Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
PROCESS FOR PRODUCTION OF POLYPHENYLENE SULFIDE RESIN
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/060524
Kind Code:
A1
Abstract:
A process for the production of polyphenylene sulfide resin, characterized by subjecting a polyphenylene sulfide resin to acid treatment and thermal oxidation successively to produce a polyphenylene sulfide resin having the following properties: (1) the quantity of gas vaporizing in heat-melting the resin under vacuum at 320°C for 2 hours is 0.3wt% or below, (2) the ash content is 0.3wt% or below as determined by ashing the resin at 550°C, (3) the residue is 4.0wt% or below as determined by dissolving the resin in 20 times as much 1-chloronaphthalene by weight at 250°C for 5 minutes and then subjecting the resulting solution to pressure filtration under heating with a PTFE membrane filter having a pore size of 1μm, and (4) the melt flow rate (as determined according to ASTM D-1238-70 at 315.5°C under a load of 5000g) exceeds 500g/10min.

Inventors:
UNOHARA TAKESHI (JP)
MAKABE YOSHIKI (JP)
NAKAMURA NAOYA (JP)
SAITOH KEI (JP)
ISHIO ATSUSHI (JP)
INOHARA MASAHIRO (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/071699
Publication Date:
May 14, 2009
Filing Date:
November 08, 2007
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
TORAY INDUSTRIES (JP)
UNOHARA TAKESHI (JP)
MAKABE YOSHIKI (JP)
NAKAMURA NAOYA (JP)
SAITOH KEI (JP)
ISHIO ATSUSHI (JP)
INOHARA MASAHIRO (JP)
International Classes:
C08G75/0213; C08G75/02; C08G75/0259
Domestic Patent References:
WO2006059509A12006-06-08
Foreign References:
JPH05320343A1993-12-03
JP2002293934A2002-10-09
JP2006012649A2006-01-12
JP2007308612A2007-11-29
Download PDF:
Claims:
ポリフェニレンスルフィド樹脂を酸処理工程で酸処理し、次いで熱酸化工程で熱酸化処理することにより、(1)真空下320℃×2時間加熱溶融した際に揮発するガス発生量が0.3重量%以下であり、かつ、(2)550℃で灰化させたときの灰分率が0.3重量%以下であり、かつ、(3)250℃で5分間、20倍重量の1-クロロナフタレンに溶解してポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残さ量が4.0重量%以下であり、かつ、(4)メルトフローレート(ASTM D-1238-70に準ず。温度315.5℃、荷重5000gにて測定)が500g/10分を越える性質を有するポリフェニレンスルフィド樹脂を製造することを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法。
酸処理工程が、酸または酸の水溶液にポリフェニレンスルフィド樹脂を浸漬させる処理であることを特徴とする、請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法。
酸処理工程が、酸または酸の水溶液にポリフェニレンスルフィド樹脂を浸漬させてpH2~8かつ80~200℃でポリフェニレンスルフィド樹脂を処理することを特徴とする、請求項1または2記載のポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法。
ポリフェニレンスルフィド樹脂を酸処理する工程の前に80~200℃で熱水処理する工程を含んでなることを特徴とする、請求項1~3いずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法。
ポリフェニレンスルフィド樹脂を熱酸化処理する工程において、酸素濃度2体積%以上の雰囲気下、160~270℃、0.5~10時間の条件でポリフェニレンスルフィド樹脂を加熱処理することを特徴とする、請求項1~4いずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法。
ポリフェニレンスルフィド樹脂がフラッシュ法で回収されたポリフェニレンスルフィド樹脂であることを特徴とする、請求項1~5いずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法。
Description:
ポリフェニレンスルフィド樹脂 製造方法

 本発明は、溶融流動性に優れ、かつ金属 有量や溶融時の揮発性成分の発生量が少な 、成形安定性、耐湿熱性に優れたポリフェ レンスルフィド樹脂の製造方法に関するも である。

 ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略す )樹脂は優れた耐熱性、バリア性、耐薬品性 電気絶縁性、耐湿熱性などエンジニアリン プラスチックとしては好適な性質を有して り、射出成形、押出成形用を中心として各 電気・電子部品、機械部品および自動車部 、フィルム、繊維などに使用されている。

 しかし、PPS樹脂はその融点が高い故に、 融加工温度が高く、そのため溶融加工時に 発性成分が発生し易い。特に、電気電子部 のように電気絶縁性が求められるPPS樹脂は 属含有量を低下させるために酸処理が行わ る。このようなPPS樹脂は、その揮発成分の 生が著しく、金型汚れや金型ベント詰まり よる成形不良を起こす場合があり、揮発成 の低減が強く望まれている。かかる揮発成 はPPS樹脂を融点以下の温度で熱処理をする とにより低減し得るが、過度な熱処理は、 融粘度の過度な上昇やゲル化物生成による 形性の悪化などの弊害をもたらす。本発明 、酸処理したPPS樹脂を特定の条件で熱酸化 理を行うことによって、金属含有量が少な 、且つかかる溶融粘度を大きく上昇させず 、揮発性成分が大きく減少する事を見い出 たものである。

 PPS樹脂を熱酸化処理することは以前より われている。例えば特許文献1にはポリマー 粘度が5000~16000ポイズ(500~1600Pa・s)(310℃、剪断 速度200/秒)の範囲内、非ニュートニアン係数n が1.5~2.1の範囲内になるようにPPS樹脂にキュ リングを施し、これを溶融押し出しして得 れる押出成形物が開示されている。しかし 5000ポイズはメルトフローレートに換算する 100g/10分未満であり、かかるPPS樹脂は溶融粘 度が高すぎるために射出成形時の流動性が著 しく悪化するため、特にフィラー含有PPS樹脂 組成物の射出成形には不向きである。また該 特許に開示されているPPS樹脂は熱酸化処理度 合いも比較的大きく、熱酸化処理度合いが大 きすぎると、ガス低減効果が飽和する反面、 溶融流動性は低下する難点がある。

 特許文献2には、重量平均分子量が30,000以 上で、かつ平均粒径が50μm以下の粒状PPS樹脂 熱酸化処理する方法が開示されている。し し、特許文献2に記載されている様に、重量 平均分子量が30,000以上で、平均粒径が50μm以 のPPS樹脂を得るには、特殊な重合装置また 粉砕が必要となり、コストもかかり一般的 方法ではない。更にかかる微細なPPS粒子は 融混練時の押出機への噛み混み性に劣り、 位時間あたりの溶融混練押し出し量が少な なるため経済的に不利益である。

 特許文献3には低酸素雰囲気下でPPS樹脂を 硬化させる方法が開示されているものの、特 定の条件下で熱酸化処理を行うことにより、 優れた溶融流動性と低揮発成分化を両立しえ ることについては何ら記載されていない。

 特許文献4には重合後のPPS樹脂をフラッシュ 回収し、130℃以上の熱水で洗浄、濾過した後 、酸性水溶液で処理する方法が開示されてい る。本方法では確かにイオン性不純物や揮発 性成分が減少するものの、実施例では乾燥PPS を窒素気流下で180℃、4時間処理しているた 揮発性成分の低減効果は小さい。

特開昭63-207827号公報(特許請求の範囲)

特開平6-248078号公報(特許請求の範囲)

特開平1-121327号公報(特許請求の範囲)

特開2002-293934号公報(特許請求の範囲、実 施例)

 本発明は、溶融流動性に優れ、かつ金属 有量や溶融時の揮発性成分の発生量が少な 、成形安定性、耐湿熱性に優れたPPS樹脂を ることを課題として検討した結果達成され ものである。

 そこで本発明者らは上記の課題を解決す く検討した結果、酸処理を施した比較的低 度のPPS樹脂を、比較的軽度に熱酸化処理す ことにより、溶融時の揮発性成分の発生量 著しく減少してかつ溶融流動性に優れ、さ には金属含有量が低減されることにより成 安定性、耐湿熱性に優れたPPS樹脂の製造方 を見出し本発明に到達した。

 すなわち本発明は、
1.ポリフェニレンスルフィド樹脂を酸処理工 で酸処理し、次いで熱酸化工程で熱酸化処 することにより、(1)真空下320℃×2時間加熱 融した際に揮発するガス発生量が0.3重量%以 下であり、かつ、(2)550℃で灰化させたときの 灰分率が0.3重量%以下であり、かつ、(3)250℃ 5分間、20倍重量の1-クロロナフタレンに溶解 してポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルタ で熱時加圧濾過した際の残さ量が4.0重量%以 下であり、かつ、(4)メルトフローレート(ASTM D-1238-70に準ず。温度315.5℃、荷重5000gにて測 )が500g/10分を越える性質を有するポリフェ レンスルフィド樹脂を製造することを特徴 するポリフェニレンスルフィド樹脂の製造 法、
2.酸処理工程が、酸または酸の水溶液にポリ ェニレンスルフィド樹脂を浸漬させる処理 あることを特徴とする、上記1記載のポリフ ェニレンスルフィド樹脂の製造方法、
3.酸処理工程が、酸または酸の水溶液にポリ ェニレンスルフィド樹脂を浸漬させてpH2~8 つ80~200℃でポリフェニレンスルフィド樹脂 処理することを特徴とする、上記1項または2 項いずれかに記載のポリフェニレンスルフィ ド樹脂の製造方法、
4.ポリフェニレンスルフィド樹脂を酸処理す 工程の前に80~200℃で熱水処理する工程を含 でなることを特徴とする、上記1項~3項いず かに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂 製造方法、
5.ポリフェニレンスルフィド樹脂を熱酸化処 する工程において、酸素濃度2体積%以上の 囲気下、160~270℃、0.5~10時間の条件でポリフ ニレンスルフィド樹脂を加熱処理すること 特徴とする上記1項~4項いずれかに記載のポ フェニレンスルフィド樹脂の製造方法、
6.ポリフェニレンスルフィド樹脂がフラッシ 法で回収されたポリフェニレンスルフィド 脂であることを特徴とする、上記1項~5項い れかに記載のポリフェニレンスルフィド樹 の製造方法、
より構成されるものである。

 本発明によれば、溶融時の揮発性成分の 生量が著しく減少してかつ溶融流動性に優 、さらには金属含有量が低減されることに り成形安定性、耐湿熱性に優れたPPS樹脂が られる。

 以下、本発明の実施の形態を詳細に説明 る。

 本発明の製造方法により得られるPPS樹脂 、下記構造式(I)で示される繰り返し単位を する重合体であり、

耐熱性の観点からは上記構造式で示される 繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更 には90モル%以上含む重合体が好ましい。また PPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度 が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構 成されていてもよい。

 本発明の製造方法により得られるPPS樹脂 、(1)真空下、320℃で2時間加熱溶融した際に 揮発するガス発生量が0.3重量%以下であり、 ましくは0.28重量%以下、さらに好ましくは0.2 2重量%以下であることが望ましい。熱酸化処 後のガス発生量が0.3重量%を上回ると、金型 や金型ベント部に付着する揮発性成分が増加 し、転写不良やガスやけが起こりやすくなる ため好ましくない。熱酸化処理後のガス発生 量の下限については特に制限しないが、ガス 発生量を低減するまで熱酸化処理する時間が 長くなると、経済的に不利であり、また、熱 酸化処理する時間の長期化により、ゲル化物 が生じ易くなり、成形不良を引き起こす一因 となり得る。

 なお、上記ガス発生量とは、PPS樹脂を真 下で加熱溶融した際に揮発するガスが、冷 されて液化または固化した付着性成分の量 意味しており、PPS樹脂を真空封入したガラ アンプルを、管状炉で加熱することにより 定されるものである。ガラスアンプルの形 としては、腹部が100mm×25mm、首部が255mm×12mm 、肉厚が1mmである。具体的な測定方法として は、PPS樹脂を真空封入したガラスアンプルの 胴部のみを320℃の管状炉に挿入して2時間加 することにより、管状炉によって加熱され いないアンプルの首部で揮発性ガスが冷却 れて付着する。この首部を切り出して秤量 た後、付着したガスをクロロホルムに溶解 て除去する。次いで、この首部を乾燥して ら再び秤量する。ガスを除去した前後のア プル首部の重量差よりガス発生量を求める

 本発明の製造方法により得られるPPS樹脂 、(2)550℃で灰化させたときの灰分率が0.3重 %以下であり、好ましくは0.2重量%以下、さ に好ましくは0.1重量%以下である。灰分率が0 .3重量%を上回ることは、PPS樹脂の金属含有量 が多いことを意味する。金属含有量が多いと 電気絶縁性が劣るだけでなく、溶融流動性の 低下、耐湿熱性の低下の原因になるため好ま しくない。

 本発明の製造方法により得られるPPS樹脂 、(3)250℃で5分間、20倍重量の1-クロロナフ レンに溶解して、ポアサイズ1μmのPTFEメンブ ランフィルターで熱時加圧濾過した際の残さ 量が4.0重量%以下である必要があり、好まし は3.5重量%以下、さらに好ましくは3.0重量%以 下であることが望ましい。残さ量が4.0重量% 上回ることは、PPS樹脂の熱酸化架橋が過度 進行し、樹脂中のゲル化物の増加を意味す 。PPS樹脂の熱酸化架橋を過度に進行させて 、揮発分低減効果は少なく、一方で溶融流 性の低下、ゲル化物による成形不良等の原 になるため好ましくない。残さ量の下限に いては特に制限しないが、1.5%以上、好まし は1.7%以上である。残さ量が1.5%を下回ると 熱酸化架橋の程度が軽微すぎるため、溶融 の揮発成分はそれほど減少せず、揮発分低 効果が小さい可能性がある。

 なお、上記残さ量は、PPS樹脂を約80μm厚 プレスフィルム化したものを試料とし、高 濾過装置および空圧キャップと採集ロート 具備したSUS試験管を用いて測定されるもの ある。具体的には、まずSUS試験管にポアサ ズ1μmのメンブランフィルターをセットした 、約80μm厚にプレスフィルム化したPPS樹脂 よび20倍重量の1-クロロナフタレンを秤量し 密閉する。これを250℃の高温濾過装置にセ トして5分間加熱振とうする。次いで空圧キ ャップに空気を含んだ注射器を接続してから 注射器のピストンを押し出し、空圧による熱 時濾過を行う。残さ量の具体的な定量方法と しては、濾過前のメンブランフィルターと濾 過後に150℃で1時間真空乾燥したメンブラン ィルターの重量差より求める。

 本発明の製造方法により得られるPPS樹脂 、(4)メルトフローレート(ASTM D-1238-70に準ず 。温度315.5℃、荷重5000gにて測定)が500g/10分を 超える範囲である必要がある。メルトフロー レートが500g/10分以下であると、特にフィラ を高充填して使用する場合にPPS樹脂組成物 溶融流動性が著しく悪化し、成形が不安定 なるため好ましくない。本発明の製造方法 より得られるPPS樹脂の溶融粘度の上限につ ては特に制限はないが、実用に耐える強度 有する樹脂(組成物)を得る観点から、1Pa・s(3 00℃、剪断速度1000/秒)以上であることが好ま い。

 本発明の製造方法により得られるPPS樹脂 上記(1)~(4)の性質をすべて満足する必要があ る。

 本発明は、PPS樹脂を酸処理し、次いで熱 化処理をすることにより、特定の性質を有 るPPS樹脂をうる方法であるが、この本発明 おいて必須の酸処理および熱酸化処理を施 前のPPS樹脂はいかなる方法で得られたもの も良く、したがって、市販されているPPS樹 を用いることもできるし、以下に述べるよ にモノマーを重合して製造することもでき 。

 以下に、本発明の必須の酸処理および熱 化処理を施す前のPPS樹脂を製造する方法を べる。 まず、使用するポリハロゲン化芳 族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分 量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内 について説明する。

 [ポリハロゲン化芳香族化合物]
 ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中 にハロゲン原子を2個以上有する化合物をい 。具体例としては、p-ジクロロベンゼン、m- クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,3,5 -トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベン ン、1,2,4,5-テトラクロロベンゼン、ヘキサク ロロベンゼン、2,5-ジクロロトルエン、2,5-ジ ロロ-p-キシレン、1,4-ジブロモベンゼン、1,4 -ジヨードベンゼン、1-メトキシ-2,5-ジクロロ ンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物 挙げられ、好ましくはp-ジクロロベンゼン 用いられる。また、異なる2種以上のポリハ ゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合 とすることも可能であるが、p-ジハロゲン 芳香族化合物を主要成分とすることが好ま い。

 ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は 加工に適した粘度のPPS樹脂を得る点から、 ルフィド化剤1モル当たり0.9から2.0モル、好 ましくは0.95から1.5モル、更に好ましくは1.005 から1.2モルの範囲が例示できる。

 [スルフィド化剤]
 スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫 物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水 が挙げられる。

 アルカリ金属硫化物の具体例としては、 えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化 リウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムお びこれら2種以上の混合物を挙げることがで き、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用い られる。これらのアルカリ金属硫化物は、水 和物または水性混合物として、あるいは無水 物の形で用いることができる。

 アルカリ金属水硫化物の具体例としては 例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム 水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫 セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙 げることができ、なかでも水硫化ナトリウム が好ましく用いられる。これらのアルカリ金 属水硫化物は、水和物または水性混合物とし て、あるいは無水物の形で用いることができ る。

 また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ 属水酸化物から、反応系においてin situで 製されるスルフィド化剤も用いることがで る。また、アルカリ金属水硫化物とアルカ 金属水酸化物からスルフィド化剤を調整し これを重合槽に移して用いることができる

 あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナト ウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水 から反応系においてin situで調製されるス フィド化剤も用いることができる。また、 酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのア カリ金属水酸化物と硫化水素からスルフィ 化剤を調整し、これを重合槽に移して用い ことができる。

 仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作 どにより重合反応開始前にスルフィド化剤 一部損失が生じる場合には、実際の仕込み から当該損失分を差し引いた残存量を意味 るものとする。

 なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ 属水酸化物および/またはアルカリ土類金属 水酸化物を併用することも可能である。アル カリ金属水酸化物の具体例としては、例えば 水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化 リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウ ムおよびこれら2種以上の混合物を好ましい のとして挙げることができ、アルカリ土類 属水酸化物の具体例としては、例えば水酸 カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸 バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化 トリウムが好ましく用いられる。

 スルフィド化剤として、アルカリ金属水 化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸 物を同時に使用することが特に好ましいが この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに 対し0.95から1.20モル、好ましくは1.00から1.15 ル、更に好ましくは1.005から1.100モルの範囲 例示できる。

 [重合溶媒]
 重合溶媒としては有機極性溶媒を用いるこ が好ましい。具体例としては、N-メチル-2- ロリドン、N-エチル-2-ピロリドンなどのN-ア キルピロリドン類、N-メチル-ε-カプロラク ムなどのカプロラクタム類、1,3-ジメチル-2- イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアセトアミ 、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチル ン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テト メチレンスルホキシドなどに代表されるア ロチック有機溶媒、およびこれらの混合物 どが挙げられ、これらはいずれも反応の安 性が高いために好ましく使用される。これ のなかでも、特にN-メチル-2-ピロリドン(以 、NMPと略記することもある)が好ましく用い られる。

 有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化 1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2 .25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モル の範囲が選択される。

 [分子量調節剤]
 生成するPPS樹脂の末端を形成させるか、あ いは重合反応や分子量を調節するなどのた に、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化 合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン 芳香族化合物と併用することができる。

 [重合助剤]
 比較的高重合度のPPS樹脂をより短時間で得 ために重合助剤を用いることも好ましい態 の一つである。ここで重合助剤とは得られ PPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物 を意味する。このような重合助剤の具体例 しては、例えば有機カルボン酸塩、水、ア カリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸 ルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、 ルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金 リン酸塩などが挙げられる。これらは単独 あっても、また2種以上を同時に用いること もできる。なかでも、有機カルボン酸塩およ び/または水が好ましく用いられる。

 上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一 式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1~20を有するア キル基、シクロアルキル基、アリール基、 ルキルアリール基またはアリールアルキル である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリ ム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれ アルカリ金属である。nは1~3の整数である。 )で表される化合物である。アルカリ金属カ ボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液 しても用いることができる。アルカリ金属 ルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢 リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム 安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリ ム、p-トルイル酸カリウム、およびそれらの 混合物などを挙げることができる。

 アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と 水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩 よび重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学 量ずつ添加して反応させることにより形成 せてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸 の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が く助剤効果が大きいが高価であり、カリウ 、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系へ 溶解性が不十分であると思われるため、安 で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸 トリウムが最も好ましく用いられる。

 これら重合助剤を用いる場合の使用量は 仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通 常0.01モル~0.7モルの範囲であり、より高い重 度を得る意味においては0.1~0.6モルの範囲が 好ましく、0.2~0.5モルの範囲がより好ましい

 また水を重合助剤として用いることは、 動性と高靭性が高度にバランスした樹脂組 物を得る上で有効な手段の一つである。そ 場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化 1モルに対し、通常0.5モル~15モルの範囲であ り、より高い重合度を得る意味においては0.6 ~10モルの範囲が好ましく、1~5モルの範囲がよ り好ましい。

 これら重合助剤の添加時期には特に指定 なく、後述する前工程時、重合開始時、重 途中のいずれの時点で添加してもよく、ま 複数回に分けて添加してもよいが、重合助 としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる 合は前工程開始時或いは重合開始時に同時 添加することが、添加が容易である点から り好ましい。また水を重合助剤として用い 場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕 んだ後、重合反応途中で添加することが効 的である。

 [重合安定剤]
 重合反応系を安定化し、副反応を防止する めに、重合安定剤を用いることもできる。 合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し 望ましくない副反応を抑制する。副反応の つの目安としては、チオフェノールの生成 挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフ ノールの生成を抑えることができる。重合 定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸 物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金 水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩 どの化合物が挙げられる。そのなかでも、 酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および 酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物 好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸 も重合安定剤として作用するので、本発明 使用する重合安定剤の一つに入る。また、 ルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物 用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を 時に使用することが特に好ましいことを前 したが、ここでスルフィド化剤に対して過 となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤 なり得る。

 これら重合安定剤は、それぞれ単独で、 るいは2種以上を組み合わせて用いることが できる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属 硫化物1モルに対して、通常0.02~0.2モル、好ま しくは0.03~0.1モル、より好ましくは0.04~0.09モ の割合で使用することが好ましい。この割 が少ないと安定化効果が不十分であり、逆 多すぎても経済的に不利益であり、ポリマ 収率が低下する傾向となる。

 重合安定剤の添加時期には特に指定はな 、後述する前工程時、重合開始時、重合途 のいずれの時点で添加してもよく、また複 回に分けて添加してもよいが、前工程開始 或いは重合開始時に同時に添加することが 加が容易である点からより好ましい。

 次に、前工程、重合反応工程、回収工程 順を追って具体的に説明する。

 [前工程]
 スルフィド化剤は通常水和物の形で使用さ るが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加 る前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除 することが好ましい。なお、この操作によ 水を除去し過ぎた場合には、不足分の水を 加して補充することが好ましい。

 また、上述したように、スルフィド化剤 して、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金 水酸化物から、反応系においてin situで、 るいは重合槽とは別の槽で調製されるアル リ金属硫化物も用いることができる。この 法には特に制限はないが、望ましくは不活 ガス雰囲気下、常温~150℃、好ましくは常温 ら100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアル リ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以 、好ましくは180~260℃まで昇温し、水分を留 去させる方法が挙げられる。この段階で重合 助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促 進するために、トルエンなどを加えて反応を 行ってもよい。

 重合反応における、重合系内の水分量は 仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.5~10.0モ であることが好ましい。ここで重合系内の 分量とは重合系に仕込まれた水分量から重 系外に除去された水分量を差し引いた量で る。また、仕込まれる水は、水、水溶液、 晶水などのいずれの形態であってもよい。

 [重合反応工程]
 有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハ ゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満 温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂 粒体を製造することが好ましい。

 重合反応工程を開始するに際しては、望 しくは不活性ガス雰囲気下、常温~220℃、好 ましくは100~220℃の温度範囲で、有機極性溶 にスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族 合物を加える。この段階で重合助剤を加え もよい。これらの原料の仕込み順序は、順 同であってもよく、同時であってもさしつ えない。

 かかる混合物を通常200℃~290℃の範囲に昇 温する。昇温速度に特に制限はないが、通常 0.01~5℃/分の速度が選択され、0.1~3℃/分の範 がより好ましい。

 一般に、最終的には250~290℃の温度まで昇 温し、その温度で通常0.25~50時間、好ましく 0.5~20時間反応させる。

 最終温度に到達させる前の段階で、例え 200℃~260℃で一定時間反応させた後、270~290 に昇温する方法は、より高い重合度を得る で有効である。この際、200℃~260℃での反応 間としては、通常0.25時間から20時間の範囲 選択され、好ましくは0.25~10時間の範囲が選 択される。

 なお、より高重合度のポリマーを得るた には、複数段階で重合を行うことが有効で る。複数段階で重合を行う際は、245℃にお る系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転 率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達 た時点であることが有効である。

 [回収工程]
 重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重 反応物から固形物を回収する。

 PPS樹脂の最も好ましい回収方法は、急冷条 下に行うことであり、この回収方法の好ま い一つの方法としてフラッシュ法が挙げら る。フラッシュ法とは、重合反応物を高温 圧(通常250℃以上、8kg/cm 以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気 へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合 を粉粒体状にして回収する方法であり、こ でいうフラッシュとは、重合反応物をノズ から噴出させることを意味する。フラッシ させる雰囲気は、具体的には例えば常圧中 窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は 常150℃~250℃の範囲が選択される。

 フラッシュ法は、溶媒回収と同時に固形 を回収することができ、また回収時間も比 的短くできることから、経済性に優れた回 方法である。この回収方法では、固化過程 Naに代表されるイオン性化合物や有機系低 合度物(オリゴマー)がポリマー中に取り込ま れやすい傾向がある。

 但し、本発明の製造方法に用いられるPPS 脂の回収法は、フラッシュ法に限定される のではない。本発明の要件を満たす方法で れば、徐冷して粒子状のポリマーを回収す 方法(クエンチ法)を用いることもやぶさか はない。しかし、経済性、性能を鑑みた場 、本発明の製造方法はフラッシュ法で回収 れたPPS樹脂を用いることがより好ましい。

 次に本発明の必須要件であるPPS樹脂の酸 理と熱酸化処理について詳述する。

 本発明のPPS樹脂の製造方法は、たとえば 記重合反応工程、回収工程を経て得られたP PS樹脂を酸処理工程で酸処理することが必須 あり、酸処理する工程の前に熱水処理する 程を含んでなることが好ましい。また、酸 理する工程や熱水処理する工程の前に有機 媒により洗浄する工程を含んでもよい。

 本発明における酸処理に用いる酸は、PPS 脂を分解する作用を有しないものであれば に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸 珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げら 、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく いられるが、硝酸のようなPPS樹脂を分解、 化させるものは好ましくない。

 酸の水溶液を用いるときの水は、蒸留水 るいは脱イオン水であることが好ましい。 の水溶液は、pH1~7が好ましく、pH2~4がより好 ましい。pHが7より大きいとPPS樹脂の金属含有 量が増大するため好ましくなく、pHが1より小 さいとPPS樹脂の揮発成分が多くなるため好ま しくない。

 酸処理の方法は、酸または酸の水溶液にP PS樹脂を浸漬せしめことが好ましく、必要に り適宜撹拌および加熱することも可能であ 。加熱する際の温度は80~250℃が好ましく、1 20~200℃がより好ましく、150~200℃がさらに好 しい。80℃未満では酸処理効果が小さく、金 属含有量が増大し、250℃を超えると圧力が高 くなりすぎるため安全上好ましくない。また 、酸の水溶液でPPS樹脂を浸漬せしめて処理し た際のpHは、酸処理により8未満となることが 好ましく、pH2~8がより好ましい。pHが8より大 くなると得られるPPS樹脂の金属含有量が増 するため好ましくない。

 酸処理の時間は、PPS樹脂と酸の反応が十 に平衡となる時間が好ましく、80℃で処理 る場合は2~24時間が好ましく、200℃で処理す 場合は0.01~5時間が好ましい。

 酸処理におけるPPS樹脂と酸または酸の水 液との割合は、PPS樹脂が酸または酸の水溶 中に十分に浸漬された状態で処理すること 好ましく、PPS樹脂500gに対して、酸または酸 の水溶液0.5~500Lが好ましく、1~100Lがより好ま く、2.5~20Lがさらに好ましい。PPS樹脂500gに して酸または酸の水溶液が0.5Lより少ないとP PS樹脂が水溶液に十分浸漬しないため洗浄不 となり、PPS樹脂の金属含有量が増大するた 好ましくない。また、PPS樹脂500gに対して、 酸または酸の水溶液が500Lを超えると、PPS樹 に対する溶液量が大過剰となり生産効率が しく低下するため好ましくない。

 これらの酸処理は所定量の水および酸に 定量のPPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱 撹拌する方法、連続的に酸処理を施す方法 どにより行われる。酸処理後の処理溶液か 水溶液とPPS樹脂を分離する方法はふるいや ィルターを用いた濾過が簡便であり、自然 過、加圧濾過、減圧濾過、遠心濾過などの 法が例示できる。処理液から分離されたPPS 脂表面に残留している酸や不純物を除去す ため、水または温水で数回洗浄することが ましい。洗浄方法は濾過装置上のPPS樹脂に をかけながら濾過する方法や、予め用意し 水に、分離したPPS樹脂を投入した後に再度 過するなどの方法で水溶液とPPS樹脂を分離 る方法が例示できる。洗浄に用いる水は、 留水あるいは脱イオン水であることが好ま い。

 本発明では酸処理する工程の前に熱水処 を行うことが好ましく、その方法は次のと りである。本発明における熱水処理に用い 水は、蒸留水あるいは脱イオン水であるこ が好ましい。熱水処理温度は80~250℃が好ま く、120~200℃がより好ましく、150~200℃がさ に好ましい。80℃未満では熱水処理効果が小 さく、揮発するガス発生量が多くなり、250℃ を超えると圧力が高くなりすぎるため安全上 好ましくない。

 熱水処理の時間は、PPS樹脂と熱水による 出処理が十分である時間が好ましく、80℃ 処理する場合は2~24時間が好ましく、200℃で 理する場合は0.01~5時間が好ましい。

 熱水処理におけるPPS樹脂と水との割合は PPS樹脂が水に十分に浸漬された状態で処理 ることが好ましく、PPS樹脂500gに対して、水 0.5~500Lが好ましく、1~100Lがより好ましく、2.5~ 20Lがさらに好ましい。PPS樹脂500gに対して水 0.5Lより少ないとPPS樹脂が水に十分浸漬しな ため洗浄不良となり、揮発するガス発生量 増大するため好ましくない。また、PPS樹脂5 00gに対して、水が500Lを超えると、PPS樹脂に する水が大過剰となり生産効率が著しく低 するため好ましくない。

 これらの熱水処理の操作に特に制限は無 、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、 力容器内で加熱・撹拌する方法、連続的に 水処理を施す方法などにより行われる。熱 処理後の処理溶液から水溶液とPPS樹脂を分 する方法に特に制限は無いが、ふるいやフ ルターを用いた濾過が簡便であり、自然濾 、加圧濾過、減圧濾過、遠心濾過などの方 が例示できる。処理液から分離されたPPS樹 表面に残留している不純物を除去するため 水または温水で数回洗浄することが好まし 。洗浄方法に特に制限は無いが、濾過装置 のPPS樹脂に水をかけながら濾過する方法や 予め用意した水に、分離したPPS樹脂を投入 た後に再度濾過するなどの方法で水溶液とP PS樹脂を分離する方法が例示できる。洗浄に いる水は、蒸留水あるいは脱イオン水であ ことが好ましい。

 また、これら酸処理や熱水処理時のPPS末 基の分解は好ましくないので、酸処理や熱 処理を不活性雰囲気下とすることが望まし 。不活性雰囲気としては、窒素、ヘリウム アルゴンなどがあげられるが、経済性の観 から窒素雰囲気下が好ましい。

 本発明では酸処理する工程や熱水処理す 工程の前に有機溶媒により洗浄する工程を んでもよく、その方法は次のとおりである 本発明でPPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は PPS樹脂を分解する作用などを有しないもの あれば特に制限はなく、例えばN-メチル-2- ロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチ アセトアミド、1,3-ジメチルイミダゾリジノ 、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラ ノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルス ホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン どのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセ ン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメ ルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキ ン、テトラヒドロフランなどのエーテル系 媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリク ロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエ チレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン 、テトラクロルエタン、パークロルエタン、 クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタ ノール、エタノール、プロパノール、ブタノ ール、ペンタノール、エチレングリコール、 プロピレングリコール、フェノール、クレゾ ール、ポリエチレングリコール、ポリプロピ レングリコールなどのアルコール・フェノー ル系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレ ンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げら れる。これらの有機溶媒のうちでも、N-メチ -2-ピロリドン、アセトン、ジメチルホルム ミドおよびクロロホルムなどの使用が特に ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類 または2種類以上の混合で使用される。

 有機溶媒による洗浄の方法としては、有 溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法 あり、必要により適宜撹拌または加熱する とも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄 る際の洗浄温度については特に制限はなく 常温~300℃程度の任意の温度が選択できる。 洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾 向があるが、通常は常温~150℃の洗浄温度で 分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶 の沸点以上の温度で加圧下に洗浄すること 可能である。また、洗浄時間についても特 制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ 洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することに り十分な効果が得られる。また連続式で洗 することも可能である。

 これら酸処理、熱水処理または有機溶媒 よる洗浄は、これらを適宜組み合わせて行 ことも可能である。

 本発明では熱酸化処理する前に、PPS樹脂 酸処理することにより、初めて溶融流動性 優れ、かつ金属含有量や溶融時の揮発成分 発生量が少なく、成形安定性、耐湿熱性に れたPPS樹脂が得られることを見いだしたも である。熱酸化処理をする前に、PPS樹脂を 処理しないと、優れた溶融流動性と溶融時 揮発成分の抑制を両立することができず、 果として、成形性、耐湿熱性に優れたPPS樹 を得ることができない。

 本発明のPPS樹脂の製造方法は、上記酸処理 熱水処理または有機溶媒による洗浄をした に、熱酸化処理を行う。熱酸化処理とは、P PS樹脂を、酸素雰囲気下においての加熱また H 2 O 2 等の過酸化物もしくはS等の加硫剤を添加し の加熱による処理を施すことであるが、処 の簡便さから酸素雰囲気下においての加熱 特に好ましい。

 本発明の熱酸化処理のための加熱装置は、 常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹 翼付の加熱装置であってもよいが、効率よ しかもより均一に処理する場合は、回転式 るいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがよ 好ましい。熱酸化処理の際の雰囲気におけ 酸素濃度は2体積%以上、更には8体積%以上と することが望ましい。酸素濃度の上限には特 に制限はないが、安全操業的に50体積%程度が 限界であり、25体積%以下がより好ましい。本 発明の熱酸化処理温度は、160~270℃が好まし 、より好ましくは160~220℃である。270℃を上 る温度で熱酸化処理を行うと、熱酸化処理 急激に進行するため、その制御が困難とな 流動性が著しく低下するため好ましくない 一方、160℃未満の温度では、熱酸化処理の 行が著しく遅く揮発成分の発生量が多くな ため、好ましくない。処理時間は、0.2~50時 が挙げられ、0.5~10時間がより好ましく、1~5 間がさらに好ましい。処理時間が0.2時間未 であると十分な熱酸化処理が行えず揮発成 が多いため好ましくなく、処理時間が50時 を超えると熱酸化処理による架橋反応が進 して流動性が低下すると同時に、250℃で5分 、20倍重量の1-クロロナフタレンに溶解して ポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで 時加圧濾過した際の残さ量が多くなり成形 定性が低下するため好ましくない。
また熱酸化処理の前後に、熱酸化架橋を抑制 し、水分除去を目的として乾式熱処理を行う ことも可能である。その温度は100~270℃が好 しく、120~200℃の範囲がより好ましい。また この場合の酸素濃度は2体積%未満とするこ が望ましい。処理時間は、0.2~50時間が好ま く、0.5~10時間がより好ましく、1~5時間がさ に好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風 燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加 装置であってもよいが、効率よくしかもよ 均一に処理する場合は、回転式あるいは撹 翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい

 かくして本発明の製造方法により得られ PPS樹脂は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電 的性質並びに機械的性質に優れ、射出成形 、フィルム、シート、繊維などに適用する とが可能であるが、特に射出成形用途に好 に適用される。

 なお、本発明の効果を得る上で、本発明 製造方法により得られるPPS樹脂を100%用いて 成形品とすることが最も好ましいが、必要に 応じ、上記条件を満たさないPPS樹脂とブレン ド使用する事を排除するものではない。ブレ ンド比率としては、本発明の製造方法により 得られるPPS樹脂を75~25%(例えば75%、50%、25%)ブ ンドするなど適宜必要に応じ選択すること 可能である。

 また本発明の製造方法により得られるPPS 脂には本発明の効果を損なわない範囲にお て、他の樹脂を添加することも可能である 例えば、柔軟性の高い熱可塑性樹脂を少量 加することにより柔軟性及び耐衝撃性を更 改良することが可能である。但し、この量 組成物全体の50重量%を超えるとPPS樹脂本来 特徴が損なわれるため好ましくなく、特に3 0重量%以下の添加が好ましく使用される。熱 塑性樹脂の具体例としては、エポキシ基含 オレフィン系共重合体、その他のオレフィ 系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテ フタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレ ト樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポ サルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹 、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹 、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポ エーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケ ン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポ エーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド 脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリ チレン樹脂などが挙げられる。

 また、改質を目的として、以下のような 合物の添加が可能である。イソシアネート 化合物、有機シラン系化合物、有機チタネ ト系化合物、有機ボラン系化合物、エポキ 化合物などのカップリング剤、ポリアルキ ンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエー ル系化合物、エステル系化合物、有機リン 化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、 機リン化合物、ポリエーテルエーテルケト などの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、 テアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリ 酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化 物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色 止剤、その他、滑剤、紫外線防止剤、着色 、発泡剤などの通常の添加剤を配合するこ ができる。上記化合物は何れも組成物全体 20重量%を越えるとPPS樹脂本来の特性が損な れるため好ましくなく、10重量%以下、更に ましくは1重量%以下の添加がよい。

 また、本発明の製造方法により得られるP PS樹脂には機械的強度、靱性などの向上を目 に、エポキシ基、アミノ基、イソシアネー 基、水酸基、メルカプト基およびウレイド の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を 有するアルコキシシランを添加してもよい。 かかる化合物の具体例としては、γ-グリシド キシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシ ドキシプロピルトリエトキシシシラン、β-(3, 4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキ シシランなどのエポキシ基含有アルコキシシ ラン化合物、γ-メルカプトプロピルトリメト キシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエト キシシランなどのメルカプト基含有アルコキ シシラン化合物、γ-ウレイドプロピルトリエ トキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメト キシシシラン、γ-(2-ウレイドエチル)アミノ ロピルトリメトキシシランなどのウレイド 含有アルコキシシラン化合物、γ-イソシア トプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシ ナトプロピルトリメトキシシラン、γ-イソ アナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ -イソシアナトプロピルメチルジエトキシシ ン、γ-イソシアナトプロピルエチルジメト シシラン、γ-イソシアナトプロピルエチル エトキシシラン、γ-イソシアナトプロピル リクロロシランなどのイソシアナト基含有 ルコキシシラン化合物、γ-(2-アミノエチル) ミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-( 2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシ シラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラ ンなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合 物、およびγ-ヒドロキシプロピルトリメトキ シシラン、γ-ヒドロキシプロピルトリエトキ シシランなどの水酸基含有アルコキシシラン 化合物などが挙げられる。

  かかるシラン化合物の好適な添加量は PPS樹脂100重量部に対し、0.05~5重量部の範囲 選択される。

 本発明の製造方法により得られるPPS樹脂 、本発明の効果を損なわない範囲で充填材 配合して使用することも可能である。かか 充填材の具体例としてはガラス繊維、炭素 維、バサルト繊維、チタン酸カリウムウィ カ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウ スカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸 ルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アル ナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、 スベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維など 繊維状充填材、あるいはタルク、ワラステ イト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、 オリン、クレー、パイロフィライト、ベン ナイト、アスベスト、アルミナシリケート どの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン 酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム 炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸 、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫 塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウ 、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガ スビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セ ミックビーズ、カーボンナノチューブ、フ ーレン、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボン ラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状 填材が用いられ、これらは中空であっても く、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用 することも可能である。また、これらの充填 材をイソシアネート系化合物、有機シラン系 化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラ ン系化合物およびエポキシ化合物などのカッ プリング剤で予備処理して使用してもよい。

 かかる無機フィラーの配合量は通常、PPS 脂100重量部に対し、0.0001~500重量部の範囲が 好ましく、0.001~400重量部の範囲がより好まし い。無機フィラーの含有量は、強度と剛性、 その他特性のバランスから用途により適宜変 えることが可能である。

 混練機は、単軸、2軸の押出機、バンバリ ーミキサー、ニーダー、及びミキシングロー ルなど通常公知の溶融混練機に供給してPPS樹 脂の融解ピーク温度+5~60℃の加工温度で混練 る方法などを代表例として挙げることがで る。副原料を用いる際、原料の混合順序に 特に制限はなく、全ての原材料を配合後上 の方法により溶融混練する方法、一部の原 料を配合後上記の方法により溶融混練し、 に残りの原材料を配合し溶融混練する方法 あるいは一部の原材料を配合後単軸あるい 2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィ ーダーを用いて残りの原材料を混合する方法 など、いずれの方法を用いてもよい。また、 少量添加剤成分については、他の成分を上記 の方法などで混練しペレット化した後、成形 前に添加して成形に供することも勿論可能で ある。

 このようにして得られる本発明のPPS樹脂( 組成物)は、特に射出成形用途に適しており その具体的用途としては、例えばセンサー LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器 リレーケース、スイッチ、コイルボビン、 ンデンサー、バリコンケース、光ピックア プ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ プリント基板、チューナー、スピーカー、 イクロフォン、ヘッドフォン、小型モータ 、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、 導体封止部品、液晶表示装置部品、FDDキャ ッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホ ダー、パラボラアンテナ、コンピューター 連部品などに代表される電気・電子部品;VTR 品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライ ー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部 、オーディオ・レーザーディスク・コンパ トディスクなどの音声機器部品、照明部品 冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライタ 部品、ワードプロセッサー部品などに代表 れる家庭、事務電気製品部品;オフィスコン ピューター関連部品、電話器関連部品、ファ クシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用 治具、モーター部品、ライター、タイプライ ターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡 双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光 機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混 水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水 調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量セ サー、水道メーターハウジングなどの水廻 部品;バルブオルタネーターターミナル、オ ルタネーターコネクター,ICレギュレーター、 ライトディヤー用ポテンシオメーターベース 、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関 係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーイン テークノズルスノーケル、インテークマニホ ールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイ ント、キャブレターメインボディー、キャブ レタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却 水センサー、油温センサー、スロットルポジ ションセンサー、クランクシャフトポジショ ンセンサー、エアーフローメーター、ブレー キパッド摩耗センサー、エアコン用サーモス タットベース、暖房温風フローコントロール バルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュ ホルダー、ウォーターポンプインペラー、タ ービンベイン、ワイパーモーター関係部品、 デュストリビューター、スタータースイッチ 、スターターリレー、トランスミッション用 ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノ ズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関 係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター 、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステ ップモーターローター、ランプソケット、ラ ンプリフレクター、ランプハウジング、ブレ ーキピストン、ソレノイドボビン、エンジン オイルフィルター、点火装置ケース、車速セ ンサー、ケーブルライナー、エンジンコント ロールユニットケース、エンジンドライバー ユニットケース、コンデンサーケース、モー ター絶縁材料、ハイブリッドカーの制御系部 品ケースなどの自動車・車両関連部品、その 他の各種用途が例示できる。

 以下に実施例を挙げて本発明をさらに具 的に説明するが、本発明はこれらに限定さ るものではない。

 以下の実施例において、材料特性につい は下記の方法により行った。

 [ガス発生量] 
 腹部が100mm×25mm、首部が255mm×12mm、肉厚が1mm のガラスアンプルにPPS樹脂3gを計り入れてか 真空封入した。このガラスアンプルの胴部 みを、アサヒ理化製作所製のセラミックス 気管状炉ARF-30Kに挿入して320℃で2時間加熱 た。アンプルを取り出した後、管状炉によ て加熱されておらず揮発ガスの付着したア プルの首部をヤスリで切り出して秤量した 次いで付着ガスを5gのクロロホルムで溶解し て除去した後、60℃のガラス乾燥機で1時間乾 燥してから再度秤量した。ガスを除去した前 後のアンプル首部の重量差をガス発生量(重 %)とした。

 [灰分率]
 予め550℃で空焼きしたルツボにサンプル5g 精秤し、550℃の電気炉に24時間入れて灰化さ せた。ルツボに残った灰分量を精秤し、灰化 前のサンプル量との比率を灰分率(重量%)とし た。

 [残さ量]
 空圧キャップと採集ロートを具備したセン ュー科学製のSUS試験管に、予め秤量してお たポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルタ をセットし、約80μm厚にプレスフィルム化し たPPS樹脂100mgおよび1-クロロナフタレン2gを計 り入れてから密閉した。これをセンシュー科 学製の高温濾過装置SSC-9300に挿入し、250℃で5 分間加熱振とうしてPPS樹脂を1-クロロナフタ ンに溶解した。空気を含んだ20mLの注射器を 空圧キャップに接続した後、ピストンを押出 して溶液をメンブランフィルターで濾過した 。メンブランフィルターを取り出し、150℃で 1時間真空乾燥してから秤量した。濾過前後 メンブランフィルター重量の差を残さ量(重 %)とした。

 [メルトフローレート(MFR)]
 測定温度315.5℃、5000g荷重とし、ASTM-D1238-70 準ずる方法で測定した。但し、MFRが1000g/10分 を超える低粘度品は流動性が高すぎるため本 測定方法では測定が困難である。溶融粘度の 低いPPS樹脂(例えば、実施例9~15、比較例14~17) 、下記のキャピログラフによる溶融粘度の 定を行った。なお、MFR=500g/10分のPPS樹脂の 融粘度を測定したところ約80Pa・s(300℃、剪 速度1000/秒)であった。架橋度などに大きな いがなく溶融粘度の剪断速度、温度依存性 大きな違いがない場合、PPS樹脂の溶融粘度 80Pa・sより低い時は、MFRが500g/10分を超える とをあらわしている。

 [溶融粘度]
 東洋精機社製キャピログラフ1Cを用い、孔 40.00mm、孔直径1.00mmのダイスを用い、300℃で 融粘度の測定を行った。

 [降温結晶化温度(Tmc)の測定]
 パーキンエルマー社製DSC7を用い、サンプル 量約10mg、窒素雰囲気下、昇温・降温速度20℃ /分で、
(1)50℃から340℃まで昇温し、340℃で1分間ホー ルド
(2)100℃まで降温
(3)再度340℃まで昇温し、340℃で1分間ホール
(4)再度100℃まで降温
した際、(4)にあらわれる降温結晶化ピーク温 度を降温結晶化温度(Tmc)とした。

 [成形安定性]
 PPS樹脂を100重量部、ガラス繊維(日本電気硝 子社製ECS03TN-103/P)67重量部をドライブレンド た後、日本製鋼所社製TEX30α型2軸押出機(L/D=4 5.5)を用い、スクリュー回転数300rpmでシリン ー出樹脂温度が320℃となるように温度を設 し、溶融混練し、ストランドカッターによ ペレット化した。120℃で一晩乾燥したペレ トを、ファナックロボショットα-30i射出成 機(ファナック社製)に供し、射出速度300mm/秒 、射出圧力40MPa、シリンダー設定温度300℃、 型温度150℃、射出時間1秒、冷却時間20秒、 クリュー回転数100rpm、背圧1MPa、サックバッ ク10mmの条件で、棒状成形品(幅12.7mm、厚み0.5m m、サイドゲート0.5mm×5.0mm)を連続成形し、成 品の長さを棒流動長として測定した。最初 20ショットを捨てた後、100ショットの棒流 長の最大と最小の差を求め、100ショットの 均棒流動長に対して最大と最小の差が5%以下 のものを成形安定性が「優れる(A)」、5%~10%の ものを「良好(B)」、10%を超えるものを「劣る (C)」とした。

 [耐湿熱性]
 PPS樹脂を100重量部、ガラス繊維(日本電気硝 子社製ECS03TN-103/P)67重量部ドライブレンドし 後、日本製鋼所社製TEX30α型2軸押出機(L/D=45.5 )を用い、スクリュー回転数300rpmでシリンダ 出樹脂温度が320℃となるように温度を設定 、溶融混練し、ストランドカッターにより レット化した。120℃で一晩乾燥したペレッ を、射出成形機UH1000(日精樹脂工業社製)を用 いて樹脂温度300℃、金型温度150℃で80mm×80mm× 2.0mm厚の試験片を作成した。得られた試験片 に20mm×20mm×0.5mm厚の銅板を置き、温度60℃、 湿度90%の恒温恒湿槽に設置し、10日間(240時間 )湿熱処理を行った。処理後の銅板を目視確 し、銅板表面に変化が無いものを「良好(B) 、銅板表面に変色があるものを「劣る(C)」 した。

 [参考例1]PPS-1の調製
 撹拌機および底に弁のついたオートクレー に、47.5%水硫化ナトリウム8267.4g(70.0モル)、9 6%水酸化ナトリウム2925.0g(70.2モル)、N-メチル- 2-ピロリドン(NMP)13860.0g(140.0モル)、酢酸ナト ウム1894.2g(23.1モル)、及びイオン交換水10500.0 gを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃ま 約3時間かけて徐々に加熱し、水14772.1gおよ NMP280.0gを留出したのち、反応容器を160℃に 却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当 りの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消 された水分を含めて1.08モルであった。また 、硫化水素の飛散量は仕込みアルカリ金属硫 化物1モル当たり0.023モルであった。

 次に、p-ジクロロベンゼン(p-DCB)10646.7g(72.4 モル)、NMP6444.9g(65.1モル)を加え、反応容器を 素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、2 00℃から270℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、270 ℃で70分保持した。オートクレーブ底部の抜 出しバルブを開放し、窒素で加圧しながら 容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッ ュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを 去した。

 得られた固形物およびイオン交換水53リ トルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70 ℃で30分洗浄した後、ポアサイズ10~16μmのガ スフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に 加熱した60リットルのイオン交換水をポアサ ズ10~16μmのガラスフィルターに注ぎ込み、 引濾過してPPS-1のケーク18000g(その内PPS樹脂75 50gが含まれる)を得た。

 [参考例2]PPS-2の調製
 重合時に酢酸ナトリウムを添加しなかった と以外は、参考例1と同様にして重合を行い 、PPS-2のケーク16800g(その内PPS樹脂7550gが含ま る)を得た。

 [比較例1]
 PPS-1に熱水処理、酸処理、および熱酸化処 を施さなかった。

 [比較例2]
 PPS-1に熱水処理および酸処理を施さずに熱 化処理を施した。

 窒素気流下120℃で4時間乾燥したPPS-1の粉 を容積100リットルの撹拌機付き加熱装置に れ、表1に示す条件で熱酸化処理を施した。 なお、酸素濃度12%での熱酸化処理は、空気1.0 リットル/分、窒素0.96リットル/分を加熱装置 に導入し、酸素濃度計を加熱装置内に設置し て酸素濃度を測定した。

 [比較例3、4]
 PPS-1に熱水処理を施さずに酸処理を施し、 の後熱酸化処理は施さなかった。

 比較例3、4ではPPS-1のケーク18000g、イオン 交換水40リットル、および酢酸700g(比較例3)ま たは酢酸43g(比較例4)を撹拌機付きオートクレ ーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で 置換した後、192℃まで昇温し、30分保持して 処理を施した。酸処理時のpHは表1のとおり あった。オートクレーブ冷却後、内容物を アサイズ10~16μmのガラスフィルターで濾過 た。次いで、70℃に加熱した60リットルのイ ン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、 引濾過してケークを得た。得られたケーク 窒素気流下120℃で4時間乾燥し、酸処理を施 したPPS-1の粉末を得た。

 [実施例1~4、比較例5~11]
 PPS-1に熱水処理を施さずに酸処理を施した

 実施例1~4、比較例5~11では、PPS-1のケーク1 8000g、イオン交換水40リットル、および酢酸70 0g(実施例1、4、比較例5、7~10)または酢酸43g(実 施例2、3、比較例6)または酢酸7g(比較例11)を 拌機付きオートクレーブに仕込み、オート レーブ内部を窒素で置換した後、192℃(実施 1~4、比較例5~9、11)または70℃(比較例10)まで 温し、30分保持して酸処理を施した。酸処 時のpHは表1のとおりであった。オートクレ ブ冷却後、内容物をポアサイズ10~16μmのガラ スフィルターで濾過した。次いで、70℃に加 した60リットルのイオン交換水をガラスフ ルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを た。得られたケークを窒素気流下120℃で4時 乾燥し、酸処理を施したPPS-1の粉末を得た

 酸処理したPPS-1の粉末を容積100リットル 撹拌機付き加熱装置に入れ、表1に示す条件 熱酸化処理を施した。なお、酸素濃度12%で 熱酸化処理(実施例1、4、比較例5、7~11)は、 気1.0リットル/分、窒素0.96リットル/分を加 装置に導入し、酸素濃度計を加熱装置内に 置して酸素濃度を測定した。酸素濃度21%で 熱酸化処理(実施例2、3、比較例6)は、空気1. 96リットル/分の空気雰囲気下で行った。

 [実施例5~8、比較例13]
 PPS-1に熱水処理を施した後に酸処理を施し その後熱酸化処理を施した。

 実施例5~8、比較例13では、PPS-1のケーク180 00g、イオン交換水40リットルを撹拌機付きオ トクレーブに仕込み、オートクレーブ内部 窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分 持して熱水処理を施した。オートクレーブ 却後、内容物をポアサイズ10~16μmのガラスフ ィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱 た60リットルのイオン交換水をガラスフィ ターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得 。得られたケーク、イオン交換水40リットル 、および酢酸700g(実施例5、7、8、比較例13)ま は酢酸43g(実施例6)を撹拌機付きオートクレ ブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で 換した後、192℃まで昇温し、30分保持して 処理を施した。酸処理時のpHは表1のとおり あった。オートクレーブ冷却後、内容物を アサイズ10~16μmのガラスフィルターで濾過し た。次いで、70℃に加熱した60リットルのイ ン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、 引濾過してケークを得た。得られたケーク 窒素気流下120℃で4時間乾燥し、熱水処理お び酸処理を施したPPS-1の粉末を得た。その 、熱水処理および酸処理を施したPPS-1の粉末 を表1に示す条件で熱酸化処理を施した。酸 濃度12%での熱酸化処理(実施例5、6、8)または 21%(実施例7)での熱酸化処理時の空気および窒 素量は実施例1~4、比較例5~11と同様である。 素濃度0%での熱酸化処理(比較例13)は、窒素 1.96リットル/分の窒素雰囲気下で行った。

 [比較例12]
 比較例12では、酸処理を施さなかったこと 外は実施例5と同様の方法で熱水処理、熱酸 処理を施した。

 得られたPPS樹脂のガス発生量、灰分率、 さ量、MFR、およびTmcの測定結果を表1に示す 。

 実施例1~8からわかるように、酸処理時のp Hや温度、および熱酸化処理時の温度、時間 そして酸素濃度を制御することにより、MFR 500g/10分を超える溶融粘度を有しながら、ガ 発生量、灰分率、残さ量が少ないPPS樹脂を られることがわかる。

 また、成形安定性および耐湿熱性の評価 果も表1に示す。ガス発生量、灰分率、残さ 量が低く、MFRが500g/10分を超えるPPS樹脂を用 ることで初めて成形安定性や耐湿熱性が良 となることがわかる。

 一方、比較例1では酸処理を施していない ためMFRが低く灰分量が高く、更に熱酸化処理 を施していないためガス発生量が多い。比較 例2では熱酸化処理を施しているが酸処理を していないため、MFRが低く灰分量が高い。 較例3、4では酸処理を施しているが熱酸化処 理を施していないため、ガス発生量が多い。 比較例5、6では熱酸化処理温度が低いため、 ス発生量が多い。比較例7では熱酸化処理時 間が短いため、ガス発生量が多い。比較例8 は熱酸化処理時間が長いため、残さ量が多 MFRが低い。比較例9では熱酸化処理温度が高 ため、残さ量が多くMFRが低い。比較例10で 酸処理温度が低いため、灰分率が高くMFRが い。比較例11ではpHがアルカリ性であり酸処 効果が発現しないため、灰分率が高くMFRが い。比較例12では酸処理を施していないた 、灰分率が高くMFRが低い。比較例13では熱酸 化処理時の酸素濃度が低すぎるため酸化によ る不純物除去効果が低くガス発生量が多い。

 比較例1~13ではこれら問題点を有している ため、成形安定性および耐湿熱性の評価では 良好な結果が得られないことが表1からわか 。

 [比較例14]
 PPS-2を熱水処理、酸処理、および熱酸化処 に施さなかった。

 [比較例15]
 PPS-2に熱水処理および酸処理を施さずに熱 化処理を施した。

 比較例15では、PPS-2を用いたこと以外は比 較例2と同様に行った。

 [比較例16、17]
 PPS-2に熱水処理を施さずに酸処理を施し、 の後熱酸化処理は施さなかった。

 比較例16では、PPS-2を用いたこと以外は比 較例3と同様に行った。酸処理時のpHは表1の おりであった。

 比較例17では、PPS-2を用いたこと以外は比 較例4と同様に行った。酸処理時のpHは表1の おりであった。

 [実施例9~11、比較例18]
 PPS-2に熱水処理を施さずに酸処理を施し、 の後熱酸化処理を施した。

 実施例9では、PPS-2を用いたこと以外は実 例1と同様に行った。酸処理時のpHは表1のと おりであった。

 実施例10では、PPS-2を用いたこと、および 熱酸化処理を6時間施したこと以外は実施例2 同様に行った。酸処理時のpHは表1のとおり あった。

 実施例11では、PPS-2を用いたこと以外は実 施例4と同様に行った。酸処理時のpHは表1の おりであった。

 比較例18では、PPS-2を用いたこと、および 酸処理時に酢酸を43g使用したこと以外は比較 例9と同様に行った。酸処理時のpHは表1のと りであった。

 [実施例12~15]
 PPS-2に熱水処理を施した後に酸処理を施し その後熱酸化処理を施した。

 実施例12ではPPS-2を用いたこと以外は実施 例5と同様に行った。酸処理時のpHは表1のと りであった。

 実施例13ではPPS-2を用いたこと以外は実施 例6と同様に行った。酸処理時のpHは表1のと りであった。

 実施例14ではPPS-2を用いたこと、および熱 酸化処理を200℃、2時間行ったこと以外は実 例7と同様に行った。酸処理時のpHは表1のと りであった。

 実施例15ではPPS-2を用いたこと以外は実施 例8と同様に行った。酸処理時のpHは表1のと りであった。

 得られたPPS樹脂のガス発生量、灰分率、 さ量、MFR、およびTmcの測定結果を表2に示す 。

 PPS-1よりも溶融粘度の低いPPS-2を用いた実 施例9~15からわかるように、酸処理時のpHや温 度、および熱酸化処理時の温度、時間、そし て酸素濃度を制御することにより、MFRが500g/1 0分を超える溶融粘度を有しながら、ガス発 量、灰分率、残さ量が少ないPPS樹脂を得ら ることがわかる。

 また、成形安定性および耐湿熱性の評価 果も表2に示す。ガス発生量、灰分率、残さ 量が低く、MFRが500g/10分を超えるPPS樹脂を用 ることで初めて成形安定性や耐湿熱性が良 となることがわかる。

 一方、比較例14では酸処理を施していな ため灰分量が高く、更に熱酸化処理を施し いないためガス発生量が多い。比較例15では 熱酸化処理を施しているが酸処理を行ってい ないため、灰分量が高い。比較例16、17では 処理を施しているが熱酸化処理を行ってい いため、ガス発生量が多い。比較例18では熱 酸化処理温度が高いため、残さ量が多くMFRが 低い。

 比較例14~18ではこれら問題点を有してい ため、成形安定性および耐湿熱性の評価で 良好な結果が得られないことが表2からわか 。

 本発明によれば、溶融流動性に優れ、か 金属含有量や溶融時の揮発性成分の発生量 少なく、成形安定性、耐湿熱性に優れたPPS 脂が得られる。