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Patent Searching and Data


Title:
PIPE SCREW JOINT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/072486
Kind Code:
A1
Abstract:
A pipe screw joint constituted of a pin and a box each having a contact surface having a threaded part and a thread-free metal contact part. A solid anticorrosive coating film which is made mainly of an ultraviolet-cured resin and is preferably transparent is formed on the contact surface of the pin. A solid lubricating coating film exhibiting a plastic or viscoplastic rheological behavior is formed on the contact surface of the box preferably from a composition comprising a thermoplastic polymer, a wax, a metal soap, a corrosion inhibitor, a water-insoluble liquid resin, and a solid lubricant by the hot-melt method.

Inventors:
GOTO KUNIO (JP)
KAMIMURA TAKAYUKI (JP)
TAKAHASHI MASARU (JP)
MATSUMOTO KEISHI (JP)
IWAMOTO MICHIHIKO (JP)
IMAI RYUICHI (JP)
RAI STEPHANIE (FR)
Application Number:
PCT/JP2008/071856
Publication Date:
June 11, 2009
Filing Date:
December 02, 2008
Export Citation:
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Assignee:
SUMITOMO METAL IND (JP)
VALLOUREC MANNESMANN OIL & GAS (FR)
GOTO KUNIO (JP)
KAMIMURA TAKAYUKI (JP)
TAKAHASHI MASARU (JP)
MATSUMOTO KEISHI (JP)
IWAMOTO MICHIHIKO (JP)
IMAI RYUICHI (JP)
RAI STEPHANIE (FR)
International Classes:
F16L15/04; B05D7/24; C09D5/08; C09D7/48; C09D201/00
Domestic Patent References:
WO2006104251A12006-10-05
WO2007042231A22007-04-19
WO2006104251A12006-10-05
WO2007042231A22007-04-19
WO2006075774A12006-07-20
WO2007042231A22007-04-19
Foreign References:
JPH01199088A1989-08-10
JP2004053013A2004-02-19
JP3656481B22005-06-08
JP2003074763A2003-03-12
Other References:
See also references of EP 2216576A4
Attorney, Agent or Firm:
HIROSE, Shoichi (4-2 Nihonbashi Honcho 4-chome, Chuo-k, Tokyo 23, JP)
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Claims:
 ねじ部とねじ無し金属接触部とを有する接触表面をそれぞれ備えたピンとボックスとから構成される管ねじ継手であって、ボックスの接触表面が最上層として、塑性もしくは粘塑性型レオロジー挙動を有する固体潤滑被膜を有し、ピンの接触表面が最上層として紫外線硬化樹脂を主成分とする固体防食被膜を有することを特徴とする管ねじ継手。
 前記固体防食被膜が2層以上の紫外線硬化樹脂層からなる、請求項1に記載の管ねじ継手。 
 前記ピンの接触表面およびボックスの接触表面の少なくとも一方が、ブラスト処理、酸洗、リン酸塩化成処理、蓚酸塩化成処理、硼酸塩化成処理、金属質めっき、およびそれらの2種以上を組み合わせた複合処理から選ばれた方法により予め下地処理が施されている、請求項1または2に記載の管ねじ継手。
 前記固体潤滑被膜が溶融状態の組成物からのスプレイ塗布により形成されたものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の管ねじ継手。
 前記組成物が、熱可塑性ポリマー、ワックス、金属石鹸、および固体潤滑剤を含有する、請求項4に記載の管ねじ継手。
 前記組成物が、さらに腐食抑制剤を含有する、請求項5に記載の管ねじ継手。
 前記組成物が、さらに腐食抑制剤および水不溶性液状樹脂を含有する、請求項5に記載の管ねじ継手。
 前記固体防食被膜が、紫外線硬化樹脂に加えて、滑剤、繊維状フィラーおよび防錆剤から選ばれた少なくとも1種の添加成分を含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の管ねじ継手。
 前記滑剤がワックスである、請求項8に記載の管ねじ継手。
 前記固体防食被膜が顔料、染料、および蛍光材から選ばれた少なくとも1種の添加剤を含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の管ねじ継手。
 油井管の締結に使用される、請求項1~10のいずれか1項に記載の管ねじ継手。
 ねじ部とねじ無し金属接触部とを有する接触表面をそれぞれ備えたピンとボックスとから構成される管ねじ継手のボックスの接触表面に塑性もしくは粘塑性型レオロジー挙動を有する固体潤滑被膜を形成し、ピンの接触表面には紫外線硬化型樹脂を主成分とする組成物を塗布した後に紫外線照射を行って固体防食被膜を形成することを特徴とする、管ねじ継手の表面処理方法。
 前記固体防食被膜の形成が、紫外線硬化型樹脂を主成分とする組成物の塗布とその後の紫外線照射を繰り返すことによりにより2層以上の紫外線硬化樹脂層を形成することからなる、請求項12に記載の方法。
 前記ピンの接触表面およびボックスの接触表面の少なくとも一方が、ブラスト処理、酸洗、リン酸塩化成処理、蓚酸塩化成処理、硼酸塩化成処理、金属質めっき、およびそれらの2種以上を組み合わせた複合処理から選ばれた方法により下地処理された表面である、請求項12または13に記載の方法。
 前記固体潤滑被膜の形成が溶融状態の組成物からのスプレイ塗布により行われる、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
 前記組成物が、熱可塑性ポリマー、ワックス、金属石鹸、および固体潤滑剤を含有する、請求項15に記載の方法。
 前記組成物が、さらに腐食抑制剤を含有する、請求項16に記載の管ねじ継手。
 前記組成物が、さらに腐食抑制剤および水不溶性液状樹脂を含有する、請求項16に記載の管ねじ継手。
 前記固体防食被膜の形成(2層以上の紫外線硬化樹脂層を形成する場合には少なくとも一層の紫外線硬化樹脂層の形成)に使用される組成物が、紫外線硬化樹脂に加えて、滑剤、繊維状フィラーおよび防錆剤から選ばれた少なくとも1種の添加成分を含有する、請求項12~18のいずれか1項に記載の方法。
 前記滑剤がワックスである、請求項19に記載の方法。
 前記固体防食被膜の形成(2層以上の紫外線硬化樹脂層を形成する場合には少なくとも一層の紫外線硬化樹脂層の形成)に使用される組成物が、顔料、染料、および蛍光材から選ばれた少なくとも1種の添加剤を含有する、請求項12~20のいずれか1項に記載の方法。
 
Description:
管ねじ継手

 本発明は、鋼管、特に油井管(OCTG)の締結 使用される管ねじ継手と、その表面処理方 に関する。本発明に係る管ねじ継手は、油 管の締結の際に従来はねじ継手に塗布され きたコンパウンドグリスを塗布せずに、優 た耐焼付き性と耐食性を確実に発揮するこ ができる。したがって、この管ねじ継手は コンパウンドグリスに起因する地球環境お び人体への悪影響を避けることができる。

 原油やガス油の採掘のための油井掘削に いるチュービングやケーシングといった油 管は、一般に管ねじ継手を用いて接続され 。油井の深さは、従来は2000~3000mであったが 、近年の海洋油田などの深油井では8000~10000m はそれ以上に達することがある。

 油井管締結用のねじ継手には、使用環境 で油井管および継手自体の重量に起因する 方向引張力といった荷重、内外面圧力など 複合した圧力、さらには地中の熱が作用す ため、このような過酷な環境下においても 損することなく、気密性を保持することが 求される。

 油井管の締結に使用される典型的なねじ 手はピン-ボックス構造をとり、ピンは、例 えば油井管の端部に形成された雄ねじを有す る継手要素で、ボックスは、例えばねじ継手 部品(カップリング)の内面に形成された雌ね とを有する継手要素である。プレミアムジ イントと呼ばれる気密性に優れたねじ継手 は、ピンの雄ねじの先端と、ボックスの雌 じの基部には、それぞれねじ無し金属接触 が形成されている。ねじ無し金属接触部は ピンおよびボックスの円周面に形成された タルシール面とねじ継手の軸方向に略垂直 トルクショルダ面とを含みうる。油井管の 端をねじ継手部品に挿入し、ピンの雄ねじ ボックスの雌ねじとを締付けることにより ピンおよびボックスのねじ無し金属接触部 士を所定の干渉量で当接させてメタルシー 部を形成することで、気密性が確保される

 チュービングやケーシングの油井への降 作業時には、種々のトラブルにより一度締 した継手を緩め、それらを一旦油井から引 上げた後、再度締結して降下させることが る。API(米国石油協会)は、チュービング継 においては10回の、ケーシング継手において は3回の、メイクアップ(締付け)およびブレー クアウト(緩め)を行っても、ゴーリングと呼 れる焼付きの発生がなく、気密性が保持さ るという意味での耐焼付き性を要求してい 。

 締付けの際には、耐焼付き性と気密性の 上を図るために「コンパウンドグリス」と ばれる重金属粉を含有する粘稠な液状潤滑 がねじ継手の接触表面(ピンおよびボックス のねじ部とねじ無し金属接触部)に塗布され きた。API規格BUL 5A2にそのようなコンパウン ドグリスが規定されている。コンパウンドグ リスはまた、塗布した接触表面における錆の 発錆を防止するという耐食性能も発揮する。

 このコンパウンドグリスの保持性の向上 摺動性を改善する目的で、ねじ継手の接触 面に窒化処理、亜鉛系めっきや分散めっき 含む各種のめっき、リン酸塩化成処理とい た多様な1層または2層以上の表面処理を施 ことが提案されている。しかし、コンパウ ドグリスの使用は、次に述べるように、環 や人体への悪影響が懸念されるという問題 ある。

 コンパウンドグリスは亜鉛、鉛、銅など 重金属粉を多量に含有している。ねじ継手 締結時に、塗布されたグリスが洗い流され り、外面にあふれ出したりして、特に鉛等 有害な重金属により、環境、特に海洋生物 悪影響を及ぼす可能性がある。また、コン ウンドグリスの塗布作業は作業環境を悪化 せ、人体への有害性も懸念される。

 近年、北東大西洋の海洋汚染防止に関す オスパール条約(オスロ・パリ条約、OSPAR)が 1998年に発効したのを契機に、地球規模での 境に対する厳しい規制が進み、コンパウン グリスも一部地域では既にその使用が規制 れようとしている。したがって、ガス井や 井の掘削作業においては、環境や人体への 影響を避けるために、コンパウンドグリス 使用せずに優れた耐焼付き性を発揮できる じ継手が求められるようになってきた。

 コンパウンドグリスの別の問題点として 黒鉛に代表される固体潤滑剤を多量に含有 るため、被膜が透明ではないことが挙げら る。管外面にねじ部を有するピンは、管内 にねじ部を有するボックスより、搬送中や 結時のトラブル時に損傷をより受けやすい で、締結作業前にピンのねじ部の損傷の有 を検査することが多い。コンパウンドグリ を塗布した場合、この検査時にはピンを洗 してコンパウンドグリスを洗い流し、検査 に再びコンパウンドグリスを塗布する必要 あった。この作業は上記のように環境に有 であり、かつ手間がかかる。潤滑被膜が透 であれば、被膜を除去せずにねじ部の損傷 無を検査することができ、検査作業の手間 大幅に軽減できる。

 コンパウンドグリスを塗布せずに油井管 締結に使用できるねじ継手として、本出願 らは先に、WO2006/104251号公報において、ピン とボックスの少なくとも一方の部材の接触表 面が、粘稠液体または半固体の潤滑被膜と、 その上に形成された乾燥固体被膜とからなる 2層被膜で被覆されている管ねじ継手を提案 た。乾燥固体被膜は、アクリル樹脂などの 硬化型樹脂被膜または紫外線硬化型樹脂被 から形成しうる。粘稠液体または半固体の 滑被膜はべたつきがあり、異物が付着しや いが、その上に乾燥固体被膜を形成するこ により、べたつきが解消される。乾燥固体 膜は、ねじ継手の締結時に破壊されるため その下の潤滑被膜の潤滑性を妨げることが い。この管ねじ継手は、潤滑性能に優れ、 焼付き性は十分であるが、潤滑被膜とその に形成される乾燥固体被膜の2層構造の被膜 形成する必要があり、コスト高となる。ま ねじ締結時に2層被膜が破壊される際、フレ ークが出てくるため、その後の外観があまり よくない。また、被膜の透明性も低い。

 やはり本出願人らによるWO2007/04231号公報 は、塑性もしくは粘塑性型のレオロジー挙 (流動特性)を示す固体マトリックス中に固 潤滑剤粒子を分散させてなる、べたつきの い薄い潤滑被膜を、ピンおよびボックスの じ部に形成した管ねじ継手が開示されてい 。マトリックスは好ましくは融点が80~320℃ 範囲内であり、溶融状態でのスプレイ塗布( ットメルトスプレイ法)、粉末を用いた溶射 、あるいは水性エマルジョンのスプレイ塗布 により形成される。ホットメルト法に使用さ れる組成物は、例えば、熱可塑性ポリマーと してポリエチレン、潤滑成分としてワックス (例、カルナウバワックス)および金属石鹸(例 、ステアリン酸亜鉛)、並びに腐食抑制剤と てカルシウムスルホネートを含有する。こ 管ねじ継手も、やはり潤滑性能や耐食性に れている。しかし、被膜が透明でないため ピンの外面ねじがダメージを受けたために 発的にゴーリングを生じるような事態に備 るための、ピンの外面ねじのダメージの有 の検査が難しい。

 WO2006/75774号公報には、ピンとボックスの なくとも一方の部材の接触表面が、潤滑性 末と結合剤とを含む固体潤滑被膜と、その に形成された固体粒子を含有しない固体防 被膜とからなる2層被膜で被覆されている、 管ねじ継手が記載されている。この管ねじ継 手は、耐食性は非常に高いが、固体潤滑被膜 が塑性もしくは粘塑性型のレオロジー挙動を 実質的に有していない硬質の固体被膜である ため、その上に形成された固体防食被膜がね じ継手の締付け時に破壊されても、その破片 が下の固体潤滑被膜に埋め込まれにくく、潤 滑性能がやや低くなる。

 本発明は、コンパウンドグリスを使用せ に、錆の発生を抑制し、優れた耐焼付き性 気密性を示し、かつ表面にべたつきがなく 外観や検査性に優れた、ピンとボックスに 一層ずつの表面処理被膜が形成された管ね 継手とその表面処理方法とを提供する。

 上記目的は、ピンの接触表面は紫外線硬 樹脂を主成分とする固体防食被膜で、ボッ スの接触表面は塑性または粘塑性型のレオ ジー挙動を有し、常圧下では流動しないが 圧下で流動しうる固体潤滑被膜(例えば、ホ ットメルト型組成物から形成されるような) 被覆することにより達成される。

 本発明は、ねじ部とねじ無し金属接触部 を有する接触表面をそれぞれ備えたピンと ックスとから構成される管ねじ継手であっ 、ボックスの接触表面が最上層として、塑 もしくは粘塑性型のレオロジー挙動(plastic  or viscoplastic rheological behavior)を有する固体 滑被膜を有し、ピンの接触表面が最上層と て紫外線硬化樹脂を主成分とする固体防食 膜を有することを特徴とする管ねじ継手で る。

 ここで「固体潤滑被膜」および「固体防食 膜」とは、該被膜が常温で固体であること 意味し、本発明では具体的には40℃以下で 膜が固体であることを意味する。
 別の側面において、本発明は、ねじ部とね 無し金属接触部とを有する接触表面をそれ れ備えたピンとボックスとから構成される ねじ継手の表面処理方法であって、ボック の接触表面に塑性もしくは粘塑性型レオロ ー挙動を有する固体潤滑被膜を形成し、ピ の接触表面には紫外線硬化型樹脂を主成分 する組成物を塗布した後に紫外線照射を行 て固体防食被膜を形成することを特徴とす 方法である。

 本発明の好適態様として、次の態様を挙げ ことができる:
 ・前記固体防食被膜が紫外線硬化樹脂を主 分とする2層以上からなる;
 ・前記ピンの接触表面およびボックスの接 表面の少なくとも一方が、ブラスト処理、 洗、リン酸塩化成処理、蓚酸塩化成処理、 酸塩化成処理、金属質めっき、およびそれ の2種以上を組み合わせた複合処理から選ば れた方法により予め下地処理されている;
 ・前記固体潤滑被膜が溶融状態の組成物か のスプレイ塗布により形成されたものであ ;
 ・前記組成物が、熱可塑性ポリマー、ワッ ス、金属石鹸、および固体潤滑剤を含有す ;
 ・前記組成物が、さらに腐食抑制剤を含有 る;
 ・前記組成物が、さらに腐食抑制剤および 不溶性液状樹脂を含有する;
 ・前記固体防食被膜が、紫外線硬化樹脂に えて、滑剤、繊維状フィラー、および/また は防錆剤を含有する;
 ・前記滑剤がワックスである;
 ・前記固体防食被膜が、紫外線硬化樹脂に えて、顔料、染料、および蛍光材から選ば た少なくとも1種の添加剤を含有する;
 ・前記管ねじ継手が油井管の締結に使用さ る。

 本発明によると、ピン-ボックス構造の管 ねじ継手の一方の要素であるピンの接触表面 (ねじ部およびねじ無し金属接触部)は紫外線 化型樹脂を主成分とする固体防食被膜で、 方の要素であるボックスの接触表面はホッ メルト型といった高い面圧下で流動しうる 性または粘塑性型のレオロジー挙動を有す 固体潤滑被膜で被覆することによって、コ パウンドグリスを塗布せずに、各接触表面 一層ずつの比較的安価な表面処理被膜を形 するだけで、管ねじ継手の接触表面に十分 耐食性と耐焼付き性(潤滑性)を付与するこ ができる。

 すなわち、上記固体潤滑被膜は高圧下で 動しうるため、ボックスの接触表面だけに 用するにもかかわらず、高い潤滑性能を示 、締付けと緩めを繰り返した場合でも管ね 継手の焼付きを防止することができる。一 、ピンの接触表面に形成した紫外線硬化型 脂を主成分とする固体防食被膜は硬質であ ので、この被膜を有するピンを上記潤滑被 を有するボックスと締めつけた場合、管ね 継手の焼付き性に悪影響を及ぼさない。

 また、紫外線硬化型樹脂を主成分とする 体防食被膜は、透明性が高いので、外傷を けやすいピンのねじ部の損傷の有無を、表 処理被膜を除去せずに検査することができ 締結作業前のねじ検査の負担を大幅に軽減 ることができる。

 さらに、固体防食被膜はもちろん、上記 オロジー挙動を有する、例えばホットメル 法により形成される固体潤滑被膜も、表面 べたつきがないので、ねじ継手が締結され までの間にねじ継手の接触表面に錆、酸化 ケール、ブラスト砥粒などの異物が付着し も、エアーブローなどの方法により容易に 物のみを取り除くことができる。その結果 継手締結時に組立の不具合による継手の偏 、傾き、異物の混入などのために局部的に 圧が過大となり、そのために塑性変形が起 るような過酷な潤滑条件下でも、焼付きを 止することができる。また、ねじ締結時の レークの発生も抑制される。

鋼管出荷時の鋼管とカップリングの組 立て構成を模式的に示す。 管ねじ継手の締付け部を模式的に示す 本発明にしたがって管ねじ継手の接触 面に形成された被膜を示す説明図であり、 3(a)は接触表面自体が粗面化された例を、図 3(b)は接触表面に粗面化のための下地処理被 を形成した例をそれぞれ示す。

 以下、本発明の管ねじ継手の実施の形態を 細に説明する。
 図1は、出荷時の油井管用鋼管とねじ継手部 品の状態を示す典型的な管ねじ継手の組み立 て構成を模式的に示す。ある鋼管Aの両端に 外面に雄ねじ部3aを有するピン1が形成され ねじ継手部品(カップリング)Bの両側には、 面に雌ねじ部3bを有するボックス2が形成さ ている。ピンは第1管状部品(図示例では鋼管 )の端部に形成された雄ねじを有するねじ継 要素を、ボックスは第2管状部品(図示例では カップリング)の端部に形成された雌ねじを するねじ継手要素をそれぞれ意味する。鋼 Aの一端には予めカップリングBが締付けられ ている。図示していないが、締付けられてい ない鋼管AのピンとカップリングBのボックス は、それぞれのねじ部の保護のためのプロ クターが出荷前に装着される。プロテクタ はねじ継手の使用前に取り外される。

 典型的には、図示のように、ピンは鋼管 両端の外面に、ボックスは別部品であるカ プリングの内面に形成される。しかし、逆 、鋼管の両端の内面をボックスとし、カッ リングの外面をピンとすることも原理的に 可能である。また、カップリングを利用せ 、鋼管の一端をピン、他端をボックスとし インテグラル方式のねじ継手もある。その 合は第1管状部品は第1の鋼管、第2管状部品 第2の鋼管となる。本発明に係る管ねじ継手 はこれらのいずれの種類であってもよい。以 下では、ピンが鋼管の両端の外面に、ボック スがカップリングの内面に形成される、図1 示す種類の管ねじ継手を例にとって、本発 を説明する。

 図2は、代表的な管ねじ継手の構成を模式 的に示す。管ねじ継手は、鋼管Aの端部の外 に形成されたピン1と、カップリングBの内面 に形成されたボックス2とから構成される。 ン1は雄ねじ部3aと鋼管先端に位置するメタ シール面4aとトルクショルダー部5を備える これに対応して、ボックス2は、雌ねじ部3b 、その内側のメタルシール面4bとトルクショ ルダー部5を備える。ピンおよびボックスの れぞれメタルシール面およびトルクショル ー部がねじ無し金属接触部を構成する。

 ピン1およびボックス2のそれぞれのねじ 3a、3bとメタルシール面4a、4bとトルクショル ダー部5が管ねじ継手の接触表面を構成する この接触表面には、耐焼付き性、気密性、 食性が要求される。従来は、そのために、 金属粉を含有するコンパウンドグリスを塗 していたが、前述したように、人体や環境 の問題、また保管期間中や異物付着による 能低下により、実用上の耐焼付き性能に問 を抱えていた。また、締付け前のねじ部の 査時にはコンパウンドグリスを洗い落とし 、検査後の再塗布する必要性があった。

 本発明によれば、図3にメタルシール面に ついて示すように、ピンの接触表面は、鋼素 地30aの上に、粗面化のために任意に設けても よい下地処理層の31aと、その上の紫外線硬化 樹脂を主成分とする固体防食被膜32とを備え 。固体防食被膜32は、紫外線硬化樹脂を主 分とする2層以上から構成してもよい。一方 ボックスの接触表面は、鋼素地30bの上に、 面化のために任意に設けてもよい下地処理 の31bと、その上の固体潤滑被膜33とを備え 。固体潤滑被膜は、本発明では、塑性もし は粘塑性型レオロジー挙動を有する被膜で る。このようなレオロジー挙動を示す被膜 常圧では流動しないが、高圧下では流動可 となる。すなわち、被膜の流動性が圧力に 存して著しく変動する。このような特性を する被膜は、ホットメルト型の組成物、す わち、熱可塑性ポリマーを含有する溶融状 の組成物をスプレイガンにより塗布するこ により形成することができる。

 また、固体防食被膜および固体潤滑被膜 それぞれピンおよびボックスの接触表面の 面を被覆すべきであるが、ピンおよび/また はボックスの接触表面の一部だけ(例えば、 じ無し金属接触部だけ)をかかる被膜で被覆 る場合をも本発明は包含する。

 [下地処理]
 管ねじ継手の接触表面であるねじ部やねじ し金属接触部はねじ切りを含む切削加工に り形成され、一般にその表面粗さは3~5μm程 である。接触表面の表面粗さをこれより大 くすると、その上に形成される被膜の密着 を高めることができ、結果として耐焼付き や耐食性といった性能を改善することがで る。そのために、ピンおよびボックスの少 くとも一方の部材、好ましくは両方の部材 接触表面に、被膜形成に先立って、表面粗 を大きくすることができる下地処理を施す とが好ましい。

 そのような下地処理の例としては、形状 球状のショット材または角状のグリッド材 どのブラスト材を投射するブラスト処理、 酸、塩酸、硝酸、フッ酸などの強酸液に浸 して肌を荒らす酸洗がある。これらは、素 そのものの表面粗さを増大させることがで る処理である。

 別の下地処理の例として、リン酸塩化成処 、蓚酸塩化成処理、硼酸塩化成処理といっ 化成処理、および金属質めっきが挙げられ 。
 化成処理は、針状結晶からなる表面粗さの きな化成被膜が形成することによって、表 粗さを大きくし、その上に形成される固体 食被膜および固体潤滑被膜の密着性を高め ことができる。

 金属質めっきは耐焼付き性を高めること でき、一部の金属質めっきは表面粗さを大 くすることもできる。表面粗さを大きくで る金属質めっきとしては、電気めっき法に る銅、鉄、それらの合金などのめっき、鉄 に亜鉛もしくは亜鉛-鉄合金等を被覆した粒 子を遠心力もしくはエアー圧を利用して投射 して、亜鉛もしくは亜鉛-鉄合金粒子が堆積 た多孔質の金属被膜を形成させる亜鉛もし は亜鉛合金の衝撃めっき、ならびに金属中 固体微粒子を分散させた被膜を形成する複 金属めっきが挙げられる。

 接触表面の下地処理がいずれの方法であ ても、下地処理による粗面化により表面粗 Rzが5~40μmとなるようにすることが好ましい Rzが5μm未満では、その上に形成する被膜と 密着性が不十分になることがある。一方、R zが40μmを超えると、表面の摩擦が高くなり、 その上に形成された被膜が高面圧を受けた際 のせん断力と圧縮力に耐えられず、破壊もし くは剥離しやすくなることがある。粗面化の ための下地処理は、2種以上の処理を併用し もよい。また、ピンとボックスとで異なる 地処理を施してもよい。

 固体防食被膜または固体潤滑被膜の密着 の観点からは、多孔質被膜を形成できる下 処理が好ましい。特にリン酸マンガン、リ 酸亜鉛、リン酸鉄マンガン、もしくはリン 亜鉛カルシウムを用いたリン酸塩処理と、 撃めっきによる亜鉛もしくは亜鉛-鉄合金の 被膜の形成が下地処理として好ましい。上に 形成される被膜の密着性の観点からはリン酸 マンガン被膜が、耐食性の観点からは、亜鉛 による犠牲防食能が期待できる亜鉛もしくは 亜鉛-鉄合金の被膜が好ましい。

 固体潤滑被膜の下地処理として特に好ま いのはリン酸マンガン化成処理であり、固 防食被膜の下地処理として特に好ましいの 、リン酸亜鉛化成処理並びに衝撃めっきに る亜鉛もしくは亜鉛-鉄合金めっきである。

 リン酸塩処理により形成された被膜と衝 めっきによって形成された亜鉛もしくは亜 -鉄合金の被膜は、いずれも多孔質な被膜で ある。その上に固体防食被膜または固体潤滑 被膜を形成すると、多孔質被膜のいわゆる「 アンカー効果」により被膜の密着性が高まる 。その結果、締付け・緩めを繰り返しても固 体潤滑被膜の剥離が起こり難くなり、金属間 の直接接触が効果的に防止され、耐焼付き性 、気密性、耐食性が一層向上する。

 リン酸塩処理は、常法にしたがって、浸 またはスプレイにより実施することができ 。処理液としては、亜鉛めっき用の前に使 されている一般的な酸性リン酸塩処理液が 用できる。例えば、リン酸イオン1~150g/L、 鉛イオン3~70g/L、硝酸イオン1~100g/L、ニッケ イオン0~30g/Lからなるリン酸亜鉛系化成処理 挙げることができる。また、管ねじ継手に 用されているリン酸マンガン系化成処理液 使用できる。液温度は常温から100℃でよく 処理時間は所望の膜厚に応じて15分までの で行えばよい。被膜化を促進するため、リ 酸塩処理前に、コロイドチタンを含有する 面調整用水溶液を処理表面に供給すること できる。リン酸塩処理後、水洗もしくは湯 してから、乾燥することが好ましい。

 衝撃めっきは、粒子と被めっき物を回転 レル内で衝突させるメカニカルプレーティ グや、ブラスト装置を用いて粒子を被めっ 物に衝突させる投射めっきにより実施でき 。本発明では接触表面だけにめっきを施せ よいので、局部的なめっきが可能な投射め きを採用することが好ましい。

 例えば、鉄系の核の表面を亜鉛または亜 合金(例、亜鉛-鉄合金)で被覆した粒子から る投射材料を、被覆すべき接触表面に投射 る。粒子中の亜鉛または亜鉛合金の含有量 20~60質量%の範囲であることが好ましく、粒 の粒径は0.2~1.5mmの範囲が好ましい。投射に り、粒子の被覆層である亜鉛または亜鉛合 のみが基体である接触表面に付着し、亜鉛 たは亜鉛合金からなる多孔質の被膜が接触 面上に形成される。この投射めっきは、鋼 材質に関係なく、鋼表面に密着性のよいめ き被膜を形成することができる。

 衝撃めっきにより形成された亜鉛または 鉛合金層の厚みは耐食性と密着性の両面か 5~40μmであることが好ましい。5μm未満では 十分な耐食性が確保できないことがある。 方、40μmを超えると、その上に形成された被 膜の密着性がむしろ低下することがある。同 様に、リン酸塩被膜の厚みも5~40μmの範囲が ましい。

 また、特に固体潤滑被膜の形成前の下地 して利用した場合に耐焼付き性を高めるの 効果的な表面処理法も採用できる。例えば 金属または合金による1または2以上のめっ 層は耐焼付き性の改善に有効である。この うなめっきの例としては、Cu、Sn、もしくはN i金属による単層めっき、ならびに特開2003-747 63号公報に記載されているようなCu-Sn合金に る単層めっき、Cu層とSn層との2層めっき、さ らにはNi,Cu,Sn各層による3層めっきが挙げられ る。Cr含有量が5%以上の鋼からなる鋼管に対 ては、Cu-Sn合金めっき、Cuめっき-Snめっきの2 層めっき、Niめっき-Cuめっき-Snめっきの3層め っきが好ましい。より好ましいのは、Cuめっ -Snめっきの2層めっき、およびNiストライク っき-Cuめっき-Snめっきの3層めっき、Cu-Sn-Zn 合金めっきである。このような金属または 属合金めっきは、特開2003-74763号公報に記載 されているような方法により実施することが できる。管ねじ継手の鋼種(炭素鋼、合金鋼 高合金鋼)にかかわらず好ましいめっきは、N iストライクめっきの上にCuめっき、もしくは Cu-Snの合金めっき、もしくはCu-Sn-Znの合金め きを、合計で5~15μmの厚さで形成したもので る。より厳しい使用環境における耐焼付き を期待する場合などに最も好ましいめっき よる下地処理は、Niストライクめっきの上 Cu-Sn-Znの合金めっきを施したものである。

 [固体防食被膜]
 ピンの接触表面には、好ましくは上記のよ に下地処理、特に好ましくはリン酸亜鉛化 処理または亜鉛もしくは亜鉛-鉄合金多孔質 めっき被膜を形成する衝撃めっきによる下地 処理を施した後で、紫外線硬化樹脂を主成分 とする固体防食被膜を最表層として形成する 。

 図1に関して上述したように、管ねじ継手  は実際に使用するまでの間に、締付けが行 れていないピンおよびボックスにプロテク ーが装着されることが多い。固体防食被膜 は、少なくともプロテクター装着時に加わ 力では容易に被膜が破壊されないことと、 送や保管中に、露点の関係から凝縮した水 曝されても溶解しないこと、40℃を超える 温下でも容易には軟化しないことが要求さ る。

 本発明では、このような性質を満たす被 として、高強度の被膜を形成できることが られている、紫外線硬化樹脂を主成分とす 組成物から固体防食被膜を形成する。紫外 硬化樹脂としては、少なくともモノマー、 リゴマー、光重合開始剤から構成される公 の樹脂組成物を使用できる。紫外線を照射 れることにより光重合反応を起こし、硬化 膜を形成するものであれば、紫外線硬化樹 組成物の成分や組成には特に制限はない。

 モノマーとしては、これらに制限されな が、多価アルコールと(メタ)アクリル酸と 多価(ジもしくはトリ以上)エステルの他、各 種の(メタ)アクリレート化合物、Nービニルピ ロリドン、N-ビニルカプロラクタム、および チレンが挙げられる。オリゴマーとしては これらに限られないが、エポキシ(メタ)ア リレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポ リエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテ (メタ)アクリレート、およびシリコーン(メ )アクリレートを挙げることができる。

 有用な光重合開始剤は260~450nmの波長に吸 をもつ化合物であり、例としてはベンゾイ およびその誘導体、ベンゾフェノンおよび の誘導体、アセトフェノンおよびその誘導 、ミヒラーケトン、ベンジルおよびその誘 体、テトラアルキルチウラムモノスルフィ 、チオキサン類などを挙げることができる 特にチオキサン類を使用するのが好ましい

 紫外線硬化樹脂から形成される固体防食 膜は、そのすべり性、被膜強度、耐食性の 点から、滑剤、繊維状フィラー、および防 剤から選ばれた添加剤を被膜中に含有させ もよい。

 滑剤の例は、ワックスや、ステアリン酸 ルシウムもしくはステアリン酸亜鉛のよう 金属石鹸およびポリテトラフルオロエチレ (PTFE)樹脂である。繊維状フィラーの例は、 尾カルシウム社製「ウイスカル」のような 状炭酸カルシウムである。これらの滑剤お び繊維状フィラーから選ばれた1種または2 以上を、質量比で紫外線硬化樹脂1に対し、0 .05~0.35の量(2種以上の場合は合計量)で添加す ことができる。0.05以下だと、目的とする被 膜強度やすべり性の改善が不十分となること がある。一方、0.35を超えると、塗布液の粘 が高くなり、塗布作業性が低下したり、逆 被膜強度低下を招くことがある。

 防錆剤の例は、トリポリリン酸アルミニ ムや亜リン酸アルミニムなどである。これ の添加剤を、質量比で紫外線硬化樹脂1に対 して、最大0.10程度まで添加することができ 。

 紫外線硬化樹脂から形成される固体防食 膜は透明であるものが多い。形成された固 防食被膜の目視又は画像処理による品質検 (被膜の有無、被膜厚みの均一性/ムラなど 検査)を容易にする観点から、固体防食被膜 、可視光下または紫外光で着色した被膜と るための少なくとも1種の添加剤を含有しう る。使用する添加剤は、顔料、染料、および 蛍光材から選ぶことができる。蛍光材は、可 視光線下では被膜を着色しない場合があるが 、少なくとも紫外線下では被膜を発光させ、 着色させる。これらの添加剤は市販品を使用 すればよく、目視又は画像処理による固体防 食被膜の品質検査が可能であれば、特に制限 はない。有機と無機のいずれの材料も使用で きる。

 顔料を添加すると、固体防食被膜の透明 が低下し、又は失われる。固体防食被膜が 透明になると、下地のピンねじ部の損傷の 無の検査が困難となる。従って、顔料を使 する場合は、黄色や白色などの明度の高い の顔料が好ましい。防食性の観点から、顔 の粒径は細かいほど良く、平均粒径が5μm以 下のものを使用することが好ましい。染料は 、固体防食被膜の透明性を大きく低下させる ことはないので、例えば、赤や青などの強い 色の染料でも支障を生じない。顔料および染 料の添加量は、質量比で紫外線硬化樹脂1に して最大0.05までとすることが好ましい。0.05 を超えると防食性が低下することがある。よ り好ましい添加量は0.02以下である。

 蛍光材は、蛍光顔料、蛍光染料、および蛍 塗料に使用されている蛍光体のいずれでも い。蛍光顔料は無機蛍光顔料と昼光蛍光顔 に大別される。
 無機蛍光顔料は、例えば、硫化亜鉛若しく 硫化亜鉛カドミウム系(金属賦活剤含有)、 ロゲン化リン酸カルシウム系、希土類賦活 トロンチウムクロロアパタイト系などがあ 、それらの2種以上を混合して使用されるこ も多い。無機蛍光顔料は耐候性や耐熱性に れている。

 昼光蛍光顔料にもいくつか種類があるが その主流は蛍光染料を無色の合成樹脂に含 させて顔料化した合成樹脂固溶体型のもの ある。蛍光染料自体も使用することができ 。また、蛍光塗料や蛍光印刷インクにも各 の無機または有機蛍光顔料、特に合成樹脂 溶体型のものが使用されており、それらに まれるような蛍光体を蛍光顔料または蛍光 料として使用することができる。

 蛍光材を含有する固体防食被膜は、可視 線下では無色または有色の透明であるが、 ラックライトまたは紫外線を照射すると発 ・発色するので、被膜の有無や被膜厚みの ラなどを確認することができる。また、可 光線下では透明であるため、固体防食被膜 下の素地、すなわち、ピン表面を観察する とができる。従って、ピンのねじ部の損傷 検査が固体防食被膜により妨げられない。

 固体防食被膜への蛍光材の添加量は、質 比で紫外線硬化樹脂1に対して、最大0.05程 までとすることが好ましい。0.05を超えると 食性が低下することがある。より好ましい 量比は0.02以下である。

 固体防食被膜のみならず、下地のピンねじ の品質管理も可能にするため、被膜着色用 加剤としては、蛍光材、特に蛍光顔料を使 することが好ましい。
 紫外線硬化樹脂を主成分とする組成物(紫外 線硬化樹脂のみからなる組成物を含む)をピ の接触表面に塗布した後、紫外線を照射し 被膜を硬化させることにより紫外線硬化樹 を主成分とする固体防食被膜が形成される

 塗布と紫外線照射を繰り返すことにより 2層以上の紫外線硬化樹脂層からなる固体防 食被膜を形成してもよい。固体防食被膜をこ のように多層化すると、被膜強度がさらに高 まり、管ねじ継手の締付け時に加わる力でも 固体防食被膜が破壊されないようになり、管 ねじ継手の耐食性がさらに改善される。本発 明では、固体防食被膜の下には潤滑被膜が存 在しないので、固体防食被膜が管ねじ継手の 締付け中に破壊される必要性はなく、固体防 食被膜が破壊されない方が、管ねじ継手の耐 食性は高くなる。

 紫外線の照射は、一般市販の200~450nm域の 力波長を持つ紫外線照射装置を用いればよ 。紫外線の照射源としては、例えば、高圧 銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンラ プ、カーボンアークランプ、メタルハライ ランプ、太陽光などを挙げることができる 照射時間および照射紫外線強度は、当業者 あれば適当に設定することができる。

 固体防食被膜の膜厚(2層以上の紫外線硬 樹脂層からなる場合には合計膜厚)は、5~50μm の範囲内とすることが好ましく、より好まし くは10~40μmの範囲内である。また、相手部材 形成する固体潤滑被膜の膜厚より小さくす ことが好ましい。固体防食被膜の膜厚が薄 ぎると、防食被膜として十分に機能せず、 ねじ継手の耐食性が不十分となる場合があ 。一方、固体防食被膜の膜厚が50μmより大 くなると、図1に示すように油井管の簡単に 密性の高いプロテクターなどの保護部材を り付ける際に、固体防食被膜がプロテクタ 装着時の力で破壊されることがあり、やは 管ねじ継手の耐食性が不十分となる。また その際に摩耗粉となって環境に排出される で、作業環境が圧下する。また、固体防食 膜の膜厚が相手部材の固体潤滑被膜の膜厚 り大きいと、潤滑被膜の潤滑性能を阻害す ことがある。

 紫外線硬化樹脂を主成分とする固体防食 膜は、多くは透明被膜であるので、被膜を 去せずに素地の状態を観察することができ 締付け前のねじ部の検査を被膜の上から実 することが可能である。従って、この固体 食被膜を、ねじが外面に形成され、より損 を受けやすいピンの接触表面に形成するこ で、ピンのねじ部を損傷の有無について、 膜を残したまま簡単に検査することが可能 なる。

 [固体潤滑被膜]
 管ねじ継手による鋼管同士の締結の際に焼 きを防止するために、管ねじ継手のボック の接触表面には固体潤滑被膜を形成する。 発明では、この固体潤滑被膜が、熱硬化性 脂のマトリックス中に固体潤滑剤を分散さ た、より一般的な硬質の被膜ではなく、ホ トメルト型の被膜で代表される、室温で塑 または粘塑性のレオロジー挙動を示す被膜 ある。

 この種の固体潤滑被膜は前述したWO2007/042 31号公報に記載されており、塑性もしくは粘 性型レオロジー挙動を有するマトリックス に少量の固体潤滑剤を分散させてなる被膜 ある。この特許文献に記載されているよう 、水性エマルジョンの塗布と乾燥による方 、または溶射法、によってもこの種の固体 滑被膜を形成することができる。しかし、 ましい固体潤滑被膜の形成方法は、溶融状 の組成物をスプレイ塗布する方法である。

 好ましい固体潤滑被膜はマトリックス70~9 5質量%、固体潤滑剤5~30質量%から構成される 固体潤滑剤の割合がこのように少量である め、被膜全体としてもマトリックスの特性 ある塑性もしくは粘塑性型のレオロジー挙 を示すようになる。

 この固体潤滑被膜のマトリックス(室温で 塑性もしくは粘塑性型レオロジー挙動を有す る)は、融点が80~320℃の範囲であることが好 しい。それにより、マトリックスの融点以 の温度で溶融状態の組成物を慣用のスプレ ガンを用いたスプレイ塗布することにより ボックスの接触表面に固体潤滑被膜を形成 ることが可能となる。

 このマトリックスは、熱可塑性ポリマー、 ックス、および金属石鹸から構成されるこ が好ましく、より好ましくはさらに腐食抑 剤および水不溶性液状樹脂を含有する。
 マトリックスに使用する熱可塑性ポリマー 、好ましくはポリエチレンである。ポリエ レンは、比較的融点が低いので、150℃以下 温度でホットメルト状態でのスプレイ塗布 行うことができ、形成された被膜の潤滑性 も優れている。

 本発明において、金属石鹸とは高級脂肪 (炭素数12以上の脂肪酸)のアルカリ金属以外 の金属との塩である。金属石鹸は、管ねじ継 手の締付けや緩め時に発生した破片を捕捉し て、外部環境への排出を抑制する作用を果た す。また、被膜の滑りやすくして、摩擦係数 を低減させ、潤滑性能を高める作用も果たす 。金属石鹸はさらに塩水噴霧試験において腐 食発生時間を遅らせるという腐食抑制効果も 有する。好ましい金属石鹸はステアリン酸亜 鉛およびステアリン酸カルシウムである。

 ワックスも金属石鹸と同様の機能を果た 。従って、金属石鹸とワックスはいずれか 方だけを固体潤滑被膜に含有させることも 能であるが、固体潤滑被膜が金属石鹸とワ クスの両方を含有する方が、被膜の潤滑性 が高まるので好ましい。ワックスは融点が いので、組成物の融点、従って、スプレイ 布温度を下げるという利点もある。

 ワックスは、動物性、植物性、鉱物性お び合成ワックスのいずれでもよい。使用で るワックスとしては蜜蝋、鯨蝋(以上、動物 性)、木蝋、カルナバワックス、キャンデリ ワックス、ライスワックス(以上、植物性)、 パラフィンワックス、マイクロクリスタリン ワックス、ペトロラタム、モンタンワックス 、オゾケライト、セレシン(以上、鉱物性)、 化ワックス、ポリエチレンワックス、フィ シャー・トロプッシュワックス、アミドワ クス、硬化ひまし油(カスターワックス)(以 、合成ワックス)などがある。特に好ましい のはカルナバワックスであるが、他のワック スも使用可能である。

 ワックスと金属石鹸の質量比は、金属石鹸1 に対してワックス0.5~3の範囲内が好ましく、 の質量比はより好ましくは0.5~2であり、最 好ましくは約1である。
 腐食抑制剤としては、従来より潤滑油に腐 抑制剤として添加されている種類のものが 潤滑性能に優れているので好ましい。その の腐食抑制剤の代表例としては、Lubrizol社 らAlox TM  606なる商品名で市販されているカルシウム ルホネート誘導体、Halox社からHalox TM SZP-391なる商品名で市販されているリンケイ ストロンチウム亜鉛(Strontium zinc phosphosilicat e)、そしてKing Industries, Inc.製のNA-SUL TM  Ca/W1935などが挙げられる。固体潤滑被膜が 食抑制剤を含有することにより、その上に 体防食被膜を形成しなくても、固体潤滑被 だけで接触表面の腐食をある程度まで防止 ることができる。そのため、固体潤滑被膜 腐食抑制剤を少なくとも5質量%含有させるこ とが好ましい。

 水不溶性の液状樹脂(室温で液状の樹脂) 、組成物の溶融状態での流動性を高め、ス レイ塗布のトラブルを低減させる作用を発 する。液状樹脂は、少量の配合なら、固体 滑被膜にべとつきを生ずることはない。好 しい液状樹脂は、ポリアルキルメタクリレ ト、ポリブテン、ポリイソブテン、および リジアルキルシロキサン(液状シリコーン樹 、例えば、ポリジメチルシロキサン)から選 ばれる。なお、液状のポリジアルキルシロキ サンは界面活性剤としても作用する。

 マトリックスは上記以外に、界面活性剤 着色剤、酸化防止剤などから選ばれた添加 分を少量含有しうる。さらに、極圧剤、液 油剤なども2質量%以下のごく少量であれば マトリックス中に含有させうる。

 好ましい固体潤滑被膜のマトリックスの組 例(質量%)を示すと次の通りである:
  熱可塑性ポリマー        5~40%、
  ワックス            5~30%、
  金属石鹸            5~30%、
  腐食抑制剤           0~50%、
  水不溶性液状樹脂        0~17%、
  界面活性剤、着色剤、酸化防止剤 各0~2%
  極圧剤、液状油剤        各0~2%。

 各成分とも2種以上の材料を使用できる。
 好ましい固体潤滑被膜のマトリックスのよ 具体的な組成例(質量%)は次の通りである。

  ポリエチレンホモポリマー     5~40%、
  カルナバワックス         5~30%、
  ステアリン酸亜鉛         5~30%、
  腐食抑制剤            5~50%、
  ポリアルキルメタクリレート    0~15%、
  ポリジメチルシロキサン      0~2%
  着色剤              0~1%、
  酸化防止剤            0~1%。

 固体潤滑剤は潤滑性を有する粉末の意味で る。固体潤滑剤は、
 (1)滑り易い特定の結晶構造、例えば、六方 層状結晶構造を有することにより潤滑性を すもの(例、黒鉛、酸化亜鉛、窒化硼素)、
 (2)結晶構造に加えて反応性元素を有するこ により潤滑性を示すもの(例、二硫化モリブ デン、二硫化タングステン、ふっ素化黒鉛、 硫化スズ、硫化ビスマス)、
 (3)化学反応性により潤滑性を示すもの(例、 或る種のチオ硫酸塩型化合物)、および
 (4)摩擦応力下での塑性または粘塑性挙動に り潤滑性を示すもの(例、ポリテトラフルオ ロエチレン<PTFE>およびポリアミド)
に大別される。

 これらのいずれも使用できるが、好まし のは(2)である。(2)の固体潤滑剤単独でもよ が、それに(1)および/または(4)の固体潤滑を 組合わせて使用するのがより好ましい。ただ し、二硫化モリブデンはやや熱安定性が低く 、また黒鉛は腐食を促進することがあるので 、それら以外のものを使用することが好まし い。

 固体潤滑被膜は、固体潤滑剤に加えて、 動性の調整のための無機粉末を含有しうる そのような無機粉末の例は、二酸化チタン 酸化ビスマスである。この無機粉末は、固 潤滑被膜中に20質量%までの量で含有させる とができる。

 固体潤滑被膜の形成は、ホットメルト法 より行うことが好ましい。この方法は、塗 用組成物(上述したマトリックスおよび固体 潤滑剤の粉末を含有する)を加熱して、マト ックスを溶融させ、溶融状態になった組成 (当然、マトリックスのみが溶融)を、一定温 度(通常は溶融状態の組成物の温度と同じ温 )の温度保持機能を有するスプレイガンから 霧することにより行われる。組成物の加熱 度は、マトリックスの融点より10~50℃高い 度とすることが好ましい。

 塗布される基体(すなわち、ボックスの接 触表面)もマトリックスの融点より高い温度 予熱しておくことが好ましい。それにより 好な被覆性を得ることができる。或いは、 布用組成物がポリジメチルシロキサンのよ な界面活性剤を少量(例、2質量%以下)含有す 場合には、基体を予熱しないか、予熱温度 マトリックスの融点より低くても、良好な 膜を形成することができる。

 塗布組成物は、適当な撹拌装置を備えた ンク内で加熱して溶融させ、コンプレッサ より計量ポンプを経てスプレイガンの噴霧 ッド(所定温度に保持)に供給して、基体に けて噴霧される。タンク内と噴霧ヘッドの 持温度は組成物中のマトリックスに融点に じて調整される。

 固体潤滑被膜の膜厚は10~150μmの範囲内と ることが好ましく、より好ましくは25~80μm 範囲内である。固体潤滑被膜の膜厚が小さ ぎると、当然ながら管ねじ継手の潤滑性が 足し、締付け時や緩め時に焼付きが起こり くなる。また、この固体潤滑被膜はある程 の防食性も備えているが、膜厚が小さすぎ と、防食性も不十分となり、ボックスの接 表面の耐食性が低下する。

 一方、固体潤滑被膜の膜厚が大きすぎる 、潤滑剤が無駄になるばかりか、本発明の 的の一つでもある環境汚染防止に逆行する また、場合によっては、締付け時に滑りが 生して、締付けが困難となることもある。

 固体潤滑被膜と固体防食被膜のいずれも 下地処理により表面粗さを大きくした接触 面の上に形成する場合には、下地のRzより きな膜厚とすることが好ましい。そうしな と、下地を完全に被覆することができない 合がある。下地が粗面である場合の膜厚は 被膜の面積、質量および密度から算出しう 被膜全体の膜厚の平均値である。

 以下の実施例により、本発明の効果を例 する。なお、以下、ピンのねじ部とねじ無 金属接触部を含む接触表面を「ピン表面」 ボックスのねじ部とねじ無し金属接触部と 含む接触表面を「ボックス表面」という。 面粗さはRzである。実施例中の%は特に指定 ない限り、質量%である。

 炭素鋼(C:0.21%、Si:0.25%、Mn:1.1%、P:0.02%、S:0. 01%、Cu:0.04%、Ni:0.06%、Cr:0.17%、Mo:0.04%)製の管ね じ継手(外径:17.78cm(7インチ)、肉厚:1.036cm(0.408 ンチ)のピン表面及びボックス表面に、以下 のようにして表面処理を施した。

 ピン表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μ m)の後、75~85℃の燐酸亜鉛用化成処理液中に10 分間浸漬して、厚さ8μmの燐酸亜鉛被膜(表面 さ8μm)を形成した。さらにその上に、市販 紫外線硬化型樹脂被膜形成用組成物(ThreeBond 製のThreeBond 3113B、エポキシ樹脂を主成分と した無溶剤タイプの紫外線硬化性樹脂塗料) 塗布し、下記条件で紫外線を照射して被膜 硬化させ、厚さ25μmの紫外線硬化型樹脂被膜 を形成した。この被膜は無色透明で、被膜の 上からピンの雄ねじ部を肉眼あるいは拡大鏡 で検査することができた。

 紫外線照射条件:
  UVランプ:空冷水銀ランプ、
  UVランプ出力:4kW、
  紫外線波長:260nm。

 ボックス表面は、機械研削仕上げ(表面粗 さ3μm)の後、80~95℃の燐酸マンガン化成処理 中に10分間浸漬して、厚さ12μmの燐酸マンガ 被膜(表面粗さ10μm)を形成した。下記組成を 有する潤滑被膜形成用組成物を撹拌機つきタ ンク内で150℃に加熱して塗布に適した粘度を 有する溶融状態にし、一方、上記のように下 地処理したボックス表面も誘導加熱により130 ℃に予熱した後、保温機能付きの噴霧ヘッド を有するスプレイガンにより溶融状態の潤滑 被膜形成用組成物を塗布した。冷却後に、厚 さ35μmの固体潤滑被膜が形成された。

 潤滑被膜形成用組成物の組成:
 ・ポリエチレンホモポリマー(CLARIANT社製LICO WAX TM  PE 520):9%、
 ・カルナバワックス:15%、
 ・ステアリン酸亜鉛:15%、
 ・液状ポリアルキルメタクリレート(ROHMAX社 製VISCOPLEX TM  6-950):5%、
 ・腐食抑制剤(LUBRIZOL社製ALOX TM  606):40%、
 ・ふっ素化黒鉛:3.5%、
 ・酸化亜鉛:1%、
 ・二酸化チタン:5%、
 ・三酸化ビスマス:5%、
 ・シリコーン(ポリジメチルシロキサン):1% 並びに
 ・酸化防止剤(Ciba-Geigy社製)
  IRGANOX TM  L150:0.3%および
  IRGAFOS TM  168:0.2%。

 ピンおよびボックスが上記のように表面 理されたねじ継手を用いて、締付け速度10rp m、締付けトルク20kN・mで繰り返しの締付けお よび緩めを10回行った。10回目の締付けの後 緩めたピンおよびボックスの接触表面の焼 き状況を調査した。その結果、10回の締付け ・緩めにおいて、焼付きの発生はなく、極め て良好であった。

 実施例1で使用したのと同じ炭素鋼製の管ね じ継手のピン表面及びボックス表面に、以下 のようにして表面処理を施した。
 ピン表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μm) 後、75~85℃の燐酸亜鉛用化成処理液中に10分 間浸漬して、厚さ8μmの燐酸亜鉛被膜(表面粗 8μm)を形成した。その上に、中国塗料(株)製 のエポキシアクリル樹脂系紫外線硬化性樹脂 塗料(無溶剤タイプ)に対して、防錆剤の亜リ 酸アルミニウムと滑剤のポリエチレンワッ スとを加えて調製した組成物(質量%で、樹 分94%、防錆剤5%、滑剤1%)を塗布し、下記条件 で紫外線を照射して被膜を硬化させ、厚さ25 mの紫外線硬化型樹脂被膜を形成した。形成 れた被膜は無色透明で、被膜の上から雄ね 部を肉眼あるいは拡大鏡で検査することが きた。

 紫外線照射条件:
  UVランプ:空冷水銀ランプ、
  UVランプ出力:4kW、
  紫外線波長:260nm。

 ボックス表面は、機械研削仕上げ(表面粗 さ3μm)の後、電気めっきによりまずNiストラ クめっき、次にCu-Sn-Zn合金めっきを施して、 合計8μm厚のめっき被膜を形成した。下記組 を有する潤滑被膜形成用組成物を撹拌機つ タンク内で120℃に加熱して塗布に適した粘 を有する溶融状態にし、一方、上記のよう 下地処理したボックス表面も誘導加熱によ 120℃に予熱した後、保温機能付きの噴霧ヘ ドを有するスプレイガンにより溶融状態の 滑被膜形成用組成物を塗布した。冷却後、 さ50μmの固体潤滑被膜が形成された。

 潤滑被膜形成用組成物の組成:
 ・ポリエチレンホモポリマー(CLARIANT社製LICO WAX TM  PE 520):9%、
 ・カルナバワックス:15%、
 ・ステアリン酸亜鉛:15%、
 ・液状ポリアルキルメタクリレート(ROHMAX社 製VISCOPLEX TM  6-950):5%、
 ・腐食抑制剤(King Industries, Inc.のNA-SUL(R)Ca/W 1935):40%、
 ・ふっ素化黒鉛:3.5%、
 ・酸化亜鉛:1%、
 ・二酸化チタン:5%、
 ・三酸化ビスマス:5%、
 ・シリコーン(ポリジメチルシロキサン):1% 並びに
 ・酸化防止剤(Ciba-Geigy社製)
  IRGANOX TM  L150:0.3%および
  IRGAFOS TM  168:0.2%。

 ピンおよびボックスが上記のように表面 理されたねじ継手を用いて、締付け速度10rp m、締付けトルク20kN・mで繰り返しの締付けお よび緩めを10回行った。10回目の締付けの後 緩めたピンおよびボックスの接触表面の焼 き状況を調査した。その結果、10回の締付け ・緩めにおいて、焼付きの発生はなく、極め て良好であった。

 13Cr鋼(C:0.19%、Si:0.25%、Mn:0.9%、P:0.02%、S:0.01 %、Cu:0.04%、Ni:0.11%、Cr:13%、Mo:0.04%)製の管ねじ 手(外径:24.448cm(9-5/8インチ)、肉厚:1.105cm(0.435 インチ)のピン表面及びボックス表面に、以 のようにして表面処理を施した。

 ピン表面は、機械研削仕上げ(表面粗さ3μ m)の後、実施例2で使用したのと同じ紫外線硬 化型塗料に、防錆剤の亜リン酸アルミニウム と滑剤のポリエチレンワックスと被膜着色用 の蛍光顔料とを添加して調製した組成物(質 %で、防錆剤5%、滑剤1%、蛍光顔料0.3%を含有 残部は樹脂分)を塗布し、下記条件で紫外線 照射して被膜を硬化させて、厚さ25μmの紫 線硬化型樹脂被膜を形成した。形成された 膜は無色透明で、被膜の上から雄ねじ部を 眼あるいは拡大鏡で検査することができた また、紫外線を照射した場合には被膜は黄 に発光したので、被膜の形成状況を容易に 察することができ、被膜がムラなく均一に 成されていることが確認された。

 紫外線照射条件:
  UVランプ:空冷水銀ランプ、
  UVランプ出力:4kW、
  紫外線波長:260nm。

 ボックス表面は、機械研削仕上げ(表面粗 さ3μm)の後、電気めっきによりまずNiストラ クめっき、次にCu-Sn-Zn合金めっきを施して、 合計8μm厚のめっき被膜を形成した。下記組 を有する潤滑被膜形成用組成物を撹拌機つ タンク内で150℃に加熱して塗布に適した粘 を有する溶融状態にし、一方、上記のよう 下地処理したボックス表面も誘導加熱によ 150℃に予熱した後、保温機能付きの噴霧ヘ ドを有するスプレイガンにより溶融状態の 滑被膜形成用組成物を塗布した。冷却後に 厚さ40μmの固体潤滑被膜が形成された。

 潤滑被膜形成用組成物の組成:
 ・ポリエチレンホモポリマー(CLARIANT社製LICO WAX TM  PE 520):10%、
 ・ブロックコポリマ-(Resine Dertolyne P2L):15%
 ・カルナバワックス:7%、
 ・ステアリン酸亜鉛:25%、
 ・液状ポリアルキルメタクリレート(ROHMAX社 製VISCOPLEX TM  6-950):8%、
 ・腐食抑制剤(Halox (R)SZP-391):15%、
 ・ふっ素化黒鉛:7%、
 ・PTFE:2%、
 ・窒化硼素:1%
 ・粘性向上剤(Displerplast):5%
 ・マイクロワックス(Micro Powders社製Polyfluo(R ) 440Xn):5%
 ピンおよびボックスが上記のように表面処 されたねじ継手を用いて、締付け速度10rpm 締付けトルク20kN・mで繰り返しの締付けおよ び緩めを10回行った。10回目の締付けの後に めたピンおよびボックスの接触表面の焼付 状況を調査した。その結果、10回の締付け・ 緩めにおいて、焼付きの発生はなく、極めて 良好であった。

 管ねじ継手としての必要とされる防錆性 ついては、別途準備した同じ鋼種のクーポ 試験片(70mm×150mm×2mm厚)に、上記各実施例に いてそれぞれボックス表面又はピン表面に 成したのと同様の表面処理(下地処理と固体 潤滑被膜または固体防食被膜の形成)を行い 湿潤試験(温度50℃、湿度98%、200時間)を実施 て評価した。その結果、全ての場合に錆の 生がないことを確認した。

 以上に、現時点で好ましいと考えられる 様について本発明を説明したが、本発明は 上に開示した態様に限られるものではない 請求の範囲および明細書から全体として理 される本発明の技術思想に反しない限り、 更を加えることが可能であり、そのように 更を行ったねじ継手も本発明の範囲内に包 される。

 例えば、上記実施例では外径7インチの管ね じ継手について説明したが、2-3/8インチから1 4インチまでの外径、炭素鋼クラスから13Cr鋼 そしてさらに高合金鋼(例えば、25Cr鋼)の鋼 、各種ねじタイプ(住友金属工業株式会社製 のVAM Connection、 VAM TOPシリーズなど)におい も同様の効果が得られることも検証済みで る。