる。

 好ましいレチノイドとしては、例えば、下 の一般式(I):
〔式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、及びR 5 はそれぞれ独立に水素原子、低級アルキル基 、又は低級アルキル置換シリル基を示し、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、及びR 5 のうち隣接するいずれか2つの基が低級アル ル基である場合には、それらが一緒になっ それらが結合するベンゼン環上の炭素原子 ともに5員環又は6員環を形成してもよく(該 は1又は2以上のアルキル基を有していてもよ い)、X 1 は-CONH-又は-NHCO-を示す〕で表される化合物を 挙げることができる。

 上記一般式(I)において、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、及びR 5 が示す低級アルキル基としては、炭素数1な し6個程度、好ましくは炭素数1ないし4個の 鎖又は分枝鎖のアルキル基を用いることが きる。例えば、メチル基、エチル基、n-プロ ピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブ チル基、又はtert- ブチル基などを用いるこ ができる。上記の低級アルキル基上には1個 は2個以上の任意の置換基が存在していても よい。置換基としては、例えば、水酸基、低 級アルコキシ基、ハロゲン原子などを例示す ることができる。R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、及びR 5 が示す低級アルキル置換シリル基としては、 例えば、トリメチルシリル基などを挙げるこ とができる。

 R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、及びR 5 からなる群から選ばれる隣接する2つの低級 ルキル基が一緒になって、それらが結合す ベンゼン環上の炭素原子とともに5員環又は6 員環を1個又は2個、好ましくは1個形成しても よい。このようにして形成される環は飽和、 部分飽和、又は芳香族のいずれであってもよ く、環上には1又は2以上のアルキル基を有し いてもよい。環上に置換可能なアルキル基 しては、炭素数1ないし6個程度、好ましく 炭素数1ないし4個の直鎖又は分枝鎖のアルキ ル基を用いることができる。例えば、メチル 基、エチル基などを用いることができ、好ま しくは2~4個のメチル基、さらに好ましくは4 のメチル基が置換していてもよい。例えば R 2 及びR 3 が置換するベンゼン環とR 2 及びR 3 とにより、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン環 5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8- テトラヒドロナ フタレン環などが形成されることが好ましい 。

 他の好ましいレチノイドとしては、例えば B-X-Aで表されるレチノイドの基本骨格がジ ンゾ[b,f][1,4]チアゼピニル安息香酸又はジベ ゾ[b,f][1,4]ジアゼピニル安息香酸であるレチ ノイドを挙げることができる。このレチノイ ドの一例は、例えば、特開平10-59951号公報に 載されている。このようなレチノイドの特 好ましい例として、例えば、HX630(4-[2,3-(2,5- メチル-2,5-ヘキサノ)ジベンゾ[b,f][1,4]-チア ピン-11-イル]安息香酸)を挙げることができ 。また、Xが-N(R A )-であり、Bが芳香族複素環カルボン酸である レチノイドとしては、例えば、2-[2-(N-5,6,7,8- トラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフタレ ル-N-シクロプロピルメチル)アミノ]ピリミジ ン-5-カルボン酸を挙げることができる。また 、Xが2価の芳香族基であるレチノイドとして 、例えば、4-[5-(4,7-ジメチルベンゾフラン-2- イル)ピロール-2-イル]安息香酸を挙げること できる。Aがトロポロニル基である化合物と しては、例えば、5-[[5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8 ,8-テトラメチル-2-ナフタレニル]カルボキサ ド]トロポロンなどを挙げることができる。
 特に好ましいレチノイドとして、Am80(4-[(5,6, 7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフ レニル)カルバモイル]安息香酸)又はAm580(4-[(5 ,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8- テトラメチル-2-  フタレニル)カルボキサミド] 安息香酸)が げられる。

 本発明の医薬の有効成分としては、上記 レチノイドの塩を用いてもよい。例えば、 トリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩 若しくはカルシウム塩などの金属塩、アン ニウム塩、又はトリエチルアミン塩若しく エタノールアミン塩などの有機アミン塩な の生理学的に許容される塩を本発明の医薬 有効成分として用いることができる。本発 の医薬の有効成分としては、上記のレチノ ドのプロドラッグを用いてもよい。プロド ッグとは、哺乳類動物に経口的又は非経口 に投与した後に生体内、好ましくは血中で 水分解などの変化を受けてレチノイド又は の塩を生成する化合物又はその塩のことで る。例えば、カルボキシル基、アミノ基、 たは水酸基などを有する薬剤をプロドラッ 化する手段は多数知られており、当業者は 宜の手段を選択可能である。レチノイド又 その塩のプロドラッグの種類は特に限定さ ないが、例えば、レチノイドがカルボキシ 基を有する場合には、該カルボキシル基を ルコキシカルボニル基に変換したプロドラ グが例示される。好ましい例としては、メ キシカルボニル基又はエトキシカルボニル などのエステル化合物が挙げられる。

 上記のレチノイドは、置換基の種類に応 て1個または2個以上の不斉炭素を有する場 があるが、これらの不斉炭素に基づく任意 光学異性体、光学異性体の任意の混合物、 セミ体、2個以上の不斉炭素に基づくジアス レオ異性体、ジアステレオ異性体の任意の 合物などは、いずれも本発明の医薬の有効 分として利用可能である。さらに、二重結 のシス又はトランス結合に基づく幾何異性 、及び幾何異性体の任意の混合物や、遊離 合物又は塩の形態の化合物の任意の水和物 は溶媒和物も本発明の医薬の有効成分とし 用いることができる。

 本発明の医薬は炎症性ミオパチーの予防 び/又は治療のために用いることができる。 本明細書において「ミオパチー」とは、筋肉 組織における疾患を意味する。ミオパチーに は炎症性ミオパチーが包含され、炎症性ミオ パチーには感染性炎症性ミオパチー(ウイル 性筋炎、細菌性筋炎、真菌性筋炎など)、悪 腫瘍に起因する炎症性ミオパチー、及び特 性炎症性ミオパチーが包含される。さらに 発性炎症性ミオパチーには、外眼筋炎、巣 筋炎、及び封入体筋炎のほか、多発性筋炎 び皮膚筋炎が包含される。本明細書におい 「炎症性ミオパチー」とは、筋肉組織の炎 が特徴的であり、炎症細胞の浸潤により筋 組織が障害を受ける疾患を意味する。本明 書において「特発性炎症性ミオパチー」と 、炎症性ミオパチーの中でも原因不明の筋 織の炎症が特徴的である疾患を意味する。 発明の医薬は上記の多様な炎症性ミオパチ に対して適用できるが、好ましい適用対象 特発性炎症性ミオパチーであり、より好ま い適用対象は多発性筋炎及び皮膚筋炎であ 。本発明の医薬が炎症性ミオパチーに対し 有効性を示すことは本明細書の実施例に具 的に示した方法により当業者が容易に確認 きる。

 本発明の医薬は、上記のレチノイド及び の塩、並びにそれらの水和物及び溶媒和物 らなる群から選ばれる物質の1種または2種 上を有効成分として含んでいる。2種以上の なるレチノイドを組み合わせて投与するこ により好ましい有効性が得られることがあ 。本発明の医薬としては上記の物質それ自 を投与してもよいが、好ましくは、当業者 周知の方法によって製造可能な経口用ある は非経口用の医薬組成物として投与するこ ができる。

 経口投与に適する医薬用組成物としては 例えば、錠剤、カプセル剤、細粒剤、顆粒 、液剤、及びシロップ剤等を挙げることが き、非経口投与に適する医薬組成物として 、例えば、注射剤、坐剤、吸入剤、点眼剤 点鼻剤、軟膏剤、クリーム剤、及び貼付剤 を挙げることができる。2種以上の医薬組成 物を組み合わせて用いることもできる。本発 明の医薬の好ましい形態として経口投与用の 医薬組成物を挙げることができる。

 上記の医薬組成物は、薬理学的、製剤学 に許容しうる1種又は2種以上の製剤用添加 を加えて製造することができる。製剤用添 物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ない 崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティン 剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶 補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴 射剤、及び粘着剤等を挙げることができるが これらに限定されることはない。

 例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散 などの経口投与用医薬組成物の製造には、 糖や結晶セルロース、デンプン等の賦形剤 ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑 剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ ニルピロリドン等の結合剤、力ルボキシメ ルセルロースカルシウム、低置換ヒドロキ プロピルメチルセルロース等の崩壊剤、ヒ ロキシプロピルメチルセルロース、マクロ ール、シリコン樹脂等のコーティング剤な を必要に応じて用いることができる。点眼 の製造には、塩化ナトリウム、塩化カリウ 、濃グリセリン等の等張化剤、リン酸ナト ウム、酢酸ナトリウム、ホウ酸、モノエタ ールアミン等の緩衝化剤、クエン酸ナトリ ム、エデト酸ナトリウム等の安定化剤、塩 ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸エ テル等の防腐剤、ポリソルベート80、ポリ キシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤 希塩酸、水酸化ナトリウム等のpH調整剤など を必要に応じて用いることができる。点眼剤 のpHは特に限定されないが、眼科用製剤に許 される範囲内として例えば4~8の範囲が好ま い。

 本発明の医薬の投与量は特に限定されず 患者の症状、年齢、体重などの条件や投与 法及び有効成分の種類などに応じて適宜選 できる。例えば、経口投与の場合には1日あ たり0.01~1000 mg、好ましくは0.1~100 mgを1回又 数回に分けて投与すればよい。もっとも、 記の投与量は例示のためのものであり、適 増減することができる。

 以下、本発明を実施例によりさらに具体的 説明するが、本発明の範囲は下記の実施例 限定されることはない。
例1:実験的多発性筋炎モデルマウスでの評価
 雄性SJL/Jの5週齢マウスに、免疫付与を開始 た。0日目にウサギミオシンに完全フロイン トアジュバントと結核菌を添加したもの各100 μlを、背中の計4ヶ所に皮下注射した。同様 免疫付与を7日目、14日目にも行った。最初 免疫付与の直前に第一回の薬物の経口投与 行い、以降1日1回、計21日間投与した。タミ ロテン(Am80:4-[(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テ ラメチル-2-ナフタレニル)カルバモイル]安 香酸)を0.5%カルボキシメチルセルロース水溶 液に懸濁して0.2, 2, 4 mg/kgを経口投与した。 対照群には0.5%カルボキシメチルセルロース 経口投与した。21日目にマウスを安楽死させ 大腿四頭筋を摘出した。ヘマトキシリン・エ オジン染色病理組織標本を作製し、タミバロ テンの筋肉における炎症性変化への影響を病 理組織学的に評価した。また定量RT-PCR法を用 いて炎症性サイトカインmRNAの発現を測定し 。

 図1、図2、及び図3に結果を示す。図1の大腿 四頭筋の病理組織標本の筋炎スコアは、以下 の判定方法に従って評価した。免疫付与を行 わない正常群には4匹のマウスを用いた。対 群は20匹、0.2, 2, 4 mg/kg タミバロテン投与 はそれぞれ20匹、18匹、16匹のマウスを用い 。
0:正常
1:筋内膜の軽度の炎症病変
2:筋内膜の重度の炎症病変
3:広範囲に広がる損傷
+0.5:筋肉付近での炎症

 統計的有意差はMann-Whitney's U検定により判 した(対照群と比較して* p<0.001)。
図2の炎症性サイトカインIL-1のmRNA発現量は、 正常群のIL-1のmRNA発現量を1としたときの相対 量を示した。免疫付与を行わない正常群には 4匹のマウスを用いた。対照群は14匹、0.2, 2, 4 mg/kg タミバロテン投与群はそれぞれ7匹、 12匹、及び7匹のマウスを用いた。統計的有意 差はMann-Whitney's U検定により判定した(対照群 と比較して*p<0.01)。
 図3の炎症性サイトカインTNF-αのmRNA発現量 、正常群のTNF-αのmRNA発現量を1としたときの 相対量を示した。対照群及びタミバロテン投 与各群にそれぞれ7匹のマウスを用いた。免 付与を行わない正常群には4匹のマウスを用 た。統計的有意差はMann-Whitney's U検定によ 判定した(対照群と比較して*p<0.05)。

 タミバロテンを2 mg/kgもしくは4mg/kg投与 た群では、対照群に比べて筋炎スコアが統 学的に有意に低値であった。また、炎症性 イトカインであるIL-1、 TNF-αのmRNA発現量も 照群に比べてタミバロテンを2, 4 mg/kg投与 た群では有意に低い値を示した。これらの 験結果から、本発明の医薬は多発性筋炎に ける炎症および筋組織における病変の発症 抑える効果を持つことが示され、本発明の 薬はミオパチーの予防及び/又は治療に有効 性を有すると結論された。

 本発明の医薬は炎症性ミオパチーに対す 予防及び/又は治療のための医薬として有用 である。