尾山 太郎 (〒20 静岡県駿東郡長泉町上土狩234番地 東邦テナックス株式会社内 Shizuoka, 4118720, JP)
KAWAHITO, Rie (234, Kamitogari, Nagaizumi-ch, Sunto-gun Shizuoka 20, 4118720, JP)
東邦テナックス株式会社 (〒85 東京都千代田区霞が関三丁目2番1号 Tokyo, 1008585, JP)
OYAMA, Taro (234, Kamitogari, Nagaizumi-ch, Sunto-gun Shizuoka 20, 4118720, JP)
尾山 太郎 (〒20 静岡県駿東郡長泉町上土狩234番地 東邦テナックス株式会社内 Shizuoka, 4118720, JP)
| ポリアクリル系前駆体繊維を酸化性雰囲気中で耐炎化処理して耐炎化繊維を製造するに際し、(1)耐炎化処理の前処理として、該前駆体繊維を、温度が220~260℃の範囲で荷重が0.58g/tex以下で、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)で測定される該前駆体繊維の環化度(I 1620 /I 2240 )が7%を越えない条件で収縮させ、その後、(2)230~260℃の酸化性雰囲気中で、該前駆体繊維の環化度が27%を越えず且つ密度が1.2g/cm 3 を超えない範囲で、該前駆体繊維を、荷重が2.7~3.5g/texで初期延伸し、引き続いて(3)酸化性雰囲気中で200~280℃で、延伸倍率0.85~1.3倍の範囲で、密度が1.3~1.5g/cm 3 の範囲になるまで、該前駆体繊維を耐炎化処理することを特徴とする耐炎化繊維の製造方法。 |
| ポリアクリル系前駆体繊維が、フィラメント数が20,000本以上で、広角X線回折で測定される配向度が90%以下であり、且つ、単位重量当たり20~50重量%の水分を含むポリアクリル系炭素繊維前駆体繊維束であることを特徴とする請求項1記載の耐炎化繊維の製造方法。 |
| ポリアクリル系前駆体繊維を酸化性雰囲気中で耐炎化処理し、その後、不活性雰囲気中で炭素化処理することによって炭素繊維を製造するに際し、(1)耐炎化処理の前処理として、該前駆体繊維を、温度が220~260℃の範囲で荷重が0.58g/tex以下で、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)で測定される該前駆体繊維の環化度(I 1620 /I 2240 )が7%を越えない条件で収縮させ、その後、(2)230~260℃の酸化性雰囲気中で、該前駆体繊維の環化度が27%を越えず且つ密度が1.2g/cm 3 を超えない範囲で、該前駆体繊維を、荷重が2.7~3.5g/texで初期延伸し、引き続いて(3)酸化性雰囲気中で200~280℃で、延伸倍率0.85~1.3倍の範囲で、密度が1.3~1.5g/cm 3 の範囲になるまで、該前駆体繊維を耐炎化処理し、その後、炭素化処理することを特徴とする炭素繊維の製造方法。 |
| ポリアクリル系前駆体繊維が、フィラメント数が20,000本以上で、広角X線回折で測定される配向度が90%以下であり、且つ、単位重量当たり20~50重量%の水分を含むポリアクリル系炭素繊維前駆体繊維束であることを特徴とする請求項3記載の炭素繊維の製造方法。 |
| 請求項3又は4記載の製造方法で得られた、引張り強度が5880MPa以上で、弾性率が308GPa以上の炭素繊維。 |
本発明は、高強度炭素繊維の製造方法と、 その中間原料として有用な耐炎化繊維の製造 方法に関する。
近年、炭素繊維を強化繊維として用いた複 合材料は、軽く、高強度等の優れた機械的特 性を有するので、航空機等の構造材として多 く用いられてきている。これらの複合材料は 、例えば、強化繊維にマトリックス樹脂が含 浸された中間製品であるプリプレグから、加 熱・加圧といった成形・加工工程を経て成形 される。従って、所望の複合材料を得るため には、それぞれに最適の材料あるいは成形・ 加工手段を採用する必要がある。そして、用 途によっては、強化繊維である炭素繊維も、 更に高い強度等が要求される場合がある。例 えば、航空機用の複合材料において軽量化を 目的とした場合には、炭素繊維の強度を維持 したまま弾性を上げることが必要になるが、 炭素繊維は一般的に、弾性率が上がるに従っ て脆性が増し、伸度が低下するので、高いコ ンポジット性能を有する複合材料を得ること が困難である。
航空機分野では、従来は、強度と弾性率が 中程度の炭素繊維、例えば、強度が5680MPa、 性率が294GPa程度のものがよく用いられてい が、最近では、機体の軽量化を主目的に、 り高性能の複合材料が要求されるようにな 、それに応えるために、高強度と高弾性を 立させた炭素繊維の開発が試みられてきた しかし、弾性率と伸度はトレードオフの関 にあるので、弾性率を増加させるのに伴い 素繊維の伸度が低下し、脆性も増加する。 って、高弾性且つ高強度でしかも脆性等の 性の低下の少ない高性能の炭素繊維を製造 ることは、非常に困難であった。特にこの 向は、弾性率が294GPaを超えると顕著になり 安定した物性を確保することも含め、開発 非常に困難であった。
炭素繊維とマトリックス樹脂との複合化にお
いて、高性能化を追求するためには、前記の
ごとく炭素繊維そのもの自体の強度や弾性率
等をも向上させることが必要不可欠である。
そして、炭素繊維の強度や弾性率の向上等に
ついては、従来から色々と検討がなされてい
るが、特にポリアクリル系前駆体繊維から炭
素繊維を製造するための、耐炎化工程及び/
は炭素化(黒鉛化を含む)工程の改善・改良の
検討が、比較的最近でも精力的に行われてい
る(例えば、特許文献1~5参照)。しかしながら
現在の特に高いコンポジット性能が求めら
る複合材料に適した、高強度高弾性の炭素
維の工業的に有利な製法は、未だ必ずしも
立されてはいない。
一般的に、ポリアクリル系前駆体繊維を用 いて炭素繊維を製造する方法としては、前駆 体繊維を200~280℃の酸化性雰囲気下で延伸又 収縮を行いながら酸化処理(耐炎化処理)を行 った後、300℃以上の不活性ガス雰囲気中で炭 素化して製造する方法が知られている。とり わけ耐炎化処理工程における繊維の処理方法 は、炭素繊維の強度発現に大きく影響を及ぼ し、古くから多くの検討が行われてきた。
例えば、耐炎化工程での伸長率が-10~+10%(延伸
倍率0.9~1.1)の範囲で製造された、繊維密度が1
.30~1.42g/cm 3
の範囲にある耐炎化処理糸を炭素化すること
により高強度炭素繊維が得られること(特許
献6参照)、繊維密度が1.22g/cm 3
に達するまで3%以上の伸長率(1.03以上の延伸
率)を与え、以後の収縮を実質的に抑制して
炎化処理を行い、続いて炭素化することに
り高強度の炭素繊維が得られること(特許文
献7参照)、あるいはまた、繊維密度が1.22g/cm 3
に達するまで3%以上の伸長率(1.03以上の延伸
率)で耐炎化処理を行った後、更に1%以上の
長率(1.01以上の延伸倍率)で延伸処理を行い
その後炭素化することによりストランド強
460kgf/mm 2
以上の炭素繊維が得られること(特許文献8参
)等が古くから報告されている。
本発明の課題は、最近、特に高いコンポジ ット性能が求められる複合材料に適した、高 強度高弾性の炭素繊維を製造する方法を提供 することにある。
本発明者らは、特に高いコンポジット性能 が求められる複合材料に適した、高強度高弾 性の炭素繊維を製造するために、前記のごと く従来から知られているポリアクリル系前駆 体繊維を用いて炭素繊維を製造する方法にお いて、全く新しい観点から、耐炎化工程及び /又は炭素化(黒鉛化を含む)工程を改良し、本 発明に到達したものである。
本発明の態様の一つは、ポリアクリル系前駆 体繊維を酸化性雰囲気中で耐炎化処理して耐 炎化繊維を製造するに際し、(1)耐炎化処理の 前処理として、該前駆体繊維を、温度が220~26 0℃の範囲で荷重が0.58g/tex以下で、フーリエ 換赤外分光光度計(FT-IR)で測定される該前駆 繊維の環化度(I 1620 /I 2240 )が7%を越えない条件で収縮させ、その後、(2) 230~260℃の酸化性雰囲気中で、該前駆体繊維 環化度が27%を越えず且つ密度が1.2g/cm 3 を超えない範囲で、該前駆体繊維を、荷重が 2.7~3.5g/texで初期延伸し、引き続いて(3)酸化性 雰囲気中で200~280℃、好ましくは240~250℃で、 伸倍率0.85~1.3倍、好ましくは0.95倍以上の範 で、密度が1.3~1.5g/cm 3 の範囲になるまで、該前駆体繊維を耐炎化処 理することを特徴とする耐炎化繊維の製造方 法である。
本発明の他の態様は、前記のごとくして得 られたポリアクリル系前駆体繊維を、引き続 いて、公知の方法で炭素化処理することを特 徴とする炭素繊維の製造方法である。なお、 本発明において炭素化処理というときには、 いわゆる黒鉛化処理も含むものである。
本発明の更に他の態様は、前記記載の製造 方法で得られた、引張り強度が5880MPa以上で 弾性率が308GPa以上の炭素繊維自体である。
本発明においては、ポリアクリル系前駆体 繊維を耐炎化処理する際に、その前処理とし て、繊維を一度収縮させることで繊維中の水 分を排出し、繊維の構造をボイドレスなもの にしている。その結果、内部欠陥が減少した 耐炎化繊維を製造することができる。そして 、これを中間原料として、従来公知の方法で 炭素化処理を行うと、高強度高弾性の炭素繊 維が得られる。条件を適切に設定すれば、引 張り強度が5880MPa以上で、弾性率が308GPa以上 、高強度を維持しつつ弾性率を向上させた 素繊維が得られる。そして、かかる炭素繊 とマトリックス樹脂とから得られた複合材 は、優れたコンポジット特性を有するので 従来のものよりもより高性能な複合材料を ることができ、これらは、航空宇宙分野や 動車分野等において、軽量で且つ構造材に した複合材料として利用できる。
本発明において、耐炎化繊維又は炭素繊維 の製造方法に用いられるポリアクリル系前駆 体繊維としては、従来公知のポリアクリル系 繊維が何ら制限なく使用できる。その中でも 、広角X線回折(回折角17°)による配向度が90.5% 以下のポリアクリル系繊維が好ましい。具体 的には、アクリロニトリルを90重量%以上、好 ましくは95重量%以上含有する単量体を単独又 は共重合した紡糸溶液を紡糸して、炭素繊維 原料(前駆体繊維)が得られる。紡糸方法とし は、湿式又は乾湿式紡糸方法いずれの方法 用いることができるが、樹脂とのアンカー 果による接着性に優れた炭素繊維を得るた には、表面にひだを有する繊維が得られる 式紡糸方法がより好ましい。また、湿式紡 方法により得られた繊維は、その後、水洗 乾燥・延伸して炭素繊維原料とすることが ましい。共重合する単量体としては、アク ル酸メチル、イタコン酸、メタクリル酸メ ル、アクリル酸等が好ましい。
このようにして得られるポリアクリル系前 駆体繊維を、本発明の耐炎化繊維の製造法に 従って耐炎化処理して耐炎化繊維を得ること ができる。そして、この耐炎化繊維を炭素化 (必要に応じて、いわゆる黒鉛化処理するこ も含む)することによって高強度高弾性の炭 繊維を得ることができる。
ポリアクリル系前駆体繊維の通常の耐炎化処 理は、例えば、加熱空気等の酸化性雰囲気中 200~280℃、好ましくは、240~250℃の温度範囲内 行われる。この際、前駆体繊維は、一般的 延伸倍率0.85~1.3倍の範囲で延伸又は収縮処 されるが、高強度・高弾性の炭素繊維を得 ためには、0.95倍以上とするのがより好まし 。この耐炎化処理によって、繊維密度1.3~1.5 g/cm 3 の耐炎化繊維が得られるが、耐炎化時の糸に かかる張力は特に限定されるものではない。
耐炎化処理過程では、延伸処理しなければ ポリアクリル系前駆体繊維は、処理温度の上 昇と共に収縮する。そこで、延伸応力を調節 して延伸処理することにより延伸倍率を調節 することができる。延伸倍率1.0とは、繊維に 延伸応力を与えているが、収縮と延伸とのバ ランスがとれ延伸前と延伸後との長さが同一 であることを示す。
本発明においては、前記耐炎化処理の際、先 ず前処理を行うことを特徴とする。即ち、先 ず、(1)耐炎化処理の前処理として、前駆体繊 維を、温度が220~260℃、好ましくは230~245℃の 囲で荷重が0.58g/tex以下、好ましくは0.55g/tex 下で、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)で 測定される前駆体繊維の環化度(I 1620 /I 2240 )が7%を越えない、好ましくは6.6%以下の条件 収縮させる。しかし、荷重を下げ過ぎると 走行糸が弛み炉やヒーター部に接触するこ により、走行糸が切断したり、あるいは表 傷による物性の低下が起こる可能性がある で、荷重は、走行糸が弛まない重さ以上で 且つ上記範囲内にあるのが好ましい。
なお、本発明においてフーリエ変換赤外分光 光度計(FT-IR)で測定される前駆体繊維の環化 (I 1620 /I 2240 )とは、耐炎化反応の指標として用いられる であり、耐炎化が進むにつれI 2240 に現れるニトリル基が開環し、I 1620 に現れるナフチリジン環へと反応して行く反 応度合いを示したものである。
本発明においては、前記のごとく前処理され た前駆体繊維を、その後、(2)230~260℃、好ま くは240~250℃の酸化性雰囲気中で、この前駆 繊維の環化度が27%を越えず且つ密度が1.2g/cm 3 を超えない範囲で、この前駆体繊維を、荷重 が2.7~3.5g/tex、好ましくは2.8~3.0g/texで初期延伸 する。この際、荷重がこの範囲外になると、 工程でフィラメントの切断が起こる可能性が あり、工程が不安定になり生産性が悪化する ため、好ましくない。
前記のごとく工程(1)で前処理された前駆体繊 維は、工程(2)で前記の条件下で初期延伸され る。そして、引き続いて前駆体繊維は通常の 耐炎化処理が行われる。即ち、(3)酸化性雰囲 気中で200~280℃、好ましくは240~250℃で、延伸 率0.85~1.3倍、好ましくは0.95倍以上の範囲で 密度が1.3~1.5g/cm 3 の範囲になるまで、前駆体繊維を耐炎化処理 して耐炎化繊維を得る。
ポリアクリル系前駆体繊維の耐炎化処理は 、通常、雰囲気ガス循環式の加熱炉で、前駆 体繊維を、供給ローラーと引き取りローラー 間に複数回、所定の荷重をかけて延伸又は収 縮させながら通過させることによって行われ る。そして、通常、ポリアクリル系前駆体繊 維は前駆体繊維束(ストランド)状態で処理さ るので、ストランドはできるだけ収束され 状態にあるのが、工程の安定性のために好 しい。特に、フィラメント数が20,000本以上 太いストランドの場合には、適当な油剤を 与してストランドの収束性を維持すること 好ましい。
本発明における工程(1)での前駆体繊維の緻密 化は、水分を含むポリアクリル系前駆体繊維 の耐炎化処理には必須である。通常、耐炎化 反応の始まっていない繊維は疎の構造であり 、熱を掛けると繊維中の水分が蒸発し、繊維 外に排出される。ところが、耐炎化処理は繊 維表面から起こるため、繊維中の水分が抜け きる前に耐炎化反応が始まると、この耐炎化 反応により形成された表面構造により水分の 排出が阻害される。この排出不十分な水蒸気 が繊維中にボイドを形成し、構造欠陥になる ため、得られる耐炎化繊維の強度が低下する という問題があった。そこで、本発明におい ては、耐炎化処理前に、一定の条件、即ち、 前駆体繊維を、温度が220~260℃の範囲で荷重 0.58g/tex以下で、フーリエ変換赤外分光光度 (FT-IR)で測定される前駆体繊維の環化度(I 1620 /I 2240 )が7%を越えない条件で収縮させることによっ て、前駆体繊維をある程度緻密化し、繊維中 の水分を十分除去し、繊維内部での構造欠陥 となりうるボイドの発生を抑えるものである 。
しかし、前駆体繊維を緻密化するとその分子 構造がルーズになり、その後、通常の条件で 耐炎化処理を行ったのでは、最終的に満足す べき高強度高弾性の炭素繊維が得られないと いう別な問題があった。そこで、本発明では 、耐炎化処理工程の初期の段階で、230~260℃ 酸化性雰囲気中で、前駆体繊維の環化度が27 %を越えず且つ密度が1.2g/cm 3 を超えない範囲で、前駆体繊維を、荷重が2.7 ~3.5g/texで初期延伸するという工夫がなされて いる。かかる手段によって、前記問題が解決 することが判明したのである。
その後は、引き続いて、同じ耐炎化炉で、酸 化性雰囲気中で200~280℃、好ましくは240~250℃ 、延伸倍率0.85~1.3倍、好ましくは0.95倍以上 範囲で、密度が1.3~1.5g/cm 3 の範囲になるまで、通常の条件の範囲内の耐 炎化処理が行われる。
前記のような本発明の方法が、生産コスト や品質的に特に有利に適用されるのは、フィ ラメント数が20,000本以上で、広角X線回折で 定される配向度が90%以下であり、且つ、単 重量当たり20~50重量%の水分を含むポリアク ル系炭素繊維前駆体繊維束の場合である。 記条件で耐炎化処理して得られる耐炎化繊 は、工程の通過性が良いため生産性が高く ると共に、延伸により構造的に配向度が向 するため、この耐炎化繊維を炭素化して得 れる炭素繊維の強度は高くなるという特徴 ある。
本発明において、耐炎化処理は、初期延伸 工程も含めて酸化性雰囲気の耐炎化炉中で行 われる。一方、耐炎化処理の前処理工程は、 油剤付与前に耐炎化炉とは別な加熱炉で行う のが便利ではあるが、油剤付与工程を加熱炉 外で行うように工程的な工夫をすれば、耐炎 化処理の前処理工程と耐炎化工程を同一の加 熱炉(耐炎化炉)で連続的に行うこともできる
本発明のもう一つの態様は、ポリアクリル系 前駆体繊維を酸化性雰囲気中で耐炎化処理し 、その後、不活性雰囲気中で炭素化処理する ことによって炭素繊維を製造するに際し、(1) 耐炎化処理の前処理として、該前駆体繊維を 、温度が220~260℃の範囲で荷重が0.58g/tex以下 、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)で測定 れる該前駆体繊維の環化度(I 1620 /I 2240 )が7%を越えない条件で収縮させ、その後、(2) 230~260℃の酸化性雰囲気中で、該前駆体繊維 環化度が27%を越えず且つ密度が1.2g/cm 3 を超えない範囲で、該前駆体繊維を、荷重が 2.7~3.5g/texで初期延伸し、引き続いて(3)酸化性 雰囲気中で200~280℃、好ましくは240~250℃で、 伸倍率0.85~1.3倍、好ましくは0.95倍以上の範 で、密度が1.3~1.5g/cm 3 の範囲になるまで、該前駆体繊維を耐炎化処 理し、その後、炭素化処理することを特徴と する炭素繊維の製造方法である。
上記発明において、ポリアクリル系前駆体 繊維を酸化性雰囲気中で耐炎化処理する条件 ・手段は、前述した耐炎化繊維の製造方法の 通りである。かかる耐炎化繊維を、その後、 炭素化処理することによって、本発明の炭素 繊維が得られるものである。
耐炎化繊維を炭素化して炭素繊維を得る場 合、通常、以下に説明するような炭素化処理 が行われるが、本発明における炭素化処理も かかる処理を意味するものである。
[第一炭素化処理]
第一炭素化処理工程においては、耐炎化繊維
を、不活性雰囲気中で、300~900℃、好ましく
300~550℃の温度範囲内で、一次延伸処理と二
延伸処理を行う。即ち、先ず、1.03~1.07の延
倍率で一次延伸処理し、次いで0.9~1.01の延
倍率で二次延伸処理して、繊維密度1.4~1.7g/cm
3
の第一炭素化処理繊維を得る。第一炭素化処
理工程において、一次延伸処理では、耐炎化
繊維の弾性率が極小値まで低下した時点から
9.8GPaに増加するまでの範囲、同繊維の密度が
1.5g/cm 3
に達するまでの範囲で、1.03~1.07の延伸倍率で
延伸処理を行うのが好ましい。二次延伸処理
においては、一次延伸処理後の繊維の密度が
二次延伸処理中に上昇し続ける範囲で、0.9~1.
01倍の延伸倍率で延伸処理を行うのが好まし
。かかる条件を採用すると、結晶が成長す
ことなく、緻密化され、ボイドの生成も抑
でき、最終的に高い緻密性を有した高強度
素繊維を得ることができる。上記第一炭素
処理工程は、一つの炉若しくは二つ以上の
で、連続的若しくは別々に処理することが
きる。
[第二炭素化処理]
第二炭素化処理工程においては、上記第一炭
素化処理繊維を、不活性雰囲気中で、800~2100
、好ましくは1000~1450℃の温度範囲内で、一
処理と二次処理とに分けて延伸処理して、
二炭素化処理繊維を得る。一次処理では、
一炭素化処理繊維の密度が一次処理中上昇
続ける範囲、同繊維の窒素含有量が10質量%
上の範囲で、同繊維を延伸処理するのが好
しい。二次処理においては、一次処理繊維
密度が変化しない又は低下する範囲で、同
維を延伸処理するのが好ましい。第二炭素
処理繊維の伸度は2.0%以上、より好ましくは
2.2%以上である。また、第二炭素化処理繊維
直径は、5~6.5μmであるのが好ましい。また、
これら焼成工程は、単一設備で連続して処理
することも、数個の設備で連続して処理する
ことも可能であり、特に限定されるものでは
ない。
[第三炭素化処理]
第三炭素化処理工程においては、上記第二炭
素化処理繊維を1500~2100℃、好ましくは、1550~1
900℃で更に炭素化又は黒鉛化処理する。
[表面処理]
上記第三炭素化処理繊維は、引き続いて表面
処理を施こされる。表面処理には気相、液相
処理も用いることができるが、工程管理の簡
便さと生産性を高める点から、電解処理によ
る表面処理が好ましい。また電解処理に使用
される電解液は、特に限定されるものではな
く、従来の公知の無機酸、有機酸、アルカリ
又はそれらの塩の水溶液を使用することがで
きる。具体的には、例えば、硝酸、硝酸アン
モニウム、硫酸、硫酸アンモニウム、水酸化
ナトリウム等が挙げられる。
[サイジング処理]
上記表面処理繊維は、引き続いてサイジング
処理を施こされる。サイジング方法は、従来
の公知の方法で行うことができ、サイジング
剤は、用途に即して適宜組成を変更して使用
し、均一付着させた後に、乾燥することが好
ましい。
上記のごとき方法で炭素繊維を製造すると 、引張り強度が5880MPa以上で、弾性率が308GPa 上の本発明の炭素繊維が得られる。
本発明を以下の実施例及び比較例により具 体的に説明する。実施例及び比較例において 得られた耐炎化繊維及び炭素繊維の諸物性値 は、以下の方法により測定した。
環化度(I 1620 /I 2240 )は、サーモフィッシャーサイエンティフィ ク社製Magna-IR・550を使用し、KBr法にて測定を 行い、I 2240 に現れるニトリル基のピーク強度とI 1620 に現れるナフチリジン環のピーク強度の比か ら求めた。密度は、液置換法(JIS・R・7601)に りアセトン中にて脱気処理し測定した。
炭素繊維の樹脂含浸ストランド強度と弾性 率は、JIS・R・7601に規定された方法により測 した。炭素繊維のサイジング剤の除去は、 セトンを用い3時間のソックスレー処理によ って行い、そののち繊維を風乾した。
[実施例1~3、比較例1~9]
アクリロニトリル95重量%/アクリル酸メチル4
量%/イタコン酸1重量%よりなる共重合体紡糸
原液を、常法により湿式紡糸し、水洗・オイ
リング・乾燥後、トータル延伸倍率が14倍に
るようにスチーム延伸を行い、1733texの繊度
を有するフィラメント数24,000の前駆体繊維を
得た。かくして得られた前駆体繊維を後述す
る製造工程で処理し、本発明の耐炎化繊維を
得た。
工程(1):耐炎化処理の前処理として、前処理 で前記前駆体繊維を、温度が230~245℃の範囲 、表1に示したような延伸条件下で荷重を変 化させて、前処理を行った。フーリエ変換赤 外分光光度計(FT-IR)で測定される該前駆体繊 の環化度(I 1620 /I 2240 )は表1に示したとおりであった。
工程(2):前記のごとく前処理された前駆体 維を、240~250℃に設定された熱風循環式耐炎 炉を用い、比重が1.20に至るまで、表1に示 たような延伸条件下で荷重を変化させて初 延伸した。得られた繊維の環化度は表1に示 たとおりであった。
工程(3):初期延伸された前駆体繊維は、引き いて、同じ耐炎化炉にて240~250℃に設定され 酸化性雰囲気中で、表1に示したように延伸 倍率1.0~1.01倍の範囲で、密度が1.3~1.5g/cm 3 の範囲になるまで、耐炎化処理した。
前記で得られた各種の耐炎化繊維を、窒素 雰囲気中、炉内温度分布300~580℃、延伸倍率1. 01倍で第一炭素化を行った後、1000~1450℃の温 範囲内で第二炭素化を行った。更に得られ 第二炭素化繊維を、1400~1850℃の温度範囲内 第三炭素化を行い、表面処理、サイジング 理を経た後、表2に示した物性値(ストラン 性能)を有する炭素繊維を得た。
表1より、本発明において規定された製造条 の範囲内で得られた炭素繊維である実施例1~ 3のものは、条件の全ては満足していない比 例1~9のものに比較して、より優れた強度と 性率を有していることが分かる。なお、比 例1~4と比較例6は、工程(1)の荷重(テンション )が0.58g/tex以下という本発明の条件を満足し いない。比較例5は、工程(1)の荷重が0.58g/tex 下という条件と、工程(2)の荷重が2.7~3.5g/tex 初期延伸するという条件を共に満足してい い。比較例7と8は、工程(2)の荷重が2.7~3.5g/te xで初期延伸するという条件を満足していな 。比較例9は、工程(2)の荷重が2.7~3.5g/texで初 延伸するという条件と、密度が1.2g/cm 3 を超えないという条件を共に満足していない 。
本発明の製造方法によると、例えば、引張り
強度が5880MPa以上で、弾性率が308GPa以上の高
度・高弾性炭素繊維が得られる。そして、
かる高強度・高弾性炭素繊維は、航空機用
に要求される高いコンポジット性能を有す
複合材料を製造するのに適している。また
本発明の耐炎化繊維は、前記のような高強
・高弾性炭素繊維の製造のための中間原料
して有用である。
