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Title:
PROCESS FOR PRODUCTION OF SURFACE-MODIFIED RARE EARTH SINTERED MAGNETS AND SURFACE-MODIFIED RARE EARTH SINTERED MAGNETS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/041639
Kind Code:
A1
Abstract:
The invention provides a rare earth sintered magnet which is improved in corrosion resistance by oxidizing heat treatment to such a level as to exhibit satisfactory corrosion resistance even in an atmosphere of varying humidity and which is reduced in the deterioration of magnetic characteristics due to oxidizing heat treatment and a process for the production of the magnet. A surface-modified rare earth sintered magnet characterized in that the surface modified part is an at least three-layered surface modification layer which comprises a main layer containing R, Fe, B and oxygen, an amorphous layer containing at least R, Fe and oxygen, and an outermost layer containing hematite-base iron oxide as the main constituent in this order from the inside of the magnet; and a process for the production of the magnet, characterized by comprising the step of subjecting a magnet body to heat treatment in an atmosphere of oxygen partial pressure of 1 Œ 102 to 1Œ 105Pa and water vapor partial pressure of 0.1 to 1000Pa (exclusive of 1000Pa) at 200 to 600°C.

Inventors:
FUJIHARA MAHORO (JP)
YOSHIMURA KOSHI (JP)
KIKUGAWA ATSUSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/067527
Publication Date:
April 02, 2009
Filing Date:
September 26, 2008
Export Citation:
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Assignee:
HITACHI METALS LTD (JP)
FUJIHARA MAHORO (JP)
YOSHIMURA KOSHI (JP)
KIKUGAWA ATSUSHI (JP)
International Classes:
H01F41/02; C23C8/12; C23C8/16; H01F1/053; H01F1/08
Domestic Patent References:
WO2005096326A12005-10-13
Foreign References:
JP2007207936A2007-08-16
JP2006245064A2006-09-14
JP2007005619A2007-01-11
JP2006049801A2006-02-16
JP2005210094A2005-08-04
JP2008244126A2008-10-09
JP2008004907A2008-01-10
JP2002057052A2002-02-22
JP2006156853A2006-06-15
JP2006210864A2006-08-10
JP2007103523A2007-04-19
JP2007207936A2007-08-16
US5383978A1995-01-24
Other References:
See also references of EP 2197007A4
Attorney, Agent or Firm:
TSUJITA, Takashi (11-12 Takada 3-chom, Toshima-kuTokyo 33, JP)
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Claims:
 表面改質された希土類系焼結磁石の製造方法であって、磁石体に対し、酸素分圧が1×10 2 Pa~1×10 5 Paで水蒸気分圧が0.1Pa~1000Pa(但し1000Paを除く)の雰囲気下、200℃~600℃で熱処理を行う工程を含んでなることを特徴とする方法。
 酸素分圧と水蒸気分圧の比率(酸素分圧/水蒸気分圧)を1~400とすることを特徴とする請求項1記載の方法。
 常温から熱処理を行う温度までの昇温を、酸素分圧が1×10 2 Pa~1×10 5 Paで水蒸気分圧が1×10 -3 Pa~100Paの雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
 さらに、熱処理を行う工程の前および/または後に、酸素分圧が1×10 -2 Pa~50Paで水蒸気分圧が1×10 -7 Pa~1×10 -2 Paの雰囲気下、200℃~600℃で熱処理を行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
 請求項1記載の方法にて製造されてなることを特徴とする表面改質された希土類系焼結磁石。
 表面改質された部分が、磁石の内側から順に、R、Fe、Bおよび酸素を含む主層、少なくともR、Feおよび酸素を含む非晶質層、ヘマタイトを主体とする酸化鉄を構成成分として含む最表層の少なくとも3層を有する表面改質層からなることを特徴とする請求項5記載の磁石。
 表面改質された希土類系焼結磁石であって、表面改質された部分が、磁石の内側から順に、R、Fe、Bおよび酸素を含む主層、少なくともR、Feおよび酸素を含む非晶質層、ヘマタイトを主体とする酸化鉄を構成成分として含む最表層の少なくとも3層を有する表面改質層からなることを特徴とする磁石。
 表面改質層の厚みが0.5μm~10μmであることを特徴とする請求項7記載の磁石。
 表面改質層中の主層の厚みが0.4μm~9.9μmであることを特徴とする請求項7記載の磁石。
 表面改質層中の非晶質層の厚みが100nm以下であることを特徴とする請求項7記載の磁石。
 表面改質層中の最表層の厚みが10nm~300nmであることを特徴とする請求項7記載の磁石。
 表面改質層中の主層の組成が、表面改質されていない磁石の組成を比較すると、Feの含量が減少し、酸素の含量が増加していることを特徴とする請求項7記載の磁石。
 表面改質層中の主層の酸素の含量が2.5mass%~15mass%であることを特徴とする請求項7記載の磁石。
 横方向に断続的に伸びる長さが0.5μm~30μmで厚みが50nm~400nmのR濃化層を表面改質層中の主層が有することを特徴とする請求項7記載の磁石。
 表面改質層中の最表層の構成成分として含まれる酸化鉄の75mass%以上がヘマタイトであることを特徴とする請求項7記載の磁石。
 
 
 
Description:
表面改質された希土類系焼結磁 の製造方法および表面改質された希土類系 結磁石

 本発明は、湿度管理がなされていない輸 環境や保管環境などの湿度が変動する環境 おいても十分な耐食性を有するとともに、 れた磁気特性を有する希土類系焼結磁石お びその製造方法に関する。

 Nd-Fe-B系焼結磁石に代表されるR-Fe-B系焼結 磁石などの希土類系焼結磁石は、資源的に豊 富で安価な材料が用いられ、かつ、高い磁気 特性を有していることから今日様々な分野で 使用されているが、反応性の高い希土類金属 :Rを含むため、大気中で酸化腐食されやすい いう特質を有する。従って、希土類系焼結 石は、通常、その表面に金属被膜や樹脂被 などの耐食性被膜を形成して実用に供され が、IPM(Interior Permanent Magnet)モータなどの うに磁石が部品に埋め込まれて使用される 様の場合には、必ずしもこのような耐食性 膜を磁石の表面に形成することは必要とさ ない。しかしながら、磁石が製造されてか 部品に埋め込まれるまでの期間における磁 の耐食性の確保は当然に必要となる。そこ 、このような期間における希土類系焼結磁 の耐食性を確保するための方法として、酸 性雰囲気下で熱処理を行うことによって磁 の表面を改質する方法が提案されており、 の方法は、上記の目的を達成できるに足る 易耐食性向上技術として注目されている。

 酸化熱処理による希土類系焼結磁石の表面 質を行うために必要な酸化性雰囲気は、酸 を利用して形成される場合(例えば特許文献 1や特許文献2を参照のこと)の他、水蒸気を利 用して形成される場合もある。例えば、特許 文献3~特許文献6には、水蒸気を単独で利用し て、或いは、水蒸気に酸素を組み合わせて酸 化性雰囲気を形成する方法が記載されている 。

特許第2844269号公報

特開2002-57052号公報

特開2006-156853号公報

特開2006-210864号公報

特開2007-103523号公報

特開2007-207936号公報

 希土類系焼結磁石が製造されてから部品に め込まれるまでの期間における磁石の腐食 、磁石が置かれる環境の良し悪しに左右さ る。特に湿度の変動は、磁石の表面に微細 結露を繰り返し生じさせ、磁石の腐食を早 てしまう。本発明者は、上記の特許文献に 載された簡易耐食性向上技術の有用性を検 した結果、いずれの技術を採用した場合も 湿度の変動が激しい環境においては必ずし 十分な耐食性が得られないこと、特許文献3 ~特許文献6においては、水蒸気分圧は10hPa(1000 Pa)以上が好適とされているが、このような水 蒸気分圧が高い雰囲気下で熱処理を行うと、 磁石の表面で起こる酸化反応によって水素が 副産物として大量に生成し、磁石が生成した 水素を吸蔵して脆化することで磁気特性が低 下してしまうことが判明した。
 そこで本発明は、湿度が変動する環境にお ても十分な耐食性が酸化熱処理によって付 されているとともに、酸化熱処理による磁 特性の低下が抑制された希土類系焼結磁石 よびその製造方法を提供することを目的と る。

 本発明者は、上記の点に鑑みて鋭意研究 重ねた結果、酸素分圧と、特許文献3~特許 献6において不適とされている10hPa未満の水 気分圧を適切に制御した酸化性雰囲気下で 熱処理によって表面改質を行った希土類系 結磁石は、湿度が変動する環境においても 分な耐食性を有すること、熱処理による磁 特性の低下が抑制されていることを見出し 。

 上記の知見に基づいて完成された本発明の 面改質された希土類系焼結磁石の製造方法 、請求項1記載の通り、磁石体に対し、酸素 分圧が1×10 2 Pa~1×10 5 Paで水蒸気分圧が0.1Pa~1000Pa(但し1000Paを除く) 雰囲気下、200℃~600℃で熱処理を行う工程を んでなることを特徴とする。
 また、請求項2記載の方法は、請求項1記載 方法において、酸素分圧と水蒸気分圧の比 (酸素分圧/水蒸気分圧)を1~400とすることを特 徴とする。
 また、請求項3記載の方法は、請求項1記載 方法において、常温から熱処理を行う温度 での昇温を、酸素分圧が1×10 2 Pa~1×10 5 Paで水蒸気分圧が1×10 -3 Pa~100Paの雰囲気下で行うことを特徴とする。
 また、請求項4記載の方法は、請求項1記載 方法において、さらに、熱処理を行う工程 前および/または後に、酸素分圧が1×10 -2 Pa~50Paで水蒸気分圧が1×10 -7 Pa~1×10 -2 Paの雰囲気下、200℃~600℃で熱処理を行うこと を特徴とする。
 また、本発明の表面改質された希土類系焼 磁石は、請求項5記載の通り、請求項1記載 方法にて製造されてなることを特徴とする
 また、請求項6記載の磁石は、請求項5記載 磁石において、表面改質された部分が、磁 の内側から順に、R、Fe、Bおよび酸素を含む 層、少なくともR、Feおよび酸素を含む非晶 層、ヘマタイトを主体とする酸化鉄を構成 分として含む最表層の少なくとも3層を有す る表面改質層からなることを特徴とする。
 また、本発明の表面改質された希土類系焼 磁石は、請求項7記載の通り、表面改質され た部分が、磁石の内側から順に、R、Fe、Bお び酸素を含む主層、少なくともR、Feおよび 素を含む非晶質層、ヘマタイトを主体とす 酸化鉄を構成成分として含む最表層の少な とも3層を有する表面改質層からなることを 徴とする。
 また、請求項8記載の磁石は、請求項7記載 磁石において、表面改質層の厚みが0.5μm~10μ mであることを特徴とする。
 また、請求項9記載の磁石は、請求項7記載 磁石において、表面改質層中の主層の厚み 0.4μm~9.9μmであることを特徴とする。
 また、請求項10記載の磁石は、請求項7記載 磁石において、表面改質層中の非晶質層の みが100nm以下であることを特徴とする。
 また、請求項11記載の磁石は、請求項7記載 磁石において、表面改質層中の最表層の厚 が10nm~300nmであることを特徴とする。
 また、請求項12記載の磁石は、請求項7記載 磁石において、表面改質層中の主層の組成 、表面改質されていない磁石の組成を比較 ると、Feの含量が減少し、酸素の含量が増 していることを特徴とする。
 また、請求項13記載の磁石は、請求項7記載 磁石において、表面改質層中の主層の酸素 含量が2.5mass%~15mass%であることを特徴とする 。
 また、請求項14記載の磁石は、請求項7記載 磁石において、横方向に断続的に伸びる長 が0.5μm~30μmで厚みが50nm~400nmのR濃化層を表 改質層中の主層が有することを特徴とする
 また、請求項15記載の磁石は、請求項7記載 磁石において、表面改質層中の最表層の構 成分として含まれる酸化鉄の75mass%以上がヘ マタイトであることを特徴とする。

 本発明によれば、湿度が変動する環境に いても十分な耐食性が酸化熱処理によって 与されているとともに、酸化熱処理による 気特性の低下が抑制された希土類系焼結磁 およびその製造方法を提供することができ 。

本発明の表面改質された希土類系焼結 石の製造に好適な連続処理炉の一例の概略 (側面図)である。 実施例1における表面改質された磁石体 試験片の表面改質された部分(表面改質層)を 成する最表層を、表面からX線回折装置を用 いて分析した結果を示すチャートである。 実施例4における表面改質された磁石体 試験片の電界放出型走査電子顕微鏡を用いた 断面観察の結果を示す写真である。 同、表面改質された磁石体試験片の表 付近の透過型電子顕微鏡を用いた断面観察 結果を示す写真である(単位はnm)。 比較例4における表面改質された磁石体 試験片の表面改質された部分(表面改質層)を 成する最表層を、表面からX線回折装置を用 いて分析した結果を示すチャートである。 実施例9と比較例5で表面改質を行った れぞれの焼結磁石の磁気特性の測定結果を すグラフである。

 本発明の表面改質された希土類系焼結磁石 製造方法は、磁石体に対し、酸素分圧が1×1 0 2 Pa~1×10 5 Paで水蒸気分圧が0.1Pa~1000Pa(但し1000Paを除く) 雰囲気下、200℃~600℃で熱処理を行う工程を んでなることを特徴とするものである。酸 分圧と、10hPa未満の水蒸気分圧を適切に制 した酸化性雰囲気下で熱処理を行うことで 優れた耐食性を発揮する表面改質を磁石に して効果的に行うことができるとともに、 剰な水蒸気の存在によって引き起こされる 素の大量生成に伴う磁石の磁気特性の低下 抑制することができる。

 希土類系焼結磁石の表面に対して所望する 質をより効果的かつ低コストに行うために 、酸素分圧は5×10 3 Pa~5×10 4 Paが望ましく、1×10 4 Pa~4×10 4 Paがより望ましい。水蒸気分圧は250Pa~900Paが ましく、400Pa~700Paがより望ましい。また、酸 素分圧と水蒸気分圧の比率(酸素分圧/水蒸気 圧)は1~400が望ましく、5~100がより望ましい 処理室内の酸化性雰囲気は、例えば、これ の酸化性ガスを所定の分圧となるように個 に導入することによって形成してもよいし これらの酸化性ガスが所定の分圧で含まれ 露点を有する大気を導入することによって 成してもよい。また、処理室内には、窒素 アルゴンなどの不活性ガスを共存させても い。

 熱処理温度は250℃~550℃が望ましく、300℃ ~450℃がより望ましい。温度が低すぎると希 類系焼結磁石の表面に対して所望する改質 行い難くなる恐れがある一方、温度が高す ると磁石の磁気特性に悪影響を及ぼす恐れ ある。なお、処理時間は1分~3時間が望まし 。

 常温(例えば10℃~30℃)から熱処理温度までの 昇温は、酸素分圧が1×10 2 Pa~1×10 5 Paで水蒸気分圧が1×10 -3 Pa~100Paの雰囲気下で行うことが望ましい。昇 工程を雰囲気制御せずに例えば大気中で行 と、昇温時に大気中に含まれる水分による 化反応が磁石の表面で起こることで、水素 大量発生に伴う磁石の磁気特性の低下を招 恐れがある。また、大気中に含まれる水分 量は季節によって変動するので、年間を通 て安定した品質の表面改質を磁石に対して えない恐れがある。これに対し、上記の雰 気は、適度の酸素と水蒸気を含んでいるの 、昇温工程自体が磁石の表面改質に好まし 影響を与え、磁石に対する優れた耐食性の 与と磁気特性の低下の抑制に寄与する。常 から熱処理温度までの昇温速度は100℃/時間 ~1800℃/時間が望ましく、昇温時間は20分~2時 が望ましい。磁石を熱処理温度まで昇温さ た後は、すぐさま熱処理工程に移ってもよ し、昇温工程の雰囲気中で磁石をしばらく 持してから(例えば1分~60分)熱処理工程に移 てもよい。

 熱処理を行った後の降温も、酸素分圧が1×1 0 2 Pa~1×10 5 Paで水蒸気分圧が1×10 -3 Pa~100Paの雰囲気下で行うことが望ましい。こ ような雰囲気中で降温することにより、工 中に磁石の表面が結露して磁気特性の低下 招くといった現象を防ぐことができる。

 昇温工程、熱処理工程、降温工程は、磁 が収容された処理室内の環境を順次変化さ ることで行ってもよいし、処理室内をそれ れの環境に制御した領域に分割し、各領域 磁石を順次移動させることで行ってもよい

 図1(a)は、昇温工程、熱処理工程、降温工 程を、内部がそれぞれの環境に制御された領 域に分割され、各領域に磁石を順次移動させ ることで行うことができる連続処理炉の一例 の概略図(側面図)である。図1(a)に示す連続処 理炉においては、ベルトコンベアなどの移動 手段によって磁石を図の左から右に移動させ ながら各処理を施す。矢印は図略の給気手段 と排気手段によって形成される各領域におけ る雰囲気ガスの流れである。昇温領域の入口 および降温領域の出口は、例えばエアカーテ ンで区画され、昇温領域と熱処理領域の境界 および熱処理領域と降温領域の境界は、例え ば矢印の雰囲気ガスの流れにより区画される (これらの区画は機械的にシャッターで行わ てもよい)。図1(b)は、図1(a)に示す連続処理 の内部を移動する磁石の温度変化を示す図 ある。このような連続処理炉を用いれば、 量の磁石に対して安定した品質の表面改質 連続的に行うことができる。

 以上の工程によって希土類系焼結磁石の表 に形成される改質層は、磁石の内側から順 、R、Fe、Bおよび酸素を含む主層、少なくと もR、Feおよび酸素を含む非晶質層、ヘマタイ ト(α-Fe 2 O 3 )を主体とする酸化鉄を構成成分として含む 表層の少なくとも3層を有する。表面改質層 の主層は、その組成を表面改質されていな 磁石(素材)の組成と比較すると、Feの含量が 減少し、酸素の含量が増加しており、酸素の 含量は例えば2.5mass%~15mass%である。表面改質 中の主層は、横方向に断続的に伸びる長さ 0.5μm~30μmで厚みが50nm~400nmのR濃化層を有する 場合がある。このR濃化層は、磁石に存在し 加工歪部分にRが析出して形成されたものと 察され、脱粒などによる磁石の強度の低下 補強し、また、部品に埋め込む際の接着剤 介した部品との接着強度の向上に寄与する 考えられる。表面改質層中の最表層は、そ 構成成分として含まれる酸化鉄の75mass%以上 がヘマタイトであることが望ましい。より望 ましくは80mass%であり、さらに望ましくは90mas s%である。酸化鉄がヘマタイトを高比率で含 し、マグネタイト(Fe 3 O 4 )をできる限り含まないことが、磁石の表面 質を行うことによる優れた耐食性の付与に 与する。酸素分圧と、10hPa未満の水蒸気分圧 を適切に制御した酸化性雰囲気下で熱処理を 行うことで、表面改質層中の最表層を、ヘマ タイトを高比率で含有する酸化鉄から構成さ れるようにすることができる。これとは対照 的に、特許文献3~特許文献6に記載されている ような水蒸気分圧が高い雰囲気下で熱処理を 行うと、表面改質層中の最表層を構成する酸 化鉄はマグネタイトを高比率で含有するよう になる。このことが、これらの特許文献に記 載の方法では、湿度の変動が激しい環境にお いて十分な耐食性を発揮する表面改質を磁石 に対して行うことができない原因であると考 えられる。なお、酸化鉄中のヘマタイトの比 率は例えばラマン分析法で分析することがで きる。表面改質層中の主相と最表層の間に位 置する非晶質層は、磁石に含まれるRやFeが酸 化反応によって酸化物に変換される際、安定 な結晶形成がなされなかった部分であると考 えられる。

 なお、希土類系焼結磁石の表面に形成さ る表面改質層の厚みは0.5μm~10μmが望ましい 厚みが薄すぎると十分な耐食性を発揮しな 恐れがある一方、厚みが厚すぎると磁石の 気特性に悪影響を及ぼす恐れがある。表面 質層中の主層の厚みは0.4μm~9.9μmが望ましく 、1μm~7μmがより望ましい。非晶質層の厚みは 100nm以下であることが望ましく、70nm以下がよ り望ましい(下限値は例えば10nmが望ましい)。 最表層の厚みは10nm~300nmであることが望まし 、50nm~200nmがより望ましい。

 また、以上の工程の前および/または後に、 さらに、酸素分圧が1×10 -2 Pa~50Paで水蒸気分圧が1×10 -7 Pa~1×10 -2 Paの雰囲気下、200℃~600℃で熱処理を行っても よい。かかる熱処理を付加することにより、 希土類系焼結磁石の表面改質をより確実なも のとすることができる。処理時間は1分~3時間 が望ましい。

 本発明が適用される希土類系焼結磁石とし は、例えば、下記の製造方法によって製造 たR-Fe-B系焼結磁石が挙げられる。
 25質量%以上40質量%以下の希土類元素Rと、0.6 質量%~1.6質量%のB(硼素)と、残部Feおよび不可 不純物とを包含する合金を用意する。ここ 、Rの一部は重希土類元素RHで置換されても い。また、Bの一部はC(炭素)によって置換さ れていてもよいし、Feの一部は(50質量%以下) 、他の遷移金属元素(例えば、CoまたはNi)に って置換されていてもよい。この合金は、 々の目的により、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、C u、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb 、およびBiからなる群から選択された少なく も1種の添加元素Mを0.01~1.0質量%程度含有し いてもよい。
 上記の合金は、原料合金の溶湯を例えばス リップキャスト法によって急冷して好適に 製され得る。以下、ストリップキャスト法 よる急冷凝固合金の作製を説明する。
 まず、上記組成を有する原料合金をアルゴ 雰囲気中において高周波溶解によって溶解 、原料合金の溶湯を形成する。次に、この 湯を1350℃程度に保持した後、単ロール法に よって急冷し、例えば厚さ約0.3mmのフレーク 合金鋳塊を得る。こうして作製した合金鋳 を、次の水素粉砕処理前に例えば1~10mmのフ ーク状に粉砕する。なお、ストリップキャ ト法による原料合金の製造方法は、例えば 米国特許第5、383、978号明細書に開示されて いる。
 [粗粉砕工程]
 上記のフレーク状に粗く粉砕された合金鋳 を水素炉の内部へ収容する。次に、水素炉 内部で水素脆化処理(以下、「水素粉砕処理 」や単に「水素処理」と称する場合がある) 程を行う。水素粉砕処理後の粗粉砕粉合金 末を水素炉から取り出す際、粗粉砕粉が大 と接触しないように、不活性雰囲気下で取 出し動作を実行することが好ましい。そう れば、粗粉砕粉が酸化・発熱することが防 され、磁石の磁気特性の低下が抑制できる らである。
 水素粉砕処理によって、希土類合金は0.1mm~ mm程度の大きさに粉砕され、その平均粒径 500μm以下となる。水素粉砕処理後、脆化し 原料合金をより細かく解砕するとともに冷 することが好ましい。比較的高い温度状態 まま原料を取り出す場合は、冷却処理の時 を相対的に長くすればよい。
 [微粉砕工程]
 次に、粗粉砕粉に対してジェットミル粉砕 置を用いて微粉砕を実行する。本実施形態 使用するジェットミル粉砕装置にはサイク ン分級機が接続されている。ジェットミル 砕装置は、粗粉砕工程で粗く粉砕された希 類合金(粗粉砕粉)の供給を受け、粉砕機内 粉砕する。粉砕機内で粉砕された粉末はサ クロン分級機を経て回収タンクに集められ 。こうして、0.1~20μm程度(典型的には平均粒 3~5μm)の微粉末を得ることができる。このよ うな微粉砕に用いる粉砕装置は、ジェットミ ルに限定されず、アトライタやボールミルで あってもよい。粉砕に際して、ステアリン酸 亜鉛などの潤滑剤を粉砕助剤として用いても よい。
 [プレス成形]
 本実施形態では、上記方法で作製された磁 粉末に対し、例えばロッキングミキサー内 潤滑剤を例えば0.3wt%添加・混合し、潤滑剤 合金粉末粒子の表面を被覆する。次に、上 の方法で作製した磁性粉末を公知のプレス 置を用いて配向磁界中で成形する。印加す 磁界の強度は、例えば1.5~1.7テスラ(T)である 。また、成形圧力は、成形体のグリーン密度 が例えば4~4.5g/cm 3 程度になるように設定される。
 [焼結工程]
 上記の粉末成形体に対して、650~1000℃の範 内の温度で10~240分間保持する工程と、その 、上記の保持温度よりも高い温度(例えば、1 000~1200℃)で焼結を更に進める工程とを順次行 うことが好ましい。焼結時、特に液相が生成 されるとき(温度が650~1000℃の範囲内にあると き)、粒界相中のRリッチ相が融け始め、液相 形成される。その後、焼結が進行し、焼結 石体が形成される。焼結工程の後、時効処 (400℃~700℃)や寸法調整のための研削を行っ もよい。

 以下、本発明を実施例によってさらに詳細 説明するが、本発明はこれに限定して解釈 れるものではない。なお、以下の実施例と 較例は、下記の製造方法によって製造したN d-Fe-B系焼結磁石を用いて行った。
 Nd:23.0、Pr:7.0、Dy:1.2、B:1.00、Co:0.9、Cu:0.1、Al: 0.2、残部:Fe(単位は質量%)の組成を有する厚さ 0.2~0.3mmの合金薄片をストリップキャスト法に より作製した。
 次に、この合金薄片を容器に充填し、水素 理装置内に収容した。そして、水素処理装 内を圧力500kPaの水素ガスで満たすことによ 、室温で合金薄片に水素吸蔵させた後、放 させた。このような水素処理を行うことに り、合金薄片を脆化し、大きさ約0.15~0.2mmの 不定形粉末を作製した。
 上記の水素処理により作製した粗粉砕粉末 対し粉砕助剤として0.04wt%のステアリン酸亜 鉛を添加し混合した後、ジェットミル装置に よる粉砕工程を行うことにより、粉末粒径が 約3μmの微粉末を作製した。
 こうして作製した微粉末をプレス装置によ 成形し、粉末成形体を作製した。具体的に 、印加磁界中で粉末粒子を磁界配向した状 で圧縮し、プレス成形を行った。その後、 形体をプレス装置から抜き出し、真空炉に り1050℃で4時間の焼結工程行った。こうし 、焼結体ブロックを作製したあと、この焼 体ブロックを機械的に加工することにより 厚さ6mm×縦7mm×横7mmの焼結磁石(以下、「磁石 体試験片」と称する)を得た。

(実施例1)
 アルコール洗浄した後、真空中にて490℃で2 .5時間の時効処理を行った磁石体試験片に対 、露点0℃の大気(酸素分圧20000Pa,水蒸気分圧 600Pa,酸素分圧/水蒸気分圧=33.3)の雰囲気下、40 0℃で15分間の熱処理を行うことで、表面改質 された磁石体試験片を得た。なお、磁石体試 験片の室温から熱処理温度までの昇温は、露 点-40℃の大気(酸素分圧20000Pa,水蒸気分圧12.9Pa )の雰囲気下、約900℃/時間の昇温速度で行っ (昇温時間は25分)。また、熱処理後の降温も 、同様の雰囲気下で行った。この磁石体試験 片を樹脂埋め研磨後、イオンビーム断面加工 装置(SM09010:日本電子社製)を用いて試料作製 、デジタルマイクロスコープ(VHX-200:キーエ ス社製)を用いて断面観察を行ったところ、 石体試験片の表面に形成された改質層の厚 は約2.6μmであること、この改質層は複数の からなり、少なくとも主層と、厚みが50nm~30 0nmの最表層が存在することがわかった。改質 層中の主層の組成と素材(磁石体試験片)の組 をエネルギー分散型X線分析装置(Genesis2000:ED AX社製)を用いて分析した結果を表1に示す。 1から明らかなように、改質層中の主層は素 に比較してFeの含量が少ない反面、酸素の 量が非常に多いことがわかった。また、別 、表面改質された磁石体試験片の表面からX 回折装置(RINT2400:Rigaku社製)を用いて改質層 の最表層を分析した結果を図2に示す。図2か ら明らかなように、改質層中の最表層はヘマ タイトを主体とする層であることがわかった 。このヘマタイトを主体とする最表層は、熱 処理によって素材の主相の一部が分解された ことでFeが主相から流出するとともに酸化し 形成されたものであると推測された。

(実施例2)
 アルコール洗浄した磁石体試験片に対し、 施例1と同じ条件で熱処理を行った後、酸素 分圧が5Paで水蒸気分圧が2.5×10 -3 Paの雰囲気下、500℃で5分間の熱処理を行うこ とで、表面改質された磁石体試験片を得た。 この磁石体試験片について実施例1と同様の 価を行ったところ、磁石体試験片の表面に 成された改質層は、厚みが約5.5μmであり、 の構成は実施例1で得た表面改質された磁石 試験片における改質層と同様であることが かった(表1)。

(実施例3)
 アルコール洗浄した磁石体試験片に対し、 素分圧が5Paで水蒸気分圧が2.5×10 -3 Paの雰囲気下、500℃で5分間の熱処理を行った 後、実施例1と同じ条件で熱処理を行うこと 、表面改質された磁石体試験片を得た。こ 磁石体試験片について実施例1と同様の評価 行ったところ、磁石体試験片の表面に形成 れた改質層は、厚みが約4.1μmであり、その 成は実施例1で得た表面改質された磁石体試 験片における改質層と同様であることがわか った(表1)。

(実施例4)
 アルコール洗浄した後、真空中にて490℃で2 .5時間の時効処理を行った磁石体試験片に対 、露点0℃の大気(酸素分圧20000Pa,水蒸気分圧 600Pa,酸素分圧/水蒸気分圧=33.3)の雰囲気下、40 0℃で2時間の熱処理を行うことで、表面改質 れた磁石体試験片を得た。なお、磁石体試 片の室温から熱処理温度までの昇温と、熱 理後の降温は、実施例1と同様の条件で行っ た。この磁石体試験片について実施例1と同 の方法で試料作製し、電界放出型走査電子 微鏡(S-4300:日立ハイテクノロジー社製)を用 て断面観察を行った結果を図3に示す。図3か ら明らかなように、磁石体試験片の表面に形 成された改質層の厚みは約6.1μmであること、 この改質層は複数の層からなり、少なくとも 主層と、厚みが約200nmの最表層が存在するこ がわかった。さらに、改質層中には、厚み 約100nmで長さが約5μmのNdからなる層状構造(N dの組成が85mass%以上のNd濃化層)が水平方向(磁 石体の表面と略平行方向)に形成されている とが確認できた。改質層中の主層の組成と 材の組成を実施例1と同様の方法で分析した 果を表1に示す。表1から明らかなように、 質層中の主層は素材に比較してFeの含量が少 ない反面、酸素の含量が非常に多いことがわ かった。また、別途、実施例1と同様の方法 行った改質層中の最表層の分析により、こ 最表層はヘマタイトを主体とする層である とがわかった。さらに、表面改質された磁 体試験片の表面付近の断面観察を、透過型 子顕微鏡(HF2100:日立ハイテクノロジー社製) 用いて行った結果を図4に示す(図4は図3の改 層の表面付近の拡大像に相当する)。図4か 明らかなように、主相と厚みが約200nmの最表 層の間には、厚みが約50nmの層が存在するこ がわかった。また、この層は非晶質である とがわかった(電子線回折分析による)。改質 層中の非晶質層と最表層の組成を、エネルギ ー分散型X線分析装置(EDX:NORAN社製)を用いて分 析した結果を表2に示す。表2から明らかなよ に、改質層中の最表層はNdがほとんど存在 ない酸化鉄から構成されること、非晶質層 NdとFeの複合酸化物から構成されることがわ った。さらに、改質層中の最表層を構成す 酸化鉄は100mass%がヘマタイトであることが かった(ラマン分析による)。

(比較例1)
 アルコール洗浄した後、真空中にて490℃で2 .5時間の時効処理を行った磁石体試験片に対 、露点15℃の大気(酸素分圧20000Pa,水蒸気分 2000Pa)の雰囲気下、400℃で15分間の熱処理を うことで、表面改質された磁石体試験片を た。なお、磁石体試験片の室温から熱処理 度までの昇温は、露点-40℃のアルゴンの雰 気下(水蒸気分圧12.9Pa)、約900℃/時間の昇温 度で行った(昇温時間は25分)。また、熱処理 の降温も、同様の雰囲気下で行った。以上 処理によって磁石体試験片の表面に形成さ た改質層の厚みは3.5μmであった。

(比較例2)
 アルコール洗浄した磁石体試験片に対し、 素分圧が100Paで水蒸気分圧が5×10 -2 Paの雰囲気下、500℃で30分間の熱処理を行う とで、表面改質された磁石体試験片を得た なお、磁石体試験片の室温から熱処理温度 での昇温は、真空雰囲気下(真空度1×10 -4 Pa以下)、約190℃/時間の昇温速度で行った(昇 時間は2.5時間)。また、熱処理後の降温も、 同様の雰囲気下で行った。以上の処理によっ て磁石体試験片の表面に形成された改質層の 厚みは8.0μmであった。

(比較例3)
 アルコール洗浄した磁石体試験片に対し、 素分圧が1×10 -4 Paで水蒸気分圧が5×10 -8 Paの雰囲気下、500℃で1時間の熱処理を行うこ とで、表面改質された磁石体試験片を得た。 なお、磁石体試験片の室温から熱処理温度ま での昇温と、熱処理後の降温は、比較例2と 様の条件で行った。以上の処理によって磁 体試験片の表面に形成された改質層の厚み 0.5μmであった。

(比較例4)
 アルコール洗浄した後、真空中にて490℃で2 .5時間の時効処理を行った磁石体試験片を、2 %HNO 3 水溶液中に2分間浸漬し、その後、超音波水 を行った。この磁石体試験片に対し、露点40 ℃の窒素の雰囲気下(水蒸気分圧7000Pa)、450℃ 10分間の熱処理を行うことで、表面改質さ た磁石体試験片を得た。なお、磁石体試験 の室温から熱処理温度までの昇温は、露点-4 0℃の窒素の雰囲気下(水蒸気分圧12.9Pa)、約100 0℃/時間の昇温速度で行った(昇温時間は25分) 。また、熱処理後の降温も、同様の雰囲気下 で行った。以上の処理によって磁石体試験片 の表面に形成された改質層の厚みは7.4μmであ った。また、改質層中の最表層の厚みは約100 nmであった。また、別途、実施例1と同様の方 法で改質層中の最表層を分析した結果を図5 示す。図5から明らかなように、改質層中の 表層はマグネタイトを主体とする層である とがわかった。

(実施例5)
 アルコール洗浄した後、真空中にて490℃で2 .5時間の時効処理を行った磁石体試験片に対 、露点5℃の大気(酸素分圧20000Pa,水蒸気分圧 875Pa,酸素分圧/水蒸気分圧=22.9)の雰囲気下、35 0℃で2時間の熱処理を行うことで、表面改質 れた磁石体試験片を得た。なお、磁石体試 片の室温から熱処理温度までの昇温は、露 -40℃の大気(酸素分圧20000Pa,水蒸気分圧12.9Pa) の雰囲気下、約800℃/時間の昇温速度で行っ (昇温時間は25分)。また、熱処理後の降温も 同様の雰囲気下で行った。

(実施例6)
 アルコール洗浄した後、真空中にて490℃で2 .5時間の時効処理を行った磁石体試験片に対 、露点-10℃の大気(酸素分圧20000Pa,水蒸気分 260Pa,酸素分圧/水蒸気分圧=76.9)の雰囲気下、 350℃で2時間の熱処理を行うことで、表面改 された磁石体試験片を得た。なお、磁石体 験片の室温から熱処理温度までの昇温と、 処理後の降温は、実施例5と同様の条件で行 た。

(実施例7)
 磁石体試験片の室温から熱処理温度までの 温を、露点-25℃の大気(酸素分圧20000Pa,水蒸 分圧63.6Pa)の雰囲気下、約900℃/時間の昇温 度で行い(昇温時間は25分)、熱処理後の降温 、同様の雰囲気下で行うこと以外は実施例1 と同様にして、表面改質された磁石体試験片 を得た。

(実施例8)
 磁石体試験片の室温から熱処理温度までの 温を、露点-40℃の大気(酸素分圧20000Pa,水蒸 分圧12.9Pa)の雰囲気下、約450℃/時間の昇温 度で行い(昇温時間は50分)、熱処理後の降温 、同様の雰囲気下で行うこと以外は実施例1 と同様にして、表面改質された磁石体試験片 を得た。

(実施例9)
 アルコール洗浄した後、真空中にて490℃で2 .5時間の時効処理を行った厚さ1mm×縦7mm×横7mm の焼結磁石(作製方法は上記と同じ)に対し、 点0℃の大気(酸素分圧20000Pa,水蒸気分圧600Pa, 酸素分圧/水蒸気分圧=33.3)の雰囲気下、400℃ 15分間の熱処理を行うことで、磁石の表面を 改質した。なお、磁石の室温から熱処理温度 までの昇温と、熱処理後の降温は、実施例1 同様の条件で行った。

(比較例5)
 アルコール洗浄した後、真空中にて490℃で2 .5時間の時効処理を行った厚さ1mm×縦7mm×横7mm の焼結磁石(作製方法は上記と同じ)に対し、 点40℃の窒素の雰囲気下(水蒸気分圧7000Pa)、 450℃で10分間の熱処理を行うことで、磁石の 面を改質した。なお、磁石の室温から熱処 温度までの昇温と、熱処理後の降温は、比 例4と同様の条件で行った。

乾燥・湿潤サイクル試験による評価:
 JIS H8502-1999に基づく中性塩水噴霧サイクル 験方法を参考にし、塩水噴霧を除いた乾燥 湿潤だけのサイクル試験(サイクル数:3)を、 実施例1~実施例8と比較例1~比較例4で得た表面 改質された磁石体試験片に対して行い、試験 後のレイティングナンバ評価(JIS H8502-1999に づく腐食欠陥評価)を実施した。結果を表3に 示す。また、表3には、アルコール洗浄した 石体試験片に対し、真空中にて490℃で2.5時 の時効処理だけを行った場合の評価結果を わせて示す(参考例)。

 表3から明らかなように、実施例1~実施例8 の本発明の方法によって表面改質を行った磁 石体試験片は、乾燥・湿潤サイクル試験後も 十分な耐食性を有していた(実用上問題とな 磁気特性の劣化もなかった)。以上の結果に 、磁石体試験片の表面に形成された改質層 、少なくとも酸素の含量が素材よりも多い 層と、安定なヘマタイトを主体とする酸化 を構成成分とする最表層を有する構成から ることが寄与していると考えられた。また 実施例4における磁石体試験片の表面に形成 された改質層中に確認されたNdからなる層状 造は、熱処理によって素材の主相の一部が 解されたことでNdが主相から流出し、主相 ら流出したNdが、素材と改質層の熱膨張率の 違いにより改質層中に僅かに発生した歪部分 で析出して形成されたものであると推測され たが、このNdからなる層状構造も、改質層の 食性に寄与していることが考えられた。

磁気特性の評価:
 実施例9と比較例5で表面改質を行ったそれ れの焼結磁石の磁気特性を、磁気測定装置(S K-130:メトロン技研社製)を用いて測定した結 を図6に示す。また、図6には、時効処理を行 った直後の焼結磁石の磁気特性を測定した結 果をあわせて示す(参考例)。図6から明らかな ように、実施例9で表面改質を行った焼結磁 は、表面改質を行ったことによる磁気特性 低下は全く認められなかったが、比較例5で 面改質を行った焼結磁石は、表面改質を行 ことで磁気特性の著しい低下が認められた この違いは、比較例5で表面改質を行った焼 結磁石では、酸素を含まずに水蒸気のみを大 量に含む窒素の雰囲気下で熱処理を行ったこ とで、磁石の表面で起こる酸化反応によって 水素が副産物として大量に生成し、磁石が生 成した水素を吸蔵して脆化してしまったのに 対し、実施例9で表面改質を行った焼結磁石 は、酸素と水蒸気を適度に含む雰囲気下で 処理を行ったことで、水蒸気による磁石表 における過度の酸化反応が抑えられ、その 果として水素の発生が抑えられたことによ て磁石の水素吸蔵量が皆無であったことに づくと考えられた。

 本発明は、湿度が変動する環境においても 分な耐食性が酸化熱処理によって付与され いるとともに、酸化熱処理による磁気特性 低下が抑制された希土類系焼結磁石および の製造方法を提供することができる点にお て産業上の利用可能性を有する。