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Title:
PROCESSES FOR PRODUCTION OF 2-BROMO-2,2-DIFLUOROETHANOL AND 2-(ALKYLCARBONYLOXY)-1,1-DIFLUOROETHANESULFONIC ACID SALT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/037980
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a process for producing 2-bromo-2,2- difluoroethanol, which comprises reducing a bromodifluoroacetic acid derivative represented by the formula [1] by using an ate hydride complex as a reducing agent. 2-Bromo-2,2-difluoroethanol thus produced can be used as a starting material to carry out the esterification step, the sulfination step and the oxidation step in this order, thereby producing a 2-alkylcarbonyloxy-1,1-difluoroethanesulfonic acid salt, wherein A represents a substituted or unsubstituted linear, branched or cyclic alkoxy group having 1 to 20 carbon atoms, a substituted of unsubstituted aryloxy group having 6 to 15 carbon atoms, a heteroaryloxy group having 4 to 15 carbon atoms, or a halogen atom.

Inventors:
JODRY JONATHAN JOACHIM
NAGAMORI MASASHI
HAGIWARA YUJI
FUJIWARA MASAKI
NARIZUKA SATORU
Application Number:
PCT/JP2008/066041
Publication Date:
March 26, 2009
Filing Date:
September 05, 2008
Export Citation:
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Assignee:
CENTRAL GLASS CO LTD (JP)
JODRY JONATHAN JOACHIM
NAGAMORI MASASHI
HAGIWARA YUJI
FUJIWARA MASAKI
NARIZUKA SATORU
International Classes:
C07C29/147; C07C31/34; C07C303/00; C07C309/08; C07C309/10; C07C309/12; C07C381/12
Domestic Patent References:
WO2008099869A12008-08-21
Foreign References:
JP2007145797A2007-06-14
Attorney, Agent or Firm:
HASHIMOTO, Takeshi et al. (Ekisaikai Bldg.1-29, Akashi-ch, Chuo-ku Tokyo 44, JP)
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Claims:
式[1]
(前記式[1]において、Aは置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~15のアリールオキシ基又は炭素数4~15のヘテロアリールオキシ基、又はハロゲンを表す。)
で表されるブロモジフルオロ酢酸誘導体を、還元剤としてのアート型のヒドリド錯体によって還元することを含む、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールの製造方法。
下記の4工程を含む、式[2]
で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩の製造方法。
第1工程(還元工程):式[1]
で表されるブロモジフルオロ酢酸誘導体を、アート型のヒドリド錯体を還元剤として用いて還元し、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールを得る工程。
第2工程(エステル化工程1):第1工程(還元工程)で得られた2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールを式[3]
もしくは式[4]
で表されるカルボン酸誘導体と反応させて、式[5]
で表されるカルボン酸ブロモジフルオロエチルエステルを得る工程。
第3工程(スルフィン化工程):第2工程(エステル化工程1)で得られた、式[5]で表されるカルボン酸ブロモジフルオロエチルエステルを塩基と、スルフィン化剤の存在下で反応させ、式[6]
で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフルオロエタンスルフィン酸塩を得る工程。
第4工程(酸化工程):第3工程(スルフィン化工程)で得られた、式[6]で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフルオロエタンスルフィン酸塩を酸化剤と反応させ、式[2]で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を得る工程。
(前記式[1]において、Aは置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~15のアリールオキシ基又は炭素数4~15のヘテロアリールオキシ基、又はハロゲンを表す。式[2]から式[6]において、Rは置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~15のアリール基又は炭素数4~15のヘテロアリール基を表わす。ただし、Rとして、その構造内に、非共役不飽和部位(二重結合または三重結合)を有するものは除く。式[3]において、X’はヒドロキシル基もしくはハロゲンを表す。式[2]または式[6]において、M + は対カチオンを表す。
請求項2の方法で得られた式[2]で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を、式[7]で表される一価のオニウム塩
によってオニウム塩交換(第5工程:オニウム塩交換工程1)に付す、式[8]
で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸オニウム塩の製造方法。
(前記式[7]において、X - は1価のアニオンを示す。前記式[8]において、Rは式[2]~式[6]におけるRと同義である。前記式[7]及び式[8]においてQ + は下記式(a)もしくは下記式(b)で示されるスルホニウムカチオン、または下記式(c)で示されるヨードニウムカチオンを示す。
前記式(a)において、R 1 、R 2 及びR 3 は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6~18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR 1 、R 2 及びR 3 のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成しても良い。
前記式(b)において、R 4 は置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6~14のアリール基を示す。mは1~5の整数、nは0(零)又は1を示す。
前記式(c)において、R 4 は置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6~14のアリール基を示す。qは0(零)~5の整数、nは0(零)又は1を示す。
請求項2の方法で得られた式[2]で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を鹸化(第5’工程:鹸化工程)し、式[9]
で表される2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を得、次いで、2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を式[10]
もしくは式[11]
で表されるカルボン酸誘導体と反応させて(第6工程:エステル化工程2)、式[12]
で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を得、さらに2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を式[7]で表される一価のオニウム塩
によってオニウム塩交換(第7工程:オニウム塩交換工程2)に付すことを含む、式[13]
で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸オニウム塩の製造方法。
(前記式[9]および式[12]において、M + は対カチオンを表す。前記式[10]において、X’は式[3]におけるX’と同義である。前記式[10]~式[13]において、R’は置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6~15のアリール基又は炭素数4~15のヘテロアリール基を示す。前記式[13]において、Qは式[7]および式[8]におけるQと同義である。)
還元剤として使用されるアート型のヒドリド錯体が、水素化ホウ素系ヒドリド錯体もしくは水素化アルミニウム系ヒドリド錯体であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4記載のいずれかの方法。
還元剤として使用されるアート型のヒドリド錯体が水素化ホウ素ナトリウムもしくは水素化アルミニウムリチウムである、請求項1乃至請求項5記載のいずれかの方法。
ブロモジフルオロ酢酸誘導体が式[14]
(前記式[14]において、R’’は置換もしくは非置換の炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を表す。)
で表されるブロモジフルオロ酢酸誘導体である、請求項1乃至請求項6記載のいずれかの方法。
請求項7のブロモジフルオロ酢酸誘導体がブロモジフルオロ酢酸エチルである、請求項7記載の方法。
第3工程のスルフィン化剤が亜二チオン酸ナトリウム又は亜二チオン酸カリウムである、請求項2記載の方法。
第3工程の塩基が炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムである、請求項2記載の方法。
第3工程の反応が有機溶媒と水との混合溶媒中で行われる、請求項2記載の方法。
第3工程において、スルフィン化剤のカチオン部と塩基のカチオン部が同一である、請求項2記載の方法。
第4工程の反応を、遷移金属触媒としてのタングステン酸二ナトリウムの存在下で行う、請求項2記載の方法。
トリフェニルスルホニウム 1,1-ジフルオロ-2-(2-メタクリロイルオキシ)-エタンスルホナート。
2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸ナトリウム。
Description:
2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノー ル及び2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフ ルオロエタンスルホン酸塩類の製造方法

 本発明は医薬・農薬の中間体として、ま 含フッ素重合体等の機能性材料の製造原料 たは合成中間体として有用な、2-ブロモ-2,2- ジフルオロエタノールの製造法に関する。ま た、本発明は、半導体素子などの製造工程に おける微細加工技術、特にフォトリソグラフ ィーに適した化学増幅レジスト材料として有 用な光酸発生剤を製造するための中間体とし て、あるいは燃料電池等に用いられる固体電 解質を製造するための中間体として有用な含 フッ素スルホン酸塩類の製造方法に関する。 さらに本発明は光酸発生剤として機能する含 フッ素スルホン酸塩オニウム類の製造方法に 関する。

発明の背景

 従来、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノール を製造する方法は殆ど知られていなかった。 特許文献1に、2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシプ ピオン酸銀塩と臭素を反応させることによ 2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールの製造に 関する記載がある(反応式[1])。

 また、近年、燃料電池の電解質として使 される固体高分子電解質が活発に開発され いる。そしてその多くは末端に含フッ素ス ホン酸誘導体を有するものであり、非特許 献1には、末端に含フッ素スルホン酸リチウ ム塩を有するアクリレートを共重合させた固 体高分子電解質が報告されている。

 さらに、近年LSIの高集積化と高速度化に い、パターンルールの微細化が急速に進ん いる。その背景には露光光源の短波長化が り、例えば水銀灯のi線(365nm)からKrFエキシ レーザー(248nm)への短波長化により64Mビット( 加工寸法が0.25μm以下)のDRAM(ダイナミック・ ンダム・アクセス・メモリー)の量産が可能 なった。更に集積度256M及び1G以上のDRAM製造 を実施するため、ArFエキシマレーザー(193nm) 用いたリソグラフィーが使用されている。

 このような露光波長に適したレジストと て、「化学増幅型レジスト材料」が注目さ ている。これは、放射線の照射(以下、「露 光」という。)により酸を形成する感放射線 酸発生剤(以下、「光酸発生剤」という)を含 有し、露光により発生した酸を触媒とする反 応により、露光部と非露光部との現像液に対 する溶解度を変化させてパターンを形成させ るパターン形成材料である。

 このような化学増幅型レジスト材料に用 られる光酸発生剤に関しても種々の検討が されてきた。従来のKrFエキシマレーザー光 光源とした化学増幅型レジスト材料に用い れてきたようなアルカンあるいはアレーン ルホン酸を発生する光酸発生剤を上記のArF 学増幅型レジスト材料の成分として用いた 合には、樹脂の酸不安定基を切断するため 酸強度が十分でなく、解像が全くできない あるいは低感度でデバイス製造に適さない とがわかっている。

 このため、ArF化学増幅型レジスト材料の 酸発生剤としては、酸強度の高いパーフル ロアルカンスルホン酸を発生するものが一 的に使われているがパーフルオロオクタン ルホン酸、あるいはその誘導体は、その頭 字をとりPFOSとして知られており、C-F結合に 由来する安定性(非分解性)や疎水性、親油性 由来する生態濃縮性、蓄積性が問題となっ いる。更に炭素数5以上のパーフルオロアル カンスルホン酸、あるいはその誘導体も上記 問題が提起され始めている。

 このようなPFOSに関する問題に対処するた め、各所でフッ素の置換率を下げた部分フッ 素置換アルカンスルホン酸の開発が行われて いる。例えば、トリフェニルスルホニウム  トキシカルボニルジフルオロメタンスルホ ート(特許文献2)、(4-メチルフェニル)ジフェ ニルスルホニル t-ブトキシカルボニルジフ オロメタンスルホナート(特許文献3)あるい トリフェニルスルホニウム (アダマンタン-1 -イルメチル)オキシカルボニルジフルオロメ ンスルホナート(特許文献4)などのアルコキ カルボニルフルオロメタンスルホン酸オニ ム塩が酸発生剤として開発されてきた。

 一方で、上述したアルコキシカルボニル フルオロメタンスルホン酸オニウム塩とは ステル結合が逆になった、アルキルカルボ ルオキシアルカンスルホン酸オニウム塩の 種である、トリフェニルスルホニウム1,1,3,3 ,3 - ペンタフルオロ-2- ベンゾイルオキシプ ロパン- 1 - スルホナートなども開発されて きた(特許文献5)。

 本出願人は、同じアルキルカルボニルオ シアルカンスルホン酸オニウム塩ではある 、特許文献の酸発生剤よりもフッ素の数が3 つ少ない、即ち環境への悪影響がより少ない と考えられる、式[8]又は[13]で表わされる2-ア ルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタ スルホン酸オニウム塩を見出し、この物質 、最小限のフッ素原子数によって強い酸性 を有する酸発生剤として機能し、溶剤や樹 への相溶性に優れ、レジスト用酸発生剤と て、有用であるとの知見も得、既に特許出 している(特願2007-143879号、および特願2007-14 3880号)。

 ところで、上述したアルコキシカルボニル フルオロメタンスルホン酸オニウム塩を合 する方法としては、従来下記の反応式[2]
に示されるような反応経路が知られていた。 すなわち、テトラフルオロエチレン〔i〕と 酸化硫黄〔ii〕による3,3,4,4-テトラフルオロ- [1,2]オキサチエタン2,2-ジオキシド〔iii〕の合 成に始まり、〔iii〕のアルコール(ROH)を用い 開環反応による〔v〕の合成、もしくは〔iii 〕の開環異性化によって酸フッ化物〔iv〕を 由し、〔iv〕のアルコール(ROH)によるエステ ル化を通じた〔v〕の合成。次いで〔v〕を塩 性の金属塩(主として水酸化ナトリウム)に ってスルホン酸塩(スルホン酸ナトリウム塩) 〔vi〕に変換し、次いでスルホニウム塩等の ニウム塩(Q + X - :Qは1価のオニウムカチオン、Xは主としてハ ゲン)でオニウム塩交換して目的の酸発生剤 あるアルコキシカルボニルジフルオロアル ンスルホン酸オニウム塩〔vii〕を得るとい 経路である(特許文献2および特許文献6)。

 一方、特許文献5で示された1 , 1 , 3 , 3  , 3 - ペンタフルオロ- 2- ベンゾイルオキ プロパン- 1 - スルホン酸オニウム塩を合 する方法としては、下記の反応式[3]
に示されるような反応経路が開示されている 。

 しかしながら、2-アルキルカルボニルオキ -1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩の製造法 はこれまでほとんど知られておらず、従って 、2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフルオ ロエタンスルホン酸オニウム塩の製造方法も これまでほとんど知られていなかった。

米国特許2,678,953号明細書

特開2004-117959号公報

特開2002-214774号公報

特開2004-4561号公報

特開2007-145797号公報

米国特許2,852,554号明細書 Solid State Ionics、1999年、第123巻、233頁~24 2頁

発明の概要

 上記の2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノール を製造する方法に関して、非特許文献1に開 された方法は、実験条件や収率等の詳細が 明であるため、どの程度有用な方法なのか 然としないが、いずれにしても出発原料と て高価な銀塩を使用するため、経済的な観 から工業化するのは容易でないと予想され 。また、銀塩の原料となる2,2-ジフルオロ-3- ドロキシプロピオン酸自体も、商業規模で 通している化合物ではなく、試薬レベルで 入手が極めて困難なことから、工業化は難 いと考えられる。

 このように、従来法による2-ブロモ-2,2-ジ フルオロエタノールの製造はかなり困難であ り、将来にわたって効率的かつ実施できる工 業的な製造方法の確立が望まれていた。

 また、アルコキシカルボニルジフルオロ タンスルホン酸塩を製造するための上記反 式[2]による方法は、テトラフルオロエチレ 〔i〕と三酸化硫黄〔ii〕から合成される3,3, 4,4-テトラフルオロ-[1,2]オキサチエタン2,2-ジ キシド〔iii〕を原料に用いている。周知の おり、テトラフルオロエチレン〔i〕は化学 的な反応性が高く、爆発の危険性もあるため 、大量の取り扱いは容易でない。さらに、三 酸化硫黄〔ii〕も強力な酸化剤であり、可燃 物質や還元性物質、有機化合物と激しく反 するため、大量の取り扱いには負担がかか 。このように本合成反応は、大量の使用の 難な試薬を混ぜ合わせるものであり、安全 十分配慮する必要がある。したがって工業 に難易度の高い反応であることから、必然 に、得られる3,3,4,4-テトラフルオロ-[1,2]オ サチエタン2,2-ジオキシド〔iii〕は大変高価 なる。

 また、酸フッ化物(〔iv〕や〔v〕)の変換 応でフッ化水素あるいはフッ化物塩が大量 副生するという問題を有する。フッ化水素 るいはフッ化物塩から遊離するフッ素イオ はガラス製の反応器を腐食し、失透させる またフッ化水素自身はもちろんであるが、 ッ化物塩が酸に接触した場合、強酸である ッ化水素が発生し、鉄やステンレス製など 金属製反応器が使用できないなど、使用で る反応器の材質に多大な制限が発生する。

 このように、アルコキシカルボニルジフ オロメタンスルホン酸塩の製造にはいくつ の支障が存在する。

 一方、上記反応式[3]に示した通り、特許文 5においては、フッ素原子を6つ有する1,1,1,3, 3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール[viii]を出 原料にして、フッ素原子を5つ有する1,1,3,3,3- ペンタフルオロ-2-ベンゾイルオキシプロパン -1-スルホン酸塩[xi]を構築したのち、該スル ン酸塩を1,1,3,3,3- ペンタフルオロ-2-ベンゾ ルオキシプロパン-1-スルホン酸オニウム塩[x ii]に誘導している。当該合成法においては、 [ix]で表されるエノラートを中間活性種とし 経由するのが特徴である。エノラートイオ は一般に、安定に存在し難い化学種である しかし、特許文献5の化合物の場合、C=C二重 合の炭素に結合しているCF 3 基が強力な電子求引性を有するため、このエ ノラートが安定化され、結果として上記反応 が可能となっている。

 これに対し、本願発明の基質では、この「C F 3 基」に対応する部位は「H」であり、二重結 部分に対する電子求引性は大幅に低下して る。この結果、対応するエノラートイオン 不安定となり、引用文献の反応に対応する 応を行うことは著しく困難になる(下式参照) 。

 事実、現在までのところ、2,2,2-トリフルオ エタノールを出発原料にして、2,2-ジフルオ ロエテン-1-イル脂肪酸カルボン酸エステルあ るいは芳香族カルボン酸エステルを得る方法 は知られていない。さらに、これらの前駆体 であるエノラート塩〔CF 2 =CHOM(M=Li,K,Na)〕を発生させたという報告も見 たらない。

 このように、アルキルカルボニルオキシ ルカンスルホン酸の製造に関しては、1 ,1  ,3 ,3 ,3-ペンタフルオロ-2-ベンゾイルオキシ ロパン-1-スルホン酸塩のようなフッ素原子 数が多いものの製造法は知られているが、 ッ素原子が2つの、2-アルキルカルボニルオ シ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩の製 法はこれまで知られていない。

 以上をまとめると、より少ないフッ素原 数で十分な酸強度を有するアルカンスルホ 酸塩として、フッ素原子が2つのジフルオロ アルカンスルホン酸塩骨格が好ましいもので あるが、アルコキシカルボニルジフルオロメ タンスルホン酸塩の従来の製造法には支障が あり、とりわけ2-アルキルカルボニルオキシ- 1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩の製造法 これまで知られていなかった。

 従って、フッ素原子が2つのジフルオロア ルカンスルホン酸塩骨格を、安価で容易に製 造できる工業的な製造方法の確立が望まれて いた。

 上記の通り、本発明の課題は、まず市販 原料から安価で容易に、医農薬中間体等と て有用な2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノール を製造する方法を与えると共に、化学増幅型 レジスト材料に用いられる光酸発生剤などと して有用な、2-アルキルカルボニルオキシ-1,1 -ジフルオロエタンスルホン酸塩類を、2-ブロ モ-2,2-ジフルオロエタノールを原料として製 する方法を与えることである。

 本発明者らは、上記課題を解決するため 意検討を重ねた。本願発明は、次に示すよ な[態様1]~[態様4]を含む。

 [態様1]
 まず、本願発明全体に共通する鍵化合物と る2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールの合成 方法につき、検討を行った。

 その過程で、出発原料として工業的に安価 容易に入手可能であるブロモジフルオロ酢 誘導体、すなわちブロモジフルオロ酢酸エ テルやブロモジフルオロ酢酸ハライドを使 することをまず発案した。すなわち、下記 応式[4]
(前記反応式[4]において、Aは置換もしくは非 換の炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の アルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数 6~15のアリールオキシ基又は炭素数4~15のヘテ アリールオキシ基、又はハロゲン(フッ素、 塩素、臭素、ヨウ素)を表す。)
に示すとおり、ブロモジフルオロ酢酸エステ ルもしくはブロモジフルオロ酸ハライドの骨 格で、ブロモジフルオロメチル基の炭素-臭 結合は還元せず(脱臭素化は防ぎ)、カルボニ ル基のみを選択的に還元する方法である。

 一般に、このようなブロモジフルオロメ ル基とカルボニル基の両方を持つような化 物において、ブロモジフルオロメチル基の 素-臭素結合は還元せず(脱臭素化は防ぎ)、 ルボニル基のみを選択的に還元することは 難である。

 本発明者らは、実際に、初期の検討にお て、活性炭担持パラジウム触媒を使用した 素添加反応を実施したところ、結果として られたのは、目的とする2-ブロモ-2,2-ジフル オロエタノールではなく、専らジフルオロ酢 酸エチルであった(下記反応式[5]、比較例1参 )。

 次いで、同一の原料に対し、還元剤とし 活性亜鉛を使用してみたところ、この場合 、結果として得られたのは、目的とする2- ロモ-2,2-ジフルオロエタノールではなく、専 らジフルオロ酢酸エチルであった(下記反応 [6]、比較例2参照)。

 さらに、カルボニル基を選択的に還元する 元剤として、アート型のヒドリド錯体の一 である水素化ホウ素ナトリウム(NaBH 4 )が良く知られている。例えば、Journal of Orga nic Chemistry 1991年、第56巻、4322頁~4325頁には 水素化ホウ素ナトリウム(NaBH 4 )を使用して1,3-ジブロモ-1,1-ジフルオロアル ン類を還元し、1,1-ジフルオロアルカン類を るという報告がなされている。下記反応式[ 7]に該文献中の反応例を示す。

 このように水素化ホウ素ナトリウム(NaBH 4 )は、ブロモジフルオロメチル基に作用し、 元的に脱臭素反応を起こしてしまうことが られていた。

 また、本発明者らはブロモジフルオロメチ 基とカルボニル基の両方を持つ化合物であ 、6-ブロモ-5,5,6,6-テトラフルオロヘキサン エチルに、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH 4 )を作用させたところ、この場合も、ブロモ フルオロメチル基から還元的に脱臭素した 合物が得られた(下記反応式[8]、比較例3参照 )。

 以上の結果から、水素化ホウ素ナトリウム( NaBH 4 )がいかに優れたカルボニル選択的な還元剤 あろうとも、ブロモジフルオロ酢酸誘導体 カルボニル選択的な還元に使用するのは困 と予想された。

 しかしながら、本発明者らは、式[1]で表 されるブロモジフルオロ酢酸誘導体に対し アート型ヒドリド錯体を還元剤として還元 行なうと、予想に反して、目的とする2-ブ モ-2,2-ジフルオロエタノールが特異的にほぼ 100%の選択率で得られることを見出した。

 例えば、ブロモジフルオロ酢酸エステルに して、アート型のヒドリド錯体である水素 ホウ素ナトリウム(NaBH 4 )を還元剤として還元を行なうと、2-ブロモ-2, 2-ジフルオロエタノールがほぼ100%の選択率で 得られる。さらに驚くべきことには、水素化 ホウ素ナトリウム(NaBH 4 )よりも還元能力が高いと言われている、ア ト型のヒドリド錯体の一種である水素化ア ミニウムリチウム(LiAlH 4 )を用いた場合にも、水素化ホウ素ナトリウ (NaBH 4 )の場合と同様、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタ ールが特異的にほぼ100%の選択率で得られる ことが明らかとなった(下記反応式[9]、実施 1,2参照)。

 さらにブロモジフルオロ酢酸ハライド類に しても、アート型のヒドリド錯体である水 化ホウ素ナトリウム(NaBH 4 )を還元剤として使用して、2-ブロモ-2,2-ジフ オロエタノールが得られることを明らかに た(実施例3参照)。

 このように、本発明者らは、有機中間体 して有用な、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノ ールの新規で、大量規模の製造に適した製造 法を見出した。

 次いで、本発明者らは、上述の方法で製 した2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールを出 発原料とし、各種2-アルキルカルボニルオキ -1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩類を合 する検討を鋭意行った(態様2~4)。

 [態様2]
 まず、下記反応式[9]に示すように、上記[態 様1]の方法(これを「第1工程」とも言う)で得 2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールを、第2 程~第4工程までの反応に順次、付することで 、式[2]で表わされる2-アルキルカルボニルオ シ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩が得 れるとの知見に到達した(反応式[10])。

(前記反応式[10]において、Aは反応式[4]におけ るAと同義である。Rは置換もしくは非置換の 素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキ ル基、置換もしくは非置換の炭素数6~15のア ール基又は炭素数4~15のヘテロアリール基を す。ただし、Rとして、その構造内にアリー ル基やヘテロアリール基のような共役不飽和 部位を有する芳香環以外の、非共役不飽和部 位(二重結合または三重結合)を有するものは く。X’はヒドロキシル基もしくはハロゲン を表す。M + は対カチオンを表す。)

 すなわち、上述した還元工程(第1工程)に って2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールを製 造し、次いで該化合物を、式[3]で表される酸 類および酸ハライド類、もしくは式[4]で表さ れる酸無水物と反応させて、式[5]で表される カルボン酸ブロモジフルオロエチルエステル を得(第2工程:エステル化工程1)、次いでこの ルボン酸ブロモジフルオロエチルエステル 塩基と、スルフィン化剤の存在下で反応さ 、式[6]で表される2-アルキルカルボニルオ シ-1,1-ジフルオロエタンスルフィン酸塩に変 換(第3工程:スルフィン化工程)し、更にこの ルフィン酸塩を酸化剤と反応させる(第4工程 :酸化工程)ことにより、式[2]で表される2-ア キルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタン スルホン酸塩が得られることが判った。

 式[2]で表される2-アルキルカルボニルオキ -1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を得るた めには、上述した工程を順に進めていくこと が極めて重要である。下記反応式[11]
(前記反応式[11]において、RおよびM + は反応式[10]におけるRおよびM + と同義である。)に示したように、2-ブロモ-2, 2-ジフルオロエタノールを先にスルフィン化 てから酸化して、エステル化する方法や、2 -ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールを先にスル フィン化してからエステル化し、最後に酸化 する方法も想定できるが、2-ブロモ-2,2-ジフ オロエタノールのスルフィン化が困難であ ため、採用できないことが判明した(比較例4 )。

 このように、本発明者らは、レジスト用 酸発生剤製造中間体として、あるいは燃料 池用固体高分子電解質製造中間体として有 な、2-アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフル オロエタンスルホン酸塩の新規で、大量規模 の製造に適した製造法を見出した。

 [態様3]
 上記、[態様2]の方法によって合成した、式[ 2]で表される2-アルキルカルボニルオキシ-1,1- ジフルオロエタンスルホン酸塩を、続いて「 オニウム塩交換工程1(第5工程)」に付すこと よって、式[8]で表される2-アルキルカルボニ ルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸オ ウム塩を得ることができることを見出した( 下記反応式[12]参照)。

(前記反応式[12]において、RおよびM + は反応式[10]におけるRおよびM + と同義である。X - は1価のアニオンを示す。Q + は下記式(a)もしくは下記式(b)で示されるスル ホニウムカチオン、または下記式(c)で示され るヨードニウムカチオンを示す。)

 前記式(a)において、R 1 、R 2 及びR 3 は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数 1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アル ニル基又はオキソアルキル基、又は置換も くは非置換の炭素数6~18のアリール基、アラ キル基又はアリールオキソアルキル基を示 か、あるいはR 1 、R 2 及びR 3 のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して 中の硫黄原子と共に環を形成しても良い。

 前記式(b)において、R 4 は置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状 分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニ 基、又は置換もしくは非置換の炭素数6~14の リール基を示す。mは1~5の整数、nは0(零)又 1を示す。

 前記式(c)において、R 4 は置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状 分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニ 基、又は置換もしくは非置換の炭素数6~14の リール基を示す。qは0(零)~5の整数、nは0(零) 又は1を示す。

 すなわち、この[態様3]の方法によって、 学増幅型レジスト材料に用いられる光酸発 剤して有用な、2-アルキルカルボニルオキ -1,1-ジフルオロエタンスルホン酸オニウム塩 を合成することができることとなった。

 [態様4]
 上述の通り、[態様3]によって合成できる化 物の官能基Rの種類には制限がある。すなわ ち、[態様3]で合成できる化合物の官能基Rは 置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状、 岐状又は環状のアルキル基、置換もしくは 置換の炭素数6~15のアリール基又は炭素数4~1 5のヘテロアリール基を表わす」であり、Rと て、その構造内に、アリール基やヘテロア ール基のような共役不飽和部位を有する芳 環以外の、非共役不飽和部位(二重結合また は三重結合)を有するものは除外される。こ は、第3工程(スルフィン化工程)に起因する すなわち、Rとして、その構造内に非共役不 和部位(二重結合または三重結合)を有する のを、当該第3工程(スルフィン化工程)の原 とすると、非共役不飽和部位が副反応を起 し、目的とするスルフィン化物を得ること 困難であることを、発明者らは知った。

 非共役不飽和部位(二重結合または三重結 合)を有するRとしては、直鎖、分岐鎖あるい 環状のアルケニル基が例示できる。このよ なアルケニル基としては、具体的に、ビニ 基、アリル基、1-メチルエテニル基、1-メチ ルアリル基、2-メチルアリル基、1-プロペニ 基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、3-ブ ニル基、1,3-ブタジエニル基、2-ペンテニル 、4-ペンテニル基、2-ヘキセニル基、5-ヘキ ニル基、シクロプロペニル基、シクロペン ニル基、シクロヘキセニル基、5-ノルボル ン-1-イル基等を挙げることができる(下記反 式[13]および反応式[14];比較例[5]および比較 [6])。

 このような状況に鑑み、本発明者らは、 記[態様2]で得られた式[2]で表される2-アル ルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンス ルホン酸塩を出発物質とする新規合成ルート を見出し、該ルートを採ることによって、上 記問題を解決できるという知見に到達した。

 すなわち、まず、上記[態様2]で得られた式[ 2]で表される2-アルキルカルボニルオキシ-1,1- ジフルオロエタンスルホン酸塩を鹸化反応( 基性物質存在下の加水分解反応)に付(第5’ 程:鹸化工程)し、式[9]
で表される2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエタ スルホン酸塩を得、次いで、式[10]
もしくは式[11]
で表されるカルボン酸誘導体と反応させて( 6工程:エステル化工程2)、式[12]
で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1- ジフルオロエタンスルホン酸塩を得、さらに 式[7]で表される一価のオニウム塩
を用いてオニウム塩交換する(第7工程:オニウ ム塩交換工程2)ことで、レジスト用光酸発生 等として有用な、式[13]
で表される2-アルキルカルボニルオキシ-1,1- フルオロエタンスルホン酸オニウム塩が得 れることを見出した(下記、反応式[15]を参照 )。

(前記反応式[15]において、式[9]および式[12]に おけるM + は対カチオンを表す。式[10]におけるX’は、 [3]におけるX’と同義である。式[10]~式[13]に おけるR’は置換もしくは非置換の炭素数1~20 直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、置 もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状、分岐 状又は環状のアルケニル基、置換もしくは非 置換の炭素数6~15のアリール基又は炭素数4~15 ヘテロアリール基を示す。)

 ここで、式[13]で表される2-アルキルカル ニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン オニウム塩の置換基R’としては、「その構 内に非共役不飽和部位(二重結合または三重 結合)を有するもの」も含まれる点が重要で る。すなわち、この[第5の態様]は、化学増 型レジスト材料に用いられる光酸発生剤し 有用な、2-アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジ ルオロエタンスルホン酸オニウム塩のうち 置換基R’として、その構造内に非共役不飽 和部位を有するものに対して特に有用である 。

 特に、置換基の末端に非共役不飽和部位 有するもの、すなわち2-(ω-アルケニルカル ニルオキシ)-1,1-ジフルオロエタンスルホン オニウム塩は、例えば、国際特許2006/121096  A1号公報に開示されている重合性含フッ素ス ホン酸オニウム塩と同様に、他のモノマー 共重合させることによって、レジスト樹脂 に固定させることができ、「レジスト樹脂 持型光酸発生剤」として使用することが可 である。このような「レジスト樹脂担持型 酸発生剤」は、高解像度等の高い性能故に 近年注目されている新しいタイプの光酸発 剤である。そういう意味でも、置換基の末 に非共役不飽和部位を有する2-(ω-アルケニ カルボニルオキシ)-1,1-ジフルオロエタンス ホン酸オニウム塩は極めて有用である。

 以上の通り、[態様1]~[態様4]を使い分ける ことによって、医農薬中間体として有用な2- ロモ-2,2-ジフルオロエタノール、及びレジ ト材料に用いられる酸発生剤の中間体、も くは燃料電池用電解質中間体として有用な 2-アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオロ タンスルホン酸塩類、更には光酸発生剤と て有用な2-アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジ フルオロエタンスルホン酸オニウム塩類を、 幅広い置換基の化合物につき、製造できるこ ととなり、本発明の完成に至った。

 また、発明者らは、これらの反応工程を 出す過程で、新規化合物を見出した(トリフ ェニルスルホニウム 1,1-ジフルオロ-2-(2-メタ クリロイルオキシ)-エタンスルホナートなら に、2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエタンスル ホン酸ナトリウム)。

 本発明の反応では、必要な原料はいずれ 安価であり、各段階とも操作は簡便であり 操作上の負担も少なく実施できるため、目 とする2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノール及 び2-アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオ エタンスルホン酸塩類を工業的規模で製造 る上で、従来の手段よりもはるかに有利で る。

 本発明に依れば、式[1]
(前記式[1]において、Aは置換もしくは非置換 炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアル コキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~15 アリールオキシ基又は炭素数4~15のヘテロア ールオキシ基、又はハロゲンを表す。)
で表されるブロモジフルオロ酢酸誘導体を、 還元剤としてのアート型のヒドリド錯体によ って還元することを含む、2-ブロモ-2,2-ジフ オロエタノールの製造方法(第1方法)が提供 れる。

 さらに、本発明に依れば、下記の4工程を含 む、式[2]
で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1- ジフルオロエタンスルホン酸塩の製造方法( 2方法)が提供される。
 第1工程(還元工程):式[1]
で表されるブロモジフルオロ酢酸誘導体を、 還元剤としてのアート型のヒドリド錯体によ って還元し、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノ ルを得る工程。
 第2工程(エステル化工程1):第1工程(還元工程 )で得られた2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノー を式[3]
もしくは式[4]
で表されるカルボン酸誘導体と反応させて、 式[5]
で表されるカルボン酸ブロモジフルオロエチ ルエステルを得る工程。
第3工程(スルフィン化工程):第2工程(エステル 化工程1)で得られた、式[5]で表されるカルボ 酸ブロモジフルオロエチルエステルを塩基 、スルフィン化剤の存在下で反応させ、式[ 6]
で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1- ジフルオロエタンスルフィン酸塩を得る工程 。
 第4工程(酸化工程):第3工程(スルフィン化工 )で得られた、式[6]で表される2-(アルキルカ ルボニルオキシ)-1,1-ジフルオロエタンスルフ ィン酸塩を酸化剤と反応させ、式[2]で表され る2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフルオ ロエタンスルホン酸塩を得る工程。

(前記式[1]において、Aは置換もしくは非置換 炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアル コキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~15 アリールオキシ基又は炭素数4~15のヘテロア ールオキシ基、又はハロゲンを表す。式[2] ら式[6]において、Rは置換もしくは非置換の 炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアル ル基、置換もしくは非置換の炭素数6~15のア ール基又は炭素数4~15のヘテロアリール基を 表わす。ただし、Rとして、その構造内に、 共役不飽和部位(二重結合または三重結合)を 有するものは除く。式[3]において、X’はヒ ロキシル基もしくはハロゲンを表す。式[2] たは式[6]において、M + は対カチオンを表す。)

 さらに、本発明に依れば、第2方法で得られ た式[2]で表される2-(アルキルカルボニルオキ シ)-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を、式 [7]で表される一価のオニウム塩
によってオニウム塩交換(第5工程:オニウム塩 交換工程1)に付すことを含む、式[8]
で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1- ジフルオロエタンスルホン酸オニウム塩の製 造方法(第3方法)が提供される。

(前記式[7]において、X - は1価のアニオンを示す。前記式[8]において Rは式[2]~式[6]におけるRと同義である。前記 [7]及び式[8]においてQ + は下記式(a)もしくは下記式(b)で示されるスル ホニウムカチオン、または下記式(c)で示され るヨードニウムカチオンを示す。

前記式(a)において、R 1 、R 2 及びR 3 は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数 1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アル ニル基又はオキソアルキル基、又は置換も くは非置換の炭素数6~18のアリール基、アラ キル基又はアリールオキソアルキル基を示 か、あるいはR 1 、R 2 及びR 3 のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して 中の硫黄原子と共に環を形成しても良い。

前記式(b)において、R 4 は置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状 分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニ 基、又は置換もしくは非置換の炭素数6~14の リール基を示す。mは1~5の整数、nは0(零)又 1を示す。

前記式(c)において、R 4 は置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状 分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニ 基、又は置換もしくは非置換の炭素数6~14の リール基を示す。qは0(零)~5の整数、nは0(零) 又は1を示す。

 さらに、本発明に依れば、第2方法で得られ た式[2]で表される2-(アルキルカルボニルオキ シ)-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を鹸化 (第5’工程:鹸化工程)し、式[9]
で表される2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエタ スルホン酸塩を得、次いで、2-ヒドロキシ-1, 1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を式[10]
もしくは式[11]
で表されるカルボン酸誘導体と反応させて( 6工程:エステル化工程2)、式[12]
で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1- ジフルオロエタンスルホン酸塩を得、さらに 2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフルオロ エタンスルホン酸塩を式[7]で表される一価の オニウム塩
によってオニウム塩交換(第7工程:オニウム塩 交換工程2)に付すことを含む、式[13]
で表される2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1- ジフルオロエタンスルホン酸オニウム塩の製 造方法(第4方法)が提供される。

(前記式[9]および式[12]において、M + は対カチオンを表す。前記式[10]において、X は式[3]におけるX’と同義である。前記式[10 ]~式[13]において、R’は置換もしくは非置換 炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状のアル ル基、置換もしくは非置換の炭素数1~20の直 鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基、置換 もしくは非置換の炭素数6~15のアリール基又 炭素数4~15のヘテロアリール基を示す。前記 [13]において、Qは式[7]および式[8]におけるQ 同義である。)

 第1又は第2方法の還元工程において、還 剤として使用されるアート型のヒドリド錯 は、水素化ホウ素系ヒドリド錯体もしくは 素化アルミニウム系ヒドリド錯体であって よい。

 さらに、第1又は第2方法の還元工程にお て、還元剤として使用されるアート型のヒ リド錯体は、水素化ホウ素ナトリウムもし は水素化アルミニウムリチウムであっても い。

さらに、第1又は第2方法の還元工程において ブロモジフルオロ酢酸誘導体は式[14]
(前記式[14]において、R’’は置換もしくは非 置換の炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状の アルキル基を表す。)
で表されるブロモジフルオロ酢酸誘導体であ ってもよい。

さらに、本発明に依れば、式[13]で表され 2-(アルキルカルボニルオキシ)-1,1-ジフルオ エタンスルホン酸オニウム塩に対応し、新 な化合物であるトリフェニルスルホニウム  1,1-ジフルオロ-2-(2-メタクリロイルオキシ)-エ タンスルホナートが提供される。

さらに、本発明に依れば、式[9]で表される 2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン 塩に対応し、新規な化合物である2-ヒドロキ シ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸ナトリウ が提供される。

詳細な説明

 本発明によれば、安価で入手できるブロ ジフルオロ酢酸誘導体から、わずか1工程で 簡便に、しかも良好な収率で、医薬・農薬の 中間体として、また含フッ素重合体等の機能 性材料の製造原料または合成中間体として有 用な、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールを 業的規模で製造できるという効果を奏する また、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールを 料に用いて、半導体素子などの製造工程に ける微細加工技術、特にフォトリソグラフ ーに適した化学増幅レジスト材料として有 な、光酸発生剤を製造するための中間体と て、あるいは燃料電池等に用いられる固体 解質を製造するための中間体として有用な フッ素スルホン酸塩類を簡便に、収率良く 工業的規模で製造できるという効果を奏す 。さらに、本発明によれば、光酸発生剤と て機能する含フッ素スルホン酸塩オニウム を簡便に、収率良く、工業的規模で製造で るという効果を奏する。

 以下、本発明につき、さらに詳細に説明す 。本発明は下記反応式[16]
に表す通り、式[1]で表されるブロモジフルオ ロ酢酸誘導体を、アート型のヒドリド錯体を 還元剤として用いて還元して、2-ブロモ-2,2- フルオロエタノール(本発明の態様1の目的物 )を製造する工程(第1工程:還元工程)、得られ 2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールをエステ ル化して、式[5]で表されるカルボン酸ブロモ ジフルオロエチルエステルを得る工程(第2工 :エステル化工程1)、得られた式[5]で表され カルボン酸ブロモジフルオロエチルエステ をスルフィン化剤の存在下で反応させ、式[ 6]で表される2-アルキルカルボニルオキシ-1,1- ジフルオロエタンスルフィン酸塩を得る工程 (第3工程:スルフィン化工程)、得られた式[6] 表される2-アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジ ルオロエタンスルフィン酸塩を酸化剤と反 させ、式[2]で表される2-アルキルカルボニ オキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩( 発明の態様2の目的物)を得る工程(第4工程:酸 化工程)、得られた式[2]で表される2-アルキル カルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスル ン酸塩を式[7]で表される一価のオニウム塩 用いてオニウム塩交換し、式[8]で表される2 -アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエ タンスルホン酸オニウム塩(本発明の態様3の 的物)を得る工程(第5工程:オニウム塩交換工 程1)の5つの工程を含む。この工程を経ること によって、式[8]におけるRとして、非共役不 和部位(二重結合または三重結合)を持たない 、2-アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオ エタンスルホン酸オニウム塩を得ることが きる。

 非共役不飽和部位(二重結合または三重結 合)を有するものに関しては、第4工程で得ら た式[2]で表される2-アルキルカルボニルオ シ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を鹸化 して、式[9]で表される2-ヒドロキシ-1,1-ジフ オロエタンスルホン酸塩を得る工程(第5’工 程:鹸化工程)、得られた式[9]で表される2-ヒ ロキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を エステル化して、式[12]で表される2-アルキル カルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスル ン酸塩を製造する工程([第6工程]:エステル 工程2)、さらに式[7]で表される一価のオニウ ム塩を用いてオニウム塩交換(第7工程:オニウ ム塩交換工程2)する工程、の3つ工程を経るこ とによって得ることができる。こうして、式 [13]におけるR’として、非共役不飽和部位(二 重結合または三重結合)を持つ、2-アルキルカ ルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホ 酸オニウム塩も、式[1]で表されるブロモジ ルオロ酢酸誘導体から7つの工程を経由して 得ることができる。

 以下、各工程に関して詳細に説明する。 ず、本発明の第1工程について説明する。第 1工程は、式[1]で表されるブロモジフルオロ 酸誘導体を、アート型のヒドリド錯体を還 剤として用いて還元して、2-ブロモ-2,2-ジフ オロエタノールを製造する工程(還元工程) ある。

 本発明の出発原料である、式[1]で表され ブロモジフルオロ酢酸誘導体とは、ブロモ フルオロ酢酸エステルもしくはブロモジフ オロ酢酸ハライドである。ブロモジフルオ 酢酸エステルとしては具体的に、ブロモジ ルオロ酢酸メチル、ブロモジフルオロ酢酸 チル、ブロモジフルオロ酢酸n-プロピル、 ロモジフルオロ酢酸i-プロピル、ブロモジフ ルオロ酢酸n-ブチル、ブロモジフルオロ酢酸s -ブチル、ブロモジフルオロ酢酸i-ブチル、ブ ロモジフルオロ酢酸t-ブチル、ブロモジフル ロ酢酸n-ペンチル、ブロモジフルオロ酢酸n- ヘキシル、ブロモジフルオロ酢酸シクロヘキ シル、ブロモジフルオロ酢酸フェニル、ブロ モジフルオロ酢酸ベンジル等が挙げられる。 ブロモジフルオロ酢酸ハライドとしては、ブ ロモジフルオロ酢酸フロリド、ブロモジフル オロ酢酸クロリド、ブロモジフルオロ酢酸ブ ロミド、ブロモジフルオロ酢酸ヨードが挙げ られる。この中でも入手の容易さからブロモ ジフルオロ酢酸メチル、ブロモジフルオロ酢 酸エチル、ブロモジフルオロ酢酸n-プロピル ブロモジフルオロ酢酸i-プロピル、ブロモ フルオロ酢酸フロリド、ブロモジフルオロ 酸クロリド、ブロモジフルオロ酢酸ブロミ が好ましく、ブロモジフルオロ酢酸エチル ブロモジフルオロ酢酸フロリド、ブロモジ ルオロ酢酸クロリドがより好ましい。取り いの容易さ(酸ハライドの揮発性、悪臭)も勘 案すれば、ブロモジフルオロ酢酸エチルが最 も好ましい。

 第1工程において還元剤として用いられるア ート型のヒドリド錯体は、水素化ホウ素系と して、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH 4 )、水素化ホウ素リチウム(LiBH 4 )、シアノ水素化ホウ素ナトリウム (NaBH 3 CN)、水素化ホウ素亜鉛(Zn(BH 4 ) 2 )、トリ-sec-ブチル水素化ホウ素カリウム(K-セ レクトライド)、トリ-sec-ブチル水素化ホウ素 リチウム(L-セレクトライド)など公知のもの 使用できる。水素化アルミニウム系として 、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH 4 )、リチウム トリ-t-ブトキシアルミノヒドリ ド(LiAlH(Ot-C 4 H 9 ) 3 )、リチウム トリメトキシアルミノヒドリド (LiAlH(OCH 3 ) 3 )、ジイソブチルアルミニウム ヒドリド((i-C 4 H 9 ) 2 AlH)、ナトリウム水素化ビス(メトキシエトキ )アルミニウム(NaAlH 2  (OCH 2 CH 2 OCH 3 ) 2 )など公知のものが使用できる。これらのう 、経済性、取扱いの容易さ、入手の容易さ の観点から、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH 4 )、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH 4 )、リチウム トリ-t-ブトキシアルミノヒドリ ド(LiAlH(Ot-C 4 H 9 ) 3 )、ジイソブチルアルミニウム ヒドリド((i-C 4 H 9 ) 2 AlH)、ナトリウム水素化ビス(メトキシエトキ )アルミニウム(NaAlH 2  (OCH 2 CH 2 OCH 3 ) 2 )が好ましく、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH 4 )と水素化アルミニウムリチウム(LiAlH 4 )が特に好ましい。

 還元剤の使用量は、ブロモジフルオロ酢 誘導体1モルに対して、次の[式1]で示される モル数以上用いるのが好ましい。

還元剤の必要モル数 = 2 / 還元剤の分子 に含まれる活性水素数 [式1]

 すなわち、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH 4 )や水素化アルミニウムリチウム(LiAlH 4 )の場合には0.5モル以上であり、リチウム ト リ-t-ブトキシアルミノヒドリド(LiAlH(Ot-C 4 H 9 ) 3 )、ジイソブチルアルミニウム ヒドリド((i-C 4 H 9 ) 2 AlH)の場合には2.0モル以上であり、ナトリウ 水素化ビス(メトキシエトキシ)アルミニウム (NaAlH 2  (OCH 2 CH 2 OCH 3 ) 2 )の場合には1.0モル以上である。これらの還 剤は、通常、必要モル数の0.8倍から5倍使用 れるが、1倍から3倍用いるのが好ましい。 論これ以上使用することも可能であるが、 件によっては副反応、すなわちブロモジフ オロメチル基の炭素-臭素結合の還元などが じる可能性があり好ましくない。

 これらの還元剤は単独で使用しても良い 、二種類以上の還元剤を共存させても良い しかし、上述したアート型のヒドリド錯体 外を共存させるのは好ましくない。特に臭 -炭素結合を還元して、脱臭素を生じること がこれまで報告されている還元剤を共存させ るのは好ましくない。具体的には活性亜鉛、 金属ナトリウム等が例示される。またヒドリ ド型の還元剤ではあっても「アート型」のヒ ドリド錯体に該当しないナトリウムヒドリド (NaH)、リチウムヒドリド(LiH)も、還元剤とし 強力すぎるので好ましくない。これら、「 ート型のヒドリド錯体」に該当しない還元 は、系内に全く共存させないことが特に好 しいが、仮に不純物として共存する場合、 述の「アート型のヒドリド錯体」1モルに対 て、0.1モル未満であることが好ましく、0.05 モル未満であることが特に好ましい。

 本工程では通常溶媒を使用する。溶媒と ては、例えば水、DMF、N,N-ジメチルスルホキ シド(DMSO)や、メタノール、エタノール、2-プ パノール等のアルコール類、ジエチルエー ル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ブ ルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテ 等のエーテル類、n-ペンタン、n-ヘキサン、 n-ヘプタン、n-オクタン等のアルカン類、ベ ゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合 などが例示できるがこれらに限られない。 た、これらの溶媒は1種または2種以上を組み 合わせて用いることもできる。

 好ましく使用される溶媒は、使用する還元 と反応基質によって異なる。例えば、水素 ホウ素ナトリウム(NaBH 4 )を使用する場合、反応基質が水溶性である 合には水が使用できるが、水溶性で無い場 にはメタノール、エタノール、2-プロパノー ル等のアルコール類、ジエチルエーテル、テ トラヒドロフラン、ジオキサン、ブチルメチ ルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエ ーテル類が好ましく、メタノール、テトラヒ ドロフラン、ジイソプロピルエーテルが特に 好ましい。水素化アルミニウムリチウム(LiAlH 4 )を使用する場合にはアルコール類は好まし なく、ジエチルエーテル、テトラヒドロフ ン、ジオキサン、ブチルメチルエーテル、 イソプロピルエーテル等のエーテル類が好 しい。その中でもテトラヒドロフラン、ジ ソプロピルエーテルが特に好ましい。

 上記反応は空気中でも行われるが、窒素 アルゴン等の不活性ガス中で行うことが好 しい。本工程において、通常反応温度は-100 ~200 ℃であり、好ましくは-78~100 ℃であり、 より好ましくは0~70 ℃である。また、反応時 間は5分~24時間程度であるが、ガスクロマト ラフィー(GC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの分 機器を使用し,原料であるブロモジフルオロ 酸誘導体が消費された時点を反応の終点と ることが好ましい。

 反応終了後、抽出、蒸留等の通常の手段 より、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールを 得ることができる。また、必要によりカラム クロマトグラフィー、精密蒸留等により精製 することもできる。

 次に、本発明の第2工程について説明する 。第2工程は、第1工程で得られた2-ブロモ-2,2- ジフルオロエタノールを式[3]もしくは式[4]で 表されるカルボン酸誘導体と反応させて、エ ステル化して、式[5]で表されるカルボン酸ブ ロモジフルオロエチルエステルを得る工程( ステル化工程1)である。

 式[3]もしくは式[4]において、Rは置換もし くは非置換の炭素数1~20の直鎖状、分岐状又 環状のアルキル基、置換もしくは非置換の 素数6~15のアリール基又は炭素数4~15のヘテロ アリール基を示す。ただし、Rとして、その 造内に非共役不飽和部位(二重結合または三 結合)を有するものは除く。また、式[3]にお いて、X’はヒドロキシル基もしくはハロゲ (フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を表す。

 ここで式[3]もしくは式[4]におけるRをより 具体的に示すと、メチル基、エチル基、n-プ ピル基、イソプロピル基、シクロプロピル 、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基 tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチ ル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、 クロヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基 n-ドデシル基、1-アダマンチル基、2-アダマ チル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン-2-イル基、 1-アダマンタンメチル基、2-アダマンタンメ ル基、フェニル基、4-メトキシフェニル基、 4-tert-ブチルフェニル基、4-ビフェニル基、1- フチル基、2-ナフチル基、10-アントラニル 、2-フラニル基などが挙げられ、置換基とし てカルボニル基、ラクトン、ヒドロキシル基 を含むものの例としては下記のものが挙げら れる。

 式[3]で表されるカルボン酸類およびカル ン酸ハライド類、もしくは式[4]で表される ルボン酸無水物類と、第1工程で得られた2- ロモ-2,2-ジフルオロエタノールとを反応さ 、式[5]で表されるカルボン酸ブロモジフル ロエチルエステルを製造する具体的な方法 しては、これまで公知となっているエステ 化法のいずれも採用することができ、特に 限は無い。

 エステル化方法としては、式[3]で表され カルボン酸(X’=OH)と、2-ブロモ-2,2-ジフルオ ロエタノールとを酸触媒の存在下脱水縮合さ せる方法(フィッシャー・エステル合成反応) 、式[3]で表されるカルボン酸ハライド類(X =Cl、Br、I、F)もしくは式[4]で表されるカルボ ン酸無水物類と、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエ ノールとを反応させる方法などが例示でき 。

 式[3]で表されるカルボン酸(X’=OH)を用い 場合、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールに 対して作用させる、式[3]で表されるカルボン 酸の使用量は、特に制限するものではないが 、通常、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノール1 ルに対して、0.1~5モルであり、好ましくは 0.2~3モルであり、より好ましくは、0.5~2モル る。カルボン酸の使用量として、0.8~1.5モル であることは、特に好ましい。

 反応は、通常、ジクロロエタン、トルエ 、エチルベンゼン、モノクロロベンゼン、 セトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等 の非プロトン性溶媒が用いられる。これらの 溶媒は単独で使用してもよく、あるいは、2 類以上を併用しても差し支えない。

 反応温度は特に制限はなく、通常、0~200 の範囲であり、好ましくは、20~180℃であり より好ましくは、50~150℃である。反応は攪 しながら行うのが好ましい。

 反応時間は反応温度にも依存するが、通 、数分~100時間であり、好ましくは、30分~50 間であり、より好ましくは、1~20時間である が、ガスクロマトグラフィー(GC)や核磁気共 装置(NMR)などの分析機器を使用し,原料であ 2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールが消費さ た時点を反応の終点とすることが好ましい

 本反応においては、通常は酸触媒としてp -トルエンスルホン酸などの有機酸、および/ たは、硫酸等の無機酸を添加する。あるい 脱水剤として1,1’-カルボニルジイミダゾー ル、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド を添加してもよい。かかる酸触媒の使用量 しては、特に制限はないが、2-ブロモ-2,2-ジ ルオロエタノール1モルに対して、0.0001~10モ ルであり、好ましくは、0.001~5モルであり、 り好ましくは、0.01~1.5モルである。

 酸触媒を用いたエステル化反応は、ディ ンスターク装置を用いるなどして、脱水し がら実施すると、反応時間が短縮化される 向があることから好ましい。 

 反応終了後、抽出、蒸留、再結晶等の通 の手段により、式[5]で表されるカルボン酸 ロモジフルオロエチルエステルを得ること できる。また、必要によりカラムクロマト ラフィー、再結晶等により精製することも きる。

 一方、式[3]で表されるカルボン酸ハライ 類(X’=Cl、Br、I、F)もしくは式[4]で表される カルボン酸無水物類を用いる場合、2-ブロモ- 2,2-ジフルオロエタノールに対して作用させ 、式[3]で表されるカルボン酸ハライド類も くは式[4]で表されるカルボン酸無水物類の 用量は、特に制限するものではないが、通 、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノール1モルに 対して、0.1~5モルであり、好ましくは、0.2~3 ルであり、より好ましくは、0.5~2モルある。 カルボン酸ハライド類もしくはカルボン酸無 水物類の使用量として、0.8~1.5モルであるこ は、特に好ましい。

 反応は、無溶媒で行ってもよく、あるい 反応に対して不活性な溶媒中で行ってもよ 。かかる溶媒としては、反応不活性な溶媒 あれば特に限定するものではなく、例えば 水、有機溶媒あるいはこれらの混合系で行 てもよい。該有機溶媒としては、n-ヘキサ 、ベンゼンまたはトルエン等の炭化水素系 媒、アセトン、メチルエチルケトンまたは チルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、 酸エチルまたは酢酸ブチル等のエステル系 媒、ジエチルエーテル、ジエチレングリコ ルジメチルエーテル、テトラヒドロフラン たはジオキサン等のエーテル系溶媒、ジク ロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2- クロロエタン、テトラクロロエチレン、ク ロベンゼン、オルソクロルベンゼン等のハ ゲン系溶媒、アセトニトリル、N,N-ジメチル ホルムアミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノ 、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の 性溶媒などが例示される。これらの溶媒は 独で使用してもよく、あるいは、2種類以上 併用しても差し支えない。 

 反応温度は特に制限はなく、通常、-78~150 ℃の範囲であり、好ましくは、-20~120℃であ 、より好ましくは、0~100℃である。

 反応時間は反応温度にも依存するが、通 、数分~100時間であり、好ましくは、30分~50 間であり、より好ましくは、1~20時間である が、ガスクロマトグラフィー(GC)や核磁気共 装置(NMR)などの分析機器を使用し,原料であ 2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールが消費さ た時点を反応の終点とすることが好ましい

 式[3]で表されるカルボン酸ハライド類を 用する場合には、無触媒下、副生するハロ ン化水素(例えば、塩化水素など)を、反応 外に除去しながら行ってもよく、あるいは 脱ハロゲン化水素剤(受酸剤)を用いて行って もよく、式[4]で表されるカルボン酸無水物類 を用いる場合には、副生する酸を捕捉するた めの受酸剤を用いて行っても良い。

 該受酸剤としては、例えば、トリエチル ミン、ピリジン、ピコリン、ジメチルアニ ン、ジエチルアニリン、1,4-ジアザビシクロ [2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0 ]ウンデカ-7-エン(DBU)等の有機塩基、あるいは 、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭 酸カリウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウ ム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸 化マグネシウム等の無機塩基などが例示され る。かかる受酸剤の使用量としては、特に制 限はないが、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノ ル1モルに対して、0.05~10モルであり、好まし くは、0.1~5モルであり、より好ましくは、0.5~ 3モルである。

 反応終了後、抽出、蒸留、再結晶等の通 の手段により、式[5]で表されるカルボン酸 ロモジフルオロエチルエステルを得ること できる。また、必要によりカラムクロマト ラフィー、再結晶等により精製することも きる。

 次に、本発明の第3工程について説明する 。第3工程は、第2工程で得られた式[5]で表さ るカルボン酸ブロモジフルオロエチルエス ルをスルフィン化剤の存在下で反応させ、2 -アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエ タンスルフィン酸塩を得る工程(スルフィン 工程)である。

 本工程で使用されるスルフィン化剤は、式[ 15]
(前記式[15]において、S 1 はS 2 O 4 、HOCH 2 SO 2 、SO 4 またはHSO 4 を表し、mおよびnは整数を表し、pは0(零)もし くは整数を表す。M 1 はLi、Na、KもしくはNH 4 を表す。)
で表されるものが使用できるが、具体的には 亜二チオン酸リチウム、亜二チオン酸ナトリ ウム、亜二チオン酸カリウム、亜二チオン酸 アンモニウム、ヒドロキシメタンスルフィン 酸リチウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸 ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸 カリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ア ンモニウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸ナトリ ウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム 、亜硫酸水素リチウム、亜硫酸水素ナトリウ ム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモ ニウム等が例示される。この中で亜二チオン 酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウムが好ま しく、亜二チオン酸ナトリウムが特に好まし い。

 スルフィン化剤のカルボン酸ブロモジフ オロエチルエステル[5]に対するモル比は、 常、0.5~10、好ましくは0.9~5.0であり、特に好 ましくは1.0~2.0である。

 本反応は空気中でも実施することができ が、空気中の水分によってスルフィン化剤 分解する場合がある。したがって窒素やア ゴン雰囲気で実施するのが好ましい。

 本反応は、塩基を添加しなくても進行す 場合があるが、添加することによって反応 促進させることができるため、通常添加す 。添加される塩基としては、例えば、炭酸 チウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、 酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭 水素カリウム等挙げることができ、好まし は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウ である。

 この反応は、好ましくは有機溶媒と水と 混合溶媒中で行われる。前記有機溶媒とし は、例えば、低級アルコール類、テトラヒ ロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N- メチルアセトアミド、アセトニトリル、ジ チルスルホキシド等の、水との相溶性のよ 溶媒が好ましく、さらに好ましくは、N,N-ジ チルアセトアミド、アセトニトリル、ジメ ルスルホキシド等であり、特に好ましくは セトニトリルである。

 有機溶媒の使用割合は、有機溶媒と水と 合計100重量部に対して、通常、5重量部以上 、好ましくは10重量部以上、さらに好ましく 20~90重量部である。

 反応温度は、通常、40~200℃、好ましくは6 0~100℃であり、反応時間は、通常、0.5~120時間 、好ましくは2~72時間であるが、薄層クロマ グラフィー(TLC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの 析機器を使用し,原料であるカルボン酸ブロ モジフルオロエチルエステル[5]が消費された 時点を反応の終点とすることが好ましい。反 応時間を費やしてもカルボン酸ブロモジフル オロエチルエステル[5]が消費されない場合に は、反応液を二層分離し、水層を廃棄した後 に、再度水、スルフィン化剤そして塩基を添 加して、反応を再開させることができる。な お、反応温度が有機溶媒あるいは水の沸点よ り高い場合は、オートクレーブなどの耐圧容 器を使用する。

 ところで、スルフィン化剤のカチオン部と 機塩基のカチオン部が等しい場合(例えば、 「スルフィン化剤として亜二チオン酸ナトリ ウム、無機塩基として炭酸ナトリウムを使用 する場合」や「スルフィン化剤として亜硫酸 カリウム、無機塩基として炭酸水素カリウム を使用する場合」等)には、式[6]
で表される2-アルキルカルボニルオキシ-1,1- フルオロエタンスルフィン酸を単一の生成 として得ることができる。この場合は反応 を濃縮等で処理した後、再結晶等の方法で に精製することも可能である。

 スルフィン化剤のカチオン部と無機塩基 カチオン部が異なる場合には、厳密には単 の生成物とはならず、式[6]において、スル ィン化剤由来のカチオンと無機塩基由来の チオンの混合物となる。カチオンの比率は 用するスルフィン化剤と無機塩基の比や、 応条件によって異なる。このような混合物 場合は一般に再結晶等による精製は困難に る。このようなカチオン混合物のまま次の 程に供することは可能であるが、分析や精 等が困難になることから、塩基として無機 基を使用する場合には、スルフィン化剤の チオン部と無機塩基のカチオン部が同じも を使用することが好ましい。

 次に、本発明の第4工程について説明する 。第4工程は、第3工程で得られた2-アルキル ルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスルフ ィン酸塩類[6]を酸化剤と反応させ、式[2]で表 される2-アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフ オロエタンスルホン酸塩を得る工程(酸化工 )である。

 本工程で使用される酸化剤としては、過 化水素のほか、メタクロロ過安息香酸、t- チルヒドロペルオキシド、ペルオキシ硫酸 リウム、過マンガン酸カリウム、過ホウ酸 トリウム、メタヨウ素酸ナトリウム、クロ 酸、二クロム酸ナトリウム、ハロゲン、ヨ ドベンゼンジクロリド、ヨードベンゼンジ セテート、酸化オスミウム(VIII)、酸化ルテ ウム(VIII)、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素 ナトリウム、酸素ガス、オゾンガス等を挙 ることができ、好ましくは、過酸化水素、 タクロロ過安息香酸、t-ブチルヒドロペルオ キシド等である。

 酸化剤の2-アルキルカルボニルオキシ-1,1- ジフルオロエタンスルフィン酸塩類に対する モル比は、通常、0.9~10.0、好ましくは1.0~2.0で ある。原料のスルフィン酸塩類が粗体であり 、正確なモル量がわからない場合には、スル フィン化前の式[5]で表されるカルボン酸ブロ モジフルオロエチルエステルのモル量に対し て酸化剤を加えれば良い。

 また、前記酸化剤と共に遷移金属触媒を 用することもできる。前記遷移金属触媒と ては、例えば、タングステン酸二ナトリウ 、塩化鉄(III)、塩化ルテニウム(III)、酸化セ レン(IV)等を挙げることができ、好ましくは ングステン酸二ナトリウムである。

 遷移金属触媒の2-アルキルカルボニルオ シ-1,1-ジフルオロエタンスルフィン酸塩類に 対するモル比は、通常、0.0001~1.0、好ましく 0.001~0.5、さらに好ましくは0.001~0.1である。

 さらに、前記酸化剤および遷移金属触媒 加え、反応液のpH調整の目的で、緩衝剤を 用することもできる。前記緩衝剤としては 例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸 水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、 ン酸二水素カリウム等を挙げることができ 。緩衝剤の2-アルキルカルボニルオキシ-1,1- フルオロエタンスルフィン酸塩類に対する ル比は、通常、0.01~2.0、好ましくは0.03~1.0、 さらに好ましくは0.05~0.5である。

 この反応は、通常、反応溶媒中で行われ 。前記反応溶媒としては、水や、例えば、 級アルコール類、テトラヒドロフラン、N,N- ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセト ミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキ ド、酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機溶媒 好ましく、さらに好ましくは、水、メタノ ル、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニト ル、ジメチルスルホキシド等であり、特に ましくは水、メタノールである。

 また必要に応じて、有機溶媒と水とを併 することもでき、その場合の有機溶媒の使 割合は、有機溶媒と水との合計100重量部に して、通常、5重量部以上、好ましくは10重 部以上、さらに好ましくは20~90重量部であ 。反応溶媒の2-アルキルカルボニルオキシ-1, 1-ジフルオロエタンスルフィン酸塩類1重量部 に対する使用量は、通常、1~100重量部、好ま くは2~100重量部、さらに好ましくは5~50重量 である。

 反応温度は、通常、0~100℃、好ましくは5~ 60℃、さらに好ましくは5~40℃であり、反応時 間は、通常、0.1~72時間、好ましくは0.5~24時間 であり、さらに好ましくは0.5~12時間であるが 、薄層クロマトグラフィー(TLC)や核磁気共鳴 置(NMR)などの分析機器を使用し,原料である2 -アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエ タンスルフィン酸塩類が消費された時点を反 応の終点とすることが好ましい。

 尚、反応液をそのまま濃縮する程度の処 で次工程に供することもできるし、場合に っては再結晶等で精製することも可能であ 。

 次いで、本発明の第5工程について説明する 。第5工程は、第4工程で得られた式[2]で表さ る2-アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオ ロエタンスルホン酸塩を、式[7]
で表される一価のオニウム塩を用いてオニウ ム塩交換し、式[8]で表される2-アルキルカル ニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン オニウム塩を得る工程(オニウム塩交換工程1 )である。

 式[7]に含まれるオニウムカチオンQ + については、下記式(a)もしくは下記式(b)で示 されるスルホニウムカチオン、または下記式 (c)で示されるヨードニウムカチオンを示す。

 前記式(a)において、R 1 、R 2 及びR 3 は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数 1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アル ニル基又はオキソアルキル基、又は置換も くは非置換の炭素数6~18のアリール基、アラ キル基又はアリールオキソアルキル基を示 か、あるいはR 1 、R 2 及びR 3 のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して 中の硫黄原子と共に環を形成しても良い。

 前記式(b)において、R 4 は置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状 分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニ 基、又は置換もしくは非置換の炭素数6~14の リール基を示す。mは1~5の整数、nは0(零)又 1を示す。

 前記式(c)において、R 4 は置換もしくは非置換の炭素数1~20の直鎖状 分岐状又は環状のアルキル基又はアルケニ 基、又は置換もしくは非置換の炭素数6~14の リール基を示す。qは0(零)~5の整数、nは0(零) 又は1を示す。

 以下に式(a)および式(b)で示されるスルホ ウムカチオン、式(c)で示されるヨードニウ カチオンについて詳述する。

  式(a)で示されるスルホニウムカチ オン
 式(a)におけるR 1 、R 2 及びR 3 としては具体的に以下のものが挙げられる。 アルキル基として、メチル基、エチル基、n- ロピル基、イソプロピル基、シクロプロピ 基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル 、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペン チル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、2-エチ ルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘ プチル基、4-メチルシクロヘキシル基、シク ヘキシルメチル基、n-オクチル基、n-デシル 基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、 シクロ[2.2.1]ヘプテン-2-イル基、1-アダマン ンメチル基、2-アダマンタンメチル基等が挙 げられる。アルケニル基としては、ビニル基 、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘ キセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げら れる。オキソアルキル基としては、2-オキソ クロペンチル基、2-オキソシクロヘキシル 、2-オキソプロピル基、2-オキソエチル基、2 -シクロペンチル-2-オキソエチル基、2-シクロ ヘキシル-2-オキソエチル基、2-(4-メチルシク ヘキシル)-2-オキソエチル基等を挙げること ができる。アリール基としては、フェニル基 、ナフチル基、チエニル基等やp-メトキシフ ニル基、m-メトキシフェニル基、o-メトキシ フェニル基、p-エトキシフェニル基、p-tert-ブ トキシフェニル基、m-tert-ブトキシフェニル 等のアルコキシフェニル基、2-メチルフェニ ル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニ 基、エチルフェニル基等のアルキルフェニ 基、メチルナフチル基、エチルナフチル基 のアルキルナフチル基、ジエチルナフチル 等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナ チル基、ジエトキシナフチル基等のジアル キシナフチル基等が挙げられる。アラルキ 基としては、ベンジル基、1-フェニルエチル 基、2-フェニルエチル基等が挙げられる。ア ールオキソアルキル基としては、2-フェニ -2-オキソエチル基、2-(1-ナフチル)-2-オキソ チル基、2-(2-ナフチル)-2-オキソエチル基等 2-アリール-2-オキソエチル基等が挙げられる 。また、R 1 、R 2 及びR 3 のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して 黄原子を介して環状構造を形成する場合に 、1,4-ブチレン、3-オキサ-1,5-ペンチレン等が 挙げられる。更には置換基としてアクリロイ ルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の重 合可能な置換基を有するアリール基が挙げら れ、具体的には4-(アクリロイルオキシ)フェ ル基、4-(メタクリロイルオキシ)フェニル基 4-ビニルオキシフェニル基、4-ビニルフェニ ル基等が挙げられる。

 より具体的に式(a)で示されるスルホニウ カチオンを示すと、トリフェニルスルホニ ム、(4-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスル ニウム、ビス(4-tert-ブチルフェニル)フェニ スルホニウム、トリス(4-tert-ブチルフェニ )スルホニウム、(3-tert-ブチルフェニル)ジフ ニルスルホニウム、ビス(3-tert-ブチルフェ ル)フェニルスルホニウム、トリス(3-tert-ブ ルフェニル)スルホニウム、(3,4-ジtert-ブチル フェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4- ジtert-ブチルフェニル)フェニルスルホニウム 、トリス(3,4-ジtert-ブチルフェニル)スルホニ ム、(4-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルス ホニウム、ビス(4-tert-ブトキシフェニル)フ ニルスルホニウム、トリス(4-tert-ブトキシ ェニル)スルホニウム、(3-tert-ブトキシフェ ル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3-tert-ブ キシフェニル)フェニルスルホニウム、トリ (3-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、(3,4 -ジtert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホ ウム、ビス(3,4-ジtert-ブトキシフェニル)フェ ニルスルホニウム、トリス(3,4-ジtert-ブトキ フェニル)スルホニウム、ジフェニル(4-チオ ェノキシフェニル)スルホニウム、(4-tert-ブ キシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフ ェニルスルホニウム、トリス(4-tert-ブトキシ ルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニル スルホニウム、(4-tert-ブトキシフェニル)ビス (4-ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、 リス(4-ジメチルアミノフェニル)スルホニウ 、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、ジ チル(2-ナフチル)スルホニウム、(4-ヒドロキ フェニル)ジメチルスルホニウム、(4-メトキ シフェニル)ジメチルスルホニウム、トリメ ルスルホニウム、(2-オキソシクロヘキシル) クロヘキシルメチルスルホニウム、トリナ チルスルホニウム、トリベンジルスルホニ ム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメ ルフェニルスルホニウム、2-オキソ-2-フェ ルエチルチアシクロペンタニウム、ジフェ ル 2-チエニルスルホニウム、4-n-ブトキシナ フチル-1-チアシクロペンタニウム、2-n-ブト シナフチル-1-チアシクロペンタニウム、4-メ トキシナフチル-1-チアシクロペンタニウム、 2-メトキシナフチル-1-チアシクロペンタニウ 等が挙げられる。より好ましくはトリフェ ルスルホニウム、(4-tert-ブチルフェニル)ジ ェニルスルホニウム、(4-tert-ブトキシフェ ル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4-tert- チルフェニル)スルホニウム、(4-tert-ブトキ カルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニ スルホニウム等が挙げられる。

 更には、4-(メタクリロイルオキシ)フェニ ルジフェニルスルホニウム、4-(アクリロイル オキシ)フェニルジフェニルスルホニウム、4- (メタクリロイルオキシ)フェニルジメチルス ホニウム、4-(アクリロイルオキシ)フェニル ジメチルスルホニウム等が挙げられる。これ ら重合可能なスルホニウムカチオンに関して は、特開平4-230645号公報、特開2005-84365号公報 等を参考にすることができる。

  式(b)で示されるスルホニウムカチ オン
 式(b)におけるR 4 -(O) n -基の置換基位置は特に限定されるものでは いが、フェニル基の4位あるいは3位が好まし い。より好ましくは4位である。ここでnは0( )又は1である。R 4 としては、具体的に、メチル基、エチル基、 n-プロピル基、sec-プロピル基、シクロプロピ ル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル 、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペン ル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n- オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、1-ア ダマンチル基、2-アダマンチル基、ビシクロ[ 2.2.1]ヘプテン-2-イル基、フェニル基、4-メト シフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4- フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、 10-アントラニル基、2-フラニル基、更にn=1の 合に、アクリロイル基、メタクリロイル基 ビニル基、アリル基が挙げられる。

 具体的なスルホニウムカチオンとしては (4-メチルフェニル)ジフェニルスルホニウム 、(4-エチルフェニル)ジフェニルスルホニウ 、(4-シクロヘキシルフェニル)ジフェニルス ホニウム、(4-n-ヘキシルフェニル)ジフェニ スルホニウム、(4-n-オクチル)フェニルジフ ニルスルホニウム、(4-メトキシフェニル)ジ フェニルスルホニウム、(4-エトキシフェニル )ジフェニルスルホニウム、(4-tert-ブトキシフ ェニル)ジフェニルスルホニウム、(4-シクロ キシルオキシフェニル)ジフェニルスルホニ ム、(4-トリフルオロメチルフェニル)ジフェ ニルスルホニウム、(4-トリフルオロメチルオ キシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4-te rt-ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル )ジフェニルスルホニウム等が挙げられる。

  式(c)で示されるヨードニウムカチ オン
 式(c)におけるR 4 -(O) n -基の置換基位置は特に限定されるものでは いが、フェニル基の4位あるいは3位が好まし い。より好ましくは4位である。ここでnは0( )又は1である。R 4 の具体例は上述した式(b)におけるR 4 と同じものを再び挙げることができる。

 具体的なヨードニウムカチオンとしては ジフェニルヨードニウム、ビス(4-メチルフ ニル)ヨードニウム、ビス(4-エチルフェニル )ヨードニウム、ビス(4-tert-ブチルフェニル) ードニウム、ビス(4-(1,1-ジメチルプロピル) ェニル)ヨードニウム、(4-メトキシフェニル) フェニルヨードニウム、(4-tert-ブトキシフェ ル)フェニルヨードニウム、4-(アクリロイル オキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4-( タクリロイルオキシ)フェニルフェニルヨー ニウム等が挙げられるが、中でもビス(4-tert -ブチルフェニル)ヨードニウムが好ましく用 られる。

 次いで、式[7]におけるX - の1価のアニオンとしては、例えば、F - 、Cl - 、Br - 、I - 、ClO 4 - 、HSO 4 - 、H 2 PO 4 - 、BF 4 - 、PF 6 - 、SbF 6 - 、脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホ ン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン 酸アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、 脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン 酸アニオン、フルオロカルボン酸アニオン、 トリフルオロ酢酸アニオン等を挙げることが でき、好ましくは、Cl - 、Br - 、HSO 4 - 、BF 4 - 、脂肪族スルホン酸イオン等であり、さらに 好ましくは、Cl - 、Br - 、HSO 4 - である。

 式[7]で示される一価のオニウム塩の、2- ルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタ ンスルホン酸塩[2](もしくは[22])に対するモル 比は、通常、0.5~10.0、好ましくは0.8~2.0であり 、さらに好ましくは0.9~1.2である。

 この反応は、通常、反応溶媒中で行われ 。前記反応溶媒としては、水や、例えば、 級アルコール類、テトラヒドロフラン、N,N- ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセト ミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキ ド等の有機溶媒が好ましく、さらに好まし は、水、メタノール、N,N-ジメチルアセトア ド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシ 等であり、特に好ましくは水である。

 また必要に応じて、水と有機溶媒とを併 することができ、この場合の有機溶媒の使 割合は、水と有機溶媒との合計100重量部に して、通常、5重量部以上、好ましくは10重 部以上、さらに好ましくは20~90重量部であ 。反応溶媒の使用量は、対イオン交換前駆 1重量部に対して、通常、1~100、好ましくは2~ 100重量部、さらに好ましくは5~50重量部であ 。

 反応温度は、通常、0~80℃、好ましくは5~3 0℃であり、反応時間は、通常、10分~16時間、 好ましくは30分~6時間であるが、薄層クロマ グラフィー(TLC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの 析機器を使用し,原料である2-アルキルカル ニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン 塩[2](もしくは[22])が消費された時点を反応 終点とすることが好ましい。

 このようにして得られた式[8]で表される2 -アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエ タンスルホン酸オニウム塩は、必要に応じて 、有機溶剤で洗浄したり、抽出して精製した りすることもできる。前記有機溶剤としては 、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエ テル類;ジエチルエーテル等のエーテル類; 化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化 ルキル類等の、水と混合しない有機溶剤が ましい。

 以上述べてきた方法で、アシル基の置換 として、その構造内に非共役不飽和部位(二 重結合または三重結合)を有さない、2-アルキ ルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンス ホン酸オニウム塩を得ることができる。本 合物は、化学増幅型レジスト材料に用いら る光酸発生剤として供することができる。 シル基の置換基として、その構造内に非共 不飽和部位(二重結合または三重結合)を有 るものに関しては、以上の工程で製造する とは困難であるため、更に以下の工程を実 する必要がある。

 次いで、本発明の第5’工程について説明 する。第5’工程は、第4工程で得られた式[2] 表される2-アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジ フルオロエタンスルホン酸塩を鹸化(塩基性 質存在下での加水分解)して、式[9]で表され 2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン 酸塩を得る工程(鹸化工程)である。

 式[2]で表される2-アルキルカルボニルオ シ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を鹸化 する方法としては、これまで公知となってい る鹸化法のいずれも採用することができ、特 に制限は無いが、下記の方法が例示できる。

 一般に鹸化反応は塩基触媒の存在下で実 されるが、塩基としては、1種以上のアルカ リ金属の水酸化物、重炭酸塩、炭酸塩やアン モニア、アミン化合物が含まれる。アルカリ 金属化合物では、水酸化ナトリウム、水酸化 カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリ ウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、 炭酸カリウムなどが例示される。アミン化合 物では、メチルアミン、ジメチルアミン、ト リメチルアミン、エチルアミン、ジエチルア ミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、 ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブ チルアミン、ジブチルアミン、トリブチルア ミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミ ン、モルホリン、ピロール、ピロリジン、ピ リジン、エタノールアミン、ジエタノールア ミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチル ミノエタノール、N,N-ジエチルアミノエタノ ル、エチレンジアミン、ジエチレントリア ン、トリエチレンテトラミン、1,2-プロピレ ンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリ プロピレンテトラミンやこれらの四級水酸化 アンモニウム塩などが示される。

 2-アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオ ロエタンスルホン酸塩[2]に対する塩基のモル 比は、通常、0.01~10.0、好ましくは0.1~5.0であ 、さらに好ましくは0.5~2.0である。

 この反応は、通常、水の存在下で行われ 。2-アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオ ロエタンスルホン酸塩[2]に対する水のモル比 は、通常、1以上であり、上限は無いが、あ りに多量の水を使用すると効率が悪くなる で、100以下が好ましく、更に好ましくは50以 下である。

 また必要に応じて、水と有機溶媒とを併 することができる。併用する有機溶媒に特 制限は無いが、式[9]で表される2-ヒドロキ -1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を水層か ら抽出できる有機溶媒、例えば、酢酸エチル 、酢酸n-ブチル等のエステル類;ジエチルエー テル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロ ルム等のハロゲン化アルキル類等の、水と 合しない有機溶剤が好ましい。

 この場合の有機溶媒の使用割合は、水と 機溶媒との合計100重量部に対して、通常、5 重量部以上、好ましくは10重量部以上、さら 好ましくは20~90重量部である。

 反応温度は、通常、0~100℃、好ましくは5~ 80℃であり、反応時間は、通常、10分~16時間 好ましくは30分~6時間であるが、薄層クロマ グラフィー(TLC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの 分析機器を使用し,原料である2-アルキルカル ボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン 塩[2]が消費された時点を反応の終点とする とが好ましい。

 このようにして得られた式[9]で表される2 -ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸 塩は、必要に応じて、有機溶剤で抽出したり 、再結晶で精製したりすることもできる。

 次に、本発明の第6工程について説明する 。第6工程は、第5’工程で得られた式[9]で表 れる2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエタンスル ホン酸塩を、式[10]もしくは式[11]で表される ルボン酸誘導体と反応させて、エステル化 、式[12]で表される2-アルキルカルボニルオ シ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を製 する工程([第6工程]:エステル化工程2)である

 式[10]もしくは式[11]において、R’は前述 たRと同じものを再び挙げることができる。 さらにRとは異なり、R’の置換基としては直 、分岐鎖あるいは環状のアルケニル基を含 でいても良い。このようなアルケニル基と ては、具体的に、ビニル基、アリル基、1- チルエテニル基、1-メチルアリル基、2-メチ アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニ 基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタジ エニル基、2-ペンテニル基、4-ペンテニル基 2-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、シクロプ ペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘ セニル基、5-ノルボルネン-1-イル基等を挙 ることができる。

 また、2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエタン スルホン酸塩[9]は、n-ヘキサン、ベンゼンま はトルエン等の炭化水素系の非極性溶媒に 殆ど溶解しない為、本工程で使用される溶 としては好ましくなく。水や、アセトン、 チルエチルケトンまたはメチルイソブチル トン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは 酸ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエ テル、ジエチレングリコールジメチルエー ル、テトラヒドロフランまたはジオキサン のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロ ホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、 テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オ ルソクロルベンゼン等のハロゲン系溶媒、ア セトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N, N-ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスル キシド、スルホラン等の極性溶媒を使用す ことが好ましい。

 以上のように、第2工程における、式[3]で 表されるカルボン酸類およびカルボン酸ハラ イド類の代わりに式[10]で表されるカルボン 類およびカルボン酸ハライド類を使用し、 [4]で表されるカルボン酸無水物類の代わり 式[11]で表されるカルボン酸無水物類を使用 、さらに用いる溶媒にやや制限を加える以 は第2工程とほとんど同様の方法を用い、式 [9]で表される2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエ ンスルホン酸塩から式[12]で表される2-アル ルカルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンス ルホン酸塩を製造することができる。

 反応終了後、抽出、溶媒濃縮等の通常の 段により、式[12]で表される2-アルキルカル ニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン 塩を得ることができる。また、必要により ラムクロマトグラフィー、再結晶等により 製することもできる。

 次に、本発明の第7工程について説明する 。第7工程は、第6工程で得られた式[12]で表さ れる2-アルキルカルボニルオキシ-1,1-ジフル ロエタンスルホン酸塩を、式[7]で表される 価のオニウム塩を用いてオニウム塩交換し 式[13]で表される2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロ エタンスルホン酸オニウム塩を得る工程(オ ウム塩交換工程2)である。本工程は、前述し た第5工程(オニウム塩交換工程1)と同様に実 することができる。

 ところで、本発明の第6工程と第7工程の 番は逆にすることも可能である(反応式[17])

 すなわち、式[9]で表される2-ヒドロキシ-1 ,1-ジフルオロエタンスルホン酸塩を式[7]で表 される一価のオニウム塩を用いてオニウム塩 交換し、式[16]で表される2-ヒドロキシ-1,1-ジ ルオロエタンスルホン酸オニウム塩を得(第 6’工程:オニウム塩交換工程2)、さらにこれ エステル化して、式[13]で表される2-アルキ カルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスル ホン酸オニウム塩を製造する(第7’工程:エス テル化工程2)方法である。

 しかしながら、この方法では、第6’工程 (オニウム塩交換工程2)で大過剰のオニウム塩 を使用しなければならず、さらに第7’工程 後で得られた式[13]で表される2-アルキルカ ボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン 酸オニウム塩の精製が困難であるなどの支障 があった(比較例7)。

 従って、上述した通り、本発明の第6工程 と第7工程をこの順に実施するのが好適な方 である。

 以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細 説明するが、本発明はこれらにより限定さ ない。 

 [実施例1]
[2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールの製造]( 1工程:還元工程)
 温度計、コンデンサー、滴下ロートを備え ガラスのフラスコに水素化ホウ素ナトリウ 186g(4.91mol)、メタノール425g(13.2mol)およびジ ソプロピルエーテル3Lを投入し撹拌した。そ の後、氷浴にてエチルブロモジフルオロアセ テート1000g(4.92mol)のジイソプロピルエーテル( 1L)溶液を滴下した。滴下終了後、室温にて1 間撹拌を継続し、ガスクロマトグラフィー て反応終了を確認した。反応液に2N塩酸を2.5 L加え、有機層と水層を分離後、水層をジイ プロピルエーテル500mlにて抽出した。続いて 、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム500ml、飽 食塩水500mlで洗浄した。無水硫酸ナトリウ で乾燥後、溶媒留去、精密蒸留にて無色透 液体として2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノー 430g(収率54%、純度99%)が得られた。

 [実施例2]
[2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールの製造]( 1工程:還元工程)
 温度計、コンデンサー、滴下ロートを備え ガラスのフラスコに、エチルブロモジフル ロアセテート6g(29.6mmol)と脱水したジグリム2 5gを投入して攪拌し、次いで水素化アルミニ ムリチウム(LiAlH 4 )1.5g(39.5mmol)を投入した。60℃まで加温し、12 間攪拌した後、室温まで冷却し、ジイソプ ピルエーテルと塩酸(1M)を加えて抽出した。 層分離後、有機層を飽和重曹水、飽和食塩 、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し 。濾過後、減圧下で溶媒を留去し、目的と る2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールを3.8g( 率80%、純度95%)得た。

 [実施例3]
[2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールの製造]( 1工程:還元工程)
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた ガラスのフラスコに、エチルブロモジフルオ ロ酢酸クロリド27g(140mmol)とテトラヒドロフラ ン200gを投入して攪拌し、次いで水素化ホウ ナトリウム(NaBH 4 )5.0g(132mol)を投入した。60℃まで加温し、16時 攪拌した後、室温まで冷却し、ジイソプロ ルエーテルと塩酸(1M)を加えて抽出した。二 層分離後、有機層を飽和重曹水、飽和食塩水 、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した 。濾過後、減圧下で溶媒を留去し、目的とす る2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールを19.2g( 率85%、純度96%)得た。

 [実施例4-1]
[ピバル酸2-ブロモ-2,2-ジフルオロエチルの製 ](第2工程:エステル化工程1)

 温度計、コンデンサー、滴下ロートを備 たガラスのフラスコに塩化ピバロイル271g(2. 24mol)、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノール360g( 2.23mol)およびジイソプロピルエーテル1.5Lを投 入し撹拌した。その後、氷浴にてトリエチル アミン318g(3.14mol)を滴下した。滴下終了後、 温にて1時間撹拌を継続し、ガスクロマトグ フィーにて反応終了を確認した。反応液に 300mlを加え反応液を全溶後、2N塩酸を500ml加 た。有機層と水層を分離後、水層をジイソ ロピルエーテル500mlにて抽出した。続いて 有機層を飽和食塩水500mlで洗浄し、無水硫酸 ナトリウムで乾燥した。その後、溶媒留去に て淡黄色液体としてピバル酸2-ブロモ-2,2-ジ ルオロエチル485g(収率82%、純度93%)が得られ 。

[ピバル酸2-ブロモ-2,2-ジフルオロエチルの物 ]
1 H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テ ラメチルシラン);δ=4.52(t,2H),1.19(s,9H).
19 F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:ト クロロフルオロメタン);δ=-56.6(t,2F).

 [実施例4-2]
[1,1-ジフルオロ-2-(ピバロイルオキシ)エタン ルフィン酸ナトリウムの製造](第3工程:スル ィン化工程)

 温度計、コンデンサーを備えたガラスのフ スコに純度81%の2-ブロモ-2,2-ジフルオロエチ ルピバロエート376g(1.24mol)、炭酸水素ナトリ ム154g(1.83mol)、亜二チオン酸ナトリウム319g(1. 83mol)、アセトニトリル1.2Lおよび水1.2Lを投入 70℃で4時間撹拌した。その後、室温まで冷 し水層を捨て、新たに炭酸水素ナトリウム1 54g(1.83mol)、亜二チオン酸ナトリウム319g(1.83mol )および水1.2Lを投入し70℃で4時間撹拌した。 の操作を後2回繰り返し、 19 F NMRにて反応終了を確認した。2層の反応液 ら有機層を分離し、濃縮および乾燥をおこ い白色固体として1,1-ジフルオロ-2-(ピバロイ ルオキシ)エタンスルフィン酸ナトリウム290g( 収率60%、純度65%)が得られた。

[1,1-ジフルオロ-2-(ピバロイルオキシ)エタン ルフィン酸ナトリウムの物性]
1 H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テ ラメチルシラン);δ=4.41(t,2H),1.14(s,9H).
19 F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:ト クロロフルオロメタン);δ=-120.2(t,2F).

 [実施例4-3]
[1,1-ジフルオロ-2-(ピバロイルオキシ)エタン ルホン酸ナトリウムの製造]
(第4工程:酸化工程)

 温度計、コンデンサー、滴下ロートを備 たガラスのフラスコに純度65%の1,1-ジフルオ ロ-2-(ピバロイルオキシ)エタン-1-スルフィン ナトリウム290g(0.74mol)、タングステン酸(IV) トリウム二水和物を触媒量及び水600mlを投入 し撹拌した。その後、氷浴にて30%過酸化水素 水170g(1.5mol)を滴下した。滴下終了後、室温に て1時間撹拌を継続し、19F NMRにて反応終了を 確認した。反応液を濃縮後、ジイソプロピル エーテル500mlで洗浄した。続いてろ過し、得 れた固体を乾燥後、白色固体として1,1-ジフ ルオロ-2-(ピバロイルオキシ)エタンスルホン ナトリウム278g(収率91%、純度65%)が得られた

[1,1-ジフルオロ-2-(ピバロイルオキシ)エタン ルホン酸ナトリウムの物性]
1 H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テ ラメチルシラン);δ=4.52(t,2H),1.15(s,9H).
19 F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:ト クロロフルオロメタン);
δ=-113.8(t,2F).

 [実施例5-1]
[吉草酸2-ブロモ-2,2-ジフルオロエチルの製造] (第2工程:エステル化工程1)

 200mLの反応器に、窒素下で吉草酸クロリ  6.0g(50.0mmol)とTHF(脱水)90mLを加え、氷浴した そこに2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノール 1 1.3g(純度93%、65.3mmol/1.31当量)を加え、トリエ ルアミン 7.1g(70.0mmol/1.4当量)を滴下した。滴 下後、室温で18時間攪拌した。その後、水35mL を加え、ジイソプロピルエーテル100mLで2回抽 出を行った。得られた有機層をさらに希塩酸 、重曹水、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム で水分を除去、ろ過を行った後、イソプロピ ルエーテルを留去し、目的とする吉草酸(2-ブ ロモ-2,2-ジフルオロ)エチルを9.9g得た。この き純度は89%、収率は72%であった。

[吉草酸(2-ブロモ-2,2-ジフルオロ)エチルの物 ]
1 H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テ ラメチルシラン);δ=4.53(t,J=11.6Hz,2H;CH 2 ),2.36(t,J=7.6Hz,2H;CH 2 ),1.59(quintet,J=7.6Hz,2H;CH 2 ),1.31(sextet,J=7.6Hz,2H;CH 2 ), 0.86(t,J=7.6Hz,3H;CH 3 ).
19 F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:ト クロロフルオロメタン);
δ=-56.74(t,J=11.6Hz,2F;CF 2 ).

 [実施例5-2]
[1,1-ジフルオロ-2-(バレリルオキシ)エタンス フィン酸ナトリウムの製造]
(第3工程:スルフィン化工程)

 200mLの容器に、窒素下で吉草酸(2-ブロモ-2 ,2-ジフルオロ)エチル 9.7g(純度89%、35.4mmol)、 セトニトリル40g、炭酸水素ナトリウム 5.9g( 70.7mmol/2.0当量)、亜ジチオン酸ナトリウム 8.7 g(50.1mmol/1.5当量)、水40gを加え、60度で1.5時間 80度で16時間攪拌した。さらに炭酸水素ナト リウム 5.9g(70.7mmol)、亜ジチオン酸ナトリウ  8.7g(50.1mmol)を加え、80度で94時間攪拌した。 反応液をアセトニトリル40mLで6回抽出し、得 れた有機層を溶媒留去した。さらにジイソ ロピルエーテル200mLで洗浄し、ろ過を行い 固体を乾燥することで目的の2-バレリルオキ シ-1,1-ジフルオロエタンスルフィン酸ナトリ ム 6.74gを得た。このとき純度は28%、収率は 21%であった。

[2-バレリルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスル ィン酸ナトリウムの物性]
1 H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テ ラメチルシラン);δ=4.42(t,J=16.4Hz,2H;CH 2 ),2.34(t,J=7.6Hz,2H;CH 2 ),1.50(quintet,J=7.6Hz,2H;CH 2 ),1.28(sextet,J=7.6Hz,2H;CH 2 ), 0.85(t,J=7.6Hz,3H;CH 3 ).
19 F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:ト クロロフルオロメタン);δ=-119.95(t,J=16.4Hz,2F;CF 2 ).

 [実施例5-3]
[1,1-ジフルオロ-2-(バレリルオキシ)エタンス ホン酸ナトリウムの製造](第4工程:酸化工程)

 100mLの反応器に、2-バレリルオキシ-1,1-ジ ルオロエタンスルフィン酸ナトリウム 6.6g( 純度28%、7.3mmol)、水60mL、タングステン酸二ナ トリウム二水和物 0.0047g(0.014mmol/0.0019当量)、 30%過酸化水素水 1.9g(16.4mmol/2.25当量)を加え、 室温で1.5時間攪拌した。反応液を減圧下加温 して揮発成分を留去し、乾固させ、目的とす る2-バレリルオキシ-1,1-ジフルオロエタンス ホン酸ナトリウム 6.6gを得た。このとき純 は26%、収率は88%であった。

[2-バレリルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスル ン酸ナトリウムの物性]
1 H NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:テトラメチル ラン);δ=4.52(t,J=15.6Hz,2H;CH 2 ),2.34(t,J=7.6Hz,2H;CH 2 ),1.51(quintet,J=7.6Hz,2H;CH 2 ),1.28(sextet,J=7.6Hz,2H;CH 2 ), 0.85(t,J=7.6Hz,3H;CH 3 ).
19 F NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:トリクロロフ オロメタン);δ=-113.70(t,J=15.6Hz,2F;CF 2 ).

 [実施例6-1]
[1-アダマンタンカルボン酸2’-ブロモ-2’,2’ -ジフルオロエチルの製造](第2工程:エステル 工程1)

 300mLの反応器に、窒素下で1-アダマンタン カルボニルクロリド 14.2g(71.3mmol)とTHF(脱水)12 0mLを加え、氷浴した。そこに2-ブロモ-2,2-ジ ルオロエタノール 16.1g(純度92%、91.8mmol/1.29 量)を加え、トリエチルアミン 10.1g(99.8mmol/1. 4当量)を滴下した。滴下後、60度で23時間攪拌 した。その後、水50mLを加え、ジイソプロピ エーテル150mLで2回抽出を行った。得られた 機層をさらに希塩酸、重曹水、食塩水で洗 し、硫酸ナトリウムで水分を除去、ろ過を った後、イソプロピルエーテルを留去し、 的とする1-アダマンタンカルボン酸2’-ブロ -2’,2’-ジフルオロエチルを23.2g得た。この とき純度は85%、収率は86%であった。

[1-アダマンタンカルボン酸2’-ブロモ-2’,2’ -ジフルオロエチルの物性]
1 H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テ ラメチルシラン);δ=4.51(t,J=11.6Hz,2H;CH 2 ),1.97(m,3H;1-Ad),1.87(m,6H;1-Ad),1.66(m,6H;1-Ad).
19 F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:ト クロロフルオロメタン);δ=-56.46(t,J=11.6Hz,2F;CF 2 ).

 [実施例6-2]
[2-(1’-アダマンタン)カルボニルオキシ-1,1-ジ フルオロエタンスルフィン酸ナトリウムの製 造](第3工程:スルフィン化工程)

 300mLの容器に、窒素下で1-アダマンタンカ ルボン酸2’-ブロモ-2’,2’-ジフルオロエチ  22.8g(純度85%、60.0mmol)、アセトニトリル80g、 炭酸水素ナトリウム 10.1g(120.0mmol/2.0当量)、 ジチオン酸ナトリウム 15.7g(90.0mmol/1.5当量) 水80gを加え、70度で66時間攪拌した。さらに 酸水素ナトリウム 6.7g(80.0mmol)、亜ジチオン 酸ナトリウム 10.5g(60.0mmol)を加え、80度で24時 間攪拌した。反応液をアセトニトリル30mLで1 抽出し、得られた有機層を溶媒留去した。 らにジイソプロピルエーテル400mLで洗浄し ろ過を行い、固体を乾燥することで目的の2- (1’-アダマンタン)カルボニルオキシ-1,1-ジフ ルオロエタンスルフィン酸ナトリウム12.0gを た。このとき純度は65%であった。また、洗 液を溶媒留去することで1-アダマンタンカ ボン酸(2’-ブロモ-2’,2’-ジフルオロ)エチ  11.3gを回収した。このとき純度は71%であっ 。

 200mLの容器に、窒素下で回収した1-アダマ ンタンカルボン酸(2’-ブロモ-2’,2’-ジフル ロ)エチル 11.1g(純度71%、24.4mmol)、アセトニ リル40g、炭酸水素ナトリウム 4.1g(48.8mmol/2.0 当量)、亜ジチオン酸ナトリウム 6.4g(36.6mmol/1 .5当量)、水40gを加え、80度で18時間攪拌した さらに炭酸水素ナトリウム 1.9g(22.4mmol)、亜 チオン酸ナトリウム 2.9g(16.8mmol)を加え80度 22時間攪拌した。反応液をアセトニトリル30 mLで1回抽出し、得られた有機層を溶媒留去し た。さらにジイソプロピルエーテル250mLで洗 し、ろ過を行い、固体を乾燥することで目 の2-(1’-アダマンタン)カルボニルオキシ-1,1 -ジフルオロエタンスルフィン酸ナトリウム  6.9gを得た。このとき純度は61%であった。

[2-(1’-アダマンタン)カルボニルオキシ-1,1-ジ フルオロエタンスルフィン酸ナトリウムの物 性]
1 H NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:テトラメチル ラン);δ=4.42(t,J=16.4Hz,2H;CH 2 ),1.93(m,3H;1-Ad),1.80(m,6H;1-Ad),1.63(m,6H;1-Ad).
19 F NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:トリクロロフ オロメタン);δ=-120.23(t,J=16.4Hz,2F;CF 2 ).

 [実施例6-3]
[2-(1’-アダマンタン)カルボニルオキシ-1,1-ジ フルオロエタンスルホン酸ナトリウムの製造 ](第4工程:酸化工程)

 300mLの反応器に、2-(1’-アダマンタン)カ ボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスルフィ ン酸ナトリウム 18.6g(純度64%、36.0mmol)、水120m L、タングステン酸二ナトリウム二水和物 0.0 154g(0.047mmol/0.0013当量)、30%過酸化水素水6.1g(53. 9mmol/1.5当量)を加え、室温で2時間攪拌した。 応液を減圧下加温して揮発成分を留去し、 固させ、目的とする2-(1’-アダマンタン)カ ボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホ 酸ナトリウム 18、6gを得た。このとき純度 65%、収率は97%であった。

[2-(1’-アダマンタン)カルボニルオキシ-1,1-ジ フルオロエタンスルホン酸ナトリウムの物性 ] 
1 H NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:テトラメチル ラン);δ=4.51(t,J=15.3Hz,2H;CH 2 ),1.96(m,3H;1-Ad),1.82(m,6H;1-Ad),1.65(m,6H;1-Ad).
19 F NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:トリクロロフ オロメタン);δ=-113.94(t,J=16.4Hz,2F;CF 2 ).

 [実施例7]
[トリフェニルスルホニウム 1,1-ジフルオロ-2 -(バレリルオキシ)エタンスルホナートの製造 ](第5工程:オニウム塩交換工程1)

 100mLの反応器に、実施例5-3で得られた1,1-ジ ルオロ-2-(バレリルオキシ)エタンスルホン ナトリウム 3.0g(純度26%、2.9mmol)、水30gを加 、トリフェニルスルホニウムクロリドの水 液[トリフェニルスルホニウムクロリド 17.8g (5.2mmol/1.8当量)及び水16.2g]を室温で滴下し、 温で1.5時間攪拌した。その後、クロロホル 30mLを加え抽出を行い、得られた有機層を水 2回洗浄し、溶媒留去することで目的とする トリフェニルスルホニウム 1,1-ジフルオロ-2- (バレリルオキシ)エタンスルホナート 0.96gを 得た。
このとき純度は98%、収率は64%であった。

[トリフェニルスルホニウム 1,1-ジフルオロ-2 -(バレリルオキシ)エタンスルホナートの物性 ]
1 H NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:テトラメチル ラン);δ=7.92-7.70(m,15H,Ph 3 S + ),4.52(t,J=15.6Hz,2H;CH 2 ),2.36(t,J=7.2Hz,2H;CH 2 ),1.49(quintet,J=7.2Hz,2H;CH 2 ),1.28(sextet,J=7.2Hz,2H;CH 2 ), 0.85(t,J=7.2Hz,3H;CH 3 ).
19 F NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:トリクロロフ オロメタン);δ=-113.72(t,J=15.6Hz,2F;CF 2 ).

 [実施例8]
[トリフェニルスルホニウム 2-(1’-アダマン ン)カルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタン ルホナートの製造](第5工程:オニウム塩交換 工程1)

 200mLの反応器に、実施例6-3で得られた2-(1 -アダマンタン)カルボニルオキシ-1,1-ジフル オロエタンスルホン酸ナトリウム 9.5g(純度65 %、17.8mmol)、水85gを加え、トリフェニルスル ニウムクロリドの水溶液[トリフェニルスル ニウムクロリド 5.6g(19.6mmol/1.1当量)及び水61 .7g]を室温で滴下した。その後、室温で1.5時 攪拌し、ろ過を行い、固体を乾燥させるこ で目的とするトリフェニルスルホニウム 2-( 1’-アダマンタン)カルボニルオキシ-1,1-ジフ オロエタンスルホナート 9.8gを得た。この き純度は98%、収率は92%であった。

[トリフェニルスルホニウム 2-(1’-アダマン ン)カルボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタン ルホナートの物性]
1 H NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:テトラメチル ラン);δ=7.91-7.72(m,15H,Ph 3 S + ),4.51(t,J=15.3Hz,2H;CH 2 ),1.96(m,3H;1-Ad),1.82(m,6H;1-Ad),1.65(m,6H;1-Ad).
19 F NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:トリクロロフ オロメタン);δ=-113.97(t,J=15.3Hz,2F;CF 2 ).

 [実施例9-1]
[2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン ナトリウムの製造](第5’工程:鹸化工程)

 2Lの反応器に、実施例4-3と同様の方法で られた1,1-ジフルオロ-2-(ピバロイルオキシ) タンスルホン酸ナトリウム 180.0g(純度57%、0. 38モル)、水 500mL、48%水酸化ナトリウム水溶  95.8g(1.15モル/3当量)を加え、室温で1.5時間 拌した。その後、37%塩酸水溶液 151.0g(1.53モ /4当量)を加え室温で1時間攪拌し、ジイソプ ロピルエーテル 250mLで2回洗浄し、得られた 層を溶媒留去することで目的とする2-ヒド キシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸ナトリ ウム 183.7gを得た。このとき純度は38%、収率 99%であった。

[2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン ナトリウムの物性]
1 H NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:テトラメチル ラン);δ=3.80(t,J=16.0Hz,2H;CH 2 ).
19 F NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:トリクロロフ オロメタン);δ=-115.34(t,J=16.0Hz,2F;CF 2 ).

 [実施例9-2]
[1,1-ジフルオロ-2-(2-メタクリロイルオキシ)- タンスルホン酸ナトリウムの製造](第6工程: ステル化工程2)

 10Lの反応器に、2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオ ロエタンスルホン酸ナトリウム 562.0g(純度39% 、1.19mol)、アセトニトリル3kg、ノンフレック  MBP 40mg、メタクリル酸無水物 367.0g(2.38mol/ 2.0当量)を順に加えて氷浴し、そこにトリエ ルアミン 361.0g(3.57mol/3.0当量)を滴下した。 下後、室温で5時間攪拌した。その後、水1.6L を加え、アセトニトリルを留去した。得られ た水層をイソプロピルエーテル0.5Lで2回洗浄 、目的とする1,1-ジフルオロ-2-(2-メタクリロ イルオキシ)-エタンスルホン酸ナトリウム288. 0g(10wt%水溶液)を得た。このとき収率は96%であ った。

[1,1-ジフルオロ-2-(2-メタクリロイルオキシ)- タンスルホン酸ナトリウムの物性]
1 H NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:テトラメチル ラン);δ=5.91(s,1H),5.52(s,1H),4.61(t,J=16.0Hz,2H;CH 2 ),1.81(s,3H).
19 F NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:トリクロロフ オロメタン);δ=-113.68(t,J=16.0Hz,2F;CF 2 ).

 [実施例9-3]
[トリフェニルスルホニウム 1,1-ジフルオロ-2 -(2-メタクリロイルオキシ)-エタンスルホナー トの製造](第7工程:オニウム塩交換工程2)

 5Lの反応器に、実施例9-2で得られた1,1-ジ ルオロ-2-(2-メタクリロイルオキシ)-エタン ルホン酸ナトリウム288.0g(10wt%水溶液)、クロ ホルム0.8kg、ノンフレックス MBP 40mgを加え た。そこにトリフェニルスルホニウムクロリ ドの水溶液[トリフェニルスルホニウムクロ ド 409g(1.37mol/1.2当量)及び水800g]を室温で滴 し、室温で1.5時間攪拌した。その後、水層 クロロホルム層を分離し、得られたクロロ ルム層を2N HClで1回、水で6回洗浄し、クロ ホルムを留去した。そこにメチルエチルケ ン 1.1kg、へキサン0.3kgを加え、ろ過し、メ ルエチルケトン/へキサン混合溶液を調製し 。別途、へキサン 2Lを加えた5L反応器を用 し、攪拌中室温でここに調整したメチルエ ルケトン/へキサン混合溶液を滴下した。滴 下後室温で1時間攪拌し、析出した固体をろ 、乾燥し、目的とするトリフェニルスルホ ウム 1,1-ジフルオロ-2-(2-メタクリロイルオ シ)-エタンスルホナート 562gを得た。このと き純度は98%、収率は98%であった。

[トリフェニルスルホニウム 1,1-ジフルオロ-2 -(2-メタクリロイルオキシ)-エタンスルホナー トの物性]
1 H NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:テトラメチル ラン);δ=7.92-7.65(m,15H,Ph 3 S + ),6.19(s,1H),5.57(s,1H),4.81(t,J=16.0Hz,2H;CH 2 ),1.92(s,3H).
19 F NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:トリクロロフ オロメタン);δ=-114.49(t,J=16.0Hz,2F;CF 2 ).

 [比較例1]

 30mlのステンレス製オートクレーブに、2- ロモ-2,2-ジフルオロ酢酸エチル2.35g(11.6mmol) メタノール12mlおよび活性炭担持パラジウム 媒(金属担持量5%、水分量46%)100mgを投入し、1 MPaの水素圧下、40℃で2時間反応させた。ガス クロマトグラフィーを用いて反応液を分析し たところ、未反応の2-ブロモ-2,2-ジフルオロ 酸エチルが32%、2,2-ジフルオロ酢酸エチルが6 6%検出された。目的とする2-ブロモ-2,2-ジフル オロエタノールはわずか2%弱しか生成してい かった。

 [比較例2]

 窒素雰囲気下、2-ブロモ-2,2-ジフルオロ酢 酸エチル9.0g(44.3mmol)とテトラヒドロフラン50ml からなる溶液に、活性亜鉛6.0g(88.5mmol)とテト ヒドロフラン50mlからなる懸濁液を室温でゆ っくりと滴下した。次いで50℃で1時間加熱し た後、0℃まで冷却し、1Mの塩酸を加えた後、 ジイソプロピルエーテルで抽出した。得られ た有機層を、飽和重曹水、飽和食塩水、水で 洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。 この有機層を、ガスクロマトグラフィーを用 いて分析したところ、2,2-ジフルオロ酢酸エ ルが主生成物として約90%検出された。目的 する2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノールはほ んど生成していなかった。

 [比較例3]

 窒素雰囲気下、6-ブロモ-5,5,6,6-テトラフ オロヘキサン酸エチル1g(3.39mmol)をテトラヒ ロフラン10mLおよびメタノール1mLに溶解し、 素化ホウ素ナトリウム129mg(3.39mmol)を添加し 後、室温で1時間攪拌した。反応液に硫酸水 溶液を添加し、酢酸エチルで抽出後、溶媒濃 縮したところ、5,5,6,6-テトラフルオロヘキサ 酸エチルが50%の収率で得られた。6-ブロモ-5 ,5,6,6-テトラフルオロヘキサン-1-オールの生 は確認されなかった。

 [比較例4]

 2-ブロモ-2,2-ジフルオロエタノール8.92g(55. 4mmol)、アセトニトリル12g、水22gからなる溶液 に、炭酸水素ナトリウム5.43g(64.6mmol)と亜二チ オン酸ナトリウム9.69g(55.6mmol)を添加した。こ の二層分離した溶液を60℃で12時間攪拌した 室温まで冷却した後、溶媒(有機層および水 )を減圧下で留去し、乾燥して、7.0gの白色 体を得た。この固体を核磁気共鳴装置(NMR)で 分析したところ、目的とする1,1-ジフルオロ-2 -ヒドロキシエタンスルフィン酸ナトリウム 含量は約8%であり、これを基にした換算収率 は6%であった。

 [比較例5]

 温度計、コンデンサーを備えたガラスの ラスコに2-ブロモ-2,2-ジフルオロエチル(2-メ チルアクリレート)5g(21.8mmol)、アセトニトリ 40gおよび水40gを投入した後攪拌を開始し、 いで炭酸水素ナトリウム2.2g(26.2mmol)、亜二チ オン酸ナトリウム5.7g(32.7mmol)を添加した。そ 後60℃で2時間撹拌した。反応液の有機層を 磁気共鳴装置(NMR)を使用して分析したとこ 、目的とする1,1-ジフルオロ-2-(2-メタクリロ ルオキシ)-エタンスルフィン酸ナトリウム 検出されず、専らメタクリル部位が分解し 副生成物のみ検出された。

 [比較例6]

 温度計、コンデンサーを備えたガラスのフ スコに5-ノルボルネン-2-カルボン酸2-ブロモ -2,2-ジフルオロエチルエステル 6.13g(21.8mmol) アセトニトリル40gおよび水40gを投入した後 拌を開始し、次いで炭酸水素ナトリウム2.2g( 26.2mmol)、亜二チオン酸ナトリウム5.7g(32.7mmol) 添加した。その後65℃で1時間撹拌した。反 液の有機層を核磁気共鳴装置(NMR)を使用し 分析したところ、目的とするスルフィン酸 は検出されず、専ら二重結合が消失した部 を有する副生成物のみ検出された。

 [比較例7-1]
[トリフェニルスルホニウム 2-ヒドロキシ-1,1 -ジフルオロエタンスルホナートの製造](第6 工程:オニウム塩交換工程2)

 2Lの反応器に、2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオ エタンスルホン酸ナトリウム 183.7g(純度38% 0.38モル)、水 300mL、クロロホルム 450mL、ト リフェニルスルホニウムクロリドの水溶液[ リフェニルスルホニウムクロリド 142.8g(0.49 ル/1.25当量)及び水150mL]を加え、室温で1時間 攪拌した。反応液を核磁気共鳴装置(NMR)を使 して分析したところ、ほぼ半分の原料、2- ドロキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン酸ナ トリウムが残存していた。そこで、さらにト リフェニルスルホニウムクロリドの水溶液[ リフェニルスルホニウムクロリド 142.8g(0.49 ル/1.25当量)及び水150mL]を加え、室温で0.5時 攪拌した(トリフェニルスルホニウムクロリ ドは合計で285.7g(0.96モル/2.5当量)使用。反応 間は合計1.5時間)。反応液を核磁気共鳴装置( NMR)を使用して分析したところ、原料は消失 ていた。その後分液し、得られた水層をク ロホルム 100mLで3回抽出し、得られた有機層 を溶媒留去することで目的とするトリフェニ ルスルホニウム 2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロ エタンスルホナート 328.2gを得た。このとき 度は48%、収率は97%であった。

 このように、オニウム塩交換を完結させる めには2当量以上の、Q + X - (式[7])で表される一価のオニウム塩を使用し ければならない。

[トリフェニルスルホニウム 2-ヒドロキシ-1,1 -ジフルオロエタンスルホナートの物性]
1 H NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:テトラメチル ラン);δ=7.92-7.65(m,15H,Ph 3 S + ),3.81(t,J=16.0Hz,2H;CH 2 ).
19 F NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:トリクロロフ オロメタン);δ=-115.47(t,J=16.0Hz,2F;CF 2 ).

 [比較例7-2]
[トリフェニルスルホニウム 1,1-ジフルオロ-2 -(2-メタクリロイルオキシ)-エタンスルホナー トの製造](第7’工程:エステル化工程2)

 2Lの反応器に、トリフェニルスルホニウ  2-ヒドロキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホ ート 300.7g(純度48%、0.34モル)、アセトニトリ ル 700mL、メタクリル酸無水物 104.8g(0.68モル/ 2当量)、4-ジメチルアミノピリジン 8.3g(0.07モ ル/0.2当量)、トリエチルアミン 34.4g(0.34モル/ 1当量)、ノンフレックスMBP 60 mg(0.18ミリモル )を加え、50度で2時間攪拌した。その後、溶 留去してクロロホルム 500mLを加えクロロホ ム溶液とし、希塩酸、水で洗浄し溶媒留去 た。得られた有機物をジイソプロピルエー ル300mLで3回洗浄し、ノンフレックスMBP 60 m g(0.18ミリモル)、メチルエチルケトン 300mLを え、残留したジイソプロピルエーテルを留 することで目的とするトリフェニルスルホ ウム 1,1-ジフルオロ-2-(2-メタクリロイルオ シ)-エタンスルホナートを粘性の液体とし 129.5g得た。このものは結晶化させることが 難で、これ以上の精製が不可能であった。 こでメチルエチルケトンで希釈し、29.4wt%メ ルエチルケトン溶液 440.5gとした。このと 純度は98%、収率は77%であった。

 このように、この方法では目的物を結晶 させることができず、さらなる純度の向上 困難である。

 [試験例1]トリフェニルスルホニウム 2-(1’- アダマンタン)カルボニルオキシ-1,1-ジフルオ ロエタンスルホナートの光酸発生機能
 実施例8で合成した2-(1’-アダマンタン)カル ボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン ナトリウムのアセトニトリル溶液を濃度0.05 mol/Lに調製し、光路長1cmの石英光学セルに入 、キセノンランプから分光した光(290nm)を照 射し、酸発生のアクチノメトリーを行った。 酸発生量は、テトラブロモフェノールブルー の610nmにおける吸収で観察した。トリオキサ ト鉄酸カリウムで光量を測定して、量子収 を求めたところ、0.21であり、高い酸発生機 能を示した。

 [試験例2]トリフェニルスルホニウム 2-(1’- アダマンタン)カルボニルオキシ-1,1-ジフルオ ロエタンスルホナートの溶解性
 実施例8で合成した2-(1’-アダマンタン)カル ボニルオキシ-1,1-ジフルオロエタンスルホン ナトリウム 1.0gを秤量し、プロピレングリ ールメチルエーテルアセテート 100gに添加 攪拌したところ、完全に溶解した。

 [応用例1]
 実施例7に記載のトリフェニルスルホニウム  1,1-ジフルオロ-2-(バレリルオキシ)エタンス ホナートを2重量部、ポリヒドロキシスチレ ンの水酸基を1-エトキシエチル基15モル%、tert -ブトキシカルボニル基15モル%で保護した重 平均分子量15,000の重合体100重量部、イソプ パノールアミン0.2重量部をプロピレングリ ールモノメチルエーテルアセタート600重量 に溶解しレジストを調製した。

 [応用例2]
 実施例8に記載のトリフェニルスルホニウム  2-(1’-アダマンタン)カルボニルオキシ-1,1- フルオロエタンスルホナートを2重量部、ポ ヒドロキシスチレンの水酸基を1-エトキシ チル基35モル%で保護した重量平均分子量15,00 0の重合体100重量部、イソプロパノールアミ 0.2重量部をプロピレングリコールモノメチ エーテルアセタート600重量部に溶解しレジ トを調製した。

 [応用例3]
 実施例8に記載のトリフェニルスルホニウム  2-(1’-アダマンタン)カルボニルオキシ-1,1- フルオロエタンスルホナートを5重量部、メ ルアダマンタンメタクリレート45モル%/ヒド ロキシアダマンタンメタクリレート25モル%/γ ブリロラクトンメタクリレート30モルの3元共 重合体(重量平均分子量12800)100重量部、トリ タノールアミン0.1重量部をプロピレングリ ールモノメチルエーテルアセタート800重量 に溶解しレジストを調製した。

 [試験例3]
 応用例1,2,3のレジストを0.2μmのメンブラン ィルターでろ過し、感放射線性樹脂組成物 液を調製した。次いで組成物溶液をシリコ ウエハー上に回転数1500rpmで回転塗布した後 ットプレート上で100℃で90秒間乾燥し、膜 が320nmのレジスト膜を形成した。得られた皮 膜は均一で良好であった。

 このレジスト皮膜に、高圧水銀灯による 外線を用いて露光を行った。露光後、ホッ プレート上で110℃にて90秒間加熱を行い、2. 38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド の水溶液に60秒間浸漬現像を行い、30秒間純 でリンスした。

 その結果、応用例1,2,3ともに矩形なポジ のエッジラフネスが少ない良好なパターン 得られた。

 下記式で示されるスルホニウム塩(PAG1及 2)について、レジストにした際の相溶性と解 像性の評価を行った。

 [試験例4~11]
PAGの相溶性とレジストの解像性の評価
 上記式で示されるスルホニウム塩(PAG1また 2)を酸発生剤として、下記式で示されるポリ マー(樹脂1~4)をベース樹脂として使用してレ スト材料を調合し、更に各組成物を0.2μmの ンブランフィルターで濾過することにより レジスト液をそれぞれ調製した。

 次いで、全レジスト溶液をシリコンウェ ー上にスピンコートし膜厚250ナノメータの ジスト膜を得た。110℃でプリベークを行っ 後、フォトマスクを介して248nm紫外線での 光を行ったのち、120℃でポストエクスポー ーベークを行った。その後、2.38重量%テトラ メチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用 い、23℃で1分間現像した。各レジストの組成 及び評価結果を表1に示す。

[比較例8~15]
 比較のため、下記式で示されるスルホニウ 塩(PAG3及び4)について、レジストにした際の PAGの相溶性とレジストの解像性の評価を表2 示す。

 表1及び表2の結果より、本発明の酸発生 が従来品に比べて、高い解像度を発現する とが確認された。