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Patent Searching and Data


Title:
POLYPROPYLENE FIBER, METHOD OF PRODUCING THE SAME AND UTILIZATION OF THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/123173
Kind Code:
A1
Abstract:
[PROBLEMS] To provide a polypropylene fiber (PP fiber) excellent in strength, heat tolerance and water-absorbing property; a method of producing the same; and a hydraulic composition, a rope, a sheet-type fiber construct and a composite material with an organic polymer each using the above PP fiber. [MEANS FOR SOLVING PROBLEMS] A PP fiber having a fiber strength of 7 cN/dtex or more and exhibiting either or both of the following characteristics: (i) a single shape exhibiting a maximum heat absorption peak shape having a half-value width of 10°C or lower and DSC characteristics exhibiting a melting enthalpy change (ΔH) of 125 J/g, and (ii) peaks-and-valleys characteristics having a single filament fineness of 0.1 to 3 dtex wherein peaks with a large diameter and non-peaks with a small diameter are alternately located along the fiber axis on the surface and the average interval ofΔ the peaks and valleys is from 6.5 to 20 μm and the average height thereof is from 0.35 to 1 μm; a method of producing the PP fiber as described above which comprises pre-stretching 3- to 10-fold an unstretched PP fiber having an IPF of 94% or more at 120 to 150°C, and then after-stretching it 1.2- to 3.0-fold at 170 to 190°C at a deformation speed of 1.5- to 15-fold/min under a stretch tension of 1.0 to 2.5 cN/dtex; and a hydraulic composition, a rope, a sheet-type fiber construct and a composite material with an organic polymer each using the above PP fiber.

Inventors:
KATAYAMA TAKASHI (JP)
IWASAKI YOSHIHIRO (JP)
NISHIYAMA MASAKAZU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/055370
Publication Date:
October 16, 2008
Filing Date:
March 24, 2008
Export Citation:
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Assignee:
KURARAY CO (JP)
KATAYAMA TAKASHI (JP)
IWASAKI YOSHIHIRO (JP)
NISHIYAMA MASAKAZU (JP)
International Classes:
D01F6/06; B29B11/16; C04B16/06; C04B28/02; C08K7/02; C08L23/12; C08L101/00; D02G3/44; D02J1/22; D03D15/00; D04H1/42; D07B1/02
Domestic Patent References:
WO2006016499A12006-02-16
Foreign References:
JP2002302825A2002-10-18
JP2002266158A2002-09-18
JP2002105748A2002-04-10
JP2000169203A2000-06-20
JP2000144523A2000-05-26
JPH0657055A1994-03-01
JPH059810A1993-01-19
JPH11116297A1999-04-27
JP2004018352A2004-01-22
JP2002302825A2002-10-18
JP2001020132A2001-01-23
JPH0441710A1992-02-12
JPS6126510B21986-06-20
JPS569268A1981-01-30
JPS61301B21986-01-07
JP2003293216A2003-10-15
JP3130288B22001-01-31
JPH0790785A1995-04-04
JP2002020926A2002-01-23
Other References:
MACROMOLECULES, vol. 6, 1973, pages 925
MACROMOLECULES, vol. 8, 1975, pages 687
See also references of EP 2130954A4
Attorney, Agent or Firm:
TSUJI, Yoshiko (12-12 Uchikanda 1-chom, Chiyoda-ku Tokyo, JP)
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Claims:
 アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなるポリプロピレン繊維であって、繊維強度が7cN/dtex以上であり、且つ走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であることを特徴とするポリプロピレン繊維。
 アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなるポリプロピレン繊維であって、繊維強度が7cN/dtex以上であり、且つ単繊維繊度が0.1~3dtexで、表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5~20μmで平均高さが0.35~1μmの凹凸を有することを特徴とするポリプロピレン繊維。
 アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなるポリプロピレン繊維であって、繊維強度が7cN/dtex以上であり、単繊維繊度が0.1~3dtexで、走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であり、表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5~20μmで平均高さが0.35~1μmの凹凸を有することを特徴とするポリプロピレン繊維。
 保水率が10質量%以上である請求項2または3に記載のポリプロピレン繊維。
 アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンを溶融紡糸した後に冷却固化して製造したポリプロピレン未延伸繊維を、温度120~150℃で延伸倍率3~10倍で前延伸した後、温度170~190℃で、変形速度1.5~15倍/分および延伸張力1.0~2.5cN/dtexの条件下に、延伸倍率1.2~3.0倍で後延伸することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のポリプロピレン繊維の製造方法。
[規則91に基づく訂正 14.05.2008]
 前延伸および後延伸の総延伸倍率が3.9~20倍である請求項5に記載の製造方法。
 ポリプロピレン未延伸繊維の製造時の溶融紡糸速度A(m/分)と、前延伸および後延伸の総延伸倍率B(倍)との積(A×B)が、3000~17000(m・倍/分)である請求項5または6に記載の製造方法。
 請求項1~4のいずれか1項に記載のポリプロピレン繊維を含有することを特徴とする水硬性組成物。
 請求項8に記載の水硬性組成物を用いて形成した水硬化物。
 成形物である請求項9に記載の水硬化物。
 請求項1~4のいずれか1項に記載のポリプロピレン繊維を用いて形成したことを特徴とするロープ構造体。
 請求項1~4のいずれか1項に記載のポリプロピレン繊維を含むことを特徴とするシート状繊維構造体。
 請求項1~4のいずれか1項に記載のポリプロピレン繊維の含有割合が50質量%以上である請求項12に記載のシート状繊維構造体。
 保水率が10質量%以上である請求項12または13に記載のシート状繊維構造体。
 請求項1~4のいずれか1項に記載のポリプロピレン繊維を有機重合体よりなるマトリックス中に含むことを特徴とする複合材料。
 有機重合体よりなるマトリックス中に含まれる前記ポリプロピレン繊維が、短繊維、長繊維、繊維束、糸、織編物、不織布または網の形態である請求項15に記載の複合材料。
 有機重合体が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および弾性重合体から選ばれる少なくとも1種の有機重合体である請求項15または16に記載の複合材料。
 請求項15~17のいずれか1項に記載の複合材料からなる成形体。
Description:
ポリプロピレン繊維、その製造 法およびその使用

 本発明は、強度、耐熱性および保水性に れるポリプロピレン繊維、当該ポリプロピ ン繊維の製造方法、並びに当該ポリプロピ ン繊維を用いた水硬性組成物および水硬化 、ロープ構造体、シート状繊維構造体並び 複合材料および成形体に関する。

 ポリプロピレン繊維は、耐薬品性、軽量 などの特性に優れ、容易に溶融でき、リサ クル性に優れ、しかも焼却してもハロゲン スなどの有害ガスを発生せず焼却処分が容 であるなどの理由で、多種多様な用途で広 用いられている。しかしながら、ポリプロ レン繊維は、合成繊維の中では耐熱性が十 に高いとはいえないため、耐熱性の向上が められている。

 例えば、リサイクル性および強度に優れる ートとして、ポリプロピレン繊維で補強し ポリオレフィンシートが知られており、こ 繊維補強シートの製造にあたっては、生産 の向上およびポリプロピレン繊維とポリオ フィンシート基材との間の接着性の向上な の点から、ポリオレフィンをできるだけ高 で溶融してポリオレフィンシート基材とポ プロピレン繊維の接着を行う必要がある。 かしながら、ポリプロピレン繊維の耐熱性 不十分で、繊維補強シートの製造時にポリ レフィンを高温で溶融してシートにするこ ができないため、生産速度を十分に高くす ことができず、更にはポリプロピレン繊維 ポリオレフィンシート基材との間の接着が 十分になり、生産性の低下、得られる繊維 強ポリオレフィンシートの強度不足などを いていた。
 また、ポリプロピレン繊維製の布帛をフィ ターとして用いることが行われており、当 フィルターは高温環境下で用いられること あることから、耐熱性の向上が求められて る。

 ポリプロピレン繊維の耐熱性の向上を目的 した従来技術としては、アイソタクチック ンタッド分率が96%以上98.5%未満で、メルト ローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10分で るホモポリプロピレン樹脂を溶融成形後に 伸してなる、170℃、10分間における熱収縮率 が10%以下で、融解ピーク温度が178℃以上であ るポリプロピレン繊維が知られている(特許 献1を参照)。
 しかしながら、このポリプロピレン繊維は 吸熱ピーク形状が、ブロードなダブル形状 たはシングル形状であって、結晶が不均一 あるため、耐熱性が未だ十分に高いとはい ない。

 他の従来技術としては、アイソタクチック 数が90~99%のポリプロピレンホモポリマーを 融紡糸するか又は溶融紡糸した後に延伸し なる、155~170℃で2つのDSC吸熱ピークを有す ポリプロピレン繊維が知られている(特許文 2を参照)。
 しかし、このポリプロピレン繊維では、2つ のDSC吸熱ピークのうちで低温側の吸熱ピーク がポリプロピレン繊維の耐熱性の指標をなし 、しかも吸熱ピーク形状がブロードであって 、結晶が不均一であるため、耐熱性が十分で はない。

 また、ポリプロピレン繊維は、様々な産 資材用途で利用される汎用の合成繊維であ 、多くの用途において、その疎水性が問題 なっている。例えば、紙、不織布などの用 では、主体をなす繊維に高い親水性が求め れることが多く、また様々なマトリックス 料用の補強材として用いられる繊維に対し もマトリックス中での均一分散性およびマ リックスに対する接着強度などの点から親 性が求められている。しかし、ポリプロピ ン繊維は疎水性で、親水性に劣ることから 親水性を求められる紙や不織布、補強材な の用途にはそのままでは使用しにくい。

 そこで、ポリプロピレン繊維の親水性の 上や保水性の向上を目的とした技術が従来 ら提案されている。例えば、ポリエチレン ックスを用いて粒子状の吸水性樹脂を樹脂 に均一に分散させたポリプロピレンを溶融 糸して吸水性ポリプロピレン繊維を製造す ことが知られている(特許文献3)。しかし、 の方法による場合は、粒子を添加したポリ ロピレンを紡糸・延伸することになり、紡 性および延伸性への影響が避けられず、十 な強度を有するポリプロピレン繊維が得ら ない。

 また、ポリプロピレン繊維に電離性放射線 照射することによって、またはポリプロピ ン繊維にエンボス加工・延伸処理を施すこ によって、或いはポリプロピレン繊維の引 取り速度に変化を持たせて溶融紡糸した後 延伸することによって、表面に凹凸を有す ポリプロピレン繊維を製造することが知ら ている(引用文献4~6)。しかしながら、これ の方法は、単繊維繊度50~100000デニールとい 繊度の大きなポリプロピレン繊維に対して 施されており、単繊維繊度が10dtex以下の細 度のポリプロピレン繊維に対しては、繊維 損傷が著しく適用が困難である。
 なかでも、特許文献4には、延伸前後に電離 性放射線を照射して、50~50000デニール、特に3 000~12000デニールのモノフィラメントを得る技 術が記載されているが、この手法を単繊維繊 度が10dtex以下、特に3dtex以下のポリプロピレ 繊維に実施した場合には、強度の低下、毛 の多発、形状ムラなどの発生が激しく、工 通過性、品質、品位のいずれにおいても問 を抱えることになる。

 また、ポリプロピレン未延伸糸を、熱風槽 125~155℃で延伸して製造した、9cN/dtex以上の 糸強度を有し、繊維表面の曲面に添って筋 の粗面構造を有するポリプロピレン繊維が られている(特許文献7)。しかしながら、こ ポリプロピレン繊維では、繊維表面に存在 る筋状の粗面構造の間隔および高さが共に さいために、繊維が十分な保水性を有して らず、マトリックスとの親和性が不十分で る。
 さらに、ポリプロピレン未延伸糸を、3.0~5.0 kg/cm 2 (温度133~151℃)の加圧飽和水蒸気により1段で 伸して延伸糸を製造する方法が知られてい (特許文献8)。しかし、この方法により得ら るポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊 )は、繊維表面における凹凸の形成が不十分 で、凹凸の間隔および高さが小さく、繊維が 十分な保水性を有しておらず、マトリックス との親和性が十分ではない。

 また、セメント、石膏、水滓スラグなどの 硬性物質を含む水硬性組成物を水和硬化(以 下「水硬化」ということがある)させること よって形成される水硬化物は、一般に強度 低く、しかも乾燥収縮時にクラックが発生 易い。
 そこで、セメントなどの水硬性物質に補強 繊維を加えることが従来から行われており 水硬性物質用の補強繊維としては従来石綿 使用されてきた。しかし、石綿は人体に有 であって安全面や衛生面から望ましくない とから、現在その使用が規制されている。
 近年、石綿に替わる水硬性物質用の補強用 維として種々の無機繊維、合成繊維が使用 れるようになっており、合成繊維としては リプロピレン繊維、ポリビニルアルコール 維、アクリル繊維などが主として用いられ いる。中でもポリプロピレン繊維は、耐ア カリ性、耐衝撃性に優れ、かつ軽量であり オートクレーブ養生が可能であることから 近年特に使用量が増えている。

 セメントなどの水硬性物質から水硬化物を 造する際のオートクレーブ養生の温度が高 ほど短時間で養生できることが知られてお 、かかる点から、耐熱性の高い補強用繊維 使用することができれば、養生時間が短く ることから、養生スペースが狭くてすみ、 かも型枠等の冶具の回転率も向上するため 水硬化物の生産にとって有利である。また オートクレーブ養生の温度は水硬化物の寸 安定性にも大きな影響を及ぼすことが知ら ていて、養生温度が高いほど、得られる水 化物の寸法安定性が向上する傾向にある。
 しかしながら、高温でのオートクレーブ養 に十分に耐えるような優れた耐熱性を有し しかも強度が大きく、更にはセメントなど 水硬性物質との親和性にも優れる、水硬性 質補強用のポリプロピレン繊維は未だ得ら ていないのが現状である。

 例えば、上記した特許文献1には、そこで 得られた170℃、10分間における熱収縮率が10% 下で、融解ピーク温度が178℃以上であるポ プロピレン繊維をセメント補強材として用 ることが記載されている。しかし、特許文 1で得られるポリプロピレン繊維は、前記し たように吸熱ピーク形状がブロードなダブル 形状またはブロードなシングル形状であって 、結晶が不均一であり、耐熱性が未だ十分に 高くないため、高温でのオートクレーブ養生 、特に150℃を超すような温度、更には170℃以 上の高温でのオートクレーブ養生には適して おらず、高い温度でオートクレーブ養生する と、ポリプロピレン繊維の強度低下や劣化な どが生じ易い。

 さらに、前記した特許文献4~6には、これら 発明で得られる表面に凹凸を形成したポリ ロピレン繊維を水硬性物質補強用に用いる とが記載されているが、特許文献4~6に記載 れているポリプロピレン繊維は、いずれも 繊維繊度が50~100000デニールであって繊度が きいために、水硬性物質に対するポリプロ レン繊維の親和性が不十分になり易く、し もそれらのポリプロピレン繊維を水硬性物 全体に均一に分散させて十分な補強を行う めには多量(多質量)のポリプロピレン繊維 配合が必要である。その上、特許文献4~6に 載されている凹凸の形成方法を単繊維繊度 10dtex以下の細繊度のポリプロピレン繊維に 用した場合には、繊維の損傷が著しく、細 度のポリプロピレン繊維に対しては事実上 用が困難である。
 なかでも、引用文献4に記載されているポリ プロピレン繊維は、繊度が大きく、水硬性物 質に対して十分な補強効果を発揮しにくい。

 また、前記した特許文献7にも、9cN/dtex以上 単糸強度を有し、繊維表面の曲面に添って 状の粗面構造を有するポリプロピレン繊維 コンクリートの補強用に用いることが記載 れているが、前述のように当該ポリプロピ ン繊維は十分な保水性を有していないため 、水硬性物質との親和性が不十分である。
 さらに、前記した特許文献8には、この特許 文献8の発明で得られるポリプロピレン延伸 の用途の1つとしてセメント用の補強繊維が げられているが、前述のように、特許文献8 の方法により得られるポリプロピレン延伸糸 (ポリプロピレン繊維)は、繊維表面における 凸の形成が不十分で、凹凸の間隔および高 が小さく、十分な保水性を有していないた 、マトリックスをなす水硬性物質との親和 が十分ではない。

 また、繊維製ロープには非常に数多くの用 があり、例えば、陸・海運、漁業、農業、 事現場などで広く用いられている。繊維製 ープ用の繊維素材としては天然繊維および 成繊維の両方が用いられているが、近年、 成繊維製のロープが主流を占めており、合 繊維製ロープとしては、ナイロン繊維、ビ ロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピ ン繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニ 繊維などから形成したロープが挙げられる そのうち、ポリプロピレン繊維製のロープ 、耐薬品性、軽量性に優れ、容易に溶融で てリサイクル性に優れ、しかも焼却しても ロゲンガスなどの有害ガスを発生しないと う長所を有していることから、従来からも リプロピレン繊維を用いたロープについて 提案や、ロープに用いるポリプロピレン繊 の製造方法などについての提案が色々なさ ている(例えば引用文献9および10を参照)。
 しかし、ポリプロピレン繊維は、合成繊維 中では耐熱性が十分に高いとはいえず、ポ プロピレン繊維を用いて形成したロープは 高温に晒されると、また摩擦や擦過時の摩 熱によって、ロープを形成しているポリプ ピレン繊維の溶融、それに伴うロープの溶 などが生じて、強度などの物性低下が生じ く、また高温下でのロープの伸びが大きい とから、耐熱性の向上が求められている。

 前記したように、特許文献1には、アイソ タクチックペンタッド分率が96%以上98.5%未満 、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0. 1~30g/10分であるホモポリプロピレン樹脂を溶 成形後に延伸して製造した、170℃、10分間 おける熱収縮率が10%以下で、融解ピーク温 が178℃以上である、耐熱性の向上を図った リプロピレン繊維が開示されているが、こ ポリプロピレン繊維は結晶が不均一で、耐 性が未だ十分に高くないため、このポリプ ピレン繊維を用いてロープを形成しても、 擦熱などによって溶断や物性低下が生じ易 、高温下での伸びが大きくなり易い。

 また、他の合成繊維製ロープと同様に、ポ プロピレン繊維製のロープにおいても、撚 合わせた際に、繊維同士および繊維束(スト ランド)間に滑りがなく、繊維同士および繊 束(ストランド)同士が噛み合って撚り合わせ が強く且つ緊密に行われることが、ロープを 形成する繊維間やストランド間のバラケの防 止、強度、耐伸び性、耐ヘタリ性、形状保持 性の向上の点から重要である。
 しかしながら、従来のポリプロピレン繊維 ロープでは、ポリプロピレン繊維間の滑り ポリプロピレン繊維束(ストランド)間の滑 が大きくて、撚り合わせが十分に強く且つ 密に行われにくいものであった。

 ポリプロピレン繊維間の滑りやポリプロピ ン繊維束(ストランド)間の滑りを低減する めの方法としては、ポリプロピレン繊維の 面に凹凸を設けたり、ポリプロピレン繊維 面を粗面化することが考えられる。しかし がら、従来知られている表面に凹凸を形成 たポリプロピレン繊維や、表面を粗面化し ポリプロピレン繊維では、その凹凸(粗面化) が不十分で、凹凸の形成に制約があり、当該 ポリプロピレン繊維を用いてロープを形成し ても、ポリプロピレン繊維(ポリプロピレン 、ストランド)の撚り合わせが緊密に且つ強 に行われにくく、強度、耐伸び性、耐ヘタ 性、形状保持性などに優れるポリプロピレ 繊維製ロープが得られない。
 例えば、先に挙げた特許文献4~6に記載され いる表面に凹凸を有する水硬性物質の補強 のポリプロピレン繊維では損傷の発生が大 く、これらのポリプロピレン繊維をロープ 製造に転用しても、力学的特性、耐ヘタリ 、形状保持性などに優れるポリプロピレン 維製ロープは得られない。

 また、先に挙げた特許文献7に記載されてい るコンクリート補強用のポリプロピレン繊維 では、繊維表面に存在する筋状の粗面構造の 間隔および高さが共に小さいため、繊維間の 滑り防止効果が不十分であり、ロープの製造 に転用しても、撚り合わせが緊密に且つ強固 に行われず、力学的特性、耐ヘタリ性、耐バ ラケ性、形状保持性などに優れるロープは得 られない。
 さらに、先に挙げた特許文献8に記載されて いるポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン 維)は、繊維表面における凹凸の形成が不十 で、凹凸の間隔および高さが小さいため、 はり繊維間の滑り防止効果が不十分であり ロープの製造に用いたとしても、撚り合わ が密に且つ強固に行われず、力学的特性、 ヘタリ性、耐バラケ性、形状保持性などに れるロープは得られない。

 また、ポリプロピレン繊維は、耐薬品性、 量性、リサイクル容易性、焼却時の有害ガ 非発生性などの特性を活かして織編物、不 布、合成紙、網状物などのシート状繊維構 体の製造に用いられている。
 ポリプロピレン繊維製のシート状繊維構造 の用途によっては耐熱性が求められており 例えば、前記したように、ポリプロピレン 維製布帛で補強したポリオレフィンシート 製造に当たっては、生産性の向上、ポリプ ピレン繊維製布帛とポリオレフィンシート 材との接着性の向上などの点から、ポリオ フィン基材シートを高温で溶融してリオレ ィンシート基材とポリプロピレン繊維製布 の接着を行う必要がある。しかし、ポリプ ピレン繊維製布帛の耐熱性が不十分なため ポリオレフィンシート基材を高温で溶融す ことができず、生産性の低下、ポリプロピ ン繊維製布帛とポリオレフィン基材との接 強度の不足などを招いている。さらに、ポ プロピレン繊維製のシート状繊維構造体を ィルター、セパレータ、衣類(特に運動着な ど)などの用途に用いる場合にも、高温環境 や、摩擦の生ずる状態で用いられることが ることから、耐熱性の向上が求められてい 。

 前記した特許文献1および2に記載されて る耐熱性の向上を図ったポリプロピレン繊 をシート状繊維構造体の製造に用いること 考えられるが、特許文献1および2に記載され ているポリプロピレン繊維は、結晶が不均一 で、耐熱性が未だ十分に高くはないため、耐 熱性に優れるシート状繊維構造体が得られな い。

 また、ポリプロピレン繊維製の合成紙や 織布は、フィルターやセパレーターなどの 業資材用途に利用されているが、疎水性に るために、水系のろ過フィルターやアルカ 2次電池セパレーターなどのような高い親水 性が求められ用途にはそのままでは使用しに くい。

 前記したように特許文献3には、ポリエチ レンワックスを用いて粒子状の吸水性樹脂を 添加分散させたポリプロピレンを溶融紡糸し て得られる吸水性ポリプロピレン繊維が記載 されているが、このポリプロピレン繊維は強 度が不十分であり、織編物、不織布、合成紙 、網状物などのシート状繊維構造体にしたと きに十分な強度が得られない。

 また、先に挙げた特許文献4~8に記載されて る表面に凹凸を有するポリプロピレン繊維 、織編物、不織布、合成紙、網状物などの ート状繊維構造体の製造に転用したとして 、その凹凸(粗面化)が不十分であって、凹 の形成に制約があり、またポリプロピレン 維自体の強度が低いために、保水性が高く 強度に優れるシート状繊維構造体は得られ い。
 具体的には、特許文献4~6、特に特許文献4に 記載されている凹凸の形成方法によって得ら れるポリプロピレン繊維(特に単繊維繊度が10 dtex以下の細繊度ポリプロピレン繊維)では損 の発生が著しいため、当該ポリプロピレン 維を用いてシート状繊維構造体を形成して 、強度に優れるシート状繊維構造体は得ら ない。

 また、特許文献7に記載されているポリプ ロピレン繊維では、繊維表面に存在する筋状 の粗面構造の間隔および高さが共に小さいた め、このポリプロピレン繊維を用いても保水 性に優れるシート状繊維構造体は得られない 。更に、特許文献8に記載されているポリプ ピレン繊維では、繊維表面における凹凸の 成が不十分で、凹凸の間隔および高さが小 いため、このポリプロピレン繊維を用いて やはり保水性に優れるシート状繊維構造体 得られない。

 さらに、ポリプロピレン繊維の用途の1つと して、有機重合体用の補強繊維としての使用 が挙げられる。その具体例として、前述のポ リプロピレン繊維補強ポリオレフィンシート が挙げられるが、ポリプロピレン繊維の耐熱 性が十分でないために、生産性の低下、ポリ プロピレン繊維とポリオレフィン基材と接着 強度の不足を招いていることは前記したとお りである。
 また、ポリプロピレン繊維をポリオレフィ 以外の有機重合体用の補強繊維として用い ポリプロピレン繊維と有機重合体との複合 料や成形体を製造する場合にも、ポリプロ レン繊維の低耐熱性、有機重合体に対する 接着性によって十分な補強効果が得られな 場合があり、かかる点からも、耐熱性に優 、しかも有機重合体との接着性に優れるポ プロピレン繊維が求められているが、前記 た特許文献1および2に記載されているポリ ロピレン繊維は、耐熱性が未だ十分に高い はいえないため、有機重合体用の補強繊維 して必ずしも有効であるとは言えない。

 さらに、前記した特許文献4~8に記載され いる表面に凹凸を有するポリプロピレン繊 はでは、表面の凹凸(粗面化)が不十分であ たり、凹凸の形成に制約があったり、強度 不足するため、これらのポリプロピレン繊 を有機重合体用の補強繊維として転用して 、有機重合体との接着が不十分で、強度な に優れる有機重合体とポリプロピレン繊維 の複合材料や成形体などが得られない。

特開2002-302825号公報

特開2001-20132号公報

特開平4-41710号公報

特公昭61-26510号公報

特開昭56-9268号公報

特公昭61-301号公報

特開2003-293216号公報

特許第3130288号公報

特開平7-90785号公報

特開2002-20926号公報 「Macromolecules」、第6巻、1973年、p925 「Macromolecules」、第8巻、1975年、p687

 本発明の目的は、均一な結晶構造を有して て、耐熱性に優れ、しかも強度に優れるポ プロピレン繊維を提供することである。
 本発明の目的は、保水性が高く、強度に優 るポリプロピレン繊維を提供することであ 。
 更に、本発明の目的は、強度、耐熱性およ 保水性に優れるポリプロピレン繊維を提供 ることである。
 そして、本発明の目的は、前記したポリプ ピレン繊維を円滑に製造する方法を提供す ことである。

 本発明の更なる目的は、耐熱性および強度 優れるポリプロピレン繊維を補強繊維とし 含有し、養生温度の高低に拘わらず強度お び耐久性に優れる水硬化物を形成すること でき、特に高温でオートクレーブ養生した 合にもポリプロピレン繊維の劣化や強度低 がなく、強度および耐久性に優れる水硬化 を短縮された養生時間で製造することので る水硬性組成物並びに当該水硬性組成物よ なる水硬化物を提供することである。
 また、本発明の目的は、耐熱性および強度 優れると共に、保水性が高くて、マトリッ スをなす水硬性物質との親和性に優れるポ プロピレン繊維を含有し、強度や耐久性に れる水硬化物を形成することのできる水硬 組成物並びに当該水硬性組成物よりなる水 化物を提供することである。

 さらに、本発明の目的は、強度が大きく しかも耐熱性に優れていて、高温に曝され も、また摩擦や擦過を受けてもロープを形 しているポリプロピレン繊維の溶融、溶断 物性低下がなく、それによってロープの切 や高温下でのロープの伸びが生じにくく、 の上ロープを形成している繊維間や繊維束( ストランド)間の滑りが小さくて繊維同士お び繊維束(ストランド)同士が緊密に強く撚り 合わさっていて、強度、耐伸び性、耐ヘタリ 性、形状保持性などに優れるポリプロピレン 繊維製のロープ構造体を提供することである 。

 さらに、本発明の目的は、保水性に優れ、 かも強度にも優れる、ポリプロピレン繊維 の不織布、合成紙、織編物、網状物などの ート状繊維構造体を提供することである。
 また、本発明の目的は、強度に優れ、しか 耐熱性にも優れるポリプロピレン繊維製の ート状繊維構造体を提供することである。
 また、本発明の目的は、保水性、強度およ 耐熱性に優れるポリプロピレン繊維製のシ ト状繊維構造体を提供することである。

 さらに、本発明の目的は、強度が大きく、 かも耐熱性に優れていて、高温に曝されて 繊維の溶融、溶断、物性低下がなく、更に 有機重合体との接着性に優れるポリプロピ ン繊維を、有機重合体よりなるマトリック 中に含む、強度などの力学的特性に優れ、 かも耐熱性および耐久性に優れる、ポリプ ピレン繊維と有機重合体との複合材料を提 することである。
 そして、本発明の目的は、前記した複合材 からなる、力学的特性、耐熱性および耐久 に優れる成形体を提供することである。

 本発明者らは、前記した目的を達成するた に鋭意検討を重ねてきた。その結果、特定 上のアイソタクチックペンタッド分率(IPF) 有するポリプロピレンを用いて、走査示差 量測定(DSC)において特定の吸熱・融解特性を 示し、均一な結晶構造を有していて、高い耐 熱性を有し、しかも強度にも優れる、従来に ないポリプロピレン繊維を得ることができた 。
 さらに、本発明者らは、前記した特定以上 アイソタクチックペンタッド分率(IPF)を有 るポリプロピレンを用いて、繊維表面に、 径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿 て交互に存在してなる所定の平均間隔およ 平均高さの凹凸を有する、単繊維繊度が小 く、しかも強度に優れ、高い保水性を有す 従来にないポリプロピレン繊維、更には前 した特定の吸熱・融解特性と繊維表面の凹 構造を併せ持つ、強度、耐熱性および保水 に優れる従来にないポリプロピレン繊維を ることができた。

 より具体的には、本発明者らは、特定以上 アイソタクチックペンタッド分率(IPF)を有 るポリプロピレンを用いて溶融紡糸した後 冷却固化してポリプロピレン未延伸繊維を 造し、それにより得られるポリプロピレン 延伸繊維を特定の条件下で前延伸および後 伸することによって、走査示差熱量測定(DSC) において特定の吸熱・融解特性を示し、均一 な結晶構造を有していて、耐熱性に優れ、し かも強度にも優れる、従来にないポリプロピ レン繊維を製造することができた。
 さらに、本発明者らは、前記した特定の方 を採用して単繊維繊度が3dtex以下、特に0.1~3 dtexのポリプロピレン繊維を製造すると、繊 表面に、大径の隆起部と小径の非隆起部が 維軸に沿って交互に存在した所定の平均間 および平均高さの凹凸を有していて保水性 優れ、しかも強度に優れるポリプロピレン 維が得られること、また当該ポリプロピレ 繊維における走査示差熱量測定(DSC)による吸 熱・融解特性を特定のものにすることで、ポ リプロピレン繊維の結晶構造が均一になり、 高保水性および高強度という特性と併せて、 耐熱性にも優れたものになることを見出した 。

 そして、本発明者らは、上記で得られた リプロピレン繊維をセメントなどの水硬性 質に配合して水硬性組成物を調製し、当該 硬性組成物を用いて水硬化物を製造するこ を試みた。その結果、上記で得られたポリ ロピレン繊維を含有する水硬性組成物に水 混合した混合物を成形し、それを養生して られる水硬化物(水硬化成形物)が極めて高 強度を有することを見出した。特に、上記 得られたポリプロピレン繊維を含有する水 性組成物を用いて水硬化成形物などの水硬 物を製造するに当たっては、養生温度に関 なく高い強度を有する水硬化物が得られ、10 0℃を超える高温での養生、常温での養生、 れらの間の温度での養生のいずれによって 水硬化物の強度は高いものとなること、特 100℃を超える高温、そのうちでも150℃を超 る高温で、特に170℃以上の高温でオートク ーブ養生を行った場合には、水硬性組成物 のポリプロピレン繊維の劣化や強度低下を ずることなく当初の高い強度を維持しつつ ポリプロピレン繊維表面の特定の凹凸構造 伴う水硬化物との高い親和性によって、常 で養生した場合と同等の高い強度を有する 硬化物を、常温養生に比べて大幅に短縮し 養生時間で生産性よく製造できることを見 した。

 さらに、本発明者らは、上記で得られた リプロピレン繊維を用いてロープを製造す ことを試みた。その結果、上記で得られた リプロピレン繊維を用いてロープを形成す と、強度が大きく、しかも耐熱性に優れて て、高温に曝されても、更に摩擦や擦過を けても、ロープを形成しているポリプロピ ン繊維の溶融、溶断、物性低下などが生じ くく、それによってロープの切断が生じに いこと、高温下でのロープの伸びが小さい と、その上ロープを形成している繊維間や 維束(ストランド)間の滑りが小さくて繊維 士および繊維束(ストランド)同士が緊密に強 く撚り合わせられて、強度、耐伸び性、耐ヘ タリ性、形状保持性などに優れるロープが得 られることを見出した。

 また、本発明者らは、上記で得られたポ プロピレン繊維を用いて、織編物、不織布 合成紙、網状物などのシート状繊維構造体 製造したところ、当該シート状繊維構造体 、高い保水率を有し保水性に優れること、 かも強度および耐熱性に優れることを見出 た。

 さらに、本発明者らは、上記で得られた リプロピレン繊維を有機重合体用の補強繊 として用いて、有機重合体よりなるマトリ クス中に当該ポリプロピレン繊維を含む複 材料をつくり、当該複合材料から成形体を 造することを試みた。その結果、それによ 得られる複合材料および成形体は、有機重 体よりなるマトリックス中に含まれるポリ ロピレン繊維が、強度が大きく、しかも耐 性に優れていて、高温に曝されても、溶融 溶断、物性低下などが生じにくく、更には リプロピレン繊維表面の特定の凹凸による 機重合体マトリックスに対する投錨効果に って、引張強度、衝撃強度、曲げ弾性率、 げ強度などの力学的特性に優れることを見 し、上記した種々の知見に基づいて本発明 完成した。

 すなわち、本発明は、
(1) アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94 %以上のポリプロピレンよりなるポリプロピ ン繊維であって、繊維強度が7cN/dtex以上であ り、且つ走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピ ク形状が10℃以下の半価幅を有するシング 形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/ g以上であることを特徴とするポリプロピレ 繊維(以下これを「ポリプロピレン繊維A」と いうことがある);
(2) アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94 %以上のポリプロピレンよりなるポリプロピ ン繊維であって、繊維強度が7cN/dtex以上であ り、且つ単繊維繊度が0.1~3dtexで、表面に大径 の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って 交互に存在してなる平均間隔が6.5~20μmで平均 高さが0.35~1μmの凹凸を有することを特徴とす るポリプロピレン繊維(以下これを「ポリプ ピレン繊維B」ということがある);
(3) アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94 %以上のポリプロピレンよりなるポリプロピ ン繊維であって、繊維強度が7cN/dtex以上であ り、単繊維繊度が0.1~3dtexで、走査示差熱量測 定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半 幅を有するシングル形状で、融解エンタル ー変化量(△H)が125J/g以上であり、表面に大 の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿っ 交互に存在してなる平均間隔が6.5~20μmで平 高さが0.35~1μmの凹凸を有することを特徴と るポリプロピレン繊維(以下これを「ポリプ ピレン繊維C」ということがある);および、
(4) 保水率が10質量%以上である前記(2)または( 3)のポリプロピレン繊維;
である。

[規則91に基づく訂正 14.05.2008]
 そして、本発明は、
(5) アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94 %以上のポリプロピレンを溶融紡糸した後に 却固化して製造したポリプロピレン未延伸 維を、温度120~150℃で延伸倍率3~10倍で前延伸 した後、温度170~190℃で、変形速度1.5~15倍/分 よび延伸張力1.0~2.5cN/dtexの条件下に、延伸 率1.2~3.0倍で後延伸することを特徴とする前 (1)~(4)のいずれかのポリプロピレン繊維の製 造方法;
(6) 前延伸および後延伸の総延伸倍率が3.9~20 である前記(5)の製造方法;および、
(7) ポリプロピレン未延伸繊維の製造時の溶 紡糸速度A(m/分)と、前延伸および後延伸の 延伸倍率B(倍)との積(A×B)が、3000~17000(m・倍/ )である前記(5)または(6)の製造方法;
である。

 さらに、本発明は、
(8) 前記(1)~(4)のいずれかのポリプロピレン繊 維を含有することを特徴とする水硬性組成物 ;
(9) 前記(8)の水硬性組成物を用いて形成した 硬化物;および、
(10) 成形物である前記(9)の水硬化物;
である。

 また、本発明は、
(11) 前記(1)~(4)のいずれかのポリプロピレン 維を用いて形成したことを特徴とするロー 構造体である。

 さらに、本発明は、
(12) 前記(1)~(4)のいずれかのポリプロピレン 維を含むことを特徴とするシート状繊維構 体;
(13) 前記(1)~(4)のいずれかのポリプロピレン 維の含有割合が50質量%以上である前記(12)の ート状繊維構造体;および、
(14) 保水率が10質量%以上である前記(12)また (13)のシート状繊維構造体;
である。

 そして、本発明は、
(15) 前記(1)~(4)のいずれかのポリプロピレン 維を有機重合体よりなるマトリックス中に むことを特徴とする複合材料;
(16) 有機重合体よりなるマトリックス中に含 まれる前記ポリプロピレン繊維が、短繊維、 長繊維、繊維束、糸、織編物、不織布または 網の形態である前記(15)の複合材料;
(17) 有機重合体が、熱可塑性樹脂、熱硬化性 樹脂および弾性重合体から選ばれる少なくと も1種の有機重合体である前記(15)または(16)の 複合材料;および、
(18) 前記(15)~(17)のいずれかの複合材料からな る成形体;
である。

 本発明のポリプロピレン繊維(ポリプロピレ ン繊維A~C)は、7cN/dtex以上の高い繊維強度を有 する。
 本発明のポリプロピレン繊維のうち、アイ タクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上の リプロピレンよりなり、しかも走査示差熱 測定(DSC)における吸熱ピーク形状が10℃以下 半価幅を有するシングル形状で、その融解 ンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であると う特性を備えているポリプロピレン繊維(ポ リプロピレン繊維A、ポリプロピレン繊維C)は 、当該特性を備えていることによって、結晶 性が高く、均一な結晶構造を有し、耐熱性に 極めて優れており、高温に曝されても、また 摩擦を受けても、簡単に融解せず、繊維形状 および繊維強度を良好に維持することができ る。
 本発明のポリプロピレン繊維のうち、表面 、大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸 沿って交互に位置してなる平均間隔が6.5~20 mで平均高さが0.35~1μmの凹凸を有しているポ プロピレン繊維(ポリプロピレン繊維B、ポ プロピレン繊維C)は、10%以上の高い保水率を 有しており、しかも当該凹凸構造による投錨 効果によって水硬性物質、有機重合体、その 他の材料との接着性に優れている。
 特に、上記した本発明で規定する特定のDSC 性を備え且つ前記した特定の凹凸構造を有 る本発明のポリプロピレン繊維(ポリプロピ レン繊維C)は、繊維強度が大きく、結晶性が く、均一な結晶構造を有し、耐熱性に優れ 保水性に優れ、しかも他の材料との接着性 も優れている。
 本発明のポリプロピレン繊維は、前記した れた特性を活かして、短繊維、長繊維、繊 束などの形態で、または織編物、不織布、 状体、紙などの繊維構造体の形態にして、 々の用途に有効に使用することができる。

 本発明の製造方法による場合は、上記し 特定のDSC特性を有する本発明のポリプロピ ン繊維、上記した特定の凹凸構造を有する 発明のポリプロピレン繊維、さらに上記し 特定のDSC特性と凹凸構造を有する本発明の リプロピレン繊維を、円滑に製造すること できる。

 7cN/dtex以上の高い繊維強度を有し且つ本発 で規定する上記した特定のDSC特性を備える 熱性に優れ且つ強度に優れる本発明のポリ ロピレン繊維(ポリプロピレン繊維A、ポリプ ロピレン繊維C)を含有する本発明の水硬性組 物は、100℃を超える高温、特に150℃以上の 温、更には170℃以上の高温で養生した場合 も当該水硬性組成物に含まれるポリプロピ ン繊維が繊維形状および優れた強度を維持 、当該水硬性組成物を用いることにより、 縮された養生時間で強度および耐久性に優 る水硬化物を円滑に生産性良く製造するこ ができる。
 7cN/dtex以上の高い繊維強度を有し且つ繊維 面に本発明で規定する上記した特定の凹凸 造を有する本発明のポリプロピレン繊維(ポ プロピレン繊維B、ポリプロピレン繊維C)は 10%以上という高い保水率を有するためセメ トなどの水硬性物質との親和性が高く、更 は前記特定の凹凸形状から繊維/セメント界 面における摩擦力も高く、水硬化物の破壊時 などのポリプロピレン繊維の強度が有効に利 用されるので、当該ポリプロピレン繊維を含 有する本発明の水硬性組成物を用いることに より、強度の高い水硬化物を円滑に得ること ができる。
 特に、本発明の水硬性組成物において、ポ プロピレン繊維として、単繊維繊度が0.1~3dt ex、繊維強度が7cN/dtex以上で、本発明で規定 る上記した特定のDSC特性を有し且つ繊維表 に前記した特定の凹凸特性を兼ね備える且 本発明で規定する上記した特定の凹凸を繊 表面に有するポリプロピレン繊維(ポリプロ レン繊維C)を配合した本発明の水硬性組成 は、100℃を超える高温、特に150℃以上、更 は170℃以上の高温での養生、常温養生、自 養生(例えば80℃以下)、或いはその中間温度 の養生いずれの養生を行った場合にも、強 に優れる水硬化物を形成する。

 本発明で規定する上記した特定のDSC特性と 維強度を有するポリプロピレン繊維(ポリプ ロピレン繊維A、ポリプロピレン繊維C)を用い て形成した本発明のロープ構造体は、強度が 高く、しかも耐熱性に優れていて、高温に曝 されても、また摩擦や擦過を受けても、ロー プ構造体を形成しているポリプロピレン繊維 の溶融、切断、溶断、物性低下がないため、 ロープ構造体の切断や破損が生じにくく、高 温下での伸びが小さく、強度などの力学的特 性を長期にわたって維持することができ、耐 久性にも優れている。
 さらに、本発明で規定する上記した繊維強 、単繊維繊度および繊維表面の凹凸特性を するポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊 維B、ポリプロピレン繊維C)を用いて形成して なる本発明のロープ構造体は、繊維表面にお ける前記特定の凹凸構造により、ポリプロピ レン繊維間の滑りがなく、ポリプロピレン繊 維間の噛合やポリプロピレン繊維束(ストラ ド)間の噛合がなされた状態で繊維同士およ 繊維束(ストランド)同士が緊密に強く撚り わせられているため、強度、耐伸び性、耐 タリ性、形状保持性などに優れている。
 特に、本発明で規定する上記した特定の繊 強度、DSC特性、単繊維繊度および繊維表面 おける凹凸構造を有する本発明のポリプロ レン繊維(ポリプロピレン繊維C)を用いて形 した本発明のロープ構造体は、強度が高く 耐熱性に優れており、しかもロープ構造体 形成している繊維同士および繊維束(ストラ ンド)同士が緊密に強く撚り合わさっていて 強度、耐伸び性、耐ヘタリ性、形状保持性 どに一層優れている。

 本発明で規定する上記した特定の繊維強度 よびDSC特性を有する本発明のポリプロピレ 繊維(ポリプロピレン繊維A、ポリプロピレ 繊維C)を用いて形成してなる本発明のシート 状繊維構造体は、強度が高く、しかも耐熱性 に優れていて、高温に曝されても、強度など の力学的特性を長期にわたって維持すること ができ、耐久性に優れている。
 本発明で規定する上記した繊維強度、単繊 繊度および繊維表面の凹凸特性を有するポ プロピレン繊維(ポリプロピレン繊維B、ポ プロピレン繊維C)を用いて形成してなる本発 明のシート状繊維構造体は、高い保水率(一 に10質量%以上の保水率)を有し、保水性に優 、しかも強度に優れている。
 特に、本発明で規定する上記した特定の繊 強度、DSC特性、単繊維繊度および繊維表面 おける凹凸構造を有する本発明のポリプロ レン繊維(ポリプロピレン繊維C)を用いて形 してなる本発明のシート状繊維構造体は、 熱性、強度、耐久性および保水性のすべて おいて優れている。
 本発明のシート状繊維構造体(織編物、不織 布、合成紙、網状物など)は、前記した特性 活かして種々の用途、例えば、フィルター セパレータ、補強材、衣類、ワイパー、化 落しなどの用途に有効に使用することがで る。

 本発明で規定する上記した特定の繊維強度 よびDSC特性を有する本発明のポリプロピレ 繊維(ポリプロピレン繊維A、ポリプロピレ 繊維C)を有機重合体よりなるマトリックス中 に含む本発明の複合材料および当該複合材料 からなる成形体は、当該ポリプロピレン繊維 が耐熱性に極めて優れていて高温に曝されて も簡単に融解せずに、繊維形状および繊維強 度を良好に維持するため、引張強度、衝撃強 度、曲げ弾性率、曲げ強度などの力学的特性 に優れ、しかも耐熱性および耐久性に優れて いる。
 本発明で規定する上記した繊維強度、単繊 繊度および繊維表面の凹凸特性を有するポ プロピレン繊維(ポリプロピレン繊維B、ポ プロピレン繊維C)を有機重合体よりなるマト リックス中に含む本発明の複合材料およびそ れからなる成形体は、当該ポリプロピレン繊 維の高い繊維強度、繊維表面における特定凹 凸構造による有機重合体マトリックスへの投 錨効果に伴う有機重合体との高い接着性によ り、引張強度、衝撃強度、曲げ弾性率、曲げ 強度などの力学的特性に優れ、しかも耐久性 に優れている。
 特に、本発明で規定する上記した特定の繊 強度、DSC特性、単繊維繊度および繊維表面 おける凹凸構造を有する本発明のポリプロ レン繊維(ポリプロピレン繊維C)を有機重合 マトリックス中に含む本発明の複合材料お びそれからなる成形体は、ポリプロピレン 維の有する前記した優れた特性により、引 強度、衝撃強度、曲げ弾性率、曲げ強度な の力学的特性に一層優れ、しかも耐熱性お び耐久性に一層優れている。

図1はポリプロピレン繊維におけるDSC測 定による吸熱ピーク形状を模式的に示した図 である。 図2はポリプロピレン繊維のDSC測定によ る吸熱ピークにおける半価幅の求め方を示し た図である。 図3はポリプロピレン繊維の凹凸形状を 模式的に示すと共に、凹凸の平均間隔および 平均高さの求め方について説明した図である 。 図4は実施例1で得られたポリプロピレ 繊維を走査型電子顕微鏡で撮影した写真で る。 図5はロープのグラインダー捻回摩耗切 断回数の測定方法を示した図である。

 以下に本発明について詳細に説明する。
 本発明のポリプロピレン繊維は、アイソタ チックペンタッド分率(IPF)(以下単に「IPF」 いうことがある)が94%以上のポリプロピレン よりなるポリプロピレン繊維であり、IPFが95~ 99%のポリプロピレンからなっていることが好 ましく、IPFが96~99%のポリプロピレンからなる ことがより好ましい。
 ポリプロピレンのIPFが94%未満であると、ポ プロピレン繊維に均一な結晶構造を形成さ にくくなって、十分な強度および耐熱性を する、本発明のポリプロピレン繊維が得ら なくなる。一方、IPFが99%を超えるポリプロ レンは工業的には量産が困難であるため、 スト面などから実用性が低い。

 本発明のポリプロピレン繊維は、ポリプロ レンとして、IPFが前記した値を満たすもの あれば、1種類のプロピレン単独重合体から 形成されていてもよいし、またはプロピレン と他の共重合性単量体からなるプロピレン共 重合体から形成されていてもよい。或いは、 混合物全体でのIPFが前記した値を満たすもの であれば、2種類以上のプロピレン単独重合 の混合物、1種または2種以上のプロピレン単 独重合体と1種または2種以上のプロピレン共 合体の混合物、または2種類以上のプロピレ ン共重合体の混合物から形成されていてもよ い。
 また、本発明のポリプロピレン繊維は、ポ プロピレン繊維を構成するプロピレン系重 体全体でのIPFが前記した値を満たすもので れば、2種類以上のプロピレン単独重合体お よび/またはプロピレン共重合体を用いて形 された芯鞘型、海島型、サイドバイサイド などの複合形態または混合形態を有する複 紡糸繊維または混合紡糸繊維、ポリプロピ ンと他の重合体からなる芯鞘型、海島型、 イドバイサイド型などの複合繊維などであ てもよい。

 ポリプロピレンにおけるIPFは、その立体規 性を表わす指標であり、ポリプロピレンを 維化した際の結晶性に影響を及ぼす。一般 は、IPFが高いポリプロピレンほど立体規則 が高い。ポリプロピレンにおけるIPFは、 13 C-NMRのシグナルから求めることができ、本明 書におけるポリプロピレンのIPF値は、以下 実施例に記載する方法で求めた値をいう。

 本発明のポリプロピレン繊維の繊維強度は7 cN/dtex以上であり、7~13cN/dtexであることが好ま しく、8~13cN/dtexであることがより好ましく、9 ~13cN/dtexであることが更に好ましく、10~13cN/dte xであることが一層好ましい。
 ここで、本明細書におけるポリプロピレン 維の繊維強度(単繊維繊度強度)は、以下の 施例に記載した方法で測定した繊維強度を う。
 本発明のポリプロピレン繊維は、前記した 維強度を有することにより、各種用途に有 に使用することができる。ポリプロピレン 維の繊維強度が7cN/dtex未満であると、ポリ ロピレン繊維を用いて強度に優れる各種製 を製造することが困難になったり、所定の 度を得るためにポリプロピレン繊維を多量 使用することが必要になり、ポリプロピレ 繊維が本来有する軽量であるという特性を かせなくなる。例えば、繊維強度が7cN/dtex未 満のポリプロピレン繊維からロープを製造す ると、強力の大きなロープが得られにくくな り、十分な強力のロープを得るためにポリプ ロピレン繊維を多く用いて太繊度のロープと せざるを得ず、軽量性が損なわれる。
 一方、繊維強度が13cN/dtexを超えるポリプロ レン繊維は、その製造に当たって、量産性 低い条件を採用する必要があるため、実用 で難がある。

 本発明のポリプロピレン繊維のうち、上記 た7cN/dtex以上の繊維強度と共に、『走査示 熱量測定(DSC)(以下単に「DSC測定」というこ がある)による吸熱ピーク形状が10℃以下の 価幅を有するシングル形状で、融解エンタ ピー変化量(△H)が125J/g以上である』という 定のDSC特性を備えているポリプロピレン繊 (ポリプロピレン繊維A、ポリプロピレン繊維 C)は、かかる特性を備えていることによって 耐熱性に優れている。
 DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の 価幅を有する幅の狭い(シャープな)シングル 形状をなしていて且つ融解エンタルピー変化 量(△H)が125J/g以上であるポリプロピレン繊維 は、耐熱性に優れていることにより、高温に 曝されても溶断や物性低下が生じにくい。
 ここで、本発明におけるDSC測定による前記 た「吸熱ピーク形状」および「融解エンタ ピー変化量(△H)」は、以下の実施例に記載 る方法で行ったDSC測定による吸熱ピーク形 および融解エンタルピー変化量(△H)をいう

 アイソタクチックポリプロピレン繊維のDSC 定において、160℃以上で観察される吸熱ピ クは一般にα晶の融解に由来する。吸熱ピ クの温度が160℃以上、場合によっては175℃ 上であるポリプロピレン繊維は、従来から られているが、そのような従来のポリプロ レン繊維では結晶化が未だ十分に行われて ないため、その吸熱ピークの形状はダブル ーク形状であったり、幅の広い(ブロードな) シングルピーク形状であり、その結晶構造は 全体として均一性に欠ける。
 それに対して、本発明のポリプロピレン繊 (ポリプロピレン繊維A、ポリプロピレン繊 C)は、DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以 の半価幅を有する幅の狭い(シャープな)シ グル形状を有しており、均一な結晶構造を している。
 しかも、当該本発明のポリプロピレン繊維 、DSC測定による融解エンタルピー変化量(△ H)が125J/g以上と高くて、結晶性が高く、均一 結晶構造をなしており、耐熱性に優れてい 。

 ここで、本明細書でいう「DSC測定による吸 ピーク形状」と「半価幅」について説明す 。
 まず、図1は、ポリプロピレン繊維における DSC測定による吸熱ピーク形状を模式的に示し た図である。
 図1において、(a)は本発明のポリプロピレン 繊維の吸熱ピーク曲線の代表例に相当し、唯 一の吸熱ピーク(シングルピーク)を有し、当 シングルピークはシャープでしかも大きな ークをなし、融解エンタルピー変化量(△H) 、従来のポリプロピレン繊維に比べて大き 値をなす。
 一方、図1において、(b)は従来のポリプロピ レン繊維の吸熱ピーク曲線の一例であって、 2つの吸熱ピーク(ダブルピーク)を有し、ピー クの幅(半価幅)は大きく、融解エンタルピー 化量(△H)は小さい。
 また、図1において、(c)は従来のポリプロピ レン繊維の吸熱ピーク曲線の他の例であり、 吸熱ピークは1個(シングルピーク)ではあるが 、融解エンタルピー変化量(△H)は小さい。
 次に、図2は、ポリプロピレン繊維のDSC測定 による吸熱ピークにおける半価幅の求め方を 示した図である。
 図2には、本発明のポリプロピレン繊維のDSC 測定による吸熱特性(融解特性)の代表例を示 ており、唯一の吸熱ピーク(シングルピーク )の頂点Xから温度軸に下ろした垂線と、吸熱 ークのベースラインとの交点をYとしたとき に、線分X-Yを二等分する点をMとし、Mを通り 度軸に平行な直線と吸熱曲線との交点をそ ぞれN1およびN2としたときに、線分N1-N2の長 (温度幅)が本明細書でいう「半価幅(℃)」に 相当する。

 ポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線が、 1の(b)に示すように2つの吸熱ピークを有す ダブルピークである場合や、3つ以上の吸熱 ークを有する場合は、最も高い吸熱ピーク 頂点をXとし、当該頂点Xから温度軸に下ろ た垂線と、吸熱ピークのベースラインとの 点をYとし、線分X-Yを二等分する点をMとし、 Mを通り温度軸に平行な直線と吸熱曲線との 点のうち、温度の最も低い交点をN1とし、温 度の最も高い交点をN2としたときに、線分N1-N 2の長さ(温度幅)が本明細書でいう「半価幅( )」に相当する。この場合には、半価幅(℃) 一般に広いものとなる。
 そして、吸熱ピーク曲線において、吸熱ピ クのベースライン(図2を参照)と、当該ベー ラインよりも上の吸熱ピーク曲線によって 囲される部分の面積が、本明細書における 融解エンタルピー変化量(△H)」に相当する

 ポリプロピレン繊維における結晶形成が不 分であると、DSC測定時の結晶の再配列など よって吸熱ピークや発熱ピークが新たに発 して複雑なDSC曲線になる場合がある。さら 、ポリプロピレン繊維における結晶形成が 十分であると、DSC測定時の昇温速度の違い よって、同じ試料であっても、吸熱ピーク 発熱ピークの発現や消失が生じて吸熱ピー 曲線が変化することがある。
 それに対して、本発明のポリプロピレン繊 のうち、「DSC測定による吸熱ピーク形状が1 0℃以下の半価幅を有するシングル形状で、 解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であ 」というDSC特性を備えているポリプロピレ 繊維(ポリプロピレン繊維A、ポリプロピレン 繊維C)は、当該DSC特性を備えていることによ て、DSC測定時の昇温速度1~50℃/分の範囲で 、昇温速度が異なっても、その吸熱ピーク 線は1個の吸熱ピークのみを有する、シャー で大きなシングルピーク形状をなし、高い 解エンタルピー変化量(△H)を有している。 のことは、本発明のポリプロピレン繊維の ち、前記したDSC特性を有するポリプロピレ 繊維が、均一で高い結晶性を有し、その結 として、高い耐熱性を備えていることを裏 けている。

 ポリプロピレン繊維の融解エンタルピー変 量(△H)が125J/g未満であると、耐熱性が不十 になることがある。
 但し、「DSC測定による吸熱ピーク形状が10 以下の半価幅を有するシングル形状で、融 エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上である という要件を備えていないポリプロピレン 維であっても、「IPFが94%以上のポリプロピ ンよりなる、単繊維繊度が0.1~3dtexおよび繊 強度が7cN/dtex以上で、表面に大径の隆起部と 小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在 してなる平均間隔が6.5~20μmで平均高さが0.35~1 μmの凹凸を有する」という特性を備える本発 明のポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊 B)では、後述のように、ポリプロピレン繊維 が前記した特定の凹凸を繊維表面に有してい ることにより、当該凹凸に基づく高い保水率 、投錨効果、噛合効果などによって、水硬性 材料や有機重合体などに含有させた際に水硬 性材料や有機重合体マトリックスとの接着性 が向上して、引張強度、耐衝撃性、曲げ弾性 率、曲げ強度などの力学的特性に優れる水硬 化物や複合材料などを形成することができ、 またロープの製造に用いた場合には強度の高 いロープを形成することができる。

 ポリプロピレン繊維の融解エンタルピー変 量(△H)が高いほど、耐熱性が高くなるが、1 65J/gを超えるポリプロピレン繊維は、製造速 を大幅に低下しないと製造が困難であり、 たIPFが100%に近いポリプロピレンを用いて製 造することが必要であるため、工業的には実 効性が低い。
 かかる点から、本発明のポリプロピレン繊 では、融解エンタルピー変化量(△H)が125~165 J/gであることが好ましく、130~165J/gであるこ がより好ましく、135~165J/gであることが更に ましく、140~165J/gであることが一層好ましい 。

 本発明のポリプロピレン繊維の繊度(単繊維 繊度)は特に制限されないが、ポリプロピレ 繊維を製造する際の製造の容易性(特に延伸 し易さ)、耐久性などの点から、ポリプロピ レン繊維の繊度(単繊維繊度)は、一般的に0.01 ~500dtexであることが好ましく、0.05~50dtexであ ことがより好ましく、0.1~5dtexであることが に好ましい。
 ポリプロピレン繊維の繊度(単繊維繊度)が さ過ぎると、構造体などに用いた際に、ま 製造した後に、ポリプロピレン繊維の溶融 断糸などが生じて構造体の劣化や強度不足 どを招くことがある。一方、ポリプロピレ 繊維の単繊維繊度が大きすぎると、ポリプ ピレン繊維を得るための延伸物性が低下し 、高強度で、高度に結晶化したポリプロピ ン繊維が得られないことがある。また、ポ プロピレン繊維の繊度が大きすぎると、織 物、不織布、網などが製造しにくくなるこ がある。

 本発明は、7cN/dtex以上の繊維強度と共に、 たは7cN/dtex以上の繊維強度および本発明で規 定する上記したDSC特性[DSC測定による吸熱ピ ク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル 形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g 以上であるという特性]と共に、「単繊維繊 が0.1~3dtexで、表面に大径の隆起部と小径の 隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してな 平均間隔が6.5~20μmで平均高さが0.35~1μmの凹 を有する」という特性を有するポリプロピ ン繊維(ポリプロピレン繊維B、ポリプロピレ ン繊維C)を包含する。
 7cN/dtex以上の繊維強度と共に、または7cN/dtex 以上の繊維強度および前記した特定のDSC特性 と共に、前記した特定の凹凸特性を有するポ リプロピレン繊維では、当該凹凸特性を有す るポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維B ポリプロピレン繊維C)を円滑に製造するた に、ポリプロピレン繊維の単繊維繊度は0.1~3 dtexとするのがよく、0.2~2.5dtexであることが好 ましく、0.3~2.4dtexであることがより好ましい

 前記した凹凸特性を有するポリプロピレン 維において、ポリプロピレン繊維の繊度が0 .1dtexよりも小さいと、量産性を維持するため に紡糸孔数の極めて多い口金を用いて紡糸す ることになり、それに伴って口金での紡糸孔 の間隔を十分に確保するために紡糸装置の規 模を大きくするなどの大幅な設備の改良が必 要になり、しかも繊度が小さいために延伸工 程で断糸トラブルや毛羽が発生し易くなる。 一方、ポリプロピレン繊維の繊度が3dtexを超 ると、繊維の外周に上記した特定の凹凸を 現させにくくなり、また繊維の比表面積が さくなるため十分な保水性を確保できなく り、更に延伸性が低下して十分な繊維強度 得られにくくなる。
 前記した特定の凹凸特性を有するポリプロ レン繊維では、その繊度(単繊維繊度)は、0. 2~2.5dtexであることが好ましく、0.3~2.4dtexであ ことがより好ましい。

 ここで、本明細書における「ポリプロピレ 繊維が、表面に、大径の隆起部と小径の非 起部が繊維軸に沿って交互に位置してなる 凸を有する」とは、図3の模式図に示すよう に、ポリプロピレン繊維が長さ方向に沿って 均一の径を有しておらず、径の大きな隆起部 (凸部)(図3におけるA1,A2,A3,A4,・・・・)と、そ よりも径の小さな非隆起部(凹部)(図3におけ るB1,B2,B3,B4,・・・・)が、繊維軸(繊維の長さ 向)に沿って交互に形成されていて、繊維表 面が凹凸をなしていること意味する。
 そして、本明細書における前記「平均間隔 とは、繊維軸に沿って形成された多数の凹 (隆起部と非隆起部)のうち、隣り合う2つの 起部(凸部)の間の間隔(距離)(図3におけるA1-A 2,A2-A3,A3-A4,・・・の長さ)の平均値を意味する 。
 また、前記「平均高さ」は、繊維軸に沿っ 形成された多数の凹凸(隆起部と非隆起部) うち、隣り合う2つの非隆起部(凹部)の最小 部分を結ぶ仮想直線(図3におけるB1とB2を結 直線,B2とB3を結ぶ直線,B3とB4を結ぶ直線,・・ ・)への、当該隣り合う2つの非隆起部(凹部) 間にある隆起部(凸部)の頂点からの垂線の長 さ(図3におけるh1,h2,h3,h4,・・・)の平均値を意 味する。
 ポリプロピレン繊維の繊維軸に沿って形成 れた前記凹凸の平均間隔および平均高さは ポリプロピレン繊維を走査型電子顕微鏡な を用いて撮影した写真から求めることがで 、本明細書における凹凸の前記平均間隔お び平均高さは以下の実施例に記載する方法 求められる値をいう。

 繊維表面に、平均間隔が6.5~20μmで平均高さ 0.35~1μmである前記した凹凸を繊維軸に沿っ 有している本発明のポリプロピレン繊維(ポ リプロピレン繊維B、ポリプロピレン繊維C)は 、一般に10%以上の高い保水率を有し、セメン トなどのマトリックス中に配合した際にマト リックスとの親和性が高く、高い補強作用を 示す。さらに、当該特定の凹凸構造による投 錨効果や噛合作用によって、有機重合体など の他のマトリックスに含有させた場合にもマ トリックスとの接着性が向上する。
 なお、本明細書におけるポリプロピレン繊 の保水率は、以下の実施例に記載する方法 測定した保水率をいう。
 表面に凹凸を有するポリプロピレン繊維に いて、前記した凹凸の平均間隔が6.5μm未満 あると、および/または平均高さが0.35μm未 であると、繊維表面の凹凸が微細になり過 て、保水率の低下、投錨効果、噛合効果な が低下し、凹凸の平均間隔が20μmを超えるか 、および/または平均高さが1μmを超えるポリ ロピレン繊維は、ポリプロピレン繊維の製 速度を大幅に低下しないと製造できず、ま IPFが100%に近いポリプロピレンを使用する必 要があるため、実用性に乏しい。
 表面に凹凸を有する前記した本発明のポリ ロピレン繊維においては、繊維軸方向に沿 て形成された凹凸の平均間隔が6.6~20μm、特 6.8~20μmで、平均高さが0.40~1μm、特に0.45~1μm あることが好ましい。

 本発明のポリプロピレン繊維は、「アイ タクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上の リプロピレンよりなるポリプロピレン繊維 あって、繊維強度が7cN/dtex以上である」とい う要件と共に、「単繊維繊度が0.1~3dtexである 」、「走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピー 形状が10℃以下の半価幅を有するシングル 状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g 上である」および「表面に大径の隆起部と 径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在 てなる平均間隔が6.5~20μmで平均高さが0.35~1μ mの凹凸を有する」という要件を兼ね備えて ることが好ましい。

 本発明のポリプロピレン繊維の形状(横断 面形状)は特に制限されず、中実の円形断面 状であってもよいし、それ以外の異形断面 状であってもいずれでもよい。繊維の横断 が異形断面形状である場合の具体例として 、偏平形、十字形、Y字形、T字形、V字形、 形、多葉形、アレイ形、中空形などを挙げ ことができる。ポリプロピレン繊維を補強 として用いる場合は、表面積の大きい異形 面形状、特に多葉形などにしておくと、マ リックスとの接着強度が高くなり、強度の い繊維補強成形体などを得ることができる

 本発明のポリプロピレン繊維は、本発明 目的を妨げない範囲で、例えば、熱安定剤 紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤 離型剤、充填剤、帯電防止剤などの1種また は2種以上を含有することができる。ポリプ ピレン繊維は比重が一般に水よりも小さく そのままでは水に浮くため、本発明のポリ ロピレン繊維を水中に分散させたい場合に 、浮遊防止のために、炭酸カルシウム、硫 バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミ 、シリカ、メタクリル酸カリウムなどを繊 中に含有させることで、比重を適宜調整す ことができる。

 本発明のポリプロピレン繊維の製法は特 制限されず、繊維強度が7cN/dtex以上である 共に上記したDSC特性[DSC測定による吸熱ピー 形状が10℃以下の半価幅を有するシングル 状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g 上であるという特性]を備えるポリプロピレ 繊維(ポリプロピレン繊維A、ポリプロピレ 繊維C)、前記した繊維強度と共に前記した単 繊維繊度と凹凸特性(単繊維繊度が0.1~3dtexお び表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が 維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔 6.5~20μmで平均高さが0.35~1μmの凹凸を有する いう特性)を備えるポリプロピレン繊維(ポリ プロピレン繊維B、ポリプロピレン繊維C)、或 いは前記した繊維強度、DSC特性、単繊維繊度 および凹凸特性を備えるポリプロピレン繊維 (ポリプロピレン繊維C)を製造し得る方法であ れば、いずれの方法で製造してもよい。

 そのうちでも、本発明のポリプロピレン繊 は、IPFが94%以上のポリプロピレンを溶融紡 してポリプロピレン未延伸繊維(未延伸糸) 製造し、それを冷却固化した後に、その冷 固化した未延伸ポリプロピレン繊維を以下 説明する特定の条件下で前延伸および後延 する方法によって円滑に製造することがで る。
 本発明のポリプロピレン繊維の製造に当た ては、繊維製造時の溶融紡糸性、延伸性な が良好になり、さらに本発明で規定する上 した特定の特性を備えるポリプロピレン繊 が円滑に得られる点から、ポリプロピレン して、JIS K 7210に従って温度230℃、荷重2.16 kg、時間10分の条件で測定したときのメルト ローレート(MFR)が5~70gであるものが好ましく いられ、10~50gであるものがより好ましく用 られ、15~40gであるものが更に好ましく用い れる。

 ポリプロピレン未延伸繊維の製造に当たっ は、IPFが94%以上のポリプロピレンを200~3500m/ 分、特に300~2000m/分の紡糸速度で溶融紡糸し 後に冷却固化する方法が好ましく採用され 。
 ポリプロピレンの溶融紡糸および溶融紡糸 たポリプロピレン繊維の冷却固化は、通常 方法で行うことができ、一般的にはポリプ ピレンを200~300℃で溶融混練した後、それを 220~280℃の紡糸口金から吐出させ、それに5~50 の冷却用気体(空気など)を吹き付けて冷却 化する方法が採用される。
 未延伸ポリプロピレン繊維の単繊維繊度は に制限されず、延伸工程での延伸倍率、最 的に得られるポリプロピレン繊維の用途な に応じて決めることができ、一般的には0.3~ 90dtex、特に1~60dtexであることが、延伸のし易 、強度などの点から好ましい。

 本発明のポリプロピレン繊維の製造に当っ 、溶融紡糸を低紡糸速度で行った場合(一般 に紡糸速度が200~1000m/分程度の場合)には、溶 紡糸後に冷却固化して得られるポリプロピ ン未延伸繊維(未延伸糸)を、次の延伸工程 高倍率で延伸する(一般に総延伸倍率5~20倍) とで、高耐熱性および高強度を有する目的 するポリプロピレン繊維、特に走査示差熱 測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の 価幅を有するシングル形状で、融解エンタ ピー変化量(△H)が125J/g以上であり、且つ繊 強度が7cN/dtex以上であるポリプロピレン繊 を製造することができる。
 一方、溶融紡糸を高紡糸速度で行った場合( 一般に紡糸速度が1000~3500m/分程度の場合)には 、溶融紡糸後に冷却固化して得られるポリプ ロピレン未延伸繊維(未延伸糸)を延伸する際 延伸倍率が低くても(一般に総延伸倍率3.9~7 )、溶融紡糸した繊維を冷却固化する段階で の配向が高くなるため、結果として前記した 走査示差熱量測定(DSC)による特性と7cN/dtex以 の繊維強度を有する耐熱性および強度に優 るポリプロピレン繊維を製造することがで る。

 冷却固化したポリプロピレン未延伸繊維(未 延伸糸)は、巻き取らずにそのまま引き続い 延伸処理を行ってもよいし、または一旦巻 取った後に、巻き出しながら次の延伸処理 行ってもよく、そのうちでも、一旦巻き取 た後に巻き出しながら次の延伸処理を行う とが、延伸条件の制御や管理が容易である から好ましい。
 次いで、冷却固化したポリプロピレン未延 繊維(未延伸糸)を、総延伸倍率(前延伸と後 伸の合計延伸倍率)が3.9~20倍になるようにし て、温度120~150℃および延伸倍率3~10倍で前延 した後、温度170~190℃で、変形速度1.5~15倍/ および延伸張力1.0~2.5cN/dtexの条件下に延伸倍 率1.2~3.0倍で後延伸してポリプロピレン繊維 製造する。

 前延伸および後延伸は、熱風炉または熱プ ートを用いて行うことが、延伸処理が円滑 行われる点から好ましい。前延伸および後 伸の両方を熱風炉を用いて行ってもよいし 前延伸と後延伸の両方を熱プレートを用い 行ってもよいし、前延伸を熱風炉を用いて い、後延伸を熱プレートを行ってもよいし または前延伸を熱プレートを用いて行い、 延伸を熱風炉を用いて行ってもよい。
 前延伸および/または後延伸を熱風炉を用い て行う場合は、本発明における前延伸時の上 記温度および後延伸時の上記温度は熱風炉の 雰囲気温度をいい、また前延伸および/また 後延伸を、熱プレートを用いて行う場合は 本発明における前延伸時時の上記温度およ 後延伸時の上記温度は熱プレートの温度を う。

 冷却固化してなるポリプロピレン未延伸繊 (未延伸糸)の前延伸は、1段で行ってもよい 、または多段で行ってもよく、一般的には1 段~3段で行うことが好ましい。
 また、前延伸したポリプロピレン延伸繊維( 延伸糸)の後延伸は、1段で行ってもよいし、 たは多段で行ってもよく、一般的には1段~5 で行うことが好ましい。
 延伸処理を行うに当たっては、前延伸して られるポリプロピレン延伸繊維(延伸糸)を き取らずにそのまま引き続いて後延伸する 法を採用してもよいし、または前延伸して られるポリプロピレン延伸繊維(延伸糸)を冷 却(一般に室温程度)して巻き取った後に再度 き出して後延伸する方法を採用してもよい そのうちでも、前延伸して得られるポリプ ピレン延伸繊維(延伸糸)を一旦巻き取った に巻き戻して後延伸する後者の方法が、目 とするポリプロピレン繊維をより円滑に得 ことができる点から好ましい。

 前延伸は、冷却固化してなるポリプロピレ 未延伸繊維(未延伸糸)を、温度(雰囲気温度) が120~150℃、特に125~140℃の熱風炉に導入する 、または温度が120~150℃、特に125~140℃の熱 レートに接触させて、1段または多段で延伸 率3~10倍、特に3~5倍で行うことが好ましい。
 また、後延伸は、前記した条件下で前延伸 て得られるポリプロピレン延伸繊維(延伸糸 )を、温度(雰囲気温度)が170~190℃、更には170~1 85℃、特に170~180℃の熱風炉に導入するか、ま たは温度が170~190℃、更には170~185℃、特に170~ 180℃の熱プレートに接触させて、1段または 段で延伸倍率1.2~3.0倍、特に1.3~2.5倍で行うこ とが好ましい。
 熱風炉または延伸プレートを用いて後延伸 行う際には、熱風炉の雰囲気温度または延 プレート温度を、後延伸処理を施す直前の リプロピレン繊維のDSC曲線での吸熱開始温 +10℃以上の温度にして後延伸を行うことが ましい。
 前延伸および後延伸の総延伸倍率は3.9~20倍 あることが好ましく、4.5~11倍であることが り好ましく、4.7~10.5倍であることが更に好 しい。
 また、ポリプロピレン未延伸繊維(未延伸糸 )を製造するための溶融紡糸速度をA(m/分)とし 、前記した前延伸および後延伸を行った後の 総延伸倍率をB(倍)としたときに、A×Bの値が 3000~17000(m・倍/分)、特に3500~15000(m・倍/分)の 囲になるようにして、ポリプロピレンの溶 紡糸と前記した前延伸および後延伸を行う 、目的とするポリプロピレン繊維を円滑に 造することができる。

 ここで、前延伸における前記した延伸倍率 、前延伸工程から排出された直後の繊維(糸 )の長さを前延伸工程に導入された未延伸繊 (未延伸糸)の長さで除した値をいい、また後 延伸における前記した延伸倍率は、後延伸工 程から排出された直後の繊維(糸)の長さを後 伸工程に導入された繊維(糸)の長さで除し 値をいう。
 また、前記した前延伸および後延伸の総延 倍率とは、後延伸工程から排出された直後 繊維(糸)の長さを前延伸工程に導入された 延伸繊維(未延伸糸)の長さで除した値をいう 。

 後延伸は、前記した温度(170~190℃)および延 倍率(1.2~3.0倍)を採用すると共に、変形速度1 .5~15倍/分および延伸張力1.0~2.5cN/dtexという条 を採用して行う。かかる後延伸条件を採用 ることによって、目的とするポリプロピレ 繊維を得ることができる。
 後延伸時の変形速度は1.6~12倍/分であること が好ましく、1.7~10倍/分であることがより好 しい。
 また、後延伸時の延伸張力は、1.1~2.5cN/dtex 好ましく、1.3~2.5cN/dtexがより好ましい。

 ここで、後延伸における前記した変形速度 は、後延伸での延伸倍率(倍)を後延伸に要 た時間(分)[熱風炉で後延伸する場合は繊維( )が熱風路内に存在していた時間、延伸プレ ートで後延伸する場合は繊維(糸)が延伸プレ トに接触していた時間]で除した値をいい、 後延伸を多段で行った場合は、後延伸での最 終延伸倍率(合計延伸倍率)を後延伸に要した 伸処理時間の合計で除した値をいう。
 また、後延伸における前記延伸張力は、後 伸における最終段の延伸を行った直後の糸 張力を、張力計を用いて測定する。
 また、本発明では、上記した条件下でポリ ロピレン繊維を延伸した後、熱固定または 縮処理を施してもよい。その際の処理温度 収縮率は、本発明の効果を妨げない限りは 特に限定されない。

 アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94 %以上のポリプロピレンを溶融紡糸した後に 却固化してなるポリプロピレン未延伸繊維 、上記した条件下で前延伸した後に更に上 した条件下で後延伸してポリプロピレン繊 を製造する方法により、耐熱性および強度 優れるポリプロピレン繊維、特に、DSCによ 吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有する シングル形状で、融解エンタルピー変化量( H)が125J/g以上であり、且つ繊維強度が7cN/dtex 上である、耐熱性および強度に優れる本発 のポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維 A、ポリプロピレン繊維C)を円滑に製造するこ とができる。

 さらに、アイソタクチックペンタッド分 (IPF)が94%以上のポリプロピレンを溶融紡糸 た後に冷却固化してなるポリプロピレン未 伸繊維を、上記した条件下で前延伸した後 更に上記した条件下で後延伸してポリプロ レン繊維を製造するに当たって、前延伸工 に供給するポリプロピレン未延伸繊維の単 維繊度、前延伸および/または後延伸におけ 延伸倍率などを調整して、最終的に単繊維 度が3dtex以下、特に0.1~3dtexのポリプロピレ 繊維が得られるようにした場合には、上記 た7cN/dtex以上の繊維強度、上記した特定のDSC 特性[DSCによる吸熱ピーク形状が10℃以下の半 価幅を有するシングル形状で、融解エンタル ピー変化量(△H)が125J/g以上であるという特性 ]と共に、表面に大径の隆起部と小径の非隆 部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平 間隔が6.5~20μmで平均高さが0.35~1μmの凹凸を する」という特定の凹凸構造を有する本発 のポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維B 、ポリプロピレン繊維C、特にポリプロピレ 繊維C)を製造することができる。このポリプ ロピレン繊維は、耐熱性および強度に優れる と共に表面に前記した特定の凹凸を有するこ とによって保水性にも優れ、通常10%以上の高 い保水率を有している。

 本発明のポリプロピレン繊維は、表面処理 行うことなくそのまま使用してもよいし、 たは様々な物質との親和性の向上、帯電防 、処理剤の安定化などの目的で、任意の表 処理剤で表面処理してもよい。限定される のではないが、本発明のポリプロピレン繊 に用い得る表面処理剤の具体例としては、 リオキシエチレンソフタノール、脂肪酸カ ウム石鹸、アルキルホスフェートカリウム 、ジアルキルチオジプロピオネート、ジ-2- チルヘキシルスルフォサクシネートナトリ ム塩、ポリエチレングリコール脂肪酸エス ル、ポリオキシエチレンデシルエーテルホ フェートカリウム塩、ポリオキシエチレン まし油エーテル、アルカンスルフォネート トリウム塩、イソオクチルパルミテート、 ソオクチルステアレート、イソセチルホス ェートカリウム塩、ヤシ脂肪酸アマイド、 レイルアルコール、ポリオキシエチレンア キルエーテル、ジオクチルフルフォサクシ ートナトリウム塩、ポリオキシエチレンデ ルエーテルホスフェートアミン塩、ポリエ レングリコールヤシ脂肪酸エステルなどを げることができる。
 また、本発明のポリプロピレン繊維は、適 な長さに切断してもよい。前述の表面処理 で表面処理している場合は、乾燥して水分 蒸発させた後に切断してもよいし、乾燥せ に切断してもよい。また、表面処理剤およ 水の付着量や濃度に関しても、特に限定さ ない。また、切断したポリプロピレン繊維 製品化する際の搬送方法、梱包方法、梱包 態も限定されない。

 本発明のポリプロピレン繊維は、モノフィ メント、マルチフィラメント、スライバー 短繊維、撚糸(紡績糸)、仮撚糸、交絡糸、 の他の加工糸の形態にして使用することが きる。
 そして、本発明のポリプロピレン繊維およ それからなる糸は、耐熱性に優れるため、 えば、コード、ロープに使用することがで 、当該コード、ロープを用いて、耐摩耗性 よび軽量性に優れるスリングロープ、漁網 養生ネット、ゴルフボールネットなどを製 することができる。
 さらに、本発明のポリプロピレン繊維は、 編物、不織布、網状物、紙などの繊維構造 の製造に有効に使用することができる。
 そして、本発明のポリプロピレン繊維また 当該繊維を用いて形成した繊維構造体は、 維補強プラスチック成形体、繊維補強ゴム 形体、繊維補強水硬性物質成形体(コンクリ ート、モルタル、スレート、瓦など)などに ける繊維補強材としても有効に用いること できる。
 したがって、本発明は、上記した本発明の リプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維A~Cの いずれか)を含有する水硬性組成物およびそ からなる水硬化物、本発明のポリプロピレ 繊維(ポリプロピレン繊維A~Cのいずれか)を用 いて形成したロープ構造体、本発明のポリプ ロピレン繊維(ポリプロピレン繊維A~Cのいず か)を含むシート状繊維構造体、並びに有機 合体と本発明のポリプロピレン繊維(ポリプ ロピレン繊維A~Cのいずれか)からなる複合材 および当該複合材料からなる成形体を本発 の範囲に包含するものであり、以下にこれ について説明する。

《水硬性組成物および水硬化物》
 上記した本発明のポリプロピレン繊維を含 する本発明の水硬性組成物では、水硬性物 として、水と反応して硬化する無機物質の ずれもが使用でき特に制限されない。
 水硬性物質の好ましい例としては、各種ポ トランドセメント、早強セメント、中庸セ ント、高炉セメント、アルミナセメント、 れらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリ などを混合した混合セメント、石膏、水滓 ラグ、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウ 、ケイ酸カルシウムなどを挙げることがで る。本発明の水硬化性組成物は、前記した 硬性物質の1種類のみを含有してもよいし、 または2種以上を含有してもよい。そのうち も、本発明の水硬化性組成物は、水硬性物 としてセメントを少なくとも含有すること 好ましい。

 本発明の水硬性組成物における水硬性物 の含有量は特に制限されず、水硬性物質の 類、水硬性物質と共に用いられる他の材料 種類、水硬性組成物を水硬化して得られる 硬化物の種類や用途などに応じて決めるこ ができる。一般的には、本発明の水硬性組 物は、水を加える前の水硬性組成物の全質 に対して、水硬性物質を10~99質量%の割合で 有することが好ましく、20~98質量%の割合で 有することがより好ましく、30~97質量%の割 で含有することが更に好ましい。

 本発明の水硬性組成物は、当該組成物中 含有させる本発明のポリプロピレン繊維が 7cN/dtex以上、好ましくは9~13cN/dtexという高い 繊維強度を有しているため、強度の高い水硬 化物を形成する。水硬性組成物中に含有させ るポリプロピレン繊維の繊維強度が7cN/dtexよ も小さいと、セメントなどの水硬性物質に 合して水硬性組成物を調製し、当該水硬性 成物を硬化させて水硬化物を製造したとき 、十分な補強効果を発揮し得ない場合があ 。

 また、前記した繊維強度と共に、前記し DSC特性、すなわち『DSC測定による吸熱ピー 形状が10℃以下の半価幅を有するシングル 状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g 上である』というDSC特性を備えている本発 のポリプロピレン繊維((ポリプロピレン繊維 A、ポリプロピレン繊維C))を含有する本発明 水硬性組成物は、当該ポリプロピレン繊維 耐熱性に優れていることにより、100℃を超 る高温、特に150℃以上、更には170℃以上の 温でオートクレーブ養生してもポリプロピ ン繊維の劣化や強度が生じないため、高温 短時間オートクレーブ養生を行って、水硬 物を短縮された時間で生産性よく製造する とができる。

 但し、本発明の水硬性組成物が、常温や1 00℃以下の低い温度で養生を行って水硬化物 製造するための水硬性組成物である場合に 、前記したDSC特性を備えていないポリプロ レン繊維であっても、『IPFが94%以上のポリ ロピレンよりなる、単繊維繊度が0.1~3dtexお び繊維強度が7cN/dtex以上で、表面に大径の 起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交 に存在してなる平均間隔が6.5~20μmで平均高 が0.35~1μmの凹凸を有する』という特性を備 る本発明のポリプロピレン繊維(ポリプロピ ン繊維B)を水硬性物質に配合して水硬化物 製造することによっても、十分に強度の高 水硬化物を得ることが可能である。

 水硬性物質に含有させる本発明のポリプロ レン繊維の単繊維繊度は特に制限されない 、水硬性組成物への適用性、耐久性などの から、ポリプロピレン繊維の単繊維繊度は 一般的に0.01~500dtexであることが好ましく、0 .05~50dtexであることがより好ましく、0.1~5dtex あることが更に好ましい。
 ポリプロピレン繊維の単繊維繊度が小さ過 ると、水硬性物質に配合して水硬性組成物 調製した際に、混合時の摩擦によって溶融 断糸して補強効果を発揮しないことがあり 一方大きすぎると、上述のように、ポリプ ピレン繊維を得るための延伸物性が低下し 、高強度で、高度に結晶化したポリプロピ ン繊維が得られないことがある。

 また、本発明の水硬性組成物には、『繊維 度が7cN/dtex以上で、本発明で規定する上記 たDSC特性[DSC測定による吸熱ピーク形状が10 以下の半価幅を有するシングル形状で、融 エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上である いう特性]を有し、更に単繊維繊度が0.1~3dtex 、且つ表面に大径の隆起部と小径の非隆起 が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均 隔が6.5~20μmで平均高さが0.35~1μmの凹凸を有 るという特性を有する本発明のポリプロピ ン繊維(ポリプロピレン繊維C)』を含有する 硬性組成物が、好ましい態様として包含さ る。
 前記特定の凹凸特性を有する本発明のポリ ロピレン繊維は、当該特定の凹凸特性によ 保水性が高く、一般に10%以上の保水率を有 ているため、セメントなどの水硬性物質と い親和性を有し、当該ポリプロピレン繊維 含有する水硬性組成物は、強度の高い水硬 物を形成する。
 ポリプロピレン繊維の保水率が低いと、セ ントなどの水硬性物質に配合した際に、水 性物質との親和性が低くなって水硬性物質 十分に接着せず、得られる水硬化物の機械 強度が不十分になることがある。
 本発明の水硬性組成物に含有させる本発明 ポリプロピレン繊維は、その保水率が10.5% 上であることが好ましく、11~50%であること より好ましく、12~50%であることが更に好ま い。保水率が50%を超えるポリプロピレン繊 は、繊維表面の凹凸を極めて大きなものと なければならず、現実には、生産性よく製 することが困難である。

 水硬性組成物中に含有させる本発明のポリ ロピレン繊維の形状(横断面形状)は特に制 されず、中実の円形断面形状や、前記した 々の異形断面形状にすることができる。ポ プロピレン繊維の横断面形状が表面積の大 い異形断面形状、特に多葉形などであると 水硬性物質との接着強度が高くなり、強度 高い水硬化物を得ることができる。
 また、ポリプロピレン繊維中に、炭酸カル ウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜 、アルミナ、シリカ、メタクリル酸カリウ などの比重増加剤を含有させて、元来は比 の軽いポリプロピレン繊維の比重を重くす ことにより、水硬性組成物中に本発明のポ プロピレン繊維を均一に分散させることが きる。
 また、水硬性物質に配合する本発明のポリ ロピレン繊維は、水硬性物質との親和性を 上させるために、ポリプロピレン繊維の表 処理を施してあってもよい。その際の用い る表面処理剤としては、例えば、本発明の リプロピレン繊維の表面処理に用い得るも として上記で挙げた、ポリオキシエチレン ソフタノール、脂肪酸カリウム石鹸、・・ やその他の化合物の1種または2種以上を用 ることができる。

 本発明のポリプロピレン繊維を水硬性物質 混合して水硬化性組成物を調製する際のポ プロピレン繊維の繊維長は、水硬性物質の 類、水硬性物質と共に用いられる他の材料 種類、水硬性組成物の配合組成、水硬性組 物を水硬化して得られる水硬化物の種類や 途などに応じて決めることができるが、ポ プロピレン繊維による補強効果、水硬性物 や他の材料との均一混合性、繊維生産性な の点から、一般的には、1~30mmであることが ましく、2~25mmであることがより好ましく、3 ~20mmであることが更に好ましい。
 ポリプロピレン繊維の繊維長が短すぎると 強作用が不十分になり易く、一方ポリプロ レン繊維の繊維長が長すぎると、水硬性組 物中に均一に混合、分散しなくなり、しか 配管詰まりなどを起こし易い。

 水硬性組成物における本発明のポリプロ レン繊維の含有量は、水硬性物質の種類、 硬性物質と共に用いられる他の材料の種類 水硬性組成物の配合組成、水硬性組成物を 硬化して得られる水硬化物の種類や用途な に応じて決めることができるが、ポリプロ レン繊維による補強効果、工程通過性、コ トなどの点から、水を加える前の水硬性組 物の質量(ポリプロピレン繊維を含めた水を 加える前の水硬性組成物の全質量)に対して ポリプロピレン繊維の含有量が0.05~10質量%で あることが好ましく、0.1~8質量%であることが より好ましい。

 本発明の水硬性組成物は、水硬性物質およ 本発明の上記特定のポリプロピレン繊維と に、水硬性組成物において広く用いられて る骨材、無機フィラーまたは有機フィラー その他の混和剤などを必要に応じて含有す ことができる。
 本発明の水硬性組成物で用いることのでき 骨材またはフィラーとしては、例えば砂利 砕砂、川砂、海砂、山砂、粉末珪砂、各種 量骨材(例えばガラスバルーン、シラスバル ーン、ポリスチレンビーズ)、炭酸カルシウ 、カオリン、セピオライト、ベントナイト アタパルジャイト、マイカ、ワラスナイト 各種パルプなどを挙げることができ、これ の1種または2種以上を含有することができる 。

 前記したパルプとしては広範なものが使用 き、具体例としては、針葉樹、広葉樹、マ ラ麻、ミツマタ、コウゾ、ガンピ、サラゴ 桑、ワラ、竹、アシ、サバイ、ララン草、 スパルト、バガス、サイザル、ケナフ、リ ター、バナナ、故紙などを挙げることがで 、前記したパルプのうちの晒したものまた 未晒しのものの1種または2種以上を含有す ばよく、パルプの叩解度は適宜制御して使 すればよい。その際に、前記針葉樹として 、スギ科、マツ科、ヒノキ科、ナンヨウス 科などの針葉樹を挙げることができ、また 記広葉樹としては、ニレ科、ブナ科、フト モ科、カツラ科、モクセイ科、ミカン科、 バノキ科、カエデ科、クルミ科、シナノキ 、ウコギ科、アカテツ科、ニシキギ科、キ ウチクトウ科、クマツヅラ科、モクテン科 アオギリ科などを挙げることができる。
 また、前記したその他の混和剤としては、 水剤、増粘剤、起泡剤、膨張剤、収縮低減 などを挙げることができる。
 また、本発明の水硬性組成物は、必要に応 て、ポリプロピレン繊維以外の有機繊維や 機繊維を含有してもよい。

 水硬性物質に必要に応じて混合される骨 、フィラー、その他の上記した種々の材料 、水硬化物の物性を向上させる効果、例え 耐凍結融解性の向上、腐食性物質(塩素、硫 酸などの各種酸)の侵入抑制、ポリプロピレ 繊維と水硬性物質との付着性の改善、懸濁 の粘性を適度に調節して未硬化成形物や抄 体製造時の効率を向上させる効果や、成形 や抄造体の乾燥収縮制御を行う効果、水硬 物の強度向上効果などを発現する効果を有 、水硬化物を製造する際の工程通過性、成 性の向上効果などを有する。

 本発明の水硬性組成物の調製に当たっては 水硬性物質および本発明の上記特定のポリ ロピレン繊維以外の他の材料(骨材、フィラ ー、その他の混和剤など)の使用量は、特に 限されず、水硬性物質の種類、骨材、フィ ー、その他の混和剤の種類、水硬性組成物 養生(硬化)方法、水硬性組成物を硬化して得 られる水硬化物の種類や用途などに応じて、 適宜調整して用いるとよい。
 水硬性組成物における水の混合量は、水硬 物質やその他の材料の種類、それらの使用 、製造を目的とする水硬化物の種類などに じて異なり得るが、一般的には、水硬化性 成物の調製に用いられる、水以外の全材料 合計質量100質量部に対して、水を10~10000質 部、更には15~8000質量部、特に20~6000質量部の 割合で混合することが、工程通過性、得られ る水硬化物の強度などの点から好ましい。

 本発明の水硬性組成物を用いて、コンクリ ト、モルタル、スレートなどの種々の水硬 物が製造することができる。
 本発明の水硬性組成物が、スレート製造用 水硬性組成物である場合には、普通ポルト ンドセメントやその他の水硬性物質に、上 したパルプや必要に応じて凝集剤、珪石粉 などの無機フィラーやその他の材料を混合 ると共に、本発明の上記した特性を備える リプロピレン繊維を、上記したように、水 加える前の水硬性組成物の質量(ポリプロピ レン繊維を含めた水硬性組成物の全質量)に して、好ましくは0.05~10質量%、より好ましく は0.1~8質量%の割合で加え、それに水を混合す ることによって、スレート製造用の水硬性組 成物を円滑に得ることができ、当該水硬性組 成物を硬化して得られるスレートは強度や耐 久性に優れている。
 スレート製造用の水硬性組成物における水 性物質、パルプ、凝集剤、無機フィラーな の含有量および水の混合量は、通常のスレ ト製造用の水硬性組成物におけるのと同程 の量とすればよい。

 また、本発明の水硬性組成物が、コンクリ ト製造用の水硬性組成物である場合には、 通ポルトランドセメントやその他の水硬性 質に、上記した砂利、砂などの骨材や無機 ィラー、必要に応じて他の材料を混合する 共に、本発明の上記した特性を備えるポリ ロピレン繊維を、水を加える前の水硬性組 物の質量(ポリプロピレン繊維を含めた水硬 性組成物の全質量)に対して、好ましくは0.05~ 10質量%、より好ましくは0.1~8質量%の割合で加 え、それに水を混合することによって、コン クリート製造用の水硬性組成物を円滑に得る ことができ、当該水硬性組成物を硬化して得 られるコンクリートは強度や耐久性に優れて いる。
 コンクリート製造用の水硬性組成物におけ 水硬性物質、パルプ、凝集剤、無機フィラ などの含有量および水の混合量は、通常の ンクリート製造用の水硬性組成物における と同程度の量とすればよい。

 さらに、本発明の水硬性組成物が、モルタ 製造用の水硬性組成物である場合には、普 ポルトランドセメントやその他の水硬性物 に、上記した砂などの無機フィラー、増粘 、減水剤、他の材料を混合すると共に、本 明の上記した特性を備えるポリプロピレン 維を、水を加える前の水硬性組成物の質量( ポリプロピレン繊維を含めた水硬性組成物の 全質量)に対して、好ましくは0.01~10質量%、よ り好ましくは0.1~8質量%の割合で加え、それに 水を混合することによって、モルタル製造用 の水硬性組成物を円滑に得ることができ、当 該水硬性組成物を硬化して得られるコンクリ ートは強度や耐久性に優れている。
 モルタル製造用の水硬性組成物における水 性物質、砂などの充填材、増粘剤、減水剤 その他の材料の含有量および水の混合量は 通常のモルタル製造用の水硬性組成物にお るのと同程度の量とすればよい。

 本発明の水硬性組成物の調製に当たっては 前記した各材料の添加順序、混合方法、混 条件などは特に制限されず、水硬性組成物 調製するために従来から採用されているの 同様にして行うことができる。
 本発明の水硬性組成物の調製に用いる混合 置は特に制限されず、水硬性組成物の調製 当たって使用されている混合装置のいずれ が使用でき、例えば、パンミキサー、アイ ッヒミキサー、傾動式ミキサー、強制二軸 キサー、オムニミキサー、ホバートミキサ 、ハンドミキサーなどの各種混合装置を使 して混合することができる。

 本発明の水硬性組成物を用いて水硬化物を 造するための方法は特に制限されず、目的 する水硬化物の種類、用途などに応じて、 来から採用されているのと同様の方法を採 することができる。
 本発明の水硬性組成物がコンクリートまた モルタル製造用の組成物である場合は、水 性組成物を用いてコンクリートまたはモル ルを製造するのに従来から採用されている 法、例えば、流し込み成形、振動成形、遠 成形、サクション成形、押出成形、プレス 形などの成形方法を採用することができる また、前記した成形方法によって得られる 硬化成形物の養生方法も特に制限されず、 えば、気中養生、水中養生、湿布養生、オ トクレーブ養生、それらの2つ以上の組み合 わせる方法などを採用して養生することがで きる。前記したように、養生温度も特に制限 されず、低温での養生(例えば冬季や寒冷地 どでの低温時期における養生)、常温での養 、100℃を超える常温での養生、常温と100℃ 間の温度での養生などを採用することがで る。

 また、本発明の水硬性組成物がスレート 造用の組成物である場合は、水硬性組成物 用いてスレートを製造するのに従来から採 されている方法、例えば、円網や長網を用 て抄造して抄造物を製造する方法、フロー ンなどによって成形物を製造する方法など 採用することができる。また、前記した方 によって得られる未硬化の抄造物や成形物 養生方法は特に制限されず、例えば、気中 生、水中養生、湿布養生、オートクレーブ 生、それらの2つ以上の組み合わせる方法な どを採用して養生することができる。

 コンクリート、モルタル、スレートなどを 造する際に前記した養生は自然環境下での 度で行ってもよいし、室温下で行ってもよ し、室温より高く100℃以下の温度で行って よいし、100℃を超える高温下で行ってもい れでもよい。
 本発明のポリプロピレン繊維のうち、「DSC 定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価 を有するシングル形状で、融解エンタルピ 変化量(△H)が125J/g以上である」という特性 備えるポリプロピレン繊維は、耐熱性に優 ていて、100℃を超える高温、特に150℃以上 更に170℃以上の高温下においても溶融、劣 、切断などが生じず、繊維形状およびその れた繊維強度を維持することができる。そ ため、当該DSC特性を有するポリプロピレン 維を水硬性物質に混合して水硬性組成物を 製し、当該水硬性組成物を用いて水硬化物 製造する場合は、100℃を超える温度、特に15 0℃以上、更には170℃以上の高温でオートク ーブ養生などを行うことで、強度に優れる 硬化物を短縮された養生時間で生産性よく 造することができる。

《ロープ構造体》
 本発明のロープ構造体は、上記した本発明 ポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維A~C のいずれか)を用いて形成されている。
 ここで、本発明の「ロープ構造体」とは、 維束(ストランド)、糸(ヤーン)および/また 繊維を用いて、それらを撚り合わせること よって形成されているロープ、ケーブル、 ード、紐などの総称である。
 本発明のロープ構造体は、繊維強度が7cN/dte xである本発明のポリプロピレン繊維を用い 形成されていることにより、高い強度を有 る。繊維強度が前記よりも小さいポリプロ レン繊維を用いてロープ構造体を形成した 合には、ロープ構造体の強度が不足するこ がある。

 本発明のロープ構造体のうち、上記した7cN/ dtex以上の繊維強度と共に、本発明で規定す 上記したDSC特性(DSC測定による吸熱ピーク形 が10℃以下の半価幅を有するシングル形状 、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上 あるという特性)を有する本発明のポリプロ レン繊維((ポリプロピレン繊維A、ポリプロ レン繊維C))を用いて形成されているロープ 造体は、ロープ構造体を形成している当該 リプロピレン繊維が耐熱性に優れるため、 温に曝されても溶断や物性低下が生じにく 、また摩擦や擦過を受けても摩擦熱による リプロピレン繊維の溶断や損傷、それに伴 ロープ構造体の切断や損傷が生じにくくて 丈夫で耐久性に優れる。
 本発明のロープ構造体を形成している当該 リプロピレン繊維は、融解エンタルピー変 量(△H)が125~165J/gであることが好ましく、130 ~165J/gであることがより好ましく、135~165J/gで ることが更に好ましく、140~165J/gであること が一層好ましい。

 さらに、本発明は、
 ・『前記したDSC特性を備えていないが、IPF 94%以上のポリプロピレンよりなる、単繊維 度が0.1~3dtexおよび繊維強度が7cN/dtex以上で 表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊 軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6. 5~20μmで平均高さが0.35~1μmの凹凸を有すると う特性』を備える本発明のポリプロピレン 維(ポリプロピレン繊維B)を用いて形成した ープ構造体;および、
 ・『7cN/dtex以上の繊維強度および本発明で 定する前記したDSC特性と共に、本発明で規 する前記した単繊維繊度および繊維表面に ける凹凸特性(すなわち単繊維繊度が0.1~3dtex 、表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が 維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔 6.5~20μmで平均高さが0.35~1μmの凹凸を有する いう特性)』を備える本発明のポリプロピレ ン繊維(ポリプロピレン繊維C)を用いて形成し たロープ構造体;
を包含する。

 本発明で規定する前記した特定の凹凸を繊 表面に有する本発明のポリプロピレン繊維( ポリプロピレン繊維B、ポリプロピレン繊維C) を用いて形成した本発明のロープ構造体は、 当該凹凸によって繊維表面での滑りが低減し 、その一方で前記した凹凸による噛合作用が 発揮されるために、ロープ構造体を形成して いる繊維間および/または繊維束(ストランド) 間の噛合作用によって緊密で強固な撚り合わ せが行われて、引張強度、耐伸び性、耐ヘタ リ性、形状保持性などに優れる。
 表面に凹凸を有する当該ポリプロピレン繊 において、前記した凹凸の平均間隔が6.5μm 満であると、および/または平均高さが0.35μ m未満であると、繊維表面の凹凸が微細にな 過ぎて、凹凸による噛合作用が低下する。 方、凹凸の平均間隔が20μmを超えるか、およ び/または平均高さが1μmを超えるポリプロピ ン繊維は、ポリプロピレン繊維の製造速度 大幅に低下しないと製造できず、またIPFが1 00%に近いポリプロピレンを使用する必要があ るため、実用性に乏しい。
 本発明のロープ構造体を前記した凹凸特性 有する本発明のポリプロピレン繊維を用い 形成するに当たっては、繊維軸方向に沿っ 形成された凹凸の平均間隔が6.6~20μm、特に6 .8~20μmで、平均高さが0.40~1μm、特に0.45~1μmで るポリプロピレン繊維を用いることが好ま い。

 本発明のロープ構造体を形成しているポリ ロピレン繊維の単繊維繊度は特に制限され いが、ポリプロピレン繊維を製造する際の 造の容易性(特に延伸のし易さ)、ロープへ 適用性、耐久性などの点から、ポリプロピ ン繊維の単繊維繊度は、一般的に0.01~500dtex あることが好ましく、0.05~50dtexであることが より好ましく、0.1~5dtexであることが更に好ま しい。
 ポリプロピレン繊維の単繊維繊度が小さ過 ると、ロープ構造体を形成する際に又ロー 構造体を形成した後に、ポリプロピレン繊 の溶融、断糸などが生じてロープ構造体の 度が低下することがあり、一方大きすぎる 、ポリプロピレン繊維を得るための延伸物 が低下して、高強度で、高度に結晶化した リプロピレン繊維が得られないことがある

 本発明のロープ構造体の形成に用いるポリ ロピレン繊維の形状(横断面形状)は特に制 されず、中実の円形断面形状であってもよ し、それ以外の上記した異形断面形状であ てもいずれでもよい。
 本発明の目的を妨げない範囲で、本発明の ープ構造体を形成するポリプロピレン繊維 、上記したような、例えば、熱安定剤やそ 他の添加剤の1種または2種以上を含有して てもよい。また、ポリプロピレン繊維は比 が一般に水よりも小さく、そのままでは水 浮くため、ロープ構造体の用途などに応じ 、必要であれば、浮遊防止のために、ロー 構造体を形成するポリプロピレン繊維中に 上記した炭酸カルシウムやその他の比重調 剤の1種または2種以上を含有させることがで きる。
 本発明のロープ構造体を形成するポリプロ レン繊維は、表面処理を施してなくてもよ し、またはロープ構造単位の用途などに応 て、適当な表面処理剤で表面処理してあっ もよい。

 本発明のロープ構造体は、長繊維状のポ プロピレン繊維(フィラメント)から形成さ ていてもよいし、またはポリプロピレン短 維を用いて製造した紡績糸から形成されて てもよいが、ロープ構造体の製造容易性、 ープ構造体の強度などの点から、長繊維状 ポリプロピレン繊維から形成されているこ が好ましい。

 本発明のロープ構造体の種類、構造、形状 どは特に制限されず、上記した特定の物性 有する本発明のポリプロピレン繊維を用い 形成されているロープ構造体であればいず でもよい。
 本発明のロープ構造体は、上記した特定の 性を有する本発明のポリプロピレン繊維の を用いて形成されていてもよいし、または 該特定の物性を有するポリプロピレン繊維 共に他の繊維および線状体の1種または2種 上を用いて形成されていてもよい。
 上記した特定の物性を有する本発明のポリ ロピレン繊維の特性(強度、耐熱性、表面の 凹凸による噛合作用など)を十分に活かした リプロピレン繊維製のロープ構造体を得る めには、本発明のポリプロピレン繊維の占 る割合(質量割合)が、ロープ構造体の質量に 基づいて、50質量%以上であることが好ましく 、60質量%以上であることがより好ましく、70~ 100質量%であることが更に好ましい。

 限定されるものではないが、本発明のロー 構造体の代表例としては、
(i)繊維を集めて撚りをかけてヤーンをつくり 、当該ヤーンを2本~数十本(好ましくは2本~100 )集めて撚り合わせてストランド(復糸)とし 当該ストランド(復糸)の複数本(好ましくは3 ~4本)を撚り合わせて形成したロープ構造体;
(ii)繊維を集めて撚りをかけてヤーンをつく 、当該ヤーンを2本~数十本(好ましくは2本~30 )集めて撚り合わせて第1のストランド(復糸) とし、当該第1のストランド(復糸)を2本~数十 (好ましくは2本~50本)集めて撚り合わせて第2 のストランド(復糸)とし、当該第2のストラン ド(復糸)の複数本(好ましくは3~4本)を撚り合 せて形成したロープ構造体;
(iii)繊維を集めて撚りをかけてヤーンをつく 、当該ヤーンを2本~数十本(好ましくは2本~10 0本)集めて撚り合わせてストランド(復糸)と 、当該ストランド(復糸)の複数本(好ましく 3~4本)を、他の繊維や線状体を芯材として用 て当該芯材を包囲した状態で撚り合わせて 成したロープ構造体;
(iv)繊維を集めて撚りをかけてヤーンをつく 、当該ヤーンを2本~数十本(好ましくは2本~100 本)集めて撚り合わせてストランド(復糸)とし 、当該ストランド(復糸)の1本または複数本と 他の繊維からなるストランド(復糸)および/ま たは線状体(例えば金属線、線状プラスチッ 、紐、テープなど)の1本または複数本とを撚 り合わせて形成したロープ構造体;
などを挙げることができる。

 上記(i)および(ii)のロープ構造体は、本発明 のポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維A~ Cのいずれか)のみを用いて形成されていても いし、または当該ポリプロピレン繊維と他 繊維を用いて形成されていてもよい。
 また、上記(iii)および(iv)のロープ構造体は 上記特定の物性を有する本発明のポリプロ レン繊維と共に、他の繊維および/または線 状体を用いて形成されている。
 上記特定の物性を有する本発明のポリプロ レン繊維のみを用いて上記(i)のロープ構造 を形成する場合は、繊維を集めて撚りをか てつくったヤーンの繊度は10~5000dtex、特に10 0~3000dtex程度で、当該ヤーンを集めて撚り合 せて形成したストランド(復糸)の繊度は20~500 000dtex、特に200~300000dtexであることが、取り扱 い性、実用性の点から好ましい。
 また、本発明のポリプロピレン繊維のみを いて上記(ii)のロープ構造体を形成する場合 は、繊維を集めて撚りをかけてつくったヤー ンの繊度は、10~5000dtex、特に100~3000dtex程度で 当該ヤーンを集めて撚り合わせて形成した 1のストランド(復糸)の繊度は20~150000dtex、特 に200~90000dtexであり、第1のストランド(復糸) 撚り合わせて形成した第2のストランド(復糸 )の繊度は40~7500000dtex、特に400~4500000dtexである ことが、取り扱い性、実用性の点から好まし い。
 また、本発明のポリプロピレン繊維と共に の繊維や線状体を用いてロープ構造体を形 する場合も、上記に準じた繊度を採用する が好ましい。

 本発明のロープ構造体が、本発明のポリ ロピレン繊維と共に他の繊維および線状体 1種または2種以上を用いて形成されている 合は、他の繊維としては、例えば、本発明 ポリプロピレン繊維以外のポリプロピレン 維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエ レン繊維、ポリエステル繊維、ポリ塩化ビ ル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アラミ 繊維、ポリアリレート繊維などの合成繊維 レーヨン繊維などの半合成繊維、麻、綿、 毛などの天然繊維、金属繊維、炭素繊維な を挙げることができる。また、他の線状体 しては、金属線、線状プラスチック、プラ チックテープ、布テープ、合成繊維および/ たは天然繊維を用いて製編織して製造した 、スプリットヤーンなどを挙げることがで る。

 本発明のロープ構造体が、本発明のポリ ロピレン繊維と共に他の繊維および線状体 1種または2種以上を用いて形成されている 合は、例えば、ロープ構造体を構成する上 したストランド(復糸)中で当該ポリプロピレ ン繊維と他の繊維および/または線状体とが 繊(混合)した状態であってもよいし、当該ポ リプロピレン繊維のみからなるストランド( 糸)と他の繊維からなるストランド(復糸)お び/または線状体とを撚り合わせてあっても いし[例えば上記(d)のロープ構造体の範疇の もの]、ロープ構造体の中心部に他の繊維お び/または線状体が芯として存在し当該芯を 囲してポリプロピレン繊維のみからなるス ランド(復糸)を撚り合わせてもよい[例えば 記(c)のロープ構造体の範疇のもの]。

 本発明のロープ構造体の太さは特に制限さ ず、ロープ構造体の用途、使用形態、取り い性などに応じて決めることができる。一 的には、本発明のロープ構造体は、その直 が約0.1~100mm、特に0.2~50mmであることが、ロ プ構造体の製造容易性、取り扱い性などの から好ましい。
 また、本発明のロープ構造体は、撚り合わ 工程(製綱工程)後に、必要に応じて熱処理 施してあってもよいし、および/または樹脂 工を施してあってもよい。
 本発明のロープ構造体の製法は特に制限さ ず、合成繊維、または合成繊維と他の材料 用いてロープ構造体を製造するのに従来か 採用されているのと同様の方法および装置 使用して製造することができる。

《シート状繊維構造体》
 本発明のシート状繊維構造体は、上記特定 特性を有する本発明のポリプロピレン繊維( ポリプロピレン繊維A~Cのいずれか)を用いて 成されている。
 ここで、本発明の「シート状繊維構造体」 は、本発明のポリプロピレン繊維を用いる 、および/または当該ポリプロピレン繊維か らなる糸を用いて製造されたシート状をなす 繊維構造体の総称である。本発明のシート状 繊維構造体には、織編物、不織布、合成紙、 網状物、それらの2種以上を積層してなる繊 構造体などが含まれる。

 本発明のシート状繊維構造体は、7cN/dtex 上の繊維強度を有する本発明のポリプロピ ン繊維を用いて形成されていることにより 高い強度を有する。繊維強度が前記よりも さいポリプロピレン繊維を用いてシート状 維構造体を形成した場合には、シート状繊 構造体の強度が不足することがある。

 本発明のシート状繊維構造体を形成してい ポリプロピレン繊維の単繊維繊度は特に制 されないが、シート状繊維構造体を製造す 際の工程性、シート状繊維構造体の強度や 久性などの点から、ポリプロピレン繊維の 繊維繊度は、一般的に0.01~500dtexであること 好ましく、0.05~50dtexであることがより好ま く、0.1~5dtexであることが更に好ましい。
 ポリプロピレン繊維の単繊維繊度が小さ過 ると、シート状繊維構造体を形成する際に シート状繊維構造体を形成した後に、ポリ ロピレン繊維の断糸などが生じてシート状 維構造体の強度が低下することがあり、一 大きすぎると、ポリプロピレン繊維を得る めの延伸物性が低下して、高強度で、高度 結晶化したポリプロピレン繊維が得られな ことがある。

 本発明のシート状繊維構造体のうち、上 した7cN/dtex以上の繊維強度と共に、本発明 規定する上記した特定の単繊維繊度と上記 定の凹凸を有する本発明のポリプロピレン 維(ポリプロピレン繊維B、ポリプロピレン繊 維C)を用いて形成されているシート状繊維構 体は、シート状繊維構造体を形成する当該 リプロピレン繊維が前記特定の凹凸を繊維 に沿って有していることにより高い保水率( 一般に10質量%以上の保水率)を有し、保水性 優れているため、当該ポリプロピレン繊維 用いて形成してなる本発明のシート状繊維 造体も高い保水率(一般に10質量%以上の保水 )を有し、保水性に優れている。

 本発明のシート状繊維構造体を高保水率が められる用途に用いる場合は、当該シート 繊維構造体の保水率は、10質量%以上である とが好ましく、11~50%質量%であることがより 好ましい。保水率が50%を超えるポリプロピレ ン繊維製のシート状繊維構造体を得るために は、ポリプロピレン繊維表面の凹凸を極めて 大きなものとしなければならず、現実には、 生産性よく製造することが困難である。
 なお、本明細書におけるシート状繊維構造 の保水率は、以下に実施例に記載する方法 測定した保水率をいう。

 本発明のポリプロピレン繊維のうち、上記 た7cN/dtex以上の繊維強度と共に、本発明で 定する上記した特定のDSC特性を有する本発 のポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維A 、ポリプロピレン繊維C)は、上述のように、 熱性に優れているため、当該ポリプロピレ 繊維を用いて形成してなる本発明のシート 繊維構造体は、耐熱性に優れている。
 本発明のシート状繊維構造体の耐熱性をよ 向上させるためには、シート状繊維構造体 構成するポリプロピレン繊維の融解エンタ ピー変化量(△H)は、125~165J/gであることが好 ましく、130~165J/gであることがより好ましく 135~165J/gであることが更に好ましく、140~165J/g であることが一層好ましい。
 シート状繊維構造体を構成するポリプロピ ン繊維の融解エンタルピー変化量(△H)が125J /g未満であると、耐熱性が不十分になること ある。

 一方、本発明で規定する上記したDSC特性 有していないものの、単繊維繊度が0.1~3dtex よび繊維強度が7cN/dtex以上で、且つ繊維表 に本発明で規定する上記した特定の凹凸を する本発明のポリプロピレン繊維(ポリプロ レン繊維B)を用いて形成した本発明のシー 状繊維構造体は、シート状繊維構造体を構 するポリプロピレン繊維間の絡合が強くて 耐ヘタリ性、形状保持性などに優れ、しか 保水性に優れている。

 さらに、繊維強化が7cN/dtex以上、単繊維 度が0.1~3dtexで、且つ本発明で規定する前記 定のDSC特性と本発明で規定する前記特定の 維表面における凹凸特性を有する本発明の リプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維C)か 形成したシート状繊維構造体は、保水性、 熱性、強度などの特性に一層優れている。

 本発明のシート状繊維構造体を形成する本 明のポリプロピレン繊維の形状(横断面形状 )は特に制限されず、中実の円形断面形状で っても、または前記した種々の異形断面形 であってもいずれでもよい。
 また、本発明のシート状繊維構造体を形成 る本発明のポリプロピレン繊維は、必要に じて、上記したような熱安定剤やその他の 加剤の1種または2種以上を含有していても い。
 本発明のシート状繊維構造体を形成するポ プロピレン繊維は、シート状繊維構造体の 途などに応じて、表面処理を施してなくて よいし、または様々な物質との親和性の向 、帯電防止、処理剤の安定化などの目的で 任意の表面処理剤で表面処理してあっても い。その際の表面処理剤としては、例えば 上記したような、種々の表面処理剤の1種ま たは2種以上を用いることができる。

 本発明のシート状繊維構造体は、上記特定 特性を有する本発明のポリプロピレン繊維 、シート状繊維構造体の質量に基づいて、5 0質量%以上の割合で含んでいることが好まし 、60質量%以上の割合で含むことがより好ま く、65質量%以上の割合で含むことが更に好 しい。
 シート状繊維構造体における本発明のポリ ロピレン繊維の含有割合が少なすぎると、 該ポリプロピレン繊維が有する高い保水性 、耐熱性、強度などの優れた性能を、シー 状繊維構造体に付与できなくなる。

 本発明のシート状繊維構造体の種類、形態 どは特に制限されず、本発明のポリプロピ ン繊維を好ましくは50質量%以上の割合で含 シート状の繊維構造体であればよく、例え 、織編物、不織布、合成紙、網状物、それ の2種以上を積層してなる積層繊維構造体な どを挙げることができる。
 本発明のシート状繊維構造体が織物である 合は、例えば、ジェット織機、スルザー織 、ラピヤー織機、ドビー織機、ジャガード 機などを使用して製造される平織物、斜文 物、朱子織物、スダレ状の織物、多軸織物 多層織物などのいずれであってもよい。
 また、本発明のシート状繊維構造体が編物 ある場合は、丸編み機、縦編み機、横編み 、トリコット機などを使用して得られる種 の編物であることができる。
 本発明のシート状繊維構造体が不織布であ 場合は、湿式抄造不織布、ニードルパンチ 織布、サーマルボンド不織布、エアレイド 織布、スパンレース不織布などのいずれで ってもよい。

 本発明のシート状繊維構造体が、上記特 の本発明のポリプロピレン繊維と共に他の 維を含む場合は、他の繊維の種類は特に制 されず、例えば、綿、絹、羊毛、麻などの 然繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維 アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維 本発明のポリプロピレン繊維以外のポリプ ピレン繊維、ポリエチレン繊維などのポリ レフィン繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、 ラミド繊維、ポリアリレート繊維などの合 繊維、ビスコース、レーヨンなどの半合成 維、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維 どの1種または2種以上を、50質量%以下、好 しくは40質量%以下、より好ましくは35質量% 下の割合で併用することができる。

 本発明のポリプロピレン繊維と共に他の 維を併用する場合は、併用形態は特に制限 れず、シート状繊維構造体の種類、形態、 途などに応じて適宜選択することができる 本発明のシート状繊維構造体は、例えば、 発明のポリプロピレン繊維からなる糸と他 繊維からなる糸を用いて作製した織編物や 状物であってもよいし、本発明のポリプロ レン繊維と他の繊維を混紡して得た糸を用 て作製した織編物や網状物であってもよい 、本発明のポリプロピレン繊維と他の繊維 混綿して作製した不織布、合成紙であって よいし、本発明のポリプロピレン繊維より る織編物または不織布と他の繊維よりなる 編物または不織布との積層体であってもよ 。

 何ら限定されるものではないが、本発明 シート状繊維構造体の例としては、本発明 ポリプロピレン繊維からなる糸を単独で用 て製造した織物、編物、網状物、本発明の リプロピレン繊維と他の合成繊維、天然繊 および/または半合成繊維を混紡して得た混 紡糸を用いて製造した織物、編物、網状物、 本発明のポリプロピレン繊維からなる糸と、 他の合成繊維からなる糸および/または天然 維からなる糸を組み合わせて作製した織物 編物、網状物などを挙げることができる。 えば、本発明のポリプロピレン繊維と綿を 紡した糸を用いるかまたは本発明のポリプ ピレン繊維よりなる糸と綿紡績糸を組み合 せて用いて編地(ニット)を製造すると、耐熱 性に優れていて体育館の床などと摩擦しても 溶融することがなく、軽量で、しかも保水性 が高くて吸汗性に優れるスポーツ衣料用とし て好適な編地(ニット)を得ることができる。

 また、本発明のシート状繊維構造体が、 織布や合成紙である場合は、例えば、本発 のポリプロピレン繊維に捲縮を付与し、切 し、カーディング後にニードルパンチを施 て製造したフェルト状の不織布、本発明の リプロピレン繊維に捲縮を付与し、切断し カーディングする際に当該ポリプロピレン 維よりも低温で溶融する表面部分を少なく も有するバインダー繊維(例えば芯部分がポ リプロピレンからなり鞘部分がポリエチレン からなる芯鞘型複合繊維など)を混綿し熱処 してポリプロピレン繊維をバインダー繊維 結合してなる乾式不織布、本発明のポリプ ピレン繊維からなる短繊維にバインダー繊 を混合して水分散スラリーを調製した後に 造し、乾燥処理することにより得られる湿 不織布(合成紙)などを挙げることができる。 本発明のポリプロピレン繊維(特にポリプロ レン繊維A、ポリプロピレン繊維C)を用いて 成した本発明の不織布は、当該ポリプロピ ン繊維が高い耐熱性を有していて、接着処 工程、乾燥処理工程などの処理工程を高温 行うことができるため、当該不織布を高い 産速度で製造することができる。

 本発明のポリプロピレン繊維を用いて形 してなる本発明のシート状繊維構造体は、 水率が高くて保水性に優れ、耐熱性、力学 特性、耐薬品性などにも優れるため、それ の特性を活かして、工業用フィルター、ア カリ2次電池セパレーター、ポリプロピレン 繊維補強ポリオレフィンシート、衣類用布帛 (織編物、不織布など)、衛生用品、日用雑貨 どの種々の用途に有効に使用することがで る。

《複合材料および成形体》
 本発明の複合材料は、有機重合体よりなる トリックスと、当該マトリックス中に含ま る本発明のポリプロピレン繊維(ポリプロピ レン繊維A~Cのいずれか)よりなる複合材料で る。
 本発明の複合材料およびそれからなる成形 は、7cN/dtex以上の繊維強度を有する本発明 ポリプロピレン繊維を用いて形成されてい ことにより、高い強度を有する。繊維強度 前記よりも小さいポリプロピレン繊維を用 て複合材料および成形体を製造した場合に 、複合材料および成形体の強度が不足する とがある。

 本発明のポリプロピレン繊維のうち、上記 た7cN/dtex以上の繊維強度と共に、本発明で 定する上記特定のDSC特性を有するポリプロ レン繊維(ポリプロピレン繊維A、ポリプロピ レン繊維C)を用いて形成した本発明の複合材 およびそれからなる成形体は、ポリプロピ ン繊維が耐熱性に優れていることにより、 温に曝されても溶断や物性低下が生じにく 、引張強度、耐衝撃性、曲げ弾性率、曲げ 度などの力学的特性に優れる。
 本発明の複合材料に用いるポリプロピレン 維(ポリプロピレン繊維A、ポリプロピレン 維C)は、融解エンタルピー変化量(△H)が125~16 5J/gであることが好ましく、130~165J/gであるこ がより好ましく、135~165J/gであることが更に 好ましく、140~165J/gであることが一層好まし 。
 ポリプロピレン繊維の融解エンタルピー変 量(△H)が125J/g未満であると、耐熱性が不十 になることがある。

 また、本発明は、7cN/dtex以上の繊維強度と に、または7cN/dtex以上の繊維強度および本発 明で規定する上記したDSC特性と共に、本発明 で規定する上記した凹凸特性を有するポリプ ロピレン繊維(ポリプロピレン繊維B、ポリプ ピレン繊維C)を用いて製造した複合材料お び成形体を包含する。
 ポリプロピレン繊維として本発明で規定す 上記した凹凸構造を有するポリプロピレン 維(ポリプロピレン繊維B、ポリプロピレン 維C)を用いた場合には、ポリプロピレン繊維 の表面に、平均間隔が6.5~20μmで平均高さが0.3 5~1μmである前記した凹凸を繊維軸に沿って有 していることにより、有機重合体マトリック スに対する投錨効果が生じて、有機重合体マ トリックスとの接着性が向上することにより 、引張強度、耐衝撃性、曲げ弾性率、曲げ強 固などの力学的特性に優れる複合材料および 成形体が得られる。表面に凹凸を有するポリ プロピレン繊維において、前記した凹凸の平 均間隔が6.5μm未満であると、および/または 均高さが0.35μm未満であると、繊維表面の凹 が微細になり過ぎて、有機重合体マトリッ スに対する投錨効果が低下する。一方、凹 の平均間隔が20μmを超えるか、および/また 平均高さが1μmを超えるポリプロピレン繊維 は、ポリプロピレン繊維の製造速度を大幅に 低下しないと製造できず、またIPFが100%に近 ポリプロピレンを使用する必要があるため 実用性に乏しい。
 本発明の複合材料および成形体を前記した 凸特性を有するポリプロピレン繊維(ポリプ ロピレン繊維B、ポリプロピレン繊維C)を用い て形成する場合には、繊維軸方向に沿って形 成された凹凸の平均間隔が6.6~20μm、特に6.8~20 μmで、平均高さが0.40~1μm、特に0.45~1μmである ポリプロピレン繊維を用いることが好ましい 。

 本発明の複合材料に用いるポリプロピレン 維の単繊維繊度は特に制限されないが、ポ プロピレン繊維を製造する際の製造の容易 (特に延伸のし易さ)、耐久性などの点から ポリプロピレン繊維の単繊維繊度は、上述 ように、0.01~500dtexであることが好ましく、0. 05~50dtexであることがより好ましく、0.1~5dtexで あることが更に好ましい。
 ポリプロピレン繊維の単繊維繊度が小さ過 ると、複合材料および成形体を製造する際 、また製造した後に、ポリプロピレン繊維 溶融、断糸などが生じて複合材料および成 体の強度が低下することがある。一方、ポ プロピレン繊維の単繊維繊度が大きすぎる 、ポリプロピレン繊維を得るための延伸物 が低下して、高強度で、高度に結晶化した リプロピレン繊維が得られないことがあり また当該ポリプロピレン繊維を織編物、不 布、網などの形態にして複合材料に用いる 合に、織編物、不織布、網などが製造しに くなることがある。

 本発明の複合材料に用いるポリプロピレン 維の形状(横断面形状)は特に制限されず、 実の円形断面形状であってもよいし、それ 外の上記したような種々の異形断面形状の ずれでもよい。
 本発明の目的を妨げない範囲で、本発明の 合材料に用いるポリプロピレン繊維は、必 に応じて、上記した例えば熱安定剤やその の添加剤の1種または2種以上を含有してい もよい。
 本発明の複合材料に用いるポリプロピレン 維は、表面処理を施してなくてもよいし、 たは複合材料および成形体の用途などに応 て、適当な表面処理剤で表面処理してあっ もよい。

 本発明の複合材料では、有機重合体マトリ クス中に含まれる本発明のポリプロピレン 維(ポリプロピレン繊維A~Cのいずれか)の形 は特に制限されず、例えば、短繊維、長繊 、繊維束、糸、織編物、不織布、網などの ずれの形態であってもよい。
 ポリプロピレン繊維が短繊維の形態である 合は、本発明の複合材料は、一般に、有機 合体中に上記したポリプロピレン繊維の短 維を分散、含有する有機重合体組成物(コン パウンド)の形態となる。また、ポリプロピ ン繊維が、長繊維、繊維束、糸、織編物、 織布、網などの短繊維以外の形態である場 は、本発明の複合材料は、有機重合体マト ックス中にポリプロピレン長繊維、ポリプ ピレン繊維束、ポリプロピレン繊維製の糸 ポリプロピレン繊維製の織編物、不織布、 などが含まれる種々の形態物、例えば、線 、棒状、シート状、板状、管状、ブロック などの任意の形状をなす、有機重合体含浸 (FRP)などの形態にすることができる。

 本発明のポリプロピレン繊維を織物の形 にして有機重合体マトリックス中に含有さ る場合は、織物としては、例えば、ジェッ 織機、スルザー織機、ラピヤー織機、ドビ 織機、ジャガード織機、多軸織機、多層織 などを使用して製造される平織物、斜文織 、朱子織物、スダレ状の織物、一方向織物 擬似一方向織物などを用いることができ、 た編物としては、丸編み機、縦編み機、横 み来、トリコット機などを使用して得られ 種々の編物、ステッチファブリック、ノン リンプドファブリックなどを用いることが きる。これらの織物および/または編物は、 本発明のポリプロピレン繊維のみから製造さ れていてもよいし、本発明のポリプロピレン 繊維と共に必要に応じて他の繊維、例えば、 綿、絹、羊毛、麻などの天然繊維、ポリエス テル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポ リビニルアルコール繊維などの合成繊維、ビ スコース、レーヨンなどの半合成繊維などの 1種または2種以上を用いて製造されていても い。

 本発明の複合材料では、短繊維、長繊維、 維束、糸、織編物、不織布または網の形態 なすポリプロピレン繊維の有機重合体マト ックス中での存在形態(含まれ方)は特に制 されず、複合材料およびそれかなる成形体 用途、使用目的などに応じて適宜選択する とができる。ポリプロピレン繊維は、例え 、有機重合体マトリックス中に均一な状態 含まれていてもよいし、有機重合体マトリ クス中に不均一またはランダムに含まれて てもよいし、有機重合体マトリックス中に 部的に含まれていてもよいし、有機重合体 トリックスの全体またはほぼ全体に含まれ いてもよい。
 また、本発明の複合材料および成形体では ポリプロピレン繊維は、有機重合体マトリ クス中に完全に埋没した状態であってもよ し、ポリプロピレン繊維の一部が有機重合 マトリックスから外部に露出した状態であ てもよい。ポリプロピレン繊維の一部が有 重合体マトリックスから外部に露出してい 場合は、その露出の程度は、複合材料およ 成形体の用途や使用目的などに応じて適宜 節することができる。

 本発明の複合材料において、マトリック をなす有機重合体としては、本発明のポリ ロピレン繊維の物性や凹凸構造などが損な れないようにして、有機重合体マトリック 中にポリプロピレン繊維を含有させること できる有機重合体であればいずれでもよく 特に制限されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性 脂、弾性重合体のいずれであってもよい。 のような有機重合体として、例えば、ポリ ロピレン繊維の溶融温度よりも融点の低い 可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー(熱可塑 性弾性重合体)、ポリプロピレン繊維の溶融 度よりも低い温度で反応硬化する熱硬化樹 、ポリプロピレン繊維の溶融温度よりも低 温度で加硫するゴム、ポリプロピレン繊維 溶解しない溶媒に溶解する有機重合体など 挙げることができる。

 本発明の複合材料に用いることのできる 機重合体の具体例としては、ポリプロピレ 、ポリエチレン、ポリブテン、エチレン-酢 酸ビニル共重合体などのオレフィン系樹脂、 ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、耐衝撃性ポ リスチレン、ABSなどのポリスチレン系樹脂、 アクリル系樹脂、ポリ乳酸、ポリエステル系 樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコ ール、ポリアクリロニトリル、熱可塑性ポリ ウレタンなどの熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂 不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂 メラミン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性 リウレタン、メラミン樹脂、アルキッド樹 などの熱硬化性樹脂;天然ゴム、ポリブタジ ン、ブタジエンスチレンゴム、ブタジエン クリロニトリルゴム、ポリクロロプレン、 リイソプレン、ポリイソブチレン、シリコ ンゴムポリスチレン系熱可塑性エラストマ 、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポ エチレン系熱可塑性エラストマー、ポリア ド系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系 可塑性エラストマーなどの弾性重合体など 挙げることができ、これらは単独で用いて よいし、2種以上を併用してもよい。

 本発明の複合材料における有機重合体マ リックスとポリプロピレン繊維との含有割 は特に制限されず、マトリックスをなす有 重合体の種類、ポリプロピレン繊維の形態 複合材料およびそれからなる成形体の用途 どに応じて異なり得る。本発明の複合材料 、有機重合体マトリックス中に短繊維状の リプロピレン繊維を混合したコンパウンド ある場合は、一般的には、マトリックスを す有機重合体:ポリプロピレン繊維の質量比 が、99:1~50:50、更には98:2~55:45、特に97:3~60:40で あることが、複合材料の製造の容易性、複合 材料の取り扱い性、成形加工性などの点から 好ましい。また、本発明の複合材料が、コン パウンド以外のもの(例えばポリプロピレン 維よりなる織布、不織布、繊維束などにマ リックスをなす有機重合体を含浸させたも など)である場合は、一般的には、マトリッ スをなす有機重合体:ポリプロピレン繊維の 質量比が、70:30~5:95、更には60:40~10:90、特に50: 50~15:85であることが、複合材料の製造の容易 、複合材料の取り扱い性、成形加工性など 点から好ましい。

 本発明の複合材料は、有機重合体マトリ クスおよびポリプロピレン繊維以外に、本 明の目的の妨げにならない範囲で、必要に じて、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、 化防止剤、着色剤、充填剤、帯電防止剤、 記したポリプロピレン繊維以外の有機繊維 無機繊維などの1種または2種以上を含有し いてもよい。

 本発明の複合材料の製造に当たっては、 トリックスをなす有機重合体の種類、物性( 特に、融点、軟化点、硬化温度、反応温度、 加硫温度などの熱的性質)、有機重合体の溶 への溶解性、ポリプロピレン繊維の形態、 合材料の用途や使用目的などに応じて、上 したポリプロピレン繊維の物性および構造 失われないようにして有機重合体マトリッ ス中にポリプロピレン繊維を含有させ得る 法を採用する。

 マトリックスをなす有機重合体が、ポリプ ピレン繊維よりも低温で溶融する熱可塑性 合体(ポリプロピレン繊維よりも低温で溶融 する熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーな ど)であって、ポリプロピレン繊維が短繊維 である場合は、典型的には、以下の(1a)の方 を採用して複合材料を製造することができ 。
(1a) 押出機やその他の適当な溶融混合装置( 融混練装置)を使用して、短繊維状のポリプ ピレン繊維と、ポリプロピレン繊維の融点 りも低温で溶融混合する熱可塑性重合体を 融混合して、当該熱可塑性重合体マトリッ ス中に短繊維状のポリプロピレン繊維を含 複合材料(熱可塑性重合体組成物、コンパウ ンド)を製造する方法。
 前記(1a)の方法を行うに当たっては、オレフ ィン系のエマルジョンなどをポリプロピレン 繊維に付与しておくと、溶融混合時に繊維ダ マの発生などのトラブルが少なくなるので好 ましい。本発明で用いる上記したプロピレン 繊維は、耐熱性に優れていて、かなりの高温 に曝されても溶融せずに繊維形状を維持でき るので、従来よりも高温で熱可塑性重合体へ の配合、溶融混合を行うことができ、それに よって熱可塑性有機重合体中にポリプロピレ ン繊維を含む複合材料(熱可塑性重合体組成 )を従来よりも高い生産速度で製造すること できる。
 上記(1a)の方法により得られる複合材料(熱 塑性重合体組成物、コンパウンド)を用いて 例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、 レス成形、ブロー成形、押出ブロー成形な のような従来から広く知られている溶融成 を行うことによって、種々の成形体を製造 ることができる。

 また、マトリックスをなす有機重合体が、 リプロピレン繊維よりも低温で溶融する熱 塑性重合体(以下、ポリプロピレン繊維より も低温で溶融する熱可塑性重合体を「低温溶 融熱可塑性重合体」ということがある)であ て、ポリプロピレン繊維が長繊維状、繊維 状、糸状、織編物状、不織布状、網状など 形態をなす場合は、例えば、以下の(1b)~(1e) 方法で本発明の複合材料を製造することが きる。
(1b) 長繊維状、繊維束状、糸状のポリプロピ レン繊維に、低温溶融熱可塑性重合体をポリ プロピレン繊維の全表面を覆うように溶融押 出被覆して複合材料を製造する方法。
(1c) 織編物状、不織布状、網状)のポリプロ レン繊維(ポリプロピレン繊維構造体)上に、 低温溶融熱可塑性重合体を、溶融押出、溶融 流延、カレンダーなどによってシート状に施 すと共にポリプロピレン繊維(ポリプロピレ 繊維構造体)中に含浸させて複合材料を製造 る方法。
(1d) 織編物状、不織布状、網状のポリプロピ レン繊維(ポリプロピレン繊維構造体)上に、 温溶融熱可塑性重合体から予め製造したフ ルムやシートを積層し、当該フィルムやシ トを加熱して、必要であれば更に押圧して ポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維構 造体)中に低温溶融熱可塑性重合体を含浸さ て複合材料を製造する方法。
(1e) 織編物状、不織布状、網状のポリプロピ レン繊維(ポリプロピレン繊維構造体)に、低 溶融熱可塑性重合体の粉末を施し、加熱し 必要であれば押圧して、ポリプロピレン繊 (ポリプロピレン繊維構造体)中に低温溶融 可塑性重合体を含浸させて複合材料を製造 る方法。
 上記した(1b)~(1e)の方法で得られる複合材料 、得られる複合材料の構造や形態に応じて そのままで成形体や製品として用いてもよ し、または更に加熱加工などを行って成形 や最終製品を製造してもよい。

 限定されるものではないが、上記した(1d)の 方法の具体例としては、本発明のポリプロピ レン繊維を用いて作製した2軸メッシュと予 製造したポリオレフィン系シートを交互に 層(例えば合計で10層)に積層し、それをポリ レフィン系シートの溶融温度以上で且つポ プロピレン繊維の溶融温度よりも低い温度 熱圧着して、ポリプロピレン繊維補強ポリ レフィンボードを製造する方法などを挙げ ことができる。これにより得られるポリプ ピレン繊維補強ポリオレフィンボードは、 強繊維であるポリプロピレン繊維が上記し ように高強度で、高い耐熱性とポリオレフ ンに対する優れた接着性を有するため引張 度および引裂き強度が従来のものに比べて 躍的に向上しており、しかもポリプロピレ 繊維の優れた耐熱性によって従来よりも高 温度でポリオレフィン系シートを溶融する とができるため、生産速度を十分に高くす ことができる。
 この場合に、ポリプロピレン繊維を織編物 する代わりに一方向プリプレグ状にすると ポリプロピレン繊維の強度利用率を高くす ことができる。

 また、マトリックスをなす有機重合体が、 リプロピレン繊維の融点よりも低温で硬化 る熱硬化性樹脂やポリプロピレン繊維の融 よりも低温で加硫する弾性重合体である場 は、例えば、以下の(2a)および(2b)の方法に って本発明の複合材料を製造することがで る。
(2a) 短繊維状のポリプロピレン繊維と、ポリ プロピレン繊維の融点よりも低温で硬化また は加硫する熱硬化性樹脂または弾性重合体を 、当該熱硬化性樹脂または弾性重合体の硬化 温度または加硫温度よりも低い温度で混合し て、当該熱硬化性樹脂または弾性重合体マト リックス中に短繊維状のポリプロピレン繊維 を含む複合材料を製造する方法。
(2b) 長繊維状、繊維束状、糸状、織編物状、 不織布状、網状)のポリプロピレン繊維(ポリ ロピレン繊維構造体)に、ポリプロピレン繊 維の融点よりも低温で硬化または加硫する、 液状、ペースト状、粉末状、シート状の熱硬 化性樹脂または弾性重合体を施し、必要であ れば更に押圧して、ポリプロピレン繊維(ポ プロピレン繊維構造体)中に熱硬化性樹脂ま は弾性重合体を含浸させて複合材料を製造 る方法。

 上記した(2a)および(2b)の方法で得られる 合材料は、熱硬化性樹脂または弾性重合体 硬化温度または加硫温度で、加熱加工した 、加熱成形(例えばSMC,BMCなど)することによ て、目的とする成形体や製品にすることが きる。その際に、上記した(2a)および(2b)の方 法で得られる複合材料に含まれる本発明のポ リプロピレン繊維は、従来のポリプロピレン 繊維よりも耐熱性に優れていて、熱硬化性樹 脂の硬化時の温度または弾性重合体の加硫時 の温度に発熱や加熱に耐えることができ、そ れによって硬化温度または加硫温度を高く設 定できるために、従来のポリプロピレン繊維 で補強された熱硬化性樹脂成形体や弾性重合 体成形体の製造におけるよりも、成形体の生 産性を高めることができ、しかも得られる成 形体の強度などの力学的特性が優れたものと なる。

 さらに、本発明の複合材料は、マトリック をなす有機重合体を、有機重合体を溶解す がポリプロピレン繊維を溶解または膨潤し い溶媒に溶解して有機重合体溶液を調製し 当該有機重合体溶液を、ポリプロピレン繊 (短繊維、長繊維、繊維束、糸、織編物、不 織布、網などの形態をなすポリプロピレン繊 維)に含浸した後、ポリプロピレン繊維の融 よりも低い温度で溶媒を除去することによ ても製造することができる。
 有機重合体を溶解し、ポリプロピレン繊維 溶解または膨潤しない溶媒としては、例え 、水、アセトン、タノール、酢酸、トルエ 、フェノール、ベンゼン、ジメチルホルム ミド、ジメチルスルホキシド、スチレンな を挙げることができ、有機重合体の種類に じて、前記した溶媒の1種または2種以上を いることができる。
 これにより得られる複合材料は、複合材料 構成する有機重合体マトリックスの種類な に応じて、それぞれの有機重合体に適した 法で、成形加工することによって、目的と る成形体にすることができる。

 有機重合体中に本発明のポリプロピレン繊 を含む本発明の複合材料を用いて成形体を 造するに当たっては、いわゆる「FRP」(繊維 強化プラスチック)の技術分野において従来 ら採用されている種々の成形方法を採用す ことができる。本発明で採用できる成形法 しては、例えば、溶融成形による射出成形 法、押出成形法、プレス成形法、カレンダ 成形法、流延法、ブロー成形法などのよう 上記した溶融成形法、ハンドレイアップ法 スプレーアップ法、連続パネル成形法、引 抜き成形法、フィラメントワインディング 、チョップ併用フープ巻法、遠心成形法、 ッグ法、コールドプレス法、レジンインジ クション法、ホートクレーブ法、プリフォ ムマッチドダイ法、プリミックス法、シー モールディングコンパウンド法、油中加圧 ールド法、積層圧縮法などを挙げることが きる。
 それぞれの成形法に応じて、それに適した 合材料を製造して用いるとよい。

 本発明の複合材料およびそれからなる成 体は、強度などの力学的特性、耐熱性、耐 性、軽量性、リサイクル性に優れているた 、それらの特性を活かして、自動車部品、 気・電子部品、衛生用品、日用雑貨、レジ ー・スポーツ用品、事務用品、宇宙・航空 品などの種々の用途に有効に用いることが きる。

 以下に本発明を実施例などにより具体的 説明するが、本発明は以下の実施例に限定 れるものではない。

[I] ポリプロピレン繊維およびその製 造 :
 以下の実施例1~10および比較例1~9において、 ポリプロピレン繊維およびその製造について 具体的に説明する。
 以下の実施例1~10および比較例1~9において、 ポリプロピレンのアイソタクチックペンタッ ド分率(IPF)、延伸時の延伸張力、ポリプロピ ン繊維のDSC、単繊維繊度、繊維強度、繊維 面の凹凸の平均間隔および平均高さ、摩擦 融性および保水率の測定は次のようにして った。

(I-1)ポリプロピレンのアイソタクチックペン ッド分率(IPF):
 超伝導核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製 「Lambda500」)を使用して、非特許文献1に記載 れている「 13 C-NMRスペクトル法」に従ってポリプロピレン IPFを求めた。具体的には、ポリプロピレン における、 13 C-NMRスペクトルにおいてプロピレン単量体単 が5個連続してアイソタクチック結合したプ ロピレン単位(アイソタクチックペンタッド 位)の含有割合(分率)(%)を求めてIPFとした。 の際に、 13 C-NMRスペクトルにおけるピークの帰属に関し は、非特許文献2に記載されている方法に従 って決定した。

(I-2)延伸時の延伸張力:
 荷重張力計測器(日本電産シンポ社製「DTMX-5 B」)を使用して、延伸炉(熱風炉)から出た直 の糸、または延伸プレートから離れた直後 糸の張力を測定して延伸張力(cN/dtex)とした

(I-3)ポリプロピレン繊維のDSC測定:
 ポリプロピレン繊維を温度20℃および相対 度65%の雰囲気下に5日間放置して調湿した後 長さ1mmに切断し、その5mgを量り採ってアル パン(容量100μL)(METTLER TOLEDO社製「No.51119872 )に入れ、アルミパンカバー(METTLER TOLEDO社製 「No.51119871」)を用いてシールし、走査示差熱 量測定器(TA Instuments社製「DSC2010」)を使用し 、窒素雰囲気中で、昇温速度10℃/分で測定 た1st runのDSC曲線から、吸熱ピークの半価 (℃)および融解エンタルピー変化量(△H)(J/g) 、図1および図2(特に図2)を参照して前述し 方法で求めた。

(I-4)ポリプロピレン繊維の繊度(単繊維繊度):
 ポリプロピレン繊維を、温度20℃および相 湿度65%の雰囲気下に5日間放置して調湿した 、調湿したポリプロピレン繊維(単繊維)の 定長(900mm)を採取し、その質量を測定して繊 を算出した。同じ調湿ポリプロピレン繊維 ついて、前記と同じ測定操作を10回行い、 の平均値を採ってポリプロピレン繊維の繊 (単繊維繊度)とした。なお、繊維が細くて一 定試長の質量測定により繊度が測定できない 場合は、同じ調湿繊維について、繊度測定装 置(Textechno製「VIBROMAT M」)を使用して繊度を 定した。

(I-5)ポリプロピレン繊維の繊維強度:
 ポリプロピレン繊維を温度20℃および相対 度65%の雰囲気下に5日間放置して調湿した後 ポリプロピレン繊維(単繊維)を長さ60mmに切 して試料とし、当該試料(長さ60mmのポリプ ピレン単繊維)の両端を把持して(両端から10m mまで把持)、繊維強度測定装置(Textechno製「FAF EGRAPH M」)を使用して、温度20℃、相対湿度65% の環境下で、引張速度60mm/分で伸張して、切 時の応力を測定し、その値をポリプロピレ 単繊維の繊度で除して繊維強度(cN/dtex)を求 た。なお同じポリプロピレン繊維について じ操作を10回行って繊維強度を求め、その 均値を採ってポリプロピレン繊維(ポリプロ レン単繊維)の繊維強度とした。

(I-6)ポリプロピレン繊維の繊維表面の凹凸の 均間隔および平均高さ:
 走査型電子顕微鏡(HITACHI製「S-510」)を使用 て、ポリプロピレン繊維(単繊維)を、繊維軸 に対して垂直方向から1000倍の倍率で写真撮 し、得られた写真について、図3に基づいて に説明した方法にしたがって、繊維表面の 凸の平均間隔および平均高さを求めた。平 間隔および平均高さの算出に当たっては、1 0本のポリプロピレン繊維(単繊維)について、 1本の繊維につき、5箇所(各測定箇所の間隔10c m)ずつを選んでその箇所での凹凸の間隔およ 高さを測定し(延べ50箇所)、その平均値を採 って、凹凸の平均間隔(μm)および平均高さ(μm )とした。

(I-7)摩擦防融性:
(i) 以下の実施例または比較例で得られたポ プロピレン繊維を束ねて1000dtexのマルチフ ラメント糸にし、そのマルチフィラメント を用いて、基布密度が経30本/25.4mmおよび緯30 本/25.4mmの平織生地を作製した。
(ii) 上記(i)で得られた平織生地から試験片( ×長さ=3.5cm×8.5cm)を切り出し、試験片を1800rpm で回転しているローラー(材質:桜木)に1134g(2.5 ポンド)の荷重で押し当て、試験開始から試 片の溶融が始まるまでの時間の長さを測定 た。測定に当たっては、摩擦音が大きくな た瞬間を試験片の溶融開始時点とした。同 試料(平織生地)について同じ試験を3回行っ 、平均値を採って、摩擦防融性の指標とし 。試験片が摩擦により溶融を開始するまで 時間が長いほど、耐熱性に優れていること 示す。

(I-8)ポリプロピレン繊維の保水率:
 ポリプロピレン繊維1gを105℃で5時間乾燥さ た後、質量(M1)を測定する。その乾燥ポリプ ロピレン繊維をイオン交換水30ml中に浸漬し 、20℃で10分間静置した後、取り出して露出 態(他の材料で包まずに)のまま卓上遠心機(K OKUSAN社製「H-27F」)に入れて、温度20℃の温度 、3000rpmの回転速度で5分間遠心脱水し、そ 質量(M2)を測定し、下記の数式(1)から保水率( %)を求めた。

 ポリプロピレン繊維の保水率(%)={(M2-M1)/M1}×1 00   (1)

《実施例1》[ポリプロピレン繊維(a-1)の製造]
(1) ポリプロピレン[プライムポリマー社製「 Y2000GV」、IPF=97%、MFR=18g/10分(230℃、荷重2.16kg)] を溶融紡糸装置の押出機に投入して240℃で溶 融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度245℃ の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から2 2.3g/分の量で吐出し、800m/分の引き取り速度 ポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビン 巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレ 未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風 に導入して、2段で4.6倍に前延伸してポリプ ロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取 り、室温で保存した(ポリプロピレン前延伸 の総繊度=63dtex/24フィラメント、吸熱開始温 =153.5℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸 をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風 に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張 力1.18cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸し て、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸 糸(総繊度=48dtex/24フィラメント)[ポリプロピ ン繊維(a-1)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(a-1)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および 平均高さ)および保水率の測定を上記した方 で行ったところ、下記の表1に示すとおりの 果であった。
 また、上記(3)で得られたポリプロピレン延 糸[ポリプロピレン繊維(a-1)]を走査型電子顕 微鏡(HITACHI製「S-510」)を使用して写真撮影(倍 率1000倍)したところ、図4に示すとおりであっ た。

《実施例2》[ポリプロピレン繊維(a-2)の製造]
(1) 実施例1の(1)において、未延伸糸の引き取 り速度を3000m/分に変えた以外は実施例1の(1) 同じ操作を行って、ポリプロピレン未延伸 を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存 た(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=214dtex/2 4フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風 に導入して、2段で3.1倍に前延伸して、ポリ プロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き 取って室温で保存した(ポリプロピレン前延 糸の総繊度=69dtex/24フィラメント、吸熱開始 度=155.3℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸 をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風 に導入して、変形速度1.8倍/分および延伸張 力1.34cN/dtexの条件下に、3段で1.5倍に後延伸し て、総延伸倍率が4.7倍のポリプロピレン延伸 糸(総繊度=46dtex/24フィラメント)[ポリプロピ ン繊維(a-2)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(a-2)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および 平均高さ)および保水率の測定を上記した方 で行ったところ、下記の表1に示すとおりの 果であった。

《実施例3》[ポリプロピレン繊維(a-3)の製造]
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロ ピレンを溶融紡糸装置の押出機に投入して240 ℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温 度245℃の紡糸口金[孔数48個(十字形孔)、孔径0 .2mm]から20.2g/分の量で吐出し、800m/分の引き り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプ ピレン未延伸糸の総繊度=436dtex/48フィラメ ト)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度138℃の熱風 に導入して、2段で3.9倍に前延伸して、ポリ プロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き 取って室温で保存した(ポリプロピレン前延 糸の総繊度=112dtex/48フィラメント、吸熱開始 温度=155.2℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸 をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風 に導入して、変形速度2.1倍/分および延伸張 力1.12cN/dtexの条件下に、1段で1.3倍に後延伸し て、総延伸倍率が5.1倍のポリプロピレン延伸 糸(総繊度=86dtex/48フィラメント)[ポリプロピ ン繊維(a-3)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(a-3)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および 平均高さ)および保水率の測定を上記した方 で行ったところ、下記の表1に示すとおりの 果であった。

《実施例4》[ポリプロピレン繊維(a-4)の製造]
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロ ピレンを用いて実施例1の(1)と同じ条件を採 してポリプロピレン未延伸糸を製造してボ ンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、実施例1の(2)と同 じ条件を採用して前延伸を行って、ポリプロ ピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取っ た。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸 をボビンから巻き出して、温度180℃の熱風 に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張 力1.06cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸し て、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸 糸(総繊度=50dtex/24フィラメント)[ポリプロピ ン繊維(a-4)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(a-4)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および 平均高さ)および保水率の測定を上記した方 で行ったところ、下記の表1に示すとおりの 果であった。

《実施例5》[ポリプロピレン繊維(a-5)の製造]
(1) ポリプロピレン[プライムポリマー社製「 ZS1337A」、IPF=96%、MFR=20g/10分(230℃、荷重2.16kg)] を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条件 採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造 てボビンに巻き取った(ポリプロピレン未延 糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度135℃の熱風 に導入して、2段で4.8倍に前延伸して、ポリ プロピレン前延伸糸を製造しボビンに巻き取 って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸 の総繊度=60dtex/24フィラメント、吸熱開始温 =152.0℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸 をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風 に導入して、変形速度1.6倍/分および延伸張 力1.33cN/dtexの条件下に、3段で1.8倍に後延伸し て、総延伸倍率が8.6倍のポリプロピレン延伸 糸(総繊度=50dtex/24フィラメント)[ポリプロピ ン繊維(a-5)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(a-5)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および 平均高さ)および保水率の測定を上記した方 で行ったところ、下記の表1に示すとおりの 果であった。

《実施例6》[ポリプロピレン繊維(a-6)の製造]
(1) ポリプロピレン[IPF=98%、MFR=16g/10分(230℃、 荷重2.16kg)]を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融 紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸 糸を製造してボビンに巻き取った(未延伸糸 総繊度=293dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風 に導入して、2段で4.6倍に前延伸してポリプ ロピレン前延伸糸を製造しボビンに巻き取っ て室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸 総繊度=64dtex/24フィラメント、吸熱開始温度= 156.4℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸 をボビンから巻き出して、温度178℃の熱風 に導入して、変形速度2.8倍/分および延伸張 力1.54cN/dtexの条件下に、4段で2.2倍に後延伸し て、総延伸倍率が10.1倍のポリプロピレン延 糸(総繊度=29dtex/24フィラメント)[ポリプロピ ン繊維(a-6)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(a-6)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および 平均高さ)および保水率の測定を上記した方 で行ったところ、下記の表2に示すとおりの 果であった。

《実施例7》[ポリプロピレン繊維(a-7)の製造]
(1) ポリプロピレン[IPF=98%、MFR=16g/10分(230℃、 荷重2.16kg)]およびポリプロピレン[プライムポ リマー社製「Y3002G」、IPF=93%、MFR=30g/10分(230℃ 、荷重2.16kg)]を1:1の質量比で混合した混合物( 混合物のIPF=95.5%)を用いて、実施例1の(1)と同 溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン 延伸糸を製造してボビンに巻き取った(ポリ プロピレン未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラ ント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風 に導入して、2段で4.6倍に前延伸して、ポリ プロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き 取って室温に保存した(ポリプロピレン前延 糸の総繊度=63dtex/24フィラメント、吸熱開始 度=152.5℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸 をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風 に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張 力1.20cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸し て、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸 糸(総繊度=48dtex/24フィラメント)[ポリプロピ ン繊維(a-7)の製造]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(a-7)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および 平均高さ)および保水率の測定を上記した方 で行ったところ、下記の表2に示すとおりの 果であった。

《実施例8》[ポリプロピレン繊維(a-8)の製造]
(1) 溶融紡糸装置の紡糸ヘッドに芯鞘型複合 維製造用の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔 0.2mm]を取り付け、ポリプロピレン(プライム リマー社製「Y3002G」、IPF=93%)を芯成分およ ポリプロピレン[IPF=98%、MFR=16g/10分(230℃、荷 2.16kg)]を鞘成分として用いて、芯成分:鞘成 =1:2の質量比で、240℃で溶融混練し、紡糸口 金(口金温度245℃)から22.3g/分の量で吐出し、8 00m/分の引き取り速度でボビンに巻き取って 鞘型のポリプロピレン未延伸糸を製造して 室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の 繊度=287dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風 に導入して、2段で4.6倍に前延伸してポリプ ロピレン前延伸糸を製造しボビンに巻き取っ て室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸 総繊度=62dtex/24フィラメント、吸熱開始温度= 152.2℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸 をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風 に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張 力1.25cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸し て、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸 糸(総繊度=48dtex/24フィラメント)[ポリプロピ ン繊維(a-8)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(a-8)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および 平均高さ)および保水率の測定を上記した方 で行ったところ、下記の表2に示すとおりの 果であった。

《実施例9》[ポリプロピレン繊維(a-9)の製造]
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロ ピレンを用いて実施例1の(1)と同じ条件を採 してポリプロピレン未延伸糸を製造してボ ンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風 に導入して、1段で4.6倍に前延伸して、ポリ プロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き 取って室温に保存した(ポリプロピレン前延 糸の総繊度=63dtex/24フィラメント)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸 をボビンから巻き出して、温度172℃の熱プ ートに接触させて、変形速度13.8倍/分およ 延伸張力1.43cN/dtexの条件下に、1段で1.6倍に 延伸して(熱プレートへの接触時間=15秒)、総 延伸倍率が7.4倍のポリプロピレン延伸糸(総 度=39dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊 (a-9)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(a-9)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および 平均高さ)および保水率の測定を上記した方 で行ったところ、下記の表2に示すとおりの 果であった。

《実施例10》[ポリプロピレン繊維(a-10)の製造 ]
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロ ピレンを用いて実施例1の(1)と同じ条件を採 してポリプロピレン未延伸糸を製造してボ ンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、実施例1の(2)と同 じ条件を採用して前延伸を行って、ポリプロ ピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取っ た。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸 をボビンから巻き出して、実施例1の(3)と同 じ条件を採用してポリプロピレン延伸糸を製 造し、ボビンに巻き取った。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸 ボビンから巻き出して、温度168℃の熱風炉 導入して、2%収縮させてポリプロピレン糸[ リプロピレン繊維(a-10)]を製造した。
(5) 上記(4)で得られたポリプロピレン糸[ポリ プロピレン繊維(a-10)]について、DSC測定[吸熱 ーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化 (△H)の測定]、並びに繊維強度、表面の凹凸 寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および 水率の測定を上記した方法で行ったところ 下記の表2に示すとおりの結果であった。

《実施例11》[ポリプロピレン繊維(a-11)の製造 ]
(1) 溶融紡糸装置の紡糸ヘッドに芯鞘型複合 維製造用の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔 0.2mm]を取り付け、ポリエチレン(三菱化成製 HJ490」、MFR=20g/10分)を芯成分およびポリプロ ピレン[IPF=98%、MFR=16g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を 鞘成分として用いて、芯成分:鞘成分=1:1の質 比で、240℃で溶融混練し、紡糸口金(口金温 度245℃)から22.3g/分の量で吐出し、800m/分の引 き取り速度でボビンに巻き取って芯鞘型のポ リプロピレン未延伸糸を製造して室温で保存 した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=282dtex /24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風 に導入して、2段で4.6倍に前延伸してポリプ ロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取 って室温で保存した(ポリプロピレン前延伸 の総繊度=61dtex/24フィラメント、吸熱開始温 =148.7℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸 をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風 に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張 力1.24cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸し て、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸 糸(総繊度=47dtex/24フィラメント)[ポリプロピ ン繊維(a-11)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(a-11)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、表面の 凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)お び保水率の測定を上記した方法で行ったと ろ、下記の表2に示すとおりの結果であった 。

《比較例1》[ポリプロピレン繊維(b-1)の製造]
(1) ポリプロピレン(プライムポリマー社製「 Y3002G」、IPF=93%)を用いて、実施例1の(1)と同じ 溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未 延伸糸を製造してボビンに巻き取って、室温 で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊 =288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風 に導入して、2段で4.6倍に前延伸して、ポリ プロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き 取って室温に保存し(ポリプロピレン前延伸 の総繊度=68dtex/24フィラメント、吸熱開始温 =151.8℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸 をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風 に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張 力0.96cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸し て、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸 糸(総繊度=48dtex/24フィラメント)[ポリプロピ ン繊維(b-1)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(b-1)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性および保水率を上記した方法で測定した ころ、下記の表3に示すとおりの結果であっ た。なお、この比較例1で得られたポリプロ レン繊維は、表面に凹凸を有していなかっ 。

《比較例2》[ポリプロピレン繊維(b-2)の製造]
 実施例1の(2)で得られたポリプロピレン前延 伸糸[ポリプロピレン繊維(b-2)]について、DSC 定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタル ー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩 擦防融性および保水率を上記した方法で測定 したところ、下記の表3に示すとおりの結果 あった。なお、この比較例2で得られたポリ ロピレン繊維は、表面に凹凸を有していな った。

《比較例3》[ポリプロピレン繊維(b-3)の製造]
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロ ピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF= 97%)を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条 を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製 してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度143℃の熱風 に導入して、1段で6.9倍に延伸して、ポリプ ロピレン延伸糸(総繊度=42dtex/24フィラメント) [ポリプロピレン繊維(b-3)]を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(b-3)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および 平均高さ)および保水率の測定を上記した方 で行ったところ、下記の表3に示すとおりの 果であった。

《比較例4》[ポリプロピレン繊維(b-4)の製造]
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロ ピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF= 97%)を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条 を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製 してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度90℃の熱水 に導入して、1段で3.7倍に前延伸した後、巻 取らずに引き続いて温度138℃の熱風炉に導 して1.2倍に後延伸して、総延伸倍率が4.4倍 延伸糸(総繊度=65dtex/24フィラメント)[ポリプ ロピレン繊維(b-4)]を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(b-4)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および 平均高さ)および保水率の測定を上記した方 で行ったところ、下記の表3に示すとおりの 果であった。

《比較例5》[ポリプロピレン繊維(b-5)の製造]
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロ ピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF= 97%)を溶融紡糸装置の押出機に投入して270℃ 溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度29 5℃の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]か ら9.5g/分の量で吐出し、1500m/分で引き取って リプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに き取り、室温で保存した(ポリプロピレン未 延伸糸の総繊度=65dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度130℃の熱風 に導入して、1段で1.5倍に延伸して、ポリプ ロピレン延伸糸(総繊度=44dtex/24フィラメント) [ポリプロピレン繊維(b-5)]を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(b-5)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および 平均高さ)および保水率の測定を上記した方 で行ったところ、下記の表4に示すとおりの 果であった。

《比較例6》[ポリプロピレン繊維(b-6)の製造]
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロ ピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF= 97%)を溶融紡糸装置の押出機に投入して230℃ 溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度30 0℃の紡糸口金[孔数30個(円形孔)、孔径0.8mm]か ら20g/分の量で吐出し、300m/分で引き取ってポ リプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻 き取って室温で保存した(ポリプロピレン未 伸糸の総繊度=535dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度110℃の熱ロ ラーで、1段で3.7倍に延伸して、ポリプロピ レン延伸糸(総繊度=145dtex/24フィラメント)を 造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸 両端を固定した後、165℃のエアーオーブン に30分間入れて熱処理を施して、ポリプロ レン延伸糸[ポリプロピレン繊維(b-6)]を製造 た。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(b-1)の製造](ポリプロピ ン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、 半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定 ]、並びに繊維強度、摩擦防融性、表面の凹 寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および 保水率の測定を上記した方法で行ったところ 、下記の表4に示すとおりの結果であった。

《比較例7》[ポリプロピレン繊維(b-7)の製造]
(1) ポリプロピレン[プライムポリマー社製「 ZS1337A」、IPF=96%、MFR=20g/10分(230℃、荷重2.16kg)] を溶融紡糸装置の押出機に投入して300℃で溶 融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度320℃ の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から2 2.3g/分の量で吐出し、600m/分の引き取り速度 ポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビン 巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレ 未延伸糸の「総繊度=304dtex/24フィラメント)
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度90℃の加熱 ールにより1段で1.5倍に前延伸した後、ボビ に巻き取って室温に保存し(ポリプロピレン 前延伸糸の総繊度=203dtex/24フィラメント、吸 開始温度=150.8℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸 をボビンから巻き出して、温度138℃の熱風 に導入して、1段で4.9倍に後延伸して、総延 伸倍率が7.4倍のポリプロピレン延伸糸(総繊 =40.8dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊維 (b-7)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(b-7)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および 平均高さ)および保水率の測定を上記した方 で行ったところ、下記の表4に示すとおりの 果であった。

《比較例8》[ポリプロピレン繊維(b-8)の製造]
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロ ピレン[プライムポリマー社製「Y2000Gv」、IPF= 97%、MFR=18g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を溶融紡糸 置の押出機に投入して255℃で溶融混練し、 糸ヘッドに取り付けた温度260℃の紡糸口金[ 数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から35.4g/分の量で 吐出し、600m/分の引き取り速度でポリプロピ ン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って 室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の 「総繊度=635dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度145℃のスチ ム槽により1段で11.5倍に延伸して、ポリプ ピレン延伸糸(総繊度=55.2dtex/24フィラメント) [ポリプロピレン繊維(b-8)]を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸[ ポリプロピレン繊維(b-8)]について、DSC測定[ 熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー 化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防 性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および 平均高さ)および保水率の測定を上記した方 で行ったところ、下記の表4に示すとおりの 果であった。

《比較例9》[ポリプロピレン繊維(b-9)の製造]
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロ ピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF= 97%)を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条 を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製 してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸 をボビンから巻き出して、温度90℃の熱水 に導入して、1段で3.7倍に前延伸した後、巻 取らずに引き続いて温度172℃の熱風炉に導 して1.2倍に後延伸して、総延伸倍率が4.4倍 延伸糸(総繊度=65dtex/24フィラメント)[ポリプ ロピレン繊維(b-9)]を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸( ポリプロピレン繊維)は、毛羽が多く、使用 きるものではなかったため、DSC測定、繊維 度、摩擦防融性、表面の凹凸寸法および保 率の測定を行わなかった。


 上記の表1および2にみるように、実施例1~10 はIPFが94%以上のポリプロピレンを溶融紡糸 た後に冷却固化して製造したポリプロピレ 未延伸繊維を用いて、本発明で規定する条 を採用して前延伸および後延伸を行って単 維繊度が3dtex以下のポリプロピレン繊維を 造している、すなわち温度120~150℃で延伸倍 3~10倍で前延伸した後、温度170~190℃で、変 速度1.5~15倍/分および延伸張力1.0~2.5cN/dtexの 件下に、延伸倍率1.2~3.0倍で後延伸して単繊 繊度が3dtex以下のポリプロピレン繊維を製 していることにより、DSC測定による吸熱ピ ク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル 形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g 以上であって、摩擦防融性試験での摩擦溶融 開始時間が6.8~8.0秒と長くて耐熱性に優れ、 維強度が7cN/dtex以上であって繊維強度が高く 、しかも表面に大径の隆起部と小径の非隆起 部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均 間隔が6.5~20μmで平均高さが0.35~1μmの凹凸を有 していて、10%以上の高い保水率を有するポリ プロピレン繊維が円滑に得られている。
 また、実施例11では、繊維強度が7cN/dtex以上 であって繊維強度が高く、しかも表面に大径 の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って 交互に存在してなる平均間隔が6.5~20μmで平均 高さが0.35~1μmの凹凸を有していて、10%以上の 高い保水率を有するポリプロピレン繊維(芯 型ポリプロピレン繊維)が円滑に得られてい 。

 それに対して、上記の表3および4にみる うに、比較例1~9では、本発明で規定する範 外の条件を採用したことにより、比較例1~9 得られたポリプロピレン繊維は、高繊維強 、高耐熱性および高保水性を兼ね備えてお ず、繊維強度、耐熱性および保水性のうち 少なくとも1つ、大半は2つ以上において劣っ ている。

[II] 水硬性組成物および水硬化物 :
 以下の実施例12~43および比較例10~33において 、水硬性組成物および水硬化物について具体 的に説明する。
 以下の実施例12~43および比較例10~33において 、水硬化物(スレートおよびモルタル)の曲げ 度は、以下に記載した方法で求めた。

(II-1)スレートの曲げ強度:
(i) 下記の実施例または製造例で得られたス ート成形物(スレート成形板)から、幅25mm、 さ80mmの長方形の試験片を切り出し、オート クレーブ養生して得られたスレート成形板か ら採取した試験片の場合は20℃の水中に3日間 浸漬し、表面水のみ拭き取った後に、また自 然養生して得られたスレート成形板から採取 した試験片の場合は40℃で3日間乾燥した後に 、試験装置として島津製作所製「オートグラ フAG5000-B」を使用して、中央載荷曲げ試験を って最大曲げ荷重を求めて、以下の数式(2) 用いて最大曲げ強度を算出した。
 具体的には、この中央載荷曲げ試験では、 記した試験片を、2つの固定装置で固定装置 における下部支点間距離(曲げスパン)が50mmに なるようにして両端近傍で固定し、その状態 で試験片の長さ方向の中央部に載荷ヘッドに よって荷重を負荷し(中央載荷曲げスパン=50mm )、当該載荷ヘッドを2mm/分の速度で徐々に下 させ、試験片が破断するまで載荷し、それ での最大曲げ荷重(A)(単位:N)を読み取って、 下記の数式(2)に従って最大曲げ強度を求めた 。
 なお、最大曲げ荷重の算出に当たっては、 一のスレート成形体について同じ試験を5回 行い、その平均値を採って最大曲げ荷重とし た。

  最大曲げ強度(N/mm 2 )=1.5×A×B/(W×D 2 )     (2)

  式(2)中、A=最大曲げ荷重(N)
        B=中央載荷曲げスパン(mm)
        W=試験片の幅(mm)
        D=試験片の厚さ(mm)

(ii) 次いで、上記の数式(2)で求めた最大曲げ 強度を用いて、以下の数式(3)から、スレート の嵩密度を1.45に規格化した補正曲げ強度を めて、当該補正曲げ強度をスレートの曲げ 度とした。

  補正曲げ強度(N/mm 2 )=最大曲げ強度(N/mm 2 )×(1.45/C) 2   (3)

  式(3)中、
   C=スレート嵩密度(g/cm 3 )
 [但し、上記のスレート嵩密度(C)(g/cm 3 )は、養生後のスレート成形体を前記した方 で切り出して前記と同サイズの試験片を採 し、当該試験片を105℃で12時間乾燥させた後 の質量[乾燥質量(g)]を、当該乾燥後の試験片 体積[厚さ(cm)×幅(cm)×長さ(cm)]で除した値で る。]

(II-2)モルタルの曲げ強度:
 下記の実施例または製造例で得られたモル ル成形物(モルタル成形板)から、幅50mmおよ 長さ180mmの長方形の試験片を切り出し、当 試験片を40℃で3日間乾燥した後、上記(II-1) 使用したのと同じ装置(島津製作所製「オー グラフAG5000-B」)を使用して、中央載荷曲げ 験を行って最大曲げ荷重を求めて、上記の 式(2)を用いて最大曲げ強度を算出した。
 具体的には、この中央載荷曲げ試験では、 記した試験片試験片を、2つの固定装置で固 定装置における下部支点間距離が150mm(曲げス パン)になるようにして両端近傍で固定し、 の状態で試験片の長さ方向の中央部に載荷 ッドによって荷重を負荷し(中央載荷曲げス ン=150mm)、当該載荷ヘッドを2mm/分の速度で 々に下降させ、初期ひび割れが発生した後 最大曲げ荷重(A)(単位:N)を読み取って、上記 数式(2)に従って最大曲げ強度を求めた。
 なお、最大曲げ荷重の算出に当たっては、 一のモルタル成形体について同じ試験を5回 行い、その平均値を採って最大曲げ荷重とし た。

《実施例12~22および比較例10~17》[自然養生ス ートの製造]
(1) 普通ポルトランドセメント(株式会社太平 洋セメント製)95質量部、叩解パルプ(バルテ ク株式会社製「セロファイバー])3質量部、 施例1~11で得られたポリプロピレン繊維(a-1)~( a-11)および比較例1~8で得られたポリプロピレ 繊維(b-1)~(b-8)のそれぞれを繊維長3~20mmに切 したポリプロピレン短繊維2質量部、並びに 3000質量部を混合し、300rpm以上の回転数で撹 拌してスレート用の水硬性組成物を調製した 後、当該水硬性組成物を綿布上に流し込んで 搾液してシート状物を得た。
(2) 上記(1)で得られたシート状物を10枚積層 て、プレス機にて45kg/cm 2 で加圧脱水し、未硬化の成形シートを製造し た。
(3) 上記(2)で得られた成形シートをポリエチ ンシートに包んで、50℃、飽和湿度条件下 24時間予備養生し、次いで20℃、飽和湿度条 下で13日間養生して硬化したスレート成形 (スレート成形板)(厚さ約4.2mm)を得た。
(4) 上記(3)で得られたスレート成形板の曲げ 度を上記した方法で測定したところ、下記 表5に示すとおりであった。

 上記の表5にみるように、実施例12~22では、I PFが94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維 度が7cN/dtex以上で、DSC特性が本発明で規定 る要件を満たすか、単繊維繊度と繊維表面 凹凸特性が本発明で規定する要件を満たす 、或いはDSC特性と単繊維繊度と繊維表面の 凸特性が本発明で規定する要件を満たして て耐熱性が高く、また保水率が高くて水硬 物との親和性に優れるポリプロピレン繊維(a -1)~(a-11)のいずれかを用いてスレート用の水 性組成物を調製し、当該水硬性組成物を水 化してスレート成形物を製造したことによ 、曲げ強度に優れるスレート成形物が得ら ている。
 それに対して、比較例10~17では、DSC特性お び繊維表面における凹凸特性の両方が本発 の規定から外れていて、耐熱性、水硬化物 の親和性に劣るポリプロピレン繊維(b-1)~(b-8) のいずれかを用いてスレート用の水硬性組成 物を調製し、当該水硬性組成物を水硬化して スレート成形物を製造したことにより、比較 例10~17で得られたスレート成形物の曲げ強度 、実施例12~22で得られたスレート成形物に べて大幅に低い。

《実施例23~32および比較例18~25》[オートクレ ブ養生スレートの製造]
(1) 普通ポルトランドセメント(株式会社太平 洋セメント製)57質量部、珪石粉末(啓和炉材 式会社製「#4000」)38質量部、叩解パルプ(バ テック株式会社製「セロファイバー」)3質量 部、実施例1~10で得られたポリプロピレン繊 (a-1)~(a-10)および比較例1~8で得られたポリプ ピレン繊維(b-1)~(b-8)のそれぞれを繊維長3~20mm に切断したポリプロピレン短繊維2質量部並 に水3000質量部を混合し、300rpm以上の回転数 撹拌してスレート用の水硬性組成物を調製 た後、当該水硬性組成物を綿布上に流し込 で常温下に搾液してシート状物を得た。
(2) 上記(1)で得られたシート状物を10枚積層 た後、プレス機にて75kg/cm 2 で加圧脱水して未硬化の成形シートを製造し た。
(3) 上記(2)で得られた未硬化の成形シートを ポリエチレンシートに包んで、50℃、飽和 度条件下で24時間予備養生し、次いで170℃ま たは175℃の温度でそれぞれ15時間オートクレ ブで養生して硬化したスレート成形物(スレ ート成形板)(厚さ約4.0mm)を得た。
(4) 上記(3)で得られたスレート成形板の曲げ 度を上記した方法で測定したところ、下記 表6に示すとおりであった。

 上記の表6にみるように、実施例23~32では、I PFが94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維 度が7cN/dtex以上で、DSC特性が本発明で規定 る要件を満たしていて耐熱性に優れ、繊維 面の凹凸特性が本発明で規定する要件を満 していて保水率が高く、水硬化物との親和 に優れる本発明のポリプロピレン繊維(a-1)~(a -10)のいずれかを用いてスレート用の水硬性 成物を調製し、当該水硬性組成物を170℃ま は175℃という高温でオートクレーブ養生し いることによって、曲げ強度に優れるスレ ト成形物が短時間の養生で得られている。
 それに対して、比較例18~25では、DSC特性お び繊維表面における凹凸特性の両方が本発 の規定から外れるポリプロピレン繊維(b-1)~(b -8)のいずれかを用いてスレート用の水硬性組 成物を調製し、当該水硬性組成物を170℃また は175℃という高温でオートクレーブ養生して いるが、水硬性組成物中に配合したポリプロ ピレン繊維(b-1)~(b-8)が耐熱性に劣るため、比 例18~25で得られたオートクレーブ養生後の レート成形物の曲げ強度が、実施例23~32で得 られたスレート成形物に比べて大幅に低い。

《実施例33~43および比較例26~33》[モルタルの 造]
(1) 普通ポルトランドセメント(株式会社太平 洋セメント製)68.7質量部、砂(珪砂7号)30質量 、メチルセルロース(信越化学工業株式会社 「90SH-4000」)0.1質量部、減水剤(株式会社ポ リス物産製「レオビルドSP-8N」)0.2質量部、 施例1~10で得られたポリプロピレン繊維(a-1)~( a-11)および比較例1~8で得られたポリプロピレ 繊維(b-1)~(b-8)のそれぞれを繊維長3~20mmに切 したポリプロピレン短繊維1質量部および水3 1質量部をホバートミキサーにより混合・混 した後、これを10mm×20mm×25mmの型枠に流し込 、20kg/cm 2 で加圧脱水し、未硬化の成形物とした。
(2) 上記(1)で得られた未硬化の成形物をポリ チレンシートに包んで50℃、飽和湿度条件 で24時間予備養生し、次いで20℃、飽和湿度 件下で13日間養生して水硬化したモルタル 形物(モルタル成形板)を得た。
(3) 上記(2)で得られてモルタル成形板の曲げ 度を上記した方法で測定したところ、下記 表7に示すとおりであった。

 上記の表7にみるように、実施例33~43では、I PFが94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維 度が7cN/dtex以上で、DSC特性が本発明で規定 る要件を満たすか、単繊維繊度と繊維表面 凹凸特性が本発明で規定する要件を満たす 、或いはDSC特性と単繊維繊度と繊維表面の 凸特性が本発明で規定する要件を満たして て耐熱性が高く、また保水率が高くて水硬 物との親和性に優れる本発明のポリプロピ ン繊維(a-1)~(a-11)のいずれかを用いてモルタ 用の水硬性組成物を調製し、当該水硬性組 物を水硬化してモルタル成形物を製造した とにより、曲げ強度に優れるモルタル成形 が得られている。
 それに対して、比較例26~33では、DSC特性お び繊維表面における凹凸特性の両方が本発 の規定から外れていて、耐熱性、水硬化物 の親和性に劣るポリプロピレン繊維(b-1)~(b-8) のいずれかを用いてモルタル用の水硬性組成 物を調製し、当該水硬性組成物を水硬化して モルタル成形物を製造したことにより、比較 例26~33で得られたモルタル成形物の曲げ強度 、実施例33~43で得られたモルタル成形物に べて大幅に低い。

[III] ロープ構造体 :
 以下の実施例44~53および比較例34~41において 、ロープ構造体について具体的に説明する。
 以下の実施例44~53および比較例34~41において 、ポリプロピレンヤーンのヤング率およびロ ープのグラインダー捻回摩耗切断回数は、以 下に記載した方法で求めた。

(III-1)ポリプロピレンヤーンのヤング率:
 ポリプロピレン繊維(ポリプロピレン延伸糸 )を合糸して2000dtexとし、これを70T/mで撚糸し 得られたポリプロピレンヤーンを、JIS L 10 13に準撚し、温度20℃および相対湿度65%の雰 気下に3日間放置して調湿した後、所定長の 料を採取し、把持装置間の長さ(試長)が200mm となるようにして当該試料の両端を把持して 、島津製作所製「オートグラフAG5000-B」を使 して、雰囲気温度120℃で、引張速度100mm/分 伸張し、伸度1%の時の引張応力P(N)を測定し 、以下の数式(4)からヤング率(cN/dtex)を求め 。
 同じヤーンについて同じ操作を10回行って ング率を求め、その平均値を採って単位dtex たりのポリプロピレンヤーンの120℃でのヤ グ率とした。

 ヤーンのヤング率(cN/dtex)=P×10000/Td   (4)

 式中、 P=伸度1%の時の引張応力(N)
    Td=ポリプロピレンヤーンの伸長前の総 度=2000dtex

(III-2)ロープのグラインダー捻回摩耗切断回 :
 試料(ロープ)を20℃の水に24時間浸漬した後 図5に示したようにして、10kgの荷重をかけ 状態で当該ロープを45回転/分で捻回させる 共に、ロープが乾かないように注水しなが 、グラインダー(カーボン製、直径=100mm、粒 #46)を45回転/分の回転速度で回転させてロー プを摩耗させ、ロープが破断した際のグライ ンダーの回転数を読み取って、グラインダー 捻回摩耗切断回数(回)とした。

《実施例44~53および比較例34~41》
(1)ポリプロピレン繊維製ロープの製造:
 実施例1~10で得られたポリプロピレン繊維(a- 1)~(a-10)(ポリプロピレン延伸糸)および比較例1 ~8で得られたポリプロピレン繊維(b-1)~(b-8)(ポ プロピレン延伸糸)のそれぞれを合糸して150 0dtexとした後、80T/mで撚糸して第1のストラン (復糸)をつくり、60T/mの条件下で第1のスト ンド(復糸)4本を撚糸して第2のストランド(復 糸)をつくり、40T/mの条件下で第2のストラン (復糸)25本を撚糸して第3のストランド(復糸) つくり、次いで第3のストランド(復糸)3本を 30T/mの条件下で撚り合わせてポリプロピレン 維製ロープを製造した。
 これにより得られたポリプロピレン繊維製 ープのグラインダー捻回摩耗切断回数を上 した方法で測定したところ、下記の表8に示 すとおりであった。
(2)ポリプロピレンヤーンのヤング率の測定:
 実施例1~10で得られたポリプロピレン繊維(a- 1)~(a-10)(ポリプロピレン延伸糸)および比較例1 ~8で得られたポリプロピレン繊維(b-1)~(b-8)(ポ プロピレン延伸糸)のそれぞれを合糸して200 0dtexとし、これを70T/mで撚糸してポリプロピ ンヤーンをつくり、このポリプロピレンヤ ンの120℃におけるヤング率を上記した方法 求めたところ、下記の表8に示すとおりであ た。

 上記の表8にみるように、実施例44~53では、I PFが94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維 度が7cN/dtex以上で、DSC特性が本発明で規定 る要件を満たすか、単繊維繊度と繊維表面 凹凸特性が本発明で規定する要件を満たす 、或いはDSC特性と単繊維繊度と繊維表面の 凸特性が本発明で規定する要件を満たして て耐熱性が高く、所定の凹凸を有する本発 のポリプロピレン繊維(a-1)~(a-10)のいずれか 用いてロープを製造したことにより、実施 44~53で得られたロープは、グラインダー捻回 摩耗切断回数が1152~1305回と高く、摩擦時の摩 擦熱によってロープが切断しにくく、耐熱性 に優れている。
 それに対して、比較例34~41では、DSC特性お び繊維表面における凹凸特性の両方が本発 の規定から外れているポリプロピレン繊維(b -1)~(b-8)のいずれかを用いてロープを製造した ことにより、比較例34~41で得られたロープは グラインダー捻回摩耗切断回数が792~984回で あって、グラインダー捻回摩耗切断回数が実 施例44~53の約60~85%と低く、実施例44~53のロー に比べて耐熱性に劣り、早期に摩擦熱によ 切断した。

 さらに、上記の表8にみるように、実施例44~ 53では、IPFが94%以上のポリプロピレンよりな 、繊維強度が7cN/dtex以上で、DSC特性が本発 で規定する要件を満たすか、単繊維繊度と 維表面の凹凸特性が本発明で規定する要件 満たすか、或いはDSC特性と単繊維繊度と繊 表面の凹凸特性が本発明で規定する要件を たしていて耐熱性が高く、所定の凹凸を有 る本発明のポリプロピレン繊維(a-1)~(a-10)の ずれかを用いていることにより、ロープ製 工程の初期の段階で形成されるポリプロピ ンヤーン(ストランド)は、その120℃でのヤン グ率が41~68cN/dtexと高くて、高温下での伸びが 小さく、緊密に撚り合わされていて、耐伸び 性、耐ヘタリ性などの力学的特性に優れ、し かも耐熱性に優れている。
 それに対して、比較例34~41では、DSC特性お び繊維表面における凹凸特性の両方が本発 の規定から外れているポリプロピレン繊維(b -1)~(b-8)のいずれかを用いていることにより、 ロープ製造工程の初期の段階で形成されるポ リプロピレンヤーン(ストランド)は、その120 でのヤング率が8~26cN/dtexであって、実施例44 ~53に比べて大幅にヤング率が低く、高温下で の伸びが大きく、耐伸び性、耐ヘタリ性など の力学的特性に劣り、耐熱性にも劣っている 。

[IV] シート状繊維構造体 :
 以下の実施例54~61および比較例42~46において 、シート状繊維構造体について具体的に説明 する。
 以下の実施例54~61および比較例42~46において 、シート状繊維構造体の保水率の測定および シリンダー乾燥処理の工程性の評価は、以下 のようにして行なった。

(IV-1)シート状繊維構造体(ポリプロピレン繊 製不織布)の保水率:
 シート状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製 不織布)の1gを採取して、105℃で5時間乾燥さ て、その質量(M3)を測定した。前記の乾燥試 をイオン交換水30ml中に浸漬して、20℃で10 間静置した後、取り出して露出状態(他の材 で包まずに)のままで卓上遠心機(KOKUSAN社製 H-27F」)に入れて、温度20℃の温度で、3000rpm 回転速度で5分間遠心脱水し、そのときの質 量(M4)を測定して、下記の数式(5)からシート 繊維構造体の保水率(質量%)を求めた。

シート状繊維構造体の保水率(質量%)={(M4-M3)/M3 }×100  (5)

(IV-2)シート状繊維構造体シリンダー乾燥処理 の工程性:
 シート状繊維構造体のシリンダー乾燥処理 工程性を、以下の評価基準に従って評価し 。
 [シリンダー乾燥処理の工程性の評価基準]
  ・ 良好 :シリンダーへのポリプロピレン繊維シート 付着がなく、良好に通過し、乾燥処理後の 合が良好で、保水率の減少がみられない。
  ・ 不良 :シリンダーへのポリプロピレン繊維シート 貼付があり、通過性に劣り、乾燥処理後に 水率の低下などが起きる。

《実施例54~61》[シート状繊維構造体の製造]
(1) 実施例1~3および5~9で得られたポリプロピ ン繊維(a-1)~(a-3)および(a-5)~(a-9)のそれぞれを 繊維長51mmに切断して短繊維にし、カーディ グ、水流交絡処理、カレンダー処理(温度140 )およびシリンダー乾燥処理(温度170℃、移 速度50cm/秒)を順次行って、シート状繊維構 体(ポリプロピレン繊維製不織布)を製造した 。
(2) 上記(1)で得られたシート状繊維構造体(ポ リプロピレン繊維製不織布)の保水率および リンダー乾燥処理の工程性を上記した方法 測定または評価したところ、下記の表9に示 とおりであった。

《比較例42~46》[シート状繊維構造体の製造]
(1) 比較例1~3および7~8で得られたポリプロピ ン繊維(b-1)~(b-3)、(b-7)および(b-8)のそれぞれ 繊維長51mmに切断して短繊維にし、実施例51~ 58と同じ条件下で、カーディング、水流交絡 理、カレンダー処理(温度140℃)およびシリ ダー乾燥処理(温度170℃、移送速度50cm/秒)を 次行って、シート状繊維構造体(ポリプロピ レン繊維製不織布)を製造した。
(2) 上記(1)で得られたシート状繊維構造体(ポ リプロピレン繊維製不織布)の保水率および リンダー乾燥処理の工程性を上記した方法 測定または評価したところ、下記の表9に示 とおりであった。

 上記の表9にみるように、実施例54~61では、I PFが94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維 度が7cN/dtex以上で、単繊維繊度と繊維表面 凹凸特性が本発明で規定する要件を満たす 、DSC特性が本発明で規定する要件を満たす 、或いは単繊維繊度と繊維表面の凹凸特性 DSC特性とが本発明で規定する要件を満たし いる本発明のポリプロピレン繊維(a-1)~(a-3)お よび(a-5)~(a-9)のいずれかを用いてシート状繊 構造体(ポリプロピレン繊維製不織布)を製 したことにより、実施例54~61で得られたシー ト状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製不織 )は、保水率が10.2~25.0質量%と高くて、保水性 に優れており、更に耐熱性に優れていてシリ ンダー乾燥処理の工程性が良好である。
 それに対して、比較例42~46では、繊維表面 おける凹凸特性およびDSC特性の両方が本発 の規定から外れているポリプロピレン繊維(b -1)~(b-3)、(b-7)および(b-8)のいずれかを用いて ート状繊維構造体を製造したことにより、 較例42~46で得られたシート状繊維構造体(ポ プロピレン繊維製不織布)は、保水率が3.5~8.0 質量%であって、実施例54~61で得られたシート 状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製不織布) 比べて保水率が大幅に低く、保水性に劣っ おり、更にシリンダー乾燥処理の工程性が 良で、耐熱性の点でも実施例54~61で得られ シート状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製 織布)に比べて大きく劣っている。

[V] ポリプロピレン繊維を含む複合材 料および成形体 :
 以下の実施例62~70および比較例47~49において 、ポリプロピレン繊維を含む複合材料および 成形体について具体的に説明する。
 以下の実施例62~70および比較例47~49において 、成形体の各種物性は、次のようにして測定 した。

(V-1)射出成形による成形体の引張強度:
 以下の実施例62~64および比較例47で得られた 射出成形による成形体(射出成形で製造した 験片)の引張強度を、JIS K7160(ISO 527-1)に準じ て測定した。

(V-2)射出成形による成形体のシャルピー衝撃 度:
 以下の実施例62~64および比較例47で得られた 射出成形体(射出成形で製造した試験片)のノ チ付きシャルピー衝撃強度を、JIS 7111(ISO 1 79-1)に準じて測定した。

(V-3)シート状成形体の引張強度:
 以下の実施例65~67および比較例48で得られた シート状成形体(厚さ1mm)から、JIS K6773に準じ て、1号ダンベル状試験片を切り出し、当該 ンベル状試験片を用いてJIS K6773に準じて引 強度を測定した。

(V-4)積層成形体の曲げ弾性率および曲げ強度:
 以下の実施例68~70および比較例49で得られた 積層成形体から、長さ×幅×厚さ=90mm×15mm×3mm 試験片を切り出し、JIS K7017に準じて、3点 げ試験を行って、曲げ弾性率および曲げ強 を測定した。

《実施例62~64および比較例47》[短繊維状のポ プロピレン繊維を含有する複合材料(ポリエ チレン組成物)および射出成形体の製造]
(1) 実施例1~3で得られたポリプロピレン繊維( a-1)~(a-3)および比較例2で得られたポリプロピ ン繊維(b-2)のそれぞれを長さ5mmに切断して 繊維にし、当該ポリプロピレン短繊維のそ ぞれと、低密度ポリエチレン樹脂(プライム リマー社製「ネオゼックス45200」、MFR=20g/10m in)を、低密度ポリエチレン:ポリプロピレン 繊維=90:10質量比で押出機に供給し、160℃で 融混練した後、押し出し、切断して、低密 ポリエチレンよりなるマトリックス中にポ プロピレン短繊維を含む複合材料(低密度ポ エチレン組成物)のペレットを製造した。
(2) 上記(1)で得られたペレットを用いて、電 式射出成形機(東芝機械社製「EC75N II)を使 して、溶融温度165℃、金型温度30℃の条件下 に射出成形を行って、JIS K7139(ISO-3167)に準じ 多目的試験片(射出成形による成形体)を製 した。
(3) 上記(2)で得られた試験片(射出成形による 成形体)を用いて、上記した方法で引張強度 よびシャルピー衝撃強度を測定したところ 下記の表10に示すとおりであった。

 上記の表10にみるように、実施例62~64では、 IPFが94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維 強度が7cN/dtex以上で、DSC特性が本発明で規定 る要件を満たすか、単繊維繊度と繊維表面 凹凸特性が本発明で規定する要件を満たす 、或いはDSC特性と単繊維繊度と繊維表面の 凸特性が本発明で規定する要件を満たして て耐熱性が高く、所定の凹凸を有する本発 のポリプロピレン繊維(a-1)~(a-3)のいずれか 用いて低密度ポリエチレンよりマトリック 中にポリプロピレン短繊維を含む複合材料 製造し、当該複合材料を用いて射出成形に って成形体を製造したことにより、実施例62 ~64で得られた成形体は、引張強度およびシャ ルピー衝撃強度が大きく、力学的特性に優れ ている。
 それに対して、比較例47では、DSC特性およ 繊維表面における凹凸特性の両方が本発明 規定から外れているポリプロピレン繊維(b-2) からなる短繊維を用いて、低密度ポリエチレ ンよりなるマトリックス中に当該ポリプロピ レン短繊維が含まれる複合材料を製造し、当 該複合材料を用いて成形体を製造したことに より、比較例47で得られた成形体は、引張強 およびシャルピー衝撃強度のいずれもが、 施例62~64で得られた成形体に比べて大幅に さく、実施例62~64の成形体に比べて力学的特 性が大きく劣っている。

《実施例65~67および比較例48》[短繊維状のポ プロピレン繊維を含有する複合材料(ポリエ チレン組成物)およびシート状成形体の製造]
(1) 実施例1~3で得られたポリプロピレン繊維( a-1)~(a-3)および比較例2で得られたポリプロピ ン繊維(b-2)のそれぞれを長さ5mmに切断して 繊維にし、当該ポリプロピレン短繊維のそ ぞれを用いて、実施例62~64の(1)と全く同様に して、低密度ポリエチレンよりなるマトリッ クス中にポリプロピレン短繊維を含む複合材 料(低密度ポリエチレン組成物)のペレットを 造した。
(2) 上記(1)で得られたペレットを用いて、温 150℃で熱プレス成形して、厚さ1mmのシート 成形体を製造した。
(3) 上記(2)で得られたシート状成形体から、J IS K6773に準じて1業ダンベル状の試験片を切 出し、上記した方法で引張強度を測定した ころ、下記の表11に示すとおりであった。

 上記の表11にみるように、実施例65~67では、 IPFが94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維 強度が7cN/dtex以上で、DSC特性が本発明で規定 る要件を満たすか、単繊維繊度と繊維表面 凹凸特性が本発明で規定する要件を満たす 、或いはDSC特性と単繊維繊度と繊維表面の 凸特性が本発明で規定する要件を満たして て耐熱性が高く、所定の凹凸を有する本発 のポリプロピレン繊維(a-1)~(a-3)のいずれか 用いて低密度ポリエチレンよりマトリック 中にポリプロピレン短繊維を含む複合材料 製造し、当該複合材料を用いてシート状成 体を製造したことにより、実施例65~67で得ら れたシート状成形体は、引張強度が大きく、 力学的特性に優れている。
 それに対して、比較例48では、DSC特性およ 繊維表面における凹凸特性の両方が本発明 規定から外れているポリプロピレン繊維(b-2) からなる短繊維を用いて、低密度ポリエチレ ンよりなるマトリックス中に当該ポリプロピ レン短繊維が含まれる複合材料を製造し、当 該複合材料を用いてシート状成形体を製造し たことにより、比較例48で得られたシート状 形体は、引張強度が、実施例65~67で得られ シート状成形体に比べて大幅に小さく、実 例65~67のシート状成形体に比べて力学的特性 が大きく劣っている。

《実施例68~70および比較例49》[ポリプロピレ 繊維織物を含有する複合材料および積層成 体の製造]
(1) 実施例1~3で得られたポリプロピレン繊維( a-1)~(a-3)および比較例2で得られたポリプロピ ン繊維(b-2)を束ねて約1000dtexの糸(マルチフ ラメント糸)にし、そのマルチフィラメント を用いて、基布密度が経30本/25.4mmおよび緯3 0本/25.4mmの平織生地を製造した。
(2) 上記(1)で得られた平織生地に、エポキシ 脂[ナガセケムテック社製、主剤:DENATOOL XNR6 708、硬化剤:DENATOOL XNH6708、主剤/硬化剤=100/33( 質量比)]を含浸してエポキシ樹脂含浸平織生 を調製し[エポキシ樹脂の含浸量=58質量%(平 生地の1.4質量倍)]、当該エポキシ樹脂含浸 織生地をハンドライアップ法で10枚積層し、 25℃で16時間乾燥した後、熱風循環型乾燥機 で60℃に2時間乾燥し、次いで120℃で3時間熱 化させた後、160℃で更に1時間熱硬化させて 、厚さ3mmの積層成形体を製造した。
(3) 上記(2)で得られた積層成形体から試験片 切り出して、上記した方法で3点曲げ試験を 行って、曲げ弾性率および曲げ強度を測定し た。その結果を下記の表12に示す。

 上記の表12にみるように、実施例68~70では、 IPFが94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維 強度が7cN/dtex以上で、DSC特性が本発明で規定 る要件を満たすか、単繊維繊度と繊維表面 凹凸特性が本発明で規定する要件を満たす 、或いはDSC特性と単繊維繊度と繊維表面の 凸特性が本発明で規定する要件を満たして て耐熱性が高く、所定の凹凸を有する本発 のポリプロピレン繊維(a-1)~(a-3)のいずれか らなる平織生地を用いてエポキシ樹脂中に 該ポリプロピレン繊維平織生地)を含む複合 料を製造し、当該複合材料を硬化して積層 形体を製造したことにより、実施例68~70で られた積層成形体は、曲げ弾性率および曲 強度が大きく、力学的特性に優れている。
 それに対して、比較例49では、DSC特性およ 繊維表面における凹凸特性の両方が本発明 規定から外れているポリプロピレン繊維(b-2) からなる平織生地を用いて、エポキシ樹脂よ りなるマトリックス中に当該ポリプロピレン 繊維平織生地が含まれる複合材料を製造し、 当該複合材料を用いて積層成形体を製造した ことにより、比較例49で得られた積層成形体 、曲げ弾性率および曲げ強度の両方が、実 例68~70で得られた積層成形体に比べて大幅 小さく、実施例68~70の積層成形体に比べて力 学的特性が大きく劣っている。

 本発明のポリプロピレン繊維(ポリプロピレ ン繊維A~C)は、7cN/dtex以上の高い繊維強度を有 し、しかも本発明で規定する上記した特定の DSC特性を有することにより(ポリプロピレン 維A、ポリプロピレン繊維C)、耐熱性に極め 優れている。
 さらに、本発明のポリプロピレン繊維のう 、本発明で規定する上記した特定の凹凸を 維表面に有する本発明のポリプロピレン繊 (ポリプロピレン繊維B、ポリプロピレン繊 C)は、10%以上の高い保水率を有しており、し かも当該凹凸構造による優れた投錨効果を有 する。
 そのため、前記した優れた特性を有する本 明のポリプロピレン繊維は、水硬性物質用 強材として極めて有効であり、更にはロー 構造体、シート状繊維構造体、有機重合体 の複合材料をはじめとして種々の用途と有 に用いることができる。