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Title:
POLYCRYSTALLINE CUBIC BORON NITRIDE AND PRODUCTION METHOD THEREFOR
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2020/174922
Kind Code:
A1
Abstract:
Polycrystalline cubic boron nitride containing at least 96 vol% cubic boron nitride, wherein the dislocation density of the cubic boron nitride is greater than 8×1015/m2, the polycrystalline cubic boron nitride includes multiple crystal grains, and the median diameter d50 of the equivalent circle diameters of the multiple crystal grains is less than 100 nm.

Inventors:
MATSUKAWA MICHIKO (JP)
KUKINO SATORU (JP)
HIGASHI TAISUKE (JP)
ABE MACHIKO (JP)
Application Number:
PCT/JP2020/001437
Publication Date:
September 03, 2020
Filing Date:
January 17, 2020
Export Citation:
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Assignee:
SUMITOMO ELECTRIC HARDMETAL CORP (JP)
International Classes:
C04B35/5831; B23B27/14; B23B27/20; B23B51/00; B23C5/16; B23P15/28; C04B35/645
Foreign References:
JP2011098875A2011-05-19
JPH11246271A1999-09-14
JP2003192443A2003-07-09
JPH01208371A1989-08-22
JPS6117406A1986-01-25
JPS5433510A1979-03-12
Attorney, Agent or Firm:
FUKAMI PATENT OFFICE, P.C. (JP)
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Claims:
〇 2020/174922 45 卩(:170? 2020 /001437

請求の範囲

[請求項 1] 立方晶窒化硼素を 96体積%以上含む立方晶窒化硼素多結晶体であ って、

前記立方晶窒化硼素の転位密度は 8 X 1 015/ 2より大きく、 前記立方晶窒化硼素多結晶体は、 複数の結晶粒を含み、

前記複数の結晶粒の円相当径のメジアン径 50は 1 00 n 未満 である、 立方晶窒化硼素多結晶体。

[請求項 2] 前記転位密度は 9 X 1 以上である、 請求項 1 に記載の立 方晶窒化硼素多結晶体。

[請求項 3] 請求項 1又は請求項 2に記載の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 であって、

円相当径のメジアン径 90が〇. 3 以下の六方晶窒化硼素粉 末を準備する工程と、

前記六方晶窒化硼素粉末を、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温 度及び圧力を通過して、 1 500°〇以上 2200°〇以下の温度、 及び 、 1 〇〇 3以上の圧力まで加熱加圧する工程と、 を備え、

前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域は、 圧力を 〇 3とした時に、 下記式 1及び下記式 2を同時に満たす領域であり、 式 1 : ³-0· 0037丁+ 1 1. 301

式 2 : £-0. 085丁+ 1 1 7

前記加熱加圧する工程において、 前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領 域への突入温度は 500 °〇以下であり、

前記加熱加圧する工程は、 前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の 温度及び圧力で 1 〇分以上保持する工程を含む、 立方晶窒化硼素多結 晶体の製造方法。

[請求項 4] 前記突入温度は 300°〇以下である、 請求項 3に記載の立方晶窒化 硼素多結晶体の製造方法。

[請求項 5] 前記加熱加圧する工程は、 前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の 〇 2020/174922 46 卩(:170? 2020 /001437

温度及び圧力で 1 5分以上保持する工程を含む、 請求項 3又は請求項 4に記載の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法。

[請求項 6] 前記加熱加圧する工程は、 圧力を 〇 3とした時に

、 下記式 1、 下記式 2及び下記式 3を同時に満たす領域内の温度及び 圧力で 1 〇分以上保持する工程を含む、

式 1 : ³-0· 0037丁+ 1 1. 301

式 2 : £-0. 085丁+ 1 1 7

式 3 : £-0· 0037丁+ 1 1. 375

請求項 3から請求項 5のいずれか 1項に記載の立方晶窒化硼素多結 晶体の製造方法。

[請求項 7] 前記加熱加圧する工程の後に、 前記加熱加圧する工程により得られ た立方晶窒化硼素多結晶体を、 1 500°〇以上 2200°〇以下の温度 、 及び、 1 〇〇 3以上の圧力条件下で 1 0分以上 30分以下保持す る工程を備える、 請求項 3から請求項 6のいずれか 1項に記載の立方 晶窒化硼素多結晶体の製造方法。

[請求項 8] 請求項 1又は請求項 2に記載の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 であって、

熱分解窒化硼素を準備する工程と、

前記熱分解窒化硼素を、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及 び圧力を通過して、 最終焼結領域内の温度及び圧力まで加熱加圧する 工程と、 を備え、

前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域は、 圧力を 〇 3とした時に、 下記式 1及び下記式 2を同時に満たす領域であり、 式 1 : ³-0· 0037丁+ 1 1. 301

式 2 : £-0. 085丁+ 1 1 7

前記最終焼結領域は、 温度を'rc、 圧力を 〇 3とした時に、 下 記式 4、 下記式 5及び下記式 6を同時に満たす領域であり、

式 4 : ³ 1 2 〇 2020/174922 47 卩(:170? 2020 /001437

式 5 : ³-0· 0851+ 1 25. 5

式 6 : £-0· 085丁+ 1 5 1

前記加熱加圧する工程において、 前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領 域への突入温度は 500°〇以下である、 立方晶窒化硼素多結晶体の製 造方法。

[請求項 9] 前記突入温度は 300°〇以下である、 請求項 8に記載の立方晶窒化 硼素多結晶体の製造方法。

[請求項 10] 前記加熱加圧する工程の後に、 前記加熱加圧する工程により得られ た立方晶窒化硼素多結晶体を、 前記最終焼結領域内の温度及び圧力条 件下で 1 〇分以上 30分以下保持する工程を備える、 請求項 8又は請 求項 9に記載の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法。

Description:
\¥0 2020/174922 1 卩(:17 2020 /001437 明 細 書

発明の名称 : 立方晶窒化硼素多結晶体及びその製造方法 技術分野

[0001 ] 本開示は、 立方晶窒化硼素多結晶体及びその製造方法に 関する。 本出願は 、 2 0 1 9年 2月 2 8日に出願した日本特許出願である特願 2 0 1 9 - 0 3 6 2 6 2号に基づく優先権を主張する。 当該日本特許出願に記載された全て の記載内容は、 参照によって本明細書に援用される。

背景技術

[0002] 立方晶窒化硼素 (以下、 「〇巳1\1」 とも記す。 ) はダイヤモンドに次ぐ硬 度を有し、 熱的安定性及び化学的安定性にも優れる。 このため、 立方晶窒化 硼素焼結体は工具の材料として用いられてき た。

[0003] 立方晶窒化硼素焼結体としては、 バインダーを 1 〇〜 4 0体積%程度含む ものが用いられていた。 しかし、 バインダーは焼結体の強度、 熱拡散性を低 下させる原因となっていた。

[0004] この問題を解決するために、 バインダーを用いずに、 六方晶窒化硼素を超 高圧高温下で立方晶窒化硼素へ直接変換させ ると同時に焼結させることによ り、 バインダーを含まない立方晶窒化硼素焼結体 を得る方法が開発されてい る。

[0005] 特開平 1 1 —2 4 6 2 7 1号公報 (特許文献 1) には、 低結晶性の六方晶 窒化硼素を超高温高圧下で立方晶窒化硼素焼 結体に直接変換させ、 かつ焼結 させて、 立方晶窒化硼素焼結体を得る技術が開示され ている。

先行技術文献

特許文献

[0006] 特許文献 1 :特開平 1 1 —2 4 6 2 7 1号公報

発明の概要

[0007] 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体は、

立方晶窒化硼素を 9 6体積%以上含む立方晶窒化硼素多結晶体で って、 〇 2020/174922 2 卩(:170? 2020 /001437

前記立方晶窒化硼素の転位密度は 8 X 1 0 15 / 2 より大きく、 前記立方晶窒化硼素多結晶体は、 複数の結晶粒を含み、

前記複数の結晶粒の円相当径のメジアン径 50は 1 00 n 未満である 、 立方晶窒化硼素多結晶体である。

[0008] 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 は、

上記に記載の立方晶窒化硼素多結晶体の製造 方法であって、

円相当径のメジアン径 90が〇. 3 以下の六方晶窒化硼素粉末を準 備する工程と、

前記六方晶窒化硼素粉末を、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及び 圧力を通過して、 1 500 ° 〇以上 2200 ° 〇以下の温度、 及び、 1 0〇 3 以上の圧力まで加熱加圧する工程と、 を備え、

前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域は、 温度を丁 ( ° 〇 、 圧力を (〇 a) とした時に、 下記式 1及び下記式 2を同時に満たす領域であり、 式 1 : ³-0· 0037丁+ 1 1. 301

式 2 : £-0. 085丁+ 1 1 7

前記加熱加圧する工程において、 前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への 突入温度は 500 ° 〇以下であり、

前記加熱加圧する工程は、 前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度 及 び圧力で 1 0分以上保持する工程を含む、 立方晶窒化硼素多結晶体の製造方 法である。

[0009] 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 は、

上記に記載の立方晶窒化硼素多結晶体の製造 方法であって、

熱分解窒化硼素を準備する工程と、

前記熱分解窒化硼素を、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及び 圧力 を通過して、 最終焼結領域内の温度及び圧力まで加熱加圧 する工程と、 を備 え、

前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域は、 温度を丁 ( ° 〇 、 圧力を (〇 a) とした時に、 下記式 1及び下記式 2を同時に満たす領域であり、 \¥02020/174922 3 卩(:171?2020/001437

式 1 : ³-0· 0037丁+ 1 1. 301

式 2 : £-0. 085丁+ 1 1 7

前記最終焼結領域は、 温度を丁 ( ° 〇) 、 圧力を (〇 3 ) とした時に、 下記式 4、 下記式 5及び下記式 6を同時に満たす領域であり、

式 4 : ³ 1 2

式 5 : ³-0· 0851+ 1 25. 5

式 6 : £-0· 085丁+ 1 5 1

前記加熱加圧する工程において、 前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への 突入温度は 500 ° 〇以下である、 立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法である 図面の簡単な説明

[0010] [図 1]図 1は、 窒化硼素の圧力一温度相図である。

[図 2]図 2は、 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 の一例を説明する ための図である。

[図 3]図 3は、 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 の他の一例を説明 するための図である。

[図 4]図 4は、 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 の他の一例を説明 するための図である。

[図 5]図 5は、 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 の他の一例を説明 するための図である。

[図 6]図 6は、 立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法の従来例 を説明するための 図である。

発明を実施するための形態

[0011] [本開示が解決しようとする課題]

近年、 特に金型の分野において、 精密加工が増加している。 立方晶窒化硼 素多結晶体を精密加工に用いた場合、 刃先の摩耗が生じて、 工具寿命が短く なる傾向がある。 従って、 精密加工においても、 優れた工具寿命を示すこと のできる工具が求められている。 〇 2020/174922 4 卩(:170? 2020 /001437

[0012] そこで、 本目的は、 工具として用いた場合に、 特に精密加工においても、 長い工具寿命を有することのできる立方晶窒 化硼素多結晶体を提供すること を目的とする。

[本開示の効果]

本開示によれば、 立方晶窒化硼素多結晶体は、 工具として用いた場合に、 特に精密加工においても、 長い工具寿命を有することができる。

[0013] [本開示の実施形態の説明]

最初に本開示の実施態様を列記して説明する 。

[0014] ( 1 ) 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体は、 立方晶窒化硼素を 96体積% 以上含む立方晶窒化硼素多結晶体であって、

前記立方晶窒化硼素の転位密度は 8 X 1 0 15 / 2 より大きく、 前記立方晶窒化硼素多結晶体は、 複数の結晶粒を含み、

前記複数の結晶粒の円相当径のメジアン径 50は 1 00 n 未満である

[0015] 本開示によれば、 立方晶窒化硼素多結晶体は、 工具として用いた場合に、 特に精密加工においても、 長い工具寿命を有することができる。

[0016] (2) 前記転位密度は 9 X I 0 15 /〇1 2 以上であることが好ましい。 これに よると、 工具の耐摩耗性が向上する。

[0017] (3) 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 は、 上記の立方晶窒化 硼素多結晶体の製造方法であって、

円相当径のメジアン径 90が〇. 3 以下の六方晶窒化硼素粉末を準 備する工程と、

前記六方晶窒化硼素粉末を、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及び 圧力を通過して、 1 500 ° 〇以上 2200 ° 〇以下の温度、 及び、 1 0〇 3 以上の圧力まで加熱加圧する工程と、 を備え、

前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域は、 温度を丁 ( ° 〇 、 圧力を (〇 a) とした時に、 下記式 1及び下記式 2を同時に満たす領域であり、

式 1 : ³-0· 0037丁+ 1 1. 301 〇 2020/174922 5 卩(:170? 2020 /001437

式 2 : £-0. 085丁+ 1 1 7

前記加熱加圧する工程において、 前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への 突入温度は 500 ° 〇以下であり、

前記加熱加圧する工程は、 前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度 及 び圧力で 1 0分以上保持する工程を含む。

[0018] この製造方法で得られた立方晶窒化硼素多結 晶体は、 工具として用いた場 合に、 特に精密加工においても、 長い工具寿命を有することができる。

[0019] (4) 前記突入温度は 300°〇以下であることが好ましい。 これによると

、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工 具の寿命が更に向上する。

[0020] (5) 前記加熱加圧する工程は、 前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の 温度及び圧力で 1 5分以上保持する工程を含むことが好ましい これによる と、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工 具の寿命が更に向上する。

[0021] (6) 前記加熱加圧する工程は、 温度を丁 ( ° 〇 、 圧力を (〇 3 ) と した時に、 下記式 1、 下記式 2及び下記式 3を同時に満たす領域内の温度及 び圧力で 1 0分以上保持する工程を含むことが好ましい

[0022] 式 1 : 9³-0. 0037丁+ 1 1. 301

式 2 : £-0. 085丁+ 1 1 7

式 3 : £-0· 0037丁+ 1 1. 375。

[0023] これによると、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工 具の寿命が更 に向上する。

(7) 前記加熱加圧する工程の後に、 前記加熱加圧する工程により得られ た立方晶窒化硼素多結晶体を、 1 500 ° 〇以上 2200 ° 〇以下の温度、 及び 、 1 0〇 3 以上の圧力条件下で 1 0分以上 30分以下保持する工程を備え ることが好ましい。 これによると、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体を用い た工具の寿命が更に向上する。

[0024] (8) 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 は、 上記の立方晶窒化 硼素多結晶体の製造方法であって、

熱分解窒化硼素を準備する工程と、 〇 2020/174922 6 卩(:170? 2020 /001437

前記熱分解窒化硼素を、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及び 圧力 を通過して、 最終焼結領域内の温度及び圧力まで加熱加圧 する工程と、 を備 え、

前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域は、 温度を丁 ( ° 〇 、 圧力を (〇 a) とした時に、 下記式 1及び下記式 2を同時に満たす領域であり、 式 1 : ³-0· 0037丁+ 1 1. 301

式 2 : £-0. 085丁+ 1 1 7

前記最終焼結領域は、 温度を丁 ( ° 〇) 、 圧力を (〇 3 ) とした時に、 下記式 4、 下記式 5及び下記式 6を同時に満たす領域であり、

式 4 : ³ 1 2

式 5 : ³-0· 0851+ 1 25. 5

式 6 : £-0· 085丁+ 1 5 1

前記加熱加圧する工程において、 前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への 突入温度は 500°〇以下である。

[0025] この製造方法で得られた立方晶窒化硼素多結 晶体は、 工具として用いた場 合に、 特に精密加工においても、 長い工具寿命を有することができる。

[0026] (9) 前記突入温度は 300°〇以下であることが好ましい。 これによると

、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工 具の寿命が更に向上する。

[0027] (1 0) 前記加熱加圧する工程の後に、 前記加熱加圧する工程により得ら れた立方晶窒化硼素多結晶体を、 前記最終焼結領域内の温度及び圧力条件下 で 1 0分以上 30分以下保持する工程を備えることが好まし 。 これによる と、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工 具の寿命が更に向上する。

[0028] [本開示の実施形態の詳細]

本開示の立方晶窒化硼素多結晶体及びその製 造方法を、 以下に図面を参照 しつつ説明する。

[0029] [実施の形態 1 :立方晶窒化硼素多結晶体]

本開示の一実施の形態に係る立方晶窒化硼素 多結晶体について説明する。

[0030] <立方晶窒化硼素多結晶体> 〇 2020/174922 7 卩(:170? 2020 /001437

本開示の立方晶窒化硼素多結晶体は、 立方晶窒化硼素を 9 6体積%以上含 む立方晶窒化硼素多結晶体であって、 該立方晶窒化硼素の転位密度は 8 X 1 より大きく、 該立方晶窒化硼素多結晶体は、 複数の結晶粒を含み、 該複数の結晶粒の円相当径のメジアン径 5 0は 1 0 0 n 未満である。

[0031 ] 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体は焼結体で あるが、 通常焼結体とはバイ ンダーを含むことを意図する場合が多いため 、 本開示では 「多結晶体」 とい う用語を用いている。

[0032] 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体は、 工具として用いた場合、 特に精密加 エにおいても、 長い工具寿命を有することができる。 この理由は明らかでは ないが、 下記の (丨) 〜 (丨丨丨) の通りと推察される。

[0033] (_〇 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体は、 立方晶窒化硼素を 9 6体積%以 上含み、 バインダー、 焼結助剤、 触媒等の含有量が非常に低減されている。 このため、 立方晶窒化硼素同士が強固に結合しており、 立方晶窒化硼素多結 晶体の強度及び熱拡散性が向上している。 従って、 該立方晶窒化硼素多結晶 体を用いた工具は、 精密加工においても、 長い工具寿命を有することができ る。

[0034] (丨丨) 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体において、 立方晶窒化硼素の転位 密度は 8 X 1 0 1 5 / 2 より大きい。 該立方晶窒化硼素多結晶体は、 多結晶体 中に比較的多くの格子欠陥を有し、 歪みが大きいため、 耐摩耗性が向上して いる。 従って、 該立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工具は、 精密加工におい ても、 長い工具寿命を有することができる。

[0035] (丨丨丨) 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体は、 これに含まれる複数の結晶粒 の円相当径のメジアン径 5 0 (以下、 「粒径」 とも記す。 ) が 1 O O n m 未満である。 立方晶窒化硼素多結晶体は、 結晶粒の粒径が小さいほど強度が 大きくなる。 よって、 該立方晶窒化硼素多結晶体は強度が高く、 該立方晶窒 化硼素多結晶体を用いた工具は、 精密加工においても、 長い工具寿命を有す ることができる。

[0036] なお、 上記では本開示の立方晶窒化硼素多結晶体は 、 精密加工において長 〇 2020/174922 8 卩(:170? 2020 /001437

い工具寿命を有することを説明したが、 加工方法はこれに限定されない。 加 エ方法としては、 ミリング加工、 旋削加工等が挙げられる。 また、 被削材と しては、 ステンレスエ具鋼等が挙げられる。

[0037] <組成 >

本開示の立方晶窒化硼素多結晶体は、 立方晶窒化硼素を 9 6体積%以上含 む。 これにより、 立方晶窒化硼素多結晶体は、 強度及び熱拡散性が向上し、 優れた硬度を有し、 熱的安定性及び化学的安定性にも優れる。

[0038] 立方晶窒化硼素多結晶体は、 本開示の効果を示す範囲において、 立方晶窒 化硼素に加えて、 六方晶窒化硼素、 圧縮型六方晶窒化硼素及びウルツ鉱型窒 化硼素のうち、 1つ、 2つ又は全てを含むことができる。 この場合、 立方晶 窒化硼素多結晶体における、 六方晶窒化硼素、 圧縮型六方晶窒化硼素及びウ ルツ鉱型窒化硼素の含有量の合計は 4体積%以下とすることができる。 ここ で、 「圧縮型六方晶窒化硼素」 とは、 通常の六方晶窒化硼素と結晶構造が類 似し、 〇軸方向の面間隔が通常の六方晶窒化硼素の 面間隔 (〇. 3 3 3 1^ 01 ) よりも小さいものを示す。

[0039] 立方晶窒化硼素多結晶体は、 本開示の効果を示す範囲において不可避不純 物を含んでいても構わない。 不可避不純物としては、 例えば、 水素、 酸素、 炭素、 アルカリ金属元素 (リチウム (1_ 丨) 、 ナトリウム (1\1 3) 、 カリウ ム (<) 等) 及びアルカリ土類金属元素 (カルシウム (〇 3) 、 マグネシウ ム 等) 等の金属元素を挙げることができる。 立方晶窒化硼素多結晶 体が不可避不純物を含む場合は、 不可避不純物の含有量は〇. 1体積%以下 であることが好ましい。 不可避不純物の含有量は、 二次イオン質量分析 (3 により測定することができる。

[0040] 立方晶窒化硼素多結晶体は、 実質的にバインダー、 焼結助剤、 触媒等を含 まない。 これにより、 立方晶窒化硼素多結晶体の強度及び熱拡散性 が向上し ている。

[0041 ] 立方晶窒化硼素多結晶体中の立方晶窒化硼素 の含有率は、 9 6体積%以上

1 0 0体積%以下が好ましく、 9 7体積%以上 1 0 0体積%以下がより好ま 〇 2020/174922 9 卩(:170? 2020 /001437

しく、 9 8体積%以上 1 0 0体積%以上以下が更に好ましい。

[0042] 立方晶窒化硼素多結晶体中の六方晶窒化硼素 、 圧縮型六方晶窒化硼素及び ウルツ鉱型窒化硼素の含有率の合計は、 0体積%以上 4体積%以下が好まし く、 〇体積%以上 3体積%以下がより好ましく、 0体積%以上 2体積%以下 が更に好ましく、 〇体積%が最も好ましい。 すなわち、 立方晶窒化硼素多結 晶体には、 六方晶窒化硼素、 圧縮型六方晶窒化硼素及びウルツ鉱型窒化硼 素 のいずれも含まれないことが最も好ましい。

[0043] 立方晶窒化硼素多結晶体中の六方晶窒化硼素 の含有率は 0体積%以上 4体 積%以下が好ましく、 0体積%以上 3体積%以下がより好ましく、 0体積% 以上 2体積%以下が更に好ましく、 0体積%が最も好ましい。 すなわち、 立 方晶窒化硼素多結晶体には、 六方晶窒化硼素が含まれないことが最も好ま し い。

[0044] 立方晶窒化硼素多結晶体中の圧縮型六方晶窒 化硼素の含有率は 0体積%以 上 4体積%以下が好ましく、 0体積%以上 3体積%以下がより好ましく、 0 体積%以上 2体積%以下が更に好ましく、 0体積%が最も好ましい。 すなわ ち、 立方晶窒化硼素多結晶体には、 圧縮型六方晶窒化硼素が含まれないこと が最も好ましい。

[0045] 立方晶窒化硼素多結晶体中のウルツ鉱型窒化 硼素の含有率は 0体積%以上 4体積%以下が好ましく、 0体積%以上 3体積%以下がより好ましく、 0体 積%以上 2体積%以下が更に好ましく、 0体積%が最も好ましい。 すなわち 、 立方晶窒化硼素多結晶体には、 ウルツ鉱型窒化硼素が含まれないことが最 も好ましい。

[0046] 立方晶窒化硼素多結晶体中の立方晶窒化硼素 、 六方晶窒化硼素、 圧縮型六 方晶窒化硼素及びウルツ鉱型窒化硼素の含有 率 (体積%) は、 X線回折法に より測定することができる。 具体的な測定方法は下記の通りである。

[0047] 立方晶窒化硼素多結晶体をダイヤモンド砥石 電着ワイヤーで切断し、 切断 面を観察面とする。

[0048] X線回折装置 ([¾ I 9 3 !<リ社製 「M i n i F l e x 6 0 0」 (商品名) 〇 2020/174922 10 卩(:170? 2020 /001437

) を用いて立方晶窒化硼素多結晶体の切断面の X線スペクトルを得る。 この ときの X線回折装置の条件は、 下記の通りとする。

[0049] 特性 X線: (波長 1 . 5 4 )

管電圧: 4 5 1< V

管電流: 4 0 八

フィルター: 多層ミラー

光学系: 集中法

X線回折法: 0— 2 0法。

[0050] 得られた X線スペクトルにおいて、 下記のピーク強度八、 ピーク強度巳、 ピーク強度<3、 及び、 ピーク強度口を測定する。

[0051 ] ピーク強度八 :回折角 2 0 = 2 8 . 5 ° 付近のピーク強度から、 バックグ ランドを除いた圧縮型六方晶窒化硼素のピー ク強度。

[0052] ピーク強度巳 :回折角 2 0 = 4 0 . 8 ° 付近のピーク強度から、 バックグ ラウンドを除いたウルツ鉱型窒化硼素のピー ク強度。

[0053] ピーク強度〇 :回折角 2 0 = 4 3 . 5 ° 付近のピーク強度から、 バックグ ラウンドを除いた立方晶窒化硼素のピーク強 度。

[0054] ピーク強度口 :回折角 2 0 = 2 6 . 8 ° 付近のピーク強度から、 バックグ ラウンドを除いた六方晶窒化硼素のピーク強 度。

[0055] 圧縮型六方晶窒化硼素の含有率は、 ピーク強度 / (ピーク強度 十ピー ク強度巳 +ピーク強度 0 +ピーク強度 0) の値を算出することにより得られ る。 ウルツ鉱型窒化硼素の含有率は、 ピーク強度巳/ (ピーク強度 十ピー ク強度巳 +ピーク強度 0 +ピーク強度 0) の値を算出することにより得られ る。 立方晶窒化硼素の含有率は、 ピーク強度<3 / (ピーク強度 十ピーク強 度巳 +ピーク強度 0 +ピーク強度 0) の値を算出することにより得られる。 六方晶窒化硼素の含有量は、 ピーク強度口 / (ピーク強度 十ピーク強度巳 +ピーク強度〇 +ピーク強度口) の値を算出することにより得られる。

[0056] 圧縮型六方晶窒化硼素、 ウルツ鉱型窒化硼素、 立方晶窒化硼素及び六方晶 窒化硼素は、 全て同程度の電子的な重みを有するため、 上記の X線ピーク強 〇 2020/174922 11 卩(:170? 2020 /001437

度比を立方晶窒化硼素多結晶体中の体積比 と見なすことができる。

[0057] <転位密度 >

本開示の立方晶窒化硼素多結晶体において、 立方晶窒化硼素の転位密度は 8X 1 0 15 /〇1 2 より大きい。 該立方晶窒化硼素多結晶体は、 多結晶体中に比 較的多くの格子欠陥を有し、 歪が大きいため、 耐摩耗性が向上している。 従 って、 該立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工具は、 精密加工においても、 長 い工具寿命を有することができる。 転位密度は、 9X 1 0 15 /〇1 2 以上が好ま しく、 1. 〇 1 0 16 / 2 以上が更に好ましい。 転位密度の上限は特に限定 されないが、 製造上の観点から、 ·! . 4 1 〇 16 /〇! 2 とすることができる。 すなわち、 転位密度は 8 X 1 0 15 / 2 より大きく 1. 4X 1 〇 16 / 2 以下 が好ましく、 9 X 1 0 15 /〇1 2 以上·! . 4 X 1 0 16 /〇1 2 以下がより好ましく 、 1. 0 X 1 0 16 /〇1 2 以上·! . 4 X 1 0 16 /〇1 2 以下が更に好ましい。

[0058] 本明細書において、 転位密度とは下記の手順により算出される。

立方晶窒化硼素多結晶体からなる試験片を準 備する。 試験片の大きさは、 観察面が 2. 001111X2. 00101であり、 厚みが 1. 00101である。 試験片 の観察面を研磨する。

[0059] 該試験片の観察面について、 下記の条件で X線回折測定を行い、 立方晶窒 化硼素の主要な方位である (1 1 1) 、 (200) 、 (220) 、 (3 1 1

) 、 (400) 、 (33 1) の各方位面からの回折ピークのラインプロフ ァ イルを得る。

[0060] (X線回折測定条件)

X線源:放射光

装置条件:検出器 1\13 I (適切な [¾〇 I により蛍光をカッ トする。 ) エネルギー: (波長: 〇. 6888 )

分光結晶: 3 丨 (1 1 1)

入射スリッ ト :幅5〇1〇1 高さ〇.

受光スリッ ト :ダブルスリッ ト (幅 3〇!〇! X高さ〇. 5〇!〇!)

ミラー: 白金コート鏡 〇 2020/174922 12 卩(:170? 2020 /001437

入射角 : 2. 5〇! 「 8〇1

走査方法: 20-030311

測定ピーク :立方晶窒化硼素の (1 1 1) 、 (200) 、 (220) 、 (

3 1 1) 、 (400) 、 (33 1) の 6本。 ただし、 集合組織、 配向により プロファイルの取得が困難な場合は、 その面指数のピークを除く。

[0061] 測定条件:半値幅中に、 測定点が 9点以上となるようにする。 ピークトッ プ強度は 2000〇〇 3以上とする。 ピークの裾も解析に使用するため、 測 定範囲は半値幅の 1 〇倍程度とする。

[0062] 上記の X線回折測定により得られるラインプロファ ルは、 試料の不均一 ひずみなどの物理量に起因する真の拡がりと 、 装置起因の拡がりの両方を含 む形状となる。 不均一ひずみや結晶子サイズを求めるために 、 測定されたラ インプロファイルから、 装置起因の成分を除去し、 真のラインプロファイル を得る。 真のラインプロファイルは、 得られたラインプロファイルおよび装 置起因のラインプロファイルを擬 〇 †関数によりフィッティングし、 装置起 因のラインプロファイルを差し引くことによ り得る。 装置起因の回折線拡が りを除去するための標準サンプルとしては、 !_ 3巳 6 を用いた。 また、 平行度 の高い放射光を用いる場合は、 装置起因の回折線拡がりは〇とみなすことが できる。

[0063] 得られた真のラインプロファイルを修正 法及び修正 1«3「「6门 -八 「 3(^法を用いて解析することによって転位密 を算出する。 修正 I 丨 3 1113(^- 1 I法及び修正 転位密度を求めるために用いら れている公知のラインプロファイル解析法で ある。

[0064] 法の式は、 下記式 (丨) で示される。

[0065] [数 1]

〇 2020/174922 13 卩(:170? 2020 /001437

[0066] (上記式 ( I ) において、 AKはラインプロファイルの半値幅、 Dは結晶子 サイズ、 Mは配置パラメータ、 bはバーガースベクトル、 | 〇は転位密度、 K は散乱ベクトル、 〇 (K 2 C) は K 2 Cの高次項、 Cはコントラストファクタ —の平均値を示す。 )

上記式 (I) における Cは、 下記式 (II) で表される。

[0067] C = C h00 [1 -q(h 2 k 2 +h 2 l 2 + k 2 l 2 )/(h 2 + k 2 + I 2 ) 2 ] (II) 0

上記式 (ID において、 らせん転位と刃状転位におけるそれぞれのコ ント ラストファクター C_およびコントラストファクターに関する係 は、 計算 コード AN 丨 ZCを用い、 すべり系が <1 1 0> {1 1 1 } 、 弾性スティフ ネス C„が 8. 44G P a、 C 12 が 1. 9G P a、 C 44 が 4. 83 G P aとして 求める。 コントラストファクター C_は、 らせん転位は 0. 203であり、 刃 状転位は 0. 2 1 2である。 コントラストファクターに関する係数 qは、 らせ ん転位は 1. 65であり、 刃状転位は 0. 58である。 なお、 らせん転位比 率は 0. 5、 刃状転位比率は 0. 5に固定する。

[0068] また、 転位と不均一ひずみの間にはコントラストフ ァクターCを用いて下 記式 (III) の関係が成り立つ。

[0069] <£ (L) 2 >=(p C b 2 /47c)ln(R e /L) (III)

(上記式 (III) において、 R e は転位の有効半径を示す。 )

上記式 (III) の関係と、 Warren-Averbachの式より、 下記式 (IV) の様に 表すことができ、 修正 Warren-Averbach法として、 転位密度 | 〇及び結晶子サイ ズを求めることができる。

[0070] InA (L) =lnAs(L)-(7C L 2 P b 2 / 2 ) ln( R e / L ) ( K 2 C ) + 0 ( K 2 C ) 2

(IV) (上記式 (IV) において、 A(L)はフーリエ級数、 AML)は結晶子サイ ズに関するフーリエ級数、 Lはフーリエ長さを示す。 )

修正 Wi U iamson-HaU法及び修正 Warren-Averbach法の詳細は、 “T. Ungar and A. Borbe Ly, ihe effect of dislocation contrast on x- ray Une broadening: A new approach to Une profile analysis

” Appl. Phys. Lett. , vo L. 69, no. 21, p. 3173, 1996.” 及び \¥02020/174922 14 卩(:17 2020 /001437

“T· Ungar, S. Ott, P. Sanders, A. BorbeLy, J. Weertman, Dislocations, grain size and planar faults in nanostructured copper determined by high resolution X-ray diffraction and a new procedure of peak profile analysis” Acta Mater. voL. 46, no. 10, pp. 3693 - 3699, 1998." に記載されている。

[0071] <結晶粒 >

(メジアン径 d 50)

本開示の立方晶窒化硼素多結晶体に含まれる 複数の結晶粒は、 円相当径の メジアン径 d 50 (以下、 「メジアン径 d 50」 とも記す。 ) が 1 00 n m 未満である。 立方晶窒化硼素多結晶体は、 結晶粒の粒径が小さいほど強度が 大きくなる。 よって、 該立方晶窒化硼素多結晶体は強度が大きく、 該立方晶 窒化硼素多結晶体を用いた工具は、 精密加工においても、 長い工具寿命を有 することができる。

[0072] 結晶粒のメジアン径 d 50の下限値は特に限定されないが、 製造上の観点 から、 例えば 1 0 n mとすることができる。

[0073] (メジアン径 d 50の測定方法)

本明細書において、 立方晶窒化硼素多結晶体に含まれる複数の結 晶粒の円 相当径のメジアン径 d 50とは、 任意に選択された 5箇所の各測定箇所にお いて、 複数の結晶粒のメジアン径 d 50をそれぞれ測定し、 これらの平均値 を算出することにより得られた値を意味する 。

[0074] なお、 出願人が測定した限りでは、 同一の試料においてメジアン径 d 50 を測定する限り、 立方晶窒化硼素多結晶体における測定視野の 選択個所を変 更して複数回算出しても、 測定結果のばらつきはほとんどなく、 任意に測定 視野を設定しても恣意的にはならないことが 確認された。

[0075] 立方晶窒化硼素多結晶体が工具の一部として 用いられている場合は、 立方 晶窒化硼素多結晶体の部分を、 ダイヤモンド砥石電着ワイヤー等で切り出し て、 切り出した断面を研磨し、 当該研磨面において 5箇所の測定箇所を任意 に設定する。 〇 2020/174922 1 5 卩(:170? 2020 /001437

[0076] 各測定箇所における複数の結晶粒の円相当径 のメジアン径 5 0の測定方 法について下記に具体的に説明する。

[0077] 測定箇所が露出するように立方晶窒化硼素多 結晶体をダイヤモンド砥石電 着ワイヤー等で切断し、 切断面を研磨する。 当該研磨面上の測定箇所を 3巳 IV! (日本電子株式会社社製 「」 3 1\/1 - 7 5 0 0 」 (商品名) ) を用いて観 察し、 3巳 IV!画像を得る。 測定視野のサイズは 1 2 1 5 とし、 観 察倍率は 1 0 0 0 0倍とする。

[0078] 5つの 3巳1\/1画像のそれぞれについて、 測定視野内に観察される結晶粒の 粒界を分離した状態で、 画像処理ソフト 0« _ 〇† \^「. 7. 4. 5) を用いて 、 各結晶粒の円相当径の分布を算出する。

[0079] メジアン径 5 0は、 測定視野の全体を分母として算出する。 結晶粒の円 相当径の分布から、 メジアン径 5 0を算出する。

[0080] <用途 >

本開示の立方晶窒化硼素多結晶体は、 切削工具、 耐摩工具、 研削工具など に用いることが好適である。

[0081 ] 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体を用いた切 削工具、 耐摩工具および研削 工具はそれぞれ、 その全体が立方晶窒化硼素多結晶体で構成さ れていても良 いし、 その一部 (たとえば切削工具の場合、 刃先部分) のみが立方晶窒化硼 素多結晶体で構成されていても良い。 さらに、 各工具の表面にコーティング 膜が形成されていても良い。

[0082] 切削工具としては、 ドリル、 エンドミル、 ドリル用刃先交換型切削チップ 、 エンドミル用刃先交換型切削チップ、 フライス加工用刃先交換型切削チッ プ、 旋削加工用刃先交換型切削チップ、 メタルソー、 歯切工具、 リーマ、 夕 ップ、 切削バイ トなどを挙げることができる。

[0083] 耐摩工具としては、 ダイス、 スクライパー、 スクライビングホイール、 ド レッサーなどを挙げることができる。 研削工具としては、 研削砥石などを挙 げることができる。

[0084] [実施の形態 2 :立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法] 〇 2020/174922 16 卩(:170? 2020 /001437

本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方 法を、 図 1〜図 6を用いて説明 する。 図 1は、 窒化硼素の圧力一温度相図である。 図 2〜図 5は、 本開示の 立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法を説明す るための図である。 図 6は、 立 方晶窒化硼素多結晶体の製造方法の従来例を 説明するための図である。

[0085] 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 の詳細な説明を行う前に、 そ の理解を助けるため、 立方晶窒化硼素多結晶体の圧力一温度相図、 並びに、 立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法の従来例 及び参考例について説明する。

[0086] <圧カー温度相図>

図 1 に示されるように、 窒化硼素には、 常温常圧の安定相である六方晶窒 化硼素、 高温高圧の安定相である立方晶窒化硼素、 及び、 六方晶窒化硼素か ら立方晶窒化硼素への転位の間の準安定相で あるウルツ鉱型窒化硼素の 3つ の相が存在する。

[0087] 各相の境界は一次関数で表すことができる。 本明細書において、 各相の安 定領域内の温度及び圧力は、 一次関数を用いて示すことができるものとす る

[0088] 本明細書において、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及び 圧力 (図

1 において、 「 巳1\!安定領域」 と記す。 ) は、 温度を丁 (°〇) 、 圧力を (◦ 3) とした時に、 下記式 1及び下記式 2を同時に満たす温度及び圧力 として定義する。

[0089] 式 1 : 9³-0. 0037丁+ 1 1. 301

式 2 : £-0. 085丁+ 1 1 7 0

[0090] 本明細書において、 六方晶窒化硼素の安定領域内の温度及び圧力 (図 1 に おいて、 「11巳1\1安定領域」 と記す。 ) は、 温度を丁 (°〇) 、 圧力を (◦ 3) とした時に、 下記式八及び下記式巳を同時に満たす温度及 び圧力、 又 は下記式<3及び下記式 0を同時に満たす温度及び圧力として定義す 。

[0091] 式八 : £-〇. 0037丁+ 1 1. 301

式巳 : £-0. 085丁+ 1 1 7

式〇 : £0· 0027丁 +〇. 3333 〇 2020/174922 17 卩(:170? 2020 /001437

式 0 : ³ - 0 . 0 8 5丁+ 1 1 7 0

[0092] 本明細書において、 立方晶窒化硼素の安定領域内の温度及び圧力 (図 1 に おいて、 「〇巳1\1安定領域」 と記す。 ) は、 温度を丁 (°〇) 、 圧力を (◦ 9 a) とした時に、 下記式口及び下記式巳を同時に満たす温度及 び圧力とし て定 する。

[0093] 式 0 : ³— 0 . 0 8 5 1 + 1 1 7

[0094] <立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法の従 例 >

従来、 六方晶窒化硼素を、 立方晶窒化硼素の安定領域内の温度及び圧力 ま で到達させるための加熱加圧経路として、 図 6に示される経路 (以下、 「図 6の経路」 とも記す。 ) が検討されていた。

[0095] 図 6の経路では、 開始点 3の温度及び圧力 (常温常圧) から、 立方晶窒化 硼素の安定領域内の温度 (以下、 「目的温度」 とも記す。 ) 及び圧力 (以下 、 「目的圧力」 とも記す。 ) まで加熱加圧する際に、 まず、 圧力を目的圧力 (図 6では約 1 0〇 3) まで上げ (図 6の矢印巳 1) 、 その後に、 温度を 目的温度 (図 6では約 1 9 0 0 °〇 まで上げる (図 6の矢印巳 2) 。 図 6の 経路は、 加熱と加圧がそれぞれ 1回ずつ行われるため、 加熱加圧操作の制御 が単純であり、 従来採用されていた。

[0096] 図 6の経路では、 開始点 3から立方晶窒化硼素の安定領域内の温度及 圧 力へ到達する途中で、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域を通過する。 従来は、 製造工程のサイクルタイムを短くするために 、 開始点 3から立方晶窒化硼素 の安定領域内へ到達するための時間は短い方 が良いと考えられていた。 また 、 加熱加圧工程において、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及び 圧力 で一定時間保持することにより、 得られる立方晶窒化硼素多結晶体の品質が 向上するという知見も存在しなかった。 このため、 加熱加圧条件は、 ウルツ 鉱型窒化硼素の安定領域を通過する時間がよ り短くなるように設定されてい た。

[0097] しかし、 図 6の経路で得られた立方晶窒化硼素多結晶体 は、 加工時に欠 〇 2020/174922 18 卩(:170? 2020 /001437

損が生じやすく、 工具寿命が短くなる傾向があった。 本発明者らは、 その理 由を究明すべく図 6の経路で得られた立方晶窒化硼素多結晶体 ついて分析 評価を行ったところ、 立方晶窒化硼素多結晶体中の立方晶窒化硼素 の含有率 が工具寿命に影響を与えると推察された。 ここで、 立方晶窒化硼素多結晶体 中の立方晶窒化硼素の含有率とは、 立方晶窒化硼素多結晶体が立方晶窒化硼 素とともに、 六方晶窒化硼素及び/又はウルツ鉱型窒化硼 を含む場合、 立 方晶窒化硼素、 六方晶窒化硼素及びウルツ鉱型窒化硼素の含 有率の合計を分 母とした場合の立方晶窒化硼素の含有率を意 味する。

[0098] 具体的には、 図 6の経路では、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内での保持 時間が短いため、 六方晶窒化硼素からウルツ鉱型窒化硼素への 変換率が低下 し、 結果として立方晶窒化硼素への変換率も低下 する傾向があると推察され た。 このため、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体では、 立方晶窒化硼素の含 有率が低下し、 加工時に欠損が生じやすく、 工具寿命が短くなる傾向がある と推察された。

[0099] 更に本発明者らが検討を重ねた結果、 立方晶窒化硼素多結晶体の製造工程 において、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入温度 が、 立方晶窒化硼素 の転位密度と関係し、 結果として、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体の耐摩 耗性に影響を与えることが推察された。

[0100] 本発明者らは上記の状況、 並びに、 立方晶窒化硼素多結晶体に含まれる複 数の結晶粒の粒径が靱性に与える影響を考慮 しつつ、 立方晶窒化硼素多結晶 体の製造工程における圧力及び温度の経路を 鋭意検討した。 この結果、 本発 明者らは、 精密加工においても、 長い工具寿命を有することができる立方晶 窒化硼素多結晶体を得ることができる加熱加 圧条件を見いだした。 本開示の 立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法の詳細に ついて、 以下に説明する。

[0101 ] <立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 (1) >

本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 ( 1) は、 実施の形態 1の立 方晶窒化硼素多結晶体の製造方法である。 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体 の製造方法 (1) は、 円相当径のメジアン径 9 0が〇. 3 以下の六方 〇 2020/174922 19 卩(:170? 2020 /001437

晶窒化硼素粉末を準備する工程 (以下、 「六方晶窒化硼素粉末準備工程」 と も記す。 ) と、 前記六方晶窒化硼素粉末を、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域 内の温度及び圧力を通過して、 1 500 ° 〇以上 2200 ° 〇以下の温度、 及び 、 1 〇〇 3 以上の圧力まで加熱加圧する工程 (以下、 「加熱加圧工程 (1 ) 」 とも記す。 ) と、 を備える。 ここで、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域は 圧力を 〇 3とした時に、 下記式 1及び下記式 2を同時に 満たす領域であり、

式 1 : ³-0· 0037丁+ 1 1. 301

式 2 : £-0. 085丁+ 1 1 7

加熱加圧する工程において、 前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入 温 度は 500 ° 〇以下であり、 加熱加圧する工程は、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定 領域内の温度及び圧力で 1 〇分以上保持する工程を含む。

[0102] 上記の製造方法により、 実施の形態 1の立方晶窒化硼素多結晶体を製造す ることができる。 すなわち、 この製造方法により得られる立方晶窒化硼素 多 結晶体は、 立方晶窒化硼素を 96体積%以上含み、 それを構成する立方晶窒 化硼素の粒径が微細 (すなわち平均粒径が 1 00 n m未満) で、 かつ、 立方 晶窒化硼素の転位密度が大きい (すなわち 8X 1 0 15 /〇! 2 を超える) 多結晶 体となる。

[0103] 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 ( 1) は、 加熱加圧する工程 の後に、 加熱加圧する工程により得られた立方晶窒化 硼素多結晶体を、 1 5 00 °〇以上 2200 °〇以下の温度、 及び、 1 0◦ 3以上の圧力条件下で 1 0分以上 30分以下保持する工程 (以下、 「最終焼結工程」 とも記す。 ) を 備えることができる。

[0104] 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 ( 1) の各工程の詳細につい て、 図 2〜図 4を用いて下記に説明する。 なお、 図 2〜図 4において、 矢印 は加熱加圧経路を示す。 また、 矢印の先端に丸が記載されている場合は、 そ の温度及び圧力で一定時間保持されることを 示す。 また、 図 2〜図 4で示さ れる経路は一例であり、 これに限定されるものではない。 〇 2020/174922 20 卩(:170? 2020 /001437

[0105] (六方晶窒化硼素粉末準備工程)

立方晶窒化硼素多結晶体の原料として、 円相当径のメジアン径 9 0 (以 下、 「メジアン径 9 0」 とも記す。 ) が〇. 3 以下の六方晶窒化硼素 粉末を準備する。

[0106] 六方晶窒化硼素粉末としては、 そのメジアン径 9 0 (〇. 3 以下) が、 得られる立方晶窒化硼素多結晶体に含まれる 結晶粒のメジアン径 5 0 (1 0 0 n m未満) よりも少し大きいものを用いる。 これは、 六方晶窒化硼 素から立方晶窒化硼素へと転位する際に、 II巳 1\1間の結合を切って原子の組 み換えを経て再結合するために、 原料の粒径よりも立方晶窒化硼素の粒径が 小さくなるためである。 原料の粒径が小さいほど、 本来の 巳 1\1間の結合が 無い粒界が多くなるため、 変換後の立方晶窒化硼素の粒径は小さくなる 。 逆 に原料の粒径が大きいほど、 変換後の立方晶窒化硼素の粒径が大きくなる 。

[0107] 六方晶窒化硼素粉末の円相当径のメジアン径 9 0は、 〇. 3 以下で あり、 〇. 2 以下が好ましい。 六方晶窒化硼素粉末の円相当径のメジア ン径 9 0の下限は特に限定されないが、 製造上の観点から〇. 0 5 と することができる。 六方晶窒化硼素粉末の円相当径のメジアン径 9 0は、

以下がより好ましい。

[0108] 上記の六方晶窒化硼素粉末は、 従来公知の合成法により製造したもの、 及 び、 市販の六方晶窒化硼素粉末のいずれも用いる ことができる。

[0109] (加熱加圧工程 (1) )

次に、 六方晶窒化硼素粉末を、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及 び圧力を通過して、 1 5 0 0 ° 〇以上 2 2 0 0 ° 〇以下の温度 (以下、 「到達温 度」 とも記す。 ) 、 及び、 1 〇〇 3 以上の圧力 (以下、 「到達圧力」 とも 記す。 ) まで加熱加圧する (図 2では矢印八 1、 八 2及び八 3、 図 3では矢 印巳 1、 巳 2、 巳3及び巳4、 図 4では矢印〇 1、 〇2、 〇3及び〇4) 。 加熱加圧工程 (1) において、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入温度 は 5 0 0 ° 〇以下である。 更に、 加熱加圧工程 (1) は、 ウルツ鉱型窒化硼素 〇 2020/174922 21 卩(:170? 2020 /001437

の安定領域内の温度及び圧力で 1 〇分以上保持する工程を含む (図 2では a

I、 図 3では b 1、 図 4では c 1及び c 2) 。

[0110] 本明細書中、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入温度 とは、 加熱加圧 工程において、 初めてウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内へ到 達した時点での 温度を意味する。 該突入温度は、 図 2では、 矢印 A2と P = _0. 0037 T+ 1 1. 301の線との交点における温度 (約 250°C) であり、 図 3で は、 矢印 B 2と P = _0. 0037 T+ 1 1. 301の線との交点における 温度 (約 250°C) であり、 図 4では、 矢印 C2と P =— 0. 0037 T +

I I . 301の線との交点における温度 (約 250 ° 〇 である。

[0111] 加熱加圧工程 (1) において、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入温 度は 500 ° C以下である。 これによると、 六方晶窒化硼素粉末は原子拡散が 起こり難い環境で、 ウルツ鉱型窒化硼素に変換され、 その後、 立方晶窒化硼 素に変換される。 このため、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体は、 多結晶体 中に比較的多くの格子欠陥を有し、 立方晶窒化硼素の転位密度が大きく、 歪 みが大きいため、 耐摩耗性が向上している。 よって、 該立方晶窒化硼素多結 晶体を用いた工具は、 精密加工においても、 長い工具寿命を有することがで きる。

[0112] ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入温度 は 300°C以下が好ましく、

1 00 ° C以下が更に好ましい。 突入温度が低いほど原子拡散が起こりにくく 、 格子欠陥が増加する傾向がある。 突入温度の下限は、 例えば 1 o ° cとする ことができる。 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入温度 は 1 0 ° C以上 5 00 °C以下が好ましく、 1 0 °C以上 300 °C以下がより好ましく、 1 0 °〇以 上 1 0 o°c以下が更に好ましい。

[0113] 加熱加圧工程 (1) は、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及び 圧力 で 1 0分以上保持する工程を含む。 これによると、 ウルツ鉱型窒化硼素の安 定領域内での保持時間が長いため、 六方晶窒化硼素からウルツ鉱型窒化硼素 への変換率が向上し、 結果として立方晶窒化硼素への変換率も向上 する。 こ のため、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体は、 立方晶窒化硼素の含有率が増 〇 2020/174922 22 卩(:170? 2020 /001437

加し、 強度及び熱拡散性が向上している。 よって、 該立方晶窒化硼素多結晶 体を用いた工具は、 精密加工においても、 長い工具寿命を有することができ る。

[0114] ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及び 圧力での保持時間は、 1 5分 以上が好ましく、 30分以上がより好ましい。 保持時間の上限は、 製造上の 観点から、 60分が好ましい。 保持時間は 1 0分以上 60分以下が好ましく 、 1 5分以上 60分以下がより好ましく、 30分以上 60分以下が更に好ま しい。

[0115] 加熱加圧工程 (1) は、 下記式 1、 下記式 2及び下記式 3を同時に満たす 領域内の温度及び圧力で 1 〇分以上保持する工程 (以下、 「加熱加圧工程八 」 とも記す。 ) を含むことが好ましい。

[0116] 式 1 : ³— 0. 0037丁+ 1 1. 301

式 2 : £-0. 085丁+ 1 1 7

式 3 : £-0· 0037丁+ 1 1. 375。

[0117] 上記式 1、 式 2及び式 3を同時に満たす領域とは、 ウルツ鉱型窒化硼素の 安定領域内で、 六方晶窒化硼素の安定領域とウルツ鉱型窒化 硼素の安定領域 との境界近傍の領域である。 この領域で 1 0分以上保持することにより、 格 子欠陥が更に生じやすくなる。 このため、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体 は、 多結晶体中に多くの格子欠陥を有し、 歪みが大きいため、 更に耐摩耗性 が向上すると考えられる。 よって、 該立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工具 は、 精密加工においても、 更に長い工具寿命を有することができる。

[0118] 上記式 1、 式 2及び式 3を同時に満たす領域内の温度及び圧力での 持時 間は、 20分以上がより好ましい。 保持時間の上限は、 製造上の観点から、 60分が好ましい。 保持時間は 1 0分以上 60分以下が好ましく、 1 5分以 上 60分以下がより好ましく、 20分以上 60分以下が更に好ましい。

[0119] 加熱加圧工程 (1) が上記式 1、 式 2及び式 3を同時に満たす領域内の温 度及び圧力で 1 〇分以上保持する工程を含む場合、 加熱加圧工程は、 その後 、 更に下記式 2及び下記式 4を満たす領域内の温度及び圧力で 1分以上保持 〇 2020/174922 23 卩(:170? 2020 /001437

する工程 (以下、 「加熱加圧工程巳」 とも記す。 ) を含むことができる。

[0120] 式 2 : 9£-0. 0851+ 1 1 7

式 4 : >-0. 0037丁+ 1 1. 375。

[0121] これによると、 六方晶窒化硼素からウルツ鉱型窒化硼素への 変換率が更に 向上し、 結果として立方晶窒化硼素への変換率も向上 する。 このため、 得ら れた立方晶窒化硼素多結晶体は、 立方晶窒化硼素の含有率が増加し、 強度及 び熱拡散性が向上している。 よって、 該立方晶窒化硼素多結晶体を用いたエ 具は、 精密加工においても、 長い工具寿命を有することができる。

[0122] 上記式 2及び式 4を満たす領域内の温度及び圧力での保持時 は、 1 0分 以上がより好ましく、 1 5分以上が更に好ましい。 保持時間の上限は、 製造 上の観点から、 60分が好ましい。 保持時間は 1分以上 60分以下が好まし く、 1 0分以上 60分以下がより好ましく、 1 5分以上 60分以下が更に好 ましい。

[0123] 加熱加圧工程 (1) において、 上記の加熱加圧工程 のみを行っても良い し、 上記の加熱加圧工程 の後に、 上記の加熱加圧工程巳を行っても良い。 また、 加熱加圧工程は、 上記式 2及び上記式 4を満たす領域内で 1 0分以上 保持する工程とすることもできる。

[0124] 加熱加圧工程 (1) における到達圧力は 1 〇〇 3以上であり、 1 2〇

3以上が好ましく、 1 5◦ 3以上が更に好ましい。 該到達圧力の上限は特 に限定されないが、 例えば、 20◦ 3とすることができる。 加熱加圧工程 ( 1) における到達圧力は、 1 0〇 3以上 20〇 3以下が好ましく、 1 209 a以上 2009 a以下がより好ましく、 1 5〇 3以上 20◦ 3以 下が更に好ましい。

[0125] 加熱加圧工程 (1) において、 図 2〜図 4の経路では、 加熱を行った後に 加圧を行い、 更に加熱を行っているが、 加熱加圧の経路はこれに限定されな い。 加熱加圧の経路は、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入温度 を 50 0 ° 〇以下とし、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及び 圧力で 1 〇分以 上保持でき、 到達温度を 1 500°〇以上 2200°〇以下、 到達圧力を 1 0◦ 〇 2020/174922 24 卩(:170? 2020 /001437

3以上とすることができる経路であればよ 。 例えば、 加熱と加圧を同時 に行ってもよい。

[0126] 上記の通り、 六方晶窒化硼素粉末に加熱加圧工程を行うこ とにより、 立方 晶窒化硼素多結晶体を得ることができる。

[0127] (最終焼結工程)

上記の加熱加圧工程 (1) の後に、 加熱加圧工程 (1) により得られた立 方晶窒化硼素多結晶体を、 1 500 ° 〇以上 2200 ° 〇以下の温度 (以下、 「 最終焼結温度」 とも記す。 ) 、 及び、 1 〇〇 ? 3 以上の圧力 (以下、 「最終 焼結圧力」 とも記す。 ) 条件下で 1 〇分以上 30分以下保持する工程を行う ことができる。 これにより、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体は、 立方晶窒 化硼素の含有率が大きくなり、 更に長い工具寿命を達成することができる。

[0128] 最終焼結温度は 1 500°〇以上 2000°〇以下が好ましい。 最終焼結圧力 は 1 0◦ 3以上 2009 a以下が好ましく、 1 2◦ 3以上 20◦ 3以 下がより好ましい。 最終焼結工程における焼結時間は 1 0分以上 30分以下 が好ましく、 1 〇分以上 20分以下がより好ましい。

[0129] <図 2〜図 4の経路により得られる立方晶窒化硼素多結 体の特性>

[図 2の経路]

図 2の経路では、 まず、 開始点 3から 500 °〇以下の所定温度 (図 2では 約 250°〇) まで昇温し (矢印八 1) 、 その後、 温度を維持したままウルツ 鉱型窒化硼素の安定領域内の圧力 (図 2では約 1309 a) まで加圧し (矢 印八2) 、 該温度 (約 250°〇 及び該圧力 (約 1309 a) において、 1 0分以上保持する (図 2の 3 1) 。 その後、 該圧力 (約 1 3〇 3 ) を維持 したまま、 温度を 1 500 ° 〇以上 2200 ° 〇以下 (図 2では約 2000 ° 〇 に昇温し (矢印 3) 、 該温度 (約 2000 ° 〇 及び該圧力 (約 1 30 3 ) において、 1 〇分以上 30分以下保持する (図 2の 3 2) 。 図 2では、 加 熱加圧工程は、 矢印 1、 2及び 3、 並びに で示され、 最終焼結エ 程は 32で:^される。

[0130] 図 2の経路では、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入温度 が 500°〇 〇 2020/174922 25 卩(:170? 2020 /001437

以下 (約 250 ° C) である。 これによると、 六方晶窒化硼素粉末は原子拡散 が起こり難い環境で、 ウルツ鉱型窒化硼素に変換され、 その後、 立方晶窒化 硼素に変換される。 このため、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体は、 多結晶 体中に比較的多くの格子欠陥を有し、 立方晶窒化硼素の転位密度が大きく、 歪みが大きいため、 耐摩耗性が向上している。 よって、 該立方晶窒化硼素多 結晶体を用いた工具は、 精密加工においても、 長い工具寿命を有することが できる。

[0131] 図 2の経路では、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及び 圧力で 1 0 分以上保持する。 これによると、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内での保持 時間が長いため、 六方晶窒化硼素からウルツ鉱型窒化硼素への 変換率が向上 し、 結果として立方晶窒化硼素への変換率も向上 する。 このため、 得られた 立方晶窒化硼素多結晶体は、 立方晶窒化硼素の含有率が増加し、 強度及び熱 拡散性が向上している。 よって、 該立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工具は 、 精密加工においても、 長い工具寿命を有することができる。

[0132] 図 2の経路では、 加熱加圧工程により得られた立方晶窒化硼素 多結晶体を 、 1 500°C以上 2200°C以下の温度、 及び、 1 0 G P a以上の圧力条件 下で 1 〇分以上 30分以下保持する。 これにより、 得られた立方晶窒化硼素 多結晶体は、 立方晶窒化硼素の含有率が大きくなり、 強度及び熱拡散性が向 上するため、 更に長い工具寿命を有することができる。

[0133] [図 3の経路]

図 3の経路では、 まず、 開始点 Sから 500 ° C以下の所定温度 (図 3では 約 250°C) まで昇温し (矢印 B 1) 、 その後、 温度を維持したまま、 下記 式 1、 下記式 2及び下記式 3を同時に満たす領域内の圧力 (図 3では約 1 0 . 4G P a) まで昇圧し (矢印 B 2) 、 該温度 (約 250°C) 及び該圧力 ( 約 1 0. 4 G P a) において、 1 0分以上保持する (図 3の b 1) 。

[0134] 式 1 : P ³- 0. 0037 T+ 1 1. 301

式 2 : P£-0. 085 T+ 1 1 7

式 3 : P£-0. 0037 T+ 1 1. 375。 〇 2020/174922 26 卩(:170? 2020 /001437

[0135] 次に、 該温度 (約 2 5 0 ° 〇 を維持したまま、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定 領域内で昇圧する (図 3では約 1 3 0 9 a) (矢印巳3) 。 続いて、 該圧力 (約 1 3 0 9 a) を維持したまま、 温度を 1 5 0 0 °〇以上 2 2 0 0 °〇以下 ( 図 3では約 2 0 0 0 °〇 に昇温し (矢印巳4) 、 該温度 (約 2 0 0 0 °〇 及 び該圧力 (約 1 3 0 3) において、 1 0分以上 3 0分以下保持する (図 3 の匕 2) 。 図 3では、 加熱加圧工程は、 矢印巳 1、 巳 2、 巳 3及び巳 4、 並 びに、 13 1で示され、 最終焼結工程は匕 2で示される。

[0136] 図 3の経路では、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入温度 が 5 0 0 °〇 以下 (約 2 5 0 ° 〇 である。 これによると、 六方晶窒化硼素粉末は原子拡散 が起こり難い環境で、 ウルツ鉱型窒化硼素に変換され、 その後、 立方晶窒化 硼素に変換される。 このため、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体は、 多結晶 体中に比較的多くの格子欠陥を有し、 立方晶窒化硼素の転位密度が大きく、 歪みが大きいため、 耐摩耗性が向上している。 よって、 該立方晶窒化硼素多 結晶体を用いた工具は、 精密加工においても、 長い工具寿命を有することが できる。

[0137] 図 3の経路では、 上記式 1、 上記式 2及び上記式 3を同時に満たす領域内 の温度及び圧力で 1 〇分以上保持する工程を含む。 すなわち、 図 3の経路は 、 図 2の経路に比べて、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内で、 より六方晶窒 化硼素の安定領域に近い温度及び圧力 (すなわち、 ウルツ鉱型窒化硼素の安 定領域と六方晶窒化硼素の安定領域の境界近 傍の温度及び圧力) で 1 〇分以 上保持している。 このため、 図 2の経路よりも、 格子欠陥が更に生じやすく 、 図 3の経路で得られた立方晶窒化硼素多結晶体 、 図 2の経路で得られた 立方晶窒化硼素多結晶体に比べて、 多結晶体中により多くの格子欠陥を有し 、 歪みが大きいため、 更に耐摩耗性が向上すると考えられる。 よって、 図 3 の経路で得られた立方晶窒化硼素多結晶体を 用いた工具は、 精密加工におい ても、 更に長い工具寿命を有することができる。

[0138] 図 3の経路では、 加熱加圧工程により得られた立方晶窒化硼素 多結晶体を 、 1 5 0 0 °〇以上 2 2 0 0 °〇以下の温度、 及び、 1 0◦ 3以上の圧力条件 〇 2020/174922 27 卩(:170? 2020 /001437

下で 1 〇分以上 30分以下保持する。 これにより、 得られた立方晶窒化硼素 多結晶体は、 立方晶窒化硼素の含有率が大きくなり、 更に長い工具寿命を有 することができる。

[0139] [図 4の経路]

図 4の経路では、 まず、 開始点 3から 500 °〇以下の所定温度 (図 4では 約 250 ° 〇) まで昇温し (矢印〇 1) 、 その後、 温度を維持したまま、 下記 式 1、 下記式 2及び下記式 3を同時に満たす領域内の圧力 (図 4では約 1 0 . 409 a) まで昇圧し (矢印 02) 、 該温度 (約 250°〇 及び該圧力 ( 約 1 〇. 40 3) において、 1 0分以上保持する (図 3の〇 1) 。

[0140] 式 1 : 9³-0. 0037丁+ 1 1. 301

式 2 : £-0. 085丁+ 1 1 7

式 3 : £-0· 0037丁+ 1 1. 375。

[0141] 次に、 該温度 (約 250°〇) を維持したまま、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定 領域内で昇圧し (図 4では約 1309 a) (矢印〇3) 、 該温度 (約 250 °〇) 及び該圧力 (約 1309 a) (図 4の〇 2で示される温度及び圧力) に おいて、 1分以上保持する。 すなわち、 図 4の経路では、 上記式 1、 上記式 2及び上記式 3を同時に満たす温度及び圧力で 1 0分以上保持する工程の後 に、 更に下記式 2及び下記式 4を満たす領域内の温度及び圧力で 1分以上保 持する工程を含む。

[0142] 式 2 : £_〇. 0851+ 1 1 7

式 4 : >-0. 0037丁+ 1 1. 375。

[0143] 続いて、 上記の圧力 (約 1 30 3) を維持したまま、 温度を 1 500 ° 〇 以上 2200 °〇以下 (図 4では約 2000°〇 に昇温し (矢印〇4) 、 該温 度 (約 2000°〇 及び該圧力 (約 1309 a) において、 1 0分以上 30 分以下保持する (図 4の〇 3) 。 図 4では、 加熱加圧工程は、 矢印 01、 〇 2、 03及び 04、 並びに、 及び〇 2で示され、 最終焼結工程は〇 3で される。

[0144] 図 4の経路では、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入温度 が 500°〇 〇 2020/174922 28 卩(:170? 2020 /001437

以下 (約 2 5 0 ° C) である。 これによると、 六方晶窒化硼素粉末は原子拡散 が起こり難い環境で、 ウルツ鉱型窒化硼素に変換され、 その後、 立方晶窒化 硼素に変換される。 このため、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体は、 多結晶 体中に比較的多くの格子欠陥を有し、 立方晶窒化硼素の転位密度が大きく、 歪みが大きいため、 耐摩耗性が向上している。 よって、 該立方晶窒化硼素多 結晶体を用いた工具は、 精密加工においても、 長い工具寿命を有することが できる。

[0145] 図 4の経路では、 上記式 1、 上記式 2及び上記式 3を同時に満たす領域内 の温度及び圧力で 1 〇分以上保持する工程を含む。 すなわち、 図 4の経路は 、 図 2の経路に比べて、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内で、 より六方晶窒 化硼素の安定領域に近い温度及び圧力 (すなわち、 ウルツ鉱型窒化硼素の安 定領域と六方晶窒化硼素の安定領域の境界近 傍の温度及び圧力) で 1 〇分以 上保持している。 このため、 図 4の経路では、 図 2の経路よりも、 格子欠陥 が更に生じやすく、 図 4の経路で得られた立方晶窒化硼素多結晶体 、 図 2 の経路で得られた立方晶窒化硼素多結晶体に 比べて、 多結晶体中に多くの格 子欠陥を有し、 歪みが大きいため、 更に耐摩耗性が向上すると考えられる。 よって、 図 4の経路で得られた立方晶窒化硼素多結晶体 用いた工具は、 精 密加工においても、 更に長い工具寿命を有することができる。

[0146] 図 4の経路では、 上記式 1、 上記式 2及び上記式 3を同時に満たす領域内 の温度及び圧力で 1 0分以上保持する工程の後、 更に、 ウルツ鉱型窒化硼素 の安定領域内で昇圧し (図 4では約 1 3 G P a) (矢印 C 3) 、 該温度 (約 2 5 0 °〇 及び該圧力 (約 1 3 G P a) において、 1分以上保持する (図 4 の c 2) 。 すなわち、 図 4の経路では、 上記式 1、 上記式 2及び上記式 3を 同時に満たす温度及び圧力で 1 〇分以上保持する工程の後に、 更に上記式 2 及び上記式 4を満たす領域内の温度及び圧力で 1分以上保持する工程を含む

[0147] このため、 図 4の経路では、 図 3の経路よりも、 六方晶窒化硼素からウル ツ鉱型窒化硼素への変換率が更に向上し、 結果として立方晶窒化硼素への変 〇 2020/174922 29 卩(:170? 2020 /001437

換率も更に向上する。 このため、 図 4の経路で得られた立方晶窒化硼素多結 晶体は、 図 3の経路で得られた立方晶窒化硼素多結晶体 比べて、 立方晶窒 化硼素の含有率が増加し、 強度及び熱拡散性が向上している。 よって、 該立 方晶窒化硼素多結晶体を用いた工具は、 精密加工においても、 更に長い工具 寿命を有することができる。

[0148] 図 4の経路では、 加熱加圧工程により得られた立方晶窒化硼素 多結晶体を 、 1 500°〇以上 2200°〇以下の温度、 及び、 1 0◦ 3以上の圧力条件 下で 1 〇分以上 30分以下保持する。 これにより、 得られた立方晶窒化硼素 多結晶体は、 立方晶窒化硼素の含有率が大きくなり、 更に長い工具寿命を達 成することができる。

[0149] <立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 (2) >

本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 (2) は、 実施の形態 1の立 方晶窒化硼素多結晶体の製造方法である。 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体 の製造方法 (2) は、 熱分解窒化硼素を準備する工程 (以下、 「熱分解窒化 硼素準備工程」 とも記す。 ) と、 熱分解窒化硼素を、 ウルツ鉱型窒化硼素の 安定領域内の温度及び圧力を通過して、 最終焼結領域内の温度及び圧力まで 加熱加圧する工程 (以下、 「加熱加圧工程 (2) 」 とも記す。 ) とを備える 。 ここで、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域は、 温度を丁 ( ° 〇) 、 圧力を ( 09 a) とした時に、 下記式 1及び下記式 2を同時に満たす領域であり、 式 1 : ³-0· 0037丁+ 1 1. 301

式 2 : £-0. 085丁+ 1 1 7

最終焼結領域は、 温度を丁 ( ° 〇) 、 圧力を (〇 3 ) とした時に、 下記 式 4、 下記式 5及び下記式 6を同時に満たす領域であり、

式 4 : ³ 1 2

式 5 : ³-0· 0851+ 1 25. 5

式 6 : £-0· 085丁+ 1 5 1

加熱加圧する工程において、 前記ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入 温度は 500°〇以下である。 〇 2020/174922 30 卩(:170? 2020 /001437

[0150] なお、 上記式 2、 上記式 5及び上記式 6は、 以下の関係を示している。 式

2において、 圧力が 1 (〇 3) の時の温度を丁 1 (°〇 とする。 この場 合、 式 5において、 圧力が 1 (〇 3) の時の温度は、 丁 1 + 1 0 0 (°〇 ) となる。 また、 式 6において、 圧力が 1 (〇 3) の時の温度は、 丁 1 + 4 0 0 ( ° 〇 となる。 すなわち、 圧力を一定に保ったまま昇温した場合、 上記式 5を満たす温度は、 上記式 2を満たす温度よりも 1 0 0 °〇高く、 上記 式 6を満たす温度は、 上記式 2を満たす温度よりも 4 0 0 °〇高い。

[0151 ] 上記の製造方法により、 実施の形態 1の立方晶窒化硼素多結晶体を製造す ることができる。 すなわち、 この製造方法により得られる立方晶窒化硼素 多 結晶体は、 立方晶窒化硼素を 9 6体積%以上含み、 それを構成する立方晶窒 化硼素の粒径が微細 (すなわち平均粒径が 1 0 0 n m未満) で、 かつ、 立方 晶窒化硼素の転位密度が大きい (すなわち 8 X 1 0 1 5 /〇! 2 を超える) 多結晶 体となる。

[0152] 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 (2) は、 加熱加圧する工程 の後に、 加熱加圧する工程により得られた立方晶窒化 硼素多結晶体を、 最終 焼結領域内の温度及び圧力条件下で 1 〇分以上 3 0分以下保持する工程 (以 下、 「最終焼結工程」 とも記す。 ) を備えることができる。

[0153] 本開示の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 (2) の各工程の詳細につい て、 図 5を用いて下記に説明する。 なお、 図 5において、 矢印は加熱加圧経 路を示す。 また、 矢印の先端に丸が記載されている場合は、 その温度及び圧 力で一定時間保持されることを示す。 また、 図 5で示される加熱加圧経路は 一例であり、 これに限定されるものではない。

[0154] (熱分解窒化硼素準備工程)

立方晶窒化硼素多結晶体の原料として、 熱分解窒化硼素を準備する。 熱分 解窒化硼素は、 その粒径が熱分解により非常に細かくなって おり、 粒成長し にくいため、 転位密度が入りやすく、 転位密度が大きくなり易いと考えられ る。 熱分解窒化硼素は従来公知の合成法により製 造したもの、 及び、 市販の 熱分解窒化硼素のいずれも用いることができ る。 〇 2020/174922 31 卩(:170? 2020 /001437

[0155] (加熱加圧工程 (2) )

次に、 上記の熱分解窒化硼素を、 例えば、 常温常圧 (図 5の 3で示される 温度及び圧力) からウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度 及び圧力を通過 して、 最終焼結領域内の温度及び圧力まで加熱加圧 する (矢印口 1、 及 び口3) 。 加熱加圧工程 (2) において、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域へ の突入温度は 500 ° 〇以下である。 図 5では、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領 域への突入温度は、 矢印口 2と =_0. 0037丁+ 1 1. 301の線と の交点における温度 (約 400 ° 〇) である。

[0156] 加熱加圧工程 (2) において、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入温 度は 500 ° 〇以下 (約 200 ° 〇) である。 これによると、 六方晶窒化硼素粉 末は原子拡散が起こり難い環境で、 ウルツ鉱型窒化硼素に変換され、 その後 、 立方晶窒化硼素に変換される。 このため、 得られた立方晶窒化硼素多結晶 体は、 多結晶体中に比較的多くの格子欠陥を有し、 立方晶窒化硼素の転位密 度が大きく、 歪みが大きいため、 耐摩耗性が向上している。 よって、 該立方 晶窒化硼素多結晶体を用いた工具は、 精密加工においても、 長い工具寿命を 有することができる。

[0157] ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入温度 は 300°〇以下が好ましく、

1 00 ° 〇以下が更に好ましい。 突入温度が低いほど原子拡散が起こりにくく 、 格子欠陥が増加する傾向がある。 突入温度の下限は、 例えば 1 0 ° 〇とする ことができる。 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入温度 は 1 0 ° 〇以上 5 00 °〇以下が好ましく、 1 0 °〇以上 300 °〇以下がより好ましく、 1 0 °〇以 上 1 00°〇以下が更に好ましい。

[0158] 加熱加圧工程 (2) で到達する温度及び圧力は、 上記式 4、 上記式 5及び 上記式 6を同時に満たす。 熱分解窒化硼素を、 上記式 4、 上記式 5及び上記 式 5を同時に満たす最終焼結領域の温度及び圧 まで加熱加圧することによ り、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体は、 立方晶窒化硼素の含有率が大きく 、 かつ、 結晶粒のメジアン径 50が小さくなり、 更に長い工具寿命を達成 することができる。 〇 2020/174922 32 卩(:170? 2020 /001437

[0159] 加熱加圧工程 (2) で到達する圧力は、 上記式 3 2) で示される

。 すなわち、 1 2 0 3以上である。 該圧力の上限は特に限定されないが、 例えば、 2 0◦ 3とすることができる。

[0160] 加熱加圧工程 (2) において、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及 び圧力での保持時間は、 例えば 5分以上 6 0分以下とすることができる。

[0161 ] 加熱加圧工程 (2) において、 図 5の経路では、 加熱を行った後に加圧を 行い、 更に加熱を行っているが、 これに限定されない。 加熱加圧の方法は、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域への突入温度 を 5 0 0 °〇以下とすることがで き、 最終焼結領域内の温度及び圧力まで昇温昇圧 することができる経路であ ればよい。

[0162] 上記の通り、 六方晶窒化硼素粉末に加熱加圧工程 (2) を行うことにより 、 立方晶窒化硼素多結晶体を得ることができる 。

[0163] (最終焼結工程)

上記の加熱加圧工程 (2) の後に、 加熱加圧工程 (2) により得られた立 方晶窒化硼素多結晶体を、 最終焼結領域内の温度及び圧力条件下で 1 〇分以 上 3 0分以下保持する工程を備えることができる これにより、 得られた立 方晶窒化硼素多結晶体は、 立方晶窒化硼素の含有率が大きくなり、 更に長い 工具寿命を達成することができる。

実施例

[0164] 本実施の形態を実施例によりさらに具体的に 説明する。 ただし、 これらの 実施例により本実施の形態が限定されるもの ではない。

[0165] [実施例 1 ]

実施例 1では、 立方晶窒化硼素多結晶体の製造条件 (1) と、 得られる立 方晶窒化硼素多結晶体の構成 (組成、 結晶粒のメジアン径、 転位密度) と、 該立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工具で精 密加工を行った場合の工具寿命 との関係を調べた。

[0166] <立方晶窒化硼素多結晶体の作製 >

試料 1 _ 1〜試料 8の立方晶窒化硼素多結晶体を、 下記の手順に従って作 〇 2020/174922 33 卩(:170? 2020 /001437

製した。

[0167] (六方晶窒化硼素粉末準備工程)

六方晶窒化硼素粉末 (メジアン径 9 0 : 〇. 3 ^ ^) を 6 9準備した。 上記の六方晶窒化硼素粉末を、 モリブデン製のカプセルに入れ、 超高圧高温 発生装置に設置した。

[0168] (加熱加圧工程 ( 1 ) 及び最終焼結工程)

[試料 1 _ 1、 試料 1 _ 2、 試料 4 _ 3、 試料 4 _ 4、 試料 7、 試料 8 ] 上記の六方晶窒化硼素粉末を、 超高圧高温発生装置を用いて、 表 1 の 「開 始点」 の 「温度」 及び 「圧力」 欄に記載される温度及び圧力から、 「第 1段 階」 の 「到達温度」 及び 「到達圧力」 欄に記載される温度及び圧力まで昇温 及び/又は昇圧し、 「保持時間」 の欄に記載される長さで保持した。 なお、 保持欄の記載が 「一」 の場合は、 第 1段階の 「第 1段階」 の 「到達温度」 及 び 「到達圧力」 において保持せず、 第 2段階へ移行したことを示す。

[0169] 続いて、 温度を維持したまま、 表 1 の 「第 2段階」 の 「到達圧力」 欄に記 載される圧力まで昇圧し、 「保持時間」 の欄に記載される長さで保持した。

[0170] 続いて、 圧力を維持したまま、 表 1 の 「第 3段階」 の 「到達温度」 欄に記 載される温度まで昇温し、 「保持時間」 の欄に記載される長さで保持して立 方晶窒化硼素多結晶体を得た。 試料 1 _ 1、 試料 1 _ 2、 試料 4 _ 3、 試料 4— 4、 試料 7及び試料 8では、 「第 3段階」 に記載されている 「到達温度 」 、 「到達圧力」 及び 「保持時間」 での高温高圧処理は最終焼結工程に該当 する。

[0171 ] [試料 1 _ 3、 試料 1 _ 4 ]

上記の六方晶窒化硼素粉末を、 超高圧高温発生装置を用いて、 表 1 の 「開 始点」 の 「温度」 及び 「圧力」 欄に記載される温度及び圧力から、 温度を維 持したまま、 「第 1段階」 の 「到達圧力」 欄に記載される圧力まで昇圧し、 「保持時間」 の欄に記載される長さで保持した。

[0172] 続いて、 圧力を維持したまま、 表 1 の 「第 2段階」 の 「到達温度」 欄に記 載される温度まで昇温し、 「保持時間」 の欄に記載される長さで保持して立 〇 2020/174922 34 卩(:170? 2020 /001437

方晶窒化硼素多結晶体を得た。 試料 1 _ 3及び試料 1 _ 4では、 「第 2段階 」 に記載されている 「到達温度」 、 「到達圧力」 及び 「保持時間」 での高温 高圧処理は最終焼結工程に該当する。

[0173] [試料 2、 試料 3、 試料 4 1、 試料 4 2、 試料 5、 試料 6 ]

上記の六方晶窒化硼素粉末を、 超高圧高温発生装置を用いて、 表 1の 「開 始点」 の 「温度」 及び 「圧力」 欄に記載される温度及び圧力から、 圧力を維 持したまま、 「第 1段階」 の 「到達温度」 欄に記載される温度まで昇温した

[0174] 続いて、 温度を維持したまま、 表 1の 「第 2段階」 の 「到達圧力」 欄に記 載される圧力まで昇圧し、 「保持時間」 の欄に記載される長さで保持した。

[0175] 続いて、 温度を維持したまま、 表 1の 「第 3段階」 の 「到達圧力」 欄に記 載される圧力まで昇圧し、 「保持時間」 の欄に記載される長さで保持した。

[0176] 続いて、 圧力を維持したまま、 表 1の 「第 4段階」 の 「到達温度」 欄に記 載される温度まで昇温し、 「保持時間」 の欄に記載される長さで保持して立 方晶窒化硼素多結晶体を得た。 試料 2、 試料 3、 試料 4 _ 1、 試料 4 _ 2、 試料 5、 試料 6では、 「第 4段階」 に記載されている 「到達温度」 、 「到達 圧力」 及び 「保持時間」 での高温高圧処理は最終焼結工程に該当する 。

[0177] <評価 >

(組成の測定)

上記で得られた立方晶窒化硼素多結晶体中の 立方晶窒化硼素の含有率を、

X線回折法により測定した。 X線回折法の具体的な方法は、 実施の形態 1 に 示される通りであるため、 その説明は繰り返さない。 結果を表 1の 「〇巳 含有率」 欄に示す。

[0178] なお、 全ての試料において、 立方晶窒化硼素、 六方晶窒化硼素、 圧縮型六 方晶窒化硼素、 及び、 ウルツ鉱型窒化硼素以外の成分は同定されな かった。

[0179] (転位密度の測定)

上記で得られた立方晶窒化硼素多結晶体中の 立方晶窒化硼素の転位密度を 、 X線回折測定により得られるラインプロファ ルを修正 1 1 1 1 法 〇 2020/174922 35 卩(:170? 2020 /001437

及び修正 13「「6^八¥6 3〇11法を用いて解析することにより算出した 。 転位密度 の具体的な算出方法は、 実施の形態 1 に示される通りであるため、 その説明 は繰り返さない。 結果を表 1の 「転位密度」 欄に示す。

[0180] (結晶粒のメジアン径〇150の測定)

上記で得られた立方晶窒化硼素多結晶体に含 まれる結晶粒について、 円相 当径のメジアン径 50を測定した。 具体的な方法は、 実施の形態 1 に示さ れる通りであるため、 その説明は繰り返さない。 結果を表 1の 「メジアン径 ( 50) 」 欄に示す。

[0181] (切削試験)

上記で得られた立方晶窒化硼素多結晶体を、 レーザにより切断して仕上げ 加工し、 ボールエンドミルを作製した。 該ボールエンドミルを用いて、 以下 の切削条件で 3丁 乂 (登録商標) ( II 00巳 1 ~ 1〇 !_ IV!社製の ステンレスエ具鋼) の球面加工を行い、 工具性能を評価した。

[0182] (切削条件)

被削材: 3丁八 八乂 (登録商標) ( II 00巳 1 ~ 1〇 !_ IV!社製のス テンレスエ具鋼)

工具形状:ボールエンドミル、

回転数

送り : 1 000111111/111 1 门

切込み深さ (8 ) : 〇. 005111111

切削幅 (86) : 〇. 005111111

オイルミストあり

ø 1 0半球形状に加工

なお、 上記の切削条件は、 精密加工に該当する。

[0183] (工具性能評価)

被削材を上記の切削条件で切削し、 被削材の加工面の面粗さ 3が 0. 2 を超えるまでの 01 0半球形状の加工穴数を測定した。 加工穴数が大き いほど、 耐摩耗性に優れ、 工具寿命が長いことを示している。 加工面の面粗 〇 2020/174922 36 卩(:170? 2020 /001437

の具体的な測定方法は下記の通りである。

[0184] まず、 加工して得られた半球形状を上面から観察す る。 この時、 半球形状 は円形として観察される。 該円形の中心から、 半径方向に沿って、 半径の 1 / 3の長さ離れた位置を含むように、 〇. 53001111X0. 0706111111の 測定視野を設定する。

[0185] 上記の測定視野を走査型白色干渉計 ( ソ 9〇社製の

(登録商標) ) を用いて測定し、 表面形状データを取り込み、 ピックフィー ド方向に〇. の範囲での 8を計算させた。

[0186] 結果を表 1の 「加工穴数」 欄に示す。

[0187]

\¥0 2020/174922 37 卩(:17 2020 /001437

[0188] <考察 > 〇 2020/174922 38 卩(:170? 2020 /001437

[試料 1 _ 1〜試料 1 _ 3 ]

試料 1 _ 1〜試料 1 _ 3の製造方法は、 いずれも実施例に該当する。 試料 1 - 1〜試料 1 _ 3の立方晶窒化硼素多結晶体は、 いずれも立方晶窒化硼素 を 9 6体積%以上含み、 立方晶窒化硼素の転位密度が

きく、 結晶粒のメジアン径 5 0が 1 0 0 n 未満であり、 実施例に該当す る。 試料 1 _ 1〜試料 1 _ 3の立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工具は 精 密加工においても、 長い工具寿命を有することが確認された。

[0189] なお、 試料 1 _ 1〜試料 1 _ 3の加工穴数を比べると、 試料 1 _ 1及び試 料 1 _ 2は、 試料 1 _ 3よりも多かった。 これは、 試料 1 _ 1及び試料 1 —

2は、 第 1段階での到達温度及び到達圧力が、 上記式 1、 式 2及び式 3を同 時に満たす温度及び圧力であり、 該温度及び該圧力で 1 0分以上保持するエ 程を含むため、 該工程を含まない試料 1 _ 3よりも格子欠陥が生じやすく、 立方晶窒化硼素の転位密度が大きいため、 耐摩耗性が向上しているためと考 えられる。

[0190] 更に、 試料 1 _ 1及び試料 1 _ 2の加工穴数を比べると、 試料 1 — 1は、 試料 1 _ 2よりも多かった。 これは、 試料 1 — 1は、 試料 1 —2に比べて、 第 2段階での到達温度及び到達圧力 (すなわち、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定 領域内) での保持時間が長いため、 六方晶窒化硼素からウルツ鉱型窒化硼素 への変換率が更に向上し、 結果として立方晶窒化硼素への変換率が試料 1 _

2よりも高く、 立方晶窒化硼素の含有率が大きいためと考え られる。

[0191 ] [試料 1 _ 4 ]

試料 1 _ 4の製造方法は、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及び 圧 力で 1 0分以上保持する工程を含まず、 比較例に該当する。 試料 1 _ 4の立 方晶窒化硼素多結晶体は、 立方晶窒化硼素の転位密度が 7 . 6 1 〇 1 5 /〇! 2 であり、 比較例に該当する。 試料 1 _ 4の立方晶窒化硼素多結晶体を用いた 工具は、 工具寿命が短かった。 これは、 試料 1 _ 4の立方晶窒化硼素多結晶 体において、 立方晶窒化硼素の転位密度が低いため、 硬度が下がり、 耐摩耗 性が低下することにより、 被削材の加工面の面粗さの悪化をもたらした ため 〇 2020/174922 39 卩(:170? 2020 /001437

と考えられる。 なお、 試料 1 _4において、 立方晶窒化硼素の転位密度が低 い理由は、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内での保持時 間が短いためと推察 される。

[0192] [試料 2、 試料 3、 試料 4_ 1〜試料 4_3]

試料 2、 試料 3、 試料 4 _ 1〜試料 4 _ 3の製造方法は、 いずれも実施例 に該当する。 試料 2、 試料 3、 試料 4 _ 1〜試料 4 _ 3の立方晶窒化硼素多 結晶体は、 いずれも立方晶窒化硼素を 96体積%以上含み、 立方晶窒化硼素 の転位密度が 8X 1 0 15 / 2 より大きく、 結晶粒のメジアン径 50が 1 0 未満であり、 実施例に該当する。 試料 2、 試料 3、 試料 4 _ 1〜試料 4 _ 3の立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工具は 精密加工においても、 長 い工具寿命を有することが確認された。

[0193] なお、 試料 4 _ 1〜試料 4— 3の工具寿命を比べると、 試料 4— 1及び試 料 4— 2は、 試料 4— 3よりも長かった。 これは、 試料 4— 1及び試料 4—

2は、 第 2段階での到達温度及び到達圧力が、 上記式 1、 式 2及び式 3を同 時に満たす温度及び圧力であり、 該温度及び該圧力で 1 0分以上保持するエ 程を含むため、 該工程を含まない試料 4 _ 3よりも格子欠陥が生じやすく、 耐摩耗性が大きいためと考えられる。

[0194] [試料 4_4]

試料 4 _ 4の製造方法は、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内の温度及び 圧 力で 1 0分以上保持する工程を含まず、 比較例に該当する。 試料 4 _ 4の立 方晶窒化硼素多結晶体は、 立方晶窒化硼素の転位密度が 7. 2 1 〇 15 /〇! 2 であり、 比較例に該当する。 試料 4 _ 4の立方晶窒化硼素多結晶体を用いた 工具は、 工具寿命が短かった。 これは、 試料 4 _ 4の立方晶窒化硼素多結晶 体において、 立方晶窒化硼素の転位密度が低いため、 硬度が下がり、 耐摩耗 性が低下することにより、 被削材の加工面の面粗さの悪化をもたらした ため と考えられる。 なお、 試料 4 _ 4において、 立方晶窒化硼素の転位密度が低 い理由は、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内での保持時 間が短いためと推察 される。 〇 2020/174922 40 卩(:170? 2020 /001437

[0195] [試料 5、 試料 6 ]

試料 5及び試料 6の製造方法は、 いずれもウルツ鉱型窒化硼素の安定領域 内への突入温度が 5 0 0 °〇を超えており、 比較例に該当する。 試料 5及び試 料 6の立方晶窒化硼素多結晶体は、 いずれも立方晶窒化硼素の転位密度が 8 X 1 0 1 5 /〇1 2 以下であり、 比較例に該当する。 試料 5及び試料 6の立方晶窒 化硼素多結晶体を用いた工具は、 工具寿命が短かった。 これは、 試料 5及び 試料 6の製造方法では、 ウルツ鉱型窒化硼素の安定領域内への突入温 度が 5 0 0 ° 〇を超えているため、 格子欠陥が生じ難く、 得られた立方晶窒化硼素多 結晶体において立方晶窒化硼素の転位密度が 小さくなり、 耐摩耗性が低下し たためと考えられる。

[0196] [試料 7 ]

試料 7の製造方法は、 実施例に該当する。 試料 7の立方晶窒化硼素多結晶 体は、 立方晶窒化硼素を 9 6体積%以上含み、 立方晶窒化硼素の転位密度が 8 X 1 0 1 5 / 2 より大きく、 結晶粒のメジアン径 5 0が 1 0 0 n m未満で あり、 実施例に該当する。 試料 7の立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工具は 、 精密加工においても、 長い工具寿命を有することが確認された。

[0197] [試料 8 ]

試料 8の製造方法は、 加熱加圧工程の到達圧力 (第 3段階の到達圧力) が 1 0〇 3 未満であり、 比較例に該当する。 試料 8の立方晶窒化硼素多結晶 体は、 立方晶窒化硼素の含有率が 9 6体積%未満であり、 比較例に該当する 。 試料 8の立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工具は 工具寿命が短かった。 これは、 試料 8の製造方法は、 加熱加圧工程の到達圧力 (第 3段階の到達圧 力) が 1 0◦ 3未満であり、 最終焼結圧力も 1 0◦ 3未満であり、 立方 晶窒化硼素への変換率が低くなり、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体の立方 晶窒化硼素の含有率が小さいためと考えられ る。

[0198] [実施例 2 ]

実施例 2では、 上記の立方晶窒化硼素多結晶体の製造方法 (2) の製造条 件と、 得られる立方晶窒化硼素多結晶体の構成 (組成、 結晶粒のメジアン径 〇 2020/174922 41 卩(:170? 2020 /001437

、 転位密度) と、 該立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工具で精 密加工を行っ た場合の工具寿命との関係を調べた。

[0199] <立方晶窒化硼素多結晶体の作製 >

試料 9〜試料 1 2の立方晶窒化硼素多結晶体を、 下記の手順に従って作製 した。

[0200] (熱分解窒化硼素準備工程)

熱分解窒化硼素を 6 9準備した。 熱分解窒化硼素を、 モリブデン製のカブ セルに入れ、 超局圧局温発生装置に設置した。

[0201 ] [試料 9〜試料 1 2 ]

上記の熱分解窒化硼素を、 超高圧高温発生装置を用いて、 表 1の 「開始点 」 の 「温度」 及び 「圧力」 欄に記載される温度及び圧力から、 圧力を維持し たまま、 「第 1段階」 の 「到達温度」 欄に記載される温度まで昇温した。

[0202] 続いて、 温度を維持したまま、 表 1の 「第 2段階」 の 「到達圧力」 欄に記 載される圧力まで昇圧した。

[0203] 続いて、 圧力を維持したまま、 表 1の 「第 3段階」 の 「到達温度」 欄に記 載される温度まで昇温し、 1 5分間保持して、 立方晶窒化硼素多結晶体を得 た。 試料 9〜試料 1 2では、 「第 3段階」 に記載されている 「到達温度」 及 び 「到達圧力」 での 1 5分間の高温高圧処理は最終焼結工程に該当 る。

[0204] <評価 >

(組成、 転位密度、 及び、 結晶粒のメジアン径 5 0の測定) 得られた立方晶窒化硼素多結晶体について、 立方晶窒化硼素の含有率、 立 方晶窒化硼素の転位密度、 及び、 結晶粒のメジアン径 5 0を測定した。 具 体的な測定方法は、 実施の形態 1 に示される通りであるため、 その説明は繰 り返さない。 なお、 組成の測定においては、 全ての試料において、 立方晶窒 化硼素、 六方晶窒化硼素、 圧縮型六方晶窒化硼素、 及び、 ウルツ鉱型窒化硼 素以外の成分は同定されなかった。

[0205] 結果を表 2の 「〇巳!\1含有率」 、 「転位密度」 、 「メジアン径 (〇1 5 0)

」 の欄に示す。 〇 2020/174922 42 卩(:170? 2020 /001437

[0206] (切削試験)

上記で得られた立方晶窒化硼素多結晶体を、 レーザにより切断して仕上げ 加工し、 ボールエンドミルを作製した。 該ボールエンドミルを用いて、 以下 の切削条件で 3丁 乂 (登録商標) (ステンレスエ具鋼) の球 面加工を行い、 工具性能を評価した。

[0207] (切削条件)

被削材: 3丁八 八乂 (登録商標) ( II 00巳 1 ~ 1〇 1_ IV!社製のス テンレスエ具鋼)

工具形状:ボールエンドミル、 60 101 _ 1枚刃

回転数

送り : 1 000111111/111 1 门

切込み深さ (8 ) : 〇. 005111111

切削幅 (86) : 〇. 005111111

オイルミストあり

ø 1 2半球形状に加工

なお、 上記の切削条件は、 精密加工に該当する。

[0208] (工具性能評価)

被削材を上記の切削条件で切削し、 被削材の加工面の面粗さ 3が 0. 1 5 を超えるまでの ¢ 1 2半球形状の加工穴数を測定した。 加工穴数が大 きいほど、 耐欠損性に優れ、 工具寿命が長いことを示している。 加工面の面 粗さ 3の具体的な測定方法は実施例 1 に記載の方法と同一であるため、 そ の説明は繰り返さない。

[0209] 結果を表 2の 「加工穴数」 欄に示す。

[0210] \¥02020/174922 43 2020/001437

[表 2]

3 I

[021 1] <考察>

[試料 9 ]

試料 9の製造方法は、 加熱加圧工程の到達温度 (第 3段階の到達温度) が 低く、 最終焼結領域外であり、 比較例に該当する。 試料 9の立方晶窒化硼素 〇 2020/174922 44 卩(:170? 2020 /001437

多結晶体は、 立方晶窒化硼素の含有率が 9 6体積%未満であり、 比較例に該 当する。 試料 9の立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工具は 工具寿命が短か った。 これは、 試料 9の製造方法は、 加熱加圧工程の到達温度 (第 3段階の 到達温度) が低く、 最終焼結温度も低いため、 立方晶窒化硼素への変換率が 低くなり、 得られた立方晶窒化硼素多結晶体の立方晶窒 化硼素の含有率が小 さく、 工具に欠損が生じたためと考えられる。

[0212] [試料 1 〇〜試料 1 2 ]

試料 1 〇〜試料 1 2の製造方法は、 いずれも実施例に該当する。 試料 1 0 〜試料 1 2の立方晶窒化硼素多結晶体は、 いずれも立方晶窒化硼素を 9 6体 積%以上含み、 立方晶窒化硼素の転位密度が 8 X 1 0 1 5 / 2 より大きく、 結 晶粒のメジアン径 5 0が 1 0 0 n m未満であり、 実施例に該当する。 試料 1 〇〜試料 1 2の立方晶窒化硼素多結晶体を用いた工具は 精密加工におい ても、 長い工具寿命を有することが確認された。

[0213] 以上のように本開示の実施の形態および実施 例について説明を行なったが 、 上述の各実施の形態および実施例の構成を適 宜組み合わせたり、 様々に変 形することも当初から予定している。

[0214] 今回開示された実施の形態および実施例はす べての点で例示であって、 芾 I」 限的なものではないと考えられるべきである 。 本開示の範囲は上記した実施 の形態および実施例ではなく請求の範囲によ って示され、 請求の範囲と均等 の意味、 および範囲内でのすべての変更が含まれるこ とが意図される。