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Patent Searching and Data


Title:
REAGENT FOR MEASUREMENT OF CONCENTRATION OF LEAD, AND METHOD FOR MEASUREMENT OF CONCENTRATION OF LEAD
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/013884
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a reagent for use in the measurement of the concentration of lead, which enables to measure the concentration of a lead ion (also referred to as "the concentration of lead") in a sample solution having a calcium ion coexisting therein accurately, with high sensitivity and in a simple manner. Also disclosed is a method for the measurement of the concentration of lead using the reagent. Specifically disclosed is a reagent for the measurement of the concentration of lead, which comprises (A) a water-soluble porphyrin derivative or a salt thereof, (B) at least one member selected from a polyacrylamide, a polyvinyl alcohol and a polyethylene glycol, and (C) a calcium ion donor compound.

Inventors:
ASANO TAKAHARU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/001923
Publication Date:
January 29, 2009
Filing Date:
July 18, 2008
Export Citation:
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Assignee:
KOWA CO (JP)
ASANO TAKAHARU (JP)
International Classes:
G01N31/00; G01N21/78; G01N31/22
Domestic Patent References:
WO2006011549A12006-02-02
WO2006011549A12006-02-02
Foreign References:
JP2006242691A2006-09-14
JP2004037430A2004-02-05
Other References:
See also references of EP 2169399A4
J. S. LINDSEY; I. C. SCHREIMAN; H. C. HSU; P. C. KEARNEY; A. M. MARGUERETTAZ: "Rothemund and Adler-Longo Reactions Revisited : Synthesis of Tetraphenylporphyrins under Equilibrium Conditions", J. ORG. CHEM., vol. 52, 1987, pages 827
Attorney, Agent or Firm:
THE PATENT CORPORATE BODY ARUGA PATENT OFFICE (3-6 Nihonbashiningyocho 1-chom, Chuo-ku Tokyo 13, JP)
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Claims:
 (A)水溶性ポルフィリン誘導体又はその塩、(B)ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、及びポリエチレングリコールから選ばれる少なくとも一種、並びに(C)カルシウムイオン供給化合物、を含有する鉛濃度測定用試薬。
 (A)水溶性ポルフィリン誘導体が、次式(1)
(式中、X 1 ~X 4 のうち少なくとも1個は、
を示し、残余は水素原子を示し、
そこでR 1 はアルキル基、スルホアルキル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基又は水素原子を示し、R 2 及びR 3 は水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸残基、リン酸残基又はトリアルキルアンモニウム基を示す。)で表される水溶性ポルフィリン誘導体である、請求項1記載の鉛濃度測定用試薬。
 (B)成分が、1~40質量%のポリアクリルアミド、0.1~20質量%のポリビニルアルコール、及び0.1~20質量%のポリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を含有するものである請求項1又は2に記載の鉛濃度測定用試薬。
(B)成分が、ポリアクリルアミドである請求項1~3のいずれか1項に記載の鉛濃度測定用試薬。
 (C)成分が、0.1~100mmol/Lのカルシウムイオンを供給するものである請求項1~4のいずれか1項に記載の鉛濃度測定用試薬。
 (C)成分が、塩化カルシウムである請求項1~5のいずれか1項記載の鉛濃度測定用試薬。
 さらに、pHを8~13に調整するためのpH調整剤を含有する請求項1~6のいずれか1項記載の鉛濃度測定用試薬。
 請求項1~7のいずれか1項記載の鉛濃度測定用試薬と試料溶液を混合し、その吸光度を測定することを特徴とする鉛濃度測定方法。
 鉛濃度測定用試薬と試料溶液の混合液のpHが8~13である請求項8記載の鉛濃度測定方法。
Description:
鉛濃度測定用試薬及び鉛濃度測 方法

 本発明は、水溶性ポルフィリンを利用し 鉛濃度測定用試薬、及び該試薬を用いた鉛 度測定方法に関する。

 鉛は、伝導性をはじめ電気化学的に有用 性質を持つ他、加工も行いやすい為、はん 、電池、ガラス材料等様々な工業製品に使 されている。これらが都市ゴミや産業廃棄 として廃棄され、焼却プラントで焼却され と、焼却灰や飛灰からは高濃度の鉛が検出 れることがある。これらの灰は埋め立て処 されるものの、周辺地域の雨水等によって じる鉛の溶出が懸念される。鉛は、微量で 人体に対して強い毒性があり、神経系の障 や、貧血、頭痛、食欲不振、鉛疝痛等の中 症状を呈することが知られている。そのた 、埋め立て基準等が設けられ、鉛の溶出を ぐ処理剤や処理方法及び溶出液中の鉛濃度 測定法が開発されてきた。鉛はまた、その の多くの生物に対しても毒性を示すため、 境基準及び排水基準等が定められている他 広範囲に及ぶ環境分析に適用できる簡易な 定方法が求められている。

 鉛の測定方法としては、原子吸光光度計 ICP発光分光光度計を用いる方法が一般的で るが、アセチレンガスやアルゴンガスの供 、排気ダクトの設置を必要とする他、複雑 操作が要求されるため、オンサイトでの環 分析や焼却現場での日常的な分析には適し いない。

 一方、比色試薬の発色によって濃度を見積 る吸光光度法は、小型で安価な装置と簡単 操作で測定が可能であるため簡易測定に適 る。そして、鉛の測定に用いられる比色試 には、水溶性ポルフィリンやポルフィリン 導入ポリマー等のポルフィリン誘導体があ 、水溶液中の微量な鉛濃度を測定できるこ が知られている。
 しかしながら、環境分析の対象となる試料 液中には、鉛の他に様々な夾雑物が含まれ ことが一般的であり、これらは高感度かつ 確に鉛を測定する際に妨害物質となる。例 ば、海水、河川水、水道水、工場排水、灰 出液等環境中に普遍的に見出されるカルシ ムは、水溶液中では鉛と同様に主に2価イオ ンとして共存するため、比色試薬との化学反 応に基づく吸光光度法においては鉛測定の妨 害物質となることがある。特に灰溶出液中に は、カルシウムが数十から数百ミリモル濃度 といった高濃度で含まれているため、比色試 薬に水溶性ポルフィリンを用いた吸光光度法 で、灰溶出液中の鉛濃度を測定することは困 難であった。このようなカルシウムを含む試 料溶液中の鉛濃度を吸光光度法により測定す る場合は、その前処理として、カルシウムと 鉛を分離するか、又はカルシウムをマスキン グする必要がある。

 カルシウムと鉛を分離する方法として、 ミノ二酢酸等を主成分とするキレート樹脂 用いる方法がある。イミノ二酢酸は鉛をは めとする重金属と親和性が強いため、キレ ト樹脂から成るカラム又はフィルターに試 溶液を通液することで鉛のみを補足した後 酸性の溶離液を通液することで再び鉛を溶 させて、その溶液中の鉛濃度を測定する方 である。この方法は、ポンプ又はシリンジ を用いて正確な容量の通液を複数回必要と る等、操作が煩雑となり簡易測定として十 とは言えない。

 カルシウムのマスキング剤としては、エ レンジアミン四酢酸(EDTA)及びエチレングリ ールビス(2-アミノエチルエーテル)四酢酸(EG TA)が知られている。しかしながら、これらは 同時に鉛とも結合する。高濃度のカルシウム をマスクするためには高濃度のマスキング剤 を添加する必要があるが、その場合、カルシ ウムに比べてはるかに微量な鉛は、残らずマ スキングされてしまう。そのため、水溶性ポ ルフィリンを用いた吸光光度法による鉛測定 において、EDTA及びEGTAをカルシウムのマスキ グ剤として使用することはできない。

 試料溶液中に妨害成分としてカルシウムが まれている場合の吸光光度法による鉛の測 方法としては、これらの他に、予めカルシ ムを添加したポルフィリン核導入ポリマー 用いた鉛濃度測定方法が報告されている(特 許文献1)。この方法は、カルシウムの影響を くことはできるものの、試薬の製造に重合 程を含むため、試薬の調製には時間とコス を要する。また、ポリマー内へ導入された ルフィリンは、吸収ピーク幅がブロードと り感度が低下するため、環境基準や排水基 レベルといった、より微量の鉛分析にはさ なる感度の向上が望まれている。

国際公開第2006/011549号パンフレット

 従って、本発明の目的は、カルシウムイ ンが共存する試料溶液中の鉛イオン濃度(単 に鉛濃度ともいう)を正確、高感度かつ簡易 測定できる鉛濃度測定用試薬及び該試薬を いた鉛濃度測定方法を提供することにある

 本発明者らは、斯かる実状に鑑み鋭意検 した結果、全く意外にも、水溶性ポルフィ ンを用いた吸光光度法による鉛濃度測定に いて、カルシウム供給化合物と、更にポリ クリルアミド、ポリビニルアルコール又は リエチレングリコールの高分子を用いたと に初めてカルシウムイオンによる妨害を良 に排除でき、カルシウムイオンが共存する 料溶液中の鉛イオン濃度が正確、高感度か 簡易に測定できることを見出し、本発明を 成した。

 すなわち、本発明は、(A)水溶性ポルフィリ 誘導体又はその塩、
(B)ポリアクリルアミド(以下、PAAmと略する場 がある)、ポリビニルアルコール(以下、PVA 略する場合がある)、及びポリエチレングリ ール(以下、PEGと略する場合がある)から選 れる少なくとも一種、並びに(C)カルシウム オン供給化合物を含有する鉛濃度測定用試 を提供するものである。

 また、本発明は、上記の鉛濃度測定用試 と試料溶液を混合し、その吸光度を測定す ことを特徴とする鉛濃度測定方法を提供す ものである。

 本発明の鉛濃度測定用試薬は、試料溶液 に存在するカルシウムイオンの影響を受け ことなく、正確な鉛濃度を簡易に測定する とが可能であり、排水、廃液、灰溶出液等 鉛濃度測定用試薬として有用である。

試料溶液(鉛・0~50mMカルシウム混合液) 、TPPSを反応させた吸収スペクトルの図であ 。 試料溶液(鉛・0~150mMカルシウム混合液) TPPS(non)、前記試料溶液とTPPS及びPAAm(PAAm)、 記試料溶液とTPPS及びカルシウム供給化合物( Ca)、前記試料溶液とTPPS、PAAm及びカルシウム 給化合物(PAAm+Ca)をそれぞれ反応させた吸収 ペクトルの図である。 試料溶液(鉛・0~150mMカルシウム混合液) TPPS、PVA及びカルシウム供給化合物(PVA+Ca)、 記試料溶液とTPPS、PEG及びカルシウム供給化 合物(PEG+Ca)をそれぞれ反応させた吸収スペク ルの図である。 (a)試料溶液(鉛・0~50mMカルシウム混合液 )とTPPS、EDTA及びカルシウム供給化合物を反応 させた吸収スペクトルの図である。(b)試料溶 液(鉛・0~50mMカルシウム混合液)とTPPS、EGTA及 カルシウム供給化合物を反応させた吸収ス クトルの図である。 試料溶液(鉛・0~150mMカルシウム混合液) TMPyP(non)、前記試料溶液とTMPyP及びPAAm(PAAm)、 前記試料溶液とTMPyP及びカルシウム供給化合 (Ca)、前記試料溶液とTMPyP、PAAm及びカルシウ ム供給化合物(PAAm+Ca)をそれぞれ反応させた吸 収スペクトルの図である。 簡易型鉛計測装置における、試料溶液( 鉛・0~150mMカルシウム混合液)と、(a)本発明鉛 度測定用試薬(TPPS+PAAm+Ca)、(b)参考鉛濃度測 用試薬(ポルフィリンポリマー)をそれぞれ反 応させた吸収スペクトルの図である。 簡易型鉛計測装置における、試料溶液( 0~0.1mg/L 鉛水溶液)と、(a)本発明鉛濃度測定用 試薬(TPPS+PAAm+Ca)、(b)参考鉛濃度測定用試薬(ポ ルフィリンポリマー)をそれぞれ反応させた きの検量線である。

 本発明に用いられる(A)水溶性ポルフィリ 誘導体又はその塩としては、ポルフィリン 格を有し、鉛イオンと反応して特定の波長 吸光度が変化するものが挙げられる。

 具体的なポルフィリン誘導体としては、 式(1)

 (式中、X 1 ~X 4 のうち少なくとも1個は

 を示し、残余は水素原子を示し、

 R 1 はアルキル基、スルホアルキル基、カルボキ シアルキル基、ヒドロキシアルキル基又は水 素原子を示し、R 2 及びR 3 は水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スル ホン酸残基、リン酸残基又はトリアルキルア ンモニウム基を示す)で表される水溶性ポル ィリンが挙げられる。

 前記式(1)中、R 1 で示されるアルキル基としては、メチル基、 エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n -ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等の 素数1~6のアルキル基が挙げられるが、メチ 基が特に好ましい。また、スルホアルキル としては、スルホメチル基、スルホエチル 、スルホプロピル基、スルホブチル基、ス ホペンチル基、スルホヘキシル基等のスル C 1-6 アルキル基が挙げられる。カルボキシアルキ ル基としては、カルボキシメチル基、カルボ キシエチル基、カルボキシプロピル基、カル ボキシブチル基、カルボキシペンチル基、カ ルボキシヘキシル基等のカルボキシC 1-6 アルキル基が挙げられる。ヒドロキシアルキ ル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロ キシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒド ロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒ ドロキシヘキシル基等のヒドロキシC 1-6 アルキル基が挙げられる。

 R 2 及びR 3 の具体例としては、水酸基、カルボキシル基 、アミノ基、スルホン酸残基(-SO 3 H)、リン酸残基、トリメチルアンモニウム基 挙げられるが、スルホン酸残基(-SO 3 H)、トリメチルアンモニウム基が特に好まし 。

 X 1 ~X 4 の好ましい例としては、スルホフェニル基、 スルホチエニル基、トリメチルアンモニウム フェニル基、ヒドロキシフェニル基、カルボ キシフェニル基、アミノフェニル基、ホスホ リルフェニル基、ピリジニウム基、メチルピ リジニウム基、スルホエチルピリジニウム基 、カルボキシメチルピリジニウム基、ヒドロ キシエチルピリジニウム基等が挙げられる。 より好ましくは、4-スルホフェニル基、4-ス ホチエニル-2-イル基、4-トリメチルアンモニ ウムフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4 -カルボキシルフェニル基、4-アミノフェニル 基、4-ホスホリルフェニル基、N-メチルピリ ニウム-4-イル基、N-メチルピリジニウム-3-イ ル基、N-スルホエチルピリジニウム-4-イル基 が挙げられる。さらに好ましくは、4-スル フェニル基、4-トリメチルアンモニウムフェ ニル基、N-メチルピリジニウム-4-イル基、N- チルピリジニウム-3-イル基等が挙げられる

 特に好ましい式(1)の化合物としては、5,10 ,15,20-テトラキス(4-スルホフェニル)ポルフィ ン(以下、TPPSと略する場合がある)、5,10,15,20 -テトラキス(N-メチルピリジニウム-4-イル)ポ フィリン(以下、TMPyPと略する場合がある)、 5,10,15,20-テトラキス(4-トリメチルアンモニウ フェニル)ポルフィリンが挙げられ、これら のうち、測定感度の点から、好ましくはTPPS はTMPyPである。

 本発明の式(1)で表される水溶性ポルフィリ 誘導体は、置換基X 1 ~X 4 の種類に応じて、塩の形態であってもよい。 具体的には、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、p-ト エンスルホン酸塩等の酸付加塩等が挙げら る。

 本発明で用いる式(1)で表される水溶性ポ フィリンは、微量金属の比色試薬として公 の化合物である。該ポルフィリン誘導体は 例えばピロールとベンズアルデヒドの脱水 合と、p-クロラニルによる酸化によって得 れるテトラフェニルポルフィリンのフェニ 基を、濃硫酸中でスルホン酸化することに って製造することができる(J. S. Lindsey, I.  C. Schreiman, H. C. Hsu, P. C. Kearney, and A. M. Marguerettaz, ‘‘Rothemund and Adler-Longo Reactions  Revisited : Synthesis of Tetraphenylporphyrinsunder E quilibrium Conditions’’, J. Org. Chem., 1987, 52, 827)。また、市販品として入手することも可 である。

 鉛濃度測定用試薬中の式(1)で表される水 性ポルフィリンの濃度は、使用時の濃度と て、0.01~1000μmol/L、更に、0.1~500μmol/L、特に 1~100μmol/Lであるのが、試料溶液中に微量含 れる鉛濃度測定の精度の点で好ましい。

 本発明に用いられる(B)成分としては、ポ アクリルアミド(PAAm)、ポリビニルアルコー (PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)であり、 これらのうち、測定感度や安定性の点からポ リアクリルアミドが好ましい。これらは、い ずれも水溶性の高分子で、それぞれ様々な用 途で使用される公知の化合物であり、市販品 として入手できる。

 本発明の鉛濃度測定用試薬中のPAAm濃度は、 使用時の濃度として、1~40質量%、特に10~25質 %が好ましい。また、PAAmの平均分子量は1000~1 00000、特に5000~20000が好ましい。
 本発明の鉛濃度測定用試薬中のPVA濃度は、 用時の濃度として、0.1~20質量%、特に1~10質 %が好ましい。また、PVAの重合度は100~10000、 に200~2000が好ましい。
 本発明の鉛濃度測定用試薬中のPEG濃度は、 用時の濃度として、0.1~20質量%、特に1~10質 %が好ましい。また、PEGの分子量は100~50000、 に10000~40000が好ましい。

 一般的に、PAAmは、紙力増強剤、接着剤、 凝集剤の他、化粧品の適度な粘性と安定化に 寄与する基剤としても使用され、また、ゲル 化したものは電気泳動に用いられる。PVAは、 接着剤、界面活性剤、フィルム材料等に利用 され、PEGは、薬剤等の安定化剤や基剤として 利用されている。しかしながら、PAAm、PVA、PE Gをカルシウムイオンのマスキング剤として 用したり、水溶性ポルフィリンと鉛イオン の安定な反応に寄与する添加剤として使用 れた例はない。

 本発明の鉛濃度測定用試薬に用いられる( C)成分のカルシウムイオンを発生させるカル ウムイオン供給化合物は、本発明の効果を なわないでカルシウムイオンを遊離する化 物であれば特に制限されるものではない。 えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、 酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カ シウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カ シウム等の無機カルシウム塩;酢酸カルシウ ム、ギ酸カルシウム、乳酸カルシウム、グル コン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、イ ソ酪酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム 、サリチル酸カルシウム等の有幾カルシウム 塩が挙げられる。カルシウムイオン供給化合 物としては、無機カルシウム塩、例えば、塩 化カルシウム、硫酸カルシウム及び硝酸カル シウムが好ましく、特に塩化カルシウムが好 ましい。

 本発明の鉛濃度測定用試薬中のカルシウ イオン供給化合物は、使用時に、0.1~100mmol/L 、特に5~50mmol/Lを供給できる量が好ましい。

 本発明の鉛濃度測定用試薬には上記成分及 水の他、本発明の効果を損なわない範囲で 通常溶液中の重金属イオンの測定に使用さ る任意成分を加えることができる。このよ な任意成分としては、pH調整剤、界面活性 、酸化防止剤、防腐剤、その他の金属に対 るマスキング剤等が挙げられる。
 pH調整剤としては、N-シクロヘキシル-3-アミ ノプロパンスルホン酸(以下、CAPSと略する場 がある)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタン ルホン酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナト ウム、水酸化ナトリウム等から選ばれる少 くとも1種のものが挙げられる。鉛濃度測定 用試薬と試料溶液との混合液のpHを、8~13、更 に9~11(25℃)に調整するためのpH調整剤が好ま い。

 界面活性剤としては、陽イオン性界面活性 、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面 性剤等が挙げられる。
 その他の金属に対するマスキング剤として 、エチレンジアミン-N,N’-ジプロピオン酸 エチレンジアミン-N,N’-ジ酢酸及び1,6-ジア ノヘキサン-N,N,N’,N’-テトラ酢酸等が挙げ れる。

 本発明の鉛濃度測定用試薬は、原液、濃 液、粉体、ペースト状等いずれの形態でも い。また、鉛濃度測定用試薬の各成分を適 、別々又は混合した状態で保存してもよい

 本発明の鉛濃度測定方法は、上記鉛濃度測 用試薬と試料溶液とを混合し、その吸光度 測定することにより行われる。
 測定にあたっては、鉛濃度測定用試薬と試 溶液との混合液のpHが、8~13、更に9~11(25℃) なるように調整することが好ましい。なお 該混合液のpHがこの範囲外である場合は、こ の範囲になるように予め鉛濃度測定用試薬の pHをpH調整剤で調整するのが好ましい。
 吸光度測定に先立ち、鉛濃度測定用試薬と 料溶液との混合液を加熱する等して反応を 分に進行させておくことが好ましい。加熱 度は30~90℃が好ましく、加熱時間は1~60分が ましい。このうち、精度と感度及びスルー ットの点から、加熱時間は60~80℃、加熱時 は3~15分が特に好ましい。

 本発明の鉛濃度測定用試薬を用いた試料溶 中に含有する鉛濃度測定方法は、例えば、 光度法により標準試料を用いた検量線を用 て行われる。
 吸光度計による測定における吸光波長は、3 50~700nm、更に400~500nm、特に460~490nmであるのが ましい。

 本発明において鉛濃度を測定する試料は、 に限定されないが、海水、河川水、水道水 工場排水、焼却灰や飛灰等の灰溶出液等の 境試料;食品、飲料、農林水産物、植物、薬 剤、ヒト又は動物の血液、唾液、精液等の体 液、腎臓、心臓、脳等の臓器、筋肉、皮膚、 神経組織、毛髪、糞便等の生体試料等が挙げ られる。
 本発明の鉛濃度測定用試薬を用いた鉛濃度 定方法において、試料溶液は、これら試料 原液の他、測定のために試料を公知の手法 適宜抽出や濃縮・希釈等した抽出液、濃縮 希釈液等も含まれる。該試料溶液中のカル ウムイオン濃度は、特に限定されないが、1 50mM以下が好ましく、50mM以下が特に好ましい

 以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細 説明するが、本発明はこれら実施例に限定 れるものではない。

参考例1 TPPSのみ含む鉛濃度測定用試薬A
 鉛濃度測定用試薬の調製:水溶性ポルフィリ ンとしてTPPSを50μM、pH調整剤としてCAPSを180mM む水溶液(pH10)となるように調製し、鉛濃度 定用試薬Aとした。
 試料溶液及び標準試料の調製:試料溶液とし て、0.15mg/Lの鉛と0.5,5,15,50及び150mMの塩化カル シウムを含み、pHを9~12.5に調整した鉛-カルシ ウム混合水溶液を用意した。また、検量線作 成のため、標準試料として、0及び0.15mg/Lの鉛 を含む標準溶液を用意した。

 鉛濃度測定:鉛濃度測定用試薬A250μLと試料 液250μLを混合し、75℃で5分間加熱した後、 光光度計を用いて吸収スペクトルを測定し 。
 得られた吸収スペクトルは規格化し、ベー ラインの変動を除外した。同様に、試料溶 に代えて標準試料を用い、吸収スペクトル 測定した。
 標準試料との混合で得た吸収スペクトルか 、鉛との反応に由来する吸光度変化の大き 波長を470nm付近から選択し検量線を作成し 。この検量線を用いて、試料溶液との混合 得た吸光度から試料溶液中の鉛濃度を見積 った。
 図1に、TPPSのみを含む鉛濃度測定用試薬Aを いた場合の吸収スペクトルを示す。466nm付 に、鉛に由来するピークが観察された。し しながら、鉛濃度は同一であっても共存す カルシウム濃度が増加するとピーク高は減 し、ついにはピークが消滅した。図1より算 された鉛濃度を、共存するカルシウム濃度 対してプロットしたグラフを図2(non:参照)に 示す。わずかなカルシウムの共存でも本来の 鉛濃度(0.15mg/L)より低い値が算出されてしま 、正しい測定をおこなうことはできなかっ 。

試験例1 (A)成分:TPPS、(B)成分:PAAm及び/又は(C) 分:塩化カルシウムの添加剤を含む鉛濃度測 定用試薬B1~3
 鉛濃度測定用試薬調製:添加剤としてポリア クリルアミド(平均分子量10000)を20質量%及び/ は塩化カルシウムを10mM、水溶性ポルフィリ ンとしてTPPSを50μM、pH調整剤としてCAPSを180mM む水溶液(pH10)となるように調製し、鉛濃度 定用試薬B1~3とした。添加剤として、ポリア クリルアミドのみ(試薬B1)、塩化カルシウム み(試薬B2)、ポリアクリルアミド及び塩化カ シウム併用(試薬B3)。
 試料溶液及び標準試料の調製:参考例1と同 のものを用いた。
 鉛濃度測定:鉛濃度測定試薬Aの代わりに試 B1~3を用いて、参考例1と同様に行った。

 図2には、鉛濃度測定試薬B1~3を用いた場 の鉛濃度測定結果も示した。ポリアクリル ミドのみを添加した試薬B1の場合、高濃度の カルシウム共存による妨害は多少改善された が、低濃度(約15mM以下)のカルシウムが共存し たときは鉛濃度が低く見積もられる傾向があ った。カルシウムのみを添加した試薬B2の場 は、添加剤を含まない場合と同様に、共存 ルシウム濃度に応じて測定値が単調に低下 る傾向を示した。一方、ポリアクリルアミ と塩化カルシウムの両方を添加した試薬B3 場合、カルシウムが低濃度から高濃度にか て共存しても本来の鉛濃度に近い値が算出 れた。

試験例2 (A)成分:TPPS、(B):PVA及び(C)成分:塩化 ルシウムの添加剤を含む鉛濃度測定用試薬C びに(A)成分:TPPS、(B)成分:PEG及び(C)成分:塩化 カルシウムの添加剤を含む鉛濃度測定用試薬 D
 濃度測定用試薬調製:添加剤としてPVA(重合 500)を2.5質量%及び塩化カルシウムを10mM、水 性ポルフィリンとしてTPPSを50μM、pH調整剤と してCAPSを180mM含む水溶液(pH10)となるように調 製し、鉛濃度測定用試薬Cとした。
 また、添加剤としてPEG(平均分子量20000)を5 量%及び塩化カルシウムを10mM、水溶性ポルフ ィリンとしてTPPSを50μM、pH調整剤としてCAPSを 180mM含む水溶液(pH10)となるように調製し、鉛 度測定用試薬Dとした。
 上記鉛濃度測定用試薬B3を試薬C又は試薬Dに 代えた以外は、上記試験例1と同様に行った
 図3に、PVAと塩化カルシウム併用添加剤の鉛 濃度測定用試薬C、PEGと塩化カルシウム併用 加剤の鉛濃度測定用試薬Dを用いた場合の結 を示した。鉛濃度測定用試薬C及びDのいず を用いた場合も、共存カルシウムが増加し も測定値が低下することなく、本来の鉛濃 に近い値が算出された。

参考例2 (A)成分:TPPS、マスキング剤:EDTA又はEG TAを含む鉛濃度測定用試薬E及びF
 水溶性ポルフィリンとしてTPPSを50μM、pH調 剤としてCAPSを180mM、EDTA又はEGTAを50mM含む水 液(pH10)に調製し、鉛濃度測定用試薬E及びFと した。EDTA又はEGTAは、一般的なカルシウムキ ート剤(マスキング剤)として知られており EDTA及びEGTAの濃度は、数十ミリモル以上のカ ルシウムでもマスキングできるよう50mMとし 。
 参考例1の試薬Aを試薬E又はFに代えて用いた 以外は、参考例1と同様に行った。

 図4(a)(b)に、鉛濃度測定用試薬E及び試薬F 用いた場合の結果の吸収スペクトルを示す EDTA又はEGTAのいずれを用いた場合も、カル ウム濃度にかかわらず、鉛に由来するピー は観察されなかった。これは、EDTA及びEGTAは カルシウムイオンだけでなく鉛イオンに対し ても親和性があると同時に、鉛濃度と比べて はるかに大過剰(モル比で7万倍弱)含まれてい るため、ほぼすべての鉛イオンがEDTAあるい EGTAと結合してしまい、ポルフィリンと錯体 形成できなかったためと考えられる。その め、高濃度のカルシウムが含まれている試 溶液中の鉛濃度を、水溶性ポルフィリンを いた吸光光度法により測定する際、カルシ ムのマスキング剤としてEDTA及びEGTAを使用 ることはできなかった。

試験例3 (A)成分:TMPyP、(B)成分:PAAm及び(C)成分: 塩化カルシウムの添加剤を含む鉛濃度測定用 試薬G1~4
 鉛濃度測定用試薬調製:水溶性ポルフィリン としてTMPyPを50μM、添加剤としてポリアクリ アミド(平均分子量10000)を20質量%及び/又は塩 化カルシウムを30mM、pH調整剤としてCAPSを180mM 含む水溶液(pH10)となるように調製し、鉛濃度 測定用試薬G1~4とした。添加剤として、ポリ クリルアミド及び塩化カルシウム共に無添 (試薬G1)、ポリアクリルアミドのみ(試薬G2)、 塩化カルシウムのみ(試薬G3)、ポリアクリル ミド及び塩化カルシウム併用(試薬G4)。
 試料溶液及び標準試料の調製:参考例1と同 のものを用いた。
 鉛濃度測定:鉛濃度測定試薬Aの代わりにG1~4 用いた以外は、参考例1と同様に行った。
 なお、標準試料との混合で得た吸収スペク ルから、鉛との反応に由来する吸光度変化 大きい波長を480nm付近から選択した。

 図5に測定結果を示す。添加剤を含まない 試薬G1の場合、試料溶液中カルシウムの共存 より、測定値は正の誤差を伴った。塩化カ シウムのみを添加した試薬G3の場合も同様 あった。ポリアクリルアミドのみの試薬G2を 添加すると、試料溶液中低濃度のカルシウム の共存により、測定値に正の誤差が生じたが 、試料中の共存カルシウム濃度が約15mM以上 は一定の値を示した。一方、ポリアクリル ミドとカルシウムの両方を添加した試薬G4の 場合は、試料中低濃度から高濃度にかけてカ ルシウムが共存しても、本来の鉛濃度に近い 値が測定された。

試験例4 ポルフィリン核導入ポリマーとの比 較
 高濃度のカルシウムを含む試料溶液中の鉛 度を測定する方法として、ポルフィリン核 入ポリマーを比色試薬とするポルフィリン リマー含有鉛濃度測定用試薬を用いた測定 法が報告されている(WO2006/011549)。簡易型鉛 測装置を用いた鉛濃度測定に、比色試薬と てポルフィリンポリマー含有鉛濃度測定用 薬を用いた場合と本発明鉛濃度測定用試薬 用いた場合を比較した。
 簡易型鉛計測装置は、小型分光光度計とセ を加熱するヒーターを内蔵した本体及びパ ソナルコンピュータで構成され、吸光光度 に基づき鉛濃度を計測する。鉛濃度測定用 薬と試料溶液の混合液を入れたキュベット 測定器にセットして測定を開始すると、そ 時点での吸収スペクトルを取得し、5分間、 75℃で加熱後、再び吸収スペクトルを取得す 。両者のスペクトルを規格化した後に差分 て得た差スペクトルの466nmのピーク高が鉛 度に依存するため、これをシグナルとして 予め鉛濃度既知の標準試料で作成した検量 に当てはめて鉛濃度を算出、表示する。
 本発明鉛濃度測定用試薬として上記鉛濃度 定用試薬B3を用意した。
 比較対照として、ポルフィリンポリマー含 鉛濃度測定用試薬も用意した。ポルフィリ 核導入ポリマーの合成方法及び試薬調整方 は、WO2006/011549に従い、試薬中の塩化カルシ ウム濃度は14mM、ポリマー濃度は、2倍希釈し 際の466nmにおける吸光度が0.6~0.7となるよう した。
 試料溶液及び標準試料の調製:参考例1と同 のものを用いた。また、検量線の作成及び 出下限値算出のために0~0.1mg/Lの鉛水溶液を いた。
 本発明鉛濃度測定用試薬又はポルフィリン リマー含有鉛濃度測定用試薬500μLと試料溶 500μLを混和し、簡易型鉛計測装置を用いて 濃度を測定した。

 図6に、測定結果を示す。いずれも高濃度 のカルシウムが共存しても、鉛濃度の測定値 が極端に変動することなく本来の鉛濃度に近 い値が算出された。

 図7に、鉛濃度を変えて測定した際の、鉛 濃度とシグナルの関係(検量線)を示す。本発 の試薬では、相関係数R=1.00という優れた結 が得られ、さらに検量線の傾きが大きいの 、鉛検出の感度が良いことがわかった。鉛 度が0のときの変動(標準偏差)の3倍のシグナ ルを与える鉛濃度を検出下限とすると、本発 明鉛濃度測定用試薬の検出下限は、0.006mg/L、 ポルフィリンポリマー含有鉛濃度測定用試薬 の検出下限は、0.05mg/Lであった。鉛に関する め立て基準(溶出液中の濃度として)、排水 準、環境基準値は、それぞれ0.3、0.1、0.01mg/L と定められている。本発明鉛濃度測定用試薬 は、埋め立て基準及び排水基準だけでなく環 境基準の判定にも利用できる。