Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
PHOTOCATHODE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/150760
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a photocathode having improved properties. Specifically disclosed is a photocathode (10) comprising: a base material (12); and an intermediate layer (14), an under layer (16) and a photoelectron emission layer (18) all formed on the base material (12) in this order. The photoelectron emission layer (18) contains Sb and Bi, and has a function of emitting a photoelectron to the outside upon being launched with light. The photoelectron emission layer (18) contains Bi in an amount of 32 mol% or less relative to the total amount of Sb and Bi. It becomes possible to dramatically improve the linearity at a lower temperature.

Inventors:
MATSUI TOSHIKAZU (JP)
HAMANA YASUMASA (JP)
NAKAMURA KIMITSUGU (JP)
ISHIGAMI YOSHIHIRO (JP)
OGURI DAIJIRO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/070329
Publication Date:
December 17, 2009
Filing Date:
November 07, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
HAMAMATSU PHOTONICS KK (JP)
MATSUI TOSHIKAZU (JP)
HAMANA YASUMASA (JP)
NAKAMURA KIMITSUGU (JP)
ISHIGAMI YOSHIHIRO (JP)
OGURI DAIJIRO (JP)
International Classes:
H01J1/34; H01J40/06
Foreign References:
JPS366927B1
JPS52105766A1977-09-05
Other References:
See also references of EP 2309529A4
Attorney, Agent or Firm:
HASEGAWA, Yoshiki et al. (JP)
Yoshiki Hasegawa (JP)
Download PDF:
Claims:
 SbとBiを含有し、光の入射により光電子を外部に放出する光電子放出層を備え、
 前記光電子放出層には、Sb及びBiに対して32mol%以下のBiが含有されていることを特徴とする光電陰極。
 前記光電子放出層には、Sb及びBiに対して29mol%以下のBiが含有されていることを特徴とする請求項1記載の光電陰極。
 前記光電子放出層には、Sb及びBiに対して16.7mol%以下のBiが含有されていることを特徴とする請求項1記載の光電陰極。
 前記光電子放出層には、Sb及びBiに対して6.9mol%以下のBiが含有されていることを特徴とする請求項1記載の光電陰極。
 前記光電子放出層には、Sb及びBiに対して0.4mol%以上のBiが含有されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の光電陰極。
 前記光電子放出層には、Sb及びBiに対して8.8mol%以上のBiが含有されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の光電陰極。
 ―100℃におけるリニアリティが、25℃におけるリニアリティの0.1倍よりも高いことを特徴とする請求項1記載の光電陰極。
 波長320~440nmでのピークにおいて20%以上の量子効率を示すことを特徴とする請求項2記載の光電陰極。
 波長300~430nmでのピークにおいて35%以上の量子効率を示すことを特徴とする請求項4記載の光電陰極。
 前記光電子放出層の光の入射側に、HfO 2 から形成される中間層を更に備えることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項記載の光電陰極。
 前記光電子放出層の光の入射側に、MgOから形成される下地層を更に備えることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項記載の光電陰極。
 前記光電子放出層は、SbBiの合金薄膜に、カリウム金属蒸気及びセシウム金属蒸気を反応させることによって形成されることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項記載の光電陰極。
 前記光電子放出層は、SbBiの合金薄膜に、カリウム金属蒸気及びルビジウム金属蒸気とセシウム金属蒸気を反応させることによって形成されることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項記載の光電陰極。
Description:
光電陰極

 本発明は、光の入射により光電子を放出 る光電陰極に関するものである。

 従来の光電陰極として、容器の内面にSbを 着させ、その蒸着層の上にBiを蒸着させ、さ らにその上からSbを蒸着させることによってS b層とBi層とを形成し、Csの蒸気を反応させる とによって構成されるものが知られている( 例えば、特許文献1参照)。

特開昭52-105766号公報

 入射光に対する光電陰極の感度は高いこ が好ましい。光電陰極の感度を高くするに 、光電陰極に入射する光子の数に対する光 陰極外部に放出される光電子の数の割合を す実効的な量子効率を高くする必要がある また、微弱な光を検出する場合は特に感度 要求されると共に暗電流の低減も要求され 。一方、半導体検査装置のようにダイナミ クレンジの広い計測が求められる分野にお ては、リニアリティも要求される。特許文 1においては、SbとBiを用いる光電陰極が開 されている。しかしながら、光電陰極にお ては、さらなる量子効率の向上と同時に、 電流の低減、あるいはリニアリティの向上 どの各種特性の向上が望まれている。また 特に高いリニアリティを要求される極低温 測の場合は、従来、入射面板と光電陰極の に金属薄膜や網状電極を形成して光電陰極 導電性を高めることが行われたが、透過率 低下や光電面面積が少なくなり、実効的量 効率が下がってしまう。

 本発明は、各種特性を向上させることの きる光電陰極を提供することを目的とする

 本発明に係る光電陰極は、SbとBiを含有し 、光の入射により光電子を外部に放出する光 電子放出層を備え、光電子放出層には、Sb及 Biに対して32mol%以下のBiが含有されているこ とを特徴とする。

 この光電陰極では、低温時におけるリニ リティを飛躍的に向上させることができる

 また、本発明に係る光電陰極において、 電子放出層には、Sb及びBiに対して29mol%以下 のBiが含有されていることが好ましい。これ よって、マルチアルカリ光電陰極と同等の 度を確保することができ、半導体検査装置 ようなダイナミックレンジの広い計測が求 られる分野で要求される量子効率を確保す ことができる。

 また、本発明に係る光電陰極において、 電子放出層には、Sb及びBiに対して16.7mol%以 のBiが含有されていることが好ましい。こ によって、酸化マンガン下地層にSb層を設け た従来品よりも高い感度を得ることができ、 特に、波長500~600nmにおける感度、すなわち緑 色感度~赤感度を向上させることができる。

 また、本発明に係る光電陰極において、 電子放出層には、Sb及びBiに対して6.9mol%以 のBiが含有されていることが好ましい。これ によって、量子効率35%以上の高感度を得るこ とができる。

 また、本発明に係る光電陰極において、 電子放出層には、Sb及びBiに対して0.4mol%以 のBiが含有されていることが好ましい。これ によって、暗電流を確実に低減することがで きる。

 また、本発明に係る光電陰極において、 電子放出層には、Sb及びBiに対して8.8mol%以 のBiが含有されていることが好ましい。これ によって、マルチアルカリ光電陰極のリニア リティの上限値と同等のリニアリティを安定 して得ることができる。

 また、本発明に係る光電陰極において、 100℃におけるリニアリティが、25℃におけ リニアリティの0.1倍よりも高いことが好ま い。また、波長320~440nmでのピークにおいて20 %以上の量子効率を示すことが好ましく、波 300~430nmでのピークにおいて35%以上の量子効 を示すことが好ましい。

 また、本発明に係る光電陰極において、光 子放出層の光の入射側に、HfO 2 から形成される中間層を更に備えることが好 ましい。

 また、本発明に係る光電陰極において、 電子放出層の光の入射側に、MgOから形成さ る下地層を更に備えることが好ましい。

 また、本発明に係る光電陰極において、 電子放出層は、SbBiの合金薄膜に、カリウム 金属蒸気及びセシウム金属蒸気(ルビジウム 属蒸気)を反応させることによって形成され ことが好ましい。

 本発明によれば、各種特性を向上させる とができる。

本実施形態に係る光電陰極を透過型と て適用した光電子増倍管の断面構成を示す である。 本実施形態に係る光電陰極の構成を一 拡大して示す断面図である。 SbにBiを含有させることによって暗電流 を低減することができるとの考えを説明する ための概念図である。 実施例及び比較例の分光感度特性を示 グラフである。 実施例及び比較例の分光感度特性を示 グラフである。 実施例及び比較例の分光感度特性を示 グラフである。 実施例及び比較例の分光感度特性を示 グラフである。 暗中状態において光電子放出層から放 される光電子の強度ごとのカウント数を示 図である。 実施例及び比較例のダークカウントの をプロットしたグラフである。 実施例及び比較例のダークカウントの 値をプロットしたグラフである。 実施例のリニアリティを示すグラフで ある。 実施例のリニアリティを示すグラフで ある。 図11及び図12に示されている変化率が-5 %のときの陰極電流を各含有率についてプロ トしたグラフである。 変化率が-5%のときの陰極電流を各含有 率について温度ごとにプロットしたグラフで ある。

符号の説明

 10…光電陰極、12…基板、14…中間層、16 下地層、18…光電子放出層。

 以下、図面を参照して本実施形態に係る 電陰極について詳細に説明する。

 図1は、本実施形態に係る光電陰極(光電 )を透過型として適用した光電子増倍管の断 構成を示す図である。光電子増倍管30は、 射光を透過する入射窓34と、筒状の側管の一 方の開口端を入射窓34で封止してなる容器32 を備える。容器32内には光電子を放出する光 電陰極10、放出された光電子を増倍部40へ導 集束電極36、電子を増倍する増倍部40、及び 倍された電子を収集する陽極38が設けられ いる。なお、光電子増倍管30では、光電陰極 10の基板12が入射窓34として機能するように構 成されている。

 集束電極36と陽極38との間に設けられる増 倍部40は、複数のダイノード42で構成されて る。集束電極36、ダイノード42、光電陰極10 及び陽極38は、光電陰極10と反対側の容器32 端部に設けられたステム板57を貫通するよう に設けられたステムピン44と電気的に接続さ ている。

 図2は、本実施形態に係る光電陰極の構成を 一部拡大して示す断面図である。この光電陰 極10では、図2に示すように、基板12上に中間 14、下地層16、及び光電子放出層18がこの順 形成されている。光電陰極10は、基板12側か ら光hνが入射し、光電子放出層18側から光電 e - が放出される透過型として模式的に図示され ている。

 基板12は、酸化ハフニウム(HfO 2 )からなる中間層14をその上に形成することが 可能な基板からなる。基板12は、波長177nm~1000 nmの光を透過するものが好ましい。このよう 基板として、高純度合成石英ガラス、ある は硼珪酸ガラス(例えばコバールガラス)、 イレックスガラス(登録商標)からなる基板が ある。この基板12は、好適には1~5mmの厚みを しており、これによって最適の透過率と機 的強度を保つことができる。

 中間層14は、HfO 2 から形成されることが好ましい。HfO 2 は、波長300nm~1000nmの光に対して高い透過率を 示す。また、HfO 2 は、その上にSbが形成される場合、Sbのアイ ンド構造を細かくする。この中間層14は、洗 浄処理を行ったガラスバルブの容器32の入射 34に相当する基板12にHfO 2 を蒸着することによって形成される。蒸着は 、例えばEB(electron beam;エレクトロンビーム) 着装置を用いたEB蒸着法によってなされる。 特に、中間層14と下地層16とをHfO 2 -MgOの組み合わせとすることにより光電子放 層18と基板12の緩衝層としての効果が得られ と共に、光の反射を防止するという効果が られる。

 下地層16は、酸化マンガン、MgO、あるいはTi O 2 などの波長117nm~1000nmの光を透過するものが好 ましい。特に、下地層16をMgOで形成すること よって、量子効率20%以上、または35%以上の い感度を得ることができる。MgO下地層を設 ることによって、光電子放出層18と基板12の 緩衝層としての効果が得られると共に、光の 反射を防止するという効果が得られる。この 下地層16は、所定の酸化物を蒸着させること よって形成される。

 光電子放出層18は、SbBiの合金薄膜に、カ ウム金属蒸気とセシウム金属蒸気を反応さ ることによって、あるいはルビジウム金属 気とセシウム金属蒸気を反応させることに って形成される。この光電子放出層18は、Sb -Bi-K-Cs又はSb-Bi-Rb-Csからなる多孔質層として 成される。光電子放出層18は、光電陰極10の 電子放出層として機能する。SbBiの合金薄膜 はスパッタ蒸着法やEB蒸着法などによって下 層16に蒸着される。光電子放出層18の膜厚は 、150Å~1000Åの範囲である。

 ここで、本願発明者は鋭意研究の結果、 電子放出層18のSbに所定量以上のBiを含有さ ることによって、格子欠陥に起因するキャ アが多くなり光電陰極の伝導性が大きくな ことを発見した。これによって、Biを含有 せることで光電陰極10のリニアリティを向上 できることを見出した。また、高感度の光電 陰極は暗電流が大きくなってしまうという問 題があったが、SbにBiを含有させることによ て暗電流を低減することができることを発 した。

 図3は、SbにBiを含有させることによって 電流を低減することができるとの考えを説 するための概念図であり、(a)はBiが含有され ない光電陰極の概念図、(b)はBiが含有される 電陰極の概念図である。図3(a)に示すように 、Biが含有されていない光電陰極においては 熱電子エネルギー(室温で0.038eV)が伝導帯近 の不純物準位で励起し、熱電子となって放 されることによって暗電流が発生する。本 施形態に係る光電陰極10では、図3(b)に示す うに、SbにBiを含有させることによって表面 障壁(Biの含有率2.1mol%でEa値=0.06eV)を発生させ ことができるため、熱電子を表面障壁で阻 ことによって暗電流の発生を抑えることが きる。一方、Biの含有率が多い場合は表面 壁のEa値が更に大きくなって量子効率も下が ってしまうが、本願発明者は、適用分野に応 じて必要とされる感度を十分に確保すること ができるBiの含有率を見出した。

 光電陰極10を半導体の異物検査装置に用 る場合、小さな異物にレーザ光が照射され 際の散乱光は微弱となるが、大きな異物に ーザ光が照射された際の散乱光は大きくな 。従って、光電陰極10には微弱な散乱光を検 出できるだけの感度が要求されると共に、微 弱な散乱光と大きな散乱光のいずれにも対応 できる広いダイナミックレンジが要求される 。このように、半導体検査装置のようなダイ ナミックレンジの広い計測が求められる分野 においては、光電子放出層18におけるSbBiに対 するBiの含有率、すなわちSb及びBiの総モル量 に対するBiのモル量の割合は、当該分野にお て必要とされる感度及びリニアリティを確 するために、8.8mol%以上、32mol%以下であるこ とが好ましく、8.8mol%以上、29mol%以下である とがさらに好ましい。また、低温時におけ 光電陰極10のリニアリティを確保するために 16.7mol%以上、32mol%以下であることが好ましい

 光電陰極10を、例えば高エネルギー物理 験などの感度が特に要求され暗電流を極力 減する必要のある分野に適用する場合、光 子放出層18におけるSbに対するBiの含有率は 暗電流を十分低減すると共に必要とされる 度を確保するために、16.7mol%以下であること が好ましく、0.4mol%以上、16.7mol%以下であるこ とがさらに好ましい。また、0.4mol%以上、6.9mo l%以下とすることにより、特に高い感度を得 ことができるため一層好ましい。

 光電陰極10及び光電子増倍管30の動作を説明 する。図1及び図2に示すように、光電子増倍 30において、入射窓34を透過した入射光hνが 光電陰極10に入射する。光hνは、基板12側か 入射し、基板12、中間層14、及び下地層16を 過して光電子放出層18に達する。光電子放出 層18は光電子放出するための活性層として機 し、ここで光子が吸収されて光電子e - が発生する。光電子放出層18で発生した光電 e - は、光電子放出層18表面から放出される。放 された光電子e - は増倍部40で増倍され、陽極38によって収集 れる。

 続いて、実施例に係る光電陰極のサンプル びその比較例に係る光電陰極のサンプルに いての説明を行う。実施例に係る光電陰極 サンプルは、硼珪酸ガラス基板12に形成さ た酸化ハフニウム(HfO 2 )からなる中間層14と、その上に形成されたMgO からなる下地層16とを有している。このサン ルの下地層16の上に所定の含有率のBiを含む SbBi合金膜を形成し、光電陰極感度が最大値 なるのを確認するまでSbBi合金膜をカリウム 属蒸気及びセシウム金属蒸気に曝すことに って、光電子放出層18を形成する。光電子 出層18のSbBi層は30~80Å(光電子放出層換算で15 0~400Å)である。

 比較例に係る光電陰極のサンプルは、硼 酸ガラス基板上に酸化マンガンの下地層を 成し、その上にSb膜を形成してカリウム金 蒸気及びセシウム金属蒸気を反応させるこ によって光電子放出層を形成したバイアル リ光電陰極の従来品のサンプル(比較例A1,比 例A2)と、UV透過ガラス基板上にSb膜にナトリ ウム金属蒸気、カリウム金属蒸気及びセシウ ム金属蒸気を反応させることによって光電子 放出層を形成したマルチアルカリ光電陰極の サンプル(比較例B)とを用いる。また、比較例 に係る光電陰極のサンプルとして、光電子放 出面にBiが全く含有されていないこと以外は 施例に係る光電陰極のサンプルと同じ構成 された光電陰極のサンプル(比較例C1,比較例 C2,比較例D,比較例E)を用いる。

 図4~図7に、実施形態に係るBi含有率0.4~32mo l%の光電陰極のサンプル、Bi含有率0mol%である こと以外は実施例と同じ構成とされた比較例 に係る光電陰極のサンプル(比較例C2)、酸化 ンガンを下地層としたバイアルカリ光電陰 の従来品のサンプル(比較例A1)、及びマルチ ルカリ光電陰極のサンプル(比較例B)の分光 度特性を示す。図4はBi含有率0mol%、0.4mol%、0 .9mol%、1.8mol%の光電陰極のサンプル、図5はBi 有率2.0mol%、2.1mol%、6.9mol%、8.8mol%の光電陰極 サンプル、図6はBi含有率10.5mol%、11.4mol%、11. 7mol%、12mol%の光電陰極のサンプル、図7はBi含 率13mol%、16.7mol%、29mol%、32mol%の光電陰極の ンプルについて、それぞれの波長に対する 子効率を示すグラフである。図4~図7に示す ラフの横軸は波長(nm)を、縦軸は量子効率(%) 示す。なお、図4~7には、酸化マンガンを下 層としたバイアルカリ光電陰極の従来品の ンプル(比較例A1)、及びマルチアルカリ光電 陰極のサンプル(比較例B)の分光感度特性がい ずれも示されている。

 図4及び図5から理解されるように、Bi含有 率0.4mol%のサンプル(ZK4300)、Bi含有率0.9mol%のサ ンプル(ZK4295)、Bi含有率1.8mol%のサンプル(ZK4304 )、Bi含有率2.0mol%のサンプル(ZK4293)、Bi含有率2 .1mol%のサンプル(ZK4175)、Bi含有率6.9mol%のサン ル(ZK4152)は、波長300~430nmでのピークにおい 35%以上の量子効率を示す。従って、光電子 出層18のSb及びBiに対して含有されるBiを6.9mol %以下とすることによって、特に感度を要求 れる分野において十分な感度とされている35 %以上の量子効率を確保できることが理解さ る。なお、Bi含有率0mol%のサンプル(比較例C2) においても高い感度を確保できることが確認 できるが、後述するように暗電流が大きくな ってしまい、リニアリティも十分に得られな い。

 図5~7から理解されるように、Bi含有率8.8mo l%のサンプル(ZK4305)、Bi含有率10.5mol%のサンプ (ZK4147)、Bi含有率11.4mol%のサンプル(ZK4004)、Bi 含有率11.7mol%のサンプル(ZK4302)、Bi含有率12mol% のサンプル(ZK4298)、Bi含有率13mol%のサンプル(Z K4291)、Bi含有率16.7mol%のサンプル(ZK4142)は、波 長300~500nmの間のピークにおいて20%以上の量子 効率を示すと共に、酸化マンガンを下地層と したバイアルカリ光電陰極の従来品のサンプ ル(比較例A1)よりも全ての波長において高い 子効率を示す。従って、光電子放出層にSbBi 対して含有されるBiを16.7mol%以下とすること によって、従来のバイアルカリ光電陰極より も高い量子効率を確保できることが理解され る。特に、Bi含有率を16.7mol%以下においては 波長500~600nmにおいて従来品のサンプルより 高い量子効率を示している。従って、光電 放出層のSbBiに対して16.7mol%以下のBiが含有さ れることによって、従来のバイアルカリ光電 陰極よりも500~600nmにおける感度、すなわち緑 色感度~赤感度を向上できることが理解され 。

 図7から理解されるように、Bi含有率29mol% サンプル(ZK4192)は、波長320~440nmの間のピー において20%以上の量子効率を示す。従って 光電子放出層にSbBiに対して29mol%以下のBiが 有されることによって、半導体検査装置な のように入射される光量が大きい分野にお て十分な感度とされている20%以上の量子効 を得ることができることが理解される。ま 、波長450~500nmにおいて、マルチアルカリ光 陰極のサンプル(比較例B)より大きい、ある は同等の量子効率を示す。

 次に光電陰極のBi含有率ごとの陰極感度、 極感度、暗電流、陰極青感度指数、及びダ クカウントを比較した実験結果を表1に示す 表1においては、実施例に係る光電陰極とし て、Bi含有率0.4~16.7mol%のサンプルの測定結果 示され、比較例に係る光電陰極として、酸 マンガンを下地層としたバイアルカリ光電 極の従来品のサンプル(比較例A1)、及びBi含 率0mol%とされた光電陰極のサンプル(比較例C 1,比較例D、比較例E)の測定結果が示されてい 。Bi含有率0.4~16.7mol%のサンプル及びBi含有率 0mol%とされた光電陰極のサンプル(比較例C1,比 較例D、比較例E)は、いずれも基板12に形成さ た酸化ハフニウム(HfO 2 )からなる中間層14と、その上に形成されたMgO からなる下地層16とを有している。

 表1における陰極青感度指数とは、ルーメ ン感度の測定時に青フィルタCS-5-58(コーニン 社製)の1/2の厚みのフィルタを光電子増倍管 30の前に入れたときの陰極電流(A/lm-b)である

 表1におけるダークカウントとは、光電陰 極10に入射する光を遮断した暗中状態におい 、光電子放出層18から放出される光電子の を相対的に比較するための値で、25℃の室温 環境下で測定を行ったものである。このダー クカウントは、具体的には光電子をカウント する測定器によって得られる図8の結果に基 いて算出される。図8は、暗中状態において 電子放出層から放出される光電子の強度ご のカウント数を示す図であり、Bi含有率0mol% (比較例C1)、2.1mol%、6.9mol%、10.5mol%、16,7mol%の 電陰極のサンプル、及び酸化マンガンを下 層とした従来品のサンプル(比較例A1)につい 示した図である。図8の横軸は測定器のチャ ンネルを示し、横軸は各チャンネルで検出さ れた光電子のカウント数を示している。表1 おけるダークカウントは、図8に示す光電子 カウント数のピークの1/3以上のチャンネル おけるカウント数の積分値を示す。(具体的 にはピークが200chなので、1/3は200/3=67チャン ルとなる)このように、ピークの1/3以上のチ ンネルにおけるカント数の積分値を比較す ことによって、装置の回路内の揺らぎなど 影響を排除することができる。

 表1から理解されるように、酸化マンガン を下地層とした従来品のサンプル(比較例A1) ついては、暗電流及びダークカウントにつ て低い値が得られるものの十分な陰極青感 指数が得られない。実施例に係るBiを含有し た光電陰極のサンプルでは、暗電流及びダー クカウントについて低い値を得つつも比較例 A1よりも高い陰極青感度を得ることができる

 表1に示されたダークカウントの値とBi含有 の関係を図9に示す。図9は、Bi含有率0.4~16.7m ol%の光電陰極のサンプル、及びBi含有率0mol% 中間層がHfO 2 とされた光電陰極のサンプル(比較例C1,比較 D,比較例E)のダークカウントの値をプロット たグラフである。図9に示すグラフの横軸は Bi含有率(mol%)を、縦軸はダークカウントの値 示す。

 図9から理解されるように、Bi含有率0mol% 光電陰極のサンプル(比較例C1,比較例D,比較 E)に比して、Bi含有率が0.4mol%以上の光電陰極 のサンプルは、いずれもダークカウントの値 が半分以上低減されている。なお、Bi含有率1 0.5mol%以上と16.7mol%以下の間の13mol%においても 、ダークカウントの低減が見られた。

 図9におけるBi含有率が低い領域におけるダ クカウントの値とBi含有率の関係を図10に示 す。図10は、Bi含有率0.4~2.1mol%の光電陰極のサ ンプル、及びBi含有率0mol%で中間層がHfO 2 とされた光電陰極のサンプル(比較例C1,比較 D,比較例E)のダークカウントの値をプロット たグラフである。図10に示すグラフの横軸 Bi含有率(mol%)を、縦軸はダークカウントの値 を示す。

 図10から理解されるように、Bi含有率0.4mol %の光電陰極のサンプルは、Bi含有率0mol%の光 陰極のサンプル(比較例C1,比較例D,比較例E) 比してダークカウントが顕著に低減されて る。従って、Biを微量でも含んでいれば、す なわちBi含有率が0mol%よりも大きければ、ダ クカウントの値を低減するという効果を得 れることが理解される。以上によって、Sbに Biを含有させることによって、酸化マンガン 下地層とした従来品のサンプルよりも高い 極青感度指数を得つつも(表1参照)、ダーク ウントの値を低減できることが理解される

 図11及び図12に、Bi含有率2.0~32mol%の光電陰極 のサンプルのリニアリティを示す。図11はBi 有率2.0mol%、2.1mol%、6.9mol%、8.8mol%、10.5mol%、11 .7mol%、12mol%、13.3mol%の光電陰極のサンプル、 12はBi含有率16.7mol%、29mol%、32mol%の光電陰極 サンプルについて、それぞれの陰極電流に する変化率を示すグラフである。図11及び 12に示すグラフの横軸は陰極電流(A)を、縦軸 は変化率(%)を示す。なお、定められた色温度 を持つ光源の光束をミラーを介した測定系で 、減光フィルターで1:4の光量に分割した基準 光量をサンプルの光電陰極に入射して1:4の基 準光電流値を変化率0%と定め、1:4の光量を増 させた場合の1:4の光電流の比率変化を変化 とする。図13は、図11及び図12に示されてい 変化率が-5%のときの陰極電流を各含有率に いてプロットしたグラフである。図13の横 はBiの含有率(mol%)を、縦軸は変化率-5%におけ る陰極電流(A)を示す。なお、比較例A1,A2に係 バイアルカリ光電陰極(Sb-K-Cs)のリニアリテ の上限値は0.01μAであることが知られている ため、図13において1.0×10 -8 Aの位置を点線で示す。また、比較例Bに係る ルチアルカリ光電陰極(Sb-Na-K-Cs)のリニアリ ィの上限値は10μAであることが知られてい ため、図13において1.0×10 -5 Aの位置を一点鎖線で示す。

 図13から理解されるように、Bi含有率8.8mol% 上のサンプルでは、マルチアルカリ光電陰 のリニアリティの上限値(1.0×10 -5 A)と同等のリニアリティを示す。また、8.8mol% よりBi含有率が低い光電陰極においては、Bi 有率の変化に対するリニアリティの変化が きく、Bi含有率の低下によってリニアリティ が大幅に減少するのに対し、Bi含有率が8.8mol% 以上の光電陰極においては、Bi含有率の変化 対するリニアリティの変化が少ない。従っ 、製造誤差によってBi含有率が若干変化し 場合であっても、リニアリティが急激に変 することなく、高いリニアリティを安定し 確保することができる。以上によって、光 子放出層18のSbBiに対して8.8mol%以上のBiが含 されることによって、マルチアルカリ光電 極のリニアリティの上限値とほぼ同等のリ アリティを安定して得ることができる。

 図14は、変化率が-5%のときの陰極電流を 含有率について温度ごとにプロットしたグ フであり、実施例に係るBi含有率32mol%の光電 陰極のサンプル(ZK4198)、Bi含有率16.7mol%の光電 陰極のサンプル(ZK4142)、及び比較例に係る酸 マンガンを下地層としたバイアルカリ光電 極の従来品のサンプル(比較例A2)について、 低温環境下でリニアリティの測定を行った場 合の測定結果を示している。図14の横軸は測 環境における温度(℃)を、縦軸は変化率-5% おける陰極電流(A)を示す。

 図14から理解されるように、酸化マンガン 下地層としたバイアルカリ光電陰極の従来 のサンプル(比較例A2)は、温度低下に伴って 激にリニアリティが低下しており、-100℃に おけるリニアリティが室温(25℃)におけるリ アリティに比して1×10 -4 倍以上低下している。一方、Bi含有率16.7mol% サンプル(ZK4142)については、―100℃における リニアリティが室温(25℃)におけるリニアリ ィに比して0.1倍しか低下していない。また Bi含有率32mol%のサンプル(ZK4198)については、 100℃におけるリニアリティが室温における ニアリティに比してほとんど低下していな 。従って、Bi含有率を32mol%以下とすること よって、低温時におけるリニアリティを飛 的に向上できることが理解される。このよ に低温時におけるリニアリティを向上させ ことのできる光電陰極は、例えば、高エネ ギー物理学者により行われる宇宙の暗黒物 (ダークマター)の観測などに用いるのに好適 である。この観測には、液体アルゴンシンチ レータ(-189℃)、液体キセノンシンチレータ(-1 12℃)が用いられる。図14で示す様に従来の比 例A2では、-100℃の環境でのカソード電流が ずか1.0×10 -11 (A)しか流れなくなり,測定ができなかった。 体キセノンシンチレータを使用する場合は ZK4142(Bi=16.7mol%)、液体アルゴンシンチレータ 用の場合はZK4198(Bi=32mol%)を用いることが望 しい。

 以上、好適な実施形態について説明した 、上記実施形態に限定されるものではなく 様々な変形が可能である。例えば、光電陰 10において、基板12、下地層16に含まれる物 は上記に記載した物質に限定されない。ま 、中間層14を設けなくともよい。光電陰極 各層を形成する方法は、それぞれ上記実施 態に記載された方法に限られない。

 また、光電子増倍管以外にイメージイン ンシファイア(II管)などの電子管に本実施形 態に係る光電陰極を適用してもよい。NaIシン チレータと光電陰極を組み合わせることによ って、微弱X線と強いX線の識別ができるため コントラストの良い画像が得られる。

 また、イメージインテンシファイア(高速 シャッター管)の実施形態において本光電陰 を用いることにより、光電陰極の抵抗が従 品より小さいため、特別の導電下地(金属Ni ど)を用いなくても、高感度で、より高速シ ッターが可能となる。

 本発明は、各種特性を向上させることの きる光電陰極を提供する。