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Title:
PROCESS FOR PRODUCING TRIPHENYLENE COMPOUND AND CRYSTAL OBTAINED BY THE PROCESS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/020166
Kind Code:
A1
Abstract:
A process for producing a high-purity hydroxytriphenylene compound in which not only inexpensive raw materials can be used but no complicated steps such as protective-group elimination, e.g., dealkylation, and reduction are necessary. It is advantageous in industrial production. Also provided is a novel crystal of 2,3,6,7,10,11-hexahydroxytriphenylene monohydrate which has satisfactory thermal stability. The process, which is for producing a compound represented by the general formula (2), is characterized by reacting a compound represented by the general formula (1) in the presence of a metal oxide containing a metal selected among trivalent iron, pentavalent vanadium, and hexavalent molybdenum and of a nonvolatile strong acid. (In the formula (1), the two R's each independently represents hydrogen, halogeno, C1-3 alkyl, or C1-3 alkoxy.)

Inventors:
TAKANO DAISUKE (JP)
KATO TOMOKAZU (JP)
FUJINAKA TOSHIHIRO (JP)
SAKAMOTO KAZUNORI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/064163
Publication Date:
February 12, 2009
Filing Date:
August 06, 2008
Export Citation:
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Assignee:
WAKO PURE CHEM IND LTD (JP)
TAKANO DAISUKE (JP)
KATO TOMOKAZU (JP)
FUJINAKA TOSHIHIRO (JP)
SAKAMOTO KAZUNORI (JP)
International Classes:
C07C37/11; C07C37/84; C07C39/12; C07B61/00
Domestic Patent References:
WO2005090275A12005-09-29
WO2005090275A12005-09-29
Foreign References:
JP2005104870A2005-04-21
JP2005225812A2005-08-25
JPH09118642A1997-05-06
JPH07330650A1995-12-19
JPH08119894A1996-05-14
JPH09118642A1997-05-06
Other References:
SYNTHESIS, vol. 477, 1994
J. MATER. CHEM., vol. 2, 1992, pages 1261
SYNTHESIS, 1994, pages 477
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Claims:
一般式(1)
(式中、2つのRは夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基又は炭素数1~3のアルコキシ基を表す。)で示される化合物を、3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物並びに不揮発性の強酸の存在下で反応させることを特徴とする一般式(2)
(式中、6つのRは前記に同じ。)で示される化合物の製造方法。
更に、前記一般式(2)で示される化合物をアセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒から56~95℃の温度範囲でアセトンを留去することにより、一般式(2)で示される化合物の結晶を析出させる、請求項1に記載の製造方法。
更に、前記一般式(2)で示される化合物をアセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒に5~50℃の温度範囲で水を加えることにより、一般式(2)で示される化合物の結晶を析出させる、請求項1に記載の製造方法。
前記一般式(1)で示される化合物が、カテコールであり、前記一般式(2)で示される化合物が、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレンである、請求項1に記載の製造方法。
更に、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレンをアセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒から56~95℃の温度範囲でアセトンを留去することにより、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶を析出させる、請求項4に記載の製造方法。
更に、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレンをアセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒に5~50℃の温度範囲で水を加えることにより、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶を析出させる、請求項4に記載の製造方法。
前記金属酸化物が、三酸化二鉄、四酸化三鉄、五酸化二バナジウム及び三酸化モリブデンから選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の製造方法。
前記金属酸化物が、三酸化二鉄である、請求項1に記載の製造方法。
前記不揮発性の強酸が、硫酸である、請求項1に記載の製造方法。
反応系内の前記不揮発性の強酸の重量パーセント濃度が、50~95%の範囲で実施される、請求項1に記載の製造方法。
反応温度が、0~50℃の範囲で実施される、請求項1に記載の製造方法。
カテコールを3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物並びに不揮発性の強酸の存在下で反応させて得られた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレンを、アセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒から56~95℃の温度範囲でアセトンを留去することにより得られる、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶。
カテコールを3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物並びに不揮発性の強酸の存在下で反応させて得られた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレンを、アセトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混合溶媒に5~50℃の温度範囲で水を加えることにより得られる、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶。
CuKα特性X線(波長:1.5418Å)に対するX線回折スペクトルに於いて、そのブラッグ角(2θ±0.2°)で9.3、10.2、26.4に主ピークを有し、かつ、10.5~12.5の間にピークを有さない、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶。
熱分解温度(Td)が140℃である、請求項14に記載の結晶。
Description:
トリフェニレン類の製造方法及 当該製造方法により得られる結晶

 本発明は、例えばディスコチック液晶等 機能性材料の原料として有用なヒドロキシ リフェニレン類の製造方法に関し、更に詳 くは、1,2-ジヒドロキシベンゼン類(以下、 にカテコール類と略記する場合がある。)を 料とするヒドロキシトリフェニレン類の製 方法及び当該製造方法により得られる結晶 並びに2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフ ニレン・1水和物の新規な結晶に関する。

 ディスコチック液晶は、一般的に円盤状 中心母核とその母核から放射状に延びる側 を有し、その構造ゆえに特異な液晶性を示 ことから、近年液晶分野に於いて様々な研 がなされている。ディスコチック液晶の中 母核となる化合物としては、例えばベンゼ 誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニ 誘導体、トリフェニレン誘導体、シクロヘ サン誘導体、ポルフィリン誘導体等が挙げ れるが、中でもトリフェニレン誘導体は、 学的機能性素子の形成に有効なディスコチ クネマチック相を形成しやすいことから、 年注目を集めている化合物である。

 このトリフェニレン誘導体の中でも、特 2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレ は、6つのヒドロキシル基に適当な側鎖を容 に導入できることなどから、従来より種々 製造方法が報告されている。

 具体的には、例えば1,2-ジアルコキシベン ゼンを出発原料として、一旦化学的に安定な 2,3,6,7,10,11-ヘキサアルコキシトリフェニレン 合成した後(例えば特許文献1、非特許文献1 )、三臭化ホウ素やヨウ化水素等で脱アルキ ル化することにより(例えば特許文献2、非特 文献2等)、目的とする2,3,6,7,10,11-ヘキサヒド ロキシトリフェニレンを合成する方法が知ら れている。しかしながら、これらの方法では 三量化工程と脱アルキル化工程の2工程を要 るばかりでなく、原料である1,2-ジアルコキ ベンゼンが比較的高価であること、脱アル ル化工程に用いる三臭化ホウ素やヨウ化水 の腐食性が高いことなどから、2,3,6,7,10,11- キサヒドロキシトリフェニレンの工業的製 としては不向きであった。

 このような問題点を解決する方法として 原料として1,2-ジヒドロキシベンゼン(カテ ール)を用い、直接2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロ シトリフェニレンを合成する方法が試みら ている(例えば特許文献3、非特許文献1等)。 体的には非特許文献1では、無水塩化鉄(III) 9.5倍モル以上の硫酸の存在下でカテコール 反応させることにより、2,3,6,7,10,11-ヘキサ ドロキシトリフェニレンの鉄錯体を得てい 。しかしながら、この鉄錯体から2,3,6,7,10,11- ヘキサヒドロキシトリフェニレンを単離した との記述はなされていない。また、特許文献 3では、塩化鉄(III)の水和物の存在下でカテコ ールを反応させ、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキ トリフェニレンの鉄錯体及び/又はキノン体 を得た後、これを還元処理することにより、 目的とする2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリ ェニレンを合成している。このように、こ らの方法では原料としてカテコールを用い 脱アルキル化工程を要しないことから生産 の問題と腐食性の問題は解決しているもの 、高純度の2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシト フェニレンを得るためには、カテコールの 量化工程の他に還元工程を要するため、工 数の問題は未だ解決されておらず、工業的 法としては決して有利なものではなかった

 このような状況下、安価な原料を用いる とができるばかりでなく、ヘキサアルコキ トリフェニレンに於けるアルコキシ基から 脱アルキル化などの脱保護や、ヘキサヒド キシトリフェニレンの鉄錯体及び/又はキノ ン体の還元といった煩雑な工程を経ずに、よ り簡便に純度の高い2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロ シトリフェニレンを合成する製造方法の開 が望まれていた。

 また、最近では2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロ シトリフェニレン・1水和物の結晶形に係る 術として、特許文献4に当該1水和物のA型結 が開示されている。該A型結晶は、2,3,6,7,10,1 1-ヘキサヒドロキシトリフェニレン結晶のア トン-水混合溶媒から特定の温度条件でアセ トンを減圧下に留去することによって得られ る約139℃に熱分解温度(Td)を有するもので、 安定性に優れることが記載されている。ま 、当該特許文献4には、従来公知の2,3,6,7,10,11 -ヘキサヒドロキシトリフェニレンの製造方 によって得られる結晶(特許文献4に於けるB 結晶)は、すべて熱安定性に乏しい結晶であ ことが記載され、当該B型結晶を組み込んだ 機器は、耐久性に乏しく長期に亘って所望の 性能を発揮できなくなる不都合があることが 記載されている。このことからも明らかなよ うに、従来の製造方法で得られたB型結晶は 満足のいく性能を有するものではなかった

 このような状況下、熱安定性の乏しい2,3, 6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1 和物のB型結晶から、少なくとも当該1水和 のA型結晶に匹敵する熱安定性を有するもの の改良、すなわち熱安定性が良好な2,3,6,7,10 ,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和 が望まれると共に、当該化合物の製造方法 確立が望まれていた。

特開平7-330650号公報

特開平8-119894号公報

特開平9-118642号公報

WO2005/090275号公報 Synthesis, 477, 1994 J. Mater. Chem., 1992, 2, 1261

 本発明は、上記した如き状況に鑑み成さ たもので、安価な原料を用いることができ ばかりでなく、脱アルキル化などの脱保護 還元等の煩雑な工程を必要としない工業的 産に有利な、純度の高いヒドロキシトリフ ニレン類の製造方法を提供し、更には、ヒ ロキシトリフェニレン類の結晶の製造方法 提供することにある。

 また、本発明は、上記の製造方法によっ 得られる、熱安定性が良好な2,3,6,7,10,11-ヘ サヒドロキシトリフェニレン・1水和物の新 な2種類の結晶(以下、B’型結晶及びC型結晶 と略記する場合がある。)を提供することに る。

 本発明は、一般式(1)
(式中、2つのRは夫々独立して、水素原子、ハ ロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基又は炭素 数1~3のアルコキシ基を表す。)で示される化 物を、3価の鉄、5価のバナジウム及び6価の リブデンから選ばれる金属を含む金属酸化 並びに不揮発性の強酸の存在下で反応させ ことを特徴とする一般式(2)
(式中、6つのRは前記に同じ。)で示される化 物の製造方法の発明である。

 また、本発明は、カテコールを3価の鉄、 5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選 れる金属を含む金属酸化物並びに不揮発性 強酸の存在下で反応させて得られた2,3,6,7,10 ,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレンを、ア トンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混 溶媒から56~95℃の温度範囲でアセトンを留去 することにより得られる、2,3,6,7,10,11-ヘキサ ドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶の 発明である。

 更に、本発明は、カテコールを3価の鉄、 5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選 れる金属を含む金属酸化物並びに不揮発性 強酸の存在下で反応させて得られた2,3,6,7,10 ,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレンを、ア トンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混 溶媒に5~50℃の温度範囲で水を加えることに り得られる、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシ リフェニレン・1水和物の結晶の発明である

 更にまた、本発明は、CuKα特性X線(波長:1. 5418Å)に対するX線回折スペクトルに於いて、 そのブラッグ角(2θ±0.2°)で9.3、10.2、26.4に主 ークを有し、かつ、10.5~12.5の間にピークを さない、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリ ェニレン・1水和物の結晶の発明である。

 本発明の製造方法によれば、一般式(1)で される化合物(カテコール類)を原料とする め生産性が高いばかりでなく、また、脱ア キル化などの脱保護や還元等の煩雑な工程 必要とせず1工程で合成が可能であり、更に 、有機過酸化物等の酸化剤を使用しないた 環境負荷が少なく、より簡便に純度の高い2 ,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン を製造することが可能となる。

 また、カテコールを原料に上記の方法で られた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフ ニレンを、特定の条件で再結晶させて得ら る本発明の2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリ フェニレン・1水和物の2種類の結晶、すなわ 、B’結晶及びC型結晶は、従来の方法によ て得られたB型結晶と比較して、熱安定性に れる結晶であることから、本発明の結晶が 能性材料の原料として組み込まれた機器は 安定性(耐変性)に優れ、長期に亘って所望 性能を発揮できる。

実施例4で得られた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒ ロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結 のX線回折スペクトルを示す図である。 実施例5で得られた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒ ロキシトリフェニレン・1水和物のC型結晶 X線回折スペクトルを示す図である。 実施例4で得られた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒ ロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結 の熱分析(TG/DTA)データを示す図である。 実施例5で得られた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒ ロキシトリフェニレン・1水和物のC型結晶 熱分析(TG/DTA)データを示す図である。 比較例1で得られた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒ ロキシトリフェニレン・1水和物のB型結晶 X線回折スペクトルを示す図である。

 一般式(1)及び(2)に於けるRで示されるハロ ゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、 臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく 、その中でも塩素原子、臭素原子がより好ま しい。

 一般式(1)及び(2)に於けるRで示される炭素 数1~3のアルキル基としては、直鎖状或いは分 枝状の何れでもよく、具体的には、例えばメ チル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロ ル基等が挙げられ、中でもメチル基、エチ 基が好ましく、その中でもメチル基がより ましい。

 一般式(1)及び(2)に於けるRで示される炭素 数1~3のアルコキシ基としては、直鎖状或いは 分枝状の何れでもよく、具体的には、例えば メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、 ソプロポキシ基等が挙げられ、中でもメト シ基、エトキシ基が好ましく、その中でも トキシ基がより好ましい。

 一般式(1)及び(2)に於けるRとしては、水素 原子がより好ましい。

 本発明の製造方法に於いて、一般式(2)で される化合物は、一般式(1)で示される化合 を、一般式(1)で示される化合物に対して所 量の3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモ ブデンから選ばれる金属を含む金属酸化物 不揮発性の強酸の存在下、水及び/又は極性 溶媒中で三量化させることにより合成でき、 更には、この三量化反応後の反応液を後述す る後処理操作、いわゆる単離・精製操作を選 択すれば、2種類の一般式(2)で示される化合 の1水和物の結晶を創り分けることが可能と る。また、一般式(1)で示される化合物とし カテコールを選択し、かつ、上記の三量化 応後の反応液を後述する単離・精製操作を 択することにより、創り分けられる2,3,6,7,10 ,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和 の2種類の結晶(B’型結晶及びC型結晶)は、 れも熱安定性に優れるものである。

 本発明に於いて使用される一般式(1)で示 れる化合物、すなわちカテコール類は、市 のものを用いるか、常法により合成したも を適宜用いればよく、本発明に於いては、 に、一般式(1)で示される化合物として、一 式(1)に於ける2つのRが共に水素原子である カテコールを用いることが好ましい。また カテコールを用いて合成される一般式(2)で される化合物は、一般式(2)に於ける6つのRが 全て水素原子である2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロ シトリフェニレンである。すなわち、本発 は、安価なカテコールを原料として、機能 材料の原料として有用な2,3,6,7,10,11-ヘキサ ドロキシトリフェニレンを高純度で合成す 方法として、特に好ましい製造方法である

 本発明に於ける3価の鉄、5価のバナジウ 及び6価のモリブデンから選ばれる金属を含 金属酸化物としては、構造中に3価の鉄、5 のバナジウム又は6価のモリブデンを含み、 化作用を有するこれらの金属の金属酸化物 あれば特に限定されないが、具体的には、 えば三酸化二鉄(酸化第二鉄)、四酸化三鉄 五酸化二バナジウム、三酸化モリブデン等 挙げられ、中でも三酸化二鉄(酸化第二鉄)が 好ましい。これらの金属酸化物は、夫々単独 又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、 属酸化物の使用量としては、一般式(1)で示 れる化合物のモル数に対する3価の鉄、5価の バナジウム又は6価のモリブデンのモル当量 して、通常1.0~10当量、好ましくは1.6~4当量で ある。1.0当量未満の場合には、目的とする一 般式(2)で示される化合物の収率が低下し、一 方、10当量を越える量のこれらの金属酸化物 使用することも可能であるが、経済性が損 われる等の問題が生じる。

 このように、本発明に於いて、3価の鉄、 5価のバナジウム及び6価のモリブデンから選 れる金属を含む金属酸化物を酸化剤として いることにより、目的とする一般式(2)で示 れる化合物を収率良く、かつ、高純度で合 できることを見出し、更に上記の製造方法 後述する後処理操作(単離・精製操作)を組 合わせることにより、熱安定性が良好な一 式(2)で示される化合物の1水和物の結晶を製 できることを見出した。

 また、本発明に於ける不揮発性の強酸と ては、上記の3価の鉄、5価のバナジウム及 6価のモリブデンから選ばれる金属を含む金 酸化物を溶解することができ、反応中に濃 変化を引き起こさない不揮発性の強酸であ ばよく、具体的には、例えば硫酸、硝酸、 ン酸等の無機酸が挙げられ、中でも硫酸が ましい。これらの不揮発性の強酸は、夫々 独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい が、原料である一般式(1)で示される化合物及 び目的とする一般式(2)で示される化合物に対 して、悪影響を及ぼさない不揮発性の強酸の 組み合わせを選択する必要がある。また、不 揮発性の強酸の使用量としては、3価の鉄、5 のバナジウム及び6価のモリブデンから選ば れる金属を含む金属酸化物を溶解できる量以 上であればよく、具体的には、例えば3価の 、5価のバナジウム及び6価のモリブデンから 選ばれる金属を含む金属酸化物に於ける3価 鉄、5価のバナジウム又は6価のモリブデンの モル数に対する不揮発性の強酸に於ける水素 イオンのモル当量として、通常5~60当量、好 しくは6~40当量である。

 反応溶媒としては、上でも少し述べたよ に、水及び/又は極性溶媒が使用でき、ここ で言う極性溶媒としては、原料である一般式 (1)で示される化合物を溶解できる極性溶媒で あって、還元作用を示さないものであれば何 れでもよく、具体的には、例えばアセトニト リル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジ メチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶 媒が挙げられ、中でもジメチルホルムアミド 、ジメチルスルホキシドが好ましい。これら の反応溶媒は夫々単独又は2種以上を組み合 せて用いてもよく、中でも水を単独で使用 るのが好ましい。また、これらの反応溶媒 使用量は、原料である一般式(1)で示される 合物を溶解できる量以上であって、反応系 の不揮発性の強酸の重量パーセント濃度の が適切な濃度となるように、適宜その使用 を設定すればよく、具体的には、例えば一 式(1)で示される化合物のモル数に対する水 び/又は極性溶媒のモル当量として、通常6~12 0当量、好ましくは10~60当量である。

 本発明に於いては、反応系内の不揮発性 強酸の重量パーセント濃度の値によって、 応時間及び目的とする一般式(2)で示される 合物の収率が変動するため、適切な濃度で 応を実施することが望ましい。反応系内の 揮発性の強酸の重量パーセント濃度の適切 値は、不揮発性の強酸の種類及びその使用 、反応溶媒の種類及びその使用量等によっ 変動するので、一義的に定義することは難 いが、具体的には、例えば反応系内の不揮 性の強酸の重量パーセントとしては、通常5 0~95%、好ましくは60~90%、より好ましくは70~85% 範囲である。中でも、当該不揮発性の強酸 硫酸である場合の重量パーセント濃度は、 ましくは60~90%、より好ましくは70~85%の範囲 あり、特に、70~85%の範囲で実施すれば、目 とする一般式(2)で示される化合物の分解等 殆ど生起させることなく、短時間で収率良 目的とする一般式(2)で示される化合物を合 できる。尚、不揮発性の強酸は、上記の重 パーセント濃度の範囲の市販品をそのまま 用してもよいし、希釈したものを適宜用い もよい。

 反応温度としては、一般式(1)で示される 合物を効率良く三量化できる温度を選択す ことが望ましく、具体的には、通常0~50℃、 好ましくは20~45℃、より好ましくは25~40℃の 囲に設定される。特に、25~40℃の範囲で実施 すれば、目的とする一般式(2)で示される化合 物の分解等を殆ど生起させることなく、短時 間で収率良く目的とする一般式(2)で示される 化合物を合成できる。

 本発明の製造方法に於いて、反応は常圧 加圧、減圧下の何れの圧力下でも進行する 、特別な設備を必要としない常圧条件下が ましい。

 反応時間は、一般式(1)で示される化合物 対する3価の鉄、5価のバナジウム及び6価の リブデンから選ばれる金属を含む金属酸化 中の3価の鉄、5価のバナジウム又は6価のモ ブデンのモル当量数、不揮発性の強酸の種 及びその使用量、反応溶媒の種類及びその 用量、反応系内の不揮発性の強酸の重量パ セント濃度の値、反応温度等により変動す 場合があるので、一概には言えないが、通 0.5~20時間、好ましくは2~12時間の範囲に設定 される。

 本発明に於いて、反応終了後の反応液か 、目的とする一般式(2)で示される化合物を 製する方法としては、以下に述べる操作を 用することにより、結晶を精製できるばか でなく、2種類の結晶を創り分けることがで きる。具体的には、本発明の製造方法によっ て得られた一般式(2)で示される化合物を(a)ア セトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混 合溶媒から適切な温度範囲でアセトンを留去 して、一般式(2)で示される化合物の結晶を析 出させるか、或いは本発明の製造方法によっ て得られた一般式(2)で示される化合物を(b)ア セトンと水との混合溶媒に溶解させ、当該混 合溶媒に適切な温度範囲で水を加えて、一般 式(2)で示される化合物の結晶を析出させるこ とにより、2種類の異なる結晶を創り分ける とができる。すなわち、本発明の製造方法 、更に上記の結晶の析出方法を組み合わせ ことにより、熱安定性に優れる2種類の異な 結晶を創り分けることができる。また、こ でいう特定の操作により目的とする結晶を る際に用いられる、本発明の製造方法によ て得られた一般式(2)で示される化合物は、 発明の製造方法による反応終了後の反応液 ら、常法により取り出したものでも、粗結 のものであってもよい。より具体的には、 えば、反応終了後の反応液を水中に投入す か、或いは該反応液に水を投入し、生じた 殿物をろ取することにより、粗結晶を得る とができるので、これを用いてもよいし、 該粗結晶を、更に水等で洗浄したものでも いし、更にカラムクロマトグラフィー等で 製したものであってもよい。

 上記(a)法のより具体的な結晶の析出方法 しては、例えば本発明の製造方法によって られた一般式(2)で示される化合物が、上記 方法によって得られた粗結晶である場合に 、当該粗結晶をアセトンに分散させた後、 の分散液を室温で攪拌、次いでこれをろ過 て不溶物をろ別し、ろ液に活性炭を加えて 温で攪拌後、活性炭をろ別する。このよう 処理をすることにより得られたろ液に対し 、所定量の水を加えてアセトンと水との混 溶液とし、これを常圧下、適切な温度範囲 アセトンを留去することにより析出した結 をろ取、乾燥することで、結晶を析出(結晶 化)させることができる。尚、上述したよう 粗結晶を更にカラムクロマトグラフィー等 精製したものを結晶化させる場合には、ア トンによる分散処理や活性炭処理を行わな てもよい。

 上記アセトンと水との混合溶媒に於ける セトンの使用量としては、一般式(2)で示さ る化合物をすべて溶解できる量を用いれば く、より具体的には、例えば結晶化の対象 なる本発明の製造方法によって得られた一 式(2)で示される化合物1gに対して、通常2mL 上、好ましくは3~100mL、より好ましくは5~60mL 度である。例えば上述したような活性炭処 を行った際に、過剰量のアセトンを用いた 合には、活性炭処理後のろ液に水を加える にアセトンを留去して、アセトンの使用量 上記の範囲に設定することが望ましい。

 上記アセトンと水との混合溶媒に於ける の使用量としては、該水の添加の段階では セトンに溶解している一般式(2)で示される 合物が析出してこない程度の量であって、 アセトンと水との混合溶媒中のアセトンの 去に伴って結晶が析出してくる量を用いれ よく、より具体的には、例えば該アセトン 水との混合溶媒中のアセトン100mLに対する の混合割合が、通常10~500mL、好ましくは30~300 mL、より好ましくは50~200mL程度であり、例え 上述したような活性炭処理後のろ液に対し 水を加える場合には、アセトンと水との混 割合を上記した範囲となるように加える水 量を調節することが望ましい。

 本発明の(a)法では、結晶を得る際にアセ ンの留去を行うが、この留去は常圧下で行 れる。そのため、上記アセトンと水との混 溶媒からアセトンを留去する際の温度とし は、通常56℃以上、好ましくは56~95℃の範囲 に設定される。(a)法の析出方法に於いては、 目的とする結晶形の結晶は70℃以上で結晶化 せることが望ましく、また、一般式(2)で示 れる化合物はアセトンに溶解し、水に不溶 性質を有するので、当該混合溶媒からアセ ンを留去して結晶を析出させるために、常 時のアセトンの沸点にあたる56℃以上でア トンの留去を開始しつつ、70℃以上で結晶化 させるが、実際には70~80℃の温度範囲で結晶 が完了する。尚、70℃以上で結晶化ができ ば、通常70℃以上、好ましくは70~80℃の範囲 アセトンの留去を行ってもよい。

 上でも少し述べたが、このようにして析 してきた結晶は、常法により単離すればよ 、具体的には、例えば吸引ろ過等のろ過手 によって結晶をろ取し、ろ取した結晶を減 乾燥させることにより、目的の結晶形の結 を得ることができる。

 一方、上記(b)法のより具体的な結晶の析 方法(精製方法)としては、例えば本発明の 造方法によって得られた一般式(2)で示され 化合物が、上述した方法によって得られた 結晶である場合には、当該粗結晶をアセト に分散させた後、その分散液を室温で攪拌 次いでこれをろ過して不溶物をろ別し、ろ に活性炭を加えて室温で攪拌後、活性炭を 別する。このような処理をすることにより られたろ液を一度、減圧下で濃縮すること よりアセトンを留去して蒸発乾固させ、得 れた残渣に所定量のアセトンと水とを加え アセトンと水との混合溶媒に対して、適切 温度範囲で水を加えることにより析出した 晶をろ取、乾燥させることで、結晶を析出( 晶化)させることができる。尚、上述したよ うな粗結晶を更にカラムクロマトグラフィー 等で精製したものを結晶化させる場合には、 アセトンによる分散処理や活性炭処理を行わ なくてもよい。

 上記アセトンと水との混合溶媒に於ける セトンの使用量としては、一般式(2)で示さ る化合物をすべて溶解できる量を用いれば く、より具体的には、例えば結晶化の対象 なる本発明の製造方法によって得られた一 式(2)で示される化合物1gに対して、通常1~30m L、好ましくは1.5~20mL、より好ましくは2~10mL程 度であるが、効率的に結晶を析出させるため には、できるだけ少量のアセトンを使用して 、一般式(2)で示される化合物を溶解させるこ とが望ましい。

 上記アセトンと水との混合溶媒に於ける の使用量としては、アセトンに溶解してい 一般式(2)で示される化合物が析出してこな 程度の量を用いればよく、より具体的には 例えば該アセトンと水との混合溶媒中のア トン100mLに対する水の混合割合が、通常5~100 mL、好ましくは10~90mL、より好ましくは20~80mL 度である。このように、アセトンに対して 当量の水を添加して、アセトンと水との混 溶媒とすることで、一般式(2)で示される化 物を効果的に溶解させることができる。

 上記アセトンと水との混合溶媒に対して 加される水の量としては、該水の添加によ て、アセトンと水との混合溶媒に溶解して る一般式(2)で示される化合物が析出してく 程度の量を用いればよく、より具体的には 例えば該アセトンと水との混合溶媒中のア トン100mLに対する水の添加割合が、通常200~2 000mL、好ましくは250~1500mL、より好ましくは300 ~1200mL程度である。

 上記アセトンと水との混合溶媒に水を添 する際の温度としては、目的とする結晶形 結晶が析出する温度を設定することが必要 あり、具体的には、通常5~50℃、好ましくは 10~35℃の範囲に設定される。(b)法の析出方法 於いては、目的とする結晶形の結晶は50℃ 下で結晶化させることが望ましく、また、 般式(2)で示される化合物はアセトンに溶解 、水に不溶な性質を有するので、当該混合 媒に水を加えて結晶を析出させるために、50 ℃に保持した溶液を徐々に冷却しつつ、5℃ 保持される間に結晶化させるが、中でも10~35 ℃の温度範囲で結晶化を完了させることが好 ましい。

 上でも少し述べたが、このようにして析 してきた結晶は、常法により単離すればよ 、具体的には、例えば吸引ろ過等のろ過手 によって結晶をろ取し、ろ取した結晶を減 乾燥させることにより、目的の結晶形の結 を得ることができる。

 このように、本発明の製造方法に、更に で述べた結晶の析出方法(結晶化方法)を組 合わせることにより、結晶形状が異なる2種 の結晶を製造することができ、粗結晶を結 化させる場合には、この方法により精製も 時に行うことができる。

 尚、単離・精製操作に於いて、得られる 般式(2)で示される化合物の結晶形を考慮し い場合には、従来公知の何れの単離・精製 作を採用してもよく、より具体的には、例 ば反応液を水中に投入、或いは反応液に水 投入し、生じた沈殿物をろ取した後、ろ取 た粗結晶を水で洗浄する。次いで、その粗 晶を水と適当な極性溶媒との混合溶媒に分 させた後、その分散液を所定の温度まで加 しながら攪拌し、これを同温度で熱時ろ過 た後、ろ液を濃縮し、析出した結晶をろ取 ることにより、効率良く精製することがで る。

 上記の単離・精製操作に於いて、粗結晶 分散の際に用いられる極性溶媒としては、 えばアセトニトリル、アセトン等の非プロ ン性極性溶媒が挙げられる。また、熱時ろ の際には、例えば珪藻土、活性炭等のろ過 剤を併用してもよい。

 このように、本発明の製造方法に於いて 、上述した何れの単離・精製操作を実施し も、反応に使用した鉄等の金属も含めて除 できる。更に、本発明によれば、反応に有 過酸化物等の酸化剤を使用しないため、後 理操作として過剰の有機過酸化物を除去す ための還元、分液・抽出等の煩雑な工程を 要とせず、簡便な操作で、目的とする一般 (2)で示される化合物が単離・精製できる。

 また、本発明の製造方法に於いて、一般 (1)で示される化合物としてカテコールを用 ることによって得られる2,3,6,7,10,11-ヘキサ ドロキシトリフェニレンを、上述の(a)法及 (b)法の何れかの結晶化方法を採用すること より、熱安定性が良好な2,3,6,7,10,11-ヘキサヒ ドロキシトリフェニレン・1水和物の結晶を 造することができる。より具体的には、本 明の製造方法によって得られた2,3,6,7,10,11-ヘ キサヒドロキシトリフェニレンを、上記(a)法 で結晶を析出させれば、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒ ロキシトリフェニレン・1水和物のB’型結 を製造することができ、上記(b)法で結晶を 出させれば、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシト リフェニレン・1水和物のC型結晶を製造する とができ、なおかつ、上記(a)法及び(b)法で られる該1水和物のB’型結晶及びC型結晶は 何れも熱安定性に優れるものである。

 すなわち、本発明者らは、本発明の製造 法によって得られた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒド キシトリフェニレンを更に特定の結晶化方 で結晶を析出させることにより、従来の製 方法によって得られた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒド ロキシトリフェニレン・1水和物のB型結晶と 較して熱安定性に優れる該1水和物のB’結 及びC型結晶が得られることを見出したので る。より具体的には、従来公知の2,3,6,7,10,11 -ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物 B型結晶は熱安定性に劣るが、本発明の製造 方法に更に特定の結晶化方法、いわゆる特定 の再結晶方法を組み合わせる方法によって得 られる該1水和物の結晶は熱安定性に優れて ることを初めて明らかにしたのである。ま 、本発明者らは、更に研究を重ねた結果、 安定性に優れる2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシ トリフェニレン・1水和物のC型結晶が新規な のであることも見出したのである。このよ に、本発明は斯かる知見に基づいて完成さ たものである。

 本発明の方法(結晶化方法)によって得ら る2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレ ンのB’型結晶は、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキ シトリフェニレンの1水和物からなっており カールフィッシャー法により該B’型結晶は 1水和物であることを同定している。

 また、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリ ェニレン・1水和物のB’型結晶は、CuKα特性X 線(波長:1.5418Å)に対するX線回折スペクトル 於いて、そのブラッグ角(2θ±0.2°)で11.4、17.2 、22.6、26.1、27.7に主ピークを有するもので、 例えば特許文献4に記載の2,3,6,7,10,11-ヘキサヒ ドロキシトリフェニレン・1水和物のB型結晶 X線データと類似する。しかしながら、本発 明に係る該B’型結晶は、従来公知のB型結晶 比較して熱安定性に優れており、また、従 公知のB型結晶は約162℃に熱分解温度(Td)を するが、本発明に係る該B’型結晶には熱分 温度(Td)がないことからして、詳細は明らか ではないが、本発明に係る該B’型結晶は、 来公知のB型結晶とは異なる物性値に起因す 構造を有する化合物であることが示唆され 。

 本発明の方法(結晶化方法)によって得ら る2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレ ンのC型結晶は、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシ トリフェニレンの1水和物からなっており、 ールフィッシャー法により該C型結晶は、1水 和物であることを同定している。

 また、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリ ェニレン・1水和物のC型結晶は、CuKα特性X線 (波長:1.5418Å)に対するX線回折スペクトルに いて、そのブラッグ角(2θ±0.2°)で9.3、10.2、2 6.4に主ピークを有し、かつ、10.5~12.5の間にピ ークを有さない(言い換えれば、「この範囲 チャートからピークを明確に同定できない という意味である。)もので、該C型結晶を熱 分析(TG/DTA)したところ、140℃に熱分解温度(Td) を有する新規な結晶で、該C型結晶は、従来 知のB型結晶と比較して熱安定性に優れるも である。

 以下、実施例に基づいて本発明を具体的 説明するが、本発明はこれらの例によって ら限定されるものではない。

 実施例1 カテコールを出発原料とし、3価の 鉄を含む金属酸化物として三酸化二鉄(酸化 二鉄)を用いた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシ リフェニレンの合成
 水110mL中に、カテコール22.0g(0.2モル)及び三 化二鉄(酸化第二鉄)31.9g(0.2モル)を加え、そ 溶液に98%硫酸440g(4.4モル)を、溶液の温度が3 0℃以下となるように滴下し、反応系内の硫 の重量パーセント濃度が80%、30℃で6時間攪 して反応させた。反応終了後、反応液に水50 0mLを滴下し、更に30分攪拌した。そこで生じ 沈殿物をろ取し、得られた粗結晶を水で洗 後、乾燥して粗結晶19.2gを得た。この粗結 19.2gのうちの、5.0gを水50mLとアセトニトリル2 00mLとの混合溶媒に分散させた後、その分散 を加温して1時間攪拌した。次いで、この分 液を熱時ろ過して不溶物をろ別し、ろ液を 圧濃縮後、析出した結晶をろ取、乾燥する とにより、黒色粉体状の2,3,6,7,10,11-ヘキサ ドロキシトリフェニレン2.56gを得た(カテコ ルからの理論収率:45.5%)。得られた2,3,6,7,10,11 -ヘキサヒドロキシトリフェニレンの 1 H-NMRを測定したところ、文献記載の2,3,6,7,10,11 -ヘキサヒドロキシトリフェニレンの 1 H-NMRデータと一致した。尚、 1 H-NMRの測定結果を以下に示す。また、得られ 結晶中の鉄イオンの含量を誘導結合プラズ 発光分光分析(ICP-OES)で測定したところ、得 れた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェ レン2.56g中の鉄イオンの含量(金属鉄からの 算量)は、0.087mg(0.034mg/g)であった。尚、誘導 合プラズマ発光分光分析による鉄イオン含 の測定は、誘導結合プラズマ発光分光分析 置SPS3100(エスアイアイ・ナノテクノロジー 式会社製)を用いて、予め適当量の金属鉄をn -メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解したものを測 定して、その測定結果に基づいた検量線を作 成しておき、当該検量線から2,3,6,7,10,11-ヘキ ヒドロキシトリフェニレン中に含まれる鉄 オンの含量を測定した。
1 H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):7.61(s,Ar),9.27(s,OH)

 実施例2 カテコールを出発原料とし、5価の バナジウムを含む金属酸化物として五酸化二 バナジウム(酸化バナジウム(V))を用いた2,3,6,7 ,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレンの合
 水110mL中に、カテコール22.0g(0.2モル)及び五 化二バナジウム(酸化バナジウム(V))36.4g(0.2 ル)を加え、その溶液に98%硫酸440g(4.4モル)を 溶液の温度が30℃以下となるように滴下し 反応系内の硫酸の重量パーセント濃度が80% 30℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了 、反応液に水500mLを、溶液の温度が30℃以下 なるように滴下し、同温度で更に30分攪拌 た。そこで生じた沈殿物をろ取し、得られ 粗結晶を水で洗浄後、その粗結晶を更に水1L に分散させ、その分散液を30分間攪拌し、次 でこの分散液をろ過して結晶をろ取した。 のろ取した結晶をアセトン400mLに分散させ 後、その分散液を30分間攪拌した。次いで、 この分散液をろ過して不溶物をろ別し、ろ液 を減圧濃縮して過剰量のアセトンを留去した 後、そのろ液(約160mLの溶液)に水160mLを投入し た。この溶液を常圧下で56℃から徐々に昇温 せて濃縮し、濃縮温度が70~80℃で結晶が析 し、更に濃縮を続け、濃縮温度が90℃となっ たところで濃縮を終了した。このようにして 析出した結晶をろ取、乾燥することにより、 黒色粉体状の2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシト フェニレン7.27gを得た(カテコールからの理 収率:33.6%)。尚、得られた黒色粉体状物が2,3 ,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレンで ることは、実施例1と同様に 1 H-NMRを測定することにより確認した。

 実施例3 カテコールを出発原料とし、6価の モリブデンを含む金属酸化物として三酸化モ リブデン(酸化モリブデン(VI))を用いた2,3,6,7,1 0,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレンの合成
 水110mL中に、カテコール22.0g(0.2モル)及び三 化モリブデン(酸化モリブデン(VI))57.54g(0.4モ ル)を加え、その溶液に98%硫酸440g(4.4モル)を 溶液の温度が30℃以下となるように滴下し、 反応系内の硫酸の重量パーセント濃度が80%、 30℃で6時間攪拌して反応させた。6時間反応 の反応率は18.0%であった。尚、当該反応率は 、6時間反応後の溶液の一部を抜き取り、そ 溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で 定して求めた。また、高速液体クロマトグ フィー(HPLC)で検出されるピークが2,3,6,7,10,11- ヘキサヒドロキシトリフェニレンであること は、従来法で得られた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒド キシトリフェニレンとのピークと一致する とにより確認した。すなわち、実施例3で得 られた化合物のHPLCに於ける保持時間が、従 法で得られた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシト リフェニレンのHPLCに於ける保持時間と一致 ることにより、実施例3で得られた化合物が2 ,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン あることを同定した。尚、高速液体クロマ グラフィー(HPLC)による同定は、インテリジ ントHPLCポンプPU-980型、インテリジェントUV/V IS検出器UV-970型(日本分光株式会社製)を用い カラム:Wakosil-II 5C-18 4.6mm×150mm(和光純薬工 株式会社製)、溶離液:アセトニトリル/水/リ 酸/トリエチルアミン=200mL/800mL/2mL/2mL、測定 長:275nmで同定した。また、上記反応率は、 記のHPLC装置等を用いて、予め適当量の2,3,6, 7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレンを上 溶離液に溶解したものを測定してピーク面 を求め、そのピーク面積に基づいた検量線 作成しておき、反応後の溶液(反応後の溶液 の抜き取り量を反応後の溶液全量に換算)のHP LC測定によるピーク面積と当該検量線を比較 て、反応後の溶液中の2,3,6,7,10,11-ヘキサヒ ロキシトリフェニレンの存在量を求め、当 反応率を算出した。

 実施例4 カテコールを出発原料とし、3価の 鉄を含む金属酸化物として三酸化二鉄(酸化 二鉄)を用いた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシ リフェニレン・1水和物のB’結晶の合成
 水44mL中に、カテコール22.0g(0.2モル)及び三 化二鉄(酸化第二鉄)31.9g(0.2モル)を加え、そ 溶液に98%硫酸176g(1.76モル)を、溶液の温度が3 0℃以下となるように滴下し、反応系内の硫 の重量パーセント濃度が80%、30℃で6時間攪 して反応させた。反応終了後、反応液に水20 0mLを、溶液の温度が30℃以下となるように滴 し、更に同温度で30分攪拌した。そこで生 た沈殿物をろ取し、得られた粗結晶を水で 浄後、その粗結晶を更に水400mLに分散させ、 その分散液を30分間攪拌し、次いでこの分散 をろ過して結晶をろ取した。このろ取した 晶をアセトン400mLに分散させた後、その分 液を30分間攪拌した。次いで、この分散液を ろ過して不溶物をろ別し、ろ液に活性炭10.81g を加えて30分間攪拌した。攪拌後、ろ液を減 濃縮して過剰量のアセトンを留去した後、 のろ液(約160mLの溶液)に水160mLを投入した。 の溶液を常圧下で56℃から徐々に昇温させ 濃縮し、濃縮温度が70~80℃で結晶が析出し、 更に濃縮を続け、濃縮温度が90℃となったと ろで濃縮を終了した。このようにして析出 た結晶をろ取、乾燥することにより、黄黒 粉末状の2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリ ェニレン・1水和物のB’型結晶9.32gを得た(カ テコールからの理論収率:40.8%)。尚、得られ 該B’型結晶の含水率をカールフィッシャー 定装置(三菱化学株式会社製水分測定装置KF- 200)を用いて測定したところ、5,5%であった。 方、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェ レン・1水和物の分子量は342.30(C 18 H 12 O 6 ・H 2 O)であり、水の分子量は18.02であるので、2,3,6 ,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1 和物の理論含水率は5.26%であることから、得 られた該B’型結晶は2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロ キシトリフェニレンの1水和物であることを 認した。

 実施例5 カテコールを出発原料とし、3価の 鉄を含む金属酸化物として三酸化二鉄(酸化 二鉄)を用いた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシ リフェニレン・1水和物のC結晶の合成
 水44mL中に、カテコール22.0g(0.2モル)及び三 化二鉄(酸化第二鉄)31.9g(0.2モル)を加え、そ 溶液に98%硫酸176g(1.76モル)を、溶液の温度が3 0℃以下となるように滴下し、反応系内の硫 の重量パーセント濃度が80%、30℃で6時間攪 して反応させた。反応終了後、反応液に水20 0mLを、溶液の温度が30℃以下となるように滴 し、更に同温度で30分攪拌した。そこで生 た沈殿物をろ取し、得られた粗結晶を水で 浄後、その粗結晶を更に水400mLに分散させ、 その分散液を30分間攪拌し、次いでこの分散 をろ過して結晶をろ取した。このろ取した 晶をアセトン400mLに分散させた後、その分 液を30分間攪拌した。次いで、この分散液を ろ過して不溶物をろ別し、ろ液に活性炭10.81g を加えて30分間攪拌した。攪拌後、ろ液を減 濃縮し、アセトンを留去して蒸発・乾固さ た。蒸発・乾固後の残渣に室温でアセトン4 0mL及び水20mLを加えて残渣を溶解させた後、 温度で水380mLを徐々に滴下し、滴下後の溶液 を10℃まで冷却することにより結晶が析出し 。このようにして析出した結晶をろ取、乾 することにより、赤紫色粉末状の2,3,6,7,10,11 -ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物 C型結晶8.43gを得た(カテコールからの理論収 率:36.9%)。尚、得られたC型結晶の含水率を実 例4と同様にカールフィッシャー法により求 めたところ、該C型結晶は、2,3,6,7,10,11-ヘキサ ヒドロキシトリフェニレンの1水和物である とを確認した。

 実施例6 実施例4及び5で得られた2,3,6,7,10,11- ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物 B’型結晶及びC型結晶のX線粉末回折スペク ルの測定
 得られた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリ ェニレン・1水和物のB’型結晶及びC型結晶 X線粉末回折スペクトルの測定は、株式会社 ガク製RINT2000/PCを用いて行い、モノクロメ ターを通したλ=1.5418Åの銅放射線でX線回折 ペクトルを得た。該B’型結晶の測定結果を 図1に、該C型結晶の測定結果を図2に示すと共 に、これらの主なピーク値を表1(該B’型結晶 のピークデータ)及び表2(該C型結晶のピーク ータ)に示す。

 実施例7 実施例4及び5で得られた2,3,6,7,10,11- ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1水和物 B’型結晶及びC型結晶の熱分析(TG/DTA)の測定
 得られた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリ ェニレン・1水和物のB’型結晶及びC型結晶 熱分析(TG/DTA)の測定は、ブルガー・エイエッ クス株式会社製熱分析装置TAPS3000Sを用い、測 定温度範囲:30~500℃、昇温速度:10℃/分、キャ アーガス:アルゴン(100mL/分)で、アルミニウ 製浅皿に測定する結晶約10mgを量り取り、測 定装置のサンプル皿上に置き、上記の測定条 件にて行った。尚、リファレンスはαAl 2 O 3 約10mgとした。測定の結果、2,3,6,7,10,11-ヘキサ ヒドロキシトリフェニレン・1水和物のB’型 晶では、熱分解温度(Td)が見られず、また、 該C型結晶の熱分解温度(Td)は、140℃であった 該B’型結晶の熱分析の測定結果を図3に、 C型結晶の熱分析の測定結果を図4に示す。

 比較例1 従来法による2,3,6,7,10,11-ヘキサヒ ロキシトリフェニレン・1水和物のB型結晶の 合成
 非特許文献1(Synthesis, 477, 1994)及び特許文献 2(特開平8-119894号公報)に記載されている方法 従って、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリ ェニレン・1水和物のB型結晶を合成した。す なわち、1,2-ジメトキシベンゼン31.78g(0.23モル )及び無水塩化第二鉄120g(0.74モル)を70%硫酸に 解して25℃で24時間攪拌して反応させた。反 応終了後、その溶液を氷水500gに投入し、析 した結晶をろ取した。得られた結晶を水1Lで 洗浄後、乾燥させることにより、薄紫色の2,3 ,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン28.2g 得た(1,2-ジメトキシベンゼンからの理論収率 :90.1%)(非特許文献1の方法)。
 次いで、得られた2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキ トリフェニレン28.2g(0.069モル)に57%ヨウ化水 酸235.3g(1.05モル)と酢酸145mLとを加え、2時間 熱還流した。反応終了後、その溶液を室温 で冷却し、析出した結晶をろ取した。ろ取 た結晶を減圧乾燥させることにより、灰色 2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン ・1水和物のB型結晶20.2gを得た(収率:85.5%)(特 文献2の方法)。尚、得られた灰色化合物が2,3 ,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1 水和物であることは、 1 H-NMR及びカールフィッシャー測定装置による 水率を測定することにより確認した。また 該B型結晶のX線粉末回折スペクトルの測定 果を図5に示すと共に、主なピーク値を表3に 示す。尚、X線粉末回折スペクトルの測定は 実施例6と同様の方法にて行った。

 実験例1 実施例4、実施例5及び比較例1で得 れた2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェ レン・1水和物のB’型結晶、C型結晶及びB型 晶の熱安定性試験
 実施例4、実施例5及び比較例1で得られた2,3, 6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1 和物のB’型結晶、C型結晶及びB型結晶の夫 50mgを、全量が100mLとなるようにメタノール 溶解させ、結晶のメタノール溶液を各々調 した。このメタノール溶液を石英セルに入 、メタノールをリファレンスとして可視紫 分光分析を行った。可視紫外分光分析によ 測定は、可視紫外分光分析装置として株式 社島津製作所製紫外可視分光光度計UV-2550を 用い、また、光路長が10mmの石英セルを使用 て、360nm及び520nmに於ける吸光度を測定した
 また、測定に用いた夫々の石英セルを、60 の恒温槽中で所定日数の間放置し、所定日 の間放置した当該石英セルについて、上記 同様にして、360nm及び520nmに於ける吸光度を 定した。その結果を表4に示す。

 表4の結果から、実施例4及び5で得られた2 ,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン 1水和物のB’型結晶及びC型結晶は、60℃で21 間放置しても360nm及び520nmの吸光度の何れに 於いても数値の変化がほとんど見られなかっ たことから、これらの結晶は、60℃に於いて 殆ど変化せず、熱安定性に優れる結晶であ ことが分かる。一方、比較例1で得られた従 来公知の2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフ ニレン・1水和物のB型結晶は、60℃で21日間 置すると360nm及び520nmの吸光度の何れに於い ても数値が上昇しており、目視観察でも当該 メタノール溶液が日を追うごとに著しく着色 していることから、このB型結晶は、60℃に於 いて何らかの変化を引き起こす、熱安定性に 乏しい結晶であることが分かる。尚、実施例 1に於ける鉄イオンの含量測定の結果から明 かなように、本発明の製造方法によって得 れる2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニ レン中に鉄等の金属酸化物が殆ど含まれてい ないことも、該1水和物の結晶の熱安定性に 与しているものと考えられる。

 このように、実施例1~3の結果から、反応 、3価の鉄、5価のバナジウム及び6価のモリ デンから選ばれる金属を含む金属酸化物並 に不揮発性の強酸の存在下で実施すること より、再結晶等の簡便な操作で、収率良く 純度の目的とする一般式(2)で示される化合 を単離・精製できることが分かる。従来の 術にあるように、塩化鉄(III)を用いた場合 は、一般式(2)で示される化合物の鉄錯体及 /又はキノン体を還元するための還元工程を 要とするが、反応に所定の金属の金属酸化 を用いる本発明の製造方法では、還元工程 必要とせず、通常の再結晶等の簡便な操作 単離・精製できることから、反応に於いて 一般式(2)で示される化合物の鉄錯体及び/又 はキノン体は、生成していない、或いはその 生成が、著しく抑えられているものと考えら れる。更に、本発明の製造方法は、実施例1 於ける鉄イオンの含量測定の結果から明ら なように、通常の再結晶等の簡便な単離・ 製操作で、反応に使用した鉄等の金属も含 てその大部分が効率良く除去できる方法で るので、鉄等の金属(酸化物)を除去するため の特別な工程を必要としない優れた方法であ る。また、本発明の製造方法は、有機過酸化 物等の酸化剤を併用する必要もないため、環 境負荷が少なく、過剰の過酸化物を除去する ための還元、分液・抽出等の煩雑な工程も必 要としない、工業的規模の生産に有利な方法 である。

 更に、実施例4~7及び実験例1の結果から、 本発明の製造方法に更に所定の結晶の析出方 法(結晶化方法)を組み合わせることによって られる結晶は、従来公知のB型結晶に比較し て熱安定性に優れる結晶である。すなわち、 実施例6及び比較例1の結果から明らかなよう 、実施例4で得られる2,3,6,7,10,11-ヘキサヒド キシトリフェニレン・1水和物のB’型結晶 、比較例1で得られる2,3,6,7,10,11-ヘキサヒド キシトリフェニレン・1水和物のB型結晶と類 似するX線粉末回折スペクトルを有するもの あるが、実施例7の結果から明らかなように 該B’型結晶は、公知のB型結晶にあるよう 熱分解温度(Td)を持たず、更に実験例1の結果 から明らかなように、従来公知のB型結晶と 異なり、優れた熱安定性を有することから 本発明に係る2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシト リフェニレン・1水和物のB’型結晶は、従来 知のB型結晶とは異なる構造を有する化合物 であることが示唆されるのである。一方、本 発明に係る2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリ ェニレン・1水和物のC型結晶は、従来公知 2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン ・1水和物の結晶にはない、X線粉末回折スペ トル及び熱分解温度(Td)を有する新規な結晶 であり、当該結晶は熱安定性に優れる結晶で ある。このように、本発明の製造方法に、更 に特定の結晶の析出方法(結晶化方法)とを組 合わせて得られる2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロ シトリフェニレン・1水和物のB’型結晶とC 結晶は、熱安定性に優れる結晶であること ら、本発明の結晶が機能性材料の原料とし 組み込まれた機器は、安定性(耐変性)に優れ 、長期に亘って所望の性能を維持できる。

 本発明の製造方法は、例えばディスコチ ク液晶等の機能性材料の原料として有用な ドロキシトリフェニレン類の工業的生産等 可能にするものである。また、本発明の2,3, 6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン・1 和物の新規な結晶は、熱安定性に優れるこ から、例えば当該結晶を機器への機能性材 の原料として用いれば、当該機器の所望の 能を長期に亘って維持することを可能にす ものである。