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Patent Searching and Data


Title:
PIPE SCREW JOINT WITH LUBRICATING FILM
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/057754
Kind Code:
A1
Abstract:
A lubricating film, which has excellent seizing resistance, gas tightness, and rust preventive properties, can prevent the yield of a screw-free metal contact part even upon fastening at a high torque, and is free from any harmful heavy metal such as lead, is formed on a special pipe screw joint comprising a pin and a box each having a contact surface with a screw part and a screw-free metal contact part (a seal face and a shoulder part). This lubricating film contains one of or both a rosin and calcium fluoride, a metallic soap, wax, and a basic aromatic organic acid metal salt and preferably further contains a lubricating powder, magnesiumcarbonate and/or carbohydrate, particularly cyclodextrin.

Inventors:
GOTO KUNIO (JP)
IMAI RYUICHI (JP)
FUKUMOTO SHIGEKI (JP)
YAMAMOTO YASUHIRO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/069893
Publication Date:
May 07, 2009
Filing Date:
October 31, 2008
Export Citation:
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Assignee:
SUMITOMO METAL IND (JP)
VALLOUREC MANNESMANN OIL & GAS (FR)
GOTO KUNIO (JP)
IMAI RYUICHI (JP)
FUKUMOTO SHIGEKI (JP)
YAMAMOTO YASUHIRO (JP)
International Classes:
C10M169/00; F16L15/04; C10M109/00; C10M117/00; C10M125/02; C10M125/10; C10M125/18; C10M129/28; C10M145/40; C10M159/02; C10M159/06; C10M159/20; C10N20/00; C10N30/00; C10N30/06; C10N40/00; C10N50/10
Foreign References:
JP2004053013A2004-02-19
JP2001065753A2001-03-16
JPS6217487A1987-01-26
JPH0247490U1990-03-30
JPH05125382A1993-05-21
JP2002173692A2002-06-21
JP2004053013A2004-02-19
Other References:
TADASHI DOI: "Kotai Junkatsuzai -Kokuen", JUNKATSU, vol. 19, no. 10, 15 October 1974 (1974-10-15), pages 691 - 692, XP008135459
See also references of EP 2210931A4
Attorney, Agent or Firm:
HIROSE, Shoichi (4-2 Nihonbashi Honcho 4-chome, Chuo-k, Tokyo 23, JP)
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Claims:
 ロジンおよびフッ化カルシウムの一方もしくは両方、金属石鹸、ワックス、ならびに塩基性芳香族有機酸金属塩を含む、管ねじ継手に潤滑被膜を形成するための組成物。
 潤滑性粉末をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
 炭酸マグネシウムをさらに含有する、請求項1または2に記載の組成物。
 炭水化物をさらに含有する、請求項1または2に記載の組成物。
 揮発性有機溶剤をさらに含有する請求項1または2に記載の組成物
 組成物中の不揮発性成分の合計量に基づく質量%で、ロジンおよびフッ化カルシウムの一方もしくは両方を合計0.5~30%、金属石鹸を2~30%、ワックスを2~30%、ならびに塩基性芳香族有機酸金属塩を10~70%含有する請求項1に記載の組成物。
 潤滑性粉末を、組成物中の不揮発性成分の合計量に基づいて0.5~20%の量で含有する、請求項2に記載の組成物。
 潤滑性粉末が黒鉛粉末である、請求項2に記載の組成物。
 黒鉛が、灰分0.2~5.5質量%、結晶化度98%以下の土状黒鉛である、請求項8に記載の組成物。
 組成物中の不揮発性成分の合計量に基づいて炭酸マグネシウムを0.5~30%含有する、請求項3に記載の組成物。
 炭水化物がシクロデキストリンを包含するデキストリンから選ばれ、その含有量が組成物中の不揮発性成分の合計量に基づいて0.5~20%である請求項4に記載の組成物。
 有害な重金属を実質的に含有しない、請求項1に記載の組成物。
 ねじ部とねじ無し金属接触部とを有する接触表面をそれぞれ備えたピンおよびボックスとから構成される管ねじ継手であって、ピンおよびボックスの少なくとも一方の部材の接触表面が、請求項1~12のいずれかに記載の組成物を用いて形成された潤滑被膜を有することを特徴とする管ねじ継手。
 潤滑被膜の膜厚が10~500μmである、請求項13に記載の管ねじ継手。
 潤滑被膜を有する接触表面が、潤滑被膜の形成前に、ブラスト処理、酸洗、リン酸塩化成処理、蓚酸塩化成処理、硼酸塩化成処理、電気めっき、衝撃めっき、及びそれらの2種以上から選ばれた方法により表面処理されている、請求項13または14に記載の管ねじ継手。
 ピンとボックスの一方の部材の接触表面が前記潤滑被膜を有し、ピンとボックスの他方の部材の接触表面が、ブラスト処理、酸洗、リン酸塩化成処理、蓚酸塩化成処理、硼酸塩化成処理、電気めっき、衝撃めっき、及びそれらの2種以上から選ばれた方法により表面処理されている請求項13~15のいずれか1項に記載の管ねじ継手。
 油井管を接続するための請求項13~16のいずれか1項に記載の管ねじ継手。
 請求項13~16のいずれか1項に記載の管ねじ継手を用いて、グリス潤滑油を塗布せずに複数の油井管を接続する方法。
Description:
潤滑被膜を備えた管ねじ継手

 本発明は、鋼管、特に油井管(OCTG)の接続 使用される管ねじ継手と、潤滑性を付与す ためのその表面処理方法とに関する。本発 の管ねじ継手は、油井管の締結の際にねじ 手に塗布されてきたコンパウンドグリスの うなグリス潤滑油を塗布せずに、優れた耐 付き性を確実に発揮することができる。し がって、本発明の管ねじ継手は、コンパウ ドグリスに起因する地球環境及び人体への 影響を避けることができる。また、この継 は、高いトルクでの締結に際しても、降伏 にくく、余裕を持って安定した金属-金属間 シールを実現できる。

 油井やガス井の掘削に用いるチュービン やケーシングといった油井管は、一般に管 じ継手を用いて接続される。油井の深さは 従来は2000~3000mが一般的であったが、近年の 海洋油田などの深油井では8000~15000mにも達す ことがある。海洋油田では多くの場合、油 掘削がフローティング施設で行われ、施設 体が揺動するため、掘削作業全体が不安定 状態で実施されることになる。

 油井管用の管ねじ継手には、使用環境下 油井管および継手自体の重量に起因する軸 向引張力といった荷重(7インチ鋼管では500t 達する場合もある)、曲げ力、内外面圧力な どの複合した圧力(1000気圧にも達する場合が る)、さらには地中の熱(200℃以上、場所に っては300℃に達する場合もある)が作用する め、このような過酷な環境下においても破 することなく、気密性を保持することが要 される。

 油井管の締結に使用される典型的な管ね 継手は、第1管状部材(典型的には油井管)の 端に形成された、雄ねじを有する継手要素 あるピンと、第2管状部材(典型的にはカッ リングと呼ばれる継手部品)の両端に形成さ た、雌ねじを有する継手要素であるボック とから構成される。

 過酷な環境下でも高い気密性を発揮する うに開発された特殊ねじ継手(プレミアム・ ジョイント)と呼ばれる管ねじ継手では、図1 示すように、ピンの雄ねじより先端側の端 付近の外周部と、ボックスの雌ねじの基部 内周面にシール面を備え、ピン先端の端面 ボックスの対応する最奥面はそれぞれトル ショルダー面となる。このシール面とトル ショルダー面とを含むピンおよびボックス 部分をねじ無し金属接触部と称する。また ピンのこの部分は、トルクショルダー部ま はリップ部とも呼ばれる。

 油井管の一端(ピン)をカップリング(ボッ ス)に挿入し、ピンとボックスのトルクショ ルダー面同士が当接した後、干渉するまで雄 ねじと雌ねじとを締付けると、ピンとボック スのシール面が適当な干渉量で当接して金属 -金属接触によるシールを形成するように、 殊ねじ継手は設計されている。このシール でのメタルシールによりねじ継手の気密性 確保される。

 チュービングやケーシングの油井への降 作業時には、種々のトラブル(例えば、同時 に降下させた掘削機材の故障)により、一度 結したねじ継手を緩め、それらの継手を一 油井から引き上げた後、再度締結して降下 せることがある。API(米国石油協会)は、チュ ービング継手においては10回の、ケーシング 手においては3回の、締付け(メイクアップ) び緩め(ブレークアウト)を行っても、ゴー ングと呼ばれる焼付きの発生がなく、気密 が保持されるというレベルの耐焼付き性を 求している。

 ねじ継手の締付けの際には、耐焼付き性 気密性の向上を図るために「コンパウンド リス」と呼ばれる重金属粉を含有する粘稠 液状潤滑剤(グリス潤滑油)をねじ継手の接 表面(ねじ部とねじ無し金属接触部)に塗布す る。API規格BUL 5A2にそのようなコンパウンド リスが規定されている。コンパウンドグリ は、気密性を保持する観点から、塗布した 触表面に防錆性を付与する機能も求められ 。

 コンパウンドグリスの保持性の向上や摺 性を改善する目的で、ねじ継手の接触表面 窒化処理、亜鉛系めっきや分散めっきを含 各種のめっき、リン酸塩化成処理といった 様な1層又は2層以上の表面処理を施すこと これまでに提案されてきた。しかし、コン ウンドグリスの使用は、次に述べるように 環境や人体への悪影響が懸念されるという 題がある。

 コンパウンドグリスは、亜鉛、鉛、銅な の重金属粉を多量に含有している。ねじ継 の締結時に、塗布されたグリスが洗い流さ たり、外面にあふれ出したりして、特に鉛 の有害な重金属により、環境、特に海洋生 に悪影響を及ぼす可能性がある。また、コ パウンドグリスの塗布作業は作業環境を悪 させ、人体への有害性も懸念される。

 近年、北東大西洋の海洋汚染防止に関す オスパール条約(オスロ・パリ条約、OSPAR)が 1998年に発効したのを契機に、地球規模での 境に対する厳しい規制が進み、コンパウン グリスも一部地域では既にその使用が規制 れようとしている。したがって、ガス井や 井の掘削作業においては、環境や人体への 影響を避けるために、コンパウンドグリス 使用せずに優れた耐焼付き性を発揮できる じ継手が求められるようになってきた。ま 、オスパール条約では、重金属の使用を規 するだけでなく、有機系材料について、毒 がないかほとんどなく、しかも高い生分解 を有することも求めている。

 コンパウンドグリスを塗布せずに油井管 締結に使用できるねじ継手に関して、出願 らは、特開2002-173692号公報(特許文献1)にお て粘稠液体又は半固体の潤滑被膜を形成し 管ねじ継手を、特開2004-53013号公報(特許文献 2)においては粘稠液体又は半固体の潤滑被膜 欠点であるねじ継手表面のべとつきを抑制 、塵、砂、ゴミなどの異物の付着を少なく た管ねじ継手をそれぞれ提案した。

 上述したように、ピンとボックスがそれ れシール面とトルクショルダー面とを有す ねじ無し金属接触部を備えた特殊ねじ継手 は、締結時にピンとボックスのシール面が 属-金属間シールを形成することによって気 密性が確保される。

 この種のねじ継手の締結時のトルクチャ ト(縦軸:トルク、横軸:回転)を図2に示す。 の図に示すように、ピンをボックスに挿入 、ピン(またはボックス)を回転させると、回 転とともに最初は主にピンとボックスのねじ 部が接触してトルクはゆるやかに上昇する。 回転が進んで、ピンとボックスのシール面が 互いに接触するようになると、摩擦抵抗によ ってトルクの上昇率が増大する。さらに回転 が進んで、ピン先端のショルダー面とボック スのショルダー面とが当接して干渉し始める と(この干渉開始時のトルクをショルダリン トルク:Tsと称す)、それにより起こるシール の干渉も加わって、トルクは急激に増大す 。この状態でさらに回転を進め、所定の締 けトルクに到達すると、締結が完了する。 2における最適トルクとは、気密性確保に必 要な干渉量が達成されて、締付けを終了する のに最適のトルクを意味し、継手の内径サイ ズや継手の形式毎に適正値が予め決められて いる。

 しかし、10000mを超えるような超高深度の 戸で使用される特殊ねじ継手は、ねじ継手 加えられる圧縮応力や曲げ応力が非常に高 なるため、締結が緩まないように、通常よ も高い締付けトルク(例えば、最適締付けト ルクの120~130%のトルク)で締結されることがあ る。その場合、従来の潤滑被膜を有する管ね じ継手では、締付けトルクが、ピンおよびボ ックスのねじ無し金属接触部が降伏して塑性 変形し始めるトルク(この時の降伏トルク:Ty 称す)トルクを超えてしまうことがある。そ 結果、ピンおよびボックスの双方が、ねじ し金属接触部の降伏による塑性変形によっ 、回復不能に破損する。破損しないまでも ねじ継手の気密性が著しく低下する。この うな現象は、コンパウンドグリスを塗布し 場合にはほとんど見られなかった。

 高いトルクで締結されるねじ継手では、T y-Ts(=δT:トルクオンショルダー抵抗)が大きい が有利となる。しかし、特許文献1及び2に 載されたような従来の粘稠液体又は半固体 潤滑被膜を有する管ねじ継手では、コンパ ンドグリスを塗布した場合に比べて、Tyが低 くなり、結果としてδTが小さくなって、低い 締付けトルクでねじ無し金属接触部が降伏し てしまい、高い締付けトルクでの締結ができ ないという問題があることがわかった。

 単純に潤滑被膜の組成を、摩擦係数が増 するように変化させても、TsとTyは一般には 同様の挙動をすることが分かっている。例え ば、潤滑皮膜の摩擦係数が高くなると、Tyは くなるが、Tsも高くなる(ハイショルダリン と称す)。その結果、最悪、所定の締付けト ルクに達してもショルダー面が接触せず、締 付けが完了しないこと(ノーショルダリング 称す)さえある。

 本発明は、地球環境に負荷を与える鉛等 有害な重金属を含まず、耐焼付き性、気密 、防錆性を付与し、さらに高いδTを確保す ことができる潤滑皮膜を備えた、高い締付 トルクでの締結時にもねじ無し金属接触部 降伏が起こりにくい管ねじ継手と、それに 用する潤滑被膜形成用組成物とを提供する とを課題とする。

 本発明に係る潤滑被膜形成用組成物は、 球環境に負荷がないか、もしくはほとんど い物質だけで構成され、従来の潤滑被膜に べて、Tsは同等であるか、むしろ低く、一 Tyが著しく高いため、δTの大きい潤滑被膜を 管ねじ継手の接触表面に形成することができ る。この潤滑被膜は防錆性も良好である。

 本発明は以下の知見に基づいている。
 1)コンパウンドグリスを使用した場合には い締付けトルクでもトルクねじ無し金属接 部が降伏しない理由は次のように考えられ 。コンパウンドグリスに含まれる鉛や銅な の軟質な重金属粉は、接触面圧が高くなる 、摩擦面で押しつぶされて一部が互いに凝 することにより、大きな摩擦抵抗を発生さ る。つまり、重金属粉は、トルクが低いと には摩擦抵抗にさほど寄与しないが、締付 が進んでトルクが高まったときに摩擦抵抗 大きく寄与し、締付けトルクを著しく高め ことができる。このため、TsよりもTyが優先 に高まって、δTが大きくなる。

 2)このような摩擦抵抗の面圧依存性を潤 被膜に付与し、かつ毒性がなく、良好な生 解性や生物蓄積性をもち、地球環境への負 がほとんどもしくは全くない材料として、 発明者はロジンとフッ化カルシウムが有効 あることを見出した。ロジンまたはフッ化 ルシウムを含有する潤滑被膜は、コンパウ ドグリスと同様に、管ねじ継手に、高い締 けトルクでもねじ無し金属接触部が降伏し い潤滑性を付与することができる。

 3)ロジンおよび/またはフッ化カルシウムに えて、特定の潤滑性付与成分を配合した潤 被膜を備えたねじ継手は、摩擦抵抗が高く っても焼付き難くなる。
 1側面において、本発明は、ロジンおよびフ ッ化カルシウムの一方もしくは両方、金属石 鹸、ワックス、ならびに塩基性芳香族有機酸 金属塩を含む、管ねじ継手に潤滑被膜を形成 するための組成物である。

 組成物中の各成分の量は、組成物中の不 発性成分の合計量に基づく質量%で、ロジン およびフッ化カルシウムの一方もしくは両方 が合計0.5~30%、金属石鹸が2~30%、ワックスが2~3 0%、ならびに塩基性芳香族有機酸金属塩が10~7 0%であることが好ましい。

 この潤滑被膜形成用組成物は、下記から選 れた少なくとも1種の成分をさらに含有する ことが好ましい:
 (1)潤滑性粉末、好ましくは黒鉛、より好ま くは灰分0.2~5.5質量%、結晶化度98%以下の土 黒鉛
 (2)炭酸マグネシウム、
 (3)炭水化物、好ましくはデキストリン、よ 好ましくはシクロデキストリン、並びに
 (4)揮発性有機溶剤。

 「揮発性有機溶剤」とは、本組成物から潤 被膜を形成する際に、乾燥により揮発して 潤滑被膜中には実質的に残存しない成分を 味する。
 本組成物がこれらの成分を含有する場合の 有量は、組成物の不揮発性成分の合計量に づく質量%で、潤滑性粉末は0.5~20%、炭酸マ ネシウムは0.5~30質量%、炭水化物は0.5~20質量% であることが好ましい。

 本発明の潤滑被膜形成用組成物は、好ま くは有害な重金属を実質的に含有していな 。「有害な重金属」とは人体を含む生物に して有害な重金属を意味し、本発明におい は、Pb,Cr,Cdなどが包含される。

 本発明において「実質的」とは、5%未満 誤差を許容する意味である。従って、「有 な重金属を実質的に含有しない」とは、そ ような重金属の含有量が5質量%未満であるこ とを意味する。また、「揮発性有機溶剤が潤 滑被膜中に実質的に残存しない」とは、残存 しても被膜中で5質量%未満の量であることを 味する。

 別の側面において、本発明は、ねじ部と じ無し金属接触部とを有する接触表面をそ ぞれ備えたピンおよびボックスとから構成 れる管ねじ継手であって、ピンおよびボッ スの少なくとも一方の部材の接触表面が、 記組成物を用いて形成された潤滑被膜を有 ることを特徴とする管ねじ継手である。

 潤滑被膜の膜厚は10~500μmであることが好ま い。
 潤滑被膜を有する接触表面は、潤滑被膜の 成前に、ブラスト処理、酸洗、リン酸塩化 処理、蓚酸塩化成処理、硼酸塩化成処理、 気めっき、衝撃めっき、及びそれらの2種以 上から選ばれた方法により表面処理されてい ることが好ましい。

 ピンとボックスの一方の部材だけがその 触表面に前記潤滑被膜を有する場合、他方 部材の接触表面は、ブラスト処理、酸洗、 ン酸塩化成処理、蓚酸塩化成処理、硼酸塩 成処理、電気めっき、衝撃めっき、及びそ らの2種以上から選ばれた方法により表面処 理されていてもよい。

 本発明に係る管ねじ継手は好ましくは油井 の接続に使用される。本発明はまた、この ねじ継手を用いてグリス潤滑油を塗布せず 複数の油井管を接続する方法も提供する。
 この管ねじ継手は、ピンおよび/またはボッ クスの接触表面に形成された潤滑被膜が、コ ンパウンドグリスと同様の大きなδTを示すた め、高いトルクでの締結時でも、ねじ無し金 属接触部の降伏や焼付きを起こすことなく、 締結作業を行うことが可能である。また、こ の管ねじ継手は、海洋での不安定な掘削作業 のような過酷な条件においても、焼付きを抑 制することができる。

 本発明に係る潤滑被膜形成用組成物は、 等の有害な重金属を実質的に含有しないた 、地球環境への負荷が非常に小さい。また 形成された潤滑被膜は防錆性にも優れてお 、管ねじ継手の保管中の錆発生を抑制する 従って、本発明に係る管ねじ継手は、締付 と緩めを繰り返しても潤滑機能を持続して 揮し、締付け後は気密性を確保することが きる。

特殊ねじ継手のショルダー部及びシー 面(ねじ無し金属接触部)を模式的に示す。 特殊ねじ継手の締付け時の典型的なト クチャートである。 鋼管出荷時の鋼管とカップリングの組 立て状態を模式的に示す。 特殊ねじ継手型の管ねじ継手の締付け を模式的に示す。 本発明に係る管ねじ継手の接触表面を す説明図であり、図3(a)は接触表面自体が粗 面化された例を、図3(b)は接触表面に粗面化 ための下地処理被膜を形成した例をそれぞ 示す。

 以下に、本発明に係る管ねじ継手と潤滑被 形成用組成物の実施態様について、油井管 の特殊ねじ継手を例にとって、例示を目的 して説明する。
 1.管ねじ継手の構成
 図3は、出荷時の油井管用鋼管Aとねじ継手 品であるカップリングBの組立て状態を模式 に示す。鋼管Aはその両端に、外面に雄ねじ 部3aを有するピン1が形成され、カップリング Bは、その両側には、内面に雌ねじ部3bを有す るボックス2が形成されている。鋼管Aの一端 は予めカップリングBが締付けられている。

 図示していないが、締付けられていない の鋼管AのピンとカップリングBのボックス は、それぞれのねじ部の保護のためのプロ クターが出荷前に装着され、これらのプロ クターはねじ継手の使用前に取り外される

 一般に、管ねじ継手は、第1管状体(図示 では鋼管A)の端部に形成された雄ねじを有す るピンと、第2管状体(図示例ではカップリン )の端部に形成された、雌ねじを有するボッ クスとから構成される。

 典型的な管ねじ継手では、図示のように ピンは鋼管の両端の外面に、ボックスは別 品であるカップリングの内面に形成される しかし、逆に、鋼管の両端の内面をボック とし、カップリングの外面をピンとした管 じ継手も原理的には可能である。また、カ プリングを利用せず、鋼管の一端をピン、 端をボックスとした、インテグラル方式の ねじ継手もある。この場合は、第1管状体は 第1の鋼管、第2管状体は第2の鋼管となる。本 発明の管ねじ継手はこれらのいずれの方式に も適用可能である。

 図4は、典型的な特殊ねじ継手型の管ねじ 継手の構成を模式的に示す。管ねじ継手は、 例えば鋼管の端部の外面に形成されたピン1 、例えばカップリングの内面に形成された ックス2とから構成される。ピン1は、雄ねじ 部3aと、それより鋼管先端側に位置するシー 面4aと、ピン1の端面にあって締付け完了時 鋼管の軸方向に加えられる圧縮力を主に受 るトルクショルダー面5aとを備える。ピン ねじ部より先端側、すなわち、シール面4aと ショルダー面5aとを含む部分が、ピンのねじ し金属接触部(トルクショルダ部またはリッ プ部とも呼ばれる)である。これに対応して ボックス2は、雌ねじ部3bと、その内側のシ ル面4bと、ピン1のトルクショルダー面5aに対 向し、締付け完了時にカップリングの軸方向 に加えられる圧縮力を主に受けるトルクショ ルダー面5bとを備える。やはり、シール面4b トルクショルダー面5bを含む部分がボックス のねじ無し金属接触部である。

 ピン1及びボックス2のそれぞれのねじ部3a 、3b、シール面4a、4bおよびショルダー部5a、5 bが管ねじ継手の接触表面である。これらの 触表面には、耐焼付き性、気密性、防錆性 要求される。従来は、そのために、重金属 を含有するコンパウンドグリスで代表され 潤滑グリスを塗布するか、または接触面に 稠液体又は半固体の潤滑被膜を形成してい 。しかし、前述したように、コンパウンド リスは人体や環境への悪影響、後者の潤滑 膜は、δTが低いため、高いトルクで締結す 際に、締付け終了前にピンおよび/またはボ クスのねじ無し金属接触部(ショルダー面お よび/またはシール面の部分)が降伏し、シー 性能が低下する可能性がある、という問題 抱えていた。

 本発明によれば、図5(a)、(b)にねじ無し金 属接触部について示すように、ピンとボック スの少なくとも一方の部材の接触表面は、鋼 30a、30bの表面上に形成された、潤滑被膜31aで 被覆される。この潤滑被膜は、管ねじ継手の 締結時に、従来のコンパウンドグリスと同様 の優れた潤滑性能と気密性保持効果とを発揮 する。そのため、本発明の管ねじ継手は、潤 滑グリスを使用せずに、高いトルクで締付け と緩めを繰り返しても、ピンおよびボックス のねじ無し金属接触部が降伏することなく、 管ねじ継手の焼付きを防止でき、かつ締結後 の気密性も確保することができる。

 潤滑被膜31aの下地(すなわち、管ねじ継手 の接触表面)は粗面とすることが好ましい。 の粗面化は、図5(a)に示すように、鋼30aの表 をブラスト処理又は酸洗により直接粗面化 るか、図5(b)に示すように、潤滑被膜31を形 する前に、表面粗さの大きい下地処理被膜3 2を鋼30bの表面に形成することにより達成で る。

 潤滑被膜31aは、後述する潤滑被膜形成用 成物を、刷毛塗り、噴霧、浸漬、溶融噴射 の適当な方法で塗布し、その後、場合によ 溶剤を蒸発乾燥させることによって形成す ことができる。

 ピンとボックスの両方の接触表面に潤滑 膜を形成してもよいが、図3に示したように 、出荷時にピンとボックスとを締結してしま う個所では、ピンとボックスの一方の接触表 面だけに潤滑被膜を形成するのでも十分であ る。その場合には、長い鋼管より短いカップ リングの方が、下地処理や潤滑被膜形成のた めの塗布作業が容易であるので、カップリン グの接触表面(通常はボックスの接触表面)に 滑被膜を形成するのが好都合である。締結 ない個所では、ピンとボックスの両方の接 表面に潤滑被膜を形成して、潤滑面と同時 防錆性を付与しておくことが好ましい。そ により、錆発生による潤滑性や気密性の低 を防止することができる。

 また、潤滑被膜はピン及び/又はボックスの 接触表面の全面を被覆すべきであるが、接触 表面の一部だけ(例えば、シール面だけ)を被 する場合も本発明は包含する。
 2.潤滑被膜
 (1)概要
 本発明に係る管ねじ継手は、締結時の焼付 防止と防錆性の付与のために、ピンとボッ スの少なくとも一方の接触表面に潤滑被膜 有する。この潤滑被膜は、少なくともロジ とフッ化カルシウムの一方もしくは両方、 ックス、塩基性芳香族有機酸金属塩および 属石鹸を含有する。これらの成分はいずれ 環境負荷の小さい物質である。潤滑被膜は 場合により後述する他の成分を含有してい もよい。

 この潤滑被膜は、重金属を実質的に(具体 的には、潤滑被膜の5質量%以上の量で)含有し ていないことが好ましく、重金属を全く含有 していないことがより好ましい。これまで使 用されてきたコンパウンドグリスが鉛、亜鉛 といった軟質重金属の粉末を多量に含有する のは、ピンおよびボックスの接触部における 金属間直接接触によって生じずゴーリング( 着)を防ぎ、かつシール部やショルダー部の ようなねじ無し金属接触部での降伏を防ぐ めであった。しかし、本発明では、重金属 含有しなくても、潤滑被膜の上記構成成分 よって高トルク下でゴーリングやねじ無し 属接触部の降伏の防止に十分な潤滑性能が 揮される。

 以下に説明する各成分の含有量は潤滑被 中の含有量であり、これは潤滑被膜形成用 成物の不揮発分合計量に対する含有量と実 的に同一である。いずれの成分も2種以上を 含有させることができ、その場合の含有量は 合計量である。

 なお、以下の説明において、含有量に関す %は、特に指定しない限り質量%である。
 (2)Ty増大成分
 潤滑被膜は、主Ty増大成分としてロジンと ッ化カルシウムの一方または両方を含有す 。

 (2-1)ロジン
 ロジンはマツ属の木から分泌される天然樹 である。潤滑被膜にロジンを含有させるこ により、締付けトルクが低いときは摩擦抵 が低いが、締付けトルクが高くなると摩擦 抗が高くなる性質を潤滑被膜に付与するこ が実現される。即ち、潤滑被膜にロジンを 量含有させることにより、Tsは低く抑えた た、Tyが高く、従って、δTの大きな潤滑被膜 を実現することができ。また、ロジンは天然 物質であることから、生分解性が高く、高い 生分解性を求める近年の環境基準にも適合す る。

 マツ科の植物に多量に含まれる生松脂の不 発性分であるロジンは、炭素、水素、酸素 3元素から構成される樹脂であって、C 20 H 30 O 2 で示される樹脂酸(ロジン酸)を主成分とする 代表的な樹脂酸はアビエチン酸並びにd-及 l-ピマル酸であるが、全部で10種以上の異性 が知られている。

 ロジンは採取方法によって、クラフトパ プ製造時に副生する粗トール油の分留によ 得られるトールロジン、松の幹に傷をつけ そこから流れ出てくる生ロジンを集めて精 することにより得られるガムロジン、並び 伐採した松の根株をチップ状にしたものを 剤で抽出して得られるウッドロジンに大別 れる。それらのいずれも使用可能である。 た、ロジンエステル、水素化ロジン、重合 ジン、不均化ロジンといった各種のロジン 導体が市販されており、それらも使用可能 ある。即ち、本発明で用いる「ロジン」は これらのロジン誘導体も包含する意味であ 。

 潤滑被膜中のロジンの含有量は0.5~30%の範 囲内とすることが好ましい。ロジンの含有量 が0.5質量未満であると上記効果が不十分であ る。ロジンの含有量が30%を超えると、他成分 との兼ね合いもあるが、潤滑被膜の摩擦が高 くなりすぎて焼付きを生じやすくなる傾向を 示す場合があり、また皮膜形成組成物が高粘 度化して、潤滑被膜の形成が困難となること がある。ロジンのより好ましい含有量は5~25% あり、より一層好ましい含有量は10~20%であ 。

 (2-2)フッ化カルシウム
 フッ化カルシウム(CaF 2 )は環境に無害で安定な物質であり、潤滑被 に含有させることによって、管ねじ継手の 結時のトルクチャートにおいて、Tsを高める ことなく、Tyのみを効果的に高くし、従って δTを大きくする。つまり、上記のロジンと 様に機能することができる。その結果、高 トルクで締結した場合でもねじ無し金属接 部が降伏せずに締結を完了することができ ようになる。この目的で、フッ化カルシウ を、ロジンの代わりに、またはロジンに加 て、潤滑被膜に含有させることができる。

 フッ化カルシウムがδTを高めるメカニズ は十分にはまだ解明されていないが、次の うに推測される。フッ化カルシウムは、比 的柔らかく、急激な温度変化により規則正 く割れる劈開性がある。そのため、潤滑被 中のフッ化カルシウムは、締付けトルクが い時には摩擦に積極的には関与しないが、 ルクが高くなると、被膜の摩耗によって摩 面に排出されて劈開を起こし、鉛のように 属表面にあたかも凝着したように押し付け れて、締付け終了直前の摩擦抵抗を高めて 焼付きを防止することができる。

 フッ化カルシウム天然品と合成品のいず を使用してもよい。天然フッ化カルシウム 、蛍石(フルオライト)として産出する。時 とエネルギーを消費するが、ストックバー ー(Stockbarger)法によりフッ化カルシウムを化 的に合成することもできる。平均粒径が50μ m以下、特に1~30μmのフッ化カルシウムを使用 ることが好ましい。

 フッ化カルシウムの含有量は、好ましく 0.5~30%である。0.5%未満ではδTを大きくする 果が少なく、30%を超えると潤滑被膜の強度 低下し、潤滑性能が不足することがある。 り好ましい含有量は1~20%であり、より一層好 ましい含有量は1~10%である。

 潤滑被膜がロジンとフッ化カルシウムの 方を含有する場合には、その合計量は好ま くは0.5~30%であり、より好ましくは5~25%であ 、より一層好ましくは10~20%である。

 (3)塩基性芳香族有機酸金属塩
 塩基性芳香族有機酸金属塩は、潤滑被膜に 付き防止および防錆効果を付与するのに非 に有効である。

 塩基性芳香族有機酸金属塩の典型例とし は、塩基性スルホネート、塩基性サリシレ ト、塩基性フェネート、塩基性カルボキシ ートが挙げられる。これらの塩は、いずれ 芳香族有機酸と過剰のアルカリ(アルカリ金 属又はアルカリ土類金属)とから構成される 基性塩であり、油中にアルカリの過剰分が ロイド状微粒子の金属塩として分散した、 温でグリス状ないし半固体の物質である。 の物質が顕著な重防食性能を有し、同時に ロイド状微粒子状態の過剰の金属塩が潤滑 用を発揮する。塩基性芳香族有機酸金属塩 、酸化ワックスとの化合物の形態であって よい。

 この芳香族塩基性有機酸金属塩のカチオ 部分を構成するアルカリは、アルカリ金属 もよいが、好ましくはアルカリ土類金属、 にカルシウム、バリウム、又はマグネシウ である。

 塩基性芳香族有機酸金属塩は、その塩基 が高いほど、潤滑剤として機能する金属塩 量が増し、潤滑被膜の耐焼付き性が高くな 。また、塩基性がある程度以上に高いと、 成分を中和する作用があるため、潤滑被膜 防錆力も高まる。これらの理由から、塩基 芳香族有機酸金属塩は、塩基価(JIS K2501)(2 以上使用する場合は、量を加味した塩基価 加重平均値)が50mgKOH/g以上のものを使用する がよい。しかし、塩基価が500mgKOH/gを超える と、親水性が増し、防錆性も低下しはじめ、 錆が発生しやすくなる。好ましい塩基価は100 ~500mgKOH/gであり、さらに好ましくは250~450mgKOH/ gの範囲である。

 塩基性芳香族有機酸金属塩の潤滑被膜中 含有量は10~70%であることが好ましい。少な ぎると耐焼付き性と防錆性が不十分となり 多すぎると被膜を維持するための被膜強度 不足することがある。塩基性芳香族有機酸 属塩のより好ましい含有量は20~60%であり、 り一層好ましい含有量は40~50%である。

 (4)金属石鹸
 脂肪酸のアルカリ金属以外の金属との塩で る金属石鹸は、塩基性芳香族有機酸金属塩 同様に、潤滑被膜に耐焼付き性及び防錆効 を付与することができる。しかし、これら2 種類の成分の作用機構が互いに異なるので、 両方の成分を併用することにより、高度の耐 焼付き性と防錆性を備えた潤滑被膜を得るこ とができる。

 金属石鹸を構成する脂肪酸は、炭素数12~3 0のものが、潤滑性や防錆性の観点から好ま い。脂肪酸は飽和と不飽和のいずれでもよ 、また牛脂、ラード、羊毛脂、パーム油、 種油及び椰子油などの天然油脂由来の混合 肪酸、ならびにラウリン酸、トリデシル酸 ミリスチン酸、パルミチン酸、ラノパルミ ン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、 レイン酸、エライジン酸、アラキン酸、ベ ン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、ラノセ ン酸、スルホン酸、サリチル酸、カルボン などの単一化合物のいずれでもよい。これ の混合物も使用できる。金属塩の形として カルシウム塩及び亜鉛塩が好適であるが、 のアルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、バ ウム塩)やその他の金属塩も使用できる。塩 は、中性塩と塩基性塩のいずれでもよい。

 金属石鹸の潤滑被膜中の含有量は2~30%の 囲内が好ましい。少なすぎるとその効果が 十分であり、多すぎると潤滑被膜の密着性 強度が低下することがある。より好ましく 5~25%であり、より一層好ましくは10~20%である 。

 上述したように、塩基性芳香族有機酸金 塩と金属石鹸は耐焼付き性と防錆性の向上 果を発揮する。これらの効果を十分に得る め、これら2成分の合計量は好ましくは30%以 上であり、より好ましくは40%以上、より一層 好ましくは50%以上とする。この合計量の上限 は好ましくは90%であり、より好ましくは80%で ある。

 (5)ワックス
 ワックスは、焼付き防止効果だけでなく、 滑被膜形成用組成物の流動性を低下させ、 膜強度を向上させるのにも有効である。動 性、植物性、鉱物性および合成ワックスの ずれも使用できる。適当なワックスとして 、蜜蝋、鯨蝋などの動物性ワックス;木蝋、 カルナバワックス、キャンデリラワックス、 ライスワックスなどの植物性ワックス;パラ ィンワックス、マイクロクリスタリンワッ ス、ペトロラタム、モンタンワックス、オ ケライト、セレシンなどの鉱物性ワックス; よび酸化ワックス、ポリエチレンワックス フィッシャ-・トロプッシュワックス、アミ ドワックス、硬化ひまし油(カスタ-ワックス) などの合成ワックスが例示される。なかでも 、分子量150~500のパラフィンワックスが好ま い。

 潤滑被膜中のワックスの含有量は、好ま くは2~30%である。ワックスの含有量が多す ると、潤滑被膜の密着性が低下する。ワッ スの含有量はより好ましくは2~20%、より一層 好ましくは5~15%である。

 本発明に係る管ねじ継手の潤滑被膜は、上 成分に加えて、場合により下記の1種または 2種以上の任意成分をさらに含有することが きる。
 (6)潤滑性粉末
 潤滑性粉末は、潤滑被膜のTsを低く維持し まま、その強度を向上させ、高温での流動 を抑え、耐焼付き性をより一層向上させる とができるので、潤滑被膜中に含有させる とが好ましい成分である。

 潤滑性粉末としては、いわゆる固体潤滑剤 して使用されている粉末で、毒性のない無 なものを使用する。好ましい潤滑性粉末は 黒鉛、二硫化タングステン(WS 2 )、二硫化モリブデン(MoS 2 )、二硫化スズ、フッ化黒鉛、窒化ホウ素(BN) 氷晶石、及びPTFE(ポリテトラフルオロエチ ン)から選ばれた1種又は2種以上である。中 も、腐食環境中での安定性、環境面などの で、黒鉛が好ましい。

 黒鉛は天然黒鉛と人造黒鉛とに大別され 天然黒鉛の方が安価である。天然黒鉛は、 の形状により、鱗片状、鱗状(塊状)および 状黒鉛に分類される。これらのうち、δTの 大と耐焼付き性向上とを両立させる意味で 結晶性が最も低い土状黒鉛が好ましい。さ に電気的性質や熱的性質も考慮すると、灰 が0.2~5.5質量%で結晶化度が98%以下の土状黒鉛 がさらに好ましい。また、特に結晶化度90~98% の土状黒鉛が好ましい。黒鉛の平均粒径とし て好ましいのは1~20μmであり、さらに好まし は1~15μmである。

 潤滑被膜が潤滑性粉末を含有する場合、 の含有量は好ましくは0.5~20%である。0.5%未 では効果が不十分であり、20%を超えると、 の成分の作用を阻害する恐れがあり、また 滑性粉末の均一分散性や摩擦時における潤 被膜の流動性が低下することがある。潤滑 粉末のより好ましい含有量は0.5~10%であり、 り一層好ましい含有量は1~5%である。

 (7)炭酸マグネシウム
 炭酸マグネシウム(MgCO 3 )をロジンおよび/またはフッ化カルシウムと 緒に潤滑被膜に含有させることによって、 ジンおよび/またはフッ化カルシウムが示す δTを大きくする効果が一層高まる。その結果 、非常に高いトルクで締結した場合でもねじ 無し金属接触部が降伏せずに締結を完了する ことができるようになる。この目的で、炭酸 マグネシウムを潤滑被膜に含有させることが できる。

 炭酸マグネシウムは天然品と合成品のいず を使用してもよい。天然炭酸マグネシウム 菱苦土石(マグネサイト)として産出する。 た、炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムの 然の複塩鉱物である苦灰石(ドロマイト、白 石、CaMg(CO 3 ) 2 )を炭酸マグネシウム供給源として潤滑被膜 に使用しても良い。さらに、マグネシウム 水溶液に炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム 加えて沈殿させて得られる塩基性炭酸マグ シウム(mMgCO 3 ・Mg(OH) 2 ・nH 2 O)も、使用できる。塩基性炭酸マグネシウム 組成比(上式のmおよびnの値)は製法によって 異なるが、通常m3~5、nは3~7の範囲内である。 ろん、化学合成で得られた中性の炭酸マグ シウムも使用できる。平均粒径が0.1~10μmの 酸マグネシウムが好ましい。

 潤滑被膜が炭酸マグネシウムを含有する 合、その含有量は好ましくは0.5~30%である。 0.5%未満では効果が少なく、30%を超えると潤 被膜の強度が低下する。より好ましい含有 は1~20%であり、より一層好ましい含有量は1~1 0%である。炭酸マグネシウムとロジンおよび/ またはフッ化カルシウムとの合計量は30%を超 えないようにすることが好ましい。

 (8)炭水化物
 炭水化物は、潤滑被膜に含有させると、潤 被膜のδTの増大に寄与することができる。 のメカニズムは不明であるが、炭水化物が す高圧での高粘性が関係していると推測さ る。

 本発明で使用できる炭水化物としては、 ルコース等の単糖類;蔗糖等の二糖類;デキ トリン、シクロデキストリンなどのデキス リン類をはじめとするオリゴ糖類;澱粉(例え ば、小麦、とうもろこし、タピオカ、馬鈴薯 の澱粉)、該澱粉の燐酸エステル塩(例えば、 ルカリ金属塩)、セルロース(例えば、葦、 、おが屑、木材繊維等のセルロース)、該セ ロースの燐酸エステル塩(例えば、アルカリ 金属塩)、グルコマンナン(こんにゃく粉等)、 ガラクツロナン、キシラン、フルクタン等を 含む多糖類;並びにアルギン酸塩(例えば、ア カリ金属塩)が挙げられる。

 炭水化物として特に好ましいのは、シク デキストリンを含むデキストリン類であり より一層好ましいのはシクロデキストリン( シャルジンガーデキストリン、シクロアミロ ース、シクロマルトースおよびシクログルカ ンとも呼ばれる)である。シクロデキストリ は、6~8個のグルコピラノース単位がα1-4結合 により環化した環状オリゴ糖であり、該単位 が6個であるものをα-シクロデキストリン、7 であるものをβ-シクロデキストリン、8個で あるものをγ-シクロデキストリンと呼ぶ。潤 滑被膜中において、シクロデキストリンはα β、γのいずれのタイプでも十分な効果を示 すが、特にβ-シクロデキストリンが最も効果 が高いので好適である。

 潤滑被膜が炭水化物を含有する場合、そ 含有量は好ましくは0.1~20%である。1質量%未 では効果が少なく、20%を超えると、潤滑被 の強度が低下し、潤滑性能が不足すること ある。より好ましい含有量は0.5~15%であり、 より一層好ましい含有量は1~10%である。

 (9)その他の任意添加成分
 本発明に係る管ねじ継手の潤滑被膜は、被 中の多様な粉末成分の均一分散性を高める め、あるいは潤滑被膜の特性や性状を改善 るため、上記以外の成分、例えば、有機樹 、ならびに潤滑油に慣用されている各種の 剤及び添加剤(例えば、極圧剤)から選んだ 分を含有することができる。

 (9-1)有機樹脂
 有機樹脂、特に熱可塑性樹脂は、潤滑被膜 べとつきを抑制し、膜厚を増大させるとと に、摩擦界面に導入された場合に耐焼付き を高めたり、金属部同士が接触する際に高 締付けトルク(高面圧)を受けても摩擦を軽 する機能がある。

 本発明で使用できる熱可塑性樹脂として 、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂 ポリスチレン樹脂、ポリアクリル酸メチル 脂、スチレン/アクリル酸エステル共重合樹 脂、ポリアミド樹脂などが挙げられ、これら 同士又はこれらと他の熱可塑性樹脂との共重 合体もしくはブレンドも使用できる。熱可塑 性樹脂は密度(JIS K7112)が0.9~1.2の範囲である のが好ましい。また、摩擦面で容易に変形 て潤滑性を発揮させる必要から、熱変形温 (JIS K7206)が50~150℃であるものが好ましい。

 熱可塑性樹脂は、潤滑被膜中に粒子形態 存在させると、摩擦界面に導入された時に 体潤滑剤に似た潤滑作用を発揮し、耐焼付 性の向上に特に有効である。そのため、熱 塑性樹脂は、粉末、特に球形粒子状の粉末 の形態で潤滑被膜中に存在させることが好 しい。その場合、潤滑被膜を形成するため 組成物(潤滑被膜形成用組成物)が有機溶剤 含有するなら、その溶剤には溶解しない熱 塑性樹脂を選択する。熱可塑性樹脂の粉末 、溶剤に分散又は懸濁すればよく、溶剤中 膨潤してもかまわない。

 熱可塑性樹脂の粉末の粒子径は、微粒子 方が、上記の膜厚を増す目的と耐焼付き性 高める目的の両方に好都合である。しかし 粒子径が0.05μmより小さいと、被膜形成用組 成物のゲル化が著しくなって、均一厚みの被 膜を形成し難くなる。また、粒子径が30μmを えると、摩擦界面に導入され難くなる上、 滑被膜形成用組成物中で沈殿や浮上分離を こしやすくなり、均質な被膜を形成するこ ができ難くなる。したがって、この樹脂粉 の粒子径は0.05~30μmの範囲が好ましく、より 好ましくは0.07~20μmの範囲である。

 潤滑被膜が熱可塑性樹脂を含有する場合、 膜中のその含有量は10%以下とすることが好 しく、より好ましくは0.1~5%の範囲内である
 (9-2)油剤
 油剤とは、潤滑油に使用されうる室温で液 の潤滑成分(粘稠液状物<グリス状物>も む)を意味し、それ自体が潤滑性を有する。 使用可能な油剤の例は、天然油脂、合成エス テル、鉱油などである。なお、上記の塩基性 芳香族有機酸金属塩も油剤の1種である。

 天然油脂としては、牛脂、ラード、羊毛 、パーム油、菜種油及び椰子油などがあげ れる。また、40℃での粘度が10~300cStの鉱油( 成鉱油も含む)も油剤として使用できる。天 然油脂は、主に潤滑被膜の粘度調整の目的で 使用される。

 合成エステルは、熱可塑性樹脂の可塑性 高めると同時に、潤滑被膜の静水圧条件下 の流動性を高めることができる。また、高 点の合成エステルは、潤滑被膜の融点及び さ(軟質さ)の調整にも使用できる。合成エ テルには、脂肪酸モノエステル、二塩基酸 エステル、及びトリメチロールプロパンの はペンタエリスリトールの脂肪酸エステル どがある。

 脂肪酸モノエステルとしては、ミリスチ 酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイ 酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノ イン酸、エライジン酸、アラキン酸、ベヘ 酸、エルカ酸、リグノセリン酸などの炭素 12~24のカルボン酸と、オクチルアルコール カプリルアルコール、ノニルアルコール、 シルアルコール、ラウリルアルコール、ト デシルアルコール、ミリスチルアルコール セチルアルコール、ステアリルアルコール イソステアリルアルコール、オレイルアル ール、デシルアルコールなどの炭素数8~20の 級アルコールとのモノエステルを挙げるこ ができる。

 二塩基酸ジエステルとしては、アジピン 、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、 バシン酸などの炭素数6~10の二塩基酸と、モ ノエステルについて例示した炭素数8~20の高 アルコールとのジエステルが挙げられる。

 トリメチロールプロパンの又はペンタエ スリトールの脂肪酸エステルを構成する脂 酸は、カプリル酸、デシル酸、ラウリン酸 ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン 、オレイン酸、イソステアリン酸などの炭 数8~18のものが挙げられる。

 これらの油剤を潤滑被膜中に含有させる 合、耐焼付き性の向上を得るには、その含 量を0.1%以上とすることが好ましい。被膜強 度の低下を防止するため、その含有量は5%以 とすることが好ましい。

 (9-3)極圧剤
 極圧剤は少量の配合で潤滑被膜の耐焼付き を高める作用がある。極圧剤としては、こ らに限られないが、硫化油脂、ポリサルフ イド、ホスフェート、ホスファイト、チオ スフェート、ジチオリン酸金属塩等を挙げ ことができる。極圧剤を含有させる場合、 被膜中のその含有量は0.05~5%の範囲内とする ことが好ましい。より好ましくは、0.05~3%の 囲内である。

 硫化油脂の好ましい例は、オリーブ油、 まし油、ヌカ油、綿実油、ナタネ油、大豆 、トウモロコシ油、牛脂、ラードといった 飽和結合を有する動植物油脂に硫黄を加え 加熱することにより得られる、硫黄量が5~30 %の化合物である。

 ポリサルファイドの好ましい例としては、 :R 1 -(S)c-R 2 (式中、R 1 とR 2 は同一でも異なっていてもよく、炭素数4~22 アルキル基、アリール基、アルキルアリー 基、アリールアルキル基を意味し、cは2~5の 数を示す)で表される多硫化物や、1分子中 2~5個結合した硫黄原子を含む硫化オレフィ 類が挙げられる。特に好ましいのは、ジベ ジルジサルファイド、ジ-tert-ドデシルポリ ルファイド、ジ-tert-ノニルポリサルファイ である。

 ホスフェート、ホスファイト、チオホスフ ート、ジチオリン酸金属塩はそれぞれ下記 示す一般式のものが使用できる。
 ホスフェート:(R 3 O)(R 4 O)P(=O)(OR 5 )
 ホスファイト:(R 3 O)(R 4 O)P(OR 5 )
 チオホスフェート:(R 3 O)(R 4 O)P(=S)(OR 5 )
 ジチオリン酸金属塩:[(R 3 O)(R 6 O)P(=S)-S] 2 -M
 式中、R 3 、R 6 は炭素数1~24のアルキル基、シクロアルキル 、アルキルシクロアルキル基、アリール基 アルキルアリール基、アリールアルキル基 、R 4 、R 5 は水素原子又は炭素数1~24のアルキル基、シ ロアルキル基、アルキルシクロアルキル基 アリール基、アルキルアリール基、アリー アルキル基を、Mはモリブデン(Mo)、亜鉛(Zn) はバリウム(Ba)をそれぞれ意味する。

 特に好ましい例を挙げると、ホスフェート トリクレジルホスフェート、ジオクチルホ フェート;ホスファイトはトリステアリルホ スファイト、トリデシルホスファイト、ジラ ウリルハイドロゲンフォスファイト;チオホ フェートはR 3 、R 4 、R 5 が炭素数12もしくは13のアルキル基であるト アルキルチオホスフェート、アルキルトリ ェニルチオホスフェート;ジチオリン酸金属 は、R 3 、R 6 が炭素数3~20の一級もしくは二級アルキル基 あるジンクジアルキルジチオフォスフェー である。

 3.潤滑被膜形成用組成物
 潤滑被膜は、上述した成分を含有する潤滑 膜形成用組成物を調製し、それを管ねじ継 の接触表面に塗布し、必要に応じて塗膜を 燥させることにより形成される。

 使用する潤滑被膜形成用組成物は、塗布 法及び塗布条件に応じて、上記成分に加え 、揮発性有機溶剤を含有しうる。塗布する 成物が溶剤を含有することにより、形成さ る潤滑被膜の膜厚および組成が均一化し、 つ被膜形成を効率的に行うことができる。 の場合、潤滑被膜形成用組成物中の各成分 含有量は、溶剤を除外した不揮発性成分の 計量に基づいた含有量である。

 溶剤は揮発性の有機溶剤を使用する。つ り、潤滑油の基油とは異なり、溶剤は被膜 成過程で蒸発して、潤滑被膜中には実質的 残存しない。「揮発性」とは、被膜形態で 温~150℃までの温度で蒸発傾向を示すことを 意味する。しかし、本発明の潤滑被膜は粘稠 液体または半固体であるので、被膜中での若 干の溶剤の残存は許容される。

 好ましい有機溶剤はロジンを溶解すること できるものであり、より好ましくはワック を溶解しないものである。
 本発明で使用するのに適した揮発性溶剤の としては、石油系溶剤、例えば、JIS K2201に 規定されている工業用ガソリンに相当するソ ルベント、ミネラルスピリット、芳香族石油 ナフタ、キシレン、セロソルブなどが挙げら れ、2種以上を混合して使用してもよい。引 点が30℃以上で、初留温度が150℃以上、終点 が210℃以下のものが、取り扱いが比較的容易 で、しかも蒸発が速く、乾燥時間が短くてす む点で好ましい。

 潤滑被膜形成用組成物は、上記成分に加え 、酸化防止剤、防腐剤、着色剤等を含有す ことができる。
 潤滑被膜形成用組成物は常法に従って調製 ることができる。

 例えば、潤滑被膜形成用組成物が溶剤を 有しない場合、まずワックスをその融点以 の温度に加熱して融解させ、それに他の成 を混合することによって潤滑被膜形成用組 物を調製することができる。得られた組成 が液状であれば、そのままねじ継手に塗布 てもよく(この場合は、組成物は溶剤で希釈 してもよい)、あるいは加熱して流動性を高 た状態で塗布してもよい。組成物が固体又 半固体である場合には、ホットメルト型塗 で行われるように、加熱して流動状態とし スプレーガンなどから塗布することができ 。組成物が固体の場合には、粉体塗装技術 利用して、加熱したねじ継手に粉末状の組 物を付着させ、必要に応じて再加熱して、 融させた後、冷却することにより、潤滑被 を形成することができる。

 ワックスを融解させず、揮発性有機溶剤中 被膜の全成分を溶解または分散させて潤滑 膜形成用組成物を調製することもできる。 の場合には、潤滑被膜形成用組成物に対す 溶剤の使用量を調整して、塗布方法に応じ 粘度(動粘度:単位cSt(10 -6  m 2 /s)、B型粘度計)にすれば良い。スプレー塗布 浸漬の場合には、40℃の粘度が4000cSt(10 -6  m 2 /s)以下、刷毛塗りの場合には60℃の粘度が1000 cSt(10 -6  m 2 /s)以下であることが好ましい。

 4.潤滑被膜の厚み
 潤滑被膜の膜厚は10~500μmの範囲内とするこ が好ましく、より好ましい範囲は20~200μmで る。

 潤滑被膜は、ねじ山間などの接触表面の 小隙間を埋めるのに十分な厚みを有するこ が望ましい。膜厚が10μmより薄くなると、 付け時に発生する静水圧作用で他の隙間か 油状の潤滑性成分が摩擦面に供給されると う粘稠液状または半固体の潤滑被膜に固有 作用が起こりにくく、耐焼付き性が低下す 。また、防錆性も不十分となる。一方、潤 被膜が厚くなりすぎると、潤滑剤が無駄に るばかりか、本発明の目的の一つでもある 境汚染防止に逆行する。この観点から、潤 被膜の膜厚は、概ね500μmを上限とすること 好ましい。

 ただし、次に説明するように、潤滑被膜 下地となる接触表面の表面粗さを大きくし 場合には、潤滑被膜の膜厚は、粗面化した 触表面のRz(10点平均粗さ)より大きくするこ が好ましい。下地が粗面である場合の潤滑 膜の厚みは、被膜の面積、重量および密度 ら算出できる平均値をとることとする。

 潤滑被膜の性状は、一般的な傾向として 、塩基性芳香族有機酸金属塩以外の油剤を る程度以上含有させると粘稠液体となり、 油剤の量が少ないか、含有させないと半固 となる。

 5.下地処理
 本発明に従って潤滑被膜が形成されるピン び/又はボックスの接触表面は、潤滑被膜の 形成前に、粗面化のための下地処理を施して おくことが、耐焼付き性の向上の観点から好 ましい。「粗面化」とは、切削加工後の一般 的な表面粗さである3~5μmより大きな表面粗さ にすることを意味する。

 そのような下地処理の例としては、形状 球状のショット材又は角状のグリッド材な のブラスト材を投射するブラスト処理、硫 、塩酸、硝酸、フッ酸などの強酸液に浸漬 て肌を荒らす酸洗が挙げられる。これらの 法では、図5(a)に示すように、接触表面それ 自体が粗面化される。

 粗面化のための別の下地処理は、図5(b)に 示すように、表面粗さの大きな下地被膜を接 触表面に形成する方法である。このような下 地被膜の例としては、針状結晶などからなる 表面粗さの大きい多孔質化成被膜が形成され る、リン酸塩処理、蓚酸塩処理、硼酸塩処理 等の化成処理、並びに金属めっきが挙げられ る。金属めっきとしては、Cu、Fe、Sn、Znなど 金属又はそれらの合金の電気めっき(凸部が 優先してめっきされるため、僅かであるが表 面が粗くなる)、多孔質のめっき被膜を形成 きる衝撃めっき、および金属中に固体微粒 を分散させためっき被膜を形成する電気複 めっき(固体微粒子がめっき被膜から突出)が 可能である。

 以上の2種以上の方法を組合わせて接触表 面を粗面化してもよい。下地処理がいずれの 方法であっても、下地処理により表面粗さRz 5~40μmとなるようにすることが好ましい。Rz 5μm未満では、潤滑被膜との密着性や被膜の 保持性が不十分になることがある。一方、Rz 40μmを超えると、摩擦が高くなり、高面圧 受けた際のせん断力と圧縮力に耐えられず 被膜が破壊もしくは剥離しやすくなること ある。

 潤滑被膜の密着性の観点からは、多孔質 膜を形成できる下地処理、すなわち、化成 理及び衝撃めっきが好ましい。その場合、 孔質被膜のRzを5μm以上とするため、その膜 も5μm以上とすることが好ましい。膜厚の上 限は特に規定されないが、通常は50μm以下、 ましくは40μm以下で十分である。下地処理 より形成された多孔質被膜の上に潤滑被膜 形成すると、いわゆる「アンカー効果」に り、潤滑被膜との密着性が高まる。その結 、締付け・緩めを繰り返しても潤滑被膜の 離が起こり難くなり、金属間接触が効果的 防止され、耐焼付き性、気密性、防食性が 層向上する。

 多孔質被膜を形成するための特に好まし 下地処理は、燐酸塩化成処理(燐酸マンガン 、燐酸亜鉛、燐酸鉄マンガン、もしくは燐酸 亜鉛カルシウムによる処理)と、衝撃めっき よる亜鉛もしくは亜鉛-鉄合金の被膜の形成 ある。密着性の観点からは燐酸マンガン被 が、防食性の観点からは、亜鉛による犠牲 食能が期待できる亜鉛もしくは亜鉛-鉄合金 の被膜がより好ましい。

 燐酸塩化成処理は、常法にしたがって浸 又はスプレーにより実施することができる 化成処理液としては、一般的な亜鉛めっき 用の酸性燐酸塩処理液が使用できる。例え 、燐酸イオン1~150g/L、亜鉛イオン3~70g/L、硝 イオン1~100g/L、ニッケルイオン0~30g/Lからな 燐酸亜鉛系化成処理を挙げることができる また、管ねじ継手に慣用されている燐酸マ ガン系化成処理液も使用できる。液温度は 温から100℃でよく、処理時間は所望の膜厚 応じて15分までの間で行えばよい。被膜化 促進するため、燐酸塩処理前に、コロイド タンを含有する表面調整用水溶液を処理表 に供給することもできる。燐酸塩処理後、 洗もしくは湯洗してから、乾燥することが ましい。

 衝撃めっきは、粒子と被めっき物を回転 レル内で衝突させるメカニカルプレーティ グや、ブラスト装置を用いて粒子を被めっ 物に衝突させる投射めっきにより実施でき 。本発明では接触表面だけにめっきを施せ よいので、局部的なめっきが可能な投射め きを採用することが好ましい。

 投射めっきは、鉄系の核の表面を亜鉛又 亜鉛合金で被覆した粒子からなる投射材料 、被覆すべき接触表面に投射することによ 実施できる。粒子中の亜鉛又は亜鉛合金の 有量は20~60%の範囲であることが好ましく、 子の粒径は0.2~1.5mmの範囲が好ましい。投射 より、粒子の被覆層である亜鉛又は亜鉛合 のみが基体である接触表面に付着し、亜鉛 は亜鉛合金からなる多孔質の被膜が接触表 上に形成される。この投射めっきは、鋼の 質に関係なく、鋼表面に密着性のよい多孔 の金属めっき被膜を形成することができる

 別の下地処理も利用できる。例えば、粗 化効果はほとんどないが、特定の単層又は 層電気めっきを施すと、潤滑被膜と下地と 密着性がよくなり、管ねじ継手の耐焼付き が改善されることがある。

 そのような潤滑被膜の下地処理として、C u,Sn,Niなどの金属又はそれらの合金の電気め きが挙げられる。めっきは単層めっきでも 2層以上の複層めっきでもよい。この種の電 めっきの具体例としては、Cuめっき、Snめっ き、Niめっき、Cu-Sn合金めっき、Cu-Sn-Zn合金め っき、Cuめっき-Snめっき二層めっき、Niめっ -Cuめっき-Snめっきの三層めっきなどがある 特に、Cr含有量が5%を超えるような鋼種から 製された管ねじ継手では、焼付きが非常に こりやすいため、Cu-Sn合金もしくはCu-Sn-Zn合 金の単層めっき、あるいはこれらの合金めっ きやCuめっき、Snめっき、Niめっきから選ばれ た二層以上のめっきを組み合わせた複層金属 めっき、例えば、Cuめっき-Snめっきの二層め き、Niめっき-Snめっきの二層めっき、Niめっ き-Cu-Sn-Zn合金めっきの二層めっき、Niめっき- Cuめっき-Snめっきの三層めっきを下地処理と て施すことが好ましい。

 多層めっきの場合、最下層のめっき被膜( 通常はNiまたはCuめっき)はストライクめっき 呼ばれる方法で形成される、膜厚1μm程度ま たはそれ以下の極薄のめっき層とすることが 好ましい。この種の電気めっきの膜厚(多層 っきの場合は合計膜厚)は5~15μmの範囲内とす ることが好ましい。

 6.上層乾燥被膜
 本発明に従って管ねじ継手の接触表面に形 される上記の潤滑被膜は、上述したように 稠液体又は半固体であり、その表面には多 のべたつきがある。特に粘稠液体の潤滑被 はべたつきが大きい。その結果、特にこの ねじ継手で接続された油井管を直立させる に、内面に残留する錆や、錆を除去するた に投入したブラスト砥粒などが落下して、 れらが潤滑被膜に付着し、潤滑被膜中に埋 込まれてしまうことがある。被膜中に埋め まれた異物はエアーブロー程度では完全に 除去できず、潤滑性の低下を生じる。

 この問題を解消するため、潤滑被膜の上 に薄い乾燥固体被膜を形成してもよい。こ 乾燥固体被膜は、一般的な樹脂被膜(例、エ ポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイ ミド樹脂、ビニル樹脂など)でよく、水系組 物と有機溶剤系組成物のいずれからも被膜 形成できる。また、被膜中に少量のワック を含有させてもよい。上層被膜の膜厚は、5~ 40μm程度で十分である。

 7.相手部材の表面処理
 管ねじ継手のピンとボックスの一方の部材( 例、ボックス)の接触表面だけに、本発明に って潤滑被膜を形成した場合、潤滑被膜で 覆されない他方の部材(例、ピン)の接触表面 は、未処理のままでもよいが、好ましくは、 前述した粗面化のための下地処理を施して、 接触表面を粗面化する。すなわち、粗面化は 、ブラスト処理;酸洗;リン酸塩、蓚酸塩、硼 塩などによる化成処理、電気めっき、衝撃 っき、固体微粒子を含有するめっき被膜を 成する複合めっき、及びそれらの2種以上の 組み合わせを採用して実施することができる 。こうすると、本発明に従った潤滑被膜で被 覆されている相手側部材と締結された時に、 潤滑被膜を有していない他方の部材の接触表 面が、粗面化によるアンカー効果によって潤 滑被膜の良好な保持性を示し、管ねじ継手の 耐焼付き性が高まる。

 所望により、防錆性を付与するために、 の他方の部材の接触表面(未処理でも上記の ように粗面化されていてもよい)の上に、紫 線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂などの公知の 錆被膜を形成してもよい。防錆被膜により 気との接触を遮断することにより、保管中 露点の関係で水と接触することがあっても 接触表面に錆が発生することが防止される

 相手部材の接触表面の表面処理は特に制限 れないので、上記以外の表面処理を施すこ も可能である。例えば、本発明のものとは なる潤滑被膜を形成することもできる。
 [実施例]
 以下の実施例は本発明の効果を例証するた に例示するものであり、本発明を制限する のではない。以下の説明において、ピンの じ部とねじ無し金属接触部を含む接触表面 「ピン表面」、ボックスのねじ部とねじ無 金属接触部とを含む接触表面を「ボックス 面」という。

 実施例では、表1に示す炭素鋼A、Cr-Mo鋼B 13%Cr鋼C、高合金鋼D(A→Dの順に焼付きが起こ 易い)のいずれかからなる管ねじ継手(外径:1 7.78cm(7インチ)、肉厚:1.036cm(0.408インチ)(ねじ 、ねじ無し金属接触部及びショルダー部を する特殊管ねじ継手)を使用した。これらの ねじ継手は、ねじ形状(干渉量)に応じた最 な規定トルクで締め付けた。最適締付けト クとして、14kN・m(実施例1)と20kN・m(実施例2~4 )を採用した。

 実施例において、潤滑被膜は、次のいずれ の方法により形成した:
 (1)溶剤法:所定組成の潤滑被膜成分合計100質 量部に対して揮発性有機溶剤(ミネラルスピ ット)20質量部(実施例1~3)又は30質量部(実施例 4)加えて低粘度化させることにより調製した 滑被膜形成用組成物を常温でスプレー塗布 、自然乾燥により有機溶剤を揮発させて潤 被膜を形成する;
 (2)加熱法:所定組成の潤滑被膜成分からなる (溶剤を含有しない)潤滑被膜形成用組成物を 熱して低粘度液状とし、スプレー塗布後に 却して潤滑被膜を形成する。

 実施例で使用したロジンはいずれも荒川化 工業(株)社製のロジンエステル(商品名:エス テルガムH)であった。
 塩基性芳香族有機酸金属塩としては下記の を使用した:
 ・塩基性Caスルホネート:Witco社製BRYTON C-500( 塩基価400mgKOH/gのカルシウムスルホネート);
 ・塩基性Caフェネート:Adibis社製ADX-410J(塩基 400mgKOH/gのカルシウムフェネート);
 ・塩基性Caサリシレート:OSCA社製OSCA438(塩基 320mgKOH/gのカルシウムサリシレート);
 ・塩基性Caカルボキシレート:LUBRIZOL社製LUBRI ZOL5341(塩基価400mgKOH/gのカルシウムカルボキシ レート);および
 ・酸化ワックスCa石鹸::King Industries社製NA-SU L CA/W1935(塩基価400mgKOH/gのカルシウムスルホ ートと酸化ワックスとの化合物)。

 金属石鹸として用いた、ステアリン酸Ca及 ステアリン酸Znは、大日本インキ化学工業( )社製のものであった。
 潤滑性粉末のうち、単に「黒鉛」とあるの 「土状黒鉛」を意味する。実施例で使用し 土状黒鉛は、日本黒鉛工業(株)社製の黒鉛 末、青P(灰分3.79質量%、結晶化度96.9%、平均 径7μm)であった。

 炭水化物として用いたβ-CD(シクロデキスト ン)およびCD(α-CD、β-CD、γ-CDの混合物)は、WA CKER FINE CHEMICALS社製CAVAMAX SERIESであった。
 実施例で用いた潤滑性粉末のうち、単に「 鉛」とあるのは「土状黒鉛」を意味する。 施例で使用した土状黒鉛は、日本黒鉛工業( 株)社製の黒鉛粉末、青P(灰分3.79質量%、結晶 度96.9%、平均粒径7μm)であった。

 実施例で採用した下地処理被膜のうち、 酸マンガン被膜は、80~95℃の燐酸マンガン 成処理液(日本パーカライジング製パルホスM 1A)中に10分間浸漬することにより、燐酸亜鉛 膜は、75~85℃の燐酸亜鉛用化成処理液(日本 ーカライジング製パルボンド181X)中に10分間 浸漬することにより実施した。やはり下地処 理に利用した合金めっきの組成(質量比)は、C u-Sn-Zn合金めっきがCu:Sn:Zn=60:35:5、Cu-Sn合金め きはCu:Sn=60:40であった。

 実施例中、表面粗さはRzであり、ランク ーラーホブソン社製サートロニック10で測定 された。研削仕上げ後のRzはいずれも3μmであ った。サンドブラストは80番のサンドを用い 実施した。

 表1に示す炭素鋼A、Cr-Mo鋼B、13%Cr鋼C、高合 鋼Dのいずれかからなる管ねじ継手のピン表 とボックス表面に、表2に示す下地処理を別 々に施した。
 こうして下地処理したピン表面とボックス 面とに、表3に示す組成を有する潤滑被膜を 溶剤法(有機溶剤の使用量は20質量部)又は加 法により形成した。従って、ピン表面とボ クス表面に形成された潤滑被膜は同じ組成 ものであった。表3における各潤滑膜形成用 成物中の成分の量は、溶剤を除外した不揮 性成分の合計量に対する%で示す。表3に示 た成分のうち、ワックスはいずれもパラフ ンワックスであった。

 こうしてピン表面とボックス表面に潤滑被 が形成された管ねじ継手に対して繰り返し 付け・緩め試験を行って、耐焼付き性を評 した。
 繰り返し締付け・緩め試験では、締付け速 10rpmで、締付けトルク14kN・mに達するまで管 ねじ継手の締付けを行い、緩めた後のピン表 面とボックス表面の焼付き状況を調査した。 締付けにより発生した焼付き疵が軽微で、手 入れをすれば再締結が可能である場合は、手 入れをして締付け・緩めを10回まで続行した 締付け・緩め試験の結果を表4に示す。

 また、上記試験とは別に、材質、下地処 および潤滑被膜が同じである別の管ねじ継 を準備し、高い締付けトルクを与えて締付 を行うことにより、図2に示すようなトルク チャートを作製し、トルクチャート上でTs(シ ョルダリングトルク)、Ty(降伏時トルク)、δT( =Ty-Ts、トルクオンショルダー抵抗)を測定し 。Tsは、ピンとボックスのショルダー部(ね 無し金属接触部)同士が干渉し始めた時のト クであり、具体的には、ショルダー部が干 してから現れるトルク変化が線形域(弾性変 形域)から離れ始めた時のトルクをTsとした。 一方、Tyはショルダー部の塑性変形が始まる のトルクであり、具体的には、Tsに達した に、回転と共にトルク変化の線形性が失わ はじめる時のトルクをTyとした。δT(=Ty-Ts)は 表3、4の対照例に示すコンパウンドグリス 場合に得られたδTを100とする相対値で表4に す。

 (試験1)
 表1に示す組成Aの炭素鋼製の管ねじ継手に 記の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げの後、厚み1 5μmの燐酸マンガン被膜(Rz:12μm)を形成し、次 で表3の試験1に示す組成を有する厚み20μmの 潤滑被膜を溶剤法により形成した。ピン表面 には、研削仕上げの後、厚み15μmの燐酸亜鉛 膜(Rz:10μm)を形成し、次いでボックス表面と 同様に潤滑被膜を形成した。

 (試験2)
 表1に示す組成BのCr-Mo鋼製の管ねじ継手に下 記の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げの後、厚み1 2μmの燐酸マンガン被膜(Rz:10μm)を形成し、次 で表3の試験2に示す組成を有する厚み40μmの 潤滑被膜を溶剤法により形成した。ピン表面 には、研削仕上げの後、厚み12μmの燐酸亜鉛 膜(Rz:8μm)を形成し、次いでボックス表面と 様に潤滑被膜を形成した。

 (試験3)
 表1に示す組成BのCr-Mo鋼製のねじ継手に下記 の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げの後、厚み1 2μmの燐酸マンガン被膜(Rz:10μm)を形成し、次 で表3の試験3に示す組成を有する厚み40μmの 潤滑被膜を溶剤法により形成した。ピン表面 には、研削仕上げの後、厚み10μmの燐酸亜鉛 膜(Rz:8μm)を形成し、次いでボックス表面と 様に潤滑被膜を形成した。

 (試験4)
 表1に示す組成BのCr-Mo鋼製のねじ継手に下記 の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げの後、厚み1 2μmの燐酸マンガン被膜(Rz:10μm)を形成し、次 で表3の試験4に示す組成を有する厚み50μmの 潤滑被膜を溶剤法により形成した。ピン表面 には、研削仕上げの後、厚み10μmの燐酸亜鉛 膜(Rz:8μm)を形成し、次いでボックス表面と 様に潤滑被膜を形成した。

 (試験5)
 表1に示す組成Dの高合金製のねじ継手に下 の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げ後、鉄芯に 鉛を被覆した粒子を用いた投射めっき法に り厚み7μmの多孔質亜鉛めっき被膜(Rz:5μm)を 形成した。このめっき被膜上に、表3の試験5 組成物を60℃に加熱して低粘度化させてス レー塗布する加熱法により厚み25μmの潤滑被 膜を形成した。ピン表面には、サンドブラス トによりRz=10μmとした後、ボックス表面と同 組成の潤滑被膜(厚み20μm)を同じ方法で形成 した。

 (試験6)
 表1に示す組成Cの13%Cr鋼製のねじ継手に下記 の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げ後、電気め きによりまずNiストライクめっき、次に厚 7μmのCuめっきを施した(合計めっき厚み8μm) めっき表面のRzは2μmであった。このめっき 膜の上に、表3の試験6に示す組成を有する厚 み50μmの潤滑被膜を試験5と同様の加熱法によ り形成した。ピン表面には、サンドブラスト によりRz=10μmとした後、ボックス表面と同様 して厚み50μmの潤滑被膜を形成した。

 (試験7)
 表1に示す組成Cの13%Cr鋼製のねじ継手に下記 の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げ後、電気め きによりNiストライクめっきを施した後、 み12μmの銅-すず合金めっき被膜(合計めっき み13μm)を形成した。このめっき被膜(Rz:3μm) 上に、表3の試験7の組成を有する厚み40μmの 潤滑被膜を溶剤法により形成した。ピン表面 には、サンドブラストによりRz=10μmとした後 ボックス表面と同様に潤滑被膜を形成した

 (試験8)
 表1に示す組成Cの13%Cr鋼製のねじ継手に下記 の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げ後、電気め きによりNiストライクめっきを施した後、 み7μmの銅-すず-亜鉛合金めっき被膜(合計め き厚み8μm)を形成した。このめっき被膜(Rz:2 μm)上に、表3の試験8の組成を有する厚み40μm 潤滑被膜を溶剤法により形成した。ピン表 には、サンドブラストによりRz=10μmとした 、ボックス表面と同様に潤滑被膜を形成し 。

 (対照例)
 表1に示す組成Aの炭素鋼製のねじ継手に下 の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げの後、厚み1 5μmの燐酸マンガン被膜(Rz:10μm)を形成した。 の上に、API規格に準拠した、粘稠液体状の ンパウンドグリスを塗布した(ピンとボック ス合わせて塗布量は50g、塗布面積は合計でお よそ1400cm 2 )。ピン表面には、研削仕上げのままとし、 記と同じコンパウンドグリスを塗布した。

 締付け・緩め試験では、表4に示すように 、10回の締付け・緩めにおいて、10回目まで 焼付きの発生はなかった。しかし、この例 、コンパウンドグリスが鉛等の有害な重金 を含有するため、人体、環境への有害性が るといえる。

 (試験9-比較例)
 表1に示す組成BのCr-Mo鋼製のねじ継手に下記 の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げ後、厚み15μ mの燐酸マンガン被膜(Rz:10μm)を形成し、次い 表3に示す試験9の組成を有する厚み40μmの潤 滑被膜を溶剤法により形成した。ピン表面に は、研削仕上げ後、ボックス表面と同様に潤 滑被膜を形成した。

 表4に示すように、本発明に従った試験1~8 では、締付け・緩め試験において、10回の締 け・緩め中に僅かな焼付きが発生する場合 あっても、いずれ手入れにより10回まで締 け・緩めができた。この結果は、耐焼付き 能としては問題ないレベルである。僅かな 付きは、焼付きが起こり易い13Cr鋼製又は高 金鋼製の管ねじ継手の場合に早めに発生す 傾向があった。

 高トルク試験におけるδTの値は、コンパ ンドグリスを使用した対照例に比べて、ロ ンが0.5%と非常に少なかった試験1を除いて90 %以上であり、これらの潤滑被膜がコンパウ ドグリスなみのδTを示し、高トルク下でも じ無し金属接触部の降伏が起こりにくいこ がわかる。

 比較例である試験9では、δTが不十分であっ た。従って、最適締付けトルクより高いトル クで締付けた場合に、ねじ無し金属接触部の 降伏が起こり易い。
 管ねじ継手に必要とされる防錆性について 、別途準備したクーポン試験片(70mm×150mm×2m m厚)に、表2のボックス側と同じ下地処理被膜 と表3の潤滑被膜(厚みはピン側と同じ)を形成 し、湿潤試験(温度50℃、湿度98%、200時間)を 施して評価した。その結果、試験1~7ではい れも錆の発生がないことを確認した。

 本実施例は、フッ化カルシウムを含有す 潤滑被膜を例示する。試験に使用した管ね 継手の材質と寸法は、実施例1と同じである 。ピン表面及びボックス表面の下地処理法及 び潤滑被膜の組成はそれぞれ表5及び表6に示 。

 溶剤法における溶剤の使用量は20質量部 あった。加熱法による潤滑被膜の形成は、 剤を含有しない潤滑被膜形成用組成物(潤滑 膜と同組成)を使用時に130℃に加温して低粘 度の液状とし、この組成物を保温機能付きス プレーガンを使用して、誘導加熱により130℃ に予熱されたピン表面又はボックス表面にス プレー塗布することにより行った。

 締付け・緩め試験及び高トルク試験は実 例1と同様に行った。ただし、締付け・緩め 試験における締付けトルクは、最適締付けト ルクの20kN・mであった。得られた試験結果は 7にまとめて示す。表7には、高トルク試験 測定されたTsの表1に示す最適締付けトルク( 種と管ねじ継手の形状により設定される値) に対する割合(%)も併記する。

 (試験1~6)
 表1に示す組成BのCr-Mo鋼製の管ねじ継手に下 記の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げの後、厚み1 2μmの燐酸マンガン被膜(Rz:10μm)を形成し、次 で表6に示す組成を有する潤滑被膜を溶剤法 により形成した。

 ピン表面には、研削仕上げの後、厚み12μm 燐酸亜鉛被膜(Rz:8μm)を形成し、次いでボッ ス表面と同様に潤滑被膜を形成した。
 形成された潤滑被膜の厚みは、試験1、3が40 μm、試験2が42μm、試験4~6が50μmであり、ピン 面とボックス表面とで厚みは同一であった

 (試験7)
 表1に示す組成Aの炭素鋼製の管ねじ継手に 記の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げの後、厚み1 5μmの燐酸マンガン被膜(Rz:12μm)を形成し、次 で上記加熱法により表6の試験7に示す組成 有する厚み40μmの潤滑被膜を形成した。ピン 表面には、研削仕上げの後、厚み15μmの燐酸 鉛被膜(Rz:12μm)を形成し、次いでボックス表 面と同様に潤滑被膜を形成した。

 (試験8)
 表1に示す組成Cの13%Cr鋼製の管ねじ継手に下 記の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げ後、電気め きによりまずNiストライクめっき、次にCuめ っきを施して、合計12μmの厚みのめっき皮膜( Rz:3μm)を形成した。このめっき表面の上に上 加熱法により表6の試験8に示す組成を有す 厚み50μmの潤滑被膜を形成した。ピン表面に は、サンドブラストによりRz:10μmとした後、 ックス表面と同様にして厚み40μmの潤滑被 を形成した。

 (試験9)
 表1に示す組成Dの高合金製の管ねじ継手に 記の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げ後、電気め きによりまずNiストライクめっき、次にCu-Sn -Zn合金めっきを施して、合計7μmの厚みのめ き皮膜(Rz:2μm)を形成した。このめっき表面 上に上記加熱法により表6の試験9に示す組成 を有する厚み40μmの潤滑被膜を形成した。ピ 表面には、サンドブラストによりRz:10μmと た後、ボックス表面と同様にして厚み40μmの 潤滑被膜を形成した。

 (対照例)
 実施例1の対照例と同様であった(コンパウ ドグリスを使用)。
 (試験10-比較例)
 表1に示す組成BのCr-Mo鋼製の管ねじ継手に下 記の表面処理を施した。

 ボックス表面には、研削仕上げ後、厚み1 2μmの燐酸マンガン被膜(Rz:10μm)を形成し、次 で表6の試験10に示す組成を有する厚み40μm 潤滑被膜を溶剤法により形成した。ピン表 には、研削仕上げ後、ボックス表面と同様 潤滑被膜を形成した。

 (試験11-比較例)
 潤滑被膜を表6の試験11に示す組成に変更し 以外は試験10と同様であった。
 (試験12-比較例)
 表1に示す組成Aの炭素鋼製の管ねじ継手に 記の表面処理を施した。

 ボックス表面には、研削仕上げ後、厚み1 5μmの燐酸マンガン被膜(Rz:12μm)を形成し、次 で表6の試験12に示す組成を有する厚み40μm 潤滑被膜を上記加熱法により形成した。ピ 表面には、研削仕上げ後、ボックス表面と 様に潤滑被膜を形成した。

 表7に示すように、本発明に従った試験1~9 では、締付け・緩め試験において、10回の締 け・緩め中に僅かな焼付きが発生する場合 あっても、いずれ手入れにより10回まで締 け・緩めができた。この結果は、耐焼付き 能としては問題ないレベルである。軽微の 付きは、管ねじ継手の鋼種が焼付きの起こ 易い13Cr鋼又は高合金鋼である場合に発生す 傾向があった。

 高トルク試験におけるδTの値はいずれの でも95%以上であり、多くの例で100%を超えて おり、これらの潤滑被膜がコンパウンドグリ スなみか、それを凌ぐ大きなδTを示し、高ト ルク下でもねじ無し金属接触部の降伏が起こ りにくいことがわかる。

 比較例である試験10~12では、δT又は耐焼付 性の少なくとも一方が不十分であった。
 管ねじ継手に対して必要とされる防錆性に して、上記各例に対して実施例1に記載した のと同様にして試験したところ、試験1~9のい ずれの例でも錆の発生がないことを確認した 。

 本実施例は、任意成分の炭酸マグネシウ を含有する潤滑被膜を例示する。試験に使 した管ねじ継手の材質と寸法は、実施例1と 同じである。ピン表面及びボックス表面の下 地処理法及び潤滑被膜の組成はそれぞれ表8 び表9に示す。

 溶剤法における溶剤の使用量は20質量部で った。加熱法による潤滑被膜の形成は、実 例2と同様に実施した(組成物と表面を130℃加 熱、保温スプレーガンを使用)。
 締付け・緩め試験及び高トルク試験は実施 2と同様に行った。得られた試験結果は表10 まとめて示す。表10には、高トルク試験で 定されたTsの最適締付けトルク(20kN・m)に対 る割合(%)も併記する。

 (試験1~6)
 表1に示す組成BのCr-Mo鋼製の管ねじ継手に下 記の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げの後、厚み1 2μmの燐酸マンガン被膜(Rz:10μm)を形成し、次 で表9に示す組成を有する潤滑被膜を溶剤法 により形成した。

 ピン表面には、研削仕上げの後、厚み12μm 燐酸亜鉛被膜(Rz:8μm)を形成し、次いでボッ ス表面と同様に潤滑被膜を形成した。
 形成された潤滑被膜の厚みは次の通りであ た。

 試験1-ボックス:40μm;ピン:42μm
 試験2-ボックス:42μm;ピン:45μm
 試験3-ボックス:50μm;ピン:46μm
 試験4-ボックス:30μm;ピン:40μm
 試験5-ボックス:55μm;ピン:50μm
 試験6-ボックス:30μm;ピン:30μm。

 (試験7)
 表1に示す組成Cの13%Cr鋼製のねじ継手に下記 の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げ後、電気め きによりまずNiストライクめっき、次にCuめ っきを施して、合計12μmの厚みのめっき皮膜( Rz:3μm)を形成した。このめっき表面の上に上 加熱法により表9の試験7に示す組成を有す 厚み44μmの潤滑被膜を形成した。ピン表面に は、サンドブラストによりRzを10μmとした後 ボックス表面と同様にして厚み27μmの潤滑被 膜を形成した。

 (試験8)
 表1に示す組成Dの高合金製のねじ継手に下 の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げ後、電気め きによりまずNiストライクめっき、次にのCu -Sn-Zn合金めっきを施して、合計7μmの厚みの っき皮膜(Rz:2μm)を形成した。このめっき表 の上に上記加熱法により表9の試験8に示す組 成を有する厚み40μmの潤滑被膜を形成した。 ン表面には、サンドブラストによりRz:10μm した後、ボックス表面と同様にして厚み34μm の潤滑被膜を形成した。

 (試験9)
 表1に示す組成Aの炭素鋼製のねじ継手に下 の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げの後、厚み1 5μmの燐酸マンガン被膜(Rz:12μm)を形成し、次 で表9の試験9に示す組成を有する厚み37μmの 潤滑被膜を上記加熱法により形成した。ピン 表面には、研削仕上げの後、厚み15μmの燐酸 鉛被膜(Rz:12μm)を形成し、ボックス表面と同 様にして厚み40μmの潤滑被膜を形成した。

 (試験10)
 加熱法により形成された潤滑被膜の厚みが ボックス表面は40μm、ピン表面は42μmであっ た以外は試験9と同一であった。

 (対照例)
 実施例1の対照例と同じであった(コンパウ ドグリスを使用)。
 (試験11-比較例)
 表1に示す組成BのCr-Mo鋼製の管ねじ継手に下 記の表面処理を施した。

 ボックス表面には、研削仕上げ後、厚み1 2μmの燐酸マンガン被膜(Rz:10μm)を形成し、次 で表9の試験11に示す組成を有する厚み30μm 潤滑被膜を上記加熱法により形成した。ピ 表面には、研削仕上げ後、ボックス表面と 様にして厚み28μmの潤滑被膜を形成した。

 (試験12-比較例)
 表1に示す組成BのCr-Mo鋼製の管ねじ継手に下 記の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げ後、厚み12μ mの燐酸マンガン被膜(Rz:10μm)を形成し、次い 表9の試験12に示す組成を有する厚み40μmの 滑被膜を溶剤法により形成した。ピン表面 は、研削仕上げ後、ボックス表面と同様の 滑被膜を形成した。

 (試験13-比較例)
 表1に示す組成Aの炭素鋼製の管ねじ継手に 記の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げ後、厚み15μ mの燐酸マンガン被膜(Rz:12μm)を形成し、次い 表9の試験13に示す組成を有する厚み32μmの 滑被膜を溶剤法により形成した。ピン表面 は、研削仕上げ後、ボックス表面と同様に て、厚み34μmの潤滑被膜を形成した。

 表10に示すように、本発明に従った試験1~ 10では、締付け・緩め試験において、10回の 付け・緩め中に僅かな焼付きが発生する場 があっても、いずれ手入れにより10回まで締 付け・緩めができた。この結果は、耐焼付き 性能としては問題ないレベルである。軽微の 焼付きは、管ねじ継手の鋼種が焼付きの起こ り易い13Cr鋼又は高合金鋼である場合に発生 る傾向があった。

 高トルク試験におけるδTの値はいずれの でも95%以上であり、多くの例で100%を超えて おり、これらの潤滑被膜がコンパウンドグリ スなみか、それを凌ぐ大きなδTを示し、高ト ルク下でもねじ無し金属接触部の降伏が起こ りにくいことがわかる。

 比較例である試験11~13では、δT又は耐焼付 性の少なくとも一方が不十分であった。
 管ねじ継手に対して必要とされる防錆性に して、上記各例に対して実施例1に記載した のと同様にして試験したところ、試験1~10の ずれの例でも錆の発生がないことを確認し 。

 本実施例は、炭水化物を含有する潤滑被 を例示する。試験に使用した管ねじ継手の 質と寸法は、実施例1と同じである。ピン表 面及びボックス表面の下地処理法及び潤滑被 膜の組成はそれぞれ表11及び表12に示す。

 溶剤法における溶剤の使用量は30質量部で った。加熱法による潤滑被膜の形成は、実 例2と同様に実施した(組成物と表面を130℃加 熱、保温スプレーガンを使用)。
 締付け・緩め試験及び高トルク試験は実施 2と同様に行った。得られた試験結果は表13 まとめて示す。表13には、高トルク試験で 定されたTsの最適締付けトルク(20kN・m)に対 る割合(%)も併記する。

 (試験1)
 表1に示す組成Aの炭素鋼製の管ねじ継手に 記の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げの後、厚み1 2μmの燐酸マンガン被膜(Rz:10μm)を形成し、次 で、表12の試験1に示す組成を有する厚み50μ mの潤滑被膜を溶剤法により形成した。ピン 面には、研削仕上げの後、厚み12μmの燐酸亜 鉛被膜(Rz:8μm)を形成し、次いでボックス表面 と同様に潤滑被膜を形成した。

 (試験2)
 表1に示す組成Cの13%Cr鋼製の管ねじ継手に下 記の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げ後、電気め きによりまずNiストライクめっき1μm、次にC uめっき12μmを施して、合計13μm厚のめっき被 (Rz:3μm)を形成した。を形成した。このめっ 被膜上に、表12の試験2に示す組成を有する み52μmの潤滑被膜を溶剤法により形成した ピン表面には、サンドブラストによりRz:を10 μmとした後、ボックス表面と同様にして厚み 50μmの潤滑被膜を形成した。

 (試験3)
 表1に示す組成BのCr-Mo鋼製のねじ継手に下記 の表面処理を施した。
 ボックス表面には、研削仕上げの後、電気 っきによりまずNiストライクめっき、次にCu -Sn-Zn合金めっきを施して、Niストライクめっ 1μmとCu-Sn-Zn合金めっき7μmの合計8μm厚のめ き被膜(Rz:2μm)を形成した。このめっき被膜 に、表12の試験3に示す組成を有する厚み100μ mの潤滑被膜を溶剤法により形成した。ピン 面には、研削仕上げの後、厚み12μmの燐酸亜 鉛被膜(Rz:8μm)を形成し、次いでボックス表面 と同様に潤滑被膜を形成した。

 (試験4)
 潤滑被膜の形成法を加熱法に変更した以外 試験1と同様に処理して、厚み50μmの潤滑被 をボックス表面及びピン表面に形成した。

 (試験5)
 潤滑被膜の形成法を加熱法に変更した以外 試験1と同様に処理して、ボックス表面には 厚み80μm、ピン表面には厚み50μmの潤滑被膜 形成した。

 (試験6)
 潤滑被膜の形成法を加熱法に変更した以外 試験1と同様に処理して、厚み40μmの潤滑被 をボックス表面及びピン表面に形成した。

 (対照例)
 実施例1の対照例と同じであった(コンパウ ドグリスを使用)。
 (試験7-比較例)
 表1に示す組成BのCr-Mo鋼製のねじ継手に下記 の表面処理を施した。

 ボックス表面には、研削仕上のげ後、厚 12μmの燐酸マンガン被膜(Rz:10μm)を形成し、 いで表12の試験7に示す組成の厚み80μmの潤 被膜を溶剤法により形成した。

 ピン表面には、研削仕上げ後、ボックス表 と同様の潤滑被膜を形成した。
 (試験8-比較例)
 表1に示す組成Aの炭素鋼製のねじ継手に下 の表面処理を施した。

 ボックス表面には、研削仕上げの後、厚 15μmの燐酸マンガン被膜(Rz:12μm)を形成し、 いで、表12の試験8に示す組成の厚み50μmの 滑被膜を加熱法により形成した。

 ピン表面には、研削仕上げ後、ボックス表 と同様の潤滑被膜を形成した。
 表13に示すように、本発明に従った試験1~6 は、締付け・緩め試験における10回の締付け ・緩め中に焼付きの発生はなく、耐焼付き性 は非常に良好であった。高トルク試験におけ るδTの値はいずれの例でも95%以上で、1例を いて100%を超えており、これらの潤滑被膜が ンパウンドグリスなみか、それを凌ぐ大き δTを示し、高トルク下でもねじ無し金属接 部の降伏が起こりにくいことがわかる。

 比較例である試験7~8では、耐焼付き性は同 に非常に良好であったが、δTが非常に小さ 、締付けトルクが高くなるとねじ無し金属 触部が降伏し易くなる。
 管ねじ継手に対して必要とされる防錆性に して、上記各例に対して実施例1に記載した のと同様にして試験したところ、試験1~6のい ずれの例でも錆の発生がないことを確認した 。

 以上に、本発明を現時点で好ましいと考 られる実施形態に関連して説明したが、本 明は以上に開示された実施形態に限定され ものではない。特許請求の範囲及び明細書 体から読み取れる発明の技術思想に反しな 範囲で変更を加えることが可能であり、そ ような変更を伴うねじ継手もまた本発明の 術的範囲に包含されるものとして理解され ければならない。