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Patent Searching and Data


Title:
RESIN COMPOSITION AND MULTI-LAYERED CONSTRUCT USING THE RESIN COMPOSITION
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/128411
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a saponified ethylene-vinyl ester copolymer resin composition which shows little dispersion in the thickness of a saponified ethylene-vinyl ester copolymer resin composition layer even in the case of being applied to a molding process comprising a drawing step wherein the strength of tension varies from site to site and a large tension is loaded within a short period of time such as deep draw molding or vacuum pressure molding, and which is capable of providing molded articles having excellent gas-barrier properties. This resin composition contains an EVOH resin having an ethylene content of from 20 to 60% by mol and a PVA having a side chain 1,2-diol structural unit. Also disclosed is a multi-layered construct using the resin composition as described above.

Inventors:
OKAMOTO SHINJI (JP)
YAMADA KOUJI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/057403
Publication Date:
October 22, 2009
Filing Date:
April 10, 2009
Export Citation:
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Assignee:
NIPPON SYNTHETIC CHEM IND (JP)
OKAMOTO SHINJI (JP)
YAMADA KOUJI (JP)
International Classes:
C08L29/04; B32B27/28; C08F8/12; C08G16/06; C08L23/00; C08L67/00; C08L77/00
Domestic Patent References:
WO2004113071A12004-12-29
Foreign References:
JP2006312313A2006-11-16
JP2002069320A2002-03-08
JP2006052351A2006-02-23
JP2002105269A2002-04-10
JP2003054592A2003-02-26
JP2008050574A2008-03-06
JPS63114645A1988-05-19
JPH08311276A1996-11-26
JP2006095825A2006-04-13
Other References:
See also references of EP 2267074A4
Attorney, Agent or Firm:
KAMITANI, Eriko (JP)
Eriko Kamiya (JP)
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Claims:
エチレン含有率が20~60モル%であるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物に、一般式(1)で示される側鎖1,2-ジオール構造単位を含有するポリビニルアルコールを配合してなるエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物。

((1)式中、R 1 ~R 6 はそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表す。)
前記ポリビニルアルコールの配合量は、前記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂100重量部に対して、1重量部以上100重量部未満である請求項1に記載のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物。
前記ポリビニルアルコールの配合量は、前記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂100重量部に対して、10~50重量部である請求項1又は2に記載のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物。
前記ポリビニルアルコールにおける一般式(1)で示される側鎖1,2-ジオール構造単位の含有率は1~30モル%である請求項1~3のいずれかに記載のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物。
前記ポリビニルアルコールにおける一般式(1)で示される側鎖1,2-ジオール構造単位の重合度は、100~5000である請求項1~4のいずれかに記載のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物。
前記ポリビニルアルコールにおけるケン化度が、80~100モル%である請求項1~5のいずれかに記載のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物。
上記ポリビニルアルコールにおける一般式(1)で示される側鎖1,2-ジオール構造単位について、R 1 ~R 6 はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基、Xは炭素数6以下のアルキレン基である請求項1~6のいずれかに記載のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物。
前記ポリビニルアルコールにおける一般式(1)で示される側鎖1,2-ジオール構造単位が、下記一般式(1a)で示される構造単位である請求項1~7のいずれかに記載のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物。
エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物のケン化度が、80~100モル%である請求項1~8のいずれかに記載のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物。
エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が、210℃、荷重2160g条件下で、1~30g/分である請求項1~9のいずれかに記載のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物。
エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物が、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物である請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物。
請求項1~11のいずれか1項に記載のエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物層及びエチレン-ビニルエステル共重合体以外の熱可塑性樹脂層を、それぞれ少なくとも1層有する多層構造体。
エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物以外の熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項12に記載の多層構造体。
熱可塑性樹脂層/エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物層の厚み比は、1超~30である請求項12または13に記載の多層構造体。
層構造が3~15層である請求項12~14のいずれかに記載の多層構造体。
厚みが1~3000μmである請求項12~15のいずれかに記載の多層構造体。
請求項12~16のいずれかに記載の多層構造体を加熱延伸成形してなる成形物。
前記加熱延伸成形は金型成形である請求項17に記載の成形物。
絞り比が0.1~3である請求項18に記載の成形物。
Description:
樹脂組成物及び当該樹脂組成物 用いた多層構造体

 本発明は、延伸性を改善したエチレン-ビ ニルエステル共重合体ケン化物の樹脂組成物 (EVOH樹脂組成物)に関し、フィルム、シート、 ボトル、カップ、チューブ等、特にボトルや カップといった延伸処理を伴う成形品に好適 な多層構造体に用いられるEVOH樹脂組成物に する。

 エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化 物(以下、「EVOH樹脂」と称することがある)は 、ポリビニルエステルのケン化物であるポリ ビニルアルコール(以下、「PVA」と称するこ がある)と同様にガスバリヤ性に優れる。し もPVAが水溶性で、融点が分解点と近接して て溶融成形できないのに対して、EVOH樹脂は 水不溶性であり、融点と分解点の差が大きい ので溶融成形できることから、食品包装材料 、医薬品包装材料など、各種包装用途に広く 用いられている。EVOH樹脂フィルムは、それ 体、単独で用いることもできるが、吸湿に りガスバリヤ性、フィルム強度が低下する とから、通常、水分を透過し難い熱可塑性 脂フィルム等で外表面層を構成した多層構 体として用いられる。

 シート等の多層構造体は、強度アップの めに延伸されることが好ましく、またEVOH樹 脂層も延伸により分子鎖が高密度状態で整列 すると、ガスバリヤ性が向上することができ ることから、通常、多層構造体は延伸処理さ れて用いられる。

 しかしながら、EVOH樹脂層を含む多層構造 体を延伸処理した場合、EVOH樹脂層は、熱可 樹脂層に比べて伸びがよくない。このため 一軸延伸、二軸延伸等の延伸処理時、EVOH樹 層が均一に延伸されにくく、外表面層の伸 に追随できず、延伸処理した多層構造体に スジが発生したり、ひどい場合には破断し りするという問題がある。

 EVOH樹脂層を有する多層構造体の延伸性を改 善するために、例えば、特開昭63-114645には、 特定のポリアミド樹脂を含有させたEVOH樹脂 成物が提案されている。
 また、特開平8-311276では、エチレン含有量 異なる2種類のEVOH樹脂を混合した樹脂組成物 を用いることが提案されている。

特開昭63-114645号公報

特開平8-311276号公報

 上記のように、EVOH樹脂に他の熱可塑性樹 脂を混合したり、EVOH樹脂自体の構成を工夫 ることで、延伸性を改良しているが、未だ 善の余地がある。特に、多層構造体を用い 、深絞り成形や真空圧空成形といった成形 によって、カップ形状の容器を成形する場 のように、延伸処理を伴う成形方法で、し も、延伸時に加わる張力が部位によって異 るといったような成形に適用した場合、EVOH 脂層の伸びが均一でなく、厚みムラを生じ り、厚みムラがスジのようにみえたりして 観に影響を及ぼすような場合がある。さら 厚みムラは、延伸後のポリマーの均一性を なう原因となるため、成形品全体のガスバ ヤ性にも影響を与える。

 本発明は、上記事情に鑑みてなされたも であり、その目的は、深絞り成形や真空圧 成形といった成形法のように、部位により なる大きさの張力が加わり、しかも短時間 大きな張力が加わるような延伸処理を含ん 成形法を適用しても、EVOH樹脂層の厚みのば らつきが少なく、且つガスバリヤ性に優れた 成形品を提供できるEVOH樹脂組成物及び当該 脂組成物を用いた多層構造体を提供するこ にある。

 本発明者らは、EVOH樹脂の延伸性を改善する ために、種々の樹脂を検討した結果、特定構 造を有するポリビニルアルコールを添加する ことにより、延伸性、ガスバリヤ性を改善で きることを見出し、本発明を完成した。すな わち、本発明の樹脂組成物(エチレン-ビニル ステル共重合体ケン化物樹脂組成物)は、エ チレン含有率が20~60モル%であるエチレン-ビ ルエステル共重合体ケン化物に、一般式(1) 示される側鎖1,2-ジオール構造単位を含有す ポリビニルアルコールを配合してなるもの ある。(1)式中、R 1 ~R 6 はそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表 し、Xは単結合又は結合鎖を表す。

 前記ポリビニルアルコールの配合量は、 記エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化 物樹脂100重量部に対して、1重量部以上100重 部未満であることが好ましく、前記ポリビ ルアルコールにおける一般式(1)で示される 鎖1,2-ジオール構造単位の含有率は1~30モル% あることが好ましい。

 本発明の多層構造体は、上記本発明のエ レン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂 組成物層及びエチレン-ビニルエステル共重 体以外の熱可塑性樹脂層を、それぞれ少な とも1層有するものであり、エチレン-ビニル エステル共重合体ケン化物以外の熱可塑性樹 脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系 樹脂、及びポリエステル系樹脂からなる群よ り選ばれる少なくとも1種であることが好ま い。

 また、本発明の多層構造体は、熱可塑性 脂層/エチレン-ビニルエステル共重合体ケ 化物樹脂組成物層の厚み比が1超~30であるこ が好ましく、多層構造体の厚みは1~3000μmで ることが好ましい。

 本発明の多層構造体は延伸処理されてい もよく、本発明の多層構造体を加熱延伸成 してなる成形物も、本発明の範囲に包含さ る。前記加熱延伸成形は、金型成形である とが好ましく、金型成形の場合、絞り比は0 .1~3であることが好ましい。

 本発明のエチレン-ビニルエステル共重合 体ケン化物樹脂組成物(EVOH樹脂組成物)及び当 該樹脂組成物層を有する多層構造体は、部位 により異なる大きさの張力が加わるような延 伸処理成形に適用しても、EVOH樹脂層の厚み ばらつきが少なく、且つガスバリヤ性に優 た成形品を提供できる。

 以下に記載する構成要件の説明は、本発明 実施態様の一例(代表例)であり、これらの 容に特定されるものではない。
 はじめに本発明のエチレン-ビニルエステル 共重合体ケン化物樹脂組成物(EVOH樹脂組成物) について説明する。

<EVOH樹脂組成物>
 本発明のEVOH樹脂組成物は、エチレン含有率 が20~60モル%であるエチレン-ビニルエステル 重合体ケン化物(EVOH樹脂)に、側鎖1,2-ジオー 構造単位を含有するポリビニルアルコール 配合したものである。

〔EVOH樹脂〕
 組成物の主成分となるEVOH樹脂は、エチレン とビニルエステル系モノマーとを共重合した 、エチレン-ビニルエステル共重合体をケン することによって得られる、水不溶性の熱 塑性樹脂である。該エチレン-ビニルエステ 共重合体は、公知の任意の重合法、例えば 溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合な により製造され、エチレン-ビニルエステル 共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。

 上記ビニルエステル系モノマーとしては、 表的には、酢酸ビニルが用いられる。場合 よっては、例えば、ギ酸ビニル、プロピオ 酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプ ン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリ 酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪 ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香 ビニルエステル、トリフルオロ酢酸ビニル が挙げられ、通常炭素数3~20、好ましくは炭 素数4~10、特に好ましくは炭素数4~7の脂肪族 ニルエステルである。これらのビニルエス ル系モノマーは、通常単独で用いるが、必 に応じて複数種を同時に用いてもよい。
 特にビニルエステル系モノマーとして酢酸 ニルを用いたエチレン-酢酸ビニル共重合体 をEVA樹脂と称する。

 本発明の樹脂組成物に用いられるEVOH樹脂 は、ISO4663に基づいて測定したエチレン含有 が20~60モル%、好ましくは25~55モル%、さらに ましくは28~48モル%である。エチレン含有率 少なすぎると、樹脂組成物の溶融成形性が 下する傾向にある。一方、エチレン含有率 高くなりすぎると、必然的にポリマー鎖中 含まれるOH基の割合が低下しすぎることにな るため、ガスバリヤ性が不足する傾向にある 。

 また、ビニルエステル成分のケン化度は JIS K6726(ただし、EVOH樹脂は水/メタノール溶 媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測 した値で、通常80~100モル%であり、好ましく 90~100モル%、より好ましくは95~100モル%であ 。ケン化度が低くなると、ガスバリヤ性が 下する傾向にあるからである。

 さらに、EVOH樹脂のメルトフローレート(MF Rと表記することがある)においては、210℃、 重2160g条件下で、通常1~30g/分であり、好ま くは2~15g/分であり、特に好ましくは3~10g/分 ある。かかる値が大きすぎた場合、溶融粘 が低くなり、安定した溶融押出が困難とな 傾向があり、小さすぎた場合もまた溶融粘 が高くなって安定した溶融押出が困難とな 傾向がある。

 本発明の樹脂組成物に用いられるEVOH樹脂と しては、上記要件を充足するEVOH樹脂であれ 、エチレン含有率、ケン化度が異なる2種以 を混合して用いてもよい。
 また、本発明に用いられるEVOH樹脂としては 、共重合体中に更に少量のプロピレン、イソ ブテン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタ デセン等のα-オレフィン、3-ブテン-1-オール 4-ペンテン-1-オール等のヒドロキシ基含有α -オレフィン類やそのエステル化物、アシル 物などのヒドロキシ基含有α-オレフィン誘 体、不飽和カルボン酸又はその塩・部分ア キルエステル・完全アルキルエステル・ニ リル・アミド・無水物、不飽和スルホン酸 はその塩、ビニルシラン化合物、塩化ビニ 、スチレン等のコモノマーを共重合したも であっても差し支えない。さらに、ウレタ 化、アセタール化、シアノエチル化、オキ アルキレン化等「後変性」されていても差 支えない。

 本発明で用いられるEVOH樹脂には、本発明の 効果を阻害しない範囲において、一般にEVOH 脂に配合する配合剤、例えば、酸化防止剤 帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤 可塑剤、熱安定剤、光安定剤、界面活性剤 抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、 燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤 防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリ グ剤、酸素吸収剤などが含有されていても い。
〔ポリビニルアルコール〕
 本発明の樹脂組成物に用いられるポリビニ アルコールは、一般式(1)で示される側鎖1,2- ジオール構造単位を有するポリビニルアルコ ール(以下「側鎖1,2-ジオール構造単位含有PVA という)である。かかる樹脂は水溶性である 。

 上記一般式(1)において、R 1 ~R 6 はそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表 す。R 1 ~R 6 は、すべて水素原子であることが望ましいが 、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であ れば有機基であってもよい。該有機基として は特に限定されないが、例えばメチル基、エ チル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n- チル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭 素数1~4のアルキル基が好ましく、必要に応じ てハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボ ン酸基、スルホン酸基等の置換基を有してい てもよい。

 上記一般式(1)中、Xは単結合又は結合鎖であ り、熱安定性の点、高温下や酸性条件下での 安定性の点から、単結合であることが好まし い。上記結合鎖としては、特に限定しないが 、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン 、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(こ らの炭化水素は、フッ素、塩素、臭素等の ロゲン等で置換されていてもよい)の他、-O- -(CH 2 O)m-、-(OCH 2 )m-、-(CH 2 O)mCH 2 -、-CO-、-COCO-、-CO(CH 2 )mCO-、-CO(C 6 H 4 )CO-、-S-、-CS-、-SO-、-SO 2 -、-NR-、-CONR-、-NRCO-、-CSNR-、-NRCS-、-NRNR-、-HPO 4 -、-Si(OR) 2 -、-OSi(OR) 2 -、-OSi(OR) 2 O-、-Ti(OR) 2 -、-OTi(OR) 2 -、-OTi(OR) 2 O-、-Al(OR)-、-OAl(OR)-、-OAl(OR)O-等が挙げられる (Rは各々独立して任意の置換基であり、水 原子、アルキル基が好ましく、またmは自然 である)が挙げられる。なかでも、製造時あ るいは使用時の安定性の点で、炭素数6以下 アルキレン基、特にメチレン基、あるいは-C H 2 OCH 2 -が好ましい。

 以上のような構成を有する側鎖1,2-ジオー ル構造単位含有PVAは、ケン化度、側鎖1,2-ジ ール構造単位含有率にもよるが、一般に融 150~205℃である。かかる融点が、ポリビニル ステルをケン化してなる通常のPVA(以下、「 未変性PVA」という)よりも低いことから、延 時の温度条件を幅広く選べるという特徴を している。また、かかる側鎖1,2-ジオール構 単位含有PVAは、未変性PVAと同様に、ポリマ 鎖中に含まれるOH基含有率及び1級水酸基に 因する水素結合の高さに基づいてガスバリ 性を有するにもかかわらず、結晶化が未変 PVAよりも遅いという特徴を有する。その理 、機構は明らかではないが、側鎖1,2-ジオー ル構造の1級水酸基に起因する水素結合が強 ため、主鎖の水酸基による結晶部位よりも 側鎖ジオール部の緩和時間が非常に長いた であると推測される。

 このような側鎖1,2-ジオール構造単位含有PVA は、本発明の樹脂組成物中、EVOH樹脂量より 少ない量だけ含有されていればよい。具体 に、EVOH樹脂100重量部あたりの側鎖1,2-ジオー ル構造単位含有PVAの含有量は、1重量部以上 100重量部未満であり、好ましくは3~70重量部 より好ましくは5~70重量部、特に好ましくは 10~50重量部である。
 このように、水に不溶の熱可塑性樹脂であ EVOH樹脂に、水溶性樹脂であるPVA系樹脂を配 合することは、耐水性の観点から通常行われ ることではなく、この点において、本発明の 組成物は特徴的であるといえる。

 上記のような側鎖1,2-ジオール構造単位含 有PVAは、EVOH樹脂よりも高いガスバリヤ性を することから、本発明のEVOH樹脂組成物で構 される層のガスバリヤ性を、EVOH樹脂単独か らなる層のガスバリヤ性よりも高めることが できる。

 さらに、側鎖1,2-ジオール構造単位含有PVA を上記割合で含有してなるEVOH樹脂組成物層 、EVOH樹脂単独層よりも延伸性が良好になり これにより、層全体に均一な張力をかける とが可能となる。また冷却時にも、部分的 すばやく結晶化することが抑制されるので 本発明のEVOH樹脂組成物層における結晶化度 の均一性も高くなる。従って、延伸後のEVOH 脂組成物層としては、均一に延伸されたこ により厚み等のばらつき少なくできるとと に、結晶化度の均一性が高められることに って、より優れたガスバリヤ性を達成でき 。

 側鎖1,2-ジオール構造単位含有PVAに含まれ る側鎖1,2-ジオール構造単位の含有率は、通 1~30モル%が好ましく、より好ましくは1~20モ %、さらに好ましくは3~10モル%である。側鎖1, 2-ジオール構造単位の含有率が高くなりすぎ と、押出成形時の熱安定性が低下する傾向 ある。一方、側鎖1,2-ジオール構造単位の含 有率が低く成りすぎると、融点が高くなって 溶融押出成形性が低下し、また、未変性PVAに 近づくことになるため、延伸後、冷却時の結 晶化がはやくおこるようになり、結果として 、EVOH樹脂組成物層の均一化が妨げられるこ になる。

 尚、PVA中の側鎖1,2-ジオール構造単位の含有 率は、PVAを完全にケン化したものの 1 H-NMRスペクトル(溶媒:DMSO-d6、内部標準:テトラ メチルシラン)から求めることができ、具体 には、1,2-ジオール単位中の水酸基プロトン メチンプロトン、及びメチレンプロトン、 鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水 基のプロトンなどに由来するピーク面積か 算出すればよい。

 本発明で用いられる側鎖1,2-ジオール構造 単位含有PVAの重合度は、通常100~5000でり、よ 好ましくは100~1000、更に好ましくは300~500で る。重合度が高すぎると、溶融粘度が高く り、安定した溶融押出が困難となる傾向に る。一方、重合度が低くなりすぎると、安 した溶融押出が困難となる傾向にある。

 また、本発明で用いられる側鎖1,2-ジオー ル構造単位含有PVAのケン化度は、JIS K6726に づいて測定した値で、通常80~100モル%であり 好ましくは90~100モル%であり、より好ましく は95~100モル%である。ケン化度が低すぎると ガスバリヤ性が低下し、側鎖1,2-ジオール含 PVA配合によるガスバリヤ向上効果が得られ くくなる。

 本発明における最も好ましい側鎖1,2-ジオー ル構造単位含有PVAの構造は、構造単位(1)にお けるR 1 ~R 6 のすべてが水素原子であり、Xが単結合の場 である。すなわち、下記構造式(1a)で示され 構造単位を含むものが好ましい。

 そして、側鎖1,2-ジオール構造単位含有PVA の最も好ましい組成は、上記構造単位(1a)が3~ 10モル%及びビニルアルコール由来の構造単位 、およびケン化後に残存した微量のビニルエ ステル構造単位からなり、ケン化度95~100%、 合度300~500であるものである。

 以上のような側鎖1,2-ジオール構造単位含 有PVAの製造方法は特に限定しないが、(i)ビニ ルエステル系モノマーと下記一般式(2)で示さ れる化合物との共重合体をケン化する方法、 (ii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3 )で示される化合物との共重合体をケン化及 脱炭酸する方法、(iii)ビニルエステル系モノ マーと下記一般式(4)で示される化合物との共 重合体をケン化及び脱ケタール化する方法な どにより、好ましく製造される。



 (2)(3)(4)式中、R 1 ~R 6 は、いずれも(1)式の場合と同様である。R 7 及びR 8 は、それぞれ独立して水素またはR 9 -CO-(式中、R 9 は、アルキル基である)。R 10 及びR 11 は、それぞれ独立して水素原子又は有機基で ある。

 (i)、(ii)及び(iii)の方法については、例え 、特開2006-95825に説明されている方法を採用 できる。

 なかでも、共重合反応性及び工業的な取扱 において優れるという点で(i)の方法が好ま く、特にR 1 ~R 6 が水素原子、Xが単結合、R 7 及びR 8 がR 9 -CO-であり、R 9 がアルキル基である、3,4-ジアシロキシ-1-ブ ンが好ましく、更にその中でも特にR 9 がメチル基である3,4-ジアセトキシ-1-ブテン 好ましく用いられる。

 また上述のモノマー(ビニルエステル系モ ノマー、一般式(2)(3)(4)で示される化合物)の に、高度なガスバリヤ性、溶融押出性を損 わない範囲(例えば10モル%以下)であれば、共 重合成分として、エチレンやプロピレン等の α-オレフィン;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン- 1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン やそのエステル化物、アシル化物などのヒ ロキシ基含有α-オレフィン誘導体;イタコン 酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和酸類 あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキル エステル、アクリロニトリル等のニトリル類 、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルア ミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、ア リルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、AMP S等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩 どの化合物、アリルアセテート、ブタジエ 誘導体等が共重合されていてもよい。

〔その他の成分〕
 本発明の樹脂組成物には、上記EVOH樹脂、側 鎖1,2-ジオール構造含有PVA樹脂の他に、必要 応じて、酸化防止剤、滑剤、ハイドロタル イト類、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収 等の添加剤を適宜含有してもよい。

 本発明の樹脂組成物は、以上のような成 を混合することによって製造される。かか 混合方法は、溶融混合、またはEVOH樹脂を水 -アルコールやジメチルスルフォキサイド等 溶剤に溶解して溶液状態で混合する方法が る。

 溶液混合法の場合、各成分の混合順序は 特に限定するものではなく、(i)各成分をド イブレンドした後に両樹脂の共通する良溶 に溶解して混合する方法、(ii)一方の樹脂を 溶媒に溶解した溶液に他方の樹脂を混合する 方法、(iii)各々の樹脂を別々に良溶媒に溶解 、溶液状態で混合する方法が挙げられる。

 溶融混合法の場合、各成分の混合順序は 特に限定するものではなく、(i)各成分をド イブレンドした後に溶融して混合する方法 (ii)一方の樹脂を溶融状態としたところに他 方の樹脂を混合する方法、(iii)各々の樹脂を 々に溶融状態とし、溶融状態で混合する方 が挙げられる。

 中でも、生産性の点で好ましくは溶融混 法である。溶融混合に際して、例えば、ニ ダールーダー、押出機、ミキシングロール バンバリーミキサー、プラストミルなどの 知の混練装置を使用して行うことができる 、通常は単軸又は二軸の押出機を用いるこ が工業上好ましく、また、必要に応じて、 ント吸引装置、ギヤポンプ装置、スクリー 装置等を設けることも好ましい。特に、水 や副生成物(熱分解低分子量物等)を除去す ために、押出機に1個以上のベント孔を設け 減圧下に吸引したり、押出機中への酸素の 入を防ぐために、ホッパー内に窒素等の不 性ガスを連続的に供給したりすることによ 、熱着色や熱劣化が軽減された品質の優れ 樹脂組成物を得ることができる。

 以上のような組成を有する本発明のEVOH樹 脂組成物は、水不溶性で且つガスバリヤ性を 有しているというEVOH樹脂本来の特性に加え 、延伸処理後も外観に優れ、高度なガスバ ヤ性を保持できる。

 本発明のEVOH樹脂組成物は、単独で、フィ ルム、シート、容器、棒状体、管状体等の各 種成形品材料として用いることもできるが、 好ましくは、水分不透過性の熱可塑性樹脂を 積層した多層構造体の各種成形品として用い られる。

 本発明のEVOH樹脂組成物を用いた成形品は 、上記混合方法によって混合した状態からそ のまま各種成形品に成形してもよい。また、 上記混合方法によって混合した状態から一旦 ペレット化し、かかるペレットを各種成形品 に成形してもよい。

<多層構造体>
 本発明の多層構造体は、多層積層体と同義 あり、上記本発明のEVOH樹脂組成物層(以下 単に「EVOH樹脂組成物層」という)と、エチレ ン-ビニルエステル共重合体ケン化物以外の 可塑性樹脂層(以下、本欄において、単に「 可塑性樹脂層」といえば、当該層を意味す )を、それぞれ少なくとも1層有する多層構 体である。

 上記熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性 脂は、特に限定しないが、例えば具体的に 、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリ チレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリ チレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ア イオノマー、エチレン-プロピレン共重合体 エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポ プロピレン、プロピレン-α-オレフィン(炭 数4~20のα-オレフィン)共重合体、ポリブテン 、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共 重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又 は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエス テルでグラフト変性したもの等の広義のポリ オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、 ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、ポリア ミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、 ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ビニ ルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマ ー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリ エチレン、塩素化ポリプロピレンが挙げられ る。これらのうち、特にポリオレフィン系樹 脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂 が水分不透過性の点で好ましく用いられ、よ り好ましくはポリオレフィン系樹脂であり、 特に好ましくはポリエチレン、ポリプロピレ ンである。このような水分不透過性の熱可塑 性樹脂層と組み合わせた多層構造体は、ガス バリヤ性を有する包装フィルム、容器用多層 構造体として好ましく用いられる。

 本発明の多層構造体は、EVOH樹脂組成物層 、熱可塑性樹脂層の他、さらに紙、金属箔、 1軸又は2軸延伸プラスチックフイルム又はシ ト、織布、不織布、金属綿条、木質面など 積層されていてもよく、またこれらの層間 層表面にアルミやシリカ蒸着がなされてい もよい。

 これらの多層構造体は、通常、EVOH樹脂組成 物を加熱し溶融した状態で成形する溶融成形 法が採用される。
 かかる溶融成形法としては、例えば具体的 は、EVOH樹脂組成物のフィルム、シートに熱 可塑性樹脂を溶融押出する方法、熱可塑性樹 脂等の基材にEVOH樹脂組成物層を溶融押出す 方法、EVOH樹脂組成物層と熱可塑性樹脂層と 共押出する方法、EVOH樹脂組成物層と熱可塑 性樹脂層とを共射出する方法が挙げられる。
 この他にも、EVOH樹脂組成物フィルムと熱可 塑性樹脂フィルム等の基材とを、有機チタン 化合物、イソシアネート化合物、ポリエチレ ンイミン系化合物、ポリエステル系化合物、 ポリウレタン系化合物等の公知の接着剤を用 いてドライラミネートする方法、接着性樹脂 層を介層させてラミネートする方法等が挙げ られる。

 接着性樹脂層を構成する接着性樹脂とし は特に限定されず、種々のものを使用する とができるが、一般的には、カルボキシル を含有する変性オレフィン系重合体が挙げ れる。かかる重合体は、不飽和カルボン酸 たはその無水物をオレフィン系重合体(前述 の広義のポリオレフィン系)に付加反応やグ フト反応等により化学的に結合させて得る とができる。不飽和カルボン酸またはその 水物として、具体的には、無水マレイン酸 ラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸 ラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン グラフト変性エチレン-エチルアクリレート 重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチ ン-酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種 たは2種以上の混合物が好適なものとして挙 られる。

 以上のように、延伸前の本発明の多層構造 は、本発明に係るEVOH樹脂組成物層と熱可塑 性樹脂層とを、それぞれ少なくとも1層含む のであればよく、その構成は特に限定しな が、EVOH樹脂組成物層をa(a1、a2、・・・)、EVO H樹脂以外の熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・ )とするとき、通常3~15層、好ましくは3~7層、 特に好ましくは5~7層の層構造を有する。例え ば具体的には、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/ b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせ 可能である。
 また、該多層構造体を製造する過程で発生 る端部や不良品等を再溶融成形して得られ 、樹脂組成物とEVOH以外の熱可塑性樹脂の混 合物を含むリサイクル層をRとするとき、b/a/R 、R/b/a、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b とすることも可能である。
 上記した多層構造体の層間には公知の接着 樹脂を用いても良い。
 中でも、樹脂組成物層のガスバリヤ性能の 下防止のため、樹脂組成物層への水分の透 を防止できるように、樹脂組成物層が中間 となるような多層構造がより好ましい。具 的には、熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/EVOH 脂組成物層/接着性樹脂層/熱可塑性樹脂層 構成単位とする多層構造体が好ましい。

 本発明の多層構造体の厚みは、通常1~3000 m、好ましくは3~1300μmである。当該構成を有 る多層構造体において、熱可塑性樹脂層の みは、特に限定しないが、通常0.1~1000μm、1~ 500μmが好ましい。EVOH樹脂組成物層の厚みは 特に限定しないが、通常0.1~500μm、好ましく 1~100μmである。接着性樹脂層の厚みは、特 限定しないが、通常0.1~250μm、好ましくは0.1~ 100μmである。

 また、熱可塑性樹脂層/EVOH樹脂組成物層 厚み比は、各層が複数ある場合は、最も厚 の厚い層同士の比で、通常1超~30であり、好 しくは2~20である。接着性樹脂層/EVOH樹脂組 物層の厚み比は、通常0.1~1であり、好まし は0.25~1である。熱可塑性樹脂層/EVOH樹脂組成 物層の厚み比が小さすぎる場合、防湿性や強 度などの低下となる傾向があり、大きすぎる 場合、透明性の低下や生産コストの増加傾向 がある。

 本発明の多層構造体は、さらに加熱延伸 形によって延伸処理されたものであること 好ましい。熱可塑性樹脂層との多層構造体 は、延伸処理により、強度がアップするほ 、EVOH樹脂組成物層のガスバリヤ性も高める ことができる。特に、本発明の多層構造体に 含まれるEVOH樹脂組成物層は、上述のように 延伸処理時にも伸びやすい。しかも結晶化 度を遅延させているので、高延伸しても、 断、ピンホール、クラック、偏肉等が生じ 、均一性の高い層を保持できる。したがっ 、延伸処理後も外観に優れ、しかも、その 一性からガスバリヤ性や透明性にも優れて る。

 なお、上記延伸処理等については、公知の 伸方法を採用することができる。
 例えば具体的には、多層構造体シートの両 を把んで拡幅する一軸延伸、二軸延伸;多層 構造体シートを金型を用いて延伸加工する深 絞成形法、真空成形法、圧空成形法、真空圧 空成形法等の金型を用いた成形法;パリソン の予備成形された多層構造体を、チューブ ー延伸法、延伸ブロー法等で加工する方法 挙げられる。

 上記加熱延伸成形を行う温度は、多層構 体の温度(多層構造体近傍温度)で、通常50~30 0℃、好ましくは60~160℃程度の範囲から選ば る。延伸倍率は、面積比にて、通常2~50倍、 ましくは2~10倍である。

 例えば一軸延伸、二軸延伸(同時二軸延伸方 式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用 できる)の場合、該延伸を行う温度は、多層 造体の温度(多層構造体近傍温度)で、通常50~ 300℃、好ましくは60~160℃程度の範囲から選ば れる。延伸倍率は、面積比にて、通常2~50倍 好ましくは2~10倍である。
 フィルムやシート状の成形物を目的とする 合、一軸延伸、二軸延伸法を採用すること 好ましい。

 また、深絞成形法、真空成形法、圧空成形 、真空圧空成形法等の金型成形方法の場合 、多層構造体のシートを、熱風オーブン、 熱ヒーター式オーブン又は両者の併用など より均一に加熱して、チャック、プラグ、 空力、圧空力などにより、各種形状に均一 成形する。
 かかる延伸成形法では、多層構造体の温度( 多層構造体近傍温度)で、通常50~300℃、好ま くは60~160℃程度の範囲から選ばれる。
 カップやトレイ等の、絞り比(成形品の深さ (mm)/成形品の最大直径(mm))が通常0.1~3である成 形物を目的とする場合、深絞成形法、真空成 形法、圧空成形法、真空圧空成形法等の金型 を用いて延伸加工する金型成形方法を採用す ることが好ましい。

 特に、急激な延伸処理が含まれる真空圧空 形が採用されるが、真空圧空成形する場合 カップ側面部分と底面部分とでは、樹脂に かる張力の大きさが異なる。このため、樹 の延伸性が劣っていると、厚みムラが生じ すい。しかしながら、本発明の多層構造体 含まれるEVOH樹脂組成物層は、伸びやすく、 しかも結晶化が遅いので、真空圧空成形によ って製造しても、厚みムラが少ない成形品が 得られる。したがって、本発明のEVOH樹脂組 物を用いることにより、真空圧空成形のよ に、一律に張力がかかりにくいような厳し 条件の延伸成形を採用したとしても、優れ 外観、ガスバリヤ性を有する成形品を提供 きる。
 本発明のEVOH樹脂組成物を用いた成形物の絞 り比(成形品の深さ(mm)/成形品の最大直径(mm)) 、通常0.1~3、好ましくは0.2~2.5、特に好まし は0.3~2である。かかる値が大きすぎる場合 EVOH樹脂組成物層のクラック等が入りやすく り、少なすぎる場合は延伸効果が十分に得 れない傾向がある。

 また、チューブラー延伸法、延伸ブロー法 で加工する場合は、パリソン等の予備成形 れた多層構造体を、熱風オーブン、加熱ヒ ター式オーブン又は両者の併用などにより 一に加熱して、チャック、プラグ、真空力 圧空力などにより、各種形状に均一に成形 る。
 かかる延伸成形法では、多層構造体の温度( 多層構造体近傍温度)で、通常50~300℃、好ま くは60~160℃程度の範囲から選ばれる。
 ボトル等の中空容器を目的とする場合は、 ューブラー延伸法、延伸ブロー法等を採用 ることが好ましい。

 上記延伸処理後の多層構造体の厚みは、通 1~1300μm、好ましくは3~700μmである。熱可塑 樹脂層の厚みは、通常0.1~500μm、好ましくは1 ~300μmである。EVOH樹脂組成物層の厚みは、通 、0.1~100μm、好ましくは1~50μmである。接着 樹脂層の厚みは、通常、0.1~100μm、好ましく 0.1~30μmである。
 また、EVOH樹脂組成物層と接着性樹脂層の厚 み比、EVOH樹脂組成物層の厚み総計と、熱可 性樹脂層の厚み総計比は延伸前後で大きく 化するものではなく、上記した多層フィル の場合と同様の値となる。

 本発明の多層構造体は、種々の成形品材 として用いることができるが、上述のよう 、高延伸処理後も、EVOH樹脂組成物層の均一 性を保持することができ、厚みのばらつきに よる、目立ったスジや偏肉によるうねり等も なく、ひいてはガスバリヤ性も優れているこ とから、上記のような加熱下で延伸処理する 成形品材料に好適に利用できる。

 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説 するが、本発明はその要旨を越えない限り 実施例の記載に限定されるものではない。
 尚、例中「部」とあるのは、断りのない限 質量基準を意味する。

〔測定評価方法〕
(1)厚みのバラツキ(カップ)
 作製したカップについて、口部付近側壁部3 か所、底面部付近側面部3か所、底面部1か所 それぞれ1cm×1cmずつ切り取り、EVOH樹脂組成 層の厚みを測定し、平均厚み及び最大厚み 最小厚みの差を求めた。
 また、最大厚みと最少厚みの差が10μm未満 場合を「○」、11~19μmの場合を「△」、20μm 上の場合を「×」と評価した。

(2)外観(カップ)
 作製したカップの外観を目視で観察し、「 」(縦筋、局部的な偏肉がほとんど認められ ない)、「△」(カップの側面部に縦筋あるい 局部的な偏肉が著しく認められた)、「×」( カップの側面部に縦筋及び局部的な偏肉が著 しく認められた)の3段階で評価した。

(3)厚みのバラツキ(フィルム)
 作製したフィルムについて、ランダムに6か 所、それぞれ1cm×1cmずつ切り取り、EVOH樹脂組 成物層の厚みを測定し、平均厚み及び最大厚 みと最小厚みの差を求めた。

(4)外観(フィルム)
 作成した3種5層フィルムについて、目視で 観を評価した。「○」(筋、波打ちなどがほ んど認められない)、「×」(筋、波打ちなど が認められる)の2段階で評価した。

(5)ガスバリヤ性(カップ) 
 カップの上面をアルミ金属板で密封して、M OCON社製の「OXTRAN2/20」を用いて、23℃、50%RH下 での酸素透過量を測定した。(1)で算出した平 均厚みで除することにより、EVOH樹脂組成物 20μmあたりの酸素透過量(cc/pkg・day・air)を算 した。
 なお、pkgは、Packageの略称であり、酸素透過 量の測定対象がカップ全体であることを意味 し、airは酸素透過量の測定に使用したガスが 空気(酸素分圧0.2atm)であることを示している

(6)ガスバリヤ性(フィルム)
 MOCON社製の「OXTRAN2/20」を用いて、23℃、50%RH での多層フィルムのEVOH樹脂組成物層20μmあた りの酸素透過量(cc/m 2 ・day・atm)を測定した。

〔使用した樹脂〕
 表1に示す特性を有する2種類のエチレン-酢 ビニル共重合体ケン化物(EVOH1、EVOH2)及び3種 類のPVA樹脂(PVA1~PVA3)を用いた。
 PVA樹脂における(1a)で示される側鎖1,2-ジオ ル構造単位の含有率は、 1 H-NMRにより測定した値である。
 ケン化度は、滴定法(JIS K6726)により測定し 値である。
 重合度は、水溶液粘度測定法(JIS K6726)によ 測定した値である。

〔実施例1、比較例1-3〕
 表2に示すように、樹脂を配合し、ドライブ レンド後、ミキシングゾーンを2か所有する 軸押出機(φ30mm、L/D=43)に仕込み、溶融混練( 出機設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/H/D=200/210/230/230 /230/230/230/230℃)後、ストランド状に押出し、 ットして、ペレット状のEVOH樹脂組成物を得 た。

 押出機を3台備え、3種5層型フィードブロッ 、多層フィルム成形用ダイ及び引取機を有 る共押出多層フィルム成形装置に、上記で 製したEVOH樹脂組成物ペレット、ポリプロピ レン(日本ポリプロ株式会社「EA6A」)、及び接 着性樹脂(三菱化学株式会社「MODIC-AP_P604V」) 供給して、共押出により、ポリプロピレン /接着性樹脂層/EVOH樹脂組成物層/接着性樹脂 /ポリプロピレン層の3種5層構造の多層構造 を製造した。なお、成形装置のダイ温度は 全て230℃に設定した。また、得られた多層 造体の厚みは320μmであり、各層の厚みは、1 20μm/20μm/40μm/20μm/120μmである。
 得られた多層構造体を、プラグアシスト型 空圧空成形機(浅野研究所)に供給して、ヒ ター温度430℃で延伸成形加工を行って、カ プ(上面径80mm、底面径48mm、深さ52mm、絞り比( 成形品の深さ(mm)/成形品の最大直径(mm))が0.65) を作製した。作製したカップについて、上記 測定評価方法に基づいて、厚みのばらつきを 調べた。結果を併せて表2に示す。
 また、作製したカップについて、上記測定 価方法に基づいて、外観、ガスバリヤ性を 定した結果を表3に示す。

 表2からわかるように、EVOH樹脂単独から る層を有する多層構造体(比較例1)では、底 部と口部付近の厚みの差が大きく、全体と て厚みのばらつきが大きく、カップの側面 に縦筋あるいは局部的偏肉が著しく認めら たのに対し、側鎖1,2-ジオール構造単位含有P VAを含有するEVOH樹脂組成物(実施例1)を用いた 層を有する多層構造体を用いれば、底面部と 口部付近の厚みの差が小さく、全体として厚 みのばらつきが少ないカップを成形すること ができた。つまり、成形品のカップとして、 実施例1では、縦筋、局部的な偏肉がほとん 認められなかった。また、表3からわかるよ に、カップ全体の酸素透過量は、実施例1の ガスバリヤ層の方が比較例1のガスバリヤ層 りも薄いにもかかわらず小さい結果となり 実施例1の酸素透過量は比較例1の27%の値にま で低下し、ガスバリヤ性が向上した。同じ厚 みあたりの酸素透過量を比べると、実施例1 EVOH樹脂組成物層の方が比較例1のEVOH樹脂層 りも少なく、実施例1の酸素透過量は比較例1 の酸素透過量の22%の値にまで低下し、ガスバ リヤ性がさらに向上したことがわかる。この ことから、側鎖1,2-ジオール構造単位含有PVA 添加したEVOH樹脂組成物は、EVOH樹脂単独より もガスバリヤ性に優れることがわかる。そし て、単位厚みあたりの抑制効果よりも、カッ プ全体のガスバリヤ向上効果の方が大きいと いうのは、厚みのばらつき低減により、組成 物本来及び延伸処理に基づくガスバリヤ性向 上効果が、より有効に発揮することができた ためと思われる。

 一方、側鎖1,2-ジオール構造単位を含有し ないPVA2を含有させた樹脂組成物(比較例2)で 、厚みのばらつきが大きいだけでなく、底 部ではEVOH樹脂層の破断が認められた。側鎖1 ,2-ジオール構造単位を含有しないPVA2は、1,2- オール構造単位含有PVAと比べて伸びにくい めと思われる。また、ガスバリヤ性につい も、EVOH樹脂層が破断したために、PVA樹脂、 EVOH樹脂が本来有するガスバリヤ性を発揮す ことができなかった。

 PVA樹脂に代えて、エチレン含有率が大き 部分ケン化EVOH樹脂(EVOH2)を含有させた樹脂 成物(比較例3)では、エチレン含有率の増大 伴って延伸成形性が向上し、厚みのばらつ はEVOH樹脂単独の場合よりも良好で、実施例1 に匹敵する延伸成形性を示すことができた。 しかしながら、樹脂組成物全体に含まれるOH 含有率が少なくなったためか、ガスバリヤ は、EVOH樹脂単独の場合(比較例1)よりも劣っ ていた。

 従って、カップの成形のような厳しい延 成形品においても、EVOH樹脂本来が有するガ スバリヤ性、さらにはそれを超える高度のガ スバリヤ性を確保するためには、側鎖1,2-ジ ール構造単位を含有するPVA樹脂を配合した 発明の樹脂組成物を用いることが好適であ ことがわかる。

〔実施例2、比較例4〕
 1,2-ジオール構造単位含有率が同じで、重合 度が異なるPVA樹脂(PVA3)を使用し、EVOH樹脂とPV A樹脂の配合比率を表4に示すように変更して 造したペレットをブレンドして、EVOH樹脂組 成物(実施例2)を得た。
 3種5層型フィードブロック、多層フィルム 形用ダイ及び引取機を有する共押出多層フ ルム成形装置に、上記で調製したEVOH樹脂組 物ペレット、ポリプロピレン(日本ポリプロ 株式会社「EA7A」)、及び接着性樹脂(三井化学 株式会社「ADMER QF551」)を供給して、共押出 より、ポリプロピレン層/接着性樹脂層/EVOH 脂組成物層/接着性樹脂層/ポリプロピレン層 の3種5層構造の多層構造体を製造した。なお 成形装置のダイ温度は、全て230℃に設定し 。また、得られた多層構造体の厚みは140μm あり、各層の厚みは、50μm/10μm/20μm/10μm/50μ mである。

 製造した多層フィルムについて、2軸延伸 機(BRUCKNER社製 KARO IV)に供給して、同時2軸延 伸処理(延伸倍率縦横1.3倍、延伸速度100mm/秒 延伸温度155℃、予熱時間40秒、試験片:縦×横 =9cm×9cm)後、上記評価方法に基づいて、外観 フィルムのガスバリヤ性を測定した。結果 表4に示す。

 比較例4として、PVA3を含有させずに、EVOH1 単独で、実施例2と同様にして作製した3種5層 の多層構造体について測定した結果について も、併せて表4に示す。

 実施例2と比較例4とを比較した場合では 得られたフィルムのEVOH樹脂(組成物)層の平 厚みは同じであるにもかかわらず、最大厚 と最小厚みの差が比較例4では実施例2の2倍 上となり、実施例2の厚みのばらつきが小さ ことがわかる。EVOH樹脂(組成物)層の厚みの らつきの差異は、フィルムの外観の差とな て現れるだけでなく、酸素透過量について 現れ、具体的には、比較例4は実施例2の1.5 の値となり、実施例2のガスバリヤ性が優れ いることがわかる。従って、側鎖1,2-ジオー ル構造単位を含有するPVA樹脂をEVOH樹脂に配 することで、延伸成形品の厚みのばらつき 小さくするとともに、成形品の表面外観を 上させ、さらにはガスバリヤ性も向上させ ことができることがわかる。

 本発明のEVOH樹脂組成物で構成される層は 、加熱延伸処理時における伸びに優れ、延伸 処理後も厚みムラが少なく、且つガスバリヤ 性に優れる。したがって、高延伸処理を採用 しても、結晶化度の高いガスバリヤ性に優れ たEVOH樹脂組成物層を提供できるので、例え 、真空圧空成形等の厚みムラが生じやすい 激な延伸処理が含まれる成形方法を適用し も、外観に優れ、高度なガスバリヤ性が要 される種々の成形品に利用できる。