高橋 由美子 (〒75 東京都千代田区九段南四丁目8番24号 学校法人日本大学内 Tokyo, 1028275, JP)
EMORI, Satoshi (8-24 Kudan-minami 4-chome,Chiyoda-k, Tokyo 75, 1028275, JP)
江森 諭 (〒75 東京都千代田区九段南四丁目8番24号 学校法人日本大学内 Tokyo, 1028275, JP)
TAKANO, Yoshiki (8-24 Kudan-minami 4-chome,Chiyoda-k, Tokyo 75, 1028275, JP)
学校法人日本大学 (〒75 東京都千代田区九段南四丁目8番24号 Tokyo, 1028275, JP)
TAKAHASHI, Yumiko (8-24 Kudan-minami 4-chome,Chiyoda-k, Tokyo 75, 1028275, JP)
高橋 由美子 (〒75 東京都千代田区九段南四丁目8番24号 学校法人日本大学内 Tokyo, 1028275, JP)
EMORI, Satoshi (8-24 Kudan-minami 4-chome,Chiyoda-k, Tokyo 75, 1028275, JP)
江森 諭 (〒75 東京都千代田区九段南四丁目8番24号 学校法人日本大学内 Tokyo, 1028275, JP)
| 1.六方晶型の結晶構造からなるホウ炭化リチウムを真空雰囲気下で所定の表面積を有するリチウム吸着材とともに熱処理するホールドープされたホウ炭化リチウムの製造方法。 |
| 2.上記リチウム吸着材は、周期律表の4族又は5族に属する元素のうち少なくともいずれか1種を含有する請求の範囲第1項記載のホールドープされたホウ炭化リチウムの製造方法。 |
| 3.上記リチウム吸着材は、ジルコニア、チタン、タンタル、バナジウム、ゼオライト、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブのうち少なくともいずれか1つを含有する請求の範囲第1項記載のホールドープされたホウ炭化リチウムの製造方法。 |
| 4.上記リチウム吸着材は、ジルコニア、チタン、タンタル、バナジウム、ゼオライトのうちいずれか1つを含有する請求の範囲第1項記載のホールドープされたホウ炭化リチウムの製造方法。 |
| 5.上記熱処理では、500℃乃至1000℃に加熱する請求の範囲第1項乃至第4項のうちいずれか1項記載のホールドープされたホウ炭化リチウムの製造方法。 |
| 6.上記熱処理では、上記六方晶型の結晶構造からなるホウ炭化リチウムを2×10 -3 Pa以下の真空雰囲気下で上記リチウム吸着材とともに加熱する請求の範囲第5項記載のホールドープされたホウ炭化リチウムの製造方法。 |
| 7.リチウム、ホウ素及び炭素が化学組成比x:1:1(0<x≦3)となるように混合されているホウ炭化リチウムの原料に不活性ガス雰囲気下で熱処理を施すことにより上記六方晶型の結晶構造からなるホウ炭化リチウムを得る工程を更に有する請求の範囲第1項乃至第6項のうちいずれか1項記載のホールドープされたホウ炭化リチウムの製造方法。 |
| 8.上記六方晶型の結晶構造からなるホウ炭化リチウムを得る工程における熱処理では、第1段階目の熱処理として上記ホウ炭化リチウムの原料に500℃乃至1000℃で1時間乃至5時間熱処理を施した後に、第2段階目の熱処理として上記ホウ炭化リチウムの原料に1000℃乃至1500℃で1時間以上熱処理を施す請求の範囲第7項記載のホールドープされたホウ炭化リチウムの製造方法。 |
| 9.上記リチウム吸着材は、(1)式で定義される表面積を有する請求の範囲第1項記載のホールドープされたホウ炭化リチウムの製造方法。 (吸着材表面の原子数/リチウムの原子数)>1 (1) |
本発明は、金属的電気伝導特性又は超伝導
性を有するホールドープされたホウ炭化リ
ウムの製造方法に関する。
本出願は、日本国において2007年8月31日に出
願された日本特許出願番号2007-226541を基礎と
て優先権を主張するものであり、この出願
参照することにより、本出願に援用される
2001年に二ホウ化マグネシウム(MgB 2
)の超伝導が発見されて以来、電子デバイス
超伝導エレクトロニクス等に応用できる加
性の良い金属・合金系の超伝導体における
伝導転移温度T c
の向上に対する期待が高まっている(例えば
非特許文献1参照)。MgB 2
のT c
は、金属系超伝導体において限界とされてい
る20~30Kより高い39Kであるため、工業応用の観
点からは、T c
が液体窒素温度77K以上であることが望まれて
いる。
このような状況の中、Rosnerらのグループは
バンド計算によって、半導体であるホウ炭
リチウム化合物(以下、LiBC化合物という。)
ホールドープすることによって100K近いT c
が期待できることを示した(例えば、非特許
献2参照)。
1995年にWorleらのグループは、LiBC化合物の合
成に初めて成功し、現在でも彼らの方法が踏
襲されている。この方法では、化学量論組成
の約3倍の量のリチウムをホウ素及び炭素と
もに原料として高融点金属管に封入し、こ
高融点金属管に封入された原料を約1500℃で
処理することによって沸点1345℃のリチウム
を完全に気化させて、この気化による蒸気圧
でBC中(ホウ素及び炭素中)にリチウムをイン
ーカレーションさせることにより、LiBC化合
が得られる(例えば、非特許文献3参照)。
ホールドープされたホウ炭化リチウム化合
Li 1-x
BC(0<x≦1)の作製には、出発原料であるリチ
ムの量を減少させる方法、上述した固相反
法において熱処理時間を調整する方法、LiBC
化合物からリチウムをデインターカレーショ
ンさせる方法等が試みられている。例えば、
固相反応法において熱処理時間を調整する方
法では、固相反応法で作製したLiBC化合物に
処理を施して、ホウ炭化リチウム化合物か
一部のリチウムをデインターカレーション
せる(例えば、特許文献1参照)。
しかし、上述したLi 1-x
BC(0<x≦1)の作製方法では、除去されるリチ
ムの量を制御することが難しいため、正確
Li 1-x
BC(0<x≦1)の組成の決定がなされていない。
上述した従来のLi 1-x
BC(0<x≦1)の作製では、LiBC化合物から除去さ
れるリチウムの量が十分ではないため、半導
体特性を示すLi 1-x
BCのみしか得られていなかった。
本発明は、上記従来の課題を解決するもの
あり、金属的電気伝導特性又は超伝導特性
有するLiBC化合物の製造方法を提供すること
を目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、LiBC化合物
をリチウム吸着材とともに熱処理することに
より、多くのリチウムを吸着させることを見
出して、本発明に至った。即ち、本発明に係
るホールドープされたホウ炭化リチウム化合
物の製造方法は、六方晶型の結晶構造からな
るホウ炭化リチウム化合物を真空雰囲気下で
所定の表面積を有するリチウム吸着材ととも
に熱処理する。
このように製造される六方晶型の結晶構造
らなるホールドープされたホウ炭化リチウ
化合物は、リチウム、ホウ素、炭素からな
、組成式Li 1-x
BC(0<x≦1)で表されるホウ炭化リチウム化合
において、x>0.37とすることができ、金属
電気伝導特性又は超電導特性を有する。
以下、図面を参照しながら、本発明を適用
た一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態におけるホールドープさ
れたLiBC化合物(以下、Li 1-x
BC(0<x≦1)という。)の製造方法を説明するフ
ローチャートである。
ここで、ステップS1~ステップS5は、LiBC化合
を生成する工程であり、ステップS5では後
するように、LiBC化合物の原料に第1の熱処理
が施される。
また、ステップS6~ステップS8は、Li 1-x
BC(0<x≦1)を製造する工程であり、ステップS
7では後述するように、ステップS1~ステップS5
の工程で得られたLiBC化合物に第2の熱処理が
される。
ステップS1では、不活性ガス雰囲気下中で
切な量のリチウムを秤量する。不活性ガス
しては、アルゴンガス、ヘリウムガス等を
いることができる。また、不活性ガスを用
る替わりに真空雰囲気下中でリチウムを秤
してもよい。
ステップS2では、ステップS1で秤量したリチ
ウムの量に基づいて、適切な比率となるよう
にホウ素及び炭素を秤量し、ホウ素及び炭素
が均一になるように混合する。具体的には、
ステップS1で秤量したリチウムの量に基づい
、化学組成比がLi:B:C=x:1:1(0<x≦3)となるよ
にホウ素を含む原料粉末と炭素を含む原料
末とを秤量し、秤量したホウ素を含む原料
末と炭素を含む原料粉末とを混合して、ホ
素及び炭素の混合粉末とする。
ここで、化学組成比Li:B:C=x:1:1において0<x
3となるようにそれぞれの元素であるリチウ
ムと、ホウ素を含む原料粉末と、炭素を含む
原料粉末とを秤量することが好ましく、特に
、1≦x<3であることが好ましい。Li:B:C=x:1:1
化学組成比において、x>3の場合には、結
構造が異なるLiBC化合物が生成してしまう。
た、x<1の場合には、リチウムが気化する
とにより発生する圧力が小さくなる結果、
ウ素及び炭素中へのリチウムのインターカ
ーションが起こりにくくなり、六方晶型の
造を有するLiBC化合物が得られないことがあ
る。
ステップS3では、一様になったホウ素及び
素の混合粉末を加圧成形する。具体的には
ステップS2において混合したホウ素を含む混
合粉末と炭素を含む混合粉末とを加圧してペ
レット状の圧粉体を成形する。
ステップS4では、不活性ガス雰囲気下中で
チウムとホウ素及び炭素の圧粉体を高融点
属で形成された中空管に入れて封止する。
体的には、ステップS1において秤量した所定
量のリチウムとステップS3において加圧成形
た圧粉体とを、リチウムが酸化することを
止するために、不活性ガス雰囲気下中又は
空雰囲気下において高融点材料で形成され
中空管に封入する。
高融点材料で形成された中空管としては、
ンタル、モリブデン等からなる中空管や、
性材料、又は金属等の非磁性材料からなる
ツボを用いることができる。
また、不活性ガスとしては、上述したステ
プS1と同様にアルゴンガス、ヘリウムガス
を用いることができる。さらに、不活性ガ
を用いる替わりに真空雰囲気下中で圧粉体
封入操作を行ってもよい。
なお、上述したステップS2~ステップS4にお
ては、リチウムを含んだ原料と、ホウ素及
炭素を含んだ原料粉末とを不活性ガス雰囲
下中で混合し、不活性ガス雰囲気下中でこ
らリチウムを含んだ原料を中空管に封入し
もよい。
ステップS5では、高温炉において、ステッ
S4において中空管に封入したLiBC化合物の原
に所定の温度で所定の時間熱処理を施す。
このステップS5における熱処理は、2段階で
されることが好ましい。即ち、中空管に封
された原料に、第1の熱処理として、第1段
目の熱処理及び第2段階目の熱処理をLiBC化合
物の原料に施すことが好ましい。
ステップS5における第1段階目の熱処理では
先ず、高温炉内で500℃乃至1000℃で1時間以
、中空管に封入されたLiBC化合物の原料に熱
理を施す。
このように、ステップS4において中空管に
入されたLiBC化合物の原料に第1段階目の熱処
理を施すことにより、LiBC化合物の結晶の核
成が促進される。具体的には、500℃乃至1000
に昇温された炉内でLiBC化合物の原料を1時
乃至5時間保持して熱処理を施すことにより
例えば単結晶生成における核生成と同様に
LiBC化合物の結晶構造における微結晶の生成
を促進させることができる。
続いて、第2段階目の熱処理として、高温炉
内で第1段階目の熱処理が施されたLiBC化合物
原料に1000℃乃至1500℃で1時間以上熱処理を
す。
ここで、第2段階目の熱処理では、昇温させ
た高温炉内でLiBC化合物の原料を封入した中
管を1000℃乃至1500℃で3時間以上保持するこ
が好ましい。このように、第2段階目の熱処
において、1000℃乃至1500℃に昇温させた高
炉内で3時間以上原料を保持することにより
LiBC化合物の結晶生成を促進させることがで
きる。
上述したような第1の熱処理をLiBC化合物の
料に施すことにより、空間群P6 3
/mmcの結晶構造を有し、化学組成比Li:B:C=x:1:1(0
.5<x<1)であるLiBC化合物が得られる。
なお、ステップS5における第1の熱処理は、L
iBC化合物の微結晶の生成が促進するような炉
内温度及び熱処理時間で加熱するものであれ
ば、第1段階目及び第2段階目といった2段階の
熱処理ではなく、1段階の熱処理であっても
い。例えば、1段階で熱処理をする場合でも
炉内の昇温速度を遅くすることにより、2段
階で熱処理をする場合と略同様な効果を得る
ことができる。
図2は、本実施形態におけるLiBC化合物の結
構造を示す図である。図2に示すように、ス
ップS5において得られるLiBC化合物は、その
晶構造がリチウムから構成される三角格子
、ホウ素及び炭素から構成される六角格子
が、c軸に沿って積層する積層化合物となっ
ている。
また、本実施形態における製造方法で得ら
るLiBC化合物は、六方晶型の結晶構造におけ
るab面内及び面間でホウ素及び炭素が常に隣
するような配置となっている。ここで、図2
における点線は、LiBC化合物の単位格子を示
ている。
本実施形態では、この図2に示す六方晶型の
結晶構造からなるLiBC化合物を、後述するリ
ウム吸着材とともに真空雰囲気下中で熱処
することにより、Li 1-x
BC(0<x≦1)を作製する。
即ち、ステップS6では、ステップS5で生成し
たLiBC化合物を不活性なガス雰囲気下中で中
管から取り出し、リチウム吸着材とともに
空管に封入する。具体的には、ステップS5に
おいて第1の熱処理が施されたLiBC化合物の原
を高融点材料で形成された中空管から取り
して、この中空管から取り出したLiBC化合物
をリチウム吸着材とともに中空管に真空封入
する。
ステップS6においてLiBC化合物をリチウム吸
材とともに封入するための中空管としては
その材質が、石英、硼硅酸ガラス等である
のを用いることができる。また、中空管と
ては、両端を溶接可能な金属管を用いても
い。さらに、中空管としては、その長さが
封入する試料の量に応じて50~200mmのものを
用することが好ましい。
LiBC化合物の原料とともに石英管に封入する
リチウム吸着材は、LiBC化合物からリチウム
効率的に除去することができるとともに、
チウムを除去した後のLiBC化合物の結晶構造
影響を与えないものであることが好ましい
リチウム吸着材としては、その材質が、い
ゆるゲッター材と総称されている材料を用
ることができ、例えば、ジルコニウム、ハ
ニウム等の周期律表の4族(周期律表のVIa族)
素又はニオブ、タンタル等の周期律表の5族
(周期律表のVa族)に属する元素のうち少なく
も1種を含有する金属材料、ゼオライト等の
金属材料及びジルコニア等の金属酸化物が
げられる。特に、リチウム吸着材としては
ジルコニア、チタン、タンタル、バナジウ
、ハフニウム、ニオブ等の金属・金属酸化
材料やセラミックスであるゼオライト等の
金属材料を用いることが好ましい。このよ
な材料をリチウム吸着材として使用した場
には、上述したようにリチウムを除去する
にLiBC化合物の結晶構造に影響を与えず、LiB
C化合物からより多くのリチウムを除去する
とができる。ここで、所定の表面積を有す
リチウム吸着材とは、例えば、以下の(1)式
満たすものをいう。
(吸着材表面の原子数/リチウムの原子数)>1
(1)
また、リチウム吸着材としては、例えば機
的・化学的な加工による粗面化処理等を施
て、そのリチウム吸着材の表面に凹凸を形
することにより表面積を増大させたものを
いてもよい。さらに、リチウム吸着材とし
は、その形状が箔状であるものや、リチウ
吸着材の基材となる材料が球面状で形成さ
ているものを用いてもよい。
さらに、LiBC化合物をリチウム吸着材ととも
に中空管に真空封入する際には、2×10 -3
Pa以下の真空度で封入することが好ましい。L
iBC化合物を真空封入する際の真空度を2×10 -3
Paより低くすることで、金属的電気伝導特性
は超電導特性を有するLiBC化合物を製造する
ために必要な量のリチウムをLiBC化合物から
去することができる。
ステップS7では、LiBC化合物が封入された中
管を予め定められた所定の温度で、所定の
間加熱する。具体的には、第2の熱処理とし
て、500℃乃至1000℃に昇温させた炉内でステ
プS6において中空管に真空封入したLiBC化合
に熱処理を施す。
ここで、第2の熱処理を施す時間は、5時間
上とすることが好ましい。このように、LiBC
合物に第2の熱処理を施す時間を長くする程
、リチウム吸着材がより多くのLiを吸着する
め、より多くのリチウムをLiBC化合物から除
去することができる。
また、本実施形態において、第2の熱処理を
施す時間は、10時間以上とすることがより好
しい。10時間以上とすることにより、後述
るように金属的電気伝導特性又は超伝導特
を有するLiBC化合物を得るために必要な量の
チウムをLiBC化合物から除去することができ
る。
さらに、第2の熱処理を施す際の温度は、100
0℃以下であることが好ましい。第2の熱処理
おける温度を1000℃以下とすることにより、
LiBC化合物が変異して、結晶構造が変化して
まうのを防止することができる。
ステップS8では、Li 1-x
BC(0<x≦1)が得られる。具体的には、ステッ
S7においてLiBC化合物に第2の熱処理を施した
結果、LiBC化合物から一部のリチウムが除去
れたLiBC化合物(Li 1-x
BC(0<x≦1))が得られる。
また、上述したステップS7において、同一
のLiBC化合物の混合量に対してリチウム吸着
の表面積の大きさを変化させることにより
LiBC化合物から除去されるリチウムの量を制
御することができる。したがって、リチウム
吸着材の表面積の大きさに比例して、LiBC化
物から除去されるリチウムの量を増加させ
ことが可能となる。
以上のように、本実施形態におけるLi 1-x
BC(0<x≦1)の製造方法によれば、六方晶型の
晶構造からなるLiBC化合物を真空雰囲気下で
所定の表面積を有するリチウム吸着材ととも
に熱処理することにより、リチウム、ホウ素
、炭素からなり、組成式Li 1-x
BC(0<x≦1)で表されるホウ炭化リチウム化合
において、x>0.37とすることができ、金属
電気伝導特性又は超伝導特性を有するLiBC化
合物を製造することができる。
したがって、本実施形態におけるLi 1-x
BC(0<x≦1)の製造方法によれば、金属的電気
導特性又は超伝導特性を有するLi 1-x
BC(0<x≦1)を得ることができる。
〔実施例1〕
次に、本発明の具体的な実施例について実
結果を参照して説明する。なお、本分野の
究常識に照らし、本発明が以下に示す実施
で用いる実験条件の末節に限定されないこ
は言うまでもない。
実施例1では、第2の熱処理の際にLiBC化合物
ともにリチウム吸着材としてチタン箔を用
ることにより、Li 1-x
BC(0<x≦1)化合物を作製した。
LiBC化合物の原料として、リチウム(インゴ
ト、純度99.9%)、ホウ素(粉末、純度99%)及び炭
素(粉末、99.9%)を用いた。化学組成比がLi:B:C=1
.25:1:1となるようにリチウムを秤量し、この
量したリチウムの量に基づいて、ホウ素及
炭素の粉末を秤量した。具体的には、LiBC化
物の原材料の合計が0.6g(約0.01mol)程度になる
ように秤量した。
秤量したホウ素及び炭素の粉末を30分間混
して均一な粉末とした後、油圧プレス機を
いて短冊状に成形した。加圧は、20分間、8×
10 3
kg/cm 2
で行った。
高純度アルゴンガスを満たしたグローブボ
クス内で、加圧成形されたホウ素及び炭素
混合生成物圧粉体とリチウムとをタンタル
(内径6mm、長さ120mm)に入れた後、タンタル管
の開口部をアーク溶接することによってLiBC
合物の原料をタンタル管内に封止した。
高温縦型炉内にタンタル管を設置し、炉内
2時間で500℃まで昇温させ、500℃で3時間保
し、その後3時間で1200℃まで炉内を上昇させ
、その後3時間1200℃で保持し、自然冷却によ
炉内温度を室温付近まで下げた(第1の熱処
)。
上述の熱処理を施すことで得られたLiBC化合
物を母体として、この母体と渦巻状に成型し
たチタン箔(縦10mm、横50mm、厚さ0.3mm(表面積約
100mm 2
))とを油圧拡散ポンプを用いて約1.3×10 -3
Paの真空度で石英管(内径10mm、長さ450mm)内に
空封入した。
母体及びチタン箔が封入された石英管をニ
ロム炉内に設置し、ニクロム炉内の温度を4
.5時間で900℃となるように上昇させた後、炉
を900℃で10時間保持し、その後自然冷却に
り炉内を室温付近まで下げた(第2の熱処理)
〔評価試験1〕
先ず、実施例1で得られたLiBC化合物の結晶
造をX線回折法により評価した。X線回折の測
定には、粉末X線回折装置RINT1000(株式会社リ
ク製)を用いた。
図3は、本実施形態におけるLiBC化合物の粉
X線回折パターンの結果を示す図である。図3
に示す粉末X線回折パターンは、横軸に回折
(2θ)、縦軸に回折X線強度がプロットされて
る。ここで、下記(1)に示すBragg式を用いるこ
とにより、図3に示すX線回折パターンにおけ
2θ値から格子面角度dを算出することができ
る。
2dsinθ=nλ (1)
図3は、広域の回折角を横軸に示したX線回
パターンの結果を示す図である。また、Aは
第1の熱処理後、Bは、第2の熱処理後のLiBC化
合物の結果をそれぞれ示している。
図3に示すX線回折パターンから、第1の熱処
後の母体であるLiBC化合物は、図2に示す結
構造において略単相の空間群P6 3
/mmcの結晶構造を有する化合物であることを
認することができた。
また、図3のA及びBに示すX線回折パターンを
比較することにより、第2の熱処理後のLiBC化
物では、第1の熱処理によって形成された空
間群P6 3
/mmcの結晶構造が変化していないことを確認
ることができた。
次に、より詳細にLiBC化合物の結晶構造を検
討するために、リートベルト法による構造精
密化を行った。
リートベルト法は、粉末X線回折や粉末中性
子回折で得られた回折強度から結晶の構造パ
ラメータを精密化する方法であり、例えば格
子定数、原子の各サイトでの占有率、原子変
位パラメータ等を精密化する。(例えば、リ
トベルト法による解析法については、非特
文献参照:F. Izumi and T. Ikeda, Mater. Sci. Foru
m, 321-324 (2000) 198-203)。
リートベルト解析には、リートベルト解析
フト(RIETAN-2000)を用いた。リートベルト法に
より解析して算出した本実施例におけるLiBC
合物の結晶構造及び格子定数を表1に示す。
また、第1の熱処理後のLiBC化合物に、更に
2の熱処理を施すことにより、リチウム占有
が約13%減少した。換言すると、第1の熱処理
後のLiBC化合物Aでは、リチウムが約0.28、即ち
約28%欠損した。また、第2の熱処理後のLiBC化
物Bでは、リチウムが約0.37、即ち約37%欠損
た。したがって、第1の熱処理後に、更に第2
の熱処理を施すことにより、リチウムが約0.0
9、即ち、約9%更に欠損した。この結果から、
リチウムの除去によるホールドープが明らか
となった。
次に、実施例1で得られたLi 1-x
BC(0<x≦1)の電気抵抗率の温度依存性を測定
た。
図4は、本実施形態におけるLi 1-x
BC(0<x≦1)の電気抵抗率の温度依存性を示す
である。ここで、図4(I)は、第1の熱処理後
LiBC化合物、(II)は、第2の熱処理後のLiBC化合
について、電気抵抗率の温度依存性の結果
示した図である。これらのLi 1-x
BC(0<x≦1)に関する電気抵抗率の温度依存性
測定には、コンデンサ、コイル、抵抗等の
気素子両端での電位差と電気素子に流れる
流とから電気素子のインピーダンスを求め
直流四端子法を用いて、4.2Kから300Kまでの
度範囲について電気抵抗率を測定した。
図4(I)に示すように、第1の熱処理後のLiBC化
物は、温度が減少するにつれて電気抵抗率
増加した。この結果から、第1の熱処理を施
した後のLiBC化合物は、温度変化に対する電
抵抗率が半導体的挙動を示しているため、
導体的性質を有することを確認することが
きた。
一方、図4(II)に示すように、第2の熱処理後
LiBC化合物は、温度が減少するにつれて電気
抵抗率が減少した。このように、第2の熱処
後のLiBC化合物は、電気抵抗率が金属的挙動
示しているため、金属的な電気伝導特性を
することが確認された。この結果から、第1
の熱処理後に、更に第2の熱処理を施すこと
より、半導体的性質を示していたLiBC化合物
、金属的性質を示すLiBC化合物となったこと
を確認することができた。また、この図4に
す結果から、第2の熱処理においてリチウム
着材として使用したチタン箔の表面積が、
属的な電気伝導特性をLiBC化合物に与える支
配因子となっていることを確認することがで
きた。
〔実施例2〕
実施例2では、リチウム吸着材としてジルコ
ニア箔(縦2.5cm、横10.0cm、厚さ0.01cm(表面積約50
cm 2
))を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行
い、Li 1-x
BC(0<x≦1)を作製した。なお、ジルコニア箔
しては、上述したジルコニア箔の表面積を1
とした際に種々の表面積比となるようなもの
を使用した。
〔評価試験2〕
先ず、実施例2で作製したLiBC化合物につい
、ジルコニア箔がリチウムを吸着する効果
確認するために、ジルコニア箔の表面積と
チウム占有率及び100Kにおける電気抵抗率と
関係を調べた。
図5は、本実施形態におけるジルコニア箔の
量に対するLi 1-x
BC(0<x≦1)のリチウム占有率及び100Kでの電気
抵抗率の関係を示す図である。
図5では、横軸には縦2.5cm、横10.0cm、厚さ0.01
cmのジルコニア箔の表面積を1とした際の表面
積比、縦軸には図3のX線回折パターンに基づ
たLiBC化合物におけるリチウム占有率と、そ
のリチウム占有率のLiBC化合物について100Kで
定した電気抵抗率の値とがそれぞれ示され
いる。
図5において、三角の記号で示す(a)は、ジル
コニア箔の表面積比に対する第2の熱処理後
LiBC化合物のリチウム占有率の値を示す図で
り、丸の記号で示す(b)は、100Kで測定したジ
ルコニア箔の表面積比に対する第2の熱処理
のLiBC化合物の電気抵抗率の値を示した図で
る。
図5に示すように、第2の熱処理をする際の
度を一定としてジルコニア箔の表面積比を
加させると、LiBC化合物のリチウム占有率が
少した。この結果から、第2の熱処理におい
て使用したジルコニア箔の表面積が、LiBC化
物からリチウムを除去するための支配因子
なっていることを確認することができた。
また、図5に示すように、ジルコニア箔の表
面積比が2.5である場合には、LiBC化合物にお
るリチウム占有率は、約0.55であった。した
って、第1の熱処理後のLiBC化合物をジルコ
ア箔とともに更に第2の熱処理することによ
、第1の熱処理を施す前のLiBC化合物と比較
て、合計約45%のリチウムが除去された。
また、図5の(b)に示すように、ジルコニア箔
の表面積比が2.5、2.8、3、3.1と2.5より大きく
ると、ジルコニア箔の表面積比にほぼ比例
てLiBC化合物の電気抵抗率が増加しているこ
が分かる。これらの結果から、リチウム吸
材としてジルコニア箔を用いた場合には、
定量のジルコニア箔の表面積比、即ち、2.5
上では、LiBC化合物の結晶構造が壊れてしま
うと考えられる。
図6は、本実施形態におけるジルコニア箔の
表面積を一定量以下とした場合のLi 1-x
BC(0<x≦1)の電気抵抗率の温度依存性を示す
である。
図6に示すように、図5に示す横軸の値が0.5
即ち、ジルコニア箔の表面積比が0.5である
合には、第2の熱処理後のLiBC化合物は、温度
が減少するにつれて電気抵抗率が増加した。
この結果から、ジルコニア箔の表面積比が0.5
である場合には、第2の熱処理後のLiBC化合物
、半導体特性を示すことが確認された。し
がって、ジルコニア箔の表面積が所定量以
である場合には、第1の熱処理後のLiBC化合
に、更に第2の熱処理を施しても、LiBC化合物
が上述したような金属的電気伝導特性を示さ
ずに、半導体的性質しか示さない。
図7(I)は、ジルコニア箔の表面積比が図5に
す横軸の値において1.0である場合の本実施
態におけるLi 1-x
BC(0<x≦1)の電気抵抗率の温度依存性を示す
である。図7(I)に示すように、低温の温度領
域である約20K付近の温度から電気抵抗率が急
落した。したがって、本実施例におけるLiBC
合物は、約20KのT c
を有していることが確認された。
次に、PPMS(Physical Properties Measurement System)(Q
uantum Design製)、又はMPMS(Magnetic Properties Measur
ement System)(Quantum Design製)で測定した磁化測
の結果を図7(II)に示す。
図7(II)は、ジルコニア箔の表面積比が図5に
す横軸の値において1.0である場合の本実施
態におけるLi 1-x
BC(0<x≦1)の磁化の温度依存性を示す図であ
。ここで、(a)は、零磁場冷却(ZFC)、(b)は、
場中冷却(FC)それぞれの条件で測定した磁化
定の結果を示した図である。磁場冷却の場
には、磁場としてH(印加磁場)=100Oeを付与し
、5Kから300Kの温度範囲で磁化率を測定した
この結果、比較的低温である約10K付近の温
領域において、磁場冷却の場合と零磁場冷
の場合とで差が確認された。このように磁
冷却の場合で磁化率が小さくなっているの
、マイスナー効果による進入磁束が存在し
LiBC化合物が超伝導体であることを示してい
る。
また、図7(II)に示す磁化測定において、超
導成分と考えられる反磁性シグナルが観察
れ、この反磁性シグナルが発生した温度と
図7(I)の低温の温度領域において観察された
気抵抗率の急落が発生した温度とが略一致
ているため、LiBC化合物の一部に超伝導転移
が生じていると考えられる。
図8は、磁束密度を7T(テスラ)及び0Tとした場
合の本実施形態におけるLi 1-x
BC(0<x≦1)の電気抵抗率の温度依存性を示す
である。図8において、磁束密度が0Tの場合
は、磁束密度が7Tである場合と比較して、
温である2~4K付近の温度領域において電気抵
率が減少した。この結果から、LiBC化合物が
超伝導特性を有することが確認された。
〔実施例3〕
実施例3では、リチウム吸着材としてニオブ
、タンタル、バナジウム、ハフニウムを用い
た以外は、実施例1と同様の操作を行い、Li 1-x
BC(0<x≦1)を作製した。なお、実施例3では、
各リチウム吸着材の表面積を、実施例2にお
るジルコニア箔の表面積を1とした場合と同
にした。
〔評価試験3〕
図9は、種々のリチウム吸着材を使用した場
合のLi 1-x
BC(0<x≦1)のリチウム占有率に対する電気抵
率の関係を示す図である。図9の横軸は、リ
チウム吸着材としてニオブ、タンタル、ハフ
ニウム、バナジウム、ジルコニアを用いて熱
処理した場合のLiBC化合物のリチウム占有率
示す。また、図9の縦軸は、100Kでの各リチウ
ム吸着材を用いた場合のLiBC化合物の電気抵
率を示す。なお、図9において、「parent」は
第1の熱処理後のLiBCのリチウム占有率及び
気抵抗率の結果を示す。また、図9において
白丸で示すa~dは、図5(a)に示す表面積比を2.5
、1.0、0.5、0としたジルコニアをリチウム吸
材として用いた場合の結果に対応するもの
ある。
この結果から、ニオブ、タンタル、ハフニ
ム、バナジウム及びジルコニアは、LiBC化合
物におけるリチウム占有率及び電気抵抗率を
低下させることが分かる。つまり、ニオブ、
タンタル、ハフニウム及びバナジウムは、上
述したジルコニアやチタンと同様に、リチウ
ム吸着材としての効果を奏することが分かる
。したがって、いわゆるゲッター材と総称さ
れている物質(周期律表のVa、VIa族)は、上述
たリチウム吸着材としての効果を奏するこ
が分かる。また、これらのリチウム吸着材
してハフニウムを用いた場合には、ジルコ
アを用いた場合と同じ程度にLiBC化合物のリ
ウム占有率及び電気抵抗率を低下させるこ
が分かる。
図10は、リチウム吸着材としてハフニウム
用いた場合の第2の熱処理後のLiBC化合物の電
気抵抗率の温度依存性の結果である。図10の
軸は温度〔K〕、縦軸はLiBC化合物の電気抵
率〔ωcm〕を示している。また、挿入図は、
10における横軸が0~100の範囲についての拡大
図である。図10に示す結果から、磁束密度の
下に伴ってLiBC化合物の電気抵抗率が減少し
ていることが分かる。具体的には、磁束密度
が0Tの場合には、磁束密度が7T、3T、1Tの場合
比較して、低温である2~4K付近の温度領域で
のLiBC化合物の電気抵抗率が減少しているこ
が分かる。この結果から、ハフニウムをリ
ウム吸着材として使用した場合には、LiBC化
物が超伝導特性を有することが分かる。
以上の結果から、ジルコニア箔を用いて第2
の熱処理を施したLiBC化合物は、超伝導特性
有することを確認することができた。
このように、本実施形態におけるLi 1-x
BC(0<x≦1)の製造方法によれば、六方晶型の
晶構造からなるLiBC化合物を真空雰囲気下で
所定の表面積を有するリチウム吸着材ととも
に熱処理することにより、LiBC化合物から多
のリチウムを除去して、金属的電気伝導特
又は超伝導特性を有するLiBC化合物を得るこ
ができる。
以上説明したように本発明によれば、六方
型の結晶構造からなるLiBC化合物を真空雰囲
気下で所定の表面積を有するリチウム吸着材
とともに熱処理することにより、LiBC化合物
ら多くのリチウムを除去して、金属的電気
導特性又は超伝導特性を有するLiBC化合物を
ることができる。
